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II.保健事業評価マニュアル

1.市町村自己点検のチェックリスト

(1)チェックリストの目的

 市町村保健事業の評価には、事業の実施主体すなわち市町村自身が行う評価と、都道府県・保健所あるいは国の行う評価、(研究者など)第三者による評価がある。老人保健法に基づく保健事業については、第4次事業計画の目標達成のため、事業実施主体である市町村自らが事業評価を行うことが求められている。このチェックリストは、市町村自身が事業評価を行うために、基本的な評価方法を示すとともに、実際に使用されることを目的として作成されたものである。
 評価の目的は評価する立場によっても異なるが、事業実施主体が自ら評価を行う場合には、マネジメントのための評価ということになり、自己点検と問題点の発見が主な目的となる。
 ここでいう自己点検とは、設定された事業目標の妥当性を点検し、またその達成度をチェックすることである。特にここでは、「保健事業実施要領」に沿って事業が実施されているかどうかについて検証する必要がある。一方、問題点の発見は、事業の「構造」(人員、施設などのソフト・ハ−ド両面の充実)、「プロセス」(実施計画、対象者の把握、広報等)および「結果」の3点を吟味する作業である。これまでの「事業評価」は業務量の集計にとどまることが多く、系統的な評価の作業はほとんどなされていなかったが、今後は客観的評価、特に「プロセス」と「結果」の評価が重要である。「プロセス」評価は、事業の進め方の吟味を行うことであり、事業の進め方に沿って、例えば情報の集約方法、対象者の選定方法や、保健婦(士)などスタッフの活動内容、あるいは関係者間の連携などを、逐一検討することである。また「結果」は、実施した事業が効果をあげたか否かを判定する重要な指標であり、数値で示されるものも多いが、目標の達成度なども含まれる。これは次の事業計画策定に際して重要な資料となる。

(2)チェックリストの書き方

 評価者は、保健事業の計画策定に参画している関係者が好ましい。事業の内容と実施状況、死亡や罹患状況を把握する必要があるため、的確な情報を入手し得る関係者でないと評価はできないであろう。複数の共同作業になる場合には、完全な分業にするのではなく、情報を共有する合議が望ましい。
 チェックリストは項目ごとの設問(右欄に選択肢が示されている。)に答えれば完成するので、順に記録をとればよい。
 段階評価では、原則として該当するもの一つを選ぶが、実施の状況などでは複数が該当する項目もある。この場合は複数回答でもかまわない。ただし、「総括評価表」に記載して活用する時には、数値の小さいもの一つを使う(例えば、2と3に該当するなら、2をとる)。
 各設問の意義については各項に記載された「ねらい」と「基準」を参照されたい。

(3) チェックリストの活用法

 チェックリストの作成作業そのものが自己点検のプロセスである。作業の過程で問題点を実感することもあるであろう。また、リストの他に気づいた点があるはずなので、記録にして残しておくと良い。チェックリストは、あくまでも最低限度必要なガイドラインを示すものである。リスト作成の途中で得られた情報、特に計算に用いたデ−タなどは、資料として重要なものであり、活用されるべきである。
 まとめると、チェックリスト作成の目的は、保健事業推進のための体制(組織や仕組)作りや計画の進捗状況ならびに事業の実績や効果をチェックして、問題点を把握し、以後の計画策定や事業内容に役立てることにある。事業計画にフィ−ドバックされなければ、チェックの意味がない。また、問題点解決にむけて、年度を追って問題状況がどう推移したかを把握する必要がある。したがって、毎年、定期的にチェックリストを作成するべきである。(おそらく、チェックリストの形式や項目は改訂されていくであろうが)記録は必ず保存し、例えば下に示すような表にまとめると良い。
 これら年度ごとのチェック作業は、本来、次年度計画策定の一環として組込まれることが望ましい。またチェックリストは、サ−ビス提供者側の検討資料として用いるだけでなく、サ−ビス利用者である住民にも適宜公開されるべきであろう。

○年次推移のまとめ方の一例

老人保健事業チェック表
  (平成)年度
  12 13 14 15 16
1.老人保健福祉計画は着実に進行していますか。 (1)
2.保健センター等に保健・医療・福祉に係わる総合的な窓口が設置されていますか。 (1)
3.在宅福祉サービスなどとの連携体制が図られていますか。 (1)

2.保健事業第4次計画の目標

 昭和57年に成立した老人保健法に基づき、すでに4次にわたって保健事業計画が策定され、着実な事業の推進が図られてきた。その間、平成元年12月には「保健事業の充実強化策に関する意見」が公衆衛生審議会から答申され、翌年には「高齢者保健福祉推進十カ年戦略」が公表された。さらに、老人福祉法をはじめ福祉関連八法の改正により、全市町村において地域老人保健福祉計画が策定され、これに基づいてゴ−ルドプランが策定された。さらにこのゴールドプランはその後改正され、現在は「ゴールドプラン21」として推進されているところである。
 これら保健と福祉の連携強化、とくに介護保険制度の推進体制が整備される中で、医療保険福祉審議会老人保健福祉部会から「老人保健事業第4次計画に関する意見」が答申され、平成12年3月には厚生省から老人保健福祉局長通知で老人保健事業の第4次計画が示され、従来の保健事業の全面的な見直しが行われた。一方,平成12年度より「健康日本21」計画が全国的に展開されることとなった。その中では、各保健事業の目標値が設定され、第一次予防を中心とした地域版の「健康日本21」計画が全国都道府県や一部市町村においても推進されている。その中で老人保健事業は目的を達成するための重要な事業として位置付けられているが、その基準等については「健康日本21」の数値目標を活用することが望ましい。

