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2015年11月27日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

○日時

平成27年11月27日(金)17:00~


○場所

厚生労働省共用第8会議室


○出席者

出席委員(18名)五十音順

  奥 田 晴 宏、 加 藤 総 夫、 金 子 明 寛、 川 上 純 一、 
  神 田 敏 子、 木 村   剛、 佐 藤 雄一郎、 杉     薫、 
  鈴 木 邦 彦、 武 田 正 之、 内 藤 幹 彦、 野 田 光 彦、 
  林   邦 彦、 平 石 秀 幸、 古 川   漸、◎松 井   陽、
○松 木 則 夫、 山 田 清 文
(注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(3名)

 平 安 良 雄、 増 井   徹、 村 田 美 穂 

行政機関出席者

 中 垣 英 明 (医薬・生活衛生局長)
 森    和 彦 (大臣官房審議官)
 山 田 雅 信 (審査管理課長)
 矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
 俵 木 登美子 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
 他

○議事

○審査管理課長 「薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会」を開催させていただきます。本日はお忙しい中、また遅い時間にお集まりいただき、誠にありがとうございます。

 本日の委員の出席についてです。平安委員、増井委員、村田委員より、御欠席との御連絡を頂いております。加藤委員は遅れていらっしゃいますようですが、いずれいらっしゃると思います。現在のところ、当部会委員数21名のうち、17名の委員の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。

 それでは、松井部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。

○松井部会長 本日の審議に入ります。事務局から配布資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業のリストについて報告してください。

○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しております。このほか、資料No.9として「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料No.10「専門委員リスト」、資料No.11「競合品目・競合企業リスト」を配布しております。

 続きまして、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リスト、資料No.11について御報告いたします。各品目の競合品目選定理由については次のとおりです。

 資料No.11の1ページを御覧ください。まず、ボンビバ錠100mgです。本品目は骨粗鬆症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 続きまして2ページ、エリキュース錠2.5mg、同5mgです。本品目は静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 続きまして3ページを御覧ください。レパーサ皮下注140mgシリンジ、同皮下注140mgペンです。本品目は家族性高コレステロール血症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 最後に4ページを御覧ください。シロリムスです。本品目は結節性硬化症に伴う血管線維腫を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。

○松井部会長 ただいまの事務局からの御説明ですが、何か御意見、御質問はありませんでしょうか。よろしいですか。それでは委員の先生方の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、御了解を得たものといたします。

 委員からの申出状況についての報告もしてください。

○事務局 各委員からの申出状況は以下のとおりとなっております。まず、議題1は退席委員はなし、議決には参加しない委員は木村委員、杉委員、武田委員、野田委員、平石委員です。

 議題2の退席委員は木村委員、議決には参加しない委員は金子委員、川上委員、杉委員、武田委員、野田委員、平石委員、山田委員です。

 議題3は退席委員はなし、議決には参加しない委員は木村委員、野田委員、平石委員です。

 議題4は退席委員、議決には参加しない委員は、共になしです。

○松井部会長 今の御説明に特段の御意見、御質問はありませんでしょうか。よろしいですか。よろしければ、委員の皆さんに御確認を頂いたものとして、議題に入ります。

 本日は審議事項は4議題、報告事項は4議題となっています。議題1に移ります。機構から概要を説明してください。

○機構 議題1、資料1、医薬品ボンビバ錠100mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。本剤はビスホスホネート系薬剤であるイバンドロン酸ナトリウム水和物を有効成分とする骨粗鬆症治療薬です。本剤は月1回投与の経口剤ですが、月1回投与の注射剤として、ボンビバ静注1mgシリンジが2013年6月に承認されております。ビスホスホネート系薬剤の経口剤では、吸収抑制及び上部消化管の副作用の懸念から、服用後一定時間横にならず、水以外の飲食や他の薬剤との同時服用を避けることが必要です。このような制約によって、服薬のコンプライアンスを長期間維持することが困難であることから、投与頻度の少ない製剤の開発が行われております。

 本剤の海外の承認状況については、連日投与製剤が2003年5月に米国、2004年2月に欧州、月1回投与製剤が2005年3月に米国、同年9月に欧州で、閉経後骨粗鬆症の治療薬として承認され、2015年8月現在、世界110か国以上で承認されております。本品目の専門協議では、資料No.10に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。

 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性については、審査報告書26ページの表13を御覧ください。骨粗鬆症患者を対象とした国内第 III 相試験において、主要評価項目とされたベースラインから投与12か月後までの腰椎骨密度変化率について、本薬注射剤1mg群に対する本剤100mg群の非劣性が示されました。

 安全性については、審査報告書29ページから34ページの「安全性について」の項を御覧ください。上部消化管障害、急性期反応、心房細動、顎骨壊死、非定型大腿骨骨折、低カルシウム血症等の個別の事象について検討した結果から、適切な注意喚起等がなされることを前提とすれば、本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。

 製造販売後調査について、審査報告書の43ページの表20を御覧ください。目標症例数1,500例、観察期間3年間の使用成績調査を実施し、上部消化管障害、急性期反応、心房細動、顎骨壊死、非定型大腿骨骨折、低カルシウム血症等の安全性に係る情報、並びに腎機能障害患者及び男性患者における安全性及び有効性に係る情報が収集される予定です。

 以上のとおり、機構での審査の結果、「骨粗鬆症」を効能・効果として本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断いたしました。

 本剤は新投与経路医薬品であるため、再審査期間は6年、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いいたします。

○川上委員 用法で教えていただきたいのですが、同種・同効薬の場合、「服用後少なくとも30分は横にならず、飲食並びに他の薬剤の経口摂取も避けること」という承認条件ですが、この薬剤について、その2倍の60分が必要な理由を御説明ください。

○機構 審査報告書15ページを御覧ください。先ほど申し上げましたように、ビスホスホネート系薬剤の経口投与製剤では、吸収率が悪いこと、経口投与時に食物の多価陽イオンとキレートを形成すること、上部消化管に滞留した場合の粘膜刺激性による有害事象の懸念等から、服用後の絶食時間の制約がございます。

 今回、海外の臨床試験において、本薬投与後の絶食時間を振った場合のばく露量を検討しており、絶食時間が30分の場合と比べまして、60分の場合でより高いばく露量であったという結果が得られております。また、骨密度のベースラインからの変化率についても、絶食時間が30分の群と60分の群を比べますと、60分の群で高値であったという結果が得られていることから、絶食時間を60分とすることが適切であると判断されております。

 また、国内試験では、絶食時間を60分と設定し、有効性及び安全性が確認されております。

○川上委員 もし分かれば教えていただきたいのですが、そうすると他のビスホスホネート製剤も同じように60分間、絶食あるいは横にならないでくださいという患者指導をした方が、薬効は得られるのでしょうか。

○機構 他のビスホスホネート製剤については、各薬剤について、骨折を指標としてプラセボ群若しくは実薬群に対する優越性又は非劣性が認められた絶食時間に基づき用法・用量を記載させていただいております。したがって、その可能性はあるかもしれませんが、現時点で確実に薬効が高いかどうかはお伝えできないと思っています。

○松井部会長 ほかの類似の薬剤については照査がないということですね。

○金子委員 33ページの顎骨壊死についてお尋ねしたいのですが、臨床試験のときは抜歯などを3か月以内でやっていないということが前提になると思うのですが、もし分かりましたら、Rocheの安全性データベースでの集積というのは、いわゆる抜歯後とか、そういったものを全部含めてのものでおやりになって、10万人当たり1.9例というものなのでしょうか。

 もう一つですが、注射剤のときは10万人当たり推定すると20人ぐらいでしょうか、分かりましたら。それから、ついでに分かりましたら組織内の半減期は520ぐらいでしょうか。いわゆる顎骨の組織内という。

○松井部会長 三つご質問がございましたが、いかがでしょうか。

○機構 まず、Roche社の安全性データベースにつきましては、市販後の情報になりますので、おっしゃられたような様々な状況の患者に投与した結果から得られている数値ということです。

 2点目についてですが、現在、審査報告書に記載させていただいている発現頻度は、投与経路を問わず10万例当たり1.9例ということで推定されており、現時点で投与経路別での発現頻度は持ち合わせておりません。

