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2016年5月20日 第5回がん診療提供体制のあり方に関する検討会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

○日時

平成28年5月20日(金)10:00~12:00


○場所

航空会館501~502会議室


○議題

1 開会
2 議題
 (1)座長の選任について
 (2)がん診療提供体制のあり方について
3 その他

○議事

○事務局 定刻となりましたので、ただいまより「第5回がん診療提供体制のあり方に関する検討会」を開催いたします。構成員の皆様方におかれましてはお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課の清住と申します。座長が決まりますまでの間、進行を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは初めに、会の開催にあたりまして健康局長の福島より御挨拶申し上げます。
○健康局長 健康局長の福島でございます。この度は、がん診療提供体制のあり方に関する検討会、今回から改めての開催ということで、先生方には大変お忙しいところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。また、日頃からがん対策のみならず、健康政策あるいは厚生労働行政全般につきまして御指導を賜りまして、改めて御礼を申し上げます。
 御承知のように国のがん対策でございますけれども、現下のがん対策につきましては、平成24年6月に閣議決定されました第2期のがん対策推進基本計画に基づいて推進をしているわけでございまして、この検討会も今回「第5回」と書いてありますが、これまでの検討会におきましては、がん診療連結拠点病院等の指定要件を中心に取りまとめをいただいたわけです。今回、是非御議論いただきたいのは、第3期のがん対策推進基本計画の策定を大体平成29年6月ぐらいを予定しているわけですが、この中で、がん診療提供体制、今後どうあるべきかということを位置付けていくと考えているわけです。その中で、特に、がん診療提供体制のあり方についてはこの検討会での御議論を踏まえて、基本計画に入れていこうと考えております。特に、5年前に策定した時点から比べますと、ゲノム医療あるいはその情報提供のあり方、更にはその医療安全という問題もありますので、こういうことも含めて幅広く御意見を頂戴できればと考えております。今回はどういう進め方をするかという御説明と、そういう観点に立ちまして、参考人の方からのいろいろな情報をいただきながら、大所高所からの御意見を頂戴いただければと思います。是非構成員の先生方には、がん対策、特にがん医療の更なる推進の観点から御活発な御議論をお願い申し上げまして、冒頭の御挨拶にさせていただきたいと思います。どうぞ本日はよろしくお願い申し上げます。
○事務局 ありがとうございました。なお、局長は本日公務のため途中退席させていただきます。
 続いて、構成員の皆様方の御紹介をさせていただきます。恐縮でございますが、お名前を呼ばれた際に御起立いただき、一言御挨拶をいただきますよう、よろしくお願いいたします。据え置きのマイクに関しましてはスイッチが入っておりますので、そのままお話しいただければと存じます。まず、一般社団法人、グループ・ネクサス・ジャパン理事長の天野慎介構成員でございます。
○天野構成員 天野でございます。全国がん患者団体連合会の理事長も併せて務めております。よろしくお願いいたします。
○事務局 公益社団法人、日本医師会副会長の今村聡構成員は遅れて到着されるとの御連絡を受けております。
 公益社団法人、日本薬剤師会常務理事の川上純一構成員でございます。
○川上構成員 川上と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 公益社団法人、全日本病院協会副会長の神野正博構成員でございます。
○神野構成員 神野でございます。全日本病院協会というのは病院の数で2500余り、病院団体としては数では最大の病院団体の副会長でございます。また、私、専門は消化器外科で、能登半島で病院をやっております。よろしくお願いいたします。
○事務局 国立大学法人、神戸大学大学院医学研究科内科系講座、先端緩和医療学分野特命教授の木澤義之構成員でございます。
○木澤構成員 木澤でございます。日本緩和医療学会の副理事長も務めさせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 慶應義塾大学医学部外科学教授の北川雄光構成員でございます。
○北川構成員 北川でございます。現在、日本がん治療学会の理事長を務めさせていただいております。よろしくお願いします。
○事務局 学校法人、国際医療福祉大学副理事長・名誉学長の北島政樹構成員でございます。
○北島構成員 おはようございます。北島でございます。私、このがん診療提供体制のあり方は5回目ですけど、第1回目からいろいろ参加させていただいて、できるだけ患者さんの目線で検討できればいいと、そういうつもりでやってまいりました。今回、また新しい、先ほど局長からもお話ありましたように、バックグラウンドが変わってきたということで、是非皆さんと一緒に議論させてください。どうぞよろしくお願いします。
○事務局 地方独立行政法人、栃木県立がんセンター理事長・センター長の清水秀昭構成員でございます。
○清水構成員 清水です。私、地方のがんセンターということで、現場の声の観点でお話、議論させていただければと思います。よろしくお願いします。
○事務局 全国衛生部長会会長の鶴田憲一構成員でございます。
○鶴田構成員 鶴田です。現在、衛生部長会は専門医制度で、急に都道府県に役割が振られておりますので、そういう観点でも都道府県の立場というものを反映したいと思っております。よろしくお願いします。
○事務局 独立行政法人、国立病院機構九州がんセンター院長の藤也寸志構成員でございます。
○藤構成員 九州がんセンターの藤でございます。私は国立病院機構からこちらのほうに出るということの御指示を受けて、ここに入れていただきました。今までも、がん相談とか、いろいろ拠点病院の仕事とかで会議にも出ておりますので、拠点病院の立場でいろいろ考えさせていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 国立研究開発法人、国立がん研究センター理事長の中釜斉構成員でございます。
○中釜構成員 中釜です。私、この4月から国立がん研究センターの理事長を拝命しています。3月までは、研究所という視点からこのがん研究、がん医療を見てきたわけですけれど、これから幅広くがん診療提供という観点からも、議論に加わりたいと思います。それから、先ほど局長から説明がありましたように、がん診療提供体制に関してはゲノム医療、新しい視点も加わって、恐らく大きく変わろうとしていると思いますので、私の経験を生かして、貢献できればと思います。よろしくお願いいたします。
○事務局 近畿大学医学部放射線腫瘍学部門教授の西村恭昌構成員でございます。
○西村構成員 西村でございます。私は、今、日本放射線腫瘍学会の理事長を務めております。この会議には放射線療法を推進するという立場で、参加させていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 特定非営利活動法人、がんサポートかごしま理事長の三好綾構成員でございます。
○三好構成員 おはようございます。がんサポートかごしまの三好と申します。私自身、乳がんの患者です。患者と家族と、そして地方の声をなるべくそのまま伝えられるように頑張ってまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 国立大学法人、大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学教授の森正樹構成員でございます。
○森構成員 森と申します。大阪大学で消化器外科を担当しております。現在、日本外科学会と日本がん学会の副理事長も拝命しております。そのような立場で参加させていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 静岡県立静岡がんセンター総長の山口建構成員でございます。
○山口構成員 山口です。どうぞよろしくお願いいたします。私自身は、この検討会の1つのテーマであるがん診療連携拠点病院、この委員会で決定された要件に基づいて一つ一つの病院を指定する検討会があるのですが、そこの座長を今務めさせていただいております。毎回その要件が洗練されてはきているのですけれども、実際に運用しようとすると、何点か少し要件の問題で視点に苦慮する部分もありますので、是非その議論の中でそういうところの問題点を指摘させていただこうかと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 今村構成員が到着されましたので、改めて御紹介させていただきます。公益社団法人、日本医師会副会長の今村聡構成員でございます。
○今村構成員 日本医師会の副会長の今村と申します。前回のこの検討会にも参加をさせていただきました。私自身はがんの専門家というわけではございませんけれども、全国に900の地域医師会、そして47都道府県に医師会がございます。国民の皆様により良いがん診療が提供できるようにと、そういう立場で参加をさせていただいています。よろしくお願い申し上げます。
○事務局 ありがとうございます。なお、国立研究開発法人、国立がん研究センター中央病院副院長、呼吸器内科長の大江裕一郎構成員、公益社団法人、日本看護協会常任理事の川本利恵子構成員からは、本日御欠席との御連絡をいただいております。
 また、本日は2名の参考人を招聘しております。東京大学大学院医学系研究科生化学・分子生物学講座細胞情報学分野教授、また国立研究開発法人国立がん研究センター研究所長の間野博行参考人でございます。
○間野参考人 間野博行でございます。東大で、がん研究をしておりましたが、この4月から、がん研究センター研究所の所長を兼務することになりました。今日はがん研究者の立場から、日本に一刻も早くがんのゲノム医療というのを世界に伍して導入したいということ、そのためにはどういうことが具体的に必要なのかというお話をさせていただければと思います。よろしくお願いします。
○事務局 国立研究開発法人、国立がん研究センターがん対策情報センター長の若尾文彦参考人でございます。
○若尾参考人 若尾です。よろしくお願いいたします。
○事務局 続きまして事務局の紹介をさせていただきます。厚生労働省健康局長の福島でございます。
○健康局長 どうぞよろしくお願いします。
○事務局 健康局がん・疾病対策課がん対策推進官の丹藤でございます。
○がん対策推進官 丹藤でございます。よろしくお願いします。
○事務局 健康局がん・疾病対策課係長の山下でございます。
○事務局 山下と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 事務局の紹介は以上でございます。
 続きまして、資料の確認をさせていただきます。まず資料1「がん診療提供体制のあり方に関する検討会開催要項」、資料2「がん診療提供体制に関するこれまでの議論と今後の議論の方向性について」、資料3「我が国におけるがんゲノム医療の実践」、資料4「がん関連医療機関情報発信の現状と課題」。また、参考資料1「がん対策推進基本計画」、参考資料2「がん対策加速化プラン」、参考資料3「がん対策推進基本計画中間評価報告書」、参考資料4「今後のがん対策の方向性について」、参考資料5「がん診療連携拠点病院等の整備について」、参考資料6「ゲノム医療実現推進協議会中間取りまとめ」、参考資料7「ゲノム医療等の実現・発展のための具体的方策について(意見取りまとめ案)」。資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお申し出ください。よろしいでしょうか。以上をもちまして撮影を終了し、カメラを納めていただきますよう、御協力をお願いいたします。
