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2015年2月16日 第5回目安制度の在り方に関する全員協議会 議事録

労働基準局

○日時

平成27年2月16日(月)
10:00~11:35


○場所

厚生労働省12階専用第12会議室


○出席者

【公益委員】

仁田会長、鹿住委員、中窪委員、藤村委員

【労働者委員】

木住野委員、須田委員、田村委員、冨田委員、萩原委員、松田委員

【使用者委員】

小林委員、高橋委員、中西委員、横山委員、吉岡委員、渡辺委員

【事務局】

谷内大臣官房審議官、松本大臣官房参事官(併)賃金時間室長
久富副主任中央賃金指導官、新垣賃金時間室長補佐

【参考人】

居城静岡地方最低賃金審議会長
玉井大阪地方最低賃金審議会長

○議題

目安制度の在り方について

○議事

○仁田会長 定刻になりましたので、ただ今から第5回目安制度の在り方に関する全員協議会を開催したいと思います。本日はお忙しいところを御出席いただきありがとうございます。本日は武石委員、土田委員が御欠席です。
 前回北海道、埼玉、熊本、3つの地方最低賃金審議会の会長からのヒアリングを行いました。本日、第5回目の会議におきましては静岡と大阪の地方最低賃金審議会の会長からのヒアリングを行い、その後最低賃金の在り方と3要素の在り方、目安審議の在り方について御議論を頂きたいと考えております。それでは、早速、静岡地方最低賃金審議会の居城会長から御説明いただき、その後質疑を行いたいと考えております。居城会長、よろしくお願いいたします。

○居城静岡地方最低賃金審議会長 おはようございます、よろしくお願いします。居城舜子と申します。
 簡単なレジュメを御用意いたしました。全く私的にまとめたものですが、最近の静岡県の地方最低賃金審議会の決定の特徴について御紹介したいと思います。
 静岡県は前からBランクなのですが、前回のランク見直しにより編成替えになって埼玉に次ぐ上位の位置にあるということです。生活保護水準との乖離はないので、一定の是正がない県としての特徴を兼ね備えていると思います。今年度、Bランクは15円という目安でしたので、それをめぐってプラス1円という形、765円で決定いたしました。
 ただ、このところ、全会一致がとても困難ということがあります。静岡県は7、8年位前まではずっと全会一致で来ました。ところが、このところ労使双方に目安に対する不満がある。そういう意味では、労使双方のスタート金額が離れるという特徴があります。そこで、歩み寄りの調整を何回も重ねるという形になり、結局は目安を中心に考えるということにはなるのですが、それをめぐって0円ということはなく、Bランクの上なので1円や2円、3円のプラスという状況で決着するというのが最近の特徴です。
 静岡地方最低賃金審議会の限りですけれども、最近は傍聴人も多く、審議会へ意見書の提出もとても多くなっています。昨年は全労連系からですが7労働組合からの意見書、生活賃金を目安にということで意見書が出てきております。
 労働者側ですが、主張は政労使合意の800円から1,000円という基調がある。もう1つは埼玉を中心としたリビングウェッジ、それに静岡県の物価上昇を掛け合わせていくと14万円になるのですが、それが時給900円という計算になります。これに対してどれだけ近づけるか、何年で近づくかということで金額が算定されるという特徴があります。そういう意味では数字を視野に入れて、それから昨年は消費税増税もありましたから、消費者物価が3.6%上がったという論点で、そういう主張が格差是正と水準の2本立てで、どちらかと言うと、出発は水準ですが、格差是正へ重きを置くという主張になっています。
 これに対して使用者側は、ここのところずっとそうなのですが、これは静岡県経済の特徴と関わっているのですが、静岡県は非常にBランクの目安が高いという不満が強く出ます。静岡県は日銀の短観の結果が、平成13年9月から全国支店長会議の中では最下位という状況です。それから、有効求人倍率が昨年10月は全国平均でしたが、ずっと下回っているということです。かつて有効求人倍率は全国平均を上回っておりましたが、このところこういう特徴があります。つまり静岡県特有の特徴なのですが、県下の企業経営が非常に低迷していることを力説することで、なかなか歩み寄りが難しいということを公益として積極的に提案しているわけではありませんが、影響率のBランクの中の静岡県の位置や企業経営の状況、第4表を見ても静岡県はパートの場合は0.8%位の賃上げしかないので、余り賃金が上がっていないということがある。大きく伸びるのは、最低賃金に関する基礎調査結果の報告の分布の状況なのです。そうすると、静岡県は最低賃金に張り付いていないということがあります。どれほど張り付いているか、これを上げてどれ位影響があるかを見ながら、1円上げても全然増えないよという形で落ち着かせるということなものですから、やはり目安ということと、最後はこの影響率、未満率というところで見ていく。しかし、何といっても使用者側は目安そのものが高いということで反対するということです。
 先ほど申し上げましたように、静岡県は生活保護乖離県ではない。かつては兵庫県を目安に、その兵庫県を見ながら、そこにどれだけ追いつくかということで、かつてやってきました。レジュメの一番下、表に似たような所を見ていただくと2008年まで1円ずつ近づくという、経済力からいって大差ないねということでしたが、片方、兵庫県が生活保護水準との乖離がありましたから、ずっと離れてきている。結局、静岡県はBランクの上位ですけれども、今の静岡県の最低賃金額は全国の加重平均程度になっているという状況です。1つの論点として兵庫県を見るという労使の考え方、もちろん他県に影響されないということはあるのですが、この材料がなくなってしまったということで歩み寄りの論点が1つなくなる。大きな材料ではありませんが1つなくなるということがあって、なかなか落ち着かない、議論の調整がつかないということがあります。
 考えてみれば、これは全く私的なことですが、2006年頃までは地方最低賃金審議会というのは、名目賃金ですが全国の格差は縮小していて、それ以降、格差は拡大している。名目賃金だけ見ると2008年と2014年で2.9倍くらい開いている。ただし、実質賃金で見ると違うという 意見はたくさんあるわけです。そうすると、ランク分けの20指標というのは何なのかと思うところがあります。これが持っている意味というのは何なのか。生活保護水準の中の特に住居費のウェイトが高いために、住居費も込みで実質賃金を見ていくと、消費者物価だと駄目なのですが、5年おきに行う住宅も入った物価統計で見ていくと、かなり東京は低く、静岡などが余り高くならない。そういう見方もいろいろあるようです。ランク分けや住居費の位置というのは、生活保護が入ってきてどういうことになるのか、静岡のランクが全国加重平均以下となるのはどういうことかと思うところがあります。
 やはり、目安を中心にプラス1円とかマイナス1円、あるいはプラス何円という議論というのは、やはり労使がベアで幾ら上げるという議論と非常に似ているものです。水準も改めて考えなければならない時期に来ているのではないかと思います。その場合、目安の在り方はどうなるのだろうとちょっと思うところがあります。
 静岡県の特徴なのですが、経済力はとても強い。それから、20指標の中の所得や消費の前半の指標はとても高い。後半の売上高や出来高というのも高いのです。一方、給与や賃金のところは全国ランクからすると、とても低い。製造業が中心の県で、働いている人も製造業がとても多い。雇用構造は日本型と言われる特徴を持っていて、女性は非正規の人がとても多い。中高年、最近は25歳から30歳代の女性の非正規が非常に増えている。若い人の女性の働き口は多くないという特徴が最近あります。女性の非正規雇用が非常に多いという特徴があって、したがって男女の賃金の格差とかで見ていくと全国最下位ランクになっていくという状況です。労働分配率がどうなのかということが非常に問われる県です。
 使用者側は経営が苦しいです。製造業ですし相対的に苦しいというのは確かなのです。静岡の場合、工場が海外に出ていっていますので、事業所数や従業員数がぐっと減ってきているという県なのです。自動車産業や楽器などの県なのですが、主力の自動車ではなく小型の自動車ということで、とても賃上げに渋い会社だったりする特徴を持っています。その前の年に比べれば経営状況が苦しいというのは確かにある、しかし経済の底力という点ではどうなのかという点があります。その辺までは、目安プラス1円とかマイナス1円とかいう相対的な議論ですから、そういうところには食い込めないし、地方最低賃金審議会ではそのような議論はできないし、そんな権限もないわけですので、そういう構造的な転換期にある県です。やはり、どこかで水準の議論をしていただくということをお願いできればいいかなと思います。
 その割に、20指標の中の標準生計費というものが余り意味を持っていないと思います。
年によって非常に動くし、サンプル数が少ないから動くということもあるのですが、生計費の指数があれでいいのかと思うところがあります。目安制度の限界をこのところ常々認識しています。もちろん格差是正や相対的貧困率という議論も登場していますので、賃金だけでは解決できないということも承知しております。ただ、最低賃金の水準は重要性を増していると思いますので、どこかで議論していただくと大変有り難いかなと考えています。ちょっと長くなりました、以上です。

