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2017年10月30日 平成29年度第四回高齢者医薬品適正使用検討会議事録

医薬・生活衛生局

○日時

平成29年10月30日(月) 18:00~20:00


○場所

厚生労働省 専用第22会議室
東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館18階


○議題

(1)構成員等からの情報提供
(2)その他

○議事

 

 

 

 

○医薬安全対策課長 それでは、定刻になりましたので、本日の第4回高齢者医薬品適正使用検討会を開会させていただきます。

 開会に先立ちまして、傍聴の皆様にお知らせをいたします。傍聴に当たっては、既にお配りしております注意事項をお守りくださるようお願いいたします。

 また、本日の検討会は、従来の取り扱いと同様、公開で行うこととしております。カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただいておりますので、マスコミの関係者におかれましては、御理解、御協力をお願いいたします。

 御出席の委員、参考人の先生方におかれましては、本日、御多用のところを御出席いただきまして、まことにありがとうございます。

 本日、伴先生、三宅先生から御欠席との御連絡をいただいてございます。

 池端先生は途中で御退席の予定とお伺いしておりますので、よろしくお願いいたします。

 本日は、構成員19名のうち17名の出席をもちまして、検討会を開会させていただきます。

 また、本日は参考人といたしまして、日本薬剤師会常務理事の渡邊大記先生に御参画をいただいてございますので、御紹介をさせていただきます。よろしくお願いをいたします。

 それでは、以降の議事は座長の印南先生にお願いをしたいと思います。カメラ撮りはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。

○印南座長 それでは、議事を進めてまいります。

 初めに事務局から資料の確認をお願いします。

○医薬安全対策課課長補佐 配付資料の確認をさせていただきます。

 お手元にお配りしました資料、一番上に議事次第と配付資料一覧、続いて座席表と裏面に出席者名簿。続きまして、開催要綱、裏面に構成員名簿となります。

 続きまして、順に確認させていただきます。

 資料1「国立長寿医療研究センターにおけるポリファーマシー削減チームの取り組み」。

 資料2「電子版お薬手帳の現状と課題」。

 資料3「高齢者に対する向精神薬の安全な薬物療法」。

 資料4「高齢者適正使用に関する製薬企業の取り組み」。

 資料5「プレゼンテーションの論点等について」。

 また、その後ろに参考資料1として「高齢者の医薬品適正使用に関する検討課題と今後の進め方について」。

 参考資料2として、日本医師会からの資料「超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き」を構成員の先生方には冊子でお配りしております。

 本日の資料は以上です。不足等がございましたら、お申しつけください。

○印南座長 それでは、議事次第に沿って議事を進めてまいります。

 本検討会では、これまで3回の会合で構成員や参考人の先生方から、高齢者の医薬品の適正使用推進の検討のための基礎となる情報として、ポリファーマシーの現状や医療現場でのこれまでの対応の事例等について情報提供をいただきました。その際に、多様な医療現場における多職種連携のもとでの情報共有の重要性について御意見をいただき、参考資料1として配付しております「中間取りまとめ」においても、この点を盛り込んだところでございます。

 そこで、本日の議題1では、「中間取りまとめ」の「情報の共有・一元化について」を受けまして、はじめに、多職種連携でのポリファーマシー対策の事例について溝神構成員に、続いて、電子版お薬手帳を活用した処方・調剤情報の一元化の取り組みについて渡邊参考人に御紹介いただきます。その後、御紹介いただいた事例も参考に、医療現場における情報共有及び一元化のあり方について構成員の先生方に議論を深めていただくという方式で進めてはいかがかと思っております。

 それでは、溝神構成員、渡邊参考人にプレゼンテーションをお願いします。お二方、順に御発表いただき、その後にまとめて質疑を行いたいと思いますが、発表について前回同様、特段の御意見等がございましたら、各プレゼンテーションの合間に挙手をお願いいたします。

 まずは溝神構成員から「国立長寿医療研究センターにおけるポリファーマシー削減チームの取り組み」について御説明いただきます。よろしくお願いします。

○溝神構成員 よろしくお願いいたします。長寿医療研究センターの溝神です。

 私からは、国立長寿医療研究センターにおける取り組みといたしまして、ポリファーマシー削減チームというチームをつくっておりまして、その取り組みについて御紹介させていただきます。

 最初に、ポリファーマシー削減チームというように名前をつけさせていただいておりますけれども、あくまでもポリファーマシー、薬を減らすということを目的としたチームというわけではなくて、高齢者の薬物療法を適正化するということを主に目的としております。このチームの名前に関しましては、病院内で周知を図るという目的を持ってつけさせていただいておりますので、チームの名前に関しては、まだ今後検討させていただきたいと思っております。

 経緯に関しましては、昨年の9月より、院内のポリファーマシー対策に関して副院長の荒井先生を中心に結成をいたしました。当初は、高齢者総合診療科の医師と薬剤師、看護師、栄養士、言語聴覚士が参加するチームでしたが、循環器系の薬に関する議論が多いことを受けまして循環器の先生にも入っていただくようにお願いをしまして、今年の5月からこのようなチーム構成となっております。チームメンバーとしては、全部で20人ぐらいという形になっております。

 主に整形外科、リハビリテーション科、高齢者総合診療科、循環器科の患者さんを対象としておりますが、一応、対象としては病院の全員を対象としております。週1回、カンファレンスを実施し、主治医にカンファレンス内容のフィードバックをするということを主に行っております。

 このチームで主に行っていることといいますと、処方見直しということを中心に行わせていただいております。薬物治療について患者の合意のもとに薬物の影響を適正化し、薬物関連問題を最小限に抑え、不必要な薬物を削減することを目的とした処方の批判的吟味というClinical Medication Review A Practice Guideを参考にして内容を検討している次第であります。

 チェック項目といたしましては、本当にその薬が必要かですとか効果、コストに見合っているか、薬物相互作用ですとかアドヒアランス、ライフスタイルに合っているか、そういったことを考慮しつつ、薬歴をしっかりと聴取し、患者さんの状態を確認し、経過観察を行うということを行っております。

 実際にチームの構成メンバーの役割に関してですけれども、高齢者総合診療科、いわゆる老年科の先生には、総合診療科としての処方に対する包括的なアプローチということを御発言いただいております。Multimorbidな患者における処方の優先順位の決定ですとか年齢に応じた処方量の変更、エンドオブライフを見据えた治療方針ということで、こういったところを中心に御意見をいただいておりまして、特に高齢者総合機能評価に基づいた患者さんの総合的な機能評価、認知機能ですとかフレイル、サルコペニア、こういったところも処方内容に反映させるということを行っております。あとは他院との連携ですとか退院先の連携、こういったところに関して高齢者総合診療科の先生に御意見をいただいておるという状態であります。

 続きまして、循環器科の役割といたしましては、当センターのデータでも3割ぐらいが循環器系の薬ということを受けまして、循環器の先生にも現在入っていただいているのですけれども、高齢者において循環器系疾患が非常に多く、循環器系薬剤が服薬数増加の要因となりがちであるということで、循環器の先生には以下のことを御議論いただいておりまして、まず疾患の診断の妥当性。現在の病態にその薬が合っているのか、その薬が必要なのかということを中心に御意見いただいていること。あとは治療の意義の判定。その治療がどこまで今の状態の患者さんに必要なのかということですとか、治療効果が本当にあるのか、薬物有害事象に関してはどうかということを中心に御意見いただいております。

 特に高血圧の薬を削減することが多いのですけれども、ADLの変化、入院に伴ってADLが落ちた患者さんに、そのADLがよい状態のときの薬がそのまま継続されていて血圧が過度に降圧するということが多く見られますので、そういったところに関する御意見をいただいたりですとか、抗血小板薬等々も要介護度などを考慮して有害作用が比較的出現しやすく、リスクとベネフィットを考えてリスクのほうが高いと判断されると中止の提案もさせていただいております。

 薬剤師に関しましては、このチームの中心的な役割をさせていただいておりまして、主には患者スクリーニング、患者さんにカンファレンス前に実際に面談を行いまして服薬管理に関する情報ですとか、家族、本人に有害事象の確認ですとか、薬に関する処方意図、どういうように処方を受けたのかですとか、患者さんの処方に対する思いですとか、そういったことも含めて面談をさせていただいております。そして、処方医へのフィードバック、減薬に関する経過観察と退院時の情報提供といったこともさせていただいております。後ほど御紹介させていただきます。

 続きまして、看護師の役割ですけれども、主には患者さんの生活にやはり薬が密接に関連していると考えられますので、その生活に関する情報を主に看護師さんからいただいております。服薬管理の際に問題となる患者さんのADLですとか認知機能に関する情報、こういったところですとか、あとは家族ですとか介護者を含めた生活環境ですとか社会的背景、こういったところも含めて情報提供いただいておりますし、入院中のバイタルですとか患者さんの生活、睡眠、排泄、排便、こういったところに関する情報ですとか、あとは退院先に関する情報、こういったところを中心に情報提供いただいております。

 管理栄養士に関しましては、治療食による管理において投薬治療が削減できるケース、こういったことがあるかどうかということに関して栄養士の視点から御意見をいただいたりですとか、あとは他の例えば栄養サポートチーム(NST)との連携も深めておりますので、そういったところに関する情報提供ですとか、あとは糖尿病の薬ですとか高脂血症の薬、こういったものが中心になった場合に対して栄養的なサポートを栄養指導という形でしていただいております。

 リハビリテーション部門の役割といたしましては、主に当センターでは言語聴覚士の先生にかかわっていただいておりますが、理学療法、作業療法に関する情報も提供いただいております。主には日常生活に必要な動作や認知機能、嚥下機能における服薬の影響の有無ですとか、食事、服薬方法等を含めて退院後の生活スタイル、嚥下機能とかそういったところを中心に御意見いただいております。

 実際のポリファーマシー削減チームの活動の流れになりますが、まずは患者スクリーニングが最初に来ます。患者スクリーニング、情報収集、そして、多職種によるカンファレンス、その後、主治医へのフィードバック、経過観察、情報提供という形に流れていくのです。

 まず患者スクリーニングに関しましては、65歳以上の高齢者で、主に整形外科、リハビリテーション科、高齢者総合診療科、循環器科の患者さんで2週間以上の入院期間のある患者さんをピックアップさせていただいております。薬剤師が患者スクリーニングをさせていただいている理由といたしましては、入院時に持参薬の鑑別というのを全患者さんで行っておりますので、持参薬の情報が全て集約されているというところで、持参薬の情報をもとに、持参薬6剤以上、かつ特に慎重な投与を要する薬物のリストに該当する薬物ですとか、同種同効薬の重複投与、対症療法薬の漫然投与が2剤以上該当する患者さんをピックアップさせていただいておりまして、患者さんの同意及び主治医より同意が得られた患者さんを対象とさせていただいております。

 実際には、このような形で当初行っていたのですけれども、10剤以上ですから非常に薬の数が多い患者さんですとか薬物有害事象が発現しているのではないかというような患者さん、そして、服薬アドヒアランスが低下していて少し介入が必要ではないかと考えられる患者さんを中心にアプローチしているという現在の状況であります。

