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2015年5月18日 第14回社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会議事録

大臣官房統計情報部企画課国際分類情報管理室

○日時

平成27年5月18日(月)15時00分~17時00分


○場所

厚生労働省 共用第12会議室


○出席者

石川広己委員、出江紳一委員、大谷俊郎委員、大日方邦子委員、鎌倉やよい委員、
才藤栄一委員、島田洋一委員、中村耕三委員

○議題

1.委員長の選出について
2.ICFの普及等について
3.その他

○議事

○事務局

 予定の時刻となりましたので、第14回社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会を開催いたします。各委員の皆様方におかれましてはお忙しいところを御出席賜りまして、誠にありがとうございます。

 まず、お手元の資料の確認をさせていただきます。座席表、議事次第、資料1、資料2、参考資料1、参考資料2、参考資料3、参考資料4となっています。委員の皆様の机の上に机上配布資料として資料が置いてあります。ICF(国際生活機能分類)の書籍、同じく児童版、机上配布資料3として生活機能分類の活用に向けての冊子、机上配布資料4としてICFPractical Manualを印刷したもの、机上配布資料5、同じく机上配布資料6、机上配布資料7、机上配布資料8として第4ICFシンポジウムの報告書、机上配布資料9としてICFのアップデートの一式です。机上配布資料等を含めて資料は以上です。過不足はございませんでしょうか、お知らせください。

 最初に、企画課長の三富より御挨拶を申し上げます。

 

○企画課長

 本日は御多忙の中、当専門委員会に御参集いただきまして誠にありがとうございます。この専門委員会は、平成18年にWHOにおいてICF(国際生活機能分類)について検討するグループが設置されたことを受けて、ICFの改善、普及について積極的な国際貢献を果たすとともに、国内においても、ICFの効果的な普及啓発を図るため統計の基本事項として社会保障審議会統計分科会において審議する必要があるとされ、設置されたものです。

 現段階では国内でのICFの活用がまだ十分とは言えない状況ですが、この10年の間にWHOでは、活用のためのマニュアル、ツールなどの検討がなされており、より普及させるための試みがなされています。専門委員会の皆様におかれましては、我が国においても本分類の活用により生活機能の把握が標準化されることの意義を御理解いただき、まずは国内における普及の促進などについて、是非活発に御議論いただきたいと存じます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 

○事務局

 本日の専門委員会は、今期初めての委員会となりますので、委員の御紹介をさせていただきます。

 

(委員一同挨拶)

 

○事務局

 ありがとうございました。本日御欠席の委員は齊藤秀樹委員です。本日は出席委員が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。

 まず議題1です。議事に先立ち、事務局より運営について御説明させていただきます。机上配布資料5を御覧ください。

 本会議は、社会保障審議会運営規則に基づき会議をさせていただきます。本委員会の運営については、原則、公開とさせていただきます。また議事録も、原則、公開としております。よろしくお願いいたします。

 では議事に入ります。委員長が選出されるまでの間、事務局にて議事を進めさせていただきます。

 まず、議事1「本委員会の委員長の選任」を行います。各委員の皆様方、御推薦などはございますでしょうか。

出江委員、お願いいたします。

 

○出江委員

 国立障害者リハビリテーションセンター総長の中村耕三先生を委員長として推薦いたします。

 

○事務局

 ありがとうございます。ただいま、出江委員より中村委員を委員長に御推薦いただきました。皆様、いかがでしょうか。

 

(一同拍手)

 

○事務局

 ありがとうございます。御異存がないようですので、本委員会の委員長は中村委員にお願いいたしたく存じます。それでは中村委員、席の移動をお願いいたします。

 

(中村委員、委員長席へ移動)

 

○事務局

ありがとうございました。

続いて、委員長代理の選出に当たりましては、中村委員長の御指名をお願いしたいと思います。

 

○中村委員長

 今、御指名いただきました中村でございます。委員長代理は委員長が指名させていただけるということですので、ICFにも大変御造詣が深く、先のシンポジウムでも御尽力くださいました才藤委員にお願いしたいと思っております。いかがでしょうか。

 

( 一同拍手)

 

○中村委員長

 では才藤先生、どうぞよろしくお願いいたします。

 

○事務局

 ありがとうございます。それでは、才藤委員に委員長代理をお願いしたいと思います。才藤委員はお席の移動をお願いいたします。

 

(才藤委員、委員長代理席へ移動)

 

○中村委員長

 それでは議事に移ります。ただいま企画課長の御挨拶にありましたようにICFの概念は広まってまいったと思っておりますが、今後は実際的に使用するというような観点で実質的な我が国における、進捗といいますか、進歩があればと個人的には思っております。円滑な運営に努めたいと思いますので、御協力のほど、お願い申し上げます。

 議事を進めます。議事2ICFの普及等について」、事務局より説明をお願いいたします。

 

○事務局

 説明させていただきます。まず、資料1を御覧ください。最近のFICにおける議論ということで、年次会議の御報告を載せております。私どもが関係しております統計分類のネットワーク会議が例年、10月の半ば頃に各国持ち回りで開催されています。2013年は中国、2014年はスペインにおいて開催されました。議事の内容は非常に幅広くありますが、今回は、ICFに関連する部分についてピックアップしてお話させていただきます。

 まず、分類の改正改訂委員会というのがあります。ICDICFも分類としてWHOが推奨しているものですので、統計を取るためには、ある程度時間を決めて決定をしていく、改正をしていく必要があります。ICFに関しましても、改正を行っております。2013年は、65件のうちの25件、2014年は、41件中の7件が採択されました。詳細に関しては参考資料9に載せております。

 これまでWHOは、こうしたICFの改正の内容を公にしておりませんでした。委員会において、これを改正しましょうという議論はしておりましたが、ICDの改正は毎年、ウェブ上に掲載、あるいは一定時期になると書籍が刊行されまして、改正の内容が公表されていました。けれどもICFに関しましては、2001年に公表されて以降、机上配布資料で置いておりますICFの赤本が発表されて以降、改正した内容があったのですが、公表されてきませんでした。昨年のスペインでの会議において、メンバーに改正しろ、改正しろと言うけれども、公にしないのはおかしいだろうという議論が当然のごとくありまして、ICFもウェブに掲載をすることになりました。資料自体は机上配布としてお示ししておりますが、そのような内容でPDFで公開されております。

 続きまして、教育普及委員会というものがあります。これは、ICDICFも広く世界的にデータを取るために普及する必要がある、そのためには教育をしなければいけない、というための委員会です。例年、普及のデータベースと呼ばれるもの、そして、ウェブ・トレーニングツールと呼ばれるものが議論されてきています。普及データベースに関しましては、オランダの協力センターがWHOと協力して作ってきました。いよいよ最終版になりますので、WHOに移管する手続が今、進められているところです。ICDのものは既に移管ができていまして、WHOのホームページに掲載してあります。それから、ウェブ・トレーニングツールです。今時ですので、勉強も紙ベースではなくウェブでやろうではないかということがあります。この議論も10年を超えてずっと議論しておりまして、ようやく、世の中に示せるところまできたというところです。

 教育普及委員会は各専門の委員会、例えば、ICFに関しては生活機能分類グループというのがありますが、そこと協力しながら普及のための教材を開発しようではないかということが議論されています。

 次にICFを議論するためのグループ、FDRGというグループがあります。メインの議論は、ICFを改正しなければいけない、やはり2001年から大分たっていますので、内容的にはここが古い、あるいは、分類として少し細分化する必要があるといった議論がされています。特に2014年に関しては、持ち越しも含めて84、そして、26の提案が議論されています。後半で御説明いたしますが、ICFも改正するための手続がありまして、メンバーによって、これがいいだろう、あれがいいだろうとやり方がコロコロ変わってきていました。それではいけないということで、後ほど御説明いたしますが、1年間を通じて意見を集約する、ある一定の階層の人たちが中身を精査する、最終的には協力センターから選ばれた投票権を持った人間が投票を行って採択、否決を決定する、というようなことがルール化されています。

ICFの教育についても議論が盛んに行われています。本年6月には、教育委員会とFDRGが共同で対面の委員会を開くことになっています。ICFの教育に力を入れはじめているところです。ICFの文献のレビュー等も基準がないということで、もう少し基準をはっきりしよう、それから、ICFを用いたデータの収集を活発にしようではないかというようなことが議論されています。まだ最終的なものではありませんが、モバイルICFといいまして、アプリケーションを使ってデータを集めたらどうかというような議論もされていました。

 このバルセロナの会議において日本からは、ICFの普及と実用化に向けては国内では専門委員会を開いていること、それから、シンポジウムを開催して普及の努力を続けていますということを報告させていただきました。進捗状況に関しては以上です。

 続きまして、参考資料1の御説明をいたします。参考資料1ICF専門委員会議題一覧」を御覧ください。久しぶりの委員会開催ですので、これまでの専門委員会の概要をまとめました。

