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2016年8月12日 平成28年度第1回水質基準逐次改正検討会

○日時

平成28年8月12日(金) 13:30~15:30


○場所

厚生労働省専用第12会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2、中央合同庁舎5号館12階)


○出席者

松井座長、浅見委員、泉山委員、伊藤委員、亀屋委員、小林委員、西村委員、広瀬委員

○議題

(1) 亜急性暴露による健康影響評価について
(2) ニッケル及びその化合物に関する検討状況について
(3) その他

○議事

 

○鈴木室長補佐 

定刻よりも若干早いですが、皆様おそろいですので、ただいまより平成28年度第1回水質基準逐次改正検討会を開催いたします。委員の皆様方には御多忙中にもかかわらずお集まりいただきありがとうございます。本検討会の開催に当り、事務局を代表して厚生労働省水道課水道水質管理官の東より御挨拶を申し上げます。

 

○東水道水質管理官 

皆さんこんにちは。水道水質管理官の東でございます。本日は、お盆の直前という時期にもかかわらずお集まりいただきましてありがとうございます。また、日頃より水道行政の推進に御協力いただきまして感謝申し上げる次第でございます。

さて、御案内のとおり水道水質の基準につきましては、本検討会で実質的な議論をいただいた後、年度末に開催いたします厚生労働審議会の部会に報告し、そこで了承が得られれば、翌年の41日に水道水質基準につきましては省令の改正、管理目標設定項目につきましては通知の発出ということで、行われていくわけでございます。

今回は、水道水質基準の中身につきまして、また今年度のスケジュールにつきましては資料1のほうで御説明いたしますけれども、その関連情報といたしまして、3つほど議題を挙げさせていただいておるところでございます。

1 つは、「摂取制限を伴う給水継続の考え方」の通知を今年の3月に出させていただいたのですけれども、その参考になる資料ということで広瀬委員のほうから亜急性暴露による健康影響評価についての資料を御説明いただきます。

2 点目といたしましては、これは、かねてより懸案事項になっております、ニッケル及びその化合物、これは基準を検討するということを数年前の本検討会で御審議いただいたところですけども、現在における検討状況について事務局のほうから御説明させていただきたいと思います。

3 点目、その他ということですけども、最近の基準値項目等の検出状況について浅見委員のほうから御報告いただけるかと思います。大きく3つのテーマで御議論いただきたいと思います。先生方におかれましては、忌たんのない御意見を賜りますようお願い申し上げます。

 

○鈴木室長補佐 

それでは、今年度第1回目の開催ですので、委員の皆様方の御紹介をいたします。国立保健医療科学院生活環境研究部上席主任研究官の浅見委員です。京都大学大学院工学研究科教授の伊藤委員です。国立感染症研究所寄生動物部第一室主任研究官の泉山委員です。横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授の亀屋委員です。国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部第三室室長の小林委員です。帝京平成大学薬学部薬学科教授の西村委員です。国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター安全性予測評価部長の広瀬委員です。北海道大学大学院工学研究院環境創生工学部門教授の松井委員です。

 続きまして事務局を御紹介いたします。先ほど御挨拶申し上げましたけれども、水道水質管理官の東です。私が水道水質管理室室長補佐の鈴木です。担当係長の田中です。同じく水道水質管理室の室長補佐の走出です。高山係員です。本日の出席状況としましては、8名の委員全員に御出席いただいています。

 続いて配布資料の確認をいたします。お配りしている資料の一番上に「議事次第」がありまして、裏に配布資料一覧を記載しています。そして座席表があります。その次は1枚紙の資料1「平成28年度今後の検討内容」です。資料2はホチキスで止めてある「亜急性参照値について」です。次の資料31枚紙ですが、「ニッケル及びその化合物に関する検討状況について」です。資料4は少し厚めのホチキス止めの資料で「水質汚染の可能性のある化学物質の基本情報、環境中の検出状況に関するデータベース作成」です。

 続いて参考資料です。参考資料1が、先ほど御紹介した委員の皆様の名簿です。参考資料2は検討会の運営要領、参考資料3は検討会の公開の取扱いについてで、それぞれ1枚紙です。参考資料4はホチキスで止めてある右肩に「生食水発第03312号」と書いてある「水質異常時における摂取制限を伴う給水継続の考え方について」という水道課長の通知です。最後の参考資料5は昨年度、平成27年度の第2回本検討会の資料4で、「最近の水質基準項目等の検出状況について」という資料です。配布資料は以上ですが、不足などがありましたら、事務局までお申し付けいただけたらと思います。

 それでは、以降の議事進行に先立ち座長の選出を行いたいと考えています。参考資料2に、この検討会の運営要領を付けています。そこの3.(2)に、「座長は平成28年度第1回検討会において委員中から選出する」とありまして、事務局としましては引き続き松井委員にお願いしたいと考えていますが、よろしいでしょうか。

( 確認)

 マスコミの方へのお願いですが、以降、カメラ撮りは御遠慮いただいていますので、御協力をお願いいたします。それでは、これからの議事進行は松井座長にお願いします。

 

○松井座長 

ただいま、座長に指名を頂きました松井でございます。それぞれ皆様方から専門的知見、広い見地から御意見を頂きましてまとめていきたいと思いますので、スムーズな御審議に御協力のほどよろしくお願いします。それでは、まず議事に入る前に、本検討会の公開の取扱いについて御説明を頂きたいと思います。

 

○鈴木室長補佐 

先ほどと同じ参考資料2、本検討会の運営要領を御覧ください。4.その他の(3)の所に、公開の取扱いについては検討会において決定するとされています。次の参考資料3が本検討会の公開の取扱いについてですが、この検討会を含め水道課長の設置する検討会は、個人情報の保護等の特別な理由がない限り、基本的に公開することとしていますので、本検討会も原則公開でございます。具体的には、開催予定や、委員のお名前・御職業、会議資料そのもの、議事要旨についても併せて公開と考えています。また、検討に必要として、取りまとめの前の中間段階の調査結果、あるいは、先生方から未発表の研究成果を提示していただくような場合は、知的財産権の保護という観点から非公開とさせていただくと考えているところです。公開の取扱いについては以上です。

 

○松井座長 

ということですけれども、何か御質問ございますか。よろしいですか。ありがとうございます。それでは、次に進めさせていただきたいと思います。資料1がお手元にありますので、まず資料1について事務局から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

