ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会疫学研究に関する倫理指針の見直しに係る専門委員会・臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る専門委員会)> 第12回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議 議事録(2014年10月7日)




2014年10月7日 第12回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議 議事録

医政局研究開発振興課

○日時

平成26年10月7日(火)10:00~13:00


○場所

三田共用会議所 大会議室(A~E)


○出席者

委員

福井座長 楠岡座長代理 中村座長代理 位田委員 今村委員
門脇委員 久保委員 児玉委員 後藤委員 真田委員
新保委員 鈴木委員 祖父江委員 田代委員 知野委員
津金委員 直江委員 中島委員 永水委員 花井委員
藤原委員 丸山委員 宮田委員 山縣委員 渡邉委員

事務局

鈴木技術総括審議官 (厚生労働省大臣官房)
椎葉課長 (厚生労働省大臣官房厚生科学課)
中山研究企画官 (厚生労働省大臣官房厚生科学課)
工藤課長補佐 (厚生労働省大臣官房厚生科学課)
神ノ田課長 (厚生労働省医政局研究開発振興課)
南川課長補佐 (厚生労働省医政局研究開発振興課)
御厩安全対策官 (文部科学省研究振興局生命倫理・安全対策室)
丸山室長補佐 (文部科学省研究振興局生命倫理・安全対策室)

○議題

1)人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(案)に関するパブリックコメントの結果について
2)人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(案)について
3)その他

○配布資料

資料1 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(案)に関するパブリックコメントの結果について
資料2 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(案)(パブリックコメント時に公示した案からの修正案)
資料3 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(案)に関するコメント(磯部委員提出資料)
川村委員提出資料 『人を対象とした医学系研究に関する倫理指針』に対するパブリック・コメント等への対応
田代委員提出資料 監査に関する規定の削除の必要性について
参考資料1 第 11 回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議議事録
参考資料2 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(案)に関するパブリックコメント 意見一覧
参考資料3 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(案)と現行指針の対比表

○議事

○南川課長補佐(厚生労働省医政局研究開発振興課) それでは、定刻となりましたので、第12回「疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議」を始めさせていただきたいと思います。

 本日は、お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございます。

 今回、構成員の変更がございますので、まず御紹介させていただきます。

 8月20日付で、土屋委員が日本薬剤師会を辞任されたため、かわって、鈴木委員が任命されましたが、鈴木委員はまだいらっしゃっておらず、後ほど来られる予定です。

 なお、今回の会議には、跡見委員、磯部委員、川村委員、玉腰委員から御欠席との御連絡をいただいております。

 また、門脇委員からは、おくれての御到着との御連絡をいただいております。

 また、事務局に人事異動がございましたので、御紹介いたします。

 厚生労働省大臣官房厚生科学課の椎葉課長でございます。

○椎葉課長(厚生労働省大臣官房厚生科学課) 椎葉です。よろしくお願いいたします。

○南川課長補佐 厚生労働省医政局研究開発振興課の神ノ田課長は、ただいま到着しました。

○神ノ田課長(厚生労働省医政局研究開発振興課) よろしくお願いします。

○南川課長補佐 文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室、御厩安全対策官でございます。

○御厩安全対策官(文部科学省研究科振興局生命倫理・安全対策室) 御厩でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○南川課長補佐 また、厚生労働省大臣官房に鈴木技術総括審議官が着任されておりますが、本日、公務のため、後ほどおくれて到着する予定でございます。

 続いて、配付資料の確認をさせていただきます。

 お手元に配られている中で、クリップどめになっている部分ですが、クリップを外して御確認ください。

 まず一番上に載っている1枚紙が、本日の議事次第と配付資料を記載したものでございます。

 そこから、座席表及び委員名簿がございまして、その後、資料1から参考資料まで配付資料がございますので、御確認ください。

 不足や落丁等がございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。

 また、委員の先生方の机上には、参考資料集を紙ファイルとしてとじてあります。前回までの会議資料については、事務局に備えておりますので、ごらんになりたい場合は、お申し付けください。

 先ほど御紹介いたしましたが、鈴木委員が到着されております。

 以上ですが、御不備等がありましたら、事務局にお知らせください。

 特にございませんようでしたら、審議の円滑な実施のため、傍聴の方による写真撮影等はここまでとさせていただきます。

 以降の議事進行については、福井座長、よろしくお願いいたします。

○福井座長 本日も3時間の会議になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 鈴木先生は今回の会議からご参加です。どうぞよろしくお願いいたします。

○鈴木委員 よろしくお願いいたします。

○福井座長 それでは、議題に入りたいと思います。

 議題の1)と2)を同時進行で進めていきたいと思います。本年5月に倫理指針について取りまとめを行い、その後、2回目のパブリックコメントが、厚生労働省、文部科学省の所定の手続を経た後に行われました。その結果、多数の御意見をいただきました。事務局にその概要をまとめてもらっております。結果を踏まえて、できましたら本日、倫理指針の最終的な取りまとめを行いたいと思います。

 議論の進め方ですが、前文に続いて、第1章から第9章までありますので、前文から第5章までの前半部分と、第6章から第9章までの後半部分の二つに分けて、それぞれ本日御欠席の委員から御意見もいただいておりますので、それも含めまして、倫理指針案の修正部分を中心に検討をお願いしたいと思います。

 それでは、初めに事務局から前文から第5章までのパブリックコメントの結果と、指針案の修正について、説明をお願いいたします。

○工藤課長補佐(厚生労働省大臣官房厚生科学課) それでは、資料1に沿って順次御説明いたしまして、指針案の修正を伴う部分につきましては、資料2の該当箇所を適宜ごらんいただければと存じます。

 前回5月の合同会議におきまして統合指針の草案を御了承いただいた後、文部科学省、厚生労働省の両省で法令のチェックを受けまして、記載の整備等を行いましたものを、8月9日からのパブリックコメントで指針案として公示いたしました。

 9月7日までの意見募集期間中に計130名の個人・団体等から、延べ1,046件の意見提出をいただきまして、寄せられた意見につきましては、全て参考資料2に掲げてございます。

 資料1は、そのうち主な意見につきまして、概要をまとめたものでございます。

 それでは、資料1の2ページ目、前文に関する主な御意見といたしまして、まず「学問・研究の自由は憲法上保障されており」と記載しておりました部分につきまして、その記載について、適当でないという御意見でございます。

 この部分につきましては、資料2の3ページ目の下の段にお示ししておりますように、「学問の自由の下に、研究者が適正かつ円滑に研究を行うことのできる」と修正いたしまして、また、次の段落で、学問の自由だけではなく、憲法上保障されている種々の権利、自由を包括して、日本国憲法等々も踏まえといった形で記載することといたしたいとしております。

 資料1の2ページ目、二つ目の御意見につきましては、2月の合同会議における議論で、研究対象者のみならず、広く研究の影響を受けるほかの人々も包含する形で、「人間の尊厳及び人権」としているところでございますので、その旨を回答することとして、指針案の修正については、特にございません。

 三つ目の御意見については、資料2の3ページ目の一番下の段から4ページ目にかけて記載しておりますように、記載ぶりを整理して、文意をわかりやすくしたいと存じます。

 続いて、第1章関連の御意見ですが、資料1の3ページ目になります。「社会的弱い立場にある者」ですとか、「人を対象とする医学系研究」、「侵襲」、「軽微な侵襲」、「介入」などの用語につきまして、これまでの合同会議におきまして、ガイダンスで例示を含めて解説を示すということで御了承いただいているところでございますので、指針案については、特に変更せず、対応することといたしたいと存じます。

 (17)代諾者の定義、(19)インフォームド・アセントの定義に関しましては、5月の合同会議で御了承いただいた草案では「インフォームド・コンセントを与える能力がないと客観的に判断される場合」と記載しておりましたけれども、パブリックコメント前の法令チェックの段階で、何々する「能力がない」という記載ぶりについて、法令的に用例がないとの指摘を受けまして、そこで「傷病等によりインフォームド・コンセントを与えることはできない」としてパブリックコメントで公示いたしましたところでございます。

 しかしながら「傷病等」の「等」に16歳未満の未成年者が包含されることは、やや無理があるのではないかという御意見が複数寄せられておりまして、法令上の用例を改めて調べましたところ、何々する「能力を欠く」で幾つか用例が存在することがわかりましたので、資料2の6ページ目の下の段に記載しておりますように「インフォームド・コンセントを与える能力を欠くと客観的に判断される」という形で、すなわち、5月の合同会議で御了承いただいた草案に近い形で対応することといたしたいと存じます。

 (22)匿名化の定義に関しまして、パブコメで公示いたしました案では「特定の個人を識別することができる情報の全部又は一部を取り除き」としていた部分につきまして、「特定の個人を識別することができる情報」では個人情報全体を意味してしまうことになるといった御意見が寄せられまして、ここで全部または一部を取り除くといたしたいのは、個人情報の定義中で示してございます、「当該情報に含まれる氏名、生年月日、その他の記述等」を指してございますので、御指摘のように「特定の個人を識別することができることとなる記述等の全部又は一部を取り除き」とするのが、正確ということで、資料2の7ページの上段については、そのように修正してございます。

 用語の定義の一番最後(29)監査の定義につきましては、第20の規定について後ほど御議論いただいた結果を踏まえて、対応することといたしたいと考えております。

 そのほか、多施設共同研究における研究代表者ですとか、ICHGCPにおけるスポンサー、すなわち、研究依頼者についても定義を設けるべきとの御意見が寄せられておりますけれども、前文で述べておりますように、研究には多様な形態があることに配慮して、指針本体には規定を設けず、ガイダンスで解説することを予定しております。

 続いて、「第3 適用範囲」の規定に関しまして、この指針の対象としない研究を掲げている箇所で、これまで「人体から取得された試料のうち、既に学術的な価値が定まり、研究用として広く利用されており、かつ、一般に入手可能なもの」としておりますウの○1、資料2でいいますと、8ページ目の下の段でございます。ここにつきまして、人体から取得された試料だけでなく、資料1の4ページ目、三つ目の御意見にございますように、データベースなどとして公表されて、多くの研究者が利用できるようになっているデータも含めてよいであろうということで「既に学術的な価値が定まり、研究用として広く利用されており、かつ、一般に入手可能な試料・情報」と修正することといたしたいと存じます。

 パブリックコメントでは、ウの○2で掲げられている研究を拡大してほしいとする御意見も寄せられてございますが、ウの○1をこのように修正することによりまして、そうした意見で求められている内容についても対応できるよう、ガイダンスで解説を示すことといたしたいと思います。

 最後に第1章全般に関する御意見といたしましては、企業主導の研究ですとか、企業とアカデミアの共同研究の取り扱いについて明確にしてほしいとする旨の御意見が複数寄せられておりまして、そうした企業が研究機関に該当すると考えられる場合も含めまして、ガイダンスで解説を示すことといたしたいと存じます。

 前文から第1章までに関しましては、以上でございます。

○南川課長補佐 それでは、続きまして、第2章の部分について、資料1を中心に説明させていただきます。

 資料1の5ページ目を御確認ください。

 第4の研究者等の基本的責務の一つ目の○ですが、研究の倫理的妥当性もしくは科学的合理性を損なう事実と研究の実施の適正性もしくは研究結果の信頼を損なう事実の違いがわかりにくいという御指摘をいただいておりまして、これについては、草案のときに、ガイダンスで示すという形で御了解いただいたとおり、研究結果の信頼性を損なう事実というのは、データの捏造・改ざんといった、研究不正に対するものを念頭に置いた記載ですので、それがわかるような形で、ガイダンスで対応させていただきたいと思っております。

 二つ目の○ですが、科学的合理性を確保するための責務がほとんど記載されていない、研究者等は、研究計画の策定に当たって生物統計家の意見を聞かなければならない等の条項を設けてはどうかという御意見をいただきました。科学的合理性については、本指針の中で、責任者の責務として記載されていることでして、それに対して、さらに個別に生物統計家の意見を聞かなければならないという点については、この指針の対象となる研究には多様性があり異なりますので、ガイダンス等も含めて、その多様性について、指摘させていただければと思っております。

 教育・研修の適宜継続してとは、受講頻度はどれぐらいで考えているのかについては、年1回程度ということを示すことについて、草案の段階で例示することで御了承いただいていますので、そのような形を含めて、対応させていただきたいと思っております。

 第5の研究責任者の責務について、保険その他必要な措置を適切に講じなければならないとあるが、その他必要な措置の部分につきましては、従来の臨床研究に関する倫理指針の中でも、同様の記載がありまして、QAで、医療給付との対応についても例示されていますので、それに沿った形で、ガイダンスに入れさせていただきたいと思っております。

 研究の進捗状況及び有害事象の発生状況を研究機関の長に報告とあるが、報告時期について、目安を示した方がいいのではないかという御指摘だったり、研究計画に定めるところは不要という御指摘もございましたが、これにつきましては、研究ごとに年に1回程度であったり、もっと多い場合もあれば、少ない場合もあると考えておりますので、パブリックコメントに対して、そのような返答させていただければと思っております。

 第6の研究機関の長の責務についてですが、必ずしも研究機関の長が契約主でない契約について、記載してはどうかという点につきましては、研究機関でさまざまな形態があると思いますが、研究機関の権限及び事務を委任できる条項が、別途記載がありますので、そこを含めて、対応できる旨、ガイダンスに示していきたいと思っております。

 次の○ですが、適切に公表されることを確保しなければならないとあるが、公表の方法について、ガイドラインに記載してほしいという点については、例えば会員であれば、データベースへの登録等の公表を義務づけているところですが、そこら辺も含めて、ガイダンスで対応させていただきたいと思っております。

 最後の三つ目の○ですが、不適合の程度が重大とは、どの程度重大であるかと、過去に実施した研究の過去の定義についてですが、まず不適合の程度が重大というのは、ガイダンスに例示させていただくことを考えておりまして、過去に実施した研究の過去の定義は、本指針については、本指針のものであって、前の指針については、前の指針の規定が適用できる旨が後ほど記載されていますので、そこら辺を含めて、対応させていただきたいと思っております。

 第2章の部分については、パブコメを受けて修正する部分はございません。

 資料2で申し上げますと、第2章の9ページの中で「研究計画」が「研究計画書」になっている部分については、後ほど御説明があると思いますので、割愛させていただきます。

10ページの「保険その他の必要な措置を適切に講じなければならない」の「保険」と「その他」の間に「への加入」と入れますが、これは記載整備で、この方が適切ではないかという御意見が法令の方からありましたので、入れさせていただいております。

 以上です。

○御厩安全対策官 続きまして、第3章を御説明いたします。

 資料2では、12ページからになります。

 まず作成しなければならないのは「研究計画」ではなく「研究計画書」ではないかという御意見でございます。もともとの案では、コンセプトとしての研究計画と、物としての研究計画書を書き分けようと試みたものでございますけれども、違いがわかりにくいという御意見もございました。そこで、GCPの省令でも「治験実施計画書」という表現で統一されていることも踏まえまして「研究計画書」という文言に統一しております。

