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2017年3月21日 平成28年度第1回水道における微生物問題検討会

医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部水道課水道水質管理室

○日時

平成29年3月21日


○場所

中央合同庁舎5号館17階専用第21会議室


○出席者

秋葉 道宏 五十嵐 良明 泉山 信司 春日 郁朗 勝山 志乃
黒木 俊郎 島崎 大 橋本 温 船坂 鐐三 吉田 弘

○議題

(1)水道における微生物対策の実施状況について
(2)水道の微生物リスク制御に係る国内外の動向及び情報について
(3)最近の研究の動向について
(4)その他

○議事

○鈴木室長補佐

 ただいまより平成 28 年度第1回「水道における微生物問題検討会」を開催いたします。

 委員の皆様方には、年度末の御多忙中にもかかわらずお集まりいただき、ありがとうございます。

 本検討会の開催に当たり、事務局を代表して厚生労働省水道課水道水質管理官の東より御挨拶申し上げます。

 

○東水道水質管理官

 水道水質管理官の東でございます。

 本日は、年度末のお忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。

 本検討会でございますけれども、水道分野の微生物問題を扱う厚労省の唯一の検討会ということで、主に行政的な課題や問題について御議論いただく場でございます。例えば、今、水道水質基準、 51 項目ございますけれども、そのうち2項目はいわゆる微生物関係、大腸菌と一般細菌という項目がございます。その基準の項目でよいのか、あるいは検査のやり方についてもこのままでよいのか、もうちょっと改善が必要なのか、そういった議論も必要です。

 また、管理目標の設定項目として、基準の候補である従属栄養細菌というのがございますけれども、平成 15 年に基準を決めた際には、各事業体で従属栄養細菌の測定の体制がまだ整っていない、あるいは培養に7日間もの時間がかかるため現実的ではない、そういう御議論があって、今のところ管理目標設定項目のままということでございますが、少し検査方法を改良して基準に引き上げる、そういった議論もしていただければと思っています。

 あるいは、クリプトスポリジウムの関係でもそうですが、クリプトスポリジウムの対策指針もこの検討会の場で御議論いただいているのですけれども、後ほど御説明いたしますが、今、レベル1からレベル4と4段階に分けて対策をとるような形でやっております。今後もこのやり方でいいのか、もうちょっと改善すべきところは改善していくとか、そういった御議論もいただきたいと思います。

 あと、クリプトスポリジウムそのもの検査のやり方についてです。数年前に PCR 法、顕微鏡で確認するのではなくて、遺伝子を増幅させるやり方を開発されています。それも公定法に位置づけたわけでございますけれども、実際、事業体で使われているのはごくわずかというか、ほとんどないというのが現実でございます。それは前処理が変わらず必要だというのもあって、結果的に顕微鏡を使ったやり方をそのまま踏襲しているので、それももうちょっと改善できないか、本当はそういった議論も今後いただければと思っています。

 ただ、幸いというか、不幸ながらといいますか、最近、2~3年は行政に直接関与する議題はなくて、今回もそうですが、最近の内外の状況や基礎研究、そういったものを議論しているところですが、ぜひ、きょうの御議論の中でも、将来的に行政的に基準とか、そういうものを考えていく上で、こういう改善が必要とか、もっとこういう情報も必要だとか、そういった観点から御意見いただければ大変ありがたいと思っています。

 短い時間ではございますけれども、忌憚のない御意見を賜りますようお願い申し上げます。

 

○鈴木室長補佐

 それでは、本日の出席状況です。 10 名の委員の方全員に御出席いただいています。今年度初めての開催ですので、事務局から御紹介をさせていただきます。後ほど資料の確認もしますけれども、参考資料1に委員名簿、座席表も御用意していますので、あわせてごらんいただけたらと思います。

(委員紹介)

 また、本日、国立保健医療科学院生活環境研究部水環境研究領域の三浦主任研究官にオブザーバーで御参加いただいています。

(事務局紹介)

 続きまして、配付資料の確認をいたします。

 まず、議事次第がありますけれども、配付資料一覧をつけさせていただいています。その下に座席表があるかと思います。

 資料1 水道における微生物対策の実施状況について

 資料2 水道の微生物リスク制御に係る国内外の動向及び情報について

 資料3 地表水を対象とした浄水処理の濁度管理技術を補完する紫外線処理の適用に関する研究

 資料4(委員限り) 水道水の微生物再増殖ポテンシャルの形成過程の評価

 資料5(委員限り) 嫌気性芽胞菌の検査方法について

 参考資料1 水道における微生物問題検討会委員名簿

 参考資料2 水道における微生物問題検討会運営要領

 参考資料3 水道における微生物問題検討会の公開の取扱について

 不足等がございましたら、事務局までお申しつけいただけたらと思います。

 それでは、以降の議事進行に先立ちまして、座長の選出を行いたいと思います。

 参考資料2に本検討会の運営要領がございますけれども、3の ( ) で「第1回検討会において構成員中から選出する」ということになっています。事務局としましては、秋葉委員にお願いしたいと考えていますけれども、よろしいでしょうか。

 

( 「異議なし」と声あり )

 

○鈴木室長補佐

 ありがとうございます。

 

○秋葉座長

 座長をご指名をいただきました秋葉と申します。どうぞよろしくお願いいたします。大任ではございますが、本検討会の目的に沿って、議事進行をしていきたいと思っております。御協力のほどよろしくお願いいたします。

 

○鈴木室長補佐

 では、マスコミの方のカメラ撮りは冒頭だけです。よろしいでしょうか。

 

(報道関係者退室)

 

○鈴木室長補佐

 では、秋葉座長に以下の議事進行をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

 

○秋葉座長

 では、議題に入る前に本検討会の公開の取り扱いについて事務局より説明をお願いいたします。

 

○鈴木室長補佐

 先ほどと同じ参考資料2の運営要領ですけれども、「4.その他」の ( ) で「検討会の公開の取扱いについては、検討会において決定する」とされています。その取り扱いの案を参考資料3につけています。

 本検討会は水道課長の設置する検討会という位置づけでございますが、水道課長が設置する検討会の公開について一律で決まってございます。それに基づきまして、個人情報の保護等の特別な理由がない限り、基本的には公開とさせていただきたいと考えていますので、開催予定、委員の氏名、御職業、会議資料、議事録も公開とさせていただきたいと思います。「ただし」とありますけれども、本日の資料4、5のように取りまとめ前の調査結果、未発表の研究成果等については非公開としたいと考えています。

 

○秋葉座長

 どうもありがとうございました。

 では、早速、議題に入ります。議題 ( ) 「水道における微生物対策の実施状況について」事務局から説明をお願いいたします。

 

○田中係長

 それでは、資料1を用いまして、水道課田中が御説明させていただきます。

 資料1「水道における微生物対策の実施状況について」です。

 まず、遊離残留塩素濃度に関する事故事例、2番目としまして、クリプトスポリジウム等対策の実施状況あるいは調査結果、あと、給水停止等の対応状況について御説明させていただきたいと思います。

 1ページ目は、水道における遊離残留塩素濃度に関する事故事例の御報告です。厚生労働省では、水質事故情報等の提供を事業体等の方々にお願いしているところでありますが、報告された水道水質関連事故事例のうち、平成 24 年から 28 年に発生しました遊離残留塩素濃度が 0.1mg/L を下回る等の塩素消毒に関する事故事例を抽出しまして、表-1に示しました。年によって多い少ないはあるのですが、平成 24 年から 28 年にかけて合計で 21 件の遊離残留塩素濃度に関する事故事例が報告されております。

 個々の事例についての御説明は省略させていただきます。 25 年の岐阜県の1件については、塩素の過剰注入により残留塩素が高濃度で検出されたという事例ですが、それ以外は全て、残留塩素が基準の 0.1mg/L を下回ったという報告となっております。原因は様々ですが、次亜の注入装置の故障、詰まったといった事例、あるいは配水管内での滞留、そういった原因が多くなっております。また、残留塩素低下のみでなく一般細菌の基準超過、大腸菌を検出したという事例もございます。対応としましては、煮沸勧告、飲用停止、あるいは排水、洗管などの対応をとられた事例が多くあります。

 直近の平成 28 年におきましては、6件の報告がなされております。

 水道における遊離残留塩素濃度に関する事故事例の報告としては以上です。

 続きまして、2ページ目は、水道におけるクリプトスポリジウム等対策の実施状況の報告です。図-1につきましては、クリプトスポリジウム対策指針に書かれているもので、汚染のおそれの判定基準、それに対する必要な予防対策をまとめたものです。

 2ページ目の下、3ページ目の表-2には、クリプトスポリジウム等対策の実施状況の 28 年3月末時点の調査結果を示しております。水道事業、水道用水供給事業及び専用水道における対策指針に基づく浄水施設でのろ過または紫外線処理施設の整備や水源変更等によるクリプトスポリジウム等対策の実施状況について、調査を行いました。

 そのうち、表流水、伏流水、浅井戸または深井戸を水源とする浄水施設、全量受水は除いておりますが、その施設数としましては1万 9,961 施設ございまして、そのうち水道原水のクリプトスポリジウム等による汚染のおそれがある施設、つまり予防対策の必要な施設ですが、 7,451 施設。約 37 %となっておりました。このうち、 5,124 施設では既に対策施設設置等の予防対策について実施済みでありました。残る 2,327 施設につきましては、対策施設設置等について検討中である、もしくは検討を行っている段階でございました。

表-2の中では、レベル3の施設が 1,787 施設でありまして、レベル3施設数トータルの 3,361 に比べまして、対応を検討中という施設の割合が多いという状況になっております。このような施設というのは、簡易水道等の小規模な水道事業者によるものが多くなっております。これらの施設では、当面の措置として対策指針に基づき、原水の水質監視を徹底し、クリプトスポリジウム等が混入するおそれが高まった場合には取水停止を行うこととされております。クリプトスポリジウム等の汚染のおそれの判断を行っていない施設数、レベル未判定の施設数が 1,729 施設ありまして、調査対象の浄水施設数の約9%を占めているという結果となっておりました。

 4ページ、5ページは、クリプトスポリジウム等の検出による給水停止等の対応状況ということで、平成8年から 28 年までの対応の事例を示しております。クリプトスポリジウム等が検出され、給水停止等の対応を行ったとして、平成 28 12 月末までに厚生労働省水道課に報告された事例をお示ししております。平成8年の埼玉県越生町上水道における事故以降、水道事業、水道用水供給事業及び専用水道が供給する水を原因とするクリプトスポリジウム等による感染症発生事例は報告されていませんが、平成 22 年度に千葉県成田市において貯水槽での汚染が原因と見られるジアルジア症が発生しております。平成 27 年度は報告事例はなかったのですが、 28 年度におきましては、 12 月末現在で4件の報告がございまして、長野県の簡易水道で2件、千葉市の専用水道で1件、愛媛県大洲市で1件の報告事例が上がっております。

 資料1の説明については以上でございます。

 

○秋葉座長

 どうもありがとうございました。

 ただいまの説明につきまして、御意見、御質問等がございましたら、お願いいたします。どうぞ。

 

○東水道水質管理官

 ちょっと補足しますけれども、1ページの残留塩素のところですけれども、いわゆる健康影響があったというのが平成 24 年に3名がエルシニア腸炎発症ということで、これだけでした。

 2ページ、3ページのところで、私ども問題視しているのはレベル3のところです。指標菌が検出されたのだけれども、原水が地表水以外、つまり地下水とか伏流水なのですが、これについての対策状況が余り芳しくない。3ページの表-2を見ていただきたいのですが、合計の欄でレベル3の施設数が 3,361 施設あるのですけれども、そのうち対応済みが 1,353 、これは、ろ過です。紫外線照射が 235 ということで、約半分しか対応していない。残りの 1,787 、これは対応検討中ということですが、まだ対応されていないということで、レベル3については、地下水、伏流水という理由からなのか優先的に対策が実施されていない、そこが問題と思っています。

 4ページ、5ページ目は、今、御説明いたしましたとおり、健康影響という意味では、平成8年に大きな事故があった以降は、成田市におけるジアルジアが4人発症、これだけでございまして、それ以外については感染症の患者はいないという結果でございました。

 

