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2017年3月22日 第11回HTLV-1対策推進協議会

健康局結核感染症課

○日時

平成29年3月22日(水)
14:00~16:00


○場所

厚生労働省 省議室(9階)


○議題

(1)HTLV-1関連疾患の診療を行う医療機関の登録について
(2)HTLV-1母子感染予防対策マニュアルについて
(3)その他

○議事

 

○結核感染症課長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第11HTLV-1対策推進協議会を開催いたします。初めに、構成員の変更と本日の出席状況について御報告いたします。構成員名簿の中ほど、公益財団法人日本医師会の湯泉川構成員に御参画いただいております。本日は、構成員15人中11人の方に御出席いただいており、岩本構成員、内田構成員、湯泉川構成員、吉田構成員より御欠席の御連絡を頂いております。菅付構成員は、若干遅れるとの御連絡を頂いております。また、本日は参考人として2人の方に御出席を頂いております。1人目は、東京大学大学院の内丸薫参考人です。もう一方は昭和大学医学部の板橋家頭夫参考人です。それでは、会に先立ち福島健康局長より一言御挨拶申し上げます。

○健康局長 健康局長の福島でございます。開会に当たりまして一言御挨拶申し上げます。本日御出席の構成員の皆様には、御多忙のところ御出席を賜りまして誠にありがとうございます。また、日頃からHTLV-1対策のみならず、感染症、更には健康行政全般に渡り、御指導賜りまして厚く御礼申し上げます。私事で恐縮ですが、私は熊本大学の出身でございまして、日沼先生、高月先生に直接教えを受けたということで、このHTLV-1の問題については従来から関心を持っておりまして、感染症課長時代にも、最初のとりまとめの前段階でしたが大分議論をさせていただいたという経験を持っております。そういう面でこの議論は今回11回目ですが、いろいろ議論を深めていただいているということについて、改めて御礼申し上げたいと思います。

 本日ですが、内丸先生からHTLV-1の診療を行う医療機関の登録について御発表いただき、また、母子感染予防対策マニュアルにおける研究班の研究成果について板橋先生から御発表いただくということで聞いております。是非、構成員の皆様には活発な御議論を頂戴しますようお願い申し上げまして、簡単ですが、冒頭の御挨拶とさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○結核感染症課長補佐 次に、事務局より資料の確認をいたします。議事次第、構成員名簿、座席図のほか、資料1及び資料2、参考資料1を御用意しております。御確認いただきまして、不足の資料がございましたら事務局までお申し付けください。冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきますので御協力をお願いいたします。以降の議事運営につきましては、渡邉座長にお願いいたします。

○渡邉座長 それでは、渡邉が座長を務めさせていただきます。まず、議事の確認です。本日の議題ですが、議題の1としてHTLV-1関連疾患の診療を行う医療機関の登録について、議題の2としてHTLV-1母子感染予防対策マニュアルについて、議題3、その他を予定しております。構成員の皆様には、円滑な議事進行に御協力をよろしくお願いいたします。それでは、早速ですが議事に入りたいと思います。

 議題の1HTLV-1関連疾患の診療を行う医療機関の登録について、私、HTLV-1学会の理事長が本来説明すべきところですが、私は座長を務めておりますので、理事長の代理として、理事の内丸参考人に発表をお願いしております。よろしくお願いいたします。

○内丸参考人 参考人の内丸でございます。今、渡邉先生からお話がございましたように、日本HTLV-1学会の理事長に代わりまして、理事の内丸からHTLV-1関連疾患の診療を行う医療機関の登録について御説明をさせていただきます。

 資料12ページです。本日、これからお話をいたしますのは、あくまでもHTLV-1関連疾患になります。ATLHAMを発症した疾患の診療に関連してというお話ですが、御説明の都合上、一部のデータでキャリア対応についてのこれまでの調査結果等のお話も入ってまいりますことを御了承ください。こちらの資料にありますのは、2010年に当時の厚労科研の渡邉班のほうで準備をして立ち上げましたHTLV-1情報サービスという情報提供のウェブサイトです。現在は、これを私の厚労科研の研究班で引き継いで運営しています。このウェブサイトの左の画面の右上の所に医療機関検索という欄があります。当時の研究班でATLあるいはHAM、あるいはキャリアに対して対応できる施設の調査を全国でやりまして、一覧を作ってこちらのウェブから検索できるようにしています。上の欄で対象疾患、対象地域を入力した上でクリックをいたしますと、該当する医療機関が下の図のように出てきます。これは、北海道の例だと思いますが、例えば北海道大学病院が挙がっているのは余り意味ありません。一番上にあるからということです。この北海道大学病院の所をクリックしますと右側の画面に飛びまして、こういった疾患あるいはキャリアに対して対応ができるといった情報が検索できる状況になっています。

 ただ、これを作りましてから2年後に私の厚労科研の研究班のほうに、ここの医療機関検索で出てきた病院に行っても、一体何をしに来たんだみたいな感じで、十分に対応してもらえなかった事例があったという話が多々耳に入っておりましたので、改めて実態調査を行っています。そのときに、ここに掲載されていた医療機関のうち20%の施設は、対応していた医師の異動等に伴って現状では対応できないという回答をしておりましたし、残りのうちの40%は、これはキャリアの……ですが、検査はできるけれども相談を持ちこまれても対応はできないと。残りの40%が相談まで含めていわゆるフルの対応ができるというようなことでした。改めて、ただ単にリストに載せるだけではなくて、実態についてまで明らかにする必要があるということで、この2年後の調査のときに施設の実態調査を行った上で、改めてかなり検査施設を絞ったという経緯がございます。

 本来であれば、どの施設でも同様に対応できるように均てん化を図るというのが理想ですが、ATLというのは、ある意味希少がんの代表でございますし、HAMに関しても希少難病の代表ということで、そういった希少疾患に関しては、やはり特定の中核となるような診療機関を選定していくほうが現実的であろうと思います。

 実例です。最近、私がやっておりますセカンドオピニオン外来に某国立大学の血液内科から紹介を受けた患者さんがいました。この方は、ATLに対する、ある臨床試験への参加を勧められたのだけれども、実際はどうかというようなことでセカンドオピニオンで来られたのです。実際、その方が持ってこられたデータを見てみますと、臨床試験のそもそも参加登録要件を満たしていないということで、あなたは対象ではありませんねということを話してお帰りいただきました。同じ血液内科でしても、例えば急性骨髄性白血病であったり、B細胞性リンパ腫であったり、どこの病院でもよく見掛けるような疾患の場合には、十分な対応はできると思いますが、希少疾患、希少がんの場合には、やはり中核となる施設を設定する必要があると改めて強く思っている次第です。

3ページです。例えばATLの患者さんがどこの医療機関にかかればいいのかということについて、やはりきちんと対応できる所というのがはっきりと分かるような形にしないといけないだろうと考えます。これはHAMに関しても全く同様であろうと思います。また、医療機関のほうに関しましても、いわゆる一次診療という形で対応し、専門的な施設に相談をするといったときに、どこの施設に相談をすればいいのか、これは医療機関というのには病院だけではなくて、例えば総合対策では保健所が相談の窓口として重視されておりますが、そういった保健所が相談を受けたときに、二次対応する施設としてどこに持っていけばいいのかということが、現状では必ずしも明確ではないという点に、1つ大きな問題点があるだろうと考えています。

4ページです。こちらに挙げておりますのは、前回の対策協議会のときにHTLV-1対策の政策研究班の厚労科研研究班の代表として、私が参考人として出席しましたときに提示した資料の一部改変です。1番に挙げていますようにATLHAMのような希少疾患の対応を考えたときに、治療の標準化という点で、あえて中核となる医療機関を整備していくというようなことが、現状ではまだ十分ではないということで、今後の課題として挙げさせていただいております。

 こういった現状を鑑みまして最後のページになりますが、HTLV-1関連疾患、ATLHAMに対して中核となる診療ができる機関が一体どこであるのかということを、日本HTLV-1学会が中心となって選定をして登録をしていく形で、中核となる医療機関を明示していくことが必要ではないかということを検討しています。その選定をしていくための要件として1から3まで挙げています。

 まず1、ATLHAM患者に対する診療に積極的に対応する意志がある。これは血液内科をやっておりますと、当然ながらATLの患者さんがたまたまというところがあってですが、受診して診るということもあろうかと思います。そうではなくて、むしろ積極的にこういった疾患を専門的に対処できる医療機関ということを、意志表示ができるような医療機関であるということ。

 2、これは非常に重要な要件と思っておりますが、他の医療機関がATLHAMの患者さんを受け入れた場合に、そうした所からの相談を受け入れ、診療に関して指導的な支援ができるということです。これは、東京のような交通至便な地域の場合には、ある意味では中核となる診療機関に行けばよろしいだろうと思いますが、地域によっては必ずしもそういった所にダイレクトに行けるわけではない場合もいっぱいあろうかと思いますので、最初にかかった施設がこういった中核となる診療施設の指導、支援の下に診療ができるような診療支援を積極的に行える施設であることです。

 それから3、日本HTLV-1学会がというのは、1つのメリットはこの学会の立場からどういった施設、あるいはどういった医師がこうした疾患に関して専門的なレベルで診療ができるというような情報を把握をしておりますので、そうしたところで選定をすることで、ある程度の質の担保ができるのですが、一応毎年ATLHAM診療実績等を学会に報告をする形で、機関の質の担保をする、あるいは施設の選定の根拠を明示していくということで、3の要件を挙げました。ここで診療実績というのは、例えばエンデミックエリアですと、多数の患者を診ていると思いますし、一方ではノンエンデミックエリアの場合には患者数としては少ないのですが、十分実績を持っているという所もありますので、これは必ずしも診療の数というのだけではありませんが、総合的に見てそういった診療実績を学会に報告をして、それを公表するということです。

 こうした医療機関を登録していくという制度を実現していくことによって期待される成果ですが、以下に3点挙げています。第1点目がATLHAM患者が、より診療の多い医療機関を選択できるということ。あるいは、これは患者さんがということですが、医療機関にとってもそういう疾患の患者さんを受け入れた場合に、どこに相談をし、あるいは必要に応じてどこに紹介ができるかということを明確にすることができると。これが1点目です。

2点目ですが、これも非常に重要な点だと思います。ATLHAMいずれにしても希少疾患ですので、例えば年に1人とか2人しか患者さんが来ないという施設でバラバラと患者を診ていく限りは、こういった希少疾患に関する実態や病態についての研究に関する情報がどうしても分散してしまいます。その意味で、診療や研究を積極的に対応できる医療機関に集積をすることによって、こういった希少疾患の場合、診療標準化に向けた臨床を研究推進できるということです。

3点目は、こういった希少疾患を対象にした臨床試験を行うとき、例えば現状ではJCOG1111という低悪性度ATLに対する臨床試験が進められておりますが、患者さんの登録が必ずしも順調ではないといったときに、患者さんの情報を集積することによって、新規の治療方法の開発に当たっての患者のリクルートの母体にすることもできるという意味で、レジストリーを目指すということにもつながってくることだと思います。そういった意味では非常に重要な効果が期待できるだろうと思います。

