ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 政策統括官(統計・情報システム管理、労使関係担当)で実施している検討会等> 国民生活基礎調査の非標本誤差の縮小に向けた研究会> 第2回国民生活基礎調査の非標本誤差の縮小に向けた研究会 議事録(2017年11月17日)




2017年11月17日 第2回国民生活基礎調査の非標本誤差の縮小に向けた研究会 議事録

○日時

平成29年11月17日(金) 15:00~16:42


○場所

厚生労働省 専用第20会議室
(中央合同庁舎5号館17階8号室)


○出席者

構成員(五十音順、敬称略、◎:座長)

  石井 太
  稲葉 由之
  津谷 典子
◎廣松 毅

構成員以外の出席者

 西郷 浩(早稲田大学政治経済学術院教授)

事務局

  酒光政策統括官(統計・情報政策担当)
  中井参事官(企画調整担当)
  中村世帯統計室長
  北世帯統計室国民生活基礎統計専門官
  大村人口動態・保健社会統計室室長補佐

○議題

(1)国民生活基礎調査と国勢調査の原データレベルでの比較・検証
(2)国民生活基礎調査の推計方法等に係る検証・検討
(3)その他

○議事

1.開会

○中村室長
 本日、中井参事官は所用で少し遅れてまいりますが、委員の皆様方はお集まりのようでございますので、ただいまから、第2回国民生活基礎調査の非標本誤差の縮小に向けた研究会を開会させていただきます。

 委員の皆様におかれましては、御多忙の中を御出席いただきましてまことにありがとうございます。

 会議に先立ちまして、事務局のメンバーに変更がございましたので御紹介申し上げます。政策統括官(統計・情報政策担当)の酒光でございます。

○酒光統括官
 酒光です。どうぞよろしくお願いいたします。いつもありがとうございます。

○中村室長
 本日は、委員の皆様は全員御出席ということでございます。

 それでは、以後の進行につきましては、座長の廣松先生によろしくお願いいたします。

 

 

2.議事

(1)国民生活基礎調査と国勢調査の原データレベルでの比較・検証 

○廣松座長
 委員の先生方には、お集まりいただきましてどうもありがとうございます。

 早速ですが、議事を進めてまいりたいと思います。

 本日の議事は、お手元の議事次第のとおり大きく3つです。そのうちの1つ目は国民生活基礎調査と国勢調査の原データレベルでの比較・検証です。これにつきましては、第1回において委員の皆様方からいただきました御意見を踏まえて、事務局で資料を作成していただいております。それについて説明をいただいたあと、第1回の資料も含め当研究会としての評価を行いたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 それでは、資料の説明をお願いします。

○中村室長
 まず、資料1を御覧ください。この資料は、第1回の研究会で平成
22 年国民生活基礎調査の対象となりました調査地区と同じ平成 22 年国勢調査区をマッチングさせて、個票ベースで世帯のいろいろな属性別とか年齢階級別に集計をして捕捉率等を比較したものを御提示させていただきました。その際に調査対象の 5,510 地区のうち実際にマッチングできたのが、 3,826 地区ということで、約7割のマッチング率となっております。

 この集計できました地区に偏りがあるのではないかというような御指摘がありましたので、「大都市」「その他の市」「郡部」別に、地区数と構成割合を作成したものです。真ん中の「構成割合(横 100 )」を御覧いただきますと、比較・集計対象地区は、大都市やその他の市に比べて郡部の割合が大体1割程度高くなっております。右側の「構成割合(縦 100 )」で全地区と比較・集計対象地区を比較しますと、「大都市」は大体 23 %程度、「その他の市」は 64 %程度。「郡部」は 11 %から 13.5 %と、ここだけは若干開きがありますけれども、それほど大きな差はないのではないかと思っておりまして、7割程度のマッチング率ですが、極端な偏りということではないのではないかと考えています。この点につきましては、後ほど御議論をいただきたいと思います。

 続きまして、資料2を御覧ください。こちらも、第1回の研究会で平成 25 年の国民生活基礎調査の対象となった調査地区と 22 年の国勢調査区をマッチングして、調査地区ごとの世帯数の差を提示しました。その際に、単独世帯と単独世帯以外とか、大都市、中小都市、郡部といった地区の属性別に世帯数の差を見てはどうかというような御指摘がありましたので、この2つについてクロスをして、調査不能などの 222 地区を除外した 5,308 地区について世帯数の差を見たものです。

 まず「総数」のところを見ていただきますと、平成 22 年の国勢調査に比べて、世帯数は▲ 58,839 、捕捉率 79.2 %、真ん中のところの「単独世帯」では▲ 30,778 、捕捉率は 64.6 %、「単独世帯以外」では▲ 28,061 、捕捉率 85.7 %で、やはり単独世帯の減少が大きくなっております。「大都市」「その他の市」「郡部」別に、単独世帯の捕捉率を見ますと、次の「大都市」のところが一番低くなっており、次いで「その他の市」となって、「郡部」は、単独世帯と単独世帯以外では市部に比べてそれほど差はないという結果になっています。

 続きまして2ページ、3ページ、ここは見開きになっています。第1表ですが、市郡別に平成 22 年国勢調査と平成 25 年国民生活基礎調査との世帯数の差を世帯数の階級で見たものです。黒い部分が両調査が同じ階級の地区数、左下半分が、国民生活基礎調査が下の階級だった地区ということになっております。3ページの下にまとめの表を作っています。これを見ていただきますと、一番下の「国民生活基礎調査が下の階級の地区」というのが、大都市で 79.3 %、その他の市で 62.9 %、郡部では 48.6 %、「両調査が同じ階級の地区」は、大都市で 18.8 %、その他の市では 34.1 %、郡部では 47.2 %となっております。

 次に4ページ、5ページ、こちらも同じ見開きで見ていただきますと、こちらの集計は単独世帯について集計したものです。同じように両調査の差を見たところ、5ページの下のところにまとめの表を作っていますけれども、「国民生活基礎調査が下の階級の地区」は、大都市で 55.5 %、その他の市では 37.1 %、郡部では 23.2 %、「両調査が同じ階級の地区」は、大都市では 41.7 %、その他の市では 58.5 %、郡部では 70.3 %となっています。

 次に、6ページ、7ページを御覧ください。こちらは同様に単独世帯以外について世帯数の差を見たものです。7ページの下にまとめの表がありますけれども、こちらで見ると、「国民生活基礎調査が下の階級の地区」は、大都市で 56.6 %、その他の市で 44.8 %、郡部で 36.5 %、「両調査が同じ階級の地区」は、大都市で 40.4 %、その他の市では 51 %、郡部では 60 %となっています。

