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連絡先厚生労働省国際課国際企画室 野田
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OECD保健大臣会合について


1.概要

 (1) 本年5月13日、14日、「質の良い効率的な医療システムに向けて」をタイトルとしてOECD保健大臣会合(Meeting of OECD Health Ministers)が開催される。

 (2) 高齢化の進展とともに、OECD加盟国間で医療制度・医療サービスの改善がより一層重要な政策課題となっていることを背景にOECDとして初の大臣級会合。

 (3) 本会合では、これまでのOECDヘルスプロジェクトなど医療分野におけるOECDの研究成果を基に、OECD加盟国間での保健医療分野の政策課題や今後の方針を議論した。また、医療の質に関する指標開発と国際比較などを中心とする、今後この分野でOECDが取り組む作業の方向付けを行った。

 (4) 最終日にはコミュニケを採択(別紙参照)。

 【議長】フリオ・フランク保健大臣(メキシコ)

 【日本からの出席者】大塚事務次官、中澤国際企画室長 等

 【アジェンダ及び議論の概要】
 (1) 5月13日午後 第1セッション「予防と質の向上を通じたより良い医療」
 「疾病予防」「健康づくり」の役割・効果及び医療の質の向上のための施策について議論が行われ、疾病予防や健康づくりに優先的に取り組むべきことや、医療の質の指標の必要性につき合意を見た。
 我が国からは、高齢化社会では「予防と健康づくり」は医療政策の基本となるべきとの基本的考え方を述べるとともに、平均寿命、健康寿命とも世界最高水準である我が国においても、近年、生活習慣病が脅威となっていることに言及しつつ、「健康日本21」運動や健康増進法の制定(2002年)などの予防と健康づくり対策を披露。また、医療安全対策の徹底が医療の質の確保の基本にあることも指摘し、我が国の取組を紹介。

 (2) 5月13日夕食 保健大臣と財政/経済担当大臣との合同夕食会
         「医療制度の財政的な持続可能性の確保について」
 高齢化や医療技術の進歩を反映して医療費が増大している中、医療システムの財政的持続可能性をいかに確保するかについて議論が行われ、この問題について単一の解決方法はないこと、改革のヴィジョンと改革を行う勇気が必要であること、OECD各国の知恵を結集して今後も医療分野の研究を行っていくこと、の3点につき全体的なコンセンサスがあった。
 我が国の伊藤内閣府副大臣からは、医療サービスのニーズが高まり医療費の伸びがGDPの伸びを上回る中、医療費の増加を抑制する必要があり、医療保険の存在により患者のコスト意識が薄くなる又は医師と患者の情報格差が経済的に適正水準以上の治療・投薬を促すなど医療サービスの特性から生じる問題に対応しつつ、国民皆保険体制と医療機関への自由なアクセスの下で、多様な国民のニーズに応えながら、医療保険制度の再設計に努力する必要がある旨、発言があった。
 また、我が国の大塚厚生労働事務次官からは、医療費増大の主たる要因は高齢化にあり、医療費の抑制のためには給付の効率化や負担の公平化が必要であること、2002年の医療制度改革では、小泉首相からは国民が痛みを分かち合うことが必要とのメッセージの下で改革が実現したこと、引き続き2005年度には介護保険制度改革、2006年度には再度の医療保険制度改革に取り組むことになる旨、発言があった。

 (3) 5月14日午前 第2セッション「費用に見合った価値をいかに改善するか」
 医療システムの効率性をいかに高めるかについて議論。無駄の排除と競争原理導入とイノベーション促進の必要性を指摘する発言が多かった。
 我が国からは、(1)情報の共有と(2)質と効率性の適切な評価の重要性を指摘。前者については、医療関係者や医療機関間の情報共有(EBM手法の活用など)と医療関係者と患者の間の情報共有(患者からの選択)の2側面、後者については医療機関に対する第三者評価(中立的な民間団体による評価の試みの開始)、適切な診療報酬(効率性や競争の促進にインセンティブ)を説明。

注1:5月13日午前には、OECDフォーラムで保健大臣によるパネル「医療制度の向上に貢献する研究と技術革新のための制度」も開かれた。

注2:OECDヘルスプロジェクトとは、医療に関する各種研究を通じて、医療の総合的なパフォーマンスの改善策を探るプロジェクト。OECD事務総長のイニシアチブの下、多額の予算を投じて、2000年から実施された。その成果は、各種研究を統合した報告書”Towards High-Performing Health systems”及びその要約であるブックレットにまとめられ、本大臣会合に提出された。

2.代表団所感
 (1) ヘルスに関する課題を共有するOECD加盟国大臣が一堂に会して意見交換を行う初めての会合であり、意義深い。
 (2) 今後の政策の方向性についてOECD加盟国のコンセンサスが形成され、コミュニケにまとめられたことは画期的。
 (3) コミュニケ以外にも、たとえば改革には、ビジョンと勇気、国民への率直な語りかけが重要といった政策責任者としての発言は印象深い。
 (4) 我が国の政策を積極的に披露し、参加国の関心や理解と賛同が得られたことを評価。
 (5) OECDの医療分野の活動に対し、我が国としても引き続き支援(財政面、専門性の面から)。




OECD保健大臣会合コミュニケの概要



【会議における主な結論】

(1) 各加盟国は、寿命の伸長など医療について飛躍的な改善を経験。

(2) 一方、すべての国は、制度の持続可能性、効率性、すべての者に対しいかに質の高い医療を提供するかという挑戦に直面。

(3) ヘルスプロジェクトは、国際比較研究を通じて機能する医療政策を示唆。

(4)各国において価値や制度が異なることから、解決策は一つではないことに留意しつつ、以下の方策を実施すべき
費用対効果の高い方策による寿命や健康水準の改善に関する現在の成功の拡大。
肥満、タバコ・アルコール及び薬の乱用、心の病など健康に対する新たな脅威が生じる中で、疾病予防や健康増進へのプライオリティの付与。
OECD諸国に未だに存在する健康や医療アクセスの格差解消。
医療制度の財政的な持続可能性の確保。民間医療保険を活用する場合の規制の枠組みの整備。
財政的持続可能性と医療の質向上のための生産性の改善。
ニーズに合った医療のイノベーション促進。
介護ケアの質と選択の提供。安価な利用の促進。
将来の医療需要に見合うよう人的資源への十分な投資。


【医療に関するOECDの将来作業】

(1) OECDは、医療に関する作業として、今後以下を実施すべき。
現在実施されているヘルスデータ等の更なる改善
医療の質の指標等の開発
政策分析(ex.病院の効率性、費用対効果の高い1次医療、高齢者の要介護動向や介護費用、予防医療の経済性、新医療技術の開発のための政策)

(2) ヘルスに関する作業を管理し、理事会に適切なプライオリティを助言する組織の創設。


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