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平成26年12月4日(木)

大臣官房統計情報部企画課

国際分類情報管理室

渡、及川(7493)

(代表電話) 03-5253-1111


疾病、傷害及び死因に関する分類に係る部会審議の際に出された意見に基づく報告

平成 26 11 20
疾病、傷害及び死因分類部会決定

 

 I.はじめに 
   我が国は
1994 (平成 6 )年に高齢社会を迎えてから 20 年が経過し、急速な少子高齢化の進展により今後、医療・介護サービスの需要が益々高まることが想定される。このような現状の中で医療を効果的かつ効率的に提供するには、「根拠に基づく政策立案( evidence-based policy making )」、即ち、適切な統計資料等に基づき疾病動向等を正確に把握し効果的な対策を実施していくことが重要である。
   現在、我が国の保健医療分野では、人口動態統計や患者統計等を始めとする様々な公的統計が、こうした情報基盤の重要な一翼を担っている。本部会は、これらの統計に使用される傷病分類、即ち、世界保健機関(以下「 WHO 」という)が勧告する「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(以下「 ICD 」という)」に準拠して作成されている我が国の「疾病、傷害及び死因の統計分類」について、改正のための議論を行うことを目的として開催された。この議論においては、改正後の分類が、疾病概念の変化に適切に対応できるものであるか、高齢化した我が国の疾病状況を適切に記録するために十分であるか等、分類自体の適切さについて検討されるとともに、死亡統計を始めとする分類の活用に当たっての課題や、こうした課題に対処するための方策について、統計分野に限定されず保健、医療等、幅広い分野に跨がる議論がなされた。
   本部会としては、本部会の審議事項である分類の改正にかかる内容を超えた議論もみられたが、これらの意見は我が国の保健医療政策を支える統計調査の今後を考える際の論点を提供するものとして極めて重要であると考え、ここに意見をとりまとめることとした。

 

 II.医療への活用のための課題 
   現在、我が国では、適切な医療を受けることにより糖尿病や高血圧などの基礎疾患を患いながら長期間生活を続けることが可能となっている。そのため、一人の人が複数の疾患を抱えることも珍しくなく、従来のように傷病の状況を単一の疾患で表現することが困難となりつつある。このような現状に鑑みると、今後の傷病分類では、国際標準である
ICD との関連性を維持しながらも、我が国における高齢化を背景とした傷病の状況を適切に捉えられる内容となることが期待される。
   また、傷病分類を活用して統計を作成するに当たっては、統計の作成それ自体が目的ではなく、統計を臨床医学や保健医療政策・社会保障施策の立案にどのように反映させることができるかという視点が重要である。特に死亡統計(人口動態調査)については、悉皆調査であり、同調査から得られる死亡データ(年間約 130 万件)は、政策立案等における貴重な情報源として疾病動向の予測や医療資源配分の検討、医療制度設計等の基礎資料となるだけでなく、未充足医療ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)の把握にも活用できると考えられる。このため、死亡統計に関するデータはよりよい活用の視点から記録し、従来の原死因に基づく統計に留まらず、様々な形の分析を行い、より有効な活用に資する基盤となることが望ましい。以上の観点から、論点を「分類について」「死亡統計における死因について」「死亡統計データの利活用について」の 3 つに分類し、その中で、すでに着手しているもの、またすぐに着手すべきものは短期的課題として、検討についてはすぐ着手するが、情報の整理や分析が必要であるもの、予算確保や関係省庁・関係部局との調整等が必要であるものについては中長期的課題として整理した。

 

1.分類について
   「疾病、傷害及び死因の統計分類」は、統計分類として活用されるのみならず、保健医療政策・社会保障施策の立案や医療経済的な評価、政策を実施するために活用されるなど、実用的な場面でも使われている。具体的には、現在の DPC 制度では支払いのための分類決定に不可欠な役割を果たしているほか、「精神及び行動の障害」に関するコードは関連分野の施策でも利用されている。さらに今後は、他の疾病対策に関わる政策分野においても情報の標準化等の役割を果たすことが見込まれる。このため、「疾病、傷害及び死因の統計分類」は統計作成のための道具として有用であること、臨床医学や保健医療施策・社会保障政策の立案のための情報基盤として有用であることの双方を満たすような分類であることが求められている。

 

【短期的課題】
・  医学の進歩等に対応するため、分類の見直しは継続的に行う必要がある。 WHO では統計に影響を与える ICD の改正については 3 年に 1 度程度実施されているところであり、改正の際は、本部会にその内容を報告し、我が国への適用の必要性等について審議することとす     る。本部会では統計の継続性と疾病概念の変化等への対応の双方を考慮しながら検討する。
・  病名を ICD コードに分類する際、適切に分類が行われるよう、病名と ICD 分類の関連付けについて精査する必要がある。

 

【中長期的課題】
・  今後も国際標準としての ICD と、我が国の「疾病、傷害及び死因の統計分類」との関連性を確保することは重要であるが、我が国特有の状況を踏まえると、我が国独自の細分項目の必要性や適切な統計表章(疾病分類表、死因分類表)等についての検討が必要である。
   ※米国や欧州の一部の国では、 ICD-9-CM 等、臨床用に修正を加えた分類を使用している。
・  ICD の分類は粗いところがあり、統計・臨床医学的に、既存の分類は細分化したほうが活用しやすい部分があるので、臨床医学の視点から使用されている病名や疾病の分類がどのようなものか、学会等の専門家の協力のもと、情報を収集することが必要である。

 

2.死亡統計における死因について
   死亡診断書・死体検案書にある情報から作成される死亡統計(人口動態調査)は、死因別の死亡順位の観点から耳目に触れることが多いが、その情報は単なる数の把握や国際機関へ報告するためだけのものではなく、今後の医療や公衆衛生の向上に活かし、国民の役に立つように活用するものであることを意識する必要がある。