 3点目は顎骨での組織への滞留と言いますか蓄積ということですが、この点についてもデータを持ち合わせておりませんので、御説明が難しいところです。

○松井部会長 それは、今ここに持っていないということでしょうか。

○機構 顎骨壊死に対して、アメリカ骨代謝学会で感染が主な原因であるという報告がなされており、添付文書においても歯科治療をまず行ってから投与していただくということを注意喚起させていただいております。添付文書案の後ろから5ページの二段組みになっている添付文書案を御覧ください。

 「重要な基本的注意」の()において、顎骨壊死に関して注意喚起させていただいており、報告された症例の多くが、侵襲的な歯科処置や局所感染に関連して発現しておりますので、侵襲的な歯科処置をできる限り投与前に済ませておくよう指導してくださいと記載しております。今までの類薬も同じように記載させていただいており、本剤についても同様のリスクと考えておりますので、添付文書で同様な注意喚起をさせていただいているところです。

○松井部会長 金子委員、よろしいですか。

○金子委員 結構ですが、今おっしゃったように感染が元で起こりますので、今はもう余り3か月は待たないと。感染症状の歯をずっと置いておく方が、却ってリスクではないかとなってきていると思うのです。アメリカの歯科医師会では、もうインプラントもオーケーというような話になっています。もちろん、副作用は出るときは出るのですが、それで頻度をお尋ねしたのですが、10万人当たり1.9ということですと、そういったリスクでない方の方が圧倒的に多いということで、そういった傾向になっていると。

○松井部会長 10万人分の1.9というのはacceptableな数字なのでしょうか。

○金子委員 ほかの薬剤と同等程度で、特にこれが高いわけではないと思います。

○松井部会長 ほかの委員の先生方はよろしいでしょうか。

○平石委員 この系統の薬剤が最初に上市されたとき、その有害事象として食道粘膜障害が注目されたわけです。2015年春に日本消化器病学会から、「消化性潰瘍診療ガイドライン」の第2版が出版されまして、そのガイドラインの中で消化性潰瘍の発生リスクを高める薬剤として、NSAIDs以外に、ビスホスホネート製剤の代表とされているアレンドロン酸が挙げられています。もう1点、NSAIDsを内服している関節リウマチの患者で、アロンドロネートが加わると潰瘍発生のオッズ比が2.29倍に増えるというstatementが記載されています。

 したがいまして、薬剤性の消化性潰瘍として、NSAIDs以外にアレンドロン酸を含むビスホスホネート製剤が注目されることは消化器領域において共通の認識になっていますので、この薬の有害事象として、あえて消化性潰瘍のリスクをお伺いしたいと思います。

○機構 本剤につきましても、上部消化管障害の有害事象の発現状況を確認させていただいております。添付文書()の後ろから4ページの4.「副作用」の()「重大な副作用」の項の1)上部消化管障害を御覧ください。食道潰瘍、胃潰瘍の発現頻度が記載されております。例えば食道潰瘍ですと頻度不明とされており、これは国内試験では認められず、国内外の自発報告や海外臨床試験で報告された副作用です。

○松井部会長 私もよく掴めなかったのですが、今の平石委員の御質問は、消化性潰瘍についての注意喚起はどうかということで、食道潰瘍だけではないと思うのですが。

○機構 消化性潰瘍全般の有害事象の発現割合は、審査報告書には記載しておりませんが、資料中に記載がありまして、胃潰瘍以外は発現がなく、胃潰瘍は国内第III相試験で静注剤及び経口剤で1例ずつ発現しています。

 潰瘍は注意喚起すべきものですので、海外での市販後を含めた発現状況から、上部消化管障害として、重大な副作用として注意喚起させていただいています。

○松井部会長 平石委員、いかがですか。

○平石委員 添付文書の後ろから4ページ、4「副作用」の()の1)の「上部消化管障害」の2行目に胃潰瘍が0.3%と書いてあります。この0.3%という合併症の比率が、一般人口と比べて決して高くないという認識でいいのですね。

 と言いますのは、消化器集団検診学会などの成績を見ますと、胃潰瘍の有病率は大体1%と言われていますので、1%と比べても0.3%という数字は決して高くないという認識でよろしいのでしょうかね。

○機構 先生の御指摘のとおりですが、治験は限られた極めて管理された状況で行われていますので、その数字が一般臨床の数字と単純に比較できるかは、少し難しい問題だと考えます。

 注意喚起について1点補足しますと、既に既存のビスホスホネート製剤でも注意喚起がなされているのですが、消化管における潰瘍の発生予防に関しては、恐らくは十分な水分をきちんと取っていただくということが重要と考えます。食道潰瘍については、水分摂取とともに横にならないという二つのファクターがあると思いますが、消化性潰瘍については十分な水分補給が徹底されているかどうかというところが、特に高齢の方においては重要になると考えますので、その点については、これまで同様に引き続き注意喚起を行っていくことに尽きると考えております。

○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。

○加藤委員 先ほどと同じ添付文書の所で気が付いたのですが、この薬剤の最も重要なポイントというのはコンプライアンスを上げるという点だと思います。それで、1か月に1回というのは、ある意味では楽なのですが、逆に言うと1か月にぴったり1回というのは、なかなか御高齢の方だと難しいところもあります。それで、1か月に1回が何日かずれたときにどうかということを考えてみまして、添付文書()の最初の表紙のページ、「ボンビバ錠」と書いてあるページの「用法・用量に関連する使用上の注意」の所の()「本剤は月1回服用する薬剤である。本剤の服用を忘れた場合は翌日に服用し、以後、その服用を基点とし、1か月間隔で服用すること」ということなのです。

 現実には、1日忘れて翌日ではないことも結構あると思います。コンプライアンスのことを考えたときに、どうなのかと思い、既に外国で承認されているということなので見てみると、たとえば、1.6「外国における使用状況等に関する資料」の4ページの1.6.2のアメリカの添付文書を見てみました。

 アメリカの添付文書を見てみますと、「月1回の服用を忘れた場合の投与上の注意」というのがあって、月1回の服用を忘れた場合は、次の服用日までに8日以上ある場合は、飲み忘れていたことを思い出した翌日の朝に150mg錠を1錠服用する、次回の服用まで1~7日間しかない場合は次回の月1回服用日まで待って服用する、とあります。かなり人間味のあるというか、柔軟な対応であるなと思いました。その後、12ページにはヨーロッパにおける添付文書があります。それもほとんど同じ内容で、1週間 ± 数日ぐらいは少しそこでずらして、またスケジュールを戻していいということが書いてあると。

 日本のスケジュールは厳しくて、特に高齢の方で薬の飲み方を気にされる方は「2日遅れてしまったが、どうしようか。」というときに、ドクターとしてもどう指導していいかということが、添付文書に書かれていないという状況になり得るかと思うのですが、これについてどのように、少し日本のは厳しすぎるのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

○機構 欧米について、まず記載の根拠がどのような結果に基づくのかということを申請者に確認させていただいたのですが、臨床試験成績に基づくというわけではございませんでしたので、まず記載できるかどうかを考えました。

 その際に、国内臨床試験は、骨折が検証されている注射剤に対して経口剤である本剤についてBMDで非劣性を見ております。注射剤の現在の注意喚起は、用法・用量に関連する使用上の注意の項において、投与が遅れた場合は速やかに投与を行い、以後その投与を基点として1か月間隔で投与することとさせていただいております。本剤は同じ有効成分ですので、注射剤と経口剤と同様の注意喚起をさせていただいております。

 コンプライアンスについては、審査報告書の35ページ「適正使用に係る方策について」の項で議論させていただいております。「効能・効果」の少し上になりますが、服薬時期を記入できるように薬剤包装の中で工夫させていただいたり、服薬を忘れた場合の対処方法を含めて留意事項を記載することで、なるべく忘れないようにする工夫をする方が、まずは大切だと考えております。

○松井部会長 文章として、服薬を忘れた場合の対処方法も書いてあるということですか。

○機構 製剤見本のパッケージに、「月1回1錠を決められた日に飲んでください」という形で、工夫させていただいている状況です。

○機構 箱を開けていただきますと中にホルダー付きの1錠シートというものが入っており、服薬を忘れないようにということと、服薬を忘れた場合の対処方法等についても記載させていただいております。

