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2016年12月13日 第118回労働政策審議会職業安定分科会 議事録

○日時

平成28年12月13日(火) 10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎第5号館厚生労働省職業安定局第1・2会議室(12階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議事

○阿部分科会長 おはようございます。定刻よりやや早いですけれども、ただいまから第118回「労働政策審議会職業安定分科会」を開催いたします。

 議事に先立ちまして、当分科会に所属する委員の交代がありましたので、御報告いたします。

 当分科会の労働者代表委員として、斗内委員にかわりまして、UAゼンセン副書記長の高松委員が就任されております。

○高松委員 高松です。よろしくお願いいたします。

○阿部分科会長 本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の鎌田委員、玄田委員、労働者代表の青木委員、勝野委員、林委員、久松委員、使用者代表の河本委員、熊谷委員、鈴江委員、深澤委員が御欠席です。

 河本委員の代理として全日本空輸株式会社の秋田様が出席されております。

○河本委員代理 よろしくお願いします。

○阿部分科会長 よろしくお願いします。

 それでは、議事に入ります。

 最初の議題は「雇用保険部会報告について」です。本件については、先日開催された雇用保険部会において報告が取りまとめられました。岩村雇用保険部会長より御報告をお願いいたします。

○岩村委員 それでは、御報告を申し上げます。雇用保険制度の見直しにつきましては、本年9月5日から雇用保険部会におきまして7回の検討を行ったところでございます。そして、12月8日に開催されました雇用保険部会におきまして報告書を取りまとめたところでございます。

 この報告の内容は、若年者の所定給付日数の引き上げ等の基本手当の拡充、雇用保険料率及び国庫負担割合の時限的な引き下げ、育児休業給付の給付期間の延長、教育訓練給付の充実などでございます。

 詳しい内容につきましては、事務局のほうから説明していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○阿部分科会長 では、よろしくお願いします。

○雇用保険課長 雇用保険課長、田中でございます。

 私から雇用保険部会報告書ということで、資料1-1、資料1-2で御説明をさせていただきたいと思います。資料1-2は関係の資料になりますので、横に置いていただきまして、基本的に資料1-1に沿って御説明をさせていただきます。

 1ページお開きいただきまして、雇用保険部会で9月5日以降、12月8日まで検討を行っていただきまして、取りまとめたという内容でございます。

 内容は、もう一枚後の別紙の部分でございます。まず、第1、雇用保険制度等の見直しの背景でございます。ここの部分におきましては、現行の雇用情勢の改善が着実に進んでいるということ。そのような中で、リーマンショックの時に創設された暫定措置が今年度末で期限を迎えることになっていて、昨年の雇用保険部会報告や、それに基づいた雇用保険法等の改正法案についての附帯決議の中でも暫定措置の取扱いに対しての検討が求められているということ。

 3番目の○ですけれども、雇用情勢が改善する中で、積立金残高が過去最高の水準になっている中で、経済対策において、雇用保険料や国庫負担の時限的な引下げ等について必要な検討をするということが盛り込まれていることなど、こういった背景の中で今般の見直しを行って結論を得たというふうな内容でございます。

 具体的に、見直しの方向性、第2以降になってございます。1点目が基本手当の水準と平成28年度末までの暫定措置についてでございます。

 1点目が賃金日額でございます。賃金日額の水準、直近は平成23年の法改正で額を定めまして、それを毎年、毎月勤労統計調査による給与の変化率に応じて自動変更してまいりましたけれども、最低賃金の引上げの一方で、下限額が自動変更により低下をしてきているという状況の中で、下限額が最低賃金を下回る状態となってございます。

 これは平成23年と同様の状態でございまして、同様の状態となりました平成23年と同様に、下限額の見直し、上限額等を見直すべきという内容でございます。

 平成23年と同様、最新の賃金分布を踏まえて、法定の額といたしましては、その下の箱の中にあるとおりの引き上げになるということでございます。

 さらに、下限額につきまして、最低賃金との逆転現象が生じないように、賃金日額と比較して、最低賃金額をもとに計算された賃金日額が上回る場合には、これを下限額とするという内容でございます。

 続きまして、(2)が暫定措置でございます。リーマンショック時に創設された暫定措置でございますが、その期限が平成28年度末までとなっております。内容は、個別延長給付、雇止め等により離職した有期契約労働者等の給付日数の充実、常用就職支度手当の支給対象者の追加でございます。

 3ページ目でございます。このような暫定措置は、厳しい雇用情勢下で措置されたものであり、現在の雇用情勢を踏まえ、期限をもって一旦終了すべきである。その上で、暫定措置が終了になった場合の影響を踏まえて、必要な措置を改めて行うべきであるということで、必要な措置が(3)以下でございます。

 まず、給付日数ですけれども、特定受給資格者の所定給付日数内での就職率を見ると、被保険者期間1年から5年のところの3035歳、35歳以上45歳未満の層で他の層と比べて低くなっている。特定受給資格者以外の給付についても見直すべきであるという旨の意見がございましたが、今回被保険者であった期間が1年以上5年未満である30歳以上35歳未満の特定受給資格者について30日、35歳以上45歳未満については60日、所定給付日数を充実すべきであるという内容でございます。

 次の○ですが、雇止めによって離職した方、有期契約労働者は減少傾向にあるものの、一定存在していることを踏まえて、暫定的に5年間特定受給資格者として扱うこととすべきであるという内容です。

 なお、労働者代表委員からは暫定措置でなく、恒久化すべきとの意見があったということを付記してございます。

 次の○が延長給付の関係でございます。急激な雇用情勢の悪化、震災の事態に対して、これまで個別延長給付を活用して支援を行ってきたところでございますので、個別の必要な事情に応じて所定給付日数を延長できるようにするという制度を改めて創設をするという内容でございます。

 具体的にはこれまでの延長給付の例を踏まえて、以下の措置ということで、以下3点でございます。

 リーマンショックのような雇用情勢の悪化が生じた場合に、雇用情勢が厳しい地域の求職者の再就職を支援するために、特定受給資格者等について、60日の所定給付日数の延長が可能となるようにすべきであるということです。一方、雇用情勢の悪化について、今後の推移を見きわめる必要があることから、5年間の暫定措置。また、指定地域について、現在、大規模な商業圏に隣接するベッドタウンを含む地域も含まれているが、当該地域の求人・求職活動の実態に合わせた指定要件となるようにすべきであるということで、指定地域については、こういった視点から適正なものとなるようにすべきという内容でございます。

