ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 職業安定局が実施する検討会等> 雇用政策研究会> 第6回雇用政策研究会(議事録)(2015年7月24日)




2015年7月24日 第6回雇用政策研究会(議事録)

職業安定局雇用政策課

○日時

平成27年7月24日(金) 14:00 ~16:00


○場所

厚生労働省省議室


○出席者

委員

樋口座長、阿部委員、大石委員、黒田委員、玄田委員、鶴委員、橋本委員、堀委員
生田職業安定局長、広畑職業安定局雇用開発部長、北條職業安定局雇用開発部企画課長、代田職業安定局派遣・有期労働対策部企画課長、田畑労働政策担当参事官、鈴木労働基準局総務課長、宮下職業能力開発局総務課調査官、中井雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課長補佐、竹野雇用均等・児童家庭局保育課長補佐、中井雇用政策課長、黒田雇用政策課長補佐、藤井雇用政策課労働市場分析官

○議題

中間とりまとめ(予定)

○議事

○樋口座長 定刻になりましたので、ただいまから、第 6 回雇用政策研究会を開催いたします。お忙しいところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。今回は、これまで頂きました御意見を踏まえ、作成しました報告書案の中間取りまとめについて御議論いただければと思います。それでは、事務局から説明をお願いいたします。

○黒田雇用政策課長補佐 課長補佐の黒田です。よろしくお願いします。本日、資料 1 から 3 まで御用意しています。資料 1 が報告書案の概要、資料 2 が報告書案そのものです。資料 3 は、報告書案の参考資料となっています。本日は主に資料 2 を中心に、前回 5 20 日の議論を踏まえて修正した所を中心に御説明させていただければと思います。よろしくお願いします。

 お手元の資料 2 を御覧ください。タイトルが、雇用政策研究会報告書案中間取りまとめというものです。 3 ページ目から御説明をさせていただきます。

 3 ページ以降に新しく 1 章を追加しております。「我が国の労働市場の変化」ということで、前回座長から御指摘いただいた所ですが、「失われた 20 年」、いわゆるバブル崩壊以降の 20 年強の経済情勢の変化ですとか、雇用情勢の変化について整理して、 1 章としました。 3 ページ目は、まず経済情勢の変化ということで、バブル崩壊ですとか、アジア通貨危機、 IT バブルとその崩壊、いざなぎ景気を上回る長期の景気回復、その後リーマンショック、東日本大震災などこの間の経済情勢の動きですとか、この 20 年間、我が国が長く悩まされたデフレについて言及しています。

 4 ページ目からは、同様にいわゆる「失われた 20 年」における労働市場の変化についてです。順次、かいつまんで申し上げます。 4 ページ目の冒頭に、就業率について言及しています。見出しにもありますとおり、非労働力化の影響もあって、低下傾向にある男性の就業率、対象的に女性の就業率はどの年齢層でも上昇傾向にあるというのがこの 20 年間の動きです。次の項目は完全失業率についてです。景気後退期には、バブルの前は悪化しても失業率は 3 %台でしたが、それ以降は 5 %を越えるような完全失業率の動きになっているという特徴があります。 4 ページの一番下ですが、正社員以外の割合について、近年上昇傾向にあるということを記述しています。

 5 ページ目の中ほどに、雇用調整の手法の変化ということで、平成 25 年度の経済白書にも言及されていますが、我が国における雇用調整速度は過去と比較して上昇し、経済ショックに左右されやすい労働市場になってきているという指摘もありますので、これを踏まえた機動的な政策対応が求められると記述しています。 5 ページの一番下の「低迷した賃金」という項目については、結論としては、経済のサービス産業化が進んでおり、労働生産性が相対的に低いサービス産業においては、パート労働者の増加等により、賃金が低下し続けているという状況であることと、製造業については、好景気のときは賃金が上がったりするのですが、グローバル化の中で価格競争にさらされているということ、原油価格高騰等の原材料コストの上昇分を価格に転嫁できない、消費者のほうが強いという状況があり、近年、賃金の上昇も抑制されてきているということについて言及しております。

 6 ページ目は、人口減少と人口構造の変化です。この固まりの一番下の「こうした」という所からですが、人口減少と少子高齢化は労働供給制約の一要因であり、今後のトレンドとして、景気回復局面において労働需要が急に増加したときに労働供給のガラスの天井があって、その供給制約にすぐにぶつかりやすくなっている、つまり、雇用の不足感が高まりやすい状況になっているということが想定されるのではないかという御指摘がありましたので、それに言及しました。

 7 ページに、次の章へのつなぎとしてまとめを書いていますが、人口減少という制約の中においても、経済の好循環の動きを拡大させて、安定的な成長を実現していくために、女性・若者・高齢者をはじめとした全員参加の社会の実現とともに、人材資本のポテンシャルを最大発揮すること、様々な分野における人材不足や、地域が抱える課題、これに対して積極的な雇用政策が求められるということを書かせていただき、次章以降につなげております。

 続きまして、第 2 章からは、前回 5 20 日に出した資料の修正点を主に御説明いたします。 9 ページ目ですが、前回、学びの重要性ということで、幼児期の家庭学習についての重要性を申し述べましたところ、どちらかというと両親のワーク・ライフ・バランスの実現を通じて、親子で過ごす時間を確保するということも大事であるという御指摘を頂きましたので、上から 8 行目の所から「ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた支援によって親子で過ごす時間を確保すること」を書き加えました。

 続きまして、 10 ページです。職業人生を通じた能力開発ということで、各年齢層で能力開発をしていくことが必要だというカテゴリーです。 10 ページの一番下、主体的なキャリア形成の支援という項目に、冒頭の所、 8 行分を追記しています。どんな指摘があったかというと、やはり職業人生が延びていく中で、労働者も自覚して、職業能力開発をしていけるという環境を整備していくことが必要だという御指摘、あとは、それだけ職業人生が長くなると、一社にずっと勤め続けていくというモデルだけではなくて、転職等も視野に入れながら、自ら能力を蓄積していくことが必要になる場合があるのではないかというようなことも言及すべきという御指摘もありましたので、 10 ページの一番下から 11 ページの「したがって」という段落まで、 7 行分ぐらいを追記いたしました。

 引き続きまして、 12 ページ目です。前回の研究会で、特に中高年層の能力開発等について特出しするべきだと御指摘がありましたので、 12 ページ目は、中高年層の活躍促進という項目で、かなり大幅な追加をさせていただきました。まず、前段では、ますます高齢化が進んできて、高齢者の労働参画が必要になる中で、生涯現役社会の実現のために、各労働者がキャリアコンサルティングを受けることで、高齢期に入る前の段階から、 40 代、 50 代とか、 40 代中盤ぐらいからかもしれませんが、職業生活設計をキャリコンを使ってやっていただいて、その設計を踏まえて、職業能力開発をしていくということが重要だということを述べています。また、企業がキャリコンを労働者にやるときに、キャリコンを企業内で受ける機会を拡大していくためにも、企業に対する助成等を充実させていくことが望まれるということを書かせていただきました。

 中段から下には、中高年の活躍促進の観点からの記述で、中高年の方が更に活躍の場を求めて、自発的にキャリアチェンジを選択する方が出てくることも考えられるため、こうした中で、キャリアチェンジが円滑に進むような環境整備が必要で、例えば、産雇センターが企業間の出向・移籍について実績を出しておりますけれども、その機能を今後更に拡充していくことが望まれるといったことに言及しています。加えて、この一番下に、中高年層の活躍促進という観点からで言えば、 65 歳以上の高年齢者の雇用が一層推進されるよう、企業側のインセンティブや雇用保険の適用の在り方等について、必要な検討を求められるということも盛り込んでいます。

 13 ページ目です。前回、能力の見える化の推進という項目で、労働者が能力開発をしたいと考えて、その企業にどんな能力が必要なのだろうと労働者だけがいくら考えても、なかなかうまくいかないので、やはり社内検定認定制度のようなものが、今、厚生労働大臣認定がありますが、そういったものをもっと活用していくことが望まれるという御指摘がありましたので、もともと社内検定認定制度については言及しておりましたが、この記述を増やしております。 13 ページ中ほどに、社内検定認定制度の現状や技能検定との受検資格等における連関・互関を図っていくことが望まれるということを追記しております。

 14 ページです。ここはいわゆる正社員以外の方々に対する対策として、いわゆる不本意非正規と呼ばれる方について、若者だけではなくて、それ以降の年齢層についても一定数存在するという御指摘がありましたので、そういった記述を真ん中に書いています。