3.保健事業の経過推移(プロセス)を評価するための数値指標

(1)共通的事項

◇ねらい
 保健事業の実施に当たっては、実施要領に基づいて、各市町村の人口規模や地域別状況などを十分に考慮するとともに、各市町村における老人保健福祉計画との整合性を図る必要がある。
 保健事業の計画及び運営に当たっては、保健・医療・福祉の各関係機関の協力を得て、地域保健サ−ビスと職域保健サ−ビスとの有機的な連携及び調整を積極的に図ることが求められている。また、保健事業の意義や内容などを地域の住民に周知徹底し、住民が積極的に参加できる体制づくりに努める必要がある。
なお、保健所は、市町村が保健事業を効果的かつ効率的に実施できるよう必要な助言及び技術的支援を行うこととなっている。

◇基準
 市町村の人口規模、年齢構成、地理的状況、住民の健康状態、必要な要員や施設の状況、財政事情を考慮し、具体的な方法や事業量に関して適切な計画を策定し、老人保健福祉計画との整合性を図る必要がある。
 保健事業の企画及び運営に当たっては、保健所、福祉事務所などの行政機関、医師会、歯科医師会、薬剤師会、社会福祉協議会その他関係団体により構成された会議等において意見を聴取するとともに、保健・医療・福祉相互間の調整及び有機的な連携を図る。
 保健所は、保健事業連絡協議会の活用を図り、市町村に対して必要な助言及び技術的支援、連絡調整、保健医療情報の収集及び提供を行う。

◇評価項目 評価の目安
1.老人保健福祉計画は着実に進行していますか。 (老人保健福祉計画)
 数値目標を設定し、全ての項目について達成が可能である。
 数値目標は設定しているが、一部の項目については達成が難しい。
 数値目標は設定しているが、ほとんどの項目で達成が難しい。
 具体的な数値目標は設定していない。
2.老人保健事業の計画策定には、保健・医療・福祉の各専門職と地域住民の幅広い参加を得られていますか。 はい/いいえ
3.策定された計画の事業内容に実施に当たっての優先順位がつけられていますか。 はい/いいえ
4.保健センター等に保健・医療・福祉に係わる総合的な窓口が設置されていますか。 (総合的な窓口の設置)
 総合的な窓口を設置して活発に活動している。
 総合的な窓口はあるが、活動は不十分である。
 総合的な窓口はないが、設置を計画中である。
 総合的な窓口はなく、設置の計画もない。
5.在宅福祉サービス(介護予防・生活支援事業による各種サービスなども含む。)などとの連携体制が図られていますか。 (在宅福祉サービス等との連携体制)
 在宅福祉サービスなどの企画・立案の段階から参画するなど、常に連携を図っている。
 在宅福祉サービスなどとの連携のために会合をもっている。
 在宅福祉サービスなどと会合はもっていないが、計画中である。
 在宅福祉サービスなどと会合をもっておらず、計画もない。
6.保健事業の企画及び運営に当たって、幅広く(職域保健なども含む)各関係機関との連絡・調整が図られていますか。 (各関係機関との連絡及び調整)
 協議会などを設置して、連絡及び調整を図っている。
 協議会はないが、不定期に会合をもっている。
 個人レベルで連絡・調整を図っている。
 特別な連絡・調整はしていない。
7.保健所から助言、技術的支援及び情報の提供が得られていますか。 (保健所からの助言等)
 保健所から定期的に助言、技術的支援及び情報の提供を得ている。
 保健所から随時助言及び技術的支援や情報の提供を得ている。
 保健所から特に助言、技術的支援及び情報の提供は得ていない。
 保健所から特に助言、技術的支援を得ることは考えていない。
8.必要な保健婦、保健士や管理栄養士など専門技術職員の確保がなされていますか。 (マンパワーの確保)
 各種専門技術職員を確保している。
 確保に努めているが、確保できていない。
 確保の計画がない。
 確保の必要性を感じていない。
9.保健事業への取組に必要な医師、歯科医師、薬剤師、歯科衛生士、理学療法士及び作業療法士などを活用する計画がありますか。 はい/いいえ
10.担当者は各種の保健事業に関する研修会に出席していますか。 (研修会への参加)
 毎年保健事業の研修会に参加している。
 1年おきに保健事業の研修会に参加している。
 最近3年以内に保健事業の研修会に参加したことがある。
 最近3年以内には保健事業の研修会に参加したことがない。
11.保健事業の実施に当たって、地域の実情を十分に配慮した計画となっていますか。 はい/いいえ
12.地域住民の多様なニーズの把握はどのようになされていますか。 (地域住民のニーズの把握)
 調査などにより地域住民のニーズを把握している。
 住民代表などからニーズを把握している。
 特に地域住民のニーズを調査していないが、他の既存の統計などにより把握している。
 特に住民のニーズは把握していない。

(2)健康手帳の交付

◇ねらい
 健康手帳は生活習慣病の予防と老後における健康の保持及び適切な医療の確保等を目的として、健康手帳の交付を受けた者が自らの健康に関心を持ち、有効に活用できるように各市町村において創意工夫して作成されるものである。

◇基準
 老人保健法に基づく保健事業への参加及び医療の受給資格を有する対象者が正確に把握されており、高い交付率を得られるような交付の方法がなされていなければならない。
 また、交付される健康手帳がその目的に適合しているか、必要な住民に適切に交付されているか、さらに、自らの健康管理に活用されているか等について、常に点検しておく必要がある。
 健康手帳の活用については、保健事業への参加や医療機関への受診、健康手帳の更新時等において、記入状況を点検する方策が検討されていなければならない。継続的に医療の記録や健康診査結果を記録として残しておくことは、対象者の健康管理と適正な医療の確保に必須である。

◇評価項目 評価の目安
13.健康手帳の交付対象者(特に70歳未満の要介護者等も含めて)の要件が定められていますか。 はい/いいえ
14.健康手帳の交付に際して、その目的や活用方法について保健婦(士)などの専門職が説明していますか。 (利用方法の説明)
 必ず保健婦(士)などの専門職が説明している。
 時々保健婦(士)などの専門職が説明している。
 説明用の文書を添付している。
 特に説明など行っていない。
15.健康手帳の活用状況を点検していますか。 はい/いいえ