 次のポツが震災の関係で、震災による倒産・解雇等による離職者・休業者について60日の所定給付日数の延長が可能となるようにする。

 また、東日本、熊本のような特に大きな災害の被災地域については、120日の所定給付日数の延長が可能となるようにすべきであるということでございます。

 最後の3ポツですが、「病気の治療と仕事の両立」が重要な課題となっていることから、難病等病気の治療を図りながら求職活動をする等の特定受給資格者等について、60日の所定給付日数の延長が可能となるようにすべきであるという内容でございます。

 2点目が就職促進給付です。

 1番目は再就職手当ですが、今後施行される内容もございますので、こういったところも含めた十分な周知と施行状況の把握という内容になってございます。

 2番目が移転費と広域求職活動費です。

 まず、1つ目が移転費でございます。UIJターンを希望する方を支援する観点から、広域にわたる職業紹介を進めていくことが重要であるということで、職業紹介事業者または特定地方公共団体による紹介により住居または居所を変更する必要がある場合も移転費の対象とすべきであるという内容でございます。ただ、その際には求職者の保護や適正な給付の確保の観点から、公共職業安定所との連携に適さない職業紹介事業者については対象から除外すべきであるということと、その施行状況について適時把握をするということが必要であるという内容でございます。

 次の○が移転費と広域求職活動費ですが、現在、給付制限期間中には支給されないこととなっておりますけれども、広域での求職活動を促進して、早期の再就職を実現する観点から、給付制限期間内であっても支給できるようにすべきであるということ。

 求人に応募しようとする方が広域求職活動費の対象である場合に、ハローワークの窓口において求人事業主にこのことを知らせるなど、利用が促進されるよう運用の改善を図るべきであるという内容でございます。

 5ページに行っていただきまして、教育訓練給付の関係です。教育訓練給付ですが、中長期的なキャリア形成を支援する専門実践教育訓練給付は、いまだ受給者が少ない状況にございます。利用が促進されて、能力開発にしっかり取り組むということが進むように周知を図るということと、給付率について40%から50%、上限額について32万から40万に引き上げて集中的に支援をすべきであるという内容でございます。

 あわせて、専門実践教育訓練を受講されている45歳未満の若年離職者には教育訓練支援給付金が支給されておりますけれども、この支給額を基本手当の50%から80%に引き上げるということと、この措置は平成30年度末までの暫定措置となっておりますので、平成33年度末まで延長という内容でございます。

 4点目の○ですが、なお、雇用保険制度の本来の趣旨、基本的な目的は、失業に際して生活の安定を図りながら再就職に向けた支援を行うことを最も基本的な目的としていることに鑑みれば、基本手当等の求職者給付が本来の趣旨に沿って十分かつ確実に行われることが最優先ということで、その枠組みの中で教育訓練給付等について考えられるべきであるということで、働き方改革、安定した雇用保険財政といった環境の中で教育訓練給付の充実を行うことは十分考え得るという内容になってございます。

 その際、本来の役割、状況に鑑みて、実施状況については定期的に把握して、その条件に応じて適切な時期に見直すことが適当であるという内容でございます。

 一番下の○ですけれども、専門実践教育訓練給付は中長期的なキャリア形成を支援するという観点からの趣旨でございます。その給付水準等々を踏まえながら、2回目以降に専門実践教育訓練給付を受けるために必要な期間を10年と設定をされておりますが、短期間でレベルアップしていく必要がある分野があるという指摘もございますので、給付が過大になることがないよう、10年間での給付総額は168万円としつつ、支給要件期間を10年から3年に短縮することが考えられるという内容です。

 その際、安易な教育訓練の受講や濫給を防止するために、複数回目の専門実践教育訓練の必要性、対象訓練の適正性を確認する運用を行うべきであるとしております。

 次の○は、出産、育児等と仕事の両立の関係です。まず、両立支援をして、離職せずに継続して働くことができるようにすることが必要。仕事を一時的に離れるということがあっても、できるだけ早期に職場復帰してキャリアアップを続けることができるようにすることが重要で、こうしたことを進めるためにこれまでも取り組みが続けられ、今後も一層取り組んでいくことが求められる状況でございます。

 しかしながら、離職後すぐに教育訓練を受講することが難しい場合があって、その後、再就職をしようとする場合に、より教育訓練が必要となる場合も多いと考えられることから、出産、育児等により離職後1年間に教育訓練が受けられない場合に延長できる期間を、現行は4年でございますけれども、離職後10年まで延長して、ブランクがあっても能力を向上させて、再就職を実現できるようにすることも考えられるという内容でございます。

 次が育児休業給付でございます。育児休業制度について、雇用均等分科会で育児休業の延長期間、現行、保育所等に入れない場合、子供が1歳6カ月までとなっておりますが、これを最長2歳とする報告書が取りまとめられたところであり、育児休業給付についてもこれを踏まえて対処すべきあるということで、ここと合わせていくという内容になってございます。

 次が財政運営でございます。1番目の○が基本的な考え方でございますが、失業に対する必要不可欠なセーフティネットとして、保険料と国庫負担により運営されているもので、将来にわたって安定的な運営を確保して、雇用情勢の悪化が生じたとしても十分対応できるものとしておくことが最も重要である。これが保障されることを前提に、各般の指摘にどのように対応するのかを検討すべきものと考えるという基本的考え方の記載があった上で、1点目が雇用保険料率でございます。

27年部会報告をまとめていただきまして、これに沿った法改正を行いまして、平成28年度より失業等給付に係る保険料率について12/1000に引き下げられております。一方で、引き続き雇用情勢の改善が進んで、積立金の残高が増えておりまして、必要な水準の目安である弾力倍率2を大きく上回ることとなっていることから、安定的な運営が維持されると見込まれる3年間に限り、雇用保険料率を2/1000引き下げ、労使の負担軽減を行うべきである。

 なお、積立金の水準については、予期せぬ雇用情勢の変動に備えて一定程度確保しておくことが必須である。今般の3年間限定の雇用保険料率引下げの結果、弾力倍率は2程度となることが見込まれており、過去の財政状況を鑑みれば、これを一つの目安として今後も考えていくべきものと考えるという内容でございます。

