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7 母子保健対策について

(1) 健やか親子21について
 我が国の母子保健は、20世紀中の取組の成果として既に世界最高水準にあるが、妊産婦死亡や乳幼児の事故死について改善の余地があるなどの残された課題や思春期における健康問題、親子の心の問題の拡大などの新たな課題が生じている。また、小児医療や地域母子保健活動の水準の低下を防止する等、保健医療環境の確保についても対応すべき課題が多い。
 このような中、「健やか親子21」は、残された課題と新たな課題を整理し、21世紀の母子保健の取組の方向性を提示するものであると同時に、目標(値)を設定し、関係機関・団体が一体となって推進する国民運動計画であり、平成13年より、その取組が始まっている。(目標平成22年)
 「健やか親子21」は、21世紀の母子保健の主たる課題や、各課題に関する2010年の目標(値)、関係機関・団体等による国民運動の展開方法を具体的に提示していることが特徴であり、その達成に向け国民をはじめ、医療・保健・福祉・労働・教育・警察等の関係者、関係機関・団体がそれぞれの立場から寄与することが不可欠な内容を有している。
 専門団体や民間団体ごとの取組を、より効果的に推進するために、連絡・調整等を行うことを目的として「健やか親子21推進協議会(72団体:平成13年度末現在)」が設立されたことも、この事業の特徴である。これらの参加団体が中心となり、具体的に提示された事項の達成に向け、専門家・専門機関や民間機関として、積極的な推進が行われているところである。
 また、厚生労働省としても、引き続き、関係省庁との連携を図りつつ、全国大会の開催や、公式ホームページによる情報の収集と発信、推進協議会の取組への継続的な支援等により、国民的な運動の展開を図っていくこととしているが、都道府県、市町村においても自主的・積極的な取組により、多くの関係者による、更なる取組の推進をお願いしたい。

(2) 小児慢性特定疾患治療研究事業について
 本事業については、事業創設以来4半世紀が経過したところであり、昨年6月に「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会」よりご報告をいただき、この報告等も踏まえ検討しているところであるが、平成15年度予算案においては、制度の見直しは行わず、現行の制度により実施することとしており、慢性疾患児に対する支援策については、引き続き検討することとしている。
 今後も適宜状況をお知らせしたいと考えており、ご協力をお願いしたい。

(3) 周産期医療ネットワークの整備について
 妊産婦死亡、周産期死亡等のさらなる改善により安心して出産できる体制を整備するため、新エンゼルプランにおいて、総合周産期母子医療センターを中核とした周産期医療ネットワーク(システム)の整備を計画的に進めているところである。
 平成13年度における実績が人口規模の大きい都府県を中心に16都府県にとどまっていることから、現在、人口規模の小さい県については、ネットワークの中核となる総合周産期母子医療センターの設置基準の見直し等を検討しているところであり、地域の実状に応じた適正規模での整備を進める予定である。
 地域医療計画の改訂に際しては、周産期医療について計画に盛り込むとともに、平成16年度までに原則として各県に1カ所の総合周産期母子医療センターを整備し、これを中心とした地域周産期母子医療センター及び一般産科との母体及び新生児の搬送体制をはじめとする連携体制の整備をお願いする。
 また、周産期医療ネットワークの整備については、新エンゼルプランにおいて、計画的な整備を図ることとしているのに加え、昨年末(平成14年12月24日)決定された障害者基本計画に沿った重点施策実施5か年計画(平成14年12月24日)においても整備を図ることとされているのでご留意願いたい。

(4) 不妊専門相談センター事業の整備について
 不妊に悩む方々に的確な情報を提供し、専門的な相談に応じられる体制を地域において整備することが重要であることから、平成8年度から「生涯を通じた女性の健康支援事業」の一環として、不妊専門相談センター事業を実施しているが、平成15年度予算案においては36か所から42か所に補助対象の増を図ることとしている。
 本事業については、新エンゼルプランの中で計画的に整備すべき重点施策として位置づけられていることから、未設置の都道府県においては、不妊専門相談センターの実施事例(平成14年5月22日付け事務連絡)等を参考にしつつ、積極的な実施をお願いする。

(5) 乳幼児健康支援一時預かり事業について
 乳幼児健康支援一時預かり事業については、これまでも対象施設の拡大や施設整備へに補助制度の創設などを行ってきたところであるが、実施市町村は、250市町村(平成14年12月現在)にとどまっているところであり、地域の実情を把握した上で更なる取組をお願いしたい。
 特に、乳幼児健康支援一時預かり事業の需要があるにもかかわらず、本事業を計画していない自治体にあっては、積極的な取組をお願いしたい。
 また、複数の市町村での事業の実施や他市町村の児童の受け入れなど、地域の実情、需要に応じた対応についても配慮願いたい。

(6) 生殖補助医療について
 精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療(非配偶者間の生殖補助医療)のあり方については、平成10年10月より、旧厚生科学審議会先端医療技術評価部会の下に設置された「生殖補助医療技術に関する専門委員会」において検討が行われ、平成12年12月に、必要な制度整備が行われることを条件に、代理懐胎を除く精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療を認める報告書(「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のあり方についての報告書」)をとりまとめたところである。
 この報告書の要請を踏まえ、報告書の内容に基づく制度整備の具体化のための検討を行うことを目的として、厚生科学審議会生殖補助医療部会が設置され、平成13年7月16日(第1回)から平成15年1月9日(第22回)までの合計22回にわたる検討の結果、意見がまとまっていない部分が一部あるものの、検討が一巡したところである。
 これまでの検討結果に関して国民一般から広くご意見を募集しているところであり、ご意見を踏まえて今後さらに検討が進められる予定となっている。

(7) 「食育」等の推進について
 「少子化対策プラスワン」においても指摘されているとおり、@子どもの栄養状況の悪化、思春期やせに見られるような食生活の乱れなどの「食」に関する問題や、A10代の人工妊娠中絶、性感染症罹患率の増大などの思春期に関する問題、B不快なお産は、次の妊娠への障害につながるという指摘などの「お産」に関する問題に対し、正しい知識の普及を図ることなどが重要であることから、平成15年予算案において新規に計上したものである。
 国においては、食育指導指針の作成や厚生労働科学研究による研究の推進、「いいお産」をテーマにしたシンポジウムの開催に対する補助を行うほか、地方自治体に対し、子どもの栄養改善と食を通じた心の健全育成(「食育」)、思いやりのある行動がとれるようにし、望まない妊娠をなくすための思春期問題に関する理解の促進、安全で満足できるお産に関する知識の普及等に関し、先駆的・モデル的に実施する事業に対して予算補助を行うこととしたため、都道府県・市町村の創意・工夫をこらした事業の推進をお願いする。


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