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2016年5月27日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

○日時

平成28年5月27日(金)16:00~


○場所

厚生労働省専用第15・16会議室


○出席者

出席委員(14名)五十音順

金 子 明 寛、 川 上 純 一、 神 田 敏 子、 佐 藤 雄一郎、
鈴 木 邦 彦、 内 藤 幹 彦、 野 田 光 彦、 林   邦 彦、
古 川   漸、 増 井   徹、◎松 井   陽、○松 木 則 夫、
村 田 美 穂、 山 田 清 文
(注)◎部会長 ○部会長代理
他参考人1名

欠席委員(7名)

奥 田 晴 宏、 加 藤 総 夫、 木 村   剛、 杉     薫、
武 田 正 之、 平 石 秀 幸、 平 安 良 雄 

行政機関出席者

森   和 彦 (大臣官房審議官)
山 田 雅 信 (審査管理課長)
矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
俵 木 登美子 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

○議事

○審査管理課長 定刻となりましたので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会」を開催させていただきます。本日はお忙しいところ、お集まりをいただきまして誠にありがとうございます。

 まず、本日の委員の出席についてでございますが、奥田委員、加藤委員、木村委員、杉委員、武田委員、平石委員、平安委員より、御欠席との連絡をいただいております。また、佐藤委員より、少し遅れていらっしゃるという御連絡をいただいております。従いまして、現在のところ当部会委員数21名のうち13名の委員の御出席をいただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。

 なお、本日は審議事項議題1に関しまして、国立大学法人信州大学医学部形成再建外科学講座准教授の杠俊介先生を参考人としてお呼びしております。それでは松井部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。

○松井部会長 皆さん、こんにちは。それでは早速本日の審議に入ります。まず、事務局から配布資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストにつきまして報告してください。

○事務局 それでは資料の確認をさせていただきます。本日席上に議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しております。議事次第に記載されている資料1~12をあらかじめお送りしております。この他、資料13、審議品目の薬事分科会における取扱い等()、資料14、専門委員リスト、資料15、競合品目・競合企業リストを配布しております。

 続きまして、資料15、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストにつきまして御報告いたします。各品目の競合品目選定理由については次のとおりです。まず、資料15の1ページを御覧ください。ヘマンジオルシロップ小児用0.375%ですが、本品目は乳児血管腫を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はありませんことから、競合品目はなしとしております。

 2ページを御覧ください。ビムパット錠50mg、同錠100mgですが、本品目は他の抗てんかん薬で十分な効果は認められないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する抗てんかん薬の併用療法を予定の効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 3ページを御覧ください。プラルエント皮下注75mgペン他3規格ですが、本品目は家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 続きまして4ページを御覧ください。デュオドーパ配合経腸用液ですが、本品目はレボドパ含有製剤を含む既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病の症状の日内変動の改善を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 続きまして5ページを御覧ください。ブリリンタ錠60mg、同錠90mgですが、本品目はアテローム血栓症の発現リスクが特に高い陳旧性心筋梗塞及び経皮的冠動脈形成術が適用される急性冠症候群を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 続きまして6ページを御覧ください。ミカトリオ配合錠ですが、本品目は高血圧症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 続きまして7ページを御覧ください。セレキシパグですが、本品目は外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 最後にパチシランですが、本品目はトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーを予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上でございます。

○松井部会長 今の事務局からの説明に対しまして何か御質疑ございませんでしょうか。御意見ありませんか。それでは、委員の皆さんの御了解を得たものといたします。

 それでは、委員からの申し出状況についても御報告ください。

○事務局 各委員から申し出状況につきましては、次のとおりです。まず議題1、ヘマンジオルシロップですが退席委員、議決には参加しない委員ともにございません。議題2、ビムパット錠ですが退席委員はなし、議決には参加しない委員は野田委員、村田委員です。議題3、プラルエント皮下注ですが退席委員、議決に参加しない委員ともにございません。議題4、デュオドーパ配合経腸用液ですが退席委員は村田委員、議決に参加しない委員は金子委員、川上委員、野田委員。議題5、ブリリンタ錠ですが退席委員はなし、議決には参加しない委員は金子委員、川上委員、野田委員です。議題6、ミカトリオ配合錠ですが退席委員はなし、議決には参加しない委員は野田委員、村田委員。議題7、セレキシパグですが退席委員はなし、議決には参加しない委員は村田委員。最後に議題8、パチシランですが退席委員、議決には参加しない委員、ともにございません。以上でございます。

○松井部会長 今の事務局からの説明について、何か特段御意見ございませんか。よろしいでしょうか。

 それでは早速審議に入りますが、本日の議題は審議事項が8議題、報告事項が4議題です。議題1について、機構から概要を説明してください。お願いします。

○医薬品医療機器総合機構 それでは議題1、資料No.1、医薬品ヘマンジオルシロップ小児用0.375%の製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。乳児血管腫は血管内皮の増殖を特徴とする良性血管性腫瘍です。一般的に生後1~4週に出現し、1年以内に急速に増大した後、多くの場合は数年かけて徐々に自然消退します。しかし、病変の大きさや発生部位によっては、気道狭窄、斜視や乱視、出血を伴う潰瘍形成等が起きる可能性があり、このような場合には速やかな治療が必要です。

 本剤の有効成分であるプロプラノロールは、不整脈や高血圧などに対しては乳児に長年の使用経験があります。乳児血管腫に対しては、血管収縮作用や血管新生抑制作用などにより効果を示すとされ、海外では、本剤は2014年に米国及び欧州で承認されています。また、国内の治療ガイドラインで治療選択肢の一つとされており、国内でも乳児血管腫に対する使用実態があるため、日本小児血液・がん学会から、医療上の必要性の高い未承認・適応外薬検討会議に対して、乳児血管腫に対する開発要望が提出されています。なお、本品目は20131115日付けで希少疾病用医薬品に指定されています。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.14に示します専門委員を指名いたしました。

 審査の概要です。有効性に関しまして、報告書10ページ上から1行目を御覧ください。増殖期の乳児血管腫患者を対象とした国内試験において、ベースラインと比較した24週後の有効率は78.1%であり、95%信頼区間の下限値は、あらかじめ設定された有効性の判定基準を上回りました。また、報告書12ページの表12を御覧ください。増殖期の乳児血管腫患者を対象とした海外のプラセボ対照比較試験において、本剤群のプラセボ群に対する優越性が検証されました。以上より、本剤の有効性は示されたと考えました。

 安全性について、報告書20ページ下から6行目を御覧ください。国内外の臨床試験や海外市販後安全性情報から、本剤の乳児血管腫における安全性プロファイルはプロプラノロールの既知の安全性プロファイルと概ね同様と考えられました。しかし、本剤の投与対象患者は主に乳児であり、徐脈、低血圧、気管支攣縮及び低血糖症の副作用は外観から判断し難い場合もあるため、特に注意が必要と考えました。したがって、本剤は低用量から漸増する用法・用量とし、添付文書においては「重要な基本的注意」の項で、「初回投与時及び増量時は、小児科医との連携のもと、心拍数・血圧・呼吸状態・血糖値等を少なくとも投与2時間後まで、1時間毎に確認する」旨の注意喚起をすることといたしました。

 また、報告書21ページ下から5行目を御覧ください。本剤のリスクを踏まえ、添付文書の「効能・効果に関連する使用上の注意」の項において、「本剤についての十分な知識と乳児血管腫の治療経験を持つ医師が、本剤の有益性が危険性を上回ると判断した場合にのみ投与すること」、「原則として、全身治療が必要な増殖期の患者に投与すること」を注意喚起することといたしました。更に、報告書2324ページを御覧ください。適正使用に関しまして、医療従事者向け及び保護者向け資材では、本剤の副作用の徴候や対応、本剤の投与方法について周知徹底することを予定しています。

 以上のような審査の結果、乳児血管腫を効能・効果とした本剤の有効性は示され、徐脈等の副作用については、増量方法を遵守し、適切なモニタリングや小児科医との連携を行うことで、本剤の安全性は許容可能と考えられたことから、承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。

 本品目は希少疾病用医薬品に指定されていることから、再審査期間は10年、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品にいずれにも該当しないと判断しました。薬事分科会では報告を予定しています。御審議、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○松井部会長 本議題に関連いたしまして、杠参考人にこの会議に出席していただいております。御発言をお願いいたします。

○杠参考人 乳児血管腫について、まずお話したいと思います。乳児血管腫というのは従来「いちご状血管腫」と呼ばれていた疾患です。その名前の方が皆さんに馴染みのある名前だと思うのですけれども、表面上にあればいちご状に見えますが、深いところにある場合には青味を帯びた大きな腫瘤という形で見えます。それで、乳児に発する腫瘍の中では最も多いと言われている腫瘍が、この乳児血管腫です。先ほど機構の方から説明がありましたが、これは生まれた時はあまりはっきりしませんが、1か月ぐらいで一気に膨らんできて、膨らみが大体生後半年から8か月ぐらいまで膨らみ続けます。その後なぜか自然退縮していって、最終的に12歳ぐらいまでにほとんど全部が退縮してしまうと。ですから、自然に待っていても、基本的には退縮するというのが乳児血管腫です。

 ただ、その中であまりに危険な血管腫というのがあります。それは例えばどういうものかと言いますと、頚部に腫瘤があって、急激に増大してきた場合に気道を圧迫してしまうという状態があります。それと、眼窩周囲にあった場合に目を覆ってしまって、そのまま視力障害になってしまうという血管腫があります。更に、耳下腺周囲にある場合には難聴になる危険性がありますし、体表面に幾つか、特に私ども専門家の間では体表面に三つ以上血管腫がある場合には、肝臓に血管腫がある可能性がある。肝臓に大きな血管腫があって増大すると、心不全になる可能性があるということがよく言われております。そのような危険性のあるものですね。それ以外に、表面にあって、潰瘍化して出血している。この場合は従来であれば手術する場合もあったのですが、なるべく小さな子どもに対して手術ということはしたくないという現状があります。そこら辺が絶対的に薬で何か治療できないのかという状況でありますが、それ以外に顔面の方に、単純に顔面に大きなものがあるだけで、膨らんで消えてはいくのですけれども、顔面にあると、消えた後にものすごい醜状を残します。鼻にあると鼻が歪んでしまってその後形成手術が必要になるということがあります。できるだけそういう状況は避けたいということがありまして、従来であればステロイドを内服させたり、ステロイドを注射したりという治療が行われてきました。

 プロプラノロールというのは2008年にフランスのNICUの医師がたまたま乳児血管腫がある子で、心臓が悪い子に飲ませたら一気に消えるという報告があって以来、世界中に広まってきたと。それで欧米の方ではもうこれがファーストラインになっているという現状があります。我が国においても、このプロプラノロールを使用できるようにしていただきたいというのが、現場での現状としてあります。大体以上です。ただし、使用に当たっては、私は形成外科医ですけれども、これは血管腫があれば何でも使っていいという訳ではなくて、「血管腫」と呼ばれている病気の中には、実は色々なものが日本の場合は紛れていまして。乳児血管腫以外に単純性血管腫、海綿状血管腫、あるいはつる状血管腫と言われている全く別の病態を持つものがあり、そういったものにはこのプロプラノロールは効きませんので、そういうのをしっかり見分けられる医師が、これを使わないといけない。その上で、飲ませたときの低血糖であったり、徐脈であったり、低血圧、そこら辺のことをしっかりモニタリングして見られる小児科医が必要になります。ですので、かなり特定された専門機関でこれは扱っていただきたいというのが条件になると考えます。以上です。

○松井部会長 どうもありがとうございます。それでは委員の先生方から御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。

○古川委員 10ページに「除外基準」というのがありまして。そこに、「Kasabach-Merritt症候群」と載っていると思うのですが、これは血管腫と言っても、ちょっと違う組織で、しかし血管腫の延長線上にあると思いますけど。これにプロプラノロールが効くという報告もあったりもするのですけれども、これを除いた理由というのは何でしょうか。

 それと、もう一つ、この添付文書の方には、この除外基準に当たるようなものには使わないと書いてあるのですけど、このKasabach-Merrittは使ってもいいのか、使ってはいけないのか書いていないので、その辺を教えてください。

○松井部会長 まず、機構からお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 このKasabach-Merritt症候群を除いた理由というのは、恐らくこの乳児血管腫の患者さんを純粋に評価して、選択して、試験するという意図で、これらの患者さんを除いたということかと思います。

 添付文書の方に記載していないというのは、これをわざわざ記載するのかというところまで確認はしておりませんが、欧米の方でもこのような形で、特にこの患者さんを除外するような注意喚起をしておらずに使っているということもありまして、私ども欧米の添付文書と同様な使い方で差し支えないのではないかと思っているところです。

○松井部会長 これらの点について、杠先生いかがお考えでしょうか。

○杠参交人 Kasabach-Merrittの議論に関しては乳児血管腫では起こさないと言われています。そこら辺も非常に混同のあるところなのですけれども、専門家の間ではKasabach-Merritt現象を起こす血管腫瘍というのがkaposiform hemangioepithelioma、あるいはtufted angiomaといった、いわゆる乳児血管腫でもかなり増殖性の強いものだけがそれを起こすと言われています。ただ、日本名にしてしまうと、そういう増殖性の強い血管腫も、乳児血管腫も「血管腫」という名前でまとめられてしまうものですから、あえてそこは、これは乳児血管腫に使うのがプロプラノロールだということで、除外というふうにしたというところだと思います。

○古川委員 そうすると、Kasabach-Merritt、この細胞増殖、内皮細胞増殖、はっきり分かっている方はいいのですけれども、血管腫の延長線上に考えていますと、使うことがありますよね、プロプラノロールを。これは構わない訳でしょうか。

○杠参考人 延長上で使う可能性はありますし、実際にそういう現象の時に使っている施設も、現状としてはあります。ただ、ひどいKasabach-Merritt現象の場合にはこのプロプラノロールだけでは乗りきれないという場合がほとんどですので、ですから、実際には使う場合もあると思いますが、これだけで治療できると考えると、非常に危険だというふうに考えております。

○松井部会長 杠先生がおっしゃるのは、Kasabach-Merritt症候群で血小板の減少を伴い放射線が効くものがあるという、そういうものにはもちろん使わないという。

○杠参考人 はい。使ってはいけないということはないのですが、これでは効果がない可能性がありますし、今のところまだエビデンスがないというのが現状だと思います。

○松井部会長 効果がない。古川委員、いかがでしょうか。

○古川委員 ですから、つまり対象は何しろそのKasabach-Merrittとか除いたそういうものでやって、間違えてKasabach-Merrittに使っても害はない、良くなるかどうかは別にしてですね。そういうような考え方でいいのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 はい、そうだと思います。