 これまで、13回ほど委員会が行われています。「議題項目」としていますのは、その文言そのままではなくて内容をまとめて整理しております。開催当初は、机上に「生活機能分類の活用に向けて」という本がありますが、最終的に、この中にあるような評価点の議論が行われていたり、WHOで出しているICF-CYという児童版の議論をしたりということがありました。ここ最近については、年次会議の御報告と、シンポジウムについて、また、どのようなことをしたら普及について効果的かというような観点から幅広い視点で御議論いただいておりました。簡単ですが以上です。

 

○中村委員長

 御説明ありがとうございました。今までの御説明について、何か御質問あるいは御意見等はございますでしょうか。

 

○才藤委員長代理

WHOICDICFの関係性は何か議論されているのでしょうか。伝え聞くところによると、ICDの中に障害に関係するような項目が入るやら入らないやらという話を聞いているのですが。

 

○事務局

 今のお話はICD11(11)に関する議論だと思います。WHOとしてはICDの項目の中に生活の機能、いわゆるICFの項目も入れ込んでいこうではないかということが考えられていまして、その議論は進められているところです。

 

○才藤委員長代理

 それはICFの委員会のほうでも議論されているのか、ICDだけであって、ICFは無関係に動いているのか、どちらなのでしょうか。

 

○事務局

ICDの改訂については分野別の専門部会というのが作られているのです。例えば消化器などという医療系の専門部会もありますが、統計的なものを考えるという部会もあります。死亡統計に関してはMタグというタグがあるのですが、ICFに関しては、functionFタグというタグがあります。残念ながら日本からはメンバーがおりませんので詳細ははっきり分かりませんが、少なくとも、ICD-11には分類項目だけではなくて定義を入れましょうというようなことをしているのですが、同じように、例えば視覚障害の方の機能の低下などをICFの項目を入れていくことで説明を付けようではないかというようなことは議論されていると思いますし、多分、ウェブ上でそういう作業は進められていると思います。

 

○才藤委員長代理

 素人から考えると、恐らくICFのうちICDに入るのは、むしろ機能と身体のところだけで、その他は入ってこないのではないかと思うのですが、その理解でいいのですか。

 

○事務局

 はい。

 

○才藤委員長代理

 日本国内のICDの委員会でもそれは議論されているのでしょうか。

 

○事務局

ICD-11はまだ、今、WHOで作成中ですので議論になっていません。

 

○中村委員長

 ほかにございますでしょうか。私からよろしいですか。

 前半のWHOにおける説明の中で、2014年に普及データベースあるいはウェブ・トレーニングツールの作業がWHOに移管するということをお話になりましたが、これが移管されますと、例えば我が国でこれをどう利用するかといったようなことはどのように考えていけばよろしいのでしょうか。あるいは、何かお考えがおありになるのでしょうか、普及データベースあるいはウェブ・トレーニングツールですが。

 

○事務局

WHOがどのように出してくるかというところが今分からない状況ですが、はっきりしましたら、こちらの委員会でも御検討いただければと思っております。

 

○中村委員長

 分かりました。直接、向こうから特にオーダーがあるというわけではないということですね。我々は、できてから普及のためにどうすればいいかと考えるということでよろしいですか。

 

○事務局

 はい、この作成については、手を挙げた協力センターがやっておりますので、そこに今、日本は入っていませんので、固まってから御報告をしてということで考えております。

 

○中村委員長

 分かりました。ありがとうございます。

 

○出江委員

 参考資料4にあります改正の手続ですが、URCの委員会とこの委員会との関係について教えていただけますか。この委員会でこの改正の方向について何か意見を言うことができるのかということです。

 

○事務局

 後半で御説明しようと思っておりましたが、今年の提案の内容は既にWHOのホームページに掲載してあります。その内容に関しましてはこの専門委員会の委員に、日本として賛成していいかどうかということをお伺いして、それで、投票するということを考えておりますので、御協力をいただこうと思っております。

 

○出江委員

 ありがとうございます。

 

○中村委員長

 ほかにございますでしょうか。特になければ次にいきたいと思います。続きまして、事務局から御説明をお願いします。

 

○事務局

 続いて資料2、「今後の取組について()」を御説明いたします。こちらの資料は、本委員会における今後の取組についての大枠の案をお示ししたものです。まず国内のことを念頭に置き、ICFの普及として考えられる項目と、WHOへの参加として、ちょうど話に出たような改正についてが主になると思いますが、そういう観点での項目というように分けております。ICFの普及の1つ目、シンポジウムの議題等について、参考資料を説明させていただきたいと思います。

 参考資料2を御覧ください。ICFシンポジウムの開催状況として表にしております。これまで4回ほど開催いたしました。第1回は「生活機能分類の活用に向けて、共通言語としてのICFの教育・普及を目指して」と題して、平成221月にリバティーホールにて開催いたしました。主催者は厚生労働省です。

 概要としては、その当時の専門委員会の委員に演者になっていただき、講演をいたしました。「新予防給付におけるアセスメント・ケアプランの作成の考え方」は、日本介護支援専門員協会会長の木村委員に御報告を頂きました。次に「退院支援におけるICF評価の試み」として、千葉大学の医療連携部の藤田委員からお話を頂きました。「精神障害領域におけるICFの活用に向けて」は、国立精神・神経センター病院副院長の安西委員、「ICFの活用 「生きることの全体像」についての共通言語として」は、国立長寿医療センター研究部長の大川先生に御講演を頂きました。

 それらを踏まえてのパネルディスカッションは、当時の専門委員会の委員長大橋委員長に座長を務めていただき、パネリストとして今までの講演者に加え、指定討論者として新潟医療福祉大学の真柄先生、郡山市医療介護病院保健福祉等事業推進室長の島野先生に加わっていただき、議論を行っております。

 第2回は平成231月にニッショーホールにおいて、これも厚生労働省主催で行いました。そのときは第1回の反省を踏まえ、そもそもICFとは何かということが、やはり一般の人たちは理解していないのではないかということがあり、まず大川先生から「ICFの基礎、そして活用に向けて」ということで、自身でなさっていた大規模障害者調査の例を取って御説明いただきました。続いて「専門職の卒前・卒後教育におけるICFの活用」をテーマに、医療現場である初台リハビリテーション病院の取出先生から「ICFの活用に向けた提案」として、「回復期リハビリテーション領域のソーシャルワーカーの現場から」と題して御講演を頂きました。また、「精神障害者への支援とICF」というタイトルで、非特定営利法人じりつ代表理事の岩上先生から、現場の活用状況をお話いただきました。それから、医療連携が大事だということがあり、首都大学東京の大嶋先生から、「保健医療福祉専門職の連携協同と、その教育におけるICFの位置付け」として実践している現場の意見ということで、御意見を頂きました。

 第3回は平成2412月にみらいCANホールで、厚生労働省とともに日本診療情報管理学会の主催で、実際にコードを付けることを考えてみようではないかということで講演をいたしました。1回、2回ともありましたが、やはり概論は必要だということで、大川先生よりICFの基本と、医療面というターゲットを絞った活用の提案がありました。パネルディスカッションとしては東京都医師会の野中先生、日本介護福祉士会の舟田先生、日本診療情報管理学会の高橋先生と大日方委員からディスカッションを頂きました。このときの御感想については、追ってお話いただければと存じます。

 第4回はつい最近、平成273月に開催いたしました。折しもICFコアセットが翻訳できましたので、日本リハビリテーション医学会が公表するということで、一緒に主催していただくことになりました。編者であるGerold Stucki先生がスイスから来日され、基調講演をしていただきました。概要としてはコアセット日本語版の出版に関しての意義や翻訳チームからの御意見ということで、出江委員、山田先生からの御発表と、鼎談として、それぞれの先生方から御意見を頂戴いたしました。シンポジウムの概要に関しては以上です。

 

○中村委員長

 今のお話の中に出てきましたが、今まで4回開かれており、基礎あるいは基本というコンセプトと、実用化に向けた提案という大きな2本の柱があったように承りました。まず委員の中で大日方委員に、第3回にパネリストとして御参加いただきました。御感想なり御意見なりがあれば、お聞かせいただけると有り難いと思います。よろしくお願いいたします。

 

○大日方委員

 第3回の活用のパネルディスカッションでは私自身の障害を、私と大川先生とでいろいろお話して、ICFの視点で見るとこういうことがあるとか、私自身が受けた医療現場の中での経験を基に、こういう活用の仕方があるのではないかというお話をしたように記憶しています。個人的にICFの概念というのは、非常に分かりやすいものだと思っております。特に現場のドクターや看護師、リハビリや介護といった方々と患者が話をするときのいわゆる共通言語として、自分としてはこういうことがやりたいという生活に必要な動作とか、こういう日常生活を送っているのだという話をするときのツールとして、非常に使いやすいと思っており、そのようなお話もさせていただきました。

 

○才藤委員長代理

 大日方さんに伺いたいと思います。ICFが使いやすいと思ったというのは、昔のICIDHなどを御存じの上でそういう話をなさっているのでしょうか。

 

○大日方委員

 私は患者以外の者ではないので、十分な知見はないと思っています。

 