 15 ページに、私どもの案では、フリーターを自らの意思で選んでいる者が半数以上いるという誤解を招くような表現がありましたが、それを削除させていただいています。

 16 ページ以降は、個々の能力が最大発揮される環境の整備という項目についてです。まず柱立ての順序について、 16 ページは人材の最適配置、 17 ページ目に長時間労働の抑制、 20 ページ目に多様な働き方としております。もともとこの長時間労働の抑制と多様な働き方は逆の順番でしたが、どんな働き方であっても、長時間労働を抑制し、ワーク・ライフ・バランスを実現し、みんなが働きやすいようにするということを全ての働き方において担保した上で、いろいろな多様な働き方を準備するというのが流れであるので、ここの項目を入れ替えるという御指摘がありました。ですので、 17 ページの長事間労働の抑制と、 20 ページ目の多様な働き方はもともと逆でしたけれども、これを入れ替えているというのが大きな変更点です。

 引き続きまして、 22 ページ目です。ハラスメント対策という項目を掲げています。前の項目に安全衛生管理やメンタルヘルス対策等についての項目がありますが、この派生としてハラスメント対策も追記しております。最近セクハラの判例なども出ていて、ハラスメントについては強調してもいいであろうという御指摘がありましたので、セクハラ、マタハラ等、法令に基づいて労働局雇用均等室が是正指導していくべきものと、パワハラについてはまだ法令等ではなくてガイドラインレベルですが、パワハラについても企業がパワハラ対策の取組をするように行政として側面支援をするということが大事である旨を記述しています。以上が、第 2 章の修正点です。

 最後に、 24 ページ以降の第 3 章です。人材不足分野や地域における人材確保の観点でどういったことが必要かという章を設けています。まず、 24 ページ目の第 3 章の一番上のリード文を丸々追加しています。前回、人手不足ということもそうですが、そこの分野の人材がいないという人材不足という問題も非常に重要な論点であるという御指摘を頂きましたので、そういった観点の追記をしました。

 引き続きまして、 26 ページです。ここは、人手不足の分野別の現状分析と対策について記載している節です。前のページから、介護について書いておりますが、上から 2 4 行目の辺りに文章を追加しています。 1 つは、介護事業所に雇用管理責任者の選任等を行うということが求められるということを書いています。中段の「また」の段落も全て追記しています。これも前回、委員の先生方から、介護の場合、特に事業主の理念と、現場で働いている職員の方との理念の齟齬により、現場の職員が辞めてしまう、会社の方針に合わないということで辞めていく人もいるということもあるので、そこを触れるようにとの御指摘がありましたので、追記しています。

 30 ページです。外国人材の活用という項目を設けています。人材不足、人手不足といったことを言及するに当たって、やはり外国人についても考え方を示しておくべきという御指摘がありましたので、一項目設けています。具体的には冒頭の 3 行で、人口減少の対応について、単純に外国人の受入れで補おうとするような考え方を取るべきではなく、まず労働者の処遇や労働環境の改善を図り、女性・若者及び高齢者等の国内人材の確保等に最大限努めるべきである。あとは、「日本再興戦略」改訂 2015 においても、移民政策と誤解されないような仕組みや、国民的コンセンサス形成の在り方などを含めた必要な事項の調査・検討を政府横断的に進めていくとされているところ、外国人労働者の受入れ範囲の拡大による、我が国の産業、労働市場、医療・社会保障、教育、地域社会の影響や治安等国民生活への影響も踏まえる必要があり、こうした幅広い観点を踏まえつつ、政府で検討されることが必要であるということを書いています。

 31 ページ、地域雇用対策についてです。「地域雇用対策の必要性と目指すべき方向」という一番最初の項目の中段辺りの「これまで」という段落の後段に「また」という所がありますが、ここで前回御指摘があったのは、災害が起こったときや、介護という例も出ていましたが、いろいろな外的要因で住んでいる土地を移らざるを得ない人に仕事面でのサポートがどうできるのか。住んでいる所から強制的に移らなくてはいけなくなった場合に、非常に深刻なダメージがあるが、そのときこそ雇用対策の出番であるということを書けないかという話がありました。いろいろな災害がありますので、ここに例示を挙げただけでは当然ないのですが、大きな災害を幾つか例示しています。雲仙、阪神・淡路大震災、三宅島の噴火、東日本大震災を出させていただきましたが、こういった多くの自然災害に見舞われる我が国では、自然災害等によって住み慣れた地域を離なれざるを得なくなることが特に「しごと」に対して深刻な影響をもたらして、生活を不安定にさせていく現実があるということを述べた上で、後段の地域雇用対策の重要性の記述につなげることにしました。ここで、地域雇用対策が大事で、人を支えるような地域雇用対策をやっていくべきだということを書いています。

 34 ページです。上から 2 3 行目辺りが追記している所です。ここは、前のページから、 UIJ ターンと、地域の人材育成について書いた項目です。もともと学生が就職するときの UIJ ターンや子育てが終わったシニア層の UIJ ターンについて書いておりましたが、やはり地域の活性化のコアになる働き盛りの 30 代、 40 代が UIJ ターンでき、地域で中核を担っていくということも視点として非常に大事だという御指摘がありましたので、そういった記述を盛り込みました。

 あとは、このページの脚注の 107 ですが、一方で地域で人を受け入れたときに、受入れに賛成なのだけれども、いざ入ってみると、意外とよそ者ということで心理的な抵抗感を受ける現実もあるので、そこにも言及しておくべきという御指摘がありましたので、補足しています。委員の先生方に御指摘を受け、追加した点は以上になります。

 あと、もう 1 つだけ。 37 ページから、事務方として追加した所があります。 37 ページの中ほどの「国・地方自治体及び関係者の連携」の一番下の「加えて」の所で、国は地方自治体などの行政・公的機関のみならず、民間企業や NPO 等地域の関係者が地域の様々な課題について適切に対応する。そのときに、地方自治体がリーダーシップを取っていくべきだという話。

 38 ページ目に、地方における働き方改革ということで、まち・ひと・しごとの政府の取りまとめのほうでもよく言われていることですが、地方・都会にかかわらず、性別役割分担から抜け出せていない中で、やはり地方においても仕事と家庭の両立が図られることが 1 つの魅力になるということで、働き方改革を通じて、地方で改革を積極的に推進していくべきだと追記しています。以上が、前回からの主な修正点です。よろしくお願いします。

○樋口座長 ありがとうございました。皆様の御意見を踏まえ、新たに加えた所あるいは修正した所が多々あると思います。御意見、御質問をどなたからでも結構ですのでお願いいたします。

○鶴委員  5 ページの雇用調整の手法の変化という所があります。これは質問なのですが、内閣府の平成 25 年度年次経済財政報告で雇用調整速度が過去よりも上昇しとあります。これは、どのような雇用者を対象にした推計なのかということで、お伺したいのは全ての雇用者、つまりパート等非正規雇用も含めたものなのか、それとも正社員に近い、これは常用とかいろいろな定義があると思うのですが、人なのかということ。

 なぜ、こういう質問をしたのかというと、リーマンショックのときは御承知のようにほとんどの正社員が雇用調整助成金の影響で、その前の 2001 2002 年の頃に比べて調整されていないのです。それで、雇用調整速度が単に臨時、パート、派遣の割合が増えたことによって調整速度が上がっているという話なのか、それともそれを除いた所で上がっている話なのか、時期によっても違った動きが出ているので、ここの解釈というか事実関係を教えてください。

○黒田雇用政策課長補佐 恥ずかしながら、今、手元に資料がなくなってしまったので、すぐにお調べして、またこの会の中で説明をいたしますので、少しだけお時間をください。すみません。

○樋口座長 では、また戻るとしまして、多分、雇用速度なので全体でしょう。臨時雇いとかも含めた雇用者数が従属変数になってという。分かりそうですか。

○黒田雇用政策課長補佐 今、資料を見たところ、非正規も正規もなく全体の雇用者についての分析になっているということです。

○鶴委員 多分、推計期間もリーマンショックというか 2009 2010 年も入った推計ですか。

○黒田雇用政策課長補佐 はい。推計は 1976 1990 年と 1991 2010 年を比べているものです。

○鶴委員  2010 年まで。

○黒田雇用政策課長補佐 はい。そこを比較しています。

○鶴委員 となると、そこで調整速度が上がっているのは、やはり非正規雇用の割合が増えて、つまり景気がいいときはそこを非常に積みますと、悪くなればそこをごっそり削減するという、それが現れている、それを強調したいという意味合いでここにお書きになっているという理解でいいのですか。

○黒田雇用政策課長補佐 そうですね。様相が変わったということ、その前段の所ですが、バブル崩壊前まではどちらかというと残業時間を削減するという形で雇用調整をしてきたところが、バブル崩壊以降、特にアジア通貨危機とか、その後ですが、リストラが増えてきたのが 1 つです。あとは、今、鶴先生がおっしゃったような臨時、パート、派遣など非正規の比率が高まってきて先ほどの雇用調整が、例えば、派遣切りという話があった時期もありましたが、非正規のところで雇用調整をするということも出てきたということを申しております。

