母子及び寡婦福祉法(昭和三十九年法律第百二十九号)第十一条第一項の規定に基づき、母子家庭及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する基本的な方針を次のように定めたので、同条第四項の規定により告示する。
平成十五年三月十九日
目次 | |
はじめに | |
第1 | 母子家庭及び寡婦の家庭生活及び職業生活の動向に関する事項 |
第2 | 母子家庭及び寡婦の生活の安定と向上のため講じようとする施策の基本となるべき事項 |
第3 | 都道府県等が策定する母子家庭及び寡婦自立促進計画の指針となるべき基本的な事項 |
はじめに |
1. | 方針のねらい |
(1) | 母子家庭等施策の必要性 近年の離婚件数の増加に伴い、母子家庭及び父子家庭(以下「母子家庭等」という。)、特に母子家庭が急増している。現実の母子家庭の置かれている生活状況を見ると、子育てと生計の担い手という二重の役割を一人で担うこととなった直後から、その生活は大きく変化し、住居、収入、子どもの養育等の面で様々な困難に直面することとなる。 母子家庭の母の場合、就業経験が少なかったり、結婚、出産等により就業が中断していたことに加え、事業主側の母子家庭に対する理解不足、求人の際の年齢制限の問題などが重なり、その就職又は再就職には困難が伴うことが多い。また、保育所入所待機児童が増加する中で、就業のため子どもを保育所に預けることには困難が伴い、就業しても低賃金や不安定な雇用条件等に直面することが多い。さらに、約8割の離婚母子家庭は養育費が支払われていない。こうしたことなどから、その85%が就業しているにもかかわらず、平均年収は229万円と低い水準にとどまっているのが現状である。過去と比較しても、臨時・パートタイムの形態での就労の割合が高まっている。また、子どもの養育や教育のために収入を増やそうと複数の職場で就業したり、より良い就業の場の確保のために自らの職業能力を高めるなど、懸命な努力をする中で、中にはその努力が結果として健康面の不安を招き、生活をより困難にしている場合もある。 こうしたことから、特に母子家庭については、子育てをしながら、母が収入面・雇用条件面等でより良い就業に就き、経済的に自立できることが、母本人にとっても、子どもの成長にとっても重要なことであり、自立支援策の必要性が従来以上に高まっている。 一方、父子家庭については、既に家計の担い手として就業していた場合が多いことから、その平均年収は422万円となっている。しかしながら、子どもの養育、家事等生活面で多くの困難を抱えており、子育てや家事の支援の重要性が非常に高い。 また、離別世帯の子どもの養育においては、その養育に対する責務は両親にあり、離婚により変わるものではない。子どもを監護しない親からの養育費は、子どもの権利であるにもかかわらず、その確保が進んでいないことから、親の子どもに対する責務の自覚を促し、子どもを監護しない親が、その責務を果たしていくべきことを社会全体が当然のこととする気運を醸成していくことが重要となっている。 さらに、母子、父子を問わず親との離死別は、子どもの生活を大きく変化させるものであり、そのことが子どもの精神面に与える影響や進学の悩みなど、子どもの成長過程において生じさせる諸問題についても、十分な配慮が必要とされている。また、現代において、母子家庭等は決して特別な家庭ではないことから、社会全体が、こうした家庭を家族形態の一類型としてとらえ、理解を深めていく必要がある。 このように、母子家庭等及び寡婦の抱えている困難は、多くが複雑に重なり合っており、総合的な支援策を展開する必要がある。その際には、施策の実施主体は、精神面で支えを必要としている場合や養育能力や生活能力が欠けている場合において適切な援助を行うなど、生活について幅広く支援する仕組み、個々の世帯の抱える問題に対し相互に支え合う仕組みを活用するなど、きめ細かな配慮をすることが求められており、そうした観点から、母子家庭等に身近な自治体において、母子寡婦福祉団体やNPO等様々な関係者と緊密に連携しながら、きめ細かな施策を展開することが重要である。 |