 次は財政の2点目で、国庫負担でございます。○の前半のところから基本的な考え方として、失業等給付に係る費用の一部を国庫により負担をしているのは、失業が政府の経済対策・雇用対策とも関係が深く、政府もその責任を担うべきであるとの考え方によるものであり、国庫負担の制度を全廃することは、国の雇用対策に係る責任放棄につながり、適当ではない。そして、全廃でなくとも国庫負担について変更を加え、その低下につながるような場合も、国の責任の観点から合理的かつ十分な説明が求められることは当然であるという基本的な考え方を述べていただいております。

 現在、失業等給付に係る国庫負担は、平成19年度から暫定措置として本則の55%とされておりますが、これについては、平成27年部会報告において、できるだけ速やかに安定した財源を確保した上で、国庫負担に関する暫定措置を廃止するものとするとの規定に基づく措置を講ずるべきであるとされております。また、国会においても同様の決議がされておりまして、今回の部会においても改めて上記と同様の意見が示されたところでございます。

 基本的には、この考え方に立つべきものであり、国庫負担のあり方や水準を積立金の残高が一定あることのみをもって議論すべきものではないが、過去保険料率とあわせて国庫負担についても一定軽減してきた例があることも踏まえ、経済対策も考慮し、国庫負担について、3年間に厳に限定し、法律上もそれを明記した上で、本来負担すべき額の10%に相当する額とすることもやむを得ないという結論でございます。

 なお、求職者支援制度についても、これまでの経緯に鑑みれば同様の扱いということですが、そもそも求職者支援制度は全額一般財源で措置すべきものであり、引き続き一般財源確保の努力を行っていくべきであるというふうにされております。

 最後ですが、これらを実施するとしても、国庫負担を速やかに本則に戻すべきであるとの考え方が変わるものではないということと、労使双方からも平成32年度からの本則復帰の実現について、改めて意見が示されたということを明記していただいておりまして、これらのことから、雇用保険法附則第15条を踏まえて、平成32年度以降、安定した財源を確保した上で、13条に規定する国庫負担に関する暫定措置を廃止することを改めて法律に規定すべきであるというふうにされてございます。

 次が二事業の関係です。二事業に関しましては、安定資金残高が1兆584億となってございまして、弾力倍率は1.5を上回りますので、平成29年度の雇用保険料率については3/1000に引き下がることとなるが、引き続き効率的な制度運営に努めていくべきであるとされてございます。

 二事業、雇用保険の附帯事業として、失業の予防、雇用機会の増大、能力開発・向上に資するもので、事業主の共同連帯により対応することが適当なものを実施するものである。こうした事業の性格からは、生産性が高まることは、より長期の雇用の安定や的確な職業能力開発の実施に資するとの観点もあることから、こうした視点を明らかにしておくことが考えられるという内容でございます。

 最後、9ページ目、その他です。1点目がマルチジョブホルダーと雇用保険の適用のあり方です。マルチジョブホルダーについては、複数の職場で就労することにより週所定労働時間20時間以上となる者のセーフティネットの必要性について議論がある中で、仮に適用を行う場合には技術的な論点、制度そのもののあり方との関係などを専門的に検討する課題があることから、専門家による検討会を設置し、検討を進めていくことが必要であるという内容になってございます。

 2点目の高年齢雇用継続給付につきましては、今後の高齢者雇用の動向等々を勘案しつつ、引き続き中長期的な観点から議論していくべきであるという内容です。

 最後の求職者支援制度ですが、実施状況の的確な把握を行って、政策の有効性の検証に努めるとともに、雇用保険の本体の給付とのバランスや費用負担のあり方を含め、安定した就職の実現に向けた支援について引き続き検討すべきであるという内容でまとめていただいております。

 私からの説明は以上でございます。

○阿部分科会長 ありがとうございました。

 それでは、本件について御質問、御意見がございましたら御発言ください。では、高松委員。

○高松委員 ありがとうございます。UAゼンセンの高松でございます。よろしくお願いいたします。

 私どもUAゼンセンは、雇用の基本というのは、直接雇用の無期雇用ということを一義的に訴えておりまして、直接雇用で無期雇用が一番労働者にとって安定して、安心して働ける雇用のあり方だというふうに考えております。

 ただ、御存じのように、UAゼンセンは、ものづくり産業労働組合JAMと一緒ですけれども、非常に短時間労働者の組合員が多い組織でございます。雇用保険適用の20時間を超えた方々の組織化にここ数年積極的に取り組んできており、短時間組合員はUAゼンセンで90万人を超えまして、UAゼンセン全体の56%が短時間組合員でございます。世間一般で言う「非正規労働者」という言葉をUAゼンセンは使いませんので、短時間組合員には、大半はパートタイマーですが、派遣社員とか嘱託契約という方もこれに含まれているところでございます。

 そういう状況を鑑みて、UAゼンセンは9月が年度の初めなのですが、本年9月からは短時間組合員総合局という局を新たにつくりまして、短時間労働者の方々に焦点を当てた政策を実現していこうという取り組みをしているところでございます。そういう中で、雇用保険が非常に重要な役割を果たしているところでございます。

 本日の報告書の中にも、雇用保険の基本的な目的は、失業に際して生活の安定を図りつつ、再就職に向けて支援を行うことである旨が改めて記載されておりましたが、短時間組合員、非正規という方は、無期雇用でない方がほとんどでございまして、雇止めなどに対しての不安を常に抱えているところでございます。

 そういう中で、今回の報告書の3ページに給付日数の件が載ってございます。2つ目の丸に雇用保険部会の中で取り決めがされて、なおかつ労働者側委員からの意見があったという記載もしていただいておりますので、ここで改めて言うべきではないかも知れませんが、まさしく「暫定的」という言葉に対して、労働側としては非常に神経質になるところでございます。特定理由離職者への対応については、今回はこの報告書に従うとしても、次回の検討の際には、ぜひ恒久化ということについて御検討いただきたいということを意見として申し上げておきます。