○松井部会長 どうでしょうか。

○加藤委員 重箱の隅を突つくような話なのですが、10日後に忘れたことに気がついたらどうしたらいいのか、いろいろな事例があるのでしょうけれども、それは処方しているドクターに何か指導するなり、いろいろな状況を伝えていただければと思うのですが、少なくともヨーロッパとアメリカでは1週間というのがデッドラインとして決めてあるようなので、その情報は少なくとも患者あるいは添付文書を介したドクターへの情報がないというのは事実かと思いますので、何か工夫した方がいいのではないかという意見をしておきます。

○機構 まず、月1回製剤というのは類薬でもありまして、ミノドロン酸水和物のリカルボン錠は4週間に1回になりますが、なるべく飲み忘れないように注意するということと、忘れたときには翌日に1錠服用するということで注意喚起させていただいております。既に発売されている類薬においても、本剤と同様の対応をさせていただいており、類薬で困っていないのであれば、本剤においても同様の対応で医療現場においても問題ないと考えております。

○松井部会長 質問と答えがかみ合っていないように思うのですが、加藤委員は「10日後に飲み忘れに気付いたときにはどうするのか」と質問されていました。

○機構 10日後に気付いたときには、基点日から言いますと11日目に服用していただいて、今度はその11日目を基に、1か月後に服用していただくということになります。

 気づいた日の翌日ということを意図しておりますので、もしかしたらそちらが分かりにくくて誤解を与えたのかもしれません。「服用を忘れた場合は、忘れたことに気付いた翌日に服用し」という意図ですので、分かりやすいように修正させていただきます。御意見ありがとうございます。

○松井部会長 そのようにした方がいいと思います。よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。

○内藤委員 今のスケジュールについての関連の質問です。アメリカやヨーロッパの場合は、最初のスケジュールをある程度重視していて、次に服用する日まで7日以内のときはもう服用せず、元のスケジュールでそのまま飲んでくださいというような趣旨で書いてあります。そうすると、そのスケジュールが日本の場合とは大分変わってきてしまいますが、それはそれで構わないのですか。

 基本的には安全性というか、1か月の間隔を空けないで飲むと副作用が出やすいだろうということなので、今、説明された日本のやり方のように気が付いた翌日に飲んで、それから1か月空けて次の薬を飲むというスケジュールで私は個人的にはいいと思うのですが、アメリカやヨーロッパの服用方法と少し違ってくることになるので、その点はそれで問題はないのかという質問です。

○機構 ビスホスホネート製剤は飲みにくさから、コンプライアンスが悪いことが問題になっており、コンプライアンスが悪かった場合には骨折自体も起こりやすいということが、審査報告書28ページの「本剤の臨床的位置付けについて」の上から5行目に、「服薬方法の制約により患者の負担が大きく、治療継続率が低下する要因の一つになっており、服薬率が低い症例では骨折抑制効果の低下が報告されている」と記載しております。1年後に継続できている人がとても少なくなってしまっているというのが現状です。

 今回のように飲み忘れ時の注意喚起を行なった場合に、欧米とどの程度違うのかというデータはありませんが、まずは忘れないように工夫することに最大限の努力を払うのが一番大切かと思っており、そちらの工夫をした上で、あとは副作用がなるべく出ない方法で投与させていただくことを重視させていただき、今回の「用法・用量に関連する使用上の注意」とさせていただいております。

○松井部会長 内藤委員よろしいですか。内藤委員自身は日本のやり方がいいと思っているのですよね。

○内藤委員 現実的には日本のやり方がいいと思います。

○松井部会長 ほかにはいかがですか。

○神田委員 承認条件についてお聞きします。この承認条件については、これまでもいろいろなお薬に付いていた共通の表現ですので、今更お聞きしにくいのですが、この「医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること」とあり、この「適切に実施」に含まれることについてお聞きします。

 計画は案がありますから、そのように作られて、それについて実施される。その結果、追加的な問題を発見するためにするわけです。その追加的な情報については、医療現場に適切に届けられる。ここまでを含めて、「適切に実施」に含まれているのか。そう解釈してよろしいでしょうか。

○機構 御指摘のとおりです。私どもも安全性定期報告ということで、これらの調査、取組について、定期的に市販後に拝見しており、先生に御指摘いただいたようなことが適切に評価されて行われていることを確認しながら進めてまいります。

○神田委員 お聞きしましたのは、この医薬品リスク管理計画についての医療現場での認知状況の調査報告が機構のホームページで公開されており、これを拝見して少し驚いたものですから、実際に医療現場の中でこれをしっかり理解しているというのが5%にも満たないという状況で、全く知らないというのもかなりの数字が出ており、聞いたことがあるぐらいを含めると80%ぐらいに余り知られていないのではないかと受け取れる数字が出ており、驚きました。そういった現場の状況であっても、きちんと必要なものは伝わると受け止めて、条件として成り立っていると受け取ってよろしいのでしょうか。確認です。

○機構 リスク管理計画書というのが、資料の1.11の「医薬品リスク管理計画書」に記載しております。例えば今回ですと3ページに、「重要な特定されたリスク」として顎骨壊死を設定しており、その次のページの「追加のリスク最小化活動」という所で、患者向け資材として患者カード、市販直後調査による情報提供を記載しており、そちらの安全性監視活動等を含めて、設定した監視活動の節目となる時期に、監視活動を確認していくということになっております。

 この節目の安全性監視活動については、21ページに、それぞれの安全性監視活動と節目となる予定の時期を設定しており、その都度確認させていただくことにしております。

○機構 機構の安全管理監の俵木でございます。先生に御指摘いただいた「リスク管理計画が医療機関で十分に周知されていない」という点についてご説明します。機構で昨年度に全病院を対象に実施した調査の結果を引用していただいたのだと思いますが、確かに大きな病院では一定程度の認識がありますが、全体としてはRMPが医療の現場では十分に認識されていないという結果が出ております。RMP自体は製造販売業者が市販後のリスク管理の計画を立てるもので、製造販売業者がその計画に従って、今、説明のありましたいろいろな資材を使ってリスクを現場に伝達していくし、必要な調査をするというものですが、これが臨床現場でも共有されることがよりいいだろうということで、医療の現場の先生方にも知っていただこうということで考えているのですが、まだまだそれは十分でないということで、機構としても更に医療の現場の先生方に、この内容を知っていただき、活用していただけるようにいろいろな方策を考えていきたいと考えております。

 基本的には製造販売業者がリスク管理をするための計画ということで、それに従って必要な資材等を現場に提供していただき、注意喚起をしていくと考えております。

○神田委員 分かりました。ただ、承認条件ということなので、しっかりと現場に届いて、現場の先生方が適切に使用できる、そこまでつながるということですが、現場もその意識を持ってその辺を受けていかないと、本当にしっかりとつながらないのではないかという懸念もありますので、条件というのはそれだけしっかりしたものでなければいけないと思いましたので、お聞きいたしました。

○松井部会長 大変重要な御指摘だったと思います。どうか、よろしくお願いいたします。ほかに御質疑はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。もしなければ、本議題について、議決に入ります。なお、木村委員、杉委員、武田委員、野田委員、平石委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきます。

 本議題について、もちろんディスカッションされたことを踏まえての上でありますが、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。

 議題2に移ります。恐れ入りますが、木村委員におかれましては利益相反に関する申出に基づき、審議の間は別室で御待機いただきたいと思います。お願いします。

                                ( 木村委員退室)

○機構 議題2、資料2、エリキュース錠2.5mg他の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。本剤の有効成分であるアピキサバンは、活性型血液凝固第 因子の選択的かつ可逆的な阻害薬です。本剤は、経口抗凝固薬として国内外で既に承認されており、本邦では「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」の効能・効果で201212月に承認されております。今般、静脈血栓塞栓症患者を対象とした、国内外の臨床試験成績を基に「静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制」の効能・効果を追加する承認申請がなされました。今回の申請効能・効果につきましては、2014年7月に欧州で、同年8月に米国で承認されたのをはじめ、現在、37の国又は地域で承認されております。本品目の審査に関しまして、専門委員として資料No.10に記載されています委員が指名されました。