○才藤委員長代理

 コメントをさせていただくと、ICIDHというのは1980年にできました。「ICIDH2」と最初に呼んだのがICFで、2000年にできた後に名前がICFに変わったのです。この2というのはセカンドバージョンという意味ですが、セカンドバージョンにしては大胆に変え過ぎたので、「ICIDH」という言葉をやめて、かつネガティブな表現をやめるために「ICF」となったのです。率直に医療者から見ると結構大胆過ぎて、どうやって使うのかというのがあって今まできています。その前のバージョンはある意味、すごくシンプルなモデルなのです。それでご質問したのです。では、ICIDHというのは御存じなくて、ICFを見ると医療よりもうちょっと広い世界で、人がよく見えますねという意味で使いやすいということですね。

 

○大日方委員

 ええ。

 

○中村委員長

 恐らくICFの考え方という側面とどう使うかというのとは、ちょっと違う次元があるのかもしれないという意味かと、今お話を伺っていて思いました。それでは、第4回に講演で出ていただきました出江委員からも、御意見あるいは御感想をいただけると有り難いです。

 

○出江委員

 厚生労働省からお声掛けを頂き、ICFの事業に関わることができたということで、副理事長の立場ですけれども、学会として非常に喜びました。実際にICFのコアセットの翻訳に携わりました。もちろん、そのまま日本の医療の環境で使えるものとしては難しいのかもしれませんが、使っていくことについてはコアセットという形であれば、比較的できるのではないかという印象を持ちましたし、会場の聴衆の先生方もそのように感じられたのだろうと思います。会場として、昭和大学の旗の台キャンパスを使わせていただきました。大変予算的に厳しい中、無理な運営をさせていただきましたが、昭和大学の医局の先生方、藤田保健衛生大学の医局の先生方などの全面的なバックアップで、その分手作りでみんなで当事者意識を持ってできたのではないかと思います。どうもありがとうございました。

 

○中村委員長

 それでは才藤委員からもコメント、御意見を頂けると有り難いです。

 

○才藤委員長代理

 率直な話をします。それをしてからのほうが今後の議論がしやすいと思いますので。私は今、日本リハビリテーション医学会の副理事長をやっていて、医学会には相当長い間、関与してきました。昔からこの委員会に参加している人は、お分かりだと思いますが、日本リハビリテーション医学会は、ICFを多少外から見ていたというか、当事者にはなっていませんでした。先ほども話したように、ICIDHには非常に親しみを持っていたのですが、ICFになったことで分類が福祉側に動いて、医療の現場ではちょっと使いにくいと感じていたのです。そのような中でためらっているうちに、世の中がICF一色になってきました。国際リハビリテーション医学会も「ICFでいくんだ」と言い出しており、いよいよICFに移らざるを得ないなというのが本音のところです。そこで、やる以上はきちんとやらなくてはならないと考えているのです。

 もう1つ始めるにあたってここで申し上げておきたいのは、データを取るのであれば最初はシンプルな系のほうがいいだろうというのが私たちの考えです。医療現場は入院して退院するというように、最初と最後がはっきりしやすいのです。ICFをきちんと使いだすという意味では、特に医療現場での対応で始めるのがよさそうだろう。そして、その際には日本リハビリテーション医学会の役割があるのだろうという考えで、今回Stuckiさんも呼んで、厚労省と一緒にやっていきたいというのが率直なところです。そういう意味で今までの歴史を拝見しますと、恐らく医療系というよりもうちょっと社会系によっていたものを少し医療系に戻ることになると思っています。ですのでもちろん、それがどういう意味なのかは今後よく考えていく必要がありますし、本当にそれでいいのかということも考えなくてはなりません。

 いずれにしろ、生物の問題に近くなればなるほど系は簡単になります。そういう意味では社会よりは医療のほうが簡単だと思います。ICFという難しい課題を扱うのだったら、最初に医療から入っていって、大体なじんできたら広く、全ての障害に関わる、あるいは生活に関わるところを見ていったらいいのではないかというのが、日本リハビリテーション医学会としてのスタンスです。そういう意味で前回のシンポジウムを組ませていただきましたし、今日、委員会に日本リハビリテーション医学会から3人の委員を入れていただきました。私たちとしては、全面的に御協力したいし、進んでいきたいと思っています。

 

○中村委員長

 今、直接御参加された、あるいは関わられた委員から御意見がありましたが、ほかの委員の方から御意見はありますか。石川委員、何かコメントを頂けますか。

 

○石川委員

 私は、医師会では医療介護連携をずっとやっています。これにICTを使うということで随分長いのですが、ICTの医療介護連携の中では最も期待されるべきものだと、この会議に出ていてかねてから思っていました。しかしその普及の歩みは非常に遅く、実際に私が6年ぐらい前に、1つの県で脳卒中の連携パスを全県的に展開したときに、機能評価を何でやるのかという議論があったのです。しかし、そのときにこの話は全くなくて、FIMでやるわけです。もう既に千葉県の人口600万人のうちの300万人をカバーするような範囲で、FIMで幅広くやられてしまっていて、正直言って置き換えることはなかなか難しくなってきているのではないかと思っております。私なども余り時間がありませんので、このまま遅々としてICFの議論が発展しなければ、私たちの目が黒いうちはまず駄目だろうと思っているのです。ただ、社会参加というところに目を付けているという点で言いますと、医療介護連携が今後2025年問題で一生懸命展開しているところでは、絶対に必要かなとは思っているのですが、なかなか難しい問題があるというように思っております。

 

○中村委員長

 ほかにいかがでしょうか。

 

○島田委員

 このICFの普及のためには、やはりコアセットの活用に尽きると思うのです。余り大きくやってしまうと普及しない。まず普及させるには、コアセットをいかに使うかです。今、石川委員からお話があったこの意義ですが、例えばFIMにしてもそうです。各疾患のいろいろな進捗があります。ただ、それは疾患ごとの進捗で、疾患と疾患を比べるものにはなっていない。それができるのが唯一、このICFだと思うのです。ですから社会参加も含めた共通言語というのは、確かにそのとおりだと思うのです。いかに普及させるかは、コアセットをいかに上手に使うかに尽きると思います。そのためには才藤副委員長がおっしゃったように、余り右寄りに最初から社会参加のことだけをやってしまうと普及しません。やはり日本サイドでしっかりしたデータを出した上で、それからメリットを説いていくというのが、一番の近道かなと考えています。

 

○中村委員長

 ほかにありますか。

 

○鎌倉委員

 初めて参加させていただきます。看護の領域から考えますと、ICFの概念は導入されているのですが、分類や指標として活用というところまでは全く行っていないというのが現状です。ただ、社会から環境から総合的に人を捉えるという考え方そのものは、看護にもかなりフィットする概念ですので、その意味から指標として活用していくような方向で、もう少し看護の中で発展、広報できればいいかと思います。介護保険制度もこの度の改定で、社会参加というのが出ております。そういった意味からも、ちょっと視点は違うかもしれませんが、高齢者にも活用できそうな気がいたしました。

 

○中村委員長

 ほかに、大谷委員はいかがでしょうか。

 

○大谷委員

 私も初めて参加させていただきます。よろしくお願いします。具体的な話としては今、本務の一部である健康マネジメント研究課で藤沢市とタイアップして、健康づくりを進めているというのが現実の問題としてあるのですが、いつどこで何をやろうとしても、こういった共通のプラットフォームがないということが一番の問題でもあり、なかなかうまくいかない原因になっているのです。私がこの話を聞いていて、歴史的なことは全く存じ上げませんでしたけれども、いずれにしてもとどまっているべきものではなく、どんどん前に向けて、ここに関わる団体だったりグループだったり、あるいはもっと大きくいろいろな組織が関わって、共通言語としてこれを使うためにどうすればいいかということを考え、できればスピーディーにやったほうがいいのではないかという感想を持ちました。

 

○中村委員長

 今、各委員のほうからICFの概念とその共通言語としての活用ということで、是非前に進むべきだという意見がほとんどであったと思います。では、なぜ行きにくいのかということを少し御経験なり携わられた方なりから、御意見のある方にピックアップしていただけたら有り難いと思います。どうしてこれほど良いと言われ、あるいは医療職でない大日方委員のほうからも、大変分かりやすく、医療者側と患者側とのコミュニケーションツールとしても素晴らしいという御意見もありながら、我が国においては進んでいないのかということについて、御意見を頂けたら有り難いと思います。

 

○才藤委員長代理

 多少独断が入っておりますが、医学というのは、どちらかというと「病理」といって、病気の原因を解明して治し、それが大成功に結びつくという事象です。最近でいえばiPSなどの進歩は凄いわけです。しかし患者側からすると生活が何とかなれば、病気などはどうでもいいのです。そういう視点が片側にあるけれども、反対側は病気を治すともの凄くパワフルな立場があって、両者はなかなかくっついていなかったのです。しかし人が生き残れるようになると、やはり生き残ったら良い生活をしたいということで、絶対に生活そのものを見なくてはいけないというようになってきた。これはある意味生き残った結果、そういうニードが出てきたわけです。そこで生まれてきたのがリハビリテーション医学です。