 最初に申し上げましたように、今回の学会からの提案は、あくまでも関連疾患の診療ということですが、当然ながらこういう疾患に対して専門的に対応できるところというのは、バックグラウンドである。HTLV-1感染、キャリアに対する知識を十分に持っている所ということになりますので、将来的にはこういった登録医療機関を整備することによって、キャリアに対する診療標準化の確立につながっていくことが期待できると思います。

 最後に、もう1つだけキャリアの点についてです。私どもの政策研究班では、妊婦健診でキャリアと判明した方々に対して、その後どのような行動を取ったかということを調査しています。妊婦健診で判明したキャリアさんは、ほとんど9割以上の方が授乳のことだけではなくて、キャリアということに関しての相談に乗ってほしいという希望を持っておられることが明らかになりました。そのうちの過半数の方が実際に相談に行っておられました。一方で、半数弱の方がどこにも相談に行っていなかったのです。相談に行かなかった方々に、どういった理由で相談に行かなかったのかとお尋ねしますと、最も多かった回答が、どこに行っていいか分からなかったということなのです。これは、キャリアに対する調査ですが、診療に関して全く同様のことが起っていると考えられますので、そういった観点からも、こういった関連疾患に関する中核的な診療を行える施設をHTLV-1学会で登録、選定をしていこうということ等を提案したいということです。

 本提案に関しましては、日本HTLV-1学会の理事、時間がなかったものですから、いわゆる会議ではなくメール稟議でもって、全理事から基本的な方向での賛同は得ています。ただ、実施する上での細目に関しましては、いろいろ論点があるということで、ここに挙げました要件に関しては、あくまでも原案ということですので、今後これをもし進めていくということであれば、細目については改めて学会内でも議論をするとともに、厚労省のほうからもいろいろ御指導、御指示を頂かなければいけないと考えています。以上でございます。

○渡邉座長 どうもありがとうございました。今、内丸参考人から御説明いただいたHTLV-1関連疾患の診療を行う医療機関を登録する学会からの提案に関しまして、質疑あるいはコメント等ございましたら、よろしくお願いいたします。

○山野構成員 大変すばらしい取組で、実際に多くの患者さんから、専門家にたどり着くまでに非常に苦労したという声をこれまでもたくさん頂いていますので、大変すばらしい、日本の医療の向上に結び付くようなアクティビティではないかと思います。

1点教えていただきたいのですが、この5ページ目の要件の3で、毎年度ATLHAMの診療実績をと書いてあるのですが、結構妊婦さんで陽性と判明したキャリアの方の御紹介や、あるいは献血で判明したキャリアの方、あるいは最近ですと、関節リウマチなどで免疫抑制療法を使用する前に、キャリアとしての状態を調べてほしいという形で御紹介いただいたりするのですが、そういう意味では、キャリアの診療実績も、ある程度この時点から把握するようにしておいたほうが、妊婦さんを抱えている病院や、リウマチの専門医などが、どこに紹介していいかということが結構困っていらっしゃる印象を持っているので、そういう情報も、今回一緒にやっていったほうがいいのではないかと思いましたが、いかがでしょうか。

○渡邉座長 内丸参考人からお願いいたします。

○内丸参考人 ただいまの山野委員からの御指摘はごもっともかと思います。現時点では関連疾患で、キャリアまで広げてということになりますと、かなり話が大きくなりますので、あくまでスタートラインとしては、関連疾患に関連したところでのスタートですが、診療実績の情報収集という点では、キャリアまで含めてもいいかとは思っております。この点については、座長ですけれども、理事長からもお考えを頂ければと思いますが、いかがでしょうか。

○渡邉座長 今、内丸参考人からお話がありましたのと、私は座長ですけれども、理事長として理事のメール会議の議論も踏まえてコメントさせていただきますと、最初の段階からあれもこれもと広げてしまうと、制度設計と言いますか、動き出すのが非常に難しくなるかもしれないということで、ある意味絞った形で提案したのが、基本的な背景だと理解しております。ただ、内丸参考人のお話がありましたように、診療実績という言葉にとらわれず、実際のアクティビティが分かるような表現をすることに関しては、大きな問題点はないのではないかと考えております。運用のところになるかと思いますけれども、問題はないのではないかと私自身は思っております。

○木下構成員 2つのことを伺いたいのです。1つはこの方向性は有難いことなのですが、この相談は保険診療所というか、今の病院にとって、実は非常に大きな負担になることなのですが、キャリアであれ何であれ30分近くはどうしてもかかってしまう。人によっては何やかやと1時間。これの診療報酬的なことは取れないわけですから、私費で取るのかとかいうことがあります。例えばキャリアを我々の所の産婦人科で数としては多くなると思いますが、全部お願いすることは、先生方にとって大変負担になることを含めて、この辺の、一体有料なのか、無料でサービスなのか、その辺のところをどう考えていらっしゃるのかが1つです。

 もう1つは、キャリアに対する診療とは、どういうことを意味するのか。つまり、我々が先生方に全部お願いする前に、僕らができる範囲のことはここまでで、これ以上のことになったらお願いするというところの何か基準があるのかどうか。特にキャリアの場合には、ハイリスクかどうかは、恐らく一番大きな問題になるかと思いますが、そんなことも含めてどのようにお考えになっているか、お教えいただきたいのです。

○渡邉座長 内丸参考人からコメントをお願いいたします。

○内丸参考人 ありがとうございます。まず、1点目です。これは診療の制度に関わることですので、必ずしも学会で結論を出せる問題ではないだろうとは思いますが、想定しておりますのは、基本的には疾患に対するアドバイスということですので、形としてはセカンドオピニオン外来的なイメージで対応することになるのかと思います。その場合、セカンドオピニオンに対する診療にどのような診療報酬を付けるかは、病院ごとに異なっているのが現状だと思いますので、その点については、まだ今後とも議論が必要かもしれません。イメージとしては、セカンドオピニオン的な診療のイメージです。

2点目、キャリアの診療とはどういったことなのかということですが、HTLV-1専門家のコンセンサスとして、キャリアであると判明した時点で、1度は現状についてのスクリーニングを行います。その結果、木下委員から御指摘があったようなハイリスクキャリアであるとか、そうでないとかということが判明することもあろうかと思います。もしハイリスクであれば、経過を診ていくことになるだろうと思いますし、そうでなかった場合には、一応専門家のコンセンサスとしては、もし何かあったらまたお越しくださいと。定期的なフォローはしないのが、一応基本的なコンセンサスになっております。ただ、ハイリスクキャリア、あるいはキャリアを今後どのように診ていくかについては、現在HTLV-1の世界の中でハイリスクキャリアをどう規定して、その人たちをどのように診療していくかの議論が進んでいるところですので、キャリアに対する捉え方の概念が変わってくることによって、キャリアの診療が変わってくる可能性があります。ここで、キャリアの診療という、ある意味漠然とした表現にしたのは、将来の変化も見越して、広い意味でキャリアをどう診ているかという意味で、キャリアの診療という言葉を使っております。私からのコメントは以上です。

○渡邉座長 ありがとうございました。

○齋藤構成員 私は産婦人科医ですので、実際にキャリアの方を診察させていただきますと、最初は母乳の育児方法などで、我が子には感染させたくないという形で母乳栄養法を選ばれます。その後、必ず御自身のことは今後どうなるのでしょうかと心配されます。で、内丸先生と私もその同じ班員だったのですが、キャリアネットを通じたキャリアさんの生の声を入手しました。実際にキャリアと分かるのが、3分の1が妊娠を通じて、3分の1が献血を通じて、3分の1がその他でした。ですから、この事業は母子感染を防ぐということで、大きな事業業績があるわけです。その一方で、突然キャリアということを私たち産婦人科医が妊婦さんに伝える大きなデメリットがあります。以前の体制ですと、そこで終わってしまったのですが、新しい体制になって、国が妊婦健診でHTLV-1の一次検査を国費で補っていただくことは、国の意志として、ATLHAMという病気を撲滅しようという大きな動きだと思います。その中で忘れてはいけないのは、突然キャリアと言われた方の精神的なフォロー、若しくは健康的なフォローアップをきっちりしてあげる体制があることを見せてあげることが極めて大きいと思います。ですから、こういう医療機関を登録していただいて、ATLHAMとか発病した方ではなくて、発病する前のキャリアの方も実際に相談窓口を設けて診るのだという姿勢を見せることは、大きな進歩だと思いますし、多くのキャリアの方が望んでいらっしゃることだと思いますので、是非ともこの中にキャリアの方の相談も入れていただければと思います。

○渡邉座長 ありがとうございました。

○森内構成員 私は小児科医の立場からお話します。広い意味でのキャリアになりますが、小児科医が関わるのは、産科の先生でキャリアであることを告げられた女性の方が、乳児期の早期にお見えになるところがスタートになります。特に短期母乳や凍結母乳を選んだ方の場合には、生後数箇月以内のところでのフォローが非常に重要ですが、また出産を終えたタイミングで、改めて自分自身のことも含めて、いろいろな疑問点や不安点が出てきますので、産科の先生にしていただいたカウンセリングをフォローするという意味でも重要な時期になります。

 もう1つは、子供さんが3歳を超えたときに、感染していないかどうかを知りたがる方が圧倒的に多いことを受けて、今度は子供さん自身の検査をする、少なくともこの2点において小児科医はかなり深く関わることになります。これも少し違う意味でのキャリアの診療になりますし、それをどこに相談すればいいのかを知りたがる方もおられると思いますので、小児科での対応、母子保健に関わる産科医や小児科医でも、どこでどういったことに対応しているのかをきちんと分かりやすく示すような箇所があってもいいのかと思っています。

○渡邉座長 ありがとうございます。今回の提案の中には小児科の立場での取組と言いますか、活動がこの中ではすくい上げられないような制度設計になっているということですよね、少なくとも今の御指摘では。

○森内構成員 スタートはこれで構わないんですけれども。

○渡邉座長 分かりました。 もう1つ、キャリアの診療という言葉が出てまいりましたが、内丸参考人からの回答の中に、キャリアのリスクを評価するというような内容が含まれていたと思います。そうすると、必然的に様々な検査が、臨床検査及び非常に研究的なレベルで行われているウイルスロードや、マルチカラーファックスの解析などの情報も判断の上では必要になってくることが、当然想定されるわけですが、それを保険診療の枠の中で収めることは到底考えられませんので、そういうことを可能にする何らかの使える研究費が存在するのが前提になるかと思いますが、内丸先生、いかがでしょうか。

○内丸参考人 御指摘のとおりだと思います。今、座長のほうから例示がありましたウイルスロードとかマルチカラーファックスは、恐らくハイリスクキャリアを拾い上げる上で非常に重要だろうと思うのですが、現時点ではまだ、そこのところはきちんと証明していく必要があるという段階ですので、優れて研究的な対応であろうと思います。

 そういった意味では、当然ながらまだ保険診療のレベルには達しませんが、逆に研究費という形、あるいは研究という形で証明していくアクティビティが、現在の段階では非常に重要であり、研究費のサポートが得られたら大変有り難いです。ハイリスクキャリアという概念を確立していく上で、非常に重要なことではないかと考えております。