○仁田会長 どうもありがとうございました、大変参考になるお話を伺わせていただけたと思います。幾つか質問等あると思うので、労使の委員の方、質問を出していただければと思います。いかがでしょうか。

○田村委員 今日はありがとうございました、労働者側委員の田村です。2つお聞きしたいと思います。表ごとの比較があったという話もありましたが、私どもが非常に気になるのは、静岡は東側に神奈川、西側に愛知というAランクの間にはさまれている県で、そこからすると20円位の差があるような地方最低賃金審議会です。産業構造も静岡の東側と真ん中、西側というか、いろいろ違うと思いますので、その辺の御苦労などありましたらちょっとお聞かせいただきたいというのが1点です。
 もう1つは興味深く、賃金の水準議論が必要なのではないかという御指摘を頂きました。水準を議論するときに1つは生活できる賃金がベースになるでしょうし、仕事に対する成果的な賃金も議論になっています。居城先生のお考えで、どのようなものをベースに考えるべきかというものがありましたら御指摘いただければと思います。

○居城静岡地方最低賃金審議会長 静岡県というのは経済力から言うとかなり大きな県でして、東中西というように分かれています。東側は伊豆半島を中心として観光業、真ん中は静岡市を中心としたサービス業、西側が製造業中心、東中西の一つ一つが四国一県位に相当します。そういう意味で言うと、サービス業と製造業、サービス業の中も観光などというように分かれていて、それぞれ特徴を持っている県なのです。しかも、隣に製造業に近い愛知県を抱え、片方で神奈川県を抱えている。両方を視野に入れ、そして労働者側は人が流れるというように言うわけです。確かに派遣労働の場が流れます。三島の近辺の辺り、自動車関連の部品の派遣労働の方は流れます。西側の方も一部流れます。ですが、会社の中での都合、人員配置で動かしていくということはあっても賃金に惹かれて移動しているかというのは分かりかねるのですが、それほど移動しているとはちょっと思えません。
 静岡の人口が減少している特徴として若い人が減っているのですが、大学を東京に行って戻らないという形が多いのではないか。それから、女性の就職口がない。キャリアを持った女性の就職口がないということで少し減っているのではないか、それと、女性が結婚して県外へ出ていくという形で減っているというのがあるのではないか。女性の労働意欲というのはそういうように、キャリアのある人達が東京や神奈川に惹かれていくのかなというのはありますが、労働者側が主張するようにそれほど、最低賃金が違うからといって、あるいは賃金水準が違うからといって他県へ行っているかというと、どうなのか。Uターン率が落ちるかどうかの問題だろうと思います。
 2点目ですが、賃金というのは2つの意味があって、その仕事に対する代価、それで生活できるかどうかという2つの側面がありますから、やはり2つの側面から議論していかなければならないと思います。最低賃金はそれで生活できるかという問題に関わりますから、その意味ではそれで生活できるかどうか。ただ、それをどのようにして判定するかはなかなか難しい。例えば、ヨーロッパがやっているように中位所得の何パーセントなどというやり方で相対的な貧困を見るということを基準にするとか、アメリカはとても低いですが、貧困線で見ていくというようなことがあったりするかと思います。それで生活できるかをどこの指標で、何らかの形で見ていくという議論が子どもの貧困でも出ているわけです。そして、35~36歳の方の貧困率が増えていることは指標ではっきりしています。いわゆる阿部彩さんの議論ではないのですが、統計を見てもワーキング・プアの人は増えているわけですので、高いか低いかはちょっと分かりかねますけれども、何らかの基準という議論が必要なのではないか。かつて、最低賃金の議論の中でも基準を議論したらどうかという議論があって、立ち消えになっているかと思いますけれども、こういう時代ですから議論してみてはどうか、どこかお願いできればというように希望しています。

○仁田会長 どうもありがとうございました、ほかにはいかがでしょうか。

○藤村委員 今日はどうもありがとうございます。目安プラス1円とか2円、そういう御発言が先ほどあったのですが、目安マイナス1円という話は地方最低賃金審議会の中では余り出てこないのでしょうか。

○居城静岡地方最低賃金審議会長 いや、議論の中ではもちろん最初の出だしはマイナスです。過去をずっと振り返ってマイナス、目安どおり0円というのはもちろんあったのですが、マイナスはないねというように公益側が落ち着かせる形です。

