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6.保育対策等について

(1) 待機児童ゼロ作戦の推進について
 都市部を中心に依然として保育所入所待機児童が多数発生しているところから、平成13年7月6日の閣議決定「仕事と子育ての両立支援策の方針」等に基づき、「待機児童ゼロ作戦」を進めているところである。
 このため国においては、昨年全国5地区において「これからの保育サービスの提供に関する会議〜待機児童ゼロ作戦等の推進に向けて〜」を開催し地方公共団体の取組事例を紹介したほか、「待機児童ゼロ作戦の推進について」(平成14年10月17日雇児発第1017001号通知)等をお示しし、待機児童解消に向けた積極的な取組をお願いしているところであるが、以下の点に留意の上、待機児童の解消や多様な保育需要への対応について、更なるご配慮をお願いしたい。
 待機児童ゼロ作戦等を計画的に推進していくためには、国、地方公共団体双方における密接に連携した取り組みが必要であることから、昨年に引き続き、待機児童ゼロ作戦等の推進に向けた会議の開催を予定しているほか、待機児童解消に向けた取組等についての調査を行うとともに、待機児童が多い市区町村に対してのヒアリングを実施したいと考えており、おって連絡するのでご協力をお願いしたい。
 また、今国会に提出を予定している児童福祉法改正において、待機児童数が一定以上の都道府県及び市町村に対して、待機児童の解消に関する計画策定の義務づけを盛り込むこととしている。

  ア  待機児童ゼロ作戦推進のための予算措置について
  (ア)  保育所運営費について
 平成15年度予算案においては、待機児童ゼロ作戦を推進するため、保育所受け入れ児童数を4.5万人増加することとしている。
  (イ)  保育所の整備について
 保育所の整備については、平成14年度補正予算案及び平成15年度予算案において、保育所受け入れ児童数の増大を図るための予算枠を確保しているところであり、待機児童解消に向けた保育所の創設、増築、分園の設置等を図るほか、新エンゼルプランに基づく多機能保育所の整備等、保育所整備について積極的な取組を図られたい。
  (ウ)  待機児童解消のための新たな取組等について
 平成15年度予算案においては、待機児童解消に向けた新たな取組として、特定保育事業を創設した。
 また、送迎保育ステーション事業及び家庭的保育事業の充実を図ることとしているほか、駅前保育サービス提供施設等設置促進事業及び認可化移行促進事業についても、必要な予算計上を行っているので、積極的な取組を図られたい。

  イ  新エンゼルプラン推進のための予算措置について
 新エンゼルプラン関連経費についても、低年齢児受け入れの拡大を図るほか、延長保育、休日保育、一時保育等についても必要な予算計上を行っているところである。
 各地方公共団体においては、それぞれの地域における保育ニーズを的確に把握し、計画的なサービス提供体制の整備に努め、地域住民のニーズに応えることができるよう保育施策の充実に積極的に取り組まれたい。

(2) 特別保育事業について
 保育所における特別保育事業については、待機児童ゼロ作戦や新エンゼルプラン等に基づきその推進を図ってきたところである。
 平成15年度予算案においては、国の役割として計画的に実施すべき事業について重点化を図り、必要な予算を計上しているところである。
 各都道府県・指定都市・中核市においては、管内市町村及び保育所が地域における多様な保育需要に対する積極的な取組を図ることができるよう、特段のご配慮をお願いしたい。
 主な事項は次のとおりである。
待機児童ゼロ作戦関係

(1)  特定保育事業の創設
 親の就労形態の多様化(パートタイム労働者の増大等)に伴う子どもの保育需要の変化に対応するため、3歳未満児を対象に週に2、3日程度、又は午前か午後のみ必要に応じて柔軟に利用できる保育サービスを創設する。
 具体的には、パート就労者が、必要な日時について月極で継続的に利用できる仕組みとすることとしている。
・対象児童数  11,100人
・補助単価(月額)  週2日程度 18,500円
 週3日程度  26,300円