 以上でございます。

○阿部分科会長 ありがとうございました。

 それでは、ほかにいかがでしょうか。では、太田委員、どうぞ。

○太田委員 ありがとうございます。

 まず、UIJターンを希望する者を支援する観点から、移転費及び広域求職活動費が重要であるという記載があったと思うのですが、移転費と広域求職活動費に関しては、どういう移動の形態をとっても基準を満たせば基本的には支給されるというふうに考えてもよろしいでしょうか。つまり、「UIJターンを希望する者を支援する観点から」という部分がついているので、イメージとしては都市部から地方への移動促進というふうにも捉えられるような気がするのですが、制度的には地方から都市部へ来ても支給されるものであるという理解でよろしいでしょうか。というのが1つお伺いしたい点です。

 あと、積立金の水準に関して少しお伺いできればと思うのですが、予期せぬ雇用情勢の変動に備えるという部分が積立金としては重要な役目を担っていると思うのですが、予期せぬ雇用情勢は、恐らく景気変動によるものではないかと思うのですが、ほかに、非常に大規模な災害、例えば最近よく言われるような震災クラス、今後起こるであろうと言われるものに対する対応というのもこの積立金の概念の中に入ってきているのか。要するに、積立金のあるべき推進を規定する要素の中にカウントされているのか、あるいは特にそうではないのかというあたりをお教えいただければと思います。

○阿部分科会長 では、2つとも質問ですので、お願いします。

○雇用保険課長 まず、移転費と広域求職活動費ですけれども、御指摘のとおり、UIJターンに限定をしているという制度的なたてつけにはなってございませんので、どういった方向であれ、一定の距離等々の要件とか安定所紹介、そういう要件を満たす場合には支給をされる制度になってございます。

 積立金の水準ですけれども、どこまでどういうことを勘案するかですが、大規模な災害が起こりました際には、当然それによって景気変動、経済変動ということにつながってくると思いますので、そういったことも念頭に起きつつ、水準というのは決定をされるべきものだと考えますが、災害ということになりますと、どこまでどういう大規模な災害かということもございますので、当然のことながら雇用保険だけでは対応できない場合というのも、災害の規模とか大きさとか、そういうことを考えれば一定ある部分もあるのではないかと思います。

○阿部分科会長 どうぞ。

○太田委員 ありがとうございます。

 災害のほうの話ですが、確かに予期するのは非常に難しい部分があろうかと思うのですが、例えば非常に大きな災害、予想されているものが今後起こったとしたら、一体どの程度の失業者が発生して、それに対してのどの程度の給付が必要となってくるのかというシミュレーションはやられていたりするのでしょうか。

○阿部分科会長 では、御質問なのでお願いします。

○雇用保険課長 直接的に災害ということではございませんけれども、資料1-2の20ページをごらんいただきますと、これまでの積立金残高と受給者実人員の推移をまとめてございます。この間制度の改正等々もございますが、過去を見ますと、受給者が一番多かったときが111万人ということになってございまして、111万人になった時期には、それ以前の積立金が4兆を超えるものが最低の4,064億円になったという状況でございます。

 こういうことも鑑みますれば、一定この程度の規模のインパクトに耐えるためには、やはり4兆円等々といった積立金の規模は一つの目安として必要になるのではないかと考えております。

○太田委員 結構です。ありがとうございます。

○阿部分科会長 その他、いかがですか。高橋委員。

○高橋委員 1点質問をさせていただきたいと思いますけれども、報告書の5ページ「3 教育訓練給付について」の2つ目の○の2行目、「専門実践教育訓練給付については、未だ受給者が少ない状況にある。このことから」というくだりで給付率の引き上げと上限額の引き上げについて言及していますが、何をもっていまだ受給者が少ないというふうに判断しているか、ちょっと疑問があります。

 というのは、お配りいただいている雇用保険制度関係資料に「教育訓練給付の支給状況」というところがありまして、専門実践教育訓練給付を見ると、平成28年度はまだ7カ月分の実績しか上がっていませんが、平成27年度と比べて受給者数が2.4倍にふえておりまして、これだけの数字を見る限りにおいては少ないと判断する論拠というのが薄いように感じておりまして、他方、この報告書では専門実践教育訓練給付の受給者水準というものが念頭にあって、それと比べてこの7カ月分の数字は少ないというふうに判断したのか。何をもって少ないと判断しているのかというのが質問の1点目であります。

 2点目は単なる意見ですが、教育訓練給付というのは、受給者数をなるべく多くすることを最大唯一の目的とするものではないのではないかと感じておりますので、なぜ受給者が少ないという一点をもってこうした制度の充実を図ろうとするのか、そのあたりのところにやや違和感があるということを申し上げます。これは意見でございますので、答弁は結構でございます。

 以上でございます。

○阿部分科会長 それでは、なぜ少ないと判断しているかという御質問でしたので、お願いします。

○雇用保険課長 受給者が少ないという部分でございますけれども、まず実績の14ページをごらんになっていただきますと、受給者自体の数、括弧の中で書いておりますのが初回受給者なので、専門教育訓練給付は6カ月ごとに何回か支給されますので、実際に受けておられる方の頭数としてはこの括弧の中になろうかと思います。

 なぜ少ないかということですが、そもそも平成26年に制度を創設しましたときに、予算上等々で想定をしていた人数に比べて使われている実績が少ないということで、「受給者が少ない」というふうな表現になっているのではないかと思います。

○阿部分科会長 よろしいですか。

○高橋委員 はい。

○阿部分科会長 ありがとうございました。

 では、御意見もございましたけれども、御意見として承りたいと思います。ありがとうございます。

 それでは、森下委員、お願いします。

○森下委員 本文の9ページ、その他の事項でございます。マルチジョブホルダーとの雇用保険の適用のあり方ということで、今後議論をしていくということになっておりますが、我々は雇用側の者として、年齢層にもよりますが、45歳以上くらいの仕事を探している方々が今、非常に厳しい労働環境にいざるを得ない。どうしても最低賃金程度の時間給で生活をせざるを得ない。そして、結局は労働時間をふやしていって、生活を維持するというような傾向があるように聞いているのですが、マルチジョブホルダーということで、我々の責任として、雇用保険、我々はどういう形でそういう方に対して対応したらいいのか。事業者としてもその辺に非常に興味があるので、今後どういう方向に持っていかれるつもりなのか、もし何かもくろみ等があれば、教えていただければと思うのですが。

○阿部分科会長 では、御質問ですので、お願いします。

○雇用保険課長 マルチジョブホルダーの件に関しては、ここに記載のとおりでございまして、複数の職場で就労することで週所定労働時間20時間を超える方、この方たちには現行の制度の中では適用されませんので、こういう人のセーフティネットが必要なのではないかという議論もある一方で、制度自体としてはどういうふうに考えていくのかということについて、技術的な観点とか専門的な観点が必要になる部分がございます。