 資料2の13ページ、第7の2、倫理審査委員会への付議の(2)に関連しまして、多数に及び得る共同研究機関の審査状況等を全て提供しなければならないのかとの御意見がございました。これにつきましては、審査に必要な情報だと判断される範囲の情報を倫理審査委員会に提供するという、ここの趣旨などをガイダンスで示したいと考えております。

 その下の(3)一つの倫理審査委員会による一括した審査を求める場合の手続につきましては、ガイダンスにおきまして、機関の長の合議によることなど、手続の例を示したいと考えております。

 次に14ページの研究計画書の記載事項の(1)、15ページの(2)で、項目数を25、あるいは14挙げてございます。この箇所につきましては、全部必要なのかという御意見もございました。硬直的な取り扱いになり過ぎないように、基本的にこれは全部必要だと考えておりますけれども、長が許可した事項については、倫理審査委員会の意見を受けて記載しないことも可能な形の条文に修正しております。

14ページの記載事項の○12、利益相反の状況のところでございますけれども、こちらにつきましてもガイダンスにおきまして、どこまでの内容を記載すべきかということを示したいと考えております。

 私からは以上でございます。

○工藤課長補佐 続いて、第3章の「第9 研究に関する登録・公表」に関しまして、まず公開データベースへの登録を義務づける研究の範囲について、現行の臨床研究倫理指針の規定を踏襲して「侵襲(軽微な侵襲を除く。)かつ介入を伴う研究」といたしまして、それ以外の研究についてはガイダンスで登録することが望ましい旨を示すということで、5月の合同会議で御了承いただき、パブリックコメントに公示したところでございます。

 パブリックコメントにおきまして、昨年改定されましたヘルシンキ宣言でデータベースに登録しなければならないこととなっている範囲よりも、指針案の方が狭いという御意見が複数寄せられております。事務局といたしましては、16ページ上段に示しておりますように、データベースの登録を義務づける研究の範囲につきまして「侵襲又は介入を伴う研究」と修正する案で、提示させていただいているところでございます。

 ただ、本日、御欠席の川村委員から、机上配付の資料のように、介入研究について登録を義務づければ十分であるとする旨の御意見をいただいておりますので、この点につきましては、御議論・御検討いただければと考えてございます。

 このほか、パブリックコメントで寄せられた御意見を踏まえまして、データベース登録、また研究結果の公表に当たって、さらに17ページの上段で記載してございます倫理審査委員会の審査概要の公表に当たって、それぞれ非公開とすることが必要な内容として記載してある部分につきまして「研究対象者等、研究者等その他これらの関係者の人権、知的財産等の保護のため」と記載を整備することとさせていただければと存じます。

 第9の規定に関しましては、以上でございます。

○南川課長補佐 それでは、第10の規定について、御説明させていただきます。

 資料1の7ページを御確認ください。

 一つ目の○ですが、倫理審査委員会の設置の要件について、具体的に示してほしいという御意見につきましては、草案の段階で御了解いただいたとおり、規定の整備や人材の確保等の具体的な要件について、ガイダンスで記載していきたいと思っております。

 保管期間の終了について報告された日とは、どこからどこへということについては、研究責任者から倫理審査委員会に報告された場合という旨が既に記載されていますし、保管期間を5年間に定めた理由については、その他診療録の保管等、別の保管義務を参考にした点ついて、パブリックコメントに返答させていただきたいと思っております。

 三つ目の○ですが、審査資料は、委員会の音声記録でもよいかという御指摘なのですが、最終的な審査委員会の資料について、音声記録で保存すること自身は差し支えないのですが、倫理審査委員会の報告システムの中で、議事概要を求めているところもありますので、議事概要については、文章等でしっかり登録していただくこと等を返答させていただきたいと思っております。

 続きまして、第11の倫理審査委員会の役割・責務について、倫理審査委員会が行える必要な調査の部分について、具体的な項目をガイダンス等で示してほしいという点についてですが、これについては、行う調査、対象の研究によって、さまざま異なると思いますので、その旨を含めた形で、ガイダンスで対応を記載していきたいと思っております。

 下の倫理学・法律学の専門家等、人文・社会科学の有識者の定義を示してほしいという点については、これまでの記載、QA等を含めた形で、御返答をさせていただきたいと思っております。

 (4)の見識を有する者として、共同研究者ではない同じ研究機関の小児科医等に、倫理審査委員会の開催前に意見を聞いておくという方法も許容されていると考えられますが、その具体的な方法を解説してほしいという御意見については、それらのものも許容されるという旨で、解説に記載していきたいと考えております。

 (4)の部分につきましては、別途机上配付されている、川村委員から御意見が出ておりますので、それについて、御紹介させていただきます。川村委員の御意見については、今の記載ぶりは、小児障害者等を研究対象者とする研究計画書の審査を述べる際には、これらのものについて、見識を有する者に意見を求めなければならないという点について、もともとは小児障害者等の社会的弱者を対象とする場合にはという形の趣旨で書かれていたのですが、小児障害者等と社会的弱者という言葉を並べること自身が不適切なところもあるのではないかという御指摘を受けたため、パブリックコメントなどにおいては、そこを削除させていただいて、小児障害者等のみの形でパブリックコメントを出させていただいています。

 この場合、必ずしも社会的な弱者の立場にならない身体障害者を対象とする研究であっても、有識者の意見を聞かなければならないという形になるのではないかという御意見を踏まえて、本記載については、削除して差し支えなく、仮に記載するとしても、社会的弱者を研究対象とする研究を審査する場合には、必要に応じて、当該領域に関する見識を有する者に意見を求めるものとするという表現が適切と思われる旨の御意見をいただいております。

 資料1の7ページに戻っていただいて、次の外部委員を数名ではなく多数指名しておけばよいのかもしれないが、それでは厳し過ぎる、外部委員の確保に苦労しているので、成立要件を緩和してほしいという御意見です。これもかなり数多くいただいているところでございます。

 これにつきましては、厳しいという御意見は、この会議の中でもある中で、御議論いただいた上で、決まったものですので、これについては、そのままの形で進めさせていただければと思っております。

 下から二つ目の倫理審査委員会について、やむを得ない場合は除き、全会一致をもって決定するという文章の解説・補足説明を示してほしいということですが、従前、それぞれの臨時指針もしくはQA等で記載された項目について、説明を書いていくことになると思いますので、これについては、また追加で御説明をさせていただきます。

 次の迅速審査において、軽微な変更とは、具体的にどのようなものが含まれるのかということについても、従前の記載を踏まえて、ガイダンス等で対応させていただきたいと思っております。

 以上です。

○御厩安全対策官 最後に第5章のICのところでございます。

 資料2は19ページからになります。

 まず、第12の1のところで「あらかじめインフォームド・コンセントを受けなければならない」としている一方で、それ以降の規定の中に「必ずしもインフォームド・コンセントを受けることを要しない」という表現があって、整合しないという御意見もございましたので、「原則として」という言葉を入れております。

 次に、侵襲を伴わない研究であっても、文書同意を原則とすべきではないかという御意見につきましては、これまでこの会議におきましても、被験者に与えるリスクと負担を考慮した上で、ICの手続を分けて整理してきたところでございますので、原案のとおりとしたいと考えております。

 次にICを行うことなく、既存の試料を利用あるいは提供できる場合の要件とされている「公衆衛生の向上のために特に必要がある」「社会的に重要性が高い」という表現、これは従来の指針にもある表現ではございますけれども、安易に適用が広がり過ぎないように、ガイダンスで解説を示したいと考えております。

 次に22ページの2の研究計画書の変更に伴うICと、3のICの説明事項につきましては、先ほどの研究計画書の記載事項と同じく、硬直的な取り扱いになり過ぎないように、倫理審査委員会の意見を受けて、長が許可した事項については、除外することも可能な形に修正しているところでございます。

 続きまして、24ページの5、研究対象者に緊急かつ明白な生命の危機が生じている場合の取り扱いに関連して、脳機能など、生活に不可欠な重大な機能の危機が生じている場合、これも同じように事後的説明の対象にしてほしいという御意見につきましては、この仕組みを設けるに当たって、参考にいたしましたGCP省令でも、ここまでは認めていないことも踏まえまして、対象としないことにしたいと考えております。

 続きまして、25ページの第13、代諾のところでございます。

 まず代諾者の選定方針につきましては、例えば未成年者の場合であれば、親権者や未成年後見人が通常考えられるということで、そのような一般的な例も挙げつつ、個別の状況も考慮して、選定することが望ましいといった旨をガイダンスで示したいと考えております。

 また、26ページのインフォームド・アセントのところでございますけれども、これにつきましても、ガイダンスにおきまして、例えば未成年者の場合であれば、個々の発達に応じて対応すべきことですとか、あるいはおおむね7歳以上、文書による場合はおおむね中学生以上としている、小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイダンス、こういったものも適宜参照して差し支えないことなどを、ガイダンスにおいて示したいと考えております。

 事務局からは以上でございます。

○福井座長 ありがとうございます。

 それでは、以上の部分についての御意見を伺いたいと思います。最初に、前文から資料2の12ページの下から4行目、第2章の終わりまでのところについて、御意見を伺いたいと思います。

 川村先生の御意見は、第3章以降ですので、そこで検討対象にしたいと思います。前文から第2章までのところで、いかがでしょうか。

 最初に前文からいきましょうか。前文について、幾つか赤字で訂正しております。4ページの上の7行目までです。この部分につきましては、いかがでしょうか。

 位田委員、どうぞ。

○位田委員 非常に細かいのですが、3ページに「日本国憲法」と赤い字が入っている、その少し後で「世界医師会によるヘルシンキ宣言に示された倫理規範等」になっているのですが「倫理規範等」にするのか、例えば「ヘルシンキ宣言等に示された倫理規範」とするのか。例えばCIOMSのガイドラインなども倫理規範なので、これだとヘルシンキ宣言に示されている倫理規範という形で、何となく限定されるような感じがするので「ヘルシンキ宣言等」にしてはどうかというのが、御提案です。必ずしもこだわるわけではありません。

○福井座長 並びからいうと、その方がいいように思いますけれども、事務局はいかがでしょうか。よろしいですか。

○工藤課長補佐 「ヘルシンキ宣言に示された倫理規範等」で、CIOMSの倫理指針も包含する趣旨ではありましたけれども、先生がおっしゃられたように、倫理規範としてCIOMSのものも含まれる旨が、より明確になるよう「ヘルシンキ宣言等に示された」ということで、問題ないと存じます。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、第1章のところです。

 「能力を欠く」という言葉が、法令では大丈夫だということです。内容的には同じだと思いますので、よろしいでしょうか。

 どうぞ。

○位田委員 「能力を欠く」というところで、これも細かいのですが「能力を欠く」だけでいいのか。つまりオールオアナッシングでいいのか、もしくは能力が不十分であるという表現を入れた方がいいのか。私も迷うのですが、例えば認知症の方などは、いわゆる正気のときもあれば、意識が余りはっきりしないときもあるので、それを「能力を欠くと客観的に判断される場合に」と言ってしまっていいかどうかというのが、ちょっと懸念されます。これも是非にというわけではなくて、その辺り、医師の側の方がどういうふうにお考えか、御意見を聞いてみたいと思います。

○福井座長 いかがでしょうか。

 判断能力については、十分か、不十分かという段階づけができると思うのですけれども、インフォームド・コンセントを与える能力につきましては、どうでしょうか。オールオアナッシングでもおかしくはないと思いました。

 永水委員、どうぞ。

○永水委員 私も福井先生と同じ意見なのですけれども、位田先生は民法の中の成年被後見人と被保佐人と被補助人の区別を考えていらっしゃると思うのですが、恐らくインフォームド・コンセントを与えることができるのは、被補助人と被保佐人、つまり判断能力が著しく不十分あるいは判断能力が不十分な人、これはインフォームド・コンセントを与える能力がある。だけれども、ここでは成年被後見人、特にこれはこの研究の時点において、常に能力が欠けているということであろうかと思いますので、ここは「能力を欠く」でも全く構わないかと思います。

 以上です。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。丸山委員、どうぞ。

○丸山委員 現実の本人の状況というのは、位田先生が御指摘のように、いろんな状況があって、グラデーションがあると思うのですが、インフォームド・コンセントを与えるか、代諾かというのは、どちらかで決めざるを得ないのではないかと思います。その辺りを少し緩和するものがアセントの概念なのですが、それ以上すると、ちょっと整理が難しくなるのではないかと考えます。

○福井座長 後藤委員、どうぞ。

○後藤委員 私の場合、インフォームド・コンセントというのは、ある時点の問題なので、その時点において、能力を欠いているかどうかという判断ですから、ある意味点の判断ではないかと思います。そういう意味では、位田先生の御懸念もわかるのですが、点であることをある程度明確にするような記事、記載ぶりが必要だと思いますので、このままでいいのではないかと思います。

○福井座長 ありがとうございます。

 それでは、位田先生、そういう方向でよろしいでしょうか。

○位田委員 はい。

○福井座長 ありがとうございます。

 それでは、それ以外にいかがでしょうか。第1章のところです。

 また、途中で戻ってきていただいても結構ですので、もしなければ、第2章については、いかがでしょうか。

 それでは、第3章です。

 第3章では、研究計画という抽象的な内容なのか、具体的な研究計画書なのかというところが、一番大きな変更点になると思いますが、これについては、いかがでしょうか。作成するのは、研究計画書なのか、研究計画なのかということで。

 楠岡先生、どうぞ。

○楠岡座長代理 研究計画と研究計画書の書き分けが、確かに難しいということはあって、今回「研究計画書」で統一されたということで、それはそれでいいと思うのですが、その際に、注意すべき点があります。第8の研究計画書の記載事項の中で、○1からずっとある中で、例えば○7にインフォームド・コンセントにおける手続等の中に説明及び同意に関する事項を含むという形になっているのですが、説明文書とか、同意文書を研究計画書とは別のものではなくて、研究計画書の一部と捉えるとか、あるいは治験等で使われる治験薬概要書とか、あるいは機器を使う場合の機器の説明文書等も研究計画書の一部であって、その中に入れておくということを、どこかに明示しておかないといけないと思います。

 例えば今の説明文書に関しても、事項ということだけだと、文書そのものが出てこなくて、文書に盛り込む内容だけが記載されてしまっているような形になることが想像されます。今までの研究計画書では主にそういう形になっていますから、そこを具体化できるような記載を書いておかないと、研究計画書だけでは、手落ちになってしまうところがあるのではないかというのが、危惧するところです。要は研究計画書の中に、ほかの説明同意文書とか、研究の実施に必要ないろんな書類も全部、研究計画書というバインダーの中にとじ込むことを明示しておく必要があるのではないかという点に関して、少し足すところがあるのではないかと思います。

