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2016年2月26日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録

○日時

平成28年2月26日(金)10:00~


○場所

厚生労働省専用第22会議室


○出席者

出席委員(13名)五十音順

○新 井 洋 由、 奥 田 真 弘、 川 上 純 一、 川 崎 ナ ナ、
 菊 池   嘉、 清 田   浩、 鈴 木 邦 彦、 関 水 和 久、 
 濱 口   功、 半 田   誠、 増 井   徹、 森 田 満 樹、
◎吉 田 茂 昭
 (注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(7名)

大槻 マミ太郎、 田 島 優 子、 田 村 友 秀、 中 島 恵 美、 
前 崎 繁 文、 山 口 拓 洋、 山 本 一 彦

行政機関出席者

中 垣 英 明 (医薬・生活衛生局長)
森    和 彦 (大臣官房審議官)
山 田 雅 信 (審査管理課長)
宇 津    忍 (安全対策課長)
矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
俵 木 登美子 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

○議事

○審査管理課長 それでは、只今より「薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会」を開催させていただきます。本日はお忙しい中、御参集を頂きましてありがとうございます。まず、はじめに悲しいお知らせをしなければなりません。国立病院機構三重病院名誉院長の庵原俊昭委員におかれましては、今月19日に御逝去なさいましたので、慎んでお知らせを申し上げます。庵原委員には平成19年1月より9年余り、本部会の委員を務めていただき、数々の御指導を賜ってきたところでございます。御逝去を悼み、心からお悔やみ申し上げたいと思います。部会に先立ちまして、部会長より黙祷を捧げたいというお申し出がございましたのですが、よろしいでしょうか。それでは、庵原委員へ黙祷を捧げさせていただきたいと思います。

                                     ( 黙祷)

○審査管理課長 お直りください。それでは、本日の委員の出欠の状況でございます。大槻委員、田島委員、田村委員、中島委員、前崎委員、山口委員、山本委員より御欠席との御連絡を頂いております。また、菊池委員、増井委員が遅れておられるようでございますので、現在のところ、当部会委員数20名のうち11名の委員の御出席を頂いております。定足数に達しておりますことを御報告いたします。

 それでは吉田部会長、以後の進行をお願い申し上げます。

○吉田部会長 では、早速、本日の審議に入りたいと思います。まず事務局から配布資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての報告をお願いします。

○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しております。議事次第に記載されている資料1~22をあらかじめお送りしております。このほか資料23「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料24「専門委員リスト」、資料25「競合品目・競合企業リスト」、そして資料26「インブルビカカプセル140mg添付文書案」、そして資料15「生物学的製剤基準」の差し替えです。

 続いて、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストにつきまして御報告いたします。資料25の1ページ目を御覧ください。「ゾーフィゴ静注」ですが、本品目は、骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 2ページ目を御覧ください。「ジカディアカプセル」ですが、本品目は、クリゾチニブに抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 3ページ目を御覧ください。「タグリッソ錠」ですが、本品目は、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性のEGFR T790M変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 4ページ目を御覧ください。「イムブルビカカプセル」ですが、本品目は、再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 5ページ目を御覧ください。「アディノベイト静注用」ですが、本品目は、血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 6ページ目を御覧ください。「コバールトリイ静注用」ですが、本品目は、血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 7ページ目を御覧ください。「マラロン配合錠、マラロン小児用配合錠」ですが、本品目は、マラリアを予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 8ページ目を御覧ください。「プリマキン錠」ですが、本品目は、三日熱マラリア及び卵形マラリアを予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目は「なし」としております。

 9ページ目を御覧ください。「ヌーカラ皮下注用」ですが、本品目は、気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

10ページ目を御覧ください。「トシリズマブ」ですが、本品目は、全身性強皮症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

11ページ目を御覧ください。「ヒトalpha-Proteinase Inhibitor」ですが、本品目は、COPDを発症した重症α1-アンチトリプシン欠乏症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから競合品目は「なし」としております。

12ページ目を御覧ください。「ヒト血漿由来プロトロンビン複合体濃縮製剤」ですが、本品目は、ビタミンK拮抗薬(ワルファリン等)療法中の患者における急性重篤出血時あるいは外科手術又は侵襲的処置が求められる場面でのPT-INRの速やかな是正を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 最後に、13ページ目を御覧ください。「ニボルマブ(遺伝子組み換え)」ですが、本品目は、ホジキンリンパ腫を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。

○吉田部会長 ただいまの事務局からの説明に特段の御意見等ございますでしょうか。

 ないようですので、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の御了解をを得たものといたします。それでは、委員からの申出状況についての報告をお願いします。

○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。まず議題1「ゾーフィゴ静注」ですが、退出委員はなし、議決には参加しない委員は清田委員です。議題3「ジカディアカプセル」ですが、退出委員はなし、議決には参加しない委員は清田委員です。議題4「タグリッソ錠」ですが、退出委員はなし、議決には参加しない委員は清田委員です。議題5「イムブルビカカプセル」ですが、退出委員は新井委員、議決には参加しない委員は清田委員です。議題6「アディノベイト静注用」ですが、退出委員、議決には参加しない委員はともにありません。議題7「コバールトリイ静注用」についても、退出委員、議決には参加しない委員はともにありません。議題8「マラロン配合錠」ですが、退出委員はなし、議決には参加しない委員は清田委員です。議題9「プリマキン錠」ですが、退出委員、議決には参加しない委員はともにありません。議題10「ヌーカラ皮下注用」ですが、退出委員はなし、議決には参加しない委員は清田委員です。議題11「トシリズマブ」ですが、退出委員は新井委員、議決には参加しない委員は清田委員です。議題12「ヒトalpha-Proteinase Inhibitor」ですが、退出委員、議決には参加しない委員はともにありません。議題13「ヒト血漿由来プロトロンビン複合体濃縮製剤」ですが、退出委員、議決には参加しない委員はともにありません。最後に議題14「ニボルマブ」ですが、退出委員はなし、議決には参加しない委員は清田委員です。以上です。

○吉田部会長 ただいまの事務局の説明に特段の御意見等ありますでしょうか。よろしければ皆様に御確認いただいたものとし、議題に入りたいと思います。

 本日は審議事項15議題、報告事項6議題、その他の事項1議題となっておりますが、委員の先生方からの申し出状況を踏まえまして、審議事項議題5の次に議題11を審議し、他は議題順どおりに進めたいと考えております。

 それでは審議事項の議題1及び2に移りたいと思います。機構からの概要説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料1、ゾーフィゴ静注の製造販売承認の可否等について機構より説明いたします。本剤はラジウム223を活性本体とする放射性医薬品であり、腫瘍の骨転移部位に集積し、アルファ線を放出することで、DNAの二重鎖切断を誘発し、腫瘍の増殖を抑制すると考えられています。今般、本剤は骨転移のある前立腺癌を効能・効果として承認申請されました。本剤は平成2710月時点において、前立腺癌に係る効能・効果にて、45の国又は地域で承認されております。本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は資料24にある9名の委員です。以下は臨床試験成績を中心に、審査の概略を説明いたします。

 今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、海外第III相試験であるBC1-06試験の成績が提出されました。

 有効性については、審査報告書24ページ下から13行目以降、28ページ上から3行目以降、及び51ページ上から13行目以降を御覧ください。ドセタキセル水和物に不応又は不耐で、内臓転移がなく、症候性の骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌患者を対象とした、BC1-06試験において、対照群として設定されたプラセボ群と比較して、本剤群で主要評価項目とされた全生存期間の優越性が認められたことから、本剤の有効性は示されたと判断いたしました。

 安全性については、審議報告書30ページ上から5行目以降、及び51ページ下から20行目以降を御覧ください。本剤の使用時に特に注意すべき有害事象として、骨髄抑制及び消化管障害が認められております。これらの有害事象については、がん化学療法及び放射線治療に十分な知識・経験を持つ医師による観察や管理、本剤の休薬等の適切な対応がなされるのであれば、本剤は忍容可能と判断いたしました。ただし、日本人における検討症例は限られていることから、製造販売後には、使用成績調査の実施が必要であると判断し、申請者に指示しております。

 以上のような審査の結果、機構は「骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌」を効能・効果として、本剤を承認することは可能と判断いたしました。本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体は毒薬、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しました。薬事分科会には報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いします。

 なお、議題2、資料2として提示させていただきました本申請に伴う放射性医薬品基準の改訂案についても併せて御審議いただきますようお願いいたします。以上となります。

○吉田部会長 それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。

○菊池委員 いつも似たようなことを言っていますが、ドセタキセルに不応性又は不耐なものの臨床成績しかないところでやっていますから、それで骨転移があって内臓転移のないものというものに対しての試験しかしていないので、そこの文言が抜けていてもいいのですね。効能・効果のところで、骨転移のある去勢抵抗性の前立腺癌とだけになっていますけれども、よろしいのですか。

○医薬品医療機器総合機構 機構から回答させていただきます。効能・効果に関しては、骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌と記載させていただいておりますが、効能・効果に関連する使用上の注意の項におきまして、今、御指摘いただきました内臓転移のある前立腺癌患者に対する有効性及び安全性は確立していない旨と、ドセタキセルに不応又は不耐の旨は、添付文書の臨床成績の項に記載して、臨床成績の項を熟知した上で、本剤の有効性と安全性を十分に理解した上で適応患者の選択を行う旨を効能・効果に関連する使用上の注意の項で注意喚起をさせていただいております。

○菊池委員 それで、ほかの添付文書などとの整合性は取れているのですかね、そういう意味で。先ほどもすぐに御説明されたのであれですが、もちろんこれは専門家の人が使うから当たり前のことだと思うのですが。私はどういう順番でやるか知りませんが、ドセタキセルを先にやって、それで効かなければこれをやるという選択肢になるわけですか。それとも、いきなり効かなそうだからやってしまってもいいということになるのですか、これは。保険上の扱いは変わるかもしれませんが。

○医薬品医療機器総合機構 臨床試験はあくまでドセタキセルを行った後、効かなかった方、若しくは前立腺癌は御高齢の患者が多いですのでドセタキセルのような非常に毒性の強いお薬が臨床現場の判断で使いにくい患者の両方を対象として実施されておりますので、今、菊池先生がおっしゃった対象患者は、そのいずれに対しても本薬剤の投与が推奨できると考えております。

○吉田部会長 あと痛みの問題もありますね。骨転移を放射線で治療すると痛みがなくなるということも大きなメリットになるので、そういったケースを含めて臨床的には、そう混乱なく使えるのではないかと思います。ほかに御指摘はありますでしょうか。今のお話にも絡みますが、このBC1-06試験では内臓転移がなく、去勢抵抗性の骨転移だけの症例を対象としたので、サバイバルに差が出たと考えるのですか。それとも、何か別に期待されるような作用があるのですか。OSに差が出たことに関しては、どのような考察が出ているのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 御存じのように、前立腺癌の場合は、ほかの癌腫と違いまして、ほぼ全例で骨転移が認められて、それ以外の内臓転移がある患者というのは非常に少ない癌ですので、主な遠隔転移の部位である骨での腫瘍増殖を抑制することで、全生存期間が延びているものと推測しております。

○吉田部会長 この試験では初めから生存の差を求めてデザインされたのですか。プライマリーエンドポイドはどうなっていましたか。

○医薬品医療機器総合機構 開発としては、□□□□□□□□□□□□□を目的として開発が始まったようです。

○吉田部会長 やっているうちに、生存まで差がついていたということなのですか。

○医薬品医療機器総合機構 第II相試験のときに全生存期間が延びるような結果が得られたということで、第III相試験は全生存期間を延ばすことを期待して試験が計画されております。

○吉田部会長 という経緯だそうです。よろしいでしょうか。特に御意見もないようですので、議決に入りたいと思います。なお、清田委員におかれましては、利益相反に関する申し出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。

 御意見がないようですので承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは議題3に移ります。機構からの概要説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料3、ジカディアカプセル150mgの製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。本剤の有効成分であるセリチニブは、未分化リンパ腫キナーゼ、以下ALKと略させていただきますが、ALK阻害剤であり、既存のALK阻害剤に耐性を示した腫瘍の増殖も抑制すると考えられています。今般、本剤は、他のALK阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌を効能・効果として承認申請されました。また、本剤は平成27年5月の当部会における審議を経て、希少疾病用医薬品に指定されております。なお、本剤は平成2711月時点において、非小細胞肺癌に係る効能・効果にて、45の国又は地域で承認されております。本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は資料24にあります8名の委員です。以下、臨床試験の成績を中心に、審査の概要を説明いたします。

 以下、臨床試験成績を中心に、審査の概要を説明いたします。今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、国際共同第II相試験であるA2201試験及び海外第I相試験であるX2101試験の成績が提出されました。有効性については、審査報告書37ページ本文上から9行目以降、39ページ下から20行目以降、及び68ページ上から13行目以降を御覧ください。本剤は癌細胞の増殖の本体を標的としたALK阻害薬であること等を考慮し、クリゾチニブによる治療歴を有するALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者を対象としたA2201試験及びX2101試験における奏効率の結果から、本剤の一定の有効性は示されたと判断いたしました。

