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2016年11月14日 第10回 透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会

労働基準局

○日時

平成28年11月14日(月)10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎5号館厚生労働省議室


○出席者

荒木 尚志(座長) 石井 妙子 小林 信 高村 豊 土田 道夫
鶴 光太郎 徳住 堅治 斗内 利夫 中村 圭介 長谷川 裕子
水島 郁子 水口 洋介 村上 陽子 八代 尚宏 山川 隆一
輪島 忍

○議題

・行政による個別労働関係紛争解決について
・その他

○議事

 

○荒木座長 それでは、定刻より少し早いですけれども、ただいまより第10回「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」を開催いたします。

 委員の皆様におかれましては、本日も御多忙の中、お集まりいただきありがとうございます。

 本日は、小林治彦委員、岡野貞彦委員、中山慈夫委員、大竹文雄委員、垣内秀介委員及び鹿野委員が御欠席です。

 また、土田道夫委員はおくれて到着される予定と伺っております。

 本日の議題ですけれども、「行政による個別労働関係紛争解決について」です。

 それでは、資料の確認を事務局よりお願いいたします。

○大塚調査官 本日、資料は4点ございます。

 資料No.1が、いわばファクトに関する資料でございます。

 資料No.2が、ワードの資料でございますけれども、いわばアジェンダに関する資料でございまして、参考資料が2点ついてございます。

 もし漏れがございましたら、事務局のほうにお申し出いただければと存じます。

○荒木座長 それでは、本日の進め方ですけれども、まず、事務局より資料No.1とNo.2を御説明いただいた後に議論に移りたいと思います。

 議論に当たっては、まずは、資料No.2「検討事項」の1ページから2ページの「行政による個別労働関係紛争解決」部分を御議論いただきたいと思います。その後に、3ページ以降の【地方自治体(都道府県労働委員会等)による個別労働関係紛争解決】、それから、5ページの「その他」という事項について御議論いただきたいと考えております。

 それでは、事務局より、議題「行政による個別労働関係紛争解決について」、資料No.1とNo.2に基づいて御説明をお願いします。

○大塚調査官 では、資料No.1につきましてまず御説明申し上げます。資料No.1のファクトの資料は、最後の労働委員会のものを含めて御説明させていただきます。

 右下にページがついてございます。3ページをお開きいただければと思います。こちらは個別労働関係紛争法の概要を述べたものでございまして、「2 概要」のところに書いてございますように、まず、個紛法の第2条で労使当事者の自主的な解決に努める旨の規定がございます。第3条が都道府県労働局によります相談ですとか情報提供の規定、第4条が都道府県労働局長の助言・指導の規定、第5条があっせんの規定となっておりまして、このあっせんの規定の後ろに、あっせん委員の構成ですとか手続などに関する規定が続いております。最後の第20条に地方公共団体の責務規定がございまして、これに基づいて、都道府県労働委員会のほうであっせんを行う場合には中央労働委員会が助言・指導を行うという規定がございます。

 次の4ページが個別労働関係紛争解決促進制度の全体の流れを示したものでございます。上から下に流れていきますけれども、全国381カ所あります総合労働相談コーナーでは、年間約1035,000件の相談を受け付けております。こちらにつきましてはこれまでも御説明しておりましたけれども、労働基準法等違反のものがある場合につきましては、右のほうにあります労働基準監督署などの所管する部署に取り次がれることになります。左のほうにございます民事上の個別労働紛争に関する相談が約245,000件ございますが、紛争状態にあるものが約7万件ございます。これにつきまして、労働局あるいは裁判所などの手続を御案内いたしまして、労働局の手続を御希望される場合には、その下に流れていきますように、助言・指導ないしはあっせんを行うことになってございます。

 次の5ページに、相談と助言・指導の流れにつきましてもう少し詳細に描いた図をつけさせていただきました。助言と指導の違いでございますが、ここにいろいろ書いてございますけれども、要すれば、当事者の片方に紛争解決を阻害する要因がある、ありていに言えば、どちらか片方が悪いですよという状態にある場合には指導を行うことになっております。それに該当しないのですけれども、労使の自主的な話し合いを促すのがふさわしいものにつきましては助言ということになっておりまして、指導は文書、助言は口頭と文書の両方があります。ただ、27年度につきましては全て口頭助言というのが実績でございます。

 解決するもの、しないものにつきまして、下の矢印に流れていきます。解決したものがおよそ半数以上となっておりますけれども、解決しなかったものにつきましては、一部はあっせんに、それ以外につきましても裁判所などのほかの手続を御案内することになってございます。

 6ページから10ページにかけましては、京都労働局におきまして実際に使用しておりますパンフレットの実例でございます。6ページの左側に目次が載せてありますけれども、相談を希望される方、あっせんを希望される方、裁判所の手続を希望される方向けにこういう機関があるということをわかりやすく並べております。このページに沿って相談を受け付けている曜日・時間帯、そして費用がかかるかどうかなど、それぞれの特徴を機関ごとに並べておるものでございます。これが10ページまで続きます。

11ページは助言・指導の実例でございます。いずれも雇用終了に関する事案を抜き出しましたけれども、左側は労働契約法の規定を引用しまして、右側は整理解雇に関する裁判例を引用しまして、それぞれ助言を行った例でございます。

12ページはあっせんに関する流れを示したものでございます。あっせんは、有識者の方々で構成される紛争調整委員会におきまして行われることになっております。同じように上から下に流れていきます。あっせんの申請がなされた場合、あっせんの開始通知書を当事者に送ることになります。この段階で不参加の意向を示した場合には、右側に書いてありますように、労働局であっせんの参加勧奨を行うことになります。あっせんが開催される割合は6割弱でございますけれども、あっせんが開催された場合には紛争調整委員会であっせん案を作成して提示するということが法律上規定されております。この場合にあっせんを行う紛争調整委員会は3人1ユニットで構成されております。ただ、実際には、左側をごらんになればおわかりになろうかと思いますけれども、あっせん案を提示する形であっせんを行っている事例というのは、27年度におきましては1件しかないということになってございまして、1,719件はあっせん案を提示せずにあっせんを行って合意に至っているものでございます。

 これはどういうことかといいますと、あっせん案を提示するに当たっては、先ほど申し上げましたように、3人1ユニットの紛争調整委員会を構成してやることになっていますが、それだと日程調整も含めてもろもろ時間がかかることがございますので、迅速性を優先して、1名のあっせん委員であっせん案を提示しない形で行っている。これが近年の実情でございます。

13ページは、あっせんに関する各種様式でございまして、左側が「あっせん申請書」でございます。これは多くは労働者の方が御利用されていますけれども、紛争の背景ですとか紛争の経過など、この辺を一枚紙で書いていただいて、これを労働局に提出することであっせんが始まります。

 右側は「あっせん開始通知書」でございます。あっせんの申請が行われた後に当事者に対して送られるものでございますが、下の留意事項に書いてございますように、任意であるという旨が強調されておるところでございます。

14ページの左側は、統一様式ではなくて、ある労働局の事例でございます。先ほどごらんいただきました「あっせん開始通知書」を受け取った他方当事者が不参加の意向を示すのかどうかを確認するための書類でございます。参加・不参加の欄にチェックしていただきまして、もしこれで不参加という場合には、右側にございますように、電話による参加勧奨などを行うという取り扱いになってございます。労働局によりましては、この参加・不参加の意向を聞くだけではなくて、例えば申請書に対する反論書類を提出させるとか、そういったプラスアルファのことを求めている労働局もございます。

 このページの右側のあっせんの参加勧奨についてでございますけれども、鶴先生が規制改革会議の雇用ワーキンググループの座長をされていたときに御指摘を受けました。その御指摘は、労働局のあっせんは解決率が低い、解決率が低いのは参加率が低いことにもその要因があるということで、この参加率の向上を図るために出した指示の概要がこちらの右側のものでございます。いろいろ書いてございますけれども、不参加の意向を他方当事者から示された場合にも、それで終わりとせず、必ず電話による参加勧奨を行い、あっせんのメリットですとか流れなどをよく説明して、あっせん期日に出てきてもらう。そういったような取り組みを全労働局で進めているところでございます。

 その結果なのかはわかりませんけれども、下に書いてございますように、平成26年度は54.2%のあっせんの参加率だったところ、この指示後の平成27年度は57%と若干改善しております。

15ページからは、このあっせんの参加勧奨を行うときなどに大阪労働局が用いているパンフレットの実例でございます。まず、15ページの左側であっせんの特徴を述べておりまして、右側であっせんを利用した事業主の方々の声も挙げております。

16ページは、あっせんの流れを具体的に説明しているものでございまして、17ページには、大阪労働局で取り扱いましたあっせん事例の実例を書いてございます。これらによりまして、あっせんに参加した場合にどのような流れで、どのような解決が図られるのかというイメージを膨らませるための資料として活用しているところでございます。

18ページも様式になってございまして、左側は「あっせん案」の様式でございます。ただ、このあっせん案を書面で示すのは、先ほど申し上げたとおり、近年では余り例がないということになってございます。

 右側は「合意文書」の例でございます。あっせん案を示さないまでも、あっせん委員の方々は、その知見に基づきまして、時には相場観なども示しながら解決に向かって誘導していくわけでございますけれども、その結果、当事者間で合意がなされた場合の合意文書の例が18ページの右側の「合意文書」案でございます。

19ページは、残念ながら、あっせんが不調に終わってしまった場合の様式でございまして、「あっせん打切り通知書」となってございます。

20ページはあっせんの実例でございます。両方とも概要のところをごらんいただければと思いますけれども、両当事者が主張して、それの意見の幅寄せを行って合意に持っていっているという例でございます。ただ、労働者側の主張と使用者側の主張を足して2で割るというものではなくて、先ほど申し上げましたとおり、あっせん委員の御経験ですとか知見に基づきまして合意に向かっての誘導をしているということでございます。

21ページは、労働局の仕組み・体制でございます。左上にございますように、労働紛争調整官という官職の者がこの制度を担っているわけでございますけれども、このほとんどは労働基準監督官から選任されております。ただ、この官職についた場合には労働基準監督官のように監督権限はございませんで、事務官扱いになってございます。

 その下に「総合労働相談コーナー」と書いてありますけれども、場所的には大半が労働基準監督署に置かれております。置かれておりますが、これ自体は労働基準監督署の機関ではない。つまり、労働基準監督署長の指揮・命令を受けているわけではございませんで、一番上にありますように、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)というところのいわば出先機関でございます。ここに総合労働相談員が配置されておりまして、この総合労働相談員は非常勤でございます。下のほうにありますように、社労士から選任される場合が6割を占めてございます。紛争調整官はこれら総合労働相談員を指揮・命令いたしまして日々の相談業務ですとか助言業務に当たっております。

 右側は紛争調整委員会についてでございます。あっせん委員にどういう方々が選ばれているかというのが下のほうにございまして、弁護士からが7割となってございます。

 次の22ページは職員研修についてでございます。一番上の労働紛争調整官専門研修とその下の困難事案担当の相談員の研修は本省において行っておりまして、各種法令の内容ですとか手続の流れ、ロールプレイング等々を直接教えております。一番下の一般の総合労働相談員研修でございますけれども、こちらは全部集めると700名ぐらいになってしまって、とても本省ではやり切れませんので、上2つの伝達研修なども含めて、各労働局のほうでそれぞれ実施してもらっているという状況にございます。