 情報収集に関して、当センターのこのチームでは一番力を入れているところでありまして、カンファランス自体がすごくショートな時間で15分~30分程度で行えるようにということで時間を短くしておりますので、その際にワークシートを作成しまして、このような形の資料になるのですけれども、このシートをもとにカンファランスをさせていただいております。

 薬に関する情報、詳細な薬歴ですとか服薬管理、薬物有害事象の評価、OTC薬、サプリメント等、そして、患者さんの情報、このあたりに関してはチームのメンバーからの情報をもとに構成させていただき、また、患者さん御本人ですとか御家族がいらっしゃる場合は御家族にもカンファランス前に必ずそういった薬に関する聞き取りをさせていただいて情報シートにまとめるということをさせていただいております。

 こういった内容と、あとは検査値等々を記載しましてカンファランスをこのような形で現在行っております。

 チームメンバーにはあらかじめ対象の患者さん等々をお伝えいたしまして、カルテを先に見てきていただくようにお願いをしておりまして、それで要点を絞ったワークシートをもとにディスカッションを深めていくという形をとっております。

 主なチームからの提案内容といたしましては、削減候補薬の選定といたしまして、まずは削減の優先順位を1つ提案させていただいております。特に薬物有害事象の被疑薬と考えられるようなお薬ですとか、特に慎重な投与を要するPIMのお薬、こういったものを中心に御提案させていただいているところと、あとはそのスクリーニングの対象以外にも処方意図を考慮しつつ、必要性が低いと判断される薬物に対する提案などをさせていただいているのと、あとは過少医療に対する提案ということで、投与する必要性が高いが、現在までに投与されていないというような薬物を処方提案させていただいております。その他ですと、非薬物療法ということで、食事など栄養からのアプローチですとか生活指導も提案させていただいております。

 そして、そのカンファランスの内容を集約してカルテに記載はするのですが、それとともに担当の薬剤師と主治医でディスカッションしていただき、処方内容を決定していただくということをしております。あくまでもチームからの内容というのが提案という形になりまして、最終的には主治医と薬剤師とでディスカッションをし、主治医が処方をどうするかというのを決定していただいております。

 そして、経過観察という形で、中止したお薬はもちろんですが、変更が行われなかった薬物等々も患者さんに関してもしっかりと経過観察をさせていただき、何か問題があればさらなる処方変更を提案させていただいております。

 退院時の情報提供といたしましては、主治医から診療情報提供書へ変更点の記載、あとは薬剤師から薬物療法サマリーを作成し、お薬手帳に記載をさせていただいています。また、後ほど御紹介させていただきます症例の経験を踏まえ、チームとしての情報提供書の作成を検討しております。

 こちらがお薬手帳のラベルに記載している薬物療法サマリーですが、こういったものをお薬手帳に記載してお渡しする、患者さんに情報提供する、調剤薬局、主治医のほうに情報提供するということを薬剤師からさせていただいております。

 昨年の9月から本年2月までのデータを集約しましたところ、全体では患者さんが28名で、平均年齢80歳ぐらいの患者さんに対して、持参薬が10.5剤、退院時が8.1剤と2.4剤減少しておりますが、PIMのお薬に関しては2.2から2.0ということでなかなか減少できていない現状があります。

 薬物有害事象に関しては、問題の多い患者さんを少しピックアップさせていただいているせいか、また、この有害事象に関しましてもかなり幅広くとらせていただいておりますので、そういった意味で発現数としては高くなっているかもしれません。削減数としては3.6、増加のお薬も1.2ということで差し引き2.4剤、この患者さんの中では減らせているという状況であります。

 その多くが、4分の1が循環器系のお薬で、次いで胃腸薬ですとか糖尿病薬、精神神経用剤等々も削減をさせていただいております。

被疑薬が不明なものもありまして、本当に全てが薬物の有害事象かと言われると難しいところもありますが、一応幅広くとらせていただいております。

 そして、このチームの活動が始まりまして大体少ししてから、先生たちの処方が少し減ったというような看護師ですとかスタッフの御意見をいただきまして、実際に確認をしてみましたところ、チームができる3カ月の前の整形外科、リハビリ科、高齢者総合診療科の患者さんとチームができてから3カ月での処方の変化というのを比較してみたところ、もともと2.4剤と入院時から退院時に処方を減らしているというような形にはなっているのですが、マイナス3.3剤とさらに削減している薬が増えているというような状況でございます。また、最初は整形の先生ですとかリハ科の先生からのコンサルというよりは、こちらから患者さんの御提案をさせていただいていたのですけれども、現在は先生からこの患者さんに対してアプローチをしたいということでチームにコンサルがあるということもありまして、チームができることで先生たちに少しポリファーマシーということを意識してもらえているのではないかと考えております。

 退院後に処方が戻った例を1例経験いたしましたので御紹介させていただきますと、85歳、女性の整形外科で入院された患者さんなのですけれども、1~8番が近医の内科で受けている処方でありまして、9~13が当院の整形外科、1416が神経内科より処方を受けていたというような患者さんでございます。実際にチームカンファランスでは4、5、7、10111213の薬の削減を提案させていただきまして削減となりました。

 カンファランス内容といたしましては、MMSE 21点と認知機能の低下が見られ、ADLの低下ですとか共存症が多いということと、HbA1c6.5と良好にコントロールされているので、ボグリボースによる服用回数の増加とグリメピリドによる低血糖のリスクがあるということで中止を御提案させていただいております。

 脂質代謝異常に関しまして、プラバスタチンとω-3脂肪酸エチル粒状カプセルというものが出ておりましたが、T-cho 143LDL 85HDL 34TG120ということで、こちらもある程度コントロールできているということで、ω-3脂肪酸エチル粒状カプセルの中止を提案させていただきました。この内容に関しまして御本人と御家族に退院時指導を行いましてサマリーを作成し、お薬手帳に添付するとともにと、主治医からも情報提供させていただいておりましたが、退院後、1カ月後の外来にて確認させていただいたところ、ω-3脂肪酸エチル粒状カプセルとグリメピリドが再開となっておりました。

 患者さんから伺った内容なので実際にどのような状況で追加になったのかというのが推測にはなってしまうのですけれども、患者さんには必要な薬である、予防、治療において必要な薬であるということで再開となったということを伺っております。私たちとしても情報提供させていただいていたのですけれども、退院時薬物療法サマリーが薬剤師というように書かれていたので、薬剤師からの情報と、もしかすると整形の先生が行った内容ということで、チームとしての処方内容の検討を行った結果の内容だというのがうまく伝わっていなかったというような可能性も少し考えられました。

 もう一例なのですけれども、中止による再燃ということで、こちらはカンファランスにおいて血圧が低く、ベニジピンの中止を提案させていただいたのと、テオフィリン、プランルカストが処方されていたのですが、呼吸器科の術前評価にて内服薬がなくても大丈夫ではないかという評価がありまして、これらのお薬の中止の提案と、痛みが強くて眠れないということだったのでブプレノルフィンの調剤が開始になったということでブロチゾラムの減量、中止を提案させていただきましたが、ベニジピンについては血圧は上昇し、安定したということで問題はなかったのですが、ブロチゾラムを減量したところ、3日後に不眠の訴えがあり、その後、戻し、結局、中止せずにそのまま元に戻すということと、ブプレノルフィンは痛みが改善したということで中止となっておりまして、テオフィリン、プランルカストに関しては中止後1週間後に咳の症状が見られ、呼吸器科を再度受診され、中止の薬の再開とアンブロキソール、ジメモルファンとアジスロマイシンの投与が行われ、改善ということで、この薬が中止されたことによって起こった症状なのか、感冒症状のような形なのか、なかなか難しいところではありますけれども、中止したことによって症状の再燃が見られたということで継続という形で、結局、2剤の削減という形になっております。

 最後ですけれども、退院後に処方が戻るということがありまして、これに関しましてはやはりお互いの処方意図というのがなかなか理解されていないと起こるのではないかなということと、こちらからの情報提供もまだまだ不十分な点がありまして、そういったところの情報強化ですとか、あとは患者さんが他院から処方いただいたりということもあって、患者さんに対する教育の強化というのも現在行っております。また、削減による有害事象、イベントの発生も見られますので、こういったところをしっかりと経過観察していく必要などが考えられておりまして、今後、さらなる取り組みを進めていきたいと考えております。

 以上で発表を終わります。

○印南座長 ありがとうございました。

 特段の御意見、ございますでしょうか。

 どうぞ。

○松本構成員 以前の検討会の中でもお話しさせていただいたのですけれども、なかなか退院された後、我々が患者さんを診ていて減薬するというのは非常に難しいので、こういう入院中にされるというのは、しかもチームでされるというのは大事なことだと思いますし、本当によくやられているなと思います。

 その中でお聞きしたいのが、2つ目のスライドの中で、コストというのは何に対するコストですか。

○溝神構成員 これは説明不足で申しわけないのですけれども、NHSから出ているClinical Medication Review A Practice Guideというものからとってきたスライド、それを日本語訳にさせていただいたものになりますので、どちらかといいますと、定義のほうでClinical Medication Reviewということをさせていただいている説明に使わせていただいたという形になりまして、正直、コストまで私たちのところでしっかりと検討しているかというと、そこまでは行っておりませんので、済みません。

○松本構成員 本当に必要な薬かどうかや、薬が効果的かどうかはよくわかるのですけれども、コストは費用対効果という意味でのコストですか。

○溝神構成員 このガイドに関してはそういうように書いてあるのではないか。

○松本構成員 そういう意味でのコストということですか。

○溝神構成員 はい。

○松本構成員 あと4番目にエンドオブライフを見据えた治療方針とあるのですけれども、この辺は患者本人とか家族と十分に話し合わないとなかなかできないことだと思うのですが、それは主治医の先生がされるのか、チームでされるのですか。

○溝神構成員 主治医の先生からと、あとはチームのほうとしても一応そういったところで、ほかに病棟のほうでチームのラウンドというのも少しさせていただいておりますので、そういったときにお話をさせていただいておりますけれども、正直、ここまで全て見据えて行えているかというと、まだまだこれからのところかと思っております。

○松本構成員 なかなか患者さんの状態を見きわめるというのは非常に難しいことだと思うので、この辺は注意してしないと。

○溝神構成員 そうですね。ありがとうございます。

○松本構成員 あと言葉のことで教えてもらいたいのが、有害事象というのとPIMというものの言葉の定義というか、それはどういうように解釈すればよろしいですか。

○溝神構成員 今回、使わせていただいた薬物有害事象という言葉に関しては、なかなか明確な定義が定まっていないかなとは感じてはいるのですけれども、私としては、薬が投与されている状態で起こるあらゆる事象という形で捉えさせていただいているので、薬の因果関係の有無に関しては、少し因果関係のある場合も当然ありますし、なかなかそこまで薬が、これが原因だというのを明確に示せていないというところもあります。

○松本構成員 では、副作用とは少しニュアンスが違うという解釈でよろしいですね。

○溝神構成員 はい。そういうように捉えております。

 あとPIMに関しては、一応ここでPIMとさせていただいているのが老年医学会から出ております、特に慎重な投与を要する薬物のリストというリストに該当する薬剤をPotentially Inappropriate Medicationというようにさせていただいておりますので、つまり、PIMに該当する薬剤というのが老年医学会で出版されているリストからということになります。