 つまり、病気の肝臓がどうなっているという話ではなく、病気を抱えたその人の生活がどうなっているのかもきちんと見てくださいと。そう考えると、周りにいる人も重要だし、その人たちのQOLも重要だし、実際にどうやって歩くかというような実生活も重要というようになってきて、こういうように障害の分類がたくさん提案されるようになりました。1970年代ぐらいから始まって、1980年代にICIDHができ、2001年にICFができました。

 しかし医師のほうは病理で語ることに慣れていますし、そのほうがとてもすっきりするのです。だからなかなか別のものを使いたくない。逆に社会の方は、それなりにものすごく複雑なので、「私の幸せとあなたの幸せをどうやって比べるの」と言っても「そんなのうまくいくわけがないじゃない」という話があって、なかなかまとまらなかった。ICFの絵は結構綺麗な絵で、環境因子などもきちんと組み込んでいる。しかし、これまでの医学のモデルのように病名を付けてすっきりとやっていくのとは、どうも馴染まないということで、今まで来てしまったと思うのです。

 課題は、ICFでは、ずっと右側というか社会的なことが強過ぎる一方、医療のところが分かりにくいので、皆さん、口では「いいよ」と言うけれども使わない。ですからまずやるべきことは、使うことだと思うのです。そして、使うためにはシンプルにしなくてはならない。先ほど石川先生からFIMの話が出てきました。FIMは、ICFの「ディスアビリティ」と呼ばれている部分の、一番の基本となっている評価セットなので、ある意味、両サイドから範囲を決められて上手く収まっています。ですから採点しやすい。それで生き残ってきた。ではICFはというと、広範囲をカバーしているので複雑かつ簡便でなく上手く使えない。そういう意味では簡便になるからくりを作って、皆さんが使ってみようというところまで具体化するのが、今回の仕事ではないかと思うのです。そうなれば自動的に次のステップに移れるので。

 また、その際、恐らく医療側のほうがやや余裕があるので、まず医療から始めて、厳しい環境のなか頑張っている福祉へと普及していくというのが、多分戦略的にも歴史的にもよいのではと思います。きっかけというか、一番いい入り口だと思うのは、総合計画書です。これはリハビリを始めるために必要な書類で、50項目程の状態を記載して、家族と本人の同意をもらいます。幸いなことにICFベースなので、これを確実にICF所見に反映できるようにしてそこから始めるのが、多分戦術的にいいのではないかと思っております。歴史と個人の意見が混じった説明で分かりにくかったかもしれませんが、私の理解です。

 

 

○中村委員長

 今のお話をまとめますと、難しさは、シンプルでないということですね。

 

○才藤委員長代理

 そうです。

 

○中村委員長

 シンプルでないということを才藤委員が言われましたが、それに取り組むには資金が要る、あるいは労力が要るということですか。その2点ですかね。

 

○才藤委員長代理

 そういうことです。

 

○中村委員長

 そのために総合計画書ということを言われました。また、プラスというか得られるものとしては、直接的な利益というのが少し必要だということですね。もう1つは、戦略が必要だと。つまり、それは先ほどのシンプルでないということに通じるかもしれませんが、いきなり全部行くというのはやりにくいのではないかと。才藤委員が言われたことは、そういうことがあったように思います。そのようなことで才藤委員、よろしいでしょうか。

 

○才藤委員長代理

 雑駁な話ですみません。

 

○中村委員長

 先ほどの石川委員のお話にもありましたが、FIMが使われているというのは、石川委員の言葉とすれば、既にFIMがあるのにこのICFがどうしてくるのかという意味でしょうか。そういう意味ではないのですか。

 

○石川委員

 いやいや。もう6年前の話の私の提案です。脳卒中の急性期から在宅までの連携パスを作るときに、どういう生活機能の伝達の仕方がいいかということで議論をしたのです。そのときに中心になっている整形外科の先生方が、FIMがいいだろうということで取り入れたということです。そのときにICFの話はなく、私はここに来るまで全然知らなかったということです。

 

○中村委員長

 それでは事務局から何か意見はありますか。

 

○事務局

 意見ではないのですが、今の議論について、机上配付資料3「生活機能分類の活用に向けて」の4ページに概念図がありますので一応補足しますと、左側が機能で右側が社会ということで、委員の皆様方もこちらを念頭に置いて御説明いただいていると思い、申し上げました。この図はICFにおいて基本的な図ですので、本日傍聴の方々にもICF専門委員会の第1回の資料の同様の図を御参考として配布させていただいております。

 

○石川委員

 議論の最初のところで教えていただきたい。私は大学には全然おりませんので、35年前に大学を卒業したきり、今どういう教育が行われているかというのは詳細に分かりません。私が医者になって一番思ったことは、とにかく介護について医学部は全く教育していないということです。少なくとも私たちの教育の中にも入っていなかった。歴史的に介護保険が組み立てられてきたときも、やはり医師の介護分野に対しての教育というのは、若い人を見ても全然なっていないというか。我々が介護保険を構築してくるときに、「お前らは何をやってきたのか」という感じが多かったのです。今、介護分野のことがどうなっているのかということと、この教育の中でリハビリテーションを中心に、こういう生活機能分類について教育がやられているのかやられていないのか、それだけを教えていただきたいと思います。

 

○島田委員

 私ども秋田大学はそれを非常に憂い、全国で最初に医学生の1年生に介護実習を必修にしました。バスで全部連れて行って、丸々1週間朝から晩まで、そこでどういう問題点があるか、その仕組みはどうなっているか、収入はどうなっているかという実習をさせます。それからいろいろな勉強をさせて、4年次に医学科と保健学科の合同授業をやります。そこではICFから、前のシステムから、介護がどうなっているのか、法制的にはどうなっているのかという授業を、時間は少ないのですが、医学科のリハビリの教員と、我々整形外科医と、外部の講師と、保健学科の実際のナースと、PTOTが教師として出て、学生に教えるような努力をしましょうと。そうしなければ、我々のような地方の高齢県は生き残れないという強い危機感を持って行いました。それは非常にうまくいき、その取組は全国雑誌にも取り上げられましたが、それが全国的に進んでいるかというといかがでしょうか。

 

○出江委員

 例えば、関連職種のことも皆さん知らないですよね。PTOTの区別も多分、多くの医師はできないのではないかと思います。ということは、提供されているサービスの内容も御存じないと思います。そういう状況ではないでしょうか。

 

○島田委員

 やはりICFを普及させるには、一部のスペシャリストだけに宣伝しても広がらない。やはり卒前教育・卒後教育にしっかり組み込んでいかない限り普及しないでしょう。それにはやはり簡略化に尽きると思います。これを用いるメリットを強く申し上げなければいけない。例えば、疾病の治療から始まり退院する、介護保険を使う、福祉施設に行く、在宅でもいい、そういう人たちを最後のレベルまで一緒の指数で見ることができるというメリットを強力にアピールすべきだと思うのです。そうしない限り、概念は知っていても使おうというところまでには至らない。ですから教育もすごく必要だし、PRも必要だろうと思います。

 

○才藤委員長代理

 ちなみに医師の国家試験には近年、ICFが出るようになりました。「おう、出てきたな」という感じです。PTOTの国家試験にはしょっちゅう出てきています。そういう意味で学生の教育のレベルでこういう表は大体出てきているし、それを使うのを良しとしているというところですね。

 

○大谷委員

 介護の現場のことを大学時代、学生教育でどう教えているかという切り口のお話だったと思うのです。私が今から言うことは、そことダイレクトにつながってはいないのですが、学部をまたいだ学部間交流と言いますか、慶應では「三学部交流教育」と言っております。看護と医学と薬学のそれぞれの学部の学生が、1年生、3年生と医学部6年、看護だったら4年生ということで前期、中期、後期というように分けていますが、それぞれが一堂に会して、例えば中期の場合だったら模擬患者をつくって、医学という立場から、看護という立場から、薬学という立場から自分たちの切り口で考えを述べ、それぞれがどのぐらい違うかということを実感させるプロジェクトと言いますか、教育を3年ぐらい前から始めております。そうすると、医学部の学生がびっくりするのは、病気のことだけ知っていても結論が出ないことに気が付きます。先生が御指摘の現場を知らないということと直接はつながりませんが、学生がそれに気付くという意味では、非常に大事なポイントではないかと思ってやっております。

 

○島田委員

 それについて今、全国の地方の国立大学では相当数、介護研修をさせたものを冊子として全部まとめて作っています。そういう大学がものすごく多いのです。その内容を読みますと、我々が医学生だった頃とは桁違いに現場に対する理解や思いやりというものが、今の学生からは感じられます。

 

○中村委員長

 今の教育、あるいは大学での現場等での取組についてお話いただきましたが、ほかに今後の方向性ということで御意見等を頂けますか。

 