 ですので、これによっては、どういう方向かということをあらかじめ予見するということではなく、どういう形で整理ができて、どういう形でのセーフティネットが必要なのかということを含めて今後検討していく内容になるのではないかと思います。

○阿部分科会長 どうぞ。

○森下委員 悪い言い方をすれば、当社では20時間以内で働いてくれというような会社が何社もあって、結局、事業者として雇用保険逃れといいますか、そういう会社がもしかしたら出てくる可能性もあるので、そういうものに対して、働く方々の生活、最低保障というのを、国としてはいろいろと考えていらっしゃるとは思いますが、雇用保険上、そういう方たちをどういう形で扱うかというのは、これからかなり切実な問題になっていくのかなと思います。

35歳とか40歳くらいまでであれば、まだ働く場所というのを探す可能性は非常に高いと思うのですが、45歳以上とか、高齢者になればなるほど厳しい現状があると思うので、その辺については、専門家のレベルでぜひ検討していただいて、我々事業者側もどういう対応をしたらいいか、また教えていただければと思っています。

○雇用保険課長 はい。

○阿部分科会長 ありがとうございました。

 ほかにいかがですか。特にないようでしたら、当報告を雇用保険部会の報告として了承してもよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。

 それでは、当分科会として本件は了承したこととします。

 事務局より今後の手続について説明をお願いいたします。

○雇用保険課長 ただいま御了承いただきました雇用保険部会報告書に基づきまして、今後雇用保険法の改正につきまして作業を進めていくということになります。

 まず、要綱等の整備ということになりますけれども、これにつきましては年明けに審議会で議論をお願いする予定でございます。

 雇用保険料率の引き下げの関係などがございまして、早急に作業を進める必要があると考えてございます。通常のスケジュールでありますれば、まず分科会を開催して法律案要綱を諮問した上で、雇用保険部会において御議論いただいて、その意見を踏まえて、再度分科会で御議論いただき、答申をお願いするという段取りになりますが、今回、時間的な関係もございますし、また、分科会委員の皆様の御日程もございますので、あらかじめ雇用保険部会において法律案要綱について御意見を頂戴した上で、その意見を踏まえまして、職業安定分科会において御議論いただくことをお願いできればと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○阿部分科会長 では、そのようにさせていただきますので、よろしくお願いします。

 では、次に移らせていただきます。次の議題は「職業紹介等に関する制度の改正について」です。本件につきましては、先日開催された労働力需給制度部会において報告が取りまとめられております。

 本日は、需給制度部会長の鎌田委員が御欠席ですので、事務局より御報告をお願いいたします。

○需給調整事業課長 事務局でございます。事務局から御報告申し上げます。

 職業紹介等に関する制度の見直しにつきましては、昨年3月26日の労働力需給制度部会において御了解いただいた上で、有識者等によります雇用仲介事業等の在り方に関する検討会を開催して御議論いただき、その報告を踏まえ、本年9月15日から労働力需給制度部会におきまして御議論いただき、12月7日に報告書を取りまとめていただいたところでございます。

 内容は、職業紹介事業の機能強化や求人情報等の適正化などでございまして、お手元の資料No.2を読み上げます。資料No.2の3枚目からでございます。

職業紹介等に関する制度の改正について(報告書)

 第1 基本的考え方

 1 社会経済の変化に伴い、職業紹介事業や募集情報等提供事業等、求職者や求人者が利用する事業の多様化が進む中、求職者等が不利益を被るなどの不適切な事案に対して的確に対応していくことはもとより、求職と求人のより適切かつ円滑なマッチングを進めていくことも求められている。

 

2 労働市場において労働力の需給調整に関わる事業については、その役割に応じて、適格性が確保され、責任が果たされる必要がある。このため、まずは、求職者保護を基本としつつ、求職者が各々の能力に適合した職業に就くことができるよう、これらの事業の適正な運営を確保するための取組を強化していくことが喫緊の課題である。また、求職者及び求人者の利便性を向上させる必要もある。

 

 3 こうした考え方に基づき、職業紹介事業等の機能強化や求人・募集情報の適正化等に向けて、職業紹介等に関する制度の改正を行い、次のような具体的措置を講ずることが必要である。

 なお、その他の論点についても、今後、必要に応じて検討を進めていくことが適当である。

 

 第2 具体的措置

  1 職業紹介事業

  (1)欠格事由

 労働者派遣事業の許可に係る欠格事由と同様に、職業紹介事業の許可に係る欠格事由について、労働・社会保険関係法令違反で罰金刑に処された者、職業紹介事業の許可を取り消された者の役員であった者、職業紹介事業の許可取消しに係る処分逃れをした者及び暴力団員等を追加することが適当である。

 

  (2)職業紹介責任者

        
         ア 職業紹介事業者が選任する職業紹介責任者について、他の従業員に対する職業紹介の適正な遂行に必要な教育(労働関係法令等)も行わせることが適当である。

    イ 職業紹介責任者講習について、次の措置を講ずることが適当である。

     ・ 新規受講者のみ必修となっている課目を、受講者全員に必修とすること。

     ・ 講習内容に、労働関係法令等の改正の動向、他の従業員に対する教育方法等を追加すること。

     ・ 理解度の確認のための試験を実施するとともに、当該試験に合格することを講習修了の要件とすること。

    ウ 職業紹介責任者について、定期的に労働関係法令等の改正に関する情報を把握できるよう、「厚労省人事労務マガジン」(メールマガジン)に登録しなければならないこととすることが適当である。

    エ 職業紹介責任者の要件及び職業紹介責任者講習の基準について、法令等に規定することが適当である。

 

  (3)求人及び求職の申込みの受理

      ア 公共職業安定所、職業紹介事業者等が求人の申込みを受理しないことができる場合として、次の場合を追加することが適当である。

           ➀ 求人者が労働関係法令違反で処分・公表等の措置が講じられた場合(参考:若者雇用促進法関係法令)