 資料等に問題がなければ、まず議題1「座長の選任について」に移りたいと思います。資料1は本検討会の開催要綱ですが、「3.その他(2)」において、本検討会には構成員の互選により座長を置き、検討会を統括するとされております。構成員の互選により座長を選任させていただきたいと思いますが、どなたか御推薦いただけますでしょうか。中釜構成員、お願いいたします。
○中釜構成員 先ほどの自己紹介にもありましたけれど、この本検討会での御経験、御実績を踏まえて、北島構成員がふさわしいと思います。
○事務局 ただいま、北島構成員の御推薦がございましたが、そのほかいかがでしょうか。特になければ、それでは北島構成員に本検討会の座長をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
                                  (異議なし)
○事務局 ありがとうございます。それでは恐縮ですが、北島座長、座長席への御移動をお願いいたします。
                                 (北島座長着席)
○事務局 それでは北島座長より、改めて一言御挨拶をいただけますでしょうか。
○北島座長 改めておはようございます。大変な重責をいただきまして、身の引き締まる思いでございます。この会は、先ほど申しましたように、最初はがんの拠点病院、いわゆる均てん化ということが主眼で、拠点病院の推薦をさせていただきました。その後、先ほど山口構成員から、拠点病院の適否、それの決定が非常に大変ということで、まだまだ十分でないなと、そういう思いでお伺いしておりました。高齢化の時代、いみじくも福島局長から、やはり時代に即したがん対策・医療対策、これを迅速に対応しなければいけないという趣旨をお伺いいたしました。我々として、今日構成員の皆様はそれぞれの分野でオピニオンリーダーの方であるということが、先ほど御紹介いただいて、私も認識したわけです。この検討会が非常に実のある会になることを期待しております。特に、私自身消化器外科が専門で、ずっとがんの研究と臨床をやっておりました。患者さんの目線で、そして誰がどんなところでも同じような治療が受けられる、これが理想ですが、そういうところに一歩でも近付くように、この検討会が建設的な意見、これを是非提言できるように御協力のほど、よろしくお願いいたします。今日はどうぞよろしくお願いします。
○事務局 ありがとうございます。以降の進行は北島座長にお願いいたします。
○北島座長 それでは、議題2「がん診療提供体制のあり方について」に移りたいと思います。本日は、事務局よりこれまで検討状況の報告をいただきます。報告をいただいた後、先ほど御紹介いただきましたように、お二人の参考人から資料を御提出いただいておりますので、その内容について御説明をいただき、その後、その内容に関して委員の皆様から、がん対策の推進について幅広い御意見を賜りたいと思います。まず、事務局より、これまでの検討状況について御説明をお願いします。
○事務局 では資料2に即して御説明させていただきたいと思います。資料2「がん診療提供体制に関するこれまでの議論と今後の議論の方向性について」、まず、がん対策全般について御説明いたします。がん対策は、がん基本法に基づき「がん対策推進基本計画」を策定し、この基本計画に基づいて推進しているところです。現在、平成24年6月に策定しました第2期目のがん対策推進基本計画に基づき、重点的に取組むべき課題として4つの項目、また全体目標として、平成19年度からの10年目標、例えば、がんによる死亡者数の減少、全てのがん患者とその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上、がんになっても安心して暮らせる社会の構築、こういった目標をもって、その下に分野別の施策、個別目標を立てた上で、推進してきたわけです。その中で、がん医療等に関連する項目について、赤枠で囲わせていただいております。
 また、平成24年6月のがん対策推進基本計画の中で、特に推進すべきこととして、平成27年12月に「がん対策加速化プラン」というものを策定いたしました。加速化プランでは、予防、治療・研究、がんとの共生という3つの柱を立て、その3つの柱に基づいて推進すべき事項をこのような形で掲げさせていただきました。実施すべき具体策の中で、特に真ん中に記載の「治療・研究」、また「がんとの共生」との中で就労支援、こういったことが今回の検討会の診療提供体制というところに深く関わってくるのではないかと存じます。
 次のスライドを御覧ください。プランの柱の1つの「がんの治療・研究」の中に、がんのゲノム医療、標準的治療の開発・普及、がん医療に関する情報提供や小児・AYA、あらゆる世代、希少がん対策、がん研究、等を盛り込んでおります。また、次のスライド「がんとの共生」には就労支援といったことも盛り込んでおります。
 加速化プランに基づいた対策を進めつつ、、来年には次期のがん対策推進基本計画を策定するということがあり、こちらについてはがん対策推進協議会で今後議論を進めていくわけです。その中で、がん対策推進基本計画、がん対策推進基本計画中間評価報告書、また今後のがん対策の方向性について、がん対策加速化プランへの提言といったものを策定しており、次期基本計画策定に向けた議論を行うこととされております。
 2番目に、次期基本計画策定に向けて議論すべき項目のうち、検診、医療提供体制、緩和ケア以外の領域は協議会で順次議論することとされており、検診や医療提供体制、緩和ケアについてはそれぞれの検討会を活用し、課題や対応案を議論した上で、平成28年8月を目途に提言を協議会へ報告し、協議会は提言を踏まえて、次期基本計画に盛り込むべき事項を議論することとされております。この3つの検討会のうち、1つが「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」でして、がん医療をいかに提供するかという点について御議論いただきたいということになっております。今後のスケジュールは今お話したとおりですが、以下、表にしておりますので御参照ください。
 続きまして、がん診療提供体制に関するこれまでの施策ということで、主に本検討会で、第1回から第4回において御議論いただいたことなどを中心に御説明させていただきます。がんは、日本で昭和56年より死因の第1位である。こうしたことからがん診療体制の一層の充実を図るために、平成13年に地域がん診療拠点病院のあり方に関する検討会を設置し、初めて地域がん診療拠点病院という病院制度を開始しております。平成16年に、がん医療水準均てん化の推進に関する検討会を設置し、がん医療水準の均てん化に向けて御議論いただき、がん診療連携拠点病院の整備に関する指針を策定しております。平成19年4月にがん対策基本法が施行され、同年6月に、がん対策推進基本計画が策定され、この基本計画に基づいて、更なる機能強化に向けた検討を進めていくこととされております。そして2期目のがん対策推進基本計画に基づき、患者とその家族が納得して治療が受けられる環境の整備とチーム医療の体制整備に向けた検討を進めていくこととされ、がん診療提供体制のあり方に関する検討会を設置しております。
 次のスライドを御覧ください。本スライドは第1回の本検討会の資料を一部改編したものです。こちらは第2期のがん対策推進基本計画の中から、医療提供体制に関することを抜粋し、こうした項目を中心に第1回から第4回の検討会で御議論いただき、現在の「がん診療連携拠点病院等の整備指針」を策定いただいております。内容としては、平成26年1月の整備指針において、地域がん診療連携拠点病院、都道府県がん診療連携拠点病院という枠組に加え、それまでがん診療連携拠点病院を配置していなかった、いわゆる「空白の医療圏」と呼ばせていただいている医療圏において、更にがん医療を提供するために、地域がん診療病院という新たな枠組みを作りました。こちらは、空白の医療圏と隣接する二次医療圏にあるがん診療連携拠点病院とグループとして指定し、連携と役割分担によってがん医療に対応していただく制度です。
 次に、特定領域がん診療連携拠点病院という枠組みを、新たに平成26年1月以降作っており、特定のがんについて、当該都道府県内の最も多くの患者を診療する医療機関を指定することで、こういった連携の枠組みの中に入っていただきたいということで指定しているところです。
 次のスライドはがん診療連携拠点病院、また新たに作りました地域がん診療病院の指定要件について大まかにまとめたものです。がん診療連携拠点病院に関しては平成26年1月の整備指針以前よりも、診療実績を具体的に加えることなどにより、一層厳しく指針を策定してきたところです。一方で、地域がん診療病院に関してはこういった拠点病院とグループ化をすることとしており、一定程度緩めた要件となっております。医療施設に関しても同様です。
 次のスライドでは、診療従事者に関する指定要件を抜粋しております。こちらも、がん診療連携拠点病院に関しては一層厳格な制度が敷かれたわけですが、地域がん診療病院では一定程度緩和された要件となっております。ただし、例えば緩和ケアチームやがん相談支援センター、こういった地域で積極的に提供していただきたい要件に関しては拠点病院とほぼ同等の要件と、こういった仕組みになっております。
 次のスライドを御覧ください。平成28年4月1日の時点で、がん診療連携拠点病院は都道府県がん診療連携拠点病院と地域がん診療連携拠点病院、国立がん研究センター、特定領域がん診療連携拠点病院を含めて、399か所指定されております。地域がん診療病院に関しては、現在28か所ございます。
 拠点病院のない空白の二次医療圏の推移について、次のスライドでお示ししております。地域がん診療病院を指定するようになり、再度空白の二次医療圏が徐々に埋まってきております。
 これまでの議論を踏まえ、今回、がん診療提供体制のあり方に関する検討会において議論すべきこと(案)として、事務局より提示させていただきます。総論として、これまで均てん化を目指してがん診療提供体制の整備を進めてきましたが、今後がん診療提供体制はどうあるべきか。また、その中で各論として、話題になっておりますけれども、がんのゲノム医療、がん医療に関する情報提供、がん診療連携拠点病院等における医療安全、がんの放射線治療、がん診療連携拠点病院等の指定の検討会における論点、こういったことを中心に御議論いただいてはどうかと、提示させていただきます。
 次のページを御覧ください。昨年、がん対策推進基本計画において、基本計画の中間評価報告書を策定いたしました。その中で、幾つか評価項目がございまして、例えば多職種が参加するがん患者さんの治療方針を決めるキャンサーボード、こういった会議が設置された拠点病院の割合は、平成27年6月の報告書の時点で99.8%。緩和ケアチームに加えて、栄養サポートチームや感染制御チーム等、臓器横断的な専門チームが存在する拠点病院は99.0%。拠点病院において、医師からセカンドオピニオンが受けられることの説明を受けたがん患者の割合は40.3%。腫瘍センターなど、各診療科の横のつながりを重視した診療体制の構築については、拠点病院の中でも大学病院を除いた数としては、がん診療を統括する診療部を設置している施設は25.3%。外来化学療法加算などはかなり算定する施設が増えてきましたが、臓器横断的ながん臨床教育制度がある拠点病院の割合は39.1%。ほかにも様々な項目があります。こうしたことなどを踏まえ、がん診療提供体制全体として均てん化できているのか、また今後集約化したほうがよい領域や機能など、均てん化と集約化のバランスについて検討してはどうかとさせていただいております。
