ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 雇用環境・均等局が実施する検討会等> 柔軟な働き方に関する検討会> 第4回「柔軟な働き方に関する検討会」議事録(2017年11月20日)




2017年11月20日 第4回「柔軟な働き方に関する検討会」議事録

○日時

平成29年11月20日 10:00~12:00


○場所

厚生労働省議室


○議事

○松村座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第4回「柔軟な働き方に関する検討会」を開催いたします。

 委員の皆様におかれましては、御多用のところお集まりいただき、まことにありがとうございます。

 本日は、これまでの当検討会で議論されてきた企業からのヒアリング、それらを踏まえて事務局が作成した雇用型テレワーク、自営型(非雇用型)テレワーク、副業・兼業、それぞれのガイドライン案等について事務局から説明を行った後、労使関係団体からヒアリングを行い、その後、意見交換をしたいと思います。

 まずは、ヒアリングにお越しいただいた労使関係団体の方を御紹介いたします。資料1をごらんください。

 日本労働組合総連合会総合労働局長、村上さん。

 日本経済団体連合会労働法制本部長、輪島さん。

 日本商工会議所産業政策第二部長、小林さん。

 全国中小企業団体中央会事務局次長、小林さん。

 よろしくお願いいたします。

 それでは、カメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきます。

(カメラ退室)

○松村座長 それでは、早速ですけれども、議題に入りたいと思います。

 まず、事務局より配付資料の確認と、雇用型テレワーク、自営型(非雇用型)テレワーク、副業・兼業、それぞれについてガイドライン案等の御説明をお願いいたします。

○飯田労働関係法課課長補佐 配付資料の御確認をお願いいたします。資料名は割愛させていただきますが、議事次第に記載のように、資料1~資料5と参考資料1~3までとなります。その他、座席表をお配りいたしております。不足などございましたら、事務局までお申しつけください。

○高橋在宅労働課課長補佐 それでは、資料2について御説明いたします。

 本ガイドラインの変更ポイントにつきましては、働き方改革実行計画を踏まえ、大きく分けて3点ございます。まず1点目は、現行のガイドラインは在宅勤務に特化しておりますので、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務にも対応できるものとしております。2点目につきましては、テレワークにおいてもさまざまな労働時間制度が適用できること。3点目は、長時間労働の対策例を推奨しているということでございます。

 限られた時間での御説明になりますので、かいつまんでポイントを説明させていただきます。

 まず、2ページの下から8行目をごらんください。「イ 労働時間制度の適用と留意点」です。ここから7ページにかけて、フレックスタイム制を含む通常の労働時間制度のほか、事業場外みなし労働時間制度や裁量労働制について記載しております。

 まず「(ア)通常の労働時間制度における留意点」でございます。テレワークを行う場合につきましても、使用者は労働時間を管理する責務があること、労働時間の適正な把握ガイドラインに基づき、適切に労働時間管理を行わなければならないこととしております。

 3ページでございますが、テレワークにつきましては、いわゆる中抜け時間などテレワーク特有の事象に留意する必要があり、それについて記載しております。中抜け時間につきましては「マル1いわゆる中抜け時間について」の3行目でございますが、使用者が業務の指示をしないこととし、労働者が労働から離れ、自由に利用することが保障されている場合は休憩時間として取り扱うこと、また、労働者のニーズに応じ、始業時刻を繰り上げたり、終業時刻を繰り下げることが考えられること、あるいは、労使協定を締結することにより、時間単位の年休として取り扱うことが考えられるとしております。

 次に「マル2通勤時間や出張旅行中の移動時間中のテレワークについて」です。3行目のところでございますが、「使用者の明示又は黙示の指揮命令下で行われるものについては労働時間に該当する」としております。

 次に「マル3勤務時間の一部をテレワークする際の移動時間等について」でございます。これにつきましては、例えば午前中に在宅勤務をし、午後から会社に出勤する場合の移動時間の取り扱いについて記載しております。この移動時間が労働時間に該当するか否かは個別具体的に判断することになりますが、最後の行から「使用者が移動することを労働者に命ずることなく、単に労働者自らの都合により就業場所間を移動し、その自由利用が保障されているような時間については、労使で合意し、休憩時間として取り扱うことが考えられる」ということ。一方で、使用者が労働者に移動を命じ、その間の自由利用が保障されていない場合の移動時間は労働時間として考えられるとしております。具体的には、テレワーク中の労働者を使用者が、急遽、至急の出社を求めた場合は労働時間に当たるとしております。

 テレワークと一言でいっても、例えば自宅のみで全ての仕事ができる場合、あるいは会社に保管してある書類を必要に応じ見なければ仕事ができない場合など、個々の会社、あるいは業務内容によってテレワークによる仕事の進め方が異なることが考えられますので、3段落目のなお書きでございますが、ただいま申し上げた中抜け時間や部分的テレワークの移動時間の考え方に基づき、労使間でその取り扱いについて合意を得ていくことが望ましいとしております。

 次に「フレックスタイム制」でございます。1段落目の最後のところですが、テレワークにおいても本フレックスタイム制度を活用することが可能としております。

 フレックスタイム制につきましては、労働者が始業及び終業の時刻を決定する制度ですので、2段落目の後段のところでございますが、中抜け時間については、労働者自からの判断により、中抜けの時間分、その日の終業時刻を遅くしたり、清算期間内の範囲で他の労働日において労働時間を調整したりすることが可能としております。

 また、3段落目でございますが、フレックスタイム制におきましても、労働時間の適正な把握ガイドラインに基づき適切に労働時間管理を行わなければならないとしております。

 引き続きまして、5ページの上のところ「事業場外みなし労働時間制」です。テレワークにおいても事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときは、みなし労働時間制が適用できるとしております。

 具体的な要件としましては、「マル1情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと」、一番下の「マル2随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと」のいずれも満たす必要があるとされております。

マル1の要件を具体的に申しますと、2段落目のところの「例えば」以下の記載でございますが、「回線が接続されているだけで、労働者が自由に情報通信機器から離れることや、通信可能な状態を切断することが認められている場合や、会社支給の携帯電話等を所持していても、労働者の即応の義務が課されていないことが明らかである場合等」は該当することとしております。

 6ページの最後の段落のなお書きのところでございますが、みなし労働時間制を適用する場合であっても、労働者の健康確保の観点から、勤務状況を把握し、適正な労働時間管理を行う責務を有するとしております。

 続きまして、裁量労働制のところでございます。こちらも、7ページの2行目で裁量労働制の対象となる労働者についても、テレワークを活用することが可能であるとしております。なお、こちらも同様で、裁量労働制も健康確保の観点から勤務状況を把握する必要性がございます。

 最後でございますが、8ページのところに長時間労働の対策例を推奨しております。これは、実際に対策をとられている企業の事例を参考にさせていただいたところでございます。

 一番下のところで「マル1メール送付の抑制」、「マル2システムへのアクセス制限」、「マル3テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の禁止」、「マル4長時間労働等を行う者への注意喚起」となっております。

 雑駁でございますが、私からの説明は以上でございます。

○永倉在宅労働課課長補佐 続きまして、資料3、自営型テレワークのガイドライン(案)について御説明させていただきます。すみませんが、時間がありませんので、これもごくごく簡単に説明させていただきます。

 まず1ページ「第2 定義」のところに「(1)自営型テレワーク」という定義を置いてございます。これは、前回も論点案で示させていただいたとおり、これまでは、請負契約に基づくこと、情報通信機器を活用すること、あと、在宅で行うという要件がついていたのですけれども、準委任などの契約形態もあるものですから、「注文者から委託を受け」という形にしております。また、論点案でお示しさせていただいたとおり「主として自宅又は自ら選択した場所」という用語を新しく入れているものになります。

 「(4)仲介事業者」の定義を新たに置いたものになります。これもこれまでの論点などで図を示させていただいておったと思うのですが、それを形にしたらこんなかなということで3つ定義を置いてございます。

 「マル1他者から業務の委託を受け、当該業務に関する仕事を自営型テレワーカーに注文する行為を業として行う者」は、要は再発注をするような仲介事業者のパターンを想定しております。

 マル2、マル3については、受発注自体はテレワーカーと注文者で直接行う形式となるのですけれども、マル2の場合にはあっせんを行う場合、マル3がいわゆるクラウドソーシングを想定しておりまして、インターネットの受発注ができるシステムを運営しているものと定義を置いているものでございます。

 2ページ「第3 関係者が守るべき事項」。これは、これまでは「注文者が守るべき事項」となっていまして、注文者しか想定をしていなかったのですけれども、仲介事業者が守るべき事項もあるのではないかということで「関係者」という用語を置いてございます。

 ここから先の構成ですけれども、個々の項目ごとで仲介事業者が守るべき事項があるものについては、それを主語で書き分けるというやり方にしております。

 時間がないので、ここから先はかいつまんでしか御説明できないのですけれども、基本的には、自営型については前回論点案をお示しさせていただいていますので、それを文書化したというイメージになっております。

 まず2ページの第3の(1)は募集の内容でございます。これも論点案で示させていただいたとおりの内容となるのですけれども、3ページに「ハ その他」がございます。これは前回御議論いただいたところですけれども、「いわゆるコンペ式の場合において、注文者は、採用された提案等の応募者に対し、募集段階で明示されていないような内容で、納品後の成果物の大幅な修正を指示するなど、過大な要求をすることは望ましくない」と。前回の御議論の中でも、そもそも契約外であればやる必要はないと御意見がありました。「大幅な修正を求める場合は、自営型テレワーカーと改めて協議し、合意した上で、適正な追加報酬等を含め契約を見直すこと」という表現を新しく入れさせていただいております。

 次、4ページの後半のところに「(3)契約条件の適正化」という項目がございます。これは、これまでのガイドラインにも入っていたものもありますし、あとは、在宅ワークのガイドラインのパンフレットをつくっているのですけれども、そのパンフレットの解説として記載させていただいたような項目、あるいは前回お示しした今回新しく追加する論点などを踏まえまして書き下しているものになります。

 5ページに「(ハ)報酬の支払方法」というところがあります。これは、前回、論点案の中には入れていないのですけれども、クラウドソーシングなどの仲介事業者が入る場合には、本来であれば注文者がワーカーに対して報酬を支払うのが原則になるのだと思うのですが、クラウドソーシング事業者がかわって払うこともあるやに聞いておりますので、そういう場合には契約条件明示の際にあわせてその旨を明示したらどうかということを新しく追加させていただいています。