 

○田中係長 

それでは、資料1について、事務局の田中から御説明をさせていただきます。平成28年度、今後の検討内容です。表のほうには昨年度の検討事項、そして裏面のほうには、今年度予定されている検討事項を記載させていただいております。まず、昨年度の検討事項としまして、平成2941日施行予定の農薬類見直しの表の中に、その対象となる農薬類と目標値等が記載されております。具体的には、対象農薬リスト掲載農薬類の目標値の見直しとしまして、現行の目標値と新目標値がそれぞれ、ピロキロンは0.04mg/Lから0.05mg/L、ベンゾフェナップのほうが0.004mg/Lから0.005mg/Lへの見直しとなっております。

 そのほかに、要検討農薬類から、対象農薬リスト掲載農薬類に格上げをするものとしまして、テフリルトリオンが対象となっています。こちらにつきましては、目標値はそのまま変わらず、0.002mg/Lとなっております。

 もう1つ、対象農薬リスト掲載農薬類に項目を統合するものとして、ダゾメット、メタム(カーバム)、メチルイソチオシアネート、こちらは現在では要検討農薬類ですが、その3農薬をまとめまして、「ダゾメット、メタム及びMITC」と1つの項目になりまして、新目標値としては、メチルイソチオシアネートとして0.01mg/L以下というように見直しを行う予定です。こちらの統合後の名称につきまして、現行ではメタムが、「メタム(カーバム)」となっているのですが、こちらは食安委のほうの名称では、ダゾメット、メタム及びメチルイソチオシアネートとなっていまして、カーバムという文字が、食安委のほうではなくなっているのですが、水道のほうの農薬類として、カーバムを入れたほうがよいのかどうかというのを、現在、法令上の取扱いも含めて検討中です。何か御意見がありましたら、お願いしたいと考えております。いずれにつきましても、農薬類につきましては、平成288月から9月にパブリックコメントを行う予定で、手続に入ろうとしているということです。そのパブリックコメント結果につきまして、12月予定の第2回の逐次検討会並びに平成292月頃を予定している、厚生科学審議会を経て、御了解いただきましたら、平成28年度内に通知を発出し、29年の41日に、施行を予定しております。昨年度の検討事項については以上になります。

 続いては今年度予定している検討事項となります。こちらは、いずれも農薬類が対象になっておりまして、720日時点での対象ですので、今後また増えるかもしれないのですが、現時点での御報告となります。まず、平成2941日施行予定の農薬類の見直しの対象として、要検討農薬類のブロマシル、こちらは、現在目標値は設定されていないのですが、0.05mg/Lの改正案となっています。こちらにつきましては、平成2812月頃の第2回逐次改正検討会、そして平成292月頃の厚生科学審議会で審議いただき、御了解いただければ、28年度内に通知を発出して、2941日に施行を予定しております。

 その下ですが、平成3041日施行予定の農薬類見直しとしまして、こちらは、対象リスト掲載農薬類である、イソキサチオンとグリホサートです。イソキサチオンの目標値が現在は0.008mg/Lですが、改正案としまして目標値は0.005mg/L、そして、グリホサートは2mg/Lから2.5mg/Lへの改正案を予定しています。こちらの見直しについて、12月頃の逐次改正検討会、そして、292月頃の審議会で審議いただき、29年夏にパブリックコメント、そしてその結果について2912月頃の逐次改正検討会、そして302月頃の厚生科学審議会で審議いただき、御了解いただければ29年度内に通知を発出し、平成3041日に施行と考えています。平成28年の今後の検討内容についての説明は以上となります。

 

○松井座長 

ありがとうございます。御質問ございましたらよろしくお願いします。メタムの名前について、何か御意見ありますでしょうか。

 

○浅見委員 

ありがとうございます。農薬はやはり名称がたくさんありまして、なかなか大変だと思うのですけれども、メタムという名前には、アンモニウム塩と、ナトリウム塩と、カリウム塩があって、日本の中では、ナトリウム塩やアンモニウム塩が使われていると理解しています。そのアンモニウム塩が最初に登録されたときに、カーバムという名前で使われたそうで、農薬出荷量ですとか慣用的に、カーバムという名前が使われている場合もあるようなのですが、現在では食品ですとか農薬の評価書関係が、メタムという名前で、全体を含むような、塩の種類によらず全てを含むような形になっているようですので、そういった意味でもメタムという名称でもいいのではないかと思いますが、法令上の整備のほうにお任せしたほうがいいかなと思います。

 

○松井座長 

ほかにございますか。よろしいですか。それでは、御意見を踏まえて、御検討いただければと思います。

 続きまして、議題1の「亜急性暴露による健康影響評価について」です。まず、事務局から御説明をお願いします。

 

○鈴木室長補佐 

参考資料4を御覧ください。水質異常時における摂取制限を伴う給水継続の考え方についてということで、昨年度末の平成28331日に、水道課長通知として発出をしたものをお配りしています。水質異常時における摂取制限を伴う給水継続の考え方につきましては、本検討会でも長く御議論いただいき、その考え方について、平成27年度の第2回検討会で御了解いただいた後、平成282月に開催した厚生科学審議会生活環境水道部会でも御了解を頂いたところです。

 御検討いただいた考え方は、2ページ目以降の「記」以降の通知の内容として発出をしました。今日は通知本文の内容の御紹介をいたします。

1ページ目の2パラからです。水質異常時の対応については、既存の通知で示していますが、平成23年の原子力発電所の事故や平成24年の利根川水系のホルムアルデヒド前駆物質による水質事故などの経験を踏まえて、この水質異常時における摂取制限を伴う給水継続の考え方を取りまとめたとお示ししました。

 その次の段落ですが、周知してくださいということが書いてあって、「なお」の所ですが、この通知は従来の通知で示している「水質異常時の対応について」の考え方を補完するもので、これを変更するものではないということを明記しています。

 次の「また」という段落です。平成25年の通知において、水質事故など何かあった場合は情報提供のお願いをしていますけれども、この摂取制限を伴う給水継続を実施する場合も情報提供をお願いするケースに該当するため、厚生労働省への御報告をお願いしました。御報告を頂いた上で、厚生労働省では、「飲料水健康危機管理実施要領」に基づき飲料水を原因とする健康被害の発生予防、拡大防止等の危機管理の適正に努めることをお伝えしています。通知の御紹介、参考資料4については以上です。