 安全性については、審査報告書40ページ下から11行目以降、及び68ページ、下から18行目以降を御覧ください。本剤の使用時に特に注意すべき有害事象として、間質性肺炎、肝機能障害、QT間隔延長、悪心・嘔吐・下痢、高血糖・糖尿病、徐脈、心膜炎、感染症及び膵炎が認められております。これらの有害事象については、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師による観察や管理、本剤の休薬等の適切な対応がなされ、かつ間質性肺炎等の重篤な有害事象に対する厳重な注意と管理・対応による安全管理がなされるのであれば、本剤は忍容可能と判断いたしました。ただし、日本人における検討症例は極めて限られていることから、製造販売後には本剤が投与された全例を対象とした使用成績調査の実施が必要であり、承認条件とすることが適切と判断しております。

 以上のような審査の結果、機構は、「クリゾチニブに抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を効能・効果として、本剤を承認することは可能と判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品に指定された新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は10年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。

○菊池委員 たまたま1題目と似ているのですが、先ほどの場合だと、ドセタキセルを入れないで、今度はクリゾチニブを入れていますよね。その辺りの考え方というか、添付文書の統一性といいますか、そういうのはどうなっているのですか。これに限りませんが。どういう決まりをもって、その効能・効果に出てくる場合と、臨床上の注意点として挙げるとか、そういう基準というのは統一されているのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答え申し上げます。本剤の場合は、第II相試験の奏効率の成績に基づき審査を行いました。そのために、今回の第II相試験の対象患者は、クリゾチニブに抵抗性又は不耐容の患者でしたので、そこを明確に効能・効果に規定することが必要と判断しました。

○菊池委員 そう言われてしまうと、先ほどのドセタキセルには何もしないのですかということになるのですが。そういうことを聞いているのですが。これについてはそういうお答えでいいかもしれませんが、では、先ほどのはなぜ入れないのですかということが、やはり、添付文書全体の統一性というのがないような気がして。あと、こだわっていますけれども、どの専門医が言っているのですかというのが常に十分な経験もあるといったら、私は十分な経験があると言えば、開業医さんでもいいのか、大きな病院でもいいのかということが、国語の問題かもしれませんけれども、すごく気になる表現なので、たまたま気付いたので、いつもながらすみませんけれども、そのように思います。

○医薬品医療機器総合機構 今の専門医の件ですが、今回は医薬品の使用条件の設定を計画しております。審査報告書の59ページ中ほどになりますが、「製造販売後のリスク最小化活動」という記載があります。こちらで今回、本邦における本薬の使用経験が限られていること、本薬剤の投与により重篤な副作用の発現が懸念されること等の理由から、医師及び施設要件の設定、処方医による患者や家族等への説明、薬局への協力依頼等が行われる予定です。

○菊池委員 いや、もっと言うと、先ほどはドセタキセルが出てこなかったのに、何で今回は出てきたのだと。これは、例えばこの場合は、ファーストラインがクリゾチニブを使うということを前提にしているわけですよね。だけど、ドセタキセル抵抗性の場合は、あれがファーストラインで必ずドセタキセルは入るというわけではないのだけれど、そういう人たちが多かったので、そういう臨床試験をやったわけですよね。だから使われ方として前立腺癌の場合はドセタキセルは必須ではないのだけれど、ALKの場合はクリゾチニブが必須になっているので、最初のファーストラインとして、だから書いたのではないのですか。

○医薬品医療機器総合機構 先ほどのゾーフィゴについては、第III相試験、いわゆる検証的試験の結果があったというところも考慮しております。ジカディアについては、クリゾチニブに抵抗性又は不耐容の患者に対して、奏効率が認められましたが、一定の有効性が得られたという第II相試験の結果にとどまりますので、当該試験の対象患者を明確に効能・効果で記載することが適切であろうという判断をしております。

○吉田部会長 一般的にそうしているということですか。

○医薬品医療機器総合機構 そのように考えております。

○吉田部会長 ということは第II相試験で、ある程度限られている情報しかないときは、かなりの条件が付くこともあるし、第III相試験で検証された場合は、余り条件が付くことはないというルールでやっているということですね。そうすると、本薬の場合45の国か地域で承認されていますが、これらは皆第II相試験で承認されているだけで、第III相試験は誰もやっていないわけですものね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○吉田部会長 そういうことで言うと、他の45の地域でも抵抗性の場合という条件付きで承認されているのですか。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘のとおりです。

○吉田部会長 ということだそうです。ほかにありますか。

○関水委員 この薬が効くということについて、私はそんなことがどうして言えるのかが分からないので伺うのですが、37ページの奏効率の結果についての御説明では、これに基づいて判定できるということでしたが、完全奏効、部分奏効がそれぞれ3と49で合わせて52だと。それで検定をしてP値が0.001以下なので、統計学的に有意の差が出たと判断したということですが、それでよろしいですか。

○医薬品医療機器総合機構 そのとおりです。

○関水委員 この完全奏効や奏効というのは、責任医師が判定するのですよね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○関水委員 これはプラセボのような、コントロールが全くなしで行われている試験だと考えてよろしいですか。

○医薬品医療機器総合機構 そのとおりです。

○関水委員 そのようなコントロールがない試験での結果から、どうしてこの薬に有効性があると言えるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 この試験では閾値奏効率というものをあらかじめ決めております。それは、従来から使われているドセタキセル又はペメトレキセドを使った臨床試験の結果から閾値を25%と定めまして、本薬剤の奏効率がそれを上回っているということから本薬剤の一定の有効性が示されたと判断いたしました。

 もう一つ加えますと、40ページの上に、X2101試験の結果を示しておりますが、こちらの奏効率が56%というものが得られています。医師の判定と独立した中央画像判定機関での判定と、両方ともの判定がありますので、それらを勘案しまして一定の有効性が得られたと考えました。

○関水委員 私が伺っているのは、薬が効いたという証拠はどこにもないという私の意見に対して、それに対する反論があるのですか、ということです。この薬が効いたという証拠はどこにあるのですか。医師が、その患者さんは治っていると言ったわけですが、どうしてその薬が効いて、治ったという証拠になるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 まず、この薬剤は先生御存じのとおり、ALK阻害剤ということで、腫瘍細胞の増殖の本体をターゲットとするということから。

○関水委員 いや、メカニズムなどは議論しても時間の無駄です。効くという証拠がどこにあるかと。それで、結局、医師が効いたと判定し、それに基づいて効いたと判定した、と言うのなら分かるのですけれども、今の御説明ではそれとは別に客観的な証拠があるのだということをおっしゃりたいようですが、そのような証拠は見当たらない、と私は思います。

 それに加えて、t検定をしてP値が0.001以下であったという言いかたは、不適切だと思います。奏効があったという総数が52であり、それが統計学的に有意の差があるなどというのは統計学的取り扱いをしているとは言えません。それにもかかわらず、統計学的取り扱いをして、P値が0.001以下であると言明すれば、それを読んだ一般の人は、これは大変効く薬であることが科学的に証明されている、と誤解してしまうでしょう。

○吉田部会長 思ってしまう。

○関水委員 思いますよね。P値が0.001以下なのですから。こういうのは間違った誤解を与える表記だと思います。

○医薬品医療機器総合機構 今回、延命効果が示す結果は得られていませんが、奏効については、抗悪性腫瘍剤の一般的な評価指標としては受け入れられているものかと思います。今回、一定の奏効率が出たということ、

 さらに、先ほど申し上げましたように、この薬剤がALK阻害剤、いわゆるdriver oncogeneと言われるような、腫瘍細胞の増殖の本体を抑制する薬剤だということも加味しまして、有効性が検証されたというつもりはないのですが、現時点のデータであっても一定の有効性は示されているということろで、承認することは可能だと考えております。

○関水委員 しつこく言って申し訳ないのですが、メカニズムがこういうことで新しいから、有効性が示されたという主張は間違っています。だから、それは余り言われないほうがいいと思います。私は、奏効性があると医師が判定したから承認しようという態度それ自体に問題があると言っているわけではないことをご理解ください。統計学的有意の差があったなどということを言えば、非常に誤解を導くと申し上げているのです。

○吉田部会長 第II相試験では、基本的にがんが自然に小さくなることはないということが前提にあって、小さくなったのは何か薬を投与したためだろうと考える訳です。そのときに小さくなり方の程度が部分奏効だったり完全奏効だったりするわけですよね。そういった意味で、第III相試験でどういう効き方をしてくるか、まだ第II相の段階では分からないのですよ。従って、定められた約束事の中で有効性が強く示唆されているという言い分は正しいのですが、いきなり奏効率の基準を25%に持ってきて、得られた奏効率との差があたかも大きいように見せかけるのは問題ではないか、というような御指摘だと思います。

 確かに、この試験では想定された奏効率よりも高い奏効率が得られることはわかりますが、25%を基準に取って、その有意差をひたすら強調するというのは意味がなく、基本的には得られた奏効率の95%信頼区間の上限と下限を示しておけば良いだけの話だと思います。

 そこで問題なのですが、今御指摘があったように、実際には有効性については、未だ半分だけ解明した状態ですよね。現在、第III相試験をやっておられるとのことですが、これでもし生存期間に差が出なかったらどうするかということも一応考えておく必要はあると思うのですが、いかがですか。

○医薬品医療機器総合機構 第III相試験の結果については、□□の第クォーター頃から第クォーターぐらいに報告される予定です。その結果が得られた後には、適切に情報提供するなどの対応をしたいと思っております。

○吉田部会長 もし差がなかったら、また承認に対して考え直すということもあり得るのですね。現在、45の国と地域が認めているようですが、世界中でもう一回考え直すということになるのでしょうね。腫瘍は小さくなるけれども、生存期間は余り伸びなかったという経験は少なからずありますものね。

○医薬品医療機器総合機構 おっしゃるとおり、その第III相試験の結果をよく精査した上で、適切な対応を取らせていただきたいと思います。

○吉田部会長 そうですね。ということで、まだ全て万々歳で承認という状況ではないのですが、本薬の場合、やはり対象疾患の数がものすごく限られていて、中々大きな試験ができない、従って、第II相で判断せざるを得ない、ということが背景にあるという状況もご理解頂ければと思います。

 ほかにありますか。ないようであれば議決に入りたいと思います。なお、清田委員におかれましては利益相反に関する申し出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 議題4に移ります。議題4について機構からの概要説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題4、資料4、医薬品タグリッソ錠40mg他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。本剤の有効成分であるオシメルチニブメシル酸塩は、上皮増殖因子受容体(以下、EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤であり、既存のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に耐性となるEGFR T790M変異陽性の腫瘍の増殖を抑制すると考えられています。今般、本剤はEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性のEGFR T790M変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌を効能・効果として承認申請されました。本剤は、平成28年2月時点において、非小細胞肺癌に係る効能・効果にて、米国及びEUで承認されています。本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は資料24にあります8名の委員です。以下、臨床試験成績を中心に審査の概要を説明いたします。

 今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、国際共同試験であるAURA試験及びAURA2試験の成績が提出されました。

 有効性については、審査報告書39ページ下から17行目以降及び68ページ上から13行目以降を御覧ください。EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する耐性獲得機序としてEGFR T790M変異が報告されていること等を考慮し、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤による治療後に病勢進行したEGFR T790M変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者を対象としたAURA試験の第II相部分及びAURA2試験における奏効率の結果から本剤の一定の有効性は示されたと判断いたしました。

 安全性については、審査報告書41ページ上から1行目以降及び68ページ下から15行目以降を御覧ください。本剤の使用時に特に注意すべき有害事象として、間質性肺疾患様事象、QT間隔延長、血液毒性、肝障害、QT間隔延長以外の心臓障害、血栓塞栓症及び感染症が認められております。これらの有害事象については、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師による観察や管理がなされ、かつ、間質性肺疾患等の重篤な有害事象に対する厳重な注意と管理・対応による安全管理がなされるのであれば、本剤は忍容可能と判断しました。ただし、日本人における検討症例は極めて限られていることから、製造販売後には、本剤が投与された全例を対象とした使用成績調査の実施が必要であり、承認条件とすることが適切であると判断しました。

 以上のような審査の結果、機構は「EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性のEGFR T790M変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌」を効能・効果として本剤を承認することは可能と判断しました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しました。薬事分科会には報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いします。

○吉田部会長 それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。

○菊池委員 やはりこれは、先ほどから続けて嫌われてしまいますが、今度もまた定義がかなり付いていますよね。だから、その辺りが、添付文書として統一されているのかというのと、これは今まだ第III相試験は動いているのですね。そういう考え方でいけば、先ほど部会長が助け舟を出したような考え方で、機構全体は考えているということになるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 先ほどもジカディアのときに説明したとおり、機構としましては、やはり第II相試験のような限られた試験成績に基づいて承認していく抗悪性腫瘍剤については、有効性が示された患者等に限定して効能・効果を付けていくことが適切ではないかと考えています。また、先ほど部会長から御説明いただいたとおり、第III相試験の結果が出た場合にはその内容を精査して、適切な対応を取る予定です。

○吉田部会長 多分このような話は延々と続くと思うのですが、ある分子標的薬が出来て、それに対して抵抗性が出てきて、それを叩くための薬がまた出てきてということになります。そうすると、だんだん抵抗性の患者さんは数が少ないですから、対象がどんどん細まってきますよね。そして、結局最終的にはもう、条件付きの条件付きの、みたいな話にせざるを得なくなってくるのかもしれないと思ったりするのです。そうなると、市場の規模が小さくなりすぎて商業ベースにも乗らなくなる。ということで、例えば、本薬をファーストラインに持っていくような試験はやられたりするのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 本剤については現在、既存のEGFR-TKI(チロシンキナーゼ阻害剤)と比較する臨床試験が実施中であり、未治療の患者に対する開発がなされています。