<特定保育事業のイメージ図>

特定保育事業のイメージ図


(2)  送迎保育ステーション事業の拡充
 現在実施している保育所入所児童を保育所に送迎する事業に加え、
 ・放課後児童を夜間受入可能な保育所などに送る事業
 ・日中の子育て支援事業に送迎バスを活用することの容認
を行い、地域の需要に応じて市町村の創意工夫ある取組が可能となるようにすることとしている。

(3)  家庭的保育事業の充実
 子どもの保育需要に応じたサ−ビスの提供を行うため、利用日数等について、従来の毎日利用する形態以外に週3〜4日利用、あるいは1日の利用時間が6時間程度まで条件を緩和するとともに、家庭的保育者の支援体制の整備を図る観点から、保育所を活用して一体的に事業が実施できるように事業の充実を図ることとしている。
 また、連携保育所の保育者数の要件について、3人未満に拡大を図ることとしている。

新エンゼルプラン関係

 新エンゼルプランに基づく各事業については、着実に推進を図ることとしており、延長保育、一時保育などの一部事業については、取組状況を踏まえ、さらに目標値を超えた予算を計上している。
 なお、休日保育については、件数払い方式に移行し、効果的な事業の実施が図られるようにすることとしているところである。

<平成14年度> <平成15年度案>
(1)延長保育の推進 10,000か所  → 11,500か所
(2)休日保育の推進 450か所  → 500か所
(3)地域子育て支援センターの整備 2,400か所  → 2,700か所
(4)一時保育の推進 3,500か所  → 4,500か所

 一方で、限られた財源の中で、効果的に事業を実施していくために、乳児保育促進事業については、ベテラン保育士の確保など乳児保育の実施条件が厳しい民営保育所に補助対象を重点化するとともに、乳児保育の設備的な実施体制が整ってきたことから、乳児保育環境改善事業を廃止することとしている。

 また、障害児保育事業については、昭和49年度に創設依頼相当の年数が経過していることから、市町村において、これまでの事業の蓄積も生かしながら、地域の実情に応じた取組が行えるよう、地方交付税によ  り対応することとしている。
 なお、保育所において、障害児保育の環境を整えるために追加的・臨時的に生じる設備の設置等に必要な経費については、引き続き補助を行うこととしている。
 指定都市・中核市においては、こうした趣旨を踏まえ、引き続き障害児保育の積極的な取組が行われるようお願いしたい。また、都道府県においては、管内市町村に対する助言をお願いしたい。

(3) 保育所への入所の円滑化の見直しについて
 保育所への入所の円滑化については、「保育所への入所の円滑化について」(平成10年2月13日児発第73号・児保第3号)により実施されているところであるが、先般、会計検査院より、当該制度の実施に関し改善の処置要求がなされたこと、また、財務省からも保育所入所の円滑化について適正化を図ることとして平成15年度予算案の内示があったことを受け、以下の内容により上記通知の改正を行うこととしているので、ご留意願いたい。

  ア  定員内保育
 保育の実施は定員の範囲内で行うことが原則であることについて、再度周知徹底を図る。

  イ  定員の見直し
 現行通知では、定員を超えて保育の実施を行っている状況が恒常的に亘る場合には定員の見直し等に積極的に取り組むこととしているが、「恒常的に亘る場合」の基準を明確化する。
 具体的には、「恒常的に亘る」とは、「過去の3年度間常に定員を超えており、各年度の年間平均在所率が120%以上の状態」であることを明示する。
 これにより、平成15年度において、定員の見直し等を実施していただくこととなるが、平成16年度以降の定員の見直し等に係る基準については、平成15年度の定員の見直し等の状況を踏まえ、再度検討を行う予定であるので、ご留意いただきたい。