                 ➁ 求人者が、暴力団員、役員に暴力団員がいる法人、暴力団員がその事業活動を支配する者等に該当する場合


                 ➂ 求人者が、正当な理由なくイの求めに応じない場合


        イ 公共職業安定所、職業紹介事業者等は、求人の申込みがア➀又は➁に該当するかどうか確認するため、求人者に報告又は資料の提出を求めることができるものとするとともに、
            求人者は、正当な理由がない限り、その求めに応じなければならないものとすることが適当である。


        ウ 取扱職種の範囲等の届出等により取扱職種の範囲等を限定することを認める事項の例示として、賃金を追加することが適当である。

 

  (4)職業紹介事業者に関する情報提供

    ア 求職者、求人者等による適切な職業紹介事業者の選択に資するよう、職業紹介事業者は、業務に係る実績(職業紹介により就職した者の数及び就職した者(期間の定めのない労働契約を締結した者に限る。)のうち6か月以内に離職した者(解雇により離職した者を除く。)の数又はこれと同等と認められる数)及び手数料に関する事項について、インターネットにより情報提供しなければならないものとすることが適当である。あわせて、6か月以内に離職した者に該当する場合は、その旨を求人求職管理簿に記載しなければならないものとすることが適当である。

      なお、これらの業務に係る実績と併せて、求職者、求人者等が職業紹介事業者等を選択する際に参考となる情報(職種ごと、地域ごと等の就職の状況、離職の理由等)も提供することが望ましいものとすることが適当である。

   イ 公共職業安定所は、職業紹介事業者等と連携して求職と求人のより適切かつ円滑なマッチングを進めていく観点から、求職者又は求人者が必要とする場合、情報提供を希望する職業紹介事業者等に関する情報を提供するものとすることが適当である。

 

  (5)職業紹介事業者間の業務提携等

    ア 職業紹介事業者間の業務提携について、現行の取扱い(提携先の職業紹介事業者(以下「提携先」という。)に求職又は求人(以下「求職等」という。)を提供しようとする場合、求職者又は求人者に対して、提携先に関する情報を提示した上で、提携先への求職等の提供について同意を得る必要)を前提に、職業紹介事業者と複数の職業紹介事業者との間の業務提携が可能である旨を明確化することが適当である。あわせて、職業紹介事業者間の業務提携について、次のとおり取り扱うことが適当である。

     (ア)労働条件等の明示義務については、原則として、求職の申込みを求職者から直接受理した職業紹介事業者が履行すべきものとすること。また、求人求職管理簿への記載(職業紹介の取扱状況及び1(4)アの離職の状況に関する事項)及び職業紹介事業報告(就職件数及び手数料収入)に関する義務については、業務提携を行う職業紹介事業者の間で取り決めた一者が負うこととすること。

     (イ)複数の職業紹介事業者を提携先とする場合、求職者又は求人者が提携先ごとに同意又は不同意の意思を示すことができるような方法とすることを前提に、一度にまとめて求職者又は求人者の同意を求めることを可能とすること。

        なお、当面、一度にまとめて求職者の同意を求めることができる提携先の数を10としつつ、施行状況を注視することが適当であること。

     (ウ)求職者又は求人者の同意を求める際に提示する提携先に関する情報について、次の措置を講ずること。

       ➀ 提示が必要な事項として、1(4)アの業務に係る実績を追加すること。

       ➁ 必要に応じて職業紹介事業の実施地域、就職件数の多い職種、年齢、賃金及び雇用形態等を提示することとすること。

     (エ)業務提携を行う全ての職業紹介事業者は、個人情報の適正な管理(正確かつ最新のものに保つための措置、紛失、破壊及び改ざんを防止するための措置等)について、より一層、的確に対応しなければならないものとすることが適当である。

 

    イ 職業紹介事業者と職業紹介事業者以外の者との間で業務提携を行うことが可能な業務(職業紹介に当たらない業務)を明らかにする観点から、職業紹介事業者以外の者から職業紹介事業者に対し、求人申込みの意向を持つ求人者がある旨の情報提供を行うことは差し支えない旨を明確化することが適当である。

 

  (6)就職した労働者の早期離職等への対応

     就職した労働者の早期離職や当該労働者を紹介した職業紹介事業者による再度の職業紹介等への対応として、次の内容を職業安定法に基づく指針に規定することが適当である。

    ➀ 職業紹介事業者は、その紹介で就職した者(期間の定めのない労働契約を締結した者に限る。)について、2年間、転職の勧奨を行ってはならないこと。

    ➁ 職業紹介事業者は、その紹介で就職した労働者が早期に自ら退職した場合その他特段の事情がある場合に手数料の一部を求人者に返戻する制度、在職期間に応じて分割して手数料を徴収する制度等(返戻金制度等)を設けることが望ましいこと。

    ➂ 職業紹介事業者が求人者に明示する手数料に関する事項に返戻金制度等が含まれること及び求職者に明示する手数料に関する事項に求人者から徴収する手数料が含まれることを明確化すること。

    ➃ 職業紹介後の苦情処理に係る体制の整備(相談窓口の明確化等)等を行うこと。

 

  (7)求人者に対する指導

     求人者を、職業安定法に基づく指針、指導及び助言、申告、報告徴収及び検査、勧告及び公表の対象とすることが適当である。

 

  (8)その他

    ア 職業紹介事業の許可基準のうち事業所に関する要件について、現行の面積要件(おおむね20平方メートル以上)に代えて、求職者及び求人者のプライバシーを保護するための次に掲げるいずれかの措置を講ずることとすることが適当である。

      なお、当分の間、現行の面積要件を満たす場合は、この限りではないこととすることが適当である。

    (ア)職業紹介の適正な実施に必要な構造・設備(個室の設置、パーティション等での区分)を有すること。

    (イ)他の求職者又は求人者と同室にならずに対面の職業紹介を行うことができるような措置(予約制、貸部屋の確保等)を講ずること。この場合、当該運営と異なる運営を行ってはならない旨の許可条件を付すこと。

    イ 事業所外での事業実施について、職業紹介責任者が当該事業所外にいる場合又は当該事業所外に速やかに到着できる場合であり、かつ、プライバシー保護や個人情報保護の措置が実施される場合は、これを可能とすることが適当である。

    ウ 職業紹介事業と労働者派遣事業を兼業する場合の個人情報等の管理について、現行制度(職業紹介に関する情報(求職者に係る個人情報、求人者に係る情報)の労働者派遣での使用禁止又は労働者派遣に関する情報(派遣労働者に係る個人情報、派遣先に係る情報)の職業紹介での使用禁止)は維持しつつ、別個の管理は要しないこととすることが適当である。