○藤村委員 それからBランクの上の方という、ある種社会的責任というか、全国の中で静岡はこういう位置にあるというような御発言が先ほど居城先生からあったのですが、委員の中にもほかの県と比べて余り恥ずかしいことはできないというような認識はあるのでしょうか。

○居城静岡地方最低賃金審議会長 はい、兵庫県を意識して議論が絶えずあるというのはそういうことです。それから、両方から最低賃金の高い県にはさまれてネックになっていますから、やはり人が逃げるという議論があります。それほどでもないのではないかと私は思うのですが、あります。

○藤村委員 もう1点、最後ですが、分布を見ながら落とし所を探っていくということですが、確かに使用者側からすると経営が苦しいことを主張される。先ほどもお話があったように、労働者側は14万円程度が生活費なのだから、そこから割り戻してという。その分布を見ていくときに特に使用者側の主張というか、分布は確かにこうだけれども苦しい会社があって、これ以上上げると潰れるのではないかとか、そのような話が出ているのかなと思うのですが、いかがでしょうか。

○居城静岡地方最低賃金審議会長 もちろん、絶えず苦しいから潰れるというように言います。それから、最低賃金近辺で張り付いている人以外の賃金も変えなければいけないから、人件費コストが広がっていくというような主張は絶えずあります。ですので、張り付いている人が少ない所で説得というか、調整していくという形になります。倒産するという御発言は絶えずあります。ただ、支払い能力も3要素の中の最も倒産する所を基準にしているわけではないのだということは一応言います。

○鹿住委員 今日はありがとうございました、鹿住と申します。今の議論とも関連するのですが、静岡県は製造業が非常に多いと。特に輸送機械が多いので、いろいろな指標を見ていても他団体、要するに下請け分業構造が残っている所です。そうすると、例えば同じ製造業が多い県と比較した時、静岡県の特徴としてやはり価格転嫁力が弱い。つまり賃上げした分、あるいは原料のコスト高もそうなのですが、その分を親会社に請求しにくいという事情は特徴として現れているのでしょうか。

○居城静岡地方最低賃金審議会長 そこまではちょっと分からないのですが、親会社そのものが同じ自動車メーカーの中でも若干渋いというか、そういう特徴があるというように一般に言われています。数字として拾ったわけではありません。

○鹿住委員 どうしても今、どの産業も海外の企業との価格競争になってしまうので、そうすると国内だけ売るというわけにいかないというのはあるのですが、例えば生産性の向上などにもう少し何か支援策などがあれば上げる余地はあるのではないか、というお話というのは使用者側からは出てこないのでしょうか。

○居城静岡地方最低賃金審議会長 出てきません、むしろ私のほうが言いたいくらいです。

○高橋委員 本日はありがとうございました、高橋と申します。制度について2つほど質問します。個人的な見解でも結構ですのでお答えいただければ幸いです。現在、御承知のように4ランク制を敷いています。今、我々も目安制度の在り方について議論して、ランク制の在り方についても今後議論していくのですが、そもそもランク制をやめて全国統一、極端なことを言えば1ランクというのもあるかもしれないし、もう少し細分化していくという考え方もあるでしょう。いろいろなことがあり得ると思うのですが、現行の4ランク制について、居城先生が御見解をお持ちであれば教えていただきたいというのが1点目です。
 もう1点、最近、目安の金額の根拠が非常に分かりにくいという御意見が各地方の地方最低賃金審議会から寄せられています。それについてコメント等がありましたら教えていただきたいと思います。以上です。

○居城静岡地方最低賃金審議会長 静岡県のランクがこれでいいのかということについてはいろいろ考えるところはありますが、ランク制そのもの、4ランクがいいのかどうなのかということについては考えたことがありません。ランク制を廃止するというのはちょっとどうかというように思います。

○高橋委員 では、今、20指標で4ランクに分けています。この振分けの仕方でも結構なのですが、コメントはございませんか。

○居城静岡地方最低賃金審議会長 この指標が適正なのかなということはちょっと考えます。先ほど言いましたように生計費とか消費者物価でいいのかとか、静岡県の場合は製造業のウェイトが高いので、製造業の1人当たり出荷高があってもいいと思いますが、もう少し サービス業の多様性はあってもいいのではないかというように思ったりもします。雇用者報酬というのはどうかなとも、最低賃金の場合は雇用者報酬の内訳の賃金のところで見ていくほうがいいのではないか。県民所得があって、雇用者報酬を更に細分化した賃金というところでランクしていく。ただ、静岡はグッと下がるのですが。そのように、賃金のところと社会的負担との兼ね合いも出てきますから、そのような指標がもっと厳密なのではないかとちょっと思ったりもします。
 第2点目の目安の根拠についてですが、これは本当に分かりにくいです。静岡の場合は絶えず使用者側から文句が出ます。なぜ15円なのか、この経済環境の中でなぜ15円なのか非常に不満が多い。それでも、目安が出ている所を私どもは取っ掛かりにして議論を展開する形になっています。私どももそれぞれ、何円というときに労使に根拠を出せと言っているのですが、なかなか大変でしょうけれども根拠が欲しいと思います。

○仁田会長 ほかにはいかがでしょうか。

○藤村委員 傍聴人が最近多いというお話があったのですが、いつ頃から公開でおやりになっているのですか。目安制度の在り方に関する全員協議会についても公開の要望があるですが、公開をすることによって何か不都合があるかどうかとか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。

○居城静岡地方最低賃金審議会長 今は総会だけを公開しています。専門部会や金額審議のところは公開していません。いつ頃からでしょうか、数年前くらいからでしょうか。だんだん人数が増えてきて、意見書もだんだん増えてくるという状況です。先ほど申し上げましたように、意見書は生活賃金的な発想で出てきます。生活賃金の考え方もいろいろで、連合がやっているものと全労連がやっているものとでは算定の仕方が違うのです。連合がやっているのは埼玉を中心としたもの、全労連というのはマーケット・バスケットで積み上げるという方式なのでしょうか、よく分かりませんが、少し金額に開きがある。でも、生活賃金的な発想で要求してくるということですので、それにこちら側として応えるにはどうしたらいいか、どこか研究者レベルでもやっていただけると助かるのですが、どうしたらいいか。あるいは絶対額ではなくて相対的なもので示すか、そういうものが何か必要なのかもしれないとちょっと思うところがあります。

○仁田会長 静岡県というのは失業率が非常に低い、素晴らしい県だなと思います。その割には有効求人倍率はそれほど高くないとなっています。製造業が多い所は普通、ハローワークに来る人が多いので、有効求人倍率が高くなりそうな気がするのですが、その辺について静岡県の特徴をどのようにお考えになっておられますでしょうか。