○松井部会長 よろしいですね。他に御質疑ございますか。

○松木部会長代理 向学のために教えていただきたいのですけど、このプロプラノロールが効くというのは非常に不思議な気がするのですけれども、作用機序として血管収縮とか β 遮断と書いてあるのですが、長期投与でないと効かないので。要するに、これ β ブロッカーとして効くという訳ではなくて、このプロプラノロール特有の何かの作用で効いているという理解で、よろしいのでしょうか。

○杠参考人 はい。そのように理解されています。血管増殖自体を抑えているのではないかということが、色々な基礎実験で証明されてきてはおりますが、完全には解明されてないというのが現状としてあります。実際に使っている現場ですと、飲ませて1日以内に血管腫の膨らみが減ってきますので、一番効く理由は、やはりその血管腫自体の血管細胞に行く血流が減るというのが、この一番の作用機序だというふうに、現場では考えておりますが。

○松井部会長 ありがとうございます。他にいかがでしょうか。

○山田委員 実際のこの薬剤の使用方法について教えていただきたいのですけれども、この中に入っております使用方法という説明書を見ますと、これはボトルで患者さんに払い出すということになるのでしょうか。

○松井部会長 いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構からお答えします。小分け用の瓶に小分けして患者さんに配布していただくことになるかと考えています。

○山田委員 製剤サンプルに添付されている患者用説明書の図に掲載されている瓶の形は、小分け用の瓶の形とは異なると思いますので、分かり易く、実際に患者さんの手元に渡る小分け用の瓶の図を掲載していただいた方がいいかと思います。

○医薬品医療機器総合機構 はい、ありがとうございます。企業にお伝えします。

○松井部会長 ありがとうございます。他にいかがでしょうか。

○神田委員 今の使い方とも関連あると思うのですけれども、この「適正使用」のところで縷々述べられていますので、色々手立ては取られるとは思うのですけれども、医療関係者にはもちろんなのですが、保護者も大変だろうというふうに思ったのです。必要な用量を測って、適正に投与する。それから子どもの状態を見て、投与中止等の判断をしなければならないということで、本当に大変だと思うのです。フランスでも、誤投与が報告されて重篤な例もあるということも書かれていますので、保護者向け資材を作って、分かり易く情報提供とか、注意喚起をすると。これは非常に重要だと思うのですが、例えば具体的にきちんと誤解のないように、それからきちんと伝わるようにするための工夫というのは、考えていらっしゃるのでしょうか。

○松井部会長 いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 私どもも、その点非常に重要だと考えておりまして、保護者の方向けの資材を作成し、副作用がどのようなものが現れやすいのか、副作用の予兆としてどのようなものが現れるのか等を分かり易く情報提供し、患者さんの体調で少しでも心配な点があったら、医療従事者の方に相談すること等を十分に注意喚起する予定です。投薬量の管理等については、保護者の方向けに「お薬手帳」のような形で、投薬量を記録して管理できるような資材も準備する予定です。また、医療従事者の方にも、保護者の方には投与にあたっての注意事項等を十分説明していただきたい旨を周知する予定にしています。

○松井部会長 今の神田委員の御質問は、特に量の間違いについて、過量投与になることを懸念されたのではないかと思うのですけれど。

○医薬品医療機器総合機構 過量投与に関する注意喚起についても、保護者向け資材に記載しています。Q&Aとして、例えば、「気分が悪くてその回の投与ができなかった場合はどうするのか。2回分まとめて投与していいのか」という問いに対し、「そのような場合は、その回の服用は中止し、次の回に服用する」と回答する形で記載しており、そのほかの誤投与の防止策に関しても色々具体例を挙げて、保護者向け資材で情報提供する予定です。

○松井部会長 神田委員、いかがですか。

○神田委員 はい、分かりました。ありがとうございます。よくやっていただきたいと思います。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○松井部会長 他にございますか。

○金子委員 この申請資料「1.6外国における使用状況等に関する資料」の日本語のところに、3ページですと、禁忌としまして、5週未満の未熟児とか、体重2kg以下とか書いてあるのですけれど、日本の添付文書には、それが禁忌に挙がっていない理由というのは何かあるのですか。

○松井部会長 いかがですか。

○医薬品医療機器総合機構 まず、海外添付文書で2kg未満が禁忌に設定された理由ですが、企業に確認したところ、安全上の理由ではなく、本剤はピペットを用いて患者に投与しますので、ピペットでの投与が可能と考えられる年齢の子どもの体重が大体2kgということで設定されたとのことでした。ピペットでの投与が可能かどうかというのは、患者さんの発育状況等にもよると思いますので、一律2kg未満を禁忌とする必要性まではないと考えられ、安全上の理由ということでもないということでしたので、本邦の添付文書では特に設定しなくてもいいのではと考えました。

 5週未満の患者さんを禁忌とするかどうかについては、審査報告書の21ページに、5週未満の患者さんの使用実態を確認した内容を記載しています。海外の添付文書では、恐らく試験で設定された患者さんをそのまま反映したものとして、禁忌に5週未満というものが挙げられていると思われます。一方、実際、海外での使用状況を確認しますと、5週未満の患者さんというのは少なからず含まれておりまして、フランスのCUPの情報ですと、59例ほどありますので、それなりに使用実態がある状況かと思います。他に文献報告なども見ますと、低年齢のお子さんに投与しているというような状況もありますので、必ずしも本邦の添付文書の禁忌には記載しなくてもいいのではと考えたところです。

○松井部会長 いかがでしょうか。他にございますか。それでは質疑も出し尽くしたように思いますので、議決に入ってよろしいでしょうか。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として、薬事分科会に報告いたします。

 それでは杠参考人、どうも御苦労様でございました。ありがとうございました。

                                 ( 杠参考人退席)

○松井部会長 それでは議題2に移ります。事務局から御説明をお願いいたします。

○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料No.2、医薬品ビムパット錠50mg他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。本剤は電位依存性ナトリウムチャネル阻害作用を有する抗てんかん薬であり、海外では2015年1月現在、成人てんかん患者の部分発作の併用療法の効能・効果で米国、欧州等69の国又は地域で承認されています。

 今般、成人てんかん患者に対する部分発作の併用療法に係る有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請が行われました。本申請の専門委員として、資料No.14に記載されている9名の委員を指名しております。以下、臨床試験成績を中心に審査の内容を説明させていただきます。

 まず有効性ですが、審査報告書別紙50ページ表30を御覧ください。既存の抗てんかん薬で十分な効果が認められない部分発作を有する成人てんかん患者を対象に、他の抗てんかん薬に本剤を上乗せしたときの有効性及び安全性を検討するため、国際共同第 III 相試験が実施されました。主要評価項目であるFASにおける観察期間に対する維持期間28日当たりの部分発作回数の変化量について、本剤200mg群及び400mg群とプラセボ群との間に、それぞれ統計学的な有意差が認められました。

 次に安全性ですが、審査報告書の別紙68ページの1行目「機構は」で始まる段落を御覧ください。安全性薬理試験においてPR間隔の延長が認められ、海外QT/QTc評価試験においても、用量依存的なPR間隔の延長が認められたものの、国内外第 III 相試験において重症度が高度のPR間隔延長関連の有害事象は認められず、重篤な有害事象も軽度の心電図PR延長1例のみでした。したがって、第二度又は第三度房室ブロックの既往のある患者を禁忌とする必要はないと考えるものの、本剤のPR間隔延長のリスクについては、添付文書において注意喚起する必要があると考えております。

 また、審査報告書別紙75ページの表52を御覧ください。複視、霧視などの眼障害関連の有害事象の発現割合が用量依存的に増加する傾向が示唆されたことから、眼障害のリスクについても添付文書で注意喚起する必要があると考えております。

 最後に用法・用量ですが、審査報告書別紙71ページ「7.R.6.2推奨用量及び最高用量について」の項を御覧ください。国際共同第 III 相試験では、本剤200mg群、400mg群のいずれも有効性が示されたものの、有害事象の発現割合は用量依存的に高くなる傾向が認められたことから、本剤の推奨用量は200mgとすることが適切と考えております。また、本剤400mg群の有効性は200mg群と比較して高い傾向が認められたこと、400mg投与時に認められた有害事象のほとんどが軽度又は中等度であったことなどを踏まえると、本剤の最高用量は400mgとすることが適切と考えております。

 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であり、再審査期間は8年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品、特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。

 なお、本日は御欠席ですが、事前に奥田委員より、「ラコサミドは製造時にジメチル硫酸を用いてメチル化を行っています。ジメチル硫酸は発がんの恐れがあるとされ、M7ガイドラインが対象としているDNA反応性不純物に該当すると思われます。本剤の開発はM7ガイドラインの適用外ですが、そのような場合であってもM7に準じた評価がなされるケースが多いので、本品目に関してジメチル硫酸の管理戦略をどのように行ったのか(option1~4のいずれの戦略を採用しているのか)、行っていれば説明を求めたいと思います」との御質問を頂いております。

 奥田委員から御指摘いただいたとおり、ジメチル硫酸は最新のガイドライン案に基づくと、DNA反応性不純物に該当すると考えられ、本剤の1日最大用量は400mgであることから、M7ガイドラインに準じた場合のジメチル硫酸の許容限度値の30%は1.13ppmと考えられます。本剤についてはM7ガイドラインに準じた管理は実施されておりませんが、ジメチル硫酸は原薬製造工程において効果的に除去されることが確認されており、原薬に残存する含有量は定量限界である□□□□未満であり、安全性上の懸念はないと申請者から説明されております。奥田委員には以上について事前に御説明し、御了承を頂いております。

 説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いします。いかがでしょうか、村田委員から何か御発言はございますか。

○村田委員 この薬は欧米ではかなり使われている薬ですし、結果からも特に問題はないと思います。

○松井部会長 他にいかがでしょうか。

○内藤委員 薬の有効性などには問題ないと思うのですが、添付文書の1ページの「重要な基本的注意」の()を見ると、色々な副作用が起こることがあるので、「本剤投与中の患者には自動車の運転等、危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること」と書いてあります。

 この薬の作用ということでこのように書くのは構わないのですが、本来、この薬が他の抗てんかん薬で、十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作に対する抗てんかん薬との併用療法ということですから、そもそもが自動車の運転とか、危険な重機の運転を行わないことが望ましい人に対して投与するお薬ですね。

 ここの注意事項の所だけを読んでしまうと、この薬を飲まなければ運転してもいいのかとか、逆に言うとどうしても運転しないといけないから、この薬を飲まないで運転して、それが終わってからこの薬を飲むようにしようと考える人もいるかもしれないと懸念を抱いたのです。

 ですから、この薬の場合は注意事項の所に、「難治性のてんかんはそもそもが危険な作業に従事しないことは言うまでもないが」とか、そういうようなことを書いた方がいいのではないかと感じましたが、いかがでしょうか。

○松井部会長 機構側、いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 基本的に添付文書は本剤に対する注意喚起を書く場所であり、一般的にこういった薬を使われる場合というのは、てんかん専門医の下で使われることが多いかと思いますので、そういった先生方が使うことを考えますと、あえて添付文書に書く必要はないのではないかと考えております。

○松井部会長 この点についていかがでしょうか。

○内藤委員 おっしゃるとおり、添付文書を読むのは主には専門医の先生、あとは患者です。ですから、普通の人は飲まないで運転しようとは考えないと思います。それは私もそのとおりだと思います。でも、一般の人がこれを見たときにどう思うかと考えると、少し穿った見方をすると、この会社はこの薬の副作用で事故を起こされるのは困るけれども、てんかんで事故を起こすのは会社の責任ではないから構わないというような無責任な態度だと感じる人もいるのではないかと思うのです。それはあまり好ましくないのではないかと思うのです。

 今、てんかんで重大な事故を起こしてというのが、ここ数年で何件かあって問題になっていますから、そういうことも考えるとあらゆる機会を使って、十分に注意すべきであるということを啓蒙していった方がいいのではないかと個人的には思います。

○松井部会長 大変難しい問題であるとは思いますが、まず機構からでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 てんかん患者の運転に関しましては、恐らく薬を飲むなどして、きちんとてんかん発作がないことが証明できないと、医師がてんかん患者に対して、運転をしても大丈夫だということを判断しないと運転することはできないと思いますので、基本的にこの注意喚起が書いてあったからといって、抗てんかん薬の服用をやめて運転しようといった恐れはないのではないかと考えております。

○松井部会長 村田先生、この点についてはどのようにお考えになりますか。

○村田委員 大変難しい問題ですが、この添付文書上で、この薬で今回変えますと、他の薬を全部一斉に動かせればいいのですが、そうではないと、これだけはこう書いてあると。実は、過去には色々な薬で同じようなことがありまして、この薬にはこう書いてあるけれども、こちらは書いていないから、これはいいのだというような感じになることがよくありますので、この場で決めるのはかなり難しくて、例えばてんかん学会などでそのようにして、もし書くのであれば、一斉に全ての抗てんかん薬にそのような形で書いていただくというような形にしないと、対応が難しいのではないかと思います。

 あと、今、御発言があって、運転してから薬を飲めばいいのではないかと思われる方がいるのではないかということでしたが、これは確か半減期が長いですね。私が関係する薬でもそのようなことを言われることがあるのですが、例えば半減期の長い薬ですと、そういうことはほとんど意味がない訳です。でも、確かにそのように、薬を飲む時に半減期などは普通の人は考えないので、そういう発想になってしまうのかもしれませんが、それは別な段階で、小学校や中学校も含めて、薬というのはこういうものであるということを、国民全体に啓蒙をしなければならなくて、この一剤で、ここに書くことではないのではないかと個人的には考えております。

○松井部会長 「ここに」というのは添付文書にという意味ですね。

○村田委員 はい。

○松井部会長 この点につきまして、何か御発言はありますか。課長はいかがですか。

○審査管理課長 難しい問題だとは思いますが、この手の精神的な副作用等を発現するような薬については、ほぼ同じような書き方で「運転する場合は注意する」という記載がなされておりますので、この場でどのような方向というのは申し上げられませんけれども、すぐに直して一斉にということは、少し今は考え難いと思っております。

○松井部会長 今、委員及び機構、審査管理課長の御発言を伺いますと、少なくとも添付文書に特別の指示をする、記載をするということは、委員の皆さんあるいは他の皆さんも賛成ではないと判断しましたが、よろしいですか。

○内藤委員 はい、皆さんがそうおっしゃるのなら結構です。「そのように考える人がいるかもしれない」という問題提起で挙げさせていただいたということです。

○野田委員 徹底的に変えなくても、この文章を少し捻ることでそういったニュアンスが出せないか、というのはないですか。

○松井部会長 いかがでしょうか、まず機構からどうでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 こちらの文章ですが、他の抗てんかん薬でもほぼ同じような文章を使っておりまして、本剤のみで変えるということは変に誤解を生む可能性もあると思いますので、今のところアイディアはありませんが、もし一斉に変える機会等がありましたら、今頂いた御意見も踏まえて、何か考えたいと思います。

