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2016年3月2日 平成27年度第1回水道における微生物問題検討会議事録

医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部水道課水道水質管理室

○日時

平成28年3月2日


○場所

中央合同庁舎5号館17階専用第21会議室


○出席者

遠藤座長 秋葉委員 泉山委員 春日委員 片山(浩)委員
勝山委員 黒木委員 小林委員 島崎委員 橋本委員
船坂委員

○議題

(1)水道におけるクリプトスポリジウム等対策の実施状況について
(2)微生物リスク評価を用いた水質管理手法について
(3)原水を対象としたクリプトスポリジウム等の検査法について
(4)その他

○議事

○鈴木室長補佐

 定刻となりましたので、ただいまより「平成27年度第1回水道における微生物問題検討会」を開催いたします。

 委員の皆様方には、御多忙中にもかかわらずお集まりいただき、ありがとうございます。

 本検討会の開催に当たりまして、事務局を代表して厚生労働省水道課水道水質管理室の長坂より御挨拶申し上げます。

 

○長坂管理官

 昨年に引き続きまして、水道水質管理官を務めさせていただいております長坂でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 この水道における微生物問題検討会でございますけれども、水道水の安全を確保する上でクリプトスポリジウム等の耐塩素性病原微生物その他、病原生物の混入は水道の安全を確保する上で最大の脅威となっていることを踏まえまして、微生物分野の課題を専門的立場から御検討いただくために、水質基準逐次改正検討会の微生物分野について扱う分科会として設置されているものでございます。あわせて、微生物に係る水質事故があった場合の対応についても、科学的側面から御助言をいただくこととしております。

 特にクリプトスポリジウム等の耐塩素性病原微生物の問題は常に水道水の安全を確保する上で大きな課題となっているということで、ここ数年はこの課題を中心に御議論いただいております。

 本日におきましても、クリプトスポリジウムを中心に、「微生物リスク評価を用いた水質管理手法」に加えまして、「原水を対象としたクリプトスポリジウム等の検査法」について、最新の科学的知見を御紹介いただいた上で御議論いただき、今後どういう方向でこの課題に対処していくかについて御意見をいただければ幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 

○鈴木室長補佐

 続きまして、今年度は委員の改選がございましたので、事務局から御紹介をさせていただきます。

<委員紹介>

 続きまして、事務局を紹介いたします。

<事務局紹介>

 続きまして、配付資料の確認をいたします。

 お配りしている資料の一番上の紙が議事次第でございます。その裏面に配付資料がございますので、そちらとあわせて御確認いただけたらと思います。

 議事次第の次が本日の検討会の座席表になっていまして、その次から資料番号の入っている資料でございます。資料1というホチキスどめの紙が資料1「水道におけるクリプトスポリジウム等対策の実施状況について」でございます。

 資料2-1「平成27年度『水質管理における微生物リスク評価関連調査』報告書」はホチキスどめの資料がございます。

 資料2-2として、パワーポイントの上下に割りつけ印刷している「クリプトスポリジウム対策の国際比較」がございます。

 委員限りの資料ですけれども、資料3としまして、カラーの1枚紙がございます。「水道原水を対象としたクリプトスポリジウム計数へのMPN法の導入」です。

 その後が参考資料で、参考資料1は委員名簿でございます。参考資料2、参考資料3、それぞれ1枚の紙ですけれども、参考資料2が本検討会の運営要領、参考資料3がこの検討会の公開の取り扱いについてという資料です。

 不足などがございましたら、事務局までお申しつけいただけたらと思います。

 それでは、以降の議事進行に先立ちまして、座長の選出を行いたいと思います。

 参考資料2の運営要領の「3.検討会構成員」の(2)に、座長につきましては、第1回検討会において委員の中から選出するとさせていただいています。

 事務局といたしましては、前回まで座長を務めていただきました遠藤委員に引き続きお願いしたいと考えていますけれども、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

 

○鈴木室長補佐

 それでは、席を移動していただけたらと思います。

(遠藤委員、座長席へ移動)

 

○鈴木室長補佐

 マスコミの方のカメラ撮りはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いします。

 

○鈴木室長補佐

 それでは、以降の議事進行につきましては、遠藤座長にお願いしたいと思います。

 

○遠藤座長

 遠藤でございます。よろしくお願いいたします。

 私から特に挨拶はございません。

 早速議題に入りたいと思いますが、本検討会の公開の取り扱いにつきまして、事務局より御説明をお願いしたいと思います。

 

○鈴木室長補佐

 参考資料2の運営要領の「4.その他」(3)に公開の取り扱いにつきましては検討会において検討するとなっています。

 その取り扱いにつきましては、参考資料3です。2ポツにありますように、個人情報の保護等の特段の理由がない限り基本的に公開することとしていますので、本検討会は原則公開と考えています。開催予定、委員のお名前、御職業、会議資料そのもの、議事録につきましても、あわせて公開でございます。検討のために必要ということから、取りまとめ前の中間段階の調査結果あるいは先生方からの未発表の研究成果を出していただく場合は、知的財産権の保護という観点もありますので非公開とさせていただきたいと考えています。

 以上です。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 それでは、議題に入りたいと思います。

 早速ですが、議題1「水道におけるクリプトスポリジウム等対策の実施状況について」、事務局から御説明をお願いいたします。

 

○吉崎係長

 事務局から、資料1を用いまして「水道におけるクリプトスポリジウム等対策の実施状況について」御説明いたします。

 資料1は、厚生労働省が、水道事業、水道用水供給事業及び専用水道におけるクリプトスポリジウム等対策の実施状況を調査した結果についてまとめたものでございます。詳細の数値等については、3ページ目の表-1もしくは4ページ目のグラフ等にまとめてございます。あわせて、これまで厚生労働省に報告のありましたクリプトスポリジウム等の検出により給水停止等の対応を行った事例については、5ページ目に一覧表でまとめてございます。

 1ページ目から御説明いたしますと、図-1はクリプトスポリジウムの対策指針に書かれているものでございまして、汚染のおそれの判断に応じた必要な予防対策を纏めたものでございます。

 おめくりいただきまして「2.調査結果等」ということで説明いたします。

 この調査結果につきましては、平成27年3月末時点の対策指針に基づく予防対策の実施状況をまとめてございます。

 まず、表-1についてですが、調査対象施設数は20,167施設であり、表流水、伏流水、浅井戸または深井戸を水源とする施設を対象としております。ここでは全量浄水を受水している施設は除いてございます。そのうち汚染のおそれがある施設いわゆるレベル4もしくはレベル3として判定された施設は7,473施設あり、これは全体の37%に当たる数でございます。

 この7,473施設のうち、5,129施設では既に先ほどの対策指針に基づく予防対策について実施済みということでございます。

 ただし、残る2,344施設については、その対策施設設置等についてまだ検討中ということで報告が上がってきてございます。

 これらの対策が未実施のところについては、当面の措置として、対策指針に基づきまして、原水の水質監視を徹底して、クリプトスポリジウム等が混入するおそれが高まった場合には取水停止等を行うこととされてございます。

 次に、レベル別の浄水施設数の経年変化ということで、4ページ目の図-2をごらんいただきますと、施設の総数としては2万を少し超えるぐらいでずっと推移してきてございまして、レベル別の施設数を25年度から26年度で見ますと、レベル3施設が増加しています。逆に、レベル2施設もしくはレベルをまだ判定していなかった施設については減少傾向にございます。

 レベル4及びレベル3施設の予防対策も徐々には進捗しておりまして、図-3、図-4に経年変化を示してございます。

 また、クリプトスポリジウム等の汚染のおそれの判断を行っていない施設がまだ1,882施設ございまして、これらのレベル判定をまだしていない施設の水源の内訳を図-5に示してございます。62%は深井戸を水源としているということですけれども、汚染のおそれがある可能性の高い表流水等を水源にしているところもこの中には含まれていることがわかります。

 これらが、今回調査した結果をまとめたものでございます。

 次に、水道の浄水等でクリプトスポリジウム等が検出されまして、給水停止等の対応を行ったもので報告を受けたものを5ページ目にまとめてございます。

 平成27年度は該当がなかったので、昨年度報告した事例から増えてはございません。

 また、昨年度の検討会で、こういった事例に対して長期的対応が実際になされているかどうかフォローアップをすべきということで意見をいただきましたので、そのフォローアップをした結果を6ページ目にまとめてございます。直近3カ年のものをフォローアップしましてまとめた結果でございます。

 長期的対応の状況について、延べ7施設について報告を受けました。

 その中身については、6ページ目に詳細が書いてございまして、1の北海道に関しては、これは膜ろ過施設を設置しますということで報告を受けていまして、これは実際に膜処理施設を設置して、レベル3の施設として運用されているということでございます。