(3)健康教育

◇ ねらい
 健康教育は、生活習慣病の予防及び介護を要する状態となることの予防その他健康に関する事項について、正しい知識の普及を図るとともに、適切な指導や支援を行うことにより、「自らの健康は自らが守る」という認識と自覚を高め、壮年期からの健康の保持・増進に資することを目的としている。健康教育については、地域や対象者、実施体制等を勘案し、集団健康教育、個別健康教育、介護家族健康教育それぞれの特性を活かして推進していくことが必要である。例えば、地域住民のニーズに応じて集団健康教育を実施する一方で、それのみでは効果の期待しにくい対象者に対して個別健康教育を実施する等の方法が考えられる。

(1)個別健康教育

◇ねらい
 疾病の特性や個人の生活習慣等を具体的に把握しながら、継続的に健康教育を行うことにより、生活習慣行動の改善を支援し、生活習慣病の予防に資することを目的としている。

◇基準
 個別健康教育は、基本健康診査の結果等により生活習慣行動の改善を支援するものであり、対象者の生活習慣病の予防に対する理解と実践への動機づけやその成果を具体的に把握できる内容でなければならない。さらに、個別健康教育が対象者の生活習慣行動の改善にとどまらず地域の公衆衛生戦略の重要な手法として意義づけさせるためには、企画の段階から医療機関等の各関係機関の十分な協力体制を得る必要がある。

◇評価項目 評価の目安
16.個別健康教育を実施していますか。 (個別健康教育の実施)
 高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙者の4領域について実施している。
 4領域の一部について実施している。
 現在は実施していないが、導入は計画している。
 個別健康教育を導入する計画はない。
17.個別健康教育の企画・運営に当たって医療機関などの各関係機関による十分な協力体制が得られていますか。 (各関係機関による協力体制の整備)
 十分な協力体制が得られている。
 協力体制がおおむね得られている。
 協力体制が十分に得られているとはいえない。
 協力体制は求めていない。
18.個別健康教育はどのような手法を用いて行われていますか。 (個別健康教育の手法)
 個別健康教育指導者養成研修あるいは同等の研修に参加した専門職などが、
 研修により修得した手法により教材などを用いて実施している。
 伝達講習等を受けた者が、教材などを用いて実施している。
 伝達講習を受けた者が実施しているが、教材などが不十分である。
 伝達講習なども開催されていない。
19.個別健康教育の対象者は、健康度評価など何らかの基準を使って選定していますか。 はい/いいえ
20.個別健康教育の対象者の知識、生活習慣行動について実施前後の変化を検討し、健康教育の効果を評価していますか。 (個別健康教育の効果の評価)
 健康教育の実施前後における変化を
 必ず検討し、検討結果に基づいて評価している。
 検討することがある。おおむね検討結果に基づいて効果を判定している。
 検討しているが効果は評価していない。
 検討、効果の評価は行っていない。
21.個別健康教育の対象者について長期的(約1年以上)に行動変容の追跡調査を実施していますか。 (個別健康教育の対象者の追跡調査)
 行動変容の追跡調査を実施している。
 実施可能な体制が整備されているが、現在は追跡調査を実施していない。
 追跡調査が可能な体制を整備する計画がある。
 追跡調査を実施する計画はない。
22.個別健康教育の中途脱落者についても追跡調査を実施していますか。 (中途脱落者の追跡調査)
 行動変容の追跡調査を実施している。
 実施可能な体制が整備されているが、現在は追跡調査を実施していない。
 追跡調査が可能な体制を整備する計画がある。
 追跡調査を実施する計画はない。

(2)集団健康教育・介護家族健康教育

◇ねらい
 生活習慣病の予防及び介護を要する状態になることの予防その他健康に関する事項について、正しい知識の普及を図るとともに、適切な指導や支援を行うことにより、「自らの健康は自らが守る」という認識と自覚を高め、壮年期からの健康の保持・増進に資することを目的としている。
 介護家族健康教育は、介護を行う者の健康に関する正しい知識の普及を図ることにより、介護者の健康の保持・増進を図ることを目的としている。

◇基準
 集団健康教育は単なる知識の伝達ではなく、自らの健康管理に対する主体的な実践を促すよう、特に配慮する必要があり、個別健康教育や生活習慣行動の改善指導等と適切に組み合わせることにより、具体的な生活習慣の改善がもたらされるよう、総合的な取組に配慮するとともに、同じ病態を共有する者に対する集団的な指導を通じて、共通の目的に向けて対象者が主体的に取組ができるよう工夫を行うことが必要である。また、必要に応じて地元医師会、歯科医師会、薬剤師会等の各関係団体による協力体制を得て、講師の確保等に配慮する。
 介護家族健康教育は、介護を行う者に発生しやすい健康上の問題に関する一般的な知識や留意事項等についての内容とし、実施方法、評価、教材の利用、実施に当たっての留意事項等は、集団健康教育と同様としている。

◇評価項目 評価の目安
23.集団健康教育の年間計画を策定していますか。 はい/いいえ
24.事業計画の策定に当たって、あらかじめ結果を評価するための指標や当面の目標を設定していますか。 (目標の設定)
 全ての事業計画について、指標や当面の目標が設定され、数値化が可能な事項は目標値が設定されている。
 一部の事業計画について、指標や当面の目標が設定され、数値化が可能な事項は目標値が設定されている。
 全ての事業計画について、指標や当面の目標が設定されているが、数値化されていない。
 事業計画の指標や当面の目標は設定していない。
25.集団健康教育の企画及び運営に当たって、部課内の関係者と連絡・調整が図られていますか。 (企画及び運営)
 外部の各関係機関などとも幅広く連絡・調整を図り十分な協力体制が得られている。
 外部の各関係機関などとも幅広く連絡・調整を図っているが、十分であるとはいえない。
 保健婦(士)などの専門職を含め、部課内の職員のみで企画及び運営している。
 担当者のみで企画及び運営に当たっている。
26.集団健康教育の対象者に対して意見などを収集、分析することにより、その後の事業に活用していますか。 (対象者の評価)
 意見などを収集、分析することにより、その後の事業に活用している。
 意見などを収集、分析しているが、その後の事業に活用できていない。
 意見などは収集しているが、分析はしていない。
 意見などは収集していない。
27.実施過程の事後評価を行い、日時の設定、講師の選定、地域住民への周知方法などについて分析、検討していますか。 (実施過程の事後評価)
 必ず事後評価を行い、分析、検討の結果をその後の事業に活用している。
 必ず事後評価を行っているが、分析、検討結果はその後の事業に活用できていない。
 事後評価を行うが分析、検討は十分とはいえない。
 事後評価は行っていない。
28.集団健康教育の効果を評価しその後の事業に活用していますか。 (効果の評価)
 必ず効果を評価し、結果をその後の事業に活用している。
 必ず効果を評価しているが、結果を必ずしもその後の事業に活用していない。
 効果の評価を十分に行っていない。
 全く効果の評価は行っていない。
29.介護家族健康教育を実施していますか。 (介護家族健康教育) はい/いいえ