 次に各論です。まず、がんゲノム医療です。がんゲノム医療に関してはがん対策加速化プランの中でも記載しており、今後実施すべき具体策として家族性腫瘍等の遺伝子変異陽性者に対する検査・治療・支援のあり方を検討するとされております。現在、政府でゲノム医療実現推進協議会・ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォース、こうした会議が開催されております。その体制の表を記載した上で、会議の中間取りまとめや議論の取りまとめの抜粋を掲載しております。ゲノム医療実現推進協議会中間取りまとめの中でも、人材育成や遺伝カウンセリング体制の整備、こういったものがまとめられております。また、ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォースのゲノム医療等の実現発展のための具体的方策について意見の取りまとめ。こういった取りまとめが現在行われているところで、もうしばらくすると最終的なものが出されると聞いております。その中でも、がんゲノム医療の提供体制については海外の取組を参考にしつつ、地域でがん医療を担う医療機関と高度な技術を要するゲノム医療を担う医療機関の果たすべき役割や機能に留意し、がん診療提供体制のあり方に関する検討会において更なる検討を行うことと、本検討会で引き続き議論してほしい旨の記載がございます。
 こうしたことを受け、がんゲノム医療提供体制はどうあるべきか、その体制を構築するためにどのような施策が必要か。こういったことをがん診療連携拠点病院の特性にも留意した上で、検討してはどうかとしております。
 次に、がん医療に関する情報提供です。情報提供に関しても、がん対策加速化プランの中で、まず現状と課題として、多くのがん患者や家族のみならず医療関係者でさえ必要な情報にたどり着くことができていないことが課題となっているとされており、それに対して実施すべき施策として診療実績や医療従事者の配置等、患者や家族が必要とする情報を簡単に検索でき、医療施設同士の比較も可能なシステムを構築することとされております。こうしたことを踏まえ、がん医療に関する情報提供のあり方や、患者や家族が必要とする情報について検討してはどうかとしております。
 次に、がん診療連携拠点病院等における医療安全についてです。がん対策加速化プランの中で、医療安全に関しては現状と課題として、昨今拠点病院において重大な事案が相次いで発生し、3つの拠点病院について指定更新を行わなかった背景がございます。また、厚労省では大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォースを設置し、特定機能病院に対する集中検査を実施し、このような結果を踏まえて、現在特定機能病院の承認要件の見直しを行っているところです。そこで実施すべき具体策として、特定機能病院に対する集中検査の結果や、承認要件の見直し等も参考にしつつ、拠点病院等において備えるべき医療安全に関する要件の見直しを行うとしており、これらを踏まえてがん診療連携拠点病院等において備えるべき医療安全のあり方について検討してはどうかとしております。
 次に、がんの放射線治療についてです。こちらはがん対策推進基本計画中間評価報告書の中で、先進的な放射線治療機器の適正配置についての検討が必要ということが言われております。放射線治療医を含めて、専門医について国全体としての均てん化に向けた計画的な養成と全国への派遣システムの構築、こういったことも必要と、提言の中で言われております。また受診の利便性や医療資源の適正配置等を考慮しながら、がん医療の均てん化と集約化の適正なバランスを検討していく必要があるともされております。こうしたことを踏まえ、近年放射線治療は多種多様になっており、リニアック以外の装置による治療や、放射性医薬品の内用療法等も普及しているため、がん医療の均てん化と集約化の適正なバランスを勘案しながら、施設基準や配置する医療従事者に要求する専門知識等のあり方などについて検討してはどうかとされております。
 次に、がん診療連携拠点病院等の指定の検討会における論点として、先ほど山口構成員からも御発言いただきましたけれども、現在がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会において、拠点病院の指定を行っております。現在の指針に即した形で指定を行っています。例えば具体的な診療実績を要件として求めてはおりますが、悪性腫瘍の手術件数は年間400件以上とか、がん登録を500件以上行うとか、そういったことを定めておりますが、これはおおむね満たすこととされていることなど、指定の可否について検討する際に判断が難しいことなどがございます。また、地域がん診療連携拠点病院については二次医療圏内に原則1か所とされておりますが、複数の医療機関が同一の二次医療圏から新規推薦される場合には、「当該都道府県におけるがん診療の質の向上及びがん診療の連携協力体制の整備がより一層図られることが明確である場合には、この限りではないものとする」とされております。このような場合、同一の二次医療圏に複数の医療機関を指定する際の基準をより明確化する必要があるのではないかといった議論もございます。また、現在の指針で対応がなかなか難しいことも出てきており、例えばがん診療連携拠点病院に既に指定されている医療機関の設備や医療提供体制を変更した場合の対応について、一定の基準が必要ではないか。具体的な例は下にございます。このようなことを踏まえ、またこの指定の検討会の議論を踏まえた上で、整備指針の内容を検討してはどうかとしております。
 今後のスケジュール案として、以下にスケジュール表を掲載しております。まず、本日5月20日に第5回を開き、今後は月に1回程度会議を開催させていただきたいと考えております。次期がん対策推進基本計画に向けた議論の取りまとめや、がん診療連携拠点病院等の整備に関する指針改正に向けた取りまとめを行ってまいりたいと考えております。事務局からは以上です。
○北島座長 御説明ありがとうございました。それでは、これから議論に入っていく前に、本日、先ほど、御紹介がありましたように、がん診療提供体制におけるトピックスが幾つかあり、お二人の参考人に御出席いただいております。まず最初に、間野参考人から発表していただきます。間野先生、よろしくお願いします。
○間野参考人 ありがとうございます。では、資料3を御覧ください。我が国におけるがんゲノム医療の実践と題して、御紹介させていただきます。
 2ページを御覧ください。遺伝子というのは英語で言うとGeneであり、ゲノムという言葉はその造語であります。Geneという遺伝子に、全体や固まりを表わすomeという接尾語を付けて作られたものです。Geneにomeを付けて、英語で言うとGenome、それを日本語でゲノムと呼んでいますけれども、ある生物種が持つ遺伝子全体、遺伝情報の総体のことをゲノムと言います。
 次のページを御覧ください。よく誤解されるのですが、がんは遺伝子の病気ではありますが、遺伝病ではありません。遺伝病というのは、精子や卵子などの生殖細胞のゲノムに起きた異常によって、その子供や孫に伝わる病気が遺伝病であります。一方、生殖細胞の精子や卵子のゲノムに、異常ではないけれど遺伝子配列の違いがあることを多型といいますが、多型は髪の毛や皮膚の色の違いなどの原因になり、それがその人の遺伝的個性になります。ただし、多型によっては喘息の起こりやすさとか、高血圧の起こりやすさとかにも関係しますから、多型は多因子疾患の罹患素因にもなりえます。
 しかし、大事なことは、生殖細胞に起きている異常でなければ遺伝病にはなりません。一方、がんというのは、精子や卵子、つまり精巣や卵巣に起きている異常が原因ではなくて、そことは違う臓器の細胞に後天的に起きたゲノムの異常によって起きる疾患であります。ですので、胃がんや大腸がんでも肺がんでも、基本的には、そのがんは遺伝するわけではありません。その点は、よく理解しておいてもらいたいのです。
 がんは遺伝子の疾患ではあるけれども、遺伝病ではない。遺伝子の疾患であるならば、それを標的にした薬を作ればいいのではないかというのが、その下の4ページの、いわゆるがんの分子標的治療薬です。例えばこの細胞で言いますと、赤の星印で示されるタンパク質が、ゲノムの異常によって、突然、常に細胞増殖を促すようなタンパク質に変化してしまってがんの原因となる。そのようなタンパクの機能を直接阻害することができれば、がんを死滅させられるのではないかという発想に基づいたものが、がんの分子標的治療薬です。特定の分子、特定のタンパク質をターゲットにして抑える薬剤ががんの分子標的治療薬と言えます。
 5ページを御覧ください。これは私たちが発見したEML4-ALKという新しい肺がんの原因遺伝子です。EML4-ALKは肺腺がんの5%前後に見つかります。ALKというのは、本来、正常の細胞の増殖を促す酵素なのですが、EML4と融合すると、その酵素活性が数百倍にも増強して、肺がんを直接引き起こしてしまいます。したがって、ALKは酵素ですので、それを抑える薬剤も作ることができて、今、実際に臨床の場で使われています。
 例えば、そのページの左側の図は、旧来の化学療法で肺腺がんに、どういった化学療法の組合せが最も良く効くかということを大規模に第III相臨床試験を行ったデータですが、残念ながら、どれもよく効かないという残念な結果でありました。ところが、肺がんであっても、それがEML4-ALK陽性であれば、新しいALK阻害剤を使うことができて、その右側の図にありますように、単一の薬を1日2回飲むだけで、3年生存率が8割という夢のような治療効果がもたらされます。がんの分子標的治療薬は、実際のがんの原因をがん研究で見つけて、それを抑えることができれば、このように目覚ましい治療効果がもたらされます。
 次の6ページを御覧ください。かつて、肺腺がんは僅か10年前までは、KRASというがん遺伝子しか知られていなくて、それに対する薬剤はありませんでした。ですから、肺腺がんは肺腺がん全体として化学療法を行っていたわけであります。ところが今では、肺腺がんは実はその中には活性型EGFRが起きている肺腺がん、KRAS変異が起きている肺腺がん、先ほどお話したEML4-ALKが起きている肺腺がん、それ以外にもMETの活性化、ERBB2の遺伝子、BRAFという遺伝子、RETという遺伝子、あるいはROS1という遺伝子の異常によって起きている肺腺がんの集まりであることが分かってきました。
 そうすると、肺がんだから、肺腺がんだからこの化学療法という選択は、もう今はできなくて、その肺腺がんが何によって、どういうゲノム異常によって起きているのかということを調べないと、最適な薬は投与できないという時代に、もう既になっています。ここで赤色で示すEGFRとALKに対しては、日本で保険で承認された薬が実際に実臨床で使われていて、当然のことながら、それぞれの遺伝子異常があるかどうか調べる診断薬も保険で承認されています。
 一方、緑色で書いてある遺伝子群については、それぞれ専用の阻害剤が作られて、既に臨床試験が始まっています。ですから、その臨床試験で有効性が確認されれば、EGFRやALKの阻害薬と同様に保険収載されて、実臨床に応用されていくと思います。肺がんだけに限らず、例えば、EML4-ALKという融合遺伝子は、確かに肺腺がんに多いのですが、まれに大腸がんなどにも存在します。大腸がんの患者さんがもしALK陽性であれば、ALK阻害剤の治療を受けるという極めて大きな恩恵を受けることになります。つまり、特定のがん、肺がんだからこういう治療、大腸がんだからこういう治療というだけでは、もう患者さんに最適な治療を選べなくて、そのがんのゲノムを調べて治療介入をするというがんのゲノム医療を行わないと、患者さんに最適な薬を投与できないという時代になってきました。
 次のスライド、7ページを御覧ください。アメリカではがんのゲノム医療は大変に進んでおり、既にFOUNDATION MEDICINEなどの、がんのゲノム医療の診断サービスの会社ができています。医師がパラフィン包埋スライドをFOUNDATION MEDICINEに送って、FoundationOneという診断サービスを行ってもらいます。肺がんだろうが胃がんだろうが患者さんが希望すれば、自分のがんの組織をFOUNDATION MEDICINEに送って、FDAが既に承認した薬と、現在臨床試験が行われている薬のターゲットである遺伝子に関しては、一回の検査で調べてレポートするというサービスがアメリカで進んでいます。