 審査の概略について、まず、海外での承認の根拠にもなった国際共同の海外第III相試験の成績を御説明し、次いで本邦で実施された国内第III相試験の成績を御説明いたします。審査報告書18ページを御覧ください。静脈血栓塞栓症の外国人患者を対象とした国際共同の海外第 III 相試験での本剤の用法・用量は、10mgを1日2回7日間投与した後、5mgを1日2回投与することとされ、対照薬は標準治療であるエノキサパリン及びワルファリンの併用療法とされました。

 審査報告書20ページ、表5を御覧ください。有効性の主要評価項目とされた「症候性静脈血栓塞栓症の再発又は静脈血栓塞栓症関連死」の発現率は、本剤群2.26%、対照群2.69%でした。対照群に対する本剤群のハザード比は0.839であり、標準治療に対する本剤の非劣性が検証されました。同じく審査報告書20ページ表6を御覧ください。安全性の主要評価項目とされた「大出血」の発現率は本剤群0.56%、対照群1.82%でした。

 続いて審査報告書14ページを御覧ください。静脈血栓塞栓症の日本人患者を対象とした国内第 III 相試験での本剤の用法・用量も、10mgを1日2回7日間投与した後、5mgを1日2回投与することとされ、対照薬は標準治療であるヘパリン及びワルファリンの併用療法とされました。

 審査報告書15ページを御覧ください。有効性の評価項目とされた「症候性静脈血栓塞栓症の再発又は静脈血栓塞栓症関連死」の発現例数は、本剤群40例中0例、対照群40例中1例でした。また有効性副次評価項目とされた血栓評価において、本剤群と対照群で同程度の改善が示されました。

 審査報告書17ページ表3を御覧ください。安全性の主要評価項目とされた「大出血又は臨床的に重要な非大出血事象」の発現率は本剤群7.5%、対照群28.2%でした。

 以上の国内外の第III相試験の有効性の成績等から総合的に評価した結果、海外第III相試験において認められた本剤の有効性は、日本人においても期待できるものと判断し、本剤を「静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制」の効能・効果で承認することが妥当と判断いたしました。

 審査報告書63ページ「()出血リスクについて」の項を御覧ください。国内外第 III 相試験の成績は、対照群と比較して本剤群の出血リスクが高いことを示唆しておらず、本剤による出血リスクは許容可能と判断いたしました。しかしながら、実臨床では臨床試験で対象とされなかった多様な背景を有する患者に本剤が投与されると想定されることなどを考慮し、特に本剤10mgを1日2回という高用量を投与する初期治療期の出血リスクについて注意喚起することといたしました。

 製造販売後の調査計画等につきましては、審査報告書65ページ表14を御覧ください。製造販売後調査においては、使用実態下における安全性及び有効性に関する情報、臨床試験では特に情報が少なかった、低体重患者、腎機能障害患者、高齢患者、抗血小板剤併用時の安全性に関する情報を収集することが重要と考えております。申請者は、これらの情報を収集するために、調査予定例数を1,000例とする特定使用成績調査の実施を計画しております。

また、特に初期治療期における出血リスク等の評価をより早期に行える体制とし、追加の注意喚起の必要性の検討及び医療現場への情報のフィードバックが可能な計画といたしました。

 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。

 本剤の再審査期間は既承認効能の再審査期間の残余期間、平成321224日までとすることが適当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生方、御質疑をお願いします。

○山田委員 同効薬NOACの、前回、リバーロキサバンのときにも、最初の用量のときの出血リスクについていろいろ議論があって、添付文書の案も見直していただいたと思います。今回の場合には、むしろ出血リスクは対照薬よりも明らかに下がっているということで、リバーロキサバンのときに比べると、添付文書案の警告の所が少し変わっていますけれども、これは臨床試験で大出血リスクもなかったのでという判断で、書かないということになったのでしょうか。

○機構 機構よりお答え申し上げます。イグザレルト錠を前回御審議いただいた際には、特に高用量を投与する初期治療期が3週間と長いことや、既承認効能・効果である心房細動では海外より低用量を設定していることに対し、初期治療は国内外同一の用量を設定せざるを得なかったという点なども考慮すると、特に日本人での出血リスクの増加が懸念されるという御指摘を当部会で頂戴し、そちらを踏まえ、警告の項にて追加の注意喚起を設定させていただきました。

 エリキュース錠については、ただ今御指摘のとおり、臨床試験成績における初期治療期の出血の発現状況を見ますと、本剤群で高い傾向は認められていないことや、初期治療期が1週間と比較的短い点、また、既承認効能・効果である心房細動においても国内外同一の用量を設定している点などを考慮し、現時点では警告欄において注意喚起をする必要まではないと判断しております。この判断につきましては、イグザレルト錠の審査において御協力いただきました外部の専門委員の先生方にも御意見をお伺いして、このような判断に至っております。

○山田委員 私もそういう判断が適当だろうと思います。それに加えて、用法・用量の注意喚起もなされていますのでいいかと思います。ありがとうございます。

○松井部会長 ほかの委員の先生方はいかがでしょうか。

○川上委員 用法・用量の少し細かい書き方のことでお伺いします。治療においては最初の7日間に1回10mgを1日2回投与した後、1回5mgを1日2回投与するということで宜しいかと思うのですが、再発抑制については、添付文書においては、「漫然と継続投与をしない」とか、あるいは「国内臨床試験において、本剤を6か月以上投与した経験はない」という用法・用量に関連する使用上の注意になっています。一方、例えばアメリカや欧州ですと、再発抑制に関しては、最初の6か月間はきっちり治療をした後、2.5mgに落として治療するというような長期的な再発抑制に関する用法・用量を明確に記しています。日本においては、その2.5mgの設定はなく、1回5mgを1日2回経口投与するというだけの用法・用量になっているので、この点について特段のリスクはないか、あるいはこうした書きぶりで臨床現場に具体的な投与指針が示せているかなど、特に欧米との添付文書の書き方の違いについて見解を伺えればと思います。よろしくお願いします。

○機構 海外では、海外で実施された6か月から12か月以上の抗凝固療法が終了した患者を対象に、プラセボ対照試験を実施しておりまして、その試験成績を基に再発抑制の用量として2.5mgを設定しております。日本ではこれに対応するような2.5mgをVTE患者に投与した試験が実施されておりませんので、現時点で本剤2.5mgを日本人の患者に勧めるエビデンスが得られていないと判断し、2.5mgは本邦では承認できないと考えております。

 投与期間については、御指摘のとおり、海外では2.5mgを長期に投与する試験を実施し、それに基づいて長期の安全性を見ていますが、国内では、国内第 III 相試験を6か月の試験で行っており、注意喚起しておりますとおり、6か月間の投与の経験しかないという状況です。

 ただ、今申し上げましたとおり、海外の臨床試験において、5mgを6か月以上投与するという使用経験自体はあることと、今現在の標準治療であるワルファリンについても患者さんのリスクとベネフィットを判断して患者ごとに投与期間が決められているという点を考慮しまして、標準治療と同じように患者ごとにリスクとベネフィットを考慮して投与期間を決定していただき、漫然と投与しないということを臨床現場に注意喚起をすることが適当であると判断しております。

○松井部会長 いかがですか。先生は再発のことを懸念されたというように。

○川上委員 もちろん、個々の患者さんごとにリスク・ベネフィットを評価してというのは分かるのですが、そうすると、具体的に、例えば1回5mgで6か月治療をしたらもうそれ以上は投与しないのか、あるいは、海外のように2.5mgに減らして、承認用量とは少し変わるかもしれないけれども治療を継続した方が良いのか、現場としては判断に迷うところもあるかと思ったので、見解を伺わせていただいた次第です。

○機構 ありがとうございます。まず1点、最初に誤解のないようにということで御説明させていただきます。海外の添付文書に書いてあります再発抑制ということと、日本の添付文書に書いてある再発抑制というのは少し意味が違います。海外の添付文書におきましては、高用量を経て5mg1日2回の投与をしおわるまでを「治療」と言っており、その後2.5mgを投与することを「再発抑制」と言っております。日本の添付文書では、既承認の薬と同じように、「治療」というのは高用量で急性期治療をすることで、その先5mgを1日2回投与することを「再発抑制」と言っています。