(2) | 母子寡婦福祉対策の見直しと国の基本方針 我が国における母子寡婦福祉対策は、昭和27年に戦争未亡人対策から始まり50年以上の歴史をもっているが、(1)で述べたような母子家庭等及び寡婦を巡る状況の変化に応じて、母子寡婦福祉対策を根本的に見直し、新しい時代の要請に的確に対応すべく、平成14年11月22日、「母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律」(以下「改正法」という。)が成立した。 改正法においては、母子家庭等及び寡婦に対する「きめ細かな福祉サービスの展開」と「自立の支援」に主眼を置いている。離婚後等の生活の激変を緩和するために、母子家庭等となった直後の支援を重点的に実施するとともに、就業による自立を支援するため、福祉事務所(社会福祉法(昭和26年法律第45号)に定める福祉に関する事務所をいう。以下同じ。)を設置する地方公共団体において、母子自立支援員が総合的な相談窓口となり、児童扶養手当等各種母子家庭等の支援策に関する情報提供、職業能力の開発、就職活動の支援を行う体制を整備しつつ、(1)子育てや生活支援策、(2)就業支援策、(3)養育費の確保策、(4)経済的支援策を総合的に展開することとしている。また、国が母子家庭及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する基本的な方針を策定することとなっている。 さらに、経済情勢の変化により母子家庭の母の就業が一層困難となっていることにかんがみ、母子家庭の母の就業の支援に関する特別の措置を講じるため、平成15年7月17日、「母子家庭の母の就業の支援に関する特別措置法」(以下「特別措置法」という。)が、平成20年3月31日までの時限立法として成立した。 特別措置法においては、政府が国会に対し、母子家庭の母の就業の支援に関する施策の実施状況等を報告すること、本基本方針及び自立促進計画について、母子家庭の母の就業の支援に特別の配慮がなされたものとすること等となっている。 本基本方針は、改正法や特別措置法の趣旨も踏まえつつ、父子家庭も含めた母子家庭等施策の展開の在り方について、国民一般に広く示すとともに、都道府県(指定都市及び中核市を含む。)、市(特別区を含む。)及び福祉事務所を設置する町村において自立促進計画を策定する際の指針を示すこと等により、母子家庭等施策が総合的かつ計画的に展開され、個々の母子家庭等に対して効果的に機能することを目指すものである。 |
2. | 方針の対象期間 この基本方針の対象期間は、平成15年度から平成19年度まで5年間とする。 |
第1 | 母子家庭及び寡婦の家庭生活及び職業生活の動向に関する事項 以下の記述は、特に記載がないものは、厚生労働省の「全国母子世帯等調査(平成10年11月1日現在)」による。 |
1. | 離婚件数の推移等 離婚件数は、昭和39年以降毎年増加し、昭和58年をピークに減少したが、平成3年から再び増加している。平成13年の離婚件数は、約28万6千件(厚生労働省「人口動態統計」)で、過去最高である。 近年の離婚増加の原因については、事情は様々であるため、一概には言えないが、その一つには、離婚に対する考え方の変化や、女性の経済的自立の進展等近年の社会情勢の変化により、以前に比べ、離婚の障害が少ない環境になってきていることが考えられる。 |
2. | 世帯数等の推移 |
(1) | 母子世帯数は、954,900世帯(平成10年)で、平成5年の789,900世帯に対し、20.9%の増加となっている。母子世帯になった理由では、平成5年に比べ死別によるものが減少する一方、離婚や未婚の母の増加により生別世帯が増加し、構成割合では生別世帯が全体の79.9%(平成5年73.2%)となっている。 |
(2) | 父子世帯数は、163,400世帯で、平成5年の157,300世帯に対し、3.9%の増加となっている。また、父子世帯では、生別世帯が64.9%(平成5年65.6%)となっている。 |
(3) | 寡婦の数は、1,128,900世帯(平成10年)で、平成5年の1,175,600世帯に対し、4.0%の減少となっている。母子世帯における生別世帯の増加を反映して、寡婦においても、生別によるものが37.0%(平成5年32.6%)となっており、生別の割合が増加している。 |
(4) | 母子世帯の増加により、児童扶養手当の受給世帯も増加しており、平成11年度末664,382世帯、12年度末708,395世帯、13年度末には759,194世帯となっており(「厚生労働省福祉行政報告例」)、毎年約5万世帯程度増加している。 |
3. | 年齢階級別状況等 |
(1) | 母子世帯となった時の母の平均年齢は34.7歳で、そのときの末子の平均年齢は5.4歳となっている。 母子世帯の母の平均年齢は、40.9歳(平成5年41.7歳)で、末子の平均年齢は、10.9歳(平成5年12.0歳)となっており、母子とも平均年齢が低下している。 |
(2) | 父子世帯となった時の父の平均年齢は40.2歳で、そのときの末子の平均年齢は7.8歳となっている。 父子世帯の父の平均年齢は、46.4歳(平成5年44.2歳)で、前回調査よりも平均年齢は高くなっている。また、末子の平均年齢は13.0歳となっている。 |