(4)健康相談

 健康相談は、心身の健康に関する個別の相談に応じ必要な指導及び助言を行い、家族における健康管理に資することを目的としている。健康相談の種類については、重点健康相談,介護家族健康相談、総合健康相談がある。

(1)重点健康相談

◇ねらい
 重点健康相談とは、日常生活に合わせた指導及び助言が特に重要な疾病別の重点的な相談、個人の特性に対応した相談等、市町村が地域の実情に即して設定した重点課題を対象として実施する健康相談である。現在、重点を置くべき課題としては、高血圧、高脂血症、糖尿病、歯周疾患、骨粗鬆症に加えて肥満、心臓病等の病態別に、個人の食生活その他の生活習慣を勘案して行う相談指導等が挙げられる。

◇基準
 慢性的に心身の健康問題をかかえる者に対しては、定期的に健康相談に応じる体制の整備が必要である。市町村は、地域の実情や実施体制の整備状況を勘案して重点課題を選定し、健康相談事業を実施することになっており、人口規模に応じて標準的な実施回数が示されている。
 重点課題に関しては、予め相談の必要性が調査され、優先順位を設ける必要がある。また、課題ごとに相談の態様や効果について分析・評価を行う必要がある。したがって、相談に応じる担当者の専門性を考慮して配置する必要があり、相談記録は適切に整備されていなくてはならない。健康相談室等の運営に当たっては、保健・医療・福祉の各分野に関わるどのような健康問題についても、対応可能な体制の整備を図ることとなっており、気軽に誰でも、いつでも相談できるような体制の整備が必要である。

◇評価項目 評価の目安
30.重点健康相談の課題を設定した理由が明確にされていますか。 (設定した理由)
はい/いいえ
31.重点課題の設定に当たって、誰が参加し、どのように設定されたか記録が残っていますか。 (課題の設定)
 参加者と設定過程のすべてを記録に残している。
 参加者と設定過程の記録が部分的に残っている。
 参加者又は設定過程いずれかの記録が残っている。
 参加者と設定過程の記録はない。
32.重点課題別に対象者把握のための調査を実施し、相談の優先順位を設定していますか。 (優先順位の設定)
 重点課題別に対象者把握のための調査を行い、優先順位を設定している。
 対象者把握のための調査をしているが、優先順位は設定していない。
 対象者把握のための調査をせずに、優先順位を設定している。
 調査も優先順位の設定もしていない。
33.相談の実施前と後とを比較して自己管理や生活習慣などの改善の程度を把握・評価していますか。 (評価)
 全ての事例について把握し、評価を行っている。
 一部の事例のみ把握し、評価を行っている。
 事例は把握しているが、評価を行っていない。
 事例の把握を行っていない。
34.評価の結果、計画の策定及び実施方法は適切でしたか。 (計画の策定及び実施方法の評価)
はい/いいえ

(2)介護家族健康相談

 介護家族健康相談とは、家族等の介護を行う者の心身の健康に関する指導及び助言等を行う健康相談である。

(3)総合健康相談

 総合健康相談とは、対象者の心身の健康に関する一般的事項について、総合的な指導及び助言を行う健康相談である。重点健康相談と同様の方法により実施する。

◇評価項目 評価の目安
35.健康相談室などが設置され、健康に係わる様々な問題について、誰もが気軽に相談できる体制が整備されていますか。 (健康相談室の設置)
 専用の健康相談室などが設けられ、休日も含めいつでも相談を受けることができる。
 専用の健康相談室などは設けられているが、相談できる日時が限られている。
 共用の健康相談室などで相談を受けることができる。
 健康相談室などがなく、相談の日時も限られている。
36.問題の解決に当たって、保健・医療・福祉の各関係機関の協力体制が得られていますか。 (各関係機関による協力体制の整備)
 十分な協力体制が得られている。
 協力体制はおおむね得られている。
 協力体制が十分に得られているとはいえない。
 協力体制を求めていない
37.対象者の相談内容などを記録し、評価を行っていますか。 (相談記録の評価)
 全ての相談内容を一定の様式に従って記録し、評価を行っている。
 相談内容を一定の様式に従って記録しているが、評価を行っていない。
 一定の記録様式は定めていないが、記録・評価を行っている。
 記録をとっていない。
38.相談事業を地域住民がどの程度知っているか調査をしたことがありますか。 はい/いいえ
39.健康相談を受けた者の満足度を調査し、改善に活用していますか。 (満足度の調査)
 必ず満足度を調査し、改善に活かしている。
 時々満足度を調査し、改善に活かしている。
 満足度等を調査することはあるが、改善に活かしていない。
 満足度は調査していない。

