(1) ケアガイドラインの必要性
「身体障害者ケアガイドライン」は、市町村等が障害者への福祉・保健・医療サービス等を実施していく上での理念、基本原則、実施方法を明らかにし、これにより、市町村等における障害者への福祉・保健・医療サービスが一定水準を有するものとなり、一人ひとりの障害者がどこに住んでいても、普通の暮らしができるようになることを目的としています。
すなわち、地域における障害者の生活を支え、自立と社会参加を促進するためには、介護サービス等必要なサービスの量的整備と併せて、これらのサービスを、本人の意向を最大限尊重しながら、一人ひとりに対して、的確に提供していくことが必要です。本ガイドラインは、ケアマネジメントを希望する人たちに、複合的なニーズを満たすためのサービスを的確に提供していくためのものです。
(2) 障害者福祉に求められる視点
障害者が基本的人権をもつ一人の人間として地域の中で、市民として普通の生活を営んでいける社会を構築していくことが必要であり、このため障害者福祉に求められる基本的な考え方としては「ノーマライゼーション」、「生活の質(QOL)」、「リハビリテーション」があります。その際、サービス利用者が自分の問題を解決するにあたり、自分が主体者であることを自覚するように支援し、利用者自身が自分に自信がもてるように本人の長所、強さを伸ばしていく、いわゆるエンパワメントの視点が求められます。
ノーマライゼーションの視点とは、障害者が可能な限り、家族や市民が生活する地域社会の中で共に生活できるように支援することです。そのためには、住まい、働く場及び活動の場などを整備するとともに、介護・移動・コミュニケーション等の各種サービスを用意し、障害者の地域生活を支援することが必要です。同時に、地域住民間での社会的連帯感を醸成し、互助、共助のネットワークをつくりあげることも大切です。
(2) 生活の質(QOL)
生活の質の視点とは、障害者が日常生活や社会生活のあり方を自らの意思で決定し、生活の目標や生活様式について、よりよい水準のものとしていけるようにすることであり、また、本人が身体的、精神的、社会的、文化的に満足できる豊かな生活を実現できるよう支援していくことです。
(3) リハビリテーション
障害者の地域生活を支援するサービスを提供していく際に考慮すべきリハビリテーションの視点とは、本人が自分の能力を伸ばし、これを活用し、主体性、自立性、選択性をもって生活できるように支援することです。
特に、様々な社会的な状況の中で自分のニーズを満たし、一人ひとりにとって可能な最も豊かな社会参加を実現する権利を行使する力、すなわち社会生活力を高める視点からの支援が重要です。
(1) 自立と社会参加の支援
従来、障害者の自立は、一般的には経済的自立、職業的自立を中心に考えられてきましたが、現在では、介護等(以下「ケア」という。)を必要とする重度障害者も、一人ひとりが責任ある個人として主体的に生きることを意味しています。
自立と社会参加を促進するための基礎的な要件は、(1)日常的な生活が営める能力を回復、保持すること、(2)その生活を維持していくために必要な生活条件を整備すること、(3)参加の機会を可能とする環境条件を整備すること、です。
これらを可能とするためには、各種サービスの充実のほか、情報・建物等へのアクセスの改善、文化、レクリエーション、スポーツ等の機会の均等化を図るとともに、何より地域の住民の障害者に対する正しい理解が不可欠です。
(2) 地域における生活の継続の支援
慢性疾患や事故等により、人生の中途で重度障害者となり、家族に重い介護負担が生じる場合が増加しています。このような場合や、幼少児期からの障害で家族が介護していた場合でも、家族の高齢化や疾病により介護ができなくなったときは、従来、ともすれば施設入所中心の考え方がなされてきましたが、サービス供給体制の整備や必要な介護等のサービスの利用により、地域社会において質の高い生活が継続できるように支援することが重要です。その際、在宅サービスと施設サービスを総合的に利用できることが必要です。
(3) 主体性、自己決定の尊重・支援
障害者のニーズに対応するケアの提供は、一人ひとりの障害者の考え方、生活様式に関する好み等を尊重しながら、本人が自分の能力を発揮できるよう支援することが必要です。サービス提供の各過程において、情報を本人と共有し、その中から本人(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)が望むものを、本人(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)の自己決定に基づき実施することが重要です。