 次、9ページをお願いいたします。「(4)その他」の下、イが手数料に関する記載になります。これも前回の論点でお示しさせていただいているのですけれども、仲介手数料などの手数料を取る場合にはあらかじめ明示してから徴収してくださいということを書いているものになります。

 その下「ロ 物品等の強制購入」というのがあります。これも前回の論点案には入っていない中身になるのですけれども、アンケート調査などでも教材などを売りつけられたという結果もあったものですから、自己の指定するものを強制して購入させたり、役務を強制的に利用させることは適切ではないのではないでしょうかということを新しく追加させていただいております。

10ページ「ホ 健康確保措置」というところがございます。これは前回御議論いただいたところになるのですけれども、2パラグラフ目のほうです。「注文者は、自営型テレワーカーから健康確保に関する相談を受けた場合には、相談に応じ、作業の進捗状況に応じた必要な配慮をするよう努めること」と記載させていただいております。前回の論点案のところでは「納期等」という言い方をしていたのですけれども、いただいた御意見を踏まえまして「作業の進捗状況に応じた必要な配慮」という書き方に修正しております。また、その続きですけれども、「その際、相談内容についての情報管理を徹底するとともに、相談者のプライバシーの保護に配慮すること」という一文を加えさせていただいているものになります。

 最後、11ページに「リ その他」を新しく追加しております。これは当たり前の話になるのですけれども、在宅ワークの場合、下請法が適用されるケースもございますので、該当する場合には法律を守るように留意が必要ではないでしょうかというところを加えさせていただいているものになります。

 すみません。時間がないので相当飛ばしてしまったのですけれども、自営型テレワークについては以上になります。

○飯田労働関係法課課長補佐 次に、資料4-1と4-2について説明いたします。

 初めに、資料4-1「副業・兼業の推進に関するガイドライン骨子(案)」をごらんください。

 まず「1 副業・兼業の現状」として、(1)、副業・兼業を希望する者は年々増加傾向にある。一方で、(2)、多くの企業では、副業・兼業を認めていないこととその理由を書いております。また、副業・兼業に関する就業時間や健康管理の取り扱いのルールがわかりにくいとの意見があることを書いております。(3)、副業・兼業自体への法的な規制はないが、モデル就業規則では、労働者の遵守事項に「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定があること、(4)、一方で「裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは、それが労務提供上の支障となる場合、企業秘密が漏洩するなど企業秩序に影響が生じる場合」などと書いております。

 次に「2 副業・兼業の推進の方向性」です。労働者と企業それぞれにメリットと留意すべき点があるとして、ごらんのようにまとめております。

 2ページ(3)ですが、方向性として、自身の能力を一企業にとらわれずに幅広く発揮したいという希望を持つ労働者が、副業・兼業を行える環境を整備することが重要であり、長時間労働を招かないよう留意しつつ、ごらんのマル1からマル3までの対応が必要であるとしております。

 次に「3 企業の対応」です。まず(1)で、裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である。副業・兼業を禁止、一律許可制にしている企業は、副業・兼業が自社での業務に支障をもたらすものかどうかをいま一度精査した上で、労働時間以外の時間については、労働者の希望に応じて、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが求められること。(2)で、その場合、労務提供上の支障や企業秩序への影響がないか、また、長時間労働を招くものとなっていないか確認する観点から、副業・兼業の内容等を労働者に申請・届け出させることも考えられること。(3)で、特に労働者が他の使用者に雇用されて副業・兼業を行う場合には申請・届け出させることが望ましいことを書いております。

 次に、3ページをごらんください。※1で就業時間の把握、※2で健康管理について書いております。

 ※1の1ポツ目ですが、現在の労働基準法第38条の解釈を書いております。2ポツ目には、使用者は、労働者が労働基準法の労働時間に関する規定が適用される副業・兼業をしている場合には、労働者からの自己申告により副業・兼業先での労働時間を把握することが考えられること。3ポツ目は、個人事業主や委託・請負契約等、労働基準法上の労働者でない者として副業・兼業を行う者については、労働基準法の労働時間に関する規定は適用されませんが、その方の自己申告により就業時間を把握することなどを通じて、就業時間が長時間にならないよう配慮することが望ましいことを書いております。

 次に、※2の健康管理ですが、使用者は労働者が副業・兼業をしているかにかかわらず、労働安全衛生法などに基づき健康診断等を実施しなければなりません。2ポツ目ですけれども、その健康管理措置の実施対象者の選定に当たっては、労働時間の通算は不要ですが、使用者が副業・兼業を推奨している場合には必要な健康確保措置を実施することが望ましいということを書いております。

 次、4ページをごらんいただけますでしょうか。最初のポツですが、労使の話し合いにより働き過ぎにならないよう自社での労務と副業・兼業先での労務との兼ね合いの中で、時間外・休日労働の免除や抑制等を行うことが考えられることを書いております。

 次に「4 労働者の対応」です。(1)で、まず、自身が勤めている企業の副業・兼業に関するルールを把握すること。(2)で、労働者みずから、業務量や進捗状況、健康状態を管理する必要があること。(3)で、管理の方法として、勤務時間、健康診断等の記録をつけていくような民間のツールを活用することが考えられることを書いております。(4)は、20万円を超える副収入がある場合には個人による確定申告が必要である旨、記載しております。

 「5 副業・兼業に関わるその他の現行制度について」は、(1)、労災保険の給付、(2)、雇用保険、厚生年金保険、健康保険における現行の取り扱いを記載しております。

 次に、資料4-2「モデル就業規則の改定の方向性(副業・兼業部分)」をごらんください。労働者の遵守事項における副業・兼業に関する規定に関しては、2ページ目をごらんいただきますと、現在、11条の6号に「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」と書いてあります。この規定を削除の上、以下の規定を新設するということで、1枚目に戻っていただきまして、改定案としては、まず1項で「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」とし、2項で「労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする」。3項は、2ページの11条第1号から第5号に該当する場合には「会社は、これを禁止又は制限することができる」としております。

 説明は以上でございます。

○松村座長 ありがとうございました。

 それでは、ヒアリングに移りたいと思います。

 まず、日本労働組合総連合会の村上さんからお願いいたします。

○村上総合労働局長 御紹介いただきました、連合の村上でございます。本日は、このような機会をいただきましてありがとうございます。資料5で、連合としての現時点での考え方を示させていただいておりますが、これに沿いまして若干お話をいたします。

 まず「『柔軟な働き方』に関する基本的な考え方」でございます。この検討会におきましては、柔軟な働き方として、雇用型テレワーク、自営型テレワーク、副業・兼業についてガイドライン(案)を策定すべく検討されていると理解しています。私たちはこれらの働き方の全てを否定するものではありません。しかし、働く者の立場からは、どのような形態であっても、働く人が健康に安全に働けること、そして、労働者としての法的保護がなされることが基盤になければならないと考えています。

 以下は、第1回会合で示された論点を念頭に、雇用型テレワーク、自営型テレワーク、副業・兼業について現時点での考え方を述べたいと思います。

 なお、ガイドライン(案)についての具体的な修正要望等については、別途、事務局に対して書面で提出させていただきたいと思います。

 はじめに、「『雇用型テレワーク』について」でございます。

まず、テレワークおける事業場外労働のみなし労働時間制の適用は慎重であるべきと考えます。雇用型テレワークは、子育てや介護、病気の治療や障がいなどの事情を抱えながら働く人たちにとっては、仕事との両立が可能になることや通勤負担を軽減できるなどのメリットも指摘されています。他方で、プライベートな時間と生活空間と労働とが混在し、長時間労働が生じる懸念もあるため、適切な労働時間管理が不可欠です。本日も資料として示されていますが、テレワークにおける事業場外労働のみなし労働時間制の適用には慎重であるべきです。

 また、ガイドライン(案)には、サテライトオフィス勤務も書かれておりますが、サテライトオフィスは事業場の一部と見るべきであり、事業場外労働とするのは問題であると考えます。また、みなし労働時間制は、実労働時間を規制対象とする労働時間規制の例外を許容するものです。適用要件の1つである「労働時間が算出しがたい場合」に該当するか否かは、阪急トラベルサポート事件の最高裁判決なども踏まえて厳格に判断されるべきであり、ガイドラインもそれに沿った形にするべきと考えます。

 次に、使用者による労働時間管理の内容をガイドラインに盛り込むべきということです。事業場外みなしや裁量労働制のといったみなし労働時間制が採用されている場合でも、使用者は健康確保の観点から労働時間管理の責務を有しています。ガイドラインでは、適用対象者については労働時間の時間帯と休憩に関する管理も必要であることなどを改めて示すべきです。

 また、通常の労働時間制度の運用におけるいわゆる中抜け時間の扱いについては、労使協定の締結よって、その時間を時間単位の年次有給休暇として扱うことなども本日のガイドライン(案)にも示されておりましたが、時間単位の年休にするかどうかというのはあくまでも労働者の権利であると考えます。

 また、就業場所間の移動時間について、労働者の自由利用が保障されている場合以外は原則として労働時間です。その時間内に事故に遭ったような場合は、業務上の災害であるとか、通勤災害に該当することも明らかにするべきであると考えます。

 また、退社後・休日の待機・呼び出しやメールなどの問題についても示されておりまして、それらについては、実態を調査した上で、諸外国の事例なども参考にしつつ、このような働き方、働かせ方に対する規制やルールを検討すべきと考えます。

 次に、「『自営型テレワーク』について」です。

まず、募集から契約履行までの各段階におけるワーカーの保護が必要と考えます。自営型テレワーカーの立場は注文者に対して弱く、不利益をこうむっているケースが少なくありません。本日も資料として出しておりますが、連合が201612月に実施した「クラウドワーカーに関する意識調査」でも、クラウドワーカーの半数以上が報酬の不払い、支払い遅延、作業開始前の一方的な仕事取り消しなど、何らかのトラブルを経験しています。

 「平成27年度今後の在宅就業施策の在り方に関する検討会報告書」で示された改定の論点を踏まえつつ、募集から契約締結、契約履行、契約解除に至るまでの各段階におけるワーカー保護のルールを「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」に盛り込むべきと考えます。さらに、現行のガイドラインではカバーしていない仲介事業者が遵守すべきルールについてもガイドラインに盛り込むことが必要と考えます。

