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2015年9月25日 第104回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会議事録

職業安定局雇用保険課

○日時

平成27年9月25日(金)15:00~17:00


○場所

厚生労働省職業安定局第1・2会議室


○議題

・雇用保険制度について
・その他

○議事

○岩村部会長 ただいまから、第 104 回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会を開催いたします。皆様、お足元の悪い中、お忙しいところをお集まりいただきまして誠にありがとうございます。本日の委員の出欠状況は、阿部委員、田島委員、橋本委員、青山委員、秋元委員が御欠席です。なお、本日は資料の関係で職業安定局雇用開発企画課の北條課長、職業能力開発局キャリア形成支援室の藤浪室長にそれぞれ御出席いただいております。

 それでは、早速、議事に入りたいと思います。お手元の議事次第にありますように本日の議題は、「雇用保険制度について」です。事務局で資料を用意していただいております。まず、資料 1 と資料 3 について事務局からの説明の後、質疑応答に入りますので、よろしくお願いいたします。

○長良雇用保険課調査官 お手元の資料は 4 点あります。資料 1 は「移転費・広域求職活動費について」、資料 2 は「労働者のキャリア形成支援及びキャリアコンサルティング施策の現状について」、資料 3 は「第 103 回雇用保険部会で委員から頂いた御指摘に関する資料」、資料 4 は「高年齢者雇用の現状について」です。前回、就職促進給付の御議論があったので、その続きということで、資料 1 の移転費・広域求職活動費と資料 3 の前回の委員からの御指摘に関する宿題を併せて説明いたします。

 資料 1 です。移転費・広域求職活動費の概要を整理しております。移転費は、公共職業安定所の紹介した職業に就くなどのため、住居所を変更する必要がある場合に本人、家族の移転に要する費用が支給されます。要件は通勤時間が往復 4 時間以上である場合などです。

 広域求職活動費は、公共職業安定所の紹介により、広範囲の地域にわたる求職活動をする場合の交通費、宿泊料が支給されるものです。棒線にありますように鉄道で往復 300 キロメートルという距離の要件があります。支給実績は、移転費が 396 名、広域求職活動費が 73 名、いずれも平成 26 年度の実績です。

 移転費・広域求職活動費は、今申し上げたように支給実績が非常に少ないということもあり、活用促進のための取組などを進めております。下の段です。今年の 1 月に「若者の雇用対策の充実等について」の建議がありました。その中で、 UIJ ターン就職について、広域求職活動費を活用し得ることの周知を図っていくことが適当である旨の建議をいただいております。これを踏まえて、 UIJ ターンの就職について求職者向けのパンフレットの作成、あるいは受給資格者のしおりの中に詳細な説明を追加するという周知を強化しております。

 これまでの主な活用事例として、 2 点、上に例を示しております。日本酒製造を希望されて福岡から静岡に就職されたということですが、通勤圏内に求人はなかったということで、全国の酒造メーカーの職業紹介を行ったという事例。あるいは、通関士を希望して大分から福岡に就職したということで、こちらも希望求人が大分県内になかったが、福岡で求人が提出された。こういう事例について出していたということです。

3 ページです。両給付の支給状況を過去 10 年まとめておりますが、大きな変化はありません。移転費に関しては 300 400 人程度。広域求職活動費についても、一部の年度を除き、おおむね年数十人程度で推移しております。

4 ページです。他県からの入職者数です。これは、雇用保険受給者に限らない国の統計で、雇用動向調査から拾ったものです。入職者のうち、県内移動の方が大体 8 割強を占めており、他県からの流入がそれ以外ということで 15 20 %弱です。そのうち、同一のブロックからの流入が 7 8 %、他のブロックからの流入が 8 9 %を占めております。転職入職者に関しては右側に掲げておりますが、大体、同様の傾向となっております。

5 ページです。他県への就職者数です。これはハローワークの業務統計で取ったものです。就職全数のうち、自県のハローワークの管外で 3 割強あります。他県への送出し数に関していうと 10 %強です。右側に常用が書いてありますが、それほど大きな割合の変化はなく、おおむね同様の傾向が見られます。 6 ページです。論点を整理しております。受給資格者の広域にわたる求職活動の支援についてどのように考えるか。これまで、受給者の実績が少ない移転費・広域求職活動費の活用の促進についてどのような検討が考えられるか。検討に当たり、現行の要件などについてどのような課題が考えられるかという形で整理しております。

 資料 3 です。「第 103 回雇用保険部会で委員から頂いた御指摘に関する資料」です。 1 ページです。前回の御指摘の中で、再就職手当の受給者の再就職時賃金の状況に関して、すぐに取ることは困難であるという説明をいたしました。今回お出ししている資料は基本手当の受給者全体ですが、その就職の時期別の再就職時賃金の日額の状況を整理したものです。待機期間中、給付制限中、受給中、支給終了後、うち 1 か月以内、 6 か月以内という形で整理して再就職時賃金の平均を整理したものです。

 受給者計で申し上げますと、待機期間で 6,630 円、給付制限で 6,288 円、受給中で 6,547 円、支給終了後は 5,682 円と、だんだん減少してきているということになります。言わば就職時期が早いほど再就職時賃金が高くなる傾向があるということです。特定受給資格者と特定受給資格者以外で区分して整理したものが下の 2 つの欄です。総じて特定受給資格者の方のほうが再就職時賃金が高くなっているということです。なお、就職時期が早いほど再就職時賃金が高くなる傾向については、どちらについても同様な傾向が見られます。

2 ページです。基本手当日額と再就職時賃金日額の平均の状況です。前回、お出しした資料の中で 1 6,000 円で打ち止めにしていたものを 2 万円まで取れますので、 2 万円まで伸ばしたものです。ただ、額の高い所のサンプル数が少ない関係でグラフが若干見にくく、波がある資料になっております。これを御覧になりましてもお分かりのとおり、大体、傾向としてはそれほど大きく変わるものではないと思っております。

3 4 ページは、基本手当日額と再就職時賃金日額に関して、特定と特定以外で分けて整理したものです。先ほどの資料で申し上げたように特定の方の再就職時賃金の平均のほうが若干高い状況にあるということを受けて、基本手当日額のグラフと比べて再就職時賃金日額が若干上のほうに推移しております。逆に 4 ページの特定受給資格者以外の方は、基本手当日額のグラフに若干近いところで再就職時賃金日額の平均が推移しているという傾向が確認できます。

5 ページです。勤続期間別の離職者数の状況です。前回の議論の中で再就職手当の受給者の定着率を紹介いたしましたが、その比較となる資料です。これは雇用動向調査ですので、雇用保険受給者以外も含めた統計です。離職者の中で勤続期間がどれぐらいあるか、 6 か月以上、 1 年以上、 2 年以上、 5 年以上、 10 年以上という形でそれぞれ整理しております。

 括弧書きの所がパーセンテージを示しているもので、勤続期間が 6 か月以上の方に関しては、平成 25 年で 78.8 %、 1 年以上に関していうと 65.6 %という水準です。年度を通して見ても、それほど大きな変更はないと思います。前回の説明の中で、再就職手当受給者の定着率に関しては、勤続 6 か月の方が大体 83 %程度、 1 年の方が 7 割程度という数字でしたので、再就職手当の受給者の方の定着率のほうが若干高い数値を示しております。資料の説明は以上です。

○岩村部会長 ただいま説明のありました資料 1 3 について御質問、御意見がありましたら、お話いただければと思います。

○三島委員 前回の部会において、再就職手当の在り方の議論が行われた際に労使双方から移転費や広域求職活動費についても見直しの議論を行う必要性が提起されたと聞いております。昨年の 5 月に元総務大臣の増田寛也氏が座長を務める日本創成会議が、将来的に日本の半数の自治体が消滅するという報告書が公表した、いわゆる増田ショックが記憶に新しいところです。

 我が国が本格的な人口減少社会を迎える中で、地方創生は今後の国の在り方を考える上で重要な政策課題となっております。また、内閣官房に設置された「まち・ひと・しごと創生本部」の調査によると、東京在住者の 4 割程度が地方移住の意向を持っているというデータも示されております。こうしたことを踏まえると、雇用保険制度の側面からも移転費や広域求職活動費という地方創生に資する給付項目の見直しの議論を行うこと自体は重要であると考えております。

 しかしながら、本日の資料 1 では、単純に 2 つの給付の支給実績と他県からの転職、入職者のデータのみを示した上で、最終ページの論点で「現行の要件等についてどのような課題が考えられるか」と、給付要件の緩和を想定するような取りまとめがされておりますが、この取りまとめは少し拙速ではないかと感じております。平成 26 年度ベースの受給者数は、移転費が 396 人で広域求職活動費が 73 人と、ほとんどと言っていいほど活用されておりませんが、まずは、この 2 つの給付項目の活用が進んでいない理由について分析することが先決ではないでしょうか。

 給付実績が乏しい原因が、ハローワークにおける周知不足なのか、給付要件が厳しいのか、それとも給付額が低過ぎて労働者側から見て支給申請を行うインセンティブに乏しいのか、複数の要因が考えられ、更に言えば、ハローワークでは管内就職や近隣就職ばかりがあっせんされていて、広域の就職あっせんが行われていないというオペレーション上の課題もあるのではないかと思います。こうした原因分析をせずに内容の見直しはできないのではないかと考えますので、原因分析ができる資料の提出をお願いいたします。以上です。

○岩村部会長 ありがとうございます。

○奈尾雇用保険課長 今日の資料 1 1 ページに出ておりますように、支給実績は数百件あるいは数十件にとどまっております。この要因ですが、今の三島委員の御指摘は、そのとおりと思う部分もかなりあるわけですが、幾つかの要因があると思っております。 1 つは、周知についてです。今日の資料の 2 ページの一番下にも出ておりますが、これは、いわゆる若者法の取りまとめの際の建議の抜粋です。「広域求職活動費を活用しうることの周知を図っていくことが適当である」と書いてあります。裏を返すと、これまで必ずしも十分、周知がされていなかったのではないかと私どもも反省すべきと思っております。