○秋葉座長

 どうもありがとうございます。

 補足がございまして、冒頭で管理官もお話しされたように、2ページ目のレベル分け、これはこのままでいいのか、そういったことも本検討会での議論の対象となります。特にレベル3につきましては、対応が約半分ということでありましたが、これらを踏まえまして、御質問、御意見等ございましたら、お願いいたします。

 

○泉山委員

 感染研の泉山です。

 表-1に残留塩素濃度の事故に関して一覧になっているのですけれども、これだけ塩素消毒が徹底されていないというのは結構ショッキングなことです。かつて埼玉県の幼稚園で大腸菌に感染して2名亡くなられた事故があって、やはり残留塩素濃度が適切に維持されていなかったところで起きていますので、このような事故が起きないように塩素消毒の徹底は図ってほしいと思って伺っていました。決して人ごとではなく、井戸水が一見安全との誤解がある気がするのですけれども、注意が必要であることに変わりはないのだと思いました。

 それから、話がクリプトスポリジウムのほうになりますと、 2010 年にヨーロッパで最大規模のクリプトスポリジウムの集団感染が発生しておりますので、クリプトスポリジウム問題を適切に対応しているつもりではあるのですけれども、今なお、そういう大規模な事故が起き得るということで、注意したいと思っております。

 私からは以上です。

 

○秋葉座長

 ありがとうございます。

 事務局から何かございますか。よろしいですか。どうぞ。

 

○吉田委員

 感染研の吉田です。

 資料1の表-1について教えていただきたいのですが、塩素の事故が見つかって対応を行うまでどのぐらいの期間かかっているのでしょうか。わかる範囲でお願いします。

 

○田中係長

 個々のケースによって違うというところです。それぞれわかり次第、対応をとっているということになっております。

 

○吉田委員

 ありがとうございます。

 

○秋葉座長

 このことに関連しまして、 28 年度の事故で6件中の3件が静岡県で起きているということでありますが、民営ですとか、専用水道のゴルフ場であるということですけれども、このことにつきましては、県、あるいは市町村のどの部署が対応してどういう措置をとったか、おわかりでしょうか。

 

○鈴木室長補佐

 これらの情報は、厚生労働省に報告という形でいただいたものです。秋葉座長がおっしゃったように、専用水道も民営になりますけれども、民営で起こっている事故が多い状況です。基本的に事故の対応はみずから行われています。対応した後に保健所等に報告がなされたりして、保健所のほうでも確認しているという事例もあるという状況です。

 

○秋葉座長

 わかりました。

 

○黒木委員

 神奈川県の黒木です。

 今の塩素が足りないというものは、それぞれ保健所から厚生労働省への報告ですか。それとも、事業体あるいはそれぞれの民間のところからの、直接の報告はないと思いますけれども、どのような形で報告が上がっているのでしょうか。

 

○鈴木室長補佐

 これらの専用水道や簡水につきましては、都道府県の水道部局が担当になっていますので、そちらに報告されたものが、厚生労働省に報告いただくという形になります。

 

○秋葉座長

 どうもありがとうございます。どうぞ。

 

○船坂委員

 レベル未判定というのはどういうことなのですか。調査してもクリプトスポリジウムの試験をやっていないのか、あるいは施設がどのような状況なのか、あるいは今後、厚生労働省としては9%もあるものをどのようにされていくのかということについてはどうなのでしょうか。

 

○鈴木室長補佐

 クリプトスポリジウムのレベル判定は大腸菌と嫌気性芽胞菌の検査をするようお願いしていますが、それを実施していないとところを未判定としています。厚生労働省としては、まずは検査して判定してくださいとお願いをしているところですけれども、予算もかかることですので、それがなかなか進んでいないというのが現状でございます。

 

○船坂委員

 ありがとうございます。

 

○秋葉座長

 よろしいですか。どうぞ。

 

○黒木委員

 表-3の平成 28 年度だけでも結構ですので、汚染源の調査、汚染源が解明しているかどうかというのはどの程度わかっているのですか。

 

○田中係長

 この4件のうち3件は井戸でして、具体的な汚染源は判明していないと思われます。うち1件の緩速ろ過については、表流水ですので、こちらは上流に何らかの汚染源がある。ただ、それがどういう汚染源なのかは判明されていないというところです。

 

○秋葉座長

 よろしいですか。どうぞ。

 

○橋本委員

 県立広島大学の橋本でございます。

 表-3のことで同じくお伺いしたいのですけれども、以前にもお聞きしたかもしれないですが、これは給水停止の措置をとった事業体ということですね。例えば 28 年の愛媛の大洲市は、緩速ろ過をやっているけれども、原水からジアルジアが出て給水停止を行ったと考えればよろしいですか。

 

○田中係長

 そうです。愛媛県の件に関しては、煮沸飲用する旨の周知を行ったという対策を行っております。

 

○橋本委員

 こちらの事業体は、ろ過をやっているのに、原水から出て給水停止をしたということですね。

 

○田中係長

 この愛媛県の件に関しましては、その時点で濁度の常時監視ができていなかったためにその対策をとりまして、その後の対応として、常時監視できる高感度濁度計を導入する予定であるということです。

 

○橋本委員

 わかりました。

 もう一つ、よろしいですか。長野県辰野町、 26 年と 28 年、これは同じところでしょうか。施設が違うから違うのでしょうね。

 

○田中係長

 確認していないのですが、恐らく異なる所だと考えております。

 

○秋葉座長

 それでは、春日先生、お願いいたします。

 

○春日委員

 東京大学の春日でございます。

 同じく表-3です。原水等からのクリプトスポリジウムやジアルジア検出ということでまとめておられると思いますが、実際、検出濃度というか、検出数というのはどのような感じだったのでしょうか。どこも同じようなものなのか、非常に高いところがあったのか。

 

○田中係長

 長野県の2件と愛媛県に関しましては、 10 L中1個といった状況です。千葉市の専用水道に関しましては、もう少し数が多くて 10 L中5個という報告がなされておりました。 28 年度についてはそういう状況です。

 

○秋葉座長

 よろしいですか。どうぞ。

 

○橋本委員

 それぞれの原水のレベルというのはわかっておられるでしょうか。レベル分けをせっかくしているのですが、レベルが幾つのところで出てきたとか、そのレベルと実際のクリプトの検出との関連性というのが、だんだんデータをとってくるとわかってくるのではないかと思います。

 

○田中係長

 レベルのデータは、今、手元にないのですが、記憶では長野県の2件はレベル1だったと思われます。それまで指標菌の検出がないという報告をヒアリングで受けていた記憶があります。千葉市と大洲市については、レベルがどうだったか、今、手元にはデータがないという状況です。

 

○橋本委員

 そのデータが蓄積されてくると今のレベル判定が有効に機能しているかどうかを判断できる何かになるのではないかと思います。ぜひまとめていただければと思います。

 

○秋葉座長

 ということで、よろしいですか。

 では、次に、進みたいと思います。続いて、議題 ( ) に移りたいと思います。「水道の微生物リスク制御に係る国内外の動向及び情報について」、島崎委員、説明をお願いいたします。

 

○島崎委員

 国立保健医療科学院の島崎でございます。よろしくお願いいたします。

 ボリュームが多くて恐縮でございますが、将来的に我が国の水道行政にもかかわりうるような諸外国、 WHO 等の状況や情報等について取りまとめたものを報告させていただきます。

 全部で4つに分かれております。

 最初に WHO の定量的微生物リスク評価に関するドキュメント( Quantitative Microbial Risk Assessment Application for Water Safety Management )です。昨年の7月に WHO がウェブサイトにて公開しまして、昨年の 11 月末ごろに修正と再公開を行ったものです。既にダウンロードされている方もいらっしゃるかと思いますが、現時点で公開されている版を参照いただきたいと WHO の担当者から聞いております。

 御存じかもしれませんが、 WHO の水・衛生・健康部門は3種類の水質ガイドラインを公開しております。飲料水水質ガイドライン、下廃水を農業利用あるいは養殖等の漁業利用に再利用する場合のガイドライン、湖沼あるいは河川等のレクリエーション水、水浴等に用いる場合のガイドライン、この3つのガイドラインがございます。

 各ガイドラインでそれぞれ用いられる微生物リスク評価の手法を統一させる、調和( harmonize )させると WHO は称していますが、人への健康影響を評価する手法を統一させることを目的としておりまして、各分野の規制者や実務者が定量的な微生物リスク評価の手法を実務に用いて、水系感染症による健康リスクをコントロールする支援とするために作成したものです。

 私ども科学院で、このドキュメントの和訳並びにオンライン無償公開する許諾を昨年秋に取得しており、許諾の期間が1年間と定められているものですから、何とか今年中に和訳作業の完了と科学院のウェブページでの公開を考えている次第です。

 資料 2 1,2 ページ目に目次を転載しておりますが、微生物リスク評価の教科書といってよい内容になっております。

 1章はイントロダクション、2章では代表的な微生物リスク評価の手法が記されております。 2.1 1980 年代以降に用いられた Sanitary inspection という Q&A 方式による評価方法、 2.2 Risk matrix は水安全計画や衛生安全計画に用いられている半定量的なリスク評価、すなわち危害が発生する可能性と重要度を掛け合わせた表による評価方法です。 2.3 QMRA の主な要素が書かれております。

 3章は、水系に関する QMRA のフレームワークということで、 3.1 から 3.4 まで QMRA の各段階の概要が示されております。それぞれ、5章から8章にてより詳しく述べられております。

 4章では、リスク評価において非常に重要な要素である変動性および不確実性について1章を割いて説明しております。

 5章は、リスク評価の初期段階である問題設定という部分で、危害因子の同定、暴露経路の決定、健康影響の設定が書かれております。

 6章が暴露評価で、暴露経路を明確に定めること、また、各曝露経路における挙動を定量的に示すため、汚染源の微生物濃度を定め、水処理などの制御方法による除去効率や不活化効率を定め、最終的に人への暴露量を定めるというプロセスが説明されております。

 7章は人の健康影響に関する評価で、用量反応関係のモデル式等々の説明、 WHO が用いている健康影響の指標である DALY (障害調整生存年数)に関する説明等もあります。

 8章はリスクの特徴づけで、リスクの定量的な尺度や、先ほど申した不確実性係数あるいは感度解析の影響の考慮についても述べられています。

 9章は、規制やリスク管理等の実務にいかにこの手法を用いるかという点に割かれております。

10 章は、まとめです。

ANNEX のところも充実しており、ケーススタディーが豊富に載っておりますし、実際にリスク計算を行う上の数学的・統計的手法に関する章や、個々の微生物・ウイルスに関する用量反応曲線やモデル式等に関するデータも載っております。

 全部で 186 ページとかなりボリュームがありますが、これは我が国の水道関係者にも参考になる部分があろうかと思いますので、ぜひ情報提供したいと考えております。

 続いて資料の3ページ目に移りますが、 WHO から先月の2月下旬に、「 Review of turbidity Information for regulators and water suppliers 」と題した、濁度管理と制御に関する技術文章が公開されております。水道事業の運転管理者や規制者を対象としておりまして、水道原水や浄水処理工程、最終的な浄水における濁度管理の有用性や重要性について情報提供を行うことを目的としています。かつて WHO 飲料水水質ガイドラインの会議の場でも濁度管理に特化した文章を出したいという意向を聞いたことがありましたが、ようやくまとめられたようです。全 12 ページの読みやすいドキュメントとなっております。

 冒頭の要旨を和訳したものを資料に載せております。

 濁度は、極めて利便性の高い指標であって、迅速、安価、常時重要な情報が得られる。濁度の測定はさまざまな状況に適用できる。

 濁度の指標そのものは、公衆衛生上の直接的なリスクを意味するものではないが、水供給のシステム全体で病原微生物の存在や危害イベントの発生を示す有効な指標である。

 濁度は、簡易、正確かつ迅速に測定でき、水安全計画に定める管理措置上の運転モニタリング等にも用いられる。代替水源の比較や、さまざまな管理措置の効果を評価する基準として使える。