○松本構成員 わかりました。

○印南座長 済みません、後でまた時間がありますので、ここで議論を開始してしまうと次に行けませんので。

 続きまして、渡邊参考人から「電子版お薬手帳の現状と課題」について御説明をお願いします。

○渡邊参考人 先生方、こんばんは。薬剤師会の常務理事をしています渡邊と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日、このような時間をいただきましたことに心より感謝と御礼を申し上げたいと思います。

 本検討会の中間取りまとめ内にあります電子版お薬手帳に関する現在の状況と、またあわせて、今の医療ICTの中で、この電子お薬版等のデータの位置づけという部分について少し触れたいと思っております。

 スライドの1枚目、そもそもという形で書かせていただいているのですけれども、基本的に今、使用している紙のお薬手帳の全てを電子化しようとして動いているものではありません。あくまで患者様の選択肢の中で、紙の媒体であったりデジタルの媒体であるという選択肢をしっかりと確立するための基盤整備という形で新たに電子版のお薬手帳というものを今、提供しているという状況になります。もちろん、これは何のためにということで冒頭に書かせていただいておりますけれども、医薬品のより安全な有効な薬物療法につなげていくためにお薬手帳を使っていくということに変わりはありません。

 これは誰が使用するのかという部分なのですけれども、今、患者さんの視点から書かせていただいております。あわせて医療従事者から見ると違う使い方になってくるかと思うのですけれども、安全な薬物療法のための医療関係者への提示というのは、大前提としてそれを提示していただくことの中で目的につながっていくという形になります。

 患者さん御自身が今、何を飲まれているかというお薬の詳細な部分、どんな薬効のものであったりどんな副作用を持っているのかという部分に関しては、手帳以外にも薬物の情報提供書というものを同時にお渡しさせていただいていますので、お薬本体自体のことはその情報書を見ていただければいいのですけれども、お薬手帳自体というのは医療関係者へ提示してもらうことによる連携という形が安全につながるための目的という部分になっております。

 これがあわせて薬剤師、医師のほうの手帳の活用という部分に関しましては書かせていただいているような併用薬、過去に服用した薬物の履歴等のことの確認になっております。これはよくお薬手帳そのものが例えば急性期の薬しか飲んでいない、常時何か薬を飲んでいるわけではないので、別に要らないのではないかというようなお薬手帳に関する質問も時々出てくるのですけれども、ほかにも薬剤師とか、もちろん医師に薬物療法中の現状及び過去の薬剤服用歴という部分にも書かせていただいているのですが、同様なものを過去に飲んだことがあるかということを提示することは、このお薬手帳を提示することの有用な意義だと思いますので、そこもあわせて、常時飲んでいないお薬があったとしても過去の履歴を提示するという部分に関しては安全につながっていく部分かと思います。

 また、重複・相互作用のチェック、薬剤から推測される疾患との禁忌、こういう部分に関してもあわせて書かせていただいております。これに関しても急遽かかられた消化器のほうで何らか消化器の痛みどめが出ていても、従来の手帳の中に緑内障の治療中の部分の薬剤が出ている部分であったり、歯科のほうにとっても痛みどめ等が出ても、手帳の前にはぜんそくのコントロールをされている患者であったりというような部分のことを手帳の中の併用して書かれている部分から読み取っていく。

 また、継続してずっとかかられている場合であったとしても、急遽、途中にどこかをかかられて別のものがそこに記載をされていないか。また、入院等の実際のところにお薬手帳が書かれている部分がよくあるかと思うのですけれども、通院中に薬剤の交付を受けていた薬局の把握であったりというような情報もお薬手帳から読み取っていくという形でお薬手帳が使われております。

 その内容なのですけれども、お薬手帳自体に関しては、ここにも書いています経時的な記録という部分がとても重要な部分になり、それがお薬手帳の紙、これは電子という部分の中での連続性であったり連携性であったりという部分を手帳のほうが安全を補っていっているという形のツールと考えております。この中には、住所、連絡先に合わせて過去のアレルギー歴、副作用歴、手帳がつくられる前の情報であったとしても過去に何らかで副作用を起こしたことがある。現病歴であったり既往歴であったりという部分の書く欄も一緒にあわせて持っております。

 また、市販のお薬を購入した場合に関しても、基本的に薬剤師がここでお薬を買うときに関しては、お薬手帳を持ってこられたら提示してもらって何らかの治療薬を飲んでおられる上でのものなのかどうかというのも、把握できれば一番よいと思いますし、また、あわせて患者様御自身が手帳のほうにドクターに伝えること、薬剤師に伝えること等を直接記入されている場合も多く見られます。そういう部分に関しても、もちろん御自身の手帳ですので、自身の経時的な変化の記入の部分であったり、そういうものを中に書き込まれている部分。また、医療提供者からのこのような使い方もあわせて、一方的な情報提供するだけのツールではないという形の使い方の部分もあわせ持っております。

 今、お話ししていた部分の図示なのですけれども、薬局においてお薬手帳、交付された後、調剤情報をあわせてお薬自体の細かい説明は別途お薬の情報提供書をつけさせていただいている部分ですが、そういう部分を各病院、かかりつけのドクター、歯科医の先生等に出されること。また、一般のお薬のときに手帳を提示されること。あわせて、在宅のときに持っておられること。それらが医療関係者同士の情報共有につながると同時に、患者自身が自分の受けられている薬物療法、治療等を把握すること、携帯することを同時に行うためのツールという形で進めさせていただいております。

 これは実際、それの電子版という形で2015年から日薬のほうで提供させていただいているe-お薬手帳ですけれども、これがメイン画面になっております。このメイン画面、これは見本で出させていただいておりますけれども、カレンダーからお薬を探すというここの部分をタッチしますと、このようなカレンダーの中でどのような経歴があるかという画面に移行します。これのカプセルの図が出ているところが何らかのお薬をもらわれたデータが入っているという意味になります。このカプセルのところの日をタッチすると、ここでしたら横に7月1日になっていますけれども、7月1日のこの内容の画面に飛んで、そのとき内科でもらわれた、ここでしたらフェロベリン等々のお薬をもらっているという画面に移動します。

 基本的なお薬手帳の使い方なのですけれども、薬局から渡したデータを患者さんのスマートフォンにデータを取り込んで、そのデータ自体をサーバーで保管して、それを患者さんの許可をもらって薬局側でも、医療機関でも閲覧することができるという形になります。

 実際のデータを渡すところと同時にデータを取り込むところなのですけれども、基本的に、今、28年改定なので、今回の改定の前の26年改定のときのレセコンのバージョンアップでほとんどのレセコンの中でこのようなQRコードの吐き出しが可能になっています。これが下に書いているようなどこに吐き出すかというのは、情報書であったり明細書であったりと設定はまちまちなのですけれども、基本的にこういうQRコードというのがほとんどの何らかの印刷物で出てきているという状態になっています。

 これを先ほどの画面のメニューにありますQRコードというところをタッチしますと、このように実際に読み込んでいる画面になりますけれども、読み取り、先ほどのような処方、調剤データのほうがスマホ内に取り込まれてきます。

 同時に、このデータを預けるという部分なのですけれども、ここにデータ同期と書かせていただいておりますが、メイン画面の設定のトップのところにサーバーとデータを同期するかどうかという選択肢があります。これを選択した後、患者様のセキュリティー等の設定をされたら、サーバーとこのスマホ内のデータが同期します。これがもし、後ほど少し出てきますけれども、災害時等でサーバーとアクセスできない状態になったとしても、患者さん御自身のスマホの中にもデータは同期して残っておりますので、アクセスできない状況であったとしても、この中のデータは見られます。

 現在においては、このe-お薬手帳自体をダウンロードする時点で一番最初にデータを同期しますかということで聞くようになっております。そこをイエスとした状態の中で同期の設定をしていけるような設定に今はなっています。

 患者さんの許可をもらって閲覧をするという部分なのですけれども、これに関しては患者様のほうがオプトインするためのワンタイムパスワード、そのときだけ見てもらうためのパスワードというのが患者さんのスマホの画面に表示されるようになっています。

 それがここのお薬情報を見てもらうという部分なのですけれども、ここをタッチしてもらうと、どこの薬局で見てもらいますか等の質問が挙がってきます。

 それがこの画面なのですけれども、ここにかかりつけ薬局登録済みの場合と書かせていただいておりますが、その場合、既にかかりつけでかかっている薬局があればもう既に画面内に出てくるという状態になります。そこでお薬情報を見てもらうというところをタッチすると、ここにワンタイムパスというのが出てきます。このワンタイムパスを少し1回飛んでみます。

 薬局のパソコン画面のここに入れると、下に出てきているように、どのようなお薬を飲んでいるというお薬内容をサーバーから読み取ってくるという形になっています。この薬局のパソコンで閲覧という部分に関しては、患者様の手元のソフトではなくて、薬局側が持っているサーバーにアクセスするためのアプリ、システムになりますので、これは患者さんが持たれているお薬手帳とは別の薬局が持っているシステムになります。

 二、三戻ります。これはかかりつけの登録がされていない場合なのですけれども、されていない場合であっても患者様が直接入力されたどこどこの場所に近い薬局の検索であったり、現在、GPSを承認していただければ、そこの場所から近い薬局が出てくるという検索のシステム。

 また、これは登録したところですけれども、これは「くら」と書いてある部分なのですが、これが先ほどのこのシステムが入っている薬局というのを示しているのですが、それと、これはお気に入り登録されたらここにこういうようなアイコンとして出てきます。これは付加機能なのですが、処方箋画像を事前にお気に入り薬局等に送っていくという機能も一応ついております。現在、QRコードは全てにおいて薬局は吐き出しができていますので、ここを改めて表示せずに全て出力されるという前提になっています。

 薬局のほうから見るサーバーとアクセスするためのソフトなのですけれども、これ自体、こういうようなお気に入り登録というかかりつけの患者様が登録されている部分に関しては、現在、当該薬局に3名の登録をされている方がいますよということも画面上には出てきます。ここのお知らせというところが画面上にあるのですけれども、ここに何らかの情報を発信する場合においても、この3名に対しては、今、ここはテスト発信されていますけれども、薬局側から打ち込んだ情報というのは、この3名にはここのお知らせのところを通じて情報発信をするというようなことに関しても機能をあわせ持っている状態になります。

 これが冒頭触れました内容になるのですけれども、何を選択するかは患者様の選択。また、選択肢としての環境を整備しているという状態になります。これは紙と電子に関してどちらがよし悪しの話ではなくて、いかにそれぞれの特性を持っているかという部分になります。

 紙のほうに関しては見読性の部分、提示のしやすさの部分、また、冒頭出たような書き込みやすさの部分。それと、普及・周知に関しては、もう厚生労働省のほうでも2000年からの制度で入ってきている部分ですので、かなりの普及・周知になっている。

 ただし、その目的を持っていないと携帯をしていないというデメリットの部分であったり、多くの家族や介護者を抱えておられる場合、何冊にもわたったものを介護者等が管理されているような状況になる。また、1人であったとしても、経年にわたってお薬手帳が複数にわたっていくという形のデメリットもあわせ持っています。

 片や、電子のほうなのですけれども、これは圧倒的に携帯の率が向上します。また、集約した管理ができるので、1個のスマホの中で下の情報量のプールとともに管理がしていけるという部分。また、電子ならではの補助的な機能、服薬のアラームであったり処方箋画像の送信であったりという部分がメリットとしても挙がってきています。

