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IV 医療機器に係る安全対策の抜本的な見直し

○ 医療機器には、メス・ピンセットから画像診断装置、ペースメーカに至るまで多種多様な製品があるが、医薬品同様、疾病の診断、治療・予防等に用いられるものであるため、保健衛生上の観点から、薬事法により各種の安全対策が講じられている。

○ 医療機器の構造の複雑化や医療の高度化等に対応して医療機器に係る安全対策を抜本的に見直すため、医薬品同様の対策を講じるべきものや、医療機器の特性を踏まえた対策を講じるべきものの、それぞれについて、各種安全対策の一層の充実を図る。


[現状]

1 医療機器とは

(1) 疾病の診断、治療又は予防等を目的とする一定の器具器械等については、医療機器として、医薬品同様、保健衛生上の観点から、薬事法による規制の対象。

(2) 現行薬事法による主な規制は以下のとおり。

(1) 製造業に係る許可制度
(2) 個別品目ごとの製造承認制度(リスクの低い一定の品目については、承認不要)
(3) 販売業に係る届出制度(リスクの低い一定の品目の取扱いについては、届出不要)

(3) なお、医療用具という法律上の名称は、現在の実態にあわないので、「医療機器」に変えるべきとの指摘あり。


2 医薬品との比較で見た場合の医療機器の特徴

(1) 医薬品との共通点

 医薬品同様、疾病の治療等に用いられるものであるから、保健衛生上の観点からの規制が行われる必要があること。

(2) 医薬品との相違点

 メス・ピンセットから画像診断装置、ペースメーカに至るまで、実に様々な品目があり、製造技術・素材や使用形態・リスクの面において、医薬品以上の多様性を有する場合があること。


[具体的な見直し項目(案)]

1 医療機器のリスクに応じたクラス分類制度の導入
2 低リスクの医療機器に係る第三者認証制度の導入
3 医療機器の販売業・賃貸業に係る安全対策の強化
4 医療機器に係る治験制度等の充実
5 その他 (法制上の名称の変更、等)


[見直し(案)の概要]

1 医療機器のリスクに応じたクラス分類制度の導入

○ 多種多様な医療機器につき、人体に与えるリスクに対応した安全対策を講じるため、国際分類等を踏まえ、以下の3つの類型に分類すること。

 《医療機器に係るクラス分類》

〔極低リスク医療機器〕人体へのリスクが極めて低い医療機器
  [例] メス、ピンセット、X線フィルム等

〔低リスク医療機器〕人体へのリスクが比較的低い医療機器
  [例] MRI、電子式血圧計、消化器用カテーテル等

〔高リスク医療機器〕人体へのリスクが比較的高い医療機器
  [例] 透析器、ペースメーカ、放射線治療装置等

注) 1. クラスごとの医療機器の呼称については、検討中。
   2. また、具体的な品目は、厚生労働大臣が指定。



2 低リスクの医療機器に係る第三者認証制度の導入

(1) 低リスク医療機器に係る第三者認証制度の導入

○ 国レベルでの承認審査の重点化の一環として、低リスク医療機器のうち厚生労働大臣が適合性認証基準を定めた品目については、現行の厚生労働大臣による承認制度に代えて、公平・公正な第三者認証機関による基準適合性認証を受けることとすること。

(2) 第三者認証機関の認定と監督等

(1) 第三者認証機関の認定は、申請に基づき、厚生労働大臣が行うこと。

 《第三者認証機関の主な認定要件》

1 法人であること。
2 基準適合性認証業務の的確かつ円滑な遂行能力を有すること。
3 基準適合性認証業務が不公正になるおそれがないよう、一定の基準に適合すること。 等

(2) 第三者認証機関の認定は、更新制とすること。

(3) その他、第三者認証機関における認証業務の実施義務・守秘義務・業務規程等や、第三者認証機関に対する厚生労働大臣の指導監督規定等、第三者認証制度の実施に際しての必要事項を定めること。

