戻る

3.児童虐待防止対策について


 
 児童に対する虐待の防止施策については、これまで、発生予防、早期発見・早期対応、被虐待児童への適切な保護と自立に向けた支援などを柱として、医療、保健、福祉が一体となった施策を講じる努力をしているところであるが、なお全国の児童相談所に寄せられる児童虐待に関する相談件数は増え続けているなど、本問題は早急に対応すべき社会的課題である。

(1) 総合的・継続的支援の重要性について
 児童虐待を防止し、児童の健全な心身の成長、自立を促していくためには、児童がおかれたその時々の状況に応じた的確な支援を切れ目なく地域において講じていくことが重要である。
 このため、平成15年度予算案における児童に対する虐待の防止施策については、平成14年度おいて充実を図った里親制度等の各種事業の一層の進展を図るとともに、発生予防にも重点をおいた新たな施策の実施に必要な費用を確保したところである。
 また、こうした総合的・継続的支援を実現するためには関係行政機関はもとより医療機関、社会福祉法人、学校、警察、保健所等、さらには民生委員・児童委員等やNPOなどの地域の民間機関も含めた支援を行う各主体にまず児童虐待問題を自らの問題として主体的に取り組んでいただく意識を持っていただくとともに、児童本人に対する支援は医療、 保健、福祉など幅広い専門的見地が必要であることや児童のみならず家族をはじめとする本人を取り巻く環境調整も求められることなどに鑑み、幅広い関係機関間の緊密な協力体制の整備にご配意いただきたい。
 ついては、児童虐待対策の中心として位置付けられている児童相談所の体制強化をはじめ、児童虐待の発生予防に関する事業の実施、児童の保護とアフターケアの充実などに留意の上、総合的な取組を推進していただくようお願いする。

(2) 児童相談所の体制整備等について
  ア  地方交付税における児童福祉司等の配置
 児童相談所において児童虐待等の対応の中心となる児童福祉司の配置については、各自治体において児童虐待への迅速な対応ができるよう積極的な配置にご努力いただいているところであるが、施設入(退)所後の家族支援や在宅指導等に充分な対応が出来ていない状況も見受けられるので、児童福祉司の増員はもとより、心理判定員等の心理系職員の増員についても積極的な対応をお願いする。
 なお、児童福祉司の配置が地方交付税積算基礎の基準に満たない自治体が見受けられるので、該当する自治体におかれては児童相談体制について検討を行い、必要な措置を講じて頂くことをお願いする。
 平成14年度の地方交付税積算基礎における児童福祉司の員数は標準団体当たり2人増の21人であり、さらに、平成15年度についても増員の要望を行っているので御了知願いたい。

  イ  児童虐待への適切な対応の徹底
 児童相談所における児童虐待への対応は、各自治体の積極的な取組と関係者のご努力とご協力により着実に進展しているが、引き続き、不断の努力をお願いするとともに、児童相談所が緊張感を緩めることなく下記の点に留意し対応するよう指導をお願いする。

(基本的留意事項)
1.迅速な対応
2.子どもの安全確保の優先
3.組織的な対応
4.機関連携による援助
5.家族の構造的問題としての把握
   (「子ども虐待対応の手引き」より抜粋)

  ウ  児童虐待対応業務のIT化の促進
 平成15年度予算案において、児童相談所の専門的業務にIT(インフォメーション・テクノロジー)を活用し、
(1)  増え続ける児童虐待相談を迅速かつ効率的に処理するとともに、勘と経験に基づいた方針決定に科学的な判断基準(リスクアセスメント等)を提示するシステムを導入する
(2)  また、児童福祉司のエキスパート養成のための教育・訓練プログラムを併せてシステム化する事業を3か所の自治体でモデル事業として実施することとしているので、事業の実施に向けた検討をお願いする。

(3) 児童虐待防止のためのネットワークについて
  ア  児童虐待防止のためのネットワーク
 児童虐待の防止については、関係機関の緊密な協力連携体制の整備が重要であることを踏まえ、市町村(特別区を含む)域での取組を一層充実していくこととしているところである。このため、児童虐待防止の機能を持つ市町村域での関係機関・団体等のネットワークの全国的な設置状況を把握し、より効果的な施策の検討に資するため、昨年度に引き続き調査のご協力をお願いした。
 その結果、平成14年6月現在において、児童虐待防止の機能を持つ市町村域でのネットワークの設置数は、全国3,240市町村のうち、設置済み702か所(前年度506か所)、計画中323か所(前年度314か所)で、指定都市などの都市部を中心に設置が進んでいるが、しかしながら、未だに約2,000市町村では計画もされていないので、市町村域でのネットワークの設置について、管内市町村及び関係機関、団体等への一層積極的な指導をお願いする。