(3) | 寡婦の平均年齢は56.3歳(平成5年55.7歳)で、年齢分布としては「60〜64歳」の階層が35.6%で最も多くなっている。 |
4. | 住居の状況 |
(1) | 母子世帯の持ち家率は、全体で26.6%であるが、死別世帯が66.7%、生別世帯は17.3%と両者に大きな違いがみられる。持ち家以外については、借家25.9%(平成5年33.4%)、公営住宅 16.6%(平成5年12.6%)、実家等での同居13.6%(平成5年7.3%)等となっている。平成5年に比べると、持ち家と借家の割合が減少した一方、公営住宅と同居の割合は増加した。 |
(2) | 父子世帯の持ち家率は、58.0%となっている(平成5年56.4%)。持ち家以外については、借家14.7%(平成5年20.5%)、公営住宅 8.2%(平成5年7.0%)、実家等での同居11.4%(平成5年5.9%)等となっている。平成5年に比べると、持ち家及び公営住宅の割合にはあまり大きな変化はなかったが、借家の割合が減少、同居の割合が増加した。 |
(3) | 寡婦の持ち家率は、59.8%となっている(平成5年62.7%)。持ち家以外については、公営住宅 10.1%(平成5年7.8%)、借家16.1%(平成5年19.6%)、実家等での同居4.5%(平成5年2.6%)等となっている。 |
(4) | 離婚による転居の状況をみると、父子家庭では、転居しなかった場合が71%、母子家庭では転居した場合が67%となっており、母子家庭が離婚直後に住居面の変化を伴う場合が多い(厚生省「平成9年度人口動態社会経済面調査報告 離婚家庭の子ども」)。 |
5. | 就業状況 |
(1) | 母子家庭の母の84.9%(平成5年87.0%)が就業しており、就業している者のうち常用雇用者が50.7%(平成5年53.2%)、臨時・パート(臨時・パートタイムの形態で就労する者をいう。以下同じ。)が38.3%(平成5年31.3%)等となっている。母子家庭になる前に就業していた者の割合は63.5%(常用雇用者40.4%、臨時・パート39.2%)であり、母子世帯になる前に就業していなかった母のうち、79.2%が現在就業している(常用雇用者47.2%)。従事している仕事の内容は、事務、サービス業がそれぞれ約2割となっている。勤務先事業所の規模は、6〜29人のものが最も多く、300人未満の規模までで全体の8割となっている。 また、母子世帯の母で就業に資する資格を有している割合は、33.6%となっており、平成5年に比べても若干増えているが、資格が現在の仕事に役立っていると回答した者の割合は53.7%に過ぎず、むしろその割合は低下している。 さらに、現在就業している者のうち、約3割が転職を希望しているが、その理由は「収入がよくない」が約6割となっている。 |
(2) | 父子世帯の父は、父子世帯になる前にはほとんど(95.9%)が就業しており、その後も大半(89.4%)(平成5年93.0%)が就業している。就業している者のうち常用雇用者が75.3%(平成5年71.7%)、事業主が13.7%(平成5年18.5%)、臨時・パートが6.9%(平成5年3.1%)等となっている。 |
(3) | 寡婦は66.7%が就業しており、就業している者のうち常用雇用者が42.6%、臨時・パートが33.9%等となっている。 |
(4) | 母子世帯になった直後に仕事を探していた時の問題点として、「年齢制限があった」「子どもが小さいことが問題とされた」「求人自体が少なかった」ということが多く挙げられている(日本労働研究機構「母子世帯の母への就業支援に関する調査結果の概要(平成13年10月発表)」)。このように、母子世帯の母は、求職するに当たって、比較的年齢が若いうちは小さい子どもを抱えていることが問題とされ、子どもがある程度成長した頃には年齢制限に直面している。 |
6. | 収入状況 |
(1) | 母子世帯の平成9年の年間の平均収入金額(就労収入、生活保護法に基づく給付、児童扶養手当、養育費等すべての収入の金額)は(平均世帯人員3.16人)、229万円となっている(平成4年215万円)。 |
(2) | 父子世帯の平成9年の年間の平均収入は(平均世帯人員3.45人)、422万円となっている(平成4年423万円)。 |