○福井座長 研究計画書というと、同意書だとか、同意をとるための説明の文書とか、そういうものが別に扱われる。文言的にはその可能性もあるということです。これについては、いかがでしょうか。それを全部総体的にまとめたものを研究計画書と言う。楠岡先生のご意見はそういう記載がどこかに必要ではないかということです。

○御厩安全対策官 関連して必要な書類、研究計画書の中に含めておかなければならない書類を挙げていただきましたら、例えば、何々に関する事項と書いてある物の中には、これこれこういった書類が入ってくるということをガイダンスで示せばよいのではないかと考えますが、いかがでございましょうか。

○福井座長 先生、その方向でよろしいでしょうか。

○楠岡座長代理 それであれば、ガイダンスの中で、もう一度、きっちり検討するということで、いいと思います。

○福井座長 ありがとうございます。

 知野委員、どうぞ。

○知野委員 計画書とか、そういうことではなくて、第8の1で「原則として」と「ただし、倫理審査委員会の意見を受けて研究機関の長が許可した事項については、この限りではない」と入れました。これは確かにパブコメでもあるように、○1~㉕まですごい数ではあるのですけれども、そうすると、どういうものを外すということを前提にしているのでしょうか。受けた印象としては、いろいろ細かく決めたけれども、事実上、急にがくっとくるような、つまりどうでもいいのではないかという気がするので、その辺はどういうふうにしているのでしょうか。

○御厩安全対策官 例えばパブコメであった御意見の中には、○2の括弧書きの中に「研究者等の氏名を含む」とあるが「等」というのは、事務局も含めていろんな関係者がいる中で、これは本当に全部書く必要があるのかという御意見もございました。「研究者等」の範囲を研究者に限定したい、あるいは事務局を一定の範囲の人に限定したいということかと思われます。

 また、15ページの○20のところで、侵襲を伴う研究の場合には、これこれと書いてあるところは、軽微な侵襲の場合でも必要なのでしょうかという御意見もございました。それぞれの研究内容にかんがみまして、ここは必要ないのではないかということが、部分的にはあり得るのではないか。あるいは括弧書きの中で示しているところは、一部含まれない形にするとか、いろんな形が想定されるのではないかということで、基本的には一通り全部必要ではないかということで挙げておりますけれども、部分的な例外が出てくることも想定して、原則、例外ということを書かせていただいております。

○知野委員 「原則として」が入っただけでも、例外的扱いがあるのだということが、十分にわかりますけれども、さらに「ただし」も入ってくると、そもそもこの二十何個にわたるものは、一体何なのだろうか、果たして何のためにつくっているのだろうか。その気になって、倫理審査委員会と長がいいと言えば、何でもできることになってしまうので、その辺の歯止めとか、あるいは外してもいいものはどういうものを想定し得るかということをもっと示すとか、何らかのことをしないと、形だけという気がします。

○御厩安全対策官 このただし書きを設けた趣旨は、除くときの手続を明示しておく必要があると考えたためです。倫理審査委員会の意見を受けて、長が許可をした、そのように手続について限定をかけるという趣旨で、ここはただし書きを入れておりますのが、1点です。

 今、知野先生がおっしゃられたように、例外が広がり過ぎないように、除くことが考えられそうな例示で、適当なものがあれば、先生方の御意見も踏まえて、ガイダンスに書ければと考えております。

○福井座長 中村先生、どうぞ。

○中村座長代理 今の点に関してなのですが、そもそも改訂の倫理指針自体が疫学研究と臨床研究の指針を一つのものにするということで、対象とする研究が、侵襲も介入も伴うような厳しい臨床研究から、匿名化されたような、既に集めたデータだけを使うような疫学研究まで、全て包含している。そこのところに、ある意味で、問題とは言いませんけれども、厳しいところがあると思います。

 そういう意味で、ここに挙げられた25の項目というのは、一番厳しいところをとると、これだけのものが必要であるということで、例示されている中で、逆に先ほど申し上げたような、ほとんど人に対して影響を与えないような疫学研究まで必要かというと、やはり必要ではないのではないか。

 恐らくただし書きのところは、二つ考え方があると思うのですけれども、こういう研究の場合は、この項目については書かなくてもいいということで、施設ごとに規定をつくるということが、一つ考えられると思います。

 もう一つは、個々の案件について、これについてはこういう研究だから、こことここの項目は要りませんという話で、申請者が出してきて、それを倫理審査委員会が承認するという二つの方法があると思います。

 私自身は、どちらかというと、後者の個別に倫理審査委員会で審議をした結果、ここのところは、必要ありませんということで、最終的に承認を出すような方法になると、私自身が所属する施設では考えております。

 そういう中で、がちがちにしてしまうと、研究がなかなか進まないということもあって、人に対して影響が大きな話については厳しく、そうでないところは、何とかする。もちろん審査がなしということはあり得ないのですけれども、そういった方向でいけている、今の方向性はいいと思っております。

 もう一つ、事務局から説明がありましたパブコメに対する対応全体についても、興味深くパブコメを拝見させていただいたのは、結構細かなところまで規定してくださいみたいな意見が多いのです。それよりは、むしろ大枠は指針で決めて、あとは個々の施設の倫理審査委員会できちんとした対応をしてくださいという方が、研究を進めるという意味では、私自身はいいと思っていまして、全体としての事務局の対応については、私は感謝しているような次第でございます。

○福井座長 ありがとうございます。

 丸山委員、どうぞ。

○丸山委員 今のところで、知野委員が、ただし書きがつけられたので、この列挙は意味を持つのかということを御指摘になったんですが、現実の倫理審査委員会に出ておりますと、多くの機関がもとの指針で列挙されているところを踏まえて、それぞれの施設のプロトコルのひな形としておりますから、十分意味はあると思います。

 それから、現在の医学系研究の統合指針、今、つくつている指針におきましては、これらの項目、25項目、あるいはバンクについては、14項目を書かなければならないという規定になっているのですが、この点については、最後の今日の段階で、ただし書きあるいは「原則として」が付されましたけれども、もとの3指針というか、疫学、臨床指針、ゲノムの指針もこの点は共通なのですが、記載すべき事項は一般的に以下のとおりとするが、研究内容に応じて変更できると、とても緩いのです。例示にすぎない書き方をしております。それでも、先ほど指摘しましたように、現実の研究現場あるいは倫理委員会では、結構これがひな形になっております。

 それに比べると、今、作成中のこの指針の文言は「原則として」とただし書きが付されていても、これまでのものと断絶するし、先ほどの知野委員と事務局とのやりとりにありましたように、書かなくてもいいようなところがあるのです。○20とか、私が気がついたところでは○18なども、そういうところがあると思います。そういうところについては、倫理委員会、機関の長の審査・許可を受ける前に、研究者が研究計画を作成する段階で、省略することを正面から認めていいのではないかと思います。ですから、ここの何々せねばならないという言葉は、基本的にガイドラインの点からもそぐわないのではないか。

 それから、前文のところで書かれている、この指針は一般原則を定めるものである。この会議の当初の議論で、かなり強調されたと思うのですが、基本的な原則を示すにとどめているという文書の性格からして、何々しなければならないという書き方は、そぐわないのではないか。私の本心は、もとに戻してほしいのですが、そこまでいかなくても、何々とするというところまでは、戻すというか、トーンを弱めるのが妥当ではないかと思います。その辺りは、これまで事務局から提示されたところについて、この会議では余り議論してこなかったと思います。25項目全てを義務づけることになるのか、あるいは先ほど中村先生がおっしゃったところで、研究のタイプに応じて、書き分けていいのではないかということです。ですから、委員の間では、何々しなければならないという書き方に対して、それほど強い意見があるわけではないと思うのですが、御検討いただければと思います。

 以上です。

○福井座長 どうぞ。

○知野委員 誤解がないように申し上げておきますけれども、この25項目が意味がないと申し上げたのではなくて、専門家ではない私が読ませていただきますと、それぞれこういうことがあるのだ、入れておく必要があるのだろうと思います。ただ、そのうちの幾つかが省かれたとしたら、それがどういう理由でもって省かれたのかということを、きちんと記録に残しておく必要があるのではないかということが一つです。そうでなければ、こういうふうに定めたけれども、結局そのようには動いていない。つまり機能していないのではないかというところを、懸念するということを申し上げたつもりです。

 以上です。

○福井座長 どうぞ。

○丸山委員 その点については、今日配られた指針の内容がよく書かれていて、研究者が要らないと思ったから飛ばして、それでフリーパスというわけではなくて、倫理委員会の審査、機関の長の検討が必要ということですので、デフォルトとして、これだけの項目が必要なのだ。それから、省かれるものについては、それなりの理由が必要というのは、知野委員と考えていることは、余り違わないのではないかと思います。

○知野委員 その理由プラス、今回、私たちはこういう理由で外しましたという説明等を残しておくことが必要ではないかと思います。理由プラス記録です。

○丸山委員 倫理委員会の記録ですね。

○知野委員 そういう意味です。

○丸山委員 それは当然だと思います。

○福井座長 楠岡先生、どうぞ。

○楠岡座長代理 最終的には運用の話になるかもしれないのですけれども、省く以上、もちろんしかるべき理由があるわけで、それを最初から省いておいて、倫理委員会での審査の記録として残すのか、項目として書かれていて、なぜ省くかをそこへ書くかのどちらをとるかという形になると思います。倫理委員会の記録というのは、なかなか見つけにくいというか、概要しか出されない場合には、どうしてそれを省いたかということが、公になりにくいところに対して、計画書の中になぜ省いたかが書かれていれば、たとえばこの研究はこういうものであるから、これに該当することは存在しないのように、書けない理由を書いておいていただいた方が、より透明性が高まるということです。

 そうすると、今回追加されたことは、もともと必要なくて、この項目については、何か書いてください。ただ、書けない場合もあることは、当然わかっていて、それはなぜ書けないかを書いてもらっておいたら結構です。必ずこれを実行せよという話ではないということが、原則としてあればむしろ研究計画書の透明性の担保とか、あるいは世代が変わった場合にも、どうしてそうしたかがわからなくなってしまうということを防げる。むしろ書き込んだ方がいいのではないかということも、一つの考え方としてあると思います。

 ここはどうした方がいいかということを検討しておかないといけない。もちろん研究者が自分で勝手に省くことはできなくて、必ず倫理審査委員会の承認のもとになるわけですけれども、その承認を求めるときに、明示的にするのか、それとも委員会での審査のみにするのかというところは、気をつけた方がいいのではないかということです。

○福井座長 丸山委員、どうぞ。

○丸山委員 繰り返しですが、今、おっしゃられた趣旨と指針の14ページの上から4行目「研究計画書は、原則として次に掲げる事項を含まなければならない」という文言です。「研究計画書は、原則として次に掲げる事項を含むものとする」ぐらいのトーンの方がいいのではないかと思います。「含むものとする」と書いても、ちゃんとした倫理委員会なら、ちゃんとした取り扱い、審査をすると思います。指針では「なければならない」というマストを使うのは控え目にして、シュッドとか、シャルの言葉の方がいいのではないかと考えます。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。

 知野委員が御指摘になった25項目なのですけれども、実は15項目目から25項目目までには、何々する場合にはという、場合を書いてありますので、研究によっては、ひょっとしたら、14項目で済むかもしれません。ですから、全て25項目書かなくてはならないという印象を与えると、確かにヘビーだという気はしますので、何かうまい書き方ができるといいですね。こういう場合にはという、研究によって随分違うのだということがわかると、また印象が違うという気がします。

 後藤委員、どうぞ。

○後藤委員 今、実務的な倫理委員会での審査のお話も出てきましたけれども、例えば倫理審査をする場合、この項目が計画書にあって、これが非該当とか、先ほどおっしゃったような形で残していく方が、透明性の確保ではいいと思いますし、一番問題なのは、実際に研究をなさる方たちに、より倫理的な対応をしていただくということで、計画書の作成に当たっても、教育的な効果を持つような倫理指針であった方がいいと思います。ですから、新たに「原則として」とつけ加えられたわけですけれども、先ほど丸山先生がおっしゃった「ならなければならない」ということはまた別として、最初の案でいいのではないかと思います。

 先ほど座長代理の方がおっしゃっていたように、パブコメを見ていますと、倫理指針の意味が本当にわかっていらっしゃるのかということを、若干疑問に思うようなコメントもございます。ここに全部書いてあって、そのとおりに従わなければいけない。別に法律ではありませんし、指針なので、各倫理委員会で一定のさまざまな評価ができるということを考えていて、それと若干齟齬するかもしれませんけれども、少なくともこの会議では、これだけのものを書いておいてほしい。そういう一応の指針ということなので「原則として」とか「ただし」というのは、なくてもいいのではないかという気がいたしております。

○福井座長 藤原委員、どうぞ。

○藤原委員 ディオバンの事案の検討会とか、ほかの大学などの倫理審査委員会に参加して見てみると、現状で問題なのは、プロトコルがちゃんと存在していないとか、大学によっては、25項目みたいなものをざっと書いた紙だけをプロトコルだと解釈して、研究実施計画書そのものはないのに、審査しているところも全国にはたくさんあると思います。

 知野先生がおっしゃるようなところというのは、非常に大事で、そういうことを教育するためには、これが原則なのですということは、きちっと盛り込むのがいいと思うのですけれども、丸山先生のおっしゃる言葉の記載も非常にいいと感じていて「原則として次に掲げる事項を含むものとする」として、ただし書きはなしで、13ページの上の「研究責任者は、研究を実施しようとするときは、あらかじめ研究計画書を作成し、研究機関の長の許可を受けなければならない」と、そこで知野先生がおっしゃるような、ただし書きの文言は読めるわけです。

 実際、最終的にフィックスするときには、研究機関の長が倫理審査委員会の意見を聞いて、変更云々を全てかんがみた上で判断するので「原則として次に掲げる事項を含むものとする」として、ただし書きはなしにして、それ以外のところは、従前の記載、13ページなどの記載で全部読むとする。

 プロトコルが非常に大事で、ここは教育的な意味で25項目が入っていて、平成20年度の改訂のときには、これは細則にしていたから、みんなが守らなかったという議論が、この会議でもあったと思うので、ここは残したままにして、ただし書きは消して、マストではなくて「含むものとする」という、丸山先生の意見も入れるという感じがしっくりきます。

○福井座長 先生は「原則として」は入れる、入れない、どちらでしょう。

○藤原委員 「原則として」は入れます。

○福井座長 「原則として次に掲げる事項を含むものとする」という案です。確かに「原則として」があって、「ただし」がきて、「この限りではない」と三つ続くと、少しどうかという気持ちもします。

