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医師臨床研修費補助金について


 平成16年度からの医師臨床研修の必修化は、良質かつ適切な医療の提供に向けた改革の基礎として不可欠なものであり、新制度の円滑な実施を図るため、研修を行う病院に必要な支援を行う。


○ 予算案 171億円  (平成15年度予算 43億円)


○ 内容

(1) 教育指導経費 111億円(43億円)
 指導医の指導時間の延長
 プログラム責任者(副院長クラス)の配置
 研修管理委員会の設置  等

(2) 導入円滑化特別加算 60億円(新規)
 研修医にアルバイトを行わせず、適切な指導体制を確保した宿日直研修を支援することにより、新制度の円滑な導入・定着を推進する。

 臨床研修を行う病院が、研修プログラムに基づき、適切な指導体制と医療安全を確保した上で行う研修医の宿日直研修について、人件費等の増加分にかかる補助を行う。

注) 新制度では、1年次生は指導医等と組んで宿日直を行うこと、2年次生は指導医等のオンコール体制の下で宿日直を行うこと、としている。

 宿日直研修を実施し、補助対象となる病院は、(1)研修医の処遇を引き上げ、かつ、臨床研修を実施する上で経営支援が必要な病院、(2)医師不足地域に所在する病院。

(補助対象となる病院、補助金額等の具体的内容は今後早急に検討)



1.新医師臨床研修制度の実施について

(1 )医師臨床研修の必修化
 医師の臨床研修については、平成12年12月に医師法が改正され、平成16年4月から、診療に従事しようとする医師は、臨床研修を受けなければならないとされた。
 新たな医師臨床研修制度においては、医師としての基盤形成の時期に、(1)医師としての人格を涵養し、(2)プライマリ・ケアへの理解を深め、患者を全人的に診ることができる基本的な診療能力を修得するとともに、(3)アルバイトをせずに、研修に専念できる環境を整備することを基本的な考えとしている。

(2 )臨床研修の実施体制の確保
 平成14年12月に臨床研修病院の指定基準に関する省令を制定し、平成15年6月にその運用について通知した。平成15年度は新たに586病院(単独型・管理型)を指定し、臨床研修病院は平成15年4月1日の637病院から1,391病院に増加した。この結果、全国に364ある二次医療圏のうち、臨床研修病院又は大学病院のある圏域は、約60%から最終的には約95%に増加することとなる。
 また、平成15年11月に実施された研修医マッチングでは、7,756名の研修希望者の研修先が決まり、臨床研修病院で研修を受ける研修医の割合は従来の3割から4割に増加することになる。
 各都道府県においては、研修プログラムの充実、医学生への働きかけなど積極的な取り組みを行うとともに、研修の実施に伴い地域医療に支障が生じないよう必要な対応をお願いしたい。
 (新たな医師臨床研修制度に関する情報は、厚生労働省ホームページに掲載しているので参照されたい。https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/rinsyo/index.html

(3 )臨床研修に係る財源の確保
 臨床研修に係る財源については、平成16年度予算案において前年度の4倍にあたる171億円を計上した。これにより教育指導体制が充実するとともに、研修医の処遇改善が進み、研修医がアルバイトをせずに研修に専念できるものと考えられる。
 各都道府県におかれては、新医師臨床研修制度の趣旨を踏まえ、円滑かつ着実な実施に向けて引き続きご協力をお願いしたい。



2.医療安全対策の取組について

 厚生労働省においては、平成14年4月に医療安全対策検討会議において取りまとめた「医療安全推進総合対策」に基づき、各般の取り組みを進めているところであり、各都道府県等におかれては、平成15年4月より設置を開始している「医療安全支援センター」の円滑な運営及び二次医療圏における速やかな体制整備を推進されるとともに、管下医療機関、関係団体等への周知、指導、支援など積極的な取り組みをお願いしたい。

(1 )医療安全支援センターの設置
 本センターは、医療に関する患者・家族等の苦情・心配や相談等に迅速に対応することにより、医療の安全と信頼を高めるとともに、センターに寄せられた情報を医療機関へ提供することを通じて、医療機関が行う患者サービスの向上等を図ることを目的として、各都道府県、保健所設置市区及び二次医療圏に重層的に設置することとしている。(平成15年4月から)
 なお、本センター設置に係る経費については、医療に関する相談は地域住民に身近な事業であること、地方自治体における主体的・自主的な取り組みを推進する必要があることなどから、センターに係る人件費、基本運営費、協議会の設置・運営、各種研修の実施、相談事例の収集・情報提供等に係る経費については、地方財政措置を講じている。
 また、厚生労働省としては、都道府県等においてセンターの設置・運営が円滑に進められるよう、相談職員等に対する研修、相談事例等の収集・分析・情報提供などの総合的な支援を実施するため、当該支援事業を、財団法人日本医療機能評価機構に委託しているものである。

