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薬事制度の見直し等について

I はじめに

○ 薬事法は、医薬品・医療用具等の品質、有効性及び安全性確保の観点から、企業が行う製造・販売等に関して必要な規制を行う法律。
 ⇒ 国際的な整合性や、科学技術の進展、企業行動の多様化等、社会経済情勢の変化を踏まえ、逐次適切な見直しが必要。

○ ライフサイエンスの時代=21世紀への対応

・ 医薬品分野では、バイオ・ゲノムといった技術を駆使した創薬が数多く開発。
・ 医療機器・医療用具の分野においても、様々な産業技術・科学技術の応用による多種多様な製品が提供。
・ また、IT化の進展等に伴い、国民生活も、産業活動も、そして行政活動も、より一層世界と直結したものとなり、今後ますます求められる国際的整合性。

○ 21世紀のニーズに合わせた薬事制度の見直し

・ 施行以来、数次に渡る改正を経て、現在の制度体系が構築されるに至っている薬事法について、制度の大幅な見直しを行う。
・ 具体的には、医療用具に係る安全対策、生物由来製品への対応、製造承認制度の見直し、を中心に、21世紀のニーズを踏まえた、制度改正を行えるよう、現在、詳細の検討を行っているところ。

II 見直しに向けての視点

○ 医療用具に係る安全対策の抜本的な見直し
 = 医薬品以上に多様な技術・素材が用いられる医療用具の特性に対応

○ 「バイオ・ゲノムの世紀」に対応した安全確保対策の充実
 = 生物由来製品の安全確保に向けての法的整備は、急務の課題

○ 市販後安全対策の充実と、製造承認制度の見直し
  = 企業の安全対策責任の明確化と、国際整合性を踏まえた製造承認制度の見直し

○ 「より安全」で「より有効」な製品を「より早く」承認できる体制の構築
 = 特殊法人改革等を踏まえた、現在の三元的審査体制の見直し

III 見直しに向けての具体的な問題意識

1 医療用具に係る安全対策の抜本的な見直し

○ メス・ピンセットから画像診断装置、ペースメーカーに至る各種医療用具への規制について、リスクの違いに着目した「メリハリ」をつけられないか

○ リスクの低い医療用具について第三者認証制度の導入を図ることにより、国の審査をリスクの高い医療用具へ重点化することができないか

2 「バイオ・ゲノムの世紀」に対応した安全確保対策の充実

○ 高い有効性が期待されるものの、感染リスク等を完全に否定することができない生物由来製品につき、薬事法上明確に位置付け、対策を講じるべきではないか

○ 「生物由来」という特性に応じて、製造から使用に至る一貫した品質管理・安全確保体制を導入し、より安全なものを国民に提供できる仕組みがつくれないか

3 市販後安全対策の充実と、製造承認制度の見直し

○ 製造行為に対する規制に着目した現行の承認・許可制度について、市販後安全対策をより一層重視した制度へと再構築できないか

○ 産業構造の変化や国際化の進展という、企業を巡る一層の環境変化を踏まえ、「企業形態の弾力化への対応」と「安全対策の充実強化」とが両立できる仕組みとすべきではないか

4 「より安全」で「より有効」な製品を「より早く」承認できる体制の構築

○ 厚生労働本省、審査センター、(認)医薬品機構及び(財)医療機器センターに分立した承認審査関係事務を、より効率的に再編成できないか

【参考】特殊法人等整理合理化計画(平成13年12月19日閣議決定)(抄)

〔医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構〕
●廃止した上で、国立医薬品食品衛生研究所医薬品医療機器審査センター等と統合し、新たに医薬品等に係る研究開発業務、医薬品調査等業務及び救済給付業務を行う独立行政法人を設置する。

IV 医療用具に係る安全対策の抜本的な見直し

[現状]