○居城静岡地方最低賃金審議会長 正確に失業者というのはどういう人か、というのはハローワークの入口でも見ないと分からないという部分はあります。潜在的に失業者の概念に入っていない人たちが結構いるのではないか。主婦と失業者の間というか。非正規が多いということはそういうことなのではないか。失業者の規定が日本はきついですので、どうしても出てくるのは少ないですが、静岡県のように日本の旧来型の場合には、家庭にいる人と働く人、製造業の下請けで内職をやったりする人もいる。傍の小さな工場へ行って働く人もいる。その境目が非常に分かりにくいということがあるのではないかと思います。ゆえに、失業者という規定からすると、ある種外れてしまう人がいるのではないかと思うところがあります。

○仁田会長 いわゆる縁辺労働力という話ですよね。

○居城静岡地方最低賃金審議会長 はい、そうです。

○仁田会長 静岡県の場合、縁辺労働力というように規定されるような人の割合が高いと言えるのかどうか、そういう根拠はあるのでしょうかという疑問があるのです。今日、この後、大阪地方最低賃金審議会の会長がお見えになるのですが、大阪はやはり失業率が高くて、5%を超えているような状況のときも静岡は3%台にとどまっていることが多い。単純に言うと最低賃金が上がって、雇用に問題が出ているかというとき、一番乱暴な議論は失業率が低いではないかという、割と分かりやすい議論なのですが、そういう議論というのは、審議会の中でもなされるのでしょうか。

○居城静岡地方最低賃金審議会長 金額の決定に失業率が影響を与えるという議論はあると思います。しかし、静岡県の場合、失業率というのは余り議論になりません。労働法の先生などもよく言うところなのですが、主婦の方は内職も含めて片手間にどこでも仕事がある、 それによって家計を補うということは昔から静岡では言われてきたことなのです。内職であるか、少し勤めに出るかという程度ですが。

○仁田会長 あと1点だけ、昨年神奈川に伺ったら、小田原と熱海で最低賃金がこれほど違うということでした。これは小田原の方にとっては非常に困ったことだというお話がありました。でも、それだったら静岡の労働者が湯河原に働きに来るのではありませんかというように言ったら、それはそうかもしれないけれども、三島ではコンビニとかが余りできない、投資が阻害されるというのが使用者側の御主張でした。この辺、実際に数字で確かめることは難しいのではないかと思っています。その辺について感触がありましたら伺わせていただけますか。

○居城静岡地方最低賃金審議会長 静岡の大学生で伊豆半島から通っている人たちがいます。伊豆半島から小田原へ働きに行くという人達は賃金を比べて、あるいは雇用の機会が多いので、伊豆半島では余り雇用がないので行くという若者はいます。最低賃金との関わりで言えば、伊豆半島の宿泊業では賃金がかなり低く働く人たちが多い。非常に人手不足という状況にはなっています。それが他県の最低賃金と関わるかどうかはちょっと分かりません。

○仁田会長 ありがとうございました。もしよろしければ、予定の時間ですのでこの辺で静岡県の御説明を終えたいと思います。居城先生、今日はどうもありがとうございました。大変貴重な御意見を頂きました、審議の参考にさせていただきます。それでは、御退室いただいて結構です。

(居城静岡地方最低賃金審議会長退室)

○仁田会長 それでは、次に大阪地方最低賃金審議会の玉井会長から、御説明いただきたいと思います。10分程度で御説明いただき、その後20分程度の質疑を行うというスケジュールで進めたいと思います。玉井会長、よろしくお願いします。