 濁度は、飲料水の審美的な、すなわち見た目の指標としても重要である。

 水安全計画などの目標値として広く用いられる濁度と飲料水水質の濁度とは分けて考える必要がある。以上です。

 この文章に示されている濁度の目標値を3ページ目の下の表に載せております。

 水源については、特段の目標値は示されておりませんが、原水濁度を定期的にモニタリングする中で、急激な変化、すなわち急激な濁度上昇が観察された場合は、集中豪雨などの自然現象あるいは人為活動に由来する急激な汚染が発生したということですし、地下水の原水の場合は、何らかの汚染が地下水に侵入したことが示唆されるものです。長期的に濁度が変化していく、すなわち長期的に濁度が徐々に上昇していく場合も、水源の流域内に何らかの変化が起こっていることになり、現場調査などによって是正すべきであると勧告しています。

 浄水処理に関しては、ろ過と消毒にそれぞれ分かれています。

 ろ過に関しては、直接ろ過あるいは急速ろ過の場合、それぞれの月のろ過水濁度の 95 %値が 0.3NTU で、1 NTU は日本の濁度に換算して 1.1 1.2 度程度と思いますので、 0.4 度を下回る程度である、かつ最大値は1 NTU を超えないという目標値が示されております。これはウイルスであれば1~2 log 除去、クリプトスポリジウム、ジアルジアであれば 2.5 ~3 log 除去されるという除去性能に相当するとしております。

 珪藻土ろ過や緩速ろ過の場合は、各月のろ過水濁度の 95 %値が1 NTU 以下であることを目標としており、先ほどの急速ろ過とほぼ同程度のウイルス、クリプトスポリジウム、ジアルジアの除去性能に相当するとしております。

 膜ろ過は、 0.1NTU 未満としております。これは我が国のクリプトスポリジウム対策指針に近い値と思われます。ウイルスに関しては4~7 log 、クリプトスポリジウム、ジアルジアに関しては、大分、安全側の値と思いますが、1~6 log 程度除去されるとしております。これも原水の各病原体の濃度、あるいは膜孔径に依存すると考えられます。

 消毒に関しては、消毒を適用する前の水質ということで御注意いただければと思います。理想的には1 NTU 未満であることが望まれる。なぜかというと、濁度が1 NTU を超える場合、消毒効果が減じられてしまうとの視点です。 CT 値というのは消毒剤の濃度と時間の積ですが、所定の微生物の不活化に必要とされる CT 値を確保するために、消毒剤の注入率あるいは接触時間、紫外線消毒の場合は照射線量を強めることなどが必要と書かれています。大規模・良好な浄水場、すなわち先進国の都市部等の浄水場では、常時 0.5NTU 未満、平均として 0.2NTU 以下を目標とすべきとしていますし、開発途上国や農村などリソースが限られた浄水場では、5 NTU 未満を目標とすることでやむなしとのことです。

 水道管などの配水過程については、これも定期的なモニタリングが前提となりますが、予期せぬ濁度上昇が起こった場合は、配水過程で何らかの障害や汚染が生じたことになります。

 そのほか、給水末端については審美性ならびに家庭内貯留での安全性に関して1 NTU 未満、困難であれば5 NTU 未満という目標値が示されています。

 このように WHO は、ろ過処理を中心とした濁度管理は微生物リスクを制御する上で非常に基本的な浄水処理プロセスであり、この部分についてはより注意を払っていただきたいというメッセージを、水道従事者に向けて発信していると捉えております。

 駆け足で申しわけございません。4ページ目に移らせていただきたいと思います。「水道由来クリプトスポリジウム集団感染と浄水場濁度管理との関連に関する海外事例」ということで、これは 2001 年と大分、昔の事例ですし、クリプトスポリジウムの集団感染事例としては有名な事例ですが、この検討会ではまだ紹介されていないようですので、取り上げさせていただきたい次第です。

2001 年3月下旬から4月上旬にかけて、カナダ国のサスカチュワン州ノースバトルフォード市、人口約1万 4,000 人と、隣接するバトルフォード町、人口約 4,000 人を中心として下痢症が集団発生し、患者の便からクリプトスポリジウム・パルバムが検出されたという事例です。4月 25 日にサスカチュワン州の保健部局が同国保健省に対して疫学調査や浄水場調査等の支援を依頼し、その日に、水道水の煮沸勧告が出されました。調査によって下痢症患者 1,907 名が同定され、うち 275 名のクリプトスポリジウム・パルバムへの感染が確定しております。推定患者数は最大で 7,100 名ということです。

 そのほか、当該の期間、薬局での下痢止めの市販薬の販売金額は5倍程度に達したことや、その地域に旅行あるいは出張等で訪れ、水道水を摂取する何らかの機会があった方の感染リスクが増加したという解析結果が得られております。

 その地域の水道に関してですが、サスカチュワン川の地表水を原水とする浄水場、同河川流域に点在する井戸の地下水を原水とする浄水場、2つがございまして、前者が問題であったということがわかっております。この浄水場は通常処理の凝集沈殿、砂ろ過、塩素消毒で構成されておりますが、3月 20 日のメンテナンス以降、 SCU と称する、高速凝集沈殿池の処理水の沈降率が減少していました。沈降率とは、処理水を1Lのメスシリンダーに5分間静置して何%沈殿したかを示す指標ですが、この値が著しく減少し、かつ浄水中の濁度が 0.2 から 0.5NTU へ増加していたことが確認されております。

 5ページ目の図に非常にわかりやすく示されておりますが、上から順に、その地域で発生した下痢症の患者数です。点線で囲ってあるところ、3月 19 日から4月 23 日が患者の多く発生した時期で、白いバーが確定した患者数です。灰色のバーが疫学的に推定される患者数と思います。

 2段目の棒グラフが下痢止薬の販売金額です。

 3段目が、先ほど申しました高速凝集沈殿池の処理水の沈降率です。それまで5分間静置で8~ 10 %あたりを行き来していたところが、メンテナンスを行って以降ほとんど沈降しない状態になった。正常なフロックができていなかったことにほかならないわけです。

 一番下の段は、縦軸が浄水の濁度ですが、それまで平均 0.2NTU で安定していたのが大分ばらつくようになって、 0.5NTU 前後になっております。

 ちなみに、カナダ国の水道法に関してですが、ろ過水の濁度が 1989 年の時点で 0.5NTU であったのが、例の米国ミルウォーキー州での集団感染の事例を受けて、ろ過水の濁度を常時 0.3NTU 未満とするよう強化されております。以前からもまれに 0.3NTU を超えることが見受けられてはいるのですが、 3 26 日以降、それを明らかに逸脱している浄水水質となっております。これは、浄水処理での不具合が水道に由来するクリプトスポリジウムの集団感染の発生に直結した事例でして、この水源では実際の汚染源までは同定されていないものの、おそらく常時クリプトスポリジウムの汚染があるのだろうと思いますが、そのような原水を用いて濁度管理がうまくいっていないと、このような集団感染が容易に起こり得るという事例でもあると言えます。先ほどの WHO の濁度管理に関する技術文章にもありましたように、水道にとって濁度管理は極めて重要であることが端的に示されたと考えております。

 続きまして、6ページ目の4つ目「水道におけるノロウイルスの消毒に関する最新の知見について」は、オブザーバーの三浦より報告させていただきます。

 

○三浦氏(オブザーバー)

 国立保健医療科学院の三浦と申します。

 私からは、 11 ページ以降にございますスライド4枚割りつけで印刷された資料を用いて、「ノロウイルスの消毒に関する最新の知見について」というタイトルで情報提供させていただきます。

 もちろん水道水源にはノロウイルスだけでなく、他にもウイルスが存在しておりますけれども、感染者数が非常に多く、少なくとも下水中では高濃度で検出されることが知られておりますノロウイルスを中心に消毒に関する情報をまとめてまいりました。

 2ページ目のスライドは、御存じの方も多くいらっしゃると思いますけれども、消毒効果を評価する際に用いられるウイルスの濃度測定方法についてです。主にプラーク法とリアルタイム定量 PCR 法の2つの測定法がございます。

 プラーク法というのは、培養細胞にウイルスを摂取し、感染した細胞領域、色が薄くなっている部分をプラークと呼びますけれども、これを計数する方法です。長所としては、当然、感染性の有無を判定できるという点です。短所としては、プラークをつくらないウイルスについては適用できない、検出感度が悪い、何のウイルスか判定することができない、時間が1週間から 10 日間かかってしまうといった点がございます。

 一方、リアルタイム定量 PCR 法は、ウイルスに特異的な遺伝子を増幅し、蛍光シグナルを検出する方法です。長所としては、培養できないウイルスにも適用可能で、感度がよく、特異性も高く、短時間、2~3時間程度で測定できるという点がございます。しかし、短所としては、遺伝子が存在すれば検出されてしまい、感染性の有無については判定できません。ヒトノロウイルスに対してはこれまで培養法が確立されていませんでしたので、リアルタイム定量 PCR 法によって遺伝子数が測定されてきました。

 3ページ目のスライドに移りますが、ノロウイルスが感染性を有しているかどうか判定したい場合には実際にボランティアに飲んでもらうという方法がとられてきました。こちらにはその一例を示しています。 Seitz らが 2011 年に発表したデータですが、地下水試料にノロウイルス GI.1 という遺伝子型の 8FIIb 株を添加し、暗所で保管した場合に、グラフの横軸が経過日数になっているのですけれども、0日目から7日、 14 日目までは2人ずつに飲んでもらって、2人とも感染しています。黒丸が感染を示しています。 21 日目の試料は4人に飲んでもらって1人感染、 28 日目は1人に飲んでもらって1人感染という結果です。そして、 61 日目のちょっと間を置いた試料は2人中2人が感染するという結果で、ノロウイルスが環境水中において非常に安定して存在することを実証するデータになっております。

 下の実線の折れ線グラフは、リアルタイム定量 PCR 法によって測定された遺伝子数の対数減少値になっておりまして、ずっとゼロ付近を上下しておりますけれども、 400 日を過ぎて初めて減少する傾向が見られたということです。もちろん、これがウイルスの不活化を直接示すことにはなりませんけれども、このように遺伝子数は減少していくことが報告されております。

 4ページ目のスライド以降、最近の知見について紹介させていただきます。こちらに示したのは、ヒトノロウイルスの培養法について 2014 11 月に Science に発表された論文です。ノロウイルスは小腸で感染し増殖することが知られておりますが、その際に、上皮細胞に発現している組織血液型決定抗原、 HBGA と呼ばれておりますけれども、この糖鎖に結合すると考えられております。この研究グループでは HBGA を産生する腸内細菌と培養B細胞を用いてノロウイルスの培養に成功しました。また、最後から5番目の著者に Dr.Wobus という方がいらっしゃいますけれども、こちらの研究グループでは、B細胞培養系を用いてヌクレオシド類似体がヒトノロウイルスの複製を阻害することを実証しており、この培養系の応用性があるということを 2016 年に発表しております。

 5ページ目のスライドは、ベイラー医科大学の Dr.Estes の研究グループの成果で、感染研の村上先生も著者の一人になっておられますけれども、同じく Science に発表された論文です。幹細胞から人工的に作製したヒト腸管様組織、エンテロイドと呼ばれますけれども、こちらにヒトノロウイルスを感染させて培養するという技術です。 2016 年9月に発表されたばかりの成果でして、国立感染症研究所やアメリカの国立衛生研究所( NIH )など、国内外の研究機関において現在この手法で研究が進められている状況でございます。

 以上のように新しい培養法が提案されておりますが、これまでヒトノロウイルスの消毒による不活化効果については、6ページ目のスライドに示した主に4つの代替ウイルスを用いて評価されてきました。全てヒトノロウイルスと同じカリシウイルス科のウイルスでして、ネコカリシウイルスとイヌカリシウイルスの2つはベジウイルス属、マウスノロウイルスはノロウイルス属、チュランウイルスはレコウイルス属に属しております。それぞれ、ネコの呼吸器感染症、イヌの下痢症、マウスの脳炎、髄膜炎、肺炎、肝炎、そして、サルの下痢症を引き起こすことが知られております。それぞれの宿主の腎やマクロファージに由来する培養細胞を用いてこれらのウイルスが培養されておりまして、冒頭で紹介したプラーク法によって感染価を評価することができるウイルスです。ウイルス粒子の直径が 35 36nm とヒトノロウイルスと同等ですが、ゲノムである RNA の長さは 6,700 8,500 塩基と多少幅があります。