 自営型テレワーカーと注文者との間で業務のあっせんを行う仲介事業者については、職業安定法における職業紹介事業者や労働者派遣法における派遣元事業主に係る規制、また自営型テレワーカーと注文者が業務の受発注を行うことができるプラットフォームを提供する仲介事業者については、職業安定法における募集情報等提供事業者に係る規制を参考に、厚生労働省として各種事業規制を設けることも検討すべきと考えます。

 本日示されたガイドライン(案)に補充いただきたい項目としては、仲介事業者に対して苦情相談窓口を設置するだけでなく、紛争・トラブルに際して仲裁者としての役割を義務づけることや、一定程度のスキルを有するワーカーを自社で囲い込んで注文者への業務のあっせんを行う仲介事業者に対しては、ワーカーに対する教育訓練機会の提供を義務づけるなどの方策も必要ではないかと考えます。

 次に「ガイドラインで示された事項の実効性を担保すべき」という点です。現行の「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」は法的拘束力を有するものではなく、認知度も低く、実効性が伴っているとは言いがたい状況にあります。そのため、ガイドラインの位置づけを法律に基づくガイドラインに改め、行政による指導・監督を可能とするなどの対応が必要であると考えます。

 また、クラウドワーキングでは、ネット上で膨大な契約条項が表示され、自営型ワーカーはその同意・不同意を求められることとなっておりますが、ワーカー自身が契約条項を網羅的に理解し、同意することは困難であります。約款規制などによって契約条件の適正化を図ることも検討すべきと思います。

 最後に「『副業・兼業』について」です。

 1つ目は、副業・兼業を行う労働者像を正確に把握すべきということです。副業・兼業を行う労働者については、高所得かつ専門的スキルを持つ人材が想定されることも昨今の文脈の中には多いのですが、実態としては、生活費補塡のためにやむを得ず副業・兼業をせざるを得ない労働者が少なくありません。ガイドラインの策定を行うに当たっては、対象労働者を正確に捉えた上で、弱い立場の者の保護を図るという視点が必要だと考えます。

 2つ目に、使用者による労働時間管理を徹底させるべきという点であります。副業・兼業には、本業と副業が合わさることによる長時間労働が生じる問題があることから、使用者は過度な私生活介入とならないように配慮しつつということではありますが、副業・兼業に関して労働時間を適切に把握し、労働基準法38条の労働時間通算規定などの現行の労働時間ルールを遵守すべきです。ガイドライン(案)では、労働者の自己責任が強調され過ぎているように思われますが、労働者による自主的な労働時間管理に期待した制度設計は行うべきではなく、これらの視点をガイドラインに盛り込んでいただきたいと考えます。

 また、一般健康診断やストレスチェックの実施対象者の選定であるとか、特殊健康診断の対象者を選定するに当たっても、副業・兼業先における労働時間や就業環境などについても通算を行った上で、要件を満たす者について必要な措置を講じることも示すべきであると考えます。

 最後に、これらの副業・兼業の問題につきましては、労災保険の給付基礎日額を合算すべきであると考えております。また、労災認定における業務起因性の判断における問題や、多重就労における雇用保険・社会保険の適用、労働安全衛生の確保などについて、労働者保護の点からはさまざまな課題があると感じております。これらについても早急に検討を開始いただきたいと思っております。

 以上でございます。

○松村座長 ありがとうございました。

 続いて、日本経済団体連合会の輪島さん、御意見をお願いいたします。

○輪島労働法制本部長 ただいま御紹介いただきました経団連の輪島でございます。本日は、このような機会を頂戴いたしまして、感謝を申し上げたいと思っております。

 先ほど事務局からの御説明をお聞きしましたが、ほぼ初見でございますので、総論のみお話をさせていただきまして、できましたら、一両日中に、詳細になるかどうかわかりませんが、意見を提出したいと思っております。

 それでは、資料2につきまして申し上げたいと思います。

 1点目は、時間や場所の制約を受けないテレワークということでございますけれども、労働者に柔軟な働き方の選択肢を提供するという意味で、または生産性の向上、仕事と育児、介護の両立、ワーク・ライフ・バランスの実現に資するものと考えておりまして、普及・促進には大変期待をしているところでございます。

 2点目でございます。私ども経団連といたしましても、テレワークセミナーの開催、それから、ことしは「働き方改革 CHALLENGE 2017」と題しまして、事例集の配布をしておりますが、そのようなことを通じて好事例を広く周知することをしております。テレワークの推進に向けても積極的に取り組んでいきたいと考えているところでございます。

 3点目、テレワークでは、職場から離れてみずから業務に集中できると効果が期待されることもありますけれども、一方で、上司の具体的な指揮・監督が及びにくいということから、業務に集中するがために長時間労働になる可能性もあるという点が懸念されるということで、こうした点に留意した労務管理の徹底に加えて、労働者みずからの自立的な働き方が求められるとも考えているところでございます。

 テレワークを推進する企業をさまざまお伺いするわけでございますけれども、長時間労働を防止するために、先ほどありましたが、テレワークのときの残業の禁止であるとか、残業する場合は事前に上司の許可をもらうとか、さまざまな工夫をしているところでございます。改正のガイドラインにおきましても、働き過ぎ防止についての喚起というものを御提示いただきたいと考えているところでございます。

 4点目でございますが、在宅勤務時の作業環境の確保ということです。仕事場所が自宅という私的な領域ということも踏まえまして、企業が提供できないものという部分がございます。現実に自宅の住宅事情を考えた場合でも、そもそも生活の場と仕切られた十分な作業環境のスペースが確保できるかどうか。大概はリビングとか、そのようなところで仕事をすることになると思いますので、そういう意味では必ずしも容易ではないと考えております。企業が主たる勤務場所としてオフィスを提供している中、本人の意思で在宅勤務を選択しているケースにおいては、安全配慮義務の全てが企業に求められることが現実的なのかどうかということ。企業の責任範囲の明確化が必要なのではないかということで、今後、政策課題としていただきたいと思っております。

 また、5点目でございますが、VDT作業におけるガイドラインがございます。これの制定時と比べて、テレワークをする場合、その場所が多様化しているのではないかと考えておりまして、情報通信技術も進歩しているので、実態を踏まえたガイドラインの見直しもお願いしたいと思っています。

 続きまして、資料3につきまして申し上げたいと思います。

 近年、クラウドソーシングの拡大など、既存のガイドラインで想定されていない就業形態が散見されていることから、実態に即したガイドラインを改正することは時宜にかなったものではないかと考えております。

 2点目でございますが、既存のガイドラインは、請負契約にもかかわらず雇用関係があるかのような配慮が求められているという面も読み取れるのでございまして、自営型テレワークは指揮・命令下にない請負契約であるために、今回の改正を機会に、雇用型テレワークとは対応が異なることを明確にしていただきたいと思っております。留意点など実際に即したガイドラインの改正が必要なのではないかと考えております。

 3点目でございます。自営型テレワークは雇用関係にない請負労働と考えておりまして、下請法等にのっとった当事者間の自由な契約が認められることが基本だと考えております。契約トラブルを未然に防止するという観点から、テレワーク特有の留意点をガイドラインに記述していくことにつきましては異論がありませんけれども、報酬額の決定方法などは少し過度なのではないかとも思われますので、当事者間の正常な取引を損なうことのないよう、また自営型テレワークのみが過度に保護されることのないように、通常の請負契約と整合性をとっていただくことでないかと思っております。

 それから、資料4-1についてでございます。

 副業・兼業につきましては、先進的な企業では認められていることであろうと思いますが、多くの企業では、就業規則で職務専念義務を定めて禁止をしているのが実態だと考えております。副業・兼業を通じた社員の能力開発・人材開発といったポジティブな側面もありますけれども、社会保険料、雇用保険料の負担や徴収、労働時間管理、労働災害における企業の責任の範囲など整理するべき課題は多いのではないかと考えております。

  経団連といたしましては、長時間労働の是正を最重点課題とし、過労死はあってはならないと考えておりまして、働き方改革に取り組んでおります。こうした状況の中で、副業・兼業を推奨することにつきましては抵抗感があるところでございまして、今のところ旗を振って積極的に推進する立場ではないということでございます。副業・兼業につきまして、実態や課題を踏まえて慎重に検討することが必要ではないかと思っています。まずはこれらの課題を解決した上でガイドラインの策定をお願いしたいと思っております。

 そこで、1点目でございますけれども、副業・兼業の推進に当たって、企業としては、長時間労働のみならず、先ほども申しましたが、職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務などさまざまな観点で懸念する点が多いと思っています。

 2点目として、特に労働時間一つを考えてみても、先ほど村上さんからも労基法38条につきまして言及がございましたけれども、使用者には事業場を異にする場合にあっても、労働時間を通算した就業時間の把握が義務づけられているわけでございまして、企業は、どこまで対応すればこれら就業時間の把握義務を履行したことになるのかどうかという点、労働者からの自己申告以外にどのような把握方法が考えられるのか。本業において兼業先の始業時間を超えた時間外命令が必要な場合に、当該時間外命令と副業先、次のところの就業義務はどちらが優先されるかということもクリアになっていなくて、現場においては少し混乱が生じるのではないかと心配しているところでございます。

 3点目は、割増賃金ということでございます。事業場を異にする場合の割増賃金は、当日、後発の事業主負担となると理解しておりますけれども、日々管理をすることは非常に困難と考えられますので、自己申告に依拠する場合にはさらに把握が難しいのではないかと思っています。

 4点目に、そのほか、複数の企業に勤務する場合の年次有給休暇の取り扱い、休暇、休憩時間、休職等、企業に関係するさまざまなものについて、心配事はネタが尽きないという感じがいたします。

 5点目でございますが、副業・兼業を禁止できる具体的な基準ということで、例えば本業と副業・兼業の所定労働時間の合計が法定労働時間を超える場合ですとか、今度の改正法でございますけれども、年間720時間が上限になるわけで、本業と副業の三六協定の合計が年間720時間を超えた場合にどういうふうにするのかですとか、健康管理上の問題も起きるのではないかと思っております。