23ページは、これまで検討会の場でも何回かお話に挙がりました連絡協議会についてでございます。連絡協議会は労働局が主催いたしまして、こちらに書いてございますように、都道府県ですとか、民間のADR機関、裁判所などに参画してもらいまして、年に1回から2回開催して具体的な連携策などを協議しております。

 その連携策の例でございますけれども、24ページにございます。全ての労働局でこれらを全部やっているわけではなくて、連絡協議会を通じて各労働局で実施することになった実例をそれぞれ列記しているものでございます。事例といたしましては、合同研修を行いましたり、合同の相談会などを行いまして連携を行っているところであります。

 あと、先ほどごらんいただきました6ページから10ページにありましたような関係機関一覧のパンフレットにつきましても、昨年度、こういった連絡協議会を通じて協議いたしまして、その結果、全ての労働局でつくってございます。

25ページからは労働委員会に関する資料になってございます。都道府県におきましてどのように個別労働関係紛争を処理するのかというのは、地方自治の世界でありまして、それぞれの都道府県の判断でございますが、昭和の時代から労政主管事務所のほうでは労働相談などを行ってきておりました。近年、平成11年の地方自治法の改正に基づきまして、知事の委任に基づいて都道府県労働委員会もあっせんを行うことができるようになっております。その結果、東京都、兵庫県、福岡県を除く44道府県におきまして何らかの形で労働委員会もあっせんを行っているという状況になってございます。

 この手続の進め方ですとか、どのような申請をさせるか、申請書類の内容ですとか、あっせんに当たる委員構成等々につきましては、それこそ地方自治に基づいて地域の実情に応じてそれぞれ行われていることもございまして、統一されているわけではございません。公労使三者構成によります労働委員会が丁寧にあっせんを行っているということはおおむね言えるのかなと思います。

 労政主管事務所と労働委員会の役割について幾つかのパターン分けをしてみたものを並べたのがこの26ページの右側であります。こちらをごらんいただければおわかりになろうかと思います。どちらが労働相談あっせんをどのように担当しているのかというのは、一番多いのは一番上のパターンなのですけれども、地方におきまして割とばらばらなのかなということも見てとれるかと思います。

27ページは、認知度向上のためにどのような取り組みをしているのかということで掲げさせていただいたものでございまして、毎年10月を周知月間として定めて㏚活動ですとかセミナーなどを行っているということがございます。

 また、28ページにありますようなパンフレットをつくりまして、これを活用して認知度の向上にも努めているところでございます。このパンフレットは、厚生労働省本省のほうで作成したものでございますけれども、労働委員会と労働局の特徴などを並べまして、これを裁判所ですとか民間ADR機関などにも参考までにお配りして、相談等の際に御活用いただいてございます。

 最後の29ページは、前回の検討会の場で御要望がございましたので取りまとめてみたものでございます。労働委員会でも、個別労働紛争のほかに、本来業務であります集団の労使紛争のあっせんですとか不当労働行為の審査といったお仕事もございます。また、労働局のあっせんや労働審判がどの程度活用されているのかによっても、それぞれの地域によって差が出てくるのかなと思いまして、都道府県ごとに並べたものでございます。件数が多いもの少ないものさまざまというのがこれをごらんになればおわかりになろうかと思いますけれども、例えば、右側にございます鳥取県は、事業所の数に比べますと大分件数が多いのかなと思いますし、四国の各県におきましても比較的件数が多いのかなと思われるところでございます。

 以上が、資料No.1のいわばファクトに関する説明でございました。

 次に、資料No.2「検討事項」についてでございます。座長の仕切りに従いまして、まず、労働局のあっせんについて1ページから2ページにかけて御説明させていただきます。

 資料は1の(2)から始まっております。(1)は何なのかということにつきましては、前回資料が委員の皆様方のお手元のドッジファイルにありまして、そこをごらんいただければ、(1)は現行の仕組みの評価ということで前回御議論いただいた部分だというふうにおわかりになろうかと思います。前回、現行の仕組みの評価について皆様に御議論いただきまして、その取りまとめ的な観点でこの(2)の2行下のところから3つの○を掲げさせていただいております。

 労働局のあっせんにつきましては、平成13年度に制度がスタートして以来、簡易・迅速・低廉な仕組みとして活用されてきました。その結果、各機関の中では最大の受け皿として機能してきたかと存じます。一方で、それが有効に機能してきたかどうかにつきましては議論のあるところでございまして、改善の余地もあるのではないかという御議論があったかと思います。

 ということで、具体的に考えられる検討事項をこのページの中盤から掲げさせていただいております。

 「1 より納得の得られる解決を促すための方策」の文言は、前回資料で使っておりました文言でございますけれども、その下にア、イ、ウという感じで、今回、具体的に書き出させていただいております。

 アは助言・指導に関してです。先ほど申し上げましたように、口頭の助言がほぼ全てといったような運用が行われております。そうしたときに、事案に応じた適正な内容が果たして担保できているのかどうかという観点で御議論いただくのがこのアについてでございます。

 イはあっせんについてでございます。ポツを2つ掲げさせていただいておりまして、1つは、任意性を重視しておりますので、その結果、参加率も6割を切っているという状況にございます。もう一つは、あっせんのやり方についてでございます。両当事者から意見を聞いた上で進めているというふうに運用にはなっておりますけれども、先ほど申し上げましたように、積極的に解決策を示して行っているというやり方にはなっていないというのが2点目でございます。

 こうしたことを踏まえて、よりよい制度として改善するためには、例えば、他制度における調停なども参考にしつつ、参加の任意性を見直したり、一定程度の事実認定を行ったりした上で主体的に解決策を示すようにするべきかというのがあろうかと思います。

 ここに書いてあります「他制度における調停」といいますのは、参考資料1に掲げさせていただいております。

 簡単に御紹介いたしますと、参考資料1の3ページ目から均等法などに関する調停の例をつけさせていただいております。均等法と育介法とパートタイム労働法は3つとも同じような仕組みでございまして、字がいっぱい書いてあるのでかいつまんで御説明しますと、要するに、個別の事案が起きたときのやり方が個紛法とちょっと異なっております。まず、行政指導の類型が柱として1本あります。これは何かといいますと、個別事案が来たときに、事実関係を調査して、いわば事業所全体をきれいにする、違法状態をなくすというのが行政指導でございます。もう片方は、個別の紛争解決援助でございまして、都道府県労働局長の助言・指導・勧告と、あと、調停委員会によります調停の仕組みがございます。この調停は、個紛法のあっせんとは違いまして、積極的に調停案という形で解決策を示した上で受諾勧告をするという仕組みになってございます。

 この参考資料の2枚後の5ページに、ほかの法令の例をつけさせていただいております。

 必ずしも個別紛争あるいは労働紛争の例ではございませんけれども、まず、建設業法につきましては、あっせんと調停の両方の仕組みを用意している制度でございます。調停につきましては出頭に関する規定も掲げられているところでございます。

 次の労調法の例でございます。こちらも調停の仕組みがございますけれども、同様に、関係当事者の出頭を求める旨の規定がございます。

 その次のページでございますけれども、公害紛争処理法についてでございます。こちらは、あっせんと調停の両方の制度があるのですが、あっせんがうまくいかない場合に一定のものについて調停の仕組みを用意するという、いわば2段階の方式になってございます。これにつきましても、下のほうにございますように、当事者の出頭を求める旨の規定があります。ほかの法令ではこういった調停の仕組みがあるということもございますので、これがそのまま個紛法に当てはまるかどうかは別としまして、御参考にしていただければと思っております。

 資料No.2に戻りまして、2ページ目の冒頭でただし書きとして掲げさせていただいております。これはどういう趣旨かというと、今、申し上げたように、個紛法の現行のあっせんの仕組みを、例えば全て参加を強制させたり、全て調停案のような形で解決案を示すことになると、全体のスピードが著しく遅くなります。そうなりますと、今のあっせんの仕組みは迅速な仕組みとしてそれなりにニーズもありますし、機能もしているということがありますので、仮にそういった参加についてある程度の強制性ですとか解決策を示すといったことを議論するに当たっては、例えばそのあっせんの中で一定の事案に限るといったことも意識しながら御議論いただくのかなと思いまして、このただし書きを掲げさせていただいております。

 次のウについては職員研修についてでございます。

 その次の「2 時間的・金銭的予見可能性を高めるための方策」です。この文言自体は前回資料にも使った文言でございますが、ア、イという形で具体的に掲げさせていただいております。

 まず、時間的予見可能性のほうでございます。都道府県労働局長の助言・指導につきましては1カ月以内に終わっているのが99%です。あっせんにつきましては2カ月以内に終わっているのが90%ということが27年度実績でございますけれども、それが必ずしも国民に対して明らかでないというのが実情でございますので、この辺をどう考えるかというのがアについてでございます。

 イについては、金銭的な予見可能性についてでございます。この検討会でもJILPTの調査結果につきましては、御議論の際に御参考までに資料として提出させていただいたところでございますが、労働局ごとに、例えば解雇紛争についてどれぐらいの相場観で終わっているのかというのは必ずしも集積されておらず、また、国民に対しても示されておりません。この辺をどう考えるかというのがイについてでございます。

 最後の3は情報提供内容の充実ということでございまして、アとイはセットだと考えております。1つは、この検討会の場でも何回か議論が出ておりました振り分け機能についてでございます。相談時ですとかあっせんの不調時におきましては、先ほど資料No.1の6ページから10ページでごらんいただきましたような資料、パンフレットを参照しながら御案内をしているところでございますけれども、この振り分け機能の強化という観点からすると、先ほどごらんいただいた資料のほかに、例えばどのような情報の充実を図るべきかというのを御議論いただくのがアの部分かなと思っております。

 また、振り分け機能の強化に当たりましては、個々の事案ごとに相談員がほかの紛争処理の仕組みを紹介しなければいけないことになると思いますけれども、その相談対応に当たりまして具体的にどのような点に留意すべきかということを御議論いただくのがイの部分でございます。

 続いて、資料No.2の労働委員会の部分についても御説明させていただきます。

 3ページをごらんいただければと思います。3ページ、4ページが労働委員会に関する資料となってございます。資料の構成としては、先ほどの労働局と一緒でございまして、この3ページの前半のほうに労働委員会の特徴を述べさせていただいております。先ほど資料No.1の説明でも申し上げましたけれども、一部の都県を除きまして労働委員会でのあっせんが行われているということでございます。ただ、その運用の実態につきましてはさまざまだということでございます。これは、自治事務に基づきまして地域の実情に応じた取り組みがなされていることを踏まえたものかなと考えられますけれども、自治事務ということで、国のほうが一律に改善を指示できるという性格のものではございません。ございませんが、労働政策の観点から、あっせんの仕組みなどにつきまして、都道府県労働局ですとか裁判所の仕組みとの違いに留意しながら、何か改善すべき点などがありましたら、この検討会の場で御議論いただこうという趣旨でございます。