 この4つのウイルスの中で、ネコカリシウイルスとマウスノロウイルスについて消毒による不活化効果のデータが蓄積されつつあります。チュランウイルスは、比較的最近、 2008 年に報告されたウイルスでして、ヒトノロウイルスと同様に、先ほど申しました HBGA に結合することが知られていることから、ヒトノロウイルスに環境中での挙動が最も近い代替ウイルスとして、食品の消毒や、カキへの蓄積性・生残性について研究が進められております。

 7ページ目のスライドには、ほんの一例ですが、チュランウイルスの次亜塩素酸による不活化を調べた結果を示しました。ステンレス表面に試験ウイルス液を滴下し、乾燥させて、 200 または 1000ppm の次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加し、5分間静置し、不活化効率を評価した結果です。

 こちらの数値は、感染価の対数減少値を示しております。 AiV がアイチウイルス、 FCV がネコカリシウイルス、 MNV がマウスノロウイルス、 PEC がブタ腸管カリシウイルス、 TuV がチュランウイルスです。 1000ppm の次亜塩素酸ナトリウム溶液で5分間処理することでネコカリシウイルスが 5.3 log 不活化し、ほかの代替ウイルスが 1.2 1.4 log 不活化したと報告されております。水溶液中に分散させた状態でのチュランウイルスの不活化効果についてはまだ研究の報告はございませんが、今後、データが蓄積されていくと考えられます。

 8ページ目は、次亜塩素酸によるマウスノロウイルスやネコカリシウイルス等の、また比較して報告されていたその他の病原ウイルスの不活化について整理しました。

 表の2列目の Source water というのがウイルス液を添加した試験水で、 Lake が湖沼水、 River が河川水、 Ground が地下水、 PBS がリン酸緩衝溶液になっております。試験水にウイルスを懸濁させて、そこに次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加するという消毒の実験が行われております。

 次の列に示したのが、先ほど説明しておりましたけれども、 CT 値という値で、濃度掛ける接触時間で示される指標です。 2 log 3 log と書いておりますが、それぞれ 2 log 3 log 不活化するのに要した次亜塩素酸ナトリウム水溶液の CT 値になっております。

 まず、マウスノロウイルスを見てみますと、 3 log 不活化するのに必要な CT 値が 0.01 未満から 0.03 となっております。範囲で示しておりますのは実験条件の違いによるもので、研究者によって試験水の pH 7 8 で、ある程度振って検討が行われておりますので、それぞれの論文で報告されている値の範囲をそのまま示しております。

PBS に分散させた状態で 0.2 3 という北島らの報告もございますが、これを除くとマウスノロウイルスは大体、 0.01 未満から 1 以下の範囲で 3 log は不活化されるという傾向が報告されております。これは、アデノウイルスの耐性と同程度です。そしてマウスノロウイルスは、コクサッキーウイルス、エコーウイルスよりも次亜塩素酸処理に対する耐性は若干低いという傾向がございます。

 ヒトノロウイルスの塩素耐性についてはリアルタイム定量 PCR 法で評価した結果しか報告はないわけですが、こちらについてはマウスノロウイルスと同程度であり、ネコカリシウイルスよりも強いと報告されていますので、ヒトノロウイルスはマウスノロウイルスと同様に不活化されると考えられます。

 9ページ目は、モノクロラミンによる病原ウイルスの不活化についてまとめております。次亜塩素酸と同じ酸化による不活化ですので、 CT 値は異なりますが、ウイルスの耐性の傾向は同様になっております。ネコカリシウイルスの研究事例はありませんが、マウスノロウイルスについては、アデノウイルス、コクサッキーウイルスB、エコーウイルスと比較してモノクロラミン処理に対する耐性が若干低いという傾向が次亜塩素酸と同様に報告されております。ヒトノロウイルスの耐性をリアルタイム定量 PCR 法で評価した研究事例は今のところございません。

 続いて 10 ページ目のスライドには、波長 254 nm の紫外線による病原ウイルスの不活化について整理いたしました。 2 log または 3 log 不活化するのに必要な紫外線照射量について示しております。単位は mJ/cm2 になっております。マウスノロウイルス、ネコカリシウイルス、イヌカリシウイルスは、アデノウイルス 40 やエコーウイルス 12 型と比較して紫外線処理に対する耐性が低く、 30 mJ/cm2 の処理で 3 log 以上不活化されるという傾向にございます。クリプトスポリジウムは 10 mJ/cm2 3 log 不活化されると言われておりますが、ウイルスはクリプトスポリジウムよりは紫外線照射に対する耐性が高い傾向にあります。

11 ページ目に、リアルタイム定量 PCR 法で評価したヒトノロウイルス GII.4 型の紫外線による遺伝子数減少効果を示しました。横軸が紫外線の照射量、縦軸が対数減少値になっております。 3 log 遺伝子数が減少するところに破線をつけ加えさせていただきましたが、こちらに要した紫外線照射量はマウスノロウイルスが 400 mJ/cm2 前後、ヒトノロウイルスが 1800 mJ/cm2 となっております。ヒトノロウイルスはマウスノロウイルスよりも紫外線処理に対する耐性が高いと彼らによって指摘されていますが、実験に用いられた試験ウイルス液は希釈されてはいるものの、マウスノロウイルスは培養上清、ヒトノロウイルスは培養不可能なウイルスですので、ふん便懸濁液になっております。したがって、グラフの傾向がウイルスの本質により生じたかどうかは今のところ不明で、今後、データが蓄積される必要があります。

 以上、駆け足で知見を整理してきましたが、まとめますと、1つ目、次亜塩素酸による処理について、病原ウイルスは CT 値が 10 程度で 3 log 以上不活化されるので、例えば 1 mg/L の次亜塩素酸ナトリウム溶液の場合では 10 分間処理することにより 3 log 以上不活化されることになります。

 2つ目、次亜塩素酸処理によりマウスノロウイルスと同様に遺伝子数が減少するヒトノロウイルスは、同様に不活化されると推測されますが、近年確立しつつあるヒトノロウイルスの培養法を実際に用いてヒトノロウイルスの感染価の減少が正確に評価されることが待たれます。

 3つ目、マウスノロウイルスは、アデノウイルスやエンテロウイルスと比較してモノクロラミン処理に対する耐性が低く、 10 mg/L 10 分間処理することにより 3 log 以上不活化されます。

 4つ目、マウスノロウイルスは、アデノウイルスやエコーウイルスと比較して UV 処理に対する耐性が低く、 30 mJ/cm2 の処理で 3 log 以上不活化されます。

 5つ目、ヒトノロウイルスは、水道システムにおいてほかの病原ウイルスと同様に消毒されていると推測されますが、今後、外国人観光客の増加や、自由貿易協定・経済連携協定の進展により病原ウイルス等が人や食品とともに諸外国から移入する機会が増え、感染症リスクが高まる可能性もございます。水道水源における病原ウイルスの汚染レベルや濃度変動に関する調査研究事例は少ないので、今後、データを蓄積していく必要があると考えております。

 以上でございます。

 

○秋葉座長

 どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまの島崎委員、オブザーバーの三浦さんの説明に対しまして、御質問、御意見等ございますでしょうか。

 

○春日委員

 島崎先生の御報告にあったカナダの事例についてです。5ページ目のところで高速凝集沈殿池の沈降性が悪くなって、そのときの濁度の上昇と感染事例に非常に整合性があるという御報告でした。沈降性の Settling Sedimentation というデータを見ると、3月 19 日にすとんと落ちて悪くなって、その後、復活してくるのですが、これはなぜ悪くなったのかということは何か検討とか、ある程度明らかになっているのでしょうか。ブランケットを入れかえる、立ち上げ直しているとか。

 

○島崎委員

より詳細な報告書がサスカチュワン州のところに載っていまして、かなり分量が多いものなのですが、そこに載っていたと思います。要は、メンテナンス以降にうまく機能していなかった状況にあったようです。それを修繕した。泉山先生のほうがお詳しいかもしれません。

 

○泉山委員

 泉山です。補足します。

 年に1回、高速凝集沈殿池を掃除するのだそうです。時期を選んで差し支えないところでするようですが、たまたまこの時期に掃除をしてしまって、高速凝集沈殿池の利用を止めてしまった。(補足:高速凝集沈殿池の再スタートが上手く行かなくてフロック形成ができず)濁質を除去するための凝集沈殿ができていなくて、ごみを全部ろ過池に送ってしまって、みんなで汚れの入っている水を飲んでいたということのようです。結論というか、凝集沈殿ろ過は大事だなと思わされました。

 

○島崎委員

 さらにその補足ですけれども、報告書には、逆洗浄後の初期ろ過水の捨水を行う手段が一切なかったようですし、濁度も常時監視ではなかったようで、もともと様々な問題を多く抱えていた浄水場であったようです。

 

○春日委員

 では、複数ある系統の一つどこかの系統だけをとめて交換ということではなくて。

 

○泉山委員

 この浄水場では、残念ながら高速凝集沈殿池は1系統しかなくて、掃除をしたいときは止める方法だったようです。ろ過池からは2系統あったようですが、どういうわけか高速凝集沈殿池は1系統しかなかったということのようです。

 

○春日委員

 ありがとうございました。

 もう一点、島崎先生の turbidity の報告書の件ですが、改めて考えてみると、今もお話があったとおり、逆洗排水を原水着水井に一部戻すというところが結構あると思います。そうすると、3 log 、4 log とか、かなり取れている中で、そういうものが一体どういうフェートなのかを把握することは重要だと思います。中で濃縮していたものが、処理不良によって漏洩することもあり得るのかもしれません。そういう意味でも、やはり濁度管理は大事だなと改めて思ったところです。

 

○島崎委員

 そのとおりだと思います。その様な場合には濁度管理をしっかりしておく必要がありますし、クローズドシステムと言われる、排水処理水の上澄みを原水にまた戻すような場合、排水処理の部分がうまく機能していないと、微生物リスクという面からは注視しなければいけない場所となり得るように、個人的には思います。

 

○泉山委員

 今、春日先生の御指摘があった濃縮されたものがどうなってしまうかなのですが、浄水場では、有収率、水の有効利用を考慮して、着水井に汚れた濃縮物を戻してしまって、もう一度、水処理をして水をつくろうという努力をされているようです。ところが、濃縮されていますから、危険性があるわけです。もし河川水に余裕があれば、濃縮されたものを捨ててしまって、河川水からどんどん取水すればいいのですけれども、残念ながら水の利用に制限があるとか、水が足りないとかいうことになると、少しでも水の再利用を進めようと濃縮物も頑張って使ってしまっているようです。場所によると思いますが、水に余裕のあるところは、濃縮されたものはできれば捨ててしまって、新しい水から水道水をつくったほうが当然安全性は高い。無理をして水を使い回そうという努力をしているようですが、そこまで無理はしなくてもいいのではないかという印象を持っています。

 

○勝山委員

 広域水道企業団の勝山です。

 浄水場は、今、クローズドシステムというのが主流になっているというか、水をなるべく捨てないで再利用していくという状況になりつつあります。ですから微生物問題が出てしまいますと、どんどん濃縮して、より悪化するような状況になることは多々あります。ただ、下水放流とかも行っていますが、コストなどがかかる問題がありますので、泉山先生がおっしゃったように、水の収支ということを考えると、新しくできる浄水場はクローズドシステムをとることが多くなってきている現状だと思います。

 

○秋葉座長

 そういった浄水場は非常に多いですね。操作とか管理を徹底しなければならないと思います。

 

○黒木委員

 このカナダの事例の報告書の中に日常的にクリプトスポリジウムの検査をしていたという記載があるのか、もしそれがあればどのぐらい検出されていたかということはありますでしょうか。

 

○島崎委員

 報告書本編の中身を十分にレビューできておりませんが、概要版のほうには、微生物に関する基準は守られていたとの記載があります。恐らく定期的に測定しているのは大腸菌と残留塩素と思いますので、クリプトスポリジウムの検査を定期的に行っていたのではないだろうと想像しております。

 

○泉山委員

 補足します。上流側に牛がいて、畜産排水があるということはわかっていたようです。汚染源があって、浄水場はその汚染の影響を受けるということがわかっていたのだと思います。そういう意味では、少し油断があったのかなという印象を持ちました。

 

○秋葉座長

 どうぞ。

 