 2の八王子市の件については、紫外線照射設備を設置するということで報告を受けていましたけれども、施設整備が難しいことから、ほかのところからの全量受水に切りかえて、専用水道を廃止して、現在は簡専水として管理しているということでございます。

 3の揖斐川町については、危機管理マニュアルの作成、濁度管理の徹底等を行うということで報告を受けていまして、こちらについては、岐阜県でも立入検査等でこの状況を確認されて、適切に対応されているということで報告を受けてございます。

26年度の4について、北海道島牧村については、ほかの地区からの受水に切りかえて対応しているということでございます。

 5は、25年度の3と同じ施設ですので、同様の対応でございます。

 6については、現在は紫外線消毒設備の仮設で対応しているということで、こちらは本設も随時工事を行っているということで、今年度は建屋と配管と整備している途中で報告を受けてございます。

 7の辰野町については、当該水源を休止して、隣接する施設から分水で対応中とのことです。ここは、飲料水供給施設を統合予定ということで、今後の浄水方式については現在検討中ということで報告を受けてございます。

 資料1の説明は以上でございます。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問等がございましたら、フロアから御発言いただきたいと思います。何かございませんか。

 勝山委員、何かコメントはありませんか。

 

○勝山委員

 ちょっと教えていただきたいところがあったのですけれども、表-3のフォローアップのまとめというところで、同じ事業体さんですね。25年と26年、岐阜県の揖斐川のところですけれども、同じ水源で2年共同じ対応をなさったということでしょうか。

 

○吉崎係長

 平成25年度に検出された際の対応として、危機管理マニュアルを作成したところだったのですけれども、平成26年度はまだ濁度管理の連続監視が甘い状態で検出されてしまったので、簡易的に測っていた濁度は0.1度未満だったのだけれども、念のため飲用停止の対応を行ったとのことで、ここに記載の濁度管理の強化は平成26年度以降の対応ということで承知してございます。

 

○勝山委員

 わかりました。

 ありがとうございました。

 

○遠藤座長

 よろしいですか。

 ほかにどなたかございませんか。

 どうぞ。

 

○橋本委員

 とても基本的なことで申しわけないのですけれども、こちらに上がってくる報告は、原水から検出されたケースについても全て上がってくるということで、例えば、この岐阜のケースも原水ですか。そこを教えてください。

 

○吉崎係長

 基本的に原水で検出された事例も全て厚生労働省に報告を求めてございまして、原水で検出されて、実際に適切な浄水処理がされているといった状況も含めて報告を受けてございます。

 今回の表は、その中でも給水停止等の対応を行ったものということでまとめたものでございまして、原水だけで濁度管理は徹底しているということで報告を受けているものは年間100件程度ございます。

 

○橋本委員

 わかりました。

 ありがとうございます。

 

○遠藤座長

 ほかにございませんか。

 この件はよろしゅうございますか。

 ありがとうございました。

 それでは、議題2に移りたいと思います。「微生物リスク評価を用いた水質管理手法について」は、御説明いただく方がかわります。まず、資料2-1は島崎委員から御説明いただいて、その後、資料2-2を片山委員から御説明いただいてから討議に入りたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

○島崎委員

 資料の最後のところは春日委員に分担していただきましたので、この部分の説明は春日委員にお願いしたいと思います。

 

○遠藤座長

 それについては、島崎委員から御指示ください。

 

○島崎委員

 そのようにいたします。

 資料2-1をごらんいただければと思います。

 平成23年度から25年度の厚生労働科学研究費補助金の研究として「水道の浄水処理及び配水過程における微生物リスク評価を用いた水質管理手法に関する研究」を実施いたしまして、その成果を踏まえて、昨年度に引き続き、今年度も国内外の微生物リスク評価を用いた水質管理手法に関する情報を収集し、我が国の水道の水質管理への適用に資する技術的知見を整理いたしました。

 私どもを含めて、4機関からそれぞれ報告いただいたものをまとめたものでございますので、資料は大分厚くなっております。

 最初に私ども国立保健医療科学院による「2 水道クリプトスポリジウム対策等における濁度管理の意義」ですが、暫定対策指針以降のろ過水濁度管理の科学的背景や根拠等について、少しさかのぼって調べさせていただきました。

 皆様、御承知のとおり、1996年に越生町で集団感染が発生して、同年には厚生労働省によるクリプトスポリジウム暫定対策指針が策定され、1998年、2001年に改定、2007年には「暫定」が取れた「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」が通知され、これと並行して、2000年には「水道施設の技術的基準を定める省令」において、原水に耐塩素性病原微生物が混入するおそれがある場合に、ろ過等の設備を設置する。また、そのろ過池出口の濁度を常に0.1度以下に管理することが示されたという経緯でございます。

 この濁度設定の根拠は、これは厚労省のホームページにも載っておりますけれども、米国水道協会の白書並びに過去にミルウォーキーで40万人というかなり大規模なクリプトスポリジウムの集団感染が発生した経験において、公衆衛生上のリスクの観点から目標とすべきとされている数値等を参考にしたとされているところです。

 この科学的な背景の一つとして、図2-1に示したように、いずれも海外の研究事例でございますけれども、濁度の除去率とクリプトスポリジウムの除去率との間に相関が見られている点が挙げられます。

 この図の横軸が濁度のログ除去率、縦軸がクリプトスポリジウムオーシストのログ除去率で、余り相関係数は高くはないのですが、両者の除去率の間に相関性が確認されていることが、濁度管理によってクリプトスポリジウムを制御するという大きな根拠の一つであると理解してございます。

 その一方で、どの程度までクリプトスポリジウムを除去すればいいのかという点に関しては、これは暫定指針が通知された当時の検討の一例でございますけれども、原水中にクリプトスポリジウムが10リットル当たり約1オーシスト存在する場合に、人への健康のリスクから判断して、およそ浄水処理で2ログ、2桁程度の除去率を確保することが必要であるとの認識があったと考えられます。

 次の2ページ目の表2-1は、眞柄泰基先生が2003年に日本水環境学会のセミナーにて発表された資料から引用しておりますけれども、原水中に10リットル当たり1オーシストが存在する場合に、2ログ程度が浄水処理で除去され、1日当たりの非加熱の飲水量が1リットル、1オーシスト摂取当たりの感染確率が0.4%、すなわち4×10-3 とした場合に、DALYsを指標とした年間の健康影響度は、およそ1.5×10-6DALYs/人/年と計算されるということです。

WHOの飲料水水質ガイドライン第3版以降では、DALYsの推奨値として1×10-6 未満を目安にしてございますので、それよりは少し高いのですが、同様に、飲料水中の臭素酸の摂取によって生じ得る腎臓への細胞がんリスク生涯発生確率10-5 に相当するDALYsとして、1.4×10-6DALYsと計算されますので、これとほぼ同程度であり、受け入れ可能なリスクレベルであるという判断があったかと思います。

 先ほどの図2-1から、およそクリプトスポリジウムを2ログ除去するには、濁度除去の目安として、安全側で同程度の2ログ程度の除去が必要になると判断されますので、これはその原水濁度が10度である場合に、ろ過水濁度を0.1度程度まで低減することに相当していると解釈できます。

 このような健康影響リスクを考慮して、また、実際に我が国の大部分の水道事業体において「適切な管理のもとで」「技術的に可能なレベル」として、ろ過水濁度の常時0.1度以下を設定したと理解しております。

 一方で、常時ろ過水濁度が0.1に保たれていたとしても、これは、健康影響度が常時想定レベルにあるかというと、必ずしもそうではないかもしれないことを記しております。例えば、原水中のクリプトスポリジウムが10リットル当たり1個以上になる場合、原水が低濁度となり浄水処理における濁度の除去効率が低下する場合、クリプトスポリジウムの1オーシスト摂取当たりによる感染確率がより厳しい方向に再評価される場合、個人や集団における非加熱飲水量が1日当たり1リットルよりも増大する場合が考えられます。

 1枚めくっていただきまして、特にクリプトスポリジウムの感染確率に関しては、これは片山先生の資料にも記載されていますので詳しくは後ほど御紹介いただければと思いますが、WHO飲料水水質ガイドラインの第4版以降、0.4%から20%と、50倍に引き上げられております。根拠となる図を3ページ目の真ん中に引用しております。これは2009年に公開されたWHOの背景報告書でして、人へのボランティア実験データでクリプトスポリジウムUCP株とMoredun株という、図2-2Aの赤とオレンジの線で示してありますが、この2株を1個摂取したときの感染確率が40%と評価されております。具体的には、図2-2Aの横軸であるdose100 オーシストのところを参照すると、各株の感染確率0.4となっております。