 次に、8ページ目を御覧ください。2ページから7ページまでは世帯数の差を階級で見たものですが、この第4表については、地区ごとの世帯数の増減を計算して、1世帯でも増減があれば、増となったり、減となったりというふうにカウントしています。それを単独世帯、単独世帯以外、市郡別に見たものです。真ん中の単独世帯のところを御覧いただきたいのですが、「単独世帯」では減少した地区の割合というのが、大都市では 81.3 %、その他の市では 69.7 %、郡部では 59.4 %、一番下の表の「単独世帯以外」のところで減少した地区の割合を見ると、大都市では 86 %、その他の市と郡部では大体8割となっており、やはり大都市の減少が最も高くなっているという結果です。

 前回の御指摘いただいた点については、この2つの資料で御説明申し上げました。以上です。

○廣松座長
 ありがとうございました。それでは、この資料1及び資料2に基づく説明に関して委員の方々から御質問、御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。

 特に資料2の平成 22 年の国勢調査と 25 年の国民生活基礎調査との調査地区別の世帯数の比較ですが、前回御指摘をいただき、こういう形の資料を作成していただきました。

 いかがでしょうか。お願いします。

○稲葉委員
 表が非常に分かりやすいので比較をすると状況が見えてくるかと思うのですが、4ページの第2表、単独世帯のところと、6ページの第3表の単独世帯以外のところ、特にこの大都市のところを比較すると、状況がよく分かるのではないかと思いました。解釈としては、単独世帯では、例えば平成
25 年の国民生活基礎調査の「 1-10 」のところが 738 地区あるわけですが、これで国勢調査の世帯数が、その4倍以上といいますか、「 41-50 」というようなところにもかなり数があります。それに比べて、単独世帯以外で見ていきますと 41 以上というと 2 地区ということで、大都市の単独世帯といったところでの捕捉に少し問題があるのではないかということをこの資料で見ることができるのではないかと思います。非常に分かりやすい資料をありがとうございました。

○廣松座長
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

 特に単独世帯と単独世帯以外の差が、かなり明確にあらわれているという点が大変興味深いところだと思います。一方で、この現状を前提として次回の調査設計をどうするかということは、またちょっと別の論点かもしれませんが。

○津谷委員
 具体的に定量的にこういう数値が分かったことは、大変いいことだと思います。ただ、特に大都市の単独世帯の捕捉が非常に難しいということは、おそらく初めからもう分かっていたことであり、それがここで確認されたということかと思います。ですので、先ほど座長もおっしゃいましたけれども、これからこれについてどのように対応するのかということが今後の課題になると思います。特に一番捕捉の難しい大都市圏の単独世帯についてどのように調査していくのかということを、次のステップとして考えていくべきだと思います。

○中村室長
 今回のこの国勢調査との比較というのは、過去の分析で、国民生活基礎調査の推計数と国勢調査の結果の差を見て、基本的には、やはり同じように都市部の単独・若年といったところの捕捉が低いというのが分かっていたわけです。
28 年の国民生活基礎調査の統計委員会の部会の審議の中で、推計数ではなくて実際の調査対象となった調査地区の実数でやってみて、同じような結果が出るのかどうかといったところを検証しなさいというのが宿題になっていました。私どもは、過去にやったものと、今回分析した結果は基本的なところではやはり同じような結果が出ているのではないかと考えているところです。

○廣松座長
 ありがとうございました。ほかの委員の方はいかがでしょうか。

 今、事務局から御説明があったとおり、部会で指摘のあった点に関して、推計値ではなくて実数を用いた比較を行っていただき、今まで推計値に基づいて言われていた傾向に関しては、大きな変化はないというふうに解釈すればよろしいでしょうか。

 ほかにいかがでしょうか。

 資料1及び資料2に関しましては、今、御説明・御意見をいただいたことを踏まえて、少なくとも平成 22 年の国勢調査と平成 25 年の国民生活基礎調査との実数の比較という意味で、大都市における単独世帯の傾向というのが改めて確認されたということでよろしいでしょうか。先ほどの御説明にあったとおり、この結果を部会から与えられた宿題の回答として提出をしていただくということになろうかと思いますが、よろしいでしょうか。

 特に御異論がないようでございますので、それでは、議題(1)の国民生活基礎調査と国勢調査の原データレベルでの比較・検証については、資料1及び資料2の形でこの研究会としては御承認いただいたということにしたいと思います。よろしゅうございますか。

 どうもありがとうございました。


(2)国民生活基礎調査の推計方法に係る検証・検討

○廣松座長
 それでは、続きまして、議事(2)国民生活基礎調査の推計方法等に係る検証・検討についてです。

 まず、全部不詳データの補正に係る試算結果について、事務局より説明をお願いします。

○みずほ情報総研
 それでは、資料3と資料4を説明させていただきます。

 資料3、資料4は、いずれも前回の検証のときに行った3通りの補正、試算の方法を、平成 22 年の新しいデータを使ってもう一度再現したというものです。資料3の方は、前回の検証時に作成したグラフを平成 22 年の新しいデータでも作成し、比較のために並べているものです。一方で、資料4は、公表されている集計表を3通りの補正方法の乗数を使って計算するとどうなるかといった形になっております。

 それでは、まず資料3の読み方から説明します。資料3は各ページに2枚ずつ表やグラフが配置されていますけれども、上に配置されていますのが平成 22 年の新しい結果、下に配置されていますのが、平成 19 年、前回検証した際の結果を並べています。そして、資料3の各グラフの中には、基本的に5本の棒グラフがあります。左から色別に5本並んでいますけれども、凡例を御覧いただきますと、一番左の濃い青のグラフが世帯票の実数そのものを使って作った結果です。その隣の水色が世帯票や所得票の拡大乗数を使って膨らませた後にあらためて比を取ったものです。ですので、この2本は元データからのみ作成しているものです。その右に3本、オレンジ、黄色、茶色の棒グラフがありますが、これが前回も行いました3通りの補正方法に対応するものです。真ん中のオレンジが地区別回答世帯数による補正方式、要は地区ごとに足りないところを補った上で全国の人口に膨らませたものです。それから、黄色のグラフは、1ページ目はほとんど見えていないですけれども、国勢調査ベースによる補正の結果ということで、国勢調査の値に対して世帯構造と世帯主の年齢階級別に相似の形で膨らませた結果です。一番右の茶色の棒グラフは有効回答率による補正ですので、対象となったところのうちどれだけ回答してきたかという率の逆数を使って戻したというようなイメージです。各ページは同じような構成になっておりまして、それぞれの特徴のあるところにマーキングをして、上にコメントをつけました。

 1ページ目のグラフは世帯構造別の世帯の構成割合の差ですので、表の下段に男の単独世帯からその他世帯までそれぞれの構成割合が、国勢調査と比べてどれだけ凹凸があるかという差を取っております。平成 22 年の方は、平成 19 年と比べて、赤枠で囲っているところ、男女の単独世帯は下に差が拡大し、「夫婦と未婚の子のみ」については上向きに差が拡大しました。それから、「三世代世帯」については、若干正負が入れかわった上で、やはり差が広がっていたというような結果になっています。