○黒木委員

 そうすると、患者から検出されたクリプトスポリジウムのタイピングまでは書かれていない。

 

○泉山委員

 今、手元に資料がなくてわからないですが、クリプトスポリジウム・パルバムだったのかもしれません。

 

○秋葉座長

 よろしいですか。そのほか、どうぞ。

 

○吉田委員

 感染研の吉田です。

 三浦先生に伺いたいのですが、先生のお示しになったスライドの8枚目、不活化のデータのサマリーです。わかる範囲で教えていただきたいのですが、私はエンテロウイルスのほうが専門なのですが、凝集することが非常に多い。多分、水道のほうでも凝集の効果というのは調べられていると思いますが、こうした塩素の効果を調べるとき、ウイルスを事前に分散させてから効果を調べるものなのでしょうか。一定の標準的な方法というのが国際的にございますか。

 

○三浦氏(オブザーバー)

 今のところ標準的な方法というのはございませんが、研究者によってそこまで気にしているかどうか差があり、報告している値にもやはり幅があるというのが現状です。

 

○吉田委員

 わかりました。ありがとうございます。

 

○秋葉座長

 そのほか何かございますでしょうか。よろしいですか。

 それでは、続きまして、厚労科研の報告です。島崎委員、説明をお願いいたします。

○島崎委員

 引き続き、資料3を使いまして、報告させていただきたいと思います。

 これは、科学院が主体となって実施した研究ではございません。平成 26 年度から今年度まで実施された厚生労働科学研究費補助金、健康安全・危機管理総合研究事業の研究班の報告資料でございます。研究代表者は水道技術研究センター理事長の大垣眞一郎先生で、私自身がその研究分担者に入っております。

 先月、成果発表会がございまして、その際の要旨と発表用のパワーポイントを載せております。パワーポイントを用いて、当厚労科研の成果について簡単に報告させていただきたいと思います。

 パワーポイントの2枚目です。この研究をなぜやったかということなのですが、御存じのとおり、水道水源の地表水には、クリプトスポリジウム等の塩素に対して耐性を持つ病原微生物が存在しており、これによる水系感染症の懸念があるということです。

 平成 19 年にクリプトスポリジウム等対策指針が策定されて、そのようなレベル4の水源を原水とする場合は必ずろ過を行い、ろ過水濁度は常時 0.1 度以下を保つとなっております。

 先ほど御報告がありましたとおり、対策がとられていない、あるいは未だ検討中の水道施設は依然として数多くあります。全体では 33 %、先ほど管理官がおっしゃったように、レベル3に関しては半分前後がまだ未対策という状況です。

 もう一点、これは水道技術研究センターがこの研究より前に行った、各水道事業体へのアンケート結果ですが、ろ過水濁度を常時 0.1 度以下とする濁度管理に困難を感じるケースが半分近いという回答が得られております。

 ここが当研究の一つの動機となっており、もちろん濁度管理は、先ほどの WHO の技術文章にもあるように、浄水処理の基本中の基本と申し上げてよろしいかと思うのですが、それを補完する形で紫外線処理を導入する場合の、原水水質や紫外線処理施設の要件について研究するという主旨です。「地表水を対象とした浄水処理の濁度管理技術を補完する紫外線処理の適用に関する研究」と題して、3年間実施いたしました。

 研究目的として、我が国の地表水の水質に即した具体的な紫外線処理の施設要件、維持管理の要件について、実際の原水を対象とした研究を行って実務に即した提案を行う。これにより水道水に起因する健康リスクのさらなる低減に資するということを挙げております。

 3枚目、このような研究課題とスケジュールで実施いたしました。

 1番目の課題が濁度管理等における課題の抽出ということで、我が国の各水道事業体へのアンケート調査並びにヒアリング調査によって、地表水を原水とする浄水場を対象として、濁度管理をする上での実態把握及び困難等の課題を抽出、次に、地表水以外の地下水、湧水等を原水とした、現在、紫外線処理設備が入っている浄水場を対象に、紫外線処理設備の維持管理の実態把握及び課題を抽出することを初年度から二年間やっております。

 2番目は、主に室内実験ですけれども、我が国の地表水の水道原水の濁度成分を分析し、原水水質の特性が紫外線処理の照射効果や病原微生物の不活化効果にどの程度影響を及ぼし得るのかという影響評価を行っております。

 3番目が、照射手法及び設計諸元の検討ということで、実際の地表水の濁度変動に対応した、所定の指標微生物の不活化に必要となる紫外線照射線量を室内実験によって明らかにしております。その結果をふまえて、紫外線処理設備の導入における照射手法や、設計諸元を検討することを挙げております。

 さらに、紫外線設備の維持管理に関する留意事項も検討した上で、最終年度に、研究成果を取りまとめております。

 4枚目に、実際にクリプトスポリジウム等対策として濁度管理を実施する上での課題点を挙げております。1つ目は、濁度管理が現行の施設では難しいケースが多い。すなわち、ろ過池洗浄後に通水を再開した直後の一時的な濁度上昇への対策のため、再開当初の水を捨てる捨水や、スロースタート等の設備を新たに設けなければいけないという状況が少なからずあります。

 特に、クリプト対策指針前に設計された浄水施設では、施設の改造を行う際に、スライドの写真のように設置場所が確保できず無理やりろ過池管廊に捨水施設を設けたという事例もございます。

 原水濁度が低い施設においては、大量の凝集剤を注入しないとろ過水濁度が 0.1 度まで下げられない。それに伴って浄水スラッジも相当増大する。さらに、非常に脱水性が悪いスラッジが増えてしまう。そういった施設は、もともとそのようなスラッジの処理を前提としていなかったので、汚泥処理施設の容量が足りず、バキュームカーを導入しての排泥を要するという追加の費用が発生した事例も聞いたところです。5枚目のスライドです。これは北海道内の水道事業体で、地表水の原水濁度がグラフの左側の縦軸です。紫外線吸光度は右側の縦軸でして、原水の濁度と紫外線吸光度、ろ過水の濁度と紫外線吸光度を、それぞれ 2013 年度は上半分、 2014 年度は下半分にプロットしております。

 これは後ほど出てくる紫外線処理の適用条件とも関わりますが、原水の濁度は、時折、 150 度を超えることが起こるのですが、ろ過水の濁度は常時 0.1 度未満で管理されていて、ほとんどX軸に張りついている状況です。

 一方で、原水の紫外線吸光度は、高濁度の発生とは関係なく、紫外線吸光度 1.25/50mm を超えることがあります。ろ過水の紫外線吸光度は 0.1/50mm 程度でコントロールできています。現行のクリプトスポリジウム等対策指針における処理対象水の水質としては、紫外線吸光度が 0.125/10mm 未満であると規定されており、紫外線を吸光する物質が多過ぎると処理上問題となりますので、濁度もさることながら、紫外線吸光度の推移に注目することも必要であることが見えてきました。

 6枚目は、私自身がまとめたものですが、諸外国の地表水を対象とする紫外線処理の適用条件等について文献調査を行いました。地表水と申しましたが、日本を除いては、米国、ドイツ、オーストリア、英国、フランスともに、地表水と地下水とを分けて設定されてはおりません。日本に関しては、現状、基本的に地下水等への適用が想定されて、原水濁度は2度以下となっております。地表水の 0.1 度というのは、あくまでろ過水の濁度として 0.1 以下であり、ろ過処理を施した上で、追加的に紫外線を導入することは差し支えないということです。この 0.1 度は必ずしも紫外線の適用条件ではないことに、御注意いただければと思います。

 濁度に関して言えば、米国の 5NTU というのは表流水処理規則( Surface Water Treatment Rule )におけるろ過を行わない施設の消毒前の要求値ですので、紫外線の適用には限らない点に注意していただきたいのですが、他国ではドイツが 0.3FNU 、フランスが 0.5FNU 、英国が1 NTU FNU NTU は、同じ濁度の単位です。およそ 1.1 1.2 倍程度にすれば日本の濁度になる見当となります。

 紫外線照射量に関しては、日本が水量の 95 %に対して 10mJ/cm2 ですけれども、米国は特段定められておりません。クリプトの4 log 不活化あるいはウイルスの4 log 不活化といった要件に応じて照射量を定めております。ドイツやオーストリア、フランス等は、枯草菌に対する RED (換算等価紫外線照射量)の値としてだと思いますが、 40mJ/cm2 という値で、これは日本の「水量の 95 %に対して 10mJ/cm2 」と比較してほぼ同程度の照射量だと紫外線消毒の専門家から伺っております。

 紫外線透過率は、微生物の不活化効率に与える影響の面ではかなり大きいところでして、我が国では 75 %以上、ドイツでは 70.8 %以上、フランスでは 80 %以上と定められております。

 色度、硬度に関してはほかの国ではいっさい規定がございません。

 鉄、マンガンは、主に紫外線ランプスリーブへの汚れ等を防ぐという観点ですが、我が国よりもドイツ、フランスのほうが厳しく、半分以下の値が定められております。

 このように、他国では地表水、地下水にかかわらず、統一的な紫外線処理の適用条件が見られるということです。

 7枚目は、海外で水道に由来するクリプトスポリジウムによる集団感染が発生して恒久措置として紫外線を導入したという事例です。出典は「 Journal of Water and Health 2010 年の8巻2号ですが、これは英国の北西ウエールズ地方での事例で、 2005 年秋に 218 名の患者が発生したものです。日本での AA 類型に属するような非常に良好な水源とのことで、浄水場も砂ろ過と塩素消毒のみであり、凝集処理は必要がない水質と判断されていたと書かれてあります。

 この事例では、実際に水道水中からクリプトスポリジウムが検出されているのですが、ウエールズでは水道水中の上限濃度が定められていまして、 10 L中1オーシスト、 24 時間以内の 1,000 L中の平均値という規制値です。実査にはこれを下まわる、最大で 0.08 オーシスト /10L 、規制値未満の濃度であったということです。とはいえ、水道が原因になっているのは間違いないのですが。また、当時の規制では、実際にろ過等によって物理的に除去する以外のクリプトスポリジウム対策は認められていなかったところ、紫外線がクリプトスポリジウムの不活化に非常に効果があるという科学的な根拠と、短時間で浄水場に導入できる手法であるということで、科学者の委員会が水道会社に紫外線処理の導入を勧告したという経緯があります。

 次のスライドで赤く強調してある部分ですが、紫外線処理を導入した後の 2006 年1月末に煮沸勧告が解除されております。

 室内実験のほうですけれども、さまざまな濃度の模擬的な原水を用意いたしまして、紫外線照射量が濁度の変動にどの程度影響を受けるのか検討いたしました。9枚目のスライドです。左半分の図は、吸光度が1となるカオリンの懸濁液を用意して異なる濃度で添加しております。上から順番に、液体培地のみ、2番目が 100mg/L でカオリンを混和したもの、3番目が 250mg/L 、4番目が 350mg/L と並んでおります。すなわち濁質を入れるほど、濁度が高くなるほど、予想とは逆の傾向となり、大腸菌ファージ MS2 log 生残率はより低くなった。つまり、より紫外線照射の効果が高くなったということを示しています。後ほど理由はお示ししたいと思います。

 右の図は、積分球式の吸光光度計を使って積分球式の紫外線量を評価したもので、異なる原水の濁度における不活化速度を一つの直線に乗る形で表現できたというものです。

 スライド 10 枚目右下の平均紫外線照度式のAのところに、積分球式法で測定された紫外線吸光度を代入すれば、このように評価できるということですが、カオリン懸濁液だけではなく、下水流入水の吸光度を調整して混和すると、同じように高濃度の濁質を与えるほど、紫外線が散乱する効果によって逆に不活化の効率が高くなる、そのような結果が得られています。もちろん紫外線を遮蔽する効果もあるのですけれども、それ以上に光を散乱させる効果が大きいため、ファージ MS2 の不活化速度が速くなるという結果が9枚目、 10 枚目に示されております。