このような考え方は新しい概念であるエンパワメントにも共通するものです。援助者と利用者は上下関係ではなく、同じ土俵に立つという視点、いわゆるパートナーシップが基本となっています。
前項2の基本理念に基づきケアを実施していくに当たり、特に地域において複合的なニーズを有する障害者の生活を支援していくためには、以下のような原則によりサービスを提供していくことが必要です。その際、本人の意向(要望)を理解することから、意志疎通を図っていきます。
(1) 総合的なニーズの把握とその評価
地域での生活を総合的に支援していくためには、利用者の身体的側面や精神的側面ばかりでなく、日常生活面や文化活動、余暇活動などの社会生活面を含めた総合的なニーズの把握と評価を実施しなくてはなりません。
そのためには、援助者には利用者(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)と意志疎通を図るなど、信頼関係を樹立する専門的援助技術が必要です。
また、日常生活面でのニーズを的確に把握するためには、相談窓口における相談だけでは十分でない場合があり、家庭訪問して、実際の生活の場の中でニーズを把握することが必要です。ただし、家庭訪問については事前にその必要性を十分に説明し、利用者(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)の了解を得て実施します。以上のような対応は、利用者の主体性、自己決定の尊重につながるとともに、サービス提供上のパートナーシップの観点からも不可欠です。
(2) ケアの目標設定と計画的実施
相談を受けて利用者の総合的なニーズを把握し、その結果に基づき、利用者及び各種専門職によって構成されるチーム(ケアチーム)で話し合いのうえ、具体的なケアの目標を設定し、計画的にケアを実施していきます。提供したケアが障害者の生活状況の安定・改善につながっているかどうかを定期的に見直し、必要に応じてケアの内容変更を行う、ケアの継続性が求められます。
(3) 福祉・保健・医療等の総合的なサービスの実現
障害者が地域で生活するためには福祉、保健、医療等のサービスが総合的に提供されなければなりません。これまで、福祉は福祉事務所等、保健については保健所又は保健センター、医療は病院と、サービスの提供機関が異なるために、サービスを利用しにくい状況がありました。在宅生活をしている重度障害者は、複合的なニーズをもっており、これらのニーズをできる限り円滑かつ総合的に満たすことが肝要です。
そのためには、サービス提供機関を調整(コーディネート)し、サービスが総合的に提供できる仕組みにしなければなりません。
(4) プライバシーの尊重
複合的なニーズに対応する総合的なサービスを提供するためには、ケアチームによる対応(チームアプローチ)が必要とされることが多く、その場合には、情報の共有化が前提条件となります。この点について、利用者(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)に十分説明し、了解を得ておくことが必要です。
地域で生活していく障害者の生活を支援するためには、ソーシャルワーカー(社会福祉士等)、介護福祉士、医師、保健師、看護師、理学療法士、作業療法士、当事者相談員等のほか、民生委員、ボランティア等の支援を活用していくこともありますが、その際に、利用者及びその家族のプライバシー保護が特に重要な課題となります。
チームで検討した各種データ及び資料については、厳重に管理するとともに、チーム会議(ケア会議)やサービス提供を通して知り得たことは、他に絶対口外してはならないことを十分に徹底する必要があります。
障害者の福祉に関する相談窓口として第一にあげられるものは、市町村における障害者担当窓口や福祉事務所です。これまで保健については保健所又は保健センター、医療については医院又は病院と分かれ、福祉、保健、医療等の窓口が一本化されていないために、不便な状況にあったことは否めません。
地域における生活支援を充実する観点から、障害者が生活している地域において総合的な相談・生活支援・情報提供機能をもつ拠点の整備が必要とされています。
相談窓口において、各種相談の受付をし、そこで解決できるニーズに対してはそこで解決します。相談窓口のみでは解決できない介護、住宅改造、福祉用具、訪問リハビリテーション、社会参加等の複合的ニーズを満たすためには、各専門職種によるチームアプローチが必要とされることが多いので、このような場合には、ケアマネジメントが必要になります。