 2ページ目は、同じく世帯票を使って、世帯員の年齢分布の人数の推計人口との差をとってプロットしたグラフです。基本的に若い世代の方が下に出て、高齢の方が上に出るという傾向は同じなのですけれども、地区別回答世帯数による補正、それから所得票有効回答率による補正は、 19 年に比べて差が広がりました。それがオレンジと茶色の棒です。黄色の国勢調査ベースは、もともと 19 年のときから上下にばらついて出ていたのですけれども、それが 22 年の方で正負が逆転したり、差も拡大、縮小等が混ざっておりまして、補正の傾向にばらつきがあるという結果になりました。

 ここまでの2枚が世帯票を使った結果です。

 3ページ目からが所得票の比較表です。3ページは、1ページと同じく世帯構造別の世帯の構成割合の差ですけれども、こちらはそれほど傾向に違いは見られませんでした。あえて挙げるとすると三世代のところで正負が逆転して表れたということぐらいで、ほかのところはおおむね同じ見た目になっております。

 4ページは、世帯員数の不詳は除いた上で、年齢階級別構成割合の差です。ここは上下のグラフともに赤枠で囲ませていただきましたけれども、大体 44 歳と 45 歳のところを境にして、若い方が下に、高齢の方が上に出るという傾向は、前回も今回も同じです。ただ、高齢の方で、 19 年の際は 65 歳あたりを山として凸型になっていた部分が、 22 年では、 60 歳代から 70 歳代ぐらいにかけては、どの補正方法でも同じぐらいの差で、なだらかに上に出ているというような変化がありました。

 5ページからは若干数表が入ってきますけれども、こちらも前回の検証の際に集計した結果を平成 22 年のデータに入れかえて集計しました。このページは所得に関する集計で、1世帯当たり平均所得金額、それから同じく中央値と五分位の各値を集計しました。下半分の平成 19 年の結果の左の「ウェイトなし」から一番右の「所得票有効回答率による補正」というところまでが、先ほどのグラフで言うところの5本の帯に対応しているものです。ですので、左から2列目の「現行方式」というのが、拡大乗数を使った結果ですので、これを基準に右の3列を見ていきますと、平成 19 年は若干推計による数値の方が低めに出ておりましたけれども、平成 22 年ではその差が広がって、現行方式の1世帯当たり平均所得金額が平成 22 年は 549.6 万円に対して、右の3列、真ん中の列はそれほど低くないですけれども、「国勢調査による補正」は 528 万円程度、「有効回答率による補正」の結果は 527 万円程度と、だいぶ低めに出ておりました。

 6ページは、総所得の分布を比較しております。色の使い方は、先ほどまでと同じで5本の棒グラフを表示しています。赤丸で囲んだところが、平成 22 年のところは現行方式よりも各推計結果の方が高めに出ているということを示しているのですが、席上配布で1枚だけ付けさせていただいた紙に、ここのところがより分かりやすくなるように、現行方式との差をプロットした表を作りました。前回の検証時にはこちらの表はなかったのですけれども、こちらで確認しますと、3つの補正方法と現行方式の差を見ると、平成 22 年では低い階級のところでどの棒グラフも上に出て、現行方式より高い結果となりました。

 6ページまでが基本的な試算・補正の結果です。

 7ページ以降は、オプションに近い方法ですけれども、前回の検討の際も行っていました方法です。7ページの国勢調査の世帯構造別だけ考慮した補正というのは、国勢調査に合わせにいくときにあまり細かく区分を切ってしまうと、そこに基準となるサンプルが存在しないので、そこが膨らませられないということを受けて、世帯主の年齢階級は無視して世帯構造の1つの軸だけで切って推計したらどうなるかというオプションを前回もやっておりましたので、同じことを平成 22 年でも行いました。こちらのケースですと、現行方式に比べて、やはり補正の結果が低く、差が拡大したという結果になっています。

 同じくこのオプションの試算で、総所得分布を作り直したのが8ページのところです。こちらも低めのところで、平成 19 年に比べて値が大きくなっておりますけれども、全体の傾向としてはそれほど変わりないという結果です。

 それから、9ページは、同じく世帯構造別だけ考慮した補正を使って、年齢階級別の構成割合の差を求めたものです。こちらも先ほど説明した資料に近い形で、 39 歳までの若い方でマイナス、 40 歳以上でプラス、そして 19 年の際には高齢の方に山型にあらわれていたところは、平らに、なだらかになったというような傾向があります。

 資料3の最後の 10 ページは、何かの補正というわけではないのですけれども、国勢調査と所得票の対象・回答世帯の構成割合がどうなっているのかというのを確認するための資料で、平成 19 年、平成 22 年のいずれも所得票の対象世帯のほうが国勢調査の分布には近いという傾向は変わらないという結果でした。

 ここまでが、前回の検証の際に平成 19 年のデータで行った作業を平成 22 年のデータを使って、再試算した結果を比較したものです。

 続きまして、資料4の御説明をさせていただきます。資料4、各推計方法による集計結果の比較についてということで、前回の検証では資料3のグラフをもとに行っておりましたが、実際にはこの3つの補正方法、推計方法では現行方式とは異なる拡大乗数が作成されておりますので、その拡大乗数を用いて具体的に公表されている各集計表を作成するとどう変わるかというものを作っております。

 資料の見方ですけれども、各表の中に薄いオレンジの網かけをしているところ、「 22 現行」という行ですね。こちらが公表されている現行の拡大乗数を使った数値、それより古い年度の数値も実際の公表結果です。その下に試算1 から3 と書いてあるものが、先ほどの資料3におけるグラフの右3本それぞれに相当する試算方法を使った結果、そして国勢調査の結果等を参考のためにその下につけています。全般的にこの表の中に青と赤の枠で囲っているところがありますけれども、青枠で囲んでいるところは現行に比べて大きいところ、赤枠で囲んでいるところが現行に比べて特に小さいところを抜き書きして表示しています。

 資料4の1ページ目の表1、世帯構造別、世帯類型別にみた世帯数及び平均世帯人員の年次推移というところで、色の枠を見ていただくと、単独世帯は青枠で囲まれていて、現行よりも大きく推計されています。ただし、国勢調査よりはまだ小さい結果になっております。

 そこから右に見ていきますと、「夫婦のみの世帯」「夫婦と未婚の子のみの世帯」あたりは、試算の幾つかの方が小さく出ていまして、「ひとり親と未婚の子のみの世帯」は、試算2の方法、国勢調査ベースの部分だけ特に大きくなります。それから、「三世代世帯」は試算1と試算2でプラスとマイナスが逆になります。

 右半分の「世帯類型」のところでいきますと、高齢者世帯では、試算1 は多く、試算2、試算3は小さく出ています。母子世帯は、特にこれも国勢調査ベースの試算方法2で 大きく出ております。一番右の列に平均世帯人員がありますけれども、こちらは、現行に比べてどの試算方法で行っても小さく出て、国勢調査との間を取っているような状況です。