 具体的に考えられる検討事項をそのページの下のほうに書いてございますけれども、「1  より納得の得られる解決を促すための方策」につきましては、ア、イ以下に記載しております。

 アは、件数が少ないという御指摘が前回の検討会の場でもございましたけれども、認知度向上の仕組みとして、先ほど御説明いたしました周知月間ですとかパンフレット以外に何か考えられることはあるかということでございます。

 イの部分は、それに関連する話でございます。認知度向上のためには都道府県内あるいは労働局、労働団体との連携を構築することも1つ考えられることでございますけれども、その事案の内容に応じた役割分担も含めてどのように考えるのかというのがイについてでございます。

 次のページのウは解決率についてでございます。先ほど資料No.1では具体的に解決率という形でパーセンテージでは示しておりませんでしたけれども、平成27年度の労働委員会のあっせんの解決率は5割を下回っております。これを向上させるためにはどうすればいいのかというのがウの部分でございます。

 エは職員研修についてでございます。

 続きまして「2 時間的・金銭的予見可能性を高めるための方策」についてでございます。こちらは、先ほど来繰り返し申し述べておりますように、自治事務として実施されてきているということがございまして、都道府県ごとに位置づけや対応がさまざまであるということに留意しなければいけないかと思います。それに留意しつつも、あっせんの処理回数ですとか、期間の実績を取りまとめて周知していくことですとか、可能な範囲で解決金額の状況などにつきましても情報の集積を図って集計を公表していくことが考えられるのかどうか。これを御議論いただくのがこの2でございます。

 最後「3 その他の制度上の改善の必要性が考えられる事項」ということでございます。前回、鹿野先生から、時効の中断効についての御指摘がありました。労働局のあっせんの不調の場合、あるいは民間ADR団体でADR法に基づく法務大臣の個別認証を受けた団体が行うあっせんが不調に終わった場合、この2つにつきましては時効の中断効がございますけれども、労働委員会のあっせんにつきましては、不調時の時効の中断効はございません。現在、国会に民法改正案が提出されておりまして、こちらが通りますと、紛争当事者が書面で合意した場合には時効の中断効が認められるといった仕組みができるかと思いますけれども、それ以外の書面によらない場合であっても時効の中断効を与えるのかどうかというのは議論には値するのかなと思いましたので、こちらに掲げさせていただいております。

 なお、前回検討会のときに長谷川委員から御紹介がありましたけれども、このページの一番下の※に書いております活性化検討委員会では、労働委員会に時効の中断効がなかったことに伴う問題が生じたのかどうかといったアンケート調査なども行っておりまして、9割の労働委員会が問題なかったと答えていたこともありますので、こちらもあわせて御紹介させていただいております。

 最後の5ページでございますが、上の2と3につきましては次回御議論いただくということでブランクにしております。

 「4 その他」についてでございます。これまでの検討会で山川委員から何度かお話がございましたが、企業内での苦情処理のあり方などにつきましても御議論いただいたほうがいいのではないかということで掲げさせていただいております。

 資料につきましては以上でございます。

○荒木座長 ありがとうございました。

 それでは、資料No.2の「検討事項」を2つに分けて議論したいと思います。

 まずは、1ページから2ページの、国の都道府県における労働局、都道府県労働局と言いますけれども、厚生労働省の出先機関であります労働局の個別労働関係紛争解決について御議論いただき、その後、3ページ以下の地方自治体における労働委員会の個別労働紛争解決と、2つに分けて御議論いただきたいと考えております。

 最初に、1ページと2ページの国の労働局における個別労働紛争解決について考えられる検討事項等について説明いただきましたので、これらについて皆様から御意見、御質問等をいただきたいと思います。

 水島委員、どうぞ。

○水島委員 1ページ目の1について意見を2点述べさせていただきます。

 紛争調整委員会によるあっせんというのは、当事者の合意形成の仕組みであり、合意を強制できないことを考えますと、参加を強制することは仕組みに合わないと考えます。大阪労働局が行っているような丁寧な参加勧奨が望ましいと考えます。

 また、事務局から御説明がありましたように、参加を強制しますと、迅速性の観点からも懸念されます。あっせん委員の経験から述べさせていただきますと、使用者が参加するとは思わなかったという申請人さんの声もよく聞きました。つまり、参加をしたという被申請人の姿勢を評価し、合意形成、納得いく解決につながることもあったということを申し添えます。

 2点目は事実認定の点です。これは、事案によってさまざまですけれども、証拠のようなものを全く提示されないケースもありますし、当事者が積極的にメールや写真、録音などを持参されることもあります。

 一例を紹介したいのですけれども、あっせん当日、申請人さんのおっしゃったことと被申請人さんの認識されている事実が食い違ったことがあったのですが、その後の申請人さんの聴取の間に、こちらからは何もお願いしていないのですが、被申請人さんが会社に連絡を入れて、証拠を写真で撮ってもらい、それをタブレットに送信して、あっせんの場で提示されたという例がありました。このようなものをどこまで認めていくかについては検討の余地がありますが、現在の方法でも一定の事実認定は可能と考えます。

 もっとも、事実認定を細かくやっていきますと、1回で合意を形成するというあっせんではむしろマイナスに働くことも多くありますので、特に申請人、被申請人さんが積極的に提示される場合には事実認定を積極的に行っていくべきと考えますが、そうでない場合にまで必要であるかについては疑問を持っております。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 鶴委員、どうぞ。

○鶴委員 ありがとうございます。

 大きく分けて2点あるのですけれども、参加の向上の話は、先ほど事務局からも御紹介いただいたように、あっせんという仕組みが非常に迅速性があってよく利用されていて、使う側にも非常に使いやすい制度であると。こういう制度を前提に、やはり問題なのは、その参加率が低いということなので、それが何とかできないのかということで、厚労省さんとも相当相談をさせていただいて、先ほどのように、何とかプッシュをしていく、粘り強い取り組みをやっていただいている状況かと認識をしています。

 私は、せっかくこの検討会をやっているので、その参加率というのをもう少し上げていく、より参加していただくような状況にするためには何が必要なのか、どういうアイデアが必要なのか、それをここで結果として出していくべきではないかというのを強く感じています。

 そのときのやり方として、確かに、ほかの制度を見て、調停のようなやや強制力の高いことを全部してしまうとやはり問題なので、一部、ごく限られたところで考えたらどうか。私は、これも検討のやり方の1つだと思いますし、任意性というのを重んじるのであれば、ある意味でインセンティブをうまく与えるようなやり方が何かあるのか。また、使用者側の委員の先生方もいらっしゃっているので、どうやったら参加率がより向上するような仕組みというか取り組みというのが、使用者の立場、使用者サイドの考え方としてどういうアイデアがあるのか、そういうことについてもこの場でぜひお話を聞かせていただきたいなと思います。

 2番目の点は最後の情報提供のところです。これまで何回も議論があったと思うのですけれども、この紛争に巻き込まれた人というのは冷静にいろいろ考えたりはできず、頭に血が上っている部分もあるかもしれないし、わらをもすがるような状況だと思うのです。情報提供というと、必ずパンフレット、リーフレットという考え方は常にあって、それはそれでいいのですけれども、厚労省に限らず、霞ヶ関の役所がつくるパンフレットというのは私が見ても何が書いてあるのかよくわからないのです。漫画が描いてあって、それでわかりすくというイメージになっているだけで、必ずしもわかりやすくない。それでも、平時のときはそれをしっかり読んで、どういう制度かということを理解することはできるかもしれないのだけれども、こういう非常にせっぱ詰まったときに、これを読んでくださいと言っても、それはなかなかわからないのではないかという感じがするのです。

 例えば、最初に説明していただいた資料に都道府県労働局の京都の場合の取り組みがあるのですけれども、「まずは相談したい方」というのが6つ挙げられているわけです。どれに相談していいのか。何も知識がない人はどこに行ったらいいのかわからないのです。これまでもワンストップサービスという話はありましたけれども、まずは労働相談コーナーにお話をしてください、相談してくださいとか、休日だったら、これは京都府のほうですか、中小企業の労働相談所というのがあるよと。わらをもすがる人が、まずはどうしたらいいのだということが的確にわかるような見せ方。

 それから、私はリーフレットもいいと思うのですけれども、例えば、今は動画とかホームページで見せるというのも非常に容易になっているので、非常に短い、そういうトラブルに遭った人はまずこれを見てくださいといって、落ちついてもらうための手段というのは幾らでも考えることができると思うのです。なので、何でもリーフレット、リーフレットという考え方も少し改めていただきたいというのが1点。

 それから、たらい回しの話を書いているのですけれども、私は、窓口の方の対応次第で受けとめ方というのは全然違うと思うのです。同じことを言っていても、あたりとして、たらい回しにされたというイメージを持つ場合とそうでない場合。ということになると、それは相談員の方々のスキルとか対応の仕方というところが、実はワンストップ、最初のところに来ていただいた方をどうするのかというのが一番大きなことだと思っています。そういうところをどのようにしっかりするのかというところについても、最後でウエートは余り大きくないという理解かもしれないのですけれども、私は案外一番大事なところなのかなと思っています。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 では、高村委員。

○高村委員 今、鶴委員から、「窓口での相談員の対応の仕方によっては受け止め方が全然違う」というお話がありましたが、都道府県労働局の個別労働紛争解決制度をより機能させていくためにどうするかということになると、制度自体をどうするかという問題と同時に、今、鶴委員からもお話のあった人材のスキルアップをどうするかという問題も大変重要だろうと私は思うのです。

 労働局の助言・指導・あっせんの前に、各労働基準監督署に設置された総合労働相談コーナーがあるわけですが、実は私、日々、連合東京で労働相談を受けていまして、総合労働相談コーナーに行かれた方がそこでの対応に納得いかない、不満だということで私どものところへ回ってくるケースというのがあるのです。そこで私どもはお話を聞いて、使用者側に交渉を申し込んで解決したりするのですが、その中には、法律には素人である私でさえ、これは明らかに法律違反だと明確に判断ができる事案もあるわけです。今、鶴委員がおっしゃったように、総合労働相談コーナーでそうした知識をきちっと持っている人が対応すれば、私どものところへたらい回しされるようなことがないだろうと思うのです。

 そこで、まず、総合労働相談コーナーに配置された相談員の皆さんのスキルアップというのを図らなければいけないと思います。それと同時に、先ほど「考えられる検討事項」の1のアの中で、助言・指導の問題にかかわって「事案に応じた適正な助言が担保されるようにすべきか」というお話があったわけですが、ここでの職員の皆さんのスキルアップが求められるだろうと思うのです。

 この検討会に元東京地裁の民事36部の総括判事をされていた難波弁護士をヒアリングにお呼びしたときに、難波先生いわく、労働事件というのは他の民事事件に比べて非常に複雑だというお話をされていました。事件によって、置かれた状況も労使関係の問題も含めて千差万別なわけですから、それをきちっと適正に処理していくためには、法的な知識だけでなくて経験だとかノウハウがそこになければ適切な助言・指導というものはできないだろうと私は思うのです。