○木下構成員 今のは非常に大事でありまして、私は厚労省の皆様方には、こういう視点で、研究のレベルで、こういった本当に大事な今後のクリティカルな、ハイリスクかハイリスクではないかと決めていくような様々な検査に対しては、とにかく無料で、研究費の中で自由にできるというところまで押さえるようなサポートを是非していただきたい。それはもう、お約束していただきたいぐらいで、今後続けてお願いしたいと思いますので、是非、お考えいただきたいと思います。

○石母田構成員 患者会の石母田と申します。本当に患者の立場からしても、これはものすごく求めていたもので、やっとこういう形ができるというので、非常に喜んでいるのですが、これ自体はやはりHTLV-1学会が主体としてやるということなのでしょうか。できれば、こういう大事なことですので、やはり私は厚労省のほうでも真剣に取り組んで、一緒にやっていただけるような形が取れたらいいのではないかなと希望するのです。

○結核感染症課長 結核感染症課長です。最初の導入のところは、学会の同意を得て、学会の専門の先生方との中で医療機関を選ぶように決めていただきますが、登録後の医療機関の体制は、もちろん私たちもサポートしていきます。

 例えば、将来これをどういう形で全国で医療体制を構築していくのか。例えば基幹的な病院を設置していくのかどうかという課題もまだ頂いておりますので、その解決に向けて、まずは第一歩を学会のほうからやっていただきながら、我々もそれを一緒になって進めていけるように、準備体制をしているところです。

○渡邉座長 学会の中での議論も、いろいろとそういう御意見もありましたが、基本的には、今回は学会が主体となって、まず形を作っていくという考え方です。その中で活動を通じて様々な情報とか問題点を整理していくことで、更に政策のレベルで対応していただくためのきちっとしたデータを積み重ねていくというような位置付けで、まずは第一歩というような条件で理事の方が了解としていただいたと、私は理解しております。第一歩であるというつもりでいるということです。それ以外に何か御質問はありますか。

○菅付構成員 これを拝見したときに、要件のところがちょっと気になりまして、何か学会の上から目線のような物言いに思えるのです。なぜかと言うと、積極的に対応する意志があり、支援する意志がある。と、いうところは限られているのではないかと。患者が非常に少ない所で、ペイもしないのに志が果たして持てるのかどうか。志のある方を探すのは難しいことだと思うからです。

 では、1人しかいない地域で、拠点を作るとした場合、どうしたらいいかという話ですが、患者から先生に病気について関心を持ってもらうことが必要かと思います。次に学会が力を出して詳しい先生を派遣して教育するとか、指導するとか、そこまでやりますから拠点になってもらえませんかといった姿勢で取り組んだほうが良いと思います。

 それと、先ほどキャリアの母子感染の方が、子供の感染を防げたとしても、その次に来るのが自分の問題という話がありました。産科医ができることがあり、次に、医療機関で、そのキャリアの相談体制ができるかというと、無理だと思うのです。そこで活躍するのは保健師ではないでしょうか。保健師学会を巻き込んで、総合対策の中で医療機関に関して、もっと広い視野で、広い視点で考えられたらいいのではないかと思いました。以上です。

○渡邉座長 ありがとうございます。この「要件」という表現の中の書き方が、ちょっと上から目線ではないかということと、できるだけ対応できる医療機関を拡大していくという方向性を考えてくださいということかなと受け取りましたが。

○菅付構成員 そうです。

○渡邉座長 これは学会の理事長の立場からのコメントですが、今、菅付構成員のほうからもお話がありましたように、やはりそこにいる医師なり、その他の医療関係者が積極的にそれに取り組もうという気持ちがあるかないかということが、非常に大事だということが学会員の認識です。受け身で、来たからしょうがないという態度でやられるのでは困るということです。ですから、前向きに取り組んでくれるということが期待できる所を選びましょうという意味で、こういう表現になっています。

○菅付構成員 そうすると、患者数の多い所とそうでない所では隔たりができてしまいます。拠点づくりをするのであれば、47都道府県に隙がないように、拠点づくりというものはそういうものではないかと思うのです。ですから、医師が消極的なところをどうするかが問題ではないでしょうか。

 

○渡邉座長 御指摘のとおりなのですが、適切な拠点の配置の仕方、それから、拠点とそれにつながって一緒になって診療に取り組むような地域の連携とか、そういった構造的な議論は次のステップで、もう少し立ち入った議論をしたらいいのではないかというような考え方でおります。まずは動き始めるために、最低限、皆さんが合意できるところ、こういう形でスタートしましょうというような議論を、学会の内部ではそういう立場でさせていただくようにしています。

 今、御指摘のように、将来的にどういう姿が望ましいかというのは、今後、いろいろな形で議論していかなければいけないと、我々関係者も皆、そう思っています。その場合に、もう1つ問題になってまいりますのは、これも御指摘のありましたように、地域的な分布の違いという現実の問題です。もう1つは対象とする疾患です。HAM/TSPを対象にするのか、ぶどう膜炎をやるのか、あるいはATLを対象にするのかということで、実はその辺の取組の姿勢がかなり異なってくるだろうと思います。

ATLの場合は、はっきり言って命に関わりますので、多少のことがあっても、より適切な治療が受けられる所に患者さんを集めてしまうという方向に誘導するということも、そうすべきだということではなくて、1つの考え方だと思います。

 ただ、慢性的な疾患の場合には、やはり患者さんが、日々適切な医療を受けられる環境を、生活の面も含めて検討しなくてはいけないということで、必ずしもその考え方が同一の基準で議論することは非常に難しかろうと思っています。ただ、あくまでもこういった議論は、次のステップですべきかという認識でおります。これは学会の理事長としての立場の発言です。

○塚崎構成員 ATLについてということで、血液内科医からATLの診療体制の整備の現状と、今度の登録制度によって、それをどのように、更により良くしていただけるのかというところを少し、私なりの考えを述べさせてもらえればと思います。

 毎年1,000人ぐらいのATL患者さんが発症されていて、これまでもいろいろな治療法の開発があって、モガムリズマブという抗体薬の開発、そして同種造血幹細胞移植の改良がここ5年ぐらいの非常に大きな進歩でしたが、幸いなことに、先月からレナリドマイドという新しいお薬がATLでも使えるようになっています。

 では、そういうお薬をどのように、より良く患者さんに使っていくかは、重要な問題なのです。最初は適正使用ガイドなどに従ってやっていきますが、では、その診療実態がどうだったのかということを、今は全国調査を継続しています。2010年、2011年の2年間では800例の方の調査が、ですから日本で4割ぐらいのATL患者さんの調査ができ、高齢化などが明らかとなったのです。更に予後調査の結果を見てみましたところ、良かったことにと申しますか、同種移植を受けられた方も、高齢や合併症などで受けられなかった方も、急性型、リンパ腫型の患者さんの治療成績は、それ以前と比べて良くなっているというデータが出ていました。これはガイドラインに掲載されている新しい治療法が、実臨床の中で患者さんにいかされてきていることが、把握できたと思っております。

 しかしながら、それはあくまでも4割の方のということで見ているわけですから、やはり、もっとそれを詳細に見ていくことが、今後必要ではないかというところに、この登録制度が活用できればと思います。

 もう1つは、モガムリズマブという大変いい抗体医薬ができたのですが、実はそれが同種移植をするときには、逆にリスク因子として、むしろ使うことによって、同種移植の成績を落とす場合が分かってきました。それは、移植免疫にもモガムリズマブが関与して、難しいお話になるのですが、合併症を起こして移植の成績が落ちるのです。結構早い時期に移植をしている先生方から報告があって、それをある程度ATLを診療している血液内科医が共有することができて、ATLに対する移植の臨床試験、JCOG0907試験の治療内容の改訂も行いました。

ATL患者登録制度などを継続的に密に進める上において、拠点があって、登録患者のデータを共有する中で、今、お話したような、患者さんにとっての利益、不利益が、より早く分かるようになればいいと思います。

 もう1つ、私は臨床試験をやっている中で、先ほど内丸先生からも御紹介いただいた、低悪性のATLに対してのJCOG1111試験などは、なかなか希少で患者登録できないのです。ですから、そのような場合も積極的に患者さんが参加しやすくなるように、先ほど菅付さんからお話ありました患者会が、ATLについてもより良くできて、その会と基幹となる施設が共同して、より良い標準治療を作っていくという流れを、是非この登録制度の中で進めていければと思っています。

○渡邉座長 ありがとうございました。

○内丸参考人 先ほど、菅付構成員のほうから、保健師学会ですか、保健師さんのほうを巻き込んで、より地域で広くというようなお話がありましたので、その点に関しての私の意見といいますか、コメントをちょっと追加してお話させていただきたいと思っております。

 これもまたキャリアの話になるのですが、私の研究班で、保健所における対応の実態について調査したときに、保健所側が、キャリアの方あるいは患者さんの相談に乗っていく上で最も問題になる点は何ですかという質問に対して、最も多かった回答の1つが、相談を受けて次にその相談をどこに持って行くかが分からないというものでした。

 今回、あくまでも関連疾患の診療を行う所ということですが、こういう所は積極的に診療をやっているのだということが明示されることによって、当然ながらキャリアに対しても十分な知識を持っていることが期待されます。保健所がそういう相談対応をやっていく上に当たって、次につなぐところがここであるということを明示できるということから言うと、この制度は結果的には保健所との連携を進めていく上でも重要であり、地域での対応を進めていくベースになるような制度になるのではないかということを期待しております。以上です。

○渡邉座長 ありがとうございました。ほかに御発言ありますでしょうか。

○山野構成員 まず木下構成員の御発言で、キャリアの診療というものがあったのですが、我々が妊婦健診で御紹介された方で、検査をしてみると、もう既にくすぶり型のATLであるという方も中にはいらっしゃるので、やはり1回きちっと心配されて来て、きちんと早期発見がちゃんとできれば、血液内科の専門の、うちの場合は内丸先生の所を御紹介しているのですが、そのような形で、より早期発見で、それが臨床研究にちゃんとつながるというルートができていくのではないかなと思います。

○木下構成員 くどいようですが、全てのキャリアに対する診療というと、ちょっとオーバーな表現かと。ハイリスクであったときに診療ということはよく分かるのですが、言葉としては、何か広過ぎるかなと。もうちょっとケアに対する特別な相談もありませんが、多分、検査も含まれるのでしょうが、先ほどもお話があった特殊な検査といったことは、疾患の治療とは違うという意味で、診療とはやはり意味が違うのではないかと思っています。

○渡邉座長 内丸参考人のほうからコメントをお願いします。

○内丸参考人 ただいまの木下構成員に対する私からの1つの回答です。今回はくどいですが、あくまでも関連疾患の診療ということでの選定となっております。その先として、ここにキャリアに対する診療の標準化と。このキャリアの診療というものは何かという点で御指摘を頂いたわけですが、この中には、先ほど齋藤構成員からお話がありました、いわゆるキャリアに対する相談に乗ると。これを広い意味で「診療」という言葉の中に、医療機関ですので含めております。