 2ページ目の表2、年齢階級別にみた世帯人員の年次推移というところで、このページの一番左の総数のところを御覧いただきますと、 22 現行から試算1 、試算2、試算3、 推計人口まで全て同じ、 125,739 と入っておりますが、これはそもそも補正の方式がこの総人口を合わせにいっているので、必然的にここは全てそろう形になります。そうしますと、先ほどの1ページで、世帯数は現行に比べてどの試算も多い訳ですから、平均世帯人員数は逆に少なくなるという結果です。2ページは年齢別に見た場合の増減の差ですけれども、 19 歳以下、 60 歳以上の試算2 、試算3の ところが、赤枠で囲まれていて、ここは少なく補正されています。一方で、 20 代から 50 代のあたりは 、試算1、試算2、試算3の いずれも、大きくなるところもあれば、幾つか、2つの試算方法で大きくなるところがありますけれども、全体的に、 20 代から 50 代のところは高めに、逆に 60 代以上は低めに補正されるという結果でした。

 3ページ、表3、1世帯当たり平均所得金額の年次推移は、先ほどのグラフにも一部こちらの数字は書いておりましたけれども、「高齢者世帯」や「児童のいる世帯」という区分に分けて、もう少し細かく作っています。こちらの表では、右に向かって方法が変わっていきますので、 21 現行より右側にある試算1 、試算2、試算3 の縦3列が補正の結果です。 試算1の「高齢者世帯」と「児童のいる世帯」だけが青で囲まれていて現行よりも高く、それ以外のところは現行よりも低く出ていまして、先ほど資料3のところでもお話ししたとおり、現行に比べて、試算1はそれほど差がないけれども、試算2、試算3は全世帯で見た場合に低く出ております。

 4ページ、表4、世帯主の年齢階級別にみた1世帯当たり-世帯人員1人当たり平均所得金額です。上の表が1世帯当たり平均所得金額で、下の表が世帯人員1人当たり平均所得金額です。

 上の表を先にお話ししますと、試算2 のと ころでかなり幅広い年齢階級において、 30 代から 60 代について、赤枠で囲まれていて低く出ています。試 算1 は、 40 代と 70 歳以上のところで少し高めに出ている以外は、ほぼ同じ程度か低く、試 算3は 29 歳以下は特に低くなっておりますし、 70 歳以上のところも赤枠で低くなっているということで、おおむね低い結果です。

 同じページの下半分、世帯人員1人当たりの平均所得金額になると、先ほどの1ページ目、2ページ目であったとおり、試 算1、試算2、試算3の方が、1世帯当たりの人員が現行より小さくなっていますので、世帯人員1人当たりで比べると、ここで少し傾向が変わって、青枠で、つまり現行よりも高い結果があらわれています。特に試算1 60 代以上のところ、それから、逆に試算2 40 代より下のあたりは、現行に比べて高く出たということです。

 5ページ、表5、所得金額階級別にみた世帯数の分布及び平均所得金額です。表の左半分が累積度数分布で、右側が相対度数分布です。それから、分かりやすい比較をするために、赤枠で中央値の部分に着目しております。いずれの試算方法も低下、特に試算3 は差が大きくなっておりまして、それを反映するかのように、度数分布で見ても低い階級の方に3つの試算の方が多く集まっているという結果でした。これが全世帯の結果です。

 6ページが高齢者世帯、同じ表の形で7ページが児童のいる世帯、8ページが母子世帯ということで、この表は1ページごとに1区分ずつ掲載させていただいております。「高齢者世帯」では、試算1 は少しだけ高く出ていますけれども、試算2、試算3は現行よりも低く、「児童のいる世帯」は全ての試算方式で現行よりも低く、「母子世帯」は、試算3が現行より高く出ていまして、残りの試算1 、試算2はほぼ同じ状況でした。

 ここまでが平均所得金額です。

 9ページ、表6、今度は所得の種類別にどの所得が現行と比べて多いか少ないかというところで分けておりまして、「総所得」の隣に「稼働所得」「公的年金・恩給」「財産所得」と書いておりますけれども、「稼働所得」と「公的年金・恩給」のいずれも、現行よりも全世帯で見ると低く、試算3で 稼働所得が低く出ています。「公的年金・恩給」は、試算2 ケースで低く出ています。こちらの表は、やはり同じように9ページの下半分に「高齢者世帯」、ページをまたがって 10 ページ目の上段が「児童のいる世帯」、下段が「母子世帯」ということで、少し細かく区分を見ております。各世帯の傾向は、この赤枠、青枠で囲んでいるところを御覧いただければと思いますので、後ほど御確認いただければと思います。

 最後の表7は、 11 ページと 12 ページにまたがって4つの表、「全世帯」「高齢者世帯」、それから「児童のいる世帯」「母子世帯」の表を掲載していますので、2ページで1つのセットです。こちらは、貯蓄、それから借入の状況です。上の方に貯蓄に関する結果、下半分に借入に関する結果で、「貯蓄がない」のところが青枠で囲まれていまして、どの試算の方式であっても現行よりも多いです。だから、貯蓄がないという傾向が強く出ています。一方で、下の「借入金がある」のところは、逆に赤枠で囲んでありますので借入金がないという傾向が出ています。1つ上の「借入金がない」というところと裏返しのようでもありますけれども、実際は不詳のデータがありますので、必ずしも足して 100 %になるわけではありません。

 「総世帯」で見ると、「貯蓄がない」という傾向はどの試算方式も同じ、同じく「借入金がある」というところが現行と比べて少ないのも同じです。右半分のところの「高齢者世帯」では、若干、 試算2と試算3に対して、試算1の 傾向が変わっておりまして、借入金のところで赤枠と青枠が切り替わっているところがあります。

12 ページの「児童のいる世帯」と「母子世帯」についても、「総世帯」のように一律の傾向ではなく、試算方式によって赤枠であったり青枠であったりというのが入り繰りしていますので、こちらは一概にどちらがということはありませんけれども、総数で見ると先ほど申し上げたような傾向が見られたというところです。

 駆け足になりましたけれども、資料3と資料4の御説明は以上です。

○廣松座長
 ありがとうございました。大変豊富な情報が入っていますが、資料3、資料4をあわせて御説明いただきました。まず資料3に関しまして、御意見、御質問をいただければと思います。いかがでしょうか。

○稲葉委員
 私は以前の研究会にも参加していたのですけれども、そのときに、資料3の6ページのところ、そして本日の席上配布の1ページのグラフのところで、以前の研究会においては各補正方法での特徴があまり出てこないといいますか、席上配布の下の
19 年のグラフを見ると分かりやすいのですけれども、各補正方法によって特徴があまり見られない、傾向が見られないというような指摘があったと思うのですが、今回、上の方の 22 年のグラフを見ますと、明確な傾向が現れてきているというのが今回の資料においてよく分かりました。すなわち、低所得の方と高所得の方で、グラフの形状、現行の方式との差を示しますと、3つの補正方法で低所得の方が大きく出る、そして高所得の方が低く出る、この傾向は、下の方のグラフでははっきりとは分からなかったことが、今回の計算でははっきり分かってきたということが非常によく分かる資料であると思いました。