 この2株のエンドポイントは、これまでの評価とは異なっており詳細はよく存じないのですが、Partial immunityに基づく評価となっております。また、かなり低用量側に外挿して感染確率を評価していますので、この妥当性については議論の余地が大いにあるかと思いますが、このデータを考慮した結果、図2-2のBですけれども、既往の感染確率0.4%から20%に変更されたということでございます。そうしますと、先ほどの表の前提は大きく変わってきて、リスクとしては高く評価されることになります。

 3番目の飲用量が増加することに関しては、先般の越生町での集団感染事例で、これは遠藤先生がご発表されている件ですけれども、患者の発生数と外気温の上昇との間に関連が見られているようです。これは、外気温の上昇に伴って、非加熱の飲水量、水道の生水をそのまま飲むという利用が増加し、これが集団感染の引き金になった可能性があるということでございます。

 もちろん、適正な運転管理のもとでろ過水濁度0.1を常時確保することは、クリプトスポリジウムによる感染影響リスクを確実に下げられる効果があることは間違いないのですけれども、さらに、その健康リスクの低減効果を定量的に評価する場合には、この先に紹介させていただく定量的な微生物リスク評価、QMRAの手法が有効であると考える次第です。

 続いて、2-2ですけれども、水道水質管理の向上に果たす濁度管理の役割ということで、クリプトスポリジウムから少し離れた内容ではありますが、少し検討を加えさせていただきました。

 そもそも浄水処理において、懸濁物質の除去は浄水処理の基本中の基本でありまして、これは目に見えるような粘土質や藻類などの「濁り」だけではなくて、目に見えないような原虫、細菌、ウイルス等の除去も果たすということですし、実際にWHOのガイドライン第4版においても、高濁度の状態は微生物を消毒作用から守り、細菌の増殖を促し、 塩素要求量も著しく増加させます。そこで、適切な残塩を保持し効果的に消毒を行うために、可能な限り前処理で濁度を低くしておくことは、必須の要素であるということが、ガイドラインでも明記されております。

 ガイドラインに示されている目安の値ではあるのですけれども、地表水あるいはその影響を受ける地下水を水源とする場合は、消毒前の濁度の目安は0.3NTUです。これは日本の濁度に換算して0.330.36程度となりますが、これを達成することが懸濁物質に吸着する病原体に対しての有効なバリアーであるとされています。また、良好に運営されている大規模な水道システムでは、その消毒前の濁度として、平均0.2NTU以下、常時0.5NTU未満を達成できるべきであるとされています。

 また、これは紫外線消毒に特化した条件ではありますが、ドイツは紫外線消毒前の濁度として0.3FNU未満と定めております。このFNUNTUと一緒です。すなわち、日本の濁度に換算して0.330.36度となります。また、フランスは0.5FNU未満を基準として定めております。

 以上の推奨値や基準値は、我が国の水道クリプトスポリジウム対策のろ過水濁度0.1よりは若干緩やかですけれども、これは、水道事業体の日常的な水質管理において、適切な消毒効果ならびに浄水処理性能を確保する上で、高水準の濁度管理が非常に重要であることが示されているものと考えております。

 なお、同じページの下の半分に、図2-3とて示しておりますけれども、これは、平成16年から平成24年の2年ごとに水道統計から地表水を原水とする浄水場の出口での濁度最高値を集計して図としてまとめたものでございます。

 見ていただきますと、縦軸が80%から100%の範囲になっているところに御注意いただければと思いますが、年度を経るごとに、濁度の最高値がより低い方向に移行しております。水道のクリプトスポリジウム対策を通じて、わが国の水道における濁度管理や水質管理は徐々に高いレベルに移行してきているのだろうと理解をしております。

 以上が、国立保健医療科学院、秋葉と島崎からの報告でございます。

 続きまして、6ページ目「3 定量的微生物リスク評価法の適用と世界的動向」と題しまして、京都大学伊藤禎彦先生から御報告いただいております。

 まず、ろ過水濁度を0.1度以下とすること等の問題点を少し指摘されておりまして、一つは、濁度0.1度が一部の事業体においては基準値であるようにみなされている面があり、その結果として、浄水処理の工程でPACの過剰注入、さらには、浄水中にアルミニウムが残留してしまうという問題があります。

 もう一つは、ピコプランクトンが発生するような一部の水源において、ピコプランクトン自体は特に健康上の支障があるわけではないものの、凝集沈殿および砂ろ過の過程での除去性が優れないことによって、ろ過水濁度が上昇することに苦慮されている事業体もあるところです。

 ろ過水濁度0.1という目標設定は、水道水の安全確保に一定の役割を果たしてきたところですが、微生物的な安全性を定量評価して水質管理に適用する場合の考え方の紹介が3-2以降に示されております。

 具体的には、関東地方のある水道事業体での河川水原水中のクリプトスポリジウムおよびジアルジアの測定データが、7ページ目の図3-1および3-2に示されております。測定期間が1999年8月から2013年3月ということで14年近くですけれども、クリプトスポリジウムやジアルジアが検出された時点でかなり頻度を高めて再測定していますので、その意味ではだいぶ安全側の測定結果となります。

 このように、15年近くの間に、10リットル当たり100個以上検出されるケースが若干あり、これをそれぞれ確率分布としてまとめたものが図3-3になります。

 この確率分布データと、クリプトスポリジウムまたはジアルジアの用量-反応モデルを採用して、非加熱飲水量としては大阪市水道局が行ったアンケート調査結果である、平均値として1日あたり327ミリリットル、これを指数分布として与えて、モンテカルロシミュレーションを行い、年間の許容感染確率を10-4 /人/年と設定した場合、図3-3に示すような原水をその感染リスクレベルまで下げるために必要となる浄水処理での除去・不活化能を計算したものが、次の8ページ目の表3-1となります。

97.5パーセンタイルの値としては、クリプトスポリジウムに関して3.97ログ、ジアルジアに関しては3.85ログとなり、年間の許容感染確率として10-4 /人/年を達成するためは、およそ4桁の除去・不活化を浄水処理で達成できればよいことになります。

 一方、エンドポイントとして、許容感染確率ではなく障害調整生存年数10-6DALYs/人/年を採用すると、これよりもう少し緩やかな評価結果となりまして、表3-2に示す通り、95パーセンタイル値としてクリプトスポリジウムが3.27ログ、ジアルジアが2.55ログという程度の除去が、図3-3に示すような濃度分布が存在する原水に対しては、最低限求められる計算になります。

 以上はモンテカルロシミュレーションによる区間推定です。水道水質管理の実務への適用を踏まえてというご趣旨と思いますが、点推定というシンプルな方法による考え方も、9ページから10ページ目に示されておりまして、水道の原水中のクリプト濃度が10リットル当たり5オーシストであった場合に、飲料水中の感染確率10-4 以下とするには、10リットル当たり5オーシストから、10リットル当たり0.023オーシストまで下げればよい。これに相当する浄水処理に要求される除去・不活化能力は、3.3ログと計算されます。逆算をすれば、この水道においては、原水中に許容されるクリプトスポリジウム濃度として、10リットル当たり2.3個であるという考え方もできると、図3-6に示されております。

 3-3に関しては、世界的な動向ということで、1つ目は、昨年度も報告させていただきましたが、このような定量的微生物リスク評価の実務への適用はオランダで先行しており、米国EPAやカナダ、オーストラリアでも検討が進んでおります。WHOも、水道事業者を含む行政等の実務担当者を対象として、水道、廃水再利用、レクリエーション水の水質管理の統一的な手法として、QMRAに関するガイドブックの編さんを進めております。これは本年7月のシンガポール国際水週間にて公開される予定と聞いております。

 次に、オランダKWRの研究グループの検討ですけれども、クリプトスポリジウムの排出に関する世界モデルを構築しております。これは最近の国際会議の成果発表からの引用で、資料の11枚目にございます。

 例えば、畜産排水であるとか、表流水からの流出、環境中での生残過程を、数値モデルを用いて推定し、このことによって高濃度のクリプトスポリジウムが出現するようなホットスポットや季節変化を把握しようとしているようです。また、全世界的な総排出量の試算を行い、その原因として42%は衛生設備の未整備が原因であるという推定を進めているとのことです。