  ウ  定員変更の留意点
 定員の見直しに当たり、都道府県知事は、あらかじめ地域の保育需要の見通し等に関し、市町村長の意見を求めることとする。

(4) 児童福祉施設最低基準の一部改正等について
 保育所の整備充実については、従前よりご協力いただいているが、保育所を建物の2階以上に設置する事例の増加や建築・防災技術の向上等を踏まえ、保育所の防火・避難基準を改正する児童福祉施設最低基準の一部を改正する省令(平成14年厚生労働省令第168号)を制定し、同省令は本年1月1日より施行されているところである。
 これについては、「児童福祉施設最低基準の一部改正について」(平成14年12月25日雇児発第1225008号)によりお示ししているところであるので、ご留意の上、今後の保育所整備の推進にご協力願いたい。
 なお、認可外保育施設指導監督基準についても、児童福祉施設最低基準の改正に準じ、改正を行ったところであり、「「認可外保育施設に対する指導監督の実施について」の一部改正について」(平成14年雇児発第1225009号)によりお示ししているところであるので、十分留意されたい。

(5) 各種会議の報告等への対応について
 各種会議の報告等において提言されている幼稚園と保育所の関係、調理室必置義務及び保育所の運営に係る経費等の負担の在り方の各論点についての厚生労働省の考え方は次のとおりである。各地方公共団体におかれても、これらの考え方についてご理解いただき、特段のご配慮、ご協力をお願いしたい。

  ア  幼稚園と保育所の関係について
 保育所と幼稚園は、それぞれが整備充実を図る中で、施設の共用化や資格の相互取得の促進等、地域の実情に応じた弾力的な設置・運営が可能となるよう連携を図っている。両制度の一元化ではなく、地域において全ての児童の健全育成を図るという観点から両者の連携の強化を図る方向で施策を進めるべきと考えており、こうした連携に関する地域独自の工夫による具体的な事例の収集・紹介を進めることとしている。各地方公共団体におかれては、連携事例の提供にご協力願いたい。
 なお、平成15年度において、幼稚園教諭資格所有者が保育士資格を取得しやすくするための措置を行うこととしている。

  イ  調理室必置義務について
 安全衛生面はもとより、食事を通じて子どもの健やかな育成を図るためには、きめ細かな対応が必要であり、また、乳児保育、延長保育等多様な保育ニーズへの対応という観点から、調理室の設置は必要と考えている。
 なお、平成15年度において、余裕教室に保育所を設置する場合において調理室を兼用するなど、安全性等が確保される場合には、保育所の設置が可能となるよう措置することとしている。

  ウ  保育所の運営に係る経費等の負担の在り方について
 保育所の整備は、少子化対策の中核をなすものであり、今後の少子化対策を進めていく中で引き続き強化すべき分野の一つであることから、保育所運営費負担金等の一般財源化は適当でないと考えている。

(6) 保育所の規制緩和について
 保育所については、従前より、設置主体制限の撤廃、賃貸方式の認容、分園方式の導入、短時間勤務保育士の導入等の規制緩和を行い、地域の保育需要に柔軟に応じられる体制の整備に努めてきたところである。これらの規制緩和措置を受けた保育サービスの提供に当たっては、各地方公共団体においてご協力いただいているところであるが、規制緩和の趣旨をご賢察の上、引き続いてのご協力とより一層の積極的な対応をお願いしたい。

(7) 保育士資格の登録事務処理について
 児童福祉法の一部を改正する法律(平成13年法律第135号。以下「改正法」という。)により、厚生労働大臣の指定する保育士を養成する学校その他の施設を卒業した者又は都道府県知事が行う保育士試験に合格した者は、保育士となる資格を有する者とされ、都道府県知事の登録を受けることにより、保育士となることとされた。
 保育士登録事務については、登録申請者の便宜及び都道府県における事務の効率化の観点から、保育団体、保育士養成施設団体等との連携・協力の下で、登録事務処理センターが設置され、都道府県からの委託を受けて全国的に同一水準で登録事務が行えるよう準備をしてきたところである。
 登録事務の内容については、都道府県と登録事務処理センターとの委託契約で定めることとなるが、国としては、短期間に相当数の保育士登録申請が予測されることから、平成15年5月から申請の受付を開始し、改正法施行日(平成15年11月29日)以降、円滑に保育士登録証の交付ができるよう推進したいと考えている。
 ついては、保育士登録に関する手数料条例の制定、登録申請に係る周知等、登録事務の円滑な実施についてご配慮をお願いしたい。


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