○吉田部会長 それをやればの話ですね。そういった意味では広く使える可能性はあるということですね。ところで、本薬のILDは普通の今までの分子標的薬、特にチロシンキナーゼ阻害剤と比べて、何か厳しそうに見えるのですが、大丈夫なのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構としましても、本剤の間質性肺疾患については注意が必要であると考えています。一般に、間質性肺疾患については、既存のEGFR-TKI投与時に日本人で発現率が高いことが既に知られており、また、本剤に関しては日本人の情報としては80例と限られた情報しか得られていない状況ではあるものの、既存の薬剤と比較して発現率が高いのではないか、発現時期が既存のEGFR-TKIと異なるのではないかという懸念もありますので、現在得られている情報については資材等も用いまして、注意喚起させていただきます。また、タルセバ錠等と同様に、注意喚起カードを用いた安全管理対策も行うことを考えています。

○吉田部会長 何かQTの延長もかなりの頻度で出てきそうだし、結構、毒性が気になります。だから、市販後の管理を特にしっかりお願いしたいということで、注文を。

○医薬品医療機器総合機構 本剤については、製造販売後調査を全例調査とすることを求める予定です。その中で間質性肺疾患のリスク因子についても検討できるように目標症例数は3,000例とさせていただく予定です。

○吉田部会長 よろしくお願いします。ほかにありますか。

 ないようですので議決に入ります。なお、清田委員におかれましては利益相反に関する申し出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 議題5に移ります。新井委員におかれましては利益相反に関する申し出に基づきまして、議題5及び、次の議題11の審議の間、別室で御待機いただくことといたします。

                                 ( 新井委員退室)

○吉田部会長 議題5について、機構からの概要説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題5、資料5、医薬品イムブルビカカプセル140mgの製造販売承認の可否等について機構より御説明いたします。本剤の有効成分であるイブルチニブは、B細胞受容体及びケモカイン受容体の下流のシグナル伝達分子であるブルトン型チロシンキナーゼ活性を阻害することにより、B細胞性腫瘍の増殖などを抑制すると考えられています。今般、本剤は、慢性リンパ性白血病及び小リンパ球性リンパ腫(以下、それぞれCLL及びSLLと略します)、再発又は難治性のCLL及びSLLに係る効能・効果にて承認申請されました。また、本剤は平成26年5月の当部会における審議を経て、希少疾病用医薬品に指定されております。なお、本剤は平成28年1月時点において、CLLに係る効能・効果にて、66の国又は地域で承認されております。

 まず、本剤の審査の経緯などについて御説明させていただきます。本剤の審査報告書は、1ページ冒頭に示しますように、平成27年8月18日付けで作成を完了しましたが、平成27年8月20日に申請者より、本剤の肝機能障害に係る追加情報が得られた旨の報告があったことから、当該情報を含めて、本剤の臨床的有用性を評価する必要があると判断し、平成27年8月の当部会において御説明しましたとおり、本剤の審議はその際は見送りとさせていただきました。その後、追加で実施した評価については、お手元の審査報告書に続いてつづっております審査報告書()に記載しております。本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は資料24にあります9名の委員です。以下、臨床試験成績を中心に審査の概要を御説明いたします。今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、海外第III相試験成績が提出されました。

 有効性については、審査報告書46ページ上から8行目以降及び73ページ上から13行目以降を御覧ください。再発又は難治性のCLL及びSLL患者を対象とした海外第III相試験において対照群として設定されたオファツムマブ(遺伝子組換え)群と比較して、本剤群で主要評価項目とされた無増悪生存期間の優越性が認められたことなどから、本剤の有効性は示されたと判断いたしました。

 安全性については、審査報告書()の3ページ下から18行目以降を御覧ください。本剤の使用時に特に注意すべき有害事象として、出血、骨髄抑制、感染症、不整脈、二次性悪性腫瘍、眼障害、白血球症、腫瘍崩壊症候群、過敏症、スティーブンス・ジョンソン症候群に加え、本剤の審査報告書を作成した後の平成27年8月20日以降に追加で得られた情報から、肝不全、肝機能障害、間質性肺疾患が認められています。これらの有害事象については、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識と経験を有する医師による観察や管理、本剤の休薬などの適切な対応がなされるのであれば、本剤を忍容可能と判断いたしました。ただし、日本人における検討症例は極めて限られていることから、製造販売後には本剤が投与された全例を対象とした使用成績調査の実施が必要であり、承認条件とすることが適切であると判断しております。

 また、本年平成28年2月10日に、申請者より本剤の安全性に関して再び追加情報が得られた旨の報告がありましたので御説明いたします。追加の情報は、本剤のばく露量の上昇とともに、出血事象の発現率が高まるとの解析結果です。審査報告書38ページ上から2行目以降及び76ページ下から18行目以降に示しますように、肝機能障害を有する患者に対する投与、また肝代謝酵素シトクロムP450の3A4を阻害する薬剤との併用などにより、本剤のばく露量が1020数倍上昇することが確認されております。

 また、審査報告書()の8ページ下から3行目以降に示しますように、本剤の投与による死亡例を含む出血が認められていることから、「添付文書等を用いた出血に対する注意喚起を含む安全対策を講じること」としております。

 これらの審査結果、及び本剤のばく露量と出血リスクが関連するとの本解析結果から、当日配布とさせていただいておりますが、資料26のとおり、本剤の添付文書又は資材を用いて、本剤のばく露量の上昇に伴い出血のリスクが高まることについて、医療現場に適切に注意喚起する必要があると考えております。なお、本剤の使用に際して、必要に応じて、本剤の血中濃度の測定が可能となるよう、申請者は「医療現場から要請があれば、本剤の血中濃度測定を実施する」と説明をしております。

 以上のような審査の結果、本剤の臨床的有用性は認められると考えることから、機構は、「再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)」を効能・効果として本剤を承認することは可能と判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品に指定された新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は10年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。

○半田委員 安全性に関して、出血に関して本剤は特にそのリスクが高いということなのですが、審査報告書1の52ページの一番下に、本剤では血小板減少症も確かに起こすと。ただし、血小板が減少していなくても出血の症状があるということで、実際のデータを示されているのですが、このターゲットのBTKというのは、造血細胞全般にあるということで、例えば、少し細かくなるのですが、血小板にもBTKはあるのです。血小板が傷口に付くときの接着因子であるコラーゲンなどに付くわけですが、その接着因子受容体の下流にBTKがありまして、例えばブルトン型のX連鎖無ガンマグロブリン血症の患者においても血小板機能が低下しているのです。ですから、その辺りとの関連というのが、どのぐらいまで基礎的な、例えばvitroの試験等々で解明されているのかどうかというところをお聞きしたいと思います。

○医薬品医療機器総合機構 本剤における出血の機序というのは、今のところ明確になっておりませんが、今、半田委員から御指摘がありましたように、本剤がBTKを阻害することによってPLCの活性を抑制し、その下流に位置する、コラーゲン受容体を介した血小板凝集や第9因子の接着を阻害するといったことは公表論文にて報告されており、そういった知見に関しては資材等で情報提供をする必要があるだろうと考えております。適正使用ガイドにおいて当該論文を引用することを含め、適切に注意喚起をするよう要請してまいりたいと考えております。

○吉田部会長 それでいいですか。

○半田委員 こういう健常の細胞、あるいはいろいろな細胞種にかなりユビキタスにあるような、こういうシグナル分子に対する治療薬が最近は多いですよね。それで、ちょっと拝見したところでは、vitroの薬効試験というところで、腫瘍細胞等々、そのターゲットとなる、例えばこの場合はB細胞系の腫瘍の細胞でvitroの試験をやられているのですが、やはりそれ以外の、その分子があるようなほかの重要な細胞種でのvitro試験も、例えば報告書の中に入っていないことが多いと思うのです。したがって、どうしても忍容性という意味では問題ないのですが、やはり副作用がいろいろなところで出てくるというところもあるので、この報告書の先ほどの肺がんの分子標的薬にしてもそうなのですが、やはりユビキタスにあるようなものなどに関しては、vitroの薬効試験というか薬事試験等々も、もう少しほかの細胞種も一緒に報告書の中に入れていただくといいのではないかと個人的に思っているのです。

○医薬品医療機器総合機構 頂きました御意見は全くごもっともで、開発の中で、安全性の部分を含めた懸念をきっかけにして、いろいろな細胞で検討するというのは今後の課題だろうと思います。今頂きましたコメントは申請者にもしっかりと伝えさせていただきたいと考えております。

○吉田部会長 そうですね。例えばターゲットが一つだと思っているような分子標的薬にも、実は隠れたターゲットがあったりする場合もありますし、今やマルチターゲットなどという分子標的薬も開発されているわけですから、やはりvitroのスクリーニングの在り方はすごく大事だと思います。そういった意味で、分子標的に対するアプローチのルール、たとえば、グローバルルールというか、世界標準というようなものはないのですか。まあ、それがないから、今半田先生が御指摘になったのではないかとも思うのですが、どうなのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 明確なルールはないようには思います。

○審査センター長 この件に関しては一つだけ補足コメントさせていただきたいのです。私どもでは最初に治験に入るときに、必ず提出される初回治験届けについていわゆる30日調査を行ないます。そのときの資料は通常は非臨床データしかないのです。そこで、機構の中で必ずやってくださいとしていることは、ターゲットが分かっている薬の場合は、そのターゲットが正常組織のどこに分布しているのか、あるいはユビキタスに存在しているのかを調べることです。そういった遺伝子発現データは、今や大抵の場合はアベイラブルですので、仮に提出された資料になくても、それは我々のほうで調査ができます。

 もう一つは、その薬がどこに分布するのかを調べることです。これはヒトでは分からないわけですが、動物実験レベルでどういった臓器に分布するのかは調べられます。ターゲットが正常組織のどこに発現しているか。それから、その組織に薬が分布するのか。この二つから、少なくともターゲットが正常組織のどこかにある場合に、そこがダメージされて何事か起こる可能性はあるので、その懸念についてはチェックするというふうにやっています。この部分だけはルーティンに審査をしているとお考えいただいて良いと思います。

○吉田部会長 よろしいでしょうか。ほかに御意見はありますか。

 結果的には、去年の8月に申請する予定だったのが、そこで海外で有害事象が出てストップがかかって、出血に関していろいろなことが分かってきて、それで、今回申請し直したのだけれども、更にAUCとの関係がその後に分かったということですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○吉田部会長 ということは、後出しジャンケンで、だんだん安全性が担保されていくみたいな変な形になっているのですね。要するに40何か国だかでは既に承認されていて、ということですものね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○吉田部会長 日本だけが遅れていたのだけれども、その遅れの部分は、結局有害事象の集積に使われて、結果としては、より安全な使い方が定まってから承認するということになりましたという解釈でいいのですよね。

○医薬品医療機器総合機構 そのとおりです。

○吉田部会長 何か会社がサボッていたなどということではないのですよね。

○医薬品医療機器総合機構 そういうことではないでしょうし、企業の立場に立つわけではないのですが、期待も大きい薬剤ということもありまして、開発が活発であり、いろいろなことが分かってくるという状況もあるのではないかと思います。

○吉田部会長 そういうことで御了解いただければと思います。ほかにありますか。

 ないようですので議決に入ります。なお、清田委員におかれましては利益相反に関する申し出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 議題11に移ります。議題11について事務局からの概要説明をお願いします。

○事務局 議題11、資料11、トシリズマブを希少疾病用医薬品として指定することの可否について事務局より御説明いたします。まず、希少疾病用医薬品ですが、三つの要件があり、まず1.として対象患者数が5万人未満であること、又は、指定難病であること。2.として、医療上の必要性が高いこと。3.として、開発の可能性が高いこと。この三つの要件を満たす必要があり、この三つの要件に即して御説明いたします。

 資料11の総合機構による事前評価報告書というタグをおめくりください。報告書1ページ目の中ほどにありますとおり、予定される効能・効果は、全身性強皮症、申請者は中外製薬株式会社です。まず一つ目の対象患者数ですが、全身性強皮症は指定難病ですので、一つ目の要件は満たしているものと考えております。

 二つ目の医療上の必要性ですが、2段落目の上から1行目にありますとおり、全身性強皮症は、皮膚や内臓諸臓器の線維化、末梢循環器障害や抗核抗体陽性を特徴とする結合組織病です。そして、2行ほど下に、初期症状は手足の末端や顔面の皮膚の硬化あり、皮膚硬化が全身に拡大するのに伴い、心臓や肺等の臓器も線維化し、臓器の機能障害に至ります。2ページ目の1段落目ですが、本邦においては、強皮症の効能・効果でシクロフォスファミドなどが承認されていますが、4行目にあるとおり、エビデンスは限定的で、悪性腫瘍の誘発などの安全性の懸念もありますので、投与期間は1年に制限されているなど、この1段落目の一番最後の文章にあるとおり、全身性強皮症に対する新たな治療法が求められているというところです。