 位田委員、どうぞ。

○位田委員 言葉遣いなのですけれども、今、座長がおっしゃったように「原則として」と「ただし」が両方入っているのは、やはりおかしいので、それはどちらかでないといけないと思います。

 「ただし」以下の「倫理審査委員会の意見を受けて研究機関の長が許可した事項」というのは、いかにも手続として重過ぎるという感じがしますので「倫理審査でそれが認められる場合には、この限りではない」というぐらいの方が、感覚は少し軽いと思います。

 あと「ねばならない」という言葉の問題なのですが、私は国際法が本来の専門ですが、条約を日本語に翻訳するときに「何々するものとする」というのは、義務づけを意味しています。したがって「ねばならない」というのは、どちらかというと、最近の使い方です。最近といっても、もう数十年前からですが。もともと「何々するものとする」というのは、英語で言えばshall、義務づけの言葉でした。したがって、ここに「ものとする」というのは、むしろもっときつくなるという気がします。shouldを使うとき、もしくはmustを使うときは「べきである」という言い方をしていました。「ものとする」が、今は「ねばならない」という普通の言い方に変わっているので、「含まなければならない」を「含むものとする」というのは、余り変更する意味がない気がします。それだったら「含む」で止めてしまう方がいいと思います。

 先ほど座長がおっしゃったように、結局○15以下は、これこれの場合には要りますと書いてあるわけですから、こういう場合が該当しない場合には、○14までで終わるわけです。そこは具体的な研究計画書自体にかかわるわけですから、研究計画書の中に、今、楠岡先生がおっしゃったみたいに、これは該当しないとか、これはこういう理由で除きましたということを書いておいてもらえば、それを倫理審査の段階で、それはそれでいいと判断すれば、必ずしも研究機関の長に持って上がって許可をするというところまでいかなくてもいいという気はします。

 したがって、一言でいうと、個別に、研究計画ごとに、倫理審査の段階で必要なことが書かれているか、書かれていないかという判断をすれば、それでいい。○1~㉕までは、基本的に丸山委員がおっしゃったように、以前のような、一般的にはこれだけ書いてください、○14までは必ず書いてくださいという趣旨です。ですから「含む」で止めて、あとは何もなくてもいいのではないかと思います。

○福井座長 今、先生がおっしゃったのは「原則として」という言葉は入って「含む」でしょうか。

○位田委員 「原則として」も要らないのではないかと思います。

○福井座長 「研究計画書は、次に掲げる事項を含む」ということですね。

○位田委員 はい。

○福井座長 その後のただし書きも全部なしでしょうか。「倫理審査委員会」から後は残るのでしょうか。

○位田委員 「倫理審査委員会の審査によって認められた場合には、この限りでない」でもいいですし、もしくは「そのかわりに、研究計画書にその理由は書く」。どちらかでいいのではないかと思います。

○福井座長 どうぞ。

○丸山委員 今の柱の部分の御意見だと、現在の3指針が使っている「一般的に以下のとおりとする」と同じニュアンスで、それなら、現在の指針の「一般的に以下のとおりとする」という言葉を継続する方が、研究者の人にはわかりやすいのではないかと思います。

○福井座長 以前の倫理指針の文体に戻すということでしょうか。

○位田委員 私は「一般的に」という言い方に、少し違和感があります。

○丸山委員 そこは「原則的に」の方がいいと思います。

○位田委員 「一般的に」よりは「原則として」の方が、私もいいと思います。ただ、知野委員の懸念があるので「原則として」にしてしまうと、どんどん外せてしまうのではないかという印象があります。したがって、外すのであれば、そこの理由はどこかに明記されるか、倫理審査委員会がそれを判断されるか、どちらかで決める方がいいと思います。

○福井座長 どうぞ。

○丸山委員 この部分について、これまで余り議論してこなかったことが、議論されましたので、特に知野委員の趣旨は、ガイダンスに含めて、簡単に、適切でない場合に省略できるものではないということを、念押ししておくのがいいのではないかと思います。

○福井座長 結論的にはどういたしましょうか。私としては、できるだけ、ここに書いた文言の修正でいければありがたいのですけれども「研究計画書は、次に掲げる事項を含む」。実は「何々でなければならない」という言葉が、この倫理指針にはたくさん入っていまして、そこのところを全て見直すべきかどうかという話にもつながると思います。

 田代委員、どうぞ。

○田代委員 先ほどの丸山先生と位田先生のやりとりですが、丸山先生がおっしゃった、現行指針の記載をベースにするという案が良いのではないかと思います。ですので、もし書くとすれば、「研究計画書に記載すべき事項は、原則として以下のとおりとする」となるでしょうか。「原則として」を入れるかどうかということが、一つの論点だと思いますが、個人的な感触としては、私が知っている倫理審査委員会などでも、むしろオーバークオリティーというか、この事項に当てはまるかどうかということを、どんな軽い研究でも求めるところもあります。そういう意味では、一つ一つの項目は重く受け取られていますので、「原則として」という言葉を入れて頂き、先ほど藤原委員からもお話がありましたが、当然原則を外す場合には判断が必要ですので、それについては、例えば倫理審査委員会の記録にきちんと残すように、といったガイダンス案を付けるという形でよいのではないかと思います。これまでは細則で例示だったものが、今回、明らかにこう書きましょうということがはっきり本文で示されていますので、それだけでも随分重くなっていると判断します。

 ですので、先ほど丸山先生から御意見のあった「研究計画書に記載すべき事項は、原則的に以下のとおりとする」で止めて、ただし書き以降の手続の部分に関しては、ガイダンスにきちんと書くということが、一つだと思いました。

○福井座長 いかがでしょうか。「研究計画書に記載すべき事項は、原則的に以下のとおりとする」。もしただし書きを加えるとすると「倫理審査委員会によって認められた場合は、この限りではない」といったただし書きになるかと思います。いかがでしょうか。

 その方針で文章を書きかえるということで、また先生方に見ていただくということで、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 事務局は大変ですけれども、その方向で、また文言の整理をお願いしたいと思います。

 それでは、次に進みたいと思います。

 川村先生からの御意見は、16ページの上の段の第9、研究に関する登録・公表のところです。

 ここについて、事務局から何か説明はありますか。

○工藤課長補佐 パブコメで公示してございます案文では「侵襲(軽微な侵襲を除く。)を伴う研究であって介入を伴うもの」ということで「侵襲かつ介入」でありましたところ、今般事務局から提示させていただく修正案としましては「侵襲又は介入」ということで、介入を伴う研究、すなわち介入研究については侵襲の有無にかかわらず、データベース登録を義務づける。また、介入を伴わない研究、すなわち観察研究についても侵襲を伴うのであれば、同様にデータベース登録を義務づけるという形で、提示させていただいているところでございます。

 川村先生からの御意見としては、介入研究について侵襲の有無にかかわらず、登録義務づけるというところについては、御賛同いただいているものと思いますけれども、観察研究については、必ずしも意味がないのではないかという御指摘でございます。

 川村先生の御意見1.の(4)で、「仮に観察研究を含めるとしても、仮説検証型で研究対象者を前向きに組み込んでいく研究に限定すべき」とも記載されておりますので、事務局から提示させていただいているように、侵襲を伴う場合には、研究対象者を前向きに組み込んでいく場合が想定されますので、事務局案のような案文は許容される範囲とは思われますが、御議論いただければと思います。

○福井座長 いかがでしょうか。

 津金先生、どうぞ。

○津金委員 例えば採血を伴う観察研究、前向きと言われるとコホート研究、ある程度センシティブな質問を含むアンケート調査、これらが要するに登録が必要になります。そうすると、そういうことをやっているのは、恐らく日本だけということになってくるのではないかと思います。登録をする理由は、川村先生がここに書いているとおりの理由で、登録の意味が、観察研究に対してはないのではないかと思います。私もこれは言わなければいけないと思っていたら、まさに川村先生が書いていらっしゃるので、全くそのとおりだと思います。

○福井座長 先生は、介入を伴う研究に限定するということですか。

○津金委員 そうです。

○福井座長 その中で、侵襲がなくても、介入を伴う場合は登録するということですね。

○津金委員 臨床研究登録などでも、それは必要だと思います。

○福井座長 この点については、いかがでしょうか。

○田代委員 川村先生の御意見に賛成です。侵襲または介入というのは、広げ過ぎだと思いますので、どんなに広げても、介入を伴う研究だけでよいのではないかと思います。

 ここにも書いてあるように、出版バイアスがそもそもの問題ですので、観察研究で、先ほどありましたけれども、例えば2ミリ採血するようなものを全て登録させるというのは、ちょっと考えられないと思います。もちろんガイダンスの中で、なるべくこういうものは登録していくことが望ましいと書くということは良いと思うのですが、本文としては、研究責任者は介入を伴う研究について登録するという書き方でとどめておけばよいのではないかと思います。

○福井座長 この点につきまして、いかがでしょうか。

 侵襲だけあって、介入を伴わない場合は、構わないということです。そこのところを確認した上での議論をお願いしたいと思います。

 その方向でよろしいですか。介入を伴う場合にということで、よろしいですか。委員の先生方に確認をしたいと思います。

 位田先生、どうぞ。

○位田委員 川村先生の星印の点はいかがなのでしょうか。「介入を伴う研究」ではなくて「介入を行う研究」という表現の方が適切である、という点です。

○工藤課長補佐 「介入を伴う」と書いてある部分は、ここだけでなくて、ほかにも幾つもございますので、ほかの部分もあわせて「介入を行う」に直すかどうかにつきましては、法令上の観点から可能かどうかも含めて、座長と御相談しながら、事務局で検討させていただければと思います。

○福井座長 「介入」は研究者が能動的にやることですので、本当は「行う」が正しいでしょう。「伴う」だけですと、知らない人がやってきて、介入するのも伴う研究になりますので、本当は「行う」が正しいのでしょうけれども、今までの扱い方は、恐らく「侵襲を伴う」というところと一緒になって「伴う」という言葉を使ったように思います。できるだけ「行う」ということで、すっきりする場所については、その方向で、また事務局と相談したいと思います。

 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。

○花井委員 その下の「その他これらの関係者の人権、知的財産等の保護のため」というのは、17ページにも出てくる表現で、修正になっているのですけれども、研究対象者の人権だけではなくて、関係者全体の人権もしくは知財保護という記述なのですが、人権という言葉では、研究対象者だけではなくて、その他これらの関係者の人権と書いてしまうと、みんなに人権があるのは当たり前の話で、あえてここにこういう記述をするのは、表現として若干違和感を感じます。人権保護が理由であれば、いいのだという趣旨だけれども、通常考えると、対象者の人権と知財だけで足りるような気がします。もちろん研究者に人権がないとか、そういうことではないけれども、第9と17ページにも同じ表現が出ていて、ここにあえて関係者全体の人権にかかわるものはという表現を入れるのは、若干違和感のある表現なのですが、文章としてはいかがでしょうか。

○福井座長 どうぞ。

○工藤課長補佐 ここで「研究対象者等、研究者等その他これらの関係者」とございまして、「これらの」と申しますのは、「研究対象者等の関係者」と「研究者等の関係者」の両方について「これらの」としております。

 人権のところにつきましては、例えば研究計画書に予測しない有害事象が発生した場合の緊急対応時の連絡先として、研究責任者の携帯電話の番号とか、連絡先等が記載されている場合が考えられて、そういった内容は公表することはないだろうと、研究者のプライバシーにかかる部分ということで、研究者側の人権も全く排除されないということを考えてございます。

 「これらの関係者」につきましては、「研究対象者等の関係者」としては、研究対象者等という用語は研究対象者と代諾者を指しておりますけれども、例えばそれ以外の家族、親族、あるいは地域を対象とした疫学研究の場合には、対象地域の住民の方々などに対して、ある研究の結果が風評を招いて、差別等につながるおそれが生じた場合には、そういったものは非公開とすることも考慮しなければなりません。

 また、「研究者等の関係者」といたしましては、例えば知的財産、パテントのライセンシングを受けて、研究機関以外にパテントホルダーが存在する場合には、研究者等には含まれないので、それらの関係者ということで、知的財産等の保護が読めるような形で、記載を整備している次第でございます。

○福井座長 丸山委員、どうぞ。

○丸山委員 今の花井委員の御指摘にありましたように、研究対象者の人権・権利内容と研究者その他の関係者の人権・権利内容は、ちょっと違うのではないかと思います。前者の対象者は、人権という表記がなじむと思うのですが、後者には、権利利益ぐらいがよく使われる表現ではないかと思います。そのようなことではどうなのかと思います。研究対象者等の人権、研究者等その他これらの関係者の権利・利益、知的財産等の云々というところは、御検討いただければと思います。

○福井座長 どうぞ。

○真田委員 真田です。

 私も花井先生がおっしゃるように、読み取る方は、その他これらの関係者というのが、研究者だけにかかっているように読めてしまう文章ではないかと思います。ですから、ここは研究対象者と研究者を分けて記述した方が、わかりやすいのではないかと思います。例えば「研究対象者やその他の関係者の人権」、次が「研究者の個人情報や知的財産」と具体的に書いた方が、分けて理解しやすいのではないかと思います。

○福井座長 いかがでしょうか。

 ただいまの御意見ですと「研究対象者等及びこれの関係者の人権」です。そして「研究者等の個人情報やそれらの関係者」ですね。

○真田委員 「研究者等」が入っているので「その他」は要らないのではないかと思います。研究対象者は御家族がいらっしゃるので、そこは重要だと思っているのですが、研究者の方は「研究者等」になっているので、いいと思います。

○福井座長 「等」以外にも、知財の関係だとか、全く別個の人たちもいることはいます。

○真田委員 「研究者等の個人情報や知的財産の保護」でよろしいと思いました。

○福井座長 知的財産に関しては、研究者等だけではくくれない関係者が出てくるものですから、何かしら「研究者等の関係者」という部分が入らないと、まずいと思います。

○真田委員 そうですか。

○花井委員 両方に「その他これら関係者」と入れていいのではないですか。くどいですか。

○福井座長 関係者も入れた状態で分けて書くということで、「研究対象者等」のところと「研究者等」のところは、分けて書くということではいかがでしょうか。よろしいですか。そのようにしたいと思います。

 時間も大分押してまいりましたので、現在の第4章のところ、続きまして、18ページの下から6行目辺りの(4)ですけれども、川村先生からの御意見がございまして、これについて、もう一度、事務局から説明していただいてよろしいですか。社会的弱者のところです。

○南川課長補佐 川村先生の御意見につきましては、18ページにありますところでございまして、ここは「倫理審査委員会は、小児、障害者等を研究対象者とする研究計画書の審査を行い、意見を述べる際は、これらの者について見識を有する者に意見を求めなければならない」という形になっていますが、これは5月の段階で先生方にお取りまとめいただいた際には、「小児、障害者等を研究対象者とする」のところは「小児、障害者等の社会的に弱い立場の者を研究対象者とする場合には」という形の文言が記載されていたのですが、これについては「小児、障害者等」と「社会的に弱い立場の者」を併記するのは、不適切ではないかという御指摘がありましたので「小児、障害者等を」という形で、今の記載ぶりになっているところです。