 なぜ、このような違いが出てきたかというと、日本で実施された5mgまでの試験と海外で実施された5mgまでの試験は、今、実際に抗凝固療法をしている患者さんたちを対象にしており、この人たちが現状の既存治療と同じような思想でリスクが減ったところまでで抗凝固療法による治療と再発抑制をやめる、というものです。一方、海外で実施された2.5mg投与の試験の対象は、実はこれは現在必ずしも抗凝固療法していない患者さん、つまりプラセボ対照の試験ができる患者さんです。つまり海外では、この薬に新しいメリットを、新しい患者さんを発掘しようという試験として、今、もしかしてその抗凝固療法をやめるか続けるか迷っている人たちがいたら2.5mgを投与するという試験が行われて、うまくいきましたので、それを効能・効果にしています。日本についてはその試験に対応する試験がありませんで、ここのところは海外の成績を読み込めないため、既存治療と同じ患者さんでの使い方をここに書いて、その先の用法・用量は載せられないと。言葉の使い方がちょっと違いますけれども、日本は日本の使い方に合わせたという形になっております。

○川上委員 分かりました。

○松井部会長 ほかにはいかがでしょうか。

○杉委員 今のことで、確かに海外と試験の方法と考え方が違うというのは分かったのですが、もともとこの静脈血栓ができる原因はその人が固有に多分持っているので、また起こす可能性はやはりあるのではないかと思うのです。今、御指摘があったように、個々の一人一人に応じて投与するというのは当然だろうと思います。この添付文書を見ますと、「漫然と継続投与しないこと」とあるので、これはむしろあまり投与しないことの方がいいというような意味に取られるのではないかと思うのです。ですから、この文章は、「各人の病態に応じて投与を決めること」というような具合にしたらいかがかという感じがありますが、それはまずいでしょうか。

○機構 御回答申し上げます。御存じのように、今回も含め、既承認薬も含めて、抗凝固療法をいつまで続けるかにつきましては、これはガイドラインにも載っていますけれども、取りあえず3か月で判断して、更にその後どこまで続けるかを個々の患者さんごとに判断しましょうとされてます。実際この薬にしても、既承認薬にしても、ずっと投与することができる薬ですけれども、どういう試験をされてこの成績が出ているのかをきちんと情報提供しなくてはいけないだろうと考えております。ほかの薬については本剤薬と異なり、例えば3か月、9か月、12か月という投与期間で試験を実施している薬もありまして、そうした基礎情報も現場に知っていただいた上で、使う薬を選択していただきたいと思っているところで、このような記載になっております。

 漫然と投与しないことというのは、先生がおっしゃるように何となく投与してはいけないのかという感じにとられるかもしれませんけれども、そういう意味ではなく、きちんとそのリスクを評価してくださいと、評価なしで投与しないでくださいということでございまして、ここは他の薬とも考え方を合わせておりますので、ここを変えると本剤のみ変わってしまうところもありますので、このままがいいのかと思っていります。

○杉委員 従来のやり方を踏襲してということになるわけですね。

○機構 はい。

○松井部会長 ほかにありますか。

○加藤委員 すみません、細かいことですが、1.11の医薬品リスク管理計画書の後ろの方に、医師向けと患者向けの小冊子の例が印刷されてあるのですが、その患者向けの小冊子を見ていたのですが、こういう病態になられた患者さんで、最初にこのエリキュース錠を投与することを想定しているわけですね。つまりワルファリンから移行するということではなくて、最初からエリキュース錠を投与するという処方も当然想定されているわけですよね。そういう患者さんがいた場合に、「納豆、青汁などの食べ物の制限はありません」ということをいきなり言われても何の意味か恐らく分からないと思うのです。もちろん専門家は分かりますけれども、初めてこういう病態になって、エリキュース錠を飲まなければいけないときに、なぜ納豆の話がここに出てくるのかと、一般の患者さんはお分かりにならない場合があると思いますけれども、いかがでしょうか。

○機構 御指摘ありがとうございます。これはワルファリンの相互作用が念頭にありまして、これまで長いこと日本ではワルファリンが使われてきましたので、抗凝固薬を飲まれる患者さんについては、こういうものを一緒に食べてはいけないというような、そういう知識を持っていらっしゃる方もおりますので、メインは、以前ワルファリンを飲んでいらっしゃった患者さんに対する情報提供ということになっております。

○松井部会長 その点をはっきりさせなくて。

○機構 そうですね、多分、そこは現場でというか、現場に任せてもいけないのかもしれませんので、これはちょっと申請者にお願いして、そういうことですと分かりやすいようにしたいと思います。

○松井部会長 注意喚起して。

○加藤委員 そうですね、患者さんの立場に立った表記を心懸けていただければと思います。

○松井部会長 ほかにありますか。それでは、議論も出尽くしたように思いますので、議決に入りたいと思いますが、よろしいですか。

 この議決は、金子委員、川上委員、杉委員、武田委員、野田委員、平石委員、山田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。本議題につきまして、承認を可としていいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告といたします。

 別室で御待機されている木村委員に復席していただいてください。どうも長くなりました。

                                ( 木村委員入室)

○松井部会長 それでは、議題3に移ります。機構から御説明をお願いいたします。

○機構 議題3、資料3、医薬品レパーサ皮下注140mgシリンジ等の製造販売承認の可否等につきまして、機構より説明いたします。

 本剤は、LDL受容体の分解に関与することが知られている、プロタンパク転換酵素サブチリシン/ケキシン9型、以下、「PCSK9」とさせていただきますが、PCSK9に対するヒト型IgG2モノクローナル抗体であるエボロクマブ(遺伝子組換え)を有効成分とする高コレステロール血症の治療薬です。本剤の作用機序につきまして、お配りしている資料1.5の3ページを御覧ください。本薬の作用機序といたしましては、本薬がPCSK9に結合し、PCSK9とLDL受容体の結合を阻害することによってLDL受容体の分解を抑制し、結果として肝臓におけるLDLコレステロールの取込みが促進され、血中LDLコレステロール濃度が低下すると考えられています。本剤は、201511月現在、欧州、米国及びカナダで承認されています。今般、国内外の臨床試験成績を基に、「高コレステロール血症」に係る効能・効果で、製造販売承認申請がなされました。本品目の審査に関しまして、専門委員として資料No.10に記載されております8名の委員を指名いたしました。

 本品目の審査の概略につきまして、臨床試験成績を中心に御説明いたします。国内第III相試験として、家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体患者を含む心血管リスクが高い日本人原発性高コレステロール血症及び混合型脂質異常症患者を対象とした、プラセボ対照二重盲検試験が実施されました。有効性につきまして、47ページ表24及び48ページ表25を御覧ください。これらの表に示しますように、本薬140mgを2週に1回投与及び420mgを4週に1回投与のいずれも、主要評価項目とされました投与10週時点及び12週時点の平均又は12週時点のLDLコレステロールのベースラインからの変化率の両評価項目につきまして、プラセボ群に対して本薬群で有意なLDLコレステロールの低下が認められました。さらに、家族性高コレステロール血症ホモ接合体患者を対象に国内外で臨床試験が実施され、これらの試験においても有効性が確認されております。

 続きまして、本剤の効能・効果について、審査報告書80ページ、「2.効能・効果について」の項を御覧ください。現在の高コレステロール血症における薬物治療の基本は、HMG-CoA還元酵素阻害薬、以下、「スタチン」とさせていただきますが、スタチンであり、本申請に当たって実施された国内臨床試験は、いずれもスタチンとの併用で試験が実施され、本薬の有効性及び安全性が検討されていることを考慮いたしますと、本剤は、少なくともスタチンを含む既存治療で効果不十分な患者に対して使用することが適切であると判断しております。また、現時点では、本剤による心血管イベントの低減効果が検証まではされていないこと、本剤投与によりLDLコレステロールが一般的な施設基準値の下限を大きく超えて低下する患者も認められていますが、長期投与時の安全性については、スタチンで得られているような多数の患者での検討結果が得られていないことなどを考慮いたしますと、本剤は、国内臨床試験の対象患者と同様に、LDLコレステロール低下の必要性が高い、心血管イベントの高リスク患者に限定して選択されるべきであり、そのリスクの判定は慎重に行う必要があると判断いたしました。