 ただ、デメリットとしては、電子機器自体の操作性の問題、操作する方の能力の問題であったり、端末そのものを預けられないという部分もあるので提示のやり方であったり、また、ここは始まったばかりなので仕方ない部分もありますけれども、普及率の部分であったりという部分がそれぞれの特性という部分になります。

 しかし、その特性の部分なのですけれども、実際に東日本大震災のときにJMAT等で参加していたときの部分なのですが、ここに一緒に動いたドクター、小児科のドクターと呼吸器のドクターだったのですが、入ったのは3週間ほどたっていたので、実際、今まで飲まれていたお薬を飲めなくなって何らかの不調を生じられているような方々というのも既におられたのですが、その中でもやはり何か飲んでいたというような表現から聞き取っていかなければならないという状態がかなりあります。

 ただ、この中にも実際お薬手帳を持ってこられた方がおられました。この中で持ってこられた方に関しては、集積所からある一定の薬をドクターと相談してこういうように持ち出している状態なのですけれども、これはそんなにたくさん持てるわけではないので、お薬手帳を持たれていたら、ドクターのほうもこのお薬を飲まれているのだけれども、今、持ってきている薬で、何で代用がきくのだということですぐにお薬自体が対応できるというような部分でも手帳の有用性は幾つも出ております。

 ただ、皆様が手帳を持たれたかという話になると、なかなかそれは持たれていなかったという部分になります。くしくも2011年というのは、このときに出ていました「どこでもMY病院」構想の中に電子お薬手帳の検討が書かれていた年でもあるのですけれども、その年に大震災によって携帯のほうに皆さんが持ち出されている。携帯のほうに何らかのどれだけの医療情報を入れていけるのだということで急速に電子版のお薬手帳が実用化したというのも2011年から以降という形になります。

○印南座長 済みません、議論する時間がなくなってしまいますので、あと1分程度で1回終了していただけますでしょうか。

○渡邊参考人 わかりました。

 この電子版お薬のお薬手帳なのですけれども、高齢者に係る部分、高齢社会とICTの部分とあわせて相反する部分も言われるのですが、電子機器の操作性の部分、また、多数存在するアプリについて、この辺の課題も出てきます。

 ただ、現在、多数をまとめられたり、高齢者の方も御自身でなくて介護者がこういうように持たれているというようなケースも多くなっています。

 またあわせて下のほうの部分なのですけれども、これに関しても言うまでもなく電子お薬手帳の現在の扱い方なのですが、このようなリンクづけサーバーというものを日薬のほうで立てております。違うアプリがあったとしてもA薬局からリンクづけサーバーを介して別のアプリの情報を相互閲覧するためのサーバーというのも現在稼働しています。ここに関しては、ある一定のこういうような名称とマークをつけて、どのアプリが、どの薬局がこういうことに対応しているのかということを明示するためのロゴ等もこのようにつけさせていただいております。

 あわせて、ワンタイムパスに関しても、いろいろなアプリに関して操作を薬局で把握できるわけではないので、このボタンからそこに移動するという形の利用も考えています。

 これは現在なのですけれども、アプリ自体は全体で約100万を超えるほどのダウンロード数、また閲覧システムに関しては1万施設ぐらいのところに導入されているという形になっています。

 今のICT部分なのですけれども、あくまで電子お薬手帳というのはPHR、患者さんが有するデータに立脚しています。ですので、患者さんが管理しているデータの性格上は不確実性をはらみます。ですので、医療関係者同士でやりとりする場合に関しては、ここに立脚しないEHRという直接データをやりとりするというデータの扱い方、性格の違いというものがありますので、ここに関しては改めて地域医療連携ネット等の用い方というのがあるのですけれども、ここは少しデータをすみ分けて使わなければならないのかなと思っています。

 ここに関しては、その全体像の部分で、先ほどのサーバーから今回運用している連携サーバーという形での全体像になります。もし、またわからない部分があったらお聞きいただければと思います。ありがとうございました。

○印南座長 どうもありがとうございました。せかして済みませんでした。

 ただいまのお二人の先生の御発表並びに情報共有及び一元化について構成員の先生方の御意見があればお願いしたいと思います。なお、本日の発表を踏まえた論点となり得るポイントを事務局でまとめて資料5として添付されております。そこの(1)の下の1ポツ及び2ポツが該当する部分だと思います。これを参考にしながら議論を進めていきたいと思います。御意見等ございましたら、お願いしたいと思います。

 どうぞ。

○池端構成員 ありがとうございます。

 最初の溝神先生の御発表の中でチームをつくったのは、私も以前プレゼンしたときもチームが非常に大事だということ。そして、入院のときこそポリファーマシーを削減するいいチャンスだということで、まさにそれを実践していただいた取り組みで非常に勉強になりました。ありがとうございました。

 1点お聞きしたいのは、今、最後のほうに出てきた、また戻ってしまった例ということがありますけれども、私自身もよく経験があるのですが、入院中のコントロールと外来中のコントロール、血圧にしても違ってくるのです。入院はきちんと管理しているけれども、戻ると血圧も安静度も落ちますし、血圧が上がってしまったり、食事のコントロールとかできなくなってやむを得ず再開することはあり得るので、その辺は必ずしも情報が不足だからということではない部分もあるのではないか。そこをきちんと理解して情報をやりとりしないと連携がうまくいかなくなってしまうことがあるのではないかということが1点、御意見いただければと思います。

 もう一つは、例えば専門的な、特に循環器系薬を減らしたいのだけれども、減らせないな、なかなか言いづらいなという場合、ここをチームとしてやっていただいて専門家の先生にアドバイスをしていただける点はすごくチームのいいところだと思うのです。それはすごく今後も生かしていきたいと思いますけれども、在宅とか外来に対するポリファーマシー削減に対してチームのアプローチということは可能なのかどうか、その辺も御意見をいただければと思います。

○溝神構成員 御質問、ありがとうございます。

 まず最初の1点目に関しては、私も同様な意見を持っておりまして、特に血圧のコントロール等に関しては、やはり入院中の厳密な管理とは帰られると生活様式が変わりますので、それに関して変化してくる点に関しては、そちらの先生のほうで見ていただいて変更していただくのがよろしいかと思っております。

 2点目に関して、在宅に関してなのですけれども、このチームをつくった経緯が、やはりまずは院内からの対策を広めていくということで始めておりますので、まだそこまでは例えば外来をやるとか、そういった形までは発展できてはいないのですが、今後の取り組みとして、地域からのコンサルを受けたりですとか、そういったところにも広めていければいいのかなと思っております。

○池端構成員 ありがとうございました。

○印南座長 ほかにありますか。

 松本先生、どうぞ。

○松本構成員 情報共有は大事ですけれども、共通認識というのも大事だと思いますので、その辺はまたお願いしたいと思います。

 あと渡邊先生のところなのですけれども、もちろん電子版に全部変えなければいけないというのはそのとおりだと思うのですが、普及率というのは今どのぐらいなのですか。年齢別にありますか。

○渡邊参考人 年齢別のデータ等は今のところないです。ただ、ダウンロードをしている先というのはわからないので、その辺は振り分けられないのですけれども、現在、全てのアプリ数を入れて100万ダウンロードぐらいのアプリの普及にはなっていると思います。

○松本構成員 確かに災害時のときに非常に困るというのはあるのですけれども、これは患者さんの理解があればレセプト情報から服用している薬というのは引き出せますので、どうしても電子手帳が必要だというように私は余り思っていないのです。この辺、特にこの会は高齢者の医薬品の適正使用の検討会ですので、高齢者の方が例えばスマートフォンのアプリを使ってとか、私ももう高齢者に入るのかもしれませんが、無理があるように思うのです。その辺のお考えはどうでしょう。

○渡邊参考人 ありがとうございます。

 このICTの部分に関して、よく高齢者の部分とICTの部分が相反するような部分が出てくるのですけれども、現在においては、現場においても介護者の方のスマホの中に介護している方のデータを入れられているケースが結構あります。これは在宅に行っている医療関係者間も、在宅に行っている方のデータをスマホで持ち歩くというのを患者さんの同意のもとで入れられて扱っておられるというケースが結構ありますので、御本人が扱われるというか、御本人のデータを管理する見守りというために介護者がデータを持っているというケースは結構あります。

○松本構成員 データを持つこととそれを電子化することは同義ではないと思うのです。その辺はいかがですか。

○渡邊参考人 ありがとうございます。

 ただ、紙の手帳の部分に関しては、1冊しかない部分を共有するということになりますので、データで持っている部分に関しては、ある程度、ほかに複数の人間が動く部分であったとしても見られるという部分に関しては可能なのかと思います。お薬手帳の場合、複数冊ないので、誰かが持っていたらそれしか見られないということになるのですけれども、電子の場合に関してはアプリをスマホに落としておいていただければ、QRさえ読めばその患者のデータは持てるという形になる。

○松本構成員 あくまでも利便性の問題だけですね。

○渡邊参考人 はい。

○印南座長 樋口先生、どうぞ。

○樋口構成員 ありがとうございました。

 私なども80代で、アナログ人間の最たる者でございますけれども、恐らく特に地域医療との連携という上では、電子化していく方向というのはもうやむを得ざるというか、必要な方向だろうとは思っております。

 しかし、お話を伺っておりますと、お薬手帳をこれから着々と完全に電子版に統一していこうというお話なのか、あるいは併用していこうというお話なのか。このとき、ぜひパソコンの利用状況を年齢別に見ていただきたいと思うのです。パソコンを使えない人は年齢とはっきり結びついており、こういう人は、消滅危惧種というか、確実に消滅するわけで、今70代が1つの固まりです。70代でパソコン使用率が確か70%です。これを境に80代、90代というのは階段状に下がってきます。同時に、70代を過ぎますと、ほとんど9割に達するというぐらい。

 とにかく年齢で非常にはっきりした傾向がございますから、むしろ皆様ご協議の上で電子版に統一していくというのだったら、すすめてよいのでは、と思います。今度は個人の家庭を見ますと、今、介護者の方ができるようになったというお話がございまして、そのとおりなのですけれども、介護保険も入っていない、往診も入っていない、そして、一方で、老老介護で最近も新聞に90歳の親に60代の介護者が一緒に倒れて死んでしまっていて誰も気がつかなかったなどという、家族の状況はむしろそういう孤独化、ファミレス化していくときに、電子化でそれをカバーできるのかどうか。その辺も御研究いただきたいという意見でございます。

 以上です。

○印南座長 ありがとうございました。

 それでは、北澤先生、お願いします。

○北澤構成員 溝神先生の御発表に関して1つ教えていただきたいのですけれども、実際にチームで進めていく上で、まず患者の面談をやっているというお話でございましたが、私が関心のあるのは、患者さんは、お薬に対して、できれば減らしたいと思っているのか、それとも、今、もらっているお薬を減らされたくないのか、いろいろな見方があるのですけれども、患者さんに面談されてみての感触はどうだったのでしょうか。

○溝神構成員 御質問ありがとうございます。

 患者さんと面談してみての感触といたしましては、やはり多くの方が、薬が多いことに対して何とかできないかというような形で御相談いただく方が多いのですけれども、中には、こういった形で患者さんの了解を得るということをさせていただいておりますので、お話をさせていただくと、主治医の先生との信頼関係があるので御遠慮させていただきたいという形でお断りされる方も中にはいらっしゃいますので、多くの方が薬が多いことに対して最近そういったいろいろと報道がされているので、問題意識を持っているのではないかと感じております。