 例えば、私どもとして安定所に受給者の方が来られた際に、受給資格者のしおりという数十ページからなる冊子を全員にお渡しして、そこで説明しております。受給資格者のしおりにおいても、広域求職活動費等について必ずしも周知されていなかったということがあり、一般の受給資格者の方については、この存在をほとんど知られていなかったというのは今年の冬までの状況です。したがって、この辺りについては活用が非常に低調であったといえると思います。

 所のオペレーションの話がありましたが、これもそのとおりという部分があり、一般的に安定所長の紹介、安定所の紹介については、でき得る限り住居所の変更を伴わない範囲で職業を紹介するという原則があるものですから、そういう中で、御本人から強くこの求職を希望するということでない限り、基本的には住居所の移転を伴わないという紹介をやっていたわけです。そういうことからすると、当然ながら広域求職活動費等については、それほど活用されないと思われる点があるということです。

 なお、額について補足いたしますと、基本は公務員旅費法準拠で、移転費も広域求職活動費も実費を払うという形になっております。保険制度ですから、なかなか実費以上は難しいと思われる点があります。先ほど 2 3 、要因という話がありましたが、今年度に入ると昨年度よりは若干周知が進んでいて、活用も昨年の同期比に比べて今年の 8 月までの活用実績が 3 倍程度に伸びておりますが、それでも全体のオーダーからすると、まだ余地があるのではないかと私どもは思っており、引き続き活用に力を入れていきたいと思っております。

○岩村部会長 三島委員、よろしいでしょうか。ほかにはいかがでしょうか。

○遠藤委員 ただいま労側から御意見があったことに関連してです。まず、資料 1 1 ページにそれぞれ移転費・広域求職活動費の具体的な支給要件が書かれています。お尋ねですが、この要件は、本制度が発足してから今日まで変更のないものと理解して、よろしいのかということが 1 点です。

2 点目は、移転費・広域求職活動費に関して、一旦は支給されたのだけれども、その後、目的外使用というのでしょうか、事情はさておき給付が取り消されるということが過去にあったのか、なかったのか。あるいは、請求はしたのだけれどもハローワークへの申請段階で、これは適正な給付とはいえないという形で、お支払いができなかった事例が過去にあったのかどうかが 2 点目です。

3 点目は、資料の見方です。 3 ページです。過去の支給状況についてです。上段はほとんど動きがないのに、広域求職活動費では、平成 23 年度、平成 24 年度の部分は例年に比べると支給実績が高くなっているのは、震災の影響と見て良いのかというのが 3 点目です。

○岩村部会長 ありがとうございます。

○奈尾雇用保険課長 まず、 1 点の今日の資料 1 1 ページの移転費・広域求職活動費の要件です。今、にわかに詳細まではお答えできないのですが、基本的な枠組みは変更がないと理解しております。例えば、広域求職活動費の往復 300 キロメートル要件は発足当時からと理解しております。支給決定したけれども、後で取り消した事例等について、移転費・広域求職活動費に特化した返還事例や不正受給案件は、それ自体データとしてはなかなか取りにくいわけです。

 この枠組みとしては、まず、安定所長が広域求職活動の紹介の要件を掛けて、その後で、実際に面接に行っていただいた事業所の証明を取っていただいて、さらにその事業所の所管する安定所の証明も取っていただくという二重の証明手続を取っているということからすると、頻度としては少ないと思っています。ただ、あり得るかどうかというと、それはあり得ると思っています。

 最後ですが、広域求職活動費の平成 23 年、平成 24 年の実績が例年より多いということです。一番多いのは平成 23 年度です。平成 23 年度の支給人員は 166 人いるわけですが、 166 人で一番多いのが青森で 45 人、次は宮城で 43 人、 3 番目は福島で 31 人でしたので、この辺りは震災の影響がかなりあると思われるところです。

○岩村部会長 よろしいでしょうか。

○新谷委員 今、労使双方が意見を出したのですが、支給実績は少な過ぎるのではないかと思います。せっかく制度があるのに移転費で 400 人、 500 人程度ですよね。広域求職活動費が 100 人いっていないということですから、やはり、どこかが詰まっているのではないかと思います。それは周知の問題なのか要件の問題なのか、手続といいますか先ほどの指摘したハローワークにおける証明の問題なのか、これはトータルで見直しをしないと、せっかく制度があるのに活用されていないということだと思いますので、今後の検討に際しては、もう少し分析をしていただいたほうがよろしいのではないかと思います。

 移転費・広域求職活動費、それぞれ説明いただいたように、でき得る限り住居所の変更を伴わない範囲で職業を紹介することが原則であり、求職者の住居所の変更を伴わないと。それはそうだと思います。やはり求職者には生活の基盤があるわけで、できたら住居所の変更を伴わないという原則は分かるのですが、最近、 UIJ ターンを希望される方も多いということもありますし、求職者の要望に寄り添う形で制度の見直しをしたらいいと思います。

 その上で、広域求職活動費ですが、現行の要件である往復 300 キロメートル以上については、ずっと見直しをされていないということなのですが、例えば、東京を起点に考えると水戸は 121 キロメートルなのだそうです。ですから、これは対象にならないのです。東京を起点で東海道新幹線だと三島が 121 キロメートルで、やはり対象外なのです。ですから、要件を今日的に見たときに往復 300 キロメートルの線引きの在り方も見ないといけないのではないかと思います。

 要するに対象外ということになると、せっかくそこの地域を希望されても自費で求職活動をされるということですから、収入の道が途絶えている求職者にとってはかなり経済的な負担が大きいと思います。是非、往復 300 キロメートルの要件については、今日の JR 等の公共交通機関の変遷も踏まえた見直しが必要ではないかと思います。

 それと同時に特急料金の取り扱いもあると思います。 JR では、新幹線を通すと在来線の本数を減らしてしまったりとか、長野新幹線のように、途中で在来線が途切れてしまったりしていて、新幹線に乗らないと移動できないという状況の中で、現行は片道 100 キロメートル以上でないと特急料金が出ないという国家公務員の旅費規程が、そのまま準拠されていると思うのですが、この辺りも今日の交通機関の変化を捉えて、見直しをする必要があるのではないかと思います。

 例で申し上げたように長野であるとか、私どもに問い合わせが来るのは静岡と浜松間です。当該区間は新幹線で行かないと、もう在来線利用だと嫌というほど電車に乗ります。こうした特急料金の扱い、もちろん、それは国家公務員の旅費規程に準拠するというもともとの基準があるのかもしれませんが、安定した収入を得ている国家公務員の方と求職活動をされている失業中の方とは当然違うと思いますので、その辺の見直しも是非、やっていくべきではないかと思います。意見であります。以上です。

○岩村部会長 ありがとうございました。

○奈尾雇用保険課長 特に広域求職活動費の往復 300 キロメートル要件については、先ほど申し上げましたとおり、恐らく制度発足当初から変更はないと思っています。 UIJ ターンの就職の促進、支援という観点からすると、この辺りについて御議論いただく必要があると私どもとしても思っております。先ほど東京・水戸間というお話がありましたが、その辺りについて広域求職活動と見るべきかどうかということは、引き続き御議論いただく必要があると思います。

 一方で、額の算定については、基本の旅費法準拠をはみ出すことは非常に難しいと思っております。例えば、特急料金については原則 100 キロメートル以上で特急料金、 50 キロメートル以上で急行料金だつたと記憶しており、この辺りについて、それと違う扱いはできるのかどうかという辺りと思っております。

○岩村部会長 今は急行がないですからね。やはり、旅費法がずれているのかもしれないという気がします。

○浅見委員 単純な質問だけなのですが、要件に職業安定所の紹介があります。自分で県外の仕事を探してきて、それを職安の紹介扱いにしてもらうというケースは現実的にはかなりあるのですか。

○奈尾雇用保険課長 ここは、本当に運用というか、それぞれの個別ケースの世界だと思っています。御本人の方がこの求人を見てとか、あるいは事業所の方に直接聞いて紹介を予約していくという場合に、安定所の求人は全国どこでも見られるものですから、この求人を紹介してほしいと所の窓口に言って紹介すれば、それは安定所紹介に一応、当たり得るのは当たり得るのです。その辺りについては、安定所紹介という枠に入ると、これは支給するという形になると思います。

 したがって、御質問のようなケースがあり得るかどうかというと理念的には否定はできないと思うのですが、頻度としては取っていないという形です。

○浅見委員 そういうケースも含めて、労側の意見に賛成なのですが、これだけ支給実績が少ないということから本当に移転費・広域求職活動費は意味がある給付なのかという疑念は抱かざるを得ない。件数が少ないので、そういう意味で件数の中身だとか、あるいは就職したときの定着率が本当に高いのかとか、もう少し中身の分析をしていただかないと、この是非というのは単純に判断できないという気がしております。

○岩村部会長 ありがとうございます。ただ、他方でサンプル数が少ないので、出てきた中身にどれだけの意味を読み取れるかという、もう 1 つ別の問題は出てきてしまうという気はいたします。

○小林委員  移転費・広域求職活動費は大変いいものだと思いますし、労働者側委員の御意見そのものだと思っています。感ずるところ、別に公共職業安定所を疑っているわけではないのですが、多分に公共職業安定所の場合は、どうしても地域内の求職、求人をマッチングさせるのを優先的にするのは自然だと思います。それぞれの求職者、いろいろなニーズがあると思います。

 今 UIJ ターンが社会的にも言われているところでもありますので、感ずるところ職業安定所の所長が認めるものは、かなりハードルが高いケースがあるというところも疑う余地がありません。先ほどオペレーションの話がありましたが、これは実費を支給という、あくまでも掛かった経費だけで実際に安定所の所長が認めれば、相手先の違う所の地域の会社で面接を受けたというのが証明できれば支給するという仕組みにきちんとなっているわけですから、安定所長の了解をどんどん発令しなければならない。その地域内だけではなくて地域を越えてブロックを越えて求職活動についての安定所長の認める作業をきちんとやってほしいということですよね。不正受給がないような形の管理はきちんとやっていかなくてはいけないと思うのですが、紹介を増やす形で労働局を通じて周知いただくのも 1 つ大切なことかと思いますので、その辺もよろしくお願いいたします。