(5)健康診査

(1)基本健康診査

◇ねらい
 基本健康診査は、心臓病や脳卒中などの循環器疾患、糖尿病、貧血、肝機能や腎機能の障害などがんを除く幅広い生活習慣病予防対策の一環として、疾患の疑いのある者又は危険因子を持つ者の早期発見を図るものである。これは単に医療を必要とする者を発見するだけではなく、栄養や運動などに関する保健指導の必要な者に対して、健康管理に関する正しい知識を伝え、生涯にわたって実践できる健康な生活習慣の獲得を動機づけることを目的としている。
 なお、在宅の寝たきり、家族等の介護等の理由により、訪問による健康診査の実施が必要な者に対して、医師及び看護婦(士)を派遣し、基本健康診査を行う訪問基本健康診査と介護家族訪問基本健康診査がある。

 ◇基準
 保健指導や医療を必要とする者を確実に発見し、また事業を効果的かつ効率的に推進するために、健診対象者を正しく把握する必要がある。
 生活習慣や受診者の性格などに配慮した効果的な保健指導を実施するために、いわゆる「かかりつけ医」等における個別の健康診査の拡大が求められている。健診デ−タは受診者ごとの記録が時系列的に整理され、生理的な老化との鑑別と併せて受診者自身による積極的な活用を図ることが重要である。
 また、健康診査の結果を活用した保健指導の充実が図られなければならない。要指導者に対する指導実施率の向上、指導の結果としての受診者の生活習慣等の改善状況のチェックが必要である。
 個別の健康診査の推進に際しては、受託実施機関の精度管理について留意する必要がある。
 在宅の寝たきり者及びこれに準ずる者に対しては、訪問による基本健康診査の実施が求められている。

◇評価項目 評価の目安
40.対象者数の把握はできていますか。 (対象者数の把握方法)
 訪問調査などにより、対象者数を把握している。
 住民票などにより、対象者数を把握している。
 一定の数式などの条件を用いて概算している。
 対象者数は把握していない。
41.受診を希望する全ての対象者が容易に受診できるよう実施計画は周知徹底されていますか。 はい/いいえ
42.個人記録が年次別に整理され、その推移をみることができますか。 (結果の記録)
 年次推移をみることができる。
 一部については年次推移をみることができる。
 年次別記録はあるが、個人別に年次推移をみることはできない。
 結果の年次別記録はない。
43.診査項目について受託実施機関の精度管理に関する情報を得ていますか。 はい/いいえ
44.実施計画の策定及び運営はどのように行われていますか。 (実施計画の策定)
 実施計画の策定に当たって、医師会・受託実施機関の関係者を含めた常置委員会で、毎年検討している。
 実施計画の策定に当たって、常置委員会はないが、医師会・受託実施機関の関係者などと調整を行うための会議を開催している。
 実施計画の策定に当たって、特に外部の関係者とは調整を行っていない。
 担当者に一任されている。
45.受診率について、市町村の目標を設定していますか。 はい/いいえ
46.診査後の生活習慣改善指導によって、受診者の生活習慣の改善が行われたかどうか、評価を行っていますか。 (実施後の評価)
 健康診査の評価は毎年必ず行っている。
 一部の健康診査について健康診査後の評価を行っている。
 健康診査後の評価は行っていない。
 担当者の判断に任され、特に決まりはない。
47.個別の健康診査の受託実施機関から健康診査結果とともに、受診者の受診歴や保険種別、保健指導の内容などの情報が得られていますか。 (個別の健康診査情報の把握)
 受託実施機関から、受診者の関連情報を必ず得ている。
 受託実施機関から、受診者の関連情報を時々得ている。
 受託実施機関から、受診者の健康診査結果だけを得ている。
 個別の健康診査情報の内容を把握していない。
48.健康診査結果は速やかに受診者に通知されていますか。 (結果の通知)
 受診後、全て1か月以内に通知されている。
 一部の結果は受診後、1か月以内に通知されている。
 結果を通知するのに受診後、1か月以上かかる。
 異常者にのみ結果を通知し、正常者には結果を通知していない。
49.在宅寝たきり者及びこれに準ずる者に対して、訪問基本健康診査を実施していますか。 はい/いいえ

(2)健康度評価

◇ ねらい
 健康度評価により、個人の生活習慣行動や社会・生活環境等の把握を行い、その評価等に基づき生活習慣改善に係わる指導を実施する。対象者個人の必要性に応じた、計画的かつ総合的な保健サービスの提供に資するものである。

◇ 基準
 健康度評価は、質問票の交付の機会及びその内容、評価の手法、他の保健事業への活用法などの多様性にかんがみ、各市町村において、自らの創意工夫を活かして実施することが重要である。また、健康度評価の結果については、実施した保健活動を対象者個人ごとに又は地域全体として評価する際の指標とするなど、その活用について工夫することが望ましい。
 健康度評価を実施した者については、健康教育、訪問指導他の保健事業が継続して行われるように配慮する。なお、必要に応じ食生活改善推進員等のボランティアの協力を得るものとする。

◇評価項目 評価の目安
50.健康度評価を実施していますか。 はい/いいえ
51.健康度評価の計画の策定はどのように行っていますか。 (事業の計画の策定)
 広く部外の関係者(医師会など)の参加や意見を聴取し策定している。
 担当部局のみで策定している。
 専門職のみで策定している。
 担当者のみで策定している。
52.健康度評価の対象者をどのように選定していますか。 (対象者の選定)
 対象者は、健診などの保健事業の参加者だけでなく、他の高齢者についても幅広く行っている。
 対象者は、健診を受けた者など保健事業参加者のみから選んでいる。
 対象者は、希望者のみとしている。
 対象者の基準は特にない。
53.健康度評価の目的、目標及び指標などを設定していますか。 (目的等)
 予め対象者の選定、到達目標など効果の判定となる指標を定めて行っている。
 「がんばる項目」(改善目標)など、長期的に把握できる行動の変容を目標としている。
 事業終了時に「がんばる項目」(改善目標)がどの程度達成できたか確認できるようにしている。
 事業の参加者数は把握できるが事業目的がどの程度できたか指標は定めていない。
54.健康度評価の効果判定をどのようにおこなっていますか。 (結果の活用)
 個人及び地域の保健指標の変化を用いて効果の判定を行うようにしている。
 個人の行動変容を把握して効果判定を行っている。
 対象者の意見や感想を把握して効果の判定を行っている。
 対象者の数のみを把握して効果の判定を行っている。
55.他の事業との関連をどのようにしていますか。 (他の事業との関連)
 健康度評価の結果が地域の保健政策の立案に活かされている。
 健康度評価の結果が個別健康教育、介護保険などの立案に活かされている。
 健康度評価が他の事業とは独立して行われている。
 健康度評価事業は行っていない。