○鶴委員 私の理解は、 2000 年の辺りは結構、失業率が上がった時点や景気の後退のところで、割と正社員の調整が行われたという認識があります。ただ、リーマンのときはかなり違う様相だったので、 2000 年代の最初の頃までの話を総合すると正社員についても、これまでなかなか調整を行わなかった所が調整を行えるようになったという理解は正しいと思うのですが、それからの後 10 年どうなったのかということについては必ずしも、そういう状況が続いているということは、なかなかうまく確認ができないという思いもあったので、そこが背景の質問なのですが、御趣旨は分かりました。

○中井雇用政策課長 少しだけ補足します。政策的対応もあったと思います。おっしゃるとおり 2000 年代前半は、かなりの正社員に雇用調整の影響が及んだということで、当時、失業給付の費用が非常に膨らんだということも間接的に物語っているのではないかと思います。そのときの状況も踏まえて、リーマンショックの後は 2000 年代前半に、ほとんど使わなかった手法として雇用調整助成金を要件緩和して最大限に使うと、あのときは 2000 年代前半、若しくは成長産業への労働移動を促進するのであるという話があった一方で、リーマンショックのときは、瞬間的に全ての産業が悪くなってしまったので、雇用を支えなければならないということで、正社員も当然、雇用調整助成金は一部非正規の方も対象としている制度ですが、そこで支えるという形で結果的にリーマンショックの後は、正社員の雇用調整は 2000 年代前半に比べて軽かったという面があったのではないかと我々は整理しています。

○樋口座長 もし、鶴さんのおっしゃるように期間によってかなり違うということであれば、どこかに内閣府の、ここにいつからいつまで何と何を比較したということを書き加えたらいいのではないですか。

○中井雇用政策課長 今の御指摘を踏まえて、もう少し丁寧に若干、加筆いたします。

○樋口座長 ほかにいかがでしょうか。

○黒田委員 前回、お休みさせていただいたので、もう既に議論されているところかもしれませんが、その場合はお許しください。 3 点、感想があります。 1 点目は、図表 4 1 です。これをしみじみ見てみますと、緑の線で示されている男性の非労働力化がこの 10 年で 2 3 %ポイントぐらい、どの年齢層も上昇しているというのが、かなり顕著に出ていると思います。この点は 4 ページの 1 パラグラフでかなり指摘されているところですが、それにもかかわらず全体のメッセージとしては、「女性・若者・高齢者」全員参加型という感じになっていて、壮年の男性で働く意思がない人がこれだけ増えているということに関しても、もう少し触れたほうがいいのではないかと思いました。

 それから、図表 4 については瑣末なことにお仕事を増やしてしまって大変申し訳ないのですが、図表 4 2 の女性も、赤い線の完全失業率は右の軸にしたほうが、これだとほとんど 0 %みたいに見えてしまいますので、そのほうが多分、読者には親切なのではないかと思います。

 2 点目は、 21 ページの安全衛生管理の所です。お書きになられていることは私もそのとおりだと思うのですが、追加していただければと思うのが、昨年、過労死等防止対策推進法が施行になって、そこで明示的に過労死に関する調査研究をもう少し充実させるべきだということが盛り込まれたかと思います。それに関連して長時間労働や働き方がどの程度、過労やメンタルヘルスのダウンに本当に結び付いているのかということを詳しく調査研究していく必要があるという点を盛り込んでいただければ有り難く存じます。

 3 点目は、 28 ページです。こちらは人材不足分野が特に顕著だと言われている幾つかの分野に焦点を当てて議論されている箇所かと思います。看護となっておりますが、こちらは看護にかかわらず医療従事者とされてはどうかと思います。つまり、看護師以外にも、例えば、医師という方々も、せっかく医師免許を取ったのに家庭との両立が難しくて潜在的な労働力になってしまっているという女性医師もかなり多いと聞かれるところです。

 こういう方々を、例えばテレワークに政策で補助金などを出すことによってインフラを整備して、地方の医療が足りない所とネットワークで結ぶということをすれば、何か緊急で体調のことを相談したいけれど町に医者がいないという患者側と、家庭の事情等でフルタイムでは働けず潜在的な労働力になっているけれども、医師免許を持っていてノウハウもあるという人材とを地方と地方との間で結ぶということもできます。そういうことは民間に委ねるというよりは公共体でインフラの整備をすることも必要かと思います。

 そういう意味では、看護というよりはもう少し広い意味で医療従事者の掘り起こしをどのようにしていくかという議論にしていただければ、よろしいのではないかと思います。以上です。

○樋口座長 ありがとうございます。要望とコメントを順番にお答えいただけますか。

○黒田雇用政策課長補佐  1 点目についてです。当然、男性の働き盛り層の非労化は問題意識を持っております。女性・若者・高齢者は当然、例示として先にくるわけですが、ここは例示の後に全員参加の実現としていますので、当然、そこも含めて我々はどのような層も全員参加で働いていただけるような環境整備をしていくということは考えております。そこをオミットしているわけではありません。

 女性のグラフは、御指摘のとおりに直したいと考えます。メンタルヘルス、安全衛生管理の所について、長時間労働との関係性について調査をしていくべきという言及については盛り込む方向で検討したいと考えております。看護の所については、御相談ベースですが、今回は中間取りまとめ案ということで、看護についてこれまで累次にわたって、いろいろな仕組みや看護師になるための学校はどのような学校があるかなど、看護師の状況や賃金とかいろいろ分析してきました。結構、深掘りして看護について、これまで数回にわたって議論していただいてきましたので、看護は結構、議論が煮詰まってきていると思い書いております。

 当然、御指摘のとおり医療従事者、医師やコメディカル等も含めて医療従事者の人材不足は常に常態化している状態ですので同じく重要な論点ですが、中間取りまとめ案の中で急に医師等についての議論を入れるほど、まだ分析的な資料をお出しできていないので、それは今後の課題にさせていただければ有り難いと思います。それをお許しいただけるのであれば、今日のところはこの表現でいきたいと思いますが、いかがでしょうか。医療従事者の医師やコメディカルについて、またいろいろと資料を用意しなければいけないと思います。テレワークの論点もそうなのですが、テレワーク以外にも、そもそもの構造的な問題などの議論に結構時間が要るのではないかと思います。

○樋口座長  28 ページの医療従事者、看護だけだけれどということですが、これはかなり研究が進んでいますよね。厚労省の中でも厚生サイドで東京女子医大などが中心に研究して、資格を持っているのに医療に従事していない人をどのようにサポートしていくかという具体的な何かが出ていると思いますが、いかがですか。

○黒田雇用政策課長補佐 もちろんです。

○中井雇用政策課長 単に今回、中間取りまとめということで整理するだけには時間的な。

○黒田雇用政策課長補佐 といいますか、私が申し上げたのは様々な議論がある論点でありますので、報告書に盛り込むのであれば、もっと時間をかけてきちんと議論をした上で盛り込むべきではないかということです。

○中井雇用政策課長 ただ、いずれにしても最初の御指摘を踏まえて、今回の中間取りまとめにおいてちょっとした工夫で、最終取りまとめの間にもう少し今おっしゃったところの内容を充実すべきではないかという御意見について併せて考えたいと思います。

○樋口座長  1 点目の男性の、壮年とおっしゃいましたか。

○黒田委員 壮年の層と申し上げました。

○樋口座長 壮年層、この図表 4 1 の所で明らかに就業率がいろいろな年齢層で低下していることについて、一部は言及されているのですが、もう少し強調したほうがいいのではないかと、女性、高齢者、外国人だけではなく、ここに大きな問題があるのではないですかという。

○玄田委員 関連していいですか。

○樋口座長 どうぞ。

○玄田委員 もし準備するのなら、ニートの問題は若年ニートよりも中年ニートのほうが統計を測ると圧倒的に多くなっている。非労働力、厚生労働省の定義を使ってニートの年齢層を変えて見てみると、数的には拮抗、若しくは定義によれば中年ニートのほうが深刻なので、その言葉を使うかどうかは分かりませんが、背景は非常に多様です。かつては、建設業、製造業の就業環境悪化が男性の非労に影響を与えたけれども、今は家事の問題とか就職氷河期世代が中高年化したことで非常に多様な問題があるので一概には言えませんが、もし言及するのであれば、その問題の複雑さも込めて非労働力問題は若年だけではない広がりを見せているということは述べてもいいように思います。

○中井雇用政策課長 ありがとうございます。玄田委員のおっしゃるとおりだという認識を我々も持っていて、フリーター、ニート問題は特に 2000 年代以降に強調されていましたが、その中で年長フリーターとか中年化とか言われている中で、 1 回そのような状態に陥った人がどんどん正社員になれないまま年齢が上がっているという状態が、一種の今言った数字に現れている面があるのだろうと考えています。