 その点から申し上げますと、職員の皆さんも、何年かごとに交代していくというお話もあるように聞いているのですが、労働紛争にかかわる職員の皆さんというのは長期的な視野に立って、そこでスキルを磨き、またノウハウを蓄積し、それが次にきちっと伝承されていくような仕組みも検討する必要があるのではないかと思います。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 今、3人の方からお話をいただきましたけれども、まず、このあっせんの参加率をどう上げていくかという御提示がありました。鶴委員からは、それをどうやって上げるのかと。特に利用するほうと利用されるといいますか、被申立人、被申請人の側からの話も聞きたいということがありました。もう一つは、情報提供の話について担当者の話もありました。

 まず、あっせん率、参加率を上げていくということについてもう少し突っ込んで検討していただければと思いますけれども、この点に関連していかがでしょうか。

 小林委員、どうぞ。

○小林(信)委員 全国中央会の小林でございます。

 今、鶴委員から使用者側の意見ということなので発言します。ここのところ、秋口、いろいろな経営者の方からお話を聞きまして、行政による個別労働関係紛争の解決手段として、労働局のあっせんや助言・指導についての認知を聞いてきたのです。そうしたら、余りにも知らない方々が多いという現状であるというのが大きな問題かなと認識しております。

 特に労働紛争の場合、解雇とかいろいろな事案があった場合、すぐ裁判を思い浮かべてしまう経営者の方々が多いようです。これは、弁護士の方々と相談しながらそういう話になってしまうのか、ちょっとわからないところですけれども、大変時間がかかる、費用面で負担もかかるという認識を持っていて、労働紛争については躊躇する部分が多いという方が多いようです。

 いろいろ話をする中で、労働局のあっせんとか助言・指導があるのだ、こういうところに相談窓口があるのだということをお話しすると、えっ、そんなのがあるのかと、初めて聞く状況の方が多いようです。簡易な方法である、相談についても無料で相談に応じてくれる、時間的にも比較的短期に解決するということであれば、何だ、知っていればということで、後から知るような状況であると思います。これをどうやって普及していくかというのが大きな問題だというのは、鶴委員と同様に思う次第であります。

 私どももいろいろな形で傘下の使用者、事業者、同業種の組合等を通じてパンフレットとかリーフレットを配って案内はするのですけれども、企業者のところになかなか行かないというのもあるでしょうし、字はなかなか読まないというのも1つあるのでしょう。当事者の方々がそういう労働紛争に巻き込まれたときにどうすればいいのかというのは、まずホームページを見るケースが多いのだと思います。ですから、ホームページで、どういう形でヒットする、わかりやすく説明する仕組みというのが必要であり、先ほど鶴委員がおっしゃっていたように、こういうケースでこんなふうになるのだといういろいろな事案を動画で紹介するというのも1つ手なのかなと思っています。

 もう一つは、何はともあれ、多くの労働紛争の場合は労働者の方が相談に行くケースが多いと思うのですけれども、使用者の方々もどこに相談に行っていいのかなかなかわからないということです。先ほど申したように、弁護士の方に御相談するというケースが多いと思うのです。弁護士の方々も含め、労働局の個別労働関係紛争の解決のためのあっせん、助言・指導というのは有効だと思いますので、そこにまず行って相談窓口で相談するということを1つの足がかりにするというのも重要だと思いますので、その辺の㏚の仕組みを考えなければならない。私ども使用者団体も含め、各団体がより一層のPRをする必要があることを感じたところです。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 輪島委員、どうぞ。

○輪島委員 ありがとうございます。

 まず、事務局に質問です。6ページから始まっている京都労働局のパンフレットですけれども、非常にわかりやすくまとまっていると思います。先ほどの御説明だと、全国の労働局でも既に用意をしているようですが、そのことの確認。それから、今、小林委員がおっしゃったように、パンフレットをつくっているだけなのか。例えば、ホームページでこのリーフレットが見られるのかどうかということ。さらに、小林委員がおっしゃったように、平時のときだけでなく、いざ事が起こったときにどういうふうにアクセスしてどういうものがあるのかということをお聞きしたいと思います。そのときに、資料の14ページにあります大阪の取り組みで、54.257.0に上がってきたことは評価できることだと思います。まず、紛争が実際に起こったときにこういうことでどうですかという丁寧な御説明を企業にしていただいて、それだったら対応しましょうと。そういうことを積み上げていくことが一番大事なのではないかと考えております。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 八代委員。

○八代委員 先ほど相談員のスキル向上が大事だと言われた。それは全くそのとおりだと思いますが、スキルとは何かというと、結局、どれだけたくさんの事例を知っているかということが大事ではないか。そうであれば、きょういただいた資料で、例えば20ページの解雇の関係ですけれども、非常にわかりやすい具体例があるわけです。プライバシーにはもちろん配慮する形でこういうものをホームページにできるだけ載せる。そうすると、相談員の方もこれを適宜チェックできるし、場合によっては訴えた本人も見られるわけで、そういうデータベースを整備するということが一番大事ではないか。既にやっておられるのだったら、それも教えていただきたいと思います。

 例えば、この20ページの例を見ても、事例2というのは、雇用を5カ月間約束していたのに1カ月で打ち切りですから、先ほどおっしゃったように明らかな法令違反なわけで賠償請求ができる。そういう情報提供というのが大事ではないかと思います。

○荒木座長 ありがとうございました。

 土田委員。

○土田委員 今の参加率の件です。

 参加率をどう向上させるかという方法として、参加に強制力を持たせるというのは、先ほど水島委員が言われたようになかなか難しいところがあります。では、どうするかというと、今、使用者側の方々のお話にもありましたリーフレット、ホームページも良いのですが、6ページ以降の京都のところを見て下さい。例えば7ページ、8ページにそれぞれの機関の特徴が書いてあるのですけれども、これをホームページに載せようとリーフレットにしようと、労働者がわかるかといったら、なかなか難しいと思います。そうすると、最初のステップのところで説明してあげる。例えば、労働委員会でしたら、前も言いましたし、きょうもありましたけれども、三者構成でこうやりますよというような特色をきちんと口頭で説明してあげないとなかなかわからない。紙を配ったり、ホームページに載せて、あとは見てねというよりは、職員が初期段階でどう対応するかというのはかなり重要かなと思います。その意味では、各機関間で紛争処理のやり方に関する情報を共有することも重要と思います。

 参加率そのものについては、私も経験があるのですが、先ほど小林委員がおっしゃったように、労働局のあっせんというのは案外知られていないのです。我々はよく知っているものだから、みんな知っているのだろうと思いがちですが、案外、会社は知らないのです。そのときに、例えば、先ほど参加向上率の取り組みで何度か電話をかけるというのがありました。京都の場合は、事案によっては事業所に出かけていって参加勧奨します。そうすると、会社側は社会保険労務士の方を横に呼ぶ。社会保険労務士の方はそれなりにあっせんを知っているものですから、ああ、そうなのかと、話を聞いて応諾してくださるということがある。それは電話だけではなかなか難しいのです。ですから、これもマンパワーによりますけれども、事業所に出かけていって丁寧な勧奨をするということは1つの手なのだろうなと思います。

 参加率向上とは別に、2ページの3です。今の点とも絡みますけれども、労働局のあっせんで、事業主が参加せず、あるいはあっせん不調で泣き寝入りする労働者は無数にいるわけです。無数にいるというときに、次にこういう機関がありますよということを言ってあげないといけないと思います。労働局、労働委員会の両方を経験している身からすると、労働委員会は、きょうもありましたけれども、もう少し時間をかけて丁寧にやるということがあって、労働者側委員が参加しているということもありますから、それも含めてこういうものがありますよということをあっせん不調時ないし事業主不参加のときに言ってあげるのがいいということもあると思います。

 最後に、1ページの一番下の「事実認定を行った上で主体的に解決案を示す」という点。これは別な話ですか。今、とりあえず参加率の話ですか。

○荒木座長 いや、続けてどうぞ。

○土田委員 いいですか。

○荒木座長 はい。

○土田委員 「事実認定を行った上で主体的に解決案を示す」という点ですけれども、先ほど事務局がおっしゃったように、これをあらゆる事案においてやっていると、簡易・迅速・低廉という労働局あっせんの本来の趣旨に整合しないところがあります。これも労働委員会と比較すると、労働委員会はほぼ複数回あっせんを行います。そのときに、もちろん裁判所のような事実認定ではありませんけれども、労働局に比べればやや事実認定に近いようなことはします。労働局でも、ある程度の事実認定と判断はやってもいいとは思いますが、そうなると、取り扱い件数が減少したり、参加率低下の可能性もあると思うのです。つまり、労働局のあっせんをある程度認知した事業主は、あっせんは1回限りだと。1回限りで、この場で2時間、3時間で終わるのだという前提で来る会社が多い。ですから、1回来て、もう一回またあるのというのは、逆に参加率を低める可能性があります。ですから、全ての事案についてこれをやる必要はないし、やるべきでないと思います。

 ただ、こういう事案については考えられるかなというのは、1つは、労働者が、使用者側が提案した金額について受け入れるかどうかすごく迷っているというときに、前もちょっと言いましたけれども、一度持って帰ってもらう。それで、複数回あっせんを行う。そういうことはあってもいいし、京都では事案によってはそれをやっています。

 それから、一定の解決案を示すというのは、これは複雑なケースについてはそういうことをやってもいいかと思います。つまり、簡単に終わるケースではなくて、ある程度、中身をきちんと精査して、その上であっせんする必要があるケースはやはりあるのです。ですから、そういうケースが持ち込まれたときには、少し時間をかけて複数回やって解決案を示すということがあってもいいと思います。ただし、それは全ての事案についてではないということです。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございます。

 石井委員、どうぞ。

○石井委員 石井でございます。使用者側で代理人をしていることが多いということで、使用者側がどうしているかというお話だけしようと思いました。

 参加率向上について、既に出たお話ですけれども、制度が知られていなくて、労基署から呼び出されたというように誤解する向きがあって、何の落ち度もないのに呼び出されて非常に抵抗を感じると。呼び出し状を見てみると、参加しなくてもいいように書いてあるので、だったら参加しない、ということになってしまうというのがございました。まずは、制度自体の説明をすると大分安心されて、参加されても嫌なら帰ってこられます、合意を強制されるわけではありませんというので、安心して参加されることになります。

 それから、使用者から見ての魅力は、早くて、解決金の相場もこのまま労働審判や何やらに行くことを考えると低い。それから、弁護士費用その他のコストの面も考えると、安く解決できる。それが魅力で、それならということで参加するのがやはり決め手かなと思います。したがって、その参加率を向上するためにはやはり説明が必要でして、丁寧な参加勧奨と、原則1回であるということの周知と、解決金相場といいましょうか、大体これぐらいという情報が多く発信されれば、かなり変わってくるのではないか。このまま訴訟に行ったらどうなるか、裁判所に行ったらどうなるかというのと、時間や費用を総合勘案して判断することになりますので、その情報がもっと出されると違ってくるなと思います。

 呼び出し状と一緒に相場の情報提供がいくと、当該事案についての解決の目安になってしまうのもまずいので、ホームページを見ればデータベースがあるというような形がいいではないでしょうか。少なくとも、使用者側だとアクセスは容易にできると思いますので、そういったところが使用者側を説得する材料になると思っております。