 これに対して、川村先生からの御指摘としましては「社会的に弱い立場」という言葉を抜くことによって、本来、同意、説明能力に欠く方々に対しての研究を行う場合に、有識者の意見を事前に聞かなければならないという御趣旨の記載であるので、これを抜くこと自身は、不適切ではないかという御主張です。

 もう一つは、これは社会的弱者に限らず、全ての研究に対して、必要であれば、有識者に対しての意見を聞くのは、当然のことであるから、それについては「(5)倫理審査委員会は、審査の対象、内容等に応じて有識者に意見を求めることができる」とされているので、本項は削除しても差し支えない。仮に残したとしても「社会的弱者を研究対象者とする研究を審査する場合には」という形で、記載をするのが適切ではないかという御指摘だと捉えております。

○福井座長 ありがとうございます。

 これについては、御意見ございませんでしょうか。田代委員、どうぞ。

○田代委員 川村先生の前段の意見には賛成です。もともとここの「小児、障害者等」というのは、社会的に弱い立場にある者の例示として出していたものが、例示だけが残っているので、非常に唐突な記載になっています。川村先生もおっしゃっていますが、普通に御自分で判断できる身体障害者を対象とするような研究に、特にこういうものが必要かというと、必要ないと考えますので、「社会的に弱い立場にある者」を戻していただくのが、一番いいと思います。もしその記載が難しいのであれば、少なくとも例示だけが残るという形は避けていただくのが大事だと思います。

 後段についてですが、川村先生から削除してもいいのではないかという話があったのですが、今回、基本方針の中で、「社会的弱者への特別な配慮」ということをうたっているので、その一つの具体的な表現として、そういう方を対象とする場合には、倫理審査委員会で十分な知識や経験のある人に見てもらうということを入れたのだと理解しています。もっとも、マストで書くかどうかということは、確かにあると思います。例えば、簡単なアンケート調査をするのに、これが全部マストかと言われると、ちょっと違うような気もします。

 ですので、例えばここで川村先生が提案されているように、「求めるものとする」という表現も一つの案ではないかと思います。ただ、「ものとする」という表現がいいのかという話が先ほどあったので、いいのかどうかわからないのですが、必要に応じてするという形で、明文的に残していただくのがいいと思います。

 いずれにしても「小児、障害者等」という書き方にしてしまうと、かなり問題があると感じます。

○福井座長 この点につきましては、いかがでしょうか。

 山縣先生、どうぞ。

○山縣委員 趣旨はそういうことなのかもしれませんけれども、ここには多分もう一つの心があって、いわゆる疾患、病気だけではなく、健康な子供の発達がこれから研究対象者になったときに、そういったことをやる場合に、これまで余り配慮してこなかったことにきちんと配慮しましょうとか、障害者も疾患ではないわけで、そうした人たちのQOLの研究を行うときに、障害者がゆえに、もしくは子供がゆえに対象になる。要するに病気がゆえに対象になるのとはちょっと違う意味合いをもって、そういう意味で、こういった配慮が必要だということです。そういう心をこの中に入れるときに、どういう表現がいいのかという、そういうことではないかと思います。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。

 先ほど出ていた言葉では、特別な配慮を必要とする人々が対象となる場合、恐らくそういう意味ですね。

○田代委員 私自身は「小児、障害者等」だけが残ってしまうと、非常に目立ってしまうので、仮にガイダンスで中身を書いていただくとしても、先ほどの山縣先生からの御意見ももっともだと思いますので、例えば「小児、障害者等、特別な配慮を必要とする研究対象者を対象とする場合には云々」という形で、「意見を求めることとする」という表記にしていただければ、ここはパブコメでもかなり御意見をいただいているのですが、そういう形であれば、うまくいくと思います。とりあえずこれだと自動的に全て聞くという感じになってしまうので、それが本当にいいのかということです。

○福井座長 いかがでしょうか。

 「小児、障害者等、特別な配慮を必要とする研究対象者とする」ではおかしいですね。いずれにしても、例示としての「小児、障害者等」ということです。そうなっても、全ての小児、障害者が含まれませんか。

 どうぞ。

○中村座長代理 山縣先生の御発言の趣旨はわかるのですが、ただ、特別な配慮が必要な社会的な弱者といったときに、臨床研究のほとんどの場合が対象になる、患者というのが一番大きいと思います。要するに医療機関の中で、医師、患者関係の中にある患者が、臨床研究のほとんどの場合の対象になると思います。そこのところが抜けて、小児、障害者という例示というのは、大きなところを見誤っているような感じを印象として受けます。そういう意味では、例示ではなくて、社会的に配慮が必要な人たちをみたいな感じで、さらっといく方が、あえて挙げるとすれば、いいという感じがしております。

○福井座長 山縣先生、どうぞ。

○山縣委員 ここはいわゆる臨床研究がベースになっている嫌いがあって、例えば予防の概念だとか、人の発達のような研究というのは、これから非常に重要になってきて、そのことが、ひいては疾患になったときの治療にも結び付いていく。そういう前者の研究がこれから非常に重要になってくるときに、そういった配慮をこれまで余り考えてこなかったということを、どこかでしっかり入れる必要があるという意味です。むしろここは弱者というか、患者さんを対象とする研究であることが前提にあって、こういう研究をやるときの配慮の心が、ここには必要だという意見です。

○福井座長 どうぞ。

○南川課長補佐 記載部分は、既に5月に合意された部分として、事務局としても、社会的弱い立場の方に対する研究をやる場合にはという趣旨自身は変わってはおりませんので、例えば4ページにございますとおり、今回、社会的に弱い立場にある者への特別な配慮というものが、この指針の原則としてうたわれておりますので、ここの言葉を活用させていただければ「小児、障害者等の特別な配慮が必要な者を研究対象者とする場合に」という形で、今まで御指摘いただいた部分をガイダンスにしっかり書いていくという形で、対応させていただければと考えております。いかがでしょうか。

○福井座長 その言葉を使うということが、今の案です。「社会的に弱い立場にある者」という言葉を使って、そういう方を対象とする場合には、それらの者について見識を有する者に意見を求めなければならないという文章にするということで、いかがでしょうか。

 丸山委員、どうぞ。

○丸山委員 社会的に弱い立場の者というのは、どこまで広がりを持って把握されるか、認識されるかなのですが、原案にあるように、小児等ということで、子供であれば、常にこれに該当すると捉えられかねないところがあるので、先ほど田代委員もおっしゃり、川村先生もお書きのように「必要に応じて」という言葉を文言の中に入れる方が望ましいのではないか。あるいは規定の中に入れると、スキップされる危険が大きくなるということであれば、ガイダンスで、必要に応じてという心なのだということを書いてあげるのが、必要ではないかと思います。このまま子供が対象となると、常にその専門家が委員会に出てこないといけないと読めるので、委員会として大変ではないかと思いました。

○福井座長 位田委員、どうぞ。

○位田委員 何を残して、何を省くかというのは、なかなか難しいのですが、基本的には小児、障害者であれば、全部意見を聞くというのは、少しおかしいでしょう。しかし、小児、障害者が研究対象になっている研究計画では、特別な配慮が必要な場合もあるということであれば、ちょっと文章は長くなるのですが「小児、障害者等を研究対象者とする研究計画で、特別の配慮を必要とする者について」を補って、その後に「必要に応じて」を入れて、「それらの見識を有する者に意見を求めることができる」とするのはいかがでしょうか。

 もう一度申し上げますと「小児、障害者等を研究対象者とする研究計画書のうちで、特別な配慮が必要な研究計画の場合には、必要に応じて、これらの者について、見識を有する者に意見を求めることができる」。そうしておけば、大体全部をカバーできるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○福井座長 どうぞ。

○田代委員 意図は一緒だと思うのですが、私は「小児、障害者等」だけを残してしまうと、これが何の例示かわからなくなってしまうので、先ほど事務局からも指摘がありましたが「社会的に弱い立場にある者」という言葉がつかえないのであれば「小児、障害者等、特別な配慮を必要とする者を研究対象者とする研究計画の審査を行う場合には、必要に応じて」という形で書いて頂きたいと。文言の細かいところは、最終的にはお任せしますが、何の例示なのかということがわかるようにしていただきたいということです。

 これは100%毎回やるものではなくて、倫理審査委員会の委員の中に、例えば小児科の看護師であるとか、MDがいないのに、小児科の研究計画を審査するというのは、やはりおかしいのではないかと。その場合に、例えば事前にほかの小児科の先生とか、小児科のナースにきちんとしたレビューをしていただくということぐらいの意図だと思います。ですので、その二つが盛り込まれれば、細かな文言は、基本的には調整していただければと思います。

○福井座長 確認ですけれども「特別な配慮が必要な者」という言葉にしなくてはならないのか、「社会的に弱い立場にある者」という言葉に変えた方がいいのか。この点の確認だけお願いしたいのですけれども、いかがでしょうか。

 丸山先生、いかがですか。今の社会的に弱い立場にある者の例示として、小児、障害者等を挙げるというのと、特別な配慮が必要な者の例示として、小児、障害者等を挙げる、そこのところです。

○丸山委員 それぞれのお考えのところが、少し違っているのが本当だろうと思いますが、私は社会的に弱い立場という方ですけれども、これは私の専門のところではありませんので、先生方にお任せします。

 それから、この機会に(4)と(5)をひっくり返した方がいいのではないでしょうか。(5)が一般規定で、(4)が特に弱者の場合ということで、あわせてお考えいただきたいと思います。

○福井座長 順番については、また考えさせていただくとします。

 田代先生は、特別な配慮が必要な者ですね。

○田代委員 私はどちらでも構わないと思っています。先ほど事務局から社会的に弱い立場にある者という言葉が使いづらいという御指摘があったので、そうであれば、別の言葉でも構わないという発言をしました。もちろん使えるのであれば、使っていただいていいと思います。

○福井座長 4ページで使っている言葉で、これが使えると言うことですね。

○南川課長補佐 おっしゃるとおりで、趣旨としては変わりないのですけれども「小児、障害者等の社会的に弱い立場にある者」といったときに、指針上で、今、ノーマライゼーション推進の観点からは、障害者は社会的に弱い立場かということを明確に言っているように捉えられかねないという御指摘を省内の審査で受けておりますので、それを考えますと、「特別な配慮を有する者」という形にした上で、御趣旨をガイダンスで入れ込んでいくことがよろしいのではないかというのが、事務局の提案でございます。

○福井座長 位田委員、どうぞ。

○位田委員 特別な配慮というのは、先ほど中村先生がおっしゃったように、どの場合でも特別な配慮は必要なので、グループとしては、社会的弱者というグループがあって、だから、特別な配慮が必要なのだ。それは患者さんに対する特別な配慮よりも上の話だと思うので、「特別な配慮が必要な者」という言い方は、少しおかしい。それだったら「社会的弱者」という言葉を使うべきだろうと思います。

 あとは「小児、障害者等の」と言ってしまうのがいけないのであれば、「小児、障害者等を含む」という言い方もあるでしょう。ただ、どう書いても「小児、障害者等」というのは残したいわけですね。違うのでしょうか。要するに何をここに書いておかないといけないのかという話なので、社会的弱者を書く方が重要なのか、小児、障害者等が必要なのか、そこのチョイスの問題だと思います。あとは、ガイダンスで書き込めばいいと思います。

○福井座長 どうぞ。

○田代委員 もともとの趣旨からいうと、当然社会的弱者と書くべきところでして、その例示として、たまたまここでは小児、障害者が挙がっているという理解なので、社会的に弱い立場にある者というのが、本来の表現だとは思います。

○福井座長 楠岡先生、どうぞ。

○楠岡座長代理 同様の意見ですけれども、結局、社会的に弱い立場にある者への特別な配慮というのが、基本方針にあって、その具体例として、倫理審査においては、特別な配慮としては、必要に応じ、有識者に意見を聞くというプロセスだと思われます。一つは社会的に弱い立場というものが定義されていないので、これはガイダンスか何かのところに、社会的に弱い立場にある者とはどういうものかということを入れていただくのと、現在の倫理審査委員会の項においては、社会的に弱い立場を対象とする研究計画書の審査の場合は、これも全部が全部対象になるとは限らないので「必要に応じて」を入れていただいて、有識者の意見を求める。そこに今のようなことに関して、ガイダンスで入れていただくというのが、今までの議論のまとめ的なものになるのではないかと思います。

○福井座長 ありがとうございます。

 花井委員、どうぞ。

○花井委員 社会的弱者という表現と、障害者という言葉がコンフリクトしていると思います。たがら「小児と社会的弱者」として、ガイダンスの方に、特に障害者の場合でも、社会的弱者に当たるような障害者があるということを示せば足りるので、「小児と社会的弱者」としたら、すっきりくるのではないでしょうか。

○福井座長 丸山委員、どうぞ。

○丸山委員 花井先生のおっしゃるところをもう一歩進めて「小児」もとってしまったらどうですか。ガイダンスに全て説明して入れた方がいいと思います。二つの言葉は、微妙なニュアンスを持っていますので、ガイダンスの方がいいのではないかと思いました。

○福井座長 楠岡先生がおっしゃったように、社会的に弱い立場の者に対して、必要に応じて、見識を有する者に意見を求めなければならない。「必要に応じて」という言葉も入れるということでよろしいでしょうか。ガイダンスで、必要であれば、小児または障害者の言葉が出てくるというつくりにしたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございます。

 どうぞ。

○田代委員 そのすぐ下のところなのですが「(6)倫理審査委員会の意見は、やむを得ない場合を除き、全会一致をもって決定する」というのは、私自身がもともと同意していた、原則としては全会一致だけれども、こういう場合には例外的な規定があるという規定から随分変わってしまっていて、非常に強い全会一致原則になっていると感じます。パブコメでも出ていましたが、全会一致原則を余り強くしてしまうと、1人の委員に拒否権を持たせることにもなりますし、ほかには自由に意見が言えないというか、とにかく全員が一致しなければ通せないということは、反対意見も残せないということになってしまいます。もちろんそれは「やむを得ない場合を除き」というところで、ガイダンスなどで処理するつもりなのかもしれないのですが、このままでは強過ぎると思います。

 先ほどあったように「全会一致をもって決定する」というよりは「全会一致をもって決定するよう努めるものとする」とか、目指すべきものとして、コンセンサスを目指すというのは、当たり前だと思うのですが、ただ、それでなければ、前に進まないとは読めないような形にしていただきたいと思っています。