 6点目でございますけれども、副業・兼業といっても、A企業とB企業のように、企業と雇用契約にある場合、それから、雇用契約にない、A企業とフリーランスの場合、それから、3つ以上の仕事をかけ持ちする場合など、さまざまなケースが考えられると思っております。また、企業の対応も、本業先の企業と副業先の企業では異なるのではないかと思っておりまして、資料4-1のところは企業の対応ということで一律的に書いてありますけれども、書き分ける必要もあるのではないかと思っております。

 最後、資料4-2でございます。現状のモデル就業規則でも許可制になっているわけでございまして、許可条件を緩和すれば副業・兼業を推進できるのではないかということで、本当に許可ではなくいきなり届出にするのかどうかというところは議論する必要があるのではないかと思っています。

 2番目でございますが、ガイドラインで企業や労働者が行うべき対応が明確になっていないというところで、モデル就業規則で安易に副業を認めるという記述は望ましいとは言えないので、先ほどから申し上げているとおり、先ほどお願いいたしました課題を解決した上で議論していただきたいと思っているところでございます。

 私からは以上でございます。

○松村座長 ありがとうございました。

 続いて、日本商工会議所の小林さんから御意見をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○小林治彦産業政策第二部長 本日は、このような機会をいただきまして、まことにありがとうございます。副業・兼業につきまして総論を申し上げます。

 東京商工会議所が昨年11月に東京23区内の中小企業に行った調査は、783社回答がございましたけれども、まず、こちらの調査結果を申し上げたいと思っております。

 副業・兼業を現在、将来ともに認めていないというのが43%と最も多い結果となりました。一方で、積極的に推進しているという回答も15%に上っております。積極的に推進することにより期待する効果を聞いておりますけれども、こちらによりますと、「人材育成、従業員自身のスキル向上につながる」が46%と最も高い結果となりました。副業・兼業につきまして「やむを得ず認めている」または「現在は認めていない」と回答した事業者に懸念する事項について聞いたところ、「従業員自身の長時間労働、過重労働を助長する」というのが56%と最も多く、次いで「営業機密や情報の漏えい、利益相反につながる」が39%となりました。

 私どもの意見でございますけれども、ことし5月に、日本商工会議所といたしましては「働き方改革実行計画」に関する意見書を出しております。こちらのほうで、兼業・副業につきましては、イノベーションの創発や起業の手段になること、また、従業員の発想を豊かにし、人脈を広げるという意義があることなどを申し上げ、理解を示しております。

 ただし、企業は従業員の兼業・副業に関するトータルの労働時間をどのように把握するのか、また、営業機密、企業の内部情報をどのように把握したり保護するのか、さらには、社会保険、雇用保険の取り扱いをどの事業所で行うかなど幾つかの課題もあります。わかりやすく、企業実務の参考となり、公平性が保たれるガイドラインを策定していただきたいと思っております。

 また、労働時間などにつきましては、先ほど第38条のお話もありましたが、現行の法律においてもよく理解できていない部分もありますので、副業・兼業の際の労働時間、現行法のあり方についてもぜひ周知をしていただきたいと思っております。

 次に、テレワークについて申し上げます。総務省の平成28年度通信利用動向調査によりますと、テレワークを導入している企業の割合は13%という状況でございました。テレワークの導入目的は、「定型的業務の生産性向上の割合」が59%と最も高く、次いで「勤務者の移動時間の短縮」が43%、「顧客満足度の向上」が20%となっております。また、テレワークを導入していない企業が導入しない理由につきましては、「テレワークに適した仕事がない」が74%と最も高く、次いで「情報漏えいが心配だから」が22%、「業務の進行が難しいから」が18%という結果でございました。

 日本商工会議所といたしましては、先ほど申し上げました5月の意見書でも、テレワーク推進のためのガイドラインでは、導入に適した仕事内容や労働時間管理の方法、長時間労働の防止策、情報管理のあり方などについて具体例を記載すべきであると主張しております。こちらにつきましても、わかりやすく、企業実務の参考となり、公平性が保たれるガイドラインの策定をぜひお願いしたいと思っております。

 さらに、中小企業の抱える最大の課題である人手不足の解決には、女性や高齢者などの多様な人材の活躍推進と働き方改革の両方に取り組んでいくことが不可欠だと思っております。労働時間に関する規制と柔軟な働き方の推進は、長時間労働を是正するためのまさに両輪でもございます。また、多様な人材の活躍推進にもつながると思っております。そのためにも、労働時間の上限規制と高度プロフェッショナル制度を含みました関連法案につきましては成立を望んでおります。

 最後になりますけれども、副業・兼業、またテレワークを積極的に推進している企業というのは少ない状況でございましたので、好事例の紹介や相談窓口の対応、助成金の拡充、ガイドラインやモデル就業規則の周知・啓発をぜひお願いしたいと思っております。

 以上でございます。

○松村座長 ありがとうございました。

 続いて、全国中小企業団体中央会の小林さんから御意見を発表していただきます。よろしくお願いいたします。

○小林信事務局次長 全国中小企業団体中央会の小林でございます。本日は、意見発表の機会をいただき、厚く御礼申し上げます。

 私ども、今、三者からのお話を聞いている中で、懸念する事項は大きく変わらないといいますか、同じような意見を持っていまして、4番目なので大変発言しにくいところです。

 また、私どもは、昨年来から政府で取り組んでおります働き方改革実現会議の中で、いろいろな働き方改革のテーマが9テーマ挙がっていますけれども、個別に業界団体並びに傘下の中小企業団体中央会、47都道府県の中央会からいろいろ意見を聴取したところでございます。特に今回テーマに挙がっていますテレワーク、そして副業・兼業に対する意見・要望というのは極めて少ない状況でございましたので、商工会議所さんのように、私どもで新たな調査等は実施していない状況でございます。今日のヒアリングで申し上げることが業界団体を代表する意見にもなっていないというのが実情かもしれませんけれども、お聞きいただければと思います。

 まず、情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドラインについてでございます。ガイドラインの改定内容の趣旨にありますように、テレワークは、労働者が所属する事業場の勤務に比べ、通勤時間の短縮や通勤に伴う精神的・身体的な負担の軽減というメリットがあると思います。一方で、労働者が所属する事業場外での勤務になることから、時間外の把握など労務管理が大変難しくなるという課題があると存じ上げております。このため、課題解決に向けた本ガイドラインの作成に際しましては、改定内容について、使用者やテレワークを活用する労働者への周知をお願いしたいと思っております。

 ガイドラインの内容につきましては特に異議を申し上げるところはございません。

 そのほかにもう一つ考えられるのは、中小企業でも課題になっております障害者雇用という側面で、テレワークを活用し、雇用している実態もございます。このような意味から、テレワークが障害者の雇用にとっても有効な働き方の1つだと考えております。

 また、一般的な中小企業にとってもテレワークが有効な手段だと感じておりますけれども、先ほど商工会議所の小林様からの発言にあるとおり、導入の状況は大変少ない状況にございます。これは、セキュリティーの問題やシステム上の投資に対する課題が幾つかあるのだと思っております。そのためにも、中小企業に対してのテレワークを推進する見地から、その支援策の強化もこの場を借りましてお願いしたいと思っております。

 2番目の自営型テレワークのガイドラインについてでございます。このたびは、在宅ワークのガイドラインから自営型テレワークのガイドラインと名称を改めております。「自営」という文言から個人事業者という色彩が強くなりますので、経済産業省がことし3月に改定した「情報サービス・ソフトウェア産業における下請適正取引等の推進のためのガイドライン」が既に示されております。これらのガイドラインを参考にして取りまとめをいただくことも御検討いただければと考えております。

 そのガイドラインによりますと、文書の保存期間についてでございますけれども、契約条件の文書保存期間は、今回の厚生労働省で提示されている保存期間では3年間としておりますが、下請法第5条による書類作成・保存義務は2年間となっています。2年間でよいのではないのかと思っていますので、その辺の改定もひとつ御検討いただければと思っております。

 これは個人的な見解なのですけれども、先ほど村上委員が、自営型のテレワークについて、仕事を紹介するのに「職業紹介」という言葉を言っておりましたが、あくまでも労働者の職業を紹介するのが職業紹介だと思っております。この自営型のテレワークについては自営業者、個人事業者でございますので、職業紹介とはちょっと異なるものだと認識しております。厚生労働省で自営型のテレワークのガイドラインを出すことに個人的にはちょっと違和感を持っていることを申しつけ加えたいと思います。

 3つ目に、兼業・副業の推進に関するガイドラインの骨子についてです。働き方改革実行計画において、長時間労働の是正として、労働基準法の改正と、今回春から議論しておりました法律案要綱を9月に取りまとめたところでございますけれども、その一方で、兼業・副業に関するガイドラインを検討するというのは、一見、働き方改革に矛盾する制度を議論しているような印象を持っております。

全国中央会では、兼業・副業に関する調査は特に実施しておりません。毎年、本会が実施する労働事情実態調査では、近年、平成29年のデータになりますが、全国約1万8,000の事業所のうち、所定労働時間が40時間というのが50.5%、38時間超から40時間未満が26.1%、40時間超から44時間以下が10.9%になっています。労働基準法第38条では、労働時間は事業場を異にする場合においても労働時間に関する規定の適用については通算すると規定し、昭和23年通達では、事業主が異にする場合をも含むとガイドライン骨子等に記載されています。労働基準法上の労働者として、副業・兼業につくのであれば、この所定労働時間にプラスした時間を働くことになります。長時間労働を招くというより、長時間労働になることを前提に考えるべきだと思っております。

 ガイドライン(案)では、副業・兼業を行う者に就業時間の自己申告をしてもらって実態を把握し、就業時間が長時間にならないよう配慮とあります。事業主は、その労働者の労働時間だけでなく、副業・兼業先の業務の内容を把握し、健康管理に努められるかは未知数で、結局、労働者の自己管理に委ねるしかない面が出てくるのだと思っております。厚生労働省の案としては、副業・兼業を認める方向としておりますが、労働基準法だけでなく、労災保険、雇用保険など、その他の現行の制度についても整理し、ガイドラインをまとめていただきたい。そして、周知していただきたいというのがお願いでございます。