○玉井大阪地方最低賃金審議会長 大阪地方最低賃金審議会会長の玉井です。よろしくお願いいたします。今日は、このような機会を与えていただきまして、御礼申し上げます。ありがとうございます。与えられた時間が10分ですので、事前に頂いた設問に答える形で話を進めていきたいと思います。
 大きくは、地方最低賃金審議会における審議についてと、目安の在り方についての意見の2つに分かれます。まず、地方最低賃金審議会における審議についてから入ります。審議において、目安はどのように参考とされているかですが、目安として決まった以上、その数字の重要性は言うまでもありません。それと、決定に至る中央レベルでの審議経過、特に、公労使の意見をしっかり把握するようにしております。我々はスタートラインに立つときに、地方と公労使三者の意見が一致して決まったのか、それとも、そうでなくて、公益委員の見解という形でまとめられたのかというところは、かなりそれぞれの委員に影響するところだと思います。
 それから、近年の目安に対する公労使の受け止め方はどうかですが、やはり目安の数字そのものにここ1、2年根拠がなくなってきているのではないかと。これは、公労使それぞれがそういう思いです。やはり、根拠がなくなると、信頼性ですね、何を基にこの数字が決まったのかが分からなくなりますので、それが揺らいでくるのではないか。それから、最後に公益が取りまとめに入るときに、根拠もなく数字が出ていた場合、我々としてもその点は少し困ったりいたします。
 目安以外に、どのような要素を重視して審議しているかですが、大阪の場合は3つの基本的なスタンスの下でやっていると言っていいだろうと思います。1つは、三原則を裏付ける大阪での資料、データの収集等をベースにして審議をする。2点目は、大阪府の最低賃金に関する実態調査結果を重視する。3点目は、いわゆる水準論議と改定論議をできるだけ区別して議論するといったことが挙げられると思います。そういった下で具体的審議に入るわけですが、そこにおける留意事項も幾つか設定しております。
 1つは、これは言うまでもなく第4表の中身を十分把握することです。2点目は、先ほど触れました大阪での実態調査結果ですが、やはり第1・十分位、第1・二十分位の辺りの数字を厳格にチェックするようにしております。3点目は、賃上げ状況ですね。4点目は、未満率、影響率がどうかといった点です。5点目は、前年度も含むこれまでの審議経過も、4~5年視野に入れるように努めております。
 もう1点あえて言っておけば、大阪市の最低賃金を決めるのではなくて、大阪府の最低賃金を決めるのだということですね。それを意識しているということです。
 次に、府における独特の経済状況や事情があるかですが、大阪の場合はこれまでずっと経済的に厳しい状況が続いてきていると言われます。産業を見ても、以前は製造業がリードしていたのですが、かなりサービス業に重点が移ってきております。そして、それに伴い、非正規労働者も増えてきているということで、余計、最低賃金の重要性が増しているといっていいだろうと思います。
 次に、全国又は近隣地域における府県等の位置付けですね。ランクや金額はどうかですが、まずAランクで問題はないと言えるのですが、しかし大阪は、例えば生活保護の級地区分でいきますと、1級地-1から3級地-1まで広がりをもちます。これは、東京でも何々島という所まで行けばそのようになるのですが、それだけの広がり、幅があるということですね。
 それから、もう1点あえて言えば、近隣ということで、奈良、和歌山はCランクです。しかし、大阪から奈良に通っている方もいますし、あとは大阪の一番南部の方は、和歌山に行っている方もいると。そうすると、近隣でAとCという差があるわけですから、これもよく考えてみなければいけない点だと思います。
 それから、府の最低賃金の現在の水準についてどうかです。これは、なかなか評価は難しいのですね。しかし、生活保護水準との乖離を埋めることになった以上、生活保護以上でなければいけないことは当然出てまいります。しかし、それでは上といってもどこなのかという点が大変難しいです。我々は、これはインフォーマルに議論しているのですが、例えば高卒の初任給辺りを1つ考えれば、生活保護水準と高卒初任給の間でどの辺りが最低賃金として適正なのかといったことも出てくるのではないかと思います。
 もう1点は、どのような労働者層を想定しているかですが、これもなかなか難しい問題です。ただし、2002年度以降、時間額に1本化されたわけですから、この辺りからパート労働者を想定してきていると思います。その意味で、特に女性のパートタイム労働者を想定していると言っていいのではないかと思います。
 それから、労使の関係審議会の雰囲気も、自由な意見の応酬で、会長の私が言うのも何ですが、雰囲気は決して悪くないと思います。審議の最中でも、公労、公使個別の話合いを頻繁に持つように努めております。
 以上が、地方最低賃金審議会における審議について、頂いた質問に対してお答えさせていただきました。もう1点、目安の在り方についての意見も幾つか頂いております。1つは、目安は今後も必要と考えるかという点については、必要だと思います。参考資料あるいはデータ等を提供するというやり方もあるだろうとは思うのですが、しかし、これはなかなかまた解釈をめぐって厳しい面が出てくると思いますので、現在の状況でいいのではないかと思います。
 目安の提示方法と時期を変更すべきかということですが、特に提示方法をどのように捉えるかにもよるのですが、いつも中央最低賃金審議会からこういう経緯で決まったという文書が届きますが、地方からすればその経緯をもう少し詳しく書いていただきたいなと思います。時期ですが、7月末、場合によっては8月に入るときもありますよね。それよりは、7月下旬の早い時期、7月20日過ぎぐらいには出てくれると、大変有り難い気がいたします。
 現行のランク区分をどう考えるかですが、これはこれまでの経緯を振り返ってきても、かなり根本的な検討が必要な時期にきているのではないかと思います。一方では、Aランクといっても、東京は随分高くなってきておりますし、場合によってはもっと東京だけを取り出して、それこそ特AとかSランク辺りまで持っていくといったことも考えられるのではないかと。それから、逆に下は産業別最低賃金、特定最低賃金が飲み込まれ始めております。大阪は、もうそのところへ入ってきていますので、そういったことも考えれば、かなり根底から考え直さなければいけないのではないかと私は思います。
 それから、調査、資料については、今のところ私から何かを申す点はありません。
 最後に、大阪に関して1点申しておきますと、大阪は最低賃金の審議に入りますと、特に第2回の総会のときに、労働者側代表、使用者側代表に意見陳述の場を設けております。労働者側代表といっても、実際パートで勤務している方がその場に来て、自分の思いを述べていただく。それから、使用者側の方も、その場で意見陳述したいということであれば、来ていただいてそれをやっていただく。そして我々は、それを参考にして審議に臨んでいるという状況です。以上で、私の話は終えることにいたします。

○仁田会長 それでは、何点か質問をいたします。

○須田委員 非常に意義深いお話を伺い、我々も思うことと重なるところがあります。1点、大阪としての主体性を持っての議論が3点御紹介があり、三原則を裏付ける資料という御説明がありました。具体的にどういう資料なのか伺いたい。質問の趣旨は、最低賃金は水準としてどうあるべきかといったときに、生計費を重く見るのか、ワークペイを重く見るのか、私自身も整理しきれていない状況なのですが、法改正で生活できる水準、生活保護との整合性が求められるようになりましたが、生活保護との整合性だけクリアすれば、生活できる水準と言えるのかどうかという思いがあるのです。今、現実の三原則を裏付ける、特に生計費のことについて、もう少し具体的な内容を御説明いただけたら有り難いと思います。

○玉井大阪地方最低賃金審議会長 大阪では、2003年に基本問題協議会を開き、そこで今後の最低賃金の審議の進め方についていろいろと検討を行いました。そのときに、三原則に関係する資料ということで、例えば労働者の生計費であれば標準生計費、生活保護状況、あるいは消費者物価指数といったデータをそこへ当てはめていくと。それから、労働者の賃金であれば、賃上げの妥結状況や、新規学卒者の初任給、あるいは、女性パートタイム労働者の賃金といった類の資料をそこへ組み込みます。3つ目の企業の支払い能力に関しては、地域別最低賃金の未満率がどうかとか、工業生産指数、大型小売店販売状況をそこへ組み込むと。それを基に、全体把握をして審議に臨むとしております。
ですから、生活保護に関しては、2007年の改正辺りから随分問題になりましたが、大阪の場合は以前から生活保護はどうかということは絶えず意識してやってきたと思います。

○須田委員 国もそれをやっていますが、社会的弱者を社会保障的に支える生活保護という基本的な役割と、経済的に自立して働くのだという立場の最低賃金と考えるときに、全部経済的といえば経済的ですが、例えば医療費が無料だとか、生活保護は付加的な扶助もありますよね。

○玉井大阪地方最低賃金審議会長 そうですね。

○須田委員 単純に、今やっている生活扶助と住宅扶助などでの比較だけで、どういう感想を持たれますか。

○玉井大阪地方最低賃金審議会長 これは、かなり私見になるかもしれませんが、考え方は大きく2つに分かれるだろうと。1つは、やはり働いている賃金が一番上であるべきである。それから、賃金を得て保険料を払って年金をもらうとすれば、その次にくるのが年金の額かなと。3番目に、生活保護だという見方です。それから、もう1つは今御指摘があったように、生活保護を受ける場合はいろいろと個別事情がありますよね。ですから、いろいろな扶助が付いてくる。トータルで見たときに、かなり大きくなると。それは、やむを得ないのではないかという見方です。ですから、逆転というのは決して悪くない、個々の事情によると。ですから、この2つの原理が存在して、それがぶつかったけれども、一旦はやはり働いている賃金が一番上ではないかというところに落ち着いたかなという感じですね。