○松井部会長 その点につきまして、先ほど村田委員が御発言。どうぞ。

○内藤委員 他の抗てんかん薬が同じような記載だから、これもこれでいいのだというのは違うのではないかと思ったのは、この抗てんかん薬は従来の他の抗てんかん薬で十分な効果が認められない患者、難治性のてんかんの治療薬として、併用として認められた訳です。ですから、元々患者にこの薬を投与するかどうかというような判断をする対象の患者は、そもそもがてんかんをうまくコントロールできていない患者なのです。ですから、他の抗てんかん薬と同じでいいということにはならないのではないかと私は思いました。

○審議官 議論が盛り上がっているところで申し訳ないのですが、多分、他の抗てんかん薬を使っても具合が悪くてということで上乗せで使うという抗てんかん薬というのは、これ以外にも幾つもあります。一方で、てんかんの薬を取り巻く議論、運転に関する注意に関してはかなり広範な議論がありまして、一つは、「てんかんで薬を飲んでいるから運転をするな」と書かれて、きちんとコントロールできているのに、何で運転できないのだといって困っている患者団体あるいはてんかん学会からの声もかなり強いというのが、最近の話です。確かに、一方できちんと薬を飲んでいなくて事故を起こしたという話も社会問題になっているのも事実です。

 どちらにしても、社会的な啓発をきちんとしないと、一個一個の話で個別的にやるだけでは、とても済まないと。しかも、てんかんという病気を抱えているからといって、きちんと治療がされていて、きちんと発作がコントロールできているのであれば、その場合に難治のてんかんだから運転するなというようなことも、患者側からすると、それで何故という話を言われることもあるのです。

 こういったことを、てんかん学会と患者さん、関係する団体とよく話合いをしてはどうかという話も出ていると聞いております。

 実際にこういったものを販売する企業としての責任は当然あるでしょうという御指摘としては、これは今日の部会の議論などもきちんとお伝えして、企業としての取組についてもただ薬を製造販売するということだけではなくて、全般的な注意喚起をきちんとしなさいという御指摘としては受け止めさせていただいて、企業にも考えてもらうということかと思いますが、一方では、てんかん学会や患者団体の色々な御意見も色々なところで伺っておりますので、難治のてんかんなのだから運転をすることは基本的に控えろということを添付文書に書くのは、むしろまずいのではないかという意見もあると思います。

 従いまして、今日のこの場での議論としては、こういう問題意識が議論されたということは企業にはきちんと伝えて、ここの添付文書に、患者の病態も様々ですから、一般論として車の運転を控えるべきだとまでは書けないと考えているということで、御理解いただければと思います。

○松井部会長 よろしいでしょうか。内藤委員、野田委員、少なくとも添付文書のその点について変更することはしないと。他に御意見はございますか。

 それでは重要な点が討論されていたと思いますので、議決に入ろうと思います。なお、野田委員、村田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。最後の審議官が仰った点は大事だと思いますので、今後検討を続けるということでお願いいたします。また、学会に関しても、村田委員、お力を貸していただければ幸いでございます。承認を可として、薬事分科会に報告するということで、議題3に移ります。

○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料No.3、医薬品プラルエント皮下注75mgシリンジ等の製造販売承認の可否等につきまして、機構より御説明させていただきます。本剤はLDL受容体の分解に関与することが知られているプロタンパク転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(以下PCSK9)に対するヒト型IgG1モノクローナル抗体であるアリロクマブを有効成分としております。本剤の対象としては高コレステロール血症となります。

 本薬はPCSK9に結合し、PCSK9とLDL受容体の結合を阻害することによって、LDL受容体の分解を抑制し、結果として肝臓へのLDLコレステロール(以下LDL-C)の取り込みを促進し、血中LDL-C濃度を低下させると考えられております。

 本剤は2016年5月現在、欧州及び米国を含む36の国及び地域で承認されております。今般、国内外の臨床試験成績を基に、高コレステロール血症に係る効能・効果で製造販売承認申請がなされました。本品目の審査に関し、専門委員として資料No.14に記載されている9名の委員を指名いたしました。本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。

 国内第 III 相試験として、家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体患者を含む心血管イベントの発現リスクが高い日本人高コレステロール血症患者を対象としたプラセボ対象二重盲検試験が実施されました。有効性について、審査報告書48ページの表25に示すように、本薬75mgを開始用量として2週に1回投与し、投与8週時点で管理目標値に到達していない場合は、150mgに増量するという用法・用量で投与を行ったところ、主要評価項目である投与24週時点のLDL-Cのベースラインからの変化率は、プラセボ群と本薬群に有意な差が認められております。

 本薬の効能・効果について御説明させていただきます。審査報告書83ページの「1.2効能・効果について」の項を御覧ください。現在の高コレステロール血症における薬物治療の基本はHMG-CoA還元酵素阻害剤(以下スタチン)の投与であり、本申請に当たって実施された国内外臨床試験においては、いずれもスタチンとの併用で試験が実施されていたことを考慮すると、本剤は少なくともスタチンを含む既存治療で効果不十分な患者に対して使用することが適切であると判断しております。また、本剤は国内臨床試験の対象患者と同様に、LDL-C低下の必要性が高い心血管イベントの高リスク患者に限定して投与されるべきであり、そのリスクの判定は慎重に行う必要があると判断いたしました。

 なお、家族性高コレステロール血症ホモ接合体患者においても、海外の臨床試験成績等を踏まえると本薬の有効性が期待できると判断し、本剤を家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体患者だけではなく、家族性高コレステロール血症ホモ接合体患者にも投与可能な薬剤として医療現場に提供することは可能と判断しております。

 以上を踏まえ、本剤の効能・効果は審査報告書の84ページにあるように、「家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症、ただし心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分な場合に限る」とし、効能・効果に関連する使用上の注意において、投与対象を選択する際に心血管イベントの発現リスクが高いことを確認する必要がある旨を注意喚起することが適切と判断いたしました。

 本薬の用法・用量について、審査報告書59ページの「用法・用量について」の項を御覧ください。国内第 III 相試験において本剤の有効性が示され、大部分の症例では開始用量である本薬75mg、2週に1回投与で用法・用量が維持されていたことから、本剤の通常用法・用量は75mg、2週に1回とすることが適切と判断しております。また、150mgを2週に1回への増量については、国内第 III 相試験では増量が行われたのは2例のみでしたが、これらの患者において効果の増大が認められており、国内第 II 相試験では75mgを2週に1回投与と比較して、150mgを2週に1回投与で、より大きなLDL-C低下作用が認められております。また、海外臨床試験においても、本薬75mgから150mgへの増量により、更なるLDL-Cの低下が認められていることから、LDL-Cがより高い家族性高コレステロール血症患者等では、高用量への増量が奏功する場合があることが考えられます。以上を踏まえまして、用法・用量は審査報告書85ページにあるように、「通常、成人にはアリロクマブとして75mgを2週に1回皮下投与する。効果不十分な場合には1回150mgに増量できる」とすることが適切と判断いたしました。

 続いて安全性について御説明いたします。審査報告書の49ページの表27に示すように、国内第 III 相試験においてプラセボ群と比較して、本薬群で問題となるような有害事象は認められませんでしたが、本薬の作用機序、投与経路及び生体内におけるコレステロールの役割等を踏まえて検討を行いました。

 審査報告書65ページ以降の「安全性について」の項に示すように、本剤投与によるLDL-Cの過度の低下、注射部位反応、アレルギー性事象、クレアチニンキナーゼ上昇、筋関連有害事象、認知機能への影響、眼への影響、ホルモンへの影響、肝機能障害、糖尿病及び血糖上昇等について、国内外臨床試験成績を基に検討を行ったところ、対照群と比較して本薬群で懸念されるような事象は認められず、現時点においては臨床上大きな問題となる可能性は低いと判断しております。また、海外において最長で1年半程度までの長期投与における評価が行われており、こちらでも現時点では長期投与による新たな有害事象は認められておりません。

 しかしながら、上市後はより長期間の投与が想定されるため、製造販売後調査において適切に情報収集する予定となっており、また海外で実施されている心血管イベントの抑制効果を検討する試験については、注視していく予定です。以上のような審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。

 本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体及び製剤は劇薬及び毒薬のいずれにも該当せず、生物由来製品に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いいたします。

○鈴木委員 この薬剤と同様の薬としては、前にレパーサ皮下注があったと思うのですが、この場合、確かに効果があるということは、たまたま先週の日曜日に日本医師会で行った日医かかりつけ医機能研修制度でも講師の先生がおっしゃっていましたので、そうなのでしょうけれども、適応が家族性高コレステロール血症だけではなくて通常の高コレステロール血症にもあるということで、簡単な制限は付いていますが薬価が高いということもあって、後で中医協で問題になりました。その時には薬価基準の一部改正に伴う留意事項でかなり細かな制約を更に付けて、様々な事項をレセプトの適応欄に記入することにして承認したという経緯があるのですが、その類薬ですので、事前に薬食審の段階で、例えば家族性コレステロール血症だけに限定するとか、もう少し細かく適応について議論して、それを中医協に送ってもいいのではないかと思うのですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

○審査管理課長 鈴木委員から御指摘のあった点については、我々も十分に認識しているところです。効能・効果を家族性のみに制限するようなことについては、基本的には臨床試験における有効性・安全性に基づいてというのが医薬品医療機器法の定めですので、ここで効能を一方に絞るということについては、なかなか難しいところはあろうかと思いますが、然はさりながら、どのような患者に対して、この医薬品が最もその効果を表すのか、また使用が適切であるのかということにつきましては十分に考えさせていただきたいと思っております。

 現在の添付文書等の記載については、既に承認されていますレパーサの記載と同様の記載とされておりますが、もし御意見等がございますれば、またこの場でも御議論いただければと思っております。

○松井部会長 鈴木委員、いかがですか。

○鈴木委員 どうせ先でレパーサと同じような条件が付くだろうから、ここはこれでいいというお考えのようですが、先に付けられるのであれば、ここである程度限定しておいてもいいのではないかと思ったので、お話させていただきました。

○松井部会長 他にはいかがでしょうか。

○山田委員 本剤の添付文書案について教えていただきたいのですが、1.8の添付文書案の2~3ページに「薬物動態」という項目がありまして、その中に「肝機能障害患者」というのは項目立てされていますが、「腎機能障害患者」という項目が案からは抜けております。類薬では腎機能障害患者という項目が立っておりますし、ヨーロッパの添付文書の中にも腎機能患者のことについて少し触れられているようです。今回、この「腎機能障害患者」という項目が立っていないことに関して、何か特別な理由はあるのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 類薬で腎機能障害患者に関する記載があったという点については、類薬では腎機能障害の影響を検討する試験が行われていて、腎機能障害患者に対する影響が確認されていたため情報提供として記載させていただいております。

 一方で、本剤については腎機能障害患者を対象とした試験が独立して実施されていないため、添付文書では腎機能障害については記載しておりません。その理由としては、本剤の排泄経路等を考慮した際に腎機能障害患者でも、特に問題なく投与できるだろうと判断したためです。

○山田委員 外国における使用状況という中の93ページあるいは13ページですが、ここの中に「腎機能障害」という項目があって、その最後に「重度の腎機能患者では、ばく露量が正常者に比べて2倍高かった」という表現があるのですが、これは何か情報提供として項目立てをしておいた方がいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○松井部会長 これは類薬といっても、全く同じ作用機序の薬と考えてよろしいですね。

○医薬品医療機器総合機構 レパーサに関しては同じ作用機序の薬となります。

○松井部会長 はい。どうぞ、御回答ください。

○医薬品医療機器総合機構 山田委員から頂いた意見については、もう一度検討させていただいて、必要な情報については情報提供できるように対応させていただきたいと思います。

○松井部会長 他にいかがでしょうか。

○増井委員 先ほど鈴木委員から御質問があり、課長からお答えがあった件です。この前の高薬価の薬の審査の時に、鈴木委員から最後に少しコメントがあった訳ですが、こういう薬剤行政の経済的な側面に関する検討というのは、どこで行うことになっているのでしょうか。ここで行うことではないということは承知しておりますが、どこで行われることになっているのでしょうか。

○松井部会長 課長からお願いします。

○審査管理課長 日本の医療制度の中では医療保険で医療費が賄われるということがありまして、医療用の医薬品については当然医療保険の方で薬価の収載があって、その薬価に基づいて医療費が支払われるという仕組みになっておりますので、保険薬価の収載あるいは薬価の算定ということにつきましては、厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)という所で御審議いただくことになっていますし、また、厚生労働省では保険局という部署が担当していることになります。

 ただ、我々医薬・生活衛生局も、当然医薬品等の承認審査に関わっておりますので全く無関係とは言えませんが、直接的な値段を決めるという権限は持っておりません。

○松井部会長 他には御質疑はございませんか。

○川上委員 1.7の「同種同効品一覧表」の5、6ページの辺りに、今話題になっていたレパーサとの比較が載っています。例えば副作用の所を見ると、治験の国内の症例数が2倍ぐらい違うとは思うのですが、類薬の方ですと検査値異常とか、その他の副作用などが丁寧に記載されていると思うのです。同じ時期に同じような体制の下で実施されている試験で、なぜこちらの薬剤については検査値異常も書かれていなければ、その他の副作用も注射部位反応ぐらいのような簡素な書き方なのでしょうか。

 こういう情報については、診療者にとってもう少し丁寧に色々なことが提供されてもいいのではと思うのですが、なぜ類似した薬でも違いがあるのか、もし分かりましたら教えていただきたいのですが。

○松井部会長 機構からお答えになりますか。

○医薬品医療機器総合機構 添付文書の副作用の項については、国内の臨床試験等で起きた事象を全て書くというルールにはなっておらず、その中でも注意喚起しなければいけないものを特に重視して書いているという現状があります。

 そういった点から、確かに見た目上はレパーサに比べて本剤の方が少ないという点はあるのですが、重要な肝機能異常等は適切に情報提供できるようにさせていただいているところです。

○医薬品医療機器総合機構 企業の判断ではあるのですが、御指摘いただいたようにレパーサと比較しますと余りにも簡素なところがありますので、書き方についてもう一度企業に、これで十分だと考えているのかを確認して、適切な形の情報提供ができるようにさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

○松井部会長 大事な点だと思います。他にございますか。それでは、議決に入ります。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきますが、先ほどの機構からの企業への問掛けはよろしくお願いいたします。