 そういう意味で今後の対策としては、そのようにならないようにということで我々も若者を中心とした正社員化への取組を行っているとともに、実際にそういう状態になった方々について労働支援をどのようにしていくかというのは、個別施策でも例えば、極端な話になるかもしれませんが、生活保護受給者でも就労可能層がいらっしゃるので、そういう方々に対する就労支援を行ったりしているということが、現実の対策として行っているということだと思っております。

 今の話として、 1 つ大きなボリュームゾーンとして区分して書いていない面も現実としてはあるので、これも先ほどの繰り返しになりますが、ひと工夫できないかということは考えてみたいと思います。

○樋口座長 教えてほしいのですが、図表 4 1 の男性の 25 34 歳、これは急激に 1997 年から 2002 年に階段的に低下します。その後は横ばいか若干、また少し動きがある。 1997 年から 2002 年の男性の 25 34 歳というと、いつ卒業したのかと考えると高卒だとバブル期で、あるいはその後のバブルが崩壊した後。なぜ、このように急激にそこが下がったのかという。

○玄田委員 建設ですよ。

○樋口座長 建設。

○玄田委員 この頃は、建設の男性の雇用喪失がすごく。

○樋口座長 建設が雇用を。

○玄田委員 やはり金融不況のときは建設が一番急速に駄目になったので、男性層で大分雇用を失っている。

○樋口座長 バブル崩壊後でしょう。

○玄田委員  97 年のときに金融不況の直接の影響です。

○樋口座長  97 年ということは、卒業していた人たちが切られたということですか。

○玄田委員 それか、職を失った。

○樋口座長 新卒ではなくて。採用の手控えではなくて。

○玄田委員  25 34 歳の話ですよね。

○樋口座長 はい。

○樋口座長 見る限り割と 97 年から、それぞれの年齢層で起こっている。 45 54 歳でも 97 02 年まで急激にゴンと落ちます。書き込むのはいいのですが、どのように書き込むか。

○中井雇用政策課長 その時期は、御存じのとおりアジア通貨危機で雇用情勢が従来ない水準で悪化した時期とほぼ機を一にしていて、そこで何が行われていたかという話で言えば、学卒者も影響を受けましたし、一方で、実際に若年者がリストラ対象になった時期でもあったのではないかと思います。玄田委員が御指摘の建設業で言えば、経済規模は正にこれと同じタイミングで縮小してきたという事実があって、 90 年代の半ばぐらいまでは不況のための経済対策というところで、公共工事を盛んに行っていた時代だったと思います。

 それ以降、財政が厳しくなったこともあって、そちらのほうも縮小してきました。あと、構造改革の中でそういう部分も削ってきたというところも同じタイミングで起きていた話なので、そういう影響が諸々にあったことが各年齢層において、実際問題ここは賃金水準もピークだったのが 97 年だったと思いますが、そういう状況になっていく中で、それぞれの年齢が影響を受けてこのような現象が起きたのではないかと考えています。そうした話は報告書に細かく記載ができていないのですが、そういう時代背景だったと考えています。

 ちなみに、高卒と大卒の影響ということで言えば、先ほど玄田委員から、高卒は建設業の影響を受けているのではないかというお話があったと思いますが、あとは、卒業者のボリューム的には高卒者と大卒者は、この間、徐々に数字が逆転していった時期で、大卒のほうがボリューム的には影響を大きく受けていたということもあると考えています。

○樋口座長 この意味するところは、一度景気が悪くなって、例えば、解雇されたり新卒でも採用されないと、影響はそのときだけではなくて、今度は景気が回復した後も残っていくというインプリケーションですか。

○中井雇用政策課長 それ以降、 IT バブルと言われた景気が 2000 年代で瞬間的にありましたが、それを除いたら、 2001 2002 年というところで、いわゆる不良債権処理なども行った時期でもあり、トータルで見たときには厳しい状況が長く続いていたと理解するのが良いと思っています。

○樋口座長 マクロ経済で言う、イナーシャの話があります。一度失業したときに景気が回復しても元へ戻らない失業の例として、そういうことが起こっているという解釈だと、逆にかなり政策としての現代的な意味が違ってくる。働く側の意識の問題。一度、放り出されるとなかなか、今度は景気が回復して求人が増えても、その人たちはやる意欲を失ってしまってということだとすると、それの対策と求人を増やせという話とは違うよね。

○中井雇用政策課長 実際の状況としては、資料 3 1 ページの図表 1 を御覧になっていただければと思います。 97 年以降の景気後退期で失業率は大幅に上がり、求人倍率はかなり下がり、その後 1 回、回復期があったのですが、失業率はほぼ横ばいで求人倍率も余り上がらず 0.6 倍を少し超えたぐらいでとどまっていて、また不況がきてということで、トータルしてつないでみると、ずっと雇用情勢は悪かったという時期でもあった。そういう中で、おっしゃるとおり厳しい状況に置かれた失業者などがディスカレッジドされたということはあると言えるのかもしれません。

○鶴委員 女性の就業率を見ると、 97 年からは大きなショックがあったときです。女性のほうが非常に一定です。多分、正社員と非正規のレベルというか実人数を見ると、 90 年代後半から正社員の実人数が減っています。非正規は余り景気の変動に関係なしに悪いときもずっと増え続けてきています。どうしても、そういう動きが影響しているのだろうなという、女性の場合は非正規の比率が高いので、これだけ違いが出ているというのは正規と非正規の動き方の違いを反映していると少し思ったのですが、やはりかなり動きが違うので、このままだと何となく非常に説得的な理由がないと今までの議論だけではなかなか理解しにくいという感じがします。

○中井雇用政策課長 図表 4-1 4-2 の目盛の幅で、図表 4-2 のほうが、これは先ほどの失業率も 1 つのグラフにしてしまったという御指摘と影響しているのですが、すごく幅が広く、男性のほうが狭いということで、男性のほうがちょっとした動きが大きく見えるというところがあり、実は図表 4-2 を御覧になっていただくと女性も、よく見ると 97 年をピークに上昇が止まっていたりとか、 35 44 歳はむしろ就業率が下がっていたりとか、そういうところも実はあるので、そういうことで言うと女性も影響を受けていないわけではない、目盛の違いということが若干、錯覚を起こしているということで言えば、作り方的に少し申し訳ない面があると思います。

 ただ、おっしゃるとおり正規・非正規の関係で言えば、構造的に非正規の方の割合を上げてきたというのが、コスト要因であるとか、調整しやすい部分があるとか、そういう要因がありましたので、その点で女性の割合が高かったということで、構造的に伸びる要因も確かにあったのだろうということは言えるかと思います。

○樋口座長 どのように書くかは、検討したほうがいいと思います。それと、今の正規・非正規の問題もあるし、男性の比率の高い産業、建設や製造が雇用を減らしているわけです。男性が全体的に雇用が減って、むしろ女性比率の高い所が雇用を伸ばしている。医療にしろ看護師と言ったほうがいいのかもしれないけど、介護であるとかサービスであるという違いというのも、かなり説明するのではないかと思うので。

○玄田委員 今の座長と同じですが、長期的には産業構造の変化、第二次産業の衰退と第三次産業の相対的成長は、男性に対する労働需要よりも女性の労働需要を増やしたという面と、もう 1 個、男性の就業機会として自営業部門がずっと恒常的に減少してきて、やはり自営業は、 70 80 年代の場合、男性の特にテレワーク、フレックスの重要な就業機会だったので、非労働力の増加については自営業数の減少は、多分、男性のほうに強く影響を与えているので、その辺の構造的変化という部分はもう少し解釈しないといけないのではないかと思います。別の点でいいですか。

○樋口座長 それはちょっと書いてもらうということで。

○中井雇用政策課長 樋口座長と玄田委員のおっしゃるとおりだと思います。その部分の構造変化というところが男女間で見たときの差に影響を及ぼしていると思いますので、それについても考えさせていただければと思います。

○玄田委員 別の点で、 33 34 ページです。今日は発言をやめようかと思ったのですが、少し気になったので申し上げます。 33 ページの人材還流と人材育成の所で、下から 3 行目の所に少し嫌だなというワードがあります。「お試し居住」という言葉はとても嫌です。これは、座長のほうが詳しいかもしれないですが、政府でそういう用語を使っているのであれば速やかに再検討なさったほうがよろしいのではないかと。これは相当失礼な言葉で、来られるほうにとっても失礼だし、行くほうにとってもお試しというのは非常に軽い。