 例えば、このFOUNDATION MEDICINEのFoundationOneというサービスは、315遺伝子の点突然変異を調べて、同時に28遺伝子については、先ほどのEML4-ALKのように遺伝子の融合を調べます。これを次世代シークエンサーを用いて、1度の検査で全部明らかにすることができます。結果が帰るまで約2週間のturnaround timeで5,800ドルという値段が付いています。患者さんあるいは担当医師は、右側にあるようなレポートを送られるとともに、オンラインで情報にアクセスすることも可能です。
 例えばここでは、Genomic Alterationsとして、EGFRとMDM2、ATMの恐らく変異があったのでしょうが、それに対してFDAが既に承認した薬はこれこれがあります、それがなくても、もし臨床試験の薬がある場合には、それは一番右のClinical trials availableと書いてあって、そこにどこの場所で、どういうIDを持った臨床試験が行われているかという情報が記載されています。医師と患者さんはその情報を基に薬を選んだり、あるいは別の臨床試験が行われている施設に患者さんを紹介することが行われています。
 アメリカでは御存じのように保険診療はプライベートなinsurance companyが多いですから、その一部では、多遺伝子を一度の次世代シークエンサー解析で結果を出すサービスをカバーしています。それもあって、アメリカで大規模にこういった遺伝子診断サービスが進んでいます。
 次の8ページを御覧ください。アメリカでは今も言いましたが、FOUNDATION MEDICINEなどのプライベートな企業だけではなく、例えばMemorial Sloan Kettering Cancer Centerでは、自分の所でMSK-IMPACTというMulti Geneの診断サービスを始めて、こちらは341遺伝子で、3週間のturnaround timeで3,500ドル。それから、その左側はUCSFですが、これでは500ぐらいの遺伝子で、より安い値段で行っています。
 また、病院やアカデミアが始めているだけではなくて、例えばイギリスでは、Genomics Englandという会社を国が作って、そこで10万人のゲノム全体を読んで、がんの治療あるいは難病の治療に役立てようということを既に始めています。
 また、MAYO CLINICという病院も、単一の病院自ら、自分の所に来た10万人の患者さんのゲノムを読んで、診断サービスをするだけではなくて、新しい知財をそこで獲得しようという動きを進めています。これらの動きは、去年の1月に、オバマ大統領がPrecision Medicine宣言を行ったことによって大幅に加速して、今、NIHのフランシス・コリンズ所長の下で、それに予算を付けて大々的に進めてやっています。ちなみに、FOUNDATION MEDICINEはRoche社に買収されましたので、こういった遺伝子診断サービスを世界レベルで始めていくと思われます。
 翻って日本では、まだ何もされていない状態で、日本においてもゲノム情報を用いて治療介入するゲノム医療というものを早急に開始して、日本の知財を確保する必要があります。今現在、日本でクリア基準検査室を作ってやっているのは、恐らく国立がん研究センターだけだと思います。例えばFOUNDATION MEDICINEは、診断サービスをするのですが、そこで発見した新しい融合遺伝子や、新しい遺伝子変異に関しては、知財を会社が取得します。ですから、今、例えば日本で、海外のこういう診断サービス会社にサンプルを送って診断してもらうということをやっている所もあるみたいですけれども、個々の例でどうなっているかは分かりませんが、その多くの例では診断サービス会社が知財を獲得しますから、日本人は高いお金を払って、海外にサンプルを送って、知財を与えているというのが、今の日本の現状であります。
 次のスライドをお願いします。我が国ではゲノム医療を実践するには何が必要かというと、これはたくさんの要素を有機的に連結してスタートする必要があります。まず、注意すべきは、患者や医師にデータを返して治療介入しますので、正確な意味では医療にはならないのですけれども、ほぼ医療に近い行為とみなされます。したがって、解析結果には責任が伴うのです。
 例えば、私の研究室で次世代シークエンサーで、患者さんのサンプルを解析できますが、たまたま院生がサンプルを間違えて、その結果に基づいて治療してしまった場合に、誰が責任を取れるのか、どのように責任を取るのかということにすごいリスクが伴います。
例えば、アンジェリーナ・ジョリーという女優さんは、BRCA1に異常があったために正常な乳房の摘出を行いましたけれども、アメリカでそういった正常乳房摘出手術を行った後に、BRCA1の異常が間違いでしたということで、裁判が起きています。そういうリスクを必ず研究者側は注意しないといけないわけです。
 ですから、やはり、ここはプロの検査室に入ってもらって、日本のISO15189基準、あるいは国際共同治験に参加するのならば、アメリカのCAPやCLIAという基準に準拠した検査室で患者さんに情報を返していくことをやらないといけないと考えています。そういった国際基準あるいは日本の基準に準拠した検査室で、Standard Operating Procedure(SOP:手順書)に基づいて診断した情報を患者さんに返すということを、是非、日本に根付かせる必要があります。
 次はゲノムデータのうち、どの情報が治療介入に有用か。例えば400種類の遺伝子を点突然変異と遺伝子融合を全部調べたとして、大体5~10個ぐらいアミノ酸を置換するような変異が見つかってきます。そのうちどれが本当に発がんに関係しているのか。言い換えれば、どの遺伝子に対する薬を優先して使えばいいのかというデータを蓄える必要があります。このためには当然、ゲノム情報と医学の両者に精通した人材が必要です。医師・患者データを返す所では、検査産業が参入してこないといけませんし、ゲノムデータのうち、どの情報が治療機関に有用かということは当然、医師と研究者と、それからゲノムの情報解析産業が入ってくる必要があります。
 アメリカには公的なClinVarという、ヒトの疾患関連ゲノム変異情報、これはがんだけに限りませんが、そういう非常に大きなデータベースがあります。あるいはMyriadというメーカーは、これはプライベートなカンパニーで、BRCA1/2の変異を独占的にこれまで解析してきた会社です。そういった所は、独自のBRCA1/2変異の知識データベースを持っています。例えばBRCA1/2は、去年でしたか、アメリカの最高裁で特許が却下されましたから、今は、Myriad以外もBRCA1/2を調べることができます。
 ところが、BRCA1/2も、もし患者さんに変異があったときに、その変異が本当に乳がんの原因になる変異なのか、ならない変異なのか、既に明らかになっている変異ならばいいのですが、まだ見たことがない変異については、それががんの原因であるかどうか、つまり予防的に乳房摘出をするべきかどうかという判断を、これまでMyriadは独占的にサービスを行ってきましたから、膨大なデータベースを自社に持っているのです。ですから、結局、Myriadにも頼らざるを得ないというのが今の状況です。
そういう知識データベースを、是非日本の中でも作り上げる必要があります。どこかの日本以外の会社がそれを持っていて、幾ら以上お金を出さないと情報をあげませんと言われたら、日本の医療は困るわけですから、そういう情報のナレッジデータベースというのを、日本で作る必要があります。
更にその情報をには、子供に罹患素因が伝わり得るような情報だった場合にもあり得ますから、それに対応した広い範囲の人材が必要になります。遺伝カウンセラーもそうですし、医療倫理に関する専門家もそうですし、バイオインフォマティシャンも必要ですし、それから当然、コメディカルのスタッフも最低限のゲノムに関する知識は持っておく必要はあると思います。ですから、例えば大学あるいは病院の看護学部や看護大学などのコースにも最低限のゲノムの情報を、例えば、先ほど最初のほうに申し上げた、がんは遺伝する病気ではありませんということ、体細胞変異と生殖細胞の変異の違いなども当然のことながら、看護学部などにも教えるべきだと思いますし、もっと言えば、それは中学校の授業等で取り入れてしかるべき時代になっているのではないかと思います。
 10ページを御覧ください。まとめてみると全体としては、アカデミア、病院、産業界のいずれが欠けても日本のゲノム医療は発展していきません。例えば、病院から矢印でシークエンス室、ISO15189やCLIAやCAPに準拠したシークエンスとしてそれを解析する。その際には診断産業界がそこに入ってくる。その次世代シークエンスで得た膨大な情報をクラウドかあるいはローカルなコンピュータでそれを計算して、そのデータを返す。ゲノム医療を行う病院では、ゲノム情報の専門家、臨床医、病理医、遺伝カウンセラーなどが集まったエキスパートパネルみたいなものを作って、エキスパートパネルがどれどれの情報を返しますということを決定する。当然のことながら、将来的にはそのレポートは電子カルテに取り入れてしかるべきだと思います。また400個の遺伝子のパネルを解析して、何も異常が見つからなかった場合には、ここからゲノム医療と離れて、更なる原因遺伝子変異探索研究を行うゲノム研究のグループが、連動していて新しい変異を見つけていく。さらにそれによってゲノム医療に用いる解析遺伝子セットがバージョンアップしていくというサイクルにしなければ駄目です。
 しかも、実際にやってみると例えば、4種類の遺伝子に未知の変異があることが分かって、どれも既存のがんの原因と分かっている変異ではない場合に、その4つのうち、どれから標的に治療していくかということは、コンピュータを使って予測することになるわけです。実際に薬を投与して効果があれば、変異遺伝子が原因であったという極めて貴重な情報になります。それを知識データベースに戻していって、それを大きなものにしていくということをやらなくてはいけない。日本では1つの施設の患者数に限りがありますので、ある程度、共通の知識データベースみたいなものを作らないと、諸外国に競争力を持てないのではないかと考えます。
 11ページを御覧ください。私は先ほどまで、がんを遺伝子の疾患であるが、遺伝病ではないと申し上げてきたのですが、実はこの言い方は、本当は正しくないのです。精子や卵子などのゲノムの異常によって、罹患素因が遺伝するがんというものが存在します。遺伝性腫瘍あるいは家族性がんというものは、その家系において特定の発がんリスクの異常が上がります。先ほどのBRCA1/2などは非常に有名な例です。ですから、胃がんや肺がんがそのままお子さんに伝わることはない。それは間違いないですが、だけれどもがんになりやすいというリスクは、代々子孫に伝え得る、既に明らかになっているものが12ページに書いてあります。
 家族性腫瘍、遺伝性腫瘍の原因遺伝子は、大体分かっているだけで100種類ぐらいあると思います。例えば、ここに書いてあるように、p53やBRCA1/2、それからリンチ症候群の大腸がんの遺伝子などが書いてありますが、非常に多数の遺伝子があります。ところが、患者さんの腫瘍で、これら家族性腫瘍遺伝子の解析をして異常が見つかった場合に、どれを患者さんに返せばいいかというのは、難しい判断です。というのは、遺伝子ごとにどれぐらいがんになりやすいかという相対危険度が随分違うのです。例えばp53が完全に両アレルで壊れていると、がんの発症リスクは100倍以上、上がります。ですから、これは明らかに患者さんに伝えるほうがメリットはあるのです。BRCA1では11倍ぐらいあります。でもNF1は2.6倍ぐらいですから、どの程度の相対危険度の遺伝子異常を患者さんに返すかどうかということは、まだスタンダードが決まっていません。たまたま見つかったincidental findingsをどう扱うかというのは難しい問題で、例えば相対リスクがものすごく高い遺伝子については、返すということを、そういうルールを決めて行うのは妥当な選択だと思うのですが、その遺伝子、例えばBRCA1にしても、タンパク質が壊れるようなストップ変異であっても、タンパク質のおしりのほう、C末端というのですが、そこのストップ変異は、必ずしもリスクにならないのです。ですから非常に難しくて、だからこそMyriadは独占的な商売を続けることができるのです。