 3段落目の「トシリズマブ」という段落ですが、トシリズマブは、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体であり、IL-6を阻害することで全身性強皮症の症状を改善することが期待されます。同じ段落の3行目、海外の臨床試験の結果ですが、同じ段落の下から4行目に記載があります。本剤の投与により、皮膚硬化のみならず、肺機能等も改善する傾向が認められました。したがって医療上の必要性も高いと考えられております。

 最後に三つ目の開発の可能性ですが、上から3行目ですが、現在、日本を含む国際共同第III相試験が実施中ですので、本剤の開発の可能性は高いと考えております。以上三つの要件を満たしますので、希少疾病用医薬品として指定して差し支えないのではないかと考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いいたします。指定難病で、頻度が少ない、新規のメカニズムを持った治療薬であるということと、臨床試験も用意されているということで3条件をクリアしていると思われますが、よろしいでしょうか。

 御意見もないようですので、議決に入ります。なお、清田委員におかれましては利益相反に関する申し出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について指定を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。別室で御待機されている新井委員をお呼びください。

                                 ( 新井委員入室)

○吉田部会長 議題6に移ります。議題6について機構からの概要説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題6、資料6、医薬品アディノベイト静注用250他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。本剤は、本邦で既に承認されている遺伝子組換え血液凝固第VIII因子製剤であるアドベイト静注用の有効成分にポリエチレングリコールを結合させたルリオクトコグ アルファ ペゴル(遺伝子組換え)を有効成分とする遺伝子組換え血液凝固第VIII因子製剤です。本剤は、ポリエチレングリコールを結合させることで、血漿中消失半減期を既承認のアドベイト静注用よりも延長させることを目的に開発されたものです。海外では、本剤は米国、スイス及びカナダで申請され、現時点では米国のみ承認されています。本剤の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料24にお示した6名の方々です。審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。

 有効性については、審査報告書23ページ、表4-6を御覧ください。臨床試験では、主要評価項目として年間出血回数である「ABR」が検討されました。A群では、出血の予防を目的に本剤が定期的に投与される一方、B群では、止血を目的に出血時にのみ使用されました。その結果、B群では、ABRは一人当たり年間40.8回であったのに対し、A群では4.7回と低く、本剤の定期的な投与による出血回数の低減効果が期待できると判断いたしました。また、審査報告書28ページ、表4-11に示すように、本剤の初回投与に対する反応が「Excellent」又は「Good」と判定された出血エピソードの割合は、全集団で96.1%であり、出血時の投与における止血効果が期待できると判断いたしました。

 安全性は、審査報告書2829ページに記載しておりますように、提出された資料から本剤の安全性上の懸念はなく、忍容可能と判断いたしました。

 以上の審査の結果、機構は、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であり、再審査期間は8年、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品に該当すると判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。御説明は以上です。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いいたします。

○川崎委員 承認申請書7ページの下に、「遊離第VIII因子サブユニット」というのがあります。次のページにその規格が書かれてあり、その量を求めるとき%であるとなっています。何が何に対して%であるのかが明確ではないと思います。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。こちらはクロマトグラフィーで、PEG化していない第VIII因子と、PEG化している第VIII因子を分離しまして、PEG化されていない第VIII因子の合計の割合をこのように設定しています。

○川崎委員 では、PEG化されていないものが%も残っているということでよろしいのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 はい、そのとおりです。具体的には、申請書の別紙の6ページの図6にクロマトグラムが示されているのですが、赤色の部分が遊離第VIII因子、つまりPEG化されていない第VIII因子です。

○川崎委員 分かりました、ありがとうございます。

○吉田部会長 ほかにありますでしょうか。

○新井部会長代理 関連した質問ですけれども、リジン残基(Lys残基)にポリエチレングリコールが付いているということで、それを2、3個にコントロールするためには、きっと恐らく全部のタンパクがポリエチレングリコール化されるような条件だと無理があるのだろうなというので、そこに残存してきたのが残るというのは分かるのですが、2ページ目に書いてあるポリエチレングリコール化部位が数十個も書いてあるのですが、これはリジン残基を全部ただ上げただけで、実際にポリエチレングリコール化されていたのか、要するにこんなにたくさんあって、その中のどこか2個についてると、そんなにすごくランダムな製剤なのか。それとも大体付くところはこういう条件でやるとこの辺が多いとか、そういうことがもう既に。要するに、この製剤の均一性はどのように、もう個数だけで担保されているのかという辺りをちょっと聞きたいのですけれども。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。審査報告書2ページに「主なPEG化部位」として記載しているリジン残基につきましては、ペプチドマップの結果、PEG化される可能性があることが確認された部位を全部挙げています。御指摘のとおり、本剤は1分子に平均して2、3個のポリエチレングリコールが付くように品質管理されていますが、主にここで挙げている部位のどこに付いているかというところまでの解析や管理は行われていません。

○新井部会長代理 通常はそういう設定をするとき大体、付くサイトは決まるのではないかなと、大雑把には決まると思うのですが、そういうのは全然調べられてもいないのですか。

○医薬品医療機器総合機構 検討はされています。しかし、この第VIII因子は非常に大きなタンパク質で、PEGの結合部位も複雑であり、クロマトグラフィー等で分離しようとしても、なかなかPEG結合部位によって分離することができないという技術的な問題があり、こういう状況になっています。

○新井部会長代理 分かりました。

○半田委員 少し興味がありましてお聞きしたいのですが。PEG化したいろいろな製剤があると思うのですが、いわゆるPEGに対する抗体ができてきて、基本的には段々と血中濃度が上がらなくなってくるというABC現象があると思います。例えばこの製剤に関してその辺に関しては特に報告はないのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 はい、現在までの臨床試験のデータでは、薬物動態や活性などに対して影響するような、PEGに対する抗体は発生していませんが、製造販売後の調査においても、インヒビターと呼んでいますけれども、抗体の発生は調査をする予定になっています。

○吉田部会長 奥田先生が先に手を挙げられたのでちょっとお待ちください。どうぞ。

○奥田委員 この薬の位置付けについて、どう考えておられるか教えていただきたいのですが、こういうPEG化するということで、製剤的には持続化を狙った開発意図だと思いますけれども、実際にそのPK、使用半減期の延長は1.4倍程度と。その中で、臨床効果を検討すると、既存の第VIII因子製剤と同様の臨床的位置付けのものだということを判断したと、機構の意見として書かれていますけれども、そうしたときに、こういう薬が添付文書上も、特にこういう状況で使用するという何か限られた書き方もされていないですし、今後、薬価は別の話になるとは思うのですが、こういう加工されたもので、もし高い薬価が付いてくるということになったときに、この薬の臨床的な利用性がどういうところにあるのかというのが少し見えにくいと思いましたので教えていただけたらと思いました。

○医薬品医療機器総合機構 本剤の位置付け、メリットは、半減期が延長したことにより、定期的な投与を行う際の投与回数の減少が見込めるという点です。既存のPEGの付いていない通常の第VIII因子では、週に3回程度の投与が必要になるのですが、本剤では週2回で済みます。第VIII因子製剤は静脈内投与で、血友病の患者さんが自己注射されていますので、そういった注射の負担が大きいという方であれば本剤のような半減期の延長した薬剤を使っていかれるのではないかと考えています。まだ現時点では半減期が延長した製剤の経験が臨床現場でも少ないことから、特に明確な使い分けは学会やガイドライン等でも示されておらず、患者さんのライフスタイルや好みに応じて投与回数が少ないほうがいいのか、既存のもので問題がないのかというところで選択されていくのだろうと思っています。

○吉田部会長 第VIII因子欠乏性の血友病患者数が、かなり限られているのにきわめて多くの薬が開発されてきて、一体どう使い分けるのだろうという疑問は確かにあって、PEG剤が承認されたら今までの静注はなしにするのかとか、何か整理されればいいと思うけれども、そういう気配もないですね。次の議題も第VIII因子製剤ですし、このままどんどん薬を認めていっていいのだろうか。市場が淘汰すると言えば淘汰するのかもしれないですけれども、どういう整理をしたらいいのかなと。そういう御質問ですよね。その辺は我々が関与すべき領域ではないのでしょうが、どうなのですか。我々としては出された資料から有効性と安全性が確認されればどんどん承認するわけですが、例えば、実態把握のために資料を集めましょうと言っても、お互いに薬がかみ合ってしまい、既治療例の情報はどんどん集まるかもしれないけれど初回治療例についてはばらけてしまって、まとまった情報が集まらなくなってくるということもあり得るかと思うのです。何か整理ができるのかできないのか、その辺を少し教えてください。

○医薬品医療機器総合機構 審査としましては、有効性が確認できていれば、承認しても差し支えないという判断をしておりますけれども、御指摘のように、類似の薬剤がたくさん出てきています。位置付けについて確認する試験ができればいいのですが、この領域は患者さんの数も少なく、既存の医薬品との位置関係を確認するような試験はなかなかできないというのがもどかしいというのが、正直なところです。学会からガイドライン等が出されていますけれども、やはり今のところ使い分け等は明確でないので、薬剤の選択は個別毎に考えていくという状況かと思います。

○吉田部会長 分かりました。半田先生、専門家として何か。

○半田委員 今の点についてコメントです。非常に限られた医療施設で、非常に限られた専門医が、かなりの患者さんを診ているという状況で、あと患者さんの団体が非常にしっかりしているのですね。これは世界的な情報というのですか、そういう新薬の情報も全て持っていて、それで専門医との間の連携もできていると思われます。今おっしゃったように、血栓止血学会等々のガイドラインもきちんと整備されているので、その中である程度、医療の自律的な適用使用の推進への試みというのが、これから我が国でもどんどんと確立されていくと思います。

 逆に言うと、今のところは乱用とかそういう懸念はないかと。血友病の場合は関節症が出ますので、やはり早期から定期的に注射をして、むしろ予防のほうに今は方向性がいっているということもあるので、そういう意味では今は明らかな危惧するような点はないのではないかと思います。

○吉田部会長 例えば、現在ほとんど使われなくなってしまった適応薬とかそういったものはないのですか。

○半田委員 ないですね。

○吉田部会長 万遍なく使われているということですか。

○半田委員 はい、そうです。

○吉田部会長 はい、分かりました。

○関水委員 新井委員の御指摘の点について追加させていただきたいのですが、7ページの構造の所の記載が、御回答と矛盾していると思うので伺うのですが、PEG化の位置は技術的な問題があり、まだ決まっていないと理解するべきだと思われます。しかしながら、ご回答では、ペプチド断片について、N末端アミノ酸配列分析及び質量分析が行われてPEG化部位が確認されたと。このことです。それは、構造がまだ決まっていないということと矛盾しているように思われるのですが。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。先ほどの説明ではちょっと誤解があったかもしれませんので、補足説明させていただきます。PEG化されている部位は、ペプチドマップ等で、こことこことここに付いているということはデータを見て確認していますが、その量的な問題は、どの位置に何%付いているというところまでは技術的な問題で、クロマトグラフィーで分離できないため、まだ分からないということです。

○関水委員 重ねて伺いますが、ペプチドマップでPEG化してあるかどうかを、どうして判定できるのですか。ペプチドマップのパターンが違うからといって、それがPEGが入っているという証拠にはならないと思います。きちんとPEGが入っていることを証明する実験を実際にやったというように誤解されるような表記は問題だと私は思います。きちんとした分析をやっていないのであれば、やってないと書けばよいのです。提出された文書を拝見すると、厳密なPEGの導入部に関する分析が行われているように受け取られます。どの部位がPEG化しているかは質量分析をすればすぐに分かることです。この文書を見れば、当然そういうことをやっているのだろうと推測されるのですが、実際にはやっていないということですから、問題であると私は思います。

○医薬品医療機器総合機構 先ほどペプチドマップと申し上げたのは、質量分析も含めたペプチドマップです。

○関水委員 ペプチドマップと質量分析は違います。それでは実際には、質量分析でアミノ酸配列の決定によって、具体的にどの部分がPEG化されているということを分析的に確証されているというのですね。

○医薬品医療機器総合機構 質量分析で確認しています。

○関水委員 それでは、どうして新井委員の質問に対する回答に対して、どこにPEGが入っているかは分からない、と答えられたのですか。そこが矛盾していると思うのです。さらに言わせていただくと、医薬品の効能効果については構造がしっかり分かっている、効果がそれによっていることを証明する必要があります。本件の場合は、PEG化したことによって効果に関する結果が得られているという証明が必要です。そのために基礎となるのは構造です。この製剤については、効能効果を説明する構造はよく分かっていないのですか、それとも分かっているのですか。

○医薬品医療機器総合機構 構造として、アミノ酸の一次配列は決まっています。

○関水委員 そういうことを聞いているのではなくて、絶対的な化学物質としての構造が決まっているのかどうかです。片方の説明によれば、そういうことはやったのだと、決めたのだと言って、片方では、いや、どこに入っているか分かりませんというのは、これは見掛け上、矛盾しているので、どちらが正しいかと伺っているのです。

○医薬品医療機器総合機構 構造が決まっているというのは、製剤として単一のきれいな分子になっているかと、そういった御指摘ということですか。

○関水委員 そうです。

○医薬品医療機器総合機構 そのお答えは、製剤としては単一のきれいなものではなくて、いろいろな部位がPEG化されたものの混合物なので、バラツキがあるものが有効成分になっています。