○廣松座長
 ありがとうございます。試算の
方法1から3によると 、確かに全体として試算の違いによる結果の情報は、それほど多くは出てこないというのが全体の印象です。それが、今、稲葉委員の御指摘のとおり、席上配布資料で見ると、そこがもう少し差が分かるような状況になっているということかと思います。特に平成 22 年の結果で、その差が明確に出てきたということだと思います。

○中村室長
 稲葉先生がおっしゃるとおり、
22 年でやってみると、同じやり方でも、上の 22 年は明確な方向が出て、下の 19 年がちょっとよく分からないというところなのですが、この3種類のどれかを採用するとして、例えば 19 年はどういう方向なのか分からない、 22 年はある程度3つとも同じ方向だと、そういったように調査年によって変わってしまうことについて、どういうふうな評価をしたらよろしいのかというのがちょっと分かりません。

○廣松座長
 そうですね。

○石井委員
 確かに方法によって結果がずれるというのも、評価は非常に難しくて、これだけの材料だと確かに優劣を付けるのはなかなか難しいと思います。補正の仕方とその時々のデータの特性というのが関連しあっていて、必ずしも一定の方向性になっていないということなのかなという気がします。

 それに関連するかどうかはあるのですけれども、ちょっとお尋ねしたいと思ったのが、資料3の2ページのところに年齢分布による違いというのが出ていまして、ここでは、もちろん若年層と中高年のところは特徴があるのですが、もう1つ、特に国勢調査ベースの世帯主年齢で合わせにいっているのにもかかわらず、 80 歳以上の黄色いグラフが、 19 年も 22 年も非常にずれているなという感じがしました。こういう高年齢のところは、例えば公的年金の平均値などにも何か影響を及ぼしているのかもしれないのですけれども、ここがだいぶ乖離しているのには何か理由があるのでしょうか。

○みずほ情報総研
 不詳データが影響している可能性はあるかと思うのですけれども、特にここの
80 歳以上が何か特殊な要因があって増えているということは、データを扱っているところでは見えませんでした。おっしゃったように、年金や恩給の部分に影響が出ているというのはもちろんあり得るかと思います。

○廣松座長
 この2ページの図では現在推計人口との差を表していただいていますが、現在推計人口のみの揺れというのは、そんなに大きくはないでしょうね。

○津谷委員
 この資料3を見て、非常に情報量が多く、また現行方式に加えて3つの方法別に数値が示されていますので、あまり細かいことを見ないで、大きな傾向を読むようにした方がよいと思います。そうでないと、この膨大な情報はとてもではないけれども咀嚼できません。この資料には多くのグラフが出ていますが、全体をアイボーリングつまり俯瞰すると、平成
19 年と比べて平成 22 年には誤差が大きくなっています。これは特に、1ページの世帯構造別の世帯の構成割合で大きくなっているように思います。そして、あともう1つ誤差が大きいと思うのは、9ページの国勢調査の世帯構造別だけ考慮して推計されて補正された場合で、やはり平成 22 年の方が誤差が少し大きくなっていると思います。

 それ以外は、全体的にみて、それほど目立ったものはないと思います。もちろん細かいことを言い出したらきりがありませんし、補正の仕方を考えると、合致しません。その他にはむしろ誤差が若干縮まったような感じがするものもあるので、結論をどう出すかは難しくて、誰が見てもこれがよいというものはないように思います。

 先ほど年次によってパターンが大きく違うというお話がありましたが、これは統計的に頑強な補正方法が特定できないということを示しているのではないかと思います。これはまた、先程石井委員がおっしゃったように、年次によってそれなりに特色があるということの1つの証左でもあるかと思います。そうであるすると、年次によって偏りがあり、それに大きく影響を受けるということになります。このことは、数値をみる際に気をつけなければいけないというサインではないかと思います。センシティビティが強い属性にぶれてしまうということが出てきているように思います。

 この資料に示されている情報量はものすごいもので、これを作成するために本当に多くの時間を費やされたと思います。繰り返しになりますが、この情報量の多さから、ビジュアルで見たときに、問題をピンポイントするのは難しいです。ただ、世帯構造は属性としてセンシティビティがかなり高く、また最近になるに従って大きくなってきているように思います。ですので、この現行方式から変更するのか、そしてもし変更するのならばどういうふうに変えるのかについて結論を出すのは、情報量が多いこともあり、今の段階では難しいのではないかと私は思います。何かいいお考えあればお聞かせ願えればと思います。

○廣松座長
 とりあえず今日の段階では、資料3及び資料4に関しての御説明をいただいて、評価を下すのは次回以降になります。皆さんに改めて読み込んでいただいてお考えいただければと思っております。もしこれを
25 年のデータで計算をしたらどうなるかというのが、また悩ましいところですね。

○津谷委員
 拡大傾向になってもっときれいに出ればいいですけれども、データポイントが増えると、さらに難しくなるのではないかと思います。その作業をやる必要があるのかどうか、現段階では分かりませんが、もう少しこの情報を見せていただいて、考えた方がいいように思います。ただデータをみて考える際に、あまり細かいことにこだわると、木を見て森を見ずになってしまいますので、木ではなく森を見ることを意識してデータを見ていった方が、おそらくデータの示しているメッセージを咀嚼するという意味ではよいのかなと思います。

○中村室長
 統計委員会の答申の宿題としては、
19 年のデータで試算した結果というのをお示ししました。その当時の研究会の報告書でも、 22 年データを用いてもう一度試算してみてはどうかというようなことも書かれておりまして、宿題としては、もう一回同じ方法で 22 年のデータで作って、何らかの評価が行えるのかどうかということかと思っております。仮に 25 年をやる場合に、国勢調査は5年に1回しかないので、 22 年なのか 27 年なのかというところの問題もあるので、今回はたまたま 22 年が同じ年ですので分かりやすいかと思うのですけれども。

○廣松座長
 あと私がこの資料3を見て思ったのは、やはり2ページの年齢分布の人数の差です。平成
22 年でいうと、「 40 44 歳」のところは何だかすごく差が小さいですね。3年だけの少しの差ですけれども、平成 19 年を見ると、「 40 44 歳」あるいは「 35 39 歳」のところの差が、同じように小さくなっています。これは何か理由があるのですか。逆に言うと、この年齢層が回答率も含めて安定しているということでしょうか。先ほどから御説明があるとおり、若年層の方はかなりアンダーエスティメイトになっているというのは明確に見て取れると思うのですが、それは先ほどの判断のところで、やはり全体像で判断すべきか、あるいは、特定の年齢階級というか年齢層のところに注目して見るという考え方もあり得るかとも思います。