 議題4に移ります。村田委員におかれましては、恐れ入りますが利益相反に関する申出に基づき、議題4の審議の間は別室で御待機ください。機構からお願いいたします。

                                 ( 村田委員退室)

○医薬品医療機器総合機構 議題4、資料No.4、医薬品デュオドーパ配合経腸用液につきまして機構より説明させていただきます。

 本剤はレボドバ及びカルビドパ水和物を有効成分とした懸濁剤であり、本剤投与用に胃瘻を造設し、そこから専用の携帯ポンプ及びチューブを用いて空腸内に直接投与する薬剤です。レボドバ及びカルビドパ水和物の2成分を有効成分とする経口製剤は国内外で既にパーキンソン病の治療薬として承認されており、広く用いられています。しかしながら、進行期パーキンソン病患者では、レボドバの治療域が狭まることにより、通常の経口レボドバ含有製剤の投与では血中レボドバ濃度を治療域に維持できず、OFF症状が見られる時間が増加する等、治療域を逸脱した際に生じる運動症状の日内変動が日常生活に大きな支障を来す場合があります。そこで、血漿中レボドバ濃度を至適治療濃度域に安定させることにより、運動症状の日内変動の誘発を抑制することを目的として、レボドバの持続投与が可能な本剤が開発され、今般、国内外臨床試験成績を基にパーキンソン病に係る効能・効果で製造販売承認申請されました。本剤は、海外では2016年2月現在、欧米を含む48か国で承認されております。本品目の審査に関しまして、専門委員として資料No.14に記載されております委員を指名しました。本品目の審査の概略について、国内外の臨床試験成績を中心に説明いたします。

 審査報告書と順番が前後しますが、審査報告書23ページを御覧ください。海外では、既存のパーキンソン病治療薬では十分な効果が得られず、継続した重度の運動症状の日内変動を有する進行期パーキンソン病患者を対象とした二重盲検並行群間比較試験が実施されました。有効性に関して、審査報告書24ページ表34に示しますように、主要評価項目である1日当たりのOFF時間のベースラインからの変化量について、対照群である経口製剤群と比べ本剤群で有意な改善が認められました。

 次に、審査報告書16ページを御覧ください。日本人については既存のパーキンソン病治療薬では十分な効果が得られず、継続した重度の運動症状の日内変動を有する進行期パーキンソン病患者を対象とした非盲検非対照試験がアジア地域の国際共同治験として実施されました。有効性について、審査報告書18ページ表20に示しますように、主要評価項目である1日当たりのOFF時間のベースラインからの変化量に有意な改善が認められました。臨床試験に組入れ可能な日本人患者数は限られていること、二重盲検比較試験を実施するためには対照群にも胃瘻を造設する必要があること等から、日本人を対象とした臨床試験が非盲検非対照試験として実施されたことはやむを得ないものと考えており、民族差の検討などを踏まえ、海外臨床試験の成績も含めて評価した上で本剤の有効性は示されているものと判断いたしました。

 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書25ページ表36を御覧ください。海外試験では、経口製剤群でもプラセボ投与のために胃瘻造設が行われたため、本薬群、経口製剤群ともに、医療機器又は処置に関連する有害事象が多く認められました。審査報告書40ページ表51を御覧ください。日本人が参加した試験においても、医療機器又は処置に関連する有害事象が多く認められましたが、国内外で有害事象の種類や重症度は類似しており、重篤な有害事象による試験中止例は少なく、多くの重篤な有害事象は必要な対応が行われ、多くの被験者が試験を継続可能でした。しかしながら、医療機器又は処置に関連した誤嚥性肺炎、消化管穿孔及び腹膜炎等の致死的な有害事象が起こり得ることから、医師や看護師等の医療従事者のみでなく、患者及び介護者も含めて本剤の取扱いや、発生する可能性のある医療機器の不具合及び有害事象に関する予防策及び対処法についての訓練や指導を事前に行うことが重要であると判断し、資材の作成等を申請者に指示しております。製造販売後調査については、国内での治験症例が限られていることから、全投与症例を対象とした使用成績調査を実施することを承認条件とすることが適切と判断しております。

 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、再審査期間は10年、製剤は毒薬及び劇薬並びに生物由来製品又は特定生物由来製品のいずれにも該当しないとすることが適当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 それでは、委員の先生方から御質疑をお願いいたします。

○松木部会長代理 審査報告書40ページの表51ですが、国内の臨床試験で投与中止に至った不具合というところで例数が、括弧の中が1.3となっているのですが、これはどういうことですか。

○医薬品医療機器総合機構 すみません、こちらは報告2の正誤表で訂正させていただいているのですが、1.3が間違いでして、括弧の中は1が正しいです。

○松井部会長 よろしいですか。

○松木部会長代理 はい。

○松井部会長 他にはいかがでしょうか。

○川上委員 教えていただきたいのですが、今までのレボドパ・カルビドパ製剤は10対1の配合剤だったと思うのですが、なぜ本剤は4対1なのですか。

○松井部会長 いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 本剤は海外からの導入品でありまして、海外では経口製剤も4対1であるため、本剤についても経口製剤と同じ4対1になっております。

○川上委員 その4対1の理由はなぜですか。

○医薬品医療機器総合機構 国内で10対1から4対1に変更したことについての妥当性でしょうか。

○川上委員 あるいは、日本では10対1だったけれども、海外では4対1で使われていた、そういった国内外の違いがそもそもあった背景を伺いたいのです。

○医薬品医療機器総合機構 申請者の説明ですと、10対1だと足りていないというような報告もあるというような話はあるのですが、詳細な背景までは追えていないところです。ただ、日本人も対象とした臨床試験において、4対1である経口製剤から10対1である本剤に切り替えた際に特に問題が見られていないので、国内の経口製剤と今回の経腸用の製剤でレボドバ・カルビドバの比率が違うことについて有効性・安全性の問題はないであろうと、機構としては判断しております。

○松井部会長 よろしいですか。

○川上委員 はい。

○松井部会長 他にはいかがですか、特に御質疑はございませんでしょうか。もしなければ議決に入ろうと思いますが、なお、金子委員、川上委員、野田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして議決への参加を御遠慮ください。本議題につきまして承認を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので承認を可として薬事分科会に報告いたします。

 それでは、別室で待機されている村田委員をお呼びください。

                                 ( 村田委員入室)

○松井部会長 それでは議題5に移ります。機構から説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題5、資料No.5、ブリリンタ錠60mg、同錠90mgの医薬品製造販売承認の可否等につきまして機構より御説明申し上げます。

 本剤の有効成分であるチカグレロルは、選択的かつ可逆的に血小板のADP P2Y 12 受容体を阻害することにより血小板凝集を抑制する抗血小板薬です。今般、国際共同治験を含む国内外の臨床試験成績を基に、経皮的冠動脈形成術(以下PCIとさせていただきます)が適応される急性冠症候群及び陳旧性心筋梗塞に係る二つの効能・効果で承認申請がなされました。

 なお、本剤は、海外では急性冠症候群に係る効能・効果について100を超える国又は地域で承認され、陳旧性心筋梗塞に係る効能・効果について米国及び欧州で承認されております。本品目の審査に関し、専門委員として資料14に記載されております委員が指名されました。

 申請効能・効果が二つございますので、少し長くなりますが、まず、PCIが適応される急性冠症候群に係る効能・効果に関する資料の概略について、主な臨床試験成績を中心に御説明いたします。

 審査報告書63ページを御覧ください。海外で実施された急性冠症候群患者を対象とした国際共同第 III 相試験では、有効性の主要評価項目とされた心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合エンドポイントの抑制効果について、国内外における標準薬であるクロピドグレルに対する本薬の優越性が検証され、先に述べましたように、海外各国で承認されました。日本人につきましては、PCIが適応される急性冠症候群患者を対象に、実施可能な規模で行われたアジア共同第 III 相試験に参加いたしました。

 審査報告書51ページを御覧ください。本剤の用法・用量は海外で実施された国際共同第 III 相試験と同じく、初回用量として180mg、2回目以降の維持用量として90mgを1日2回投与することとされました。対照薬は標準治療薬であるクロピドグレルとされました。また、治験薬投与中は基礎治療としてアスピリンが併用されました。

 まず有効性について、審査報告書52ページ表15を御覧ください。有効性の主要評価項目とされた投与開始12か月時点の心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合エンドポイントの発現率は、本薬群で10.2%、クロピドグレル群で8.1%であり、本薬群のクロピドグレル群に対するハザード比は1.47でした。海外で実施されました国際共同治験第 III 相試験の結果と異なり本薬のクロピドグレルに対するハザード比は1を上回りましたが、アジア共同第 III 相試験は有効性の検証には十分でない症例数規模であり、実際に得られた結果は、仮に主要評価項目に関して点推定値で海外で実施された国際共同第 III 相試験と同様の成績が得られるとした場合に、この症例数規模において想定されるばらつきの範囲内に収まっていることから、日本人において本薬の有効性がクロピドグレルに比べて明らかに劣るとまでは言えず、また、アジア共同第 III 相試験では、血栓予防のためにADP P2Y 12 受容体阻害薬の投与が必須とされるステント留置例において、本薬群約300例で1例も明らかなステント血栓症が発現しなかったことなどを踏まえると、本薬に一定の有用性は期待できるものと判断いたしました。

 次に、安全性について御説明いたします。審査報告書53ページ表16を御覧ください。安全性の主要評価項目であるMajor bleeding12か月時点での発現率は、本薬群11.2%、クロピドグレル群8.4%であり、有効性のみならず、出血性有害事象等の安全性についてもクロピドグレルに比べて劣る傾向が示されました。なお、アジア共同第 III 相試験は全症例の約90%が日本人であったこともあり、日本人部分集団の成績は、全体集団の成績と同様の成績でした。

 以上をまとめますと、海外で実施されました国際共同第 III 相試験では、クロピドグレルに優る本薬の有効性が検証され、許容可能な安全性が示されました一方、アジア共同第 III 相試験では、主要評価項目をはじめとするほとんどの有効性及び安全性の結果において、本薬がクロピドグレルよりも劣る可能性が否定できない結果でした。これらを考慮すると、本邦において本薬はクロピドグレルに置き換わるような位置付けとはならないと判断いたしました。

 本薬は、既承認の類薬のクロピドグレル等のチエノピリジン系抗血小板薬と異なり、血液系や肝臓に重篤な副作用を惹起するような安全性プロファイルを有さないことや、作用が可逆的であることも踏まえると、副作用の発現等によりクロピドグレル等の既承認のチエノピリジン系抗血小板薬が投与できない患者に対象を絞れば、本薬を臨床現場に提供する意義はあるものと判断し、「経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(ただし、アスピリンを含む抗血小板剤2剤併用療法が適切である場合で、かつ、アスピリンと併用する他の抗血小板薬の投与が困難な場合に限る)」の効能・効果で承認することが妥当であると判断いたしました。用法・用量は、アジア共同第 III 相試験の規定どおり、初回用量180mgを投与した後、2回目以降は維持用量として90mgを1日2回経口投与するとすることが妥当であると判断いたしました。

 次に陳旧性心筋梗塞に係る効能・効果に関する審査の概略について、国際共同第 III 相試験の成績を中心に御説明いたします。

 アテローム血栓症の発現リスクの高い陳旧性心筋梗塞患者を対象とした日本を含む国際共同第 III 相試験は、本剤の有効性についてプラセボに対する優越性を検証することを目的とした二重盲検並行群間比較試験です。本剤の用法・用量は60mg又は90mg、1日2回投与とされ、治験薬投与中は基礎治療としてアスピリンが投与されました。

 まず有効性について、審査報告書71ページ表31を御覧ください。有効性の主要評価項目は、心血管死、非致死的な心筋梗塞又は非致死的な脳卒中の複合イベントとされ、36か月時点の発現率は、本薬60mg7.8%、本薬90mg7.8%、プラセボ群9.0%であり、いずれの本薬群でもプラセボに対する優越性が検証されました。

 次に安全性について、審査報告書72ページ表32を御覧ください。安全性の主要評価項目であるTIMIの定義によるMajor bleeding36か月時点での発現率は、本薬60mg群で2.3%、本薬90mg群で2.6%、プラセボ群で1.1%でした。

 続いて、本試験における日本人部分集団の成績について御説明いたします。有効性について、審査報告書74ページ表34を御覧ください。有効性主要評価項目の36か月時点の発現率は、本薬60mg群で3.3%、本薬90mg群で2.5%、プラセボ群で4.4%であったのをはじめとして、各有効性評価項目で本薬群とプラセボ群の関係という視点からは全体集団と日本人部分集団に大きな齟齬は認められませんでした。出血の頻度につきましては、審査報告書75ページ表35を御覧ください。TIMIの定義によるMajor bleeding36か月時点での発現率が、本薬60mg群で4.5%、90mg群で1.7%、プラセボ群で1.2%であったのをはじめとして、本薬60mg群の安全性は、全体集団と比して日本人集団で劣る可能性が示されました。

 以上のように、血栓性イベント発現リスクの低減効果につきましては全体集団と日本人部分集団で一貫した傾向が示されましたものの、国際共同第 III 相試験の組入れ基準に規定されたリスク因子を有する日本人患者では、外国人患者に比べてそもそものイベント発現リスクが低かったことや、日本人部分集団で認められました出血リスクなどを考慮いたしますと、本邦では、国際共同第 III 相試験の組入基準を満たすことに加え、心筋梗塞発症後1年以上経過していても特に血栓性イベントの発現リスクが高く、抗血小板剤2剤併用療法の継続が必要と判断される症例において使用を考慮すべきと判断し、「以下のリスク因子を一つ以上有する陳旧性心筋梗塞のうちアテローム血栓症の発現リスクが特に高い場合、65歳以上、薬物療法を必要とする糖尿病、2回以上の心筋梗塞の既往、血管造影で確認された多肢病変を有する冠動脈疾患、又は末期でない慢性の腎機能障害」の効能・効果で承認することが妥当であると判断いたしました。また、用法・用量は、国際共同第 III 相試験の有効性及び安全性の成績から本薬60mgを1日2回経口投与することが妥当であると判断いたしました。

 製造販売後調査計画等につきましては、審査報告書183ページ表49を御覧ください。製造販売後調査におきましては、PCIが適応される急性冠症候群及び陳旧性心筋梗塞患者を対象として、使用実態下における出血関連有害事象等の安全性及び有効性に関する情報を収集するため、調査予定症例数を1,700例以上とする使用成績調査の実施が計画されております。

 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤の再審査期間は8年とすることが適当であると判断しております。また、製剤は毒薬又は劇薬に該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 大変複雑な状況になっていると思います。陳旧性とフレッシュな冠状動脈疾患に関して、国際的なデータによる結果と日本のデータの結果の間に一部齟齬があるという報告で、それに関しての議論が重要だと思いますが、いかがでしょうか。質疑をお願いいたします。鈴木委員、お願いします。