    エ 特別の法人が無料職業紹介事業を行う際の届出について、役員の住民票の写し及び履歴書の添付を廃止することが適当である。

 

  2 募集情報等提供事業

  (1)募集情報等提供と職業紹介との区分基準

     募集情報等提供事業(※)について、現在、局長通達で示している、民間企業が行うインターネットによる募集情報等提供と職業紹介との区分に関する基準の内容のうち、基本的な考え方を職業安定法に基づく指針に規定することが適当である。

     また、募集情報等提供事業の形態が多様化する中、当該指針に基づく判断の参考となるよう、例示を追加することが適当である。

    ※ 次の行為(募集情報等提供)を業として行うこと(反復継続の意思をもって行うこと)をいう。

     ・ 労働者の募集を行う者の依頼を受けて、当該募集に関する情報を、労働者となろうとする者に提供すること

     ・ 労働者となろうとする者の依頼を受けて、当該者に関する情報を、労働者の募集を行う者に提供すること

 

  (2)募集情報等提供事業を行う者に係る規定の整備

    ア 募集情報等提供事業を行う者及び労働者の募集を行う者は、業務運営に当たって、労働者の適切な職業選択に資するよう、必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとすることが適当である。

    イ 労働者の募集を行う者は、情報が的確に表示されるよう、募集情報等提供事業を行う者の協力を得て、必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとすることが適当である。

    ウ ア及びイの具体的な内容を定めるため、職業安定法に基づく指針の根拠規定を整備することが適当である。

    エ アからウまでの施行に関して必要があると認めるとき、募集情報等提供事業を行う者に対し、指導及び助言並びに報告徴収を行うことができることとすることが適当である。

 

  (3)募集情報等提供事業を行う者に係る指針

     募集情報等提供事業を行う者が講ずべき具体的な措置として、次の内容を職業安定法に基づく指針に規定することが適当である。

    ア 業務運営に関する事項

     ➀ 労働者となろうとする者、労働者の募集を行う者等からの苦情処理に係る体制の整備(相談窓口の明確化等)等を行うこと。

     ➁ 労働者となろうとする者の個人情報の適正な管理等を行うこと。

     ➂ 業務上知り得た人の秘密を守ること、個人情報や法人である雇用主に関する情報を他人に知らせないこと。

     ➃ 募集に応じた労働者から報酬を受領しないこと。

     ➄ 労働争議に介入しないこと。

    イ 提供する募集情報の適正化に関する事項

     ➀ 提供する募集情報が、次に該当する旨を認識した場合は、労働者の募集を行う者に変更を依頼すること。また、労働者の募集を行う者が依頼に応じない場合は、当該募集情報を提供しないなど適切に対応すること。

      ・ 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的の募集情報

      ・ 労働条件等が法令に違反している募集情報

      ・ 実際の労働条件と相違する内容を含む募集情報

     ➁ ➀に掲げる募集情報に該当するおそれを認識した場合は、労働者の募集を行う者に対し、➀に該当しないかどうか確認すること。

     ➂ 労働者の募集を行う者の了解を得ることなく募集情報を改変してはならないこと。

 

  (4)その他

     募集情報について、より幅広い項目が示されるよう、業界団体等の自主的な取組を促進することが適当である。

 

  3 委託募集

  (1)委託募集の許可制等

     労働者の募集を委託する者に係る許可制(報酬の認可制を含む。)及び届出制並びに被用者又は募集受託者への報酬供与の禁止の在り方について、現行制度の運用状況をみつつ、引き続き検討することが適当である。

     あわせて、合同募集や採用業務等の委託に関して、委託募集や職業紹介に係る制度に則して適正に対応することが適当である。

 

  (2)募集受託者による労働条件等の明示

    ア 募集受託者は、労働条件等の明示に当たっては、その的確な表示に努めなければならないものとすることが適当である。

    イ 募集受託者の労働条件等の明示義務に係る明示事項に、募集委託者の氏名又は名称を追加することが適当である。

 

  4 労働者供給事業

  (1)労働者供給事業者に対する指導

     労働者供給事業について、事業運営に関して継続的に確認すべき事項として、次の内容を職業安定法に基づく指針に規定することが適当である。また、当該指針について、指導監督による履行確保を図りつつ、その施行状況を注視することが適当である。

    ➀ 労働者を供給するに当たって、人種、宗教、性別、門地又は身分を理由とする差別的な取扱いをしてはならないこと。

    ➁ 労働者供給事業により供給される労働者でなくなる自由が、労働者に保障されていること。

    ➂ 労働組合法第5条第2項各号に掲げる規定を含む組合規約が定められ、これが遵守されている等、民主的な方法により運営されているものであること。

    ➃ 労働者供給が無料で行われていること。

    ➄ 労働者供給事業により供給される労働者から徴収する組合費が過度に高額でないこと。

    ➅ 労働者供給事業を行う者又は労働者供給を受けようとする者が、労働者を労働・社会保険に適正に加入させているものであること。

 

  (2)労働者供給を受けようとする者に対する指導

     労働者供給を受けようとする者を、職業安定法に基づく指針、指導及び助言、申告、報告徴収及び検査、勧告及び公表の対象とすることが適当である。

 

  5 労働条件等の明示・指導監督等

  (1)労働条件等の明示

    ア 求人者、労働者の募集を行う者及び労働者供給を受けようとする者は、労働契約の締結に際して提示しようとする労働条件等(職業安定法第5条の3第3項の書面等による明示が必要な事項に限る。)が、次の場合に該当するときは、その旨を、当該労働契約の相手方となろうとする者が認識できるよう書面等で明示しなければならないものとすることが適当である。

     ➀ 職業安定法第5条の3第1項の規定による当初の明示(以下「当初の明示」という。)において明示していなかった労働条件等を新たに提示しようとする場合

     ➁ 当初の明示において一定の範囲をもって明示した労働条件等を特定して提示しようとする場合

     ➂ 当初の明示において明示した労働条件等と異なる内容の労働条件等を提示しようとする場合

    イ 労働条件等の明示義務に係る明示事項について、次の措置を講ずることが適当である。

    (ア)次の内容を明確化すること。

      ➀ 若者雇用促進法に基づく指針と同様に、固定残業代に係る計算方法、固定残業代を除外した基本給の額等を明示しなければならないこと。

      ➁ 期間の定めのある労働契約を締結しようとする場合は、当該契約が試用期間の性質を有するものであっても、試用期間満了後に締結する労働契約に係る労働条件ではなく、当該期間の定めのある労働契約に係る労働条件を明示しなければならないこと。