 以上を踏まえ、本剤の効能・効果といたしまして、審査報告書の81ページにありますように、「家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症、ただし、心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分な場合に限る」とし、効能・効果に関連する使用上の注意において、投与対象を選択する際に、心血管イベントの発現リスクが高いことを確認する必要がある旨を、注意喚起することが適切と判断いたしました。

 続きまして、安全性について御説明いたします。審査報告書49ページの表27を御覧ください。表27にお示ししますように、国内第 III 相試験において、プラセボ群と比較して本薬群で問題となるような有害事象は認められませんでした。しかしながら、本薬の作用機序、投与経路及び生体内におけるコレステロールの役割等を踏まえ、さらに検討を行っております。審査報告書67ページ、6行目以降を御覧ください。こちらで本剤投与によりLDLコレステロールの過度の低下、注射部位反応、クレアチンキナーゼ上昇及び筋関連有害事象、認知機能への影響、眼への影響、ホルモンへの影響、肝機能障害などについて、国内外臨床試験成績を基に検討を行ったところ、対照群と比較して本薬群で懸念されるような事象は認められず、現時点においては臨床上、大きな問題となる可能性は低いと判断しております。また、海外において最長で2年程度までの評価が行われており、これらの成績でも、現時点では長期投与による新たな有害事象は認められておりません。しかしながら、上市後は、より長期間の投与が想定されるため、製造販売後調査において適切に情報収集する予定となっております。

 以上のような審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体及び製剤は劇薬及び毒薬のいずれにも該当せず、生物由来製品に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 ありがとうございます。それでは、委員の先生方から御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。

○松木部会長代理 スタチンとの併用ということで、それが効果不十分な場合に限るということですが、スタチンが効かない人に効いているというデータは、どれを見れば分かるのですか。

○松井部会長 いかがでしょうか。

○機構 今回の臨床試験の対象として、既にスタチンが投与されて、それでもLDLコレステロールが下がり切らない患者さんを対象にしていますので、今回、お示ししている国内臨床試験については、既にスタチンでも効果が不十分という判断をしています。

○松木部会長代理 それでスタチンと併用して、どうして効果が出てくるのですか。

○機構 スタチンを併用したのに、なぜ本剤で更にLDLコレステロールが下がるのかということ。

○松木部会長代理 そうですね。スタチンが効かない患者に対して、スタチンとわざわざ併用して使うという理由というか、なぜ効くのか非常に不思議なのです。

○機構 スタチンと本剤との関係につきまして、御説明させていただきます。まずスタチンについては、スタチンを投与いたしますと、本剤の対象となるPCSK9がホメオスタシスの関係で体内で増加することが知られています。それにより、スタチンについてはある程度の用量まで投与した後、高用量を投与してもなかなかLDLコレステロールが低下しないという現状がございます。それに対して本剤を投与することで、増えた分も含めてPCSK9を本剤がブロックすることで、LDLレセプターが再利用される率が上がり、最終的にはLDLコレステロールが更に下がるというものになります。

○松井部会長 作用機序が全然違うということですね。

○機構 最終的にLDLコレステロールが下がるという部分に関しては一緒ですが、そこに至るまでの経路は全く異なるものになります。

○松木部会長代理 結局、スタチンをやめることができない患者ということですかね。見かけ上は効いていないけれどもということですね。

○機構 今回の対象としては、全く効いていないというより、ある程度投与した状態で目標値に達していなくて、更に下げる必要がある患者さんが対象になると考えていますので、スタチンそのものが効かない患者さんとなりますと、それについては、そもそも本剤も効かない可能性がありますので、その場合は注意喚起として、LDLコレステロールをきちんと治療中は計測して、もし本剤が効いていないのであれば、すぐにやめるようにという注意喚起はしています。

○松井部会長 よろしいですか。

○松木部会長代理 分かりますけど、結構、大変なことをしないといけないわけですよね。薬をもう一つ飲むわけでなく、もうちょっと大変な作業になってくるので、本当に十分に効いているのかというのが疑問としてあったのです。ですから、「効果不十分」という表現が、スタチンに対してある程度は効いているということなのですね。全く効かない患者に対してこれを使いなさいという意味ではないということですね。

○機構 はい。全く効かない患者さんに対して本剤を投与するのではなく、御指摘いただいたとおり、ある程度投与しても、もっと下げなければいけない患者さんが対象になると考えています。

○鈴木委員 3ページの効能・効果の所に、「心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分な場合に限る」とありますが、スタチンで効果が不十分な場合は、それだけでも心血管イベントの発現リスクが高いと考えることもできると思いますけれども、心血管イベントの発現リスクが高いというのは、どのように評価されるのでしょうか。

○機構 心血管イベントのリスクが高いことを、どのように判断するかということにつきましては、添付文書を御覧いただけますでしょうか。

○松井部会長 番号は。

○機構 1.8の1ページの左側になります。「効能・効果に関連する使用上の注意」を御覧ください。「()家族性高コレステロール血症以外の患者では、冠動脈疾患、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、糖尿病、慢性腎臓病等の罹患又は既往歴等から、心血管イベントの発現リスクが高いことを確認し、本剤投与の要否を判断すること」というふうに注意喚起を行っています。

 また、それに合わせて参考としてですが、資料としては5ページ、添付文書としては3ページになりますけれども、臨床成績の項を御覧ください。こちらで実際に行われた第III相臨床試験の組入れ基準を注6)という形で実際に示していて、こういった情報提供を行うことで、心血管リスクが高いことを判断いただくことが適切かと考えています。

○松井部会長 鈴木委員、よろしいでしょうか。

○鈴木委員 これを見ますと、家族性高コレステロール血症でヘテロ接合体とありますが、スタチンだけで下がらない場合もリスクになるということですね。

○機構 家族性高コレステロール血症については、既にリスクが高い患者さんという判断になるかと考えています。

○鈴木委員 そういうことですね。わかりました。

○松井部会長 よろしいですか。ほかに、いかがでしょうか。奥田委員、どうぞ。

○奥田委員 これ、ペンの注射剤が売られているので、自己注射をすることがあるわけですね。そのときの家庭での保存条件について、患者様向けの文書を見ると2℃から8℃ですか、冷温で保存してくださいと書いてあり、それは今までの試験された条件で安定性が確認されている条件ということでいいのだと思いますが、もしこれが凍ったら、つまり2℃から8℃でなく、0℃以下にする患者さんがいるかもしれない。もしそういうことが起きたら、それは溶かして使えるものなのか。それとも、それはもう諦めてくださいということなのか。何かその辺でございますか。凍らしたら駄目ということなのか。

○松井部会長 いかがでしょうか。

○奥田委員 禁凍結になっていますか。

○機構 申し訳ありません。現在、持っているデータからですと、凍らせて大丈夫かということについては、まだ確認ができていません。

○奥田委員 禁凍結と書いてあるということですけれども。患者様の文書には明確には書かれていないかもしれないですね。

○機構 それについてはデータ等も確認して、適切に情報提供できるようにしたいと思います。

○松井部会長 よろしいですか。

○奥田委員 調べて、もしそれが駄目だったら、分かるような形で、多分、そういう人もいるかもしれない。

○機構 御指摘、ありがとうございます。

○松井部会長 よろしくお願いします。ほかに、いかがでしょうか。木村委員、お願いします。

○木村委員 かなり薬価の高い薬剤だと思いますが、スタチンの投与量に関して最大投与量を投与してもという条件は必要ないでしょうか。

○松井部会長 いかがでしょうか。

○機構 用法・用量で規定されている最大投与量までいかなければいけないかと言うと、患者さんの状況にもよってきて、スタチンが最大まで上がらないという患者さんもいらっしゃるかと思います。

○木村委員 もちろん、忍容できる最大投与量という意味です。

○機構 基本的には、忍容できる最大投与量まで投与してからと考えています。

○松井部会長 よろしいですか。ほかに、内藤委員、どうぞ。

○内藤委員 メカニズムが面白くて、分かったら教えてほしいのですが、このメカニズムを考えると、結局、血中のコレステロールが低下して、それがどこへ行ったかというと、ほとんどは肝臓に取り込まれることになるわけです。ですから肝障害が出る可能性がすごく心配になるのですが、資料を見る限りでは、そういう肝毒性というのはほとんどないということです。そこで質問は、コレステロールは肝臓に取り込まれた後、どうなってしまっているのですか。