 

○松井座長 

りがとうございます。続きまして、資料2の説明を、広瀬委員からいただけるということで、よろしくお願いします。

 

○広瀬委員 

私のほうでは、厚生労働科学研究の研究を行っております。今厚労省のほうから説明のあった、水質異常時における摂取制限を伴う給水制限の考え方ということの中で、一定量、わずかですが、超過する水質異常が生じたときの対応といったときに、水道事業者が専門家等の体制を整えて、それに対する対応を行っていくといったことが求められていると。それに対して参考資料4の表1にありますけれども、25物質項目については、長期影響を考慮した基準であるということで、短期的な影響も、逆に言えば考える。考えて設定というか、ある程度の基準、指針を考えることができるだろうという考えの下で、もちろんケースバイケースで一律な指針は決められないところではありますけれども、1か月程度ぐらいの短期的な一過性の水質基準超過に対して、どの程度ぐらいまでできるかという、許容、ある程度の目安というものを作れないかということで研究を行ったところです。その結果は、平成25年から27年度の厚生労働科学研究の研究課題で取りまとめられて、まだ公開はされていないと思いますが、そのうち公開されるということになりますけれども、そこでの考え方について御説明できればと思っています。

 まず最初に言い訳のようにお断りさせていただきますけれども、25物質全てについて、検討できればよかったのですけれども、時間的制約あるいは物質の毒性学的な性状、あるいは基準値の設定の方法等により、資料21ページの下のほうにありますが、長期的な疫学データで求められている基準は、特に重金属等で多いのですが、そういったものは、短期的な疫学データではどうかというデータが取れない。あるいは価数によって影響が極端に変わる、クロムなんかはその例ですが、そういった例。あるいは食品等からの摂取もある程度高いことが見込まれているものについては、短期間の研究では設定できないということで、6項目については、対象除外として、18物質について検討させていただいたというのが研究班の課題の結果です。

2ページ目です。こういった生涯暴露に基づいた水質基準に対応して、短期的な事故的な汚染について管理をするため、どういった指針が求められるかといったことについては、実は米国の環境保護庁によって設定された、環境に関する勧告値、Health advisoryという値がありまして、そういった設定方法、あるいは基準を参照して設定したというのが実態です。実際に、細かい話になってしまいますが、それぞれの化学物質について、どういった方法で算出したかというのを、2ページ目の真ん中に示しています。算出の方法ですが、ヒトがおよそ1か月程度、1か月よりはもう少し長いかもしれませんけれども、そういった暴露をある程度想定した場合の、まず非発がん影響について、ここでは述べています。多くの短期の試験というのは、90日暴露の試験が動物実験等で利用可能ですので、そういった90日暴露の実験。あるいは生殖発生毒性試験というのは、特に暴露期間を設定していないので、そういった実験を基に、無毒性量を求めて、それに対して不確実係数、細かい係数の設定は、3ページにある表1に示していますが、基本的な考え方としては、不確実係数100、その下のポツになりますが、それを適用して、亜急性参照用量を求めるといったやり方を設定で行いました。もちろん必ずしもNOAELが求められない場合もありますので、無毒性量を求められない場合は、追加のUFを検討するといった程度。この場合、何が基準値と変わるかというと、例えば短期の試験で、追加の不確実係数が加わっているような場合、例えば100に対して、更に10を追加して、1000という不確実係数を掛けた場合、それが、通常の生涯暴露に対するTDIになりますけれども、この場合は、その分の不確実係数を適用しないということになりますので、単純にいうとTDI10倍になるというような発想になります。ケースバイケースになりますけれども、そういった短期の試験がある場合は短期の試験を、ない場合は仕方がないので長期の試験をそのまま適用するので、その場合はTDIは変更なしといったことになります。

 もう1つ、考え方として、新しく導入したのは、遺伝毒性の発がん物質に対するリスクの短期の考え方です。それについては、10^-5発がんリスクで、通常VSDに相当する値が求められていますので、短期としては、ここでは10倍量を研究班としては提言させていただいております。その際の根拠ですが、最近、医薬品の国際ハーモナイゼーション、ICHという枠組で、「潜在的発がんリスクを低減するための医薬品中DNA反応性不純物の評価及び管理ガイドライン」いわゆるM7ガイドラインが合意、発出されているわけですが、このガイドラインの中では、毒性の未知の変異原性、未知というのは、その医薬品の不純物での低用量、微量暴露ですが、その物質について、必ずしも毒性試験等を求めるのは困難である。そのために、ある程度の閾値を設定するという考え方があります。その中で、その閾値の設定としては、1.5μg/day11人当たり、1.5μgというのが、遺伝毒性発がん物質についてのデータがあれば別ですが、データがない場合の閾値ということで、設定されています。これが大体10^-5発がんリスクといった値で設定されておりますので、それが生涯暴露に対するリスク、その中で医薬品ですので、医薬品の適用に沿ってそのリスクを変更するといった考え方が導入されています。

 その表の中の1つで、医薬品としての投与期間が1か月から12か月の場合の許容摂取量といったことを考えたときに、この1.5μgという値は、20μgまで、約13倍高い値まで許容できるといったことがガイドラインとして合意されているところです。今回の亜急性参照値を導入するに当たっても、投与期間と同様の考え方を採用しまして、1か月から12か月まで、13倍というのもちょっと中途半端な数字ですので、おおむね10倍といったところが、遺伝発がん性物質の短期暴露の指針値として適当ではないかということで、この値を採用したところです。

TDI許容摂取量、あるいはVSDについては、このようなやり方で求めたわけですけれども、最終的には水質基準値に変換します。通常であれば、生涯暴露で言えば、全ての物質ではありませんけれども、10%から20%のアロケーションを設定して、基準を設定していますけれども、今回の場合は、短期暴露ということで、割当率、寄与率を100%として、成人と小児を対象とした、2つの指針値、成人の場合は体重50kg、小児の場合は体重10kg、飲料水はそれぞれ2L1Lというデフォルトをセットして、亜急性参照値を設定しました。それが表2のほうで示される値になります。

 報告書には書いていませんけれども、その際に1つ指摘されていた点ですが、基準値は生涯暴露で1つの設定なのに、短期算出総暴露は、小児のリスクを設定しているということになっています。これは2ページの下の最後の段落に示していますけれども、通常の摂取基準とは小児から大人まで含めて、暴露した場合のリスクということを考えて設定しているということになっていますが、今回は1か月かその程度ぐらいの暴露といった、短期間暴露というリスクを考えると、小児だけのリスクという計算の仕方も考えられるといったことで、この場合は2つのリスクを求めるということが適切だということで設定しています。