7. | 養育費の取得状況 離婚母子家庭のうち養育費の取決めをしている世帯は、35.1%である。養育費の取決めをしていない理由としては、「相手に支払う意志や能力がないと思った」という者が最も多く(61.1%)、「取決めの交渉をしたがまとまらなかった」11.3%、「取決めの交渉が煩わしい」6.5%等となっている。 また、養育費の受給状況については、現在も受給している者が20.8%、受けたことがある者が16.4%、受けたことがない者が60.1%となっている。養育費を現在も受けている又は一度でも受けたことがある者の養育費の1世帯当たりの平均額は、月額53,200円である。 離婚の際又はその後、子どもの養育費の関係で相談をした者は、全体の54.1%であるが、そのうち最も多い相談相手が親族であり(41.9%)、家庭裁判所 28.6%、弁護士 11.0%、自治体窓口等 6.6%等となっている。 |
8. | 子どもの状況等 |
(1) | 母子世帯における子ども(20歳未満の児童)の総数は、約152万人となっている。1世帯当たりの子どもの数は、「1人」が45.0%(平成5年41.9%)、「2人」が38.5%(平成5年42.9%)となっており、平均1.59人となっている。 就学状況別にみると、小学生のいる世帯が315,500世帯で最も多く(26.5%)、平成5年に比べて、その割合が増加している。 小学校入学前児童のいる母子世帯は189,200世帯(母子世帯総数の19.8%)、該当する児童の数は221,500人となっている。子どもの養育の状況については、保育所の割合が52.6%と最も高いものの、平成5年に比べると、その割合が減少し、親本人、親以外の家族等の割合が増加している。 |
(2) | 父子世帯における子ども(20歳未満の児童)の総数は、約26万人となっている。1世帯当たりの子どもの数は、「1人」が44.5%(平成5年42.5%)、「2人」が35.5%(平成5年41.0%) となっており、平均は1.57人となる。 就学状況別にみると、小学生、中学生、高校生のいる世帯がそれぞれ約2割となっている。 小学校入学前児童のいる父子世帯は14,700世帯(父子世帯総数の9.0%)、該当する児童の数は15,300人となっている。子どもの養育の状況については、母子世帯同様、保育所の割合が50.3%と最も高いものの、平成5年に比べると、保育所の割合が減少し、親本人、親以外の家族等の割合が増加している。 |
9. | その他 |
(1) | 公的制度等の利用状況 母子世帯及び父子世帯ともに、公的制度等を利用する割合はあまり高くない。その中で、比較的利用されているのは、公共職業安定所、福祉事務所、市町村福祉関係窓口である。 また、これまで公的制度等を利用したことがないもののうち、今後利用したい制度として、公共職業能力開発施設、公共職業安定所等の就業支援関係を挙げる割合が増加している。 | ||||||
(2) | 子どもについての悩み 子どもについて悩みがあるとの回答は、母子世帯で66.9%(平成5年64.4%)、父子世帯で65.7%(平成5年59.8%)となっている。悩みの内容については、母子世帯、父子世帯ともに、「教育・進学」についてが最も多く、母子家庭では「しつけ」、父子世帯では「食事・栄養」に関することがこれに次いでいる。また、母子世帯、父子世帯ともに、前回調査より悩みがある世帯が増加している。 | ||||||
(3) | 困っていること
| ||||||
(4) | 相談相手について 相談相手がありと回答があったのは、母子世帯、父子世帯、寡婦いずれも前回調査よりはその割合が増加しているが、母子世帯の81.1%、寡婦の74.2%に比べると、父子世帯では56.8%とその割合は低い。 |
10.まとめ |
(1) | 母子世帯及び寡婦の状況 母子世帯については、生別世帯の割合が増加しており、小さい子どもを抱えながら臨時・パートタイムの形態で就業している者も少なくなく、収入もかなり低い状況にある。養育費も大半が取得していない。その結果、家計について困っているとの回答が最も多くなっている。また、離婚により転居する割合が高い。 このように、母子世帯については、特に、子育てと仕事の両立、より収入の高い就業を可能にするための支援、養育費取得のための支援、生活の場の整備等が重要と考えられ、それらの必要性が従来以上に高まっている。 寡婦については、健康面で困っているとの回答が最も多いことから、日常生活面の支援等が重要と思われる。 |
(2) | 父子世帯の状況 父子世帯についても、母子世帯に比べてその数は少ないものの、離婚が増加する中で増加しており、また、生別世帯の割合が高くなっている。 父子世帯は、母子世帯に比べて、持ち家率が高く、また、父子世帯となる以前からほとんどの者が就業しており、その大部分は常用雇用者である。 父子世帯が困っていることとしては、「家事」が最も多くなっているが、公的制度等を利用する人はわずかであり、母子世帯に比べて相談相手なしという割合が高い。 こうしたことから、父子世帯については、特に、子育てと仕事の両立、家事の支援、及び相談機能の充実等が重要と思われる。 |