 以上のことから、定量的な微生物リスク評価のための方法論は整備され、世界各地で使用可能な状況となっていることを報告いただております。

 続きまして、13ページ目「4 大腸菌を用いた各消毒処理による不活化実験における大腸菌種および測定法について」、これはお茶の水女子大学の大瀧先生からの報告ですけれども、昨年度の検討では、大腸菌を用いた各種の消毒実験、すなわち、塩素消毒、紫外線、オゾン等による不活化実験では、文献によって使用する菌株も評価に用いる培地も大きく異なっていることを指摘しております。今年度はさらに文献をふやして比較を行い、さらに、実際に複数の培地あるいは複数の大腸菌株を使って、同じ条件で塩素消毒実験を行った結果を比較して、安全側となるような評価方法を使うべきとの観点からの報告を受けております。

 具体的には、4-1-1ですけれども、昨年度の26編の文献に今年度は15編を加え、大腸菌を扱った論文35編に注目したところ、様々な方法の実験がございまして、標準菌株を添加する実験または非添加の実験がありますし、添加をした実験に関しては、さらに、大腸菌のみが培養される選択培地を使用する実験、あるいは大腸菌以外の細菌も培養される非選択培地が用いられており、幾つかの実験系に分けられるということです。

 さらに、用いられている選択培地あるいは非選択培地の種類について、以上の3種類の実験系ごとに表4-1、4-2、4-3にまとめられておりますが、かなり多様な培地が使われております。

 表4-2の大腸菌添加実験で非選択培地が用いられる場合に、TSA培地が使われる場合がやや多いようですけれども、他にも様々な培地が使われております。

 一方、菌株に関しては、表4-4にまとめられておりますが、K-12株が多く使われております。これは保存機関ごとに登録番号が異なるのですけれども、同じ性質を持つK-12株の使用が多いことが示されております。

 実際に異なる培地及び大腸菌種を用いて、同じ条件で塩素実験を行った結果が17ページ以降になります。

 大腸菌株に関しては、4-2-1-1に示してあるように、先ほど申し上げたK-12株、2つ目はK-12株とは異なる菌株、3つ目が抗菌製品のJIS評価規格で用いられている菌株ということで、それぞれNBRCにて保存されている菌株を使っております。

 一方、使用する培地に関しては、大腸菌のみを選択的に培養する選択培地としてコンパクトドライEC、デソキシコーレイト、m-FC agar、非選択培地はNutrient AgarTSAという合計5種類を測定に用いております。各大腸菌の濃縮菌株を用いて、所定の塩素濃度で3分程度接触させた結果が19ページ目以降続いておりますが、まず、図4-2-1に、そもそも同じ濃度で大腸菌を調整したにもかかわらず、青い棒で示されるように、処理前の大腸菌の濃度自体が培地により異なって評価されています。特にコンパクトドライECという選択培地は、大腸菌数が低く評価されることになります。

 同じことは塩素処理後についても言えまして、選択培地を使うと、やはり大腸菌数が低く評価されます。すなわち、これ以外の選択培地であれば生育できたかもしれない大腸菌、VBNC状態等の大腸菌がカウントされないため、より危険側の評価になり得るということです。

 以降、様々な実験条件における生残率が示されており、結論としては、23ページ目の図4-2-10にまとめられており、いずれの実験においても、大腸菌の生残率は、選択培地のほうが非選択培地よりも低くなり、その結果、消毒効果が高く評価される結果となっております。塩素消毒実験の他の条件を全て揃えたにもかかわらず、使用する培地が異なるだけで、最大で25倍の差が生じております。

 特に塩素処理後の大腸菌については、選択培地では生育できない、増殖できないようなVBNC状態の大腸菌が存在しており、その部分がカウントされておりません。一方で、非選択培地では、今回はNutrient AgarTSAのみの比較ですけれども、差は少ないということですので、非選択培地を使って評価をしたほうがより安全側で消毒効果を評価できるという結論に至っております。

23ページ目の図4-2-11以降は、同じ培地であるECを使って3種類の大腸菌株を培養した結果ですけれども、これは余り差が出ない。24ページ目の図4-2-12では、最大2倍程度であったということで、塩素耐性は菌株ごとにあまり差はないとのことですが、強いて挙げれば、NBRC3972というJIS規格の抗菌製品の評価方法に使われる菌株がより耐性が高いということで、こちらのほうが望ましいのではないかとの考えが示されております。

 いずれにしても、塩素消毒を含めた各種消毒処理の効率が、安全側に評価されるような培地あるいは菌株を選択していくことが極めて重要であることを、改めて指摘いただいたということです。

 駆け足で申しわけございませんけれども、「5 高度浄水処理工程における全菌数・生菌数のフローサイトメーターを用いた通年調査」につきまして、先に紹介した定量的微生物リスク評価では、特定の処理工程で病原微生物を何桁、何ログ除去できるかということを、各水道事業において自ら評価をする必要が生じます。

 その一つの手法として、フローサイトメーターを用いて、かなり迅速かつ数多い検体数を評価できることを検討いただきました。以降、春日委員より紹介いただければと思います。

 

○春日委員

 春日でございます。

 めくっていただきまして、パワーポイントがございますので、これで簡単にお話ししていきたいと思います。

 まず、1枚目ですが、ここの写真に出ているのが、我々が使っているフローサイトメーターでございます。近年、非常に小型化が進んでおりまして、このようなデスクトップ型のものも複数社から出されて、いろいろなところで活用されています。

 2枚目ですが、今、島崎先生からもお話もありましたけれども、現状、水道水質の細菌指標は培養法に基づいております。大腸菌、一般細菌、従属栄養細菌にしても、1日とか7日とか培養期間を要するという問題があるわけです。

 3枚目になりますが、先ほどVBNCという言葉がありましたが、培養できる細菌が実は全体のごく一部であったり、そもそも結果を得るまでに長時間を要してしまうという課題が培養法にはあります。例えば、原水で突発的な細菌の汚染が起きたり、浄水処理で一時的なトラブルが発生したり、あるいは、給配水系で非定常な細菌の再増殖が起こった場合、培養法ではこうした非定常な現象を迅速に検出することはできません。つまり、データをすばやい初動体制につなげるのが難しいということがあります。培養によらずに迅速に測定できれば、予防措置を早くとることができるというメリットがあります。それがリスク因子かどうかという判断は、後でゆっくりやればいいわけです。

 4枚目の下に分析の流れが書いてありますが、フローサイトメーターというのは緑色のラインで示した分析フローになります。水を核酸染色剤で10分ほど染めた後に計数をするだけですので、リアルタイムな測定が可能になります。

 5ページ目をめくっていただきまして、測定原理について説明したいと思います。本実験では、SYBR Green Iとヨウ化プロピジウムという異なる染色剤を使用することで、細菌の細胞膜が傷ついているか、傷ついていないか、生菌と死菌の診断をしています。

 現在、微生物のリスク評価で一番欠けている点は、濃度の時間変動性の情報ではないかと思います。昨年、島崎先生から御紹介があったと思いますが、我々は浄水場において、終日15分間隔で各工程水をとって、全菌数、生菌数の濃度変動性をフローサイトメーターで測定しております。今回は、浄水工程水中の全菌数、生菌数の季節変動を把握するために、ほぼ通年の調査を行いました。2015年1月から10月まで、全部で21サンプルの測定結果を御紹介したいと思います。

 次の7枚目のスライドがデータの全てです。横軸は1月から10月までの時間になっております。左側の縦軸は全菌数、右側の縦軸は生菌数で、それぞれどのように変動しているのかを示しています。

 これだと見にくいので、わかりやすい8枚目を御紹介したいと思います。8枚目のグラフは、横軸を各工程として、7枚目の時間変動のデータを工程ごとにプロットしたものです。各工程のプロットは21ずつあります。これはほぼ10ヶ月間のデータになるわけですが、このように整理していきますと、原水や凝集沈殿処理水中の細菌の濃度はどれくらいばらつくのか、どこの処理工程の細菌の除去性が不安定なのか、といったことを可視化することができます。

 例えば、全菌数のデータで見ていきますと、凝集沈殿では、平均で0.47log10 除去されていることや、オゾン処理における全菌数の平均除去率が1.7log10 と高いことが見てとれます。従来、オゾン処理は、味とか異臭に対する処理効果が強調されてきましたが、今回の結果を見ますと、微生物リスクの制御という点でもかなりきいていて、セイフティバリアになっていることがわかります。オゾン処理の後に生物活性炭を通しますので、一旦全菌数は上がりまして、その後、急速ろ過、浄水ということで下がっていくことになります。

 次のページ、9枚目を見ていただきますと、全菌数と生菌数を並べた図がございます。左の緑色のプロットが全菌数の結果、右側の赤色のプロットが生菌数の結果になります。 これを見ていきますと、不連続点注入で前塩素処理をしている冬季については、凝集沈殿処理水中の生菌数が顕著に下がることがわかります。また、オゾン処理、中塩素注入後の急速ろ過、後塩素注入後の浄水においては、生菌数は全て定量下限の103 cells/ml未満となっております。全菌数より生菌数の方が、リスク因子としてはより重要かと思いますけれども、今回の通年調査を通して、浄水工程において生菌数がどのように制御されているのかを把握することができました。当初は、凝集沈殿後などはもっとばらつくのかなと予想していたのですが、結果を見ると変動幅は比較的小さいことがわかります。