また、相談を待つだけではなく、市町村が実施する事業等を通じて、ケアマネジメントを必要とするような障害者の把握に努めることも重要です。
なお、相談窓口が十分活用されるためには、日頃から相談窓口におけるサービス内容の広報を行い、休日・夜間等の窓口の開設など利用者の利便性を考慮するとともに、関連機関との密接な連絡体制を整備・強化し、各機関からの紹介や依頼を受けた場合には、利用者(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)の了解を得て訪問するなど、柔軟で積極的な対応が必要です。
(1) 「ケアマネジメント」とは
ケアマネジメントは、地域社会の中で、継続的なケアを提供する際に、障害者が自己選択できるサービスの一つです。ケアマネジメント利用者の意向や生活全般にわたるニーズと、公私にわたる様々な社会資源の間に立って、複数のサービスを適切に結びつける調整を図りつつ、総合的かつ継続的なサービスの供給を確保する機能です。
このケアマネジメントの理念は、生活の主体者であるサービス利用者やその家族が「望んでいる暮らし、生活」を実現するための「ケア」をマネジメントするものであって、援助者が「利用者の暮らし」をマネジメントするものではありません。
また、利用者の主体性、自立性、選択性を基本とし、決して専門職だけで決定するのではなく、ケアマネジメントのすべての過程において、利用者(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)の意向を十分に生かした上で支援することが大事です。このような意味において、障害者を対象とするケアマネジメントは専門家主導のモデルではなく、利用者主体の「生活モデル」でなければなりません。
(2) 障害者ケアマネジメント従事者の業務
障害者ケアマネジメント従事者は、ケアマネジメントの全過程に中心的に関わる者あり、具体的な業務は次のとおりです。
(3) 障害者を対象とするケアマネジメントの留意点
障害者を対象としてケアマネジメントを実施していく場合には、高齢者のニーズと異なる障害者に特有のニーズにも十分に対応できるものでなければなりません。身体介護、家事援助については、高齢者も障害者も共通な面が多いといえますが、高齢者と障害者との間での大きな違いは、年齢、家族構成が挙げられ、社会参加に必要な支援や障害の種類及び程度に応じたニーズにも対応できるものでなければなりません。
また、高齢障害者は厳しい状況におかれることが多いので、在宅の高齢重度障害者へは、特段の配慮が必要です。
障害と共に人生を生きていくということは、自分の人生の目標に向かって、なにを生きがいとし、どのように社会参加し、生活していくかということです。
従って、障害者を対象とするケアマネジメントは、教育、就労への参加を支えるとともに、「社会参加」を視点に入れたきめ細かいものでなければなりません。
また、障害者のニーズは、個々人の望む人生によって異なりますが、ニーズが欠けているものを補うというようなマイナスのイメージではなく、障害者の希望する生活を実現するための支援としてとらえることが重要です。
なお、複合的なニーズをもっていても、本人自身がサービスの調整や確保ができる場合には、ケアマネジメントの対象とはなりません。自分でサービスの調整や確保ができることはセルフケアマネジメントといわれ、障害者の自立や主体性の観点からは、セルフケアマネジメントできることが望ましいでしょう。また、当事者相談員がサービスに関する情報を提供したり、精神的な支援をすることも有効です。さらに、当事者相談員がケアチームに参加し、支援・助言することも有効です。
(4) ケアマネジメント実施機関と関係諸機関との連携
障害者については、市町村が福祉サービスの実施機関であることから、ケアマネジメントは、基本的には市町村で行うことになります。この場合、適格な機関等に委託することも考えられます。
ケアマネジメントは地域で生活している障害者に対して、各種にわたる様々なサービスを総合的に提供していくために、地域に現存している以下のような幅広い領域の関係諸機関と連携していくことが必須です。
[関係諸機関]