 あと、5ページ以降に、中央値、五分位の値を出していただいておりますが、その数値を御覧いただいて、いかがでしょうか。

 この辺の、特に5ページの「所得票有効回答率による補正」のところでは、やはりどうしても小さくなるという傾向は明らかなようですね。確かに新しい推計の試算方法に関して、どれを選択するかというある意味で決断を迫られる時期が来るかもしれませんが、この所得票の有効回答率というのは、この国民生活基礎調査の範囲内の情報を使って補正をするというか試算をしているわけで、この国民生活基礎調査の情報の範囲内だと、やはりちょっと過少に出てしまうというところは、否定はできないのではないかという気がいたします。

○津谷委員
 5ページですけれども、これは、統計的な有意性、つまり統計的に差があるかどうかを検証するためのテストをやれば確認できると思うのですが、勘ですけれども、平成
19 年の値を用いた下段の部分に示されている「ウェイトなし」、「現行方式」、「単位区分別回答世帯数による補正」、「平成 17 年の国勢調査による補正」、そして「所得票有効回答数による補正」は、おそらく全て統計的な有意性はないのではないかなと思います。もちろん統計的有意性のテストをやってみないと確実なことは言えません。ただ、平成 22 年になるとかなり大きな差が出てきていて、方向性も「ウェイトなし」よりも「現行方式」はちょっと高く出ています。中でも最後の2つは、おそらく統計的に相当有意な差があるように思います。このように、何をベースに補正するかによって統計的に有意な差が出てくるということの意味については、数理統計学者などの専門家に意見を聞いた方がいいのかなとも思います。ただ、1つ言えることは、慎重にならねばならないということかと思います。

○廣松座長
 そうですね。

○津谷委員
 所得の五分位の階層によっても違うのですけれども、全体としてそういう傾向があるように思います。ただ、この上の方が所得の階級別に見ても差が多くなっているという傾向は、やはりはっきり現れていて、特に、座長が指摘されたように、一番右側の国勢調査と所得票有効回答率による補正では、差が大きいということが言えるかと思います。

○西郷審議協力者
 平成
19 年のときには、あまり中央値から上の方はそんなに違っていなかったのですけれども、むしろ低所得者の方に補正の影響というのは強く出ていたようなのですね。それだからこそ、どれが良いかということはそのときは結論を出すことができないというような判断になったのだと思いますけれども、今回、平成 22 年の方は、補正することによって、全体的に全部が下に動いてしまっているのですね。だから、どこの階層というよりも所得の低いところのウェイトが補正によって高くなっているという部分があるので、それがどういう仕組みで働いているのかというのが、どういうことなのかちょっと分からないです。

○津谷委員
 これを使ってジニ係数や貧困率を計算しますよね。

○廣松座長
 はい。そうすると、かなり影響が出ますね。

○津谷委員
 ですから、両方のテールのところ、つまり最も低いところと最も高いところに注意しないと動くかもしれません。

○廣松座長
 もちろん相対的貧困率がどういう値になるかは、ちょっとこれだけでは見通せませんけれども。

○津谷委員
 今は、まだあまり先のことを言っても。

○廣松座長
 少なくとも「所得票の有効回答率による補正」によると、ローレンツ曲線は下の方に移ることになりますね。

○津谷委員
 移ることになりますね。特にこの平成
22 年の右側の2つは、非常に低く抑えられているということは確かなようです。平成 19 年についてはそういうことがないようですので。国勢調査についても回答率やその他の状況で変わっています。同じ国勢調査データを使っているわけではありませんから当然ですが。

○廣松座長
 とりあえず、今日は資料3及び資料4に関して、いろいろ御感想、ご意見をいただくことにします。資料4の方に関してはいかがでしょうか。これも、3つの推計方法に関して、世帯数、平均世帯人員、それから平均所得額等の比較をしていただいております。

○稲葉委員
 まずは、私が数値で見たいというような要望を出しまして、数値で出していただいてありがとうございました。実は、結論は次回以降だとは思うのですけれども、補正の方法として、やはり非常に納得できる方法というのは2番目の方法ではないかと、私は個人的には思っております。試算2
という方法ですね。これは世帯構造と世帯主年齢階級別の世帯分布といったものを考えて、そこに入る、そのセルというところが同等であるというふうに仮定を置いて、そこの部分を膨らませるという方法です。

 今回、この資料4でその数値を見ますと、そういった方法で変えることによる問題点が少し出てきました。というのは、1ページ目の表1のところの試算2 を見ていきますと、非常に分かりやすい例は「ひとり親と未婚の子のみの世帯」のところです。これは、国勢調査の世帯数と合わせにいっていますので、千世帯単位ですが、 4,557 ということで、これまでの系列とは随分違った数値になってしまうということになります。ですので、もしこの方法を採用するとなると、数値としては大幅に違うような断裂面みたいなものができる可能性があるというのが、今回、この数値で表す資料によってよく分かったと思います。

○廣松座長
 そうですね。同じような傾向なのが、その横の世帯類型のうちの「母子世帯」で、これについてもかなり差が大きい形になっていますね。本来、国勢調査ベースに合わせにいっているのに、こういう形の大きな差が出るというのはどうしてなのかなという気もします。

○津谷委員
 それは、世帯類型別の「母子世帯」についてですよね。平成
22 年の国勢調査をベースにした場合、「母子世帯」以外は結構合っていると思いますが、「母子世帯」だけは突出しています。このことは父子世帯についても言えますが、父子世帯は数が少ないのでそれほど目立ちません。要は、「ひとり親世帯」のところが、平成 22 年の国勢調査をベースに補正を行っているにも関わらず、これだけ大きく出てきています。このことの政策的意味合いは重要で、厚生労働省の社会福祉行政から見ても、生活保護などの貧困対策にもかかわってくるデータだと思います。では、何故このような差が出たのかなということですが、試算2 と平成 22 年の国勢調査は、合わせにいっているわけで、大体合っています。しかし、この意図しない「ひとり親世帯」が、試算2 だけで何故こんなに突出したのかというのが、むしろ私には疑問です。どなたかお考えがあったらお聞かせいただきたいです。

○廣松座長
 この1ページの表を見て、今、幾つかご指摘のあった点と同時に、試算2と
いうところに注目すると、「単独世帯」のところも大きな差が出ているのですね。

○中村室長
 先ほどの津谷先生の「ひとり親」と「母子世帯」でなぜこう違うのかというところなのですが、世帯構造のひとり親と未婚の子のところは特に年齢制限がないのです。ですから、例えば
70 歳の母親と 40 歳の子供といったものも入ってきます。

○津谷委員
 最近は結構多いです。

○中村室長
 母子世帯の方は、現役の
64 歳以下の母親と 20 歳未満の子どもというふうに、年齢制限があります。

○津谷委員
 私たちが通常イメージするような母子世帯ですか。分かりました。

○中村室長
 はい。今、そういう高齢の親と未婚の子というのが、おそらく増えているのだろうと思っております。

○津谷委員
 増えているのですね。ありがとうございます。

○廣松座長
 ほかにいかがでしょうか。

 あと2ページの表は、この場合の推計人口は 22 年6月1日現在の推計人口ですが、 22 年ですから国勢調査のデータが分かるわけですが、推計人口を使っている理由は何かあるのですか。