○関水委員 そうすると、質量分析とかペプチドマップをやったというのはPEGが入っている断片が全体の何%かよく分からないけれども検出されたと、そういう意味ですね。もしそうであれば、7ページの書き方は誤解を招くと思うのです。

○医薬品医療機器総合機構 こちらの審査報告書の7ページでの表現についてですね。

○関水委員 この製剤は均一なものではなくて、少なくとも一部がPEG化されていることは証明されているけれども、決して均一なものではないと、そのように書いたらいいのではないですか。

○吉田部会長 これは日本語の問題かもしれませんね。「PEG化部位が確認された」と書くと、PEG化している部位が全て確定されたと取れないこともない。しかし、これはPEG化している事実が確認されたという意味なのでしょう。

○医薬品医療機器総合機構 はい、そうです。構造というのは、いろいろな部位がPEG化されたものの混合物であるというのがわかりやすい表現だと思いますので、一つの単一のものではないということが明確になるように、表現を考えさせていただきます。

○吉田部会長 ここでは、どこかからPEG化していることが分かったという、そういう書き方なので、何か構造上のどこの部位にどのように入っているというようなイメージになって、配列というか、そういうところまで確認されたというように読めてしまうから、今みたいな質問になってしまう。

○医薬品医療機器総合機構 はい、そのようです。

○吉田部会長 よろしいでしょうか。ほかにありますか。ないようですので、議決に入りたいと思います。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 続きまして議題7に移ります。機構からの概要を説明してください。

○医薬品医療機器総合機構 議題7、資料7、医薬品コバールトリイ静注用250他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。本剤はオクトコグ ベータ(遺伝子組換え)を有効成分とする遺伝子組換え血液凝固第VIII因子製剤です。海外では本剤は米国、欧州、スイス、カナダ及びオーストラリアで承認申請され、現時点では欧州及びカナダで承認されています。本剤の専門協議に御参加いただいた専門委員は資料24にお示した7名の方々です。審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。

 有効性については、審査報告書33ページ、表4-9を御覧ください。臨床試験では、主要評価項目として年間出血回数が検討されました。出血時投与群では、止血を目的とした出血時の投与のみが行われ、定期的投与群では、出血時の投与に加え、出血の予防を目的とした定期的な投与が行われました。その結果、全集団における出血時投与群では、年間出血回数は1人当たり年間57.69回であったのに対し、定期的投与群では4.94回と低く、本剤の定期的な投与による出血回数の低減効果が期待できると判断いたしました。また、1回又は2回の投与により止血に至った出血の割合は95.4%であり、出血時の投与における止血効果が期待できると判断いたしました。

 安全性は、審査報告書3335ページに記載しておりますが、提出された資料から、本剤の安全性上の懸念はなく、忍容可能と判断いたしました。

 以上の審査の結果、機構は本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であり、再審査期間は8年、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品に該当すると判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いいたします。特によろしいでしょうか。前の議題ともちょっと絡むところはあると思いますけれども。半田先生、何かございますか。

○半田委員 前回もそうですけれども、今販売されている薬から、多分みんなこっちに移行するでしょう。前の審査薬もそうですよね。今回も多分、コージネートから、こっちに行くということだと思うのです。ですからその間旧薬と新薬がオーバーラップして、確かに予防投与と治療投与との振り分けがなかなか難しいというような印象はありますけれども、それも極限られた専門医の中で、ある程度の調整はできるかなと思うのですが、そういう意味では特に問題はないかと思います。

○吉田部会長 はい、ありがとうございました。ほかにありますか。ないようですので、議決に入りたいと思います。お諮りします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 議題8に移ります。機構からの概要説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題8、資料8、医薬品マラロン配合錠の製造販売承認事項一部変更承認の可否等、及び医薬品マラロン小児用配合錠の製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。マラロン配合錠及びマラロン小児用配合錠は、抗マラリア作用を示すアトバコン及びプログアニル塩酸塩を有効成分とする配合剤です。マラロン配合錠は、体重11kg以上の小児及び成人のマラリア患者の治療、並びに体重40kgを超える小児及び成人のマラリア予防に対して承認されています。今般、より低体重の小児に対する用法・用量、及び小児用製剤の追加に関する申請が行われました。本申請の専門委員としては、資料No.24に記載の5名の委員を指名しました。

 臨床試験成績を中心に、審査内容を説明いたします。マラリア治療に対する有効性について、審査報告書11ページの3段落目、「主要評価項目は」で始まる段落です。体重5kg以上11kg未満の熱帯熱マラリア患者を対象とした海外第III相試験において、治験薬投与開始29日目の治癒率は94.6%であり、対照薬群の52.6%と比較して、統計学的に有意な差が認められています。

 次に、マラリア予防に対する有効性について、19ページの1.「熱帯熱マラリア」に続く段落を御覧ください。体重11kg以上の健康小児を対象に、マラリア流行地域で実施された二つの海外臨床試験の予防成功率は、いずれも90%以上であり、プラセボ群と比較して、統計学的に有意な差が認められています。海外臨床試験で小児のマラリア治療及び予防に対する本剤の有効性が確認されていること、国内外のガイドラインや成書で、小児に対する本剤の使用が推奨されていること等を踏まえ、申請用法・用量における有効性は期待できると判断しました。

 安全性について、12ページの表5、13ページの表8、14ページの表9に、小児を対象とした海外臨床試験で認められた有害事象及び副作用を記載しています。いずれの試験でも、本剤投与時の有害事象発現状況は、対照薬又はプラセボ投与時と大きな差異は認められず、成人における安全性プロファイルとも大きな違いはありませんでした。これらのことから、現行の添付文書で注意喚起されている内容について、引き続き注意喚起を行い、マラリアに対して十分な知識と経験を持つ医師等の下で、適切に投与されることを前提に本剤の安全性は許容可能と判断しました。

 以上の審査を踏まえ、機構は本申請を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は、新用量医薬品としての申請ですが、既に付与されている再審査期間の残余期間が4年以上あり、再審査期間は残余期間とすることが適切と判断しています。また、マラロン小児用配合錠はマラロン配合錠と同様、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会には報告を予定しています。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。

○関水委員 11ページの表に、29日目で差があるとのことですが、8日前までの治り方には差がないわけですね。原虫の赤血球からの消失を見ているのだと思いますが、それが両剤で変わらないのに、なぜ29日で統計学的有意な差が得られたかに対する説明がありますか。私が伺う理由は、いろいろな所で既存薬と違う点があるのではないかといって探して、たまたま29日のときに差が見られたので、それを書いた、どうして差が出たかは分からない、という状況ではないか、と疑うからです。

○医薬品医療機器総合機構 申し訳ございません。本結果について、なぜ8日までで差が出ておらず、29日目に差が出ているかという理由は分かりません。なお、初回承認申請時のマラロン配合錠の審査報告書にも、同様に29日目の評価において、マラリアの治療に対しては有効性が認められているという結果が得られております。

○関水委員 この点についての説明をメーカーに求めるべきなのではないですか。当初の効き方が同じなのに、時間がたつと変わるという結果に対してはいろいろな説明があると思うのです。特にメーカーからの説明はないということですね。

○吉田部会長 マラリアというのは私もよく知らないのですが、周期的に発作が起きてくる病気のようですから、毎日毎日チェックするのは大変ということで、治癒に至る一般的な経過を基準として、いくつかポイントを決めて見ていったら、4週間目が一番良かったみたいな話なのではなかろうかと思うのですが、その辺、誰かお分かりの方はいらっしゃいますか。

○関水委員 私はマラリアを研究したことがあるのですが、治療後再発するというのは問題なのです。新しい薬が見つかったという論文の場合、他の抗マラリヤ薬と違いはあるが、その理由は不明である、という説明はとても受け入れられません。

○吉田部会長 もし分かれば、申請者に後で聞いておいてください。

○医薬品医療機器総合機構 分かりました。申請者には、一度確認させていただきたいと思います。この薬は古い時代に開発された薬ですから、研究のほうも当時のままになっているというのが現状かと思います。理由については、もしかすると申請者でも分からないかもしれません。

○吉田部会長 ということで、今回は小児への適応拡大を眼目として、ここへ出てきているということのようです。ほかにありますか。

○川上委員 用法・用量がかなり細かい設定なのですが、他の剤形の開発の予定などはないのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 他の剤形の開発は予定されておりません。

○川上委員 この剤形ですと、この用法・用量設定に応じて調剤する、あるいは患者さんに御服用いただくということは、かなり現場には負担がかかるかと思うのですが、その辺については何かディスカッション等はされていないのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 用法・用量について、添付文書では投与する錠数は記載してはいないのですが、資材では、例えばマラロンの小児用配合錠は何錠を投与するように、というような情報提供はされる予定です。

○吉田部会長 よろしいでしょうか。ほかにありますか。

○奥田委員 今回の審議対象はちょっと違うのかもしれないですが、腎障害のある患者さんへの投与の所で、添付文書には慎重投与で重度の腎障害のある患者に予防の目的で投与する場合には、慎重投与の対象から外れるような書き方をされている。これは患者さんの場合と予防の場合とで、何か合理的な違いがあるのですか。どちらも配合成分のプログアニルの排泄が遅延し、血中濃度が上昇するということが理由としては書かれているので、予防の場合と患者さんの場合とで違うかどうかがよく分からないのです。

○医薬品医療機器総合機構 治療の場合は、原則、入院下で投与されるので、管理可能ということなのですが、予防の場合には処方して渡航後は処方医が直接管理できないため、予防は「禁忌」に設定されております。

○奥田委員 予防は、禁忌ですか。はい、分かりました。

○吉田部会長 何で今頃、小児という話になったのですか。

○医薬品医療機器総合機構 マラロン配合錠の審査の際に、一部の小児については用法・用量が承認されているのですが、より低体重の小児にも必要ではないのかという議論があり、海外には小児用配合錠も承認されていたので、それを開発してくれるように依頼しました。

○吉田部会長 いわゆる公知のものとしての申請であることは分かるのですが、公知だったらもうちょっと前に出てきてもいいようなものなのに、何で今頃なのかなと。何か次の議題とも関係していて、マラリアに対して国が何とかしようとか、そういう話ではないのですか。

○医薬品医療機器総合機構 未承認薬適応外薬検討会議にて公知申請は可能と判断され、当初は成人用製剤のみで申請なされました。その審査の中で、やはり小児用製剤も必要ではなかろうかという議論が出てきましたが、審査中に小児用製剤を申請するということが時間的にできなかったので、承認申請時期が段違いになっているという状況です。

○吉田部会長 そういうことならよく分かりました。ほかにありますか。よろしいでしょうか。それでは、議決に入りたいと思います。なお、清田委員におかれましては、利益相反に関する申し出に基づきまして、議決への参加をご遠慮いただくことといたします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 議題9に移ります。議題9について、機構からの概要説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題9、資料9、医薬品プリマキン錠15mg「サノフィ」の製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。本剤の有効成分であるプリマキンリン酸塩は、三日熱マラリア及び卵形マラリア原虫の休眠体を殺滅する作用を有しています。本邦では、この休眠体を殺滅できる医薬品は承認されていないため、関連学会より本剤の開発要望が出され、「第11回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で検討の結果、医療上の必要性が高いと判断されています。今般、国内外の公表文献等に基づき、本剤の製造販売承認申請が行われました。本申請の専門委員としては、資料24に記載の6名の委員を指名しました。

 審査内容について、公表文献等の情報を中心に説明いたします。審査報告書4ページの図1を御覧ください。プリマキンの標的である三日熱マラリア及び卵形マラリア原虫は、肝臓内でヒプノゾイト(休眠体)の状態となりますが、これを殺滅しない限り、末梢血液内の原虫を殺滅しても再発することが知られています。なお、本邦でマラリアを効能・効果とする既承認薬は、末梢血液内の三日熱マラリア及び卵形マラリア原虫に対しては活性を示しますが、肝臓内のヒプノゾイトを殺滅することはできません。

 有効性について、審査報告書31ページの表12を御覧ください。この表にあるように、国内外の診療ガイドラインや成書で、三日熱マラリア及び卵形マラリアのヒプノゾイトを殺滅する治療薬として、プリマキンの使用が推奨されています。

 続いて、審査報告書34ページ、35ページの表15を御覧ください。公表文献において、三日熱マラリア及び卵形マラリア患者における再発率は、プリマキン未投与群やプラセボ群と比べて、プリマキン投与群において低下傾向が認められています。

 小児の有効性について、審査報告書35ページの表17を御覧ください。こちらに示すとおり、プリマキン14日間投与群において、三日熱マラリアの再発率の低下傾向が認められています。これらの情報に基づき、本剤の有効性は期待できると判断しました。

 次に安全性について、審査報告書37ページの表18、表19を御覧ください。国内外の公表文献におけるプリマキン投与時の有害事象は胃腸障害、血液障害等で、投与中止はなく、忍容性は良好であったと報告されています。小児についても、胃腸障害関連の有害事象は認められたものの、安全性に特段の問題はないものと考えられました。ただし、本剤は赤血球に対して傷害性を示す可能性があることから、本剤投与時は頻回な血液検査を実施する必要があると判断しました。

 以上の審査を踏まえ、機構は本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本剤は新有効成分含有医薬品であり、再審査期間は8年、原体及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会には報告を予定しています。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。未承認薬検討会からの公知申請ということです。よろしいですか。