市町村、福祉事務所、総合リハビリテーションセンター、身体障害者更生相談所、障害者生活支援センター、点字図書館・点字出版施設等視覚障害に関わる施設、聴覚障害者情報提供施設、医療機関、訪問看護ステーション、保健所、保健センター、身体障害者更生施設、身体障害者授産施設、身体障害者療護施設、肢体不自由児通園施設、難聴幼児通園施設、在宅介護支援センター、訪問介護事業所(ヘルパーステーション)、日帰り介護サービス提供施設(デイサービスセンター)、社会福祉協議会、公共職業安定所、地域障害者職業センター、障害者雇用支援センター、養護・盲・聾学校、保育所、幼稚園、民生・児童委員、身体障害者相談員、障害者団体など
障害者を対象とするケアマネジメントに関係する社会資源には、次のようなものがあります。
ケアマネジメントはいくつもの過程を経て行われます。通常、(1)利用者の確認が行われ、次に、(2)その利用者に必要なニーズを明らかにします。この過程で、利用者の生活全般にわたる情報が把握されます。ここまでがケア計画作成前のいわゆる準備に当たります。集められた情報をもとに、(3)利用者(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)の意向を踏まえ、ケア計画が作成されます。ついで、(4)ケア計画の実施、(5)実施状況の再点検と、ニーズの変化等に伴う再評価の必要性の確認が行われます。再評価が必要な場合は(2)ニーズの把握に戻ります。
これらの過程を経て、ケアマネジメントの(6)終了となります。
このようなケアマネジメントの過程を図示すると以下の通りです。
なお、ケアマネジメントのすべての過程において、利用者に対して実施する内容について詳しく、わかりやすく伝え、了解をとることが原則です。
これについては、障害者ケアマネジメント従事者と利用者の間で口頭で実施する場合と、インフォームド・コンセントと言われる同意書をとる場合とが考えられます。
次に、各過程毎の内容を説明します。
(1) 利用者の確認
ケアマネジメントの対象となる利用者を確認することです。通常、ケアを必要とする障害者やその家族又は本人が信頼する人及び関係機関からの相談が総合相談窓口にきます。(様式1:相談受付票)この段階では、ケアマネジメントが必要な利用者(複数のサービスを総合的かつ継続的に提供する必要がある利用者)かどうかという点が重要になります。複合的なニーズがあり、複数の専門職種が対応する必要があると判断され、かつ利用者がケアマネジメントを希望する場合に、ニーズの把握へと移行します。
(2) ニーズの把握
総合相談等によりケアマネジメントを必要性があると確認された後、利用者の現状を正確に把握する必要があります。その場合、相談窓口においての面接相談だけでは現状を的確に認識することは困難です。利用者(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)及び関係者の現状を適切に把握するため、利用者の現在の生活の場において詳しく話を聞き、現状を把握し、ニーズを確認する必要があります。
しかし、プライバシーの場である家庭を訪問することについては、利用者(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)に家庭訪問の必要性を説明して、了解を得る必要があります。
また、利用者(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)のニーズを総合的に把握することが重要です。利用者(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)の日々の生活の中で困っていること、望んでいることを十分に把握して総合的に評価します。
ただし、本人の望んでいることと、ケアチームが必要と考えるニーズとが異なることがあります。また、本人がニーズを認識していない場合もあります。これらの場合には、ケアチームは必要な情報を提供するとともに、利用者本人と十分な話し合いをもち、お互いがニーズを正しく確認する必要があります。
障害者のニーズを把握する際には以下のようなものが考えられます。
イ 生活の状況
・普通の一日の生活の流れ
・その他の一日の生活の流れ
ウ 利用者の状況
・生活基盤に関する領域
・健康に関する領域
・日常生活に関する領域
・コミュニケーション・スキルに関する領域
・社会生活技能に関する領域
・社会参加に関する領域
・教育・就労に関する領域
・家族支援に関する領域
エ 希望する1日の生活の流れ
(2) 一次アセスメント