○石川委員

 教育の中で、そうやって取り入れられているということを聞いて安心したわけですが、基本的に私たちは2025年に向けて、地域包括ケアシステムというものを構築しているわけです。これは地域から、かなり大々的な日本の運動になるのではないかと考えています。基本的にはかなりの人生の価値観のパラダイムシフトが必要です。つまり、長寿というのが良いのか悪いのか、というところまで考えさせるようなケアシステムの構築なのです。そうして見ますと、例えば人間の生き様で長寿というのが本当に良いのか悪いのかというところまで考えられるような地域包括ケアシステムの中で、このICFというのは、私はすごく必要だと思っているのです。

 そうだとすると、厚労省でやっているICFの会議そのものが、年に1回、2回だけでは駄目です。もっと頻繁にやる。私だったら、こうやって会議に出れば確実に日本医師会の役員の所に完全に持って行けます。そういうことを通じて少しでも広げていくことが必要だと思います。教育界でそうやって頑張ってやっていただいて、学生たちを育てるのであれば、今までとは違ったICFの拡大ができるのではないかと思うのです。是非、そういうように厚労省のほうも考えていただくと。

 それから、私は全国医学部長・病院長会議の辺りと定期的に懇談をしています。この話をして、省は違いますけれども、文科レベルでもこのことについて提案していくことも必要ではないかと思いますので、そういう方向でやらせていただきたいと思っております。

 

○中村委員長

 具体的な取組もサジェスチョンいただきましたが、ほかに御意見はありますか。

 

○鎌倉委員

 看護の領域では、専門領域の認定看護師や専門看護師を育成しているのですが、その教育にICFは余り入っていないと思います。今後はそういうところにも働きかけて、ICFを入れていくと、草の根のように広がっていくのではないかと思いますので、それを看護の領域では考えたいと思います。

 

○中村委員長

 お聞きしていて、地域包括ケアシステムの考え方に是非とも入れるべきである、あるいは認定看護師の教育等々にも、こういう考え方が入っていかなくてはいけない等々の御意見を頂きました。お聞きしておりますとICFのコンセプトの考え方は、医療の病理からだけ始まるのではなく、環境因子等々を加えていくという考え方が非常に重要であるということについては、恐らくほとんど異論はないのだろうと思うのです。企画課長が最初に言われましたのは、では、それがかなり進んだ現状でICFを共通言語のツールとして、実態として使っていくにはどうすればいいかというところです。

 これまでの4回のシンポジウムもその概念や基本、基礎と活用の2本があったのです。今日の議論をお聞きしておりましても概念の良さについては、今異論を挟む方はほとんどおられないような状況と思います。教育の現場や医療の現場にもかなり入っていて、話をするときに非常に有効なものだということについては、我が国においてもかなり広まっていると思われます。例えば、今、リハビリテーション関係の教科書でICFが載っていないものはないと思います。障害に対する考え方も、ICFの考え方が入っていないような授業はないと思うのです。

 ただ、今の課題は、ICFを共通言語として使ったものがあるのかということです。それがどのように使われたのか。ICFは違う疾患の間で比較ができるとか、教育でも使える、研究でも使えるということが目的とされているのですが、本当に我が国でICFという指標を使って記載をし、登録をし、それが蓄積されているかどうかについては、かなり疑問があるというのが現状です。企画課長が言われたのもそのことだと思うのです。それが進まない理由として、シンプルでない、また、それをやることによって何か得るものが具体的にあるのか、記入する人にどのような利益があるのかが、必ずしも見えていないということを才藤委員は言われたのではないかと思うのです。では、それを乗り超えていくのにどうすればいいかということを、今回この委員会で是非議論をして、実効あるものに進めばと私は思うのです。概念が素晴らしいということについては、私はほとんど異論がないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

 

○出江委員

 同感です。どう使うかの1つの答えが、ICFコアセットだったわけですが、翻訳して感じるのは、やはりそのまま日本の医療で使うことについては、まだ改善の余地があります。ただ、使い始めなければいけないということについては合意で、そこからどう使うかです。ジェネリックがあり、大きな所ではコンプリヘンシブまである中で、日本の中でどう使うかについては合意されたと思います。ただ、あれをそのままどう使うかについては、まだ知恵が必要だと思います。

 

○中村委員長

 話はそうですが、ここで次の資料を見ますと、ICFを使った研究について、過去の研究状況が参考資料として上がっております。これを一度御説明いただいた後で、この議論を続けるのがいいのではないかと思いますので、提案させていただきたいと思います。よろしければ、そのように進めていただきたいと思います。

 

○事務局

 今、かなり幅広い、いろいろなお話をしていただきました。資料2で、今後ここで何を議論するかということで、「その他」のように書かせていただいていましたが、そのような観点も含めて御議論いただいたと思います。

 先ほど事務局の説明から漏れてしまったのですが、シンポジウムについては、今年度の終盤ぐらいに開催したいと思っています。それについても具体的な御意見を頂きたいということがございます。そういうことも含めて、後ほど御議論いただければと思います。

 それでは、参考資料3の「ICFを用いた研究について」を、簡単に御説明させていただきます。資料2は「ICFに関する研究」とさせていただきました。具体的な活用の事例として、現状で一番具体的で分かりやすいものなのではないかと考えて、1つ項目を立てて、資料を付けたものです。

 参考資料3は、事務局で参考までに過去の研究を概観するようにということで、資料を作成いたしました。実際は、厚生労働科学研究だけではなく、広い分野の広い資金で研究がされていると思いますが、ここでは便宜的に厚生労働科学研究データベースのみ検索を行いまして、御紹介をさせていただいています。ICFや国際生活機能分類という観点で検索をして、38の課題が出てきました。研究内容としては、こちらもあくまでも事務局が便宜的に区別をしたものなのですが、ICFそのものに関すること、例えば昔のものですと翻訳等もありますが、そういうものですとか、ICFの評価に関するもの、それから、ICFの指標や分類を用いたものです。

 例えば高齢者の分野、障害者の分野、被災者に関するものなど、いろいろな分野があります。障害者も、身体も知的もありますが、そういうところで使ったような研究もありました。それから、ICFの利活用という観点での研究もありました。こういうものが出ているということで、まとめております。

 一覧表は、研究内容等を簡単にまとめたものです。御参考にということで、こういう分野の研究があるのだなということを、ざっと見ていただければと思います。資料については以上です。

 

○中村委員長

 これをざっと見ますと、ICF関連でかなりの研究がこれまでやられてきたということが分かります。本委員会の目的と完全にフィットしているかどうかは別にしても、厚労科研を含めた国としての研究が、約40件弱なされているわけです。研究課題名をざっと見ていただきますと、ここで話題に出たようなことについても、例えば2枚目の「生活機能向上に向けた介護予防サービスの在り方、技術に関する研究」等々、研究が行われているわけです。研究の進め方ということが次のテーマでもあったわけですが、これを踏まえて、こういう現状があって、なおまだ進んでいないということだと思われます。

 これは科学研究費のものだけなので、一般の雑誌などにある、我が国でICFのどのような研究がされているかは、ここでは拾われていません。リハビリテーション関係の雑誌を見ますと、ICFの解説だけではなく、ICFを用いた研究等々の報告もなされています。そういう意味からいうと、全くどこも誰も利活用をやっていないわけではなくて、やられているわけです。ただ、現状がどうなっているかということを包括的に、俯瞰的に見る作業が、残念ながらなされていないのではないかと思われます。

 実際にICFを使われた方が、どこに問題や課題があったのか。それから、利活用がその後も続いているのかどうか。今後、利活用の推進に向けて、具体的にどのように進めていくのかについては幾つかの方法があると思います。1つは、今からモデル事業的にどこかで始めるというのが1つの方法ですし、もう1つは既に我が国でやられている40弱の研究、雑誌等で報告されているものをもう一度俯瞰的に見て、どこに問題があったのか、利活用していくためにどういうところを使った人が意見を出しているのかをピックアップするという方法が考えられます。今日のお話を聞いていても、概念の話は皆さんできるのですが、実際にどこに課題があったのかということが、なかなか議論に出てこない。実態をもう少しつかむ必要があるのではないかと思いながら、意見をお聞きしました。この点、いかがでしょうか。

 

○出江委員

 自分では余り使っていない立場で、根拠がない意見ですが、このICFを医療のどのフェーズで使うか。コアセットは御存じのとおりアキュートもあるし、クロニックのところもあるわけですが、アキュートは使えるのかという質問もありました。研究のリストを見ると、余りアキュートのフェーズはないのではないかと思います。ただ、一方で、医療の中に組み込むのであれば、アキュートフェーズとの連携はどうしても外すわけにはいきませんので、そこをどうするかという知恵が必要だと思います。クロニックの部分は、日本には回復期病棟という非常に優れたシステムがありますので、そことうまく連携させれば組み込めるのではないか。もし使うとしたらそこからですが、アキュートとの連携は課題になる。さらに、右の話が先ほどありましたが、そことの連携は次のフェーズで考えるべきだと思います。

 

○中村委員長

 今のお話ですと、医療から障害という流れの中にフェーズがあるので、それぞれにICFの持っている意味と使い方が変わる可能性があると。ざっと見たところ急性期が余りないので、心配があると。そういう御意見でよろしいでしょうか。

 

○出江委員

 はい。

 