○関水委員 最初に、これはマラリアの生活環について、4ページの図1を使って、肝臓で増殖する原虫に有効な薬はなく、それが必要である、という説明をされました。結局、肝臓のマラリアをこの薬で除去することができるという示唆があるのですか。それともそのような根拠は全くなくて説明をされたのですか。

○医薬品医療機器総合機構 審査報告書の7ページを御覧ください。非臨床薬理試験の結果になりますが、()効力を裏付ける試験の1).の所に結果が示されています。2段落目、「P.cynomolgiの野生株と」という箇所の成績では、スポロゾイトを感染させたアカゲザルの培養肝細胞を用いて、ヒプノゾイトとヒプノゾイト以外の原虫に対するプリマキンの抗マラリア原虫活性が検討されています。プリマキン投与によって、未処置群と比べて、ヒプノゾイトが約10%に減少したとの結果が得られています。非臨床の結果ではありますが、肝細胞内のヒプノゾイトに対して活性を示すデータは得られています。

○関水委員 今の説明では、ヒトで肝臓のステージの原虫に作用している、という証拠にはならないと思います。非臨床でやったということは分かりました。ただし、それでは、ヒトで再発がないことが、肝臓ステージに作用したからである、という説明は、学術的からは、無理がある説明だと私は思います。

○医薬品医療機器総合機構 ヒトに対する再発率の抑制というものに関しては、説明の中でも申し上げたのですが、審査報告書の34ページ、35ページの表15の中で、プリマキン投与群とプリマキン未投与群、若しくはプラセボ群の投与において、プリマキン投与群で再発率の低下傾向は示されているので、ヒトにおける有効性も示されていると考えております。

○関水委員 私が質問させていただいているのは、ヒトにおいて有効だということは了解した上で、肝臓におけるマラリアを除く効果があるということは示されているのか、という点です。といったら、サルで10%と40%という差がでているとのことですが、それによりヒトでの臨床上の差が説明できるかという点を伺っているのです。一般的にはそう納得する人は極めて少ないと思いますよ。そのような理解でよろしいですか。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘のとおりだと思います。例えば、抗菌薬の開発などであれば、感染部位から菌が消失していることを確認しておりますので、本来であればそういうデータを取ることも重要だと考えます。

○関水委員 この問題がどうでもいいことだったらこれ以上議論する必要はありませんが、この会議で、新しい作用機構で治療効果を示すことが分かったから、その点を承認しなさいというようにおっしゃるので、そんなことは言えませんよ、と私が噛み付くことになるわけです。この点は私の感想で、質問ではないですから、お答えになる必要はありません。

○吉田部会長 でも、知りたいですよね。肝臓でどのぐらい薬剤濃度が高いのか知りませんが、ヒプノゾイトというのが人間の体の中にいるとか、いないとかということは分からないのですか。いるらしいとか、そういう表現を取っているようですが、実際に例えば、生きているヒトからはなかなか取ってこられないのだとか、そういうことなのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 肝生検などをやれば分かるのかもしれませんが、実施可能性の観点からもおそらく採ってこられない。

○吉田部会長 定量的に薬をやって、ヒプノゾイトが死んでいるとか、呼吸不全になっているとか、そういうことも分からないわけですよね。

○医薬品医療機器総合機構 現時点では、そういう方法は明らかになっていないと考えられます。

○吉田部会長 どうしてヒプノゾイトが死んだかが分かるのですか。それもそれすら分からない。

○医薬品医療機器総合機構 作用機序についていろいろ考察されていることはありますが、必ずしも明らかにされているものではありません。

○吉田部会長 開発してから、もうかなりたっている薬で、新しい治験もされていない。ということもあって、今議論にあった非臨床試験の説明にも限りがあるということだろうと思います。といった事情ではありますが、未承認薬検討会のほうからの要望ということもありますので、この辺りを勘案いただければと思います。ほかにありますか。ないようですので、議決に入りたいと思います。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 議題10に移ります。議題10について、機構からの概要説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題10、資料10、医薬品ヌーカラ皮下注用100mgの製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。本剤の有効成分であるメポリズマブ(遺伝子組換え)は、ヒトインターロイキン-(IL-)に対するモノクローナル抗体です。好酸球の増殖、活性化に関与するIL-5は、気管支喘息における気道炎症の病態形成に重要な役割を果たしているとの報告等を踏まえて、本剤の開発が進められ、今般、気管支喘息に係る効能・効果で申請されました。本申請の専門委員として、資料24に記載しております11名の委員を指名しました。

 主な審査内容について、臨床試験成績を中心に簡単に説明いたします。審査報告書32ページの3)国際共同第III相試験の項を御覧ください。血中好酸球数に関する組入れ基準を満たす重症喘息患者を対象に、本剤100mg皮下投与、75mg静脈内投与の有効性及び安全性を検討するプラセボ対照比較試験が実施されております。33ページの表18に示すように、主要評価項目である投与32週後までの喘息増悪発現率について、プラセボ群と100mg皮下投与群及び75mg静脈内投与群の各対比較において、統計学的に有意な差が認められ、喘息増悪に対する本剤の有効性が検証されております。

 次に47ページの()安全性についての項を御覧ください。臨床試験における有害事象の発現状況及び本剤の薬理作用等を踏まえた検討の結果、重症喘息患者における本剤の安全性は許容可能と考えておりますが、本剤は長期投与が想定される薬剤であり、長期間にわたりIL-5及び好酸球を抑制することによる感染症等の発現リスクは明らかではないことから、64ページ、表44の製造販売後調査等において、引き続き検討する必要があると判断しました。

55ページの2)投与対象についての項を御覧ください。55ページの図14のとおり、本剤投与前の血中好酸球数が多いほど、本剤投与により得られるベネフィットが大きくなる傾向が示唆されております。また、血中好酸球数が少ない患者におけるデータは限られていること、57ページの図17及び表40のとおり、血中好酸球数は日内及び日間変動を示す指標であること等を踏まえると、臨床試験で設定された血中好酸球数のカットオフ値に基づき、投与対象を限定するのではなく、医師が血中好酸球数を把握した上で、臨床試験データを踏まえて適応患者を選択できるよう、情報提供を行うことが適切と考えております。さらに、本剤の適用対象は、高用量の吸入ステロイド薬及びその他の長期管理薬による治療下でも、増悪をきたす重症喘息患者であることも踏まえて、63ページ下段に示すように、効能・効果及び効能・効果に関連する使用上の注意を設定することが妥当と判断しました。

 以上の審査を踏まえ、本申請を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、また原体及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品に該当するものと判断しております。薬事分科会には報告を予定しています。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方からの御質問をお願いします。

○菊池委員 今日は効能・効果にこだわっていてすみませんが、今回これは括弧が付いていますよね。括弧が付いているということの意味合いは、まず何なのですか。

○医薬品医療機器総合機構 今回の効能・効果は、同じ位置付けで使用されております「ゾレア皮下注用」と同様の効能・効果を設定しております。「ゾレア皮下注用」と効能・効果を変えてしまうと、逆にどういう違いがあるのかという混乱が生じる可能性もあるため、括弧を付けるという記載ぶりは統一させていただきました。

○菊池委員 「ゾレア」のほうにも括弧が付いているのですか。そういう意味ですか。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○菊池委員 効能・効果に括弧が付くという意味は、機構としてはどういうことなのですか。重症喘息という形ではなくて、括弧が付くと気管支喘息に対するただし書が付くということだと思うのですが、それはどういうことなのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 意味としては、括弧の外に出して、既存治療によっても、コントロールできない難治の気管支喘息という表現でも、同じ意味になります。

○菊池委員 分かりました。そういうものなのだと、今度考えておきますが、統一性はやはり必要だと思うのです。前から申し上げていますが、ある薬が効かなくなったとか、そういうものの修正ももちろん大事ですし、記載整備というのは、あるときからしっかりして、もちろん偉い人に言うのだと思うのですが、個別の案件として言うのではなくてだと思いますが。今回の場合は、それで申請者は最初は重症の増悪を来す好酸球が増多しているヒトに対して、わざわざ申請してきたのに、そこを取り除いてここまで広げていいという根拠は、先ほどもおっしゃっていましたが、それはそれでいいのですね。

○医薬品医療機器総合機構 現在、好酸球性という病名が付いている疾患として好酸球増多症などありますが、500/μL以上の血中好酸球数が認められるという定義があります。今回の好酸球性喘息というものは、幾ら以上であれば好酸球性喘息と呼ぶかという定義がありませんので、このような記載をしても実際、ではどうやって判断するのかという混乱が生じると考えました。また、臨床試験の対象患者の情報を添付文書の臨床成績の項に記載して、情報提供した上で、先ほど申し上げたように、血中好酸球数が高ければ高いほど効果が大きい傾向が認められているという点を情報提供し、関連するデータを添付文書に記載することで御理解いただけるのではないかと考え、好酸球性喘息という言葉は削除しております。

○菊池委員 その辺は分かったのですが。使う側の臨床医からすると、いろいろ制限がないほうがいいわけです。有り難いわけで、選択肢が増えるし、薬剤の種類が増えることについて、先ほどありましたが、私の所でも血友病の患者さんがいますから、製剤の種類が増えれば、いい部分もありますが、逆に迷う部分もありますよね。それとこういった形で初めの部分で言っていたことを取り除いて、むしろ当局のほうが緩和するというか、という感じも取られているとは思うのですが、その辺が統一されているのかというのが、この薬は広げてあげるけれども、この薬は駄目だとか、そういうものの多少の判断が難しいかと思うのです。好酸球の増多ぐらい誰でも見られるわけであって、500の定義というのも研修医でも知っています。だから、それを取り除くほどの理由の説明がなっているのかなと、ちょっと疑問に思いました。

○医薬品医療機器総合機構 確かに好酸球増多症が血中好酸球数として500/μL以上という定義はあるのですが、今回の臨床試験では、さらに低い150/μL以上という基準を用いて対象患者が組み込れられていたため、好酸球性という文言を使用すると誤解を生むのではないかとの懸念から、好酸球性喘息という言葉を削除いたしました。

 今回は、効能・効果だけでは使用していただきたい患者集団を十分に説明することが難しいという問題もありまして、効能・効果に関連する使用上の注意も含めて、どのような患者さんで効果が期待できて、逆にどのような患者さんのデータが少ないかという点を情報提供しております。本剤に関しては、血中好酸球数が150/μL未満の患者さんでのデータが非常に限られていることから、その集団で効果が得られないと結論付けることは困難だと考えております。したがって、効能・効果に関連する使用上の注意の()の後半部分、「また、データは限られているが、投与前の血中好酸球数が少ない患者では、十分な気管支喘息増悪抑制効果が得られない可能性がある」旨を情報提供することによって、まず血中好酸球数に着目して、適応患者を選択していただきたいという注意喚起をすることといたしました。

○菊池委員 分かりました。今日、勉強したことは研修医に伝えますが、普段、薬を使わせるとき、私は内科医なので、効能・効果は最低限見なさい。どのように効くのかということと、これから臨床成績のところをよく読んで、どういうことがあるのか。もっと奥にあるものが何かあるか。何か思ったら文献を当たれというように指導すればよろしいですね。

○医薬品医療機器総合機構 文献まで当たっていただくのは非常に大変だと思いますので、今回は申請者に資材を作るように指示しております。適応患者の選択に際して重要と考えられるデータをコンパクトにまとめた資材を準備しておりますので、そちらを御覧いただければと思います。

○吉田部会長 ほかにありますか。

○川上委員 用法について教えていただきたいのですが、海外でも日本でも、開発時は皮下投与と静脈内投与で検討されているのですが、最終的に承認されるときは、海外でも日本でも、皮下投与で承認されている、その背景を教えてください。

○医薬品医療機器総合機構 ご指摘のとおり静脈内投与群も含めて開発が行われているのですが、企業の判断で皮下投与のみが申請されております。それは国内外同様です。静脈内投与よりも皮下投与のほうが簡便ということもありまして、このような選択がなされたものと理解しております。

○吉田部会長 よろしいですか。サイトカインのことはよく分かりませんが、IL-5は好酸球だけに働いているわけではないような気がします。その抗体自身が、好酸球以外に対して効果とか何らかの作用を発揮するというようなことはないのですか。好酸球のアクティビティを抑えるだけで、本当に気管支喘息が治るのだろうかと、ふと思ってしまうのですが。

○医薬品医療機器総合機構 毒性試験において、その他の白血球、T細胞、B細胞などに影響を及ぼさないことは確認されています。今回の臨床試験において、全てほぼゼロに近いぐらい好酸球を抑えてしまう用量で検討されておりますので、薬理作用と臨床効果との用量反応が分かりませんでした。したがって、好酸球を下げることが喘息を治療することに直接的に関わっているかという点については、十分に検討できるデータが得られておりません。また、好酸球をどのぐらい抑えることが必要なのかとかという情報もありません。

○吉田部会長 ということは、市販後で必ず1例1例について、それぞれの患者さんの好酸球の動きを押さえておいてほしいですね。市販後ではその辺りのデータを欠落しないようにと伝えておいてください。