○北澤構成員 ありがとうございます。

○印南座長 勝又先生、どうぞ。

○勝又構成員 溝神先生に単純な質問なのですけれども、この患者選択のところで整形外科とリハビリテーション科と高齢者総合診療科の3科に限られている理由というのを教えていただきたいということと、もう一つは、チームとしての取り組みが非常に先駆的なのか、その他の病院でもカンファレンス的にやっておられるのかどうか。もし先駆的にやっておられるとすれば、どのようにすれば病院に広がっていくというようにお考えなのか教えていただきたいです。

○溝神構成員 御質問、ありがとうございます。

 まず1点目の患者選択に関しましては、最初、始めたときに急に病院全体でというようになると、私たちも勝手がわからないというところもありまして、整形外科とリハビリ科と高齢総合診療科を対象とさせていただいたのは、入院期間がある程度長い、2週間以上が多く、患者さんは2週間程度があるということと、あとは科の先生からの御了解をいただけていたというところが大きな要因だと思います。現在は一応対象を病院全体に広げるようなことで進めてはいるのですけれども、なかなか入院期間等々の問題もあって、まだそこまで広がってきてはいないという状況があります。

 このチームが先駆的かどうかといいますと、こういった取り組みを実際に行われている御施設は幾つかあると伺っております。その中で私たちの1つのポイントとしては、多職種で非常に多くの職種の方に入っていただいているのと、先生方もたくさん入っていただいているところかというように思っております。当センターに関しましては、副院長からのやりとりでできたということがありまして、病院として動けたというのが非常にチームとして活動し始めたときに対して動きやすかったということがあると思いますので、ぜひ病院としての取り組みとして行っていくと今後広がっていくのかなと考えております。

○勝又構成員 ありがとうございました。

○印南座長 よろしいですか。島田先生、どうぞ。

○島田構成員 同じく溝神先生にお伺いします。

 本当に院内で薬を減らしていただける努力というのは非常にすばらしいことだと思うのですけれども、ここのお話は情報の共有・一元化ということでお伺いしたいところなのですが、今、渡邊参考人もお話をしたように、お薬手帳というのは、現在、電子版も含め普及がまだまだ途中だということと、基本的には患者様の情報ということで、お薬手帳の情報をどういうように使うか、これからまだまだ課題があると思うのです。今回のお示しいただいた情報の中で再入院という経過をたどる方はそんなに多くはないのでしょうけれども、この情報をお薬手帳に載せてお渡しをした、特に十数剤の薬剤について、お薬手帳にほかにどんな情報を保険薬局のほうに提供されているのか、もう少しその辺を教えていただければと思います。

 加えて、薬局からもそれに対して現在フィードバックといいますか、1回退院をされてしまうと、あとはもう近隣の診療所への通院が中心になるので情報を収集するのは難しいはと思うのですけれども、そういったその後の患者の状況や情報などが、保険薬局からも病院に提供されているならばそれをお伺いしたいです。

○溝神構成員 御質問ありがとうございます。

 まず1点目のお薬手帳ラベルに関しましては、基本的にはチームで検討させていただいたワークシートの内容をある程度転記させていただくような形で、チームでどういうことを検討した結果、その処方になったのかというのがわかるように記載をさせていただいておりますので、検査値に含めてMMSEですとか、認知機能に関して食事ですとか、管理方法ですとか、そういったことと患者さんとのやりとりですとか、情報の薬歴に関しての詳細な経過ですとか、あとは経過観察の内容、そういったことを記載させていただいております。

 その患者さんが退院されて、また入院されてきたりすることはありまして、それに対して例えば近医の薬局からのフィードバックが何かあるかということなのですけれども、一応このチームが立ち上がってこういう情報提供を行う際に近隣の薬剤師会の先生方に御説明はさせていただきまして、こういった情報提供をさせていただきますということはお話をさせていただいて、病院の薬剤部のホームページのほうにポリファーマシーに関する情報に関して、何か変化等があれば情報提供いただければということでお話はさせていただいているのですけれども、今までのところ、実はそういったフィードバックがないので、これからもう少し連携を進めていかなければというように感じている次第であります。

○島田構成員 わかりました。通院されると、今度、私たちは保険薬局のほうの情報をどういうように活用していただくか。その中で情報の共有化という意味では、紙もあれば電子もある。次のステップは処方医と薬局薬剤師の有効な相互の情報交換だと思うのです。ありがとうございました。

○溝神構成員 ありがとうございます。

○印南座長 ほかによろしいでしょうか。

 美原先生、お願いします。

○美原構成員 このお薬手帳の問題なのですが、情報の共有化、これは恐らく在宅にいる患者さんがいろいろな医療機関やいろいろな調剤薬局を回るからこういうような問題が出てくるのだろうと思うのです。もし、さまざまな医療機関が1つのいわゆるかかりつけの調剤薬局にかかるのであれば、この問題は大分解決するのではないかと思うのです。ということは、何が重要なのかというと、確かにお薬手帳ということを議論することも重要なのですが、現在、かかりつけ薬局というのは本当に機能しているかということをもう一度見直すべきように思います。というのは、多くの病院では駅前の門前薬局があって、患者さんはそこに必ずしも行けとは言われないけれども、近いからそこに行ってしまうわけです。たくさんの医療機関にかかれば、それぞれの医療機関の門前薬局に行ってしまって、患者さんは本当にかかりつけ薬局ということを意識しているのだろうかということを思うわけです。

 何が言いたいのかというと、確かにこのようなお薬手帳、今、紙媒体を使っていますが、私は非常に便利だろうと思います。いろいろな薬局の状況が入る。見ると、そこにはさまざまな調剤薬局の名前が書いてあるわけです。これが本当に適切なあり方なのかということであって、私は何を思うのかというと、やはりこれからの医療提供体制を考えたときに、もう少しかかりつけ薬局というものがよく住民に認識され、そのようないわゆるかかりつけ医と同じようにかかりつけ薬局というものがしっかりしていくということがポリファーマシーとかこういう問題の解決になるのではないか。もっと根本的などこからお薬が出るのかということを議論してもいいのではないかなと思いました。

 以上です。

○松本構成員 かかりつけ薬局ではなく、かかりつけ薬剤師です。

○美原構成員 失礼しました。

○印南座長 それでは、最後にどうぞ。

○林構成員 先ほど溝神先生の御発表にあったチームが全国的に一般的なことなのか、かなり先駆的なことなのかという御質問がありました。私もお話を伺っていて、虎の門病院にも高齢者総合診療部というのがありまして、ラウンドもしています。溝神先生のご施設ではトータルパッケージとしてはとても充実してやっておられるなということで、当院でも参考にさせていただけることが幾つもあったなと感じております。

 一方で、私ども日本病院薬剤師会で平成28年度に、高齢者と限定しているわけではないのですけれども、入院時に多剤投与があった場合に何らかの対応をしていますかという施設調査をしております。調査全体で58.9%の施設において多剤投与の現状を持参薬で確認しており、削減しているという統計もございます。

 具体的にというと、削減できている経験がありますかというのは慢性期病院では77%ぐらいになっています。それを退院時にサマリーとして別の医療機関に引き継いでいるのは26.6%になっています。恐らく施設ごとのマンパワーの問題も乗り越えていかなければいけない点だと思うのですが、溝神先生のプレゼン同様完成度の高いパッケージでやっておられるのは本当に先駆的な取り組みだなと思いますが、類する取り組みというのは、チームを組んでいたり構成員があそこまで充実してはいなくても各御施設で、今、取り組んでいる状況は日本病院薬剤師会のほうでも把握を始めています。今後の御議論の参考になればと思いました。

○印南座長 では、池端先生、お願いします。

○池端構成員 今の件に関して、私もすばらしいと思うのですけれども、これを普及するためには余り厳密にこのチームだけというのではなくて、むしろNSTチームとか複数のチームを1つにまとめたチームとして、あるときはNSTチームになったり、あるときはポリファーマシー削減チームになったりということも中小病院を考えると、そこもありにしないとなかなか難しい。それでなくてもいろいろなチームが病院の中でどんどんできていますので、しかも、実はメンバーはほぼ同じなのです。だから、そういう柔軟な動きをする。今後、診療報酬上は何か加算等々になれば、そういうことも大事なのかなと感じました。

○印南座長 ありがとうございました。

 ここまでに構成員の先生方からいただいた御意見につきましては、本検討会の最終報告に盛り込んでいきたいと思います。

 続いて、議題2に移りたいと思います。

 これまでの検討会でも、睡眠薬を初めとする向精神薬を高齢者に使用する場合には慎重な対応が必要ではないか、また、製薬企業からの高齢者の薬物療法に係る情報提供も必要ではないかとの御意見をいただいています。そこで、水上構成員に向精神薬による薬物療法の現状と課題について、また、荒井構成員に製薬企業としての取り組みについて御発表をお願いしております。

 お二方に順に発表をしていただき、その後、まとめて質疑を行いたいと思います。まず水上構成員から「高齢者に対する向精神薬の安全な薬物療法」について、御説明をお願いいたします。

○水上構成員 水上です。よろしくお願いします。

 最初のスライドですけれども、これは向精神薬の代表的な副作用として挙げられているもので、過鎮静、認知機能低下、運動機能低下、自律神経/心機能への影響等があります。高齢者の場合には、このような副作用ができるだけ発現しないように安全に薬物療法をしていくかということが大切ということは言うまでもありません。

 これは海外から1995年に報告されたデータですが、回復可能な認知症の原因として、1番目に多かったのがうつ病ですが、2番目に薬剤性が挙げられていて、薬剤性の認知機能の低下が少なからず存在することが報告されています。

 これはさらに古いデータで、30年ぐらい前のデータですが、薬の数がふえると認知機能の低下のリスクが上がってくることを示しています。現在はお薬自体がかなり安全性の高いものが出てきておりますし、これは海外データで、日本の現状とは必ずしも一致しないかもしれませんけれども、やはり薬の数や量については高齢者の場合十分注意していく必要があるというデータと思います。

 高齢者の精神症状の発現機序を考えた場合に、内的要因の身体機能の低下、脳の老化と、外的要因である心理社会的要因が相まじって精神症状が発現してくることが知られています。

 そういう意味では、ここでの直接のテーマとずれるかもしれませんけれども、非薬物的対応が高齢者の精神症状に対しては非常に重要になると言えるかと思います。

 具体的な症状について少し御説明いたしますが、例えば高齢者の慢性不眠の背景として、不活発な生活など生活習慣の問題が背景にしばしばありますし、うつ病、せん妄、restless leg、呼吸困難を起こす呼吸器疾患とか掻痒の激しい皮膚疾患、泌尿器疾患などの身体疾患や精神疾患に付随して不眠がよく見られます。

 また、不眠を来すリスクのある薬剤も幾つか挙げられており、不眠に対しても、原因に対するアプローチや睡眠衛生指導をした上で、必要に応じて睡眠薬等を処方することになろうかと思います。