  イ  保健と福祉の連携
 近年、児童虐待防止対策を総合的に推進する上で、とりわけ保健、医療、福祉等の各分野を通じての連携が重要である。
 このため、保健所、市町村の保健師等と児童相談所等関係機関等の組織的な連携・協力を推進していただくため、「地域保健における児童虐待防止対策の取組の推進について」(平成14年6月19日健発第0619001号厚生労働省健康局長並びに雇児発第0619001号厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)においてお願いをしたところである。
 今後とも、都道府県、市町村における保健と福祉の一層の連携が図られるよう、積極的な取組をお願いする。

  ウ  児童虐待の発生予防に関する事業の実施
  (ア)  保健師等資格を有する人材の活用について
 児童虐待防止対策は、発生予防、早期発見・早期対応を含め、その対応には高度の専門性が必要である。このため、保健医療に精通し、母子保健活動に従事した経験のある保健師、助産師資格を有する者等に対し、児童虐待に関する最新の情報並びに虐待予防に必要な支援技術に関する専門研修を都道府県、指定都市において行う事業を創設した。この受講終了者を市町村における相談事業など、児童虐待の予防対策等に活用して、対策の一層の推進を図ることとしたので積極的な取組をお願いする。
  (イ)  児童館における新たな子育て支援事業について(再掲)
  (ウ)  市町村地域子育て支援推進強化事業等について(再掲)

(4) 児童虐待防止法等の見直しに向けた取組について
 児童虐待問題に対応するためには、発生予防、早期発見・早期対応、保護・支援・アフターケアという一連の取組及び福祉関係者のみならず、医療、保健、教育、警察など地域の関係機関や地域住民の幅広い協力体制の構築が不可欠である。また、「児童虐待の防止等に関する法律」の附則においても「児童虐待の防止等のための制度については、この法律の施行後3年(即ち本年の11月)を目途として、この法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする」と規定されている。
 このような状況を踏まえ、医療、保健、福祉、法律等の専門的見地から制度全般にわたり解決すべき課題について整理し検討を行うこととし、昨年12月より、社会保障審議会児童部会に児童虐待の防止等に関する専門委員会を設置し、検討を行っているところである。

(5) 子どもの虹情報研修センターについて
 子どもの虹情報研修センター(横浜市戸塚区)は、児童虐待問題や非行等の思春期問題への対策の一環として、インターネット等を利用した情報の収集・提供、児童相談所や児童家庭支援センターなどの専門機関からの電話等による専門的な相談、虐待問題等対応機関職員の研修及び児童福祉施設における臨床研究と連携した研究などを通じて、関係機関職員の専門性の向上を図ることを目的として設置され、昨年7月より児童相談所や児童福祉施設等関係機関職員を対象とした各種専門研修を実施しているところである。
 今後さらに、研修及び研究、相談体制等の充実を図ることとしている。各都道府県におかれては、当該各種研修への参加のための引き続き、特段の配慮及び社会福祉法人等への指導をお願いしたい。

(6) 里親制度のさらなる充実について
 里親制度は、養育に欠ける児童を温かい愛情と正しい理解を持った家庭の中で養育する、児童の健全育成を図る上で大変有意義な制度である。
 このため、平成14年10月より「里親の認定等に関する省令」及び「里親が行う養育に関する最低基準」を定め、専門里親の創設、親族里親の創設、短期里親の運用の弾力化を実施したところである。
 さらに、里親に対する支援を強化するために、里親支援事業、里親の一時的な休息のための援助(レスパイト・ケア)を実施しているところであり、積極的な取組をお願いする。

(7) 地域小規模児童養護施設の拡充について
 児童養護施設に入所している児童については、早期の家庭復帰を通じた自立支援を図る観点から家庭環境の調整に取り組んでいるところであるが、長期にわたり家庭復帰が見込めない児童を対象に、地域社会の民間住宅等を活用して近隣住民との適切な関係を保持しつつ、家庭的な環境の中で養育を実施するため、平成12年度に地域小規模児童養護施設を創設したところである。
 被虐待児童が他者との関係性を回復させることや愛着障害に陥った児童等のケアをするためには、家庭的な環境の中での養護を実施する必要があり、地域小規模児童養護施設の果たす役割は大きくなっている。
 そのため、平成15年度予算案において、地域小規模児童養護施設を20か所から40か所へと拡充することとしたので、積極的な取組をお願いする。

(8) 児童家庭支援センターの拡充について
 児童家庭支援センターは、地域に密着した相談・支援を強化するため、虐待や非行等の問題につき、児童、母子家庭、地域住民などからの相談に応じ、必要な助言を行うとともに、保護を要する児童又はその保護者に対する指導及び児童相談所等との連携・連絡調整等を総合的に行っているところである。
 近年の児童虐待等児童をめぐる環境は一段と厳しさを増しており、また、地域における子育て支援の必要性等から、地域に密着した相談・支援体制をより強化するため、平成15年度予算案において、児童家庭支援センターを50か所から70か所へと拡充することとしたので、積極的な取組をお願いする。
 なお、年間の相談実績が少ないところも見受けられるので、児童相談所と連携をとりながら積極的な取組をお願いしたい。


トップへ
戻る