○仁田会長 ほかにはいかがですか。

○萩原委員 ちょっと教えていただきたいのですが、先ほどあくまでも大阪市の最低賃金ではなくて、大阪府の最低賃金を決めていかなければいけない、その思いを持ってやっているということがありました。それから、生活保護に関しても、級地も1級地-1から3級地-1まであると。それから、近隣の奈良、和歌山がある。もう1つ、要素としてパートの労働者が多い。こうした事情をいろいろ考えますと、例えば大阪府全体を考えるというけれども、やはりパート労働者は苦しい。その方々に対する影響率、未満率も考えなければいけない。そして、ある程度実効性のある最低賃金を決めていかなければいけない。しかし、片やそこだけでない別の地域、ほかの地域も考慮していかなければいけない。そうすると、結局その水準自体が論議によってはかなり高い所とかなり低めの所とをまとめていく苦労というか、何が最終的な水準論議、引上げ比較論議のときに決め手になるかを、少し教えていただければと思うのですが。

○玉井大阪地方最低賃金審議会長 やはり、どうしても最低賃金となると、イメージするのが大阪市で働いていてどうかとかいうのが出てくるのですよ。会長としては、一番そこが悩むところで、確かに働いている方の数や今指摘のあったパートの数からしたら非常に多いと。しかし、大阪というのは、大阪市はどちらかというと北側にありまして、南とかなり違うのですよ。これがなかなか認識できず、ずっと大阪市辺りで生活してきた方からすれば、南の特徴は分かりにくいです。南側は、わりと地域の労働市場が形成されており、もし地元に仕事があれば、わざわざ大阪市まで出掛けないといったところはありますよね。ですから、私は南側に住んでおりますので、そういうことはよく分かります。
 それから、今指摘のあった生活保護も、3級地-1までいくと。それから、和歌山、奈良に近接していますから、そちらへ仕事に出かけると。その全体を考えないといけないわけですよ。ですから、いつも労使の方には私からそのことを申すのですが、なかなかそこは難しいところです。しかし、できるだけ私たちはそこを理解していただくように努めております。

○仁田会長 ほかにはありますか。

○木住野委員 先ほどの御指摘の中で、製造業からサービス業へ産業構造がシフトしていく中で、この最低賃金の役割が変化してきているのではないかという御指摘がありました。それは非常に同感するのですが、その際に最低賃金の在り方として、あるいは決定の在り方として、どういうことが重要になってくるかについて、抽象的な言い方かもしれませんが、御意見があればお聞かせいただきたいと思います。

○玉井大阪地方最低賃金審議会長 先ほど、影響率のことに入りかけましたが、大阪の場合でもパート労働者であれば、1円上がるだけで影響率は大きいのですよ。ですから、やはり公益の立場としては、影響率は非常に大きいことを絶えず意識し、かつ慎重に見た上で、ゴールへ持っていこうと考えております。今日、私の話の中でも申しましたが、既に時間給1本になってから10年以上経過しましたし、パート労働者の現在の賃金水準がどうかというのは、大体実態調査から上がってきますし、そこをやはりかなり掘り下げる形で、今のところはいいのではないかと思うのですが。

○仁田会長 では、1点私からお伺いしたいと思います。先ほど、目安について近年根拠がはっきりしなくなっているのではないかというお話がありました。それはどれぐらいのスパンで考えておられるのかが1点です。1つは、第1次安倍政権の辺りから、かなり最低賃金の位置付けや実際の金額の決め方などに大きな変化が出てきました。もう1つは、法改正のことですね。生活保護水準との乖離が具体的に我々が考慮すべき内容に入ってきたというようなことがあると思うのです。今、地方最低賃金審議会で審議をしていて根拠が余りはっきりしなくなってきているなと感じられるのはどの辺りなのかを、もしお伺いできればと思います。

○玉井大阪地方最低賃金審議会長 これまでを振り返ってみますと、長い間、第4表がかなりベースになる形で、根拠付けがなされていたと思います。それが、仁田会長が言われたように、生活保護水準との乖離が問題になったと。そこで、その方向にシフトしましたね。乖離をどう埋めるかということになりました。それで、ほぼその乖離が解消されるところへきました。そのあと、何年かというとやはりここ数年でしょうか。別に第4表でもない、それから生活保護水準との乖離でもない形で目安が出始めてきました。それは、我々にもなぜそうなったかが、中央最低賃金審議会から頂いた文書を見ても分からないわけですよ。これは、今日最初に申しましたが、地方としても結局それによってかなり困ってしまい、三者とも困ってしまいます。最後は、公益がまとめる方向へ持っていかなければいけないので、公益としてもやはり根拠付けをしなければいけません。それが、何度繰り返し読んでも分かりにくいということで、依然としてその部分は残したままで推移しております。

○仁田会長 ほかには何か質問はありますか。

○高橋委員 本日はありがとうございました。1点質問をさせていただきたいと思います。影響率について、少し古い平成25年度の数字ではありますが、大阪府は12.5%ということで、神奈川、北海道に継ぐ全国3番目の高さになっており、全国47都道府県の中でも突出して高い状況です。これに対してどのように受け止めていらっしゃるのでしょうか。先ほど、冒頭のプレゼンテーションのときの現在の水準についてどう考えるかとの質問と絡むのですが、これだけ高い影響率の状況で、私個人的には、これ以上大幅に、極端に上げていくのは難しいのではないかと考えられます。それについての御見解をお伺いできればと思います。

○玉井大阪地方最低賃金審議会長 おっしゃるように、影響率は12%台という非常に大きな数字です。今、水準について言われましたが、これは少し注意すべきところがあるのではないかと。1つは、例えば実態調査から上がってきた水準は、客観的データですよね。それから、どうしても最低賃金になると、望ましい水準という面も混じってくるところがあります。ですから、私としてはできるだけそこの議論を混乱しないように審議は進めているつもりです。
 それはともかく、水準は正にその影響率に大きく関わってきますが、これはパートだけに限定すると更に影響率が大きくなるのですよ。ですから、私たちは両面を見ながら最後の方向へ進めていくと。影響率がどこまで高いか低いかというと、これはなかなか難しい問題ですので、全体の判断材料の1つとしては重視します。しかし、今は第1・十分位、第1・二十分位はどうかということも重視しますし、その意味では幾つかの要素が混ざり合わされる形で、それこそ三原則に行き着くわけですが、そういう形になります。

○藤村委員 今の影響率に関連してお尋ねいたします。今年の影響率は、そのままいくと来年の未満率になってきますよね。そのように1年遅れで見ていくと、案外、未満率はそんなに上がっていない。となると、やればできるのではないかというような考え方もあり得ると思うのですが、そういう議論はいかがでしょうか。