○岩村部会長 ありがとうございます。雇用保険課長、お願いします。

○奈尾雇用保険課長 御指摘のとおりでございまして、これはサンプル数が非常に少ないのでなかなか定量的な分析は難しい面があるわけですが、活用が少ない最大の原因は周知をされていないことかなと、私としては見ているところです。窓口でこの求人を紹介していただきたいと言って、所長が、それはどうしても駄目だと言う場面は基本的に考えにくいわけですので、この辺りはいかに各説明会で漏れなく周知して、それを書類にも盛り込んでいくかということに尽きるかなと思っています。もちろん、安定所のほうで何らかの問題があるということであれば、そこは当然、是正しなければいけないわけですが、現在のところは周知が最大の問題だろうと思うわけです。

○岩村部会長 ほかには、いかがでしょうか。資料 1 だけでなく資料 3 も含めて、どうぞ。

○新谷委員 資料 3 ですが、第 103 回部会での意見に対して資料を作っていただきまして、ありがとうございました。 1 ページの一番上のタイトルに「就職時期が早いほど、再就職時賃金が高くなる傾向がある」とあります。これを見てみると、確かに右に行くほど再就職時の賃金が下がっているので、指摘のようなトレンドはあると思います。トレンドは客観的な事実としてはそうなのでしょうけれども、ただ、問題は、これをどう理解するかということではないかと思います。つまり、 1 ページの表の「支給終了後」の所にありますように、支給終了後に再就職をされる方の再就職時賃金というのはガクッと下がっているのです。ですから求職活動してきて、いよいよ給付の日数が切れてしまったタイミングで決断をして、低い労働条件でも再就職をせざるを得ない方が多いのではないか。要するに生活を維持するために、この辺で手を打とうという方が多いという見方も当然できるわけで、データをどう見るかの分析が必要ではないかと思います。確かに、上のタイトルに書かれているように、客観的に見れば求職活動が長引くと再就職時賃金は低くなるという事実はありますけれども、データの分析は不可欠だと思います。

 それと、先ほども説明いただいた 2 ページには、再就職時賃金日額と離職の際の賃金日額との相関関係を出していただいたのですが、再就職時賃金は離職前賃金が高いほど低いという実態があって、その原因には我が国の労働市場や賃金構造の問題が多分にあるとは思いますけれども、ただ、離職前賃金が高い方は、その賃金で生活を支えていたわけであり、半額近い 5 割から 6 割ぐらいのところで、再就職の賃金が決まっているという実態を見たときに、これをどういうふうに見るのか。つまり、先ほどの基本手当受給終了後にガクンと再就職時の賃金が落ちることとの関係で、給付日数のあり方の論議につながっていくわけですが、先ほどの資料 1 のデータも含めて、もう少し分析が必要ではないか。それはなぜかと言うと、離職理由とか年齢別とか所定給付日数別の状況について、もう少し 1 ページの資料、 2 ページの資料を分析していただけないかと思うところです。

 あと、 3 ページと 4 ページに特定受給資格者と特定受給資格者以外のデータを掲載いただいていて、先ほどもご説明いただいた関係で、再就職時賃金が特定受給者資格者以外のほうが低いという説明を頂いたわけです。これも特定受給資格者以外という方が、自発的な離職者を中心とする層だと考えれば、なぜこんなことになるのかがよく分からなくて、特定受給資格者以外の方には、定年退職者の方、高齢者の方が多く含まれているのではないかと推測するところです。定年退職をして再就職を希望されている方というのは、相対的に労働条件にはあまりこだわらずに再就職される方が多いと思いますが、そういう方が多数この特定受給資格者以外に含まれていて、全体としては再就職時賃金を押し下げていると思うわけです。逆に言えば、この特定受給資格者以外に該当する方のうち、例えば中高年の正しくお金が一番かかる 30 代、 40 代の方が、どういう状況で再就職をされているのか。要するに、もう少し詳しくデータを分析した上で見る必要があるのではないかと思います。グロスで括って特定受給資格者と特定受給資格者以外ではこんな傾向だというデータからだけでは、なかなか求職者の姿というのは見えにくいのではないかと思います。今後の論議に際して、もちろん事務局の事務作業量が増加してしまうことも承知の上ですが、ただ、本部会の資料としてはもう少し細分化したデータを頂けないかなと思います。

 それと、この資料に関連して、職場定着率のデータを前回頂いていました。残日数 3 分の 1 以上の方と残日数 3 分の 2 以上の方について、 3 分の 2 以上残した方よりも、 3 分の 1 残して、じっくり求職活動された方のほうが定着率は高いというデータを示していただいていたと思います。ですから、給付日数のあり方を考えたときに、特に特定受給資格者のように倒産解雇で、いきなり失職、離職をする方は準備ができていない方が多いと思いますから、こういった方々の所定給付日数のあり方についても今後の論議の中に入れていくべきだと思います。また、離職時の賃金と再就職時の賃金のギャップを見たとき、生活を支えるといった中に、かつて給付されていた扶養の加算とか扶養の手当という考え方を、もう一度盛り込むことを検討する必要がないのかということを申し上げたいと思います。これについては、各社が賃金制度の見直しをしてきた結果、家族手当とか扶養手当が賃金の本体に組み込まれることが多くなってきています。こういった賃金制度の変化も考えたときに、安心して家族を支えながら求職活動する場合の扶養という考え方を、どう考えるのかということも、今後の論点の中に入れていただければと思います。以上です。

○岩村部会長 ありがとうございます。雇用保険課長、お願いします。

○奈尾雇用保険課長 幾つか御質問、御指摘を頂いたところです。資料 3 1 ページ、 2 ページ辺りにつきましては、全体として例えば特定、特定以外と括ってやっているわけですが、例えば 1 ページについて支給終了後の方の再就職時賃金が、他の方々に比べて相対的に低い原因といった話がありました。このあたりは、就職先の賃金というよりは、そこに就職した理由を分析できるのかという話になろうかと思います。どうしてその会社なのかという分析が果たしてできるのかという問題があるわけですが、 1 ページについてはそういう問題があろうかと思います。

2 ページにつきまして、これも再就職時賃金と離職前賃金を比較すると、一般的に再就職時賃金は低い状況にあるというのは御指摘のとおりかと思います。この辺りにつきまして雇用保険の制度上の要件なのか、あるいは労働市場全体の中で、そういうふうになるのかを考える必要があろうかと思います。日本の賃金制度は年功序列型賃金がまだ残っている部分があるわけで、そういうことからすると、勤続ゼロ年の方というのは一般的に他の勤続年数に比べて賃金が低い傾向にあろうかと思います。そういった中で、こういった 2 ページの姿のようになっているのかなと理解するわけです。

3 ページ、 4 ページの特定、特定以外、これは 1 ページとも関連する御指摘だったかと理解していて、 1 ページで見るともっと明らかに出ていますけれども、特定受給資格者のほうが再就職時賃金が明らかに高いと思います。この辺りの要因は正に新谷委員がおっしゃったとおり、特定以外の方については 60 歳以上の方、いわゆる定年退職者の方の再就職時賃金が低いのではないかというのは御指摘のとおりかと思います。 1 ページについては平成 26 年の受給資格決定の方をサンプルにしていて、平成 26 年度の数字で申しますと、年齢階層別に見て 60 歳以上の方の割合というのは特定受給資格者、これは特定と特定理由を足していますが、特定受給資格者は 13 %になっています。対して特定受給資格者以外は 17.3 %で、これは有意に高いわけです。そうすると定年退職者の割合が高い特定受給資格者以外のほうが、再就職時賃金が低い傾向が出るだろうというのは、御指摘のとおりデータからも検証され得ると思います。

 もう 1 個、あえて付け加えるとすると、他の年齢階層がどうかを見たときに、特定受給資格者あるいは両方について、 29 歳以下、 30 44 歳、 45 59 歳、 60 歳以上と 4 段階に年齢を分けて特定、特定以外を見ます。その場合に特定受給資格者については、 29 歳以下と 60 歳以上が年功序列型賃金の中では比較的再就職時賃金が低い階層だと思いますが、 29 歳以下と 60 歳以上を合わせると 26.4 %です。対して特定以外については、 29 歳以下と 60 歳以上を合わせると 40.8 %と明らかにこの割合が高い。つまり、特定受給資格者は 30 59 歳という相対的には再就職時賃金が高い階層が 7 割以上を占めているのに対して、特定以外は 6 割弱になっている。これは日本の賃金カーブの状況から見ると、そういう要因があるのかなと思われるわけです。

 最後に、扶養の話がございました。これは実は昭和 30 年代から 40 年代にかけて、当時の失業保険法で扶養加算あるいは扶養手当をやっていたかなという記憶があります。これは、昭和 49 年に失業保険法から雇用保険法になるときに廃止したわけですが、廃止の理由としては、離職前賃金の賃金の中に扶養手当が入っているケースが日本では多いので、そうすると重複になるから廃止したというのが理由かなと思います。ここは昭和 50 年当時の雇用保険法制定当時と、現在の状況がどうなっているかで考えていくべきかと思いますが、原則として、現在、多くの日本企業の賃金の中に扶養手当が入っているとすると、そこは賃金日額の算定の中に反映されていると考えるところです。以上です。

○岩村部会長 いかがでしょうか。山本委員、どうぞ。

○山本委員 説明、ありがとうございました。今、資料 3 1 ページ、 2 ページを説明頂いたのですが、なぜ就職したのかという理由はなかなか難しいとは思いますけれども、特に 2 ページの表を見ると離職時賃金の高い層が、結果としては安い金額になっているということが見て取れるのではないかと思っています。その理由として、基本的に賃金日額が高いということは、主たる生計者ということがほとんどだと思いますから、そういった意味では家族を養わなければいけないということで、どうしても早く次の仕事を見つけなければならず、結果として労働条件が低下することを受け入れざるを得ない方が多いのではないか。そういうことからすれば、そうした方々が安心して求職活動が行えるように、雇用保険としてのセーフティネット機能の強化の視点も含めて、検討していくことを考えたほうがいいのではないかと思っています。