○医薬品医療機器総合機構 はい、承知いたしました。

○新井委員 マウスでは、IL-5抗体は好酸球だけを落とすというのは、よくみんな使う方法ですね。

○吉田部会長 落とすのはその通りだろうけれども、そうではなくて私が知りたいのは、逆に好酸球を落とすことだけで本当に気管支喘息が治るのかということなので、好酸球の動きと気管支喘息の一対一の病態がどうなっているかということを示して欲しいと、興味という面もありますけれども。

○医薬品医療機器総合機構 投与前の血中好酸球数により効果が異なることは先程ご説明したとおりですが、投与後の血中好酸球数によっても効果に違いがあるかも検討してもらいました。結果として、投与後の血中好酸球数の違いは有効性に影響しないことが示唆されましたが、全ての検討用量で血中好酸球数をほぼ完全に抑えてしまっているからかもしれません。

○吉田部会長 ですからその値が80なのか、100なのか、90なのか、70なのか、120なのか、分からないでしょう。そういうところも含めて、このぐらいまでアクティベートされているものについては意味があるとかということが分かればいいのではないかと思っています。よろしいですか。ほかにありますか。なければ、議決に入りたいと思います。なお、清田委員におかれましては、利益相反に関する申し出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは、議題12及び議題13に移ります。議題12及び議題13について、事務局からの概要説明をお願いします。

○事務局 議題12、資料12、ヒトα1-Proteinase Inhibitorを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より説明いたします。資料の評価報告書のタブをお開きください。本編中段を御覧いただきますと、申請者はグリフォルス株式会社。予定される効能・効果は、COPDを発症した重症のα1-アンチトリプシン欠乏症です。

 希少疾病医薬品の3要件のうち、まず対象患者数について説明いたします。α1-アンチトリプシン欠乏症は指定難病で、患者数は100人未満と考えられております。本剤は、そのうちCOPD慢性閉塞性肺疾患を発症した重症のα1-アンチトリプシン欠乏症を対象としており、対象患者数に係る要件を満たしていると考えております。

 次に、医療上の必要性について説明いたします。このCOPDですが、進行すると酸素吸入や人工呼吸の管理が必要となる疾患ですが、α1-アンチトリプシン欠乏症は、このα1-アンチトリプシンの欠乏によって、若年性にCOPDを発症する疾患です。COPDに対する既存の薬物療法は、いずれも対症療法で、原因であるα1-アンチトリプシンの欠乏そのものに対する治療法は、現時点ではありません。本剤は、ヒト血漿由来のそれが欠乏している患者血清中のヒトalpha-Proteinase Inhibitorの補充を目的とした薬剤です。COPDの進行を遅らせるための原因療法が可能なことから、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に、開発の可能性について説明いたします。本剤は、平成2110月に米国において、COPDの一部である肺気腫を呈する重症のα1-アンチトリプシン欠乏症に対して承認されて以降、平成2711月現在では5か国で承認がされております。また、我が国においては、国内の第I相、第II相試験が平成28年1月に開催予定ということです。このような状況から、本剤は開発の可能性があるものと考えております。以上より、本剤は希少疾病医薬品の指定の3要件を満たしていると考えているところです。

 続いて、議題13、資料13、ヒト血漿由来プロトロンビン複合体濃縮製剤を希少疾病用医薬品として指定することの可否について、引き続き説明いたします。資料の評価報告書のタブをお開きいただければと思います。申請者は、CSLベーリング株式会社。予定される効能・効果は、ビタミンK拮抗薬(ワルファリン等)療法中の患者における急性重篤出血時、あるいは外科手術、又は侵襲的処置が求められる場面でのPT-INRの速やかな是正です。

 希少疾病用医薬品の3要件のうち、対象患者数について説明いたします。血栓塞栓症の治療及び予防に用いるワルファリンを代表するようなビタミンK拮抗薬による治療を受けている患者は、PT-INR(プロトロンビン時間国際標準比)が治療域を逸脱する場合があり、そういった場合は出血のリスクが高まることが知られております。本剤は、重篤な出血時、又は緊急手術時におけるPT-INRの上昇を是正し、出血のリスクを低減することを目的に使用されるヒト血漿由来のプロトロンビン複合体濃縮製剤になります。

 本剤の対象者数に関して、まとまった調査結果はありませんが、各所文献報告による数字を勘案いたしますと、ワルファリンによる治療を受けている患者のうち、重篤な出血を発現する患者は、年間1万7,600例程度と推定されております。また、ワルファリンによる治療を受けている患者のうち緊急手術を要する患者数は、年間1万8,000例程度と推定されており、両者を合算いたしますと、年間3万5,600例程度と推定されることから、本剤は対象患者数に係る要件を満たしていると考えております。

 次に、医療上の必要性について説明いたします。ワルファリンによる治療を受けている患者において、出血時、又は緊急手術時にPT-INRの上昇を是正することを目的に投与される既存の製剤としては、新鮮凍結血漿とビタミンKがあります。本剤のようなプロトロンビン複合体濃縮製剤については、既存の医薬品である新鮮凍結血漿と比べて、より早くPT-INRを是正すると考えられており、またガイドラインでもその投与が推奨されているところです。

 本剤は、未承認薬・適用外薬検討会議において、医療上の必要性が高いと評価をされており、平成24年4月に申請者に開発要請がなされているものです。以上のことから、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に、開発の可能性について説明いたします。本剤は、平成25年に米国において承認がなされており、平成27年9月現在、本剤は米国を含む30の国、又は地域で承認がなされております。また、我が国においても、国内第III相試験が平成26年5月より実施中です。このような状況から、本剤は開発の可能性があるものと考えております。以上より、本剤は希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えているところです。議題12及び13について、合わせて御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いいたします。頻度、病態の重症度、開発の可能性等、問題はないように思うのですが、よろしいですか。それでは、議決に入ります。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 続いて、議題14について事務局からの概要説明をお願いいたします。

○事務局 議題14、資料14、ニボルマブ(遺伝子組換え)を希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より説明いたします。資料の事前評価報告書のタブをお開きください。申請者は、小野薬品工業株式会社です。予定される効能・効果は、ホジキンリンパ腫となります。

 まず、指定要件の3要件の対象患者数について説明いたします。ホジキンリンパ腫の総患者数は、平成26年人口動態統計患者調査により、約2,000人と報告されておりますので、患者数が5万人未満という基準を満たしているものと考えております。

 次に、医療上の必要性について説明いたします。ホジキンリンパ腫の初回治療としては、化学療法が国内外で標準的な治療として行われておりますが、5年無増悪生存率は約80%ですので、約20%の患者が再発、又は難治性となります。再発、又は難治性のホジキンリンパ腫患者に対しては、多剤併用化学療法による救援化学療法後に、一部の患者が自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(ASCT)の適応となりますが、ASCTが実施された患者のうち約半数は再発し、ASCT施行後1年以内に再発、又は進行した患者は予後不良であることが報告されております。また、ASCTが適応とならない患者、又はASCT施行後の再発、又は難治性のホジキンリンパ腫患者に対しては、多剤併用化学療法等による救援療法が行われておりますが、延命効果を示す成績は得られておりません。そのため、新たな治療法の開発が望まれており、医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に、開発の可能性について説明いたします。再発、又は難治性のホジキンリンパ腫患者を対象に、国内第II相試験が実施中であり、主要評価項目とされた奏効率は75.0%でした。また、ASCT施行後の再発、又は難治性のホジキンリンパ腫患者を対象に海外第II相試験が実施中であること。また、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□が計画中であり、本邦からも参加することが検討されていることから、開発の可能性は高いと考えております。以上より、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いいたします。よろしいですか。特になければ議決に入ります。なお、清田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは、議題15に移ります。事務局からの概要説明をお願いいたします。

○事務局 議題15、資料15、本日差し替えになっておりますが、生物学的製剤基準の一部を改正することの可否について、事務局より説明いたします。資料の2枚目をお開きください。生物学的製剤基準は、「医薬品、医療機器法」(医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の第42条第1項に基づき、保健衛生上特別の注意を要する医薬品又は再生医療等製品について、その製法、性状、品質、貯法等に関し、必要な基準を設けるものです。

 今般、「組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)」「5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン」及び「人血小板濃厚液」にそれぞれ該当する医薬品を承認する予定としており、対応する条について必要な改正を行うことを検討しております。

 基準の具体的な改正内容については、3枚目を御覧いただければと思います。まず一つ目の「組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)」については、HBs抗原ポリペプチド試験の試験法について、事務局審査による一部変更承認に対応し、試験法を追加するものです。二つ目の「5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン」については、事務局審査による一部変更承認に対応し、培養細胞接種試験において、使用しないこととなったHeLa細胞を削除するものです。最後の「人血小板濃厚液」については、後発医薬品として、洗浄血小板製剤が承認されることに伴い、血小板保存液に浮遊した血小板製剤を基準として読み込むことができるように改正をするものです。以上3件に係る生物学的製剤基準の改正について、御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いいたします。川崎先生、何かコメントはありますか。

○川崎委員 今回の議題にはない品目なので詳細を確認できないのですが、基準が改正されるのでしょうか。

○事務局 品目としては、部会の審議事項や報告事項に該当しないもので、製法の一部を変更するという事務局審査品目で、たまたま生物学的製剤基準を改正する必要があるというものです。

○吉田部会長 よろしいですか。ということで、今回の審査品目とは特に関係ないということだそうです。

○増井委員 今回、使う細胞の中に、HeLa細胞が加えられた理由は特に何かあるのでしょうか。今までVero細胞がよく使われていて、MRCは少し増え方が悪いところもあったりもするのですが、HeLa細胞は安定はしてはいますが、今回加えられた理由は何かあるのですか。

○吉田部会長 逆ですね。

○事務局 すみません。現行のほうにはHeLa細胞が入っていて、今回はそのHeLa細胞を除いたという改正です。

○増井委員 申し訳ありません。それでは、HeLa細胞を除けられた理由は、何か特別にありますか。

○事務局 今回、関連する品目において、国際的にHeLa細胞を除くというような方向性になっていて、今回それに国内の基準も対応すると聞いております。

○増井委員 はい、分かりました。国際的にHeLa細胞が使われなくなったということに対応してということでの理解でよろしいでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構より補足いたします。国際的というより、本品目の海外本社での変更に伴って、HeLa細胞が使われなくなったということです。具体的に申しますと、培養細胞接種試験は外来性のウイルスを否定する試験で、今回新たに提出された試験法バリデーション成績において、Vero細胞とMRC-5細胞で外来性ウイルスの検出が可能であることが示されたため、HeLa細胞は不要ということで削除されております。

○吉田部会長 分かりました。簡略化できるということですね。ほかにありますか。ないようですので、議決に入ります。本議題について、改正を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、改正を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは、報告事項に移ります。報告事項について、事務局からの説明をお願いいたします。

○事務局 報告議題1、医薬品コロンフォートの製造販売承認について報告いたします。資料16を御覧ください。本剤は、硫酸バリウムを有効成分とする経口造影剤です。大腸癌の検診において、大腸CT検査を用いることがありますが、現在は、その前処置として腸管洗浄が必要とされております。大腸CT検査の前処置として本剤を適用することにより、腸管内の残液・残渣が標識されて、腸管組織との識別が可能となり、腸管洗浄が不要となります。今般、便潜血検査陽性であって全大腸内視鏡検査を実施する予定の日本人被験者を対象に、臨床成績等に基づき株式会社伏見製薬所により製造販売承認申請がなされました。機構における審査の結果、本剤を「腸内容物の標識による大腸コンピューター断層撮像の補助」という効能・効果で承認して差し支えないと判断いたしました。

 続いて、報告議題2、乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」の製造販売承認事項一部変更承認について報告いたします。資料17です。本剤は、水痘・帯状疱疹ウイルスの「弱毒株である「弱毒生水痘ウイルス岡株」を有効成分とする生ワクチンで、「水痘の予防」を効能・効果として承認されております。今般、一般財団法人阪大微生物研究会より製造販売承認事項一部変更承認申請がなされ、機構における審査の結果、「50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防」に対して、本剤を使用することの有用性は、医学薬学上公知に該当すると判断し、申請された効能・効果を承認して差し支えないと判断いたしました。

 続いて、議題3、沈降細胞培養インフルエンザH5N1「北里第一三共」の製造販売承認事項一部変更承認について報告いたします。資料18です。本剤は、弱毒化したインフルエンザウイルスH5N1株を培養細胞にて増殖し、不活化した全粒子ウイルスを有効成分とするワクチンです。「新型インフルエンザ(H5N1)の予防」を効能・効果として、平成26年に承認されております。今般、北里第一三共ワクチン株式会社より、小児の用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断いたしました。

 続いて、議題4、医療用医薬品の再審査結果についてです。資料19-1から19-5になります。こちらは、医薬品再審査確認等結果通知書です。まず、資料19-1ですが、一般的名称は「パズフロキサシンメシル酸塩」、販売名は「パシル点滴静注液」です。資料19-2は、一般的名称は同じく「パズフロキサシンメシル酸塩」、販売名は「パズクロス点滴静注液」です。資料19-3は、一般的名称は「バンコマイシン塩酸塩」、販売名は「塩酸バンコマイシン点滴静注用」です。資料19-4は、一般的名称は「トシリズマブ(遺伝子組換え)」、販売名は「アクテムラ点滴静注用」です。最後に資料19-5は、一般的名称が「乾燥毒生麻しん風しん混合ワクチン」、販売名は「乾燥毒生麻しん風しん混合ワクチン『タケダ』」です。これらの品目については、製造販売後の特定使用成績調査、製造販売後臨床試験等に基づき再審査申請が行われ、審査の結果、医薬品医療機器等法の第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものです。