 このようなデータを蓄積していきますと、浄水場で平均的に全菌数なり生菌数がどれくらい除去され、変動幅はどれくらいかということがわかってきます。フローサイトメーターでは細菌の種類まではわかりませんが、通常の濃度変動幅を超えるような全菌数や生菌数の異常値を迅速に検出したら、予防的に塩素注入率を増やすなどの初動をとることで、潜在的なリスクの発生を制御できるのではないかと思います。その後、落ち着いて確定検査をしていけばいいと思います。

 9枚目、最後に、残留塩素を保持しない水道水を供給しているオランダの事例を参照すると、全菌数、生菌数のオーダーは105 cells/mLということのようです。今回の調査結果では、浄水中の生菌数は103 cells/mL未満ですから、オランダと比べて2ログ以上低いことになります。逆に言えば、潜在的な細菌由来のリスクも、それにほぼ比例する形で低くなっていると解釈できるのではないかと思っております。

 最後、10枚目、結論と展望ですが、既にいろいろとお話ししましたので、以上とさせていただきます。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 続いて、片山先生、お願いします。

 

○片山(浩)委員

 もう一枚の資料2-2に基づきまして御説明させていただきます。「クリプトスポリジウム対策の国際比較」で、まず、QMRAに話を持っていくのですが、その前に少し御紹介というか、リスク評価を水質面からやっていかなければいけないという状況で、水の中に微生物がいるからどれだけのリスクだという議論を我々はしているのですけれども、実際には、例えば、交通事故であれば、死亡者がいて、人口が幾らという形で結果から、疫学データからリスク評価をすることができるのですが、水道の場合は、下痢症の人が出てきても水なのかあるいは水道水なのかというのがわからないわけですから、結果を見た、疫学データから水道由来のリスクは判定できない状況であることもあります。

 なので、実際にアウトブレークが起きている、起きていないで水の安全性を評価すること自体がそもそもおかしいのだということです。

 それを裏づけるような研究がございまして、後ろをめくっていただいて、介入型疫学調査研究をされたことがございます。

 これは水道水に浄水器とか瓶水を送り届けるようなことをして、リスクがない家庭と水道水を飲んでいるような家庭という2群を比較して、下痢症の発生率がどれぐらいかという、これはまさに水道由来の下痢を見に行くという枠組みで調査をするということですが、下を見ていただいて、ケベックの調査は、ペイメントさんが2回にわたって行っていますが、1回目は1988年ごろにやって、18カ月間、606家庭に毎週電話をしているという調査でございます。

 水道水の水質基準も調べて、水質も調査して、水質基準を満たしているということがわかっている中で、年間1人当たり0.76件の下痢で、浄水があるところは0.5件なので、下痢症の35%は水道水由来だという結論を出したような研究です。

 その次は、さらに大規模化して、16カ月ですから1,400家庭で調査をしているということをやって、ここでも14から40%が水道水由来だという結論が出されているのですが、次のページですけれども、この調査は不十分だという声もありまして、イギリスのハンターさんとかも含めて、被験者が持っている情報がバイアスになると。

 例えば、イギリスで起こったクリプトスポリジウムのアウトブレークで、アウトブレークが起こっている地域は給水地域などでわかるのですけれども、その給水地域以外のところを対象としてインタビューしたところ、ほぼ同じの下痢症が出てきたと。つまり、メディア、ニュースでばんばんクリプトスポリジウムがはやっているという情報を流された状況下で住民がインタビュー調査を受けても、結局、何が下痢症かということがずれてしまうということで感染率は調べられないのだけれども、逆に言うと、そういうバイアスがかかることがいかに大きいかということもわかってきている。

 つまり、ケベックの調査では、自分のところが安全な水を飲んでいるのか、水道水を飲んでいるのかがわかってしまっているので、調査としては不十分だという指摘があった。

 次の下の6ページ目では、改善された調査ということで、二重盲検法を使っています。ここでは、ダミーの浄水器を取りつけるという方法を使っておりまして、ある御家庭では浄水器を、ある御家庭には浄水器と称して全然浄水機能のないものを取りつける。そして、期間の途中でそれを入れかえる。あるもともとの家庭にはダミーを入れて、ダミーを入れられていたところには浄水器を入れてということで調査して、それで下痢症の発生を調べていくということで、これは実はアメリカのアイオワ州とオーストラリアのメルボルンという2カ所で別々の研究者が行っていまして、そのいずれにおいても水道水由来のリスクは出ていない、有意の差がないことになりまして、結局、年間大体0.5件から1件ぐらい皆さん下痢はしているようですけれども、それが水道由来であることがほとんど見つからないという調査結果だと理解していいと思いますが、見つけに行こうとしても見つからないことと、ここでやっているリスクは101 100 とか、年に1件起きるような件数であれば、こういう疫学調査で対象とできるけれども、先ほど来出ている10-4 とかというリスクをこの疫学調査で見つけようということ自体、そもそも無理なのだろうと、そういう状況であります。

 7ページ目に、水道における感染リスクの前提として、これまで水系感染だということでわかったのは、例えば、ミルウォーキーであるとか、越生であるとか、アタックレートが高い。ミルウォーキーの場合、もともとの人口規模か大きいのですが、25%の感染確率、越生町に至っては70%という、非常に高い率で患者が出ている状況でようやく見つかるということですので、水道による感染症が起こっていない、つまり、疫学的に検知できていないというのは、何ら安全性に関係ないということです。それは言ってみれば当たり前の状況だと。

 その中で、やはり微生物のリスクの濃度、微生物の濃度を評価することによって、安全かどうかということを判定していかざるを得ないというものはほぼ前提として考えていかなければいけないということであります。

 以上、前提ですが、8ページ目には、クリプトスポリジウムの感染リスクで、先ほど島崎委員の説明とも少しかぶるのですけれども、何でそんなに大きな水量が必要かということですが、仮に1匹飲んだ場合のリスクが1%とした場合、365日間で1リットル毎日飲み続けるとすると、3万6,500リットル中に1個が10-4 のリスクになりますということで、3万リットルという水量を測定することによって、10-4 のリスクに対応していく。

 この1%でここをやっていますけれども、0.4から20については、きょうの我々の本筋ではないのですけれども、9ページ目に少し載せてあります。これは島崎委員の出されていた図と全く同じですが、これは実は本線とはちょっとずれて議論したいところですけれども、これはもともと青い線と紫の線、つまり、たくさんドーズを打てば100%下痢症が起こるというデータがあった状況のところで、0.4%とか、9%とか、そういう議論をしていたところですけれども、新たに出てきたのが、この黄色、オレンジ色の線になります。

 これで、40%だとか、20%だとかという議論をしているわけですけれども、これは実はたくさん飲んでも100%の人が感染しなかったせいで、このリスクの線を引いてみたところ、このように低いドーズで高い感染確率になってしまっている。なので、1匹飲んだときの感染リスクは高いのだという議論をしているのです。

 直感的に言うと、103 104 のクリプトスポリジウムを飲ませたときに、100%にならなかった感染力の弱そうなクリプトスポリジウムに対して、1匹飲んだときに40%の感染率があるのだという議論をしていることに非常に大きな違和感を持っていて、そういう意味では、WHOの第4版でクリプトスポリジウムの1個摂取当たりのリスクをぐんと大きく上にずらしたことについて、我々がどこまでつき合う必要があるのかというのは、別途議論してもいいのかなとは感じてはおります。

 これは本線とは別ですけれども、1個当たり1%とかという議論のレベルはあってもいいのかなとは思っています。

 続いて、Water Safety Planですが、WHOによっても推奨されていますし、厚生労働省も当然これに沿って進められているということで承知しておりますけれども、考え方としては、HACCPの考え方に基づいて、水源から蛇口まで総合的に考えて安全対策をとっていくということのうち、クリプトスポリジウムの対策としては、相性がいいものだと考えております。

 つまり、後ろを見ていただいて、これは除去効率をターゲットにする手法であるとも言えまして、水道水質基準自体は最後の蛇口から出てくる水を調べることに重きを置いているという、当然、そういうやり方によって品質保証をしていくという、製品の抜き取り検査という形での考え方ですけれども、HACCPの考え方は、もともとの原水中の濃度はこれぐらいとか、どれぐらいの原料を使っていて、その後、どれぐらいの処理をしているか。あるいは、その処理がちゃんと機能しているかどうかの検証を行うというアプローチでやっているということですので、処理効率を見ていくのが重要だという考え方ですので、それ自体は厚労省の方向性もそっちに向いているのだろうと。