 特定受給資格者は倒産や解雇といった中での離職ですから、自己の責任がないところでの失業ということであり、金銭的な準備を十分にしているわけでは決してないと思います。そういった意味でも、家族を養うために早く再就職をしなければという意識が強い。そういう方々が安心して次の職を探せるようなセーフティネット機能の強化を含めた視点で、給付のあり方の検討もしていく必要があるのではないかと思います。

○岩村部会長 ありがとうございます。遠藤委員、どうぞ。

○遠藤委員 そこの考え方は労使の見解が大きく分かれています。家族を養うがために条件が悪くても早く就職する方がいないとは言い切れませんが、そういう方々ばかりで全てを括って議論する立場に私どもはないので、なかなか議論が噛み合わないと思っています。

 例えば、雇用保険上で給付制限があるなしで一定の差を付けたり、あるいは給付日数で言えば、制度上の差は付けているわけですから、現状を変えていかなければいけないという意見は使側からは全く出てこないということです。繰り返しになりますが、現行の枠組みの中で、どこをどう変えていくのかという議論につきましては、私どもは一定程度行ってきたという理解をしていますので、使側としては、この議論については、今後も続けていく意思は持っていないということだけ申し上げておきます。

○岩村部会長 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 もともと今回の論議は、積立金残高が 6 兆円を超えて更に積み上がっていくという構造的な問題が発端になって、使側からは保険料の引下げを最初に求められたというのが論議の取っ掛りだと思います。労側としても、収支のバランスが合っていない。その前提となる収入と支出のあり方をどうするかという論議をするべきだと。その際に、労側としてはまず給付の改善を行うべきで、それは 12 年の改正、 15 年の改正で、遠藤委員がおっしゃったように特定受給資格者と特定受給資格者以外というのは、そのときにできた枠組みであったわけです。当時の背景は御説明するまでもないわけですが、 4,000 億円程度まで減ってしまった積立金残高をどうするかということで、緊急避難というか苦渋の決断でこの枠組みに切り替えていった。そういう背景から今日に至っているわけです。

 雇用保険料は弾力措置を使って、今、法的には保険料率引き下げ可能な最下限に張り付いていますので、この最下限のあり方をどうするかという論議は、当然するべきだと思いますけれども、ただ、労側としては、その前にやるべきこととして給付のあり方をどう見直すかの論議があってその後で初めて、雇用保険料の収入のあり方をどうするかを論議するべきであると考えています。使側は給付のところは見直しをする必要はないのだとおっしゃいますが、私ども労側は全然そういう立場に立っていませんので、これはずっと議論しても平行線になるかもしれませんけれども、私ども労側の考え方は、そういう立ち位置にあるということを改めて申し上げておきたいと思います。以上です。

○岩村部会長 ありがとうございます。資料 1 、資料 3 につきましては大体御意見等は頂いたということで、よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、引き続き資料 2 のほうに移りたいと思います。これも事務局のほうから、まず最初に説明を頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○長良雇用保険課調査官 資料 2 でございます。「労働者のキャリア形成支援及びキャリアコンサルティング施策の現状について」という題の資料です。 1 ページ目を御覧ください。教育訓練給付の支給状況を整理しています。一般教育訓練給付については平成 19 年度以降、今の制度に落ち着いていますが、大体受給者数 12 万~ 13 万人、支給額で数十億円程度で推移しています。専門実践については、先日、御説明申し上げたとおり、まだ施行間もないため受給者数はあまり出ていないという状況です。

2 ページ目です。日本再興戦略改訂 2015 の中で、「セルフ・キャリアドック」の導入促進について記載がございます。「定期的に自身の職務能力を見直し、今後、どのようなキャリアを歩むべきかを確認した上で、身に付けるべき知識・能力・スキルを確認する機会」、これを「セルフ・キャリアドック」と呼ぶようで、定期的なキャリア・コンサルティングという理解かなと考えています。一番下の所に、働き手個人が「セルフ・キャリアドック ( 仮称 ) 」を受けた際の経費の一部について、一般教育訓練給付の対象とすること等個人への支援策について検討し、本年度中に結論を得る。こういう形で整理されています。これを踏まえ、教育訓練給付の議論の前に、キャリア・コンサルティングの施策の現状について、資料を整理した報告を本日はさせていただければと思っています。

3 ページ、これは能力開発基本調査の基本的データですが、いわゆる能力開発の方針を決定する主体は、「企業主体」とする割合が「労働者個人を主体」とするよりも高いという傾向にあるということです。

4 ページ、これも能力開発基本的調査ですが、職業生活設計の考え方です。自分自身の職業生活の設計を、正社員については主体的にそれを考えていきたいとする割合が約 7 割、正社員以外に関しては、それが半数以下に留まっていて、「わからない」という方の割合が約 3 割という状況で、有意な差があるということです。

5 ページ、自己啓発を行った労働者の割合を整理しています。自己啓発を行った労働者の割合は、正社員の方ほうが正社員以外よりも高い。ほとんど経年での変化はないのですが、平成 25 年度以降は若干微減という状況です。

6 ページ、自己啓発の実施方法等で、自己啓発はどういうことをやっているかということですが、回答として多いのは、「ラジオ・テレビ等々の自学、自習」が半数近く、その次に「社内の勉強会、研究会への参加」が回答として多く占めていて、「大学、大学院の講座の受講」や「公共職業能力開発施設の講座の受講」といった回答の割合は低くなっています。自己啓発を行った者のうち費用の補助を受けた労働者、これは下の段のグラフですけれども、正社員については 46.7 %、正社員以外では約 31 %といった状況です。

7 ページ、自己啓発の問題点ですが、正社員・正社員以外ともに約 7 割が問題があると回答しています。その理由としては時間と費用ということになろうかと思いますが、「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」が特に正社員で高い。「費用がかかりすぎる」は両方で多い。「家事・育児が忙しくて自己啓発の余裕がない」は正社員以外のほうに多い。こういう傾向が見られるところです。

8 ページ以降が、キャリア・コンサルティングについてまとめた資料となっています。左側が概要で、「キャリア・コンサルティング」とは個人の適性や経験等に即した職業選択や能力開発を支援する相談のことと称しています。「キャリア・コンサルタント」とは、このキャリア・コンサルティングを担う人材となっていて、現在、「キャリア・コンサルティング技能士」「標準レベルキャリア・コンサルタント」、ジョブ・カード講習修了者等である、いわゆる「登録キャリア・コンサルタント」と呼ばれる方から成っています。この技能士と標準レベルキャリコンの方を有資格者と呼んでいて、現在、それらが平成 26 年度末で 4 8,000 人程度いらっしゃいます。これらの方々が企業、ハローワーク、教育機関等々で御活躍されていらっしゃいます。

9 ページ、キャリア・コンサルタントについて、今、申し上げたことの詳細を若干記した資料です。「キャリア・コンサルティング技能士」については、能開法上の技能検定の職種として実施されているもので全国で約 6,000 人です。「標準レベルキャリア・コンサルタント」については、キャリア・コンサルタントの養成講座で厚生労働省が示したモデルカリキュラムを満たすものの受講を経て、能力評価試験に合格した方ということで、全国で約 4 2,000 人です。それ以外には「登録キャリア・コンサルタント」ということで、ジョブ・カード講習を修了した方ということです。有資格者の活動の場が右側の円グラフです。公的就職支援機関が 22.1 %、企業内が 21.6 %、大学・短大等が 18.2 %、民間の就職支援機関が 16.4 %、この 4 つで 8 割近い割合を占めています。

10 ページ、キャリア・コンサルタントの登録制度です。先日成立した、いわゆる若者法の関連法の中で、このキャリア・コンサルタント制度の法定化がなされ、登録制 (5 年更新 ) となって守秘義務を規定するなどの仕組みが整備されたところです。

11 ページですが、キャリア・コンサルティングの中で、社外で利用できるもののニーズがどのくらいあるかを調べたものです。正社員、正社員以外で分けていますが、「社外で、費用を負担してでも利用したい」は 2 3 %程度で割合は低い。「費用を負担することなく、社外で利用できるのであれば、利用したい」まで含めると、 30 %近い数字を示している状況にあります。

12 ページですが、有料のキャリア・コンサルティングの価格設定を整理しています。これは厚生労働省の委託事業「キャリア・コンサルネット」に登録しているキャリア・コンサルタントの中で、単価を登録している者の情報を抽出したものです。いろいろ形があるのですが、 1 回幾ら、あるいは時間単価で 5,000 円から 1 万円の層、この辺りの価格設定が最も多い状況かと思います。

13 ページ、専門実践教育訓練におけるキャリア・コンサルティングの実績です。専門実践教育訓練については、訓練前のキャリア・コンサルティングが要件となっていて、平成 26 年度、これは平成 27 4 月開講分の訓練前キャリコンも含めてになりますが、 3,838 名が受けていらっしゃる。そのうちほとんどが民間委託先で受けているという状況になります。

14 ページ、専門実践教育訓練における訓練前キャリア・コンサルティングの実施状況を簡単にまとめた資料です。資格要件を満たしたコンサルタントがハローワークを巡回して、予約制で相談を行っているというものです。大体の流れが下の段に整理されています。原則は 1 回ということで、自己理解、仕事理解から始まり、今後の職業生活設計、目標の明確化、受講すべき講座の検討、最後にジョブカードへの記載、交付という流れを辿ります。