○福井座長 いかがでしょうか。位田委員、どうぞ。

○位田委員 つけ加えてですけれども「やむを得ない場合を除き」の「やむを得ない場合」というのは、一体何なのかというのがよくわからないですし、もしやむを得ない場合があるとすれば、どういうふうにして決定するのか、判断するのか。例えば過半数でいいのか、3分の2要るのか、5分の4要るのか、手続ですから、ここは本則に書き込んでおくべきだと思います。全会一致とコンセンサスというのは、ちょっとニュアンスが違うので「できるだけ全会一致を目指すよう努めるものとする」というのは、私もそれでいいと思います。ただし、全会一致が得られない場合には、例えば3分の2とか、もしくは5分の4とか、ある程度高い多数決が要るということを、本来ここに書き込むべき話だと思います。

○福井座長 具体的には、どのような文章にしましょうか。やはり全会一致という言葉を出して、それに努めるものとするというつくりにした方がいいのでしょうか。

○田代委員 目標としては、構わないと思います。もともとそういう書きぶりになっていましたので、先ほどの位田先生の御意見には全面的に賛成ですので、「倫理審査委員会は、全会一致をもって決定するよう努めるものとする」。原則としては、そういうふうに書いておいていただいて、その上で、ただし、それが困難な場合には、もともとこれは大多数と書いていたのが、ちょっと中途半端だということであれば、例えば先ほど3分の2とありましたけれども、4分の3とか、5分の4というような、いわゆるアメリカだとスーパーマジョリティールールと言われる、大多数による賛成という、過半数ではさすがに問題があると思いますので、それを具体的にもしここで決めた方がいいのであれば、どこかで、えいやと決めるしかないと思います。

○福井座長 いかがでしょうか。後藤委員、どうぞ。

○後藤委員 例えば3分の2でいいとか、そういうところまで書き込む必要はないのではないかと思います。なので「やむを得ない場合を除き」ではなくて、今、田代委員がおっしゃったような形の文言にして、「全会一致をもって行うのが望ましい」とか、そういう形にしておく方がよろしいのではないかと思います。各倫理委員会がどういうふうに判断するかという余地を残しておいた方がいいと思います。余り詳しく規定を書く必要はないかと思います。

○福井座長 位田委員、どうぞ。

○位田委員 倫理委員会に任せてしまうと、例えば過半数で決まってしまってもいいのかみたいな話がどうしても残ってしまうので、先ほど5分の4と言いましたけれども、基準としては、4分の3ぐらいが妥当だと思います。それ以上賛成が多ければ、それはそれでいいわけですし、基本は全会一致、できるだけコンセンサスを目指して議論をしていただいて、最終的に私は嫌だという、例えば1人の人がだめなものはだめと言われて、決まらないのは困るわけですから、4分の3ぐらいが私は適当かと思いますし、数字は手続ですから、手続規則はきちっと書いておいた方がいいと思います。

○福井座長 いかがでしょうか。山縣委員、どうぞ。

○山縣委員 そういう数字を決めるときは、基本的に立場が同じ人の場合にそういうことが言えると思うのですが、立場が違って意見が違う場合、そういうことは難しいのではないかと思います。例えば被験者代表の方が1人しかいないときに、その人がだめだというときに、どうしてなのかということをきちんと聞く。そこで多数決をとってしまうのではなくて、何らかの手続を踏んで、それをする。だから、数字で示さない方がいいような気がします。

○福井座長 位田委員、どうぞ。

○位田委員 今、山縣委員がおっしゃったようなことが、まさに「全会一致による決定に努めるものとする」という範囲の中に入っているのだと思います。例えば1人だけ患者さんの代表がいて、その人が反対しているから、でも、多数決でやってしまえというのはおかしいので、それはそのときそのときの状況によると思うのですが、同じような意見が出ていて、しかし、特に患者さんの代表ではないとか、ある種の性格を持った人のみが反対をしているということではなくて、誰かが嫌だと言っている。これまでの倫理委員会は、だめなものはだめだと言っている人がいるから、結局は研究が進まないという批判もあったので、ある程度数字を挙げておいた方が、進みやすいとは思います。

○福井座長 それでは、全会一致を目指すという文章と、それから、4分の3という数字を入れるか。または、大多数にするか。

 宮田委員、どうぞ。

○宮田委員 私は数字を入れない方がいいと思います。それは何の根拠もありません。これはむしろ倫理委員会で議論していただいて、決めていく。そういう過程が積み重なって、4分の3とか、5分の4ルールができるのだったらいいと思いますけれども、ここで何の根拠もない数字を示すというのは、非常によろしくないとし思います。

○福井座長 門脇委員、どうぞ。

○門脇委員 私も数字は入れない方がいいと思います。全会一致を目指すというのが原則で、1人でも、今回示したような指針に合致しないということを主張する以上、そこで具体的な4分の3とか、5分の3で押し切る形にするのは、倫理委員会の趣旨ではないと思います。原則にすることで、非常に特殊な場合、その倫理委員会で全会一致でなくても決める場合はあるとしても、全会一致を原則とするというところは、崩せないと思います。

○福井座長 それがやむを得ない場合には、大多数でという文言を入れて、大多数という意味は、ガイダンスか何かで、例えば外国では4分の3をスーパーマジョリティーという言葉を使っているとか、そういう例示をガイダンスで示すぐらいでいいのではないかと、個人的には思います。いかがでしょうか。

 永水委員、どうぞ。

○永水委員 例示自体が要らないのではないかと思います。数で4分の3とか、5分の4と入れてしまうと、それに縛られてしまって、それぞれの施設が努力するという、指針が目指しているところが失われますし、また、基本原則を示す指針ですので、その辺りは努力していただくことがいいと思います。

○福井座長 位田先生、よろしいでしょうか。

○位田委員 私はそれで問題ないのですが、そうすると、大多数といった場合、ボーティングをやることになると思います。

○福井座長 何をでしょうか。

○位田委員 投票するということです。投票で決めるということで、いいのですねということです。

○門脇委員 原則として、全会一致ということで、何か特別な事情が生じた場合、例えば極端な話、ある方が何か判断ができないような状況に陥ったりした場合には、全会一致ということにならないかもしれませんけれども、あくまでも全会一致で、ボーティングを原則としてやるものではないということだと思います。

○位田委員 今、おっしゃっているのは、全会一致に努めるというプロセスの問題で、それがどうしてもだめなときに、どうするかという議論だと思います。

○門脇委員 全会一致を原則にすると言っていいのではないでしょうか。

○位田委員 だから、原則なのです。例外があり得るときにどうするか。例えば病気の方で、出席なさらないときには、出席した人の全会一致でいいと思いますけれども、出席されていて、どなたが反対されている。1人か2人が、絶対に嫌だとおっしゃっている場合にどうするかなのです。

 アメリカの人と話をしているときに、コンセンサスを得られなければ、ボーティングをするのだろうと言われました。本当にちゃんとボーティングをしないと、ボーティングと書いてあっても、みんなこれでいいねと言ってやることは、ボーティングに反すると言われたことがあります。日本ではそこまで厳しいことは言わないのですけれども、ただ、例えば大多数のときには、何らかの形でこれが大多数ですということがわからないと、大多数と言ってしまうだけで、議事録にどういうふうに残るかということが、気になりました。ほとんど問題ないと思っているのですけれどもね。

○福井座長 楠岡先生、どうぞ。

○楠岡座長代理 倫理委員会の判断に関しては、ほかのところでも今まで議論があって、基本的に全会一致、どうしてもまとまらない場合は、数字は書かずに大多数です。

 その具体的な書き方としては、再生医療法の省令の認定再生医療等委員会とか、特定認定再生医療等委員会のところにたしか書いてあったと思うので、それが一つ参考の文章になるのではないか。内容的には全く同じ意見だと思います。

○福井座長 中村先生、どうぞ。

○中村座長代理 最終的に一つの研究に対してゴーサインを出すのは、倫理審査委員会ではなくて、そこの研究機関の長なわけです。長に対して、倫理審査委員会は意見を述べるということなので、全会一致ができなければ、例えば10人中9人はこの計画書に対して承認したけれども、1人はここのところのこの部分をこういう理由で承認しませんでしたということを、長に報告をして、それをもとに長がゴーサインを出すのか、それともこれはだめにするということで、私はいいような気がします。そういう意味では、全会一致を目指す。あとは、出てきたものをそのままを長に報告するということで、いいような気がするのですけれども、いかがですか。

○福井座長 位田委員、どうぞ。

○位田委員 今の中村先生の御意見はわかるのですが、そうすると、倫理審査委員会が承認しないまま意見が出てしまうわけです。最終的な判断は、研究機関の長なのですが、倫理審査委員会が承認しましたという意見を出す、もしくは条件つき等も含めて承認しませんでしたという意見を出す。それが10人はOKだけれども、1人からノーだという意見が出ましたというだけでもっていくと、倫理審査委員会は承認をしていないことになりますから、それは困ります。

○福井座長 山縣委員、どうぞ。

○山縣委員 私も全く同意見で、研究の論文を出すときに、倫理審査委員会の承認というのは必要で、そこは何らかの手続を新たに考える必要があると思います。

○福井座長 よろしいですか。どうぞ。

○宮田委員 確かに承認をやる必要があると思います。これはある意味うまく書かれていて、全会一致にたどり着くように努力する。やむを得ない場合は、大多数の意見をもって承認して、機関の長に報告する。そういうことです。大多数というのは、悪いけれども、4分の3とか、そういう数字は出さないでいただきたいというのが、私の意見です。

○福井座長 13ページの下から8行目に書いてありますように、倫理審査委員会が研究の実施について、適当か不適当かの判断を研究機関の長に上げて、研究機関の長はほぼそれに従わなくてはならないということですので、適当か不適当かの判断は、倫理審査委員会が行う必要があるということです。ここのところは、今までの御議論にありましたように、全会一致に努めるという文章と、それがどうしてもだめな場合には、大多数で決するという言葉にしたいと思いますけれども、よろしいですか。

 だんだん時間がなくなってきまして、あと55分しか残っておりません。実は第5章が一番長いのです。

 どうぞ。

○門脇委員 今の案はいいと思います。全会一致で承認した場合には、研究機関の長は承認するでしょうけれども、大多数が決するという場合には、倫理委員会が承認したとしても、反対意見があったということを踏まえて、研究機関の責任者は、もう少しこの点を検討してほしいとか、そういう余地は残ると考えて良いと思います。研究機関の長の判断というのは、むしろ倫理委員会が承認と言っても、しない場合があるという判断だと思います。それは倫理委員会が全会一致の場合にも、そういう判断があり得ると思うのですけれども、特に大多数の場合には、そういう判断が生きる可能性があるということを、議事録に残しておいていただきたいと思います。先ほどの説明ですと、あたかもそのまま研究機関の長が、倫理委員会のとおりにするという説明でしたけれども、そうではないと思います。

○福井座長 研究機関の長は、倫理委員会の意見を尊重するということと、倫理委員会が不適当との意見を述べたときには、研究の実施を許可してはならないということが書いてあります。適当と言ったからといって、100%認めなくてはならないという文章は、恐らくどこにもなかったと思います。

○門脇委員 そういうことが議事録に残っていれば、大丈夫だと思います。

○福井座長 それでは、そのようにさせていただきたいと思います。

 実は第5章が一番長くて、8ページ近くあります。この部分につきましては、いかがでしょうか。

22ページの下から10行目、11行目辺りのところのパラグラフが、先ほど変更したところに似た文章構成になっています。この部分につきましても、同じような形にするかどうかを、検討させていただきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。

 それ以外のところは、いかがでしょうか。

 実はもう一点、かなり時間がかかりそうな検討事項がございますので、よろしければ、そちらに移りたいと思います。

 それでは、第6章から第9章までのパブリックコメントの結果と、指針案の修正について、事務局からお願いします。

 済みません。丸山委員、どうぞ。

○丸山委員 インフォームド・コンセントは終わったのですね。インフォームド・コンセントについて、一つございます。

 コメントのまとめの8ページの下から四つ目に「◎ 説明事項は、○1から㉑まで全て必要か」という、先ほどの研究計画書と同じことの疑問が呈されていて、先ほどの事務局からの説明では、ここをスキップされたのですが、結構重いところだと思います。説明事項は、全て説明しなければならないとされていたと思うので、そこも先ほどと同じように「説明事項は、原則として以下のとおりとする」という文言に改めていただければと思います。

○福井座長 その方向で変更するということで、よろしいでしょうか。

 それでは、第6章からの説明をお願いいたします。

○工藤課長補佐 それでは、資料1ですと、9ページでございます。

 第6章に関しての主な御意見といたしましては、いずれもガイダンスにおいて解説を示すことによって、対応できるものと考えられるものでございまして、指針案の修正についはて、特にございません。

○南川課長補佐 第7章につきましても、本文の修正はございません。

 資料1の10ページの主な御意見ですが、一つ目の○の「『人を対象とする医学系研究』は、医薬品副作用被害救済制度の条件を満足するのであれば制度の対象という理解でよいか」というのは、これまでもQAで対象となるという旨を説明しておりますので、それと同様の形で、ガイダンスで書いていきたいと思っております。

 それ以降の○についても、基本的にはガイダンス等で示してほしいということです。既に本文に書いてあるものもありますが、本文に書いてある部分は、本文に書いてあるという旨を返答した上で、ガイダンスで対応するべき部分は、ガイダンスで対応していきたいと思っております。

 一番最後の先進医療は統合指針に基づいてやっていると思うので、重複報告がない旨を記載してほしいというのは、制度が異なるので、必ずしもこういう対応はしかねる旨を回答しようと思っています。

 次は第8章ですが、第18の利益相反の部分につきましても、基本的に変更はございません。

 利益相反について、具体的にどこまで記載しなければいけないのかという辺りの説明には、これまで利益相反に関する指針等を厚生労働省及び文部科学省において示している部分がございますので、それらの記載をもとに、主に書いていくとともに、現在、ディオバンの研究不正事案等もありますので、それらの状況も踏まえた形で、ガイダンス等に記載していきたいと思っております。

 第19の項目についても、おおむね素案において、ガイダンスで対応すると書いてある部分で対応できたり、もしくはその他の返答だけで対応できる部分でございますので、これについても、基本的に本文の修正はございません。

 最後の第20のモニタリング及び監査の部分については、委員から御意見が二つ出ておりますので、説明させていただきます。

 第20、パブコメの20ページですけれども、パブコメの中で、ICHGCPではモニタリングは必須であるが、監査はオプションであり、行わなくてもいい行為と規定されている。当指針における監査は、試験ごとに第三者監査を必須としているのは、厳し過ぎるのではないか。ICHGCPより厳しい要件を適用することは、日本の臨床研究を衰退につながるのではないかという御指摘でした。

 あと、モニタリング・監査については、膨大な人的なパワーがかかる。研究ごとにある程度柔軟な対応ができるようにすべきではないか。これについては、前回のモニタリング・監査の議論のときにも、モニタリング・監査を義務づけるにしても、研究によって柔軟な対応をすべきであるという御趣旨をいただいていますので、その旨をガイダンス等で書いていくのではないかと考えております。