 水道におけるクリプトスポリジウム等の対策指針においても、ろ過池の出口の濁度が0.1と言っていて、蛇口で0.1とは別に言っていないわけで、これはろ過がちゃんとできているかどうかを見るという方針であって、濁度がとにかく低い水を供給したいと言っているわけではなくて、その処理をちゃんと担保させたいという意向があらわれているのだろうと考えますと、HACCPの考え方に沿った方針だろうと評価できると思います。

0.1度という数字がいいのかという点については、カナダでパイロット研究をしている例がございまして、これは横軸に濁度、縦軸に対数除去率ということで、クリプトスポリジウムの除去率が見えている研究例があります。

 これを見ますと、0.1度あたりからぐっとよくなっていることも見えておりまして、これはAWWAのリサーチファンデーションで出版されている報告書で、これはダウンロードが可能だったと思いますのでごらんいただければと思いますが、こういう形で出てきているところで、0.1度がいいのかどうかというか、それなりの効果があることは見てとれると思います。

 ただ、私が言いたいのは、0.1度でいいのでしょうけれども、リスクベースで議論をするべきだと、これは対数除去率との対照としていいのであって、0.1度を超えたらゼロリスクになりますということは全く意味していないので、0.1度にすることの効果としてはいいのだけれども、それは例えば原水濃度を測定するとかという一連の一般的なリスク管理の中での位置づけとして、0.1度は意味があるのだろうと考えております。

 ほかの国の例を続けさせてもらいますと、イングランド・アンド・ウェールズは、水道の民営化を行った地域でございますので、水質管理のドンリンキング・ウォーター・インスペクトレートというところと民営化された企業が、ある意味、対立というか、そういう従わせるものと、ぎりぎりのところでお金もうけしようという民間の理論との中でできているルールだとお考えいただければと思いますけれども、もともとはクリプトスポリジウムじゃじゃ漏れの水を出しても罰則がなかったというか、裁判で勝てなかった。

 裁判で勝てないというのは、感染した側が立証責任を背負わされて、ほかのものでクリプトスポリジウムになったことはあり得なくて、この水道水でなったに違いないということを100%証拠立てて議論することができないので、水道側が、クリプトスポリジウムが入っていることが調べればわかるような水を出していても、裁判では負けなかったということがあって法律がつくられたという、ある種特別な状況の中ですけれども、1,000リットル中100個のクリプトスポリジウムまでを認めるという形での水の運用を行っているということです。これは逆に言うと毎日1,000リットルを調べろとも言っているので、そういう意味では非常にユニークな取り組みだと思います。

 その前に、この水がクリプトスポリジウムに対して安全であるというリスク評価を、水道側が提示しなければいけない。深層地下水を使っているとか、そういう意味では、日本の対策指針も近いとは思いますけれども、それができないようであれば調べなさいということで、膜処理が入っていれば調べなくてもいいですよとか、さまざまな方法をとりながら、1,000リットルを調べさせて、100は超えないようにする。1,000リットル中100がいい数字かどうかは別にして、そういうことをやっている。

 アメリカはLong Term 2 Enhanced Surface Water Treatment Ruleが現行の表流水処理規則でございますが、Information Collection Ruleがございまして、ずっと原水のクリプトスポリジウム濃度を測定しなさいという、測定を義務づけたことの助走期間があって、その後、処理を入れなさいということをやります。

 だから、原水の病原微生物濃度を見積もるのは、これは実際にICRというルールで測定させている。処理によって達成可能な病原微生物除去率を示す。施設設計指針の中に、この処理をすればクリプトスポリジウムは何ログ除去ですということが書き込まれていると考えていただいていいですけれども、そういう単位処理によってのクリプト除去率が与えられていて、それを入れれば何ログ除去追加したということが議論できる。

 そうやって、工学的に原水の濃度がわかっていて、何ログを除去したら何ログ以下になることがわかっていて、それで浄水のクリプトの濃度は測定しなくてよろしいというやり方をやっているということです。

16ページ、下のほうにあるのは、Binはクラス分けですけれども、Average Crypto Concentration in raw waterとありますが、原水のクリプト濃度が0.075/L以下であれば普通の急速ろ過法でよろしいと。1個以下であれば、1.5ログの追加処理を入れなさいと。この1.5ログに相当するのが何か。オゾンであるとか、紫外線であるとか、その施設設計指針との組み合わせで、それは追加処理を求めているというやり方です。

 私に言わせると、0.1度以下に急速ろ過池を運転しなさいというのがこの2.5ログであるとか1.5ログであるとか、こういう追加処理をしたものと同等になっているのかなというイメージは、私としては持っているところではございます。

 オランダの水質基準は、既に島崎さんから御案内のあった、伊藤先生からも触れられておりますけれども、水道水質基準として10-4 という数字を出していて、浄水場ごとに、単位処理プロセスで、ウイルスは何ログ落ちる、バクテリアは何ログ落ちる、原虫は何ログが落ちるという3つを並行させて計算していまして、それでそれぞれが結果的に十分に低いリスクになっているかどうかというものを計算しているということです。

 その中で、除去率ですけれども、モンテカルロシミュレーションとかは島崎委員から御案内があったとおりですが、例えば、18ページにあるように、三角形をつくっていることが彼らは多いです。この三角形は何かというと、この三角形の頂点のところが文献値から見て一番もっともらしい除去率というところのログであります。

 だから、ここの頂点のところが1ということは、普通だったら1ログ除去できるということです。一番左側の底辺の左端が、最悪の除去率、最も取れなかった場合どれぐらい除去できるかということがあって、右端の場合は、最も成績がよかった場合どれぐらい除去できるかということがあって、この三角形を使って、この三角形の中におさまるように除去率が分布していますと言って、ある日は除去率が最悪、ほとんどの日はこの頂点ぐらい、だけれども、ある日はたくさん取れるということが起こるのだという前提で、10-4 のリスクになるようにしなさいと。つまり、除去率が非常に悪いときがあることを含み、10-4 リスクを達成しなさいというルールになっているということであります。

 以上、国際比較を駆け足で議論してきましたが、考察としては、濁度管理の有効性は世界的に見てもあると考えていいのだろうと思いますけれども、濁度0.1以下にすること自体はいいことですが、それが、例えば、アメリカのLT2の考え方でいうとどれだけのログクレジットに相当するのかという議論の立て方は十分に有効かなとは思っております。

 オランダでの議論からすると、処理における水のショートカットとか、短絡流です。あるいは、時間的な変動で、あるときは取れる、あるときは取れないとか、濃度もあるときは高い、あるときは低いという時間変動も考慮しているという中での10-4 感染リスクをやろうとすると、常識的に、我々が例えば膜を入れたらほとんど取れますよとか、いろいろなことを言っていますけれども、それをある程度、36524時間とかと考えていくと、かなり抑えられた除去率しか彼らは入れていないということもありまして、そういう意味では、十分にリスクを下げるのはどうやっていけばいいか、もう少し議論していけるのではないか。簡単ではないぞということです。

 (なにか言いかけて)これは島崎委員の説明に対する質問なので、ここで一旦とめます。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 それでは、今からディスカッションをしたいと思います。

 片山先生、続けてどうぞ。

 

○片山(浩)委員

 伊藤委員の御試算の中で、水の飲水量、300ミリリットル平均という御議論でしたけれども、水道水質基準というか、基準を考える際に、実飲用量を用いるのか、1リットルとか、生水で飲んでいい水を出す義務が我々にあるのだと考えるのかというのは議論の余地があるかなというか、私は、どちらかというと、生水は1リットルとか、普通のアベレージよりも多目の数字で、95%の人はそんなには飲んでいないだろうという数字あたりを採用したほうがいいのかなという考え方ではあります。

 

○島崎委員

 ありがとうございます。

 伊藤先生の検討ですと、平均値を327mldayとして、指数分布を当てはめていますので、1リットルぐらい飲んでいる方々もわずかながらいることになりますし、モンテカルロシミュレーションにかければ、その様なハイリスクな方々も考慮されたパーセンタイルとして計算されることになります。一方で、平均値的な議論をされる場合は、より安全側を考えて、片山先生がおっしゃっているように、1日1リットルぐらいの非加熱の水を感染性が損なわれないような状態で飲用すると仮定するのが適切だろうと、個人的にも考えます。

 

○遠藤座長

 膨大な資料を御提供いただきましたので、ディスカッションも多岐にわたると思います。委員から多くの御発言をいただきたいと思います。よろしくどうぞお願いいたします。

 どうぞ。

 