○玉井大阪地方最低賃金審議会長 そうですね。確かに未満率を見ると影響率はかなり大きかったですが、そうでもないと。これは、やはり労使双方がこうも入って決めたことだから、やはり最低賃金は守らなければいけないという認識があると思います。他方で大阪の場合は、随分いろいろ広報活動を精力的にやってくださっています。例えば、ポスターなども工夫されて、キャラクターなどを使う形で、最低賃金を少しでもなじみやすくするような工夫はされております。
 それから、やはりネットが普及して、かなりの方が最低賃金は今幾らなのかと見ているのですよ。それは随分大きいと思います。ですから、なかなか未満率がこういう理由でこの水準だというのは言い切れませんが、これも諸般の要素が混じり合う形でそういう結果が出ているのかなと思います。

○中窪委員 我々は目安をやっていて、いつも一方で、せっかくの目安ですから十分に参酌していただきたいということを書き、他方で、しかし地方が自主性を発揮していただきたいと書いてあり、非常に矛盾しているなと思いながら出しております。今お聞きしますと、大阪はかなり独自のデータなどを十分に考慮されているような印象を受けたのです。その中で、目安というのは自分たちがこういう審議をする上で一応こういうものもあるのだなというので参酌するけれども、あくまでも独自にやるのだという位置付けなのか、それともむしろ目安があって、その中でしかし、プラス1円とかプラス2円、あるいはマイナスもあるかもしれませんが、そういうものを何か自主性として考えるものと捉えられているのか、その辺りはいかがでしょうか。

○玉井大阪地方最低賃金審議会長 特にここ数年は難しいですね。以前は、こういう根拠でこうなりましたという形で分かりやすかったのです。ですから、我々としても受け止めやすかったですし、労使の方もそうであったと。しかし一方で、今は三者とも非常に分からないと言っているのですね。他方、大阪でのやり方は、今日お話したような形でやってきておりますから、ここは基本的にそれほど動いておりません。ですから、私たちは当然、中央最低賃金審議会でそういうランク付けの下で目安ができたわけですから、最大限重視したいという姿勢に変わりはありませんが他方で、今言ったように、大阪は審議の仕方がわりときちんとできていますので、十分参酌しつつ独自性を少しでも発揮しようとしていると言っていいのではないでしょうか。

○小林委員 玉井会長にお伺いしたいのは、現行のランク区分についての考え方です。先ほど玉井会長は、大阪はAランクでよい、東京は特AなりSランクと。東京と大阪は同じAランクでも違いがあるでしょうし、大阪は北にいけば兵庫、京都のA、Bランクと隣接していますし、 先ほどお話があるように和歌山、奈良のCランクとも隣接している中でのAランクの大阪の位置なども含めて、もう少し詳しく、現行のランク区分についての考え方をお聞かせいただければ有り難いのですが。

○玉井大阪地方最低賃金審議会長 1978年以来、ずっと大阪はAランクできておりますね。ただ、この間随分経済状況の影響を受け、以前とは違ったところへきております。しかし、働いている方の数や集中度を見ますと、大阪の中でもどうしても大阪市に重きを置くものとなってしまいます。これは、これとして押さえる必要があります。
 他方、今指摘のあったように、大阪府を取り囲んでいる府県がBとCに分かれると。それで、BだとまだまだCと比べたらその差は小さいので、それよりはやはりCランクでの行き来と申しますか、これは特に大阪に限らず、ほかの都道府県もそういった類の問題状況は存在するのではないでしょうか。ですから、一応ランクは1つの所へ入らなければいけないので、私は今日Aランクでよいと申しましたが、他方で近隣との関係もよく考えておく必要はあるのではないかなということで、今日はその点に触れさせていただいた次第です。

○仁田会長 それでは、そろそろ予定の時間が参りましたので、よろしいでしょうか。今日は、玉井先生、ありがとうございました。今後の審議にいかしていきたいと思います。それでは、御退室いただいて結構です。

(玉井大阪地方最低賃金審議会長退室)

○仁田会長 それでは、残された時間で、「最低賃金の在り方」「3要素の在り方」「目安審議の在り方」についての御議論を頂きたいと思います。事務局で資料を用意していただいておりますので、まずその説明をしていただきたいと思います。

○新垣室長補佐 資料を説明します。資料2「諸外国における最低賃金決定プロセス等について」を用意しております。こちらは以前、我が国の目安制度が独特なものであるので、諸外国の制度を振り返ってみて議論してはどうかという御発言がありましたので、用意したものです。詳細な説明は割愛しますが、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、オーストラリア、それから、東南アジアからはマレーシア、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム、東アジアからは韓国と、用意したものです。このうちアメリカを除く国が審議会方式となっておりまして、その審議会方式の中でも、イギリスでは労使同数の定めがない公労使構成、フランスは政労使構成に専門家委員会が関与する形で、ドイツは労使同数の労使構成となっていて、アメリカは議会で決まっている形で、オーストラリアは労使構成ではなく、専門家委員会というか、 有識者構成の委員会の中で、労使と交渉しながらやっています。東南アジアはほぼ政労使構成になっております。韓国は我が国と同じ公労使構成になっております。この中で、全国一律でなく、地域別最低賃金で決定をしている国が主にアジアになりまして、マレーシア、インドネシア、フィリピン、それから、タイも一応地域別最低賃金という制度にはなっているのですが、今現在は、実質的には全国一律の最低賃金で、それから、ベトナムも地域別最低賃金が決定されています。決定方法、決定基準については、欧米諸国は概ね、我が国が参照しているのと似たような資料を使っているのかと存じ上げていますが、東南アジアでは、特に注目されるのが、インドネシアとベトナムでは生計費について、最低生計費水準を設定して、マーケット・バスケット方式で調査をしてやっていると聞いております。簡単ですが、資料2については以上でございます。
 資料3ですが、「近年の目安額等の状況について」という、1枚のA3の紙を用意しています。こちらは、これまで「時々の事情」と言っているのですが、それについて近年、3要素以外にどういうものを考慮してきたのかをおさらいしてみて、何か見えてくるものがあるのではないかという御発言がありましたので、御用意したものです。答申文における特記事項、ランク、第4表の賃金上昇率、目安と引上げ結果、影響率、未満率、最高額、最低額、全国加重平均額を一覧にしたものです。以上です。