 そのための知識データベースを拡充するとともに、がん専門の遺伝カウンセラーが必要です。遺伝カウンセリングは、これから極めて重要になってくる部分で、日本では臨床遺伝専門医という制度と認定遺伝カウンセラーという制度があって、後者のほうが、専門の養成講座を大学院にもって、それを卒業した方だけがなれるものですけれども、認定遺伝カウンセラーは数百人しか日本にはまだいなくて、非常に足りない状況です。残念ながら東大にも1人もいらっしゃらない状況なので、そういう認定遺伝カウンセラーを育成することが必です。
つまり、家族性腫瘍や遺伝性腫瘍に関しては、遺伝カウンセラーの体制が必要であることと、あるルールを持って、特定の遺伝子に関してはその情報を患者さんに返したほうがいいというような、そのメリットがあると決める必要があること。それから、遺伝性腫瘍に関連する遺伝子については、どの患者さんでどういう変異があるのかという情報を蓄える共通のナレッジデータベースを作る必要があると考えます。以上です。
○北島座長 間野先生、どうもありがとうございました。がんのゲノム医療に関して、確かにがんの治療というのは、個別化の医療に入ってきていると思います。それが最適医療だと思いますが、ゲノム医療に関してもまだ幾つかの問題点も残っておりますし、がん対策加速化プランで盛り込まれてきた内容ですので、この検討会で議論を十分にして、次に推進していく必要があると思います。
 アメリカでは既に先ほども御紹介ありましたように、オバマ大統領がPrecision Medicineということで、かなり強調されておりますので、1つの方向性としては、やはり我々もこのゲノム医療を考えていかなければいけないと思っております。ただ、やはり、ゲノム医療をやったときのファンディングの問題や、先ほども先生が述べられましたが、遺伝カウンセラーの問題が非常に大きな問題で、実はThe New England Journal of Medicineの編集委員会のときも、NIHの職員が来て、遺伝子診断の講演をしたときに、私はまだ発症していない人が検査を受けて、遺伝子異常がありますと言われたときに、どうやって、そのクライアントに説明するのですかと聞いたことがあります。Good questionと言ってくれたのですが、その先が余り出てこないし、そういう問題も幾つかあると思いますので、それはまた後に議論していきたいと思っております。
 次に、若尾参考人から発表していただいた後、質疑時間を設けておりますので、両方合わせて御議論していただきたいと思います。では若尾先生、よろしくお願いします。
○若尾参考人 それでは報告させていただきます。資料4と、あと委員の先生方には、机上配布資料ということで40ページほどの資料がありますので、そちらも合わせて御覧ください。先ほどのがん対策加速化プランの説明にございましたが、医療機関の情報について、私ども国立がん研究センター・がん情報サービスなどで発信をさせていただいておりますが、まだ、患者さん・ご家族の方、あるいは医療者の方にも十分この必要な情報にたどり着いていないということで、まず現状として、今どのように作っているかということをお示しして、私どもの考える論点等を御提示できればと思います。
 スライド2枚目を御覧になってください。主にはがん診療連携拠点病院などの情報についてお話させていただきます。この情報源としては、スライドを右から御覧になってください。拠点病院等から、毎年厚生労働省に現況報告書というレポートが提出されています。現況報告書はエクセル2ファイルで、シートが66シートあるようなもので、全部で194ページある非常に膨大なものです。各拠点病院の先生方は、非常に苦労して作成されているというのが現状です。それと拠点病院の要件の中で、院内がん登録のデータを、毎年国立がん研究センターに提出するということが義務付けらています。私ども国立がん研究センターでは、この現況報告と院内がん登録のデータを頂きまして、主に現況報告からは拠点病院のデータベースというのを作って、病院を探すという形で公開させていただきます。
 また、院内がん登録のデータからは、院内がん登録の報告書という形で、これもPDFをがん情報サービスから提供させていただきます。
 それともう1つ、院内がん登録の件数検索システムというのを作りまして、これを完全に公開ではなくて、都道府県拠点病院のがん相談支援センター、あるいはがん対策情報センターのがん情報サービスサポートセンターで、このデータベースにアクセスして、そのデータをお知らせするということをやらせていただいています。
 3枚目です。具体的な入口などをお示ししています。がん情報サービスについては2006年から公開を始めまして、以後、随時改変をして、これが今現在の形になっています。こちらのがん相談のところから3番目に御紹介しました施設別院内がん登録件数検索システムへ、がん登録・統計というアイコンから、院内がん登録の報告書へ、病院を探すから現況報告のデータベースに入ります。「病院を探す」のデータベースでは、一番上に4つ囲っていますが、本日は、拠点病院の情報等を、御紹介いたします。その拠点病院の情報の構造を示しましたが、スライド4枚目となります。
 まず、右側のブルーの色地の所を御覧になってください。先ほど現況報告で集めた情報と御説明しましたが、それらの情報はこのブルーの中の下側にあります指定要件に関する情報タブという中に、現況報告そのもののデータについて、66ある別紙のPDFを含めて全部収納しています。ただ、それは非常に見にくいものですので、その中から診療を受けるに当たって必要と思われる情報、これも私ども、あるいは厚生労働省、あるいは患者・市民パネル方々等と御相談しながら、それを選択して、上のような5つのタブを作って、そちらで公開しています。スライド左を御覧になってください。では、この拠点病院のリーフのページにどのようにアクセスするかということでは、先ほどの病院を探す、拠点病院などを探すから、一覧から見たり、あるいは都道府県を選んで地図から探したり、対応状況から探す、専門医療職から探す、病院名から探す、がんの種類から探すというような探し方があります。
 あとは特殊なものでは、一番下の臨床試験を探すというところで、臨床試験の一覧から臨床試験を実施している拠点病院については、その医療機関名が出て、そこから臨床試験の窓口にリンクしているような形があります。
 スライド5で具体的なページをお示ししています。こちらのスライド5にありますのが、拠点病院を探すのページで、こちらからさまざまな探し方へのリンクがあります。全国の一覧というのは、ページの関係上右に置いていますが、この日本地図の下に付いているものです。地図から探すのページが6ページ目です。例えば東京都を選ぶと、東京都の地図が出て、青いアイコンが地域拠点病院で、この地図をスクロール、拡大等ができてるとともに、御自分の住所を入れて、近くの病院を探したりすることができます。この地図のアイコン、あるいは下に出ているリストから、この地図のリーフが開くという形になっています。
 ここから先が病院の各リーフとなります。ここからは実際にはこちらの机上配布資料にあるのが全部のデータなのですが、こちらのスライドのほうには、抜粋したものをお示ししています。まず、基本情報タブで、こちらは病院の概要等があります。その下で、各種情報窓口タブ、あるいは相談支援センタータブということで、タブごとにこのような情報を発信しています。
 各種情報タブで、水色のバーがいっぱい並んでいますが、各項目の左側に、赤い三角形が付いています。資料の関係で小さくて見にくいのですが、赤い三角形の2等辺三角形の頂点が横に向いているものを下に向けますと、その情報が開いて、その中の更に細かい情報が見えるようになっています。最初から開いていますと、非常に情報が膨大なために、項目も探しにくいということで、折りたたむような仕組みとなっています。
 スライド9を御覧ください。こちらでは、各種がんの情報タブを示ししています。39種類のがん種について、がん種ごとの対応状況について、現況報告書の情報を提示しています。今日の資料で例示した施設では、ほとんど多くのがんに対応していて、小児の目のがん1か所だけがグレーアウトしていますが、これが病院で対応していないがん種はグレーアウトし、対応しているがん種について、右のページが開いて、詳しい情報が見えるというような仕組みになっています。それと、下に赤枠を付けていますが、特に専門として積極的に受け入れている希少がんという項目を昨年度追加したもので、これはただテキスト情報で、各施設からの自己申告なので、各施設が積極的に取り組んでいるといったら、例えば年間1例であってもここに載るということで、この辺の精度についても検討が必要だと考えています。
 右のページでは、ブルーのバーが真ん中ほどにありますが、その上で手術、あるいは化学療法、放射線療法に対する対応状況を○×で示しています。そのブルーのバーを開きますと、診療科ごとの対応が見えるようになっていまして、例えばここで見ていただきたいのは、施設によって、ある診療科は化学療法も手術もやっていることなど、対応している診療科が見えるような形になっています。
 スライド10を御覧になってください。こちらでは「院内がん登録より」ということで、黄色で目立つように書かせていただいています。これは現況報告の情報ではなくて、最初のほうのスライドでお示しした院内がん登録のデータから抽出した形で示しています。まだ、14年のデータは集計中ですので、ハイフンとなっています。小さくて大変申し訳ないのですが、この赤枠の2つ上の行で、登録の件数1件以上10件以下の場合については、1~10件として提示していますと、このようなルールで報告させていただいています。これは今までの議論の中で、症例数が少ないものについて実数で公表すると、患者さんの特定につながるのではないかという危惧がありまして、このような対応をさせていただいています。ただ、一方、これに対して希少がん、あるいは小児がんなどの患者さん。ご家族などからは、「いや、少ない数でも是非公開してほしい」というような御要望もいただいており、是非この検討会でもその対応について御検討をいただければと考えております。
 スライド11です。11ページ、12ページについては、元のデータとなっている現況報告書そのものに近いフォーマットでお示ししています。指定要件のタブ1では、職員情報、実績の情報などが掲載されていて、例えば右側の一番上の矢印の先なのですが、専門医療職の情報で、これは一部の抜粋ですが、医師関係では90種類、ナースでは10種類、その他の職種では12種類の専門職の情報を、その病院に何人いるかということを示しています。
 真ん中のグループでは、患者の数を示しています。一番下では手術、あるいは放射線治療、化学療法などの治療の件数を病院ごとの現況報告書のデータをお示しているということです。
 スライド12では、別紙から持ってきたもので、その中で1つは現況報告書の先ほども指定要件の中でありました院内がん登録の件数、手術件数などの情報をこちらでお示ししております。
 こちらの指定要件タブについては、全部の別紙がPDFで付いていまして、この上側の矢印に向いていますが、このような形で病院が提出したものをPDFで見えるような形になっています。
 スライド13を御覧になってください。こちらは対応状況から探す、専門医療職から探すという、探し方のほうの画面となります。対応状況というのは現況報告書に書かれているさまざまな対応状況、あるいは診療報酬の加算を取っているような情報で絞り込む。それから専門医についてはそれぞれの専門医、この専門医がいる施設を探すというような形で、実際にはその条件を入れて、下側の矢印がありますが、検索結果画面では、その専門医が何人いるというような示し方をするのではなくて、そのいる病院をセレクトして、リストアップして、その先は病院のページを見ていただくという形にしています。