(2 )医療安全管理体制の義務化
 医療機関における組織的な安全管理体制の確保を図るため、医療法施行規則の一部を改正し、平成14年10月より全ての病院及び有床診療所の管理者に対して、(1)安全管理指針、(2)安全管理委員会、(3)安全管理研修、(4)事故報告等の改善方策に係る体制整備の義務化を図ったので、各都道府県等におかれては、医療監視の立入検査等を通じて、管下医療機関における適切な安全管理体制の確保について指導方願いたい。
 また、上記に加え、昨年4月からは特定機能病院及び臨床研修病院の管理者に対して、(1)安全管理者(特定機能病院は専任)、(2)安全管理部門、(3)患者相談窓口に係る体制整備の義務化を図ったので、各都道府県等におかれては、管下関連医療機関に対して、適切な体制の確保が図られるよう併せて指導方願いたい。

(3 )医療安全対策に関する情報の提供
 現在、厚生労働省ホームページにおいて、医療機関における事故防止に資する情報として、医療安全対策ネットワーク整備事業により特定機能病院等から収集した「ヒヤリ・ハット事例」の集計・分析結果等の情報や研究成果等を提供しているところである。
 これらの情報を各医療機関等が活用し、効果的な取組がなされるよう、各都道府県等におかれても、管下医療機関等への周知をお願いしたい。
 なお、本年度中には収集対象機関を全ての医療機関に拡大することとしているので、事業拡大の際には周知徹底にご協力願いたい。

(4 )医療安全推進週間の実施
(平成16年度は11月21日からの1週間)
 厚生労働大臣提唱の「患者の安全を守るための医療関係者の共同行動」(Patient Safety Action)の一環として、当該週間を中心に、医療安全に関するワークショップ、シンポジウム等を開催することとしている。
 各都道府県等におかれても、引き続き、当該週間にあわせて様々な事業を実施することにより、関係者の意識啓発を図っていただきたい。

(5 )医療事故に関する情報の収集・分析・提供事業の実施
 医療安全対策における最大の目的は、医療事故の発生予防・再発防止であり、このためには、医療機関の報告に加え、医療関係団体、学会、国際機関等から医療安全に資する情報を収集し、これらを総合的に分析・検討した上で、その結果を広く提供することが必要であり、また、医療機関が自ら事故の原因や背景、改善方策を含めて、出来る限り掘り下げて分析・検討したものを収集することが重要である。
 このため、医療事故情報等について、報告する者が責任追及や行政処分などの不利益を蒙らないよう匿名化等の措置を講じた上で、国民から信頼される中立な「第三者機関」を設置し、医療機関自らが分析・検討した医療事故情報を収集し、さらに分析を加えた上で情報提供を行うとともに、医療機関からの相談に応じて必要な助言・支援を行うための事業を実施すべく、平成16年度予算(案)に計上したところである。(財団法人日本医療機能評価機構における実施を予定)

(6 )厚生労働大臣緊急アピールについて
 医療機関における医療事故防止対策の強化については、先般、医政局長・医薬食品局長通知(平成15年11月27日付)により、貴管下医療機関に対して周知徹底方お願いしたところであるが、今般、国民が安心して医療を受けることが出来るよう、安全管理対策の更なる推進にご尽力を頂きたく、「厚生労働大臣医療事故対策緊急アピール」が発出されたところである。
(平成15年12月24日)
 各都道府県等におかれては、当該アピールを踏まえ、医療機関における医療事故防止対策を強化すべく、より一層のご理解とご協力をお願いしたい。