 以上でございます。

○松村座長 ありがとうございました。

 それでは、ここから、今までの発表に関して御意見、御質問等がありましたら、委員の皆さんからお受けしたいと思います。

 それでは、お願いいたします。いかがでしょうか。

 では、湯田委員、どうぞ。

○湯田委員 貴重な御意見、御説明をありがとうございました。

 先ほど経団連の輪島様からの御説明の中で、テレワーク就業だからといって過剰に保護や注意喚起するのはどうかという御意見がありましたが、その点は、ガイドラインの検討においても注意していかなければならないと感じました。

 一例を申しますと、資料3の8ページの、「へ 契約解除」のマル2の「注文者と自営型テレワーカーが合意により契約を解除する場合には」という箇所で、「既に仕事に着手した部分や利益が生じている場合」と記載あるのですが、一般の商流の中でいいますと、契約解除したとしても、その権利をどうするのか、所有権を移転するかを議論した上で支払いを行うことになります。「自営型テレワーカーへその分の報酬を支払うこと」と断定して言い切るのではなく、ケースによることを考慮し、テレワーカーということだけで過剰な保護とならないよう留意することが必要と感じた次第です。

 あわせて、全国中小企業団体中央会からの御意見の中で、紹介者の役割が重要であるとありました。資料3の2ページにて、募集において明示すべき内容が表示されていますが、この募集の定義如何によって、誰が声がけをするときに対象に当たるのかが変わってきます。現在は、仲介事業を業として行う者となっていますが、先ほど中央会様の御意見をお伺いした際、一般に業としない方々が紹介を行うことも多々あることを考えますと、どこからが募集行為にあたるのかの定義の書き下し、説明も必要かと感じた次第です。

 以上です。

○松村座長 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。

 それでは、萩原委員、どうぞ。

○萩原委員 貴重なご意見ありがとうございました。

 村上様に質問ですが、テレワークの話の中で、サテライトオフィス勤務を事業場の一部と見るべきであるというお考えについてです。そのサテライトオフィスも在宅勤務と同じように、事業部外で働く場所の選択の1つととらえていたのですが、それを事業場外労働とするのがどうして問題なのか。今は、在宅勤務であっても、モバイルが渡されて、ずっと勤務先と連絡をとる状態にすることも可能なわけですけれども、それとサテライトオフィスがどう違うのかというところを教えていただきたいです。

○松村座長 お願いします。

○村上総合労働局長 御質問いただいた点でございますが、サテライトオフィスは、何をもってサテライトオフィスというのかということもありますけれども、一般的にイメージされるのは、ある程度のスペースがあって、PC環境が整備されているのがサテライトオフィスであろうと思います。そのようなオフィスでは通常の労働時間管理はできるわけで、それを事業場外みなしとするのは問題であるということです。在宅においても時間管理できるようになるのであれば、通常の労働時間管理をして事業場外労働とみなすべきではないと考えておりますし、実質を見てやるべきだろうと思っております。一律にサテライトオフィスということで事業場外労働とするのは問題であるということです。

○松村座長 よろしいでしょうか。

 ほかにいかがでしょうか。

 神吉委員、お願いします。

○神吉委員 貴重な御意見ありがとうございました。

 輪島様にお伺いします。自営型テレワークとしての切り分けでガイドラインを出すところ、どういうふうに適用対象を絞っていくかが1つ大きな問題だと思っております。問題意識は共通するのですけれども、契約自由が完全に妥当するような通常の請負契約と自営型テレワークとして保護が必要な類型があるとして、その線引きはどの辺にあるべきだとお考えになりますか。

○松村座長 どうぞお願いします。

○輪島労働法制本部長 ありがとうございます。

  余りよく考えがまとまっていないのが実際なのですけれども、実態のところをもう少し見て議論していく必要があるだろうとは思います。

○神吉委員 ありがとうございます。

  もう一点ですが、労基法38条の適用場面で、事業場を異にする場合の割増賃金が当日後発の事業主負担となるという理解を先ほど述べられたところ、それは、経団連加盟企業の一般的な理解ということで、今、実務ではそのようになっているというふうに理解してよろしいでしょうか。

○輪島労働法制本部長 法令上の整理として、時間外労働についての法所定の手続を採り、割増賃金を負担しなければならないのは、通常は、時間的に後で労働契約を締結した事業主と解すつもりでおりますが、解釈が違うので。この間から内でいろいろ議論しているのですけれども、誤解とか、理解違いとか、あっ、そうなのということも結構あるので、先ほど来申し上げているように、基準法の問題や安全衛生の問題、雇用保険の問題について、企業側もきっちり理解している人は少ないと思いますので、そこのところもまずは先に整理していただきたいというのが、先ほど申し上げた趣旨でございます。

○神吉委員 ありがとうございます。

 当日後発で、一応時間外労働だという把握ができた企業であれば、基本的には、今はこの解釈に従って割増賃金を支払われているのでしょうか。

○輪島労働法制本部長 私どもでそこまで詳細に実態を把握しているわけではありませんけれども、そもそも企業側のほうもそこまでよくわかっていない実態があるので、そこも含めていろいろ検討していく必要があるのではないかと思っています。

○神吉委員 ありがとうございます。

○松村座長 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。

 河崎委員、どうぞ。

○河崎委員 日本商工会議所の小林様に質問です。

 東京23区の調査をされたということで先ほど御披露いただきました。この調査は経営者からの調査ですよね。

○小林治彦産業政策第二部長 はい。商工会議所の経営指導員が聞き取り調査をやっておりますので、経営者宛てには行くのですけれども、担当者が答えているケースもあります。2,500社にアンケートをしましたところ、783社から回答があり、回答率としては31%という状況でございます。

○河崎委員 承知しました。ある意味で、従業員の声みたいなものは別の形でも何でもお耳に入っているようなことはございませんでしょうか。

○小林治彦産業政策第二部長 私どもといたしましては、やはり経営者の団体でございますので、従業員の声は拾っていないというのが事実でございます。

○河崎委員 承知しました。ありがとうございます。

○松村座長 ほかにいかがですか。

 芦野委員。

○芦野委員 本日は、貴重なお話ありがとうございました。村上様に御質問がございます。

 独立自営型の請負契約でのテレワークに関してですが、兼業・副業という観点から考えた場合には、本来の主に勤めている会社があり、そこでの兼業としての自営型のテレワークをやっている場合。一方で、非常に独立性の高い、それでかなりの収入を得られる、それ以外に特に勤めている会社もないというまさに独立自営型のテレワークの場合と、両方が実はこの中に混在しているかと思うのです。きょうの村上様の御意見というのは、その中でも、主として勤務先があって、それにプラスアルファして兼業自営型を対象としているということでよろしいでしょうか。

○村上総合労働局長 ありがとうございます。交渉力が強いワーカーとそうではないワーカーの両方がいるということはそのとおりだと思います。ただ、企業などに勤めておられなく専業として自営型テレワークの仕事をされている方であっても、プロ人材で自分の名前で仕事をできる方々もいらっしゃれば、そうでない方もいらっしゃいますので、ガイドラインの保護対象は必ずしも副業的にやられている方だけではなく、すべての自営型テレワーカーを対象とすべきであると思います。デザイナーなどで、かなりの腕を持って知名度もある方を考えれば違う部分もあるかもしれませんけれども、私どもとしては、弱い立場の方を想定して申し上げているところです。

○芦野委員 ありがとうございます。

 それに追加ですが、一方で、兼業・副業でやられている方の健康管理、安全配慮に関して、主として勤めている企業のほうでやるべきことと、一方で発注者のほうでやるべきことがここでは2つ混在してしまう可能性もあり得るのかなという気がするのです。そのような場合に、もしバランスなどについてお考えがあれば教えていただきたいと思うのです。

○村上総合労働局長 ありがとうございます。

 多分、自営型テレワークの問題というよりは、副業・兼業の問題のほうで整理されたほうがよいかと思います。その場合には、本業があれば本業の事業主がしっかりと労働時間管理や健康管理を行うべきです。労働者も副業・兼業にかかる労働時間等を申告していくことも必要であるかもしれませんが、事業主の安全配慮義務として健康管理の責任を一定程度負っていただくことが必要だと考えております。

○芦野委員 ありがとうございます。

○松村座長 ほかにいかがでしょうか。

 荒井委員、お願いします。

○荒井委員 村上さんに1点だけ御質問です。

 副業・兼業自体について、前、経済的な理由が動機になっている労働者もいるということについて御指摘いただいています。副業が進んでいくこと自体については賛成のお立場なのか、それはいかがなのでしょうか。

○松村座長 どうぞ。

○村上総合労働局長 本日の資料5の5ページ以降に、昨年の12月に、こういった議論が行われるということを想定して、テレワークについての連合の考え方を整理いたしました。その7ページと8ページの上段に書いてあるのですが、いずれにしても、副業・兼業についてはさまざま問題点があるので、その問題点を整理することが必要であるということと、そもそも副業・兼業は、政府が促進するという話ではなく、あくまでも個別労使で、どのような場合だったら認める認めないということを話し合って決めていくべきものではないかと思っております。

 一方で、かけ持ちパートの方々のように、実際、短い時間の就労を複数行わざるを得ない方々もいらっしゃいます。その方々が副業・兼業していくことは否定できませんし、そういうやむを得ず複数就労をせざるを得ない実態があるからこそ、さまざまなルールを整備すべきであろうと考えているところであります。

○松村座長 ありがとうございます。

 そのほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 湯田委員、どうぞ。

○湯田委員 先ほど御説明いただいた中で、経団連の輪島様から、VDT等の配慮も、今の時代に合わせたものに改定して対応すべきというお話がありました。関連して、セキュリティーで気をつけるべき点や、技術の変化についてもテレワーカーへ教育することが必要になってきていると思います。資料2において、雇用型テレワーカーへの教育に関する記載が、11ページから12ページに社内教育という項でありますが、現在はOJT等の教育機会の提供のみに言及しており、テレワーカーに対し情報管理やセキュリティーの教育をするべきということは特に記載していません。今後、情報技術が発達し、また、就業者の所有している通信機器等を利用して仕事を行う、いわゆるBYODも増えていくと考えられますので、それらの教育もするべきという記載をガイドラインに追加することも必要ではないかと感じました。

以上です。

○松村座長 ありがとうございます。

 江木委員、どうぞ。

○江木委員 きょうはいろいろなお話をいただきまして、どうもありがとうございました。私も今、頭の中がまとまっていないのですけれども、副業・兼業につきまして皆様の御意見を伺いたいなと思っております。