ケアマネジメント機関の窓口(相談窓口)で相談を受ける者は、通常、ソーシャルワーカー(社会福祉士等)、保健師、介護福祉士、当事者相談員等その相談機関の常勤者ですが、家庭訪問して利用者の生活状況及び各種サービスの利用状況等を把握する者も同じくソーシャルワーカー(社会福祉士等)、保健師、介護福祉士、当事者相談員等となります。この専門職者による利用者の現状やニーズの把握が一次アセスメントであり、評価の基になるデータは、別紙一次アセスメント票(様式2)に記入します。
イ 現状把握では、本人(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)の近隣との関係、利用し得る社会資源の状況についても総合的に把握し、理解します。
ウ ニーズを幅広く理解するために、機械的なチェックにとどまることなく信頼関係をつくるなかで、全体の現状を立体的、包括的にとらえるよう心がけることが必要です。
エ 本人と家族の間で意見の違いがある場合は、両者間で話し合いができるように支援します。同時に、そうした調整の協力が得られる機関を紹介することもできます。
(3) 二次アセスメント
家庭訪問による一次アセスメントの結果、かかりつけ医・専門医、看護師、理学療法士、作業療法士などの職種による専門的評価が必要と判断された利用者については、必要な専門職種による二次評価を実施します。
専門職による専門的評価は、それぞれの専門職が通常使用している評価票を使用し、その評価結果を様式3に記入します。(様式3)
(4) チームによるニーズの総合的評価
イ 評価をするための留意点
・ ニーズを整理し、明確にします。
・ 多角的視点から検討、意見交換をします。
・ 利用者の意向を尊重し、自らできること、やりたいことを含めて検討します。
ウ 重度障害のある利用者の場合等で、医学的、心理学的側面等から高度に専門的評価が必要な利用者については、身体障害者更生相談所等の専門機関に評価を依頼する方法も考えます。
エ 評価の結果、地域にある施設利用等が必要となった場合は、利用者の同意を得てその手続きについて支援し、利用開始までの間に別途の支援があればそれを検討します。
(3) ケア計画の作成
ケア計画の作成に当たっては、ケア会議を開催し、利用者の複合的なニーズを明らかにするとともに、活用できるサービスを検討します。その結果に基づき介護等サービス計画書を作成し、それを利用者に示し、利用者の合意を得ることが必要です。
障害者ケアマネジメント従事者はニーズの把握が実施されたのちに速やかに(原則として1週間以内)ケア会議を開催します。
ケア会議では、ケア計画の内容を協議し、決定します。
障害者ケアマネジメント従事者には、ケアマネジメント機関の窓口で相談を受ける者が通常なりますが、ケア会議メンバーのうち必要な知識や技術を有している者がなる場合もあります。
ケア会議は、利用者のニーズに関わるソーシャルワーカー(社会福祉士等)、医師、保健師、看護師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、当事者相談員、市町村の担当者、本人及び家族又は本人が信頼できる人等が参加し、チームアプローチで行います。
ニーズがいくつかに限定されている場合には、ケア会議のメンバーは、一次アセスメント、二次アセスメントに関わった者となります。
なお、利用者が望んでいることと、専門職が把握したニーズとが異なる場合には、ケア会議において十分に検討します。
(2) 活用するサービス
ケア計画を作成するときにまず考えることは、利用者本人の能力を生かすことですが、「自分で衣服を着るのに1時間かかっても自分で着たいか、または介助者に依頼するか」等は本人の選択を尊重する姿勢が必要です。従って、ここでは、「能力を生かす」ということは、「本人の自立と社会参加の観点から適切に能力を生かす」という意味です。
次に家族が対応できることは何かを考えますが、家族の生活全般をとらえ、過重な負担にならないことに留意する必要があります。
活用できるサービスは、公的サービス、民間サービス、ボランティア、友人による支援等のいわゆるインフォーマルサポートなどすべてを検討します。利用できるサービスの提供先が複数ある場合には、すべてを列挙し、これらについて十分に説明して、どの提供先からサービスを利用するかについては、利用者(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)の判断に委ねます。
(3) ケア計画書の作成者
ケア計画書は、ケア会議の結果に基づき、障害者ケアマネジメント従事者が作成しますが、利用者が理解しやすいものとする必要があります。