○中村室長
 ここは資料3の2ページ目で、同じように推計人口との比較をしているので、そういう意味で同じ推計人口との比較をしたということです。

○廣松座長
 なるほど。

 あと3ページ以降の平均所得額の表では、いかがでしょうか。

 試算1 、試算2、試算3は 少しずつ差がありますが、総じて低めに出るという傾向ですね。

○津谷委員
 何を基準にこれを見るかということかと思います。何をバランスポイントにして、つまり何に準拠して見るのかということが問題になります。この3ページに示されている現行の値と試算1
、試算2、試算3の結果を 見比べると、高かったり低かったりはするのですが、統計的な有意性は分かりませんけれども、おそらく現行と試算1 から一番乖離が大きいのは試算3 ではない かと思います。これはおそらく統計的に有意に低いという結果、つまり有効回答数を基準にして所得票の補正を行うと、下に引っぱられるということだと思います。完全に合うわけはないので、統計的な有意性を検証されて、実際に統計的に有意に低いかどうかを確認されて、これは何を意味するのかということを考えることが必要ではないかと思います。所得票の有効回答数で補正をすると、世帯のタイプによっても違いますけれども、現行よりも低く出るのではないかなと思います。現行と試算1 は一番近いのではないかと思います。

○廣松座長
 そうですね。全体的に見て、そういう傾向はありますね。

○津谷委員
 おそらく試算3
は、この差から見ると、おそらく確実に低いのではないでしょうか。難しいですけれども。

○廣松座長
 今日は、この資料3及び資料4を御説明いただき、結果を御説明いただいたわけですが、それらを改めて見直していただいて、まだいろいろ気づいていない点もあるかもしれませんので、次回、どういう形でこの研究会としてまとめるかという御意見をいただければと思います。

 資料3及び資料4を通じて、ほかに何かお気づきの点はございますか。

○西郷審議協力者
 あとは、さっきの資料で石井先生が御指摘になっていた点は私も気になっていて、我々はこれまで回答率が低いというのは若年層ばかりを言っていたのですけれども、もしかしたら
80 歳以上とかそういうところも回答率があまり高くないという可能性があるのかなと思います。どうなのでしょうか。

○中村室長
 若年単身のところはそうなのですが、あともう1つは、高齢の女性の部分も捕捉率がよくないというのが若干あります。

○西郷審議協力者
 やはり。多分これから増えてくるところですね。

○西郷審議協力者
 高齢者の単独世帯というのはどんどん増えていくので。

○津谷委員
80 歳以上の超高齢者ですよね。

○西郷審議協力者
80 歳以上、超高齢者ですよね。厚生労働省というのは、そういうところをケアするということが期待されている省なので、そういうところは、もしそういう問題があるのだったら、統計の上でも何か対応しておかないといけないのかなと思います。

○津谷委員
 これらの高齢者は、一般世帯に住んでいる方だけをベースにされて、施設に入っている方は除いていらっしゃいますよね。

○中村室長
 除いています。

○津谷委員
 とはいえ介護を自宅でなさっているという方もいらっしゃるので、この
80 歳以上という高齢の回答者が、どういうふうに、そして誰が答えているのかということについては、ちょっと判断できないかもしれません。

○廣松座長
 これは郵送調査になっているのですか。

○中村室長
 いいえ、調査員です。

○廣松座長
 調査員が、聞き取り調査に似たようなことをやっているのですか。

○中村室長
 基本的には、世帯票というのは御本人が書くと。それで、回収のときに調査員が記入内容を見て、無記入があるかどうかをチェックしていただくと。所得票というのは、基本的に被調査者が書いて、同じように回収のときに調査員が記入漏れがないかを見て聞きます。私どもは、県を通じて調査員に特にお願いしているのは、所得票を
22 年に自計化したわけですが、そのときに、特に高齢のお年寄りについては、どこか分からないところはありませんかとかというふうに丁寧に聞いてくれというような指導をしているところです。

○津谷委員
 おそらく目がよく見えないという場合は、調査員が代わって書いたり、書くことを助けたりするようにというふうなことは話し合われたように思います。

○廣松座長
 そうですね。

 それでは、資料3及び資料4に関しまして、先ほどから言っていることの繰り返しですが、今日はこういう形で3つの試算に基づく対応をお示しいただきましたので、これを御覧いただいた上で、次回までに検討をしていただき、もし次回で結論が出るならば、どういう試算方法を採用するかということに関するこの検討会としての意見をまとめたいと思います。

 続きまして、国勢調査や国民生活基礎調査における世帯数と世帯人員数の相関について、資料5が提出されておりますので、それに基づいて説明をお願いします。

○中村室長
 まず資料5と資料6についてですけれども、これは平成
28 年の国民生活基礎調査の調査計画に係る統計委員会の人口・社会統計部会の審議の中で、現在の国民生活基礎調査というのは、世帯票の推計方法は、推計人口を補助変量とした比推定によって世帯数と世帯人員を推計しておりますが、推定の目的となります世帯数についても、世帯数と人口との間に比例に近い強い関係があることが、推計人口を用いて比推定を行うことの理論的根拠になるのではないかということで、そういう比例関係が分かるようなものを資料として出してもらえないかというような御意見がありました。当時はこういう資料を用意していなかったので、そういうことが宿題になって、今の推計人口を用いて比推定という方法で世帯数を推計することの、つまり今の推計方法の妥当性についてどう考えるかということで資料を作ったものです。

 まず資料5ですが、国勢調査の都道府県別の世帯数と世帯人員数のデータを用いて、昭和 55 年以降の国勢調査年について相関係数を求めたものです。1ページ目の上段のところが一般世帯の総数、下の表が一般世帯の単独世帯以外というところで集計をしております。相関係数を見ていただきますと、いずれも 0.99 を超える非常に強い相関が見られたという結果になっております。8ページ以降で、これらをプロットした各年の散布図をつけています。

 それと資料6ですが、こちらは、平成 28 年の国民生活基礎調査のデータを用いて、実際にその調査対象になった各調査地区の世帯数と世帯人員の散布図を作成したものということで、左側が「全世帯」、右側が「単独世帯以外」となっておりまして、「全世帯」の相関は 0.9095 、「単独世帯以外」では 0.9758 と、こちらも強い相関を示しております。

 ということで、両方の資料から見ますと、推計人口を用いて世帯数の比推定を行うということについては、一定の妥当性があるのではないかと考えています。

 以上です。

○廣松座長
 ありがとうございました。この点に関していかがですか。

○津谷委員
 これは
0.99 を超えるほぼ完全な非常に強い相関ですので、問題ないと思います。「単独世帯」だけをみると、相関は若干弱くなりますが、「単独世帯を含んだ全世帯」も 0.9 を超えていますので、国民生活基礎調査はおそらく大丈夫であろうと思います。言いかえれば、国民生活基礎調査の「単独世帯」だけを抜き出して何かされるということはおそらくないとは思ますが、単独世帯を扱う場合には注意が必要です。単独世帯が一番捕捉できていない部分ですので、気をつける必要があるということかと思います。