 皆様のお話の中で、通算というキーワードが運用面を非常に難しくしていることがわかりました。それとともに、副業・兼業をやむを得ず選ぶ方、やりたくて選ぶ方、どうも2パターンあるのかなと感じています。そういった場合に、雇用側と労働者側とともにこの運用の難しさについて考えていかなければならないと思うのですが、いずれにしても、この兼業・副業をしようと選ぶのは、企業ではなく労働者の方、基点は労働者の方にあるのかなと私は思ったのです。そうしたときに、労働者の自己責任において副業・兼業を選ばれる。この労働者の自己責任ということを皆様どのようにお考えになっていらっしゃるか、御意見を伺いたいなと思っております。よろしくお願いいたします。

○松村座長 皆様からということですね。

○江木委員 はい。

○松村座長 では、村上さんから順番にお願いいたします。

○村上総合労働局長 ありがとうございます。

 副業・兼業をするかしないかは、労働者が自分で選ぶという話であるかもしれませんけれども、ルールについては労働者の自己責任に任せたものであってはならないと思います。それは、労働時間の通算はもちろん、社会保険や雇用保険などについても保険料負担すべきは負担していただかなくては、社会保険や雇用保険の基盤がなくなってしまいます。そういったことからしても、制度としては、労働者の自己責任ではなく、たとえ労働者が選んだとしても、セーフティーネットの部分はきちんと事業主側にも負担していただくことが必要だと考えています。

○松村座長 ありがとうございます。

 それでは、輪島さん、お願いします。

○輪島労働法制本部長 ありがとうございます。

 少し別な観点です。今、兼業・副業を推進していこうというイメージですけれども、月曜日から金曜日は本業に専念して、土日に、例えばNPONGOとか、社会貢献であるとか、人的ネットワークを広げるとか、個人の蓄積した能力・力を発揮してみたいというポジティブな兼業・副業みたいなものをモデルにしてやろうとしているというのはよくわかるのですが、実務のところからいうと、労働時間、労災保険、社会保険などさまざまな課題がある。企業側としては、原則、先ほど申し上げたような現状であると思いますので、その辺のところをもう少し背中を押していくための環境整備が別途必要なのだろうなと思います。

 そういう意味では、今後の課題だと思いますので、自己責任に帰着するのかどうかというよりは、就業しやすい環境をどうやってつくるのかということは非常に大きな課題ではないかなと思っています。

 以上です。

○松村座長 ありがとうございます。

 それでは、小林さん、お願いします。

○小林治彦産業政策第二部長 商工会議所でございます。

  私どもにつきましても、先ほど申し上げたとおりなのですが、兼業・副業につきましては、積極的にどうぞという感じではなくて、従業員のスキルアップとか発想の転換につながるということで意義のあるものではないかと考えているところであります。

 そういう意味でいきますと、労働者の希望により、副業・兼業する場合については、私ども経営者側としてできることは何なのかなというと、やはり健康管理に気を遣っていただいて、私どもの仕事に支障がないようにと。また、情報の部分につきましては、情報漏えいや機密についてしっかりと管理していただきたい。そこら辺が注意点になるのかなと思っております。

 以上であります。

○松村座長 ありがとうございます。

 続いて、小林さん、お願いします。

○小林信事務局次長 お二方と大体一緒なのですけれども、まず、兼業・副業というのはあってもいいという側面は、仕事の内容次第なのだろうというのが1つ言えるのではないかと思います。従来からの、兼業が許可制になっている、就業規則上、会社の許可を得てほかの業につくことができるということで兼業されている方も中小企業の中には若干いらっしゃると思います。苦労してするわけではないです。ただ、輪島さんがおっしゃっているように、許可から届け出というものが随分柔軟な形になるのには抵抗感を持っております。

 なぜかと申しますと、いろいろな業種のイメージを浮かべますと、製造業、運輸業、建設業といった安全衛生の側面での事業主がいろいろ配慮をとらなければならない。安全衛生法というのは工場法から派生して、現在に引き継いでいるということで、労働時間も8時間という形で、ある一定の時間内でしっかり働いていただいて、安全衛生の側面を面倒見ましょうという形になっているのだと思います。できるだけ事故が少ないようにということを考えている側面がございます。

 また、運輸業でいけば、いろいろな基準が出ていて、社会的に、インフラである道路を走る上で交通事故を起こさないようにということでの安全衛生の側面を重視して、労働時間についてもいろいろ制約しているところがございます。

 これら業種についている方々が副業を得て、夜働くとか、土日に働くということが安全衛生に与える影響は大きいのではないかということで懸念している面は1つございます。個人の自己管理の責任においてそれができ得るのかどうなのかというのでも、ある程度の限界があるのではないのかと思われます。

 それに比べて、事務系やIT系の方々、いうなればクリエーティブな産業に従事している方々、この方々がいろいろな創造性を持っていろいろな仕事をされるとかいう部分では、兼業・副業というのは十分仕事ができることもあるでしょうし、また、土曜日、日曜日にいろいろなNPO法人の活動に参加するなどというのは、一般的に社会進出されている方も多々いらっしゃるわけですね。それを、NPO法人の役員をやっているからこれが兼業なのかというと、はたと考えてしまいますし、地域の自治体、町内会の活動とかいろいろな部分で動いている方もいらっしゃるわけですね。それが健康管理できているのか。できているわけです。

 そういう意味でいけば、似たような職につく、クリエーティブな産業でいろいろ創造性を持って仕事をする。まさに先ほど来からいろいろ検討されているテレワークの仕事につくとか、そういうのも可能なのかなと思います。この兼業・副業、職業に従事している職種によっても違いがあるのかなというのは十分捉えていただきたい。安全衛生の側面とか、社会的に与える影響というのを含めてある程度精査していく必要があるのかなと感じているところです。

 以上です。

○松村座長 ありがとうございました。

 萩原委員、どうぞ。

○萩原委員 今、私もいろいろ考えていてまとまっていないのですけれども、兼業と副業に関しては、まだまだルールがわからない、整理されていないところが多いので、皆さん、基本的には積極的には進められませんというご意見なのかなと思うのです。一方で、これだけ労働人口が足りないという中でいうと、副業・兼業が社会で広がっていくことで、今度、副業・兼業としてその人を雇い入れられる可能性も出てくる、企業にとってメリットがでてくると思うのです。なので、今、本業の立場から副業・兼業はまだまだだというご意見ですが、副業・兼業者として優秀な人材を雇う、もしくは活用することができるというメリットの点についてもし御意見があればいただきたいなと思います。御意見がある方がいらっしゃれば。

○松村座長 いかがですか。

 では、輪島さん、お願いします。

○輪島労働法制本部長 すみません、それは転職ということではいけないのですか。グレーゾーン、フェードアウトしていく、どちらがフェードでインなのかわかりませんが、ウエートをだんだん下げていって、またというところを目指すという御趣旨ですか。

○萩原委員 転職までいくと、その1人の人材は1つの企業もしくは1つの仕事でしか生かせないのだけれども、転職ではなくて、例えば、普通だったら週5日働いている中の2日間ほかの企業で働くことを許せば、その人はほかの企業で働く、もしくはほかの仕事で2日分仕事をすることができる、並行して仕事ができるというイメージです。

○輪島労働法制本部長 労働基準法がそれを許してくれるならば、それはいいと思います。

 先ほど小林さんがおっしゃったように、企業側は安全配慮義務が一番気になります。仮に土日にNPOのトップというかマネジメントをしていて、例えばNPOの資金繰りをどうしようかということで悩むこともあるわけです。そういう経済的な悩みが本業に影響して、例えば本業で労災事故になってしまったときに、普通の仕事のときはそうでもないのに、なぜその事故が起きたのかというと、例えば土日の資金繰りに頭をほぼ占領されていたと。それは労災事故としてはどちらを見るのかということも含めて。それなので、労働時間も気になりますし、社会保険も気になりますが、最終的に一番気になるのは安全配慮義務。それを問われたときに、許可や届け出をしてオーケーと言っているときに、本当に大丈夫なのかという最終的な安心感が法令上ない中で、積極的に整理をしてほしいというのは何度も申し上げているとおりでございます。

○小林治彦産業政策第二部長 よろしいですか。

○松村座長 小林さん、どうぞ。

○小林治彦産業政策第二部長 私のほうで、特に中小企業が多いものですから申し上げさせていただきますと、今、先生からお話があったような形で、副業で来てもらうことについてありがたいという側面も多少あると思うのです。これだけ人手不足の中で、仕事はあるのだけれども、人手がいなくて受注できないという企業が多いので、そういう例はうれしいのだと思うのです。ただ、今、こちらのほうで議論していただいているような話で、雇う場合にどういう法令になっているか現行法すらわからないのではないかと思います。2つの仕事をかけ持ちしていて1日の労働時間を通算して時間外労働が発生した場合に、割増賃金が発生するということもわからないというのが多分現実だと思っています。中小企業でそういったことを理解している方は少ないと思いますので、労働時間だけではなくて社会保険も含めた形で、現行法で副業する場合に、今、どういう法律になっているのか、決まりになっているのかというのをぜひ周知いただきたいと思っております。

 以上です。

○松村座長 では、小林さん、お願いします。

○小林信事務局次長 多くの中小企業は人手不足でございます。これは、質と量の側面で両方とも不足しているというのがいろいろな実態調査でも明らかになっているところでございまして、短時間労働でお手伝いいただくとかいう意味であれば、本職があられて副業で来られる方はウエルカムな状況だと思います。

 とはいえ、先ほど来申し上げているように、安全衛生の側面というか、時間を確保する。うちの事業所でも会長の許可を得ればほかの仕事につける形になっています。許可を得た場合に、どれだけの労働時間があるのかとかいうのは把握していません。どういう仕事につくので、これは兼業に当たるので大変心配なので、従業員としてはこういう仕事をしたいのだけれども許可を得られないかということで事業所に許可を得て、内部決済の後、オーケーが出れば働ける形になると思います。

 今、兼業・副業の考え方の中で、私どもの事業所でどれだけ働いているかというのは、この従業員についてはわかるわけですけれども、違う場所で働いている際の労働時間の把握というのはあくまでも自己申告による形になります。なおかつ、先ほど来申し上げた実際に働く現場が何時から何時まで働くというのが決まっていればいいのですけれども、テレワークの仕事のように、時間が把握できないとか、祝日活動するとかいうことになれば、時間が把握できない形になってしまいます。それに対して、許可はしたのだけれども、どれだけほかで働いているかというのが把握できていないのが現状だと思います。