1 医療用具とは

(1) 疾病の診断、治療又は予防等を目的とする一定の器具器械等については、医療用具として、医薬品同様、保健衛生上の観点から、薬事法による規制の対象。

(2) 現行薬事法による主な規制は以下のとおり。

(1) 製造業に係る許可制度
(2) 個別品目ごとの製造承認制度(リスクの低い一定の品目については、承認不要)
(3) 販売業に係る届出制度(リスクの低い一定の品目の取扱いについては、届出不要)

2 医薬品との比較で見た場合の医療用具の特徴

(1) 医薬品との共通点

 医薬品同様、疾病の治療等に用いられるものであるから、保健衛生上の観点からの規制が行われる必要があること。

(2) 医薬品との相違点

 メス・ピンセットから画像診断装置、ペースメーカーに至るまで、実に様々な品目があり、製造技術・素材や使用形態・リスクの面において、医薬品以上の多様性を有する場合があること。

[見直しの方向性 (案)]

保健衛生上の観点からみて、医薬品同様の対策を講じる方向で見直すべきもの
 ⇒ 製品開発のための臨床試験等を行うに当たってのルール(GCPの法制化等)

○ 医薬品と異なり、医療用具の特性を踏まえた対策を講じる方向で見直すべきもの
 ⇒ 低リスクの医療用具に係る第三者認証制度の導入 等

【参考】第三者認証制度:
 基準認証等の制度において、自己確認を基本としつつ、補完的に第三者の確認を義務付ける仕組み。EUにおいて導入済み。

○ 見直しに当たっては、製造段階から市販後安全対策に至るまで、リスクの高い医療用具への対応に重点化していくことを検討。

V 「バイオ・ゲノムの世紀」に対応した安全確保対策の充実

[現状]

1 生物由来製品とは

(1) 細胞、組織、血液等に由来する原材料を用いて製造される医薬品・医療用具。従来から知られたものとしては、例えば、血液製剤、ワクチン、遺伝子組換製剤等。

(2) 化学的合成品たる医薬品と比較した場合の主要な特徴(例示)

(1) その原料が生物組織等であることから、未知の感染性因子を含有している可能性が否定できない場合があること
(2) 不特定多数のヒトや動物から採取した組織・血液等を用いて製品化するため、製品ごとに個々のドナー(提供者)の影響を受けやすいこと
(3) 細胞・組織等としての機能を維持するに当たって、感染因子の不活化処理等に限界がある場合があること

2 生物由来製品に対する現行薬事制度における対応

 現行薬事制度においては、生物学的製剤基準等の一定の上乗せ基準は定められているものの、生物由来製品の特性に応じた法的位置付けや対応については、必ずしも十分にはなされていないという指摘がある。

[見直しの方向性 (案)]

○ 生物由来製品を薬事法上明確に位置付け、医薬品・医療用具等の分類にかかわらず、生物由来であるという共通の特性に応じた規制体系を構築

○ 製造から販売、使用に至る現行の法規制を洗い直し、生物由来であることによる特性等に着目して一定の上乗せ規制等を行うべき事項を整理し、法的に整備
 【例】リスクの高い生物由来製品について、遡及調査が可能な仕組みを導入。

VI 市販後安全対策の充実と、製造承認制度の見直し

[現状]

1 現行の医薬品・医療用具製造業に対する制度体系について

(1) 現行の「承認・許可制度」は、医薬品・医療用具の開発者が、自ら製造所を保有して製品化することを前提とした、製造所単位の制度体系。

(2) 一方、製品が市場に流通して以降は、その製品の安全性についてのフォローが求められるが、現段階では、企業側の市販後体制が必ずしも十分ではない、という指摘もある。

2 現行の承認・許可制度に対する主な問題意識

(1) 現行では「製造行為」への制度的ウェイトが大きいが、市販後安全対策が十分に行える組織体制になっているか、という点に、もっと着目すべきではないか?

(2) 国際的な同時研究開発が進む中で、欧米の許認可制度(=販売行為に着目した制度)との乖離には、無視できない問題があるのではないか?