○鈴木委員 少し事情が複雑なようですが、要するに急性冠症候群の患者における血栓性ベントの抑制で、アジアの共同第 III 相試験では比較薬に比べて有効性が確認できなかった訳ですね。それで□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ことが何となく理解し難い感じになっているのです。日本人が入っている試験で効果がなかったものに対して、日本人が入っていない試験で効果があったので、その後認めるということが、循環器疾患は日本人と欧米の方は色々条件が違うのではないかという気もするのですが、それを超えて認めたということは、理由として症例数がアジアは十分ではなかったと言っていらっしゃるのですが、それはあくまでも結果が思わしくなかったのを言い繕っているのではないかという気がします。

 そもそも症例数は治験の計画の段階で決められる訳ですから、そこに問題はなかったのか。後から結果がうまくなかったので、そのように取り繕っているのではないかという気がするのです。その辺について、色々な条件を付けている訳ですが、理解を得るのはなかなか難しいのではないかという気がしますが、どのような議論があったのかもう少し詳しく教えていただけますか。

○松井部会長 機構いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 まず、本薬の有効性については、海外で行われているような、きわめて大規模な臨床試験でなければ統計学的に十分な検出力をもって群間比較ができませんので、本来であれば日本もそのような大規模検証試験に参加すべきであったと考えております。しかしながら、本邦における開発が海外より遅れて開始されて、この大規模な臨床試験に日本が参加できなかったという状況にあったため、そこからどのように開発していくのかということを検討しました。

 本薬より日本での開発が先行していた類薬同様、実施可能な規模で日本人患者を対象とした臨床試験を別途実施し、PLATO試験の成績と比較したり、日本人での有効性及び安全性を推測していくということしか、開発方針を取り得ないという状況でした。

○鈴木委員 ということは、これから日本人のデータを追加して取っていくということですか。

○医薬品医療機器総合機構 いいえ、それで実施されたものが先ほど紹介申し上げたアジア第 III 相試験です。

○鈴木委員 それで思うような結果が出なかった訳ですね。

○医薬品医療機器総合機構 先ほど先生に御指摘いただきました事前の考え方はどのようになっていたかということですが、こういう開発については、先に行われた海外の国際共同治験の症例数が18,000例ということで、この規模の試験を世界中では多分、一度しかできないという状況で開発が行われています。その辺は、結局は投資できるお金がそのぐらいということと思います。

 日本を含む試験をやるときに実施可能性、これは医療現場の患者数等から算出するのですが、実施可能性を考えたときに最大どのくらいの症例数ができるのかという検討をして800例規模と算出されましたので、これでどのように有効性が示されるのだという検討を事前にいたしました。そのときに説明の中で分かり難かったかもしれませんが、この規模で行った時にどのくらいの振れ幅が起こり得るのかという検討をした時に、例えば、先ほどのハザード比を考えた時も、ある一定の幅が想定されて、これは数学的にとか統計学的な検討なのですが、この範囲に結果として得られたハザード比が含まれていたので、これをもって有効性が示されていないという判断まではしないということで審査を進めたという経緯があります。ですので、事前に考えたものが全く示されなかったという訳ではないと考えております。

○松井部会長 この点について、いかがでしょうか。山田委員、お願いします。

○山田委員 背景はよく分かりました。私がよく分からないのは、審査報告書の2ページのPCIの対象を、結果として、アスピリンを含む抗血小板剤2剤併用療法が適切でかつ併用する抗血小板剤の投与が困難な場合に限るというのは、この臨床試験ではこういう方を対象にした試験はされていない訳で、対象とされていない患者さんを対象とするという結論がよく理解できなくて、実施した試験に基づいて対象患者さんはすべきではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 ただ今ご指摘いただいた2ページですが、効能・効果の2.です。先生が仰った、「ただし」の中なのですが、「アスピリンを含む抗血小板剤2剤併用療法が適切である」。これは臨床試験に組み入れられた患者さんです。説明の中で申し上げましたが、どうやら有効性と安全性が既承認薬より少し劣るかもしれないという可能性を捨て切れないということで、ではどういう順番で使おうかということで次の文が出ております。

 既承認薬の「投与が困難な場合」はということですが、この困難な場合というのは要するに患者背景が違う訳ではありません。例えば、クロピドグレルで以前、副作用が出てしまった患者さんで、クロピドグレルの次の選択肢として用意するという位置付けを表したもので、繰り返しになりますが対象患者さんとしては前半の部分で示すということで、まさに試験に組み入れられた患者さんと理解しております。

○山田委員 よく分かりますが、例えば、併用する抗血小板剤の投与が難しかった患者さんに対して、この薬剤を投与しても安全に使用できるということは、この試験からはよく分からないのではないかという気がするのですが、この書き振りをもう少し検討したらどうかと私は思います。

○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。前半の部分なのですが、なぜこういう記載になっているかと申しますと、先ほども少し申したように既承認のこの系統の薬は構造が全てチエノピリジン骨格を有しており、クラスの副作用として血球系の副作用や重篤な肝障害の副作用が知られております。臨床試験でも実際に見られているのですが、本薬については既承認薬と骨格が違い、そういう安全性のプロファイルは持っておりません。

 呼吸障害等、別の副作用があります。例えば、以前にチエノピリジン骨格を持っている抗血小板薬を投与して肝障害が出た人に別のチエノピリジン系抗血小板薬を投与するという選択もむずかしいので、その場合はこの薬だと判断してこのような記載になっております。もう一点は、他の類薬は非可逆的な結合をするのですが、この薬は可逆的な結合ということで、そういうプロファイルも若干違いますので、チエノピリジン系抗血小板薬について投与困難な場合に限るということができるのかと判断したということです。そうすると、この記載でよいと思うのですが、いかがでしょうか。

○山田委員 できれば、今のような最後に御紹介いただいたようなことがどこかの情報として得られるような、構造が違う、副作用のプロファイルが違うということが分かるような形で提供されればいいのではないかと思います。

○医薬品医療機器総合機構 この薬自体の副作用と薬理学的特徴は、この薬の添付文書の中にありますが、では、他の薬に比べてどうなのだということについては別の媒体となると思いますが、工夫していきたいと思います。ありがとうございます。

○松井部会長 私から質問いたします。この東アジア人種といいますか、n数の少ない方のスタディを始める前にどういう結論が出たらこれは有効であるとか、そういう解釈の方針、プライマリエンドポイント、セカンダリエンドポイントは決めてやっているのではないかと思うのですが、それには合致していたのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 普通の検証試験とは異なり、主要評価項目について何かを検証できるという規模ではありませんので、例えば、それが幾つであればいいということまでは決めておりません。やはり、結局この承認審査については、国際共同治験の成績を参考にして有効性があると評価していいのかということを審査しました。実際のデータを見て、国際共同治験の成績を全て利用できないか、あるいは部分的にでも利用できるかということを細かく審査したということになります。お答えとしては、事前にきちんとした数字を決めていた訳ではないということです。

○松井部会長 他に何かありますか。林先生、どうぞ。

○林委員 今のところをもう一度確認したいのですが、事後的に大規模の試験で出ているものが真の値だったとして、それを20分の1ぐらいの規模ですかね、日本を含んだアジアで行って、それが本当に再現するかを見ようとした試験だと思います。結果的に規模の大きな方がハザード比が0.8で、アジア試験が1.5近くですかね、極端なことを言うと逆転している。

 それでも、真の値の範囲の中に入っていたと結論する試験だとすることが理解できないのですが。日本で有意でなくてもいいのですが、例えば、試験方法を同じにして、もう二度と世界で大規模試験ができないので、日本では小規模ながら、日本人でほぼ同じ成績が得られるかどうかを見たかったということだと思うのです。

 極端なことを言うと、プールして全体で見たら国間で多分インターラクションがすごく有意ですよね。ということは、日本人の薬として使うということに対して、それでもいいとする結論になるかが、やはり納得いかないのです。

○医薬品医療機器総合機構 正しく先生が仰ったところを審査の中で考えて出させていただいた訳なのですが、多分この数字だけを見ると本当に日本人で承認していいかどうか迷うところです。元々の大規模な試験はクロピドグレルという対照薬を使っていたのですが、国内外で一つの使い方で共通して使われていて有効性・安全性が確立している薬です。

 それとの比較の大規模臨床試験で、相当いい結果が出ているというところを全て頭の外に置いて審査するのかというところも議論した訳です。それについては全くそれを評価しないという話ではないと、クロピドグレルの民族差のことを考えても、ある程度は頭に置かなくてはいけないと考えました。先生が仰ったように後付けの話で数値の話と先ほど申したようにこの薬を使わなかった時に、例えば、ステント血栓症が起こってしまうのですが、それを防げる薬なのです。

 日本が参加した試験で血栓症が1例も起きていないということは、最悪クロピドグレルよりも劣るかもしれないが、プラセボよりも劣るという話でもなかろうということで、先ほども言った薬の特徴も踏まえて2番手としての薬としては世の中に残す価値があるのではないかという判断をしたということです。

○林委員 確認としては、先ほど言われたように大規模な臨床試験の数値が真だとして、日本人で行ってみても起こり得ることが起こったというよりは、日本人で再現できると思った値よりは低いけれども、薬としてみるのならばいいというニュアンスとして捉えていいでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 そのような審査です。

○林委員 ありがとうございます。

○松井部会長 他の委員の先生方、いかがでしょうか。佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員 有効性ではなくて安全性をお伺いします。安全性については主要評価項目はMajor bleedingで見ているのですが、例えば、53ページの表16は「Major bleedingが発現するまでの期間」というタイトルなのですが、この見方がよく分からなくて、発現例数と書いてあるのでMajor bleedingが起こった件数なのでしょうか。あるいは最初に発現するまでの期間は、この表から分かるのでしょうかということが1点目です。

 もう一つは、今回出されている効能・効果として陳旧性の場合と亜急性との場合があるのですが、それぞれこの薬をどのくらい服用することが予定されているのかということです。この2点を教えてください。

○医薬品医療機器総合機構 まず表16における表題です。発現するまでの期間となぜ書かれていたかというと、安全性の主要評価項目がMajor bleedingが最初に発現するまでの期間とされており、その期間で比較するという統計解析の方法に基づいた安全性の主要評価項目の設定の理由であったため、このように表題としました。

 表の見方は発現例数は40例、そのうちの10.3%がその割合でKM%が発現するまでの期間に基づいて算出された割合です。ですので、主要な結果はKM%の所を見ていただければと思います。

○佐藤委員 これはカプランマイヤーですか。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○佐藤委員 12か月経ったときにMajor bleedingが起こったのは11.2%です。例えば、どのくらいの患者さんに1か月以内でMajor bleedingが起こっていますということは、ここから分からない訳ですね。

○医薬品医療機器総合機構 1か月以内ですと、カプランマイヤー曲線の図を見ていただければ分かるのですが、申し訳ございません、今回の報告書には載せておりません。こちらの報告書には載っておりませんが、特にどの時期に、例えば、投与初期にすごく出血が多かったとかそういう傾向はなくて、長期間飲んでいれば飲んでいるほどそれだけ累積して出血していくという考えになります。

 それから、本剤に限らず一般論になりますが、心筋梗塞等でPCIをした後に2剤併用で抗血小板療法をどのぐらいの期間続けるかということに関しては、まずはACS、急性心筋梗塞後の場合は、主に治療の内容、ステントの種類、ステントも最近の薬剤溶出性ステント、ベアメタルステント等のステントの種類によって、例えば、半年や1年あるいは病変の状態等によって臨床現場の判断で決められているということが現状です。

 先生、御存知のようにACSが時間経過とともにOMIといいますか陳旧性の段階になっていく訳ですが、現場の判断として、ステントの種類、患者さんの病変、基礎疾患等に応じてどのぐらいの期間、1年過ぎた後も、OMIの期間になった後も抗血小板薬2剤併用するのかということは現場の判断に委ねられて中止時期が決められているということになります。

 今回の場合は、OMIとして臨床現場の判断に委ねられていてコンセンサスとしてずっと長く続けましょうということができていない集団において、特にリスクの高い方だけを選んで使った場合には現場においてもクロピドグレル等の抗血小板薬2剤併用が行われておりますので、そういう方を対象にした試験をしてOMIの期間に関しては本剤も含めてどのぐらい使うかはリスク・ベネフィットバランスに応じて現場の判断で決められるものと考えております。

○佐藤委員 今のことがどこに書いてあったのか、辿れないのですが、試験のデザインとしては6か月とか12か月投与というデータがどこかに載っていたと思うのですが、そうすると、もちろん長くなればなるだけ出血のリスクが高くなる。あとはリスクとベネフィットの較量として、この薬を認めていいかという資料としては、やはり私たちはそれを欲しいと思います。もう一つは、その情報は医療現場にきちんと伝えていただきたいと思います。

○松井部会長 ありがとうございました。他にこの点について御意見、御質問ございますか。松木委員、どうぞ。

○松木部会長代理 やはり何となく釈然としないのですが、試験をする以上は、最初からどういう条件で行ってどういう答えが出たらどうなると決めて行うものなので、結果を見てからこうだったというのはどうしても納得できない訳です。ただ、それが医療現場で必要であるかもしれないということであるならば、どの程度ニーズがあるのかと、このデータが、クロピドグレルもそんなに優れている訳ではないということを、処方する医師がきちんと読み取れるようなデータを付けるとか、そういうことがあれば納得できるのですが、いかがでしょうか。

○松井部会長 いかがですか。機構から回答してください。

○医薬品医療機器総合機構 まず、医療的なニーズがあるのかということに関しては、専門協議において専門委員の先生方の御意見をお聞きし、クロピドグレルの特徴的な副作用により投与ができない場合があるので、そういう患者に使える選択肢があることは意義があるのではないかという御意見はいただいております。

 また、本薬とクロピドグレルの位置付けについて、本薬の臨床試験成績については添付文書の臨床成績の項目にも載っておりますし、また、医療従事者向け資材においても効能・効果の側に書いております。また、企業においても医療現場からなぜこのような効能・効果になったのかということを問われると思いますので、その時になぜこのような効能・効果になったのかということを、適切に医療現場に周知するようお願いしております。

○松井部会長 先ほどの回答は、その専門委員の方から、先ほど松木委員が言われたように、この薬剤が必要なのだという意見が多数を占めたということでしょうか。そうだとしたら、それを示していただきたいと委員の方は思っているのではないかと思います。