 それをしっかり把握できるかどうかというのを事業場に課せられた場合、許可をしなくなってしまう可能性も出てきます。あくまでも自己申告によるという形が実際には悪影響を及ぼしてしまうことも懸念されますし、兼業・副業を推進していることが届け出制で済むことになったとしても、違った意味で、企業側にとって、多くの使用者の方が懸念材料と思うようなところが出てくる可能性もあるのも否めないのではないのかなと感じているところでございます。

○松村座長 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。

 では、村上さん、お願いします。

○村上総合労働局長 皆さん、お答えになられたので、働く者の立場からも一言コメントを申し上げます。

 一番の問題は、働き過ぎをどのように防止するのか、ということだと思います。幾つも仕事をかけ持ちされている方の労働時間をどう把握していくのかということがないと、働き過ぎを招きかねません。その問題がある中で促進していくことは難しいのではないかと考えております。

(ヒアリング出席者退室)

○松村座長 次に、先ほど事務局から説明いただきましたガイドライン(案)とただいまのヒアリングを踏まえまして、皆さんから御意見、御質問等がございましたら、お願いしたいと思います。

 それでは、よろしくお願いいたします。

 では、小西委員、どうぞ。

○小西委員 私としましては、自営型テレワークと副業関係の2つのことについて感じたことをお話しさせていただきます。

 まず、自営型テレワークについてのガイドライン(案)に関してですが、自営型テレワークという形で「自営型」ということが明記されて、「第2 定義」の(1)のところで自営型テレワークについての定義もされているわけです。この自営型テレワークのガイドラインが、前回も少しお話しさせていただいたわけですけれども、どこまでのテレワーカーと言われる人たちに適用されるのかというのがいまいちよくわからないというのがあります。労働者に近い人から、そういった人とは全く違うというか大きく異なる人までいろいろあるかなと思います。労働者というくくりの中でもいろいろな働き方があったりするわけですけれども、自営型となりますと、働き方にさらに幅があるのではないかなと思います。

 その自営型テレワークというものを聞いた人とかが、どういう自営型テレワークをイメージしているかということで、あるべき規制というかガイドラインの考え方が少し変わってくる可能性があるかなと思っています。例えば労働者からは完全に離れたようなテレワーカーの人たちであれば、このガイドラインというのは少し厳しいのではないかという意見が考えられ得るところかなとも思いますし、逆の場合も考えられるかと思います。

 次の議論とも関連しますが、この自営型テレワークのガイドラインというのは、これ以上具体的にできないのかもしれませんが、どういった人たちをターゲットにしているのか。例えば、雇用類似のものと言われるような人たちをイメージしてつくられているのか、そうではないのかというところも明らかにしながら、このガイドラインの位置づけを考えていただければと思っています。

 これが自営型に関してです。

 次に、副業・兼業についてです。副業・兼業と労働法ということですけれども、副業・兼業というのは、これも私の意見ですが、従来の使用者に対する責任を担保とする労働法との関係で言うと、本当に大きな問題だと思っています。ですので、この副業・兼業ガイドライン、モデル就業規則の改定を考える際にも、本当に大きな問題について一定程度踏み込むことを意識して検討していくべき問題かなと思っています。

 モデル就業規則ですけれども、従来は許可制だったのを今回届け出制にするということです。従来の裁判例でも、基本、このガイドラインの骨子案にも書かれていますけれども、こういうふうな形で一定程度基本的に労働者の自由だという裁判例があるかと思いますが、この裁判例というのはあくまで事後的に判断したものです。

今回、このモデル就業規則の改定というのは、あくまでモデル就業規則ですけれども、原則許可制から届け出制という一定の方向性を示すものになっています。ですので、そのあたり、事後的な裁判例を参考としてこういったモデル就業規則、これもよくわからないのですけれども、中小企業の方々が参照されることが多いかと思いますが、そのようなモデル就業規則の策定・改定に当たって一定の方向性を示すことを意識していただくことが必要になってくるかなと思います。

 そのことを考えていきますと、皆さん、きょうのヒアリングの際にも各方おっしゃっていた点ですけれども、法規制の具体的な解釈とか法制度のあり方というところには余り踏み込まずに、こういった方向性を示して、解禁ということを示すことは、順番が逆ということにはならないのかもしれませんが、少し懸念しているところはあります。

 私からは以上です。

○松村座長 ありがとうございます。

 それでは、荒井委員、どうですか。

 神吉委員、ありますか。では、どうぞ。

○神吉委員 すみません。同じ論点だったので先に失礼します。

 私も小西先生とほとんど同じことを考えていまして、自営型テレワークのガイドラインと兼業・副業についてちょっと述べさせていただきます。

 最初に、自営型テレワークに関しては、小西委員の言われたとおりのことを私も疑問に思っておりまして、この「第2 定義」の「(1)自営型テレワーク」のところですが、注文者から委託を受けて、情報通信機器を活用して在宅ワークのようなことをする人というふうにあるのですけれども、具体的には、この「情報通信機器を活用」というこの切り分けが非常に曖昧だと思っています。

 自営型テレワークというと非常に幅広く、何が除かれるかを考えていくと、まず、注文者と離れていない場合というのが1つの例外。もう一つの例外が、この情報通信機器を活用していない場合というのが定義上読み取れるわけです。これまでのお話でも、情報通信機器を活用せず、純然たる役務の提供のようなワークである場合には、このガイドラインは適用されないという御説明だったと思うのですが、今日、情報通信機器を全く使用しない自営型テレワークというのはほとんど考えられないと思うのです。でも、単なる使用ではなく、このガイドラインが適用されるような活用、その間の線引きがどこでされるのかが全くわからないわけです。

 しかも、その線引きがなぜ必要なのかを考える必要があります。単なる情報通信機器の「使用」ではなくて、このガイドラインで保護されるべき人は「活用」していなければいけないと実態から言えるのかと考えながら、今回のガイドラインを見ていきますと、募集内容の明示であるとか、契約条件の明示と保存とか、適正化とか、そういったことは情報通信機器の「活用」をしているかどうかは余り関係ないのではないかというのが1点です。

 これから、雇用類似の働き方についていろいろな議論が進む中で、なぜここで切っているのか、もし理由があるのであれば明記する必要があるというのが1点です。

 兼業・副業の話はちょっと長くなりますが、かなり多岐にわたる問題があります。やはり一番大きいのは労基法38条の解釈です。これは、現行法でいけばどうなるかをまずは示すのが筋だと思うのですが、実際、このガイドラインの骨子を見ても、通達が引用されているだけで、結局、割増賃金を支払う場合はどういう場合なのか、かつ、その主体は誰なのかについては、この骨子の段階では全くわからないので、先ほどのヒアリングのときの「わかりません」という率直な御意見が出てくるのだと思います。現行法の解釈を実務的にどうすべきなのかは、現段階のガイドライン、骨子からは読み取れないので、明示してわかりやすくするとの趣旨はここでは実現できていないのではないかというのが正直な感想です。

 ただ、課題としては、今の通達が現在の状況に実際に合っているのかという見直しが必要だと思います。昭和23年の通達ですから、この時代とは社会の状況も違いますし、労働時間法制も大きく異なっています。ですので、単なる事業場を異にする場合も通算するのだという単純な話ではなくなってきているはずです。例えば、先ほど割増賃金の支払主体は当日後発の事業主だとの解釈もあります。それは1つの解釈で、そうではなく,後のほうに契約した事業主が負うという解釈もあります。学説では、そもそも全く関係のない事業主である場合には適用すべきでないというような説もあります。ですので、現行法の解釈としてあるべき姿を示すこと自体が難しい問題であるというのが1点です。

 現実にも、例えば一方の会社でフレックス制をとっている場合に、清算期間がすぎてみないと、どの部分が時間外労働になるのかがわかりません。今、命じようとしている勤務が時間外労働になるのかどうかもわからない事態がありえますし、例えば両方の会社でフレックス制をとっていてしかも清算期間がずれているという場合、時間外労働の把握すら非常に難しくなっていきます。

 そういう状況が考えられる場合に、法が単に事業場が異なる場合でも通算しますというような今の簡単な規定ぶりでいいのか再考する、あるいは事業主を異にする場合も通算するという通達を見直す必要があろうかと思います。そもそも割増賃金を支払わせる金銭的なプレッシャーで時間外労働を抑制させようという趣旨が妥当しない場合を場合分けして精緻化する必要があると考えます。

 他方で今後、総労働時間の上限規制、インターバル規制をかけていくときに、兼業・副業という形態をとれば全くかからないというのも妥当ではないと思います。そういった形態をとれば幾らでも働かせることができるような脱法的な運用がされないようにする注意も必要です。

 労災に関しては、過労死、過労自殺の場合の特に2段階の問題がありまして、まず第1点目で、本業・副業両方相まって過労が起きた場合の業務場外認定の話と、たびたび出てくるように、その場合の給付基礎日額をどうするかの場合、その2点があります。

 1点目は非常な難問で、これはきちんと議論していく必要があるのですが、2点目の給付基礎日額については、2004年に労災保険に関する研究会の中間取りまとめで方向性は示されています。社会保険の話も出ていますけれども、老齢厚生年金とか健康保険の傷病手当金というのは、今でも複数の事業者からの報酬を合算する取り扱いがあります。これに対して、労災の給付は合算してこなかったのですが、例えば労災保険法上の8条2項では、給付日額について、労基法12条の平均賃金に相当する額とすることが適当でないと認められる場合には省令で別に定めることができるとあります。ですので、具体的には施行規則の9条に副業・兼業の場合を明記するような形で実現はできると思いますので、それを具体的な検討課題にすべきでしょう。

 それから、雇用保険について簡単に。今は、複数の事業場で合算して週に20時間以上働いている場合でも、単体で20時間を超えない場合には雇用保険に入れません。そもそも両方とも働けなくなることが想定しにくいという前提もあると思いますが、基本手当の話だけではなくて、例えば育児・介護休業の場合に、給付金は雇用保険に入っていないと出ませんので、両方とも休まなければいけないときに、週の所定労働日数がどちらも3日以上あって育児休業がとれる、介護休業もとれる。だけれども、給付金は出ないという状況がありえますので、雇用保険にもいろいろ検討課題はあると思っています。