○仁田会長 どうもありがとうございました。それでは、審議に入りたいと思います。最低賃金の在り方、それから、3要素の在り方、目安審議の在り方、全てが含まれていることになりますけれども。前回、ヒアリングを行った後、若干の資料の説明を行いましたが、議論の時間が十分に取れなかったので、前回の資料と今回の資料についての御質問等がありましたら、併せてお聞かせいただければと思います。いかがですか。

○須田委員 前回の資料4で、お互いが3回議論した意見を横に展開していただいていまして、その中で労働者側の見解というか思いが入っていない項目が何点かあって、いろいろ言ってはきていると思いますが、大きく3点を補強させていただきたいと思います。
 1つは、今日もいろいろ議論がありましたが、ランク区分の在り方について、何も発言していないと思いますけれども、どうあるべきかは別として、どう考えるのかは1つ論点として整備しておいたほうがいいのではないかと思います。それは、20指標をどう考えるのかというような指標の問題かもしれませんし、そもそもランクとは何のためにあるのだという根っこの議論かもしれませんし、あるいは、最低賃金は何をもって決めていくのかという根拠の問題になるかもしれませんし、いずれにしろ、ランク区分はどう考えていくのかを論点として整理いただければと思います。
 それから、関連するかもしれませんが。これまでに法改正の下で生活保護水準との乖離をやってきて、一応2014年の夏で解消したという形にはなっていますが、比較方法なり生活保護水準をクリアすればそれでいいのかというような問題も含めて、生活保護水準との整合性をどう考えるか。これは結局、静岡の居城会長から御指摘がありましたけれども、地方から、根拠が分かりづらいと言われている1つの大きな背景が、良い悪いは別として、これまで第4表だとかいろいろな参考資料をベースにしていたものと違うように見える数字が出ていることに対して、地方にきちんとメッセージを発してきたのかどうか、という意味での反省点にもつながるのかもしれませんけれども。法改正によって、メンテナンスの仕方が、上げ幅でメンテナンスみたいなことから、最低賃金水準はどうあるべきかが問われているのだと、最低賃金に携わっている中央、地方ともに、もう1回考える必要があるのではないかという意味で、答えが出るかどうか分からないのですが、そういうことについての議論をすることが必要ではないかと思います。
 それから、使用者側の皆さんから発効日の話がありました。基本的に、いわゆる4月1日で正社員の賃金が変わっていることからすると、最低賃金近傍で働いている人たちの処遇改善は、なるべく早く決定することが重要だろうという認識を持っています。ただ、その4月1日が前倒しなのか後ろ倒しなのかについては、たぶん我々と使用者側の皆さんとでは意見が違うだろうと思いますので、現状より遅れさせることについては、我々は異論がある。ただ、どういう運びにしていくのがいいのか、それを実現するために、どういう審議の仕方、目安の示し方がいいのかについては大いに議論するべきではないかと思います。以上、今まで3点について労働者側の主張がなかったと思いますので、そこを補強させていただければ有難いと思います。

○仁田会長 ほかに、御意見、御質問等はございますか。資料3ですが、確かに特記事項というのを並べてみると、取りあえず何が聞かれるかというと、ここ2年ほど、書いてあることが少ないと。でも、中略だから、その前、平成22、23、24年度について、これは雇用戦略対話というのが頭にきている、そういう書きぶりというか、時々の事情がどう書かれているかですが、それに比べると、はっきりしていることは、平成25、26年度については、もちろんその書きぶりは変わったわけで、それがかなり簡略化されたと言えるのかどうかですけれども、非常にあっさりとしている感じはします。

○藤村委員 この資料3を見ていますと、特に一番右側の最低額と最高額、全国加重平均額、やはりこの数字が気になると思います。平成17年度は85.2が最低と最高の格差ですが、それが平成26年度になると76.2となっている。この間、Aランクに割と多く頑張ってもらってというか、全体の平均を引き上げてきて、その結果、こうなっているわけですが、ちょっと開き過ぎてきた感じがします。このまま放置していいのか、あるいはこれをどうするのかは、正に目安の出し方あるいはランクをどう区分するかどうか、そこと関係してくると思いますので、ここは 今回、この全員協議会でも気を付けて議論すべき点かと思います。

○仁田会長 どうもありがとうございました。ほかにはいかがですか。特によろしいですか。今日の段階では、お出しいただいた意見ということで、それを今後の議論の中で組み入れていくことにしたいと思います。
本日の審議は以上として、次回以降のスケジュール案について説明いただきたいと思います。

○松本参事官 資料4でございます。本日、2月の第5回として、静岡と大阪の地方最低賃金審議会の会場からヒアリングを行いました。次回、3月には一橋大学の川口先生からお話を賜りたいと思います。最低賃金の影響について実証研究をされておられる方ですので、差支えなければ、その点について議論に資するのではないかということからお招きしたいと思います。その御説明と質疑が終わった上で、本日も一部含まれますが、項目の「目安審議の在り方」から、一番最後の項目「目安審議の資料について」までの項目3、4、5について、何か補足的な御意見、御議論があればお願いすることとし、次回の予定として御提案申し上げます。
 なお、4月には同じように、立教大学の神吉先生もお招きして、諸外国の最低賃金の決定プロセスとか、また、社会保障との関係について研究をされている先生ですが、これも神吉先生から御説明を賜った上で、残った議論をしてはどうかという御提案です。

○仁田会長 ただ今のスケジュール案について、何か御意見、御質問等はございますか。

○小林委員 先ほど須田委員から、ランク区分をどう考えるかというお話があったのですが、これは項目1から5の中でどれに入るのですか。それとも、独立して作ってしまうのですか。

○松本参事官 整理上、私どもは3番の「目安審議の在り方」の中に組み込めるかと思っています。資料4にいきますと、4から5ページにかけて、都道府県の域内でどうするかという点について、ここに区分しております。目安で何を出すかという点についての御意見として報告をできるのではないかと思います。

○小林委員 分かりました。

○仁田会長 よろしいですか。それでは、次回ですが、一橋大学の川口先生からのヒアリングを行うとともに、目安審議の在り方、地方最低賃金審議会との関係の在り方、あるいは、目安審議の資料についての御検討を頂ければと考えております。
 最後に、事務局から事務連絡をお願いします。

○新垣室長補佐 次回、第6回目安制度の在り方に関する全員協議会は3月12日(木)の10時から開催します。場所につきましては追って連絡します。

○仁田会長 よろしいでしょうか。それでは、これをもって本日の全員協議会を終了します。本日の議事録の署名ですが、田村委員と横山委員にお願いしたいと思います。それではお疲れさまでした。今日はこれで終了します。


(了)
<照会先>

労働基準局労働条件政策課賃金時間室
最低賃金係(内線:5532)

代表: 03-5253-1111

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