 

【短期的課題】
・  死亡診断書・死体検案書の記載は原死因選択に影響があることから、医師は記載内容が統計作成にどのように利用されているかを理解した上で死亡診断書・死体検案書を作成することが重要である。このため、死亡診断書記入マニュアル等の充実により、原死因選択方法について分かりやすく周知を図るべきである。
・  死亡診断書・死体検案書の記載の重要性に鑑み、医師を対象としたマニュアル等を利用した教育や、記入に関する意識向上のための啓発が必要である。また、死因に関する情報の精度を上げるために、死亡診断書・死体検案書の死因欄について、正確性と利便性の向上を図るため、 ICT を活用するなどの方法も考慮した上で、適切な支援を検討すべきである。

 

【中長期的課題】
・  実例を検討して得られた知見をもとに、我が国にふさわしい原死因選択の法則について検討することが必要である。
・  現在、厚生労働省では、 WHO の勧告に基づき、原死因に関する統計を作成しているところであるが、中長期的には、基礎疾患の情報や介入の状況、合併症、予後等、死亡診断書・死体検案書から得られる複合的な要因を把握できるような分析がなされることが望ましい。また、こうした分析によって得られた結果を、 WHO へフィードバックすることにより、原死因選択のルールの改善等を通じて、我が国を含め国際的な死亡統計の精度向上に貢献することが望ましい。


3.死亡統計データの利活用について
   死亡統計(人口動態調査)のデータは、それ自体が医療や公衆衛生の向上のための重要な情報であるが、今後、医療に関する情報通信技術( ICT )の活用が推進されることに伴い、さらに幅広い利活用が見込まれる。死亡統計データを有効に利活用する観点から、医療情報を取りまく環境の変化を常に捉え、これを整備していくことが望まれる。

 

【短期的課題】
・  統計法第 33 条により、厚生労働科学研究費補助金等による研究など高度に公益性を有する研究について調査票情報の提供が可能であり、本制度を活用した調査票情報の利用促進を図るべきである。

 

【中長期的課題】
・  死亡情報は、原死因に限定されない死因に関する分析など将来的な情報の活用が期待されることから、データの保存に当たっては、 ICT を用いた処理に適した方法で、全ての情報を単一のデータベースに保存することが望ましい。また、統計法に基づく情報等の保存は統計作成に必要な項目に限られているところ、個別の死因の分析などの活用を進める上で要すれば、取扱いに留意すべき個人情報であることを十分に理解した上で、環境の整備についても考慮される必要がある。
   ※人口動態調査票の保存期間は、紙媒体が調査を実施した年の翌年の 1 1 日から 1 年、磁気媒体については永年保存とされている(「人口動態調査令施行細則」第 13 条)。
・  疾病分類や死亡情報の検討に当たっては、制度の変更や新たな政策のほか、医療情報における ICT の活用の推進状況や死亡診断書・死体検案書のあり方に関連することから、関係する組織等と連携する必要がある。
   ※例えば、ナショナル・データベースを活用した施策立案や医療情報データベースシステムの構築・分析等については、内閣府に設置された「健康・医療戦略推進本部、次世代医療 ICT タスクフォース」において議論されている。また、内閣府に設置された「死因究明等推進会議」で議論された死因究明等推進計画(平成 26 6 月 閣議決定)において、「今後、「死亡の原因」欄以外の記載すべき項目等についても研究を進め、様式を含めた死亡診断書(死体検案書)の在り方全体について検討する。」とされている。なお、医療等分野の番号制度の活用等に関しては、厚生労働省において平成 26 5 月より、「医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会」を開催し、医療等分野での番号の必要性や利用場面等について議論が行われている。

 

 III.終わりに 
   統計作成の基盤である分類の改正を議論する中において、自然な流れとして、本部会の本来の検討課題を超える分類の活用に関連する様々な意見が出された。これは、分類は統計・研究に活用され、施策や医療に活かされることで初めて国民の健康に寄与すると考えられるためである。本紙を受けて、今後も継続的な検討や必要な連携が行われるよう関係者が努力し、適切な人員や予算の確保がなされるよう期待する。


社会保障審議会統計分科会疾病、傷害及び死因分類部会 委員名簿

  氏名 所属・役職
部  会  長 永井 良三 自治医科大学学長
部会長代理 田嶼 尚子 東京慈恵会医科大学名誉教授
委     員 赤川 安正 奥羽大学学長
  五十嵐 隆 独立行政法人国立成育医療研究センター総長
  今村   聡 公益社団法人日本医師会副会長
  大江 和彦 東京大学大学院医学系研究科医療情報経済学分野教授
  金子あけみ 東京医療保健大学東が丘看護学部看護学科准教授
  金子 隆一 国立社会保障・人口問題研究所副所長
  栗山真理子 NPO「アラジーポット」代表・日本患者会情報センター代表
  小池 和彦 東京大学大学院医学系研究科消化器内科学講座教授
  郡山 一明 一般財団法人救急振興財団 救急救命九州研修所教授
  駒村 康平 慶應義塾大学経済学部教授
  末松   誠 慶応義塾大学医学部長
  辰井 聡子 立教大学大学院法務研究科教授
  中村 耕三 国立障害者リハビリテーションセンター総長
  西田 陽光 一般社団法人次世代社会研究機構代表理事
  樋口 輝彦 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター理事長
  堀田 知光 独立行政法人国立がん研究センター理事長
  松谷有希雄 国立保健医療科学院長
  宮崎 元伸 さいたま市健康科学研究センター所長

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