    (イ)次の内容を追加すること。

      ➀ 試用期間に関して、次の内容

       ・ 試用期間の有無、試用期間があるときはその期間

       ・ 試用期間中と試用期間満了後の労働条件が異なるときはそれぞれの労働条件

      ➁ 労働契約を締結する求人者又は労働者の募集を行う者の氏名又は名称[一部再掲]

      ➂ 派遣労働者として雇い入れようとする場合は、その旨

 

  (2)指導監督

    ア 職業紹介事業者、労働者供給事業者等について、法令に違反する行為があった場合には、厳正に行政処分等を行うことが適当である。

    イ 求人者及び労働者供給を受けようとする者を、職業安定法に基づく指針、指導及び助言、申告、報告徴収及び検査の対象とすることが適当である。[再掲]

    ウ 求人者及び労働者供給を受けようとする者について、次に該当する場合、厚生労働大臣は、必要な措置を勧告することができることとするとともに、当該勧告に従わなかった場合はその旨公表することができることとすることが適当である。[再掲]

     ➀ 労働条件等の明示義務違反

     ➁ 5(1)アに係る明示義務違反

     ➂ 1(3)イに係る公共職業安定所、職業紹介事業者等の求めに応ずる義務違反

     ➃ ➀から➂までの違反に対し指導又は助言を受けたにもかかわらず、なお違反のおそれがあると認める場合

 

  (3)罰則

     虚偽の条件を呈示して、公共職業安定所、職業紹介事業者等に求人の申込みを行った者について、罰則の対象とすることが適当である。

 

  6 関係法制度の必要な整備

    このほか、関係法制度について、必要な検討・整備がなされることが適当である。

 

以上でございます。

○阿部分科会長 ありがとうございました。

 それでは、本件について御質問、御意見がございましたら御発言ください。では、村上委員。

○村上委員 ありがとうございます。

 私も委員として労働力需給制度部会に参加いたしまして、取りまとめに参加してきた立場から申しますと、求人をめぐるトラブルが多い中で、今回の報告では、求職者保護の点から一定程度の見直しがなされるものとして、私ども労働側としては了としたいと考えております。

 この問題は、求職者だけでなく、求人する側にとってもかかわることでありますので、今、報告書を読み上げていただきましたけれども、現行の仕組みがどのようになっていて、どういった点が充実するのかということが、もう少し施行段階より前にわかったほうがよいのではないかと思っておりますので、ぜひ早い段階でそのような資料も事務局から御提示いただきたいと思っております。

 以上です。

○阿部分科会長 建設的な御意見、ありがとうございました。御意見として承りたいと思います。

 ほかにいかがでしょうか。高松委員、お願いします。

○高松委員 UAゼンセンの高松です。

 報告書の内容で単純な質問です。1つは、2ページ目の真ん中あたり、「(3)求人及び求職の申込みの受理」のイの3行目のところに「正当な理由がない限り」というのがあるのですが、これはどういうケースが正当な理由に当たるのか教えていただきたいということ。

 もう一つは、3ページ「(5)職業紹介事業者間の業務提携等」の(イ)の3行目に「一度にまとめて」という言葉があるのですが、「一度」の具体的な意味がどういうものかわからないので、この2点を教えてください。

○阿部分科会長 では、御質問ですので、よろしくお願いします。

○需給調整事業課長 まず、御質問の1点目の2ページの「正当な理由」でございますけれども、あらかじめ想定しているものとしてはあまりないのでございますが、それは個々の理由に応じて該当するものがあり得る可能性があるということで、そのように記載しております。というのが1点目。

 2点目は、3ページ目の「一度にまとめて」でございますが、これは「求職者又は求人者」、これは職業紹介事業者の顧客でございますけれども、顧客に対して提携先を提示する場合に、個別の同意をとる際に、あまり多数の提示をされたのでは顧客の側が判断しにくいであろうということから、一度に提示することができるリストに載せるのは10までという意味でございます。念のため申し上げれば、提携する数そのものを制約するということではございません。

○阿部分科会長 よろしいですか。どうぞ。

○高松委員 1つ目のほうはわかりました。

 2つ目のほうは、一度に10までということが書いてあるのですが、それが例えば1日に10ずつ、10回やれば100件ですけれども、そういうことは想定されているのかという質問なのですが。

○阿部分科会長 では、どうでしょうか。

○需給調整事業課長 それは可能でございます。一度に判断を求められる数が10だという意味でございます。

○阿部分科会長 だそうです。

○高松委員 はい。

○阿部分科会長 ほかにいかがでしょうか。

 それでは、ほかに特にないようでしたら、報告文案の配付をお願いしたいと思います。

(報告文案配付)

○阿部分科会長 それでは、ただいま配付していただきました報告文案によって、労働政策審議会長宛てに報告したいと思いますが、いかがでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。それでは、そのように報告させていただきたいと思います。

 これをもちまして厚生労働大臣に対する建議となりますので、御了解をいただきたいと思います。

 それでは、事務局より今後の手続きについての御説明をお願いいたします。

○需給調整事業課長 先ほど建議をいただくことになりました職業紹介等に関する制度の改正につきましては、今後、事務局のほうで法律案要綱を作成いたしまして、本分科会で御議論をお願いする予定としております。

 段取りにつきましては、先ほど雇用保険課長から御説明申し上げました雇用保険制度と同様に、あらかじめ労働力需給制度部会において法律案要綱について御意見を頂戴いたしまして、その意見を踏まえて職業安定分科会において御議論をいただくようにお願いできればと存じます。

 以上でございます。

○阿部分科会長 それでは、そのようにさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 本日予定されている議題は以上で終了いたしました。本日の分科会はこれで終了したいと思います。

 本日の会議に関する議事録については、労働政策審議会運営規程第6条により、分科会長のほか、お二人の委員に署名をいただくことになっております。つきましては、労働者代表の矢木委員、使用者代表の吉岡委員にお願いしたいと思います。

 本日もお忙しい中、どうもありがとうごました。

 


(了)

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