11 枚目では、さまざまな濁質を模擬した粒子、カーボンブラック、白色ポリスチレン、黒色ポリスチレンを用い、そのうち白色ポリスチレンは、粒径が 0.2 μ m 1.0 μ m 2 種類を用いております。粒子の色とはあまり関係なく、粒径の大きさのほうがより紫外線の透過率に影響する。粒子個数が 1mL 当たり 10 の8乗、 10 の9乗あたりになってくると、直径1μ m の白色のポリスチレン粒子が紫外線透過率を相当下げるということがわかったのですが、 0.1 0.2 μ m 程度の粒子であれば、色にかかわらず、落ち方は変わらない。粒径が大きければ大きいほど、より紫外線を遮蔽するということがこのグラフからわかっております。

12 枚目は、所定の濁度と紫外線透過率の範囲の間では、不活化速度定数と粒子の種類および濃度に余り差が見られなかった、統計的な有意差は見られなかったということです。水中にさまざまな種類の懸濁粒子が存在していても、先ほどと同じように、紫外線の吸光度を考慮すれば、ターゲットである病原微生物への、この表では大腸菌ファージ MS2 ですが、不活化速度への影響はないと言えます。繰り返しになりますが、粒子による紫外線の散乱により、逆に不活化効果が高まる場合もあるということが大きい点です。

 濁度と不活化速度定数との関係をまとめたものが 13 枚目のグラフでして、横軸が濁度、縦軸が濁度 0.01 のときの不活化速度定数を k0 とした場合の相対的な不活化速度定数を表しております。左側の 0.01 ~2度の範囲、これは現行の地下水の紫外線消毒に適用される原水の濁度ですけれども、この範囲では、大腸菌ファージ MS2 に対する不活化速度定数への影響はほとんどない。2度を超えると、右上の領域、すなわち、先ほど申し上げた散乱の効果によって不活化速度が上昇するケースが生じます。5%の有意差で、より安全側を考慮すると、濁度 50 度の付近にある黒丸のプロットになるということです。従って、かなり安全側の評価ではあるのですが、濁度2度程度であれば、特段、濁度による MS2 不活化速度への影響は見受けられないと研究班では結論づけております。

 具体的にどのような濁質成分が紫外線の散乱効果を起こすのかという検討が、 14 枚目、 15 枚目です。これは、さまざまな種類の濁質、すなわち、カオリン、活性炭、カーボンブラック、ベントナイト、特定の浄水場の浄水汚泥を用意して、横軸に可視光の散乱分率、縦軸に UV 光の散乱分率をプロットしたものです。

 活性炭やカーボンブラックはほとんど散乱しないというのは想像に難くないのですが、浄水場の汚泥や高濁度の原水は、可視光及び UV 散乱光とも同程度の散乱分率を持つということです。B浄水場のみ、全く UV 光を散乱しないという独特な結果が得られており、可能性として凝集剤の種類が異なることが考えられます。図の右下にベントナイトのX線回折の結果を示しておりますが、黒く丸で囲ってあるところが石英の結晶構造に近い部分であり、これが紫外線や可視光を散乱させている原因であると判明しております。

15 枚目に、ベントナイト以外の濁質成分のX線回折結果を示しております。共通して、回折角度 26.4 °を持つ部分、これは石英の結晶に相当するのですが、こういった成分が紫外線を散乱させて不活化効率を高める効果があるということで、高濁度だから紫外線が遮蔽されるとは限らない。特に濁度2度程度であれば、全然影響を受けないことがこの研究を通じてわかったところです。

16 枚目は、結論です。繰り返しになりますが、原水の濁度はあまり影響がない。むしろ紫外線の透過率が非常に紫外線処理への影響を及ぼす。ある意味、当然といえば当然かもしれません。地表水の水質変動は、紫外線処理装置の前処理である、ろ過処理で吸収できるだろうと考えておりまして、この研究では、フロー図の黒丸のところの水質が、地下水、地表水を問わず、濁度2度以下、色度5度以下、紫外線吸光度 0.125 未満または紫外線透過率 75 %を超えるとの要件であれば、問題ないという結論に至っております。

 濁度よりも、むしろ紫外線透過率を常時モニタリングすることが、地表水を対象として、既存のろ過処理の後段に紫外線消毒施設を入れる場合に、重要な要件だということです。このような結果を、さまざまな国内外等の学会等で発表しております。

 雑駁でございますが、以上です。

 

○秋葉座長

 ありがとうございました。

 それでは、御質問、御意見ございますでしょうか。

 

○東水道水質管理官

 ちょっと補足します。今の私どものクリプトスポリジウム対策について、地下水や伏流水については濁度 0.1 または UV でも可ということですが、地表水については基本的に濁度 0.1 を守る、そういうルールなのですけれども、今回の厚労科研の結論では、濁度は2度、今の水質基準が2度なのですが、2度であれば、逆に散乱効果があるので、 UV だけでも問題ないではないか、そういった結論なのかなと思っています。本当にこれが適用できるかどうかについて、微生物学的観点から、あるいは現場の浄水場で検討するに当たって、もうちょっとこういうデータも必要とか、そういった御意見、御示唆をいただければありがたいと思っています。

 

○秋葉座長

 それでは、管理官のコメントに対して何かございますでしょうか。濁度が2度ぐらいですと散乱して効果が上がるという話ですが、それと、紫外線の場合は透過率が非常に効いてくるという話です。今のところ、そのレベルに合わせると、現行では地下水、湧水等に関しては紫外線の導入は固まっていますけれども、地表水は今のところは導入することになっていないということです。そのことに関して何かございますでしょうか。

 3年間、厚労科研を実施した成果ですけれども、今後の展開は何かありますか。

 

○島崎委員

 水道技術研究センターで紫外線に関して何か後続の研究をやるという話は特に聞いてはおりませんが、本研究で得られた知見を、センターが主催するセミナーや講習会にて広げて、紫外線消毒に関する興味関心を高めていきたいという話を聞いております。

 個人的には、この研究とは別の視点ですけれども、諸外国、特にカナダやアメリカは日量 100 万トン規模の浄水場にもかなり大規模な紫外線消毒施設が入っているところがありますので、海外の動向は引き続き注目していきたいと考えております。

 

○秋葉座長

 引き続き検討していくということですね。

 そのほか何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

 では、次に移りたいと思います。議題 ( ) の「最近の研究の動向」につきまして、資料4で春日委員から御説明をお願いいたします。

 

○春日委員

 かしこまりました。私のほうからは、手短ですけれども、「水道水の微生物再増殖」ということについての研究の御報告をさせていただきたいと思います。

 最近、 IWA でもこういう微生物、病原微生物ではなくて水道水中における微生物の動態であったり、生態というものに非常に関心が高まっておりまして、昨年、スイスのアローザにおいて会議が開かれました。特に残留塩素を使っていないようなオランダであったり、スイスであったり、水の中にそれなりに菌数が多いようなところで、自分たちが飲んでいる水の中の微生物を把握したいという動機づけからこのような研究が進んでいるところであります。

 今日お話しするのは微生物の再増殖についてです。浄水場でしっかりと処理して残留塩素を保持した形で出しても、先ほど来お話がありましたとおり、家庭内配管とか水が滞留するようなところで塩素は容易に消失し、微生物が再増殖してしまうわけです。微生物再増殖を制御していくにはどうしたらいいのかということを根源的に考えていくような研究を御紹介したいと思います。

 まず、2ページ目、高度浄水処理における微生物リスク制御の CCP (クリティカル・コントロール・ポイント)、重要管理点を説明したいと思います。ここで出している左側の図は実際の高度浄水処理工程における生菌数の変化です。先ほど管理官から従属栄養細菌の問題点を御指摘いただきましたけれども、確かに7日かかってしまうというのは非常に大きな問題で、我々はフローサイトメーターという機械を使いまして、染色 10 分、測定1分ということで迅速測定を行っております。この方法を使いますと、細菌の膜が損傷しているか損傷していないかを迅速に把握することができます。

 左の図を見ていただきますと、浄水処理工程で微生物の数がどうなっているのか、非常にクリアになると思います。オゾン処理で生菌数が下限以下になって、 BAC (生物活性炭)の後で一旦増え、塩素をかけるとまた減る、こういう変動が見えるわけであります。つまり、オゾン処理というのは、従来、カビ臭対策として主に考えられていたわけですが、実際、原水中に含まれている病原微生物を含んだ微生物を一旦リセットする、そういう機能があります。

 その下に数字を出しておりますけれども、実際の CT 値を見てみても、現行の高度浄水処理におけるオゾン処理の CT 値というのは細菌の不活化に十分有効であるということがわかります。ただし、その後、生物活性炭で増加するので、 BAC が給配水系に流れる微生物のリザーバーになってという見方もできます。

 フローサイトメーターという機械を使いますと 10 分ぐらいで菌数測定ができますので、頻度を稼ぐことができます。右のグラフは、それぞれの工程における生菌数です。これは、9時から 16 時まで1時間置きにとった時間変動を調べたデータでありますが、オゾンや塩素が入った後には確実に不活化されていることがわかりません。一方、沈殿、前段ろ過のところを見ていただきますと、生菌数というのはかなり時間変動することがわかります。各処理ユニットの細菌除去の変動性という、大事な知見を得ることができます。

 こういう微生物の動きと同時に、もう一つ注意しなければいけないものが3ページ目に示した基質です。配水管のところで微生物がふえるためには餌が必要ですが、通常、 AOC (同化性有機炭素)という指標を使ってある細菌の増殖量を評価いたします。

 この図を見ていただきますと、これは実際の浄水工程の AOC のデータですが、原水、凝集沈殿では余り変わりませんが、オゾン処理後には濃度が増加することがわかります。つまり、オゾンをかけると高分子のものが低分子化されて微生物が食べやすくなるということを示しております。もしこのまま水が配水されると、再増殖のリスクが高まるということで問題なわけですが、生物活性炭を通しますと微生物が分解してくれますので、 AOC は減ります。ここで減ったということが、とりもなおさず、先ほど菌数のところでお示しした BAC 処理水中で菌が増えるという現象につながっており、まさに裏表の関係になっていると考えられます。

BAC 処理で AOC は減るのですが、よく見ていただきますと AOC のレベルというのは凝集沈殿処理水と同じぐらいまでしか減りません。私の問題意識としては、従来、生物活性炭というのは「生物」とついていますけれども、基本的には吸着というところで処理条件が最適化されている。実際、生物学的な浄化作用はまだ十分発揮できていない可能性がありえると思います。

 以上のことをまとめたものが4ページ目にあります。微生物、基質、その両方を考えて浄水場の中で再増殖を抑制するにはどうしたらいいのかということを表にまとめております。

 例えば微生物という点で言えば、オゾンは非常に低減効果があるのですが、 BAC は増やしてしまう。餌である基質について逆で、オゾンは餌を増やしてしまうが、 BAC では餌を取ってくれる。ジレンマがあるような処理があるわけであります。ここをうまく組み合わせることで、仮に残留塩素が低くなっても微生物が再増殖しにくいような水質を達成できないかと考えています。

 研究の紹介としては、水道水中で実際に再増殖する微生物を用いて評価した再増殖ポテンシャルの事例を簡単に御報告したいと思います。

AOC では、オランダで単離された P17 株や NOX 株といった標準株を使って実験するのですが、我々は P17 株や NOX 株ではなくて、実際に浄水中で再増殖するような微生物を用いることでより正確に再増殖リスクを評価することを試みました。残留塩素を中和した水道水から再増殖した微生物群を、実際の工程水に植種して培養いたしました。浄水中で再増殖しうる微生物の基質が、各工程水にどれくらい入っており、各処理でどれくらい変動するのかを見積もりました。

 6ページ目を見ていただきまして、上に増殖曲線を示してあり、その最大増殖量をまとめたのがその下のグラフになっております。

 原水から凝集沈殿に移る間に最大増殖量は半分程度に減りますので、凝集沈殿は多少効いているのですが、オゾンをかけると増加します。 BAC 処理では減るのですが、凝集沈殿と同じくらいのレベルまでしか餌は取り切れていませんでした。一番右の棒グラフが、浄水中に残存している基質量に相当いたします。この基質量はほぼ BAC 処理のところで決まっているということもわかります。つまり、再増殖を促進する基質は BAC で本来もっと取れていいはずだということです。

 ただし、この結果だけでは、もともと凝集沈殿に含まれていた基質が BAC で取れずにワンパスで抜けているのか、あるいは単純にオゾンで増加した基質が取り切れていないだけなのかということはわかりません。7枚目、最後ですけれども、最近、我々がやっているのは基質の中身を知ろうということに取り組んでいます。