 三つ目のモニタリング・監査の実施に対して、猶予期間が必要ではないかというのは、詳細については、次のところで御説明いたしますが、第20の規定については、猶予期間を少し設ける方向で、事務局は案として考えております。

 その後のモニタリング・監査の内容については、可能な範囲で、ガイダンスで対応していきたいと考えております。

 この点について、委員の御意見ですけれども、まず磯部先生からいただいている御意見がございます。資料3を御確認ください。

 磯部先生は、本日、御欠席されているのですが、磯部先生は、平成25年4月から、海外の規制制度を比較する研究班の代表をされていますので、そこで得た知見から、どうしてもおっしゃりたいことが1点あるということでございます。

 どうしてもおっしゃりたい点につきましては、資料2の32ページの「第20 モニタリング及び監査」の(1)の規定で「研究責任者は、研究の信頼性の確保に努めなければならず、侵襲(軽微な侵襲を除く。)を伴う研究であって介入を伴うものを実施する場合には、研究機関の長の許可を受けた研究計画書に定めることにより、モニタリング及び監査を受けた実施しなければならない」という御主張でございまして、下線部の(a)の部分については、研究に応じて柔軟に対応すべきではないかという御指摘でございまして、これは事務局としても、御指摘のとおりと考えております。

 下線部(b)の部分について、モニタリングと監査を並べているけれども、欧米でも監査までは求めていないので、監査については一旦削除するか、もしくは常に必須とするのは不当であって、必要に応じてなどとすれば十分ではないかという御意見をいただいているところでございます。

 これにつきましては、机上配付させていただいている、川村委員からも同趣旨の御意見が出ております。川村委員の御主張としましては、モニタリングは研究責任者ごとの自己点検であって、研究ごとにやる必要はあるけれども、監査は研究機関の外部の者が行うのが適当であり、研究責任者が監査を行うべきではないという御主張とともに、そういう観点でいうと、監査はモニタリング報告を閲覧した上で、必要があるときに、研究機関の長の権限で行うべきものと考えておりまして、それであれば、第2章の第6の研究機関の長の責務の中で記載されている、点検評価に含むことができるであろうという御指摘をいただいております。

 第20については、以上です。

○工藤課長補佐 それでは、最後になりますが、資料1の13ページでございます。

 第9章、その他に関連した主な御意見でございます。

 第21の施行期日の規定につきましては、ただいま南川補佐より説明された第20の規定に関しまして、各施設の体制を整えるまでの猶予期間が必要との意見が寄せられていることを勘案いたしまして、資料2の33ページにお示ししておりますように、指針全体の施行から6カ月適用を猶予するような形で、案文を提示いたしております。猶予期間を6カ月とする点につきましては、第20の規定に関して御議論いただく際に、あわせて御検討いただければと考えております。

 また、第22の経過措置の規定につきましては、この指針の施行、すなわち来年4月1日時点を想定しておりますけれども、その時点において廃止前の旧指針の規定に基づいて実施中の研究については、第22の(1)で、引き続き、従前の例により実施することができるようになっております。

 ただ、そうした研究であっても、研究責任者や研究機関の長の判断によって、新指針の規定に基づいて実施することは、その下の(2)の規定で妨げないこととしてございます。

 第9章関係につきましては、以上でございます。

○福井座長 ありがとうございました。

 それでは、監査のところの御意見をいろいろと伺いたいと思いますが、その前に第6章と第7章について、確認をしたいと思います。案としては、ほとんど変更点がありませんけれども、これらについては、よろしいでしょうか。

 よろしければ、第8章、特に信頼性確保、監査の有無というところが、非常に重要な論点になると思います。

 これにつきまして、田代先生からも御意見を文書で出していただいていますので、最初に御説明いただければと思います。

○田代委員 私の資料は、川村先生の資料の次に置いてあると思いますけれども「監査に関する規定の削除の必要性について」という1枚紙のものに沿って、意見を述べさせていただきたいと思います。

 ここにも書いてありますように、私自身は、先ほど磯部先生の研究班の話がありましたが、その研究班の分担研究者として、今年度、アメリカ、イギリス、フランスの規制官庁及び研究機関、研究助成機関を訪問しまして、その結果、現行指針案における監査に関する規定を削除すべきではないかという意見を持つに至りました。

 具体的な文言案については、裏面の表に載せてあります。それは単純に監査にかかわる指針の文言案を削除してはどうかという提案です。

 幾つか理由の説明をこれからいたしますけれども、先ほどパブコメでも既に出ていましたが、ICHGCPあるいは今回調査した諸外国の規制制度において、モニタリングと監査というのは、同列には扱われていません。モニタリングは必須ですけれども、監査は任意または規定されておらず、両者を等しく研究者に課すということは、著しく不合理であろうというのがその趣旨です。

 理由の一つ目ですけれども、既にパブコメでも紹介されていますように、ICHGCPにおいて、モニタリングは必須ですが、監査は任意であると規定されていまして、監査を一律に試験ごとに義務化するというのは、ICHGCPに準拠した国際共同研究に日本の研究者が入る場合、日本の研究者だけが監査を課せられるという、非常に不合理な状況を生み出してしまうので、こういった観点から、問題であろうというのが1点目です。

 理由の2ですけれども、ICHGCPの規定も受けた形だとは思われますが、実際には欧米諸国の規制制度において、データの信頼性確保に関しては、モニタリングだけが定められており、監査は一切規定されていないのが実情です。

 先ほど磯部先生の意見書の中では、アメリカのIND規則の文言が引かれていましたけれども、そこに載っているのも、モニタリングのみとなっています。

 私の方では、下にイギリスの臨床試験規則の例を出していますが、ここにもモニタリングのみが書かれていて、イギリスの規制当局の担当者にお話を伺ったところ、監査については、意図的に法制化していないということが、はっきり答えとして返ってまいりましたので、明らかにこの二つは違う扱いをされています。このまま日本のみが監査を義務化すると、こういった国際調和の観点から見ても、突出した過剰規制となるのではないかということを懸念しています。

 理由の三つ目ですけれども、欧米の自主研究においても、監査つまり「オーディット」と称して行われていることが、幾つかあります。それは一体何なのかということが、長らくわからなかったので、なかなか強いことが言えなかったのですが、それも最近やっとよくわかりました。

 ここに書いてあるとおりなのですけれども、欧米諸国の自主研究において、オーディットと称して実施されているものは、先ほど川村先生の御意見にもあったのですが、現行指針で研究機関の長の責務として定められている自己点検に当たるもの、あるいは今回新たに研究責任者に課される、モニタリングの中に含めることができるようなものであって、別途、監査という規定を定める必要性はないというふうに、私自身は理解しています。

 具体的な例として、参考のところに、米国における自主臨床研究において、監査と称されているもので、具体的に何が行われているのかということで、ここに2点記しております。

 1点目は、いわゆる内部監査と言われるものでして、これは現行指針の定める自己点検に相当します。全ての研究に対して行われるものではなくて、一部をピックアップして行うものです。これは当然研究チームからは独立した研究機関の監査担当の方が行いますけれども、これを全ての研究に課すということは、向こうでもあり得ないことでして、基本的には施設によるリスクマネジメント活動の一環として、きちんと見なければいけない研究について、選択的に監査を課すというのが、1点目の活動です。

 2点目は、がんの領域の臨床試験で実施されている、施設訪問監査と言われるものです。これはどういうものかといいますと、施設訪問モニタリングではなくて、CRF等、書面上の実施確認を行うような、中央モニタリングを採用した場合、それを補完するために、施設を訪れて行うサンプリングSDVのことを監査と呼んでいます。日本でもがんの研究グループなどで行われていますが、これは研究者同士が互いの施設を訪問するスタイルをとるもので、相互監査や相互モニタリングとも言われるようです。これは米国の規制で言うと、まさにモニタリングに対応する行為として行われているものでして、監査というのは、そもそもFDAの規制には全くありません。そういう意味でも、日本だけが規制上監査を求める必要はなく、今回の指針でいうと、自己点検またはモニタリングの一環として行うものとして、事実上、監査は実施できると考えており、今回こういう意見書をつくらせていただきました。

 私からは以上です。

○福井座長 ありがとうございます。

 この点につきまして、いかがでしょうか。

 先に直江先生、どうぞ。

○直江委員 この点は、前回も少し問題にしたかと思います。確かに現在のモニタリング・監査は、ICHGCPの書き方にある程度似ているのです。ただ、ICHGCPは治験依頼者、特に企業とか、こういうものが品質保証のためにモニタリングをやるということと同時に、モニタリングとは独立して、改めて監査を行うという二段構えになっています。このために、今回の倫理指針では、研究責任者がモニタリング者を指定する。あるいは監査者を指定するという二重構造になっているのです。これが非常にわかりにくいし、その点を御指摘されているようにも思います。

 今、田代先生が言われたとおりでして、研究機関の長が、自己点検、評価をするという項目に、かなりの部分が含まれる。特に監査の部分です。そういうふうに私も思いますし、今、御指摘になったように、多施設共同の場合には、お互いの相互訪問による監査が、組織単位で行われていて、必ずしもそれは試験単位で行われているものではないということがあるので、今回、治験依頼者と同じように、試験責任者が指定した者に監査を行わせるということが、このまま走ると、臨床では非常に混乱が生じるのではないかということで、今の御意見に全面的に賛成です。

○福井座長 ありがとうございます。

 渡邉委員、どうぞ。

○渡邉委員 この部分が生まれた背景には、インベスティゲーターとスポンサーの役割が混同されているという印象があります。以前もモニタリングと監査については、懸念を述べさせていただきましたとおり、私も今回の田代先生、磯部先生の御意見に賛成いたします。ただ、監査を否定しているわけではなく、このように全部を削除してしまうと、やはり外部からのオーディット、あるいはインスペクションという部分が弱くなってしまう。このことによって、これまでいろいろな問題が起きてきたわけで、研究機関の長の責務では書き込まれていますが、受け手側の研究責任者の責務にも「研究責任者は、研究機関の長による点検並びに倫理審査委員会による調査を受け入れること」という文をここに入れていただきたいと思います。

○福井座長 調査がどういうものかということは、議論が必要になると思います。

○渡邉委員 そうですね、もし可能ならば、第三者的な機関、治験の場合には規制当局ですけれども、そのような機関によるインスペクションをいつでも受け入れる素地を残すと、非常にありがたいと思います。

 以上です。

○福井座長 門脇先生、どうぞ。

○門脇委員 私は今の意見に全部反対です。なぜかというと、これまでこの問題については、この会議で随分議論して、このようになったにもかかわらず、なぜ今になってそういう議論を持ち出すのか、私は適切ではないと思います。なぜそのときに反論されなかったのか。そのときに議論がされているわけですから。

今回モニタリングあるいは監査を入れたのが、この倫理指針の優れたところで、学術会議が臨床研究について提案を出されています。その中では、臨床研究管理センターの整備の項目の下で、倫理審査及びモニタリング及び監査を含めた管理機能を充実させる仕組みづくりが、喫緊の課題であるということで、モニタリングはもちろんですが、監査のことも触れられています。

 

少なくともモニタリングは全部しなくてはいけないし、多くの臨床研究で監査がされているのです。実際に重要な研究では、監査がされているのです。モニタリングは必須です。重要な研究には監査も必須なのです。それは品質性や信頼性を得るためです。それがここにきて、いろいろな患者さんの治療方針に大きな影響を与えたりするような研究において、監査を全部消したら、どうなるのですか。これは骨抜きになってしまいます。

○福井座長 どうぞ。

○直江委員 門脇先生の御趣旨はよくわかりますけれども、この書きぶりだと、研究責任者が監査をやる人を決めることになっているのです。川村先生の御意見にもありますように、研究責任者ではない、研究組織ではない人に、監査のようなことを行わせることは必要だと思います。

○門脇委員 それは大賛成です。

 でも、先ほど監査をここから抜いてしまうという提案が出て、それに賛成だと言われた方がいらっしゃるので、それは全然話が違うと思います。

○直江委員 監査というのは、ここでICHGCPと同じようにやると、先ほど渡邉先生から御意見があったように、理解に齟齬が生じる可能性があるので、ICHGCPが言っているような、治験依頼者が独立した人に行わせる監査というのは、臨床試験で可能かということです。だから、言葉はどちらでもいいのですけれども、中身を考えていただきたいということです。

○門脇委員 例えば自主臨床試験でCROがつきます。CROは研究のデータのマネジメントなどをやりますけれども、それとは違ったところがやるのが監査です。

○直江委員 わかります。それは施設長でもいいのではないかと言っているのです。

○門脇委員 施設長ですか。

○直江委員 研究機関の長です。

○門脇委員 第三者がやればいいわけです。具体的には監査の内容の問題で、監査をここから除いてしまうという問題ではないはずだと思います。

○福井座長 藤原委員、どうぞ。

○藤原委員 私も門脇先生の意見に賛成というか、監査を全部除いてしまうのはきついと思っていまして、もともと5月11日の検討会のときに、モニタリング・監査は入れた方がいいですということを、申し上げた立場がありまして、最近のいろんな事案を踏まえて、こういうところを、日本の研究者の中できちっと認知していただくというのは、大事だと思います。教育的な意味もあると思うのは事実です。

 ただし、田代委員と磯部委員とも海外を回って、研究協力者として一緒に行ってきたんですけれども、さまざまな監査の位置づけがあるというのは事実ですし、モニタリングも監査も非常に幅のある多様な概念から定義づけがあるということは事実なので、磯部先生の資料3の修文案のところに、例えば「必要に応じて監査を実施しなければいけない」という言葉が入っておりますので、こういう感じで残して、あとはガイダンスなどで、監査の内容は、一番厳しいのは、企業の治験でやっているような監査です。でも、それよりも楽なものもありますという記載にされたらどうでしょうか。

○門脇委員 私がずっと主張しているのは、リスクベースドな監査です。それは臨床研究では当たり前の概念で、そこで監査をしないということはあり得ないのです。自主臨床試験は、ときには、治験よりもずっと大きな意味を持つ場合もあるわけです。そういう場合にも、監査という文字が入らなければ、監査ができないので、必要に応じてということだけでは曖昧で、何によって監査の必要性を決めるのかということです。

 例えば臨床研究の結果の大きさであるとか、利益相反の問題だとか、被験者の安全性の問題であるとか、幾つかのことがリスクベースドで言われていると思うのですけれども、そういうものを具体的に挙げて、それに応じて監査をしなくてはいけないとか、そういう形で入れるべきで、監査を一切外すのは、絶対に反対です。