(3) 第三者認証機関による基準適合性認証業務の実施

(1) 医療機器の元売業者(※。仮称)は、低リスク医療機器の元売を行おうとするときは、当該医療機器が厚生労働大臣の定める適合性認証基準に適合していることにつき、第三者認証機関による基準適合性認証を受けなければならないこと。

※ 「元売」は、承認・許可制度の見直し後の業形態であり、仮称(以下同じ)。VIを参照。

(2) 第三者認証機関は、医療機器の元売業者の求めに応じて基準適合性認証のための審査を実施し、厚生労働大臣の定める適合性認証基準に適合していると認めるときは、当該品目につき認証を与えること。

(3) 第三者認証機関による基準適合性認証は、更新制とすること。


3 医療機器の販売業・賃貸業に係る安全対策の強化

(1) 高リスク医療機器等の販売業・賃貸業への許可制の導入

(1) 医療機器の販売・賃貸における安全対策をより一層推進していく必要性に鑑み、現在、都道府県知事への届出制とされている医療機器の販売業・賃貸業のうち、高リスク医療機器及び特定保守管理医療機器(仮称。※)に係る販売業・賃貸業については、現行の届出制に代えて都道府県知事の許可を必要とすること。

※ 特定保守管理医療機器(仮称):保守点検、修理その他管理に専門的な知識及び技術を必要とする医療機器。[例] レントゲン装置、CT装置、人工呼吸器等

(2) 高リスク医療機器等の販売業・賃貸業の許可要件として、営業所の管理者の設置、一定の構造設備の具備等を定めること。

(2) 医療機器の販売業・賃貸業全般に共通する安全対策の充実

○ 医療機器の販売・賃貸全般についての安全対策を充実するため、高リスク医療機器等以外の医療機器の販売業・賃貸業も含め、医療機器の販売業・賃貸業全般に共通する遵守要件(※)を強化し、新たに、納品先記録の作成・保管、一般消費者への適正使用のための情報提供、中古品販売時における元売業者からの指示事項の遵守、等を定めること。

※ 現行の遵守要件(具体的内容は厚生労働省令で規定)においては、営業所における品質の確保義務や苦情の適正な処理義務等を規定。


4 医療機器に係る治験制度等の充実

(1) 治験計画の30日前届出、治験の実施に係る有害事象の報告等、現行の医薬品に係る治験の例と同様に、医療機器の治験の取扱いに係る制度の充実を図ること。

(2) 臨床試験の実施の基準(GCP)、資料信頼性基準及び非臨床試験の実施の基準(GLP)について、現行の医薬品に係る治験の例と同様に、医療機器の治験の実施等に係る基準の法的根拠規定を整備すること。


5 その他

(1) 法制上の名称を「医療用具」から「医療機器」に変更

○ 医療機器の多様化や高度化の実態等を踏まえ、薬事法上、従来、「医療用具」としていた法制上の名称を「医療機器」に変更すること。

(2) 医療機器に係る表示事項の充実

(1) 医療機器本体や直接の容器・被包に、製造業者名その他の基本情報を表示しなければならないこととされている現行の表示ルールについて、医療機器の高度化・複雑化に対応した安全対策の充実を図るため、(2)・(3)に定めるところにより、必要な見直しを行うこと。

(2) 医療機器全般について求められている本体又は直接の容器・被包への表示事項については、現行の製造業者名等に加え、新たに、医療機器の名称、製造番号・製造記号等を表示しなければならないこと。

(3) 特定保守管理医療機器(仮称。人工呼吸器等、保守点検、修理その他管理に専門的な知識・技術を必要とする医療機器。3(1)(1)※参照。)については、中古品の流通実態等を踏まえ、本体に直接表示すべき事項を新たに定めるものとし、具体的には、元売業者名、医療機器の名称、製造番号・製造記号等の直接表示を行わなければならないものとすること。

(3) 医療機器修理業に係る位置付けの明確化

○ 医薬品・医療機器等の製造業に係る規定の改正に伴い、従来、製造業の一類型として政令で位置付けられてきた修理業について、位置付けの法的明確化を図るとともに、中古品修理に際しての元売業者からの指示事項の遵守等、遵守要件を強化すること。



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