○稲葉委員
 まずこの問題意識としては、国民生活基礎調査において、結果を世帯数と世帯人員という2つで出しているというところに、まず初めの問題点がありまして、それなのに世帯人員というものを使って拡大乗数を計算し、その拡大乗数で世帯に関しても膨らましている。ですので、そこが問題とされているわけですが、今回見た資料においては比例関係にあるので問題はないと考えられます。そして、特に単独世帯を除いたプロットにおいては、世帯数と世帯人員数が比例関係というのはよく分かるということですけれども、その比例関係から少し外れたところのプロットがあるかと思います。もしこれに何らかの傾向があると問題が生じる可能性がありますので、ちょっと外れているところは何らかの傾向があったのでしょうか。それについて教えてください。

○中村室長
 まず国民生活基礎調査の資料6の「全世帯」の方を御覧いただきますと、比例線の下の方に、ちょっと分かりづらいのですが、こういうところにプロットされている部分があります。ここは、ある調査地区が単独世帯しかなかったというようなものです。それと、もう1つはこの低いところの上にも斜めにラインがあるように見えるのですけれども、ここは「単独世帯」の割合が
70 %を超えるような地区だったということです。それと、「単独世帯以外」のところは、非常に相関が強いのですけれども、外れ値にちょっとずれているようなところを見ますと、下の方にずれているところについては、やはり平均世帯人員が小さい調査区で、極端な例として、全ての世帯で世帯人員2人という調査区が大体 52 地区ぐらいありました。それと上の方でちょっとずれている部分がありますけれども、これは逆に平均世帯人員が大きい調査区があって、一番大きいところで、山形県のある調査区では、平均世帯人員が 5.3 人という地区がありました。その内訳を見ますと、2人世帯が3世帯、3人のところが2世帯、4人が4世帯、5人が3世帯、6人以上が 15 世帯というちょっと特殊なところがありまして、それが上の方にちょっとぶれているということです。

○廣松座長
 ありがとうございます。どうぞ。

○津谷委員
 単独世帯しかない地区があったとおっしゃいましたが、この部分ですが。この地区はワンルームマンションが多いところですか。

○中村室長
 独身寮とか。独身用のマンションなどが一固まりの調査区です。

○津谷委員
 分かりました。

○廣松座長
 よろしいでしょうか。確かに資料5の8ページ以降の散布図を見ると、大体きれいな曲線上になっているようです。

○津谷委員
 散布図をみると結びつきは線形です。相関関数は2つの変数の間の線形の結びつきの強さを示すものですから、ほぼ線形ですね。

○廣松座長
 はい。

 この資料5、資料6に関して、どうぞ。

○西郷審議協力者
 先ほど中村室長はだいぶ控え目な言い方で、比推定を使うことに一定の合理性はあるのだとおっしゃいましたけれども、これだけ比例関係が強かったら、使わない方がむしろおかしいという言い方をなさってもいいぐらいなのではないかと思います。

○津谷委員
 これは四捨五入したら
1.0 です。

○廣松座長
 そうですね。

○中村室長
 そういうところは、今の推計方法で、人口を用いて世帯数を推計しているということについて、こういった資料でこの研究会でも、それは妥当なのだというような評価をしていただくのは、それはそれでよろしいのだろうと思っております。そういったいろいろな試算結果についてどういう評価をするか。今の推計方法について、その妥当性があるのかないのか。そういった大きく2つについて、御議論いただければと思っております。

○廣松座長
 はい。この資料5、資料6に関しては、前回の部会の宿題ということもあって、改めてこういう計算結果をお示しいただいたわけですが、今、委員の方々から御発言があったとおり、資料5、資料6を見る限り、現行の方式というのは十分に妥当性を持つだろうというふうに言えると私も判断をいたします。

 さて、ちょっと言い忘れましたが、皆様の席上に席上配布資料として、この実数値に関して、詳細な数値を出していただいております。これは会議終了後に回収ですので後で見ていただくというわけにはいかないのですが、いずれにしましても本日の議題の中では、特に資料3、資料4の推計方法のうちの全部不詳データの補正に係る部分に関しては、改めて少し御覧いただいた上で、次回改めて御議論をいただくということにしたいと思います。

 本日の議事のうち、(1)の国民生活基礎調査と国勢調査の原データレベルでの比較・検証に関しては、資料1、資料2に基づいて御説明いただいた結果として、妥当であるというふうに御判断をいただいたと思います。

 資料3及び資料4に基づく、特に全部不詳データの補正に係る試算結果に関しては、次回改めて御議論いただきたいと思います。

 それから、資料5、資料6に基づきます国勢調査における世帯数と世帯人員の相関については、その世帯人員に基づいて比推定を行っている現在の方式に関しては、妥当であるというふうに御判断をいただいたと思います。

 本日の議題全体を通じまして、何か御発言はありますでしょうか。

 これは、先ほど申し上げたとおり次回に改めて御議論いただきたいと思いますが、資料3及び資料4の結果に関しては、もう1つ悩ましいところがあって、いわゆる欠測値の補正に用いるホットデックとコールドデックの考え方でいうと、どうも所得票の有効回答率による比較的ホットデックに近いような推計方法に関しては、改めて皆さんによく吟味していただいて、次回にでも御発言をいただければと思います。

 ほかにいかがでしょうか。

 当然のことながら、非標本誤差をどう処理するか、縮小をどうするかということがこの研究会のメインテーマですので、かなり詳細な情報を出していただいております。それをもとに、平成 28 年の国民生活基礎調査の大規模調査の部会審議で出た宿題も含めて御検討いただいているわけです。

今日の段階で、何かほかに御発言はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、一応、本日に議事に関しましては以上とさせていただきます。

 ここから先は事務局へお返ししたいと思います。

3.閉会

 

○中村室長
 長時間にわたり御議論いただきまして、ありがとうございました。

 第2回の研究会につきましてはこれをもちまして閉会とさせていただきます。

 次回の第3回の研究会につきましては、来年1月に開催予定ということで、日程につきましては後日また調整させていただきます。主な議題としては、今日の推計方法の部分について評価をいただきます。それともう1つは、今年度実施しております郵送回収の試験調査の評価をいただこうということで資料を準備させていただきます。資料ができましたら、またできるだけ早く事前に送らせていただきたいと思います。

 それでは、本日はお忙しい中をどうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 政策統括官(統計・情報システム管理、労使関係担当)で実施している検討会等> 国民生活基礎調査の非標本誤差の縮小に向けた研究会> 第2回国民生活基礎調査の非標本誤差の縮小に向けた研究会 議事録(2017年11月17日)

ページの先頭へ戻る