○医薬品医療機器総合機構 このような効能・効果で市場に出した場合に投与対象になるであろう患者の人数ということでしょうか。

○松井部会長 そういう患者さんが実際にどれぐらいいるのかどうか。それは文章にはなっていないと思うのです。書いてありますか。

○医薬品医療機器総合機構 審査報告の168ページにおいてACSの適用の臨床的位置付けについて、下の方なのですが、「以上の機構の判断について」。

○松井部会長 すみません。どこですか。

○医薬品医療機器総合機構 168ページの下から5、6行目です。

○松井部会長 はい。

○医薬品医療機器総合機構 「以上の機構の判断について、専門委員より既存の抗血小板薬が使用できない患者が少なからずいることから、抗血小板薬の選択肢を広げる薬剤として医療現場に提供する意義はあり、機構の判断は妥当との意見」はいただいております。

○松井部会長 委員の先生方、こういう回答が寄せられているのですが、いかがでしょうか。野田委員、お願いします。

○野田委員 確かに少なからずはいらっしゃるのでしょうが、もう少し具体的に明示的にというか数値的に出していただいた方が納得しやすいのではないでしょうか。もちろん、そういう人がいらっしゃるということは分かる訳ですが、これを新規の薬剤として出すところまでの意義がある数字なのかどうかということが分からないところが、やや釈然としないという感じがあるのだろうと思います。

○医薬品医療機器総合機構 申請者の試算によりますと□□□人程度です。

○松井部会長 企業の試算ですね。これは、これ以上議論を続ける訳にもいかないと思うのですが、委員の先生方どのようにお考えでしょうか。更に資料の提出を求めるという方はおいでですか。どうぞ。

○野田委員 □□□人の根拠になるところを教えてもらえれば納得し易いと思います。

○松井部会長 他の先生方はいかがでしょうか。デシジョンをしなくてはいけません。それでは、御意見を伺ってもいいですか。この会は多数決をしないということなのですが、どなたか。機構からどうぞ。

○医薬品医療機器総合機構 企業で使用成績調査の中でどれぐらいの症例数を集められるかという観点で、どれぐらい使われるかということを照会したところ、企業の見積りで□□□人使用が見込まれるという回答でした。

○医薬品医療機器総合機構 多分、それはきちんと出てきた訳ではないのですが、現状としては、今、先ほど来言っているようなクロピドグレルが投与されない患者さんはどういう治療をされているのかということが一定ではありませんので、数値を出せるのかというと難しいのですが、実際問題、例えば、P2Y12受容体阻害薬でない古い抗血小板薬を併用しているとか、アスピリンだけで治療しているということがあり、そういう薬については有効性に関する確固たるエビデンスがありませんので、この薬のようにきちんと臨床試験をして、どのぐらいの有効性なのだというものを示している薬を投与していただいた方が有用なのではないかと考えております。

 恐らく、まとまった数字はなかなか出てこないと思いますが、現場をリサーチして、一応数値を出すくらい患者は居るということで□□□人とされております。

○野田委員 この薬剤がよろしくないと言っている訳ではなくて、少なからずという表現で新薬の認可の承認をしていいのかどうかということがかなり気になりました。

○松井部会長 ありがとうございます。今の野田委員の御意見は、今日の時点における機構からの説明ではどうも釈然としない、納得できないということが多数の意見ではないかと私は受け取りましたが、いかがでしょうか。そのように考えてよろしいでしょうか。そうしますと、更なる資料の提出を求める訳ですが、それについてどういう資料を出して欲しいということを提示した方がいいと思うのですが、それを出してください。林先生、どうぞ。

○林委員 先ほどなかなか納得できなかった最大の原因は、大規模で行ったものが真の値だとして、今回800人で行った結果は起こり得るのだと事後的に言われていることです。では、なぜ800人で行ったのだという話のところがやはり納得いかないと思うのです。800人で行ったこの逆転している結果を見ても日本人でも効くと最終的には判断されている。日本人の本薬の成績は海外の勝った方の成績とほぼ同じなのだと結論されている。

 例えば、引っ繰り返った原因が対照薬の成績の方が違うのだとかいった何か根拠があれば、別途これで確かに800人の成績でも薬として認めてもいいのだというものがあればの話だと思うのです。そこがなく大規模で行ったもので算出した確率の範囲の中に今回の成績がありますと言われても、それだったら大規模な試験を海外でどんどん行っておいて、日本で結果がどうであろうが全部薬になってしまう、極端なことを言うと、そういう危惧もされると思います。この800人のところでどうして薬として認められるのかというところを詳しく説明していただければという感じかと思います。

○松井部会長 ありがとうございます。他に説明を、どうぞ。

○野田委員 類薬の市販後調査があると思います。そこで投与が中断に至ったような例数から、この薬剤の使用対象となるような患者さんの、ある程度の推定数を出してもらうとか、そういったことが必要なのではないでしょうか。

○松井部会長 他にございますか。

○松木部会長代理 クロピドグレルとの違いということで、添付文書の中の文章をずっと読まないとよく分からないということがあるので、これではなくてもう少し医師向きの説明で、どのようなものでクロピドグレルとの違いを説明するようなものを作る予定であるかというものも見せていただけたら判断の材料になると思います。

○松井部会長 他にございますか。私、委員の1人として要望したいことは、企業ではなくて専門委員の先生、あるいは学会の代表的な先生から専門家の意見としてこれぐらいの人数がいるのだということを、もし分かるのならば出して欲しいです。今のは委員としての発言です。他にございますか。古川委員、どうぞ。

○古川委員 今、松井先生のお話の続きになるのですが、専門委員のどなたかに参考人として来ていただくということはできないのですか。

○松井部会長 いかがですか、可能ですか。可能だそうです。他にこういうデータを示していただきたいということがなければ、この議題については継続審議ということにしたいと思いますが、よろしいですか。

○審査管理課長 これまでの御議論を踏まえて、今おまとめいただいた資料について、こちらでどのくらいのものが用意できるのかということを検討させていただき、また次回については循環器の専門の先生にも参考人としておいでいただくなり考えたいと思いますので、それで引き取らせていただきたいと思います。

○松井部会長 ありがとうございます。では、この議題の議論は終わりにいたします。議題6に移ります。御説明をお願いいたします。

○事務局 事務局から議題6について御説明させていただきます。資料No.12、医薬品ミカトリオ配合錠について、審査管理課から説明いたします。本剤は、アンジオテンシン II 受容体拮抗薬であるテルミサルタン、カルシウムチャネル拮抗薬であるアムロジピンベシル酸塩、及びサイアザイド系利尿薬であるヒドロクロロチアジドの三つを有効成分とする配合剤となります。前回の当部会で御説明しましたように、テルミサルタン80mg及びアムロジピン5mgで十分な降圧効果が得られない高血圧症患者を対象として、ヒドロクロロチアジド12.5mg、また、プラセボを追加投与する無作為化二重盲検並行群間比較試験、あと、1試験の二つの国内臨床試験成績を基に、テルミサルタン80mg、アムロジピン5mg、ヒドロクロロチアジド12.5mgを配合する本剤が、高血圧症を効能・効果として製造販売承認申請されたものです。前回での御審議で、部会の先生方より、3成分を配合することの妥当性というところが十分に説明されていないとの御指摘を頂きまして、継続審議となっていたものです。

 資料12-2です。1ページの下段を御覧いただくと、本剤の審議に関して、前回の4月開催の医薬品第一部会で挙げられた疑問点をこちらにまとめています。本剤により、利益を得ると考えられる患者集団、また本剤配合成分の配合剤として有用性、そして、3成分の配合剤の臨床的な意義について、既存のデータベースを利用して検討しました。

 こちらは、企業にデータベースの検討をしていただきまして、そちらの内容は審査管理課でお配りしている資料にまとめているものです。

 2ページの上段です。データソースは、□□□□□□□□□による処方箋データベースを用いております。アンジオテンシン II 受容体拮抗薬(ARB)と申しますが、あと、カルシウムチャネル拮抗薬、サイアザイド系利尿薬の三つの医薬品の処方が観察期間中に1回以上ある患者さんを抽出しています。最近の処方割合の調査を目的に、20 月から20 月の期間、この配合成分内服継続率を調査する目的で、こちらについては継続率になりますので、20 月から月の期間を対象として、ここから1年間というところをフォローアップしているという形で調査しております。

 2ページの下段です。棒グラフの赤枠で示される部分ですが、3医薬品を併用している患者さんの約%が、65歳以上の高齢者ということが分かりました。本剤の対象となるのは、高齢者が多いということがこの結果から想定されます。

 こちらの棒グラフの下に記載しているのが、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」からの抜粋になります。こちらに高齢者の服薬状況の把握と服薬管理の留意点の項目がありますが、こちらで高齢者の服薬アドヒアランスが低下する要因の一つとして、薬剤数が多いということが挙げられています。また、服薬錠数、服薬回数の減少によるアドヒアランスの改善の観点から、配合薬の使用の有用性についても明記されているところです。

 3ページの上段です。ARB、カルシウム拮抗薬、サイアザイド系の利尿薬の3薬品を服用している患者で使用されている成分の組合せ、上位10組をこちらにお示ししています。テルミサルタン、アムロジピン、ヒドロクロロチアジドの組合せというのは、この3成分服用患者全体の%を占めるということで、全体でも番目に多い組合せということがこちらのデータベースの調査から分かりました。本剤配合量の組合せになると、%の中の約割、%ということになりまして、この結果より、本剤の配合成分の組合せというのは、現在の実臨床において汎用されているものの一つであるということは示唆されたと考えております。

 下段を見ていただくと、本剤の配合成分・配合量で服用している3成分服用患者、例のうち、年間の処方箋データを集積して、かつそのうち、か月間以上の内服が確認できた患者は例で、全体の%という結果でした。この結果から申し上げられることは、本剤の配合成分・配合量を継続して使用する患者は、一定数存在することが示唆されたというものです。

 前回の御議論の中で、継続して服用することのできる患者さんという、本剤で継続して患者さんが服用できなければ意味がないのではないかという御指摘がありましたが、この配合成分、配合割合で継続することができる患者さんが一定数、実際にいるということが分かりました。

 4、5ページにお示しするように、3成分の配合剤を用いることによるアドヒアランスの改善と、その後の臨床的なアウトカムの改善について、こちら本剤とは配合成分が異なりますが、既に3成分配合薬が市販されている海外の研究によって、その有用性が報告されているところです。それを踏まえると、本邦においても、同様の有用性というところが期待されるのではないかと思います。

 以上より、本配合剤の組合せが本邦で最も使用されているものではないものの、汎用される組合せの一つでありまして、恩恵を得る患者の存在が想定されることから、本剤の承認を行うことには、一定の意義があるというように判断しているところです。

 以上、前回の御審議において、委員の先生方より疑問点として挙げられた事項に対する説明になります。

 最後に、前回の御審議の際に疑問点を挙げていただきました平安先生は、本日御欠席ですが、事前にコメントを頂いております。御紹介させていただきます。「高血圧患者の大部分が高齢者であること。また、一定数の患者さんが、本配合剤と同成分の3種類の降圧剤を服用していることが分かりました。コンプライアンスの観点から、本配合剤の有益性や利便性があると思います」といただいております。以上、御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

○松井部会長 いかがでしょうか。

○松木部会長代理 資料12-3は何ですか。

○松井部会長 資料12-3、何の資料だったか分かりますか。説明の方でということで。

○松木部会長代理 そうです。

○事務局 資料12-3については、委員の先生方からの質問について、企業に照会をかけまして、企業の方がまとめた資料になります。こちらの資料を基に、審査管理課で資料12-2という形でまとめ直させていただいたものです。

○松木部会長代理 前回の議論でもあったと思いますが、ニーズについては、メーカーのデータではないものが欲しいというのが議論だったと思います。この配合剤を出す意義というのが、非常に明確ではないと。本当に臨床の現場でニーズがあるのかどうかということです。先ほどの薬のようにあまり効果がはっきりしなくても、臨床の現場の選択肢が増えたら、それによって恩恵を受ける患者というのは確かだと思います。

 ただ、汎用剤で、しかも、2剤の配合剤があって、そこに一つ増やすということは、別に処方できない訳ではなくて、処方できてしまう訳で、選択肢が増えるわけではないですよね。ですから、それを、更に配合剤として出さなければいけないかという臨床の意義がどこにあるかと。非常に分かり易いのは、企業にとっては、かなりベネフィットがあることです。それは要するに、ジェネリックが出てくる前にバンバン売ろうとか、そういう目的もありますし、囲い込みをしようということがある訳ですね。それから、多分、他の薬など使っている人もこちらにシフトして欲しいということがあるかもしれない。ただ、本当に医療の現場で、こういうことが必要としているのかどうかとか、患者にとって、ベネフィットがあるのかどうかというところを調べて欲しいという時に、やはりメーカーのデータを基に審査管理課がデータを作っていても仕方がないと思いますけれども。

○松井部会長 いかがですか。

○事務局 企業のデータというところですが、データソースになっているこちらの□□□□□□□□□の処方箋データベースというのは、今回の申請企業以外にも使用できるデータベースですし、一般的に広く研究等に使われるデータベースであるというように我々としては認識しております。

 また、こういった御審議の際、企業がデータをまとめて、それについて審議するという形を取っております。企業から提出されたデータなので、通常、そういうように企業から提出されたものを基に審査しているところですので、今回のところだけ、何か特別違うということではありません。ただ、松木先生が御指摘のように、企業が自分たちにとって都合のいいデータをまとめているのではないかというところは、御指摘を踏まえて、機構で保有している、別途、別のデータを基に裏取りというところは、我々の方としてもしております。企業がまとめている数値というものが、大きく機構の方が保有しているデータと異ならないということを我々でも確認しているところです。

○松木部会長代理 まずですね、他の薬の審査とは全然違うという認識を持つべきだと思います。他の薬というのは、新薬とか、適応拡大とかで今まで臨床の現場では使えないという状態だった訳です。この配合剤の場合は3剤を別々に処方すれば使える訳でして、全然臨床の現場の選択肢を増やすということとは違う訳です。利便性とか、そういうところが問題になっているので、今までの薬の審査もメーカーのデータで行っていたから、今度の薬もメーカーのデータで審査すればいいというものでは全くないと思います。

□□□□□□□□□のデータベースを使うというのはいいのですが、海外のデータを調べるときに、アドヒアランスが上がるかどうかというのはちょっと問題だと思いますが、『カレント・メディシン・リサーチ・オピニオン』の論文を、メーカーも出していて、それから、審査管理課がこのデータしか出してこないというのは非常に不審に感じる訳です。論文を検索して、これしか引っ掛かってこなかったのですか、そんなことはないですよね。どうですか、その辺は。この雑誌に対しての評価はどのぐらいありますか。こういう言い方を言っては変ですが、インドの雑誌で非常にプロモーションしている雑誌ですね。それから、この著者の中には、メーカーの人が入っていますよ。そういうこともきちんと調べていますか。