15 ページ、専門実践教育訓練における訓練前キャリア・コンサルティングを受けた者へのアンケート調査です。平成 26 10 月開講分については 15 名しかいらっしゃらないので、あまり有意なデータにはならないことから、平成 27 4 月開講分を御覧いただければと思います。「訓練前キャリア・コンサルティングを受けた結果、教育訓練の選択に変更はありましたか」という質問に対して、「変更なし」が 98.8 %ということで、予定した教育訓練を変更せずに受けている状況です。「訓練前キャリア・コンサルティングを受けた時の状況」ですが、求職中 ( 雇用保険の受給あり ) 、求職中 ( 雇用保険の受給なし ) を合わせて 2 割強、在職中 ( 現在も在職 ) 41.2 %、在職中 ( 訓練受講に際して離職 ) 36.2 %となっています。「訓練前キャリア・コンサルティングを受けた結果、どのような影響がありましたか」で、「目的が明確になった」「キャリア形成の方向性を整理できた」「より適した訓練の選択につながった」「意欲が向上した」等々の回答で、大体 8 割程度を占めている状況にあります。

16 ページは現段階の論点で、労働市場において主体的なキャリア形成を支援するため、企業外におけるキャリア・コンサルティングに対する支援についてどのように考えるか、という形でまとめています。以上です。

○岩村部会長 今、御説明いただいた資料 2 について、御意見、あるいは御質問がありましたらお出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。

○新谷委員 今、説明いただいた資料 2 2 ページ目に 6 30 日の閣議決定の「セルフ・キャリアドック(仮称)」というのが出てきているわけです。ここでは「働き手個人が」と書いてあって、セルフ・キャリアドック ( 仮称 ) を受けた際に、経費の一部について、一般教育訓練給付の対象とすることを検討せよ。そして、本年度中に結論を得よという閣議決定の内容が出ております。申し上げたいのは、これの原型案は 1 29 日に開催された産業競争力会議において、事務局ペーパーでいきなりこれが出てきたわけです。

 実はその時の事務局ペーパーでは出てきた内容が 2 つあって、これは個人の取組の支援なのですが、 1 29 日にはもう 1 つ出ていて、それは企業のキャリア・マネジメントをやれということとセットで出ているのです。そのセットで出ているほうの内容はどういうものかというと、企業自らが働き手のキャリアアップを積極的に支援していくことが必要であるという前提に、具体的な施策として教育訓練休暇、その他企業の人材育成の取組を促す方策を検討すると書いてあったのです。ところが、その後の論議の中で、この企業の取組に関する内容が消えてしまい、労働者自らが行うという内容だけが残って、 6 30 日の日本再興戦略改訂 2015 に出てきた変遷があったわけです。

 お聞きしたいのは、 1 29 日の会議資料は確か事務局ペーパーとして出てきたと思いますので、民間議員のペーパーではなかった。要するにどこかで誰かが筆をなめて、鉛筆なめて書いたのだと思いますが、どこかでこんなことをやってくれというのは、多分使側もおっしゃっていないと思うし、労側ももちろん言っていないのですが、御丁寧なことに 6 30 日には、一般教育訓練給付、正しく労使で出している雇用保険料の財源を使って、このセルフ・キャリアドック(仮称)を創設しろということが閣議決定されているわけです。正しく労使の当事者が何も関与していないところで、使側は民間議員にそれぞれの団体の長の方が出ておられるので、発言の機会があるかもしれませんが、少なくとも雇用保険の保険料を半分払っている労働者側は誰も意見を言う機会もなく、こういう内容が決まってしまっているということなのです。

 ですから、現政権が労働政策の枠組みを閣議決定で決めてしまって、労政審で最後は検討・結論を得ろみたいな風潮が続いているので、この場で申し上げても仕方がないのですが、厚生労働省としてはこの間の議論をずっとウォッチされていたはずなのに、労政審にはこの間、報告されていなくて、閣議決定後に初めてこういうのが決まったということが報告されたのです。 1 29 日から企業側の取り組みもセットで議論があったわけのですが、これに対しては厚生労働省としてはどのような見解をお持ちなのか、まず聞かせていただきたいと思います。以上です。

○岩村部会長 では、雇用保険課長、お願いします。

○奈尾雇用保険課長 今日の資料の 2 ページです。 6 30 日閣議決定については、御指摘のとおり冬の段階から産業競争力会議で議論があって、これはその結果出てきたものと考えております。冬から事務局ベースではそれなりに議論があったわけですが、議論していく中で、当然、厚生労働省は厚生労働省としての意見を申し上げるわけですが、その折衝過程、あるいは議論の過程において、固まって出てきたのがこれだというように御理解いただければと思っています。

 今回の日本再興戦略に限らず、最近こういったプロセスが多いわけですが、私どもとしては基本はやはり労政審で公労使三者構成で決定すべきだろうというのは、これは譲れない一線として考えております。したがって、今回も検討しということで辛うじて押さえると。ここは是非担保したい部分だと思っております。やはり ILO の要請がありますので、特に雇用保険制度は労使が拠出者ですから、そこで決定すべきなのは当然でありまして、そこの制度の枠組みなり、政策決定プロセスについては、私どもとしてもよくよく産業競争力会議事務局にはお伝えしているところです。

○新谷委員 これは申し上げるまでもなくて、雇用保険というのは強制適用の保険でして、その保険料を労使が負担しているという仕組みの中で、その使途について、この労政審の議論を経ることなく、政府が一方的にその使い道を決めてしまうということには非常に違和感があります。働き手自らの主体的なキャリアアップを支援すること自体は別に悪くはないのですが、もし本当に政府の政策としてやりたいのであれば、一般財源でやるべきだと私は思います。政府が勝手に労使の保険料に手を突っ込むべきではないと思っているところです。

 それと、中身について、今日もいただいている資料がありますが、資料 2 11 ページにアンケート結果が出ています。キャリア相談の社外でのニーズについて、能開基本調査でやられている内容かと思いますが、出ていました。これを見ますと、正社員、正社員以外の区分がありますが、今回閣議決定された内容は、費用の一部、要するに労働者自らが自費でキャリア相談を受けた場合に対して、一般教育訓練給付としてかかった経費を補填するということですから、社内で扱うというよりも、これは多分、労働者自らがハローワークで申請されて、一般教育訓練給付で還付を受けるという形ですので、このアンケート結果では、「社外で、費用を負担してでも利用したい」というニーズだと思います。これを見てみても、キャリア相談の利用経験ありの方と経験なしの方、それぞれおられますが、経験なしの方が圧倒的に多いわけですが、「社外で、費用を負担してでも利用したい」という方がたった 2.2 %しかいないという結果です。

 こういう現状の中で、政府の政策はニーズがあるからやるということではなくて、新たな政策を打ち込みたいというシーズを打ち込んでいくということになると思うのですが、いずれにしてもこれは余りに立法事実がないのではないか。要するにほとんど誰もそんな政策を希望していない中で、ここまで詳細にわたって一般教育訓練給付でやれということを、政府が閣議決定で決めてしまうことに対して、本当にこれは実現するのかという問題なのです。

 これに似た過程で創設された制度として、 3 年前の閣議決定で決められた社会人の学び直しというのがあって、文科と経産と厚労の各省がそれぞれの思惑で、 3 段落にわたって社会人の学び直しが必要だといって閣法決定文章に記載され、結局は雇用保険の保険料を使って、専門実践教育訓練給付の制度ができたわけです。予算約 890 億円という当初の見込みに対して、途中で準備ができていなかった、泥縄式に後で基準を作って展開したものですから、初年度実績が 47 人で 1,100 万円しか使えなかったという制度です。今後、実績はどのぐらい伸びてくるのか分かりません。それが 890 億円までいけば制度設計どおりとなるのでしょうけれども、こうした例に見られるように、政府の中でどこかで誰かが鉛筆なめた内容が政府で政策決定されて、結局、実現しない、制度としてうまくいかない。だから、政策が完全に上滑りをする危険性、懸念がこの制度にも付きまとっているのではないかと思います。

 「セルフ・キャリアドック(仮称)」という仮称の部分が、確かに大事なことだと思うのです。ただ、労働者個人の自発的な取組だけでは駄目ではないかと私は初めから思っていまして、申し上げたように制度を導入するのであれば、企業側のキャリア・マネジメントをどうするか。再興戦略が指摘している「労働者が身に付けるべき知識・能力・スキルの確認」は個人でやったって、企業から評価されなければ何もならないわけでして、企業でのマネジメントと、こういう労働者個人の自発的な取組というのはセットでやらないと、全然制度としては成功しないのではないかというのは最初から申し上げておきたいと思います。意見としては以上です。

○亀崎委員 ただいま新谷委員のほうからも御指摘がありましたが、政策はニーズやエビデンスに基づいて打つべきものであって、積立金残高が 6 兆円を超えたからといって、いたずらに支出項目を作るべきではないと思っています。労側としてはこの間、繰り返し指摘しておりますが、労使が拠出する雇用保険の保険料を財源とすることの重みというものを十分しっかりと考えた上で、雇用保険のセーフティネットの機能を強化する観点から、必要な給付項目の改善を図るべきだと思っています。

 また、政府として仮に一定の方向に政策誘導するためのシーズを埋め込むような施策を講ずるにしても、受益者である労働者、あるいは事業主にとって魅力的な施策を打つべきですが、労働者自らが自費でキャリア・コンサルティングを受けた際に、一部費用を助成するという措置が本当に魅力的であるかどうなのかというのをお尋ねしたいとも思います。

 そして、資料 2 15 ページに専門実践教育訓練における訓練前キャリア・コンサルティングを受けた者へのアンケート調査が出されています。労働者自らが自費でキャリア・コンサルティングを受けた際の費用助成と専門実践教育訓練の訓練前キャリコンとは性質が異なり、一概に比較することはできないわけですが、アンケート結果の中身を見ると、平成 27 4 月開講分の受講者は 527 名となっていますが、そのうち訓練前キャリコンを受けた結果、「意味は感じなかった」と回答した者が約 2 割も存在するということです。