 続いて、議題5、医療用医薬品の承認条件について報告いたします。資料20を御覧ください。本品目は、アダリムマブ(遺伝子組換え)です。2ページ目の[承認条件]の欄に、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎を承認条件として全例調査が付与されているところです。

 4ページ目の3)安全性の項を御覧ください。安全性解析対象176例における副作用発現頻度は30.1%、重篤な副作用は4.0%で、本調査における副作用及び重篤な副作用の発現頻度は、臨床試験を上回るものではありませんでした。6ページ目の4)の有効性の項目を御覧ください。臨床試験と本調査の有効性の直接的な比較には限界はありますが、承認申請時に提出された臨床試験及び本調査における結果は表2のとおりであり、おおむね同等というデータでした。

 最後に7ページ目を御覧ください。III.総合評価ですが、以上の安全性や有効性の結果から、全例調査について、この承認条件は対応されたものと判断しております。

○事務局 続いて、議題6、資料21、優先審査指定品目の審査結果について、事務局より説明いたします。優先審査の取扱いについては、資料の2ページに概要をお示ししております。この制度は、医薬品医療機器等法第14条第7項の規定に基づき、希少疾病用医薬品や、その他医療上、特に必要性が高いと認められる品目を指定し、他の品目に優先して審査を行うものです。その指定に当たっては、適応疾病の重篤性と医療上の有用性とを総合的に評価して判断されます。

 資料1ページにお戻りください。対象品目は、販売名「オプジーボ点滴静注20mg、同点滴静注100mg」、一般名「ニボルマブ(遺伝子組換え)」。申請者は、小野薬品工業株式会社です。根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に係る効能・効果で承認申請がなされております。事前に取りまとめられた機構の報告書に基づき、当該薬剤の優先審査の該当性について説明いたします。

 資料7ページ目を御覧ください。適応疾患の重篤性については、当該疾患は「生命に重大な影響がある疾病(致死的な疾患)」に該当すると判断されております。

 次に、医療上の有用性については、血管新生阻害作用を有する抗悪性腫瘍剤による治療歴がある進行、又は遠隔転移を有する腎細胞癌患者に対して、既存薬であるエベロリムスと比較して全生存期間の有意な延長が認められ、また安全性については、現時点で得られている情報を踏まえると忍容可能と考えられていることから、本剤は有効性、安全性、肉体的・精神的な患者負担の観点から、医療上の有用性が既存の治療法、予防法、若しくは診断法より優れていることに該当すると判断されております。

 以上を踏まえ、当該薬剤は優先審査品目に該当すると判断しました。当該薬剤の承認の可否については、今後、機構での審査を得た後に、改めてこの部会で御審議いただく予定です。以上です。

○吉田部会長 委員の先生方からの御質問等ありましたら、お願いします。

○関水委員 資料19-3のバンコマイシンに関することに質問させてください。6ページに、バンコマイシンに対して低感受性、すなわち耐性株はそれほど認められていないのだということが書いてあるのですが、実際にここに書いてあるMICが4μg/mLとか8μg/mLというのは、臨床上、バンコマイシンの適用外になると思います。この文章は、バンコマイシンはこういう株についても問題なく効くという誤解を生む可能性がありませんか。

○医薬品医療機器総合機構 こちらの記載については、耐性化が起こっているかどうかという検討結果を記載させていただいておりますので、MICが8μg/mLの菌株に対して、効いている、効いていないという評価を行っているわけではございません。

○関水委員 それは分かりますが、ただしこう書いてあると、8μg/mLでもバンコマイシンに対しては感受性なのだから、実際にヒト血中において8μg/mLの濃度を保てば、効くわけですよね。しかしながら、8μg/mL耐性の菌については、バンコマイシンの腎毒性からみて、使えないと考える医師が多いと思うのです。この文章は、そのような状況があるにもかかわらず、バンコマイシンは効くんだという、誤解を受ける表記になっていると思うのです。私は感染治療の医師ではありませんので、バンコマイシンに対するMICが、8μg/mLという菌が出たときに、バンコマイシンが本当に使えるかどうかについては、私の判断の及ばないことですが、この記述はそういうものがあっても大丈夫だという誤解を与えませんか。

○医薬品医療機器総合機構 この部分の記載では、MICが8μg/mLの株の患者への投与の適否については書いていないとは思うのですが。

○関水委員 バンコマイシン耐性菌の問題について余り重要ではないと議論する人が多いのが現状だと私は捉えています。このような文章が、バンコマイシン耐性菌に対する医療上の必要性は余りないという議論を誘起すると私には思われます。

○医薬品医療機器総合機構 先生がおっしゃられているのは、バンコマイシンに低感受性を示す菌が医療現場から検出されているが、このような菌が検出されていてもバンコマイシンの有効性には影響がないと判断されてしまう恐れがあるのではないかということを懸念されているのでしょうか。

○関水委員 そういう議論の根拠になり得ると私は思います。バンコマイシンに対するMICが8μg/mLという菌が実際に、医療現場から得られているというのは驚くべき事態であって、これは感染治療の観点からすると非常に重大視しなくてはいけないと私は思うのですが、この文章を見た人はそうは思わなくなる恐れがあります。

○医薬品医療機器総合機構 それは、平成21年度に検出されたけれども、ほかの年度では検出されていないと記載させていただいています。

○関水委員 ですから、何回も申し上げますが、余り大した問題ではないという態度から書かれているということが明らかですが、そういうことは、黄色ブドウ球菌MRSAのバンコマイシン耐性化が深刻な問題を引き起こす可能性を憂慮する観点からすると、このような記述を正式な文書として発布するのは問題ではないかと、私は思います。

○審議官 よろしいですか。バンコマイシンに対する耐性の問題は、日本において極めて重要な医療上の問題というように、当初から捉えられております。バンコマイシンの承認の時点から、日本におけるバンコマイシンの耐性化を懸念して使っている中で、耐性化がどれぐらい起きているかということについて、市販後ずっとフォローしなさいという条件が付いており、今回の再審査の資料としても、耐性化が疑われるようなケースについて、感受性がどうであるかということを調べたデータは絶対に必要な情報ということで出されております。この記述の中でも、医療機関からの依頼により、本剤に対する耐性の可能性が疑われたものについて感受性の測定を行って、その中で耐性化をしているものは何株あったという事実を書いているという、そういう記載です。したがって、これを御覧になって、臨床の先生方に、今のこのバンコマイシンの耐性化の状況について、この薬の再審査の際に集めたデータ上において耐性のものがどのぐらい出ているかを御覧いただく。そのために、この情報を書いているというのが趣旨です。我が国におけるバンコマイシンの使用状況は、国際的に見ても耐性化を来たしにくいように、極めて慎重にお使いいただいているというような認識であり、このような記述をしていることで誤ってバンコマイシンの耐性化を軽視して使うようなことを誘発するようなことでは恐らくないのではないかと考えております。

○吉田部会長 よろしいですか。ほかにありますか。

○川上委員 御意見を伺いたいのですが、パズフロキサシンの再審査の調査のやり方についてです。これは両製品それぞれで集計することにどれだけの意味があるのかと思うのですが、いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 今回のように2社が同一成分の医薬品を販売する場合には、2社合同で一つの調査を実施することはあるのですが、今回の場合はそれぞれの会社が別々に行ったということです。2社合同で調査を実施できなかったという理由は分かりません。

○川上委員 結局、再審査を行うこと自体が、そもそも開発時に検出できなかった、例えば希な副作用を見い出すことかと思います。特にこの薬剤ですと、敗血症や重症な肺炎の患者で、高用量を使うことの安全性を市販後に確認するという大きな目的があるのであれば、合算をして解析をしたほうが、より本来の目的を達成できるのではないかと思います。仮に各販売企業がやらなかったとしても、例えば行政のほうで、そういったことを指導されたりするほうが、国民医療に資するように思いましたので、御意見を伺った次第です。

○医薬品医療機器総合機構 他社のデータを入手することができなかったので、申請者が調査結果を合算して集計することはできなかったと理解しております。会社間企業間の垣根もある中で、私どもから、必ず2社合同で調査を実施しなさいと指導することはできないこともあります。

○吉田部会長 想像するに、二つ別々にやるとすれば、事務局を別に置いて、そこへそれぞれエントリーしていってということになりますので、経費も二か所分になりますが、臨床試験のように第三者としてのデータセンターを立てるとなれば可能性はあるかもしれないですね。要するに、患者がどこの人で、誰が使っているというのも全部含めて、両者で共有するとなると、なかなか微妙な問題が出てしまいますが、そういった情報を含めて第三者が管理しながら、メーカー側は匿名化した情報にアクセスするようにすれば、何とかなるかもしれません。同じ化学物質であれば、Nが多ければ多いほど国民にとっては信頼度が増しますので、例えば市販後調査については、どこかのオフィスに外注するなりしてやってみるということでもできればいいかなと。

○医薬品医療機器総合機構 今後、このように併売するようなものがありましたら、両社に合同調査はできないかということを確認してみたいと思います。

○吉田部会長 そういうご指導をしていただければと思います。ほかにありませんか。ないようですので、報告事項については御確認いただいたものといたします。

 それでは、その他の事項に移ります。その他の事項について、事務局より説明をお願いいたします。

○事務局 その他の事項について報告いたします。資料22を御覧ください。こちらは、2月3日の未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請を行うことが妥当と判断された適応外薬の事前評価です。今回、「コルヒチン」「バルガンシクロビル塩酸塩」「カペシタビン」ですが、本部会でも公知申請が妥当と判断いただければ、今後、企業が公知申請を実際に行い、機構の審査を経て、改めて本部会で承認の可否を御議論いただく流れになっております。

 それでは、まずコルチシンから説明いたします。3ページを御覧ください。こちらは、日本小児リウマチ学会から、「家族性地中海熱」の要望がありました。医療上の必要性が高いと判断されて、高田製薬株式会社が公知申請の希望書を出してきたものです。

18ページを御覧ください。(1)有効性については、国内外の教科書及び海外のガイドライン等でも家族性地中海熱に対する第1選択薬はコルチシンと表記されておりますので、有効性は公知と考えております。(2)安全性の面ですが、これらの副作用ですが、現行の添付文書の副作用の項に記載されておりますが、全て既知の事象だということで、安全性も許容可能と考えております。したがって、有効性及び安全性は医学薬学上公知と考えており、効能・効果は、家族性地中海熱で、用法・用量としては、国内のガイドラインを参考に設定することが適当であると判断しております。

 次の品目は、27ページを御覧ください。「バルガンシクロビル」ですが、こちらは日本移植学会から、造血幹細胞移植を除いた臓器移植に対するサイトメガロウイルス感染症の発症抑制ということで要望が来ております。未承認薬検討会議で、医療上の必要性が高いと判断され、田辺三菱製薬株式会社が公知申請の該当希望書を出してきたものです。48ページを御覧ください。7.の公知申請の妥当性ですが、(1)有効性については臨床薬理試験の結果、海外と国内で薬物動態に明らかな差異は認められませんでした。ということから、海外の臨床成績に基づき、日本人における有効性の評価は可能と考えております。(2)安全性の面ですが、以上のように、長期投与例で認められた有害事象は、本剤の既知の事象から、安全性については許容可能と考えております。したがって、有効性及び安全性は、医学薬学上公知であると考えております。8.効能・効果は、造血幹細胞移植を除く臓器移植におけるサイトメガロウイルス感染症の発生抑制を設定することとし、海外での用法・用量を参考に用法・用量を設定することが適当であると考えております。

 三つ目は、「カペシタビン」ですが、53ページを御覧ください。日本臨床腫瘍学会から、直腸癌における補助化学療法の要望があり、医療上の必要性が高いと判断され、中外製薬株式会社から公知申請の該当希望書が出されたものです。

71ページの公知申請の妥当性ですが、NSABP -04試験、及び国際的な診療ガイドライン及び教科書においても、本薬は直腸癌における補助化学療法の標準的なレジメンとして位置付けられていることから、有効性はあるものと考えております。

75ページの安全性の面ですが、本薬を投与する際に注意を要する有害事象は、既承認の効能・効果及び用法・用量において注意を要する有害事象と同様であったことから、安全性についても許容可能と考えております。

 効能・効果及び用法・用量等の記載の妥当性についてですが、効能・効果については、要望どおり、既承認の直腸癌における術後補助化学療法に「直腸癌の補除化学療法」を足すことによって、このような記載とさせていただくことが適当であると考えております。用法・用量についても、海外第III相試験や国内外のガイドラインを参考に、これより設定することが適当であると考えております。以上です。

○吉田部会長 委員の先生方から、何か御質問等がありましたらお願いいたします。よろしいですか。基本的に、この3薬は、ここで了解が得られれば、もう1回申請されるという状況です。御意見がないようですので、本議題については御確認いただいたものといたします。

 本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はありますか。

○事務局 次回の部会の日程については、4月25()午後2時から開催させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 本日は、長時間御苦労さまでした。これにて終了といたします。

 

 


(了)

備  考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された

連絡先:医薬・生活衛生局 医薬品審査管理課 課長補佐 清原(内線2746)

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