 今まで説明した内容については、表1と表2に示しています。表1も簡単に説明しますと、各物質についてのsaRfDと言われる値が、今回の暫定的な短期のTDI、あるいはVSDになる値です。それを求めた各動物実験とエンドポイント、ベンゼンの場合ちょっとヒトのデータになっていますが、それにどういった不確実係数を適用したかといったことが示されています。

 表2につきましては、それに基づいて短期の指針値、参照値を成人の場合と小児の場合を設定して示し、括弧の数字は、基準値に対する比率になっています。多くの場合は、大体数倍から数十倍程度、基準値から高い値が提案されていますけれども、ホウ素とトリクロロエチレンにつきましては、小児の場合ですと特にそうですが、基準値と変わらない値となってしまいました。これは、基準値としてもともと採用した毒性が、生殖発生毒性試験だったということで、TDIADIがそもそも変わらなかったということと、最初からアロケーションも基準値から少し高い値が設定されたということで、結果的にそれほど高い値にならなかったといったことが原因として考えられています。以上が、長くなりましたが、亜急性参照値の設定理由と設定方法、その結果の説明です。以上です。

 

○松井座長 

ありがとうございます。それでは、御質問がありましたらお願いします。

 

○伊藤委員 

もちろんこの資料は、厚生労働省としてオーソライズするというような性格のものではないだろうとは思います。ただ、このような資料がこの会議に出されることになりますと、各水道事業体として可能性が高いのは、この資料中の表2だけをコピーアンドペーストして、水道事業体内部のマニュアルとかガイドラインとかが作られてしまう。こういう可能性もありますので、この資料を見ていただくときに、ちょっと注意する必要が幾つかあるという意味で、発言させていただければと思います。

 今の広瀬委員の御説明のように、通常の水質基準の導出の際には子供に対する影響は普通考えられていないわけですが、今回の場合には、特に小児に対する参照値が計算されているという点です。それは、この資料にある文言としては、小児期だけの暴露に対象を絞ったリスク評価が必要という、そういった考えなのです。ただ、子供に対する健康影響を念頭に置くと言いつつ、実は使っているのは同じTDIなのです。同じTDIを使用していて、参照値の計算式において、体重と飲水量を子供用に変えて掛け算、割り算をしているだけと言うところがあります。本当に子供のほうが感受性が高いということを考慮して、より低いTDIを用いるとか、そういうことにはなっていないということを、注意しておく必要があるかと思います。その点はそれでよろしいですよね。

 

○広瀬委員 

正確には、11つの物質の評価が違うので全てがそうだということは言えませんが、基本的には基準値は、小児の感受性の低いのも考慮して設定しています。それは不確実係数が個人差に対して入っているので既に折込みです。ですので、TDIが小児の場合も実際は変わりません。この場合に何を考慮したかと言うと、暴露量が考慮されたので、小児の場合は低くなっているという結果になっていることです。ですので、小児が感受性が高いという属性評価的要素はもう最初から入っています。

 

○伊藤委員 

それは、急性、亜急性、それから慢性影響、両方とも入っているということですね。

 

○広瀬委員 

もちろんそうです。個人差の不確実係数10は最初から全て入っています。

 

○伊藤委員 

その点がまず確認させていただきたかったことです。それからもう1つは、表1の上から5番目のジクロロメタンです。これは、104週間飲水投与試験による変異肝細胞巣を根拠にしていて、通常の基準値を導出する際に使われた実験結果と同じものを使っているわけです。通常の基準値の場合は、ジクロロメタンの発がん性を考慮してUF1,000を与えています。それに対して今回の計算では、そのUF10の追加を外して100にされているのですが、この理由を補足していただけるのであればお願いできますか。

 

○広瀬委員 

細かい理由までは全部は今、説明できませんが、通常であれば104週間ではなくて90日の試験があればよかったのですが、この場合は適切なデータがなかったので仕方なく104週をと、そういったことと、あと、発がんの過程は、これはかなり時間を要して発現しているので、短期の場合は、出てくる影響が肝臓の所見と短期的な一般毒性の所見ということで、発がんの不確実性を付けなかったと、こういったことです。遺伝毒性発がん物質であれば蓄積していくので、そういうUF10を使わないことはないのですが、これは短期の影響だということで、追加の、閾値のある発がん性を考慮した場合の不確実係数は付けませんでした。

 

○伊藤委員 

発がん物質であっても 短期の高濃度暴露であれば、発がんに至ることは考えなくてよいだろうということでしょうか。

 

○広瀬委員 

はい。

 

○伊藤委員 

分かりました。今申し上げた点も含めて注意していただかないといけない点があるかと思います。ありがとうございます。

 

○松井座長 

ありがとうございます。そのほかありますか。

 

○亀屋委員 

有害性の評価は広瀬先生の御専門ですし、私は専門ではないので異議を唱える知識は持ち合わせていませんが、ちょっとやはり、今と同じように気になる点があるので質問させていただきたいと思います。まず、90日の試験がないものについては、短期に、あるいは慢性の試験のデータを充てることになっているのですが、単純に考えると、慢性のデータを充てたら基準値と何で同じにならないのかという単純な疑問が湧いてきます。使った慢性のデータが同じもので、UFの考え方が同じであれば、基準値と同じになるだろうし、UFの考え方が違えば違ってくるのだろうと思うのです。先ほど伊藤先生が例に挙げていた、何でしたかジクロロメタンでしたか、あそこも基準値との差が100倍ということになっているので、先ほどの10倍分だけ差っ引いても、もう10倍分まだ残るわけです。ですから、これから公開されるであろう報告書を細かく読めばその辺は理解できるのかもしれないのですが、そういった慢性のデータを使ったものが、どうしてそのようになっているのかを知りたいと思っています。

 環境リスクなどを考えるときは、通常は12か月のデータ、慢性のデータを使ったりすることが多くて、期間が短ければそれに応じたようなUFを使う。90日、3か月ですからどのくらいになるのですか、3とか4とかそういうUFを使うのではないかと思うのですが、そういうことからすると、基準値の3倍か4倍ぐらいの参照値というのが出てきてもいいのではないかという。非常に極、表から見た感覚を1つ持っています。