○松井部会長 いかがですか。

○事務局 アドヒアランスの改善とか、そういったところについては、我々としては、日本の学会で「高血圧治療ガイドライン2014」という中で、配合剤の有用性というところ、アドヒアランスの改善がなされるといったところについて記載されていますので、それの補足的に企業が提出された、こういった論文についても紹介させていただきました。

 こちらの企業が出してきた三つの論文があるからいいというように我々として判断しているところではなく、あくまでもどちらかというと、学会が出されているガイドラインの記載の方が、我々の判断としては、より重視していると考えております。

○松木部会長代理 私ばかり発言して申し訳ありませんが、ただ、今の発言は、聞き捨てならないところがあって、企業が出してきたから重視している訳ではないと言いながら出しているということは、重視しているということではないですか。それを重視していないのだったら、データとして我々に示すべきではなくて、自分たちが確証を持てる物を出すべきだということを言っている訳です。

 アドヒアランスも、例えば日本の場合だって色々な経験がある訳ですね。高齢者の場合の4割ぐらいは、6剤以上処方されている訳で、そうすると、2剤のものを3剤にしても、6剤が5剤になるぐらいの利便性なのですね。それでどれぐらいアドヒアランスが上がるかと。そういうような研究が色々と行われて一番重要なのは、例えば、在宅の人だったら、薬剤師とヘルパーの介入の方が、非常に重要だという論文は山ほど出ています。ですから、そういうことを無視しておいて、海外の論文をちょっと出して、それでアドヒアランスが上がるからいいのだというのは、審査管理課の見識としては、滅茶苦茶だと思いますけれども。

○松井部会長 委員の先生方は黙ってしまわれましたけれども。

○神田委員 データの出し方の問題点は、そのとおりだというようにも思います。私が前回出した意見との関係で、今回お返事を頂いたことについて、御質問してもよろしいでしょうか。

○松井部会長 はい。

○神田委員 前回は、こういった三つの成分を配合用量で服用している患者はどれぐらい継続して使用されるのだろうか。その間、成分の変更ということはないのでしょうかと。配合しない方が適切な調整をし易いのではないかということで、患者にとっての無駄が、その方が出ないのではないかというようなことを申し上げたと思います。

 今回のお返事は、多分、疑問点3の所がそれに該当するのかと思います。これで、先ほどの説明では、一定、継続している人が、実際にいることが分かったという説明をなさいましたが、この数字を見ると、私は本当に利便性の向上に明らかに資するというところまでいかないのではないかと受け止めました。

 確認したいのですが、20 月から月までを調べた結果、この配合成分を併用していた患者は、□□名です。それが疑問点1の所に書かれている数字で、□□でよろしいですね。

○松井部会長 よろしいですか。

○神田委員 □□人でしょ。違うのですか。

○事務局 こちらは全体として、大体□□□人です。この処方箋データベース自体が、日本国民の約%程度を反映しているものになります。実際に国内全体と考えた場合には、倍していただくと、実際に国内全体の患者数ということになるかと思います。

○神田委員 そのことを聞いたのではなく、%の説明はありましたから、分かっております。□□□例の中から、この三つの成分を使った者について、使用している患者さんが□□名だったということですよね。□□名と書いてあるでしょ。2ページの下の赤い棒グラフが当たっている所の右に、本剤の配合成分を併用していた患者、□□名の。

○事務局 はい。

○神田委員 ですので、その三つの成分を使用している人が□□名だったということですね。

○事務局 はい。

○神田委員 それでよろしいですか。

○事務局 はい。

○神田委員 そのように受け止めましたが、それを基に、次ページの疑問点3の所の数字を見ると、患者数の所は、継続していた□□名の中で、継続して使用していたのが□□名という数字ですよね。違うのですか。

○事務局 □□名は、配合されている薬剤の種類です。今回のミカトリオと同じ配合成分の方ということになりまして、疑問点3の所に書いてあるのは、更にその中でも、それぞれ80mg、5mg12.5mgという、用量まで特定した形の患者さんになります。更にその一部ということになります。

○神田委員 ですから、それは継続していた患者さんという意味ではないのですか。

○事務局 そちらについては。

○神田委員 これは継続していた患者さんという数字ではないのですか。その中で、か月以上継続していたのが□□という数字と読むのではないのですか。

○事務局 そうではなくて、20 月から月の間に処方箋のデータがある患者さんのうち、この割合での処方を、一度でも受けていた患者さんの数というのが□□人です。このうち、か月以上この処方が行われていたというところが、更にこのうちの大体割の□□人になります。

○神田委員 はい。

○事務局 ちょっと分かり難くて、申し訳ありませんでした。

○神田委員 3成分を配合したものを継続して、どれぐらい使用しているのですかということが分かるデータではないということですか。

○事務局 すみません、私ども理解が不十分な部分がありまして御確認ですが、一応、疑問点3に書かせていただいている患者数、20 月から月というものは、疑問点2の表から言うと、赤括弧の中の下の所になります。

 具体的には、こちらは20 月から20 月のデータが疑問点2で、1年間フォローを確認することができるデータということで、疑問点3は20 年をベースに取らせていただいているので、2名ずれていますが、位置付けとしては赤括弧の中の2番の下側の本剤配合量に当たる方が、□□例になります。

 この方は、継続できたかどうかは別にして、この期間中に飲んでいたことを確認できた患者さん方になります。その後、年間処方箋のデータベースをフォローしまして、□□例、その中の%が飲んでいたことが確認できた患者さんということになります。ですから、私たちの理解としては、3剤併用していた方で、少なくとも割ぐらいはか月以上継続して飲んでいたということが言えると考えております。

○神田委員 はい、ちょっと考えます。数字の所では、私が質問していたこととの答えとは違うのですね。

○事務局 明確に。

○神田委員 違います。ごめんなさい、3ではなかったです。

○事務局 先生に御指摘いただいたデータのお答えをすることが前提で、私たちも集めましたが、明確に一問一答的に合わせることはなかなか難しいというところで、まずは、継続できている患者さんがいるのかという形でお答えしているということだとは思います。

○神田委員 ここが私が質問したことのお答えなのかと思ったのですが。

○事務局 ここが。

○神田委員 ここですか。

○事務局 はい、そのつもりでおりますけれども。

○神田委員 では、3成分を併用している患者さんは、途中で変更することはないのですかという。

○事務局 仰るとおりです。

○神田委員 その変更しているという数字はどう見たらいいですか。

○事務局 変更しているのは、ですから%の方。%の方は変更している可能性があるということになります。

○松木部会長代理 どうして、継続していない人が、薬局で行った人は継続していないと見なすといって書いてある。ですから低く見積もっている訳ですね。

○事務局 どういうことでしょうか。ここの恐らく下の文字のことですか。□□例のうち、フォローアップできなかった患者さんは確かに数名抜けています。低く見積もっている可能性はあると思います。それなので、少なくとも%の方はか月以上飲んでいたという理解をしているのですけれども。

○松木部会長代理 いやいや、少なくともというのではなくて、本来は継続している、トレースできなかった患者、この全体の数からオミットすべきです。この割合を出すのであれば。これだって、その人たちが使っていないと見なしたならば、継続使用のデータが落ちてくるのは当たり前ではないのですか。こんなやり方してはいけません。

○松井部会長 ちょっとお待ちください。御発言ありますか。審議官、どうぞ。

○審議官 今、神田委員が疑問に思われたのは、多分、3種類をもう使っているという方々で言うと、□□という母数が一応つかまっていて、その中のどのぐらいの量で飲んでいるかの組合せが色々あって、しかも、一定期間見ていくと、それは恐らく変わっている方が色々いらっしゃると。その中で、今の配合剤の量で、固定された用量でか月ぐらい飲み続けているのではないかと思われる人を一生懸命拾うと、□□ぐらいあるというようになっているのではないかと思います。

○神田委員 そうすると、数字の見方ですが、□□に対して□□が何パーセントに当たるかではなく、□□に対して、□□がどれだけに当たるのかというように見るべきかと思いますが、違いますか。

○事務局 □□人の場合は、この数がもう少し増えると思います。今回の解析は、□□人のうちの。仰るとおり、疑問点ということに関しては、3剤を飲んでいることが前提であれば、先生が仰るとおりの解析の方が適切かと思います。私どもとしては、この用量できちんと飲んでいる人という方がミカトリオの承認においては重要なデータであるということで、敢えて□□名の方を抽出して解析させていただいております。ですので、□□人のデータでも、同様のことをすることはもちろんできます。

○松井部会長 ありがとうございます。私の不手際で議論が長引いて、時間もだいぶ経っている訳ですけれども、この問題は、別の3剤の組合せで、また同じような議論が将来繰り返されるように思います。それは大変、私にとっても、皆さんにとっても不毛なことだと思います。

 これは、部会長としての提案ですが、少なくとも降圧剤の3剤に関して、やはり企業のデータではなくて、専門医あるいは学会の要望があるということが何らかの形で示されないと、同じ議論をまたまた、2剤、3剤、4剤と繰り返していく可能性があると思います。いかがでしょうか、機構の方でもそういう、例えば、相談に乗っていただいた専門委員の集団が何人かいらっしゃる訳ですね、5、6人いらっしゃる訳ですけれども。その御意見をやはり委員に直接ぶつけていただくと。あるいは書類でぶつけていただくということで審議するのではないと、企業の出したデータを我々が、それを正しいと信じて認可をするというのは、これはどうも形としてはおかしいと思います。委員の方はいかがでしょうか。

○内藤委員 基本的には松井先生が仰ったことに賛成ですが、今日の会議の前に、直前になってしまって時間がなかったので、電話で御質問させていただいているのもありますが、配合剤を3剤で認めるということに関して、今日の資料の中では、配合剤がどんなにメリットがあるかという、その良いことばかりが質問に答える形で書いてありますけれども、私自身が考えると、配合剤にすることのデメリットもあるような気もするのです。

 例えば、私が考えるところでは、三つのお薬の用量を固定してしまうことによって、その用量に患者さんを誘導してしまう可能性があると思います。ですけれども、先ほど御返事いただいた中では、それはあくまで選択肢を増やすことで、それは臨床の現場で判断していただければいいことである、というようなことで仰っていただきましたが、最初の松木委員のお話にもありましたように、選択肢を増やすということがそれほど重要なことかというような問題もあります。

 もう一つここで言いたいのは、配合剤の3剤をもし認めたときに、どういう影響があるかということについて、どの程度皆さん考えられたのかということです。この3剤、先ほど松井部会長が仰ったように、次にまた別の組合せで3剤が出てくると。あるいは4剤とかが次々出てくる可能性があって、そのときにどういう基準で認めるのかということになるのだと思います。

 私は別に知りたいと思ったのは、何でこの3剤を企業が出してきたいのかということについても、患者にとって利便性があるということ以外に、もちろん企業にとっても、何らかの狙いがあって申請を出してきていると思いますが、そこら辺が何故というのがよく分からなくて、それを聞きたいと思っていたのですが、すみません、話があちらこちらに飛んでしまって申し訳ありません。要するに、今後、こういう3剤が出てくる可能性があることを考えると、色々な角度から今回のことを検討する必要があるかと思います。

○松井部会長 ありがとうございます。

○鈴木委員 今の松井先生のお話を踏まえて考えると、配合剤については、より臨床家の意見を重視すべきであるということですね。

○松井部会長 おっしゃるとおりです。

○鈴木委員 ある個人の先生をお呼びしても、一定の影響力を受けている可能性もありますから、学会などから意見を出してもらった方がいいのではないでしょうか。

○松井部会長 ありがとうございます。他にありますでしょうか。

○川上委員 自分も前回、どのくらいの組み合わせでの用量が、一定の期間継続されている処方があるのか、臨床の実態を反映した裏付けがあるのか、ということを質問させていただきました。それには、一定程度お答えいただけているかと思います。

 ただ、一方で、こういった固定用量の配合剤を承認することのデメリットもあるかと思います。今回、先ほどディスカッションになっていた3ページの下の疑問点3の表であれば、%の患者さんは継続している。逆に言うと、固定用量の薬剤を処方していると、%の患者さんは処方変更する際には、むしろやり辛い状況を生む可能性があるかと思われます。あるいは、先ほど松木先生から御指摘がありましたけれども、疑問点4の . の引用論文の件ですが、これは海外のデータですけれども、例えば3剤配合剤群で、アドヒアランスが80%以上保たれている患者さんは55%ということは、逆に言うと45%の患者さんはアドヒアランスが保たれていないのであれば、3成分が1剤になったことで、その1剤を飲まないことのデメリットは、単剤で処方している時よりも大きくなってくるので、そういった意味では、用量を固定したものを合剤で処方するデメリットも一方ではあると思います。仮に、こういった配合薬剤を我が国の医薬品市場において承認するのであれば、そういったデメリットもあるので、過度に自社製品への処方誘導のような形でプロモーションしないように、企業にも指導しながらお認めいただくような配慮は必要かと思いました。以上でございます。

○松井部会長 ありがとうございます。先生、個別的なことですか。このデータ。

○松木部会長代理 そうです。簡単に、3ページの上の実際のデータですが、結局、本剤の配合量が、例えば、テルミサルタン、ヒドロクロロチアジドの□□%のうちの僅か□□でしかない訳ですよね。ということは、残りの大多数は違う配合の用量にしているはずなのですけれども、ですから逆に言えば、こちらの配合は、多分そういうことは考えて配合している人が、この本剤の方の配合にシフトする可能性があるかもしれない。あるいは、下の方を見れば、トリクロロメチアジオドを使っている先生が、これをわざわざ使っているところの理由は多分あると思うので、他の先生は多分、そのようなことを考えながら使っているのだと思います。色々な三剤の用量の組み合わせを使わないといけないということになってきてしまって、なおかつ、テルミサルタン、アムロジピンベシル、ヒドロクロロチアジドの組合せとしては、この本剤の提案がされている組合せは、全然ベストではないということではないですか。ですから、本当にそう考えると、全くその配合剤をこの三剤のこの用量で出すということを支持するデータではないと思いますが、それをもって、審査管理課はこの一定の有用性があるということは判断できたと言っているところが理解できないのです。

○松井部会長 ありがとうございます。

○事務局 先生方、御意見ありがとうございました。本剤については、治験が実施されていて、有効性・安全性については、皆様、特に御意見がなかったところかと思います。ただ、今回、今まで二剤配合剤までしかなかったところ、三剤配合剤という形で出てきて、本当にこういった組合せで、固定で、ずっと使える患者さんが実際にいるのかと。神田先生から御意見があったように、そのようになってしまうと、残薬とかの問題で患者さんが困ったり、医療現場が困ったりするのではないかというところで御指摘いただいて、今回、それに対する回答をまとめさせていただいたところになるかと思います。