○木下構成員 分かりました。

○内丸参考人 ここは余り具体的にあれこれと挙げるわけにはまいりませんので、「診療」という漠然とした表現にしております。その中には、あくまで将来的にではありますが、先ほど齋藤構成員から御指摘があったとおり、非常に重要な問題だと思いますが、相談体制という対応ができるということも、この「診療」という言葉の中に込めております。

○渡邉座長 ありがとうございました。

○塚崎構成員 先ほど山野先生から御紹介があったケースですが、キャリアと思っていたら、くすぶり型ATLであったということ。それが同様に慢性型ATLであったということも、あり得るのですね。要するに、皮膚病変もなければ、何も症状がないけれども、今の基準ではATLと診断されると。ところが、そういう方とハイリスクキャリアといわれている方との間の線引きというものは、血液中のATL細胞が5%以上か未満かで区切るため、いわゆるATLという病名が付くと患者さんはすごく心配されますよね。本当にそういう線引きでいいのかというのは、やはり1つの大きな問題だと思うのです。

 同じことは欧米で一番多い白血病であるB細胞性の慢性リンパ性白血病においても、良性単クローン性のBリンパ球増多症という前白血病との線引きをどうしようかということで、逆にB細胞性の慢性リンパ性白血病という呼び方をしないようにしようという考え方も出ているのです。そこはやはり、くすぶり型ATLをどう考えるかということ。これは多くのHTLV-1キャリアと低悪性度ATLの合間にいらっしゃる方々にとっても重要な問題だと思っています。

 同じことは皮膚病変を有する場合もありまして、皮膚病変を有するくすぶり型の患者さんの場合には、皮膚科の先生方が大変詳しく、これまでも解析されていますが、やはり本当にくすぶっている方と、くすぶり型ではない予後不良な方が一部いらっしゃるのです。ですから、そういうところを含めて、今度登録制度というものができるならば、やはり、しっかりもう一度、ATLの病型というものを考える。そこにはキャリアとのボーダーをどうするかということも大事な論点になるかと思います。

○渡邉座長 ありがとうございます。今の御発言に、ちょっと私の立場から補足させていただきます。このような形で登録医療機関というものが見えるようになったときに、ごくまれにしか患者さんが来ないとか、たまたま来てしまったという所に相談をしたりということが、現実の行動として起こることを期待して、患者さんの集約と言いますか、一定の医療機関のほうに、患者さんが集まってくるという効果が起こるのではないかということも、私は期待はしております。

 そのことが、今、お話があったような、様々な幅の広い病態を捉える上で、非常に大きな基盤になると言いますか、プラットホームが広がってくるのではないかと考えます。これが、研究的に病態を理解して、将来の診断と治療につなげるための基盤形成の上でも役に立つのではないかなという考え方をいたしまして、私はこういう基本的な考え方を理事の先生方に相談を持ち掛けたという次第です。

○山野構成員 今度、HAMに関してですが、先ほどATLHAMでは、少し違うアプローチが必要ではないかとおっしゃったと思いますが、私も正しく、そのとおりかなと思います。神経内科の専門医に対して、診療に関するアンケートを研究班のほうで取ったときに、やはり保険は未承認であるが、非常に有用な検査というのを研究班のほうで実施してほしいとか、そのような要望がかなりありましたので、こういう診療ネットワークに関しては、やはり研究班での支援なども頭に入れながら、きちんと整備していくという取組が必要であろうということです。

 難病のほうは、一方で、難病法に基づいた医療のネットワークの整備を進めているところだと思いますので、そういう所との情報交換や連携も必要になってくるだろうと。

 そういう形で進めていくとなると、HAM独自の診療環境に関する調査をしたりとかいうことがどうしても必要になってくるのではないかと、これを特に3を実施していくとなると、具体的なアクションを起こさないといけないのかと思ったのですが、そこは例えばどのようなタイムスケジュールで、実際のその調査は、主人公は学会が主人公でやるという形でいいのかということをお聞きしたいのです。

○渡邉座長 私の理解ですが、理事長として、こういう提案、御相談を受けたときの理解としては、あくまでもその主体は学会であると考えております。そうすると、今、言ったような活動も学会からその構成員、専門家に診療委員会等に課題を投げて、適切な委員を決めて議論していただくというようなのが、学会内部での話合いの進め方、議論の進め方の手順になるかなと考えております。それを踏まえた上で、厚生労働省の関係の方々ともいろいろ相談しながらやっていくということになるのかと思っています。

○山野構成員 分かりました。

○渡邉座長 座長からの質問です。厚生労働省のほうの立場としては、今のようなことでよろしいでしょうか。

○結核感染症課長 はい、座長のおっしゃるとおりです。まずは始めることが今は大事だと思っています。今、構成員の皆様方からもいろいろと意見を頂きましたし、特にキャリアの診断をどうするのだということの話もありました。しかしながら、前回の対策推進協議会でも、ハイリスクキャリアの診断基準案というのが今後の課題でも挙がっておりますし、ATLHAM並びにほかに関連するような話ももちろんあります。

 また、地域差が、各都道府県ごとにという話がありましたけれども、どうしてもATLHTLV-1の感染というのは、やはり西高東低という形になっているので、例えば九州の1県に1個あればいいと、では、残りの病院はどういう位置付けなのかと。逆に、東北地方はどうすればいいかというような、どうしても地域差を考慮しないといけないのではないかということも課題として残っているのではないかと思っております。そういうことも考え合わせると、まずは、学会に大変汗をかいていただけるというところまで、非常に応援していただけることになりましたので、学会の中でのこの活動ということで医療機関の登録をやっていただき、その中で課題が恐らく幾つか出てくると思いますので、それを我々も一緒になって解決できるようにしていきたいと思っています。

○渡邉座長 ほかに御発言がないようでしたら、大分長くなりましたけれども、議題1については、一応ここまでとさせていただきます。その他という項目がありますが、追加発言がありましたら、その時間枠でお願いいたします。

 それでは、議題2に移ります。HTLV-1母子感染予防対策マニュアルについてということで、板橋参考人から資料2の説明をお願いいたします。

○板橋参考人 昭和大学の板橋でございます。この度、新しく作成しました「HTLV-1母子感染予防対策マニュアル」の主なポイントについて御説明したいと思います。

 次ページです。マニュアルに関しては、最初に作成されたのが、「HTLV-1母子感染予防対策保健指導マニュアル」で、平成5年度の厚生省の心身障害研究において川名先生方が作られたものです。その後、妊婦に対するHTLV-1の抗体のスクリーニング検査がスタートするに当たって、平成21年度の厚労科研での齋藤教授によるHTLV-1の母子感染予防に関する研究班で、「母子感染予防対策医師向けの手引」が作られております。更に平成22年度の厚労科研で、HTLV-1母子感染予防のための保健指導の標準化に関する研究によって、森内教授から「保健指導マニュアル」が改訂版として出されております。

 このように、最近でも2つのマニュアルあるいは手引が出ているわけです。私どもの母子感染予防のコホート研究班が立ち上がり、最終的にはコホートが約900数十件登録されました。まだ、生まれた赤ちゃんの、3歳児のフォローアップは完了していませんが、それにしても、この間に多くの問題が明らかになってきました。各地域で指導が必ずしも標準化されていないという点や、産科、小児科の連携不足です。また、HTLV-1母子感染対策協議会が、各都道府県、政令指定都市で立ち上げるようにということは当初から言われており、多くは立ち上がってきておりますが、必ずしも機能が十分ではないという課題もあります。もう一点は、乳汁選択について、もう少し明確にしたほうがいいという指摘があります。ウエスタンブロットの判定保留者というのは、大体1112%いらっしゃるわけです。その方々に対して、浜口班の御援助を頂きPCR法を実施してきたのですが、それが保険収載されたということで、検査の手順も、以前とは少し変化しました。以上が、マニュアル作成の背景です。

 次ページです。右側がこれまでのマニュアルで、左側が新しいマニュアルについてです。主な変更点の中1つが検査の進め方です。旧マニュアルでもPCR法は紹介されていますが、必ずしも全体的な立ち位置ではありませんでした。新しいマニュアルでは、ウエスタンブロット法で判定保留であった場合に、PCR法を行うことが望ましいという、より積極的な立ち位置にPCR法を置いてあるということです。

 次に母子感染予防対策のための乳汁選択ですが、旧マニュアルでは、母子感染のリスクの低減に有効な方法として、「完全人工栄養」、3か月未満の「短期母乳栄養」、「凍結母乳栄養」の3つがあるというような形で記載しています。パッと見ると、並列に見えるということがあります。新しいマニュアルでは、母子保健課ともディスカッションし、日本産婦人科医会、日本産科婦人科学会とも御相談して、最終的には、原則として「完全人工栄養」を勧めるという表現にいたしました。そして、母乳による感染リスクを十分に説明しても、なお、母親が母乳を与えることを強く望むような場合には、「短期母乳」「凍結母乳」というオプションがあるという位置関係に変えております。

4ページです。検査法についての本文ですが、旧マニュアルでは、判定保留者には後日採血を行い、当時保険未収載であったPCR法を紹介して、患者さんの同意が得られれば検査を実施するという手順でしたが、新しいマニュアルでは判定保留の場合にはPCR法を行うことが望ましいということにしました。保険収載されているということも明示しております。

5ページです。通常、30週ぐらいまでスクリーニング検査を行い、陽性の場合に、必ずウエスタンブロット法を行うということになります。右側のほうですが、以前のマニュアルでは、陽性、判定保留、陰性ということで、陰性に関しては母乳栄養を勧めることは問題ないわけですが、判定保留については、まだそこにPCR法は特に入っていませんでした。それから、陽性については、母子感染予防対策を行うということになっておりました。

 新しいマニュアルでは、ウエスタンブロット法の判定保留についてはPCR法を行い、陽性の場合には母子感染予防対策を行うということ。PCRが陰性あるいは検出感度以下という場合、これは現在、我々が行っているコホート研究の結果はまだ出ていませんので絶対ではありませんが、かなり母子感染のリスクは低いだろうと推定しております。ウエスタンブロット法陰性の場合には、母子感染予防対策は不要です。

6ページです。母子感染予防対策のための乳汁選択について、旧マニュアルでは、「長期母乳栄養で1520%の母子感染が生じる。母子感染リスクの低減に有効な方法として以下の3法がある。なお、妊婦が母乳感染のリスクを承知した上で継続した母乳栄養を行うという選択肢もある」と記載され、その3つの方法は、完全人工栄養、短期母乳、凍結母乳というように並列で書かれていました。

 新しいマニュアルでは、経母乳感染を完全に予防するためには、母乳を遮断する必要があると明記しました。母乳が有する様々な利点ということでいえば、栄養構成が赤ちゃんに非常に適しているとか、母子間の愛着形成が円滑に行えるとか、母体の回復にとってもメリットがあるという平成19年の母子保健課で作成された「授乳・離乳の支援ガイド」に記載されているような母乳が有する様々な利点等について母親に丁寧に説明した上で、原則として、完全人工栄養を勧めます。