2点目、参照値を表2で出していただいているのですが、参照値の中に一律の排水基準よりも大きな値、すなわち排水よりも汚くてもいいというようにも読めなくもないものが、私がちょっとチェックした中で幾つかあります。四塩化炭素とジクロロエチレンとジクロロメタンですか、あとは、ジオキサンだとかテトラクロロエチレンとかベンゼンは、多分排水基準と同じくらいではないかと思うのです。こういう排水基準よりも大きな参照値が出ていくと、水道原水の上流側できちんと管理していただいている数値がそこにあって、それと比べたときに、一般の人の理解、あるいは水道事業者の方の理解に間違った理解を引っ張ってきてしまうのではないかという懸念もあるので、その辺は、ステークホルダーと言いますか、関連される方のもう少し御意見も聴収して、EPAの方法ですが、単純にこういう方法でいくのではなくて、現状の管理の仕方も踏まえて、もう少しこの参照値の設定を考えたほうがいいのではないのかと思います。

3点目です。割当率100%の話なのです。事故時に100%、余り複雑な暴露のシナリオを考えるのもよろしくないかとも思うのですが、事故時であるからこそ、むしろ飲むことよりも、例えばお風呂に浸かって、そこの蒸気から吸い込んでしまうような暴露のされ方、その割合と言いますか、そういうものが増えるのではないかという懸念もあるわけなのです。この割当率100%が、単純ではあるのですが果たして妥当かどうか、ちょっとその辺が気になりましたので質問させていただきました。よろしくお願いします。

 

○広瀬委員 

ありがとうございます。最初の、短期か長期の不確実係数の場合ですが、それは物質によって3だったり10だったりするので、結構ばらばらで一律ではないということと、10倍なのに100倍の違いの1つは、割当率は水道の場合10%。

 

○亀屋委員 

なるほど。

 

○広瀬委員 

これが100にしているので、それで10入っているので、ですので100倍になったというので、そのストーリーが物質によって全部違うのでばらばらになっている。ですから報告書で細かく、そこまで書いてあったか分かりませんが、そういう理由でばらばらになっているのが理由です。ですから、短期、単純にTDIあるいはVSDが変わったのは反映していません。デフォルトの割当率も反映されて、物質によって変わってきています。

2つ目の排水基準のところは確かに重要で、これは本当に単純に毒性の数字だけからきた値なので、言われるとおりそれは必要で、今、気付いたのですが、この濃度でひょっとしたら臭いが出てしまう。

 

○亀屋委員 

そうですね。

 

○広瀬委員 

先に分かっていることもあるかもしれません。ですからそういうことも考慮して、このまま使うのではなくて、これを横目で見ながら、と。もちろん排水基準も実際は多分基準値から設定されてきていますので、排水基準がそのまま、その名前からすると印象が悪いのですが、危ない基準そのものではないということを理解する必要はあります。確かに今、ホルムアルデヒドとか10倍以上になっている数字については、管理基準と見合わせて、実際には運用したほうがいいというのは、注意事項としてどこかに加えるべきだとは思います。

3点目は何でしたか。

 

○亀屋委員 

割当率。

 

○広瀬委員 

割当率100%は、確かに蒸気からの暴露を考えたときというのがあって、トリクロロエチレンが、そのシナリオで実は基準値自体に気体中暴露が入っているのです。既に70%ぐらいの割当率が入っているので、70を今回100に替えたところで実際変わらなかったので、結果として短期も変わらないという値になっています。ですので、考えていないわけではありませんが、今、全ての物質について蒸気のシナリオがないので、現在のところほとんどの物質は考慮していません。ただ、揮発性のない物質については多分そういうことはないと思います、揮発物質だけ。

 

○松井座長 

ほかはよろしいですか。

 

○浅見委員 

本件については、ずっと長いこと議論をしていただいて、我々もヒアリングに行ったりとか、水道事業体の方々にもいろいろお話を伺ったりしていたところです。今、伊藤先生や亀屋先生からいろいろ御指摘があったので、この使い方と言いますか、注意事項について、やはり気を付けておかないといけないと思います。

 もともとこの問題が出てきたときに、やはり東日本大震災のことや、ホルムアルデヒドの利根川の事件があって、急に水道が止まってしまっては非常に都市生活に大きな影響を与えるということがありまして、基準値を少し超えたからといって、いきなり止めてしまうとかえって別の悪い影響のほうが非常に大きくなるのではないか、衛生上の問題や消火防水のことが大きくなるのではないかということで、この議論が始まっています。この表を使うというのは、本当にどうしようもないときと言いますか、本当に不可避のときに参照をされる値だと思うのです。基本的には、基準値を超えたら、もし給水を続けるにしても摂取制限の広報をしながら、ということになると思われます。この表を超えるぐらいになったら、さすがに良くないのではないかというのが基本的な考え方ではないかと考えています。この値の使い方とかそういうことも、事業体の方とかからも、いろいろ聞かれることになるのではないかと思うのです。そういう意味でも、これを超過するぐらいになっても大丈夫とか、これを1か月飲んでもこのままで大丈夫という値としてこれを見るのではなくて、本当にどうしようもないときに使っていただく、参考にしていただいて、状況を判断していただくというふうに使っていただくことになるのではないかと思いますので、その辺は我々も情報提供に努めていかなければいけないと思っています。そのような理解でよろしいのでしょうか。

 

○松井座長 

あくまでも、参考資料4に書いてあることがスタートのベースだということです。

 

○広瀬委員 

そういうことを私の資料は余りケアして作っていないので、そういうことも、もう少し公開するときに書き加えたほうがよろしいとは思うのですが、いかがですか。何かこのままで、この資料だけが独り歩きしてしまったりしたときのことを考えておいたほうがいいのかとちょっと思っただけです。

 

○松井座長 

あと広瀬委員、これは、現時点での情報をいろいろ整理して検討した結果ということで、これはあくまでも、今後また新たな毒性データとかが出てきた場合とかはアップデートする可能性は非常に高くて、特に、先ほどの揮発性とかまだ未知の部分があったりとか、それから短期暴露のデータがなかったり、吸入や経皮暴露のデータがなかったりしたものについて、新たな情報が加えられた場合には、また数値自体も見直される可能性があるということですね。

 

○広瀬委員 

はい。今、座長が言われた文言を、ここに入れたほうがいいのかと思いました。

 