 加えて、キャリコンを受けた結果、当初希望と異なる教育訓練の選択を変更した者も 527 名中わずか 3 人にすぎません。専門実践教育訓練は自己啓発訓練である特性上、一定程度訓練目的を明確に持っている方が対象であり、キャリコンを受けた結果、選択する訓練を変更する者が少ないということについては一定程度理解するものの、わずか 3 名というのはキャリコンの有効性を図る上では余りにも厳しい数字ではないかと受け止めております。仮に一般教育訓練給付の対象とすることを検討する場合であっても、給付対象とするキャリコンの中身などをきちんと精査することが必要かと考えておりますが、その点について事務局としてはどうお考えなのかお聞かせいただければと思いますので、よろしくお願いします。

○岩村部会長 雇用保険課長、お願いします。

○奈尾雇用保険課長 キャリコンについての評価というのはいろいろ取り方があろうかと思いますが、今日は教育訓練給付という観点で資料を出しているわけですが、やるからには実効性があって、労働者にとっても魅力的なものでやるべきだという御指摘はそのとおりだと思います。今日の資料の 15 ページ、これがアンケート調査としては直近のものですので、一番参考になるかなという意味で付けたわけですが、ここは平成 27 4 月開講分の専門実践教育訓練について、合計 817 人について、例えば 15 ページの一番下の段ですが、「目的が明確になった」が 4 割弱、「キャリア形成の方向性を整理できた」が 3 割強、逆に「意味は感じなかった」が 2 割強といった回答です。これは複数回答です。これは専門実践教育訓練ですので、必ずキャリコンを受けていただくという方に対する調査で、仮に一般教育訓練給付を対象にしますと、これはキャリコンゼンチにするまでの必要性があるかどうかという観点から、議論が必要かと思います。そうすると、キャリコンを受けたい、受けて意味があると思っている方が受けるとすると、この 15 ページよりはキャリコンによる影響は高いのではないかと予想はするわけですが、その辺りは評価ですので、現段階ではなかなか言いにくいかなと思っています。

 ただ、いずれにしても今回の若者法の中で、キャリア・コンサルタントが資格として法律上位置付けられたということからしても、一定の社会的認知、あるいは社会的意義が今回、法律という形であるわけですので、そういう点も踏まえながら何ができるかを考えていくべきかと思っております。

○亀崎委員 今の 15 ページの集計中というのは、最終的にいつごろ出るのですか。

○奈尾雇用保険課長 本日お配りした資料で最終結果が出ましたので、申し訳ございません。

○深澤委員 労側の御意見と同じようなところもあるかもしれないのですが、主体的なキャリア形成を支援するという趣旨について否定するものではなくて、その重要性とか支援の大切さはよく理解しており、一方で企業外のキャリア・コンサルティングであるということについては、効果も含めて慎重に見極めるほうがいいのではないかと考えています。といいますのも、限定的ではありますが、企業内で社員の皆さんのキャリア形成の支援の一端を担ってきたという実感からしますと、コンサルティングをする、御支援をする中での支援をする人の力量といいますか、スキルの差が非常に大きいのではないか。質とかレベル差が本当に大きいものですから、一概にコンサルティングを受ければ良くなるというものではないのかなと考えています。

 まず、質についてです。現状の資格取得なのですが、資格試験の内容が主にコンサルティングとかカウンセリングの手法とか、そういう心理学的な内容であったり、安全衛生や、コンサルティングをするという手法について学ぶものが多くて、実際に本人に対する相談をするときに、そこをスタートとして次に実際にやっていきたい事業内容とか、職務情報とか、あるいは必要なスキルとか、技術トレンドとか、あるいはその事業の人員の過不足とか、そういう具体的なものがポイントとなってくるように感じております。そこは資格試験の話ではなくて、コンサルタントお一人お一人の個人の裁量に委ねられているのが実態なのかと思いますので、そこに費用を助成するときに、どこに出すのが効果的なのかというのが検討されていない中で決定するのは、ちょっと安易なのかなと感じております。

 現在のコンサルをした大半の、特に企業外だと思うのですが、結果としては最終、自己観照を促すということで終了しているのではないかと思っておりまして、それが先ほどのアンケート結果などにも通じているのではないかと思うのです。自己観照自体は大切なのですが、結果コンサルを受けても何も変わりがなかったというのは、そういうことなのかと感じておりまして、効果が測定しにくいという種類のものですので、少し慎重に検討するのがいいのかと思っております。

 次にレベル差についてなのですが、特に先ほど申し上げたような全ての事業とか職業とか、幅広く知るというのは、現実問題、広く深く知るのは不可能でして、学生とか比較的まだスタート地点においては、幅広いコンサルもできるのかもしれないのですが、少し職業経験を積まれた方については、今お持ちのスキルなども踏まえてのコンサルティングをするのが一番効果的かと思いますので、そういう意味でもレベル差がある。ふさわしい所に行けば効果があるでしょうし、一般論で終わるコンサルもあるのかと感じております。具体性の面では、先ほどの御意見にもありましたとおり、本人のスキルなどをつかんでいるとかいうことでは、むしろ企業内の取組のほうがふさわしい場合もあるのかと感じております。長くなって申し訳ないのですが、そういったところで慎重な検討がふさわしいのではないかと考えております。

○岩村部会長 では、雇用保険課長、お願いします。

○奈尾雇用保険課長 今日の資料 9 ページにもありますが、キャリア・コンサルタントは種類が数種類あるわけです。キャリア・コンサルティング技能士、標準レベルキャリア・コンサルタント、登録キャリア・コンサルタントといった形で、仮に教育訓練給付という観点から考えていく場合に、どのレベルかというのは確かに御指摘のとおり重要な問題だと思っております。今回の若者法の中で改正した能開法の中においても、名称独占でキャリア・コンサルタントが位置付けられているわけですが、そこの対象者は基本的に名称独占ですので、専門性が高い方々というように法律上は整理されているはずです。そういった点で今日の資料 9 ページで見ると、どういったレベルの方がふさわしいのかというのは、私どもとしても検討すべきかと思っております。

○藤浪キャリア形成支援室長 補足させていただきたいと思います。今、保険課長から話がありましたが、国家資格化に伴いまして登録制ということなのですが、併せて 5 年ごとの更新制をとることになりましたので、またこの更新についても、更新に当たって研修を義務付けるといったことも今、検討しております。そういった形で、例えば研修についても、企業領域とか、学校領域とか、それぞれの領域ごとにカリキュラムを設けるなどといった、それぞれの活動領域に特化したような更新を検討するといった形で、キャリア・コンサルタントの全体の質の向上を図っていきたいと考えているところです。

○小林委員  キャリア・コンサルティング、それを実施するキャリア・コンサルタントの必要性というのは十分感知しておりますが、今の資料 9 ページを見ても、キャリア・コンサルティングを行う技能士、それから標準レベルの方々がどこに勤めているのかと見ると、実際のところは公的就職支援機関、これはハローワークです。ハローワークと大学・短大、民間教育訓練機関というのは多分、大学・短大以降の専門学校とかそういう所だと思います。

 これを見ていくと、民間で実際に就職支援機関の所が有料でやってくれる所なのですかね。企業内というのは、中小企業にはキャリア・コンサルタントは従業員の規模が小さいとなかなかいません。私の所も以前 1 人、就職支援のときに資格がある方を要していましたが、今現在その事業をやめた途端に、違う所に行っていただいた経緯もあります。大企業の場合、企業内にキャリコンの方がいらっしゃると思うのですが、中小企業はまずいません。そうすると、企業外でのコンサルティングを受ける場所というと、なかなかありません。実際、民間でやっている所はどこでやっているのか分からないというのもありますし、公的な所に行くというのは、転職の機会のときには多分ハローワークに行って、キャリコンの方にいろいろ御指導を受けると思いますが、どこに行っているのか、まずは分からないというのが今の現状です。その中で、有料の支援をするというのは、私はどういうことなのか分からないと 1 点、感じているところでもあります。

 それから今後、養成するのであれば、先ほど深澤委員が言っていましたが、大学や高校などの学校において就職支援を最初にするときにアドバイスするのは当然必要なところであり、現状にもいろいろな大学とか高校でも、キャリコンの方がお手伝いいただいていると思うので、これも養成していかなければならないというのも分かります。とは言っても、民間で独立してというのはまだそこまで、力量もあるのだと思いますが、事業性も含めて、先ほど労働側から発言がありましたが、お金を出して行くのかというと、おそらく行かないのではないでしょうか。

 ですから、例えば無料で受けることができる施設があるとか、それに対して、これは雇用保険で出すのかどうか分からないですが、公的に資金を援助して、相談窓口でいろいろな支援をしていくというのは必要だと思います。なかなか中小企業でそういう方々を要して、従業員として雇い入れて、少ない中の人数でいろいろ指導するというのは難しいと思います。大企業の場合は違って、そういう窓口とか教育が十分できる体制を取らないといけないと思いますが、中小ではちょっと無理な状況もあり、外部で企業外での相談窓口を設けてほしいというのは多分にありますし、そういう機会の提供もあったほうがいい。ただ、それを利用するとなると、労働者からいけば有料でというのはまず難しい。

 無料での相談が原則になるかと思いますし、それを中小企業が負担する場合、なかなか難しい部分もあります。この仕組み作りも含めて、現状のコンサルタントはどういう所へ配置するのかも含めて、まだ今、時期が早いというのを感じているところでもあります。この事業自体は必要なことだとは思いますが、タイミングや体制も含めて、もう少し議論してからの仕事なのかと、感じているところです。

○新谷委員 今、使側の発言があったとおりだと私は思います。多分、厚生労働省以外のどこかの誰か、政府の誰かがこのように書いてしまって、実現可能性などを考えてやったのかなと本当に疑問なのです。能開促進法の改正に伴って、キャリア・コンサルタントの法定化をやっていて、スキルについて見える化をしていく。相談に乗ってもらって、労働者のスキルを引き上げていくためのインフラを整備するというのは良いことだと思うのです。ただ、閣議決定された内容のような、労働者が個人で負担をして、それを一般教育訓練給付として経費の補助をするという仕組みは、どう考えてもこれは実現可能性というか、仮に制度を作ったとしても制度の利用者はほとんどいない可能性があると思います。

