平成13年1月30日
I 調査の概要
この調査は、家庭状況等主として環境上の理由により、児童福祉法に基づいて、里親に委託されている児童、養護施設、情緒障害児短期治療施設、教護院及び乳児院に措置されている児童、母子寮に措置されている母子世帯の児童並びに保護者の実態を明らかにして、要保護児童の福祉増進のための基礎資料を得ることを目的とした。
調査の対象及び客体は、全国の里親委託児童、養護施設(平成10年2月1日現在526施設)、情緒障害児短期治療施設(同16施設)、教護院(同57施設)及び乳児院(同115施設)の入所児童並びに母子寮(同302施設)の児童及び保護者を対象として、その全員を調査客体とした。
なお、平成9年の法改正で一部施設について施設名称が改められたが、本調査は改正前に行われたため、ここでは改正前の名称を使用することとする。
調査の時期は、平成10年2月1日であり、これまで5年度ごとに実施してきた。
II 調査結果の要点
1 児童の状況
(1)現在委託中の児童数等
前回調査に比べ、児童の平均年齢はいずれも低年齢化している。
|
児童総数 |
|
平均年齢 |
委託(入所) 時の平均年齢 |
平均委託・ 在所期間 |
|
性別 |
||||||
男 |
女 |
|||||
里親委託児 |
2,175人 |
1,154人 |
1,013人 |
9.2歳 |
3.9歳 |
5.4年 |
(2,678) |
|
|
(9.6) |
(4.4) |
(5.2) |
|
養護施設児 |
26,979人 |
14,698人 |
11,972人 |
10.2歳 |
5.7歳 |
4.8年 |
(26,725) |
|
|
(11.1) |
(6.4) |
(4.7) |
|
情緒障害児 |
623人 |
365人 |
247人 |
12.2歳 |
10.9歳 |
1.4年 |
(491) |
|
|
(13.0) |
(11.8) |
(1.2) |
|
教護院児 |
1,920人 |
1,336人 |
548人 |
14.2歳 |
13.2歳 |
1.0年 |
(1,925) |
|
|
(14.6) |
(13.7) |
(0.9) |
|
乳児院児 |
2,720人 |
1,391人 |
1,316人 |
1.0歳 |
0.2歳 |
1.1年 |
(2,693) |
|
|
(1.4) |
(0.5) |
(0.9) |
|
母子寮児 |
6,840人 |
3,087人 |
3,704人 |
7.9歳 |
4.9歳 |
* |
(7,518) |
|
|
(8.5) |
(5.4) |
* |
(2)委託(入所)経路
里親委託児については、「乳児院から」が39.4%、「家庭から」が28.9%、「養護施設から」が24.5%となっており、3つの経路に分かれている。一方、養護施設児、情緒障害児、教護院児及び乳児院児については、「家庭から」が大多数を占め、それぞれ 72.6%、92.6%、73.3%及び83.1%となっている。
(3)就学状況
措置児童の就学状況をみると、里親委託児及び母子寮児では「就学前」が最も多く、それぞれ36.1%(前回34.4%)、38.8%(前回29.9%)となっている。養護施設児、情緒障害児及び教護院児では「中学校」がそれぞれ22.8%(前回26.2%)、54.1%(前回60.9%)、74.7%(80.9%)であり、前回調査に比べいずれも減少しているが、高校生は増加している。
(単位:%)
|
総数 |
就学前 |
小学1〜3年 |
小学4〜6年 |
中学校 |
中学卒 |
|
高校 |
その他 |
||||||
里親委託児 |
100.0 |
36.1 |
13.6 |
15.2 |
17.8 |
15.6 |
1.4 |
|
(34.4) |
(14.8) |
(16.7) |
(18.4) |
(13.9) |
(1.9) |
|
養護施設児 |
100.0 |
22.6 |
18.2 |
20.1 |
22.8 |
13.8 |
1.8 |
|
(19.3) |
(17.8) |
(20.9) |
(26.2) |
(13.6) |
(2.3) |
|
情緒障害児 |
100.0 |
0.2 |
13.2 |
27.0 |
54.1 |
2.3 |
2.1 |
|
(-) |
(9.8) |
(28.1) |
(60.9) |
(0.4) |
(0.8) |
|
教護院児 |
100.0 |
- |
0.6 |
8.3 |
74.7 |
4.1 |
9.0 |
|
(-) |
(0.4) |
(5.5) |
(80.9) |
(1.7) |
(11.5) |