 左側のグラフは、従来、 AOC の主成分と言われていたような酢酸、シュウ酸、ギ酸といった低級カルボン酸について、浄水工程における濃度変動を調べた結果です。確かにオゾン処理で増えた後に BAC で減るのですが、塩素が入りますと更に漸増する傾向がありました。それでは低級カルボン酸以外の基質成分は何かということで、最近我々は精密質量分析という方法で解析を進めています。オゾン処理水に BAC 処理水中の微生物をあえて添加しまして、生分解実験をします。微生物が増えると、基質に相当するピーク強度が減少するのでどの分子が基質成分かを推定することができます。

この装置は非常に精度が高くて、分子イオンの m/z を小数点4桁、5桁ぐらいまで決めることができます。そうするとどんな元素組成かを推定することができます。7ページの下がデータの一つですが、推定された基質の分子式が出ております。こういう分子がどうも BAC で除去されているということがわかります。

 こういう候補分子がわかると、原水、凝沈、オゾン、 BAC 、砂ろ過、浄水、蛇口、それぞれのところにおける動態を分子レベルでトレースすることができます。こういう方法を使って再増殖に寄与するような有機分子を明らかにして、それらを制御するためにはどの処理が重要なのかを今後解明していきたいと思います。

 手短ではありますが、以上で終わります。

 

○秋葉座長

 どうもありがとうございました。

 では、ただいまの説明につきまして、御意見、御質問等ございますでしょうか。

 

○三浦氏(オブザーバー)

 2ページ目のスライドについてですが、日内の時間変化がかなり大きく見られたという生菌数についてですが、これは運転パラメーターとの関連というのは見つかっているのでしょうか。

 

○春日委員

 これは前塩素処理する前の時期のものなのですが、例えば濁度であったり、その他、常時監視しているようなモニタリング項目との関連性は特に見られませんでした。

 

○秋葉座長

 そのほかよろしいでしょうか。

 

○島崎委員

 最後のスライドのオービトラップ型質量分析計を使った AOC 成分の解析は非常に興味深く、これまで微生物の餌として考えられていなかったような、結構大きい分子を BAC 中の微生物が食べているのがわかるというのは、非常におもしろいと思います。この逆で、 m/z が増えたもの、つまり、 BAC 中の微生物が外に出しているようなものは判断できますか。

 

○春日委員

 おっしゃるとおりで、生物活性炭後に菌の代謝産物のようなものが新しく検出されうる可能性はあります。それが再増殖に使われるかどうかはまだわからないのですが、そういう有機物と微生物との間の相互作用はクリアになってくると思います。

 

○秋葉座長

 時間が押していますので、次に移りたいと思います。続きまして、資料5を使いまして、橋本委員から御説明をお願いいたします。

 

○橋本委員

 私のほうから「嫌気性芽胞菌の検査方法」ということで、少々細かいお話になってしまうのですが、資料の1枚目の右上、嫌気性芽胞菌の検査に用いられていますハンドフォード改良培地についてです。培地の濃度、中に入っている抗菌剤、この2つについて、今の基準上、少し問題になるのではないかと思われる点が出てまいりましたので、そこを御報告させていただこうと思います。

 まず、背景ですが、ハンドフォード改良培地は嫌気性芽胞菌の検査用の培地として日本では多用されています。国際的には余り使われていないようですが、私自身が使ってみても使い勝手がよくて、例えば m-cp 培地みたいなものと比べても簡単であるし、判定も楽です。データを出しておりませんが、 m-cp との相関性は、 m-cp よりも割と成績がよいという感覚がありますので、ハンドフォード改良寒天培地はすぐれた培地であろうと思っております。

 この培地がどういう構成成分からできているかというと、処方と書いてありますが、こういうものからできております。その中でも、抗菌剤の中の二重丸のもの、オレアンドマイシン、エリスロマイシン、どちらもマクロライド系の抗菌剤ですが、こちらの2つのもの、オレアンドマイシンを使っている培地とエリスロマイシンを使っている培地が存在します。

 その経緯としましては、周知のこととは思いますが、オレアンドマイシンの入手が困難になって、エリスロマイシンで代替して、その後、オレアンドマイシンの培地が再発売されるという状況がありました。この2つの培地の同等性についての専門委員会等での御議論、もしくはこちらの検討会でも御議論があり、ほぼ同等だろうという結論に至っていたのですけれども、私どものところで別件の検討をしている際に、この2つの培地を使うと値が一致しない、なぜ一致しないのかわからないが、どうもおかしいということが出てまいりまして、詳細に検討してみたということでございます。

 4枚目、まず、培地濃度についてです。培地は一般的には標準濃度と呼ばれる濃度で使うわけですが、嫌気培養を行いますので、パウチ法という方法で、ビニール製のパウチの中に試料と一緒に培地を入れたときに標準濃度とするという 1.67 倍濃度というのもあります。この2つそれぞれを一般的なメンブランフィルター法に適用してやってみました。

 培地濃度の結果です。標準濃度と 1.67 倍濃度を用いたときの嫌気性芽胞菌の検出感度ですが、河川水の試料でやってみると、 1.67 倍濃度を標準濃度のかわりに使うと2割ほど高く出るという結果が出てまいりました。O培地、E培地、それぞれどちらも2割ぐらい高い濃度のほうが増すという傾向が見られました。O培地とE培地の比較はその次に出てきます。

 では、培地濃度が 1.67 倍濃度になるとなぜこういうことになるのか、どういうことが起きているのか。培地濃度を上昇させるということは、当然そこでは栄養成分や緩衝作用のある成分量が増加する。その結果として嫌気性芽胞菌の発育が向上する。一方で、抗菌剤の量が増加しますので、競合する細菌の発育も抑制されるだろうし、嫌気性芽胞菌の発育も場合によっては抑制される可能性があるということで、これらのいろいろな成分があわさった結果として、現状では 1.67 倍濃度のほうが感度が高くなったと我々は考えています。

 ただ、これは 1.67 倍濃度というピンポイントでの1ケースでしか検討しておりませんので、では具体的にどのぐらいの濃度が最適なのか、どの成分が一体効いているのかということについては定かではないのですが、今のところ、 1.67 倍はいいのではないかという結論が出ております。

 これを踏まえまして、 1.67 倍濃度を用いてE培地とO培地の差を検討してみました。下水の流入水を使った試料と私どもの地元の広島の2つの河川水、戸郷川、西城川、それから、地域的な差というのがあってはならないと思いまして、いろんなデータがたくさんとられている相模川です。西城川、相模川については水源地点での採水も入っているということです。

 これで検討してみた結果が次の結果2です。下水流入水に関してですが、縦軸がオレアンドマイシンの培地で検査した値、横軸がエリスロマイシンの培地で検査した値です。同等であればy=xのラインの上に乗っかってくるということですが、一つもこのラインより下に来るデータがなく、みんな上のほうに上がっていったという結果が出てきました。

 同様に、次のページ、河川水でも同じような結果が見られておりまして、3つの河川水が入っておりますけれども、y=xより下になるデータは認められなかった。全ての培地でオレアンドマイシンの培地のほうが高い結果が出ています。

 これについてもう少し濃度という観点で見てみますと、下水流入水、河川水、それぞれの嫌気性芽胞菌の濃度をオレアンドマイシン培地とエリスロマイシンの培地の比でとってみますと、下水処理水ではE・O比で 0.63 、河川水では 0.54 、5割から6割ぐらいエリスロマイシン培地から少なくなってしまうという結果が出ています。これは検定してみますと、有意差ありというかなり低い値で、α= 0.05 としても全く有意さがあるという結果になってまいりました。

 そうしますと、今までの同等性があるという報告とかなり違った様相が見えてまいりまして、これはどういうことか、もしかすると水域によってはエリスロマイシンに感受性の高い嫌気性芽胞菌が存在するのではないかということを考えまして、抗菌剤がどう効いているのかを次に調べています。

 その前に、では、ハンドフォード改良寒天培地は何をつかまえているのか。嫌気性芽胞菌という名前がもともとはウエルシュ菌をターゲットとしているとはいうものの、ほかのものも入っているだろうということで、大腸菌群のようなネーミングで捉えているわけですが、このグラフは何を捉えているか。 CPA と書いてある遺伝子ですが、ウエルシュ菌であれば持っているだろうというアルファトキシンの遺伝子を持っているか持っていないか調べてみました。

 そうしますと、河川水分離株ではO培地でもE培地でもどちらも8割、9割が CPA をしっかり持っているということで、ほとんどウエルシュ菌をつかまえているだろうと。下水流入水は、データがばらつくのですが、今回ここで調べたレベルでは8割近くが CPA を持っている。しかも、河川水と下水流入水では少々差がありますが、E培地とO培地という観点ではどちらも CPA の割合はほとんど変わりませんので、恐らくほとんど同じようなグループをつかまえているのではないかということがわかると思います。

 これを踏まえて、では抗菌剤がどう効いているのかということで、エリスロマイシンの MIC 値(最小発育阻止濃度)を実際の下水から分離した株で調べてみました。ちなみに、下水の分離株は、E培地で 30 株、O培地で 58 株調べました。そのときの CPA の保有率はどちらも9割以上ですので、ほとんどがウエルシュ菌と考えられております。

 それで抗菌剤の MIC を見てみますと、このグラフですが、「エリ無」と書いてあるエリスロマイシンのない培地から、要はオレアンドマイシンの培地から分離した株 58 株を調べると、 MIC 値は一番低いものでは 0.025 、かなり低いものから、ほとんどエリスロマイシンが効果がないという MIC 値がずっと高いもの、グラフの横軸が 10 となっていますが、一番横は現在 256 以上まで存在していたのに対して、エリスロマイシンのある培地から分離したものだと2μ g/mL より低いところの菌株が検出されない。ということは、恐らくE培地、エリスロマイシンの入っている培地でのエリスロマイシンの推定される力価というのが2μ g/mL という近辺なのではないかと考えます。実際には添加量はもっと大きいのですが、恐らくオートクレーブ等で滅菌したりしますので、そのときの損失を含めると2μ g/mL 付近に落ちつくのではないか。

 一方、エリスロマイシンの入っていない培地で2μ g/mL 以下のものの量がどれぐらいか見積もってみると、最大で6割ぐらいが2μ g/mL より低いところに存在しているのではないか。そうすると、先ほどのE・O比が 0.4 とか 0.6 とかになってきたところがこのエリスロマイシンの感受性の株が検出できなかったということで説明できるのではないかと考えました。

 さらに、もう一つ、これも暫定的な値ですが、ではどうしたらいいのかということの一つの考察として、エリスロマイシンの現在の力価が2μ g/mL に対してそれを仮に半減したとすると、1μ g/mL のところ、矢印のところ、ここに入ってくるエリスロマイシン感受性株が 0.003 、3%ぐらいになってきます。そうすると、エリスロマイシン含有の培地でもエリスロマイシンの濃度を少々下げることで割と広く拾えるようになるのではないかということがわかったということです。

 論点を私のほうで考えられるレベルで整理してみたのが4枚目です。現状としましては、嫌気性芽胞菌が検出されるされないということは、水道原水のクリプトスポリジウム対策等では水道原水のレベル分け、1、2になるのか、3、4になるのか、それが大きく異なってきます。その結果として施設整備をどうすべきなのか、もしくは検査をどうすべきかということに大きな影響を与えているということです。

 原水から嫌気性芽胞菌が検出されるかされないかで対応が大きく異なってくる。評価結果が仮に異なってくると、一つ問題があって、そもそも嫌気性芽胞菌もしくは大腸菌が検出されるということと、クリプトスポリジウム等のリスクがどうなるのかという QMRA 的な意味というのは、イコールではないというものの、誤ったクリプトスポリジウム等の対策もしくはリスク評価を行ってしまう可能性があるのではないかということが現状です。

 それを踏まえて今回の結果を見てみるとどういうふうに考えられるかということですが、まず、2培地間で5~6割の差をどのように考えるべきかということです。これ自体は、微生物の試験として考えた場合には、ワンオーダー違うとなれば確かに違うのだけれども、半分ぐらいだからいいのではないかという考え方もできるかと思います。

