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関連用語の解説

(1) エンパワメント

 エンパワメントは、アメリカにおける公民権運動との関わりの中で、社会福祉の分野で取り入れられた理念です。社会的に不利な状況に置かれた人々の自己実現を目指しており、その人の有するハンディキャップやマイナス面に着目して援助をするのではなく、長所、力、強さに着目して援助することです。このような援助方法により、サービス利用者が自分の能力や長所に気づき、自分に自信がもてるようになり、ニーズを満たすために主体的に取り組めるようになることを目指します。エンパワメントの理念においては、援助者はサービス利用者と同等の立場に立つパートナーということになります。

(2) ノーマライゼーション

 ノーマライゼーションは、障害のある者が障害のない者と同等に生活し活動する社会を目指す理念であり、そのためには、生活条件と環境条件の整備が求められます。この理念は、1950年代にデンマークの知的障害児の親の会の運動に端を発し、その後、スウェーデンやアメリカにおいて発展しましたが、障害者に関わるのみでなく、社会福祉のあらゆる分野に共通する理念です。

(3) 生活の質(QOL)

 従来のリハビリテーションは日常生活動作(ADL)の向上を目指していましたが、最近は生活の質を高めることが目標になっています。障害者にとっての生活の質とは、日常生活や社会生活のあり方を自らの意思で決定し、生活の目標や生活様式を選択できることであり、本人が身体的、精神的、社会的、文化的に満足できる豊かな生活を営めることを意味します。

(4) リハビリテーション

 1982年の国連・障害者に関する世界行動計画において、「リハビリテーションとは、身体的、精神的、かつまた社会的に最も適した機能水準の達成を可能とすることによって、各個人が自らの人生を変革していくための手段を提供していくことをめざし、かつ、時間を限定したプロセスである。」と定義されています。
 リハビリテーションの4分野である医学的リハビリテーション、職業リハビリテーション、教育リハビリテーション、社会リハビリテーションのうち、ここでは特に、障害者の社会生活力を高めるための訓練・指導・援助・支援に重点をおいて、「社会リハビリテーション」を意識しています。

(5) 社会参加

 社会参加は、「完全参加と平等」、「機会均等化」、「ノーマライゼーション」の目標や理念を実現するための具体的実践といえます。社会参加を実現するためには、本人の努力とともに、社会参加を可能とする生活条件・環境条件の整備が必要とされます。この社会参加の中には、教育、経済、政治から、スポーツ、芸術、文化活動に至るまで、地域における幅広い活動が含まれます。

(6) 社会生活力

 社会生活力とは、Social Functioning Ability (略称:SFA)の日本語訳であり、1986年に国際障害者リハビリテーション協会(RI)社会委員会において採択された定義の中で明記されました。
 その定義は「社会リハビリテーションとは、社会生活力を高めることを目的としたプロセスである。社会生活力とは、様々な社会的な状況の中で、自分のニーズを満たし、一人ひとりにとって可能な最も豊かな社会参加を実現する権利を行使する力を意味する。」というものです。すなわち、障害のある者が地域社会の中で利用できる社会資源を積極的に活用することにより、主体的に生活を切り開いていき、社会参加し、周りの人々の意識も変えて行くような力を意味しています。

(7) 生活モデル

 サービス対象者の病理、弱さ、マイナス面に着目し、専門職者が自らの方針に基づき、それらの改善を目指して処遇する従来の援助方法を「医学モデル」といいますが、この医学モデルに対置する概念として「生活モデル」という用語が、1970年代から主にアメリカにおいて使われ始めました。生活モデルは、専門職者が主導するサービス提供方法(援助方法)ではなく、サービス対象者の生活状況や社会生活を全体として把握し、対象者の主体性、選択性を尊重した援助方法です。

(8) ケア(介護等)

 この「ガイドライン」における「ケア」は、看護、介護、介助のほか、リハビリテーションや医療等も包括し、障害のある者の社会参加を支援する全てのサービスを含む広い概念として使用しています。
 「看護」は療養上の世話と診療の補助(「保健師助産師看護師法」による)を意味し、「介護」は障害者等に対して食事、排泄、入浴などの日常生活行為への手助けを行うこと(「社会福祉士及び介護福祉士法」による)を意味します。
 介護と介助については、「介護」は行為を総合的に表現し、「介助」は一つの行為への手助けであると区別される場合もあります。また、自らの判断で手助けを頼める人に対しては「介助」、痴呆性高齢者等の援護的要素が強くなる人に対しては「介護」と使い分けることもあります。

(9) ケアマネジメント

 ケアマネジメントとは、主に地域社会の中で継続的なケアを提供する際に、サービス利用者の生活全般にわたるニーズと公私にわたる社会資源との間にたって、複数のサービスを適切に結びつけ、調整を図り、総合的かつ継続的なサービス提供を確保する機能です。
 1970年代中頃にアメリカにおいて、ソーシャルワークの援助理論・方法の一つとして使用されるようになりました。その頃は「ケースマネージメント」と表現されていましたが、最近は、利用者(ケース)をマネジメントするのではなく、必要とされるケアをマネジメントするという意味から、「ケアマネジメント」という用語が使われています。

(10) ニーズ(要望)

 ニーズとは福祉保健サービス等の必要性を量質ともに示す概念であり、この指針では、障害者及びその家族が日々の生活の中で「困っていること」、「望んでいること」をニーズととらえています。

(11) ケア計画

 ケアマネジメントの過程の一つとして「ケア計画」を作成します。総合的な評価によって明らかにされた複合的なニーズに対応するために、利用(及び家族)ができること、公的サービス、民間サービス、インフォーマルサポート等、社会資源の全てを活用し、ケア計画を作成します。「ケアプラン」、「援助計画」、「サービス提供計画」という場合もあります。

(12) 障害者ケアマネジメント従事者(ケアマネジャー)

 ケアマネジメントは通常、チームアプローチで行いますが、チーム内の調整、サービス機関間の調整、利用者とサービスとの調整等を担当するのが障害者ケアマネジメント従事者です。障害者ケアマネジメント従事者は、そのために必要とされる知識や技術を有する者であれば、チームの中のどの専門職がなってもいいのですが、身体障害者のケアマネジメントにおいては社会福祉の専門職を想定しています。なお、リハビリテーションチームにおける「調整役」の役割とも共通しています。

(13) 当事者相談員等

 当事者相談員とは、ピアカウンセラーとも言われ、同じ体験をした者が相談・支援にあたることが効果的であるとの視点に立ち、相談・支援を行う者です。例えば、身体障害者福祉法第12条の3に規定されている身体障害者相談員がこれに該当します。このほかにも障害者に関わる相談・支援を職業として行う者もいます。市町村障害者生活支援事業においても、当事者相談が必須の事業内容に位置づけられています。


照会先;社会・援護局障害保健福祉部
     企画課障害認定係 工藤・高宮
       TEL 03-5253-1111(内3022)
       FAX 03-3502-0892


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