そして母乳による感染のリスクを十分に説明しても、なお母親が母乳を与えることを強く望む場合には、短期母乳や凍結母乳という選択肢があるというように書いてあります。

7ページです。旧マニュアルの表のように、これまで乳汁選択について3つを並記していたわけですが、新マニュアルでは、オプションとして短期の母乳と凍結母乳という形で、ここに表を挙げています。ただ、旧も新マニュアルも同じですが、現時点では、短期母乳と凍結母乳のエビデンスはまだ確立していないということ、短期母乳については、長期化してしまうと母子感染のリスクが上がってしまうという注意点、更に十分な指導が必要というように記載しております。凍結母乳に関しては、エビデンスが足りないということ以外にも、非常に煩雑である等のことを書いています。

 実際問題、現在のコホート研究では、凍結母乳を選択した母親たちは10%にも満たないということで、凍結母乳は現実的には余り選ばれていないという状況です。

今回作成した新しいマニュアルを今後全国的に使っていっていただいて、指導の標準化、現場での産科と小児科の連携に役立てていただきたいと考えております。なお、このマニュアルには、先ほど内丸参考人のお話にもあったような、母親がどこのキャリア外来を探せばいいかというような情報等も含まれています。以上でございます。

○渡邉座長 どうもありがとうございます。それでは、ただいまの板橋参考人から御説明いただきましたHTLV-1母子感染予防対策マニュアル、新しいマニュアルについて御質問、コメントがありましたらお願いいたします。森内構成員、何かコメント等はありますでしょうか。

○森内構成員 新たなマニュアルによる乳汁選択は、もともと長崎県ではずっとやってきた方式なので、多分、現場での混乱は少ないと思います。ただ、一応この3つのオプションを提示する形である程度動いてきましたので、もともと短期母乳をたくさん選択している南九州などで、これについて十分に熟知して説明をする機会はつくらないと、現場は相当混乱するのではないかということは危惧しております。

○渡邉座長 ありがとうございます。その点に関しては、齋藤構成員か、木下構成員、今の新しいマニュアルの、いわゆる関係者に周知・徹底の機会というか、説明していくというような計画はありますか。

○齋藤構成員 ちょうどこの4月から、産婦人科の診療ガイドラインが変更になります。出版の直前だったのですが、最終の校正のところで変更しました。従来は、完全人工栄養、いわゆる哺乳瓶での粉ミルク、短期母乳、凍結母乳は横並びだったのですが、完全人工栄養のところを括弧して「推奨」という形にしました。

 短期母乳と凍結母乳は、母乳を希望した際に、こういった方法を提示すると。ですが、「ただし」が付いており、このような短期母乳若しくは凍結母乳を選択した場合には、出産後の保健師、それから助産師も含めたフォローアップが必要ですということを書かせていただきました。したがって、今回問題となった短期母乳は、実際に母乳をあげられるから一番選択率が高かった、特に九州のほうでは非常に高かったのですが、どうしても途中(90)でやめられずに長期的になる方が出てきました。そういったことを防ぐためには、乳房管理が非常に大変ですし、母乳を急に止めるわけにもいきませんから、特に助産師の定期的な健診、母乳健診などは必要ですという形で、その一文を入れています。

○渡邉座長 今、森内構成員から御指摘があったのは、これまでどちらかというと並列的に手段を並べて、産婦に選んでいただくという格好だったのを、ある指導、こちらを優先という形で重み付けしたということだと思います。その変化が、現場がそれにきちんと対応できるか、あるいは、そこに混乱を生じないかという、そのために何らかの対応策というか、御検討いただいているかということだと思いますが。

○齋藤構成員 それは産婦人科の医会報というのもありますし、それから、ガイドラインの改正点というのを、事ある学会の度に学会からお知らせするという形で会員の先生方はそういった情報の変更点を知る機会があります。ですから、そういう形で進めていくということは必要だと思っています。

○渡邉座長 木下構成員、どうぞ。

○木下構成員 これも大事な話ですので、ただ、以前に比べると、今回のは、より明確になった事実はあります。これに特化した変化として、全会員に直接、問題点として、新しい変更点として伝えていくことはいたします。ガイドラインが出来た段階で、ガイドラインというのは全ての人が見ているはずなのですが、そうもいかない部分がありますので、これに特化したものが、我々の医会としては情報として流していきたいと思っております。

○渡邉座長 ありがとうございます。ほかの御質問はいかがでしょうか。

○山野構成員 2つあります。1つ目は、この間、神奈川県の母子感染対策協議会で、小児科の先生から要望がありまして、このようなマニュアルとか方針でやるのですというのを全国の小児科の先生にも周知・徹底するようなアクティビティを、是非、お願いしたいという要望がありまして、それを挙げさせていただきました。

 もう1つは、少し話が変わります。この内容と若干外れるところですが、先日、実際にHAMと新たに診断された患者さんがいらっしゃいまして、その方は発症から7年ぐらい、結局、その方はもともと妊婦健診で、昔、陽性と言われていたのですが、当時は白血病が起こる可能性がありますというような説明だけで、7年前にHAMを発症、症状が出てきたときには、まさかそれが妊婦健診で指摘されたHTLV-1が原因だということに、全く気付かなかったというようにおっしゃっていたのです。結局、7年ぐらいたってからHAMと診断がついてしまったという症例があったのです。これが原因で白血病が起こるということは現場で結構説明されると思いますが、やはりHAMという病気もあるのだということを説明する。初期症状としては、こういう症状があるのだと、簡単なイントロだけでも説明できるようなマニュアルの内容になっていると、とても有り難いと思いましたので、その2点をお願いいたします。

○齋藤構成員 よろしいでしょうか。

○渡邉座長 齋藤構成員、どうぞ。

○齋藤構成員 ガイドラインにはきちんとHAMのことも述べております。ATLに比べて頻度は少ないのですが、HAMという特殊な神経変性疾患があるということは明確に記載しております。

○山野構成員 はい。

○渡邉座長 よろしいでしょうか。

○板橋参考人 まず第1点目の件です。

○渡邉座長 はい。

○板橋参考人 率直に言えば、HTLV-1の母子感染に関する知識、理解というのは低いのが現実だと思います。エンデミックエリアは除いて、ノンエンデミックエリアに関して言うと、産科医も直接患者さんを診ることは少ない。小児科医に関しては、ましてやという状況です。小児科医会のアンケートをとってみましても、やはりアンケートのレスポンス自体が非常に悪いですし、実際にキャリアから生まれたお子さんをフォローできますかと言われても、回答のあった4割ぐらいしかYesとは言えていないという状況です。

 私どもの研究班の班員の中に、小児科医会のメンバーの方に入っていただいていますので、産婦人科医会と小児科医会が両輪となってこのマニュアルを普及させていくことを是非やっていただきたいと思っております。マニュアルは、主に大きく5項目ぐらいに分かれています。乳汁栄養選択のことばかりではありません。病気の概要も書いてありますし、おおむね母子感染に関連する事項はカバーできていると思っております。

○渡邉座長 ありがとうございます。

○森内構成員 どうしても小児科学会の場合には、産科学会、産科医会のような、全体を網羅しているようなガイドラインがないので、いざ何かあったときに、寄り所として必ず見る場所がありません。以前にマニュアルが出来たときには、小児科学会の学術集会で指定発言として、厚労省からも来ていただきましたし、私のほうもそれを説明する機会がありました。また、今の板橋班の活動等々に関しては、板橋先生御自身が小児科学会誌にも、そういう総説のようなものを書いていただいたりしていますが、それでも余り周知はできていないのが現状ではあります。

 ただ、板橋先生は新生児委員会、私は予防接種感染予防委員会に属しておりますが、もともと厚労科研下で、今、AMEDに移っていますけれども、ほかの母子感染、トキソプラズマやサイトメガロウイルスに関してもいろいろな診療指針が出て、これは齋藤先生も属している研究班ですが、そういった指針の周知が必要だということを、ついこの間も小児科学会の予防接種感染予防委員会で話題にしたところです。そういったものを取りまとめて、母子感染全体に関する啓発をする機会を小児科学会の中でも、学術集会、学会誌、それからホームページですぐに見ることができるような体制で整えていこうという話合いが、今、始まったところですので、是非、これをきっかけに進めていければと思っております。

○渡邉座長 ありがとうございます。木下構成員、どうぞ。

○木下構成員 先生方の幾つかの御指摘はそのとおりですが、HTLV-1というウイルスそのものの感染が問題だということ事体、言葉としては理解するかもしれませんけれども、どういうものなのかというところまでは、実際みんな知らないのです。ですから、私は、やり方だろうと思います。では、マニュアルに書いたら、みんな理解するかというと、決してそうではない。そこまでできるかどうか分かりませんが、HTLV-1は、いかに大変な疾患であり、HAMもそうですが、本当に画像的な視点で見せるということで、実はウイルスの感染によって、こうなるのだというところまで踏み込んで伝えていかないと、現実的な重要性がピンとこない方が非常に多いと思います。その意味で我々のやり方としては、ただ、マニュアルに載っていればいいというのでは、私はとても現実的に予防していくということにまで資しないという気がします。これは私たちが、やり方として変えていくことが1つです。

 もう1つは、産科だけではなく、小児科もそうですが、医会と一緒に、小児科医会も非常に親しくしていますので、お互いに情報交換をしながら、今、この問題というのは、お互いに共通のものがありますから、今の画像的なことも含めて、こういうことをいたしましょうということの働き掛けというのは今まで余り多くなかったのですが、ほかのことに関しても、今後関係が出てきますので、そこまで踏み込んでやっていくことのほうが大事かと思います。早速、今期実行していきたいと思います。板橋先生、よろしくお願いいたします。

○渡邉座長 ありがとうございます。齋藤構成員、どうぞ。

○齋藤構成員 今回は母乳の栄養方法について若干後退と言いましょうか、粉ミルク1本を推奨するという形で、希望すれば2つの栄養方法がありますという形で、一段落ちる形になりました。ただ、これは確立したものではないということを最後に付け加えさせていただきたいと思います。

 従来、齋藤班のときの調査では、162例分の3例ぐらいで短期母乳の感染率でした。約2%ぐらいだったと思います。それから、今現在出ている板橋班のデータでは、感染率は59分の1です。だから、症例数は、200例は超えているわけです。現在、板橋班で900例ぐらいが登録されており、約半数の方が短期母乳を選択されています。そういった方のデータが出た後では、3年後には恐らくデータが出ると思いますが、その中で、短期母乳の感染率が完全人工栄養と変わらないのであれば、また推奨レベルが少し上がると思います。ただ、以前から指摘されていたように、一部の症例が脱落するというか、長期母乳に移行することがあります。ですから、そういったことを条件付きで短期母乳を選択された場合には、必ず医師並びに助産師、保健師の定期的な乳房管理が必要ですという、そのただし書があれば、1つ上のほうにまた上がると思います。

 現状では少し症例数は少ないということと、こういった研究の中で、以前から指摘されていたことが明確になりましたので、一段ステップダウンになりますが、今後のことも、反省点として出てまいりましたので、今後、短期母乳を選ばれるときは、必ずフォローアップをしてくださいということになると、少しまた状況が変わってくるかもしれません。