○松井部会長 いかがでしょうか。先ほどの絵を御覧になるといいのかもしれませんね。

○機構 申し訳ありません。その点については詳細な作用機序までは資料からは確認できません。

○内藤委員 例えば、通常だと肝臓に取り込まれたコレステロールは胆汁酸として排出されますよね。ですから胆汁酸の合成とか排出は非常に多くなって、肝臓に取り込まれた過剰のコレステロールはそちらで排出されて結果的に毒性が出ないとか、そういうような検討はされているのかどうか。

○機構 その点については、今、持っている資料で確認したのですが、検討はされていないようです。

○内藤委員 なければ、今はなくてもいいと思います。これから販売後の調査で、そういうところも含めて注意してモニタリングしていけばいいかと思います。

○松井部会長 ありがとうございます。山田委員、お願いします。

○山田委員 作用機序が非常に新しいので、抗原となるPCSK9とLDL受容体との特異性についてお伺いしたいのですが、LDL受容体のほかにも何か相互作用するようなタンパク質は分かっているのでしょうか。もし分かっていれば、そういうことから副作用のリスクとか、リスク管理計画の中にも書けるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○機構 PCSK9以外の、同じようなサブチリシンプロテアーゼに対する結合親和性は検討されています。例えばPCSK1、PCSK2といったファミリーの検討はされているのですが、基本的に本薬はPCSK9のみに特異的に結合することが確認されています。

○山田委員 そのサブファミリーの中で、9に特異性があるということは分かりました。PCSK9とLDL受容体の相互作用が基になって、この薬効が出るのだと思いますが、LDL受容体以外に、このPCSK9と相互作用するような機能分子というのは分かっているのでしょうか。

○機構 御質問いただいた点ですが、PCSK9が肝臓以外の組織でも幾つか発現することが知られていて、そこの組織に影響を及ぼす可能性も、非臨床試験の文献等で考察はされていますが、現時点で既存の報告等から、肝臓以外の組織で特段、懸念されるようなことは起こらないだろうという考察はなされています。ただ、ヒトに長期投与したときにどういうことが起こるかというところまでは、なかなか評価しきれているとは言えませんので、製造販売後調査等で、そういうシグナルが出てこないかというところは慎重に評価していきたいと考えています。

○山田委員 了解です。

○松井部会長 ほかには、いかがですか。

○神田委員 用法・用量の所で、2週間に1回140mg又は4週間に1回420mgのことについてですが、この「又は」という所をどういうふうに解釈したらいいのかということです。説明によれば、いずれの用法・用量も同程度の有効性と安全性が期待できると。患者の通院状況等を考慮して、どちらでもいいと説明されています。通院状況からという判断ですと4週に1回の方が便利かなと思うのですが、そういった中で、2週ごとの選択肢があるということは通院以外にも何かメリットがあるのか。4週の場合の注射液が420mgで、2週ごとだと140mg140mgですから注射液の量も違うので、もしかしたら医療費も違うのかなとか、分かりませんけど、2週があることのメリットはあるのか。患者さんが選ぶための材料が通院だけなのか、その辺のところをお聞きしたいと思います。

○機構 今、御指摘いただいた点については、患者さんが注射の回数、若しくは1回当たり刺す回数という部分で気にされる方もいるかと思います。

○機構 補足させていただきますと、これは製剤が140mgの1規格のみになっていますので、420mgを打とうとすると一遍に3本打つことになるのです。そうすると、患者さんにとってはちょっとそれは怖いということで、2週に1本だったら2週に1回の方がいいという患者さんはいらっしゃるかもしれませんが、私どもとしても通院の回数が一番分かりやすい表現ですので、そういうところを挙げさせていただきました。あと、実際に自己投与するときなども、3本を自分で刺すのは怖いというところもあるかと思いますが、どういう場合だったらというのを、こちらから提案することが難しかったので、そこは患者さんと主治医の先生でお話いただいて、決めていただくのかと考えているところです。

○神田委員 分かりました。多分、そんなふうになるのだろうと思いますが、ただ、患者さんがどちらを選ぶかというときの情報が、どれだけあるのかというふうに思ったのです。ということで、きちっと患者さんが選べるような情報が提供されることを望みたいと思ったものですから、お聞きしましたけれども、ほとんどは通院ということぐらいにしかならないということですね。分かりました。

○機構 すぐ思い浮かぶのは、そういうところなのですが、もし他に患者さんからの何か御要望とかあれば、そこは先生とのお話で、この患者さんはもっと頻繁にきちんと見ておかなければ困るということでしたら、例えば2週というところがあるのかもしれません。基本的に状態が安定しているというところだと思いますが、そういうところであれば少し間隔が空いても大丈夫という判断があるのかもしれませんので、そこは患者さんごとの御判断になるのかと思います。

○神田委員 先ほど、つまらない質問をしたのですが、2本と3本で医療費に全然差はないということですか。それも患者にとっての情報の一つであるかと思ったのです。

○松井部会長 いかがですか。

○機構 機構の方で薬価のことをやっているわけではないので、私どもの方からお答えするのは、今、難しい状況です。

○神田委員 分かりました。場が違うということですね。ただ、もしお値段が違うのであれば、そういった情報も重要な情報なので付け加えていただきたいと思いました。

○松井部会長 鈴木委員、そのことに関してですか。

○鈴木委員 ええ、そうです。今、お話いただいたことですが、要するに2週に1回投与していれば4週に280mgで済むものを、4週に1回投与だと420mgですから1.5倍になるわけです。このときの薬価が、ここは議論する場でないと思いますけど、中医協的に言うと同じにされるのです。ですからワンクール合わせを厳守しなければいけないとなると、4週投与しますと言って3本もらって、2週に1本ずつ6週使った方が安くなるということになります。そういうことが起きると思うので、こうして両方を認めることのリスクというか無駄というか、そういうことも考えておかなければいけないのではないでしょうか。多分、これは先で議論になると思います。今、ほかの薬で問題になっていて昭和57年の規程を見直すことになっています。

○松井部会長 薬価のことについては、ここではこれ以上討論しないということにしましょうか。よろしいですか。

○鈴木委員 そうした問題点があるという指摘があったことを議事録に残したいのです。

○松井部会長 記録に残すと。ほかに、いかがでしょうか。よろしいですか。それでは、議論も尽きたと思いますので議決に入りたいと思います。なお、木村委員、野田委員、平石委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮ください。本議題につきまして承認を可として、いいでしょうか。ありがとうございます。御異議なしと認めますので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。

 それでは、議題4に移ってください。事務局の方から御説明をお願いします。

○事務局 希少疾病用医薬品の指定に関するものですので、事務局より御説明いたします。議題4、資料4、シロリムスを希少疾病用医薬品として指定することの可否について御説明いたします。資料の事前評価報告書のタブをお開きください。報告書の1ページ中段を御覧ください。申請者はノーベルファーマ株式会社。予定される効能・効果は、結節性硬化症に伴う血管線維腫となります。まず、対象患者数について御説明いたします。結節性硬化症は指定難病に指定されており、患者数は約1万5,000人と推定されております。国内外の報告により、結節性硬化症患者のうち、7090%程度が血管線維腫を合併していると考えられることから、結節性硬化症に伴う血管線維腫を有する国内の患者数は1万3,000人程度と推定されており、患者数が5万人未満という基準を満たしているものと考えております。

 次に2ページの、医療上の必要性について御説明いたします。本邦において「結節性硬化症に伴う血管線維腫」を適応として承認されている医薬品はなく、個々の患者の状態に応じて、レーザー治療や外科的治療が行われておりますが、色素変化や瘢痕、感染等のリスク、再発も多い状況であり、エビデンスが確立した治療法は乏しく、治療満足度も十分ではありません。また、精神発達遅滞や自閉症症状を呈する結節性硬化症患者も多く、そのような患者では麻酔を伴うレーザー治療や外科的治療の適応は困難となっています。

 結節性硬化症は、原因遺伝子としてTSC1及びTSC2の2遺伝子が同定されており、それらの産生蛋白の複合体の機能不全に伴い、下流のmTORが恒常的に活性化された結果として全身の過誤腫が生じると考えられており、本剤は、mTORと複合体を形成してその機能を抑制することから、結節性硬化症に伴う血管線維腫に対して有用な治療薬となることが期待されます。