 多分、居住地域を決めるというのは自分の人生にとってとても大きなことで、お試しでできるわけがないし、お試しで来られた人は絶対に受け入れられないですよ。この言葉は、良くない。駄目ならお返ししますというのでは絶対失敗する。それに対してとてもいい例が厚生労働省にあるわけではないですか。トライアル雇用は、お試し雇用ではないではないですか。もちろん見方によってお試し雇用的な面はないとは言わないけれど、あくまでも一定期間の試行期間を経て、両者が納得して雇用を作るということで作られたものであって、あれはお試し雇用で誰もやっていないですよね。

 その背景は、いろいろな困難にある人を重点的にサポートしようとか、ハローワークが紹介機能を積極的に果たすとか、そのときには貴重な奨励金を使おうとか、そういうことをやって初めてトライアルはできているわけだから、恐らく、居住をやるためには、それぐらい詳細な仕組みを考えないとできないですよ。こういう軽い書き方をされるのは労働政策の方らしくないし、少しお言葉をお考えになられたほうがよろしいのではないでしょうか。

○樋口座長 では、そのように。

○玄田委員 もう 1 点は、 34 ページです。これはかなり納得して聞いていたのですが、 34 ページの前段の部分のキーワードは情報ですよね。できればワンストップで適切な情報を提供していく。それは正しいと思うのですが、もう 1 個重要なキーワードがあって、それは時間ではないですか。多分、どこに住むかを決めるためには、やはりある程度、時間を掛けていろいろなものを探し、なおかつ実際に訪れて時間を掛けて交流する中で、ここは自分の終の住処にしようとか、ここで次の人生を頑張ろうという、時間の確保がないと情報だけでは決断できないし、するべきではないと。

 そう考えると、この報告書全体を 1 つのまとめにするためには、やはり前段で国民が心身面両方ともに物心両面で成果、向上するというときに長時間労働を抑制しようということをものすごく積極的に言っているわけで、それは先ほどの過労死などのいろいろな問題の解決と同時に、やはり将来の人生を考えるときには、ある程度しっかり時間を掛けて家族とも議論を重ね、そして自分の次のセカンドステップのキャリアを考えるのだというメッセージが入っているはずだから、そこにも結び付けてきちんと働く時間を適切にして、余った時間を次の人生どこに住むかと考えるし、そのためのいろいろな経験ができるようにしていくべきだということが入ればこの報告書は、とっても流れのいいものになっていくはずで、そういうことを書いていかないと、何となく全体がばらばらな感じがする。

 逆に言えば、書くことによって、この報告書は、すごく一貫したメッセージがあるという感じがするので、情報と同時に適切な時間を掛けることが大事なのだということは、もしお時間があるのであれば少しお加えになることを御検討されてみてはいかがでしょうかということです。

○中井雇用政策課長 ありがとうございました。考えさせていただきます。

○樋口座長 よろしいですか。ほかにいかがですか。

○大石委員 前回から大分、改訂していただきまして、ありがとうございます。 1 点、質問と細かいことがあります。まず、 12 ページの中高年の活躍促進ということで、労働者がキャリアコンサルティングを企業内で受ける機会がより一層拡大するように企業に対する助成等を行うというのは、何か具体的なイメージがあったのかということと、企業に対して助成するという方式がいいのかどうかというところが少し疑問に思いました。

 例えば、中高年で企業側からキャリアコンサルティングを受けてくださいと言われると、そろそろ自分も終わりかと思う例が多いのではないかと思うわけです。再配置ということならいいかもしれないのですが、別にリストラの手段的に使われるという面もあるかもしれないし、そのこと自体がいいか悪いかは、また別の評価があると思います。労働者自身が自分の技能の棚卸しをするのは大変望ましいと思うのですが、企業に対して助成することだけでいいのかなという所が 1 つありました。

 その少し下で、瑣末なコメントで申し訳ないのですが、「出向の後に移籍へ切り替える形で労働移動が行われる場合について、その課題や効用」の「効用」とは誰にとっての効用なのか、労働者にとっての効用なのか言葉の意味がよく分からなかったので、そこを少し明確にしていただきたいというところがあります。

 あと、用語の面で先ほど玄田先生が、お試しという言葉がちょっととおっしゃったのと似たところがあります。例えば、 10 ページの一番上から 2 行目の「子供たちが漫然と教育を受け漫然と進学する」という箇所ですが、私自身も漫然と教育を受けて漫然と進学してしまったという気がするのです。これは読んでいる側として余りいい気持ちがしないような表現だと思うので、見直していただけたらいいかと思います。

 15 ページで、「安易にフリーターを選択継続し」という箇所も気になります。情報提供をすることで、自らの意思でフリーターを選択するのはいいけどということだと思うのですが、自らの意思で選んでいるかどうかという区分は非常に難しいものがあり、結果的にフリーターをしている人もいるわけです。そう考えると「安易に」という表現は、読んでいる人からすると余りいい気持ちがしないと思います。

 それから、 19 ページの上から 3 行目も同じなのですが、「仕事の棚卸しや見直しを行い、無駄な業務フローは」という箇所。役所から無駄な業務と言われるとどの企業もいい気持ちがしないと思いますし、無駄か無駄でないかを役所に判断されてはたまらないというところがあると思います。この節はなくても問題ないと思いますので、読んでいる人の神経に触らないような表現も重要かと思い、細かいことを申しました。失礼しました。

○樋口座長 用語はもう一度検討していただくということで、 3 点ほどの要望が出ましたので、御検討いただいて。

 もう 1 つ、制度として企業への支援というキャリアカウンセラーについて、何で企業なのだというところだと思いますが。

○黒田雇用政策課長補佐 中高年層でのキャリアコンサルティングの活用というのを書かせていただいたのは、どちらかといえば今は、キャリアコンサルティングは当然在職者も使えるわけですが、求職者、失業者がキャリアコンサルティングを受けることが多いのだろうと。ただ、職業人生が延びていく中で、職業人生の 2 周目 3 周目が出てくることが想定される中で、節目節目で自分のキャリアを見直すというときに、働きつつもキャリアを見直して、今後どういったところで自分の能力をいかして働いていくかということを考え、自分の中で能力開発をどうやって行っていくべきかということを考えるときに、働きながらキャリアコンサルティングを受けるという機会が拡大すればその一助になると考えています。

 その中で、企業が能力開発にかける費用が下がってきている現実がある中で、企業側にそういうことをやって下さいと声掛けするだけでは進まないので、それも 1 つの政策ツールとして企業に対する助成ということもあり得るのではないかというようなことで、書かせていただいております。

○大石委員 教育訓練に対する支援のようなものとしての一環としてという位置付けなのですか。

○黒田雇用政策課長補佐 そうです。公的な訓練も当然必要だと考えておりますが、在職期間中、しかもここで書かせていただいているのは、高齢期に入る前の 40 代などから、自分のキャリアについて見直す機会があって、更にその先、今よりも長く働くことになるのかもしれませんので、そういったときに企業で働きながら企業内でキャリアコンサルティングを受けることが拡大していくためには、そういった助成という形も、 1 つ方策ではないかという趣旨です。

○樋口座長 多分、何で企業への支援だけが書かれているのだということでしょう。むしろ働く者へ直接の支援をしても。

○大石委員 それもありますし、通常昇進・昇格するときには、それまでに何をしてきたかということのキャリアの棚卸し的なことは行われているのではないかと思うのです。それであるにもかかわらず、このように書いてあると、例えばキャリアコンサルティングを行う外部サービスを企業が利用することに対しての助成とか、そういうイメージなのかなと思ったものですから。

○玄田委員 私は若干、大石さんとは意見が違って、雇用保険の二事業の使い方としては非常に合理的、つまり企業がこれから従業員の将来のキャリアについて何かサポートすることが、金銭的な報酬に並んで、すごく労働者の長期的な意欲などに影響を与える。ただ、全ての事業主がそれだけのキャリアサポート、それだけのノウハウや経験を持っているかというと、恐らく零細企業を含めて非常に難しいときに、雇用保険の事業主負担分の中から、そういうサポートを企業が受けて、企業の負担を軽減させるというのは、二事業の使い方としてはそんなに筋が悪いとは私は思わないけれども。

○大石委員 そういう趣旨なら私もいいと思います。

○樋口座長 両方書いたらいいのではないですか。二事業とは関係ないけれども、企業に対する支援と、自ら本人がやろうというのは。それで、もうその制度はあるわけですよね。

○中井雇用政策課長 教育訓練給付制度の充実というのは、この間もやってきた話でもありますので、新味がどのぐらいという話は別として、その政策は当然やっていますので、書くことは可能です。