 一方で、平成22年の厚労省の特別研究事業の報告を見ますと、年齢が上がるにつれて睡眠薬の処方割合が上がってくることが報告されております。睡眠薬は、先ほどの溝神構成員の話にありましたように、中止するのは容易ではなく、減量や切りかえなどにさまざまな工夫が必要で、処方後の対応が非常に難しいという面があります。まずは睡眠衛生指導等の非薬物的対応や原因に対するアプローチをしながら、必要に応じて薬を処方していくという対応が基本的に求められます。

 また、日中の抗不安薬も高齢者は処方の割合が多くなる傾向が見られますので、処方についてはリスクとベネフィットを考えながら、あるいは薬以外のアプローチも考えながら、必要に応じて慎重に使っていく必要があります。

 これは高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015のサマリーですけれども、高齢者の睡眠薬治療で注意すべきことは何かというところで、ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬は、認知機能低下、転倒・骨折、日中の倦怠感などのリスクがあるので可能な限り使用は控え、特に長時間作用型は使用すべきではないと記載されております。

 同時に、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬にも転倒・骨折のリスクが報告されており、漫然と長期投与せず少量の使用にとどめるなど、慎重に使用すべきであると記載されております。

 しかも認知症がない高齢者と認知症の高齢者の薬の反応性が若干違うということも知られております。ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系のほとんどはGABAのα1受容体を通して睡眠効果が発現するのですが、アルツハイマー病の患者さんの海馬をみますとα1受容体はかなり減ってきております。本来の睡眠薬に期待される効果ではなくて、むしろ奇異反応や副反応のリスクが上がってくるという病理学的な背景と考えております。メタ解析では認知症に対する睡眠薬のエビデンスは明らかでないと報告されています。

 うつの話をします。75歳以上のうつのリスク因子の報告を見ると、「認知機能の低下」、「日常生活の困難さ」、「転倒のおそれ」、「日中ひとりでいること」、「慢性の身体疾患の存在」などが入っていますけれども、この多くは、やはり心理環境要因と言えるものです。ですから、うつに対しても、まず心理環境要因についてアプローチしながら、そこで必要であれば抗うつ薬による治療を行うということになります。先ほどの睡眠薬と同じで、認知症のうつ状態に対するエビデンスは乏しくて、認知症のうつに関しても、非薬物的な対応がさらに重要と言えます。

 高齢者の安全な薬物療法ガイドラインのうつ病のサマリーでは、三環系抗うつ薬はほかの薬剤に比べて抗コリン作用が強いので、高齢発症のうつ病に対して特に慎重に使用すべきことが挙げられています。三環系抗うつ薬に比べて、抗コリン作用が軽いSSRIに関しても、高齢者に対しては、転倒や消化管出血などのリスクが報告されておりますので、これらのハイリスク群に関して使用は特に注意が必要であるということも記載されております。

 スルピリドという抗精神病薬と抗うつ薬を兼ねたような、また内科的には胃炎と胃潰瘍に使われる薬があります。食欲の低下したうつの患者さんに食欲を増すために処方されることがあるのですが、高齢者の場合は錐体外路症状が非常に発現しやすいということで、可能な限り使用は控えるべきであるとサマリーに挙げられております。

高齢になるほど臨床試験では抗うつ薬の実薬群と対照群との効果の差が小さくなるという傾向があります。

 認知症のうつに対する抗うつ薬のエビデンスは明らかでないこともあるので、やはり心理環境面へのアプローチを含め多面的な対応が求められます。

 併用薬が多い高齢者では、SSRIの相互作用に対する注意も必要です。例えばフルボキサミンというSSRIとラメルテオンという睡眠薬のように安全性が高いと考えられる薬の組み合わせでも併用禁忌があります。

 一見うつに見えるアパシーという症状があって、意欲がなくて活気がないのですが、本人に聞くとつらさは余り訴えなくて、どこも悪いところがないとおっしゃるケースがあります。うつというのはつらいとか苦しいとか死にたいとかそういうような話をするけれども、アパシーの場合は逆に余りつらさがない。この2つは明らかに違う病態で、アパシーに対してSSRIはむしろ悪化することがありますので、病状の見きわめも大切と言えます。

 一方自殺念慮や精神病症状を認める重症のうつ病では三環系抗うつ薬がより有効な場合があることはうつ病学会の治療ガイドラインにも載っていますので、そのようなケースでは専門医に相談していただくということは必要だろうと思います。

 次に、認知症のBPSDについてのお話をさせていただきたいと思います。

 原因疾患の割合では、アルツハイマーが一番多くて血管性は20%ぐらいですが、レビー小体型認知症も大体1520%ぐらいになります。レビー小体型認知症は認知症の中でも一番薬の副作用が出やすく、またうつ病とか精神科の病気と診断されて治療を受けることで薬の副作用がさらに出やすくなりので、留意しなくてはいけません。

 認知症の症状は、認知機能障害と行動・心理症状、すなわちBPSDと、身体症状の3つがあって、それがいろいろ組み合わさって生活の障害が出てきます。

BPSDに対しては、ガイドラインが幾つも出ていますけれども、かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドラインは厚労省のホームページでも参照することはできます。そして、この7月に神経学会から認知症疾患治療ガイドラインが出ました。2015年には老年医学会から高齢者の安全な薬物療法2015というガイドラインが出ており、これらは日本の代表的なガイドラインになります。

 海外の代表的なガイドラインとして米国のBeers、欧州のSTOPP/STARTクライテリアがあります。いずれも主な対象は実地医家で、非薬物療法の重要性を指摘し、安全性を強調しています。

  これは神経学会のBPSDに対するガイドラインです。精神症状の緊急性に対する評価で、大うつ病の状態、他者に危害を加える可能性が非常に高い妄想、そして、自分自身や他者を危険にさらす攻撃性の3つのうちどれか一つがある場合に薬物療法を考え、そうでなければ、まず非薬物的対応から行うとあり、開始の見きわめを判断することによって、薬物療法の副作用のリスクを下げることができると考えます。

 また高齢者の安全な薬物療法ガイドラインのサマリーには、抗精神病薬の使用は必要最低限の量と期間にとどめること、定型抗精神病薬は、非定型抗精神病薬と比べて錐体外路症状、傾眠などの副作用が多く見られるため、使用はできるだけ控えることが挙げられております。

BPSDに対する薬物療法のエビデンスは、アルツハイマー病か、認知症全体に限られていて、先ほど挙げましたレビー小体型認知症のBPSDについては、治療エビデンスが非常に少ない。しかし、抗精神病薬に対する過敏性があって非常に副作用が出やすい。しかもその病気に気づかれないことが多いということで、非常に注意が必要です。

BPSDに対して新規に抗精神病薬を処方した場合、11週から24週で死亡率が3.92倍に上がることが報告されました。漫然と投与せずに、十分な治療効果を認めた患者さんに対して開始から4カ月以内に減量・中止を試みるという米国精神学会のガイドラインの記載もあります。したがって3、4カ月の時点で減量できるかどうか一旦検討することが必要だろうと思います。ただ、かかりつけ医にとってどうやって減らすかというのは非常に難しい問題です。ですから、減らし方については専門医がかかりつけ医と連携をとりながらアドバイスをしていくということが必要と思います。

 地域包括ケアに関しては、高度の認知症に対するケアと対応も重要になってくるので、その辺について少しお話しします。これは日本精神病院協会の1,204病院及び会員外の認知症疾患医療センターがBPSDを呈した高度の認知症の患者さんを受け入れて、どのような対応を行ったか、症状が変化したかというデータです。非定型抗精神病薬や睡眠薬の治療が行われ、結果的にはBPSDが改善しています。睡眠薬では新規の薬剤中心に用いられています。

 これはBPSDと身体疾患の両方に対応している老人病院のデータですが、入院後に薬剤の増量よりも減量のほうが多いことがわかります。高度の認知症の方に適応でない抗認知症薬や血圧降下剤、睡眠薬の減量が多いことを見てとることができました。

 高齢者の安全な薬物療法のガイドラインに対するパブコメをみても患者・家族、医師・学会からBPSDに対して多くのパブコメが寄せられました。医師のパブコメは半数以上が非専門医の方からです。かかりつけの先生が一生懸命、抗精神病薬を使ってBPSDに対応しているという現状がこのパブコメから見てとれます。

 今まで述べてきたことをまとめますと、高齢者に対する向精神薬治療の課題として、ガイドラインのエビデンスはほとんど海外のデータであり、日本のエビデンスが必要であること、高齢者の精神症状の発現には心理環境的要因の関与が大きいことや、認知症のうつや不眠に対する向精神薬のエビデンスは明らかではないことから、非薬物的対応あるいは予防の重要性について理解を広めることが重要なこと、ベンゾジアゼピン系薬剤の処方が多いこと、ベンゾジアゼピン系が処方される要因と減量・中止できない要因も調査が必要なこと、BPSD治療は薬の使い方のみならず減量・中止も難しいので、専門医との連携が必要なこと、BPSDの治療・ケアのエビデンスは、認知症全体かアルツハイマー病にほぼ限られるので、診断されにくく、かつ薬剤過敏性を示すレビー小体型認知症の薬物療法に注意喚起が必要なことなどが挙げられます。

 最後に精神神経学会の活動について報告します。現在1回の処方で3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、4種類以上の抗うつ薬、抗精神病薬の場合に減算になりますが、精神科の診療にかかわる診療を十分に有する医師がやむを得ず投与する場合には抗うつ薬と抗精神病薬について認められるというただし書きがあります。その資格として精神神経学会では専門医が、eラーニング研修を受け試験に合格することを求めています。

 また今年の7月に、単剤化・低用量化における多職種チームの役割という研修会も行われています。 以上です。

○印南座長 ありがとうございました。

 続きまして、荒井先生から「高齢者適正使用に関する製薬企業の取り組み」について発表していただきます。よろしくお願いします。

○荒井構成員 日本製薬団体連合会の荒井でございます。どうぞよろしくお願いします。

 今回、「高齢者適正使用に関する製薬企業の取り組み」についてお話しする機会をいただきまして、感謝申し上げます。

 今回、日薬連では、取り組みについて、日本製薬団体連合会の傘下の日本製薬工業協会、日本ジェネリック製薬協会の協力をいただきましてアンケートを行いました。全体の対象は104社、回答社数は68社でございました。

 こちらがアンケート内容でございます。まず最初のQでは、高齢者を含む方々への医薬品安全対策について実施している活動について全てチェックしてくださいという質問を投げました。高齢者のみに対象を絞って活動しているというのがどのぐらいあるか推測できませんでしたので、高齢者が対象に含まれている活動であれば該当ありとして回答いただきました。

 1つとしては、適正使用の情報提供、啓発活動、副作用発現時の対応の情報提供、アドヒアランス向上対策、ポリファーマシー(多剤併用処方)に関する情報提供、その他からチェックしていただきました。

Q2では、Q1でチェックした活動について、それぞれ具体的な内容についてお答えいただくというものでした。

 そして、Q3では、高齢者をターゲットとした適正使用推進活動について提案があったら御意見をいただきたいというものです。

Q4では、適正使用推進活動をよりよくするための方策について当てはまるものについてチェックしてほしいということでそれぞれ御回答いただいております。

 ここからが結果でございます。

 まず、高齢者が対象に含まれる医薬品安全対策活動ですけれども、適正使用の情報提供、啓発活動、副作用発現時の対応、アドヒアランス向上対策、がここに示したとおり、30件以上、御回答がございました。一方、ポリファーマシー、多剤併用の情報提供につきましては7件でございました。その他として12件あるのですけれども、飲みやすい製剤の開発ですとか高齢者対象の活動なしという内容でございました。