|
母子寮児 |
100.0 |
38.8 |
20.8 |
18.3 |
13.1 |
5.4 |
0.8 |
|
(29.9) |
(22.4) |
(20.8) |
(16.1) |
(5.1) |
(5.7) |
(4)心身等の状況
児童の心身の状況については、里親委託児、養護施設児、乳児院児及び母子寮児において「障害あり」の割合が、それぞれ8.9%(前回6.0%)、10.3%(前回9.5%)、28.1%(前回18.6%)、8.4%(前回8.1%)となっており、いずれも前回調査より増加している。新規に調査した情緒障害児、教護院児において「障害等あり」の割合はそれぞれ48.2%、11.1%であった。
(5) 特に指導上留意している点
指導上留意している点については、「留意している点あり」が里親委託児87.4%(前回58.4%)、養護施設児96.2%(前回83.1%)、情緒障害児97.8%(前回100.0%)、教護院児98.5%(前回98.0%)、母子寮児86.6%(前回61.9%)となっている。
「心の安定」を留意点としてあげているのは共通な傾向であるが、その他の特徴として、里親委託児及び養護施設児では「しつけ」がそれぞれ33.6%、45.5%、情緒障害児では「家族との関係」75.0%及び「心理的対応」70.0%、教護院児では「家族との関係」57.4%、「社会規範」54.4%となっている。
|
総数 |
留意している |
留意点(重複回答) |
||||||
心の安定 |
友人との |
家族との |
学習の興味 |
しつけ |
心理的 対応 |
社会規範 |
|||
里親委託児 |
2,175 |
1,900 |
939 |
443 |
258 |
508 |
731 |
* |
240 |
100.0% |
87.4% |
43.2% |
20.4% |
11.9% |
23.4% |
33.6% |
* |
11.0% |
|
養護施設児 |
26,979 |
25,957 |
15,058 |
7,931 |
10,520 |
9,717 |
12,262 |
1,133 |
4,490 |
100.0% |
96.2% |
55.8% |
29.4% |
39.0% |
36.0% |
45.5% |
4.2% |
16.6% |
|
情緒障害児 |
623 |
609 |
415 |
402 |
467 |
146 |
166 |
436 |
124 |
100.0% |
97.8% |
66.6% |
64.5% |
75.0% |
23.4% |
26.6% |
70.0% |
19.9% |
|
教護院児 |
1,920 |
1,891 |
1,096 |
840 |
1,103 |
708 |
736 |
96 |
1,044 |
100.0% |
98.5% |
57.1% |
43.8% |
57.4% |
36.9% |
38.3% |
5.0% |
54.4% |
|
母子寮児 |
6,840 |
5,925 |
2,840 |
2,201 |
1,952 |
1,773 |
2,924 |
* |
715 |
100.0% |
86.6% |
41.5% |
32.2% |
28.5% |
25.9% |
42.7% |
* |
10.5% |
(6)学業の状況
学業の状況については、里親委託児、養護施設児及び母子寮児では「特に問題なし」が最も高く、その割合はそれぞれ45.1%、48.5%、42.8%となっているが、情緒障害児及び教護院児では「遅れがある」が最も高く、その割合はそれぞれ57.8%、65.6%となっている。
2 養護問題発生理由
養護問題が発生した主たる理由を一つだけ尋ねた。里親委託児では「養育拒否」23.8%(前回21.2 %)、「父母の行方不明」17.9%(前回17.5%)が多い。養護施設児では「父母の行方不明」14.9%(前回18.5 %)、「父母の就労」14.2%(前回11.1%)、「父母の入院」9.1%(前回11.3 %)となっている。なお、養護施設児で「父母の死亡」は3.5%(前回4.7%)であった。
また、情緒障害児の場合には「特になし」38.7%(前回45.6%)、「父母の虐待・酷使」11.6%(前回4.5%)、「父母の放任・怠だ」10.0%(前回8.1%)で、教護院児では「父母の放任・怠だ」23.5 %(前回26.2%)、「父母の離婚」16.8%(前回24.1%)、「父母の虐待・酷使」6.7%(前回3.8%)となっている。
乳児院児では「父母の精神疾患等」13.0%(前回8.7%)、「両親の未婚」が12.2%(前回21.4%)となっている。(p9 表11)