 だから、仮に今後、検討するに当たって、閣議決定というのは重いですから、厚生労働省の皆さんは内閣の意思決定に従うわけですから、これを検討せよということであれば、労政審ではどういう結論になるのか分かりませんが、かなり難しい問題になるのではないかと思います。仮にセルフ・キャリアドック(仮称)を制度化するとすれば、これは使側は嫌がると思いますが、もともと 1 29 日に提言されていたように、企業側のマネジメントとセットでないと、制度はうまくいかないと思います。要するに労働者自らがスキルの確認を行ったとしても、それを企業側でどのように評価してくれるのか。企業における評価制度なり人材育成、能力開発制度とセットでないと動かないと思うのです。ですから本当に制度導入するのであれば、産業競争力会議で途中で検討が落ちてしまっている企業の側のマネジメントの部分と、セットで動かさないと、実効ある制度の実現は難しいのではないかと印象として持っています。今日は印象だけ申し上げておきます。以上です。

○奈尾雇用保険課長 幾つか御指摘を頂きました。まず、キャリア・コンサルタントを具体的に労働者の方がどのように活用すればいいのか、あるいは無料が一番望ましいというのは、これはそのとおりだろうと思います。御案内のとおり、無料でできるキャリア・コンサルティングとしては、安定所にいるキャリコンを使うのが一番いいわけですが、安定所というのは基本は求職者しか使えませんので、具体的に求職していない方でどういう訓練がいいのかを悩んでおられる方については、安定所にはなかなか難しいのかなというのはまずあります。民間のキャリコンの方を一般の労働者の方が探す場合は、現在は一部ネット上では検索はできるようにしているところですので、そういった点を活用いただくのかなという気はしております。

 それから、難しい点として、資料 2 ページに付いておりましたように閣議決定がそもそも論から始まっていろいろ御意見があるわけですが、これも閣議決定で本年度中に結論を得るとされているものですので、ここはお叱りを受ける部分かと思いますが、検討はしなければいけないかなということです。その場合に、能力開発全般の制度をどう見るのかと。例えば、 2 ページにありますようなセルフ・キャリアドックの具体的な仕組み方は、私からはお答えできないものですので、今日の議論については担当の部局についてはお伝えしたいと思っております。能力開発全体あるいは安定行政、能開行政全般として考えているべき課題も当然あろうかと思っておりますので、そういう中で教育訓練給付で何ができるかという観点で考えていくべきかと思います。

○小林委員  もう 1 つですが、資料の 12 ページにキャリア・コンサルティングの価格設定があります。これはピンからキリまであるというのが正直感じているところです。時間単位でいくのと、回数単位、 1 回当たりというのがどのぐらいの時間なのか。通常想定すると、行って長くて 1 2 時間ぐらいかとは思うのですが、これはとてもばらつきがあると 1 点感じています。それに対して、公的なお金を投資するにしても、例えば 1 10 万円のものと 1,500 円のものがあります。それの何パーセントといって支給する。今、一般の教育給付というのは、 10 万円以上かかったものについて 20 %、最低でいけば減が 4,000 円以下は出さないと。コンサルティングだけのものについて、 1,500 円の場合、支給されません。 4,000 円以下ですから。 20 %にするのであれば、それでも 2,000 円ですよ。 2 万円以上のコンサルティングに対してという仕組みになってしまうわけでしょう。ですから、それをどう捉えるかも、今後やるのであれば検討しなければなりませんし、料金設定もこれだけコンサルティングの料金が違う中で、今後認定していくのであれば制度としてある程度の標準価格も指導していく必要があるとも感じております。

 それから、ましてや 2 ページの日本再興戦略の提言に出ているのが、一般教育訓練給付の対象とするというのは、一般教育訓練給付というのは何かの講座を受けることに対して給付するため、その前段階にキャリコンを受けるという仕組みを採ってしまうと、多分一般教育給付をみんな受けなくなる形になるので、これを独立した形の経費でいくのであれば、一般教育訓練給付の枠のお金を使ってコンサルティングを受けただけの場合に給付する仕組みを採るのか、その辺りを考えなければいけません。それから、例えば 1 万円以内のものの 20 %としてしまうと、件数が多く、行政コストは高くなります。その行政コストとの見合い等も勘案した上で、この制度を考えなければいけないので、相当難しい仕組みになるのかなと感じているところです。

○奈尾雇用保険課長 実務については、御指摘、御懸念のとおりです。今日の資料にもありますとおり、キャリコンの費用については、確かにかなりのばらつきがあります。これは、今の一般教育訓練給付の対象になっている例えば教科書代についても、かなりばらつきはあるわけで、それが問題として顕在化していないのは、教科書代だけ取り出してそれを計算するというやり方を取っておりませんので、それは一般教育訓練の受講に要する費用を全体の中でかけていくから顕在化していないかなと思っております。それから見ると、今回仮にキャリコンを一般教育訓練給付の対象にする場合であっても、どのような括り方、費用の算定の仕方をするかは、要検討かなと思っており、そこは正に私ども実務の関係がありますので、実務のほうともよくそちらの目配りをしつつ決めていくべき問題かと思っております。

○岩村部会長 先ほど新谷委員がおっしゃいましたように、やはり 3 者構成の労働政策審議会というのは、労働政策の立案に当たっては非常に重要だと私も思っております。特に、今回日本再興戦略の中でこのキャリア・コンサルティングの話が閣議決定されてはおりますが、その具体的な中身等をどうするかも含めて、労働政策審議会で議論をするということですし、もう既に今日、いろいろと貴重な御意見、御指摘等も頂いておりますので、また引き続き御意見、その他を出していただいて、慎重に審議を続けていければと思っております。また、事務局でも今日出た御意見あるいは御指摘を踏まえつつ、なお検討を進めていただければと思います。

 それでは、もう 1 つ残っている資料 4 、高齢者雇用の現状について、事務局から説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

○長良雇用保険課調査官 資料 4 を説明いたします。「高齢者雇用の現状について」という形で資料を整備しております。今後、 65 歳以上の者への対処について、雇用保険部会での論点として、 1 回目に提示させていただきました。その前提として、いろいろなバックデータを本日準備いたしましたので、本日はその資料の御報告という形で説明いたします。

1 ページ目の日本の人口の推移です。この辺りの詳細は省略いたしますが、 2060 年には人口 9,000 万人を割り込み、高齢化率は 40 %に近い水準といった推計もあります。 2 ページ目の人口ピラミッドの変化についても、 65 歳以上人口は全人口の 40 %になるといった形の高齢化についての御指摘がなされております。 3 ページ目は、就業形態別の人口について、 10 年刻みで整理したものがあります。 55 59 歳、 60 64 歳という形で、 5 年刻みで整理したどの階層を見ても、雇用者の数、構成費が増加傾向にあります。一方、自営業者・家族従業者が減少傾向にあるといったトレンドがあります。 4 ページは、就業率の長期時系列となっております。 60 64 歳層については、改正高齢法施行 (2006 4 1 ) 後、就業率が上昇傾向になっております。 65 69 歳層は、 2004 年までは若干低下の傾向を示しておりましたが、近年は上昇傾向にあります。

5 ページ目は、就業率の国際比較です。日本の高齢者の就業率は、特に欧米諸国と比較して高水準となっております。 6 ページ目は、高年齢者の転職入職者数の推移ですが、平成 12 年を 1 としたときの値をプロットしたもので、オレンジが 65 歳以上、緑が 60 64 歳となっております。大体 15 年間時系列を取っておりますが、 15 年間で転職入職者数は 65 歳に関して言うと 5 倍以上、 60 64 歳に関しては 3.5 倍程度といった状況にあります。 7 ページは、ハローワークにおける高年齢者の就職状況です。新規求職者数と就職件数を御覧いただければと思います。 55 歳、 60 歳の各層に関していいますと、平成 18 年度から整理いたしますと、平成 21 年当たりをピークに若干横ばい、ないしは減少といった傾向があります。一方 65 歳以上に関していいますと、平成 18 年度と比較して、新規求職者数では約倍程度、就職件数にしますと 2.5 倍以上といった形で上昇傾向が見られます。

8 ページは、ハローワークにおける高年齢者の就職状況の推移です。これは、平成 17 年度を 1 とした値をプロットしたもので、緑が 65 歳以上、青が 60 64 歳です。 60 64 歳の層は、平成 24 年以降若干減少傾向にありますが、 65 歳以上に関していいますと、特にこの 2 3 年急激な上昇の傾向があります。 9 ページは、有業者数と就業希望者数です。これは、「就業構造基本調査」で、高齢者と女性において、いわゆる就業の希望が多いと。 65 歳以上の就業の希望者は 207 万人といったデータがあります。

10 ページは、内閣府の意識調査で、 35 歳~ 64 歳までの男女を対象としたやり方で、何歳ぐらいまで働きたいかということです。 65 歳を超えて働きたいと回答した方が、約 5 割程度を占めております。 11 ページは、高年齢者の就業理由です。 60 64 歳層、それから 65 69 歳層に分けて男女別に示しておりますが、 60 64 歳層では「生活の糧を得るため」が最も多いですが、 65 69 歳層では「健康にいいから」、あるいは「いきがい、社会参加のため」といった割合が増加しており、「生活の糧を得るため」と大体拮抗している状況です。

12 ページは、同じく高年齢者の就業理由です。 65 歳以上 70 歳未満で仕事をしている高年齢者の就業理由として、「経済上の理由」を第 1 に上げる方の割合が大体 5 割程度です。内訳が上から 2 つ目の帯の所にありますが、「経済上の理由と回答した者の生計状態」を聞いたところ、収入が少ない、あるいは親・配偶者等の介護の経費などの事情があり、生活が楽ではない、あるいは大変苦しいと回答している方の割合が大体 2 割程度になっている状況です。 13 ページは、高年齢者の就業継続意向を 60 64 歳層に聞いたところ、「是非働きたい」、あるいは「働くことが決まっている」を合わせて、大体 30 %程度です。 65 69 歳層に 70 歳以降の就業継続の移行を聞いたところ、「なお働かなければならない」あるいは「働きたい」「既に決まっている」を合わせて 50 %近い数字を占めております。