○松井座長 

ほかにありますか。

 

○鈴木室長補佐 

今の資料に、広瀬委員で少し加えていただいたものをこの会議資料として公開するという運びで考えてよろしいですか。

 

○松井座長 

そうですね、この資料自体がこのまま公開ということよりは、もっと誤解のないようにして、あくまでも1つの厚生労働科学研究の中の検討資料という位置付けであるということ。そういう意味では、その部分を一部だけ抜粋したような資料になっていますので、全体を見ないで一部だけを見て、例えば極端な例で言いますと、表2だけを見てしまって、その導出の結果等を余り考慮せずに表2だけが独り歩きする、そうしたことがないようにという意味で、何らかの説明文書は要るかと私も考えています。

 

○亀屋委員 

先ほどいろいろ質問させていただいて教えていただいたので、科学としては非常に理解できる部分がほとんどだと思うのですが、要は、これを事業体の方がこの数字をアクセプトできるかどうか、それを一般の市民の方に上手に伝えることができるかどうかというところが、一番のポイントになるのではないかと考えています。ということで、この亜急性参照値とは何ぞやというのは、余りこの資料の中では触れているわけではなくて、それはその使い方の話ですから、これをどのように読んでどのように使うのだということをやはりきちんと書かなくてはいけなくて、科学の部分はそれほど詳しくは説明しなくても、報告書を見れば分かるのだと思うのです。そちらの使い方のほうで是非工夫をしていただければと考えています。

 

○東水道水質管理官 

一応、今日の資料はホームページ上に公開することになるのですが、その中身について、この資料2については、また広瀬委員と御相談させていただいた上で、内容についてもう一度先生方にも見ていただいて了承を頂いた上で、今日の検討会の資料ということでホームページ上に出すということにしたいと思います。

 

○松井座長 

ただいま亀屋委員から意見があったのは、これはあくまでもリスク評価のことであって、その後リスク管理に使うときには、このままリスク評価値を使うという、イコールにはならないだろうということでしたので、このリスク評価の値を実際にリスク管理に当てはめるときには、更に様々なほかの状況を見ながら使うことが必要であると、これは非常に重要なポイントだと思います。もちろん今の発言も、亀屋委員の発言も議事録に残るかと思いますので、その意味でもこの点は留意してほしいと思っています。ほかにありますか。よろしいですか。それでは、本件についてはここで終わらせていただきます。

 次の議題2に進みたいと思います。「ニッケル及びその化合物に関する検討状況について」です。まず事務局から説明をお願いします。

 

○田中係長 

資料3のニッケル及びその化合物に関する検討状況について、事務局から御説明させていただきます。こちらにつきましては参考資料5も併せて御覧ください。参考資料5は、最近の水質基準項目等の検出状況についてということで、平成27年度第2回の水質基準逐次改正検討会で用いた資料を載せております。こちらの資料の132ページの下のほうから133ページにかけて、ニッケル及びその化合物についての記載があり、こちらを踏まえて御説明させていただきたいと思います。

 現在、水質管理目標設定項目とされている「ニッケル及びその化合物」についてですが、平成23年度から平成25年度の過去3年間で、継続して目標値の50%超過地点が1地点以上存在しており、平成25年度には目標値超過地点が1地点確認されておりました。平成22年度に整理された「水質基準項目と水質管理目標設定項目の分類に関する考え方」、参考資料5132ページの上のほうですが、こちらの考え方に照らしますと、浄水からの検出状況から、ニッケルが水質基準に分類するかを検討すべき項目に該当している状況となっております。一方で、平成27年度第2回逐次改正検討会においては、目標値の再検討が必要であるということ、また、給水装置からのニッケルの浸出に対する対応が困難であるという課題があったため、水道原水及び浄水におけるニッケルの存在状況、環境汚染状況の推移、水道用資機材等を含めた水道における制御方法等についての調査検討を引き続き行い、「ニッケル及びその化合物」を水質基準に分類するかどうかについての検討を継続することとされました。以上が過去の状況です。

 現在の検討状況についてですが、現在は水質基準の設定に関する基礎材料として、厚生労働科学研究費、「水道における水質リスク評価及び管理に関する総合研究」、松井先生が研究代表者となっておりますが、こちらの中において国衛研の広瀬部長を中心に、当面は1年間の予定で、食品等からの暴露影響に関する調査を進めていただいているところです。具体的には、ニッケルの飲料水あるいは食品からの摂取量とアレルギー等の健康影響が生じる量との相関性を示す公表文献情報などについて、調査をしていただいているところです。今後は、この調査結果、要は浄水における検出状況、給水装置における浸出状況などを基に、再度逐次改正検討会において、ニッケル及びその化合物の取扱いについて議論を行う予定です。資料3についての説明は以上となります。

 

○松井座長 

それでは御質問をお願いします。何かございませんか。広瀬委員、何かWHOのほうの検討事項はありますか。

 

○広瀬委員 

特に質問がなかったので。ここで話す進展はありません。ただ、第4班の今のところの計画では、第一追補が今、最終化中だと思いますが、第二追補に入れる予定で計画には入っていますけれども、どこまでという状況についてはまだ不明です。

 

○松井座長 

WHO のほうも、やはり目標値の設定には検討に時間を要しているということですね。

 

○広瀬委員 

第一追補のときにある程度まとまったのですが、ちょうどまとまった頃にヨーロッパの食品安全委員会というか、FSAのほうでオピニオンを出しまして。それが長期暴露のベンチマークドーズとともに、アレルギーのベンチマークドーズも出されまして、それが結構低い用量で。FSAのオピニオンでは現状の暴露も懸念ありのような評価になっているので、それをもって再考しなくてはいけないということで、今WHOも再検討しているということです。

 

○東水道水質管理官 

厚労省のほうから補足いたします。資料3の最後の3行なのですが、浄水における検出状況ですが、平成25年度に一度ニッケルが検出されたのですが、今現在のところ、それ以降は出ていないです。実際、その検出された浄水場の更に上流に、原因となる可能性のある企業もございますので、そういった所のヒアリングも厚労省として進めていこうと思っています。また、給水装置における浸出状況も、実際の給水装置を作っていらっしゃる工業会といった所にも今ヒアリングを進めているところで、実際のニッケルの浸出状況、給水装置の使用状況等も調査しているところです。そういった情報もまとまり次第、この検討会の場で御報告したいと思っています。