 こちらは具体的な活動・資材の事例ですが、まず薬効群別にどのようなものがあったかというところを載せております。集まりました回答は175件ございました。一番多いのは、その他の代謝性医薬品ということで、全て糖尿病薬でございます。次に多いのが向精神薬ですとか睡眠薬が含まれる中枢神経系用薬。そして、降圧、抗血小板薬が含まれる循環器用薬というところが多いところでございます。主に高齢者で多く使われる薬がこの中に入っているというところが確認いただけるかと思います。

 次に、適正使用の情報提供、どういったことをやっているかというところでございます。ここは高齢者の情報提供が含まれるような内容を聞いておりますので、必ずしも高齢者に特化してはおりません。媒体としましては、リーフレット、冊子などの紙媒体、企業のホームページ、動画です。医療関係者向けでは服薬スケジュール、飲み忘れ時の対応を含めた服薬上の注意について、適応ごとにハンドブックを作成しているというところ。

 減量基準のチェックリスト。これは年齢ですとか体重、腎機能、肝機能によって減量が規定されていると思いますので、そちらが間違いなくなされているかどうかを確認するチェックリスト。腎機能障害程度別の用量の早見表、用量調節が必要な場合に早見表、こういったもので提供している。

 患者さん向けでは、服薬スケジュール、飲み忘れ時の対応を含めた服薬上の注意等について、適応ごとにハンドブックを作成しているというもの。ダイアリーのページを設けて、患者さんが記入することによって意識づけをする、飲み忘れの防止ができるような工夫をするというようなもの。副作用の症状の注意喚起。そして、治療薬剤を他科受診時にお知らせいただくということをお伝えするような資材。カードのようなものが多く使われていると思います。

 次に、適正使用の啓発活動です。ここでは、これまでの媒体に加えまして講演会といったものが含まれます。医療関係者向けとしましては、ガイドラインの啓発活動があります。その他、生活の指導ですとか投薬方法、こういったところを提供しております。患者さん向けとしましては、投与初期に起きる事象などを解説するような冊子などで、こういうときには気をつけてくださいというような啓発をしていると思います。他科受診時にお知らせいただくことをお伝えする資材。こちらは先ほどと同じ内容なのですけれども、啓発という意味での資材のようです。その疾患の病態ですとかどういった治療法があるのか、その薬剤の服薬の注意点、薬の効果、生活の留意点などを記した冊子、そういったもので啓発活動を行っているというような回答がございました。

 こちらは副作用発現時の対応の情報提供でございます。上の2つは一般的なものなのですけれども、一番下のところ、高齢患者の情報を集積しまして、副作用の発現時、医療関係者から問い合わせがあった場合に情報を提供しているという会社さんがございました。

 次に、アドヒアランスの向上です。こちらは服薬方法の説明としまして、わかりやすい文字サイズとイラスト、白内障の患者さんも多くいらっしゃるということで、疑似眼鏡で判読可能なフォントや色や大きさを工夫しているという例がございました。

 服薬支援システムとしましては、包装に服薬の日付が記載できるようなもの。カレンダーに貼付する服薬チェックシールのようなもの。アプリスケジューラー等によって服薬管理、副作用の確認ができるようなもの。定期的な情報発信によって、投与忘れ、重複投与を避けるようにできるアドヒアランスのプログラム。そういうものの回答がございました。

 あと製剤としましては、開けやすい包装ですとか服用しやすい製剤、こういったものを工夫しているという事例がございました。

 次はポリファーマシーに関する情報提供です。こちらは製剤ごとというのはなかなか難しいということで、媒体としましては、学会・講演会、ホームページ、冊子などがございます。ここに記載している学会、学術大会などでは、ランチョンセミナー、イブニングセミナー等で共催という形で情報提供をさせていただいております。

 こちらは、ある会社のホームページになるのですけれども、ここではポリファーマシーにおけるかかりつけ薬剤師機能の課題としまして、多剤重複投与の軽減や残薬解消の取り組みですとか、薬物有害事象の予防・診断・治療のための注意点、アドヒアランスをよくするための工夫ということで、いろいろガイドライン等を引用しましてわかりやすく解説している例がございます。

 こちらは、医療機関にとって役立つ地域医療や経営に関する情報を掲載している「みるみる」という冊子なのですけれども、この中でポリファーマシー対策としまして、処方の適正化に向けた連携の最前線という形で情報提供しているというものもございました。

 こちらが高齢者の適正使用推進の活動の提案です。情報の内容としましては、生理機能に基づくサイエンスということで、一定の基準に基づいた薬剤ごとに情報提供が重要なのではないか。高齢者に対する個々の薬剤の有効性・安全性に関するデータをデータベース研究から明らかにして対策を打つことはできないかどうかというようなところ。

 これはジャストアイデアですけれども、減薬ややめどきのアルゴリズムを作成できないかどうか。ただ、こちらについては、いろいろな患者さんの、合併症ですとか併用薬、そういった背景情報もあるので難しいのではないかというような意見もございます。

 高齢者は、75歳以上、以下で情報提供すべきなのではないかという御意見もありました。

 あとはリスクのエビデンスがある場合とそうでない場合のメリハリ。こういったものはしっかりつけて提供していくべきであろうということです。

 提供手方法としては、媒体の工夫。ウェブに掲載したり印刷物にしたりというところがあるのですけれども、こちらは患者さん、使う方によっていろいろあるので一概に何がいいかとは言えないと思いますが、こういったものを駆使してやっていくのがいいだろう。ただ、患者さんに対しては、それぞれの患者さんが個別に判断してやめてしまったり減量してしまったりということがないように、処方医師の方、薬剤師の方を通じて適正使用情報をお伝えいただくということが重要であろうということです。

 その他としましては、服薬カレンダーの普及、一包化の仕組みというのは高齢者にとってもっと強化する必要があるのではないかというところ。複数医療機関から同時に同様の医薬品が処方されないような情報提供活動とか仕組みづくりというのが必要なのではないかというところがございました。

 次がQ4でございます。適正使用推進をよりよくするための施策としまして、一番多いのは生理機能に基づく情報提供ということになっております。

 その他はポリファーマシーに関する情報提供をもっとやっていくべきではないかというもの。

高齢患者さんが起こしやすい不適正な薬の使用について注意喚起をする。事象をまとめた形で注意喚起をしていってはどうかというところ。

臨床試験の中では得られなかった多剤併用の情報、これを市販後データベースによって取得して適正使用資材の作成ができないかどうかというところ。ただし、目的に合わせた情報提供方法が必要だという話もありました。

 情報提供の際には、やはり資材の文字の大きさですとか情報量、デザイン、こういったところも工夫していかなければならない。

あとは地方の包括ケアシステムへの情報提供。医師、薬剤師だけではなくて、介護士の方々にも情報提供していくことが必要だろうというような御意見もございました。

 まとめでございますが、各製剤につきましては適正使用の情報提供ですとか啓発活動、副作用対策、アドヒアランスの向上に関して個別に対応できるというように考えておりますけれども、多剤併用の処方の情報提供については、品目ごとではなかなか難しいというのが現状です。高齢者の適正使用の推進には、高齢者にカテゴライズして特化した形で情報提供するというのが効果的ではないかという考えもある一方で、個人差が大きいということで、それよりも生理機能に基づく情報提供がいいのではないかという意見もあって、ここは議論が必要なところではあるかと思います。

 開発段階では高齢者のデータ、多剤併用の情報も限られるということもあり、市販後のデータベースを用いて情報提供資材を作成できないかというような御意見もありましたし、高齢者の適正使用の事例をもとに注意喚起の資料を作成することも一案という御意見がございました。

 ただ、ここからは私見でございますけれども、やはり市販後の情報を企業のほうではいろいろと収集、集積しているところではございますけれども、不足している情報は多々あります。処方医、薬剤師の先生方を初めとし、看護師、介護士などの実際に患者さんに接する方々からいろいろ情報をいただきながら、どういったものを情報提供していったらいいのかということを今後考えていかなければならないと考えておりますので、この連携の中にぜひ企業も入れていただきまして、情報をいただいて、それをもとに発信していきたいと考えております。

 以上でございます。

○印南座長 どうもありがとうございました。

 今のお二方のプレゼンテーションに関しまして、御意見、御質問等がございましたらお願いしますが、資料5に論点の内容をこちらもまとめておりますので、時間も切迫しておりますし、なるべく論点に沿って御質問、御意見を言っていただければと思います。

 池端先生、どうぞ。

○池端構成員 済みません、最終便があと30分に迫っているので一言だけ言わせていただきたい。

 最後の荒井構成員のお話、いろいろ取り組みをお話しいただいてありがとうございました。ただ、言いにくいお話になるかもしれませんけれども、私もつい最近、製薬企業の方々に講演をする場があって、その場でポリファーマシーの話を時々するのですが、特にMRさんが集まった団体は、なかなかMRさんの中にポリファーマシーという概念そのものがなくて、当然ながら企業のMRさんですから自分の薬の情報を伝えて少しでも売れることが一番のメリットになるということがあって、でも、大きな目で例えば有害事象を減らすことによって、あと無駄な薬を減らすことによって日本全体の薬剤が適正に使われていくことが製薬会社にとっても最終的にはよくなると思うので、その社内のMRさんに対してポリファーマシーの教育というのも少し必要ではないか。

 製薬企業に求められるものの1つとして、非常に失礼な言い方になるかもしれませんけれども、少なくとも私自身がMRからその話を聞いたことは一度もないので、その辺もこれから広い意味で大事なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○荒井構成員 各社のMRの教育というところまでは今回お話の中には組み込んでおりません。十分把握できていないところもありますが、そういったところもきちんと対応するように検討していきたいと思います。

○印南座長 平井先生、どうぞ。

○平井構成員 水上先生に教えていただきたいのですけれども、この論点の3番目のところにもありますが、高齢者の方で悩み事として大きいのは便秘と不眠なのです。これに対して非薬物的なアプローチというのは言われるのですけれども、具体的にどういうようにするかということについて、専門医の先生はいろいろ御意見があると思うのですが、専門医の先生だけではなかなか足りないと思うので、例えば多職種でそういうものを当たるときにどういうようにしたらいいか、そういう多職種への教育のシステムとか、そういうことについて何か計画等はされているのでしょうか。

○水上構成員 多職種に対するアプローチですが、基本的には日常生活で身体活動を高めるとか、午前中に日光に当たるとか、生活習慣へのアドバイスがありますね。それに対する患者さんの理解を深めていただくように関わるということになるかと思うのですが、具体的に多職種への教育システムはこれからの課題と思います。

○平井構成員 結局、そこにアパシーが絡んで、いろいろ提供してもなかなか乗ってこないというようなものに対して何かいいアプローチの仕方というのはありますか。

○水上構成員 それも難しいところです。やはり興味のあることに対していかに誘導していくかとか、活動性を高めるか、いろいろな工夫や対応がされています。薬物的アプローチも重要で幾つか報告がありますが、難しいところです。