 実際に北海道の拠点病院は20か所あるのですが、この検索の例でがん薬物療法認定医と、がん看護専門看護師と、がん薬物療法認定薬剤師の3人いる病院は北海道の20分の7で、7つの施設がここのリストに上がってくるという形です。
 スライド14を御覧になってください。これはがんの種類から探すの画面です。先ほどのがん対策加速化プランにおいて、施設の情報を一覧で見せるようなことが必要であると、取りまとめられておりますが、現行のページで施設の情報を横並びの一覧で見ることができるのは、このページのみとなります。こちらは、39種のがん種から、がん種を1つ選んでいただいて、それで地域を絞って検索結果を出すと、下側の表が検索結果なのですが、先ほどの各リーフにありました手術、化学療法、放射線療法の対応状況について、その施設での対応状況について、各施設1行の情報でしています。つまり、ある施設は全部に対応している、ある施設は放射線の体外照射しかしていないと、そのような形の対応状況を示し、さらに、上の表と同じで、全く疾患に対応していない施設はこの表に出てこないような形になっています。
 今回のがん対策加速化プランのスライドを御覧になってください。スライド15、今回の加速化プランの中で、施設間の比較ができる見せ方が必要だろうということで、国立がん研究センターがん対策情報センター、患者・市民パネルという100名の患者の私どものお手伝いをしていただくグループがありまして、そちらにアンケートを取りまして、がんの種類から探すときに、一覧として見たい情報というのを、調査しました。実は来週、患者・市民パネルの検討会でいろいろ御意見を伺うことを予定しているのですが、ちょうどこちらの検討会とのスケジュールの関係で、こちらが前になってしまったので、意見交換会の前に報告する形になったのですが、事前のアンケート結果を示した表です。まず、左側のほうが大項目で、大項目はこちらにある11の項目の中から見たいものを5つ選んでいただいたもので、右側にあるのはその大項目の中の細かい項目をさらに選んでいただいたものです。大項目では、1番多いのが治療の対応状況、2番目で実績のある病名、3番目で臨床試験・治験・先進医療と、この3つが希望の多いものでした。それぞれの項目についての詳細項目を見ますと、対応状況では手術などの実施状況、実施件数、診療科の専門医数というのが多く、更に臨床試験のところでは先進医療の実施状況、治験の実施状況というのが多かったです。これが患者・市民パネルアンケートで92名の御協力を頂いた結果になります。
 その下のほうに赤枠で囲っていますが、がん登録の件数をどこまで見せるかということで、全ての実数で表示するという方が23名に対して、件数の少ない数字は出さないほうがいいと答えた方が6名いらっしゃっいました。
 続いて、がん登録の状況について御説明いたします。がん登録についてはがん登録統計のページの統計のアイコンを入っていただいて、統計の中から下のほうの報告書冊子の中の院内がん登録全国集計というところを開いていただいて、更に17ページを御覧になってください。そこの全国集計の中には、さまざまな過去のものを含めて、多くのPDFがございます。PDFの中に施設別のPDFを置かせていただいていまして、それが18ページ、19ページになります。まず、18ページの部分で、別表1~6ということで、がん種別の総数、あるいは部位別、がん種別の診断時住所(都道府県)など、それから全部施設別ですが症例区分、症例区分というのは1番下にありますが、診断のみか自施設診断自施設治療か、他施設で診断したものを治療しているかなどの症例の区分などで、それを施設別に提示させていただいています。ただ、院内がん登録は非常にボリュームのある中で、がん種は26部位に限られているというところです。こちらの別表1~6が209ページ実際にはあります。
 スライド19を御覧ください。こちらは別表7で、がん種は限られますが、5大がんについては、ステージ分類と、そのステージに対して行われた治療法の情報も含めています。大変残念ながら、ステージがあるのはこの5大がんだけなのですが、5大がんについては、より詳しい情報があるという形になります。それと、小児がんについても、20歳未満について、国際小児がん分類に基づいた数を出させていただいています。こちらでも320ページほどのデータがあるという形になっています。そして、実際に表を一部抜粋したものが20にございます。
 これもちょっとベージュのところは全部施設を隠しているのですが、実際には施設PDFを開いていただくと付いていまして、1行が1施設ということで、最初は全登録で総数でがん種ごとに各施設でどのくらいの件数ががん登録として行われているかということ。表4では先ほどの症例区分別で、表7-1-1では、胃がんについて、どのくらいの登録があるかということで、これは胃がんですので、ステージ別の登録もあります。表1の7-1-3-1、こちらではステージ1に対してどのような治療が行われていたということで、手術、内視鏡治療、あるいは薬物療法、それらの集学的治療などの件数が登録されているということです。このようにがん登録は非常に情報が多くて、あと院内がん登録という特殊な処方を使っていますので、一般の方になかなか分かりづらいということで、スライド21を御覧になってください。
 先ほども少し御紹介しましたが、がん情報サービスサポートセンター等で、施設別がん登録検索システムを使って問い合わせに対しまして、その症例数の多い病院などを御紹介するというサービスを提供させていただいております。当初は希少がんを想定して作ったのですが、実際に希少がんでないがん種についても利用されています。
 最後にまとめです。現状について御報告させていただきました。さまざまな情報があるのですが、逆に情報が多すぎるということで、先ほどのがん対策加速化プランで御指摘されているように、必要な情報になかなかたどり着くことができないという現状は、否めないところです。
 また、92名の方だけですが、患者家族にとって、一覧で見たい情報というのは、治療法ごとの実施状況、実施件数、診療科ごとの専門医の数等がありました。ただ、この中で実施件数などを考えるに当たって、数が少ないがん種で1件、2件というのをどう対応するかについて、検討が必要と考えます。ちょうど今年の夏には拠点病院の2008年に診断されたがん患者さんの5年生存率のデータが出ます。今までは件数だったのですが、生存率になりますと、更に生存率の背景、どのような状況の患者が対象となっているか、早期がんの方が多いのか、進行がんが多いのかによって、大きく率が変わってきます。そういう条件の下で率をどのように見せるのかということも含めて、大きな方針、方向性の提示が必要だと考えております。
 それともう1つ、患者さんの意見の中には、先進医療の情報を見たいという御希望も多くいただいていますが、これについて、先進医療を必要としている方、先進医療の意味を分かった上で求めている方もいらっしゃれば、中には先進医療というのはもう一番良い医療だと思って、先進医療と御希望されている方も含まれていると思われます。そのような状況の中で標準治療でないものをどこまでお示しするかというのも大事な課題だと思っています。
 最後、4番、5番の所に書かせていただいたのは、少し先の話になるのですが、現況報告は拠点病院に非常に大きな負担をかけているだけではなくて、記載内容に間違いがあることが残念ながらあります。それらの中には、故意の間違いではなくて、非常に膨大な作業の中で間違えたり、あるいは解釈の違いで化学療法のレジュメ数などを出していただいているのですが、そのレジュメを細かく分けると数が多く出たり、放射線治療数も、こちらでは治療計画数でお願いをしていても、結局治療計画を細かく変更したその数を出して水増しされているようなデータがあったりします。ですから、どこまで正確な情報を出すために、何か工夫が必要ではないかということと、既存のデータとして院内がん登録、あるいはDPCのデータ、あるいは医療計画の施設情報などありますので、そのような情報をもっと活用することで、より正確な情報を出していって、拠点病院の負荷も減らすような対応も今後必要になるのではないかと考えています。以上です。
○北島座長 若尾先生どうもありがとうございました。がんのゲノム医療と、国民に対して正確な情報提供は非常に重要なことだと思います。お二人の参考人の先生方から、ゲノムと医療情報提供についてお話を頂きました。30分ぐらい時間が残されております。本日は、現状の課題とその問題点とかいろいろ御指摘もありましたので、忌憚のない御意見を構成員の皆様からお伺いします。
○天野構成員 私からは2点質問があります。1点目は、事務局に確認したいことがあります。資料2のスライド4の中で、今回この検討会で検討すべき内容ということで、治療・研究が主であるという説明でした。その中を見ると4に「小児・AYA世代のがん、希少がん」という言葉が入っています。これは、小児がんと希少がんが、国のがん対策推進基本計画において、言わば取り残されてきたがんであったという反省みたいなものもあって、第2期の計画から取り入れられたものと理解しています。
 この資料には出ていないのですけれども、がん対策加速化プランでは、いわゆる難治がんに対する対策も含まれていたかと思います。先立って国会で議論されている、がん対策基本法改正案においても、小児がん、難治がん、希少がんに関して、要望であるとか、パブリックコメントが出ていることを受けて、基本法を検討している超党派の議連においても、与野党の議員の先生方が一致して、小児がん、難治がん、希少がんを国のがん対策推進基本計画で検討すべきテーマではないかということで結論を出されたと聞いています。それに対して、課長のほうからも、基本計画において、その意見を尊重して入れるべきテーマとしていきたいという趣旨の回答があったと聞いています。この資料には出ていませんが、小児がん、難治がん、希少がんについてはこの検討会ではないにせよ、協議会でしっかり議論していただけるのかを確認させていただきます。
 2点目は、ゲノムに関して間野参考人から御説明を頂いた点についての質問です。間野参考人から御説明を頂いた資料の中で、スライド11は非常に重要なスライドだと思います。「がんは遺伝子疾患であるが、遺伝病ではない」ということ。これは、私たちがん患者や家族、一般の方が往々にして誤解しかねないところです。場合によってはゲノム医療の進歩によって、素晴らしい医療が提供される可能性の反面、誤解であるとか、差別や偏見につながりかねない危険性を持っていると理解しております。がん対策加速化プランの中でも、例えば拠点病院において、遺伝カウンセラーを配置していくということが項目として入っていたと思います。
 間野参考人の御説明では、東京大学でも必ずしも十分な人員を確保できていないと伺いました。適切に推進していく上で、また患者さんの立場や権利を擁護する、倫理的な面をしっかり守るという点において、今後は拠点病院若しくは医療提供体制において、どういう人材が必要であるかについて、間野先生の御意見をお聞かせいただければと思います。
○北島座長 まず、事務局から小児がん、難治がん、希少がんというものの議論をこの検討会でどこまで詰めていくか、という御質問にお答えください。
○がん対策推進官 患者会の皆様や議員の先生方から、小児がん、難治がん、希少がんについてきちんと議論するようにということで御指摘を頂いています。この検討会でそれらの議論を行う予定はないのですけれども、協議会や他の検討会では必要に応じてというか、そこは必ず議論をして、次のがん対策基本計画の中で位置付けて対応していきたいと考えております。
○北島座長 間野先生、カウンセラーとかいわゆる周辺の専門職についてお願いいたします。