 いろいろな御意見はあるとは思いますが、参加を強制するようになると、逆に警戒心だけ出てきて、参加したとしても、腰が引けている状態でいって、成立率にはつながらないのではないかという気がいたします。丁寧な事実認定ということで、回数をふやすのも、先ほどお話が出ましたように、むしろマイナスになる可能性もあると考えております。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 では、水口委員。

○水口委員 水口です。

 今、石井委員がおっしゃったとおりなのです。私は労働者側ですが、使用者側で担当されている先生に聞くと、やはり労働局の呼び出しが来たときに相談を受けるときに、「義務ではないから行かなくてもいい」というふうに指導する人も昔はいたのです。しかし、最近は、「ここで解決しなければ訴訟や労働審判になりますよ、そうなった場合にはもっとコストがかかりますよと」。となれば、せっかくの話し合いの機会だからということで、今、まさに石井先生がおっしゃったように、「合意が強制されるわけではないのだから、まず話し合いの場に行ったほうがいいですよ」というアドバイスをする人がほとんどになってきていると思います。

 確かに法的に強制するということになると弊害も出てくると思いますので、これで参加をしない場合には労働審判や訴訟になってしまうので、ここに参加したほうがメリットがあるという認識が上がれば参加率は向上してくる。その意味では、この紛争調整委員会でのあっせんが不成立になった場合に、次にどうするのかというアドバイスが重要ですね。

 今までお話が出た認知率を上げるとか説明するというのはそのとおりで、それはいいのですが、焦点としては、あっせんの半分以上が成立しないのであれば、その場合にどういうアドバイスをするのか。具体的に何種類かの制度説明をされても実際わからないわけですから、紛争調整委員会で双方の意見を聞いて成立しないのであれば、これは訴訟か労働審判しかないということでその後の手続きを絞る。その場合の説明というのは一般的な説明とはまた違うはずですので、その工夫が必要なのかなと。ここで解決しなければ裁判、審判になるということであれば、参加しようとなると思いますので、やはり制度の相互関係、連携も重要となります。これは後の議論になるのでしょうけれども、成立しなかった場合に、どういう説明をして、労働者のほうが主ですが、労働審判や訴訟を選択しやすいようなサポートをどうするのかということとセットになるのかなと思います。

 以上です。

○荒木座長 山川委員。

○山川委員 もうおっしゃられたことにつけ加える程度のことです。

 参加率との関係では、例えば、先ほど石井先生からもお話がありましたが、資料の13ページの「あっせん開始通知書」の下から2行目に「参加が強制されるものではなく」とか書いてある。これは制度が導入されるときにかなり抵抗感が強かった、いろいろな意見があったために任意性を強調したということかと思いますが、この「参加が強制されるものではなく」という表現がいいのかどうかということも検討する必要があるのではないか。参加強制よりもむしろ重要なのは、先ほど小林委員もおっしゃられたかと思いますが、合意を強制されないというほうが重要かなという感じがします。

 あとメリットの点です。あっせんのメリットはいろいろあるわけですけれども、やはり迅速性・簡易性ということ。1回で終わるのが原則であるということはあっせんの説明のときにより強調してもよいと思います。あと、現実にあっせんの経験をしておりますと、割と重視されているのが非公開性で、合意が成立した場合には非口外条項といいますか、あっせんでこういう合意ができたということは労働者側も使用者側も口外しないこととしています。今はSNSとかいろいろなところで拡散する問題がありますので、そういったメリットもありますので、そのあたりを強調してはいかがかなと思います。

 あと、助言・指導のことについてもちょっとよろしいでしょうか。

○荒木座長 どうぞ。

○山川委員 ほとんどが口頭ということですが、やはり口頭と文章では違いがかなり大きいのかなと思います。ただ、認定をするのが助言・指導でも難しいということがありますので、認定をした上で文章にするというのは相当抵抗があるかと思います。ただ、実例を見ていますと、必ずしも認定はしないで、こういうルールがあります、ルールに従って再検討ないし話し合いをしてくださいということなので、条文とか判例とかを示した上でのこうした助言・指導でも効果はあるのではないかと思います。

 あと、土田先生からもお話がありましたが、出かけていくとか、呼び出すとか、助言・指導に当たってのより細やかな取り組みも出てくるかと思います。これは労働局によってやり方が違うこともあろうかと思いますが、実際に統計上は、現在、助言・指導のほうがあっせんに比べてかなり多くなっていますので、こちらも改善を検討する必要があると思います。

 ちょっと長くなりますけれども、ごめんなさい。

 事実認定を行って強制力を加えることに若干慎重な御意見がありましたが、私も一般的にそうすることは、例えば紛争の性格といいますか、均等法とかパート労働法とかでの紛争は公法的といいますか、公序紛争的な色彩があるのに対して、こちらのあっせんで取り扱うものは純粋民事的な紛争と捉えられていますので、そのあたりをどう考えるかが問題になります。

 あとは、逆に労働審判との差異がなくなってしまいますと、独自のメリットといいますか、労働審判に近づけるような方向でいくのはかえって独自性を薄める可能性もあるという感じもします。ただ、事案によって異なる取り扱いはあり得るかと思います。

 やり方、スキルの点については、事実認定をするのはなかなか難しい場合もありますが、書面上わかるようなこともありますので、例えば就業規則とか解雇通知書とか、典型的な書類があればそれを出すようにマニュアルなどをつくるということもあろうかと思います。そのあたりの工夫はいろいろありそうですし、また、これはやや難しいところもありますけれども、問題が起きたときに参考になりそうな判例を示すだけでも違うかと思いますので、そういうことをしてはどうか。あと、主張自体がおかしいという場合が双方にありますので、主張自体の弱点を指摘して合意を促進するということと、あとは、認定はできないまでも、この点は証拠がない場合には裁判所で負けますよと労使双方に言うということをやっていますので、ケースによって違いますけれども、そのあたりのスキルを平準化ないし共有化していくこともあり得るかと思います。

 済みません。ちょっと長くなりましたが、以上です。

○荒木座長 土田委員、どうぞ。

○土田委員 今、何人かの方が言われたことに対してちょっと違和感があるのです。確かに、労働局あっせんは簡易・迅速が原則ということは結構なのです。ですから、原則1回で1日で終わらす、そこのメリットを強調する、原則はそれでいいのですけれども、前回も言ったとおり、その結果、がかえって労働者の納得を全く得られないまま解決に至っているケースも実際にはあるのです。ですから、原則1回で終了ということを意識して㏚するのは結構だけれども、事案によってはそうではない取り扱いもあり得るのだということは考えたほうがいい。あっせんは1回こっきりですよということを余り強く言い過ぎると、今のようなケースが出てきますので、原則として認識したほうがいいですが、余りそればかり考えないほうがいいと思います。

 もう一点は、先ほどの水口委員の発言などを聞いていると、労働局のあっせんがだめだったら労働審判か裁判ですよといわれましたが、それもおかしい。何か知らないけれども、労働委員会というものの認知度がこの検討会の中でも低いですよね。労働局が終わったら、後は裁判所しかないのですよという認識そのものがおかしいと思います。

○荒木座長 水口委員。

○水口委員 済みません。労働委員会を外したのは、あえてではなくて、東京都には労働委員会での個別労働紛争解決を行っていないためです。ただ、労働局であっせんができなかった場合に労働委員会に行くというのは弁護士的にはまずないかなと。労働局あっせんで合意できなかったら労働委員会でも難しいかなというのは、実務家としてはそう判断せざるを得ないのですね。

 ただし、土田委員のおっしゃった原則1回の件ですが、私、本日検討会に参加するに当たって、私の事務所でもこの労働局のあっせん委員をやった弁護士もいますので、何人かの弁護士に聞いてきました。改善策としてどういうことがあるかと聞いたら、今、土田委員がおっしゃったことに触れていました。確かに原則1回というのはいい、ただ、事案によっては2回やる。また、特にあっせん案ではないのですけれども、いわば事実上のあっせん委員の案を書面化して渡す。1回だったら、即座に条件反射的にノーになってしまう。しかし、文書で渡して、例えば2~3週間ぐらいの熟慮期間を設けて、それについて受諾するか返事だけくれというのを行えばオーケーになるケースは結構あるのではなかろうかという意見でした。私も、それはそうなのだろうなと思うのです。

 ただ、あっせん案として出すのは、3人のあっせん委員の委員会でしか出せないという法律的な縛りがかかっているようですけれども、いわば個人のあっせん委員としても、そういう形で書面で解決案を出す。その際、事実認定の理由をどこまで書くかというのは、事案ごとの判断あるいは書かなくてもいいだろうと思いますけれども、解決の見通しがある事案によってはペーパーを出して、2~3週間後にそれについて受諾するかどうかをもう一回考えるという柔軟な対応があってもいいのではないかと言っていました。私もそうかなと思いますので、御紹介をしたいと思います。

○土田委員 一言だけ済みません。

○荒木座長 土田委員。

○土田委員 今の後半の御意見には賛成で、あっせん案は出さなくても、個人のあっせん委員が一定の意見を伝えて、それで持ち帰ってもらう、そういう柔軟な対応があってもいいと思います。

 前半でおっしゃったことは全く反対です。実務家的に、労働局でだめだったら労働委員会でもだめでしょうということはあり得ない。前も言ったように、労働委員会は、そもそも三者構成で、考慮期間を与えて複数回行うという形で、労働局とはやり方が違うのです。ですから、労働局のあっせんがうまくいかなかったから労働委員会のあっせんもだめでしょうということにはならないと思います。

○水口委員 済みません、東京にはございませんので。

○荒木座長 長谷川委員。

○長谷川委員 土田先生、労働委員会の個別紛争は、京都は一生懸命取り組んでいるから先生がおっしゃことはそうだなと私はわかるのですけれども、東京では労働委員会での個別労働紛争解決は行っていないので、東京の弁護士はそのように言うと思うのです。

 後で議論にも関係しますが、本日の資料にもあるように、労働委員会の中でもすごく一生懸命取り組んでいるところと、なかなかそうでないところがあって、この点は検討会でも課題だと思います。マンパワーがある労働委員会を個別労働紛争解決でどう活用していくかというのは、私はこの後の労働委員会の論点で議論していただければいいかなと思っています。

 使用者にあっせんに参加してもらう方法は、調停制度にすれば参加してもらえるのだと思うのですけれども、調停制度とできるかどうかというのは、皆さんの意見でいうと、やはりなかなか難しいなと思います。調停制度にすれば参加はするようになる。そのようにできるかどうか。

 それと、私は労働委員会の委員をやっているから思うのですけれども、都道府県の労働局のあっせんで、1回ではなくてもう1回期日を開催すればうまくいくのになとか、使用者を説得したらうまくいくのだなとか、労働委員会の場合は労使委員がいるので、労使委員がそれぞれの当事者を説得するので、複雑な事案などはむしろ労働委員会に向いているのかなと思うことがあります。これらの点もこの後の事件の割り振りの論点で検討して、労働委員会の活用を考えたほうがいいかなと思いました。