 一方、現状の検査の基準値で考えてみると、検出限界レベル、例えば 100mL 中に1 CFU だけいるという原水の検査をした場合に、O培地で陽性だった水をE培地で検査すると陰性になるというケースが半分ぐらいあらわれる可能性があります。使用培地によってレベルの判定が異なってしまうということは先ほどのリスクの問題とは直結しないかもしれないが、同一の試料で結果が異なるのは、制度上の問題、もしくはある意味、逃げ道になってしまう可能性があるということがここで示されると思います。

 もう一つ、相関がとれるから補正できるのではないかということも考えたのですが、現行の基準値というのは、検出されるかされないかというところで考えなければいけないということから考えると、ここも相関でというのは難しいかなと思います。

 現実にエリスロマイシンに感受性を持っている株が存在する水域があるのがこちらの結果から明らかになっておりますので、これは何らか対応する必要があるのではないかと考えております。

 ただ、本データはまだ限定的な部分がございまして、この後も詰めていかなければいけないことがありますが、現状こういうデータが出てきたということです。

 それから、考えられる対応として論点整理の3です。ハンドフォード培地は、先ほども申し上げましたように、とても使い勝手がよく、ハンドフォード培地がいけないかというとそうではないだろうと思います。では、オレアンドマイシンの培地だけを使えばいいかということに関しても、オレアンドマイシンという抗菌剤自体がヒトの臨床用には全く使われていないでしょうし、動物用医薬の中でもリストから漏れているような状態ですので、これを安定的に入手するのは難しいだろうと思います。また、オレアンドマイシン自体の力価や MIC も当然考えていかなければいけないのですが、この辺のデータがよくわからない。ということは、エリスロマイシンを適正な力価で使っていくというのが必要なのではないかと考えております。

 一方、エリスロマイシンの濃度を下げることによって問題となる部分、エリスロマイシンで抑制されていた細菌が生えてくるということも考えられますし、それ以外にも、多くの水域でデータをとる必要もあります。また、抗菌剤だけではなくてさまざまな成分の濃度、先ほど培地濃度という話があり、これが入ってくるとまた話がややこしくなってしまいますので、割愛させていただきましたが、他の成分、そういったものも調整した上でどういうところが効いてくるのかという細かな検討も必要かと思います。この辺は来年度、実施予定ではありますが、培地メーカーの御協力も必要かと思っております。

 最後に、嫌気性芽胞菌は、私どもでいろいろやっていると、例えばソーストラッキングの指標や生残性が高いから、いい面と悪い面と両方ありますが、ノロウイルスなどと海域で相関をとってみると大腸菌では把握できないようなことがわかってくるなどのデータもありますので、このあたりも踏まえて、嫌気性芽胞菌の検査法、その基準としての意義、評価方法なども考えていけたらいいかと思っております。

 以上です。

 

○秋葉座長

 どうもありがとうございました。

 ただいまの御説明に対しまして、御質問、御意見等ございますでしょうか。

 

○春日委員

 テクニカルなことで恐縮なのですが、抗生物質、エリスロマイシンは、先ほどオートクレーブをかけられるというお話があったのですが、これはオートクレーブ後に抗生物質を入れるということではなくて、予め混合した状態でオートクレーブをかけるということでしょうか?

 

○橋本委員

 そういうことですね。

 

○春日委員

 そこが結構、力価のところに影響してしまうのではないかと思いました。

 

○橋本委員

 恐らく最初の設計、培地のかなり古い文献でこのハンドフォードの培地はありますけれども、そのときの時点で、オートクレーブしたときにこれぐらい働くだろうということを見越してつくられているとは思いますが、実際、検討しようと思った場合には、後から抗生剤を適量添加して検査するということの評価が必要だと思うのですけれども、市販の培地ですので、そこまで手を出すのは培地メーカーにお願いしないとできないかと思っております。

 

○秋葉座長

 どうぞ。

 

○船坂委員

  今の培地のお話とは違うのですけれども、橋本先生はこの検討会で原水の最確数法を提案されていましたけれども、どのようになりましたでしょうか。というのは、クリプトスポリジウムは今、原水も浄水と同じ方法でやっているのですね。非常に手間なのです。したがって、原水に特化した方法ができれば非常に迅速に結果が出るようになりますし、精度が高くなってその後の処理の工程の選択肢も増えますので、最確数法の原水の試験を何とか実用化していただきたいと思うのですけれども、どのような状況になっていますか。

 

○橋本委員

 現在、泉山先生に御協力いただきながら、何とかまとめようというところには来ておりますが、実用できるというより、こういう方法もあるというところに今のところとどまっているかなと思います。

 

○船坂委員

 もしよろしければ、私どもの給衛協は検査機関の集まりで、クリプトスポリジウムの検査をたくさん行ってますし、現場も持っていますから、橋本先生の指導のもとに最確数法を原水の方法として確立するということを提案していきたいと思うのですけれどいかがでしょうか。データとりは私どものほうでやらせていただくということも考えられると思いますが、どうでしょうか。

 

○橋本委員

 どうでしょうね。

 

○泉山委員

 船坂委員からありがたい協力の申し出をいただきまして、最確数法を原水で使っていけるように、方法を整備していきたいと思います。よろしくお願いします。

 

○橋本委員

 例えば芽胞の話ですけれども、これももう少し広いところでしっかりデータをとらなければいけないかなと思っています。そのあたりの御協力をいただけますでしょうか。

 

○船坂委員

 わかりました。

 

○秋葉座長

 このことにつきましては、厚労科研の松井先生の研究班で最確数法も検討していますね。その研究班で引き続き実施するということでよろしいですか。芽胞の検査方法につきましても引き続き実施するということでよろしいでしょうか。

 

○橋本委員

 芽胞はまた別に。

 

○秋葉座長

 来年度は培地製造メーカーの協力を仰いで、全国の水域で実施するということでよろしいでしょうか。

 

○橋本委員

 まずはとにかく基礎的なところを押さえてからと思っておりますので。

 

○秋葉座長

 もう少し基礎的な検討をした上でということですね。

 

○橋本委員

 まずは培地メーカーとお話をさせていただいて、培地の濃度を少し変動させたような系でも同じような現象が確実に見られるのかというのを整理した上で、ではどういうふうにするべきなのかというのをこちらでまたお話しさせていただけたらいいなと思います。

 

○船坂委員

 現状の検査法で問題点はあるのですか。今の検査法で別に問題ないような気がするのですけれども、何か。

 

○橋本委員

 芽胞のほうですか。

 

○船坂委員

 ええ、今の話ではそのように聞きましたけれども。

 

○橋本委員

 検出限界のようなところであればこういうこともあり得ると。例えばこっちの培地でやったら出ないからレベルが違う話になってしまう、こういう危険性はあると思います。

 

○船坂委員

 それがその後にどのような影響を与えるかということを考えると、行政的な検査としては現状でもいいのではないかという気はします。

 

○島崎委員

 一つ短い点で確認なのですけれども、オレアンドマイシンは伝統的に昔から使われてきて、今は使われなくなってきているということですね。オレアンドマイシンはあまり感受性が高くないというところを見ると、耐性を持つ水環境中の微生物の種類が結構多いのかどうか、その辺、御存じでしたらお教えいただきたい。

 

○橋本委員

 その辺のデータがないのですが、これは私の感触的なところですけれども、オレアンドマイシン自身が、入れてはいるけれども、効いていないという可能性はありますね。力価としては培地上で動いていないという可能性もあるのかとは思っております。そこは測定してみないとわからないのですが、オレアンドマイシン自身がなかなか入手できないのです。とてもやりにくいと思っております。

 

○秋葉座長

 どうぞ。

 

○五十嵐委員

 この発表は、私、水道研究会のほうで聞かせていただいたのですけれども、テクニカルな問題を。抗菌剤については2つ比較していますが、 1.67 濃度の培地でやったということで、もしこれを標準の濃度でやった場合にはどのぐらい変動があるのでしょうか。

 

○橋本委員

MIC については、 1.67 倍濃度から分離した株と、標準濃度から分離した株、両方が入っています。ここもデータを整理しなければいけないのですが、どちらの培地からもエリスロマイシンの入っている培地からは2μ g/mL より低いものは出てこなかったという状況です。あとは、 1.67 倍のデータでとっているということです。

 

○五十嵐委員

 過去に水道協会のほうで全国の水でやった場合には差がなかったということなのですけれども、この辺について先生はどうお考えでしょうか。

 

○橋本委員

 ちょっとそこが難しいところなのですが、日水協の前データとして、こちらの 22 年度の検討会の資料を拝見させていただくと、日水協のグループで全国的にやる前の段階に3カ所ぐらいの水源水域で調べているデータがあります。それではかなりばらつきが出ています。下水処理水だけがたしか 0.8 とかで、あとはEとOの比が逆転しています。逆転というのは比としてですが、ですから、下水処理水だけはオレアンドマイシンの培地のほうが少なくなっているのですが、水道原水の2カ所か3カ所ではほとんどオレアンドマイシンの培地のほうが高いという結果が出ています。

 それが出ていて、その後、日水協のデータとしてほとんどが1程度というデータが出ています。いろんな水域があるというふうにしか推測のしようがないのですが、現実にばらつく水域が我々がやっているところ以外でもあるというのが前の検討会のデータでは示されていますので、こういうことがあるのではないかと思います。

 

○五十嵐委員

 そうすると、現状の試験法でもそれほど問題はないというふうに。日水協は、いろんなところで多少は水質が違うのでしょうけれども、それを踏まえて、良いという判断をされてきたと思います。

 もう一つは、検出感度が上がるということなのですけれども、いろんな改良すればそれなりに検出感度が上がるというのは、微生物だけではなくて化学物質の検査法もそうです。どこまで検出感度を求めるかによって今やっているレベルの評価が変わってくるということなので、これを新しいのに変えるとなるとまたレベルも変わってくるということで、非常に問題だと思います。そこまでやはり必要なのでしょうか。

 

○橋本委員

 要は、クリプトスポリジウムの定量的なリスクの評価とこの嫌気性芽胞菌の濃度というところの関連性がはっきりしていない。古いふん便汚染があって、クリプトスポリジウム等と同じぐらい遠い環境からの汚染でも拾えるという意味での整合性はあるのですけれども、それが数値的にどうかということについてはわからない。そういう中で、先生がおっしゃるとおりで、ではどこまで、もっと向上すればいいのかもしれないというのはあるのですが、ただ、現時点で2つの培地が市販されていて、これが一応認められている中で、4割とかの差が出てくるというのはやはり問題ではないかと私は考えております。それが縮められるのであれば縮めたほうがいいのではないかと思っております。

 

○黒木委員

 今の話は、感度を上げるということではなくて、物差しをどう2つ合わせていくかということだと思うので、オレアンドマイシンを使った培地を標準的な方法として、エリスロマイシンのほうをそこにいかに合わせていくかという見方でやっていけば、その辺の急に感度が変わったりとかでなく、同じ物差しで調べることができるということになるかと思います。やり方としては、オレアンドマイシンの培地を1として、それで1に近づけていくという方向でいいのではないかと思います。

 

○秋葉座長

 いかがでしょうか。基本的にそれでよろしいですか。

 

○橋本委員

 わかりました。

 

○秋葉座長

 では、時間も押していますけれども、そのほか何かございますでしょうか。よろしいですか。

 では、そのほか、事務局から連絡事項がありましたら、お願いいたします。

 

○東水道水質管理官

 きょうは、長時間御議論いただきまして、ありがとうございました。

 最後のほうはかなり技術的な話で、私ども理解が不十分かもしれませんけれども、微生物に関する水道法令での変更は今すぐはないのですが、きょうの御議論でもクリプトスポリジウムのレベルの考え方とか、そういったところの御示唆もいただいておりますので、私どもとしてはもう少しデータも収集整理しながら進めていきたいと思いますし、また、その際には先生方にもいろいろと御意見をいただきたいと思っております。

 

○秋葉座長

 どうもありがとうございました。

 

○鈴木室長補佐

 事務局から、一点だけご連絡です。本日の議事録ですが、後日、事務局から送付させていただきますので、御確認をお願いしたいと思います。確認いただいたものをホームページに掲載させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 

○秋葉座長

 では、よろしいですか。

 では、以上で本日の会議を終わりにいたします。どうもありがとうございました。


(了)
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