○片山(浩)委員

 島崎委員の11ページの図3-7ですけれども、これは日本の地図の色がよくわからないのですが。

 

○島崎委員

 これはもともと日本のデータは入っていなかったということですが、1つ前の10ページ目に記載してあるように、伊藤禎彦先生から、水道課に集められた原水中のクリプトスポリジウム等の情報や、昨年の水道研究発表会で発表された内容も含めて、オランダの研究グループに提供されたとのことですので、今後、日本のデータも反映されると思います。

 

○遠藤座長

 どうぞ。

 

○黒木委員

 今、この図が出ているので、ここで質問させていただきたいのですけれども、これはそもそもどういうデータに基づいてこの図が書かれたのですか。

 

○島崎委員

 私も不勉強で、この図がどのような資料を集めて出てきたのか存じないのですが、特に北半球について冬季はヨーロッパ各国が非常に高く、アジアも中国のあたりは結構高いことが見て取れます。どのようなデータに基づいたかということは、皆目見当がつきません。

 

○片山(浩)委員

 ヨーロッパで多いというと、牛とか豚の頭数と降水量とかで川に流れ込むみたいなものを入れているイメージですかね。

 

○黒木委員

 ただ、感染率まで推定しているのかどうかということもありますし。

 

○島崎委員

 この図は表流水中の濃度を示しており、畜産由来ですので、恐らくは片山先生がおっしゃったような、畜産の頭数、掛ける、適正な家畜廃水処理の実施状況、処理についてはかなり仮定が入るのではないかと思いますが、そのような推定でこの図が書かれていると想像します。機会がありましたら、オランダの研究グループに聞いてみたいと思います。

 

○遠藤座長

 ほかにございませんか。

 どうぞ。

 

○船坂委員

 結論的には濁度0.1度で管理すればいいということですか。これは変える必要があるという方向性なのか、そのあたりはどうなのですか。

 

○片山(浩)委員

 私としては、原水濃度に応じてやるとか、紫外線を入れた場合0.1を緩めるとか、あるいは、例えば、オゾンを入れたら緩めるとか、オゾンの後のバックから出てくる濁度の中にはまずクリプトは入っていないでしょうから、そのバックでふえた濁度に関しては、多分0.1度とかの対象から外すとか、そういうさまざまなある種クリプトを考えた場合の合理的な濁度0.1の意味づけはあり得るだろうとは思っています。

 

○船坂委員

 わかりました。

 

○遠藤座長

 今の管理目標として濁度0.1というのは、間違いの無い管理項目と理解できると思って聞いていたのですが、如何ですか。

 

○片山(浩)委員

 一般的な急速砂ろ過法を使っているところの管理としてはうまく機能しているのではないかとは思いますし、それを裏づけられるように、この13ページのカナダの研究例とかは役立てられるかなとは思いますが、例えば、原水の濃度を調べなくていいと言っているわけではないと思いますけれども、指標を見てリスクの判定をしなさいとかというよりは、畜産があるかどうかとか、そういうさまざまなGISというか、恐らく、地元の人というか、浄水場の方は直感的にいるかいないかわかっていると思うのですけれども、そういうある種のリスクがありそうなら、クリプトスポリジウムをもっと頻度を高く測定して、それでやるという方向性のほうがいいのだろうとは思います。

 処理の効率という意味では、急速砂ろ過に関して、濁度0.1とかというのはいいやり方かなと思いますし、少なくとも、当時として追加の設備投資なくできたという意味では、言ってみれば、非常に低いコストで安全性を高められたという意味ではいい方法だったのだろうと思いますが、改めて10-4 であるとか、そういう厳しい安全管理をしていこうという中で、もう少し総合的に多角的に安全管理をしていく必要性が出てきているという考え方でおります。

 

○遠藤座長

 よろしいでしょうか。

 春日さんの御発表でちょっとお伺いしたいのですけれども、測定しているのは1mlですか。

 

○春日委員

 実際の測定量としては、50μl中の全量計数となっております。

 

○遠藤座長

 それを日に何回ですか。

 

○春日委員

 今回のデータは1日に1回の測定で、年間21検体分となっています。昨年度は、1日の中で朝9時から夕方4時まで15分間隔で評価をした結果をご報告しています。

 

○遠藤座長

 先ほどの説明にありましたように、BAC処理で細菌類がふえていましたが、そのことが濁度にどのぐらい影響するかということとは別として、BAC処理の前後ではかって細菌類の増減を把握していくことも興味のあるところですが、経済的にも十分に成り立つ手法と考えてよろしいのでしょうか。

 

○春日委員

 フローサイトメーターは、迅速かつリアルタイムな評価が可能ですので、自動計器化はしやすいと思います。細胞を染色して測定するだけですし、定量範囲のダイナミックレンジが広いので、ヒューマンエラーが入りやすい希釈などの操作も不要です。今回のデータも全て無希釈で測定しております。管理基準となるレベルについての検討は別途必要ですが、経済的にも適用可能性は高いと思います。

 

○遠藤座長

 いわゆる非生物系がまじった場合のこれの評価はどうなるのでしょうか。

 

○春日委員

 微生物のDNAを染色して測定するわけですので、生物と非生物の識別は原理的には可能です。一方で、高濁度の場合には測定は難しいと思います。

 

○遠藤座長

 ありがとうございます。

 ほかにございませんでしょうか。

 どうぞ。

 

○橋本委員

 済みません。同じく春日先生のところ、とても興味深く拝聴させていただいたのですけれども、フローサイトメーターはサイズ分類みたいなものもできたのでしたか。そうすると、例えば、どれぐらいのサイズのものを捕まえているのかということに関して何か情報があったら、これは自動計測の可能性がすごく高いことだと思いますので、ぜひ教えていただければと思います。

 

○春日委員

 通常のフローサイトメーターの測定対象は、ヒト細胞など細菌よりも大きなものです。従って、細菌のように1m mを下回るような粒子の散乱光などの測定は正直、厳しいところもあります。

 

 

○橋本委員

 例えば、何か凝集沈殿等で問題があったとか、何かがあったというときに、濁度までは上がらないのだけれども、このフローサイトメーター上のデータが上がってくるとか、そういう検出ができるのかなと。

 

○春日委員

 その可能性はあるかもしれません。パーティクルカウンターを入れている浄水場はありますので、フローサイトメーターを併用することで御指摘の点を評価できるかもしれません。

 

○橋本委員

 ありがとうございます。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 ほかにどなたかございませんか。

 黒木先生、この培養と感度の問題で何かコメントはございませんか。

 

○黒木委員

 これは各種の培地を使って調べるということですが、当然、培地によって全て菌の生え方が違ってきてしまいますので、これは物差しが少しずつずれてしまうというところがあるので、この実験はこの物差しを使って、このようにして調べましたという結果で評価をするより仕方がない部分ではないかと思っております。

 

○遠藤座長

 例えば、将来的に消毒実験をする際、日本ではこう云った方法を使ってやりましょうと云ったような評価方法の標準化の必要性についてはどうお考えですか。

 

○黒木委員

 今、言いましたように、物差しをどこに定めるかということになります。恐らく、その物差しを決めるときに非常に多くの議論が出てくると思います。それぞれに結果の出方が変わってきてしまいますので、その中で意見を集約して、この物差しでやりましょうという決め方になるのではないかと思います。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 ほかにございませんでしょうか。

 次に移らせていただいてよろしゅうございますか。

 それでは、議題の3番に移りまして「原水を対象としたクリプトスポリジウム等の検査法について」を橋本委員から御説明をいただきます。

 

○橋本委員

 資料3をごらんください。

 昨年度からMPNでクリプトを捕まえられないか、検査できないかということを検討させていただいているものの、余り大きな進展はないのですけれども、簡単な経過報告をされていただければと思います。

 今までの議論でもそうですが、原水のクリプトの濃度をどうやって捕まえるかということがやはりリスク管理上とても重要なことになってくると思うのですが、その中で幾つか、現行の検査方法の問題とまでは言わないのですけれども、もう少し簡単に、なおかつ定量性が高く、原水のクリプトの濃度を捕まえることができないかということを一つ目指しまして、MPN法を導入できないかという検討を行っております。

 昨年度までどういうことをしていたかというと、MPN法をどうやってやるかということですが、この資料の図1の格子つきのメンブレンフィルターを用いまして、細菌検査などでやられているのと同じように、この格子の中にクリプトがいたかいないか、要は、陽性区画が何個あったかということと、ろ過水量、各面積が規定されますので、その面積を通過したろ過水量からMPN値を求めるという方法で、クリプトそのものを数えるのではなくて、陽性区画数を数えるという方法を検討する。