○渡邉座長 了解いたしました。石母田構成員、どうぞ。

○石母田構成員 患者会などで話していまして、母乳をどうするかという時点で、まず病気を発症した人間にとっては、100%とは言いませんけれども、90%以上の患者さんは、短期母乳だろうが何だろうが、なぜ与える?のという考えはものすごく強く持っていると思います。それだけ苦しい病気です。

 今回、これがまず第1に人工栄養というのが推奨されたということは、患者さんとしては当たり前と思うぐらいの推奨度だと思うのですね。まず、妊婦がHTLV-1に感染していますよと言われているだけでもショックを受けたところに、どれを選びますかということを選択させること事体が、すごく過酷なことを妊婦にやらせていることだと私は思います。だからそういう意味では、今回の板橋先生の御研究の成果がこういう形で出てきて、産婦人科医会でもこういう形で進められるということができたことは、本当にうれしく思いますので、是非、これを周知・徹底していけるようにしていただけたらと思います。ありがとうございます。

○渡邉座長 ありがとうございます。ほかにありますでしょうか。

○永井構成員 よく分からないのです。質問ですが、全国で妊婦で陽性になる人というのは、1,000人とか。

○齋藤構成員 毎年2,000人ぐらいです。

○板橋参考人 1,700人ぐらいですかね、この前の調査では。

○永井構成員 その人たちの中で、現在、どのぐらいこの栄養方法を選んでいるのかということを把握しておいて、このマニュアルの普及によってどう変わっていくかということを、できるだけ網羅する形で調査する体制ができているのかどうかというのが質問なのです。

○渡邉座長 これに関しては、板橋参考人からお願いいたします。

○板橋参考人 全国的なレベルでまだ十分評価できてないかと思います。コホート研究の中で、研究協力施設である程度熟知した人が説明するという中では、鹿児島県だけが異様に短期母乳が多いのですが、それを除くと、人工栄養のほうが多くを占めております。次に短期母乳という順番ではあるようです。

○永井構成員 すみません、この協議会としての提言として、この把握、確認を是非進めるべきであるということが必要ではないかと思いますが。

○板橋参考人 そういった意味で、各地域のHTLV-1母子感染対策協議会がきちんとスクリーニング法の結果や、ウエスタンブロット法の結果がどうであったか、どれぐらいウエスタンブロット法が行われたのか、判定保留者のPCR法の結果はどうだったのか。あと妊婦さんが実際にどういう授乳法を選んだのか。そういった情報を把握しデータが出てくるようにならないといけないかと思います。

○永井構成員 そのくらいのデータを極力網羅的に出せるようなシステム、あるいは保健所に指導するといいのかもしれませんし、研究班ではなくても、厚労省としての方針は出せるような気がするのですが。

○齋藤構成員 永井委員が言われるとおりで、全国にHTL1対策協議会と母子感染対策協議会というのは立ち上がっています。立ち上がっていない所はまだ10県ぐらいあるのですが、ほぼ全ての県で立ち上がっています。その中でこういった実状を調査するようにということは、厚労省からは指令が行っているのですが、なかなか現場は難しいのです。ただ、先月、先々月、徳島と高知に行きましたが、全県レベルでようやく症例を押さえられることができるようになったとおっしゃっていました。

 全国で2番目にキャリアの多い大阪府も、先週行って講演してまいりました。大阪府でもまとまりは悪かったのですが、実際のキャリアの数を押さえられるようになってきました。ですから、徐々にですが、各都道府県でキャリアの数が明確に毎年登録されるようになってきたことは大きな進歩だと思います。その中でどういった授乳方法を選択されているかということも1つの項目に入っておりますので、恐らくはこれは全国的に少しずつデータが出てくると思います。残念ながら、東京都は対策協議会がないのです。東京都は全国で5番目にキャリアの数が多いのですが、大きな所でないところがまた問題です。

○渡邉座長 今の御説明ですと、もともと対策としてデザインをした事柄が、ようやく全国に医療政策的には浸透しつつあって、そのことによって情報収集ができるようになりつつあるということですね。全部ではないですが、大分改善してきているのが現状です。ただ、御指摘のように、より積極的に研究班的にきちんとデータを分析することになっていくとのことで、それは今、板橋先生の所が担当しておられると理解しております。それでよろしいですよね。

○永井構成員 この新しいマニュアルによって、完全人工栄養の割合が増えたという知見が得られる可能性はあるのですか。

○齋藤構成員 これは分かりません。現場ではやはり短期母乳という、いわゆる直接母乳を与えることができるということは、キャリアの方々からの要望は強いです。富山県は非常にキャリアの数が少ないのですが、8割方が短期母乳を選択されております。富山県の場合は、全症例に対して小まめに保健師さんが家まで行って乳房管理をしてくださっておりますので、脱落はありません。きちんとして、そういった方も全例感染者が出ていないことが分かっていますので、こういった方法をもし進めるのであれば、きちんとその後のフォローアップ体制を整備することが必要だと思います。今までそれは一応ガイドライン上はうたわれていたのですが、やはり、そこのところが曖昧になっていました。今回のガイドラインではしっかりと書せていただきましたので、それは守っていただけると私は思っております。

○板橋参考人 妊婦に対してスクリーニングをする目的は、最終的には母子感染を減らすことです。乳汁栄養法の選択は1つの手段だと思いますが、最終的に母子感染が減ったかどうかをどのように確認するのか、その手段を今からきちんと立ておかないと、やりっぱなしで終わってしまうことが懸念されます。その辺は恐らく厚生労働省でも考えておられるかと思ったのですが。

○母子保健課長 スクリーニング検査をやりっぱなしではいけないという御指摘はごもっともで、今回マニュアルも改訂していただきますので、しっかり現場で事後対応が取られているかどうか、フォローしていく必要があるだろうと思います。

 行政ルートで把握するのがいいのか、あるいは研究班として調査していただくのがいいのか、そこは一長一短あるかと思いますので、また板橋先生と御相談させていただいて、しっかりとフォローアップも含めて対応を検討していきたいと思います。

○森内構成員 それに関して、長崎県で3歳になったら、キャリアから生まれた子供さんは検査をするようにしているのですが、ただ説明をして、3歳になったら来てくださいだけだと、実際来ている人は10%ぐらいなのです。ですから、これはきちんとした仕組みができていないと来られないと思いますので、本当にしっかりとした研究班を立ち上げてやるのがいいのか、それとも各地のHTLV-1母子感染連絡協議会みたいな所が本気で体制を整えて、そこのフォローをするような指導をするのか、どちらにしても、ただやりましょうぐらいだと、ほとんどデータとしては出てこないだろうと思います。

○菅付構成員 先ほど齋藤先生からお話があった短期母乳について、これからは完全断乳を進めるという方針を打ち出されることに関して、石母田さんが患者の立場で考えると、完全に断乳をするべきだというお話がありました。でも私は、患者として、また母親を経験した者として、どちらかを選べと言われたら、感染率がほぼ変わらないのであれば、短期母乳を選びます。やはり、母親として母乳をあげたいという気持ちは、多分、今の若い母親も同じだと思うのです。この協議会が出来て11回目になって5年もたっている間に、エビデンスの確立は進められてきたのでしょうか。多分、進められていなかったのだと思うから、こういう結果になったと思います。短期母乳のやり方では、短期ではやめられなくて長期になるからという理由だけでは母親は納得しないと思います。

 鹿児島県のように、短期母乳を推奨してきた所では、今まで短期母乳をあげてまれに感染することはあるわけですし、そういう人たちが納得いかないという声が上がってくる可能性もあります。その辺を考えて、完全人工栄養を勧める理由として、もっと穏やかに納得できるような形で進めたほうがいいと思います。短期母乳は、やり方次第では上手にやれると思うからです。

 実際、鹿児島県では保健師とキャリアの母親と、経験した母親の交流会、情報交換会を毎月1回やっております。その中で、自分の体験談を話してうまく短期母乳でやっていたケースもあります。ですから、もし断乳と3か月短期授乳の感染率がほぼ変わらないということが、今後エビデンスとして出たという可能性も残していただきたいと思います。

○渡邉座長 板橋先生と齋藤先生は当事者ですので、私は間を取って発言させていただきます。私が理解している範囲では、今回のマニュアルの優先順位の付け方というのは、あくまでもエビデンスに基づいて議論をしているということだと思います。つまり、科学的な証拠がどちらが強くて、どちらが弱いのかというのがまず出発点だと思います。

 もう1つ、短期授乳ということが、実施上に問題があるかというのは、またレベルの違った問題だと思います。今のところ、短期母乳に関してどのぐらいの感染率かというデータに関しては、どうしても完全人工栄養に比べてエビデンスのレベルが著しく劣るので、これまでのデータは科学的には信用ができないという感じでした。それに対して、板橋先生、齋藤先生のこれまでの取組で、着々と言いますか、少しずつデータが積み重なって、エビデンスとして同じようなレベルで議論ができるところがだんだん近付いてきているのではないかと思います。時間がたてばそういう段階に至るのではないかと考えています。

 ですから、現時点の科学的な判断と言いますか、根拠に基づいた判断はこうであって、先ほど齋藤先生から御発言がありましたように、一定時間たって、新たなエビデンスが出てきたときに、この順位付けをまた見直す可能性は十分あり、固定したものではないということだと思います。

 それは、あくまでも科学的な議論で、実際に短期母乳を実施する上でどういう問題があって、それに対してどういう対策が評価かというのは、非常に実務的な議論のレベルで、それはまたレベルの違ったことかと考えております。そういう理解でよろしいですか。

○板橋参考人 あと丸2年ぐらいでフォローアップが終わりますので、そこで恐らく母子感染率は出るかと思います。今、菅付さんがおっしゃったように、母親が母乳を与えたいという気持ちは、私も新生児科医ですし、日本母乳哺育学会の理事長でもありますので、重々理解しております。

 ただ、鹿児島のように、ある程度実績のある地域と、実績が不十分な地域では対応の仕方は変わるのかもしれません。特にノンエンデミックエリアではサポート体制も含めてまだ不十分な可能性は極めて高いですし、そういった所では母乳栄養が長期化する懸念があります。児が感染した場合、長期化したことが経母乳感染に由来するのか、あるいは母乳以外の感染ルートで感染したのか分からないですが、結局、当事者のお母さんにとってみたら、また辛いことにもなるわけです。そこを親御さんと指導する側で十分議論をして乳汁を選んでもらっているのが、今の研究班の実状です。

 パターナリズム的に、あなたは短期母乳とか人工乳という指導の仕方は、少なくとも研究班の協力施設ではしていないと思います。やはり、親御さんの気持ちを十分斟酌して、今、科学的に検証されているものを勧めるという形で現場で指導していくというニュアンスでマニュアルは記載してあります。母乳を与えたいという気持ちを全く無視しているということではありません。この点を理解していただかないといけないかと思います。