(6)機能訓練

◇ねらい
機能訓練は、疾病、外傷、老化等により心身の機能が低下している者に対し、心身機能の維持回復に必要な訓練を行うことにより、閉じこもりを予防するとともに日常生活の自立を助け、介護を要する状態となることを予防することを目的として実施される。

◇基準
機能訓練においては、障害の重症度(医療におけるリハビリテーションを要する者、介護保険法に規定する要介護者及び要支援者を除く)にかかわらず、必要とされる者が容易でかつ安全に参加できるよう、実施体制(施設環境、送迎など)を整備することが重要である。日常生活機能の回復を図るには、可能な限り早期から支援が開始されるべきであり、そのためには、対象者の把握が欠かせない。把握のための情報システムとしては、脳卒中情報システム事業等がある。
実際の援助においては、基本型(以下「A型」という)と地域参加型(以下「B型」という)により事業内容が異なるため、実施に当たっては十分留意する必要があり、様々な側面から収集した情報をもとに訓練の実施方法等を検討することが重要である。さらに、実施期間については、A型においてはおおむね6か月、B型においてはおおむね1年程度を1期間の目安として、効果等を勘案のうえで継続実施の要否を判定しなければならない。
機能訓練の対象者が社会性を再獲得するためには、限られた範囲での活動にとどまることなく、社会参加の機会を提供することも大切である。加えて、在宅生活の継続を支えるためには、家族会の育成等家族への支援も欠かせない。対象者のニ−ズは多様であり、他の事業等との併用が求められる場合も多い。心身の機能の状態について、いわゆる「かかりつけ医」等と情報交換を行い、各関係機関との十分な連携を図ることが求められる。

◇評価項目 評価の目安
56.機能訓練を必要とする者の把握方法は整備されていますか。 (対象者の把握)
 システムの確立や連絡網の整備などにより、早期に確実な把握が可能である。
 おおむね把握されているが、収集される情報が限定されていたり、連絡が遅いなどの問題点もある。
 情報収集が困難であるため、十分な把握はできない。
 情報提供はなく、積極的な収集もしていない。
57.実施施設の環境は整備されていますか。 (実施施設の整備状況)
 誰もが利用しやすい環境を十分に満たしている。設備や備品も整備されており、安全性や活動性が確保されている。
 地域住民との交流が得にくい環境にあるが、設備や備品はおおむね整備されている。
 環境、設備ともに整備されているとはいえないが、事業の実施は可能である。4.環境、設備ともに事業の実施に支障をきたしており、事業の実施が困難である。
58.障害が重くても参加できるような送迎が行われていますか。 (送迎)
 障害の程度にかかわらず参加できるよう、適切な送迎手段が確保されている。
 送迎を行っているが、一部の利用者など対応できない場合がある。
 自主参加を基本とし、送迎は行われていない。
 送迎は行われていない。
59.実施頻度は十分に確保されていますか。 (実施頻度)
 全ての対象者について十分に確保されている。
 大部分の対象者はおおむね確保できている。
 十分に確保されていない対象者が多い。
 ほとんどの対象者について年間で換算すると月1回の実施に満たない。
60.専門職(理学療法士・作業療法士等)の協力体制は整備されていますか。 (専門職による協力体制の整備)
 定期的に専門職の参加が得られ、十分な協力体制が確保されている。
 専門職の協力体制はあるが、定期的ではない。
 専門職の協力は得られないことが多い。
 専門職の協力は得られていない。
61.機能訓練の効果などを勘案して継続要否の判定を行っていますか。 (効果等を勘案した継続要否の判定)
 全ての対象者について、一定期間ごとの継続要否に加え、対象者の変化に応じて随時見直しを行っている。
 全ての対象者について、効果などを勘案した一定期間ごとの判定を行っている。
 一部の対象者について、効果などを勘案した一定期間ごとの判定を行っている。
 効果などを勘案した継続要否の判定は行っていない。
62.機能訓練の内容において地域との交流やボランティアの参加などが図られていますか。 (地域との交流等)
 参加などが積極的に図られている。
 参加などが図られているが積極的でない。
 参加などの計画があるが実施に至っていない。
 参加などの計画はない。
63.機能訓練に際して家族の協力体制は得られていますか。 (家族の協力体制)
 全ての対象者の家族から積極的な協力が得られている。
 協力体制はあるが、全ての家族において積極的であるとはいえない。
 対象者の家族からは消極的な協力体制しか得られていない。
 協力体制は得られていない。
64.機能訓練終了時において、対象者の状況に応じて他の保健事業や福祉サービスなどとの連携が図られていますか。 (訓練終了時の対応等)
 対象者の状況に応じ、適切なサービスが継続して提供されている。
 対象者の状況に応じ、適切なサービスが提供されるよう図られているが、十分とはいえない。
 他の保健事業や福祉サービスとの連携は図っているが、対象者の状況に応じているとはいえない。
 他の保健事業や福祉サービスとの連携は図っていない。
65.地域リハビリテーション推進事業との連携は図られていますか。 (地域リハビリテーション推進事業との連携)
 地域リハビリテーション推進事業との連携緊密な連携が図られている。
 地域リハビリテーション推進事業との連携は図られているが、断続的であり緊密とはいえない。
 地域リハビリテーション推進事業との連携はほとんど図られていない。
 地域リハビリテーション推進事業は実施されていない、又は採用されていない。
66.医療・福祉関連職種との連携は図られていますか。 (医療・福祉関連職種との連携)
 全ての対象者について十分な連携が図られている。
 一部の対象者について図られている。
 連携が情報交換程度である。
 連携は全く図られていない。
67.対象者の心身の機能の状態や周囲の状況に応じた事故防止対策が整備されていますか。 (事故防止対策)
 十分な事故防止対策が整備されている。
 事故防止対策を立てているが、十分でない。
 一般的な事故防止対策にとどまっている。
 事故防止対策は検討されていない。