○平井構成員 ぜひ教えてください。

○印南座長 勝又先生、どうぞ。

○勝又構成員 それに関連してなのですけれども、前回、第3回のときに樋口さんという訪問看護師さんの御発言があったかと思うのですが、不眠の患者さんに対して、やはり原因をしっかりと探っていった。そうしたら、夜間にすごく不安になってくるということで、昼間に訪問したときに不安の状況を聞くということと、24時間、いつでも電話してもらってもいいですよというようなことをやっておられました。でも、訪問看護師一人でやっていくというのは過重ですね。なので、やはり薬剤師さんの訪問とかそういったことでも対応していっていただきたいというような御発言があったと思うのですが、そういったことが重要だと思います。

○印南座長 大井先生、どうぞ。

○大井構成員 荒井構成員に確認と質問です。

 スライド7で具体的な活動・資材の事例というところで化学療法剤とあるのですが、これは腫瘍とか抗生物質とはまた別のということですか。これは何ですか。

○荒井構成員 ヘルペスですとか結核、抗真菌剤というのがこの中に含まれます。

○大井構成員 わかりました。ありがとうございます。

 もう一点、まとめのところなのですが、重要なところだと思うのですが、まとめの3番目で高齢者の生理機能に基づく情報提供が必要だということなのですが、これは要するに肝代謝能が非常に低下して、なおかつ腎機能、腎排泄も低下しているというようなところを踏まえてだと思うのですが、一方で、高齢者のデータはすごく少ないと思うのですが、これは製薬会社さんとしてどのようにお考えなのでしょうか。

○荒井構成員 治験の中で高齢者の情報をとってきているのですけれども、なかなか広くとれるものではないことと、あとは高齢者と一口に言いましても、それぞれ生理機能が大分違うということもありますので、まず薬剤によってということにはなると思うのですけれども、高齢者の年齢で切ったほうがいいもの、生理機能で切ったほうがいいもの、それは区分けして情報提供していくべきではないかと考えております。

○大井構成員 ありがとうございました。

○印南座長 樋口先生、どうぞ。

○樋口構成員 荒井構成員のお話とプレゼンの論点と両方に挙がっておりますので、日ごろ、高齢者仲間から言われていることがございますので、お願いさせていただきます。

 資材、パッケージ、剤型に関する工夫ということですけれども、あるとき、子供さんが誤飲か何かの事件を機会に、数年前からですが、指であける小さい錠剤の強度が強くなったときがありました。私の友人たちがどんどん年をとりまして、この小さな錠剤を爪であけることが非常に難しくなった。こういう機会があったら言ってほしいと言われたので、小さいはさみを使ってあければいいでしょうと言ったら、その人はうつ病でいろいろ身体能力が落ちているので、小さいはさみが使えるくらいならこんなことは申しませんと言われてしまいました。こういうものをあけることを含めて、高齢者の身の回りで自立しにくい品物が満ちあふれてきているのですけれども、服薬というところでも、子供の安全は第一に考えられなければいけませんが、高齢者の服薬の自立の方向も配慮いただきたいと思っております。

 以上です。

○印南座長 松本先生、どうぞ。

○松本構成員 確かに、今、樋口先生がおっしゃったとおりだと思うのです。ですから、こうやってまとめられるのは大事なことだと思うのですけれども、製薬メーカーに情報提供というか、こういうことについて患者さんたちは困っているよという話はぜひ伝えてもらいたい。同様に、8のスライドとか、いわゆる医療関係者向けとか患者さん向けとかありますね。こういうものは各メーカーがそれぞれやるのではなくて日薬連がやるべき話で、各メーカーがすると自社の薬のコマーシャルにどうしてもなりがちです。ぜひこういう啓発活動は日薬連としてやっていくべきだと思いますので、そういう観点でお願いしたいと思います。

 同様に、白内障疑似眼鏡で判読可能、不可能とかということをやられているのであれば、そういう情報をメーカーに伝えて、剤型はこういうようにしたほうがいいとか、ぜひそういうように情報提供してもらえれば患者さんにとって便利になるのではないかと思います。

 それともう一点、水上先生にお聞きしたいのですけれども、先生の25のスライドのところで、処方薬を増えた、減らしたというのがあるのですが、これの生命予後への影響というのがあるのですが、この辺はいかがだったのでしょうか。

○水上構成員 この検討では、高度の認知症の方が入院した後に向精神薬が減った、増えたで生命予後に特に影響がありませんでした。

○印南座長 ほかにいかがでしょうか。

 齋藤先生、お願いします。

○齋藤構成員 1点だけ水上先生に御質問させていただきたいのですけれども、論点で専門医とかかりつけ医の連携のあり方とございますが、専門医からかかりつけ医に連携するときの紹介状に記載されると思うのですが、薬の提供については何か注意点とか学会として推薦される点とかございますでしょうか。

○水上構成員 学会としてということではありませんが、向精神薬をかかりつけの先生がどうやって減らしていくかというのはかなり難しいと思うので、もし調整がまだ必要な段階であれば、できるだけ専門医が診ていく必要があるのではないかと考えています。

○印南座長 秋下先生、どうぞ。

○秋下座長代理 日薬連の今後の取り組みについての意見です。この検討会の下にガイドラインを作成するためのワーキングが動き出しています。そのガイドラインがどう使われるのかというのを考えたときに、例えば添付文書であるとか患者への説明用の資材の中に、ガイドラインのポイントを入れていただくとか、日薬連で各メーカーにレギュレーションをかけられていると思うのですが、最低限のことはきちんと入れていただくようにできないものでしょうか。そういったことをしないと、安全性あるいは危険性に関するエビデンスがないのは安全だということにはならないと思いますので、もしそれが開発でデータとしてとれないのだとしたら、そういうことが潜在的に起こり得るということをやはり書いていただくべきではないかなと思っております。まだガイドラインをこれからつくる段階ではありますが、今後、そういったことも検討していただければと思います。

 もう一点、最後のポイントの調査研究の実施なのですが、製薬会社では寄付金を使った研究などが問題になりましたけれども、そういったことを踏まえて、例えばジェネリックメーカーなどは共通しているお薬がいっぱいあるわけですね。そういうところを例えば日薬連として取りまとめて資金を集めて、それを厚労省とかAMEDなどの公的な資金と合体して調査研究を行う仕組みがあるとよいですね。仕組みづくりは国のほうで考えていただくべきものかもしれませんが、やはりこういうときこそ産官学連携でお願いできれば客観性も担保できてよろしいのではないかなと思います。

○印南座長 よろしいでしょうか。

 どうぞ。

○平井構成員 時間がないので申しわけないのですけれども、ぜひこれをこの会で伝えてほしいということを言われたのでお話ししたいのです。

 ポリファーマシーの講演などに私は頼まれて行くのですが、とある医師会で頼まれまして、そうしたら、質問がございまして、平成28年度の診療報酬改定で薬剤総合調整加算が導入されて、病院で2剤以上減らす。そうすると、減らした分を近所のクリニックで出してくれというお手紙をつけて患者さんが来られたという話がありまして、そういう話をしかもその病院の先生がポリファーマシー対応はこういうようにしてやるということを医師会で講演されたりするということがあるということで、こういう話をぜひ厚生労働省等で伝えていただきたいということがございましたので、済みません、直接関係ない話で申しわけないですけれども、よろしくお願いいたします。

○印南座長 それでは、ほかにございませんでしょうか。

 それでは、この議題2を終了ということにいたしたいと思います。

 続きまして、もう時間が過ぎていますが、議題のその他の事項になりますが、本日は参考資料として超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き、マル1として安全な薬物療法が机上に配付されております。これにつきまして、松本先生のほうから御紹介いただきます。

○松本構成員 大変時間が超過している中で申しわけないのですけれども、この冊子を皆様方にお配りいたしました。これは高齢者に多く見られる残薬とか多剤併用などの課題に取り組んで医薬品の適正な使用と薬剤費の適正化を図るということで、日本老年医学会の協力を得て日本医師会においてつくったものなのです。

 先ほどの平井先生の話にもありましたけれども、診療報酬で誘導するというのはおかしいのです。だから、7剤以上は減算するとか、先ほど水上先生の説明で向精神薬の睡眠薬3剤以上だと減算するなど、診療報酬でそういうことを誘導するというのは本末転倒の話です。だから、恐らく病院の先生が、これは減薬できないけれども、減薬すれば診療報酬で手当がつくので、こういうようにするのですよ、というのはあながち間違いではないかもしれない。そういう意味で、例えば医薬品を6種類以上使用すると多剤併用だというようなことで7剤以上が減算ということになっているわけですが、3種類でも問題は起きることもあれば10種類必要な場合もあるわけなのです。それは個人個人で、患者さん一人一人で違うわけですから、本質的には中身が重要であるということです。老年医学会の秋下先生がおられるので、内容については秋下先生に質問してください。よろしくお願いいたします。

○秋下座長代理 日本医師会もこういう問題に常々意識を持っておられて、横倉会長の肝いりで、後ろに作成委員会のメンバーが並んでおりますが、こういうメンバーで、それぞれの学会の日本医師会の主立った方ということになると思いますが、こういうメンバーで集まってつくりましたということを御確認いただければと思います。

 かなり激しい議論も行われました。議論というか電子メール上の議論でしたけれども、ここはこうではないか、ああではないかというようなことでお互いの本音が入っているものであろうと思っておりますので、これは医師だけ、かかりつけ医向けに書かれていますが、そのかかりつけ医がどう考えるのかということも理解いただく上では、ほかの職種の方、これが理解できる一般の方であればそういう方にもぜひ読んでいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。それぞれの団体のホームページに載っておりますので、ダウンロードできるようになっております。

 以上です。

○印南座長 本日も活発な御議論いただき、ありがとうございました。

 以上で本日予定されていた議題は全て終了となりますが、その他に何か御意見がありますでしょうか。よろしいですか。

 最後に事務局のほうから連絡事項をお願いします。

○医薬安全対策課長 本日は活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。時間を超過して、事務局の不手際で大変申し訳ございません。

 情報の一元・共有化につきましては、今度、在宅でのアプローチを含めていろいろな課題も今日は御指摘をいただきましたし、向精神薬の安全な薬物療法につきましては水上先生もこの下のガイドライン作成ワーキングのメンバーでもございますので、またガイドラインの中でいろいろと反映できる部分があれば、ぜひ御対応いただけるようにお願いをしたいと思っております。

 次回以降の予定でございますけれども、今回は前回の中間取りまとめを受けた議論ということでお願いをさせていただきましたが、また次回、今、ガイドライン作成ワーキングのほうで作業しておりますガイドラインの骨子等につきまして、この検討会のほうにフィードバックさせていただきまして御議論いただくことを考えてございますので、また引き続きよろしくお願いします。

○医薬安全対策課課長補佐 次回、検討会の日程ですが、1222日、金曜日の14時から、予定しております。場所等の詳細につきましては、追って事務局より御連絡させていただきます。

 なお、本日の議事録につきましては、後日、送付させていただきますので、内容の御確認をお願いいたします。御確認いただいた後は厚生労働省のホームページに掲載いたしますので、よろしくお願いいたします。

 事務局からは以上です。

○印南座長 それでは、大変お疲れさまでした。本日はこれで閉会いたします。

 

 

 

 


(了)

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