なお、一般的に「虐待」とされる「放任・怠だ」「虐待・酷使」「棄児」「養育拒否」を合計すると、里親委託児は全体の39.1%(前回35.4%)、養護施設児19.2%(前回16.0%)、情緒障害児24.4%(前回15.5%)、教護院児34.6%(前回33.5%)、乳児院児16.6%(前回14.0%)となっており、前回調査に比し、里親及びすべての施設において虐待を理由とした委託及び入所の比率が高くなっている。
3 家族との交流関係
一時帰宅や面会等の家族との関係について「交流なし」の割合は、里親委託児で最も高く82.2%(前回84.4%)である。養護施設児では17.6%(前回21.4%)、情緒障害児では2.7%(前回2.0%)、教護院児では6.7%(前回8.1%)、乳児院児では22.6%(前回27.6%)となっている。
4 児童を委託されている里親家庭の状況
(1)里親申し込みの動機
現に委託されている里親家庭の総数は1,731世帯となっており、前回調査(平成4年12月1日)時点の2,194世帯より463世帯(21.1%)減っている。
里親申し込みの動機別の里親家庭数は、「子どもを育てたいから」の37.6%(前回33.5%)が最も多く、「養子を得たいため」の32.2%(前回31.9%)を上回っている。
(2)委託児童別里親家庭数
委託児童数は、「1人」が81.4%(前回61.0%)と最も高く、「2人」の13.9%(前回23.2%)と合わせて里親家庭の大部分を占めている。
なお、前回調査に比べると「1人」が増え、「2人」が減っている。
5.母子寮入所世帯の状況
(1) 母子寮入所世帯数
母子寮に入所している世帯数は4,233世帯(前回4,479世帯)で、児童「1人」の世帯は54.9%(前回51.8%)、「児童2人」は 31.7 %(前回32.7%)、児童「3人以上」は13.4%(前回15.6%)となっている。
(2) 母子世帯になった理由
母子世帯になった理由は、「離婚」69.1%(前回69.6%)、「未婚の母」15.0%(前回14.0%)、「遺棄」4.6%(前回5.3%)、「死別」2.6%(前回3.6%)の順であり、「未婚の母」が増え「死別」が減っている。
6.養護施設入所中の年長児童(中学3年生以上)の状況
(1)就学状況
今回の調査で回答を得た年長児童数は、6,549人であった。その内男子は3,374人(51.5%)、女子は3,013人(46.0%)である。
就学状況の割合は、次のとおりである。
|
総数 |
中3 |
高1 |
高2 |
高3 |
専修・職訓 |
その他 |
総数 |
6,549 |
2,226 |
1,410 |
1,232 |
1,092 |
159 |
270 |
100.0% |
34.0% |
21.5% |
18.8% |
16.7% |
2.4% |
4.1% |
(2)児童の生活行動経験
おもいやりの行動や社会的自立に関わる行動として、最も多く経験しているのは、「自分の気に入った洋服や持ち物を選んで買ったこと」の91.0%、逆に最も少ないのは「自分や友人たちと計画して旅行したこと」の21.0%となっている。男女間で差の大きい項目は「赤ちゃんをあやしたり、おむつの世話をしたこと」で女子が28.3ポイント大きくなっている。
今回新たに項目を設定したいじめに関しては、「大勢でいじめた」が全体で25.9%、「いじめを受けていた」が35.1%であり、男女別では、「大勢でいじめた」が男子27.5%、女子25.6%、「いじめを受けていた」が男子29.7%、女子42.8%となっている。
(3)大切なこと
大切なことと思うことについて、最も選択率が高かったのは、「友達がたくさんいること」の54.1%で、次いで「健康であること」の53.6%、「将来に夢を持っていること」の50.9%となっている。
逆に、最も選択率が低かったのは、「勉強ができること」及び「人がいやがることをすすんでやること」の9.3%、次いで「お金がたくさんあること」の16.2%となっている。
男女間で差の大きい項目は、「運動や歌などで、何か得意なもの(特技)があること」で男子が13.4ポイント大きいのに対し、女子が「勇気を持っていること」で8.0ポイント、「家族で仲良く生活すること」で7.7ポイント大きくなっている。
(4)進学希望
養護施設入所児童のうち、中学3年生の高等学校又は各種学校への進学を希望する者の割合は、82.7%(前回77.2%)であり、まだ考えていない者は5.7%(前回6.8%)、進学を希望していない者は11.6%(前回14.6%)となっており、前回調査より進学希望が増えている。