 松木先生から、今回のミカトリオの組合せ、決して割合として高くないのではないかという御指摘ですが、成分としての組合せの割合としては、2番目というところがありまして、用量もそれぞれ2通り以上ある中で、全体の30%を占めているというのは、決して低くはないのではないかと思いますし、この組合せの中で3位から10位という中で、これでまた用量を振りますと、もっと少ない割合にはなりますので、実臨床の中で、決して少なくない数を使われている、企業が勝手に想定した用量だということではなくて、ある程度、臨床現場で必要とされている組合せであるというところは示せたのではないかと思っております。学会のガイドラインでも、配合剤の有用性というのは謳われているところですし。

○松井部会長 学会のガイドラインで、具体的にどういう組合せがいいのかという、それを示していただきたいのです。

○事務局 そこまではされてはいないところではありますけれども、また、現状の。

○松井部会長 審査管理課長、お願いします。

○審査管理課長 すみません、非常に長い審議時間になりまして申し訳ございません。松木先生はじめ、委員の先生方から貴重な御意見を頂まして、色々種々問題はあろうかということは私どもも認識はしております。ただ、一定程度臨床で使われている組合せについて、それを配合剤に置き換えることについて、色々御意見はあろうかと思いますが、一定程度の意義といいますか、配合剤として全く駄目かということではないのではないかというのが、我々の考えではございます。

 ただ、先生方の御指摘のように、実際にこの分野の薬をお使いになっている専門家の先生、あるいは学会等の御意見ということも重要であるということはそのとおりだと思います。大変恐縮ですが、一応、私どもで、また学会等の御意見を伺わせていただきます。今回、たまたまですが、循環器専門の先生が御欠席ということもありまして、参考人の先生をお呼びするなりして、次回は御議論、御審議いただければと思います。

○松井部会長 ありがとうございます。それでは、手短にお願いします。

○鈴木委員 それでいいと思いますけれども、資料としては、専門家もいいのですが、私の今までの経験から、そういう適応とかに一番厳しいものには、イギリスのNICEのガイドラインがあると思います。そこで配合剤が、どのように扱われているのか、是非、私も知りたいので、そういう情報も出していただけたらいいのではないでしょうか。

○松井部会長 大変、有意義なサジェスチョンだと思います。それでは、この議題について、継続審議ということにいたします。

 次の議題7をお願いします。

○事務局 議題7、資料No.6、セレキシパグを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。資料の評価報告書のタブをお開きください。申請者は日本新薬株式会社。予定される効能・効果は外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症です。慢性血栓塞栓性肺高血圧症は、原因不明の器質化した血栓により肺動脈が慢性的に閉塞し、その結果として肺動脈の血管抵抗が上昇する予後不良の疾病で、指定難病として定められています。

 まず、対象患者数について御説明いたします。平成25年度末時点で2,140人が指定難病に認定されており、特定疾患医療受給証の交付を受けていることが報告されております。また、本邦における慢性血栓塞栓性肺高血圧症の有病者数は100万人当たり約1520人と報告されており、本邦における患者数は1,9052,540人と推定されます。以上から、患者数が5万人未満という基準を満たしているものと考えております。

 次に、2ページの医療上の必要性について御説明いたします。慢性血栓塞栓性肺高血圧症の治療手順は、症状の進展防止を目的として抗凝固療法から治療が開始され、その後、外科的治療が検討されます外科的治療が不適応又は外科的治療後に肺高血圧が残存・再発した患者に対し、薬剤による血管拡張療法の適応が検討されますが、肺血管拡張薬については現在、本症に対する有効性及び安全性が確認されている薬剤は、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬であるリオシグアト1剤のみとなっております。

 本剤は経口投与可能なプロスタグランジンI2受容体アゴニストで、肺動脈平滑筋のプロスタグランジンI2受容体を介して肺動脈を拡張させ、肺血管抵抗を低下させます。本剤はリオシグアトと作用機序が異なることから、本症に対して有用な治療薬となることが期待されます。

 実際に、外科的治療不適応又は外科的治療後に肺高血圧が残存・再発した本症の患者を対象とした、国内第 II 相試験が実施されており、主要評価項目とされた「□□□□□の肺血管抵抗のベースラインからの変化量」において、プラセボ群と比較して本剤群で肺血管抵抗が□□□□□□が認められております。以上より、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に、3ページの開発の可能性についてです。外科的治療不適応又は外科的治療後に肺高血圧が残存・再発した本症の患者を対象とした国内第 III 相試験が本年中に開始される予定であることから、開発の可能性は高いと考えております。以上より、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たすものと考えております。

○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。よろしければ議決に入ります。村田委員におかれましては利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮ください。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可として薬事分科会に報告いたします。それでは議題8に移ります。

○事務局 それでは審議事項、議題8、資料No.7、パチシランを希少疾病用医薬品として指定することの可否について御説明いたします。機構の評価報告書を御覧ください。まず、1ページの中ほどにありますとおり、予定される効能・効果はトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー。申請者はジェンザイム・ジャパンです。

 一つ目の対象患者数ですが、本疾患は指定難病ですので、対象患者数についてはクリアしているものと考えております。

 2.の医療上の必要性ですが、1行目にありますように、本疾患はトランスサイレチン由来のアミロイドが、末梢神経や各種臓器に沈着することによって発症する全身性アミロイドーシスの一種です。次のページの上から3行目にありますように、発症初期にはしびれや疼痛等の症状が下肢に認められているのですが、疾患の進行に従い、全身性の感覚神経障害や、心筋症等の臓器障害が認められて、平均で発症後10年以内に死亡するとされております。

 本疾患に対する治療としては、まず肝移植がありますが、一般に肝移植についてはドナー数が不足していることや、肝移植後も免疫抑制剤を使用する必要性があること、そして肝移植の適応となる患者も限られているという問題があります。同じ段落の上から8行目です。既存治療薬についてはタファミジスメグルミンが承認されていますが、その下4行目、症状の進行を完全に抑制することはできないことから、本疾患に対する治療薬として十分ではないと考えております。

 次の段落です。パチシランですが、本剤はトランスサイレチン遺伝子を標的とした低分子干渉RNAを脂質ナノ粒子に封入した製剤で、肝臓に選択的に集積し、RNA干渉作用によって、トランスサイレチンを産生するメッセンジャーRNAを分解することによって、アミロイド沈着が抑制されると考えております。海外の第 II 相試験の結果、本剤の投与によって血清中トランスサイレチン濃度の低下や症状の進行等が認められており、医療上の必要性は高いと考えております。

 次ページです。最後に開発の可能性です。現在、日本を含む国際共同第 III 相試験が実施中ですので、本剤の開発の可能性は高いと考えております。以上、三つの要件を満たしますので、希少疾病用医薬品として指定しても問題ないと考えております。以上です。

○松井部会長 いかがでしょうか。委員の先生方から御質疑をお願いします。御質疑がないようですので議決に入ります。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可として薬事分科会に報告いたします。それでは報告事項に移ってください。

○事務局 まず報告議題1、医薬品ヒュミラの一変承認についてで、資料No.8です。本剤は、アダリムマブを有効成分とする抗TNFαモノクローナル抗体で、現在関節リウマチやクローン病等の効能・効果で承認されております。今般、アッヴィ合同会社よりクローン病の効能における新たな用法・用量、すなわち2ページの上の方にアンダーラインを引いておりますように、クローン病の増量の効能・効果を追加する一変承認申請が出されました。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断しました。

 報告議題2、エルネオパNF1号輸液、同2号輸液の製造販売承認についてで、資料No.9です。本剤は高カロリー輸液用の糖・電解質・アミノ酸や総合ビタミン・微量元素液で、既承認のエルネオパNF1号輸液や2号輸液の成分を改訂したものです。今般、中心静脈栄養療法が適応される消化器術後患者を対象とした臨床試験成績に基づき、大塚製薬工場より製造販売承認申請がなされました。

 機構における審査の結果、本剤を6.に書いてある効能・効果で承認して差し支えないと判断しました。

 次が議題3、医療用医薬品の再審査結果です。資料No.10-1から10-3です。まず資料No.10-1です。一般的名称はA型ボツリヌス毒素、販売名はボトックス注用。今回の再審査に係る効能・効果は1ページの承認の効能・効果にあるとおり、上肢痙縮・下肢痙縮となっております。

 資料No.10-2です。一般的名称はレボノルゲストレル、販売名はノルレボ錠です。効能・効果としては承認の効能・効果欄にあるとおり、緊急避妊となっております。

 資料No.10-3です。一般的名称はエストラジオール/酢酸ノルエチステロン、販売名はメノエイドコンビパッチです。今回の効能・効果は次のページの承認の効能・効果欄にありますとおり、更年期障害及び卵巣欠落症状に伴う血管運動神経系症状となっております。これらの品目については、製造販売後の使用成績調査や特定使用成績調査等に基づき、再審査申請が行われ、審査の結果、医薬品医療機器法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しない、すなわち効能・効果や用法・用量の承認事項について、変更のないカテゴリー1と判断したものです。

○事務局 議題4、資料No.11、優先審査指定品目の審査結果について、事務局より御説明いたします。優先審査の取扱いについては、資料の表紙の裏にその概要をお示ししております。この制度は医薬品医療機器法第14条第7項の規定に基づき、希少疾病用医薬品やその他、医療上特に必要性が高いと認められる品目を指定し、他の品目に優先して審査を行うものです。その指定に当たっては適応疾病の重篤性、医療上の有用性を総合的に評価して判断されます。

 では、表紙に戻ってください。今回の対象品目は販売名、プリズバインド静注用2.5g、一般名イダルシズマブ(遺伝子組換え)。申請者は日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社で、ダビガトラン抗凝固作用の中和に係る効能・効果で承認申請がなされております。

 事前に取りまとめられた機構の報告書に基づき、当該薬剤の優先審査の該当性について御説明します。資料の5ページを御覧ください。適応疾患の重篤性については、当該疾患は生命に重大な影響がある疾患(致死的な疾患)に該当すると判断されております。医療上の有用性については現在、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩により、治療中の患者で重篤な出血が発現した場合は、可能な限りの止血処置を行った上で、対症的に輸血又は血液製剤の投与等がなされております。

 また、国内の脳卒中治療ガイドライン、心房細動治療(薬物)ガイドラインにおいては、当該患者での出血時の対応として活性炭の経口投与、血液透析並びにプロトロンビン複合体製剤及び遺伝子組換え活性型第 V II 因子製剤の投与等が記載されているものの、これらの治療法の臨床的な有効性及び安全性について、堅牢なエビデンスは確立していない状況です。

 以上より、現時点ではダビガトランの抗凝固作用を速やかに減弱又は消失させる必要がある状態に対して、臨床的な有用性が確立された既存の治療法は存在しないと考えられることから、本剤は既存の治療法、予防法若しくは診断法がないことに該当すると判断されております。以上を踏まえ、当該薬剤は優先審査品目に該当すると判断いたしました。当該薬剤の承認の可否については、今後機構での審査を経た後に、改めて当部会で御審議いただく予定です。以上です。

○松井部会長 委員の先生方から何かありますか。

○野田委員 別件です。内藤先生のビムパットの御質問に関して、資料2についてです。添付文書について、多少瑣末なことを申し上げたような感じでしたが、そうでもないと思います。資料2の添付文書1.8、1ページの右の「重要な基本的注意」の()に、「本剤投与中の患者には」とあるのですけれども、ある意味単純に素っ気なく「投与中」と書いてあることが問題で、例えば「本剤でコントロール下の患者には」というようにすれば、コントロールしていてもということと、コントロールするものだという蓋然性とが出ると思うのです。一文字たりとも変えてはいけないというのであれば別ですが、元の文章と本質的に変わらないと思うので、コントロールしていても、というニュアンスを少し出したらどうかと思っている次第です。御参考にしていただければと思います。

○松井部会長 担当の方、御検討いただけますか。

○医薬品医療機器総合機構 御意見、ありがとうございました。今回の品目に関しては、他の類薬とも合わせての並びもありますので、このままとさせていただきたいと思います。今後は今いただいた御意見も踏まえて検討するという方向で考えさせていただきます。

○野田委員 よろしくお願いいたします。

○松井部会長 他にありますか。

○川上委員 資料No.8のヒュミラについてです。1回80mgまでの増量というのは、臨床的にも他の適応で行われているので問題ないと思うのですけれども、例えば関節リウマチや乾癬ですと、「効果不十分な場合」という書き方なのです。なぜクローン病に関しては「効果が減弱した場合」となっているのか。この適応だけ「不十分」ではなくて「減弱」という表現にされているのかを御説明ください。

○審査第一部長 この報告書を捲っていただきますと、審査報告書が別紙1というタブで付いているかと思います。こちらの9ページを御覧いただけますか。今回、効果不十分な患者に対して検討する前に、通常の用量を検討した臨床試験の結果を再度検討しております。まず通常の用量の中で一度効果を見てその後悪くなった方と、もともとの用量で良くならなかった方の2群で比較しているのが、7.R.1.1.2で5行目ぐらいに出ているかと思います。このCR-70達成例というのが、一度良くなって悪くなった方です。その次の行にある未達成例というのが、良くならないまま増量した方です。このように一度良くなった後に悪くなった方については、増量することでまた効果が戻ってくるのですが、当初の用量で良くなかった方に増量しても、効果が期待できないことが分かりましたので、そのような方への増量ということにさせていただいております。

○川上委員 そうであれば、そのことを用法・用量に関する注意の所に追記されないのですか。

○審査第一部長 添付文書が別紙の()の緑のタブです。ページ数で言うと3枚目、1枚捲った2枚目の表側を御覧ください。こちらに用法・用量に関連する使用上の注意というのがあります。少々ボリュームが大きくなっておりますが、ちょうど左の中ほどに()があります。こちらにクローン病に関する用法・用量の注意が書いてあります。今回下線を付けた所に追記しています。「また」以下の「80mgへの用量増量は、40mgによる治療で効果が認められたものの、維持療法中に効果が減弱した患者について行うこと」というような形にさせていただいております。情報提供は分かり易いように、きちんと企業の方に指導して行わせたいと思います。

○川上委員 ありがとうございました。

○松井部会長 他にありませんか。それでは、報告事項については委員の皆様の御確認をいただいたものといたします。

 本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はありますか。

○事務局 次回の部会は8月4日の木曜日、午後4時から開催させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 大変長く掛かりまして申し訳ありませんでした。それでも大事なディスカッションができたと私は思います。本日はこれにて終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

備  考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬・生活衛生局 医薬品審査管理課 課長補佐 清原(内線2746)

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