 長くなってすみません。以上です。

○松村座長 ありがとうございました。

 それでは、荒井委員、お願いします。

○荒井委員 細かいところはいろいろありますけれども、私も副業のところでガイドライン(案)についてということであります。

 ガイドライン(案)を拝見しました。率直に申し上げて、私としては大変戸惑っています。副業を推進するのだと言っていますが、これは先ほど小西先生からも御指摘がありましたけれども、かなり大きなパラダイムシフトを起こすということになります。ところが、行政の解釈はそのままなのだとすると、先ほどから各団体さんがおっしゃっているように、「戸惑う」という表現が非常に適切なのではないかと思います。

 そもそも38条の条文上、使用者を異にする場合でも通算するということはどこにも書いていない。これはあくまでも行政の解釈として示しているにすぎないところがございます。これは条文の解釈にすぎませんので、もちろん違う考え方も十分あり得るということで、現に平成17年の厚生労働省の研究会においても、日本を代表する労働法の先生の方々が、これはやめるべきだ、通算をするべきではないという趣旨のことを述べていらっしゃいます。労働行政の規制や労働契約の考え方が、事業場単位から労働契約単位に考え方が変わっている中で、この部分だけ使用者を異にする場合でも通算するのだという考え方は、もう既に実態にそぐわないと言えるのではないかと思います。また、労働行政の現場においても、通算をしているかどうかということは恐らく監督されていないのではないかと思います。つまり、今、誰も守っていないようなルールを厚労省の通達の中で示していて、一方で、副業は解禁するのだと言っているのだけれども、そこは変えないというのでは、皆さんの「戸惑う」という表現はまさに適切なのではないかと思ってございます。

 もちろん、安全配慮についてのほうはやるべきだとは思いますけれども、38条を介してやるかというのはまた全然別の議論だと私は思っています。

 まさに働き方改革についての社会的な評価というところはありますけれども、結局、これは働かせ方改革ではないかという批判もあります。もともと労働時間というのは、使用者の指揮・監督下にある時間と定義されていますから、「労働は働かされること」という考え方であり、その意味で働き方改革は働かせ改革というのも当然のことなわけです。しかし、副業に関してはそうではなくて、あくまでも労働者の選択によってするかしないかということが決まっているということで、本当の意味での「働き方」改革なのだと思います。そういった意味でのパラダイムシフトを起こす以上、労働行政としても考え方は変えるべきだと思います。そうでなければ、推進ということはとても起きないのではないかと思ってございます。

○松村座長 ありがとうございました。

 では、芦野委員、どうぞ。

○芦野委員 私も幾つかあるのですが、1点だけ簡単に。

 自営型テレワークのほうですが、私自身は、これはもうしようがないというか、非常によくできたものだと思っております。なぜ自営型テレワークというのがあるかというと、離れて働く役務を提供するということ。しかしながら、雇用型と違って労働法の規制が入ってこないということです。特徴としては、前回も申し上げましたが、場所と役務の提供と契約類型、あるいは当事者というところに特徴があるのだと思います。

 役務の提供に関していいますと、なぜ意味があるかというと、継続的な契約になる場合が一般的であるということと、さらには、通常の場合と異なって成果物が見えづらいということ、さらには、完成物を出す場合だけではなくて、役務の提供が段階的に行われる、あるいは連続的に行われることによって、それに対する対価的な関係をどう見るかというところが入ってきます。すなわち、そういう側面で考えますと、これは契約を念頭に置いたガイドラインの1つだと言えると思います。

 一方で、役務の提供という観点から、厚生労働省でもありますし、働き方、働く人を対象としたガイドラインということも言えるのかと思います。となったときに、これはやはり両方が混在せざるを得ないところは仕方がないところだと。すなわち、契約締結に際しての守るべき遵守事項、すなわち、その後の働く人が適切に働くことができる方向性を示すことにもつながることになります。

 一方で、安全配慮とかについては、役務を提供する人々が働きやすいものに関してどのようなものがあるかというのを、例示的に、あるいはまさにガイドラインとして示すことが入っていると思います。雇用型テレワークとは、テレワークという観点では同じだと言えるかもしれませんが、労働法の観点の規制が直接に入り込んでこないところでどのように考えるかが違うところであります。

 一方で、先ほどもちょっとだけ申し上げましたが、これが兼業・副業との兼ね合いでどうなってしまうのかというのは、私自身も実はよくわかっていないところでして、この3つが合わさったときにそれぞれが複合的にからみ合ってしまうところをどう整理していくのかが重要なのだろうなと考えております。

 以上です。

○松村座長 ありがとうございます。

 それでは、河崎委員、どうぞ。

○河崎委員 すみません。時間が余りあれなので、簡単に兼業・副業のところだけ。

 1つは、働くことそのものが苦しいものであるという考え方ではないと。働くことを通じて社員は成長しますし、人生を幸せに豊かに送る時間にもなり得ます。私どもはもう既に副業を解禁しておりますけれども、江木委員も言われたように、副業をするのは社員の自分の選択であるということです。やはりここを大事にしておかないといけない。逆を返せば、これが解禁されなければ選択の自由を与えていないということです。特に若い人に社内で調査をすれば、明らかにこれを求めてきます。前提として我々はそういうふうに時間を捉えています。

 もう一個、労務管理についてです。健康経営を推進していく中で、産業医との何度もの交渉であるのですけれども、確かに、労働時間がふえていけばいくほど鬱であるとか自殺もふえていくのは事実でございます。ところが、働いている中身、自主的に前向きに仕事をしている時間と、やらされて嫌々やっている時間をもし分けることができたとしたら、本当の働く時間の問題というのは後者のほうだと思うのです。むしろ、長さが問題ではなくて、長く働くことによって、お風呂に入ったり、洗濯をしたり、そういう引き算をするとどこに影響が来るか。睡眠です。鬱の初期症状は必ず睡眠障害に入っていく。つまり、睡眠の質が労働時間によってかなり影響を受けているというのが事実でございます。

 志高い若者がやりたいことに向かうときのエネルギーを、あるいは任意にどういうことをやっていきたいということをとめることは、私は国家の損失にもつながっていくことになると思います。大きな問題は、労働時間の通算管理だと思うのですけれども、これは委員からも指摘されたように、私は、一企業実務としたら、これをきちっと管理していくことはほとんど不可能だと思っております。ちょっと極端ですけれども、これについては見直しをする方向でもう一回議論ができないかなと考えております。

 以上です。

○松村座長 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。

 では、江木さん、どうぞ。

○江木委員 副業・兼業に関しましては、今、河崎さんがおっしゃったとおりだと思います。国としての競争力をさらに高めていくためにも、これはしっかりと議論を続けたいと考えております。

 私、ちょっと細かい点ですが、テレワークです。資料2ですけれども、記載内容の文章が少し長いなという印象を持ちました。こういったガイドラインは、記載内容も簡潔に読みやすく、知りたいことを探しやすくするべきだと思っています。そういった意味では、資料3の自営型テレワークのガイドラインのフォーマットは、箇条書きも非常に多くて、探しやすくてよいのではないかなと思いました。

 もう一点は、同じく資料2のテレワークのガイドラインですけれども、ガイドラインには少し幅を持たせることが望ましいのではないか。テレワークの分類は、在宅とサテライトとモバイルと3つ示されていますけれども、今後、この分類にとどまらないのではないか。このガイドラインを何年先まで想定していらっしゃるかということが肝心だと思うのですけれども、余り細かく分類をするのではなくて、汎用性の高い表現にされたらどうかという気づき。

 ちょっと細かいですけれども、以上です。

○松村座長 ありがとうございました。

 それでは、萩原委員、どうぞ。

○萩原委員 きょうは、副業と兼業についてなのですけれども、私、実態でいうと、もう副業・兼業は隠れ副業化していると思っています。国の統計では雇用者の3.数パーセントしか副業・兼業をしていないですけれども、私たちの調査でいうと十数パーセントということで、10%ぐらいの開きがあるのです。もはや個人にとっての副業・兼業の敷居は、シェアリングエコノミーですごく下がっていて、簡単に始められるけれども、企業側には禁止されているから言えない、こっそりやるのだという状態。この状態は働く本人にとっても企業側にとってもいい状態ではないと思うのです。今、それを改善していくためにもガイドラインをつくって、副業・兼業を認める企業を増やしていこうというわけですけど、今のガイドライン案を見ると企業側が認めるメリットを感じられる内容になっていない。皆さんがもう既におっしゃったように、これまでの法制度のあり方にも踏み込んだ議論が必要で、それをやらないと副業兼業を進めていく上で、意味がないのかなと思っています。

 以上です。

○松村座長 ありがとうございました。

 それでは、湯田委員、お願いします。

○湯田委員 萩原委員がおっしゃったように、現状を考慮したほうがいい点があると思います。例えば、クラウドソーシングで活躍している方は、1カ月の間に10事業者と契約している場合もあります。それは、役務提供型のものもあれば請負型のものもあったりします。このままのガイドライン構成の議論でいくと、2社に雇用される場合はいろいろな制限があるため、業務委託形式でという流れになってしまいかねません。労働時間の通算や割増賃金などの適用の考え方など、ルールの明示はしつつ、実際におきうるケースを想定した解説集や事例集を別途出していかないと、理解は進まないのではないかと思います。

 副業・兼業のガイドラインについてはもう少し踏み込んだ内容を書きつつも、書き下しは別に構成するという工夫が必要と思っております。

 以上です。

○松村座長 ありがとうございました。

 ちょうど時間が来ましたので、本日の議論はここまでにさせていただきます。

 皆さん、御意見ありがとうございました。

 それでは、次回の日程について事務局からお願いします。

○飯田労働関係法課課長補佐 次回第5回の日程については、12月上旬に実施する方向で現在調整中でございます。確定次第、開催場所とあわせて追って御連絡をさせていただきます。

○松村座長 皆さん、きょうは活発な御議論をありがとうございました。

 これにて、第4回「柔軟な働き方に関する検討会」を終了いたします。

 本日は、お集まりいただき、ありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 雇用環境・均等局が実施する検討会等> 柔軟な働き方に関する検討会> 第4回「柔軟な働き方に関する検討会」議事録(2017年11月20日)

ページの先頭へ戻る