 

○松井座長 

ほかにございますか。なければ、ニッケルについてはただいま説明があったように、検出箇所も限られているということで、もう少し情報収集するということ。それから健康影響についても、アレルギー等についてどのように摂取量を含めて扱うのかということについて、更に検討が必要ということなので、もう少しこのまま様子を見ながら検討を進めていくということと思いますが、よろしいですか。ありがとうございます。

 それでは続きまして、「その他」の議題に移りたいと思います。資料4、浅見委員、よろしくお願いします。

 

○浅見委員 

資料4に関しましてお話をさせていただきたいと思います。もともと厚生労働科学研究の中でいろいろな化学物質があるのですが、そういったものに関してどの程度情報がそろっているのか。また、環境省でもいろいろ調査をされているようなケースがありますので、そういったものとも比較して、どういったものが今後問題になる可能性があるかというのを広く、浅く検討しようというものの試行的な段階の資料ということです。本日、ちょっと情報提供ということでさせていただくことになりました。資料、検出状況も特に精査をしたものではないので、実際は検出の値が若干異なっていることとか、そういったこともあるかもしれないのですが、現在の検討状況ということで御紹介をさせていただきたいと思います。

 今回の目的ですが、水質事故を起こす可能性や、環境中から検出される可能性があるものを当たろうという趣旨で、水質基準項目と水質管理目標設定項目、要検討項目、農薬及び浄水処理対応困難物質とPRTRの対象物質を総計いたしました。これらの中で重複を除きますと702物質になるのですが、その辺の情報について環境計画研究所と北海道大学と整理をさせていただいたというような状況でございます。

2ページ目に情報収集を行ったデータ項目を載せております。基本的な情報とか構造式とか、あとは毒性の情報についても、環境省とか厚労省で使っているようなもののうち比較的確かと思われるものに関しまして、入手できる限り表の中に入れていこうということで集めております。また、製造量や検出状況についても集めていこうということで、集めています。浄水処理性に関しても当初収集しようとしていたのですが、なかなか同じような条件でというのが集めにくく、同時に幾つかの事業体で、今、浄水処理性のデータベースを作っていらっしゃるということで、それと並行して進めさせていただこうということになり、ここでは記載をさせていただいておりません。ベースとしてはこういった情報を集めていければと考えております。

 水質基準関連の基準項目に関しては比較的データが集まりやすいので、これはやってもやらなくても、かなりレビューされているところだと思いますが、それ以外の物質に関して、特に毒性のデータで評価値のようなものが定まっていないものに関しては、非常に荒々なのですが、TDIADIを使って、既存の知見との比較を行っていたところです。

3ページに仮の評価値とありますが、非発がん影響に係るTDIの設定を行う必要があった物質に関しては、食品安全委員会のTDIや、そのほかのガイドラインのTDI等を用いて評価を行っております。

 また、4ページにありますように、それらのデータのないものに関しても、環境省の健康リスク評価で使われているようなものがあればそれを使用、それもなければEPAの統合リスク情報システムにおいて参照濃度の評価結果が記されている場合にはそれを使用、それもない場合にはその他の情報を集めてということで、評価用のTDIを設定しております。

5ページ目です。発がん影響に係るものに関して、同様に確からしいものから順番に取っていったのですが、全体を通じまして、仮の評価値を求めて、それとの比較を見て、ざっと広く見てみようというようなことで行っております。

6ページですが、仮の評価値と体重、飲水量と飲水の寄与率を仮に10%と置き、全体を比較するということで行っております。こういったものと比較して、どのくらいの検出レベルにあるのかを整理させていただいたようなところです。6ページの表4に、「スロープファクターに基づき仮の評価値を設定した物質」とあるのですが、これらのデータに関しては、物質に関してはデータが少なく、発がん性のスロープファクターというものを使っての評価値を算出しておりますので、ちょっと厳しくなりすぎてしまっているのではないかという懸念があるのですが、今回はこれを使って比較をさせていただいたところです。ただ、実際後のほうで出てくるのですが、ここに挙がっている物質が結構比率が高くなってしまっておりますので、その辺は御注意いただければと思います。特に、ヒドラジンとか酸化プロピレンといったものが高めに出てきているような傾向がございます。

 そういったものを整理しまして、あと検出状況を比較しているのですが、11ページに、ここから後に示すグラフの説明をさせていただいています。物質ごとに中央値、25%値、75%値と、最小値と最大値というのをグラフにして、測定の地点数と検出地点数をグラフにしております。このグラフの箱ひげ図は、通常のものですと標準偏差と標準偏差の2倍量を取ったもので書いていることが多いかと思うのですが、それとは違いまして、最大値と最小値を棒で引いておりますので、その辺は御留意いただければと思います。

 データベースの構成があって、あと14ページ以降に、今回対象とした物質のそれぞれの検出の値を示しています。幾つか代表的なものだけ御紹介をさせていただきたいと思います。例えば、17ページで評価値と検出値との関係ということで、環境水に関しての評価値があるのですが、ここでアンチモンやニッケル、ウランといったものに関しても若干検出が見られております。水道の水のほうになりますと、ニッケル等のほうが除去されて、浄水場の出口水では基本的には低い値になっているというようなことを見ていただくことができるかと思います。ウランに関しては値の精査をしたほうがいいのかもしれないというような状況です。

18ページ、環境水の図13の中で、先ほど申し上げましたヒドラジンに関しては環境水中の検出がある程度見られるということで、こちらについても情報収集をしていったほうがいいかと思っております。

19ページ以降は農薬で、非常に種類が多いのです。この中でCNPとあります所が比率が高くなっているのですが、この物質は定量下限が高い物質で、検出されると評価値が1になってしまうということがあるのと、実際上、濁土に混ざって検出されることもあるようなのですが、値については注意が必要な物質であるということ。あと検出されているほかの物質についても、当時の分析方法がちゃんと確かだったかどうかということについて精査をしきれてないようなデータですので、御留意いただければと思います。

23ページに、環境水での検出状況がありまして、この中でアクリル酸メチル、アクリロニトリル、酸化プロピレン、1,2-エポキシプロパン、別名酸化プロピレンと書いてありますが、この辺は比較的、評価値に近いような値で検出されているケースがございまして、今後厚生労働科学研究の中で調査をしていこうかと考えております。ほかにも1,1,2-トリクロロエタンやPCBの辺りでも、時々検出が見られることがあり、情報の精査をしていったほうがいいかというふうに思っております。

