都道府県労働局長 殿
情報通信機器を活用して、働く者が時間と場所を自由に選択して働くことができる働き方であるテレワークは、通勤負担の軽減に加え、多様な生活環境にある個々人のニーズに対応することができる働き方であり、そのような働き方は広がりをみせてきている。
その中で、事業主と雇用関係にある労働者が情報通信機器を活用して、労働時間の全部又は一部について、自宅で業務に従事する勤務形態である在宅勤務についても、労働者が仕事と生活の調和を図りながら、その能力を発揮して生産性を向上させることができ、また、個々の生きがいや働きがいの充実を実現することができる次世代のワークスタイルとして期待されている。
しかしながら、この在宅勤務については、職場での勤務などとは異なり、業務に従事する場所が、労働者の私生活にむやみに介入すべきでない自宅であるという点や、労働者の勤務時間帯と日常生活時間帯とが混在せざるを得ない働き方である点等を考慮すると、これまで一般的であった事業主の支配や管理が及ぶ事務所等での勤務に係る労務管理を前提とした労働基準関係法令の適用関係等を整理し直し、適切な労務管理が行われることが必要となっているところである。
そこで、今般、在宅勤務が適切に導入及び実施されるための労務管理の在り方を明確にし、もって適切な就業環境の下での在宅勤務の実現が図られることを目的とする「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を別添のとおり策定したところである。
今後は、本ガイドラインに基づき、関係事業主等において在宅勤務の利点を労働者が十分に享受できるようにするという視点に立ちつつ、適切な労務管理に努めるよう、周知を図られたい。
1 | 在宅勤務の現状と課題 |
(1) | 在宅勤務を巡る現状
近年、インターネットや情報処理を中心とした技術革新により、IT(Information Technology:高度通信情報ネットワーク)化が急速に進んでおり、パソコンや端末等のVDT(Visual Display Terminal)が家庭や職場を問わず広く社会に導入され、職場環境や就業形態等についても大きく変化している状況にある。 |
(2) | 在宅勤務の評価
在宅勤務に関しては、総務省「テレワーク人口等に関する調査」(平成14年3月)や前出した国土交通省調査等によれば、事業主は、「仕事の生産性・効率性の向上」、「オフィスコストの削減」、「優秀な人材の確保」等の効果の面を評価しており、在宅勤務を行う労働者の側からも、「仕事の生産性・効率性の向上」、「通勤に関する肉体的、精神的負担が少ない」、「家族との団欒が増える」等の効果の面を評価している。 |
(3) | 在宅勤務の課題
(2)に記したように、在宅勤務は一般に、労働者が仕事と生活の調和を図りながら、その能力を発揮して生産性を向上させることを可能とするものとして一定の評価を受けている勤務形態であるが、その一方で、労働者の勤務時間帯と日常生活時間帯が混在せざるを得ない働き方であること等、これまでの労務管理では対応が難しい面もあることから導入をためらう事業主もあると考えられる。前出した総務省調査や国土交通省調査等においても、在宅勤務を実施していない理由として、労働者の労働時間や健康等「労働者の管理が難しい」を挙げる事業主が多くなっている。また、「労働者の評価がしにくい」等を挙げる事業主も多くなっており、在宅勤務を行う労働者からも同様の課題が挙げられているところである。 |
2 | 在宅勤務についての考え方
在宅勤務を制度として導入するか否かは、基本的には事業主が労働者等の意向を踏まえ、業務の内容や事業場における業務の実態等を勘案して判断するものであろうが、1の(1)(2)に照らし、仕事と生活の調和等の観点から在宅勤務を希望する労働者の存在等を随時把握し、在宅勤務の可能な業務の検討などを進めておくことが望まれる。また、導入に当たっては、3及び4に留意するとともに、1(3)の課題の解決方策について、労働者の合意を得て、適切な在宅勤務の導入及び実施に努めることが求められる。 |
3 | 労働基準関係法令の適用及びその注意点 |
(1) | 労働基準関係法令の適用
労働者が在宅勤務(労働者が、労働時間の全部又は一部について、自宅で情報通信機器を用いて行う勤務形態をいう。)を行う場合においても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用されることとなる。 | ||||
(2) | 労働基準法上の注意点
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(3) | 労働安全衛生法上の注意点