 もう一点は、労働者は労働相談をしてみて、そのアドバイスなどに従ってあっせんを申請するわけですけれども、使用者のほうはあっせんの開始通知書が届いて初めて気づく、えーっとなるわけです。恐らく、大企業や、顧問弁護士のいるところは顧問弁護士に相談することになるので、石井先生のような顧問弁護士の方がいるところであればその後の対応をきっちりと説明してもらえると思うのですね。問題は、中小零細企業の場合で、相談先が社労士なのです。相談された社労士が正しくちゃんと教えてあげればうまくいく。社労士の中ですごく立派な人がいまして、社労士がこのあっせん制度を使ってあっせんに行ったほうがいいよとちゃんと教えてくれる人もいる。使用者としては、「先生、こういうのが来たのだけれどもどうすればいいのだろう」と絶対慌てますから、それに対して社労士が、「いや、これは行ったほうが早く解決するよ」と適切にアドバイスする、その道をどうつくるかだと思うのです。社労士に義務づけることはできませんけれども、社労士の皆さんにもっとそういう協力をしてもらうことが必要なのではないか。

 最後に、このあっせん制度が出来た当初に、弁護士も企業に対して、「行かなくてもいいのだよ」ということを言ったというのを私も聞いているのです。先ほど水口さんがおっしゃったように、最近、企業の使用者側弁護士も「行ったほうがいいよ、むしろ参加したほうが早く解決するから」と言っているというのも聞くので、やはり相談や事件に向き合う弁護士や社労士の姿勢がとても重要なのではないかなと私は思いました。

○荒木座長 ありがとうございます。

 村上委員、どうぞ。

○村上委員 ありがとうございます。

 参加率の向上については、今、長谷川委員がおっしゃったことと同意見なので割愛しますけれども、先ほど八代委員から、スキルアップの件でデータベースであるとか情報提供が大事だというお話がありました。それはそれでやることも大事だと思うのですけれども、スキルアップとして重要なのは、労働者からの相談は、こんなことがあったのだという漠然とした話から始まるので、それをどう聞き取って、法的な争点はどこにあるのかということも整理できるようなスキルが必要だと思います。それは、書かれたものを読んだだけでは多分わからなくて、ある程度経験を積み重ね、いろいろな人の話を聞きながらできていくスキルだと思いますので、その点もぜひ研修の中では充実させていただきたい点です。

 以上です。

○荒木座長 長谷川委員。

○長谷川委員 村上さんが発言しました相談員とあっせん委員のスキルアップというのは非常に重要です。あっせんで争点整理と事実認定を行うことは、制度上なかなか無理があってできないと思いますが、相談員とかあっせん委員は、いろいろな労働者から話を聞くことになります。その際労働者はいっぱいぐちゃぐちゃ話を言うので、それを聞いて争点整理を自分でやって、事実をしっかり捉えるということは必要だと思うのです。争点整理や事実認定まで文書にするというと問題でしょうけれども、そのような対応ができるようにするための相談員とあっせん委員の訓練は必要なのです。

 なぜそう思ったかというと、実は先週、木・金・土と個別労働紛争解決研修を3日間受けてきまして、争点整理と事実認定の方法は何とかやらなければ、身につけなければだめだなと思いました。特に研修が重要で、研修を何回か受講し勉強しないと力がつかないので、この点は重要なのではないかなと思いました。

○荒木座長 徳住委員。

○徳住委員 参加率の関係は、実務家の観点でいうと、石井先生と水口先生のおっしゃったとおりで、弁護士及び社会保険労務士のやり方、やりようによって、参加率は結構向上する可能性があると私は思っています。

 問題は事実認定をするかどうか。これは民事紛争解決システム全体の連携の問題にもかかわりますし、あっせんの解決率をどう高めるかということにも関連してくると思うのですけれども、あっせん申請書も問題だと私は思っているのです。

 あっせん申請書が現在のぺら1枚という点は、私は賛成なのです。先ほど村上さんもおっしゃいましたけれども、争点整理をどうするかという問題があって、裁判所にも個人申し立ての労働審判事件というのは結構あるのです。裁判所は窓口で書き方を全部指導して、例えば東京地裁だと3人の担当者が窓口にいて、申立人に「こう書け、ああ書け」と訂正させているのです。東京都でも、あっせんの申し立てがあると、担当委員が労使双方の当事者から聞いて、そして会社にも行って、それで争点整理するのです。マンパワーの問題はあると思うのですけれども、紛争解決委員会のあっせん委員があっせんを行う前に事務局レベルで争点整理だけは簡単なものができるかできないか、現実にやっているところもあると聞いています。

 例えば解雇事件の場合、解雇理由は何で、労働者が自分はそれに対してどう思うかということが書いてあるだけでも、第1回期日の事実認定や心証は随分違いますし、解雇理由に関して言えば、解雇理由証明書を出すということにするだけでも争点が明確になる。このあっせん申請書には、解雇についてあなたはどう思うのかということは書けないかもしれないのですけれども、その点を第1回期日に明確にすることは極めて重要だと思うのです。私は、申立率を高める意味ではあっせん申請書は1枚でもいいけれども、その書き方と争点について事務局のサポートなどをどうするかということを真剣に考えたほうがいいのではないかと思っています。

○田村室長 先ほど輪島委員から御質問のあった件について御説明します。

 京都の例でつけましたリーフレットなのですけれども、一応全国でも同様のものをつくっています。いろいろな機関がはいっていますけれども、特に連絡協議会でさまざまなADR機関にも御参加いただいていますので、そういった機関の制度全部を一覧性を持って見せるということでつくっております。ただ、実際に運用する際に各労働局でより簡易なバージョンをつくって活用している場合もよくあります。特にあっせんを打ち切る際に打ち切り通知に同封したり、その場で説明する際には、裁判手続と、また無料で引き続きやりたいという方に対して労働委員会などを特化した形でわかりやすくしたものを用いている場合もあります。

 一応、補足でございます。

○荒木座長 ありがとうございました。

 労働局の個別紛争処理についていろいろ御意見をいただきましたが、ほかに労働局について何か御指摘ございましょうか。

 徳住委員。

○徳住委員 「2 予見可能性を高めるための方策」の論点で、2カ月以内でほとんどの事案が処理されているとの記載があります。問題は、現在のところ、これは原則1回期日で終わるからでもあるのですが、あっせんの第1回期日の限度が定められていないわけですね。民事訴訟・裁判は、規則で第1回期日が30日になっていて、労働審判でも規則で40日としたのです。我々は、最初、労働審判は普通の裁判より簡易・迅速であるはずなのになぜ期日の指定の日数を長くしたのかについて議論したのですけれども、最高裁の回答は、日数を長くすることによって設定した第1回期日は絶対譲らないのだと。普通の民事裁判の第1回期日は大体何割かの割合で弁護士は出てこなくて、結果的に第1回期日は2カ月後、3カ月後になってしまうのです。それが実態なのです。これに対して、労働審判については、裁判所は40日と決めて、この期日を原則動かさない、動かす場合は極めて例外的な場合なのだというふうにしたのです。では、労働審判の期日に出てこない場合はどうするのだといったら、出てこなかったら不利に扱う。労働審判はそういう扱いができますから。労働局あっせんについては、2カ月以内に第1回期日が大体入っているということで、聞きますと、その間にあっせんを準備するために双方の参加を促すとか、準備するということはあるかと思いますが、私は第1回期日のタイムターゲットを設けるべく、法的に条文上入れたほうがいいのではないかと。その上で、第1回期日までの日数を40日にするのか、50日にするのか、2カ月にするのかはありますけれども、それを法的に入れて簡易迅速性を高める。仮に2カ月と決めれば、その間に行政のほうも準備するでしょうし、労使もそれぞれそれに向けて準備するという心構えができると思いますので、私は第1回期日のタイムターゲットは入れたほうがいいのではないかなという意見であります。

○村上委員 先ほど徳住委員から、あっせん申請書について少し改善ができないかというお話があったかと思うのですけれども、それに加えて、一回的解決の実効性を高めていくためには、本人の同意を要件としたうえで、申請者の方が同意すれば、申請書を相手方に送付するということも検討すべきではないかと思っておりますので、申し上げておきます。

○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。

 労働局について大変有益な御意見をいろいろいただきました。任意性の問題、それから参加の問題もありますし、解決率の向上の問題もありまして、相互に関係しているということであったかと思います。

 労働局と都道府県労働委員会の関係の話もございましたので、次に、3ページ以下の都道府県労働委員会、地方自治体の紛争解決制度について御議論いただき、さらに全体を考えたいと思います。3ページ以下について御意見をよろしくお願いいたします。

 鶴委員。

○鶴委員 ありがとうございます。

 この労働委員会の役割については、多分、これまでもかなり議論を進めてきて、もう少し活用できるのではないか。実際に都道府県の中でもその活用をされているところがあると。我々もその事例をお伺いしながらきているかと思います。

 それで、この「考えられる検討事項」の中は、この活用をやるという観点の中でいろいろお書きになられていることについては、具体的なアイデアも含めてぜひ検討すべきだし、どんどんやっていくべきだと思っているのです。

 済みません。これもやや辛口のコメントになって申しわけないのですけれども、3ページの半ばに「自治事務」「地方分権」という言葉があるのですが、こういう話になると、中央から大がかりにああせい、こうせいということを言うのはなかなか難しいよねといって、どうしても議論がそこでストップしてしまう。この労働分野以外でもいろいろなところでこういう話があります。ただ、そうは言いながらも、それなりの仕組みをこの検討会でちゃんと提案するべきではないのかなという感じがしています。

 もちろん、具体的に何をやるのかというのも非常に大事なのですが、4ページの最後に、この前、山川委員からも御説明があったと思うのですけれども、これは中労委のところだと思うのですが、「労働委員会活性化のための検討委員会」というのをおつくりになっていろいろ検討されたということです。やはり中労委の中に常任の組織というか、委員会になるのか何なのかわからないのですけれども、そういうものをしっかりつくっていただいて、例えば労働委員会のあっせんというのはどういうふうにやるのか。都道府県によってはこれまで非常に蓄積のあるところがあるわけですね。そういうところの経験というのを蓄積のないところがいろいろ学んだり、お互いに情報交換したり、どういう制度設計にしていったらよりよくなるか。都道府県だけで数はこなしていない状況の中で、ああだこうだと個々の都道府県が考えても、労働委員会が考えても、私は前に進まないと思うのです。そういう中で何らかのネットワークをきちっとつくって、常時、その前にこういう問題を議論したり進めたり、そのような組織をぜひつくることを御検討というか、この場においても御議論いただけないかなということです。

 済みません。しょっぱなに申しわけないですけれども、そういう問題意識をお話しさせていただきました。

○荒木座長 ありがとうございます。

 徳住委員。

○徳住委員 私は、都道府県労働委員会のあっせんを特徴づけるために、個別紛争の中でも集団的要素のあるものに限って、それを労働委員会で専門にやりますよというアピールを打ち出す手はあるのではないかと。韓国の場合、古くから労働委員会が解雇だけ担当するということで、その後、広げていますけれども、日本においても、例えば解雇であれば、整理解雇の事案については労働委員会でやりますよと。パワハラ、セクハラ、マタハラは職場全体にかかわる問題で、これはあっせんだけではできないし、労働審判でも大変難しい事案なのですね。また、就業規則の不利益変更とか差別問題もあります。差別問題は労働審判になじまないと裁判所が言っている事案なのですね。個別事件であるけれども集団的要素が含まれている事件は労働委員会で積極的にやりますよとすれば、労働委員会の特徴を活かした紛争のあっせんができるのではないか。韓国はそれで成功しているわけで、韓国を参考に、特徴ある労働委員会制度のあっせんをすることが必要ではないか。そうすると、労働委員会へ、個別紛争だけれども集団的要素のあるものを持っていくという流れができるのではないかと私は思うのです。そこをお考えいただきたいと思います。