3.地域医療体制の確保について

(1 )地域医療に関する関係省庁連絡会議について
 最近のいわゆる医師の「名義貸し」問題等については、既に各都道府県等に対し通知を発出し、医師の名義借りの実態把握に努めるとともに、名義借りの実態が判明した場合には情報提供するようお願いしている。
 現在、文部科学省において全国の医科大学等に対して行った実態調査を取りまとめているところであり、引き続き、文部科学省との連携・情報交換を進め、実態把握に努めるとともに、医療法及び健康保険法に基づき、必要な措置を講ずる必要があると考えている。
 一方、地域医療の確保については、これまでも9次にわたり「へき地保健医療計画」を策定し、取組を進めてきたところであるが、医療機関における医師の確保が現実に難しい地域があることが、いわゆる医師の「名義貸し」問題等の背景の一つとなっているものと考えている。
 こうした観点から、医師の確保が困難な地域における医療の確保を推進するための諸課題について関係省庁が十分に連携・調整し、具体的な取組を推進するため、昨年11月に総務省、文部科学省及び厚生労働省の3省による「地域医療に関する関係省庁連絡会議」を設置した。
 これまで、4回にわたり自治体関係者、医療関係者、大学関係者からヒアリングを行い、それを踏まえ、現在、(1)へき地を含む地域における医師確保対策、(2)地域における医師確保のための大学、地域の医療機関、都道府県等の連携のあり方、(3)地域における医師確保のための医師の養成のあり方、(4)病院における医師の勤務実態の把握と配置のあり方、等について検討を進めている。1月中を目途に当面の取組、今後の検討課題等について可能な限り整理を行う予定であり、各都道府県におかれては、その内容も踏まえつつ、地域における医療提供体制の確保に向け御尽力いただきたい。

(2 )小児救急医療の体制整備
 地域における医療提供体制の整備を図るに当たり、救急医療体制の確保は筆頭にも挙げられる重要課題であるが、なかでも、小児救急医療については、昨今、我が国において少子化が進展する中で、今後の我が国社会を担う若い生命を護り育てるため、保護者の育児面の安心の確保を図るという観点から、体制整備が急務となっている。
 小児救急医療体制の整備については、これまでも、一般の救急医療の場合と同様に「初期−二次−三次」の体系に沿い、地域ごとの実情に応じ、機能分化と連携に配慮した体制整備を図るとの方針のもと、平成11年度から、二次医療圏単位で当番制により小児救急対応が可能な病院を確保する「小児救急医療支援事業」を、さらに平成14年度から、二次医療圏単位での体制構築が困難な地域においては、複数の二次医療圏ごとに小児救急患者を受け入れる「小児救急医療拠点病院」を国の補助制度として設け、全国的な体制整備に取り組んできたところであり、平成16年度予算案においても、これらに必要な予算を確保したところである。
 しかしながら、その整備状況は、昨年10月24日の全国小児救急医療関係者主管課長会議で公表したとおり、全国の約4割の地域において整備されるなど着実に前進をみてはいるが、小児科医の不足などにより、未整備にとどまる地域も依然として数多く残されている。
 昨年9月30日の参議院本会議における国会答弁において、坂口厚生労働大臣は、こうした状況に対し、「苛立ちを感じている」と深刻な焦燥感を表明されているところである。
 各都道府県におかれては、小児救急医療体制をめぐる「危機意識」を改めて共有し、強力なリーダーシップの下、地域における関係者による協議の場において、その整備計画の進捗状況の点検や新たな整備方針の策定などを早期に行うよう努めるとともに、補助制度の積極的な活用等により提供体制の早期確立を図るようお願いする。
 その際、小児救急医療体制の充実については、平成16年度予算案において、
(1)  地域の小児科医による夜間の小児患者の保護者等向けの電話相談体制を全国同一短縮番号(「#8000」を予定)により全国的に整備、
(2)  地域の小児科医、内科医等を対象とした小児救急に関する医師研修事業の実施、
(3)  ITを活用し、小児科以外の医師が小児科専門医のコンサルテーションを受けることのできる遠隔医療施設の整備
について、新たに補助制度を設けることとしたところである。
 その他、脳卒中・心筋梗塞及び高速自動車道等における交通事故の増加に対応できる高度な救急医療機関が地域で1〜2ヵ所しかないなど、救命救急センターの増設が急務でありながら、救急医の確保が困難等の事情により救命救急センターが未整備の地域については、10床規模の「新型救命救急センター」の設置も視野に入れ、地域の実情に応じた三次救急医療体制の早期整備を図るようお願いする。