男子(80.1%)よりも女子(86.0%)の方が進学希望の割合は高い。
養護施設入所中の中3以上の年長児童全員の、大学又は短期大学への進学希望の割合は18.5%(前回15.5%)、考えていない26.1%(前回25.9%)、希望しない55.4%(前回54.4%)となっており、前回調査に比し進学希望が増えている。
性別では、女子の方が6.1ポイント高い。
(5)将来の希望−家庭復帰、結婚、自立−
早くもとの家庭へ復帰したい者は、全体で41.9%(前回47.0%)であるが、特に、中学3年生では52.6%(前回55.6%)が希望しており、中学卒業後は減少傾向となり、高校3・4年生では30.7%(前回32.4%)となっている。
早く結婚して落ち着いた家庭を作りたいと答えた児童は、39.6%(前回36.3%)で、中学3年生では40.2%(前回34.9%)が希望しているが、中学卒業後もほぼ同じ傾向であり、高校3・4年生では40.9%(前回39.0%)となっている。
施設を出て、自活することに自信があると答えた児童は、33.5%(前回36.6%)となっており、性別では男子が40.0%(前回42.4%)となっているのに比べ、女子が27.9%(29.0%)と少ない。中学3年生で34.5%(前回35.0%)であるが、高校3・4年生では、37.4%(前回41.5%)となっている。
また、前回調査の比較すると、性別や学年にかかわらず、自分で生活することに自信があるとする回答は漸減している。
7.教護院の年長児童(中学3年生以上)の状況
(1)就学状況
今回の調査で回答を得た年長児童数は、955人であった。その内男子は617人(64.6%)、女子は299人(31.3%)である。
就学状況の割合は、次のとおりである。
|
総数 |
中3 |
中卒 |
高校生等 |
総数 |
955 |
701 |
110 |
106 |
100.0% |
73.4% |
11.5% |
11.1% |
(2)児童の生活行動経験
児童の生活行動経験について、最も多く経験しているのは、「自分の気に入った洋服や持ち物を選んで買ったこと」の89.8%、逆に最も少ないのは「一人で銀行や役所などで手続きをしたこと」の25.8%となっている。男女間で差の大きい項目は「赤ちゃんをあやしたり、おむつの世話をしたこと」で女子が27.7ポイント大きくなっている。
今回新たに項目を設定したいじめに関しては、「大勢でいじめた」が全体で52.5%、「いじめを受けていた」が42.1%であり、ともに養護施設よりも高くなっている。男女別では、「大勢でいじめた」が男子51.4%、女子61.2%、「いじめを受けていた」が男子40.8%、女子49.5%となっている。
(3)大切なこと
大切なことと思うものについて、最も選択率が高かったものは、「家族で仲良く生活すること」の57.3%で、次いで「健康であること」の49.9%、「友達がたくさんいること」の47.2%となっている。
逆に、最も選択率が低かったのは、「勉強ができること」の7.5%、次いで「人の嫌がることをすすんでやること」の10.7%、「お金がたくさんあること」の17.6%となっている。
男女間で差の大きい項目は、「運動や歌などで、何か得意なもの(特技)があること」で男子が10.1ポイント大きいのに対し、「勇気を持っていること」で女子が12.0ポイント大きくなっている。
(3)進学希望
教護院児のうち、中学3年生の高等学校又は各種学校への進学を希望する者の割合は、52.4%(前回50.2%)、まだ考えていない者は11.6%(前回11.9%)、進学を希望していない者は34.0%(前回36.5%)となっており、前回調査より漸増している。
養護施設児と同様に、男子よりも女子の方が進学希望の割合は高い。
教護院入所中の中3以上の年長児童全員の、大学又は短期大学への進学希望者の割合は8.6%(前回6.5%)、考えていない28.1%(前回28.5%)、希望しない56.2%(前回62.2%)である。性別では、女子の方が進学希望の割合は高い。
(4) 将来の職業の希望等−家庭復帰、結婚、自立−
早くもとの家庭へ復帰したい者は76.0%(前回81.5%)、早く結婚して落ち着いた家庭を作りたいと答えた児童は51.6%(前回49.8%)、施設を出て、自分で生活することに自信があると答えた児童は54.1%(前回56.9%)となっており、前回の調査と比較すれば、児童養護施設と同様、自分で生活することに自信があると答えた児童は漸減している。
照会先
雇用均等・児童家庭局家庭福祉課
内線7885
直通03−3595−2504