○樋口座長 教育訓練助成金は訓練だから、コンサルテーションでも使えるのですか。

○中井雇用政策課長 確認しますが、そういう方向でこの間拡充してきたと認識しています。

○樋口座長 そうであれば、両方書いておいていいのではないですかね。

○宮下職業能力開発局総務課調査官 補足します。今年度より企業内人材育成推進助成金という新しい助成金を設けています。これは企業に対して、企業が就業規則などでキャリアコンサルティング制度をきちんと規定し、従業員に対して実施した場合に一定額を助成するということで、教育訓練給付金とは別の助成金なのですが、こうした助成金を使いながら事業主に対するキャリアコンサルティングの制度を普及させていきたいと考えております。ここの「企業に対する助成等を充実させていくことが望まれる」という記述については、今申し上げました助成金が該当してくるのではないかと考えています。

○樋口座長 だから、制度としては理解できるのだけれども、特に二事業ということが出てくると理解できるのですが、文面で読むと、何で企業を支援するだけなのですかという、相談したいという人だったら、本人も支援を受ける対象としてよろしいのではないですかと。そちらは駄目だという理由は特段ないのかなと思っての発言かなと思ったのですが。

○中井雇用政策課長 いずれにしても、御指摘を踏まえてこれも工夫できないか考えたいと思います。

○樋口座長 大石さんの御指摘は、今のでよろしいですか。

○大石委員 はい。

○樋口座長 ほかにいかがでしょうか。阿部さんはどうですか。

○阿部委員 私は特に大きなところはないのですが、今の大石さんの話などもそうなのですが、何を指しているのか分からないところも多々あるかなというのがあります。例えば 14 ページから 15 ページにかけて、読むと「そうなのか」とは思うのですが、実際に政策として何をやろうとしているのかが見えてこないのかなというところがあると思います。

 例えば 15 ページの上のほうで言えば、もしこれをやろうとしているのかということを挙げると、「フリーターを続けることによる中長期的な影響を行政等がしっかりと周知・啓発すること」ということをやりたいのかということなのです。それは重要なのでしょうけれども、それでこの前段に書いてある問題がうまく進むのかどうか。下のほうも、トライアル雇用奨励金をより一層活用してもらうということで済むのかどうか。もう少しここはその後の政策展開を考えたときには、何をしようとしているのか、何が課題なのかということをうまく見えるような工夫があってもいいのかと思いました。ほかにもそういう部分があるかもしれません。先ほどのキャリアコンサルティングを企業内で受ける機会を一層拡大するというのは多分、企業内キャリアコンサルタントみたいなのを増やしましょうということをやろうとしているのか、それともそうではないのか、見えにくいところはあると思うのです。余り見えすぎてもいけないということもあるのかもしれませんが、その辺りについて、何をしようとしているのかはもう少し見えたほうがいいかなと思います。

○樋口座長 では、今の御指摘のところももう一度。橋本先生はどうですか。

○橋本委員 先生方の議論を伺い、以前にこの研究会で、人手不足なのになぜ賃金が上がらないのかという議論があったことを思い出しました。賃金はいろいろな所で言及されているのですが、報告書を読み直して、余り正面からはないなと感じました。この点について、日本の場合は賃金格差の問題が、職種の問題と正規・非正規の格差とが複合しているところが特徴で、報告書をよく見ますと、その問題について、今の阿部先生も御指摘された 13 ページから 14 ページにかけて、非正規労働者を正社員にキャリアアップを支援するべきだということが書かれており、 13 ページの下から 5 行目に、非正社員について「人的資本蓄積の減少やそれに伴う生産性の低下、企業収益の減少・消費の停滞といった経済の悪循環につながりかねない」と書かれていて、この人的資源の最大化ということで、正社員化を促すべきだということも書かれているわけですが、ここを読んで、そうすれば全てその問題が解決するのだろうかという素朴な疑問を感じました。低賃金職種の問題というのを真正面から取り上げるべきなのか分からないのですが、少し気になりました。というのは、正社員化を進めれば問題が解決するのかどうかということが疑問としてあったからです。

 図表の 22 の所にも、労働者の過不足状況のグラフがありますが、ここでパートタイムの不足感が強いというところで、卸売、小売業、飲食業等が挙げられていますし、この図表とも今の論点は関係するかと思っております。つまり、パートの正社員化を進めても、もともとその仕事でパートしかない仕事というのもあると思うので、その問題を扱わなくていいのかどうかということが疑問としてありました。

 この点に関連しては、私が勉強しているドイツでは、正規と非正規の格差というのはほとんど問題にならないのは先生方も御存じのところなのですが、やはり賃金格差の拡大というのが大きな問題になっており、それが低賃金職種の拡大の問題なので、それに対する対策としては最低賃金の引上げが考えられているのかと思うのですが、その問題を報告書を読んで感じました。

 あと、先ほどの大石先生の御指摘のあった 19 ページで、業務の見直しを図ることを書かないほうがいいのではないかとおっしゃった点について、私自身は長時間労働を抑制するのはとても重要だし、現状において過重労働の問題がこれだけ深刻になっていますので、今、長時間労働をやめさせようというときに、そのための方策として業務量も見直していくべきだという点を指摘すべきではないかと思いますので、ここはむしろ重要なところなのではないかと感じました。

○樋口座長 かなり大きな問題を指摘されましたが、どうでしょう。賃金格差の問題、特に低賃金職種という、あるいは低賃金な働き方の問題という形で、今は「転換する」という方向の記述は多いけれども。よく読むと、幾つかのところでは最低賃金の引上げの重要性は言っているのですが、もっと言わなくていいのかと。

○中井雇用政策課長 非常に重要ですが、悩ましい御指摘だと思っています。最初におっしゃった、賃金がなぜ上がらなかったのかという話については、例えば 6 ページの辺りに分析結果を引用しながら、この間、賃金と生産性で乖離は見られた指摘をさせていただいたり、 22 ページの辺りでも「賃金の改善について」ということで、動きをいろいろと書かせていただき、なかなか解がこれだと言い切る自信のない中で、与えられた問題意識ということについて、今言えることはここまでかなということで入れさせていただいてきた面もあるかと考えています。

 そういった中で、賃金の全体的なトータルな話とか、そういった経済学的にこうあるべきだという話の中で、正規・非正規をどう考えていくのかということかなとお話を伺っていて思ったのですが、これも、いずれにしてもこのように整理したいと言い切る自信がないので、余り時間はないと思いますが、考えさせていただければということかなと思います。

 最後の長時間の話について、業務量の所は言い方の問題だと思っていますので、そこは工夫することにより整理できるのではないかと考えています。

○玄田委員 前半の所の賃金の件ですが、今後の報告書をまとめるスケジュールとの関係で必ずしも強調はしませんが、賃金センサスは今月決まったわけですから、時間的に間に合えば事実としてどうなっているのかは皆さんが知りたいところなのではないでしょうか。 2 月に発表された暫定版、速報版を見ると、正社員よりは正社員以外のほうが賃金は伸びている感じ、男性よりは女性のほうが賃金は伸びている感じ、全般的には中高年女性の正社員以外の賃金が伸びている感じはします。職種までは細かいところは見えていない、規模別には余り特徴がない感じがします。それを、先ほどもあったように、職種、産業などで見た場合に、 2014 年にどういう兆しがあるのかということは事実として押さえておいてもいいような気がします。

 それと併せて、人手不足なのだけれども、 60 代以上の特に男性の賃金が下がっているのは、そこは就業率の拡大のところと関係しているので、その部分に関して言えば、若干供給圧力の大きさが賃金の引き下げ圧力になっているし、就業者の高齢化ということになると全体への賃金の引き下げ効果も大きいから、それがとても大きいように見えます。

 もう 1 つは、黒田さんには少し言ったことがありますが、賃金が下がって見えるのは、第 2 次ベビーブーマーが非常に賃金の伸びに苦しんでいるように見えます。つまり、就職氷河期世代で入って、長時間労働を経験し、場合によっては十分な教育訓練を受けなかった結果として、 40 代に入っても余り賃金が伸びていないとすれば、それは冒頭に座長がおっしゃったような、一時的な問題ではなく、そういう不況とか長時間労働とか、いろいろなことが重なってしまった、ある意味ではとても申し訳ない世代に対して、賃金が伸びないということが大きいとするならば、それは本当にこれからの世代に対して我々が何を考えていかなければいけないかという、とても大事なメッセージに見えるので、それは今回の正式な賃金センサスが出た段階で、高齢者の部分とか、もう少し掘り下げて御覧になって、間に合う限りでは、問題提起でもいいので、こういう状況が起こっているのではないかということは言及していただけたほうがいいのではないかという感じはします。

○樋口座長 政労使会議で、そこについてかなり綿密な分析をしたと思うのですが、今年度はあれでしたが、昨年度の政労使会議のところで分厚い資料が出ていて、やはりおっしゃるようなことが起こっている。要は、子育て世代から少し上のところの中だるみという表現だったと思いますが、それがフラットにこうなってきているという、そこの給与の話をどうするかというのは重要ですという、それはもう是非入れてと思うのです。