○間野参考人 遺伝カウンセリング体制の整備というのは喫緊の課題です。先ほども申しましたけれども、臨床遺伝専門医制度と、認定遺伝カウンセラーという制度があります。必ずしもその両者の間には、こちらだと何ができて、向こうだと何ができないという区別はないのです。だけど、認定遺伝カウンセラーのほうが、一般的に言ってより多くの疾患に関して、遺伝カウンセリングができる素養があります。
 臨床遺伝専門医は、例えば医者で取っている方はたくさんいます。それは東大でも全部合わせれば何十人という数の臨床遺伝専門医はいると思います。個々の疾患に関して、御自分の専門の疾患では、多分遺伝カウンセリングをされていると思います。例えば、ゲノム医療を始めようとその施設が体制を整えて、がんならがんで、全部のがんに関してそのようなシステムを推進するとなったときには、恐らく私個人的には、認定遺伝カウンセラーを施設ごとに1人置いて、それを中心にした、臨床遺伝専門医のネットワークをその施設内で作って、始めていくのが理想的かと思っています。東大でも、新たに認定遺伝カウンセラーを雇用し、東大病院内で遺伝カウンセリングの体制を、その人を中心にして回していこうと思っています。私の個人的な考えですが。

○北島座長 認定遺伝カウンセラー、それから臨床遺伝専門医は学会認定なのですか、国家認定なのですか。
○間野参考人 学会認定だったと思います。
○北島座長 今、実際に認定遺伝カウンセラーは、学会認定で何名ぐらい認定されているのですか。
○間野参考人 正確ではないですけれども、200後半だと思いますが、後で調べます。
○北島座長 遺伝診断が進んでくると、200名くらいだとちょっと対応しきれないと思いますが。
○間野参考人 しかもその200名は、がんを主たる対象としていなく遺伝病の方たちがメインなのです。がんに詳しい遺伝カウンセラーはものすごく少ないのが日本の現状です。だから、今急速にあわてて育成しはじめていて、良い人をみんなで取り合っているのが現状です。
○北島座長 そうすると、学会にお願いして、がんの専門認定カウンセラーを育成するシステムを構築してもらうことも大事になってきますね。
○間野参考人 それはとても大事です。それと同時に、認定遺伝カウンセラーは、大学の養成講座、普通は大学院に作ります。文部科学省側が、大学院にそういうコースを養成することを促進するような動きをしてもらわないと、認定遺伝カウンセラーのほうは、なかなか数は生まれてこないと思います。
○北島座長 そういう教育のプロジェクトを作るときに、国主導でないとなかなか動かない。今、橋渡し研究というのもやっているのですが、それのシーズの見極めでバイオデザインというのをスタンフォード大学でやっていて、その教育も国がやっと、国立3大学を認めて、プログラムができてきた状況です。そういう主導的なものを国が取らないと、なかなかそういう組織が構築できませんね。
○山口構成員 間野先生のお話に、私たちの経験をゲノム医療という観点でお話しておいたほうがいいと思うのです。静岡がんセンターで、2014年1月から手術患者、サンプルがちゃんと得られるものが、年間1,000例になりました。今は二千数百例について、全エキソームを対象に腫瘍組織と正常組織を解析しています。現時点で、二千例についてのデータでまとめつつあるところです。まず、体細胞系変異のほうは先生がおっしゃられたとおりです。例えば、融合遺伝子の症例が1%ぐらいあります。もう1つは今話題になっている免疫チェックポイント阻害剤の患者選択に関係する、腫瘍特異的な変異数も全て出てきます。ポリメラーゼイプシロンの異常とか、非常に特殊な症例もたくさん出てきます。
 一方で、本日の最後のところに出てきた生殖細胞系列変異は、実際にやってみると大変大切だと思います。それでp53の標準との乖離で見ると3、4割で多型や変異が認められます。その大多数は多型です。一方、0.5%ぐらい病的だと思われる変異がリ・フラウメニ症候群のような典型的な病態ではありませんが、現実に認められます。1例は結局リ・フラウメニ類似症候群と診断されました。従って、比較的、低浸透性の遺伝性がんの遺伝子変化、がんの患者さんで一定の頻度で起きているようです。それを、今の臨床では見落としている可能性があります。p53の病的な生殖細胞系列変異を持っている患者さんでは、放射線治療は基本的に禁忌ですが、実際には気づかずに治療している可能性があります。そういう意味で大切だろうと、実際のデータからは思いました。
 もう1つ、本日はお触れにならなかったのだけれども、薬物代謝酵素のデータが出てきます。この患者さんは幾らタモキシフェンをやっても効かないというケースが希ですけれどもあります。エンドキサン等で副作用が非常に強く出る方々もかなりのパーセンテージ分かってきます。それは患者さんの薬物療法に対しては非常に有効な手立てになるのではないかと思っています。単にゲノム医療というと、どうしても特殊な分野というように、一般臨床も考えてしまいます。実際の経験から言うと、今後、がんの臨床には直結する医療になるはずです。
 まとめると、患者さんにとってのメリットは大変大きいものがあるだろうと思います。一方で先生がおっしゃったとおり、この変化が病的なのか、重視すべきなのかを決めるのは大変難しい。私どもは一施設なので、臨床データと1対1で突合を全てやっています。これは、臨床病態からいっても病的だ、いやそうではないということはある程度言えます。これを普及させるときには、そこは非常に大きな問題になります。単にデータベースを作ったからというわけにはいかないだろうと。結論的には、ゲノム医療に非常に秀でた医師などが、がん診療連携拠点病院には何人かいなければいけないと。私たちは、その遺伝カウンセラーという点では、医師が2名、認定が2名の体制で今はやっていますが、非常に忙しい状況になっています。
 最後に、その費用対効果をどう考えるかというのは、これからの課題だと思います。今は16万円なのだけれども、近い将来もっと下がってくると思います。そうすると、全ての患者さんに、まずは生殖細胞系列遺伝子変異を見てというような時代がやってきてもおかしくはないだろうと思います。今後、保険診療うんぬんという話になってくるでしょう。まとめると、やはりゲノム医療の推進というのは大きなテーマだろうと思います。
○北島座長 本日は、できるだけ多くの方に意見を頂きたいと思います。
○三好構成員 情報提供について2点あります。1点目は、若尾先生から、少ない症例数は、今のところ公開していないというお話がありました。今までも患者会のほうから、たくさんの要望を上げてきました。私たち患者家族というのは、特に症例数の少ないものに関して、特に情報を必要としています。情報に本当に生かされて、情報によって亡くなっていく患者さんがまだまだおられると思います。やはり、少ない数でも、その1とか2という数字が希望につながると思いますので、是非公開を強く要望いたします。
 2点目は、診断された直後の情報提供のあり方についての提案です。がん患者の多くが、一番最初のきちんとした、告知後の説明を受けていなかったり、もちろん混乱して頭に入らないこともあります。残念ながらその後は民間療法等に足を運んでしまって、そのまま亡くなってしまう例がたくさんあります。私たちの仲間でも、もっと早く大切な情報、正しい情報を知っておきたかったと言いながら亡くなっていった仲間もおります。是非、一番最初の情報提供と、医療体制のリンクをそろそろ進めていただけると大変有り難いのかと思います。
○北島座長 若尾先生いかがですか。それは、拠点病院と、その周辺の機能の問題になってきますよね。
○若尾参考人 2点目ですが、今のコメントの中で、直後の情報提供と、医療体制のリンクというのをもう少し具体的にお話していただけますか。
○三好構成員 例えば、インフォームド・コンセントのときに、どれだけの相談員が一緒に同席されているかとか、看護師さんのフォローがされているか、というところのデータがあるのか私のほうで把握できませんでした。例えば、そういうところから調べていただいて、きちんとした告知後の情報提供をどれぐらいされているのかをもっと知れたら有り難いと思いました。
○若尾参考人 その情報提供をしっかりとしていくと。そこをモニタリングして、されていないようであれば、しっかりとしていくことが重要であるということですね。
○三好構成員 はい。
○若尾参考人 御指摘の点は、今はデータが全てあるわけではありませんが、そこが必要ということを、この検討会等で検討していただいて、例えば指定要件整備指針に入れていただくことで、拠点病院ではリソースの問題等はありますが、推進されるという方向に向けることはできると思います。その辺の判断を御検討いただければと思います。
○北島座長 この検討会で、そういう条件が必要となればそれを入れていただいて、拠点病院の機能の中にしっかり組み込んでいただくということがあると思います。
○神野構成員 1つお願いというか確認と、方向性についてお話させていただきます。まず確認です。今後のスケジュールの中で、協議会があって、その下に分科会的に健診と医療提供体制と緩和ケアがあるというのが資料2の8ページにあります。本会は一分科会という形になると思われますので、親会である協議会でどんな議論が進んでいるとか、横の緩和ケアとか健診のほうでどういう話が進んでいるかを是非共有していただきたいというのがお願いです。
 今後の方向性についてです。全くアカデミックな話ではないのですけれども、私は第1回から第4回まで参加させていただきました。そのときには均てん化ということで、いかに各医療圏に必要な医療を提供するかという話になっていました。ただ、本日のお話にあったような、ゲノムにしても遺伝カウンセラーにしても、マンパワーあるいは教育ということが必要な要素がいっぱい上がってきます。医療機器に関しても、どこにでも置くというような機械ではないようなものが、日本の経済的にも問題になってくると思います。
 今後は選択と集中といいましょうか、役割分担というのを、もう少し鮮明に出すべきなのかと思います。医療圏全ての地域に最高の医療というよりは、がんの患者さんには恐縮ですけれども、脳卒中や心筋梗塞とは違って、すぐに数時間以内にやれという話ではないので、待てるということを考えると、やはり選択と集中という方向性が必要なのかと思います。そうすると拠点病院があって、地域がん病院があって、それから専門医制度等でも議論がありますけれども、総合診療医とかかかりつけ医という方々との、きれいな選択と集中と機能分担という方向性を皆さんで統一して考えていったほうがいいのかと思います。
○北島座長 今村構成員どうぞ。
○今村構成員 今後の進め方に関して事務局に質問です。資料2のスライド3、4で、赤枠で囲った所が、この検討会の対象になるということです。就労支援というのは、先ほど挙げていただいた課題には入っていなかったのですが、労働基準局のほうでも、疾病と就労の両立ということでずっと議論されているということであれば、ここでは議論しないということでよろしいのでしょうか。それが1点です。
 それから、先ほど間野先生からの、ゲノム医療の重要性ということの中で、アカデミア、病院、産業界の協力が不可欠ということでした。ここの構成員の中には、産業界からは誰も入っていません。私が知らないだけかもしれませんが、実際の日本の産業界の中で、こういうものに関してはどのような考え方をしているのか、何か取組をされているのか、何か情報としてあるのか。会社というのは、経営者サイドの裁量に委ねられることなので、国の政策で強制的に行わせることはできないわけです。その辺をどう考えるのか、事務局としての考え方を教えてください。
 日本の医療提供体制というのは、二次医療圏単位でやるというようにほぼなっているので、これで議論するしかないのかとも思う一方、御存じのとおり、二次医療圏と言っても、人口も面積も相当なばらつきがある中で、過疎地域はどんどん人口が減っています。そういう考え方で、このままこれを続けていくのかどうか。この3点について事務局の考え方をお示しください。
○北島座長 事務局お願いします。