○荒木座長 ありがとうございます。

 長谷川委員。

○長谷川委員 労働委員会が個別労働関係紛争の解決もやり始めたときに、それぞれの都道府県の自治事務だということで地方の判断に任せられており、根拠規定もそれぞれ違うわけですね。条例や要綱といろいろだったわけです。やはり労働委員会は集団も個別も実施するのだというスタンスをきっちり持ちながら、地方ごとに、条例に基づき実施するところ、要綱に基づき実施するところ、いろいろあるのですけれども、そういう違いなども踏まえながら、先ほど徳住先生がおっしゃったように、複雑な事案については相談の段階から労働委員会のところに持っていくような手続きの流れも必要なのではないかと思っています。

 それと、時効の中断効は、私も労働委員会活性化のための検討委員会の委員だったのですが、時効の中断効が必要だという意見がほとんどなく、結局、時効の中断効を入れることを見送ったわけです。ほかの紛争解決システムには全部時効の中断効があって、行政の紛争解決の機関である労働委員会は時効の中断効がないというのは、利用者から見たらちょっと変です。そういう意味では、労働委員会にも時効の中断効を入れるような枠組みは必要なのではないかと思っています。規定を設ける場合には、ADR法なども検討したらどうかなとは思います。

 先ほど言い忘れたのですけれども、迅速化の論点で、徳住先生が第1回目までの期日をどうするかということをおっしゃったのです。例えば労働委員会も事件の処理期間が長いと御指摘を受けた後、審査の計画表をつくるなど検討を行いました。現在は、審査計画で、1年3カ月以内のできるだけ短い期間で終わらせるという目標を立てているのですけれども、労働局あっせんについても、労働局が目標を持って計画表をつくるとか、そういうことをやらないと、やはり迅速化にはつながらないのではないかなと思います。話が労働局に戻りましたけれども、計画書をつくるとか、もしくは申立てから何日以内に第1回期日を開催するとか、何らかの目標をつくらないと、やはりみんな頑張らないのではないかなと。人間というのはそういうのがないとだらだらだらっとしてしまう。そういうものをきちっとつくるというのは必要なのではないかと思います。

○荒木座長 ありがとうございました。

 土田委員、どうぞ。

○土田委員 3ページの「考えられる検討事項」の1の中の「認知度の向上」ですけれども、先ほど徳住委員が言われたことは重要で、労働委員会が扱うあっせん紛争処理について特色を出していくということはすごく重要だと思います。一方で、先ほど事務局から御説明のあった資料No.1のところで、認知度を向上させるための主な取り組みというのが27ページにありますけれども、これは余り効果がないのではないかと思います。むしろ、先ほど徳住委員が言われたような労働委員会のあっせんはこういう特色があるのですよということを積極的に打ち出すことのほうが長期的に見て必要かなと思います。

 私は、労働委員会の構成とかあっせんの方法、仕方に即した事案としては4つほどあると思います。

 1つ目が、先ほど徳住先生が言われた集団的要素を含んだ紛争です。というのは、労働委員会は何といっても公労使三者構成なので。公労使だということは、労使の委員が入って、それぞれ集団的労使関係の現場を知った上であっせんに臨むわけですから、先ほど言われたハラスメントとか労働条件、就業規則の不利益変更であるとか、そういった集団的要素がある紛争は労働委員会に適合しているようにと思います。

 2つ目は、今の点と関係しますが、利益紛争的な紛争です。今の労働条件の変更もそうですし、よく出てくるのは、賞与査定とか人事考課をめぐる紛争というのは、実は労働委員会に一番適しているのではないかと思います。裁判所あるいは労働局よりも、むしろ現場を知っている労使の委員が参加して解決する方法に適合しているかなと思います。

 3つ目に、今の点とも重複しますけれども、ある程度複雑な事案です。先ほど来出ていますけれども、そういったものは労働委員会に適していると思います。

 4点目は、先ほども少し言いましたが、労働局のあっせんで事業主が不参加になった、あるいはあっせんが不調になったときに、労働者側に推奨するというケースです。つまり、労働局と比較した場合に、同じあっせんでも、公労使の三者構成で複数回やっていますという特色がありますから、とりわけ労働者側に推奨できるケースがあると思います。そういったことで特色を出していくということは重要なのですが、繰り返しですけれども、一定の総合労働相談でも、あるいは労働局のところでもいいのですが、こういう機関があるのですよということを説明していただくことが重要です。リーフレットや何やらを見せて、それでおしまいではなくて、そういうワンストップ的なサービスを労働局中心にやっていただく必要があるかなと思います。

 もう一点。4ページの一番上のウのところに「労働委員会のあっせんによる解決率は減少傾向にある」と。これは、私はいま一つぴんとこないのですが、1つ考えられるのは、先ほど来言っています公労使で構成して複数回やるというのが逆効果になっているケースがあるのかもしれません。つまり、労働委員会の場合、当事者に考慮期間を提供して持ち帰るわけですが、そうすると、労使が1回目でこのあたりで納得して合意しようかというところを、持ち帰っている間に考えて翻意してしまうことがあります。私の経験では、それで解決に至らなかったということはありませんが、危うく解決に至らないというところまでいったケースはあります。労働局でしたら、この案でどうですかとその場で決断してもらうわけですけれども、労働委員会は、そこを丁寧にやるというメリットがかえってデメリットになって解決率が減少している可能性がないことはないかなと思います。

 それと、これは労働局もそうなのでしょうけれども、どの程度、当事者、特に使用者側に受諾を強く求めるかというところなのかなと思います。先ほどもありましたが、例えば訴訟になったらこうですよという心証を、私などはある程度言います。そうなってコストが掛かるよりはここで合意してはいかがですかというようなことをどの程度出していくのか。そうなってくると、先ほどの事実認定等々の難しい話になりますけれども、そのあたりは、仮に解決率が減少傾向にあるとすれば、委員及び職員のスキルにも左右されるところがあるのかなという気がします。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 中村委員。

○中村委員 ありがとうございます。初めての発言です。

 全然違う話になると思うのですけれども、認知度の向上とか周知徹底というのは一体誰を対象にしているのかなというのがわからなくなった。地労委とか労働審判とか裁判所に行くのは、普通は労働者個人で行くのでしょうか。個人で決めて、個人的に私は行くというふうに決めてそこに行くのか、誰かに相談して相談者とともに行くのか、全然知らないので。前者を想定していると、国民一般に周知徹底というふうになるわけですね。だけれども、実際に誰かに伴って行くとしたら、伴って行く人にちゃんと周知徹底すればいい話。そうすると、例えば労働局とかにかなり親身になって相談に乗ってあげる人がいないとなかなか行かないかなと。そこら辺が私はわからないので、個人で行けば個人で頑張ってねでいいのでしょうけれども、それを教えていただければと思います。

○荒木座長 実情についてのお尋ねですが、どなたかいかがでしょうか。

 では、事務局から。

○大塚調査官 労働局のほうに来られる方は、お1人で来られる方がかなり多いのですけれども、時には親御さんですとか、そういった近しい方がかわりに相談されに来られるということもあり得るかと思います。

 それと、労働者個人の方以外にも、後ろでそれを応援されておられる団体の方がつく場合もあります。

 いずれにしましても、相談に来られるケースはいろいろございますので、その周知につきましてはいろいろな方法を模索すべきかなと考えております。

○荒木座長 斗内委員。

○斗内委員 ありがとうございます。全般的なことなので、どこで発言をさせていただこうかと思っていました。

 先ほどの労働局のあっせんの関係、労働委員会の関係もそうなのですが、今も御議論ありますように、認知度の向上等々の課題があります。例えば、資料No.2の4ページ2の最後のところの「情報の集積を図り、集計・公表していくことが考えられるか」ということです。この後の議論にもつながっていくと思いますが、それぞれの制度の連携性を高めていくという意味でも、さまざまな情報を蓄積し、広く周知していくことが必要なのではないかと思っております。

 その上で、先ほど来御議論がありますように、単にホームページで公開しましたとか、パンフレットをつくりましたとかというよりも、積極的に周知を広めていく仕掛けが要るのではないかなと思っておるところでございます。

 そういう意味で、御案内のとおり、労働組合が組織されている中小企業というのはほとんどなくて、組織されているのは推定1桁台ではなかろうかと思っております。前半の御議論でもありましたように、実際に紛争が起こりますと、使用者側の弁護士、または労働者側の弁護士等々が代理人として参加するのですが、実際、ふだん経営に携わっているところの隣にいるのは、多くの場合は社労士の先生方だと思います。総合労働相談コーナーの総合労働相談員のメンバーにも社労士の方々が非常に多いということが出ておりますが、社労士法の第1条で、社労士の責務として公正な立場ということがうたわれているということも踏まえまして、そういった方々にどのように積極的にそういったものの認知をしていただくか、データをうまく活用していただくことができるかという仕組みづくりが必要です。

 並びに、先ほど来出ていますように、いろいろなところで相談を受けたときに、相談員の方が各制度の内容を知った上で、この制度にはこういった特色があるのだということで、その事案の争点を踏まえた上でいかに振り分けしていくことができるか。単に情報を公開したからということではなくて、積極的に発信していくためにどう力をつけていくかということが求められているのではなかろうかと思っております。

 そういう意味では、企業内の苦情処理も、労働組合のないところでは実際にはなかなか機能していないというところがありますので、経営の立場の横に座っている方々に対してもぜひ積極的に学んでいただくことが必要ではなかろうかと思っております。

○荒木座長 ありがとうございました。

 山川委員、どうぞ。

○山川委員 これもつけ加えになりますけれども、1つは、PRの点は労働委員会の紛争処理の特色とともに充実すべき点はあるかと思います。各地方自治体でいろいろ行っておりますけれども、1つ考えられるのは、シナジー効果といいますか、住民が身近に行くところで労働委員会による個別紛争処理の情報が得られると有効ではないか。労働局の知名度も先ほど御指摘がありましたけれども、例えば労働基準監督署というのは知名度が非常に高いので、そういうところに行けばあっせんという制度もあるということで、日常的によく行くところでPRをするということが考えられる。県庁あるいは市役所、区役所とかそういうところです。

 もう一つは、これまでも御指摘がありましたけれども、経営者団体、労働団体のほうでPRをしていただくということももちろんあろうかと思います。ホームページにつきましては、つい最近、中労委のホームページに労働委員会の個別紛争のあっせんも含めて、漫画のパンフレットをアップロードしましたので、ごらんいただければと思います。