24ページには、PRTRの中に入っている農薬に関して表があるのですが、この中のポリカーバメートについては、恐らくなかなか測定が難しいものですので、値としては本当の値ではないのではないかなとは思うのですが、こういった状況だということで整理をさせていただきました。

25ページ以降に、今回のデータベースの概要を示しており、こういったものをある程度検討しまして、科学院のホームページかどこかに掲載できるようにさせていただきたいと考えております。以上です。

 

○松井座長 

それでは御質問、御意見をお願いします。

 

○小林委員 

このデータベースは今後これをどういうふうに活用されていく予定なのですか。例えば、農薬の分類見直しとか、そういうものにそのデータを使っていくとか、そういうことをお考えで、されているような話ですか。

 

○浅見委員 

農薬につきましては、これまでも非常に協力いただいております研究班の方々ですとか、その他の所からも情報を頂きまして、精査をして、解析を北大の松井先生の所ですとか、その他の所で、あと関東学院大学の鎌田先生の所でしていただいておりまして、農薬については結構その年に出た農薬をフォローできるような形になっております。逆にそれをほかの化学物質でもちょっとできないかなというので、状況を見てみたというのが、むしろ近い状況だと思います。PRTRの中でも検出されているような物質については、厚労省の要検討に入っていれば、若干データが集まるようではあるのですが、環境省でモニタリングしているものというのは、自動的にはなかなか入ってこないので、今出ているものを横目で見てみようかなということで、させていただいたようなところで、データ的にはちょっと年度がずれたりとか、何年か前のデータを見ているような、現在のところはそういう状況です。今後うまくいけば、少し定期的に見ていけるかと思います。

 あと一番の利用方法としては浄水処理性のところのデータを皆で共有したいというのがまず最初にあります。そこが本当は一番最初に充実すべきところだというふうに思っているのですけれども、まだそこに行き着けていないのですが、事業体さんとこういったベースでデータを集めて、検索するとこの物質についてはこういう条件で、こういう処理方法を行うと、何パーセントぐらい取れているというデータがありますよというようなところを、集められるデータベースの基になるといいなというふうに考えております。以上です。

 

○松井座長 

よろしいですか。農薬については、今浅見委員から話がありましたように、科研の中でいろいろな情報を集めてくる仕組みがきちっと出来ているのですけれども、化学物質については必ずしもそういう仕組みが出来ていないので、ここにきて試験的に集めてみてということと思います。という理解で、いいですか、浅見委員。

 そう集めてはみたのですが、やはりデータ数が少ない。先ほどのヒドラジン等ちょっとウォッチしていかなくてはいけないという物質もリストアップされているのですが、データ数が4点だったりとか、測定地点数が4点、5点だったりして、非常に少ないので、これについては今後科研の中でも調べていかなければいけない。そういったことが分かったということが重要な成果かなと思っています。ほかにございますか、御意見ありますか。

 

○亀屋委員 

また質問なのですが、今浅見先生、一番最初の表1の所で、重複除いて702物質というふうに確かおっしゃられたと思うのですけれども、ここにある数字を全部足すと720になるみたいなのです。重複が18しかないことになるのですが、やたらと少なすぎるかなと、もっと重複はたくさんあるのではないかなと。あるいはPRTR対象の中には群化合物みたいなものがあるので、そういったものを全部ダーっと、もっと462よりも実はたくさんあって。物質のカウントの仕方になってしまうのですけれども、実際どのくらいの重複除いて物質対象があるのかなと思ったのが1点。

 あと、その一番下のPRTR対象というのは、これは第一種ということで、よろしいですか。第二種は入ってないということですか。

 

○浅見委員 

第一種だけです。

 

○亀屋委員 

分かりました。

 

○浅見委員 

重複を除いた数につきましては後ほどもう1回確認して、できればこの表の中に載せていけるようにしたいと思います。

 

○松井座長 

ほかにございますか。

 

○広瀬委員 

聞きそびれたかもしれないのですが、この多分5番のPRTR対象化学物質について、仮の評価値を、どのくらいの物質につけることができたのかというのと、どのくらいの物質が検出できているのか。400物質全部に検出例があるというわけではないですよね。どの程度その物質について検出例があるのか、1例、2例しかないかもしれませんけれど、大体の感覚でいいのですが、分かりますでしょうか。

 

○浅見委員 

数として数えてなかったのですけれども、ここの2324ページに、PRTRの対象物質との比較というのがございまして、ここにあるものはデータがあったものですが、その中で評価値、これで比較ができるようにということで、評価値を作っておりますので、それ以外のものに関してはデータが必ずしも十分ではなく評価値になっておりません。特に、ここで示したものに関しては、評価をするようにという形で行っております。

 

○広瀬委員 

理解は、ここの表に載っているもの以外はデータはないという理解なのですか。

 

○浅見委員 

毒性のデータですか。

 

○広瀬委員 

両方です。

 

○浅見委員 

検出の事例に関しては、これが確かマックスだったと思うのですけれども。毒性に関しては、あるものについては表に入れています。

 

○松井座長 

ほかにございますか。それでは、本件につきましてはほかの委員からもまた何か新しい情報があれば、皆さんで共有しつつ、情報収集に努めていくということでしたいと思います。ありがとうございます。

 その他のその他として、事務局から何かございますか。

 

○鈴木室長補佐 

御議論いただき、ありがとうございます。本日の議事録ですが、後日事務局よりその案を送付させていただきますので、御確認をお願いいたします。次回第2回の水質基準逐次改正検討会は12月頃に開催を予定しています。また、改めて日程を調整させていただきます。最後に、水道水質管理官の東より再度御挨拶を申し上げます。

 

○東水道水質管理官 

本日、活発な御意見を頂きまして、ありがとうございました。資料2につきましては広瀬委員と調整させていただきまして、あと資料4につきましても浅見委員のほうで、もし修正がございましたら事務局のほうに送っていただきまして、本日の資料をホームページ上に公表したいと思います。厚生労働省のほうでも、特にニッケル化合物の件につきましては情報収集に努めたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

 

○松井座長 

それでは、これをもちまして本日の会議を終了させていただきたいと思います。御審議に御協力いただきまして、誠にありがとうございます。お疲れ様でございました。


(了)

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