○がん対策推進官 非常に難しい内容かと受け止めています。1点目の就労支援に関する内容については、恐らく協議会のほうで議論する内容だと思います。この検討会にも関わり得ることだと考えています。中心は協議会であったとしても、そこでの議論を受けて、ここでもう少し提供体制のあり方の中で、就労支援について考えるものもあるのではないかと考えております。そこは神野構成員からもありましたように、他の検討会や協議会とリンクするような形で、こちらでも別途議論いただけるのではないかと思っています。
 これは労働系の部局とも関わってくることだと思いますけれども、企業に対しての様々な働きかけやお願いみたいなものについては、現在でもガイドラインを出すとか、通知みたいな形でのお願い、それから経済団体などとの話合いの中で、いろいろなお願いをこちらからできると考えています。そこは先生方の御意見も頂きながら、積極的に企業に対しても働きかけていきたいと思います。
 二次医療圏への関わりについて、医療計画の見直しが医政局でされている中で、我々のがんの検討もその医療計画の中に含め、一体的に進めていこうと考えています。こちらから、二次医療圏についてどうこうできるかというと、そこは確かに難しい点だと思いますが、医政局に対してそのような意見があって、その問題意識を持っていることは伝えていって、そちらのほうの意見にも反映させていきたいと考えています。ありがとうございました。
○北島座長 中釜構成員どうぞ。
○中釜構成員 ゲノム医療に戻るのですけれども、間野参考人から御指摘があったように、様々な専門家の育成が必要だと、その中で認定遺伝カウンセラー、カウンセリングに関するものとしては、日本家族性腫瘍学会の学会指定の制度として、家族性腫瘍コーディネーター、あるいは家族性腫瘍カウンセラーというものがあります。前者は、学会が主催するセミナー等に複数回参加する。資格として、医師や看護師以外にも検査技師と、少し広めの職種の方々がこの会に参加されています。こういう制度も、まだ人数的にはこのセミナーそのものが、学会主導の会で、しかも研究費等で運用されているところがあって、なかなか広がりにくいのですが、こういうものもどういう体制の下で日本の中で広げていくかという議論も必要かと思います。人数的には少し多くて、私の理解では数百人いたかと思います。情報提供でした。
○北島座長 神野構成員のお話の中で、がんの拠点病院、地域拠点病院とか、がんセンターという所のネットワークの強化がちょっと希薄ではないか。お互いが情報を共有し、そして患者さんに最適な診療提供体制をするというのが、この検討会の目的だと思うのです。就労支援というのも、拠点病院において患者さんの相談支援をしていく、その内に必ず含まれてくると思うのですが、その辺はいかがでしょうか。いわゆる相談支援ということの1つにも入ってくるのではないかと思います。
○三好構成員 是非、拠点病院に窓口として、そういう相談窓口があるということが、私たちにとってハードルが低くなることにもつながりますので、是非お願いしたいと思います。
○北島座長 前回までの検討会の議論の中に、いわゆる拠点病院の相談室の強化があったと思います。そこに、がん治療学会でナビゲーターという人たちが、将来的に配置されればいいのではないか。北川理事長お願いします。
○北川構成員 これに関しては、日本癌治療学会でも10数年検討している課題です。地域でのがん情報、あらゆる意味でのがん情報を、効率良く与えてくださるようながんネットワーク・ナビゲーター、いわゆるがん治療方法に関わるような直接的な情報というのではなくて、どこにどのような医療資源があるのかという情報を伝えることができるその地域のことに精通した方を育成する事業を行ってきました。それには、がん診療に関する全般的なベーシックな知識も備えていただくというような研修体制を構築しております。
 現時点では、モデル地域として群馬県、福岡県、熊本県で少し活動し、そこのモデル地域での活動が比較的うまく進んでおりますので、全国展開を行うことができれば、地域でのがん情報のより円滑な伝達と運用という点で貢献できるシステムではないかと思っています。
○藤構成員 今の件なのですけれども、私も福岡県ということと、がん治療学会で委員をさせていただいておりますので、ちょっと追加させていただきます。最初は拠点病院で作っている相談員みたいな形のネットワーク・ナビゲーターということを考えていたのですけれども、それでは教育の仕方とか、誰が責任を取るのだというような問題も出てきました。今の位置付けとしては、拠点病院のがん相談支援センターの認知度が余りにも低いということでいろいろな現場、調剤薬局等々でそういうナビゲーターを作って、相談支援センターがあるということをつなぐ役割を中心にやっていこうということで、今ナビゲーターの認定を進めています。
○北島座長 まだ、そのナビゲーターの認定で、修了はしていないのですか。
○藤構成員 まだ第1期で、最終的に今から現場での実地研修が3県で行われ始めたところです。
○若尾参考人 相談員の就労支援の話が出ましたので補足させていただきます。参考資料5が、北島先生が前回第4回あり方の検討会でまとめた報告書に基づいて作られた2016年の整備指針です。12ページの相談支援センターの業務の中で、オとして就労に関する相談、産業保健等の分野と効果的な連携による提供が望ましいということで、既にこれが必須要件として入っています。全て100%できている、十分できている所ばかりではないと思いますが、これに向けて各相談員が対応しています。
 現在、国立がん研究センターで養成している、がん専門相談員約2,000名ががん相談支援センターにいます。また、拠点病院427のがん相談支援センターがあります。藤構成員から御指摘のあったナビゲーターはまだゼロ、あるいは養成が終了者でも60で、60から2,000につなぐというのは逆ではないか。どんどん数が増えてくれば機能すると思いますが、それが今の現状の養成計画では、なかなか現実的ではないというのが、私が養成研修会などにオブザーバーで参加させていただいて感じたところです。
○今村構成員 病院側の相談窓口があるということですが、どのぐらい機能しているか。完全に機能しているかどうかというお話がありましたけれども、実数として数字がきちんと上がっているのでしょうか。つまり、企業側と産業保健側と連携できなければ、幾ら相談窓口があって、こうしたらいいですと言っても、実質的に機能しないということになります。その辺のデータがあれば教えてください。
○若尾参考人 就労相談に応じた数ですか。
○今村構成員 応じた数ではなくてアウトカムです。つまり、アウトプットで何件相談しましたではなくて、そのことが実際の就労にどのぐらいつながっているのか、というデータがあるのかどうか。
○若尾参考人 例えば、静岡がんセンターなどでの事例、各施設での事例はあるのですが、それを全国の拠点病院で何件つなげたというデータは集められていないのが現状です。
○北島座長 そういう静岡がんセンターのようなデータを、情報提供していくという意味では、これからは集約していく必要があると思います。
○若尾参考人 就労につなげたという御発言があったのですけれども、実際に相談支援センターの就労支援は、離職している方を就労につなげるだけではありませんで、今働いている方の離職防止、あるいは勤務管理のお手伝いをするということで、必ずしも就労につなげたことだけがその実績、エンドポイントではないと考えています。
 昨日も拠点病院の連絡協議会相談支援部会ということで、都道府県拠点病院の相談支援センターのスタッフが集まるミーティングがありました。その活動を見える化していくための指標作りをしているところです。
○北島座長 森構成員どうぞ。
○森構成員 今のとは関係ないのですが、がんのゲノム医療推進ということで非常に重要だと思います。そのデータベースで、がんの登録の件です。外科のほうは北川先生とか藤先生と一緒に、私どもはナショナル・クリニカル・データベースというのを、外科学会を基盤として作っています。ナショナル・クリニカル・データベースは年間100数十万件の登録をやっている中で、70万件ぐらいが、恐らくがん患者さんのデータです。そこでのデータと、病院でのがん登録、地域でのがん登録、それから学会で、例えば膵臓学会、あるいは大腸がん研究会という所での、それぞれのデータベースというのが非常にたくさんありすぎて、そこは何とか統合しようという動きはあると思うのです。その辺も将来的には非常に重要な根源を成すところだと思うのです。この会で議論すべきかどうかは別にして、是非お考えいただければ大変有り難いと思います。
○中釜構成員 若尾参考人に質問です。私が把握していなければいけないのかもしれませんけれども2点あります。1点は、この検索システムのサービス、これはがんセンターの中ではできるのでしょうけれども、非常に複雑な場合に、例えば他の相談支援センターから依頼があったときに、それは検索サポートしてくれるのか。あるいは、直接そこから都道府県の相談支援だけれども、もう少し二次医療圏の方の問合せに関しても、全て中央のがんセンターでそのサービス、検索システムまでサービスをして答えを返すことが可能なのか、その辺りはどうですか。
○若尾参考人 資料4の21ページにその説明を書かせていただいています。都道府県拠点病院の相談支援センターについて、相談員と院内がん登録の担当者2人そろって来ていただいて、研修会を行っております。都道府県拠点では、全ての都道府県拠点で研修会を終わっていただいていますので、実際に実習なども含めて使い方を覚えていただいて、それで実践していただいています。
 それだけではなく、ここの矢印で、一番上にあるのが地域拠点、あるいは地域診療病院で、そちらに対して都道府県拠点で対応しますという県内の周知をしていただいていて、県内の地域拠点だったら、都道府県拠点を介して情報を返すということ。それとは別に、がんサポートセンターのほうでも、直接の御相談に応じています。7月にも、人員の異動等がありますので、また今年度の研修会を予定しています。
○中釜構成員 2点目は、非常に膨大なデータが集積されていて、非常に価値のある情報が提供できると思うのです。ユーザーにとってみると、そのアクセスという点ではフレンドリーではないかなと。例えば、質問項目から必要な検索結果を自動的に抽出してくれて、その結果を何項目かを項目表示して、それをクリックすると答えが出るみたいな、そういうインターフェースの開発はどうなっていますか。
○若尾参考人 今は、そこまでできていないのが現実です。こちらについて、第3次対がんのときまでは、この医療情報のデータベースのあり方を検討する研究班を私のほうで担当させていただきました。それが今の新しい10か年戦略で、そのようなテーマも設定されなくなり、そこの研究開発ができていません。新しいインターフェースを作ったりするのが、特に先進的な自動、あるいはAIを使ったようなところは全く手当てができていません。
○北島座長 それぞれ構成員の方々も、これから予定があるのではないかと思います。本日は、用意した時間を多少過ぎております。本日は、間野参考人と若尾参考人の先生方には非常に貴重な御発表を頂きましてどうもありがとうございました。この検討会の指針になったと感じております。今後、この検討会がどのような方向に向かっていくかというのも、本日の事務局からの説明もありました。次回は、もう少し各論に入っていくのだと思いますが、是非御協力のほどよろしくお願いいたします。事務局から連絡事項をお願いします。
○事務局 ありがとうございました。次回の検討会に関しては、事務局より追って御連絡いたします。お忙しい中恐縮ですが、日程調整をよろしくお願いいたします。
○北島座長 次回の検討会を、6月16日(木)の13時から予定しております。場所に関しては、追って事務局から御連絡すると思います。お忙しいと思いますが、是非日程の御調整をよろしくお願いいたします。構成員の皆様方には、本当に長時間にわたり、貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。これで、本日の検討会を終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)

健康局がん・疾病対策課

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