 あとは、鶴先生からお話のありました中労委の組織の関係です。ここに書かれている活性化検討委員会のほかに個別紛争処理制度委員会というのをこの間2回開催しております。その結果、データベースの導入、それからアンケート調査ということで現在進行中であります。常任の機関としては、全国労働委員会運営連絡協議会というのがあって、そこでもこのテーマがしばしば取り上げられておりまして、情報の集積の中で改めてこれを取り上げていくことが考えられるかと思います。あと、スキルアップについては、三者構成という特色をどう生かすか。やはり使用者側委員、労働者側委員が説得してくれると効果が非常に高いと思いますので、その点が独自性でもありますし、スキルとして有用ではないかと考えております。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございます。

 村上委員。

○村上委員 2点申し上げたいのですが、1点は、先ほど長谷川委員もおっしゃっていた時効の中断効の話です。資料No.2の4ページの下のほうに、時効の中断効がないことで問題となった事案は約9割で「ない」といった回答があるということですけれども、恐らくこれは、時効の中断効がないことを前提に運用しているので問題がないということなのではないかと思います。ただ、労働者にとっては、例えば不当解雇されたと思った労働者が残業代の請求もしたいといったときには、残業代のほうは監督署に行ってくれと言われて、解雇のほうは労働委員会で扱うということよりも、一回的に解決できる方が望ましいのではないかと思いますので、時効の中断効ということも検討していくべきだと思います。労働委員会については、自治事務ということではあるのですが、積極的に位置づけていくということであれば、法的に位置づけていき、手続上もある程度の標準化ということも検討していくべきではないかと思います。

 また2点目は、周知の問題で、誰に周知するのかということです。「労働相談」で検索すると、現在は労働局の総合労働相談コーナーが一番初めにヒットするようになっています。恐らく、労働者は検索してみて総合労働相談コーナーがあるなということはわかっている方がふえているのだと思うのですけれども、問題は使用者の側にあって、各手続がどうなっているのかがわからないということであれば、国民に広くということよりも、むしろ関係性が出てきた方に対してどのように周知していくのかということをより重視すべきではないかと思います。

 また、これはいいアイデアがあるわけではないのですけれども、「総合労働相談コーナー」というのは、個紛法ができた当時の名前なのですけれども、もう少しやわらかい名前を考えていくのもよいのではないか。例えばハローワークが「公共職業安定所」と言われたときにはぱっとイメージができなかったのを、公募してニックネームをつけたように、総合労働相談コーナーとか個別労働紛争の解決というのもわかりやすい、親しみやすい名前を考えることも1つの方策ではないかと思います。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 ほかにはいかがでしょうか。

 山川委員。

○山川委員 時効の点は検討すべき点かと思いますけれども、やはり自治事務との関係で難しい点があります。というのは、ある都道府県では条例で実施している、ある都道府県では要綱で実施しているというふうにさまざまな法形式でさまざまな内容がありますので、それに共通するようなルールをつくるには、先ほど村上委員もおっしゃられましたけれども、例えば国として標準的な制度的な枠組みをつくるかというかなり大がかりな法改正が必要になるという感じもしますので、そのあたりをどう考えるかが課題になるかと思います。

 もう一つは、4のその他でもよろしいですか。

○荒木座長 はい、どうぞ。

○山川委員 先ほど斗内委員からもお話のあったところですけれども、個紛法の2条で自主的解決の努力義務が存在します。努力義務については、その実現のための支援のようなことは他領域ではよくやられていることで、自主的な解決を法的に強制するというのも変な話かと思いますが、支援レベルではやることがいろいろあるのではないかと思います。

 例えば、企業によっては非常にさまざまな社内相談室みたいなものをつくり、人事院では国家公務員については苦情の相談室みたいなものを設けていますけれども、そういった好事例等の情報提供を行うとか、紛争解決スキル、自主的な紛争解決、あるいは予防のスキルの形成を支援するとか、情報提供を行うとかです。あとは、予防のためには法令の周知というのも重要で、人事部の方とか法務部の方はよく知っているけれども、現場で法律を知らないということが結構あるかと思いますので、職場での周知も紛争解決・予防機能には役立つと思います。

 特に、先ほど申しましたトレーニング的なことでは、上司の紛争解決・予防機能といいますか、相談に行くのが上司であるとすると、上司がどうやってその紛争の解決・予防を図るのかという点につき、これも強制の問題ではないのかもしれませんけれども、支援が考えられるかと思います。パワハラ問題の解決にも現場レベルで対応することが重要かと思いますし、そもそもマネジメントといいますか、人事管理におけるマネジメントとは何か。もともと人の管理から始まったので、紛争の解決・予防も管理職の職務であるということを周知する必要があるのではないかと思っています。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 土田委員。

○土田委員 山川委員にちょっと教えていただきたいことがあります。山川先生もお書きになっていたと思いますが、企業内の紛争処理システムを発展させるために、従来の割とフォーマルな苦情処理よりはインフォーマルな調整機関があっていいのではないか、そういうことを展開すべきではないかということがあります。

 例えば、最近ですと、内部通報制度という制度がありますね。これは、どちらかというと企業法務マターで、コーポレートガバナンス・コードなどで会社法との関係で議論されていますけれども、事実の認識として、こういった機関が例えば人事・労務マターに利用されていることがあるのかないのか、という点についてどうでしょうか。次に、内部通報制度は、例えば通報者のプライバシーの保護であるとか、不利益取り扱いの禁止であるとか、その後の解決に至るプロセスの検証ということが制度設計としてかなり明確になってきていると思うのですが、こういった手法は企業内紛争処理のシステムを考えていく上で参考になるのではないか。私は参考になるのではないかと思うのですけれども、そのあたり、御意見があればお願いします。

○山川委員 ありがとうございます。

 正確にお答えできる立場かどうかわかりませんけれども、たしかJILPTの調査報告で、内部告発窓口が例えばハラスメント問題等について使われているというデータが紹介されていたような気がしますので、実際には使われていることが結構あるかと思います。それは、おっしゃられたかと思いますが、公益通報の場合、秘密を守るということが非常に重要ですので、それで安心して使われるのではないかという推測ができます。そういうものを活用していくことは、おっしゃられるように、私もあり得ると思います。

 あとは、最近、セクハラの苦情相談窓口が措置義務化されて、これがマタハラにも義務づけられています。パワハラ等についても複合的に出てくることがありますから、そういった企業内での相談窓口や手続を、不利益取り扱いがないとか、おっしゃった守秘義務があるとか、手続そのものの周知とか、そういうことを進めることによって活用してもらうことが可能ではないかと考えています。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 鶴委員。

○鶴委員 私も山川先生にちょっとお伺いしたいのですけれども、先ほど私が申し上げた組織の点で、現状、連絡会議があって、そこで何らかそういうことを検討する場があるというお話を伺ったと思います。山川委員は、現状のままでいいのか、それとももう少し強化する余地、方向性があるのか。

 というのも、私のイメージは、この3ページの1のア、イ、ウ、エとか、2の情報の集積というのも含めて、そこの場でいろいろなアイデアがどんどん出てきて新たな取り組みが生まれて、それが各都道府県に広がっていくというようなイメージを持っていて、全体的にもう少し押し進めていこうというような、単に意見の交換の場だけではなくて、中労委の助言機能というのもあると思いますので、そういうリーダーシップが発揮できるような何らかの場。どういうものが可能なのかということはそういうところにいらっしゃる方々が一番おわかりになっていらっしゃると思うのですけれども、強化の必要性・方向性というのはあり得るのかということについてお教えいただけますか。

○山川委員 これも私が労働委員会ないし中労委を代表してお答えできるようなことは全くないのですけれども、そういった形で、例えば個別労働紛争解決促進法の中には、国が情報提供を行うというふうに規定されています。具体的には中労委ということが多くなろうかと思いますが、一定の役割を果たすということは想定されていますので、より改善といいますか、活発化の方向を考えるということはあり得るかと思います。

 ただ、全体の労働委員会でどういう制度をつくるかとなりますと、これも自治事務ということで、例えば中労委だけでこういう制度をつくりましょうということで実施できるようなものではない。まずは、先ほど申しましたような全労委の委員会の中でこういうものをつくってはどうか、あるいはこういうプロジェクトないし事業をしてはどうかということを提案していくことが現実的には考えられるのかなと思います。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 長谷川委員。

○長谷川委員 今、鶴先生が山川先生に御質問した内容ですけれども、最近、中労委は個別紛争について各都道府県の労働委員会を支援しなければいけないということで、今年の12月から初めて個別紛争の研修が始まります。これは画期的なことです。それと、個別紛争の支援をするセクションも中労委の中に設けられまして、従来より一歩踏み出した形にはなっていると思います。

 鳥取県労働委員会がすごくうまく取り組みを進めているのは、鳥取県労働委員会の会長がこれからの労働委員会は個別紛争の時代だということで、韓国の取り組みなどを参考にするなど、物すごく積極的に非常によくやっている結果、全国に先駆けて件数も多いわけです。このような状態で取り組みを進めて来たのですけれども、もっと飛躍的に伸ばすということであれば、先ほど村上さんが言いましたように、何か全国の労働委員会をカバーするような法律がないと、47都道府県が全体的に進まないのではないかと私は個人的には思っています。

 不当労働行為については、労組法や労働委員会規則など共通の法律等があるわけですけれども、個別の場合は全部自治事務だということで、地方の条例や要綱に委ねられているわけです。これでいいのかというのは少し議論の余地があるのではないか。都道府県によっては自治事務だから余計なことを言わないでくれというところもあり、そうすると、全体的な広がりを進めて行くには遅くなってしまうのではないかと思っています。

 これは個人的な意見です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 土田委員、どうぞ。

○土田委員 座長にお願いなのですけれども、きょうも結局、その他のところで最後ほとんど時間をとれなかったのですが、企業内の紛争処理システムというのは、これはこれですごく重要な話題だと思っているのです。山川委員もおられますし、労使のそれぞれの方がおられますから、また少し時間をとって、企業内紛争処理システムについてどういう現状と課題があるのかということを議論していただければと思います。御検討いただければ幸いです。

○荒木座長 わかりました。検討したいと思います。

 大変有益な御議論をいただいたと思います。周知の方法ももっと考えなければいけないということもありますし、誰に対して周知するのか。国民一般というのではなくて、相手もいろいろと特性がある。例えば社労士さんとかに集中的にやるとか、そういう改善の見込みもあるということがありました。

 それから、あっせんの参加の強制とか、長期にやるとかいうことは、両様に働くという御指摘もあったところで、慎重に考えなければいけないと思います。周知の内容としても、この機関に行けばどういう解決がある、ここで解決しなかった場合にほかに行った場合にはどういうコストがかかるかとか、そういうことも含めた周知というのが、実は利用のインセンティブを与えることにもなるということが示唆されたように思います。その点では、各システムにどういう特性があって何が得意なのかということも含めて連携の中でも考えていくべきかと思います。

 それでは、時間になりましたので、きょうはここまでといたします。

 次回は、現行の個別労働関係紛争解決システム改善に関する検討事項について、残りの議論を行いたいと思います。

 最後に、次回の日程について事務局からお願いします。

〇大塚調査官 次回の日程につきましては調整中でございますので、また追って御連絡させていただきます。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 それでは、本日の検討会は以上といたします。どうもありがとうございました。

 


(了)

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