 昨年度までは、この大前提として、そもそもこのフィルターの上に均一にクリプトスポリジウムが分散してくれるのかというところを検討しまして、図2に示したような方法でやれば、基本的には均一に分散ができるのだというところまでを昨年度は実験をしました。

 今度は、少数のオーシスト、大体10個程度のオーシストが入っているサンプルで実際にろ過をしまして、そのときにMPN値を求めた値と、実際に計測した値との間の乖離性がどれぐらいあるのか。もしくは、同一性がどれぐらいあるのかということを検証しました。

 その結果ですが、表1にありますように、ざっくりと見ますと、これはNイコール100で、100回試験を行っているのですけれども、実際の計測値よりMPN値の方が若干高目の値にはなるのですが、それでも有意差はないだろうと。

 それがこの表1のデータです。

 この分割なし、2分割というものが、またこれはちょっとややこしい話なので、簡単にお話ししますと、このメンブレンフィルター上で面積が規定できない部分がどうしても出てきてしまいます。円形のメンブレンフィルターを使っていますので、その面積の規定できない部分をなるべく小さな区画で分割したほうが本来は正確な値が出るのですけれども、実際上、どう分割しても半分、2つとか3つとか4つとか、そのレベルになってしまいますので、分割せずにやった場合と2分割でやった場合が出ておりますが、2分割にしたほうがより実計測値に近い値になってくるという結果が出ております。

 それぞれのデータの分布を図3にMPN値が赤いバッテンで書いてあります。95%の信頼区間の上限と下限を緑と青で示しているのですけれども、このように実計測値とMPN値が大体1対1のところできれいに乗っかってくるということで、きれいな、ピュアなオーシストを用いた系での実験では、このようにMPN値が実用的に使えるのではないかということが評価されました。

 一方で、実際には恐らく夾雑物などがある中での影響、できるかどうかということについても検証はしなければいけないのですけれども、第一歩としてこういうデータが出ているところです。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 御質問、御意見はございませんか。

 

○片山(浩)委員

 単なる興味で申しわけないのですけれども、1区画に2個以上のクリプトが入っているのはどれくらいあるのですか。例えば、10とかのとき。

 

○橋本委員

 データを持ってこなかったのですけれども、例えば、10個でやったときにはほとんどないという状況です。実際にあるにはあるのですけれども、100枚あって、10%ぐらいかな。それぐらいです。

 

○船坂委員

 今、10個と話されて、フィルター上に10個は捕捉されていますか。回収率というか。

 

○橋本委員

 回収率は、途中の選択分類の段階がありませんので、ほぼ乗っけたものは全て乗っかっていると判断するしかないのです。

 

○船坂委員

 全部数えることはできるでしょう。

 

○橋本委員

 できます。

 

○船坂委員

 フィルター上を数えてみたら。

 

○橋本委員

 全部数えてあります。

 

○船坂委員

 例えば、この横軸ですけれども、今、添加した分だけ捕捉されているか。

 

○片山(浩)委員

 添加量を厳密に規定するのができないのでは。

 

○船坂委員

 できないのですか。

 

○片山(浩)委員

 いや、わからないですけれども、それはそれで何かのカウントが。

 

○橋本委員

 数を規定したオーシストを売っていたりするものはあります。ああいうものを使うという手はありますけれども、確かにいろいろなところにくっついてしまって、フィルターに捕捉されないとかというケースは想定しないといけないかもしれないです。

 ただ、それはMPNに限らずほかの方法でも同じような結果になると思います。

 

○船坂委員

 課題がまだありそうですけれども、今、原水をやる場合に、浄水と同じ方法でやっていますので、この方法が原水で適用できるようになると非常に楽になります。そこで、実用化に向けての今後の方向性、1年以内には使えるようになるとか、そういうものは何かないですか。

 

○遠藤座長

 私が答えるのも何ですが、今回のご報告は染色された虫をフィルターの上に乗っけて数えたときにMPNと実測値とがおおむね一致したというデータでと理解しました。今後は、蛍光染色されたものが例えばクリプトスポリジウムであることの確証みたいなものが、必要になってまいりますね。ご承知のように、現行では原水の検査においても免疫蛍光染色されたものをすべて微分干渉顕微鏡で内部構造の確認がなされています。それをしなくてもクリプトスポリジウムだと言える、あるいは言って良いというところまで信頼性を高めるための工夫が必要だろうと思います。

 数え方としてはこれで概ねよさそうですけれども、検査法としてはもう一つ別の段階の工夫が必要だろうと思っております。この1年以内に橋本先生にご提案いただきたいものだと考えております。

 

○船坂委員

 わかりました。

 

○遠藤座長

 ほかにございませんでしょうか。

 どうぞ。

 

○春日委員

 等分散を確保するろ過というのは、10分の静置というところがポイントでしょうか。

 

○橋本委員

 いろいろと検討しているのですが、10分の静置以外にも、例えば、フィルターの一般的に市販されているフィルターホルダーですとかファンネルよりもちょっと径の大きなものを使ったりですとか、界面活性剤をどれぐらい入れるべきなのかという幾つかの検討をしているのですが、どれがきいているかというのは具体的にはわかりません。

 ただ、最適化したものはこういう条件だということです。

 

○春日委員

 ありがとうございます。

 

○遠藤座長

 それでは、引き続き御検討いただきたいと思います。

 ありがとうございました。

 それでは、その他の議題に入らせていただきますが、昨年度議論いたしましたクリプトスポリジウム検査法の陽性試験の供給につきまして、泉山先生からその進捗状況についてお話しください。

 

○泉山委員

 クリプトスポリジウム等の陽性コントロールの供給について、簡単に御紹介します。

 現在、クリプトスポリジウムとジアルジアを研究所から民間の企業に製品交付いたしまして、民間企業で陽性コントロールを製造販売できる状況になっています。

 先方の企業では、実際にコントロールの供給が始まっています。ただ、広告とかの宣伝費用を使って大々的にやるということではなくて、現状では口コミの販売で個別に対応されていると聞いています。当面は、顕微鏡検査の目的に、ホルマリン固定したサンプルの少数が出荷されていると聞いています。紫外線処理したサンプルはまだ実績がないと聞いています。

 何分、動物に実験感染をさせてクリプトスポリジウムのオーシストとジアルジアのシストをふん便中に排出させて、それを精製して販売するという作業があるものですから、どうしても費用を要してしまうということで、なかなか簡単ではない状況のようですが、幸いというか、引き受けてくれている会社は蛍光抗体を販売されているので、ユーザーサポートの一環として維持できている状況のようです。

 ですから、今後も陽性コントロールの供給を続けてくださると聞いています。

 私からは以上です。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 今の件に関しまして、どなたか御質問等はございますか。

 どうぞ。

 

○片山(浩)委員

 水処理の添加回収試験に使ったりすることは考えてよろしいのでしょうか。

 

○泉山委員

 はい。もちろん可能です。内部精度管理や外部精度管理等にお使いいただければという状況だと思います。

 

○遠藤座長

 ありがとうございました。

 それでは、そのほか、委員から何かございましたら、御発言をどうぞ。

 

○黒木委員

 1つ、先ほど、座長から塩素消毒の効果の測定法ということで、こちらで紹介されていたのは培地を使った評価方法ですが、実はこのフローサイトメーターを使って生死判定をすることができますので、培地を使わずにフローサイトメーターを使って生死判定をして塩素の効果を測定することも、既にかなり一般的にやられていることではあるのですけれども、そういう方法も今後検討していただければと思います。

 島崎班の研究の中でもまさに御指摘いただいたことはしております。水道水から実際に従属栄養細菌として検出されるようなコロニーを単離いたしまして、今、黒木先生がおっしゃったような塩素消毒実験において、各単離株の生菌数の減少傾向を評価しております。大腸菌と比べて減少の傾きがかなり緩やか、すなわち塩素耐性の大きい菌などの存在も確認しております。

 

○遠藤座長

 わかりました。

 ほかにございませんか。きょう御発言いただかなかった委員の方もよろしゅうございますか。

 では、事務局から何かありましたらお願いいたします。

 

○鈴木室長補佐

 本日の議事録ですけれども、後日、事務局より送付させていただきますので、御確認をいただきたいと思います。その後、ホームページで公表させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 

○遠藤座長

 よろしゅうございますか。

 それでは、本日の会議を終わらせていただきます。

 事務局にお返しいたします。

 

○鈴木室長補佐

 本日の議事は以上です。ありがとうございました。


(了)
<照会先>

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水道水質管理室: (代 表) 03(5253)1111 (内線4033)

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