○才藤委員長代理

 一般に、変数が増えれば増えるほどn(サンプル数)は必要になって、ICFはものすごい数の変数があるので、もしそれをそのまま使おうとすると、地球上の人間をみんな調べなければならないぐらいになると思うのです。そういう意味では、まず変数を減らす作業がどうしても必要になってくる。それには、コアセットが適切となる。しかし、それにしても多次元で、一次元ではないので、それぞれの関係を見るのも結構、手間がいります。

 これだけの研究の数があるのですが、私が知る限り、ICFが使えそうだという包括的結論をだした研究はないのではないかと思います。少なくともnでは、1万件ぐらいのnを持たないと、何か言えるような構造は見えてこないと思います。そういう意味では、最初から大規模な研究をするデザインをしないと先に進まないのではないかと思うのです。記述的というか、要するに印象としてこんなものだ、というような話は幾らでもできますが、それでは弱いわけです。もちろん、これまでのレビューは必要ですが。

 

○中村委員長

 今、貴重な御意見を頂いたと思います。レビューはするにしても、そこに答えがあるかどうかは分からないと。スモールサイズの研究であれば、使い勝手がどうだったか、あるいは、結論としては、ある疾患なりある状況でどうだったかということしか出ないので、大きくは答えはなかなか出にくいのではなかろうかということです。それに対する対策としては、前もって、これを使っていくためにどうするかという戦略を持って使い始めるというアプローチが、もう1つ要るのではないかということですね。ほかに御意見ございますでしょうか。今後どう使うか、あるいは現状について。

 今、才藤委員が、地球上の人間全部と言われましたが、要するに、項目が非常に数が多い。確かに、1人の方に全項目をとるというのは現実的でないということは、多くの方が認めておられて、ICF自身も、それをしろとは言っていなくて、利用できるところを使ってくださいと言っている。そう私なりには理解しています。そこを少し戦略的に絞って、どちらかというと医療のほうからと。ただ、ICFというのは、医療のほうからだけいくというのは逆戻りになりかねません。もともと障害というのは疾患、病気があってのことだという、かつてのモデルの考えと同じにはならないように配慮しつつ、医療のところから入っていくのもよろしいのではなかろうか。そういう御意見であろうかと思います。いかがでしょうか。

 

○才藤委員長代理

 仮説的な話を申し上げます。コアセットの中に、ジェネリックセットというのが、基本中の基本として7項目あります。基本中の基本というのなら看護必要度のような話で、入院患者全員とればいいではないかと思うのですが、拝見すると、見た瞬間にこれは受け入れられないだろうと感じるのです。ですから、本当に使うときには相当工夫しなければならない。このような外見性を真剣に議論して始めない限り、総論賛成、各論何も無しのような話が、ずっと続くでしょう。実際、研究報告数の経年変化を見ると、2010年までにどっと出て、そのあと下火になっています。ティッピングポイントを迎えずに衰退してきている研究数と思えます。委員会もそうですね。最初は毎年やっていて、だんだんなくなってきている。これはある意味では、しくじっているというパターンです。ですから、この延長線上でいく手はないのではないかと思うのです。大胆に方向転換をして、数年の期間で戦略的に仕掛けて、それでも駄目だったら撤退するぐらいの覚悟で絵を描かないと、結局、ICFは総論賛成、各論どうでもいい、という話になりそうな気がします。ですので、これはちょっと手を変えないといけないと思います。

 

○中村委員長

 御意見いかがでしょうか。それではどうするかということです。才藤委員も言われていましたし、この場で出た御意見は、やはり一工夫が要る、例えばジェネリックをやるにしても、教育的なことも少しやらないと、今のままでは、すぐには使いにくくなっているということでした。シンプルさをある程度許容するということと、日本流に使うためにどうするかという工夫がもう1つ要るというのが、今サジェスチョンを頂いたことのように思います。いかがでしょうか。ICFの利活用をやろうと思ったら、この委員会ではここまで到達するよう議論をしたいという目標を設定する必要がある。目標が設定できないと、会をやっても、同じような議論が繰り返されるだけになるのではないかと危惧します。目標になるような御提案なりが頂けるようでしたら、そして、それが委員会としてオーケーであればと思いますが、いかがでしょうか。

 

○石川委員

 私は、中医協の下の分科会で、DPC、入院医療費といった委員会をやっているのですが、これも、インセンティブをどう付けるかによって、爆発的な拡大になると思います。DPCなどを見ていますと、コーディングをきちんとやると係数が高く与えられるわけですよね。そうしますと、当然のように医療収入は上向く。例えばこれをいろいろな所で教育するようなワークショップをやっても、そういうものが未来的に用意されているということであれば、これはいつかコーディングすることによって係数に関わってくる。そういうことであれば、絶対にこれは広がります。そういうものを、きちんと何年間というロードマップで用意しながら先ほど言ったように、ICFを日本流にするとか、もう少し単純化するという作業もあると思うので、ロードマップをきちんと作って、3年先にはきちんとインセンティブが付けられるというところまで持っていく。それが大事だと思います。そのぐらいのロードマップをやらないと、これは絶対に難しいと思うのです。

 先ほど言ったように、我々はもうFIMでどんどんやり始めて、後戻りするのが大変なぐらいなところまで来てしまっている。それは、もう3年も4年も前に私は大川さんに言っているのですが、厚労省全体は動いていないし、かなり出遅れている。それを巻き返すためには、お金というか、目の前にニンジンをぶら下げるしかない。私はそう思います。それで教育のほうもきちんとやっていただければ、絶対にこれは広がると思います。ICFを使えば、連携はうまくいって、コストパフォーマンスの高いものが出るということを主張していく中で、やるべきだと思うのです。

 

○中村委員長

 御意見ございますか。

 

○才藤委員長代理

 先生のおっしゃるとおりだと思います。そのときに、今使えるものとすると、先ほど言った総合計画書だと思うのです。実際、先生が言うように連携のためのもの、患者さんにきちんと説明するためのものとして出てきている。ただ、どうしてそういうコードが出てきているのかははっきりしていなくて、こんなことを聞くのか、というところもあるので、皆さん、積極的に学問で使おうという機運になっていない。

 基本的にはICFの考えでできているので、本当にICFだと言い切るような外観で総合計画書を作ればよいわけです。先生が言ったFIMの領域は、ICFの一部ではあるので、クオリファイアーと呼ばれている方法で換算する手法をいれれば結合可能です。例えば先生のところでFIMをつけていれば、ICF10何項目は置き換えられます。このような段取りにすれば、労力も増えないし、FIMそのものも使える。そういう構造が一法と思います。その際、一般化には厚労省の力が必要でシナジーができれば効率良く先に進めるのではないかというのが、個人的な意見です。

 

○中村委員長

 ほかに御意見はありますか。今の議論で、私が少し心配しますのは、ロードマップも書きたいのですが、例えば何らかのインセンティブをつけるということを書くとしますと、それはこの委員会の権益を超えてしまっているのではないかと。何かの点数になるとかいうことをロードマップのゴールに設定してやるというのは、この委員会に選択権が無いものをゴールにして「さあ、行こうよ」と言うことになり、ゴールにたどり着かない可能性がかなりあるのではと思います。

 ロードマップの方向としては、おっしゃるように医療に使われるなり、いろいろな所で使われていくのは、もちろん視野には入れるのですが、ロードマップにそれを書いてしまうのは、自分たちでハンドリングできないことになるのでは。ただ、石川委員が言われたように、これをやるとコストパフォーマンスがいいというのがあれば、そのことはこの委員会で示せる可能性はあると思います。それを採用してもらえるかどうかは、もう1つ違う所での議論にはなりますが、コストパフォーマンス的に有効であるということをエビデンスをもって言うというところまでをここでやるのであれば、それはロードマップの1つのゴールになると思います。それを何年のうちにやる、そして、それをもってその後の展開を図るというのはあるように思いますが、いかがでしょうか。

 何か目の前にそういうものがないと、つまり、登録する人にとって、何かプラスになることがないと非常に難しいということはあると思いますが、いかがでしょうか。

 

○石川委員

 先生がおっしゃることはよく分かりますが、これは基本的には昨年の6月にできた医療・介護確保法の実現です。それは厚労省は省庁を挙げての課題であるべきで、例えば保険局がいない、医政局がいない中で議論をしても仕方がないということではなくて、ここで議論したことを保険局、医政局それぞれに持っていけばいいわけです。そのための事務局です。それはきちんと伝えていただいて、「こんなのが出たよ、ちょっと困るね」と。だけどインセンティブということは、我々現場でやっている実業の人間からすると、それはすごく大事で、広げるときの1つの手段であることは間違いないので、そういう提案が出たということを正直に言っていただけばいいのです。

 

○中村委員長

 それは石川委員のおっしゃるとおりで、そういう意見があったということ、ここでどういう結論が出て、議論があったということは是非伝えていただかなければいけないと思います。

 

○事務局

 関連部局に伝えるようにいたします。ありがとうございます。

 

○才藤委員長代理

 政策研究というところまでの権限はないのですか。要するに、この部会でICFを使うためのリサーチをする。それに対して財源をある程度つけて、そこで1つ仕事をする。

 