○齋藤構成員 菅付さん、通常、厚生労働研究班というのは3年を1つの区切りにして2期までなのです。今回、3期目を認めていただいたのは、実際に登録して、その結果が出るまで、3歳になってから分かりますので、非常に時間がかかるという形で、特別に延長していただきました。

 私たちの努めは、3年間延長していただいたので、その中で確実に3歳児の検査を多くさせていただいて、結構、検査されていない方がおりますので、研究班でもう一度声掛けをさせていただいて、きちんと症例数を集めた上で、最終的に3つの栄養法の比較をさせていただく。その上で、またこれは変更させていただくかもしれないということです。

 もう1つは、先週大阪府へ行って、大阪府は非常に取組が遅かったのですが、びっくりしたのは児童虐待のことで体制を整えております。いわゆる貧困の方とか、シングルマザーなどで虐待が多いのでサポート要支援という形で、産婦人科の先生が要支援にチェックするのです。そこにHTLV-1を入れていただきました。HTLV-1、あるいは母乳を支援するということで、母乳管理を支援するためにという形で項目を入れていただきましたので、そういった形で各都道府県も少しずつですが、HTLV-1に関して理解が出てきましたので、この後全国的に広まれば良いかと思います。

 富山県は、低出生体重児という小さな赤ちゃんを、全例保健師さんが自宅まで行って、子供さんを見るのです。低出生体重児の所にHTLV-1と項目を入れていただいて、そこで母乳管理について指導をお願いしています。これは少しずつですが、ほかの都道府県にも広まりつつあります。そういった形で、対応も徐々にですが進んでいることも付け加えたいと思います。

○渡邉座長 それでは、議題12までで終了させていただきます。もうしばらく時間がありますので、「その他」という枠を取ってあります。構成員から何か御発言等ありましたらお願いします。

○石母田構成員 2つほどお伺いします。まず1点目が、2月にHTLV-1関連疾患研究領域合同発表会を医科研で行ったときに、座長である渡邉先生が挨拶の中で「この発表会が、今回で終わりになるかもしれません」という御発言をされたと思います。私たち患者にとっても、この発表会というのは、この領域で研究がどういうふうに進んでいるのかを知り得る唯一の場所だったものですから、非常に残念に思っています。

HTLV-1総合対策の中にも、5番目として「研究開発の推進」とある中に「HTLV-1ATLHAMに関連する研究班の総括的な班会議を実施し、研究の進捗状況や研究の方向性を共有して戦略的に研究を推進する」という項目があり、推進体制の3項目にも同じようなことが書かれていると思います。なぜこの時期にこの班がなくなってしまうのか、1つ疑問なので教えていただきたいと思います。

2点目は、第10回の協議会で、浜口先生がお話していた質疑の中で、HTLV-1の感染症の話が出ていたと思います。これまでいろいろと対策を進めていただいて、今日の話にもありましたように、妊婦健診時の抗体検査でPCR法も保検収載される等、着実に実施されて、これまでと違った環境になってきたのは実感しているのですが、残念ながら、HTLV-1の一般国民への啓発は、法制化されているエイズや肝炎対策に比べると、甚だ心もとない状況のままだと自分はまだ実感しています。是非とも、これからHTLV-1対策を肝炎やHIV同様、法制化も視野に入れて、指定感染症の検討も前向きに考えていくよう、この場で検討していただけたらと思って発言させていただきました。

○渡邉座長 ありがとうございます。今、2点御指摘がありました。前半は、総合対策を決定したときの推進体制と重要課題です。推進体制が3つあって、課題が5つある。推進体制の3番目に書いてある総合的な全体を俯瞰的に見る班が来年度からなくなっているのではないかというご指摘です。そういう班が、活動として年1HTLV-1関連疾患研究領域と指定された研究班の合同の成果発表会をやっていたのが、来年度以降はそれが保障されていないのではないかという御指摘でした。

○結核感染症課長 今の御質問、2つの点がありましたが、石母田構成員から2点目のほうで、感染症の指定と捉えていますが、私、感染症課長から回答させていただきます。

 今、御質問にあったのは、いわゆる感染症法の類別感染症に、HTLV-1を位置付けるべきではないかという話だと思います。感染症法に位置付けられているのは、特別なものを除けば、1類から5類の感染症に分かれています。1類はエボラ出血熱で強烈な話でさて置き、2類は結核や一部の鳥インフルエンザの強烈なものを位置付けていますので、恐らく、HTLV-13から5の中で位置付けられるものとして考えますと、3類はどちらかというと消化器系の指定感染症、4類は例えば蚊や動物が媒介するような感染症なので、5類の位置付けになるのではないかというのが私の感触です。

5類の感染症はどういうことをしているかというと、いわゆるサーベイランスなのです。この国でどれくらい感染者の方がおられるのかということで、医療機関などにお願いをして、定点で測定するもの、あるいは全数を届け出ていただくものと2つに分かれます。つきましては、HTLV-15類の中でどういう位置付けをすればいいのかということを、私どもとしては内々に検討をしているところです。例えば逆に指定することで、いわゆる偏見差別が増長されるのではないかという御議論もかつては聞いておりましたが、今、御指摘のように、患者さんと団体が、むしろ位置付けろという話であれば、患者さんの世界で反対がないならば、それは余り我々も心配することではないのかと思います。

 また、先生方から、これはなかなか症状が出てこない感染症なので、届出をしろとか、いろいろ情報を出せと言っても難しいという話があるかもしれませんが、さはさりとて、やはりきちんと法的に位置付けることによって、この国の感染の全体像が一部でも分かるというならば、それは届出基準を先生方とまた作らないといけないので、届出基準をきちんと位置付けた上で、何かしら5類の中で整理をするのは可能ではないかと考えている次第です。今後、どのような形でこの話を進めていくかというのは、HTLV-1対策推進協議会でもお諮りしていこうと思いますので、次回以降、私どもで叩き台というか、検討をお進めできるように準備はしておりますので、少しお時間を頂きながら引き取らせていただければと思いますので、よろしくお願いします。

○がん・疾病対策課長 1点目のお尋ねについて、統括的な研究班というのは、具体的にどのようなことを指しておられるのか分かりかねるのですが。

○渡邉座長 最初の3年間は私が班長をしておりました。全体の研究の進捗状況や分布といったことを、国内の研究の状況を把握して、国際的にも、今、どういうことが動いているかということを把握しました。俯瞰的にその研究全体を見て、適切な研究の配置と言いますか、提言することが目的で、3年間私が第1期はやりました。

 その後は、そういった政策的な班が3つあったのですが、それが1つにまとまって、内丸先生が班長になって、その中の1グループとして同じ活動を、規模は縮小した形で継続をしてきました。

 これは私の理解ですが、総合対策が決定される以前に、我々専門家がボランティアの形で「有識者会議」というものを組織し、そこで文書をいろいろ作って、研究に関して、医療行政のことではなく、研究の発展をするためには、適切な研究をいろいろな領域の研究をきちんとやっていく必要があると。そのためには俯瞰的に全体像を見て、どこをどうやるべきかアドバイスする組織が必要だということを提言に含めておりました。それがいわゆる推進体制の中に反映されたかと我々は考えております。

 基本はAMED等で、今やっているようなPOが進捗状況を評価するのと、根本的に目的と機能が異なっていると考えております。かつての厚労科学研究費のときは、各領域の研究課題を横串に差して、「HTLV-1関連疾患研究領域」という形で1つの領域を規定して、ある一定額の研究費を注ぎ込むことが最初の立ち上がりの総合対策でしたので、それが基になって、適切に研究の領域を決めて進捗状況を把握して、情報収集もするという、そういう意味の班があったということです。

○がん・疾病対策課長 手持の資料では、平成26年度から平成28年度まで、内丸先生。

○渡邉座長 内丸先生の中で渡邉グループという形でやっていました。

○がん・疾病対策課長 そういうことであれば、研究の期間として平成26年度、平成27年度、平成28年度ですので、平成28年度でそのものは終了で、平成29年度以降ということで、今、そのものについては事前評価中ということで聞いております。

○渡邉座長 我々が問題にしているのは、総合対策というときの3つの柱、推進体制というのがあります。国、省庁がまず当事者となって推進する。2番目は自治体が当事者となって推進する。3番目が研究班をそうやって統括する研究班が全体の研究の開発をちゃんとチェックする。これが推進体制の3つの柱なのです。その3つ目が今、存在しないということを指摘しているのであります。だから、ちょっと別のレベルで議論していただかないといけないことかなと思います。

○結核感染症課長 今、御指摘いただいた点については、次回の推進協議会までにまとめておきます。

○渡邉座長 もちろん結構です。別に決してどうこうということではありません。

○結核感染症課長 研究班の中で歴史的にいろいろと体制を切り換えながらやってきた話です。確かに、今のHTLV-1の研究がどのように進んでいるかということの周知というのは、やはり対策上、非常に重要だとは思っておりますので、何かしらの形、例えば研究班の発表会が使えないならば、何かの形でシンポジウムのようなことができるのかどうかということも含めて、次回までに宿題とさせていただくことでよろしいでしょうか。

○渡邉座長 はい。それはすぐどうこうということではありません。補足なのですが、以前の厚生労働科研の場合は、先ほど申し上げましたように、さまざまな領域を横串を刺してHTLV-1関連疾患研究領域という定義を致しました。それがAMEDという形が中心となった研究班の体制のときに、そういうコンセプトと、今のAMEDの研究プロジェクトとの間の関係は、どういうふうに捉えられているのでしょうか。かつてあったそういう捉え方はもう既にない、適応されていないと考えればよろしいのですか。「HTLV-1総合対策」の最初のポンチ絵を見ていただくと分かります。またこの次のときにでも、いろいろと解説をいただければと思います。

○結核感染症課長 はい、すみません。厚生労働省としては、現在の体制についても前回御説明の資料にもありますが、もともと今日はがんの対策の課長も来ていますが、がんの対策推進、難治性疾患の研究事業、それと母子保健の関係、成育疾患等の研究事業、そして我々感染症の研究事業というように、4つの領域でHTLV-1をバラバラ扱っていたのです。それを御指摘のとおり、平成23年度からはHTLV-1関連疾患研究領域でというようにまとめていただきながら、今の4つの領域が連携しながらやっていて、渡邉座長がおっしゃるとおり、それを横串にするような研究のセクションもあったところなのです。

 それは今、AMEDができてもAMEDの中に研究課題としては、がんの中では例えば白血病関係についての研究、難治性疾患については例えば抗体研究だとかHALを使った研究、感染症関係についても予防ワクチンだとか、いわゆるウイルスのグロブリンに対しての感染予防とか、母子保健は今日お話がありましたが、HTLV-1抗体陽性の妊婦さんからのコホート研究というような形でやっております。

 基本的にはAMEDにいったものというのは競争的資金になった上に、どちらかというと、例えばできれば医薬品等の開発につながり、患者さんの治療につながるような目的型、思考型な研究はそちらでやろうと。厚労科研というのはどちらかというと、なかなか競争的なものではつかめないような、例えばガイドラインを作るといったものに役立てようということで、線引きは一応しています。