(4) 利用者の参加による合意形成と自己決定
作成されたケア計画を利用者(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)に提示し、その内容について合意形成を図ります。なお合意形成の過程において、利用者がケア計画の修正を希望することができることはいうまでもありません。なお、最終的に調整ができないときには、利用者は、ケアマネジメントを辞退することができます。
(4) ケア計画の実施
サービスの依頼は、障害者ケアマネジメント従事者の支援によって利用者や家族が行う方法、障害者ケアマネジメント従事者が利用者(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)と同行して行う方法、障害者ケアマネジメント従事者が利用者に代わって行う方法があります。
(2) ケア計画実施過程における調整
実際にサービスが実施されてから、これらのサービスが円滑に提供されているかどうかの確認をすること、また、サービス提供に際して、利用者のサービス受け入れ状況についてサービス実施機関から報告を受けることも必要とされます。
その結果、サービスが計画どおりに実施されていなかったり、サービスの受け入れに支障がある場合には、必要に応じてケア会議を開催し、調整します。なお、利用者とサービス提供先との間に、行き違いとか、何らかの問題が生じた場合には、障害者ケアマネジメント従事者はその調整に当たります。
(5) 再点検と再評価
ケア計画実施後のサービスの提供状況や、時間的経過に伴うニーズの変化、さらに、新たに発生したニーズに対応するために再点検や再評価が必要です。
再点検はサービス提供開始から1週間、1ヶ月、その後は毎月等期間を定めて実施し、計画されたサービスの量と質が確保されているかを確認します。
再点検の過程でニーズの内容や程度に大きな変化が確認されれば、必要又は不要となった部分について、障害者ケアマネジメント従事者は、ケア会議を開催し、ニーズの再評価とケア計画の見直しを行います。
この再点検と再評価を効率的に行うためには、ニーズが適切に満たされているか、利用者がサービスに満足しているか、等を客観的に把握するための点検表(チェックリスト)が必要です。
(6) ケアマネジメントの終了と事後評価
再点検や再評価の結果、サービスの必要性がなくなったと判断される場合には、ケアマネジメントは終了します。
また、このケアマネジメントは地域で生活している障害者を対象としていますので、病気が悪化したために病院に入院したとか、リハビリテーションなどの専門的サービスを必要とするために、リハビリテーション専門施設などに入所した場合には、その間、在宅サービスは不要となりますので、ケアマネジメントは一応終了したことになります。
また、総合的なサービスが提供された結果、複合的なニーズが全て解消された場合、又はチームによる総合的支援が必要とされなくなった場合にもケアマネジメントは終了します。この場合には、サービス提供は継続されます。
なお、ケアマネジメントの過程を通して障害者の社会生活力等が高められ、セルフケアマネジメントができるようになった場合にも、ケアマネジメントは終了します。
利用者が他市町村に転居した場合は、転居先の市町村に連絡をとり、必要に応じて関係書類を送付します。
(2) 事後評価
ケアマネジメントが終了した後には、サービス提供の過程を振り返り、ケアマネジメントの全過程において、改善すべきことがあったかどうか、提供されたサービスの内容が適切であったかどうか等を検討するための事後評価を実施することが、今後のケアマネジメントの実施方法・技術を向上するためにも必要とされます。
また、事後評価のために、利用者の意見、感想を聞くことが重要ですが、実際に援助した側に率直に意見を言いにくい面も考えられるので、第三者的な立場の者が、利用者から意見を聞く仕組みを検討する必要があるでしょう。
前項6のケアマネジメントの過程において使用する様式1〜5については、ケアマネジメントを行うえで、必要と考えられる事項を様式化し、取りあえず示したものです。従って、各ケアマネジメント実施機関において、必要な項目を追加するなど工夫し、使いやすいものに変更することができます。
また、ここに示した様式のほか、必要とするもの、例えば、専門職に二次アセスメントを依頼する場合の「二次アセスメント依頼箋」、「月間ケア計画表」などは、各ケアマネジメント実施機関で自由に作成されることを想定しています。