(3) 産業構造の変化に対応し、分社化や製造の委受託を行おうとする企業が許認可を受けにくい構造となっているのではないか?

(4) 輸入品について、製造所が海外にあることにより、問題が発生した場合の迅速な対応に困難を来たす場合があるのではないか?

[見直しの方向性 (案)]

○ 「製造承認制度」から「元売承認制度(仮称)」へ

 国際化、技術の高度化、産業の効率化、企業の分社化、といった企業を巡る環境の諸変化を前提として、様々な組織・形態の企業が、その特徴を活かした製品を提供できるようにするための、許認可の在り方の抜本的な見直し

○ 市販後安全対策の充実

 「製造行為」そのものと同様に、あるいはそれ以上に重要な「市販後の安全対策」につき、許認可制度の見直しに当たって、より重視する方向で強化

VII 「より安全」で「より有効」な製品を「より早く」承認できる体制の構築

[現状]

1 「承認制度」の主体たる国に求められていること
 = 「より安全」で「より有効」な製品を「より早く」承認すること

2 承認審査体制のこの間の歩み

(1) 承認審査に係る業務については、長い間、旧厚生本省のみにおいて行われてきたところであるが、この間、各種基準やノウハウの整備等を踏まえ、(認)医薬品機構、(財)医療機器センター及び国立衛研医薬品医療機器審査センターといった組織に、逐次、外部化してきたところ。

(2) このような経緯を経て、厚生労働本省は、承認審査制度に係る企画立案、薬事・食品衛生審議会への諮問と、承認に向けての最終判断等を行うこととなっている。

(3) 各組織における必要人員の増等も踏まえ、現在では、平均的な承認事務処理期間が欧米並みの1年程度となるに至っている。

[見直しの方向性 (案)]

○ 承認に係る最終的な判断等、「国が自ら行うべき」業務等は引き続き、厚生労働本省において実施
【例】審査関連業務に係る企画立案、薬事・食品衛生審議会に対する諮問、承認についての最終判断

○ 審査関連業務のうち、「国レベルでのアウトソーシングが可能」な業務については、現在の「審査関係3組織」の機能を統合し、より効率化した体制を構築することを検討

○ リスクの低い医療用具に係る第三者認証制度の導入等を通じ、国レベルの審査においては、がんなどの重篤かつ予後の悪い疾患に対する医薬品や、リスクの高い医療用具に係る審査につき、より重点化や迅速化ができないか、検討。

○ 企業の安全対策責任をより重視していくことに伴い、国レベルの安全対策関連業務をより迅速かつ効果的に実施するための体制についても、検討。

VIII その他

IX 新たな血液事業に係る法的枠組みの制定について

○ 今後の血液事業の在り方については、平成12年12月15日に中央薬事審議会企画・制度改正特別部会(当時)において取りまとめられた報告書「新たな血液事業等のあり方について」を踏まえ、同報告書において意見が分かれた事項を中心として、現在、関係者間の意見調整を行っているところ。

○ 厚生労働省としては、さらに意見調整を重ね、可能な限り早期に関係者の合意を得て、法制化を図る方針。

○ なお、血液製剤の安全確保対策については、生物由来製品に共通する特性に着目し、今回の薬事制度見直しにより充実を図る。

X 当面のスケジュール(案)

「薬事制度の見直し」及び「新たな血液事業の法的枠組み」については、関係者・関係機関等との調整が得られれば、今通常国会に、予算非関連法案として、提出予定

○ なお、施行スケジュールについては、関係機関において遺漏なく事務が取り扱えるよう、所要の準備期間を念頭に置いて、施行する予定。

○ 特殊法人改革等を踏まえた「新たな承認審査体制等の構築」については、特殊法人改革のスケジュール等を踏まえ、また、「薬事制度の見直し」における施行スケジュール等も勘案しつつ、実施する予定。

以上


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