 もう 1 つ、正規と非正規の問題における賃金格差の問題については、この間の OECD のレポートで、やはり日本は個人単位で見たときの賃金格差は非常に大きいが、世帯で考えると、安定している夫と非正規の妻とが結婚しているカップルにおいては非常に差が小さい。ただ、単独世帯が片方で増えてきている中で、従来とは違った動きというのが起こっているのではないかということで、世帯単位の貧困の問題と、低賃金の問題というのが必ずしも一致しないというのが、日本の特徴だというような記述があると思うのです。

 ここで考えていくのは、労働市場の問題としてということだから、当然世帯の所得格差の問題というのもあるけれども、どうしても個々人についての賃金の問題が、これだけ大きな差があっていいのかという。それについては、今議論している国会での同一労働同一賃金の話とも、かなり一致するようなところがあるわけで、そこは橋本先生がおっしゃるようなことを書く、どこまで書くかはあれですが。ざっと読むと、最低賃金の引上げは重要ですよと書いてあるし、その環境整備も重要なのですよということなのだけれども、その観念が書かれていないのです。あと、マグニチュードはどうするのという。方向としては、格差を縮小するような方向の動きがあるということだけれども、それが非常に遅いというようなところですか。それは、やはり今後の労働市場を見通す、特に政策面において考えていく上では重要なポイントになるのではないでしょうかね。

○中井雇用政策課長 その正規と非正規の賃金については、先ほど、悩ましいと申し上げましたが、政策的にはこれまでパートタイム労働法などもそうですが、均衡処遇という概念の中で合理的に説明できない差については解消していくべきであるという方向性はやってきたということはあります。ただ、その部分をどのように見て、どう解消していくべきなのかという道筋というのが、理論的に、統計的にも含めて、整理できるかどうかという自信が必ずしもあるわけではないというところがありますが、そういった理念的なものについても、まだ少し足りないということであれば、ここも考えさせていただければと思います。

○阿部委員 今のに関連してです。正規と非正規の賃金格差の問題というのは、単に最賃がどうのこうので済むかというと、そうではないようにも思うのです。というのは、例えば大きいと思うのは、税制をどうするかとか、特に配偶者控除の辺りの話で、世帯によって配偶者が働いている、例えば女性の場合には 103 万円の辺りで調整するとか、それによって賃金の低いのも受け入れるとか。そうすると、必要賃金にゆがみをもたらすとか、いろいろなことがあると思うのです。だから、悩ましいとおっしゃっていると思うのですが、その辺りも含めて考えると、本当に悩ましいのだろうなと思うのです。ですから、労働政策としてやることと、同時に税制の話まで書き込めるのだったら書いていいと思うのですが、そんなことはできるのかどうかとか、いろいろなことを考えないといけないかなと思うのです。

○中井雇用政策課長 あえて申し上げなかったのですが、おっしゃるとおりで、働き方に中立的な税・社会保障という話は、方向性としては政府の文書の中にも幾つか、最近も書かれているようなことはあります。具体的にどのように制度設計するのかという話で言えば、これも御承知のとおり、パートの適用拡大を今後どうしていくかというような、一部スタートすることにはなっていますが、そういったことも含めての話かなとは思っております。

 そういうことに触れるだけでも触れたらという話なのかどうなのかも含めて、また考えながら御相談させていただければと思います。

○樋口座長  2 回前の雇用政策研究会報告では書いたのですよね。前回、それは十分に議論がなかったので書かなかったら、旗を下ろしたのかという話も中にあって、それはもう方向は、皆さんの議論は。中には異論があるかもしれないけれども、その見直しというのはかなりの委員の方々がサポートするし、もう来年の改正でやるのですよね、どのようにやるのかは知りませんが。税と社会保障のところですね。もう一回強調しておいたほうがいいのではないかと。

○中井雇用政策課長 今回の報告書については分野を限って深掘りするということにさせていただいていた、我々もそういう認識でしたので、網羅的に必要なことは全部書くという方針では必ずしもなかったわけではあります。そういう観点で、こういうことが抜けているという御指摘が、これまで書かれていたことが書かれていなかったから後退したかどうかということではないのですが、そういった今回の全体の報告書のコンセプトの中で必要なものは何かという観点も含めて、考えさせていただければと思います。

○樋口座長 賃金は重要なポイントですよ。それに与えている要因であれば、それは書くべきだと思います。焦点に当たっているところだから。当たっていないところだったら、別に書いても書かなくてもいいということだと思いますが。

○中井雇用政策課長 今の樋口座長のお話は、今回の範囲を決めて深掘りするという範囲の中に入っているものであるという御指摘だと理解して、考えさせていただければと思います。

○樋口座長 堀さん、いかがですか。

○堀委員 細かい所の表現なのですが、 8 ページの下のほうの「学びの重要性」という所ですが、学校教育による基礎能力の向上ということが書いてあり、概要にも学校教育段階の学びによる基礎能力の向上ということが書いてあるわけなのですが、パッと聞いたときに基礎学力なのだろうかと捉える方が多いのではないかと思っており、少なくともこの報告書の中の「学校教育による基礎能力の向上」の「基礎能力」が何を指しているのかということはきちんと定義しておいたほうがいいのではないかと思うのです。恐らく次の行のことを指していらっしゃるのだと思うのですが、別の所を見ると、必ずしもきちんと使われているわけではないようなので、この辺りを整理していただけないかと思うのが第 1 点です。

 それから第 2 点目です。先ほど大石先生が御指摘されたところで、 10 ページの 2 行目です。「子供たちが漫然と教育を受け漫然と進学をするという状況を脱し」という所です。こうした表現は御修正いただくとしても、高等教育進学率が高くなる中で、取りあえず進学という形で進学していってしまうというのは実態として起こっていることですので、そうした書きぶりにしていただき、余り進路決定を先延ばししないような形の進路指導になっていくことが必要ではないかと思いますので、そうしたニュアンスを込めつつ、もう少し軟らかい表現にしていただければなと思います。

○樋口座長 事務局からいかがですか。

○中井雇用政策課長 いずれにしても、今おっしゃるとおりだと思います。最初の基礎学力についての範囲をきちんと整理すべきだという御指摘も、また検討させていただければと思います。 2 番目の表現ぶりは、現状は言葉の使い方としてはそういう面もあるのでと理解しましたので、ここも書き方を工夫させていただければと思います。

○樋口座長 堀先生、よろしいですか。

○堀委員 はい。

○樋口座長 ほかにどうでしょうか。

○鶴委員 これまでほかの委員の方々がおっしゃった部分で、細かい文言は事務局に考えていただければいいと思うのですが、先ほどの 10 ページの「漫然」という所は、「目的意識を持たずに進学をするという状況を脱し」とか、そういうような言葉で逆にいいのか、そういう言葉でも駄目だったら、もう少し本質的な問題なのかなと。どういう言葉だったらいいのかなということを思いました。

 それから、玄田さんのおっしゃった、お試し居住は駄目、トライアル雇用はいいということは、トライアル居住でいいのですかと言ったら、また怒られそうですが、居住ということはそもそもコミットメントがなければ駄目なのだよと。そういうお話だと受け取ったのです。

 一方、多分厚生労働省にとっては、「お試し」というのはほかにもいろいろ使っているよねと。「お試し出向」「お試し何とか」や、いろいろな所に「お試し」があって、そういうのは玄田先生よろしいのでしょうかというような。

○玄田委員 何か法的に「お試し」というのが入っている政策はありますか。

○鶴委員 法的ではないけれども、政策の中でそういう言い方は。多分「お試し出向」というのは、今回の成長戦略に入っていますよね。

○玄田委員 それは成長戦略が間違っているのです。

○鶴委員 その言葉自体は、ほかでもいろいろ使っているので、それはほかのものもいろいろ関係あるというのは、私も思いました。

○玄田委員 軽いですね、言葉が。

○鶴委員 それで、先ほど「無駄な業務フォロー」という大石さんのお話がありました。無駄というのは、別の人が見るから無駄なのです。やっている人は無駄だと思っていない。何でその業務があるのかといったら、それを要求する人がいるし、それをやることによって評価される仕組みがあるわけです。だから、「無駄なことをやめろ」ということを言っても余り意味がなくて、そういう評価システムを根本に変えるとか、業務の必要性を一から見直すということは、多分そういうような評価システムの話と関連があるので、そこまで書かないとここは生きてこないだろうなというのは、先ほどの大石さんのお話なのだろうなと受け取りました。