○事務局

 統計情報総合研究事業は実施しております。

 

○才藤委員長代理

 それは統計情報を取るためにやるのですから、情報部の一部ではないですか。

 例えば胃瘻が課題ということで、そこに研究課題ができて、研究費をもらって、実際にどこに問題がある、どんな患者だったら適用だという研究をやったことがありますが、そういうことを統計局ではどう扱うのか知りたいのです。

 

○事務局

 統計として研究課題の提示は可能です。

 

○中村委員長

 厚生労働省として、これからの行政を進めるに当たって、こういう研究に必要であるという中に、ICFの利活用に向けてというのはあり得るという事務局の御発言だと思いますが。

 

○出江委員

 自分の中でまとまらないのですが、ICFを総論賛成、各論反対の部分について、特に総論賛成のところは活動と参加という言葉について、皆さん合意していて、厚生労働省が作っている包括ケアシステムの中でも十分うたわれていることですが、残念ながら、その中ではICFという言葉は使われないのですね。

 それはなぜかというと、ICFは分類であるから、あえてWHOから来た分類名を国の政策の中に入れる必要はないと私は理解していますが、これを本当に使っていくということであれば、この分類を政策の統計の中だけではなくて、様々な政策の中でICFという言葉を使っていただくことが普及には非常に重要だと思います。

 

○中村委員長

 その点は事務局のほうはいかがですか。

 

○事務局

 ご趣旨を伝えていきたいと思います。以前、部局をまたいで勉強会などもしていたこともありますが、検討して取り組みたいと思います。

 

○中村委員長

 本当にそうですよね。活動と参加と言ったときに、活動で参加するために何が環境因子であるかというのは、考え方はほとんどICFそのものなのです。ただ、それをICFと言うかどうかというのは、必ずしもそうなっていませんが、今の介護なり医療なりを考えるときに、ICFの考え方はいろいろな所で使われていると思います。問題はICFという、この本に書かれている考え方の表紙の所だけではなくて、これを共通言語としていろいろな場面で、いろいろな部署の人が研究なり、実態として使えるようになっているかというと、実はなっていないというところが問題で、そうなるにはどうしたらよいかということだろうと思います。

 

○鎌倉委員

 この機能分類のところで、詳細分類と定義などを見ていきますと、詳細分類の定義の中で、また第一評価点というのがあって、09点までありますので、実際に詳細分類の一つ一つに09点まで付けると、とてもできないですよね。

 

○才藤委員長代理

 それでコアセットというのがあるのです。今日は資料が配られていませんが、そういう意味ではある程度簡略なものにしないと進みません。先ほど出江先生が言った積極的にICFという固有名詞が出てこない理由でもあるのではないかと思います。

 

○鎌倉委員

 分類というと、本当に分類と取られてしまいますが、今、使おうとしているのは評価指標として使っていきたいということのように理解はしています。評価指標とすると、どこまでを粗くして、必要な所だけ深くという機能にしていかないと、とても使えないという印象です。

 

○中村委員長

 それは読まれた多くの方が思われることだろうと思います。ですから、ICFも全部使えとは言っていなくて、自分の関連する分野を使ってくださいと言っておられると思います。ただ、使うところに実際になかなか歩み出せない。だから、国の研究として歩み出そうとしたのが、ここに40ぐらいあるということが1つです。

 また、今後やるためには才藤委員がおっしゃるように、戦略的に使いやすい所から使っていって、それを使いにくい所にも広げていくためには、まずそういう使い方をする必要があるだろう。それにはシンプルにすることと、戦略をもってという意味は、特定のある種の疾患なり、ある種の状況のあるセッティングの中のものについて使っているということから、広めていってはどうかということ、今の島田委員、出江委員のおっしゃることも、そのようなことではないかと思います。

 

○才藤委員長代理

1つだけ、根本的な話をさせてください。ICDでは、例えば、「肝炎」の下に沢山のコードがあります。それは絶対必要かつよいことです。なぜなら、肝臓の専門家はそれを全部知っていて使用するからです。骨関節を専門としている人は骨関節の下にあるコードを知らなければいけない。

 ところが、ICFになると生活全部ですから、全部知っている専門家は極めて稀です。分類の構造と、利用者との関係が、ICDなどの分類と、ICFでは全く違うのです。

 そういう意味で、どんな複雑な分類と思われても自分の専門だけをやればいいと思っていますから、ICDはアクセプトできます。一方、ICFが困難なのはそうしにくいからです。従って、コアセットは必須で、そこから入るしかないと私は思っています。これはコメントです。

 

○中村委員長

 鎌倉委員、それでよろしいですか。

 

○鎌倉委員

 入りやすい所から最初にと伺ったときに、この分類のなかの1つの概念からと思ったのですが、この概念そのものは全部使ってこそ意味があるという概念だと思うものですから、そうすると。

 

○才藤委員長代理

 そうではなくて、だからこそコアセットだと。コアセットの解説がないので議論をしているのです。

 

○鎌倉委員

 先ほどのお話で1つの疾患に絞ってという理由であれば、それは了解しました。

 

○島田委員

 やはりコアセットを説明していただくことが非常に重要で、全部をやろうとしてもできるわけはありません。例えば寝たきりに直結する大腿骨頚部骨折の患者や脳卒中とか、そういうモデルケースを作って、そこでどうなるかということをやるのですが、そこで問題なのは出江委員が言われたように、アキュートをどのように扱うかということに尽きるのだと思います。それはまだ全然決まっていないのです。

 

○出江委員

 コアセットの中にはありますから。

 

○島田委員

 あります。先生が解説なさったリハビリテーション医学をいつも持って歩いているのですが、そのようにしてでもやらないと、総論だけがずっと何年も行ってしまい、各論にさっぱり入ってこない。そのときに今、全国どこでも満遍なく起きているような重要疾患をまず挙げて、そこのコアセットを始める。そのために一番いいのは、医療費や諸々のことを考えれば、今、脳卒中はFIMでやられていますから、なかなか変えるのは難しい。何もないのが大腿骨頚部骨折なのです。そうすると、これは本当に最後はどうなったか、患者はどうなったか、そこまでも使える。こういうモデルの疾患をまずやってみることが重要なのではないかと思います。

 

○中村委員長

 具体的な提案も頂きましたが、いずれにしろ絞ったもので使えるという状況、あるいは使いにくい理由とか、使えるということを示していく必要があるということですね。

 

○島田委員

 そうすると、今ほかのものも全部やるとすると、リハビリテーション医の世界が主役になりますが、思い切り医者たちに使ってもらって、介護施設までやってもらうには整形外科医を動員するのがポイントだと思います。彼らをやらせるには大腿骨頚部骨折が一番いいような気がしました。

 

○中村委員長

 どうもありがとうございました。今日のやらなければいけないことは、これは具体的にできるかどうか分かりませんが、そういう目標設定なりが、できるかどうかということと、先ほどお話したシンポジウムを今年もやるとしたら、どういうテーマでやるかという課題を積み残してしまったまま行ってしまったのですが、いかがですか。

 

○島田委員

 それも今までの一般的な総論ではなくて、ここまできたのですから、実際のコアセットの先生がいっぱい書かれていますから、これに使うときはこうするのだという何かに絞ってシンポジウムをやられると、そこから始まる。今は何も始まってないので、1つでもいいから始めるというシンポジウムはいかがですか。

 

○中村委員長

 おっしゃるのは、具体的なものを獲得していくのに利するようなシンポジウムを企画しようということですね。今までのシンポジウムの流れはこうであったから、これをやろうではなくて、今、議論になっている具体的なものを作っていくために利するようなシンポジウムをやっていくという御提案かと思いますが。

 

○島田委員

 最後には石川委員がおっしゃったことが全てだと思います。このインセンティブが付いた評価というものがあれば確実に医者も頑張るし、介護施設も頑張ると思います。それなくして、これが現場から出ていても、これがメジャーになるということはなかなか難しい。ここには権限はないし、ロードマップも書けないのですが、将来的にはそういう雰囲気を持たせる。確約はしないが、雰囲気だけは持たせるということが重要なのではないかと思います。

 

○中村委員長

 いかがですか。

 

○才藤委員長代理

 総合計画書に入れれば、これはもともとあるインセンティブの一種ですから、別に権限を超えたインセンティブを作るという話ではありません。今は4種類ありますが、5種類目にすればいいわけです。また、そのあとどうやって使うかを念頭に入れておく必要があります。データだけ取って役に立たないのでは問題ですので。

 

○中村委員長

 そうすると、今の石川委員がおっしゃるようなことに持っていくために使えるようなデザインで取組を始めなければいけないという意味ですよね。島田委員もそうでよろしいでしょうか。

 

○島田委員

 ええ。そのためにはDPCで係数に影響がある。病院のスタッフみんなが頑張るのだと。

 

○才藤委員長代理

 確かにそこまで行ければすごいですね。

 

○島田委員

 そういう流れがあれば、間違いなく普及しますし、多少内容が悪くてもうまくいくと思います。そうでない限りは内容を幾ら絞っても、余りにもあり過ぎて、ここまで時間を使える臨床家はいませんよ。