 ただ、しかしながら、今申し上げたとおりHTLV-1に関して言うならば、そこを垣根を取ったような形で囲いたいのは4科体制で対応させていただき、もちろん例えば血液関係のときは血液対策課というところがあるので、献血関係のときにはそちらとも連携をしながら、総合的に対応しているというところが実態です。ですので、その4つ全てのHTLV-1関係の研究がどのような形になって、どのようになっているかというのは、こちらの協議会の場でもお示しいたしますし、先ほど申し上げたとおり、何かしらの発表会などが必要だということであれば、今後どのように体制していくかということは、課題として次回までに検討を省内のほうで進めさせていただくことを考えています。

○渡邉座長 分かりました。今、御説明いただいたように、いろいろと環境が変わってまいりましたので、当初と同じような形でやれないということは我々も十分承知はしておりますが、もともと総合対策が立ち上がったときの本来の趣旨を、新しい環境の中でどうやって維持していくか、活動していくかということが求められているのかなというふうに思っております。

 先ほどもちょっと申しましたが、一般的にPOがチェックする進捗状況がどうのこうのということと、やはりこの研究領域はウイルス、公衆衛生、疫学、神経内科、血液内科全部オーバーラップしています。ですから、やはり専門家のお互いのピアレビューがなければ、本当にどこがどういうふうにうまくいっているかということが、理解ができないだろうと思います。

 先日、山野先生が主催してやられましたように、国際的に皆が集まってきて、いろいろな研究発表をしたときに、日本は非常にいろいろなことで進んでいるのですが、日本がここは抜けているとか、そういうこともやはり国際的に分かってくるわけです。ですから、そういった国際的な情報収集、あるいは国際的な連携なども含めていろいろ議論ができる、ピアレビューしたり議論ができるような組織が、本来はあると望ましいなというのが我々当事者としての感想です。今後、どういう形があり得るかということは、いろいろ御相談させていただいて、来年度以降またいろいろな形でやっていきたいというふうに思っています。

 これは座長というよりは、HTLV-1学会の理事長側の希望として発言をさせていただきました。それ以外に何か、菅付さんどうぞ。

○菅付構成員 難病対策課にお礼と結核感染症課に御相談があります。まず、先日の世界会議HTLV-1世界会議で展示ブースを出させていただいたそのお隣で、アンメットメディカルニーズという市場調査をやっている一般の会社の方が報告をされていたことがあります。指定難病に指定された330のうちの153を対象疾患に調べたウェブ調査で、これは各登録している医者に対して調査をした結果です。縦が新薬ニーズ、横が診療割合という数字で、これが10年も前だったらHAMの名前は挙がらない。ここのグラフにも挙がらないところだったのですが、今回上位11番目ぐらいにありました。これは指定難病にしていただいたお蔭と、HTLV-1対策が進んだお蔭だと、本当感謝しております。ありがとうございました。

 結核感染症課の方にお願いです。310日ぐらいで風疹のキャンペーンが始まり、クリス・ハートさんのキャラクターは、結核感染症課に関わりのあるということで人選されたという記事を確認したのですが、HTLV-1でも同じようなキャンペーンをしていただくことはできないでしょうか。「すまいるんるんちゃん」というインパクトのあるキャラクターがいます。それを活用してポスターを全国に貼りだして大々的にHTLV-1もやっていただいたら、診療拠点作りもやりやすくなるし、今やっている治験に関しても、協力できやすいのではと考えます。治験でこれだけのことが進んで研究をやっているというのは、患者にとっての希望でもあると思うのです。まずは啓発が、とにかくHTLV-1に対しては足らない。それはなぜか。やはり法律になっていないせいなのか、ということまで考えてしまいます。でも、今の時点で、もしやれるのであれば、「すまいるんるんちゃん」をどうぞ広告塔にして、いい雰囲気のHTLV-1対策の啓発ができれば、それを厚労省主体でお願いできないでしょうか。これまで助成金を獲得して講演会やシンポジウムなどを開催して啓発に力を入れてきましたが、スマイルリボンには資金力がございません。よろしくお願いいたします。

○渡邉座長 課長お願いします。

○結核感染症課長 菅付構成員ありがとうございました。普及啓発は大事なことなので、私どももいろいろ、結核感染症課だけに限らせていただくと、例えばエイズは世界エイズデーというイベントをやっていますし、先ほど御指摘いただきました風疹とか麻疹のキャンペーンもやっております。インフルエンザのシーズンになれば、インフルエンザ予防のお話もやっております。このHTLV-1も、もちろんそうした御指摘があるならば、具体的に検討をさせていただきたいと思いますが、例えばこういうことがあるといいのです。先ほどエイズの例で言いましたが、世界エイズデーみたいなものがあったりとか、結核予防週間とかがあると、我々は取り組みやすいのです。ですから、今日は関係学会の先生方もいらっしゃいますし、患者団体の方もいらっしゃるのですが、例えばHTLV-1の日みたいなものがあると非常にいいかなと思っておりまして、具体的にそういう、あるいはなければ作っていただければいいし、あれば言っていただければいいと思います。そのときには我々厚生労働省だけではなくて、関係学会の先生方や、産婦人科医会とか小児科医会の先生方、患者団体の皆さんが一緒になって後援していただきながら、アピールをするということがセットになるのではないかと思っております。それはこれもアイディアをまた頂きながら、よろしくお願いできればなと思っています。

○菅付構成員 鹿児島県では、11月をスマイルリボンデーとして中央駅にあるアミュプラザの観覧車を黄色に、ピンクリボンにあやかりまして、そこを黄色に点灯してもらうということをここ2年続けてやっていますが、これを全国的にやることを考えたらいかがでしょうか、渡邉先生、いかがでしょうか。

○渡邉座長 はい、私は今、一生懸命頭の中で、その会議の最後の取りまとめの言葉を考えていたのですが、今、お話がありました点に関しましては、国内の啓発ともう1つはエイズに比べまして国際的なつながりが、もともと先進国でこのウイルスが少ないので弱かったのですが、やはりオーストラリアでもかなり見つかってきて問題になっているので、国際的なアピールができる体制を作っていかなければいけないかなと考えておりました。そういう意味で、いろいろ検討してみたいと思います。

 幸か不幸か、この間の学会で、私は国際ヒトレトロウイルス学会のプレジデントに選ばれました。いわゆる理事長になりましたので、いろいろな形で国際的に提案することも可能になったなというふうに思っています。ですから、国内だけではなくて、国際的にもいろいろアピールできる方法があればいいなと考えておりました。ということでよろしいでしょうか。前向きに考えさせていただきます。

○塚崎構成員 先ほど菅付構成員から普及啓発活動として、いろいろな新しい臨床試験に積極的に患者さんが参加できるようにというお話も頂きました。前から御相談しているのですが、低悪性度のATLに対するインターフェロンとジドブジン併用療法という副作用はあるけれども急性転化を防ぐかもしれない治療法と、今の標準治療であって副作用がない「無治療で・で経過観察」を比較するJCOG1111試験をAMEDでやっていますが、なかなか患者さんが登録できていません。その理由としては、患者さんだけではなく担当医の先生たちも、経過観察で安心しているところがあるのではないかと思います。そういうものを皆さんと一緒に考える機会を作る上で、患者の方々と一緒に考える機会が多いHAMの診療に比べてATLの場合、患者会がなかなか進んでいないのは問題です。悪性度が高い場合は、すぐお亡くなりになる方が多いということもありますが、低悪性度のATLに対して有望な治療法が、今、臨床試験であること、そして悪性度が高い分に対しても同種移植等がいい成績を出しているというところからいって、もう少しATLの患者さんたちとATLの研究者が連携していくべきだと思います。ほかにもATLに有望な治療法が幾つか出ているのですが、希少疾患であるなどの理由でその臨床試験もやはり進んでいないのです。以上のような問題を改善するために、菅付さんから先ほど御提案いただいた患者会の方々と血液内科医の連携を是非進めていければと思いますので、渡邉先生にはまた学会のほうでもよろしくお願いいたします。

○渡邉座長 ありがとうございます。ちょっと時間も過ぎておりますので、よろしければまとめさせていただきたいと思います。今回は診療機関を明示的に公開するということで、学会の側からこういう動きをしたいという提案がありまして、いろいろ議論はございましたが、第1歩としては認めていただけたと思います。それに基づいて、実際にはこれから取り組みを開始するということが了承されました。2番目は新しい母子感染予防対策マニュアルですが、これまでの母乳の選択の中に重み付けを明確にしたというが大きなポイントで、これの科学的な根拠、あるいは将来的にどうあるべきかということも含めて検討が必要であることを踏まえた上で、現在はそこのマニュアルで対策を進めるということです。科学的根拠を集めてまた更に見直しをしていくというようなところで、皆さんの合意が得られたと考えています。

 最後に、コメントがございましたが、指定感染症に指定する可能性に関しましては、私はお話を伺っていまして、そういうことによってキャリアの方、感染者に対してどういうメリットがあるかという視点が、本来大事なのではないかと思いました。我々研究する立場から言うと、まず、基本的な実態、感染の実態を知りたいという気持ちがあります。これはもう根本的なことなのですが、ただ、やはりそういう制度を運用していく上で、キャリアの方に対してどういうメリットがあるのかというところも考えなければいけない。ただし、今回は話題になりませんでしたが、水平感染の実態が明らかになって、恐らく垂直感染の10倍ぐらいは毎年毎年起こっているであろうということが分かってきましたので、大変難しい問題ですが、これに対してのアプローチを考えていくということを考えますと、日常の病院の診療の中で、どのくらいの実際の感染者がいるかという情報がつかまえられるということで、指定感染症という方法も、1つの情報を捉えていく上で重要な手段に、情報源になるのかなと考えます。あるいはそのことによって、キャリアの方に対するフィードバックも可能になるのかと考えていました。

 私がコメントをして物議を醸しましたHTLV-1総合対策の最初の取組の構造と、現実との乖離がだんだん起きてきて、最初のプランと現実との間の乖離が生じているのではないかということに関しましては、厚生労働省の立場からいろいろと御検討いただいて、今後どうあるべきかということも御相談をさせていただければ有り難いと思っています。

○山野構成員 すみません、時間が押しているところに、先日、国際HTLV-1会議を開催させていただきまして、37日から10日まで世界中の研究者が集いました。厚労省の浅沼課長にも厚労省を代表して御挨拶を頂きまして、本当にありがとうございました。HTLV-1国際会議が、史上これまでにない活発な御参加を頂きまして、これも恐らくHTLV-1の総合対策がこれまで大分沈んでいたこの研究分野も含めて、非常に多くの研究者の興味、参加を大きく引き出しているのだなということを改めて実感しました。HTLV-1国際総合対策の1つの成果だったのではないかと思います。本当に関係者の皆様にも協力を頂き無事に終えることができましたので、この場をお借りして感謝申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

○渡邉座長 ほかに御発言がなければ、お時間ですので、ここまでとさせていただきますが、次回について事務方と私とで時間を調整させていただきまして、事務方から皆様に御連絡を差し上げるということにしたいと思います。それでは、本日は以上で終了といたします。ありがとうございました。

 


(了)

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