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V 「バイオ・ゲノムの世紀」に対応した安全確保対策の充実

○ 人又は動物の細胞、組織等に由来する原材料を用いて製造される生物由来製品は、その高い有効性に期待が寄せられており、今後、科学技術の進展に応じた新しい製品の開発が更に促進されることが見込まれている。

○ 一方で、生物由来製品は、その特性として、原材料の汚染に由来する感染リスク等について、特段の注意を払う必要がある場合があることを踏まえ、生物由来であるというこの共通の特性に着目し、原料採取・製造から使用に至る、一貫した安全確保体制を導入することにより、これらの製品に係る安全性の更なる向上を図る。


[現状]

1 生物由来製品とは

(1) 細胞、組織等に由来する原材料を用いて製造される医薬品・医療機器。従来から知られたものとしては、例えば、血液製剤、ワクチン、遺伝子組換製剤等。

(2) 化学的合成品たる医薬品と比較した場合の主要な特徴(例示)

(1) その原料が生物組織等であることから、未知の感染性因子を含有している可能性が否定できない場合があること

(2) 不特定多数のヒトや動物から採取した組織・血液等を用いて製品化するため、製品ごとに個々のドナー(提供者)の影響を受けやすいこと

(3) 細胞・組織等としての機能を維持するに当たって、感染因子の不活化処理等に限界がある場合があること

2 生物由来製品に対する現行薬事制度における対応

 現行薬事制度においては、生物学的製剤基準等の一定の上乗せ基準は定められているものの、生物由来製品の特性に応じた法的位置付けや対応については、必ずしも十分にはなされていないという指摘がある。


[具体的な見直し項目(案)]

1 生物由来製品の定義と感染リスクに応じた分類
2 原材料採取段階及び製造段階における品質、安全性の確保
3 製品を適正に使用するための措置
4 市販後安全対策の充実


[見直し(案)の概要]

1 生物由来製品の定義と感染リスクに応じた分類

○ 多種多様な生物由来製品につき、感染リスク等に対応した安全対策を講じるため、法的な定義を置くとともに、2つの類型に分類すること。

 《生物由来製品の定義と分類》

〔生物由来製品〕人又は動物の細胞、組織等に由来する原材料を用いて製造される医薬品・医療機器等のうち、保健衛生上特別の注意を要するもの
  [例] 遺伝子組換製剤、自己由来製品、ワクチン等

〔特定生物由来製品〕生物由来製品のうち、その特性に鑑み、当該製品による保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するための特段の措置を講ずることが必要なもの
  [例] 人血液製剤、人細胞組織医薬品、動物「生」細胞組織医薬品・医療機器等

注) 具体的な品目は、厚生労働大臣が指定。



2 原材料採取段階及び製造段階における品質、安全性の確保

(1) 生物由来製品の原材料の特性を踏まえた採取時からの安全確保

○ 「特定生物由来製品」については、その感染リスク等を踏まえ、原材料となる細胞・組織の採取時における感染症検査など、感染症伝播リスクの軽減に特段の留意を行わなければならないことに鑑み、原材料採取の方法等につき、保健衛生上の観点から定める品質等基準(いわゆる42条基準)に関し、厚生労働大臣が定める付加的な基準(※)に適合しなければならないこと。

※ 厚生労働大臣が定める付加的な基準(42条基準の上乗せ基準)においては、細胞・組織等の採取に際してのドナースクリーニング(問診、ウイルス検査等)、必要な記録、具体的に必要な衛生管理設備や採取方法等を規定する予定。

(2) 生物由来原材料に関する記録の保管

○ 「生物由来製品」については、その特性を踏まえた共通の安全対策として、厚生労働省令で定めるところにより(※)、原材料記録を保管しなければならないこと。

※ 厚生労働省令においては、原産国、使用部位、動物管理の状況等を規定することを検討中。

(3) 生物由来製品の特性を踏まえた製造関係諸基準の設定

○ 「生物由来製品」については、高度な製造工程管理を必要とすることを踏まえ、(2)に掲げるもののほか、製造所における構造設備や製造管理・品質管理の方法(いわゆるGMP)に関し、通常の医薬品・医療機器等における製造基準に加え、厚生労働省令(※)で定める付加的な基準に適合しなければならないこと。

※ 厚生労働省令においては、概ね以下のことを規定する予定。

(4) 生物由来製品の特性を踏まえた諸基準の遵守

(1) 「生物由来製品」は、(2)・(3)に掲げる付加的な製造関係諸基準(GMP)を踏まえて製造されなければならないものであること。

(2) (2)・(3)に掲げる製造関係諸基準(GMP)に違反した製造施設や、これらの基準に違反している製品を正当な品質管理なく販売した元売業者は、製造施設認定や元売業許可の取消し、当該品目に係る法第56条・第65条による販売等禁止処分等の対象となること。


3 製品を適正に使用するための措置

(1) 生物由来製品に係る表示ルール等

(1) 「生物由来製品」の特性に鑑み、その表示については、通常の医薬品・医療機器等における基準に加え、(2)・(3)に定めるところにより付加的な基準を定めること。

(2) 「生物由来製品」直接の容器・被包には、当該製品が生物由来製品である旨等を記載しなければならないこと。

(3) 「生物由来製品」添付文書等には、使用者に対し、当該製品が生物由来製品である旨その他の必要な情報を記載しなければならないこと。

(2) 生物由来製品に係る必要な情報の提供

○ 「生物由来製品」の特性を踏まえた安全性と有効性(いわゆるリスクとベネフィット)について、関係者が必要な情報を共有している必要があると考えられることを踏まえ、関係者は、その使用者等に対して、生物由来製品に係る必要な情報の提供を行うこと。


4 市販後安全対策の充実

(1) 特定生物由来製品に係る記録の作成、保存等

○ 「特定生物由来製品」については、感染因子が混入していることが判明した場合に、その時点において可能な安全確保措置(遡及調査等)を速やかに講ずることを可能とするため、関係者が必要な記録を作成・保存しなければならないこととすること。

(2) 生物由来製品に係る感染症定期報告制度の導入

○ 最新の科学的知見を安全対策に反映させるため、「生物由来製品」の元売業者は、当該製品の原材料となる人・動物の細胞・組織等の感染症等に関する文献等の収集を図り、また、収集された情報と当該製品に関する過去の感染症の発現症例等の集積情報との因果関係も含めて情報の評価を行い、当該製品の安全性に係る見解その他必要な事項を、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に定期的に報告しなければならないこと。



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