 

○才藤委員長代理

 総合計画書は現実に存在しているものなので、実際にみんな書いていますから、そこに置き換えるのは大きな変革ではないのです。かつ、ICFとして取れば、ICFのデータになるわけですから、よい考え方だと思います。

 

○石川委員

 先ほどの御説明の中で、私は医療情報連携ということでずっとやっているのですが、医療情報連携で2025年までにICTを全国津々浦々でできるなどということはあり得ないのです。私の見積りだと23割ぐらいしかICTは使えないと思います。デジタル環境です。基本的にはアナログでやり取りをする。私は掛かり付け連携手帳というのを考えていて、そういうので普及するのです。しかし、これが介護の方とかナースが書くと、言葉がすごく量が多くなってしまって、私などが往診をやったときにヘルパーと介護の方が書くのは、字がいっぱいすぎてとても読み切れない。それを例えば、このICFを使って変化とか、そういったものがコードで出てくるということは私などは非常に魅力的です。例えば、デジタルの関係ではなくてアナログであっても、パッと伝えられて、しかも並べてみると、その人の変化がよく分かる。地域包括ケアシステムの中で、この人は今の状態がこうだということは、非常に簡単に連携できるということになります。私はこれは地域包括ケアシステムを構築していく中では、これが1つの大事な要素になってくるだろう。パーティシペーションも含めて包括ケアの中では非常に大事な要素ですから、それを表現してもらい、医療・介護確保法というのは省を挙げての課題なのだから、それはやっていただくという方向で確認したほうがいいと思います。

 

○中村委員長

 ほかにいかがですか。お聞きしたいのですが、この専門委員会としてのタイムテーブルというのは、何か規定なり、こういう方向でやっていくのだというのはあるのでしょうか。つまり、回数、テーマの決め方などについて、何かお考えになっていることがあるのでしょうか。時間も大分きていますが、ここでいろいろなものを集約して次の話に持っていくときに、その設定の仕方を考えなければいけないと思うのですが。

 

○事務局

 規定的に何か決まっているかということですと、規定では先ほど申し上げたような運営規定とか、資料6の「委員会の設置について」というものしかありません。したがって、タイムテーブルとして何回ということはありません。また、事務局としてということですが、本日いろいろ御議論を頂きましたので、委員長と御相談をして、どのぐらいのところで御議論いただくのがいいか、個別に委員の皆様方に御意見を伺うのがいいか、ということは行っていきたいと思います。

 時間が残り少なくなってしまったこともありますが、御意見を頂き切れなかったところにつきましては、差し支えなければ個別に御意見を頂いて、委員長に御相談をするという形をとらせていただきたいと思います。

 

○中村委員長

 そうすると、今、出たところでいきますと、具体的に考えると、戦略的な提案を、具体的に進められそうな提案を委員の方々にお願いする。それは将来的なインセンティブを見据えて効果が有効であることを証明する方向で。証明ができた暁には、できればそれがインセンティブにつながっていくようなモデルでやっていくという内容の提案を各委員にお願いして、それが出たところで議論をするのがいいのではないかと思いますがいかがでしょうか。

 シンポジウムの件は、予算とか日程では、いつか決めなければいけないデッドラインはあるのですか。

 

○事務局

 例年ベースでの開催は見込んでおります。テーマは、時間的に詰まっているわけではありません。開催は年度末ぐらいで考えています。

 

○中村委員長

 分かりました。そうすると、先ほど島田委員からご意見がありましたが、仮に今後取り組むとしたときに、できるだけ早くして、具体的になったら、それにプラスになるようなシンポジウムを年度内にやることにしたい、今の時点でシンポジウムのテーマを決めても、余り生産的ではない気がします。まだ時間がありますので、御意見を頂ければと思います。

 なければ委員長からの提案は、委員の皆様に具体的な提案をお願いする。そのときに、今、議論に挙がったことを念頭に入れた提案であってほしいということです。それが出た段階で委員会を開催する。それは時間の調整をしていただいて、開催をして、具体的にどうするのかということをやっていきたいと思います。

 先ほど才藤委員からお話がありましたように、科研費といったところも視野に入れると時間はないのですね。平成28年のことを言うと、時間はないのですよね。どうしましょうか。

 

○才藤委員長代理

 でも、28年でもいいのではないですか。一番お金が掛かるのはデータベースを作ることです。これは多分2,000万円ぐらい掛かります。今年、仮のものを走らせてデザインに入り、来年度に本格的案を出すというのだったら動きますよね。

 

○中村委員長

 粗っぽく言えば、平成28年度のときにICFの利活用を目指した研究に着手する。なぜかと言えば、今日議論が出たようなことが進んでないからであるということで、もし出していただけるようであれば、そして、誰が、どう応募するかはまだ時間が少しあると思います。出す時間がきっと迫っているのですよね。ですから、それを出していただいてというのは才藤委員、どうですかね。

 

○才藤委員長代理

 そういう話なら。

 

○中村委員長

 石川委員もそれでよろしいでしょうか。

 

○石川委員

 はい。

 

○中村委員長

 皆さんよろしいでしょうか。それを出して。出させてもらえるかどうかも分からないと思いますが、そういう交渉はしてみていただいて、出るようだったら、多分あまり時間がないだろうと思いますので。

 

○事務局

 今、頂いた議論を基に必要な部分について相談をしたいと思います。

 

○中村委員長

 そうですね。厚労省のほうでそれが可能であれば考えていただくと。もう平成28年度ですから、今、出ないと28年には使えませんので。それは事務局にお願いをする。

 それとは別に案は出していただいて、それが出たところで委員会を開催することにしたいと思います。そのときのテーマは、具体的にどうするかということと、シンポジウムのテーマをどうするかという2つを議題にしてやっていったらどうかと思いますが、いかがですか。大谷委員、大丈夫でしょうか。

 

○大谷委員

 はい。勉強します。

 

○中村委員長

 よろしくお願いします。よろしいでしょうか。

 

○石川委員

2点あります。1つは、先ほど島田委員から秋田大学の教育のほうの様子を教えていただきました。これは気が付いた大学はそれぞれでいろいろやっているのですが、大学の医学部のカリキュラムは大きく変えようという時期なのです。そういう点では、ICFとか、こういうものを入れ込むときにはちょうどいいので、全国的な水準でこれをやるべきだと思います。

 というのは、日本の医学・医療が介護も含めてのシフトになってきているので、教育者には是非やっていただきたいと思っています。私もそういう点では全国医学部長・病院長会議でそういう発言をしようと思います。もう一点は思い出したら、後でお話します。

 

○島田委員

 今、新カリキュラムの話になりまして、これは1学年ずつシフトします。ということは、各科に与えられている授業内容は最低4分の3ぐらい、少ない所は半分になってしまいます。そのぐらい詰められていまして、非常に大変です。ですから、強力に全国医学部長・病院長会議辺りから言っていただかない限りは新しい項目を加えられない状況になっています。

 

○石川委員

 それはCBTのところに入れるのではなく、いわゆるドクターズ・スチューデントになったあとの課題でもいいと思います。介護とか実際に。

 もう1つ、思い出したのは、今、高齢者医療確保法で、医療費適正化計画で臨床効果のデータベースなどを構築して、医療費の適正化ということが必要なのです。そのときに臨床効果というところでICFを評価ということで使えるのだと思います。要するに患者にどういう治療をしたら、このようなICFの変化があったということです。これは一番問題になっているのは数字で表す、あるいはコーディングで表すことは、日本の中ではなかなかできません。それはこれを使うということで、すごく有効だと思うので、実際に臨床効果データベースは部局ですごく悩んでいる分野があります。そういうこともこれでもう1つできると。臨床のところ、学生のところで教えることもできるのではないかと思います。

 

○才藤委員長代理

 申し訳ありませんが、今のままでは絶対にできないでしょう。ICFそのものだけでは何もできないのです。データをきちんと評価表に落とし込ませなければならなくて、そのプロセスが結構大変です。ですから、これでできるとは言ってほしくありません。

 

○中村委員長

 最初にもありましたが、ICFの普及のときに広報というのは非常に重要なことですので、石川委員からお話があったような場所でも進めていただきたいと思います。ただ、最後に才藤委員が言われたように、このままでは使いにくいというか、できないので、それをするためのモデルのような、コアセットを中心にしたモデルを1回、我々が作り上げる必要が多分あるのだと、今日の議論を聞いて強く思った次第です。それを構築するための研究のスタートを切るなり、それを作るための案を頂いて具体的に進めていくのが実質的に進める方法ではないかと思います。案が出た段階でしたいと思います。最後になりますが、ほかに委員のほうから御意見はありますか。なければ事務局からお願いします。

 

○事務局

 本日は活発な御議論を頂き、ありがとうございました。次回の委員会については、委員長からお話がありましたように進めさせていただきたいと思います。日程については改めて調整をいたしますので、よろしくお願いいたします。

 

○中村委員長

 それでは、委員の皆様、活発な御議論ありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。


(了)

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