 実際に結節性硬化症に伴う顔面血管線維腫を対象とした国内第I/ II 相試験が実施され、主要評価項目とされた「12週後におけるベースラインからの評価対象腫瘤の縮小度と紅色調改善度の合成変数」において、本剤の有効性が示唆される結果が認められています。以上より、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に3ページの、開発の可能性について御説明いたします。結節性硬化症に伴う顔面血管線維腫の患者を対象とし、有効性及び安全性の評価を目的とした国内第III相試験が本年中に開始される予定であることから、開発の可能性は高いと考えております。以上より、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 ありがとうございます。委員の先生方から御質疑はありませんか。私から一つ質問いたします。このシロリムスを使用するときに、特に血中濃度のチェックは必要ないのですか。

○事務局 こちらはまだ希少疾病用医薬品の指定なので、そちらの検討などは後に審査をさせていただくことになります。

○松井部会長 ありがとうございます。先生方はいかがですか。よろしいですか。

○内藤委員 すごく細かいことで恐縮ですが、患者数が1万5,000人程度と説明の中であったのですが、最初の品目概要を見ると、「国内患者はおよそ1万2,000人前後と推定される」という、その数字が合ってないので、これはきちんと整合性を取った方がよろしいかと思います。

○事務局 失礼しました。先生から御指摘いただいたとおり、1ページでは1万2,000人前後という形で丸めて書いているのですが、事前評価報告書の2ページを御覧いただければと思います。上から8行目にあるように、結節性硬化症患者の1万5,000人のうち、7593%という範囲で血管線維腫を合併しておりまして、その後段に書いてあるように、大体国内の患者数としては1万1,250人~1万3,950人というところで書かれておりますので、私の発言で1万3,000人とありましたが、大体この範囲のところで患者数が推移しているということで御理解いただければと思います。

○松井部会長 よろしいですか。そのほかに特に御質疑はないでしょうか。それでは議決に入ります。本議題につきまして、指定を可としてよろしいですか。御異議がないようですので、指定を可として薬事分科会に報告といたします。それでは、報告事項に移ってください。

○事務局 報告事項に移ります。議題1~議題3について御説明いたします。まず、議題1、資料5です。販売名はスイニー錠100mg。本剤はアナグリプチンを有効成分とする経口血糖降下薬であり、既に本剤の単独使用、また、 α - グルコシダーゼ阻害剤との併用、ビグアナイド系薬剤との併用、スロホニルウレア剤との併用、チアゾリジン系薬剤との併用療法について承認されているところです。

 今般、株式会社三和化学研究所から、本剤と他の経口血糖降下薬を併用した際の臨床試験成績が追加され、2型糖尿病へ効能・効果を変更する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものです。機構における審査の結果、本剤と他の経口血糖降下薬を併用した際の有効性及び安全性が確認されたことから、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。

 続きまして、資料6を御覧ください。次はエフピーOD錠2.5です。本剤は、選択的B型モノアミン酸化酵素阻害薬であるセレギリン塩酸塩を有効成分とする経口製剤です。本邦では、1998年にYahr重症度分類 I IV のパーキンソン病に対するレボドパ含有製剤との併用療法について承認されております。

 今般、エフピー株式会社より、Yahr重症度分類IIIIのパーキンソン病に対するレボドパを併用しない効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断いたしました。

 続きまして、議題3、資料7です。キシロカイン注ポリアンプ0.5%及びリドカイン塩酸塩注射液0.5%「ファイザー」ですが、本剤はアミド型局所麻酔薬であり、現在は硬膜外麻酔等の効能・効果で承認されております。本剤については、7月10日に開催された未承認薬・適応外薬検討会議におきまして、公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、同年7月31日の本部会における事前評価を踏まえて、今般、アストラゼネカ株式会社、及びマイラン製薬株式会社から、「上肢手術における静脈内区域麻酔」の効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。説明は以上です。

○松井部会長 ありがとうございました。何か御質疑は、委員の先生方からありますか。よろしいですか。それでは、報告事項議題1~3については御確認いただいたものといたします。

 引き続いて、報告事項議題4に移ります。よろしくお願いいたします。

○事務局 報告事項の議題4、再審査結果についてです。資料は、資料8-18-3になります。

 まず、資料8-1です。一般名称は「酒石酸トルテロジン」、販売名は「デトルシトールカプセル」です。

 資料8-2、一般的名称は「メトホルミン塩酸塩」、販売名は「メトグルコ錠」です。

 資料8-3、一般的名称は「フェンタニル」、販売名は「デュロテップMTパッチ」です。

 これらの品目については、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果や用法・用量等の変更が必要ない「カテゴリー1」と判断いたしました。説明は以上です。

○松井部会長 ありがとうございました。何か御質疑はありますか。

○加藤委員 デュロテップ、フェンタニルについてですが、資料8-313ページの「承認条件」の所で、e-learning受講のことが書いてあり、これは最初に承認するときにe-learningを徹底させるということが承認条件として約束されていたと思いますが、この報告を見ると、e-learning未受講医師による処方や、薬剤師による処方がかなりの件数まだあるという報告になっています。これはこのような現状でよろしいのですか。

○松井部会長 いかがですか。

○事務局 事務局から回答いたします。確かに未受講のところが多くなっておりますが、引き続き、この受講数を増やすように申請者の方には指導等をしていきたいと考えております。

○松井部会長 課長、よろしいですか。

○審査管理課長 申し訳ございません。承認条件としてこのような条件が付いているということ、それから、e-learning未受講の、いわゆる不適正使用がかなりあるということは残念なことですので、私どもとしても、申請者に適切に対応するように指導してまいりたいと思っております。

○加藤委員 よろしくお願いします。

○松井部会長 ほかにありませんか。

○佐藤委員 今の点の続きですが、e-learningを受講していなかった医師が処方したので、薬剤師が調剤を拒否した場合と、調剤を拒否しないで通ってしまった場合等があるのですが、薬剤師はどのような情報に基づいて調剤を拒否するのでしょうか。

○機構 患者さんは通常であれば薬局の方に処方箋と一緒に医師が出した確認書を持参してきます。薬局では薬剤師が確認書を見て、処方した医師がe-learningを受講していることをウェブ等で確認した上で処方するシステムを取っておりますので、そこでダブルチェックを掛けるという形です。医師が未受講の場合は確認書を持っておりませんし、講習は1年単位で受講することになっておりますので、例えば、期限を過ぎている場合は薬剤師がそれを確認することができます。薬剤師が確認した上で処方できないことを医師の方に御連絡する形です。医師の方が未受講の場合、薬剤師が処方をしないというのはそういう形でやっております。

○松井部会長 よろしいですか。

○内藤委員 毎年受講されると、今、説明されましたよね。そうすると、医師の方がe-learningをうっかり忘れてしまって、そして処方箋を出してしまった場合、薬局の方でそれに気が付いて、この処方箋では調剤できませんということになると、患者さんはどういうことになるのですか。もう1回お医者さんの所へ行って、処方し直してもらうことになるのですか。

○機構 現実的には、その医師の方による処方に対して調剤できないことになりますので、医師の方に受講をしていただいた上で、再度処方をしていただく形を取らざるを得ないのが現状かと思います。

○内藤委員 患者さんにとっては迷惑な話ですよね。本人が悪いわけではないのに薬をだして頂けないということになってしまいますので、その辺はうまく患者さんの不利益にならないようにして頂きたいと思います。

○機構 企業から事前にEメール等のシステムを使い受講を促すということもやっておりますので、医師の方に定期的に受講していただき、確実に処方できるよう対処していただくことかと思います。企業の方からの情報提供も重要と思います。

○松井部会長 ほかにありませんか。それでは、これ以上質疑がなければ、議題4については御確認いただいたものとします。本日の議題は以上ですが、事務局から追加の説明はありますか。

○事務局 次回の部会ですが、来年2月5日()午後1時からを予定しております。よろしくお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生方から特に御発言がなければ、本日はこれで閉会といたします。どうもありがとうございました。

 


(了)

備  考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬・生活衛生局 審査管理課 課長補佐 清原(内線2746)

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