(3 )へき地医療
 へき地医療の確保については、「第9次へき地保健医療計画」に基づき、各都道府県単位に設置した「へき地医療支援機構」を中核として、二次医療圏を超えた広域的な支援体制を構築いただくようお願いしているが、平成16年度においても、引き続き、第9次計画に沿った医療提供体制の充実を図るよう取り組みをお願いする。
 なお、平成16年度予算案において、現行の公立・公的医療機関立に加え、医療法人立・個人立等の民間診療所も「へき地診療所」として運営費及び施設整備費・設備整備費の補助対象に追加することとした。
 また、第9次計画の期間は平成17年度までとされていることから、平成18年度からの「第10次へき地保健医療計画」の策定に向け、平成16年度中に「へき地保健医療対策検討会」を開催する予定であり、その際に無医地区等実態調査を実施することとしているのでその際は御協力方よろしくお願いしたい。



4.訪問看護の推進について

 医療提供体制の改革において入院医療の適正化と在宅医療の推進が重要課題となっているが、訪問看護の充実は在宅医療を進める上で不可欠である。特に24時間のたんの吸引が必要なALS患者等や、医療処置が必要な患者等の在宅療養生活の支援が重要である。※
 そこで、平成16年度予算案では、訪問看護を推進するための事業(訪問看護推進事業)を創設することとしている。具体的には、各都道府県における訪問看護推進協議会の設置、ALS患者等人工呼吸器を装着しながら在宅で療養している患者等への訪問看護を充実するための体制整備に向けたモデル事業の実施、がん末期患者等の在宅ホスピスケアの推進及び訪問看護ステーションと医療機関の看護師の相互交流による研修などを内容としている。
 各都道府県におかれては、本事業はALS患者や医療処置が必要な患者の在宅療養生活の支援を推進する上で基礎となる重要な事業であるので、全都道府県で取り組んでいただくことが不可欠であると考えている。

 ※ 参照
・「 医療提供体制の改革のビジョン」(平成15年8月)
・「 新たな看護のあり方に関する検討会報告書」(平成15年3月)
・「 看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会報告書」(平成15年6月)



5.医療分野の情報化の推進について

 医療分野の情報化については、平成13年12月に情報技術を活用した今後の望ましい医療の実現を目指し、「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」を策定し、その着実な推進に努めてきているところである。

 まず、根拠に基づく医療(EBM)を推進するため、最新の診療ガイドラインを本年度末までに優先20疾患について作成するとともに、こうした情報を医療関係者、患者双方が容易に入手できるようにするためデータベースの整備を進め、平成16年度よりインターネット等により医療関係者や国民へ情報提供を開始する予定である。

 また、電子カルテシステムの普及促進を図るため、平成16年度予算案においては、地域の医療機関が電子カルテシステムにより診療情報を交換する際のセキュリティを重視したネットワークを構築するためのモデル事業を行うなど、普及に向け各般の施策を行っていくこととしている。

(参考)これまでのモデル事業(地域診療情報連携推進費補助金)の実施地域
 平成14年度 地域医療機関連携のための電子カルテによる診療情報共有化モデル事業
  ・ 千葉県(県立東金病院、亀田総合病院)
  ・ 宮崎県(宮崎県医師会)
 平成15年度 地域医療機関連携のための電子カルテ導入補助事業(予定)
  ・ 北海道(日鋼記念病院、釧路脳神経外科病院)
  ・ 群馬県(NPO法人地域診療情報連携協議会)
  ・ 千葉県(亀田総合病院)
  ・ 石川県(恵寿総合病院)
  ・ 京都府(洛和会音羽病院)
  ・ 高知県(幡多医師会)

 各都道府県におかれては、電子カルテ、レセプト電算処理システムの普及等に向けて、引き続き、医療機関に対する指導・支援など格段の御協力をお願いしたい。



6.その他

 医療分野における株式会社の参入については、平成14年秋の構造改革特区に係る地方公共団体及び民間からの提案を踏まえ、平成15年2月の構造改革特別区域推進本部において、特例措置を講ずることが決定された。
 また、平成15年6月に、「経済財政と構造改革に関する基本方針2003」(平成15年6月27日閣議決定)において、「構造改革特区における株式会社の医療への参入について、地方公共団体のニーズに即し、自由診療の分野において、高度な医療を提供する病院又は診療所の開設を可能とするよう、速やかに関連法令の改正を行う」ことが盛り込まれるとともに、内閣官房構造改革特区推進室と調整の上、成案を取りまとめ公表した。
 今後、成案を踏まえて、医療法等の特例措置を講ずるための構造改革特別区域法の改正法案が、この通常国会に提出される予定。
 なお、全国規模での医療分野における株式会社の参入については、上記の閣議決定において「構造改革特区における株式会社による医療機関経営の状況等を見ながら、全国における取扱いなどについて更に検討を進める」こととされている。


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