第2 | 母子家庭及び寡婦の生活の安定と向上のため講じようとする施策の基本となるべき事項 |
1. | 今後実施する母子家庭等及び寡婦施策の基本的な方向性 |
(1) | 国、都道府県及び市町村の役割分担と連携 母子家庭については、これまで児童扶養手当に大きくウェイトがかかっている施策を見直し、きめ細かな福祉サービスの展開と自立・就労の支援に主眼を置いて、(1)子育てや生活支援策、(2)就業支援策、(3)養育費の確保策、(4)経済的支援策を総合的に展開することとする。 その際、国、都道府県(指定都市及び中核市を含む。以下同じ。)並びに市(特別区を含む。)及び福祉事務所を設置する町村(以下「市等」という。)が、適切に役割を分担しながら、互いに連携することが必要である。 国は、母子家庭等及び寡婦施策に係る施策や制度の企画・立案を行う。また、効果的な施策の展開のための調査・研究を行ったり、母子家庭等及び寡婦施策に係る普及・啓発、また関係者の研修等を行う。さらに、都道府県が市等における母子家庭等及び寡婦施策を効果的かつ効率的に実施するための課題や方策の検討について、地域の実情に応じて支援する体制を整備するとともに、連絡会議等を通じて、都道府県や市等の自立促進計画、施策や取組について情報提供を行うなど、都道府県や市町村に対する支援を行う。 都道府県及び市等では、本基本方針に即して、「母子家庭及び寡婦自立促進計画」を策定すること等を通じて、地域の実情に応じて、計画的に母子家庭等及び寡婦施策を実施することが必要である。 都道府県は、母子家庭等就業・自立支援センター事業等自ら実施すべき施策を推進することが求められる。また、市等が母子家庭等及び寡婦施策を効果的かつ効率的に実施するための課題や方策を検討するに際して、地域の実情に応じて市等を支援するとともに、広域的な観点から、市町村が実施する就業支援や生活支援が円滑に進むよう、市等における自立促進計画の策定状況や各種施策の取組状況などについて情報提供を行うなど、市町村に対する支援を行うことが必要である。 市町村は、母子家庭等日常生活支援事業等自ら実施すべき施策を推進するとともに、住民に身近な地方公共団体として、母子家庭等及び寡婦に対し、相談に応じ、施策や取組について情報提供を行うことが必要である。平成14年8月に児童扶養手当の支給事務が市等に委譲されたことから、特に、市等では、児童扶養手当の支給と自立支援を一体的に行う重要な役割を担うことが求められる。 |
(2) | 相談機能の強化 改正法により、母子相談員の名称を母子自立支援員に改めるとともに、配置が市等にまで拡大され、業務も職業能力の向上と求職活動に関する支援が追加された。これにより、母子自立支援員は、母子家庭及び寡婦の抱えている問題を把握し、母子寡婦福祉団体等と連携し、その解決に必要かつ適切な助言及び情報提供を行うなど、母子家庭及び寡婦に対する総合的な相談窓口として重要な役割を担うことが求められる。また、地域における福祉の増進を図る児童委員においては、母子家庭等及び寡婦について相談に応じ、それぞれの抱える問題に応じて利用し得る制度、施設及びサービスについて助言し、問題の解決に努めること等が重要である。 市等は、児童扶養手当の支給と自立支援を一体的に行うため、母子自立支援員を適正に配置するほか、その資質の向上のための機会を提供すること等により、相談機能の強化を図ることが必要である。 |
(3) | 福祉と雇用の連携 母子家庭等及び寡婦の早期自立を図るためには、早期の段階においての支援が重要である。こうした観点から、母子家庭等及び寡婦を初期の段階で把握し、生活全般にわたり親身な相談に応じるとともに、経済的自立を図る上で必要な就業に関する情報や、就業する際の子育て支援など、福祉と雇用の施策の緊密な連携が不可欠である。そのため、国の労働部局と都道府県及び市町村、また、都道府県及び市町村の福祉部局と産業労働部局が緊密に連携することが求められる。 |
2. | 実施する各施策の基本目標 母子家庭等及び寡婦の自立を図るためには、(1)子育てや生活の支援策、(2)就業支援策、(3)養育費の確保策、(4)経済的支援策を総合的かつ計画的に推進することが不可欠であり、これを積極的に推進する。これにより、母子家庭等及び寡婦の収入状況、就業状況、養育費取得状況等の生活状況の好転を図る。 |
(1) | 子育てや生活の支援策 母子家庭等が、安心して子育てと就業・就業のための訓練との両立ができるよう、保育所への優先入所、保育サービスの提供、公営住宅の積極的な活用の推進等、子育てや生活の面での支援体制の整備を促進する。 また、地域の相互扶助による子育てや生活の面での支援を推進する。 |