 これは言うかどうか少し迷ったのですが、キャリアコンサルティングの話も、キャリアコンサルティングを金銭的に支援しているのは誰なのかということです。企業がキャリアコンサタントのお金を出します、個人がお金も出しています、別の組織がお金を出しています。それに対して付加的に政府が支援するのはいいのですが、企業が雇っているキャリアコンサルティングとそうでない人というのは、意味合いが全然違っていて、どれだけ第三者的な視点からアドバイスができるのだろうかというところが、先ほどの大石さんの一番の御懸念だと思うのです。企業がそもそも雇っていたら、それは非常に企業に都合のいいアドバイスをするだろうと。自分はこの企業にいたらいいのか、それとも転職したほうがいいのかと悩んでいる人に対して、ある意味で企業側の論理からその人を押し出すような、そういうバイアスというのは企業に雇われているキャリアコンサルティングにあるのではないか。それであれば、もう少しニュートラルな立場というのは、別の立場のキャリアコンサルティングに話を聞かなければいけないのではないか。そういう問題意識だと思うのです。

 だから、私は 2 つのタイプ、誰が資金的なサポートをしているのかというので意味合いが違ってくる。また、企業においても、そもそも転職をしたいのだけれどもどうしたらいいのかということの相談に乗ってくれるキャリアコンサルティングと、もう私はこの企業にずっといたいので、あと残りをこの企業の中でどのようにやっていきたいのか、そういうことに対してアドバイスをしてくれる人は全然違うのだと思うのです。だから、相当キャリアコンサルティング、キャリアコンサルタントといっても、いろいろなタイプの人があるわけだし、その人に対するファイナンスの仕方も違うわけだから、何でも十把ひとからげでキャリコンといってやればいいではないかという議論が出てきてしまっているので、もう少しそこは整理をしたほうがいいのではないかというのは、先ほどの大石さんの話は私もずっと思っていた話なので、勝手に拡大解釈して申し上げましたが、そういう思いがあります。そんなに書き込んでいただく必要はないのかもしれませんが、そういう思いがどこかに出ていたほうがいいのではないかという気はしました。

○樋口座長 最後の点は能開局のほうも制度がスタートしていると、先ほどお話があったけれども、どう考えていらっしゃるのですか。

○宮下職業能力開発局総務課調査官 キャリアコンサルタントは約 5 万人弱いらっしゃり、それぞれ公的支援機関にいらっしゃる方もいれば企業内にいらっしゃる方もおります。それぞれのお立場でキャリアコンサルタントをやっていると思います。我々は、まだどこに所属している、どういう属性のキャリアコンサルタントがどのようにやるべきとか、そういうところまで整理し切れていないというのが現状ですので、指摘がございました点も含めて、今後キャリアコンサルタントの在り方を含めて考えていきたいと思っています。

○玄田委員 今の無駄論争が面白いので無駄に関わってみます。

○樋口座長 どういった無駄ですか。

○玄田委員 無駄な業務です。もう既にお考えになっているのであればあれですが、多分必要なのは労働版こんまり先生です。労働版断捨離です。キャリアコンサルタントが無駄かどうかというのは、キャリアコンサルタントがこんまり先生かどうかという。「こんまり先生」というのは分かりますか。

○樋口座長 先ほどの意味のほうがよく分かった。

○玄田委員 つまり、誰一人ときめいていない仕事はしないということを徹底的に情報提供していくということが、今、本当にキャリアコンサルタントの方々がうまく指導できているかということとか、阿部さんなどはやられているのかもしれないけれども、どうやったら業務の無駄は削減できるのかということを、どこの局になるのか分からないけれども、能開局なのか。前に私が均等でポジティブ・アクションに関わったときは、それでいったのです。つまり、女性にとっても働きにくい職場は男性にとっても働きにくいはずだというので、一番良かったのは ISO で環境が流行ったときに、あれで無駄を削減するとみんなが働きやすくなるのだという、こうやったらみんなが楽になるし、誰もときめかない仕事はやめようという。その辺の情報提供をしっかりしていくということが、私は鶴さんが言っていることに賛成で、無駄をなくそうということを言うよりは、どうやったらそういうことをみんなでやめることができるか、均衡を変えられるかということのアナウンス等をしていったほうがいいと思います。

○阿部委員 ときめかない仕事はなくなるというのは駄目で、なければいけない仕事はありますし、今はときめかないかもしれないけれども、将来ときめくときもあるから。

○玄田委員 誰もときめかなくてもやるわけですか。

○阿部委員 やらざるを得ない仕事はあるのではないですか。

○玄田委員 でも、将来役に立つと思えば、多少ときめくのではないですか。

○阿部委員 いや、でもそれが今は分からない。

○樋口座長 それは哲学論争になってくるから。むしろ、もし入れるなら、その制度をどう考えるか。でも、議論が多そうですね。我々個人の論文であれば、こういう方法というのはあるかもしれないけれども、ここでそれを出せるかどうかというのは、これはまた相談しましょうという。

○阿部委員 そういうと、何かやはり気になるのは非労働力も同じようなところがあって、確かにニートと言われる人がいるのかもしれませんが、非労働力自体は、もしかしたらリッチな人がもう仕事をしなくてもいいと思っていたり、あるいはもう仕事をするとつらいから仕事をしないほうがいいと思っている人たちも当然いるわけです。

 それともう 1 つ難しいと思うのは、男性の非労働力は上がっているけれども、女性の非労働力は下がっている。それをどう評価するかです。今まで、女性の非労働力が上がったとしても、特に言及はなかったのではないかと思うのです。ところが、男性の非労働力率が上がったときに言及するということの意味ですよね。そこをどう考えるか。それは慎重に考えていかないといけないのではないかと思います。もちろん大筋は玄田さんが言っていることではないかとは思うのですが、この中身がどうなのかというのは分からないので、実際になぜ非労働力になっているのかは、一直線で政策が何か書けるかというと、分からないなという感じはしましたね。

○黒田委員 この点はもう少し精査する必要があるということを盛り込んでいただければいいのかなと思っております。今、阿部先生がおっしゃったように、例えば家庭内の比較優位の問題で、女性が外で働いて、これまでは女性がやっていた専業主婦業を最近では男性がやるようになったといったかたちで、社会構造が変化してきているというのを捉えている可能性もあると思います。ただ、このグラフを見ていますと、失業率が上がった 2 3 年後に非労働力率が上がるという感じになっていますので、先ほど樋口先生がおっしゃったように、 1980 年代のヨーロッパでよく見られたインサイダー・アウトサイダー理論のようなものが日本版で起こっていて、失業でしばらく仕事を探してみたけれども、諦めて非労になって、結局何年もたってずっとそのままでいるという人が、果たしていないのかどうかという辺りも、もう少し議論を詰めていく必要があるということを明記していただくのがいいのではないかと思っています。

○樋口座長 アメリカの今の女性の非労働力の増加というのは、ある意味では社会が相当問題視して、何でこうなってしまったのだというのが最大の労働市場の関心事になってきているわけですが、アメリカのほうはそれを問題視しているわけです。日本は、むしろ男性の非労働力化がかなり起こっている。どうもアメリカと違うのは景気だけの話ではなさそうだけれども、少し見るとここ 2 年ぐらいは就労率も上がってきているという結果が出ているから、もう少し慎重に議論したほうがよさそうだし、分析したほうがよさそうだということで、結論が出れば書きますし、出なければ実態を記述するだけということになるかもしれないということでいかがでしょうかね。

 そろそろ時間がきているのですが、今日はまた新たな問題も含めて御意見をいろいろと頂きました。これを私に一任されても困るところもありますので、もう一度事務局と再度検討して、最終的な中間取りまとめに向けて、もう一回やらせていただくことにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。それではそのようにしたいと思いますが、事務局から何かあればお願いします。

○黒田雇用政策課長補佐 本日は御議論ありがとうございました。大変お恥ずかしいところで、読んでいる人の神経を逆なでしないという言葉遣いにすべしとの御指摘があったところですとか、政策が想起できないというところから始まって、大きな御指摘も頂きました。賃金の分析、男性の非労化の分析、その裏腹で女性の非労が減っている原因、医療従事者のところを掘り下げるべきという御指摘も頂いております。様々な大きな論点について、大事な御指摘を頂きましたので、できるだけ先生方の御期待に沿えるようにこちらで鋭意検討させていただいて、また御相談させていただければと思いますので、何卒よろしくお願いいたします。

 今後については、 8 24 日の皆さんの御予定を取らせていただいているところですが、またそこも含めて、次回の日程については御相談させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それと、都道府県別労働力需給推計については、秋頃になるかと思いますが、政府全体での動きと合わせて検討していくことになりそうですので、その点についても、委員の先生方に追って御相談させていただきたいと考えておりますので、併せてよろしくお願いいたします。

○樋口座長 それでは以上で本日の研究会は終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 職業安定局が実施する検討会等> 雇用政策研究会> 第6回雇用政策研究会(議事録)(2015年7月24日)

ページの先頭へ戻る