(7)訪問指導

◇ねらい
 訪問指導は、40歳以上の者で心身の状況、その置かれている環境等に照らして療養上の保健指導が必要と認められる者を対象に、保健婦(士)等が訪問し、本人及び家族に対して必要な保健指導を行うことを目的とする。
 生活の場において個人の状況に応じて相談や指導を行うという点で効果的であり、とくに要介護状態になることの予防や痴呆性老人対策の一環として、事業の推進が求められている。

◇基準
 この事業の内容を住民に周知徹底することによって、本人及び家族等からの相談、健康度評価その他の保健事業の実施に伴う情報、医療機関や福祉関係機関その他の関係機関からの依頼等に基づき、対象者を正確に把握する必要がある。
 訪問指導計画は、保健・医療・福祉の各関係機関との連携を図り策定しなければならない。初回訪問は原則として保健婦(士)が行い、対象者及び家族の状況(心身の状態、既往歴、生活習慣、栄養状態、口腔衛生状態、家族の介護等の状況、生活環境等)を把握する。その後、必要に応じて管理栄養士、歯科衛生士等と協議のうえ、訪問指導の内容その他必要事項からなる訪問指導計画を策定する。
 特に、疾病等を有する者に対する訪問指導に際しては、かかりつけ医と連携を図り、その指導のもとに実施する必要がある。また、保健事業による訪問指導の内容が医療保険又は介護保険等によるサービスと重複する場合には、それらのサービス提供者等と連携を十分に図る必要がある。
 訪問指導に従事する者は、資質の向上を図るため都道府県等が開催する研修に参加するとともに、訪問指導の方法等について関係する専門職とも検討のうえ指導に当たる必要がある。事業を実施した場合は、諸記録を整備し、その内容を分析、評価することにより、その後の訪問指導に活用することが求められている。

◇評価項目 評価の目安
68.訪問指導の対象者をどのように把握していますか。 (対象者の把握)
 本人及び家族などからの相談に加えて保健事業の実施に伴う情報や、各関係機関などから幅広く情報を収集して対象者を把握している。
 本人及び家族などからの相談に加え、活用可能な情報の一部を収集して対象者を把握している。
 広報などにより地域住民に周知徹底を図っているが、その他の情報は積極的に収集していない。
 本人及び家族などからの相談のみを対象としている。
69.訪問指導計画の策定及び運営に当たって、かかりつけ医や各関係機関との協力体制が得られていますか。 (各関係機関との連携)
 定期的な会合があり、随時連携可能な体制が整っている。
 定期的な会合はあるが、随時連携可能であるとはいえない。
 会合はなく、担当者が個人単位で連携を図っている。
 連携は図っていない。
70.訪問指導が計画策定されてから初回訪問までに要する期間はどれくらいですか。 (計画策定から初回訪問までの期間)
 担当者が1週間以内に訪問している。
 担当者が2週間以内に訪問している。
 担当者が1か月以内に訪問している。
 担当者が訪問するまでに1か月以上要している。
71.訪問指導は、家庭における療養方法、要介護状態の予防に関する指導、機能訓練方法、生活習慣病等以外の内容についても実施していますか。 はい/いいえ
72.訪問指導を受けた対象者やその家族について、事業内容に対する満足度を調査していますか。 (満足度調査)
 全ての対象者とその家族に満足度を調査し、その結果を分析して事業の見直しなどに活用している。
 全ての対象者とその家族に満足度を調査し、その結果を分析しているが、事業の見直しなどは行っていない。
 一部の対象者とその家族に対して満足度は調査していない。
 対象者とその家族に対して満足度は調査していない。
73.訪問指導の内容などが記録され、その後の事業に活用できるように整備されていますか。 (記録の整備)
 全ての訪問指導の内容について対象者ごとに整理され、十分に活用されている。
 全ての訪問指導の内容について対象者ごとに整理されているが、十分には活用されていない。
 一部の訪問指導の内容について対象者ごとに整理されている。
 訪問指導の内容について対象者ごとに整理されていない。
74.痴呆性老人に対する訪問指導の実施について、保健所との十分な連携を図っていますか。 はい/いいえ
75.訪問指導に従事する者の資質を向上するために、研修へ参加する機会を設けていますか。 はい/いいえ

(8)口腔保健

◇ねらい
 老人保健法に基づく保健事業としての口腔保健は、集団健康教育、重点健康相談及び歯周疾患検診として取り組まれることとなっている。歯周疾患検診は40歳及び50歳における節目検診として実施が図られている。また、口腔衛生指導の重要性が高まってきており、歯科衛生士等による訪問指導も実施されている。
また、介護予防の観点からも、口腔ケアの重要性が言われている。
なお、当該評価項目については、健康教育及び健康相談、健康診査の項目ともあわせて活用することが求められる。

◇基準
 歯周疾患が若年層から発生するようになっているが、数多くの患者が自覚のないままに潜在しているのが現状であり、生活の場における潜在患者の早期発見と適切な歯口清掃方法等の口腔衛生指導の実践が急務とされている。そのためには、歯周疾患検診と口腔衛生指導とが実施できる体制の整備が必要であり、地元歯科医師会や歯科衛生士会、保健所、かかりつけの歯科医等との協力体制が欠かせない。
 口腔保健の推進のためには、集団健康教育及び重点健康相談の実施はもとより、老人保健事業や、市町村でおこなわれている介護予防事業などにも組み込むことが望まれる。