(2) | 就業支援策 母子家庭及び寡婦が十分な収入を得ることができ、自立した生活をすることができるよう、職業能力向上のための訓練、効果的な職業あっせん、就業機会の創出等を実施するなど、就業面での支援体制の整備を促進する。 |
(3) | 養育費の確保策 母子家庭等の児童が必ず養育費を取得できるよう、養育費支払についての社会的気運の醸成、養育費についての取決めの促進を図るなど、養育費確保面での支援体制の整備を促進する。 |
(4) | 経済的支援策 母子寡婦福祉資金貸付金や児童扶養手当制度を利用しやすくするために、制度について積極的に情報提供を実施するほか、適正な貸付・給付事務の実施、関係職員に対する研修の実施等により、経済面での支援体制の整備を促進する。 |
3. | 母子家庭等及び寡婦の生活の安定と向上のために講ずべき具体的な措置に関する事項 |
(1) | 国が講ずべき措置
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(2) | 都道府県及び市町村が講ずべき措置に対する支援 都道府県及び市町村が以下の措置を講ずるに際しては、国は、母子家庭等及び寡婦が必要なサービスを適切に受けることができるよう母子自立支援員を含めた相談体制の整備、関係機関の連携を推進しながら、当該措置が効果的に実施されるよう必要な支援を講じていくものとする(実施主体について特に記載がない場合は都道府県及び市町村を指すものとする。また、対象について特に記載のない場合は母子家庭を対象とするものとする。)。
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(3) | 国会に対する報告 国は、母子家庭の母の就業の支援に関する施策の充実に資するため、毎年、国会に対し、母子家庭の母の就業の支援に関して講じようとする施策及びその実施状況を報告する。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(4) | 基本方針の評価と見直し
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(5) | 関係者等からの意見聴取 基本方針の見直しに当たっては、母子寡婦福祉団体、NPO、都道府県や市町村、母子生活支援施設関係者など、母子家庭等及び寡婦施策関係者からの意見を聴取するとともに、パブリックコメントを求める。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(6) | その他
|
第3 | 都道府県等が策定する母子家庭及び寡婦自立促進計画の指針となるべき基本的な事項 都道府県及び市等が、母子家庭及び寡婦自立促進計画を策定する場合には、次に掲げる指針を踏まえ策定することが適当である。 |
1. | 手続についての指針 |
(1) | 計画の期間 母子家庭及び寡婦自立促進計画(以下「計画」という。)の運営期間は、5年間とする。ただし、特別の事情がある場合には、この限りではない。 | ||||||||||||||||||||||||
(2) | 計画策定前の手続
| ||||||||||||||||||||||||
(3) | 基本計画の評価と次期計画の策定
|
2. | 計画に盛り込むべき施策についての指針 |
(1) | 母子家庭等及び寡婦の家庭生活及び職業生活の動向に関する事項 母子家庭等及び寡婦の家庭生活及び職業生活の動向に関する事項としては、1.(2)(1)で把握した問題点を記載する。 | ||||
(2) | 母子家庭等及び寡婦の生活の安定と向上のため講じようとする施策の基本となるべき事項 母子家庭等及び寡婦の生活の安定と向上のため講じようとする施策の基本となるべき事項としては、第2の1.を参考にしつつ、当該都道府県及び市等において今後実施する母子家庭等及び寡婦施策の基本的な方向性を記載する。 さらに、第2の2.を参考にしつつ、当該都道府県及び市等が計画に基づいて実施する各施策の基本目標を記載する。 | ||||
(3) | 福祉サービスの提供、職業能力の向上の支援その他母子家庭等及び寡婦の生活の安定と向上のために講ずべき具体的な措置に関する事項 (1)子育て支援、生活の場の整備、(2)就業支援策、(3)養育費の確保策、(4)経済的支援策、(5)その他の各項目について、(1)に記載した問題点を解消するために必要な施策として、次のものを記載する。
|
連絡先 厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課 母子家庭等自立支援室 母子係 直通電話 03−3595−3112 |