事業者は、通常の労働者と同様に、在宅勤務を行う労働者についても、その健康保持を確保する必要があり、必要な健康診断を行うとともに(労働安全衛生法第66条第1項)、在宅勤務を行う労働者を雇い入れたときは、必要な安全衛生教育を行う必要がある(労働安全衛生法第59条第1項)。 | ||||
(4) | 労働者災害補償保険法上の注意点
労働者災害補償保険においては、業務が原因である災害については、業務上の災害として保険給付の対象となる。 したがって、自宅における私的行為が原因であるものは、業務上の災害とはならない。 |
4 | その他在宅勤務を適切に導入及び実施するに当たっての注意点 |
(1) | 労使双方の共通の認識
在宅勤務の制度を適切に導入するに当たっては、労使で認識に齟齬のないように、あらかじめ導入の目的、対象となる業務、労働者の範囲、在宅勤務の方法等について、労使委員会等の場で十分に納得のいくまで協議し、文書にし保存する等の手続きを踏むことが望ましい。 |
(2) | 業務の円滑な遂行
在宅勤務を行う労働者が業務を円滑かつ効率的に遂行するためには、業務内容や業務遂行方法等を文書にして交付するなど明確にして行わせることが望ましい。また、あらかじめ通常又は緊急時の連絡方法について、労使間で取り決めておくことが望ましい。 |
(3) | 業績評価等の取扱い
在宅勤務は労働者が職場に出勤しないことなどから、業績評価等について懸念を抱くことのないように、評価制度、賃金制度を構築することが望ましい。また、業績評価や人事管理に関して、在宅勤務を行う労働者について通常の労働者と異なる取扱いを行う場合には、あらかじめ在宅勤務を選択しようとする労働者に対して当該取扱いの内容を説明することが望ましい。 |
(4) | 通信費及び情報通信機器等の費用負担の取扱い
在宅勤務に係る通信費や情報通信機器等の費用負担については、通常の勤務と異なり、在宅勤務を行う労働者がその負担を負うことがあり得ることから、労使のどちらが行うか、また、事業主が負担する場合における限度額、さらに労働者が請求する場合の請求方法等については、あらかじめ労使で十分に話し合い、就業規則等において定めておくことが望ましい。 |
(5) | 社内教育等の取扱い
在宅勤務を行う労働者については、OJTによる教育の機会が得がたい面もあることから、労働者が能力開発等において不安に感じることのないよう、社内教育等の充実を図ることが望ましい。 |
5 | 在宅勤務を行う労働者の自律
在宅勤務を行う労働者においても、勤務する時間帯や自らの健康に十分に注意を払いつつ、作業能率を勘案して自律的に業務を遂行することが求められる。 |
京都労働局長 殿
情報通信機器を活用した在宅勤務に関する労働基準法第38条の2の 適用について |
平成16年2月5日付け京労発第35号(別紙甲)をもってりん伺のあった標記について、下記のとおり回答する。
貴見のとおり。
ただし、例えば、労働契約において、午前中の9時から12時までを勤務時間とした上で、労働者が起居寝食等私生活を営む自宅内で仕事を専用とする個室を確保する等、勤務時間帯と日常生活時間帯が混在することのないような措置を講ずる旨の在宅勤務に関する取決めがなされ、当該措置の下で随時使用者の具体的な指示に基づいて業務が行われる場合については、労働時間を算定し難いとは言えず、事業場外労働に関するみなし労働時間制は適用されないものである。
厚生労働省労働基準局長 殿
情報通信機器を活用した在宅勤務に関する労働基準法第38条の2 の適用について |
今般、在宅勤務に関し、下記のとおり労働基準法第38条の2の適用に係る疑義が生じましたので、御教示願います。
次に掲げるいずれの要件をも満たす形態で行われる在宅勤務(労働者が自宅で情報通信機器を用いて行う勤務形態をいう。)については、原則として、労働基準法第38条の2に規定する事業場外労働に関するみなし労働時間制が適用されるものと解してよろしいか。
(1) | 当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること。 |
(2) | 当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと。 |
(3) | 当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと。 |
電話(代表) | 03-5253-1111(内線5356,5366) |
夜間直通 | 03-3502-1599 |