◇評価項目 評価の目安
76.歯周疾患検診及び口腔衛生指導を実施できる体制が整備されていますか。 はい/いいえ
77.体制の整備のために地元歯科医師会及び歯科衛生士会、保健所などの協力は得られていますか。 (関係機関との連携)
 定期的に会合をもち、体制整備に協力を得ている。
 必要に応じて会合をもち、体制整備に協力を得ている。
 会合をもつことはあるが、特に体制整備の協力は得ていない。
 特に連携は図っていない。
78.具体的な事業目標が設けられていますか。 (目標)
 市町村として全体で明確な数値目標が設定されている。(例:8020)
 一部の集団に対して数値目標が設定されている。(例:歯周疾患など)
 目標は特に設けていない。
 事業を行っていない。
79.事業の成果を評価していますか。 (評価)
 定期的に行っている。
 時々行っている。
 特に行っていない。
 事業を行っていない。
80.健康教育及び健康相談、訪問指導などの保健事業に口腔保健を取り入れていますか。 (他の保健事業への導入)
 保健事業の全般にわたり取り入れている。
 保健事業の一部に口腔保健を取り入れている。
 歯周疾患検診のみ実施している。
 口腔保健事業は実施されていない。
81.要介護者等の口腔保健について、介護支援専門員等と歯科医師、歯科衛生士との連携を図っていますか。 (介護支援専門員等と歯科医師等との連携)
 定期的な会合を持ち、連携を図っている。
 定期的な会合はないが、両者に情報提供を行っている。
 口腔ケアに関する一般的な普及啓発を行っている。
 特に何もしていない。

(参考)がん検診

 がん検診については、平成10年度より一般財源化しているところであるが、国(厚生労働省)としては、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」を示している。この指針等の内容を踏まえ、標準的な評価内容を記したので参考とされたい。

◇ねらい
 今日の医学・医療水準において、多くのがんは早期に発見すれば治癒が望めることから、早期発見・早期治療により死亡率を減少させることを目的として、がん検診を実施している。

◇基準
 がんは好発年齢、家族歴、喫煙の有無などにより、リスク分類が、ある程度可能であり、効率的・効果的な検診の実施計画の策定が必要である。「健康日本21」におけるがん検診受診者数について、胃がん検診は1997年の受診者数の1401万人を2010年までに2100万人以上、子宮がん検診は1241万人を1860万人以上、乳がん検診は1064万人を1600万人以上、肺がん検診は1023万人を1540万人以上さらに大腸がん検診は1231万人を1850万人以上にすることを数値目標としている。
 胃がん及び子宮頸がんは、近年、減少しつつあるが、いまだ国際的な比較においてもわが国は死因の上位を占めている。胃がん検診による死亡率の減少効果が認められることから、これらのがん検診の意義は高い。
 肺がん及び大腸がんは、近年、増加傾向が認められる。したがって、肺がんについては、問診によるハイリスク・グル−プの選定を行い、喀たん細胞診対象者への重点的な受診者数向上の取組が求められている。大腸がん検診では、便潜血検査によるスクリ−ニング・テストに続く、大腸内視鏡検査等の精密検査体制の整備が必要である。また、検診によって発見された症例の取り扱いについては、精密検査を含む検診体系全体で、検診の効率・効果を考える必要があり、特に大腸がん検診では、そのことに充分留意する必要がある。
 乳がんの罹患率及び死亡率は年々増加しているが、早期発見による早期治療を行うことで良好な予後が期待できる。さらに、自己検診の効果に対する期待も高く、乳がん検診時の受診者に対する保健指導も重要である。

◇評価項目 評価の目安
1.がん検診の実施計画の策定及び運営はどのように行われていますか。 (実施計画の策定及び運営)
 医師会・受託実施機関関係者を含めた常置委員会で、毎年検討している。
 常置委員会はないが、医師会・受託実施機関関係者と調整するための会議をもっている。
 特に外部の関係者とは調整していない。
 担当者に一任している。
2.受託実施機関の検診体制について、精度管理などの情報を十分に把握していますか。 (受託実施機関の検診体制)
 全ての検診について把握している。
 一部の検診について把握している。
 全く把握していない。
 精度管理に関心がない。
3.検診を受診する者が容易に受診できるように場所や回数について検診対象者への周知がなされていますか。 はい/いいえ
4.がん検診の結果は速やかに受診者に通知されていますか。 (検診結果の通知)
 検診後、全て1か月以内に通知されている。
 一部の結果は検診後、1か月以内に通知されている。
 結果を通知するのに検診後、1か月以上かかる。
 異常者にのみ結果を通知し、正常者には結果を通知していない。
5.がん検診の実施とともにがん予防対策を総合的に行っていますか。 (がん予防対策の実施)
 一次予防から三次予防まで総合的に行っている。
 一次予防に係わる情報を活用して二次予防を実施している。
 一次予防と二次予防が個別に実施されている。
 検診は実施しているが、がん予防対策は十分であるとはいえない。
6.検診結果は継続的に観察できるように記録が個人別・年次別に整理されていますか。 (記録の整理)
 全てのがん検診について個人記録が年次別に整理されている。
 一部のがん検診について個人記録が年次別に整理されている。
 毎年のがん検診の記録はあるが、個人別に整理されていない。
 がん検診の年次別記録はない。

●各がん検診の評価に必要な指標
◇評価項目 評価の目安
○以下のがん検診に係わる指標について年次別に整理されていますか。
 それぞれ全てのがん検診について年次別に整理されている。
 一部のがん検診について年次別に整理されている。
 毎年のがん検診の記録はあるが年次別に整理されていない。
 がん検診の年次別記録はない。
・胃がん年齢調整死亡率(男)
・胃がん年齢調整死亡率(女)

・肺がん年齢調整死亡率(男)
・肺がん年齢調整死亡率(女)

・大腸がん年齢調整死亡率(男)
・大腸がん年齢調整死亡率(女)

・子宮頸がん年齢調整死亡率
・子宮体がん年齢調整死亡率

・乳がん年齢調整死亡率
 


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