14 ページは、希望者全員が 65 歳まで働ける企業の状況です。企業規模別に整備いたしますと、企業規模が小さいほうがこの企業の割合が高くなっております。同じく 15 ページは、継続雇用者の 65 歳以降の勤務の可能性を聞いたところ、これは雇用者数の規模別で少し細分化されておりますが、 1,000 人以上規模になると継続雇用者が 65 歳以降も勤務できる所が 54.9 %ですが、規模が小さくなるに連れてこの割合が高くなってきているような現状です。

16 ページは、 70 歳以上まで働ける企業です。これも、企業規模別に整理しておりますが、 301 人以上企業で 11.8 %、 31 300 人までの企業で 19.8 %という状況になっております。 17 ページは、 60 歳以降の希望する就業形態です。真ん中の黄色の所がパートタイムを示しており、 53.9 %の方がパートタイムの就業を希望していらっしゃいます。

18 ページは、有業者の就業形態です。これは、「就業構造基本調査」で、実際のデータとしてまとめているものですが、 60 64 歳、あるいは 65 歳以上の層を見ますと、自営業とパートの割合が相対的に高くなり、正規従業員は年齢が増えるごとにだんだん減少傾向にあるという状況です。 19 ページは、 1 か月当たりの労働日数 (65 歳以上の雇用者 ) ですが、一番多いのが 11 20 日以内、週換算すると大体 3 4 日程度で、半数近くを占めております。なお、 21 日以上、実質フルタイムの方も 3 割程度いらっしゃいます。

20 ページは、高年齢者の生活の主な収入源を聞いた調査です。 55 59 歳層、あるいは 60 64 歳層は、当然本人の賃金収入の割合が高いのですが、 60 64 歳層で一部年金収入と回答される方が増えてきており、 65 69 歳層では完全に逆転をして、 9 割以上の方が年金収入と答えている状況です。 21 ページは、年齢別の離職の期間をまとめております。 15 日未満、つまり間を置かずに再就職等をしたケースとなりますが、 60 64 歳層がこの 15 日未満の離職期間の割合が非常に高くなっております。一方で、 65 69 歳層を見ますと、間を置かない方が若干他の年齢層より少なくなっており、 6 か月、 1 年等、多少時間がかかっている方の割合が増えている状況です。

22 ページは、「生涯現役社会の実現に向けた雇用・就業環境の整備に関する検討会」の報告書の概要を整理しております。これは、雇用開発部で本年 6 月に清家先生を座長とした検討会を開催しておりましたが、その報告書をまとめたもので、その概要です。求められる施策の方向性としては、企業における高齢者の雇用の促進、職業生活設計と能力開発の支援、中高年齢者の再就職の支援といったものに加え、地域における多様な雇用・就業機会の確保、あるいはシルバー人材センターの機能強化の 5 点にわたって方向性を整理しております。

 ポイントとなってきますのは、上にも書いておりますように、人口減少社会の中で社会の活力を維持し、うんぬんと。 65 歳以降においても、働く意欲のある高年齢者が、年齢にかかわりなく生涯現役で活躍し続けられるような雇用・就業環境を整えていくことが必要不可欠であるという問題意識の中で整理をしたものです。資料の説明は以上です。

○岩村部会長 今日は、雇用保険制度について議論をするに当たっての前提となります高齢者雇用の現状についての報告ということですので、制度に関する論点は次回の部会で御議論を頂きたいと考えております。今日は、残り時間が余りないのですが、もしこの資料について御質問などがありましたらお出しいただきたいと思います。いかがでしょうか。

○遠藤委員 ただ今、部会長から整理をしていただいたので、それを理解した上でお尋ねをさせていただきたいと思います。そもそも、今後 65 歳以上の方々をどう取り扱っていくのかということを議論するということなのですが、今の現状を見てこれだけ数が増えてきている状況の中で、他の年代層に比べて取り立てて雇用の促進を図っていくことが、クエスチョンマークが付いているのをまず申し上げたいと思います。そういうことを申し上げた上で、 1 点お尋ねさせてください。昭和 59 年に、これまで年齢による差をつけていなかった枠組みから、 65 歳以上の方々について適用除外にするという改正が行われたと聞いておりますが、当時どのような議論があって、どのような状況があって、そのような改正が行われたのか、理由、あるいは背景が分かれば教えてください。更には、改正前の状況下において、 65 歳以上の方々が被保険者全体の中でどのぐらいの割合を占めていたのかというデータがもしお手元にあれば教えてください。

○奈尾雇用保険課長 今日、資料 4 として高齢者雇用について御報告しているわけですが、まず高齢者についての適用の在り方については、前回の部会報告においても中長期的な検討事項として整理されております。 65 歳の方については、現在法律上適用除外となっているわけで、一定の集団についてはっきりと除外としていることについては、雇用保険制度は原則として適用原則ですので、これは広く被保険者を取って保険集団を広く確保した上で一定の保険リスクについて給付するという原則があるものですから、どうしてもなるべく広く被保険者を取るという原則があります。そういう中で、適用除外になっている方があるとすると、そこはやはり検証はしていくべきだろうと、一般論として言えるかと思います。

 現在、昭和 59 年に 65 歳以上の方について適用除外という形で整理したわけですが、当時の整理としては何点かあり、まず 1 つが 65 歳以上の方は労働生活から引退する方がいることは一般的です。 2 つ目として、仮に就業を希望する場合でも、短時間就労や任意就業等、種々の形態の就業を希望するものが半分以上であります。 3 つ目として、 65 歳以後新たにフルタイムの勤務に就き、その後離職して再びフルタイムの雇用に就くための求職活動を行う場合は極めて少ないといった 3 点ほどの理由があり、適用除外していると理解しております。ただ、そういった状況が現在果たして妥当しているのかどうかは、今後議論をしていくべきかと思っております。

 それから、被保険者数ですが、昭和 59 年改正の前年度、昭和 58 年度の例を取りますと、昭和 58 年度の 65 歳以上被保険者数は大体 46 万人です。直近の平成 26 年度を取りますと、 143 万人ということで、 3 倍程度に増えているという現状があります。被保険者数自体は 3 倍にも増えておりませんで、増加しているわけですが、そんなに大きな増加はないことからすると、 65 歳以上の方の被保険者割合はかなり高くなっております。この昭和 58 年の約 45 6 万人という数字は、 65 歳以後に新たに雇用された人も被保険者になっておりますので、そういう方を含んだ数字であり、対して平成 26 年度は 65 歳前から継続して雇用されている方だけの数字ですので、働いている方の数というのは被保険者数の伸び以上のものがあるだろうと見なければならないと思っております。

○遠藤委員 御説明にありましたように、改正当時と現状で働き方に対するニーズがどう変わってきているのかということについて、追加資料を出していただくことがあればお願いしたいと思っています。その上で、制度上の考え方についてはいろいろ指摘もさせていただきたい。今日の段階で申し上げたいのは、確かに対象を広げていって、失業のリスクを分散させていくという枠組みを考えたときに、一定の線を引いていくという保険原理にかなう形の選択肢は当然あると思っていますので、生涯現役社会を掲げて、年齢による差を設けてはいけないという理屈だけでは、この議論は進まないと思っています。

 更には、資料4の 23 ページに書いてありますが、 65 歳以上の高年齢者の雇用が一層推進されるよう、雇用保険の適用の在り方等について必要な検討を進めるということです。使用者側委員としては、労働市場全体の中で高齢者の方々の雇用促進を一層図っていくことについては大賛成です。ただし、雇用保険の適用範囲にするかどうか、雇用保険の適用が雇用の促進につながるという理屈が成立するのか、慎重に見てまいりたいと思っています。

○新谷委員 今、使用者側委員の発言がありましたので、私ども労働者側も今日頂いた資料についての感想を申し上げたいと思います。今、遠藤委員から御指摘のあった資料 4 23 ページに閣議決定の内容が書かれていると思います。 (3) の上の 4 番目、高齢者の活躍促進は、誠にそのとおりだと思っております。ただ、その下の➁が、これは何でこんなことになっているのかよく分からないのですが、ハローワークに求職情報を登録すること等強力に促す。そこまではいいのですが、その後、ハローワークから登録情報を民間人材ビジネスに流していくというのが分からないなと。今、政府は民間人材ビジネスにお金をどんどん流す仕組みをお考えになっているようで、民間人材ビジネスは有料職業紹介でしょうから、多分無料ではやらないと思いますが、公的なインフラを使って国の信用によって集めた情報を民間人材ビジネスに流していって、そこでビジネスを成り立たせる、何でこんなものが閣議決定されてしまうのかが全く分からないなと私は思います。

 その上に、今、遠藤委員が御指摘のあった下線部分の所で、「 65 歳以上の高年齢者の雇用が一層促進されるよう」については誠にそのとおりだと思いますが、ただ雇用保険の適用の在り方について、これはどうあるべきなのか。正しく、離職、失職、求職活動の所得保障といった雇用保険のセーフティネットとこの層との関係をどう捉えるのか。もう 1 つは、衣の下に鎧ということをいつも我々は懸念するのですが、年金支給開始年齢の引上げとセットで論議をされる懸念も拭い切れないわけで、そこは完全に切り離してということは当然でありますが、そういった懸念もある中で、やはり雇用保険の適用の在り方について慎重な論議が必要ではないかということを、労側としても申し上げておきたいと思います。

○岩村部会長 よろしいでしょうか。では、今日予定をいたしました議題は以上ですので、今日の議論はここまでといたします。本日の署名委員ですが、使用者代表は遠藤委員、労働者代表は山本委員にそれぞれお願いいたします。

 次回の部会ですが、 10 14 ( ) となっております。次回は、今日資料が出ておりましたが、高齢者関係などについて御議論を頂戴したいと考えております。場所等の詳細ですが、事務局から改めて各委員に連絡を頂くようお願いをいたします。それでは、今日はこれで部会を終了いたします。お忙しい中、どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省職業安定局雇用保険課企画係
(TEL)03-5253-1111(内線:5763)

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