○福井座長 渡邉委員、どうぞ。

○渡邉委員 監査をしなければいいと言っているわけでは、決してありません。この文章の中で、おかしいと思うのは、先ほどの直江先生と同意見で、研究責任者が監査を実施させなければならないという点です。。企業治験での依頼者、すなわちスポンサーは、医師に依頼した治験の品質をチェックするために監査を行います。このスポンサーという概念が医師主導治験の研究責任者に入り込み、さらに治験以外の臨床試験における研究代表者にも生きているからであろうと思います。しかし、品質が保証されるかを外部からチェックするという本来の監査の意義を考えると、臨床試験を実施する研究者が監査を実施させるというのは、違和感があります。

 また、先ほども申し上げましたように、監査と同じ役割を果たしうる研究機関の長による点検、あるいは、事実上ほとんどなされていない倫理委員会による調査を受け入れることが研究責任者の責務として記載されていない。外部からの品質チェックを担保するなら、外部機関によるインスペクションを受け入れる事が研究責任者の責務であるという文章も入るべきだと思います。監査を取り除く、監査をしなければいいという意味で申し上げた意見ではありません。

○門脇委員 先ほどから「現行指針案における監査に関する全ての規定を削除すべきである」という案が出ているわけです。今、議論されている案です。そして、賛成だとおっしゃったわけです。

○福井座長 宮田委員、どうぞ。

○宮田委員 皆さんのおっしゃっていることは、いちいち納得できるのですけれども、今、私たちがつくっている指針というのは、一体何かということを考えると、人を対象にした臨床研究や疫学研究を正しく科学として進展させることだと思います。皆さんも御存じのとおり、日本ではかなり不幸な事件が起こって、日本の臨床研究の信頼性は完全に失われていると思います。科学は再現性なので、臨床研究の再現性をどういうふうに我々が担保するかということを考えたら、モニタリングだけではなくて、監査がどうしても必要になるだろうと思います。

 確かに川村先生が御指摘のところは、絶対に直さなければいけないと思います。研究責任者がモニタリングと監査をやること自体、間違っていますので、これは少なくとも機関の長か、あるいは渡邉先生がおっしゃっていたような、よほど重大な事案が起こったときには、外部の機関がインスペクションできるような道を、ここに残しておかなければいけないと思っています。

 ディオバンの調査委員会は一緒に出ていましたけれども、調査権限がなくて、皆さんが全然違うことを言っていても、そうですかしか言えなかったということで、国家として、国民の善意を生かした臨床研究、科学性を担保する仕組みが欠けていますので、そこをぜひ議論していただきたいと思っています。

○福井座長 位田委員、どうぞ。

○位田委員 モニタリングという言葉とか、監査という言葉が、いろんな国で、いろんな意味で使われているので、ここに書いてあるモニタリングが、この国のこういう言葉遣いと一緒だという話になると、監査という言葉は全部消してしまえという話になるのです。モニタリングと監査を入れた理由は、もちろん不正の問題から始まっているのですが、モニタリングは適正に研究が行われているかどうかを、研究チームの中でちゃんと点検しましょう。監査は、第三者の目から見て、それが適切・適正に行われているかを見ましょうという話で、それに監査という名前をつけたのであって、オーディットという言葉から引っ張られるような内容と、必ずしも同じではないかもしれない。だから、もし監査という言葉が不適切・不適当であれば、例えば先ほどおっしゃった点検でも構わないのです。基本的に第三者がちゃんと点検をする。それをここでは監査と呼んでいる、そういう理解だと思います。第三者の目を通すことが重要です。

 あとは、どういう文言を使うかという話だと思います。もし監査という言葉がICHGCPとか、ほかの国のいろんな制度などと引っついてしまうので、適切でないということであれば、別の言葉を使う。でも、制度は残しておかないといけないと思います。

○福井座長 真田委員、どうぞ。

○真田委員 先回まさにそれで皆さん御納得された。位田先生がおっしゃったことで、モニタリングと監査を必ず入れようというディスカッションで終っています。今、ディスカッションしている内容と、先回ここで話し合った内容が、同じではないと思います。まさに位田先生がおっしゃった第三者がすることと、中の研究者のモニタリングを分けるということを、今回、重要視したというプロセスではなかったでしょうか。国民の立場から考えると、今、不幸な事例が起こっている。どこをどのように改善したのか。第三者が監査することで、それを担保していくということを、きちっと明示することが必要だと思います。

○福井座長 最近、文部科学省からも、研究不正防止のためのいろいろなガイダンスが出ていますし、いろいろな団体、組織から、このことに関して、提言が出されています。事務局でわかる範囲内で結構ですので、よろしければ、文部科学省のガイダンスの内容も含めまして、ご意見を伺えればと思います。

○神ノ田課長 御議論を伺いまして、現在の案のままですと、国際共同研究が難しくなるといったことで、何らかの修正が必要だというところは、理解いたしました。ただ、これまでの合同会議での議論の中で、第三者のチェックが必要だということも議論されてまいりましたし、また、政府の健康・医療戦略推進本部で決定しております、医療分野研究開発推進計画におきまして、今後は研究責任者にモニタリング及び監査の実施を求めるということが明記されておりますので、監査に係る規定につきましては、推進本部としっかりと調整して、取り扱いについて、整理したいと考えております。

 そこで、提案ですけれども、できれば、今回いただいた御意見を踏まえまして、事務局で預からせていただいて、座長とも相談しながら、関係者との調整を進めさせていただけたらと思っておりますけれども、いかがでしょうか。

○福井座長 渡邉委員、どうぞ。

○渡邉委員 重なりますが、研究責任者がモニタリングと監査を実施するのではなくて、研究責任者は監査をいつでも受け入れる。第三者が監査・点検を実施するということを、確認させていただきたいと思います。

○福井座長 楠岡先生、どうぞ。

○楠岡座長代理 監査に関しては、ICHGCPでも必要に応じという形になっていて、必ずしなければいけないというわけではありませんので、そこは修正が必要ではないかと思います。

 それから、今回の倫理指針の中で、明文化されていないので、あちこちに飛んでいてややこしいのですけれども、監査と相当する言葉で「調査」という言葉があって、厚生労働大臣は、医療機関の長とIRBに関して調査を実施することができる。これはまだ法律ではありませんので、受け入れ義務はないですけれども、協力しなければならないというのがあります。それから、IRBも医療機関の長に対して、調査をする権限を持っている。本来ならば、一番調査を受け入れるべき研究責任医師に関しては、ここの部分しかないというか、あくまでも医療機関の長止まりとか、IRB止まりになっているので、そのことに関しては、何か明文化したものが必要であろうということです。

 調査あるいは監査の体制として、研究責任医師のみならず、医療機関の長からの調査・監査、あるいはIRBからの調査・監査、場合によっては、国あるいは厚生労働大臣からの調査・監査という、いろんなレベルで行うようなものも、どこかで整理しておかないと、誰が調査できるのかとか、どんな調査が存在するのか、あるいは監査が存在するのかが、ここの指針ではよくわからないので、そこはガイダンスなり、あるいは指針ができた後でいいと思いますけれども、一度、整理が必要なのではないかと思います。

 責任医師が自分で監査するというのは、論外の話です。それだと、モニタリング、自己点検と同じになってしまう。そこは第三者ですけれども、第三者を置くのを責任医師に義務化させるのか、それとも医療機関の長か何かが必要な措置をとるような形にしないと、責任医師の負担が重過ぎて、オーディットの体制がつくれないがために、研究が進まないということになると、本末転倒なので、その負担を軽減させるような措置は、別途、必要になのではないかと思います。そういうことです。

○福井座長 ありがとうございます。

 藤原委員、どうぞ。

○藤原委員 先ほど課長さんが、もう一遍、見直されるとおっしゃったので、その際にはモニタリングと監査を分けた項にした方が、皆さんが理解しやすいと思います。

 監査のところで一番厳しいのは、先ほど楠岡先生がおっしゃったように、査察とか、調査と呼ばれるものです。先ほど宮田先生もおっしゃっていましたけれども、ディオバンのときに、誰も見られなかったということを踏まえて、研究開発振興課がちゃんと調査に入りますという文言も、監査の中の一番厳しいところに入れます。

 それから、この前、私が行ってきたハーバードなどでは、年1回とか、試験期間中に必ず1回はハーバードの品質保証部門が臨床試験をチェックするという体制がありますので、そういう自己点検が監査の中の一番やわらかいものであります。やり方に様々な形態のあることを、監査のところに書き込んで下さい。

 モニタリングの方は、先ほど門脇先生がおっしゃった、EUとか、FDAもやっていますけれども、リスクベースドモニタリングがありますから、それを書き込むようにして、ここのセクションを膨らませれば、皆さんの御意見は取り入れられるのではないかと思います。

○福井座長 そのような方向で、何らかの形で、第三者の目が入る仕組みを作る。ただ、それを全ての研究で強制的にしなくてはならないかどうかは、考慮すべきところで、「必要に応じて」という言葉になるかもわかりませんけれども、そういう形で、第三者の目を入れる仕組みを組み込むということで、いかがでしょうか。

 門脇委員、どうぞ。

○門脇委員 座長と藤原先生、楠岡先生が言われたとおりだと思います。ただ、必要に応じてということが、実際に余りされない方向にいってしまうと困るので、ガイドラインに及ぼす影響であるとか、被験者の安全性であるとか、利益相反の問題であるとか、今、リスクベースドだと言われているものについては、モニタリングだけではなくて、監査の必要性の度合いや、どういうレベルの監査をやるかに関係すると思うので、必要に応じてだけではない、リスクベースドなという文言を入れておくべきだと思います。

○福井座長 ありがとうございます。

 宮田委員、どうぞ。

○宮田委員 皆さんの意見に賛成なのですけれども、結局、臨床研究の品質管理をもっとしっかりやらないと、これは別に臨床研究がやりにくくなるとか、そういうレベルの話ではなくて、臨床研究の成果が、世界的に通用するナレッジにならないという、最大の問題を、今、抱えていますので、多少これは御負担になるかもしれませんが、なるべく各機関の負担がないような形、リスクベースドが一つの柱になると思いますけれども、そういったことで、うまく切り分けて、しかし、監査的なものをやっていただきたいです。そのために、機関の長の努力義務かもしれませんけれども、その機関が行う臨床研究の品質を高めるという、そういう文言をぜひ入れていただきたいと思います。そうしないと、この指針の意味はわけがわからなくなって、ただ厳しくしているだけではないかということになってしまうのは、誤解を生むだろうと思います。

○門脇委員 先ほどのリスクベースドなものというコンセプトに入れれば、そして、モニタリングは、いつかも申し上げましたけれども、研究チームの中で、工場であれば、生産ラインに従事している人もいれば、品質をチェックしている人もいるわけです。それは独立です。そういう内部のモニタリングがあります。

 第三者の監査は、リスクに応じて、いろんなレベルがあるわけですが、研究の品質を担保する上で、どうしても必要なことであり、決して研究を萎縮させることではなくて、研究者にとっては、これがないと、安心して研究ができないわけです。あるいは研究を管理する者については、これがないと、安心して研究を管理できないのです。ですから、ちゃんとした品質の研究ができるということが、今回の指針で担保されるような仕組みになっていかないと、研究者は本当に安心していい研究をやろうとはならないという、それが現場の感覚だと思います。

○福井座長 ありがとうございます。

 最後の確認ですが、監査という言葉を使うとした場合、監査を行ってもらう人を指名するのは、研究責任者ではないということは、よろしいですね。

 もう一つが、侵襲を伴って介入を行う研究に限定するという文章がここにありますけれども、これはこの部分に限定するということで、よろしいでしょうか。その上で、第三者の目が入る。モニターとは違う形で、第三者の目が入る、そのような品質管理を行うという文章にしていきたいと思います。

 よろしいでしょうか。

 それから、第9章の案はよろしいでしょうか。

 半年間、モニタリング及び監査につきましては、猶予期間をとるということです。

 楠岡先生からどうぞ。

○楠岡座長代理 経過措置の(2)で、現在行っている研究については、各施設の判断で新しい指針に基づいて実施していい。特に臨床試験を実施している場合には、今、議論になったモニタリング・監査を実施する方に、切りかえていいという形になっているわけですけれども、最近、研究期間が非常に長いものがあって、そうすると、新しい指針が施行されて、3年も4年も経っているのに、スタート時点が前のものだったからということで、モニタリング・監査がされないままになされている研究が出てくる可能性もある。ここはある意味努力義務として、2年以内ぐらいには、新しい指針に従うように切りかえていくということを、指針に書き込むのではなくても、どこかでそういうメッセージを出しておいていただきたいと思います。そうでないと、せっかく新しい指針をつくっても、意味がなくなってしまう部分が出てきますので、それはお願いしたいと思います。

○福井座長 5年か10年続いている研究は、次の見直しまで、ずっと前のままでいくということもあり得るわけです。

 中村先生、どうぞ。

○中村座長代理 第21の施行期日ですけれども「平成27年4月1日」からとなっていますが、これは「平成28年4月1日」の間違えかと思いました。このままでいくと、もう半年ないわけです。これは現実問題として不可能です。少なくとも私の大学で、今の指針に従った体制を、あと半年ない中でつくり上げなさいと言われても、現実問題としてできません。

 ほかの先生方の御意見も伺いたいのですけれども、そういう意味では、28年4月からでも、そんなに先の話ではないと思っていますし、いろんな社会的な問題があって、早くしたいという事務局の意向はわかりますが、現実問題として、こうやってせかされても、恐らく多くの研究機関では対応できないのではないかと思いますので、御配慮いただければと思います。

○福井座長 いかがでしょうか。

 今まで決まったもので、1年半も施行までに時間があるというのは、余りないのではないでしょうか。どんなに長くても、1年以内に施行ということではないかと思いますが、いかがでしょうか。最近、新しい仕組みをつくったら、半年ぐらいでどんどん施行していこうという動きになっているのは、たしかです。

 どうぞ。

○宮田委員 それは大学のガバナンスが悪過ぎるのではないですか。これはある意味、社会的な合意形成が行われて、それが大学において実施されるまでに、何でそんなに時間がかかるのですか。

○中村座長代理 お言葉を返すようですが、例えば外部委員をそろえなければいけないとか、計画書について、こういう様式でということをそろえなければいけないとか、そういったことについて、半年もない間に全部そろえるというのは、大学というのが、そういう組織であると言われれば、そのとおりですと申し上げるしかないのですけれども、現実問題として、不可能です。

○宮田委員 今回のディオバンの事案で、製薬会社のガバナンスのなさ、大学のガバナンスのなさ、その両方が問われているので、せっかくこんな立派な規定をつくったとしても、それを執行するガバナンス能力を欠いているところが受け取ると、それは実現しないのです。ですから、そういう意味では、ガバナンスを少し頑張るためにも、頑張っていただけませんかというのが、私のお願いです。

○中村座長代理 私はうちの大学の疫学研究の倫理審査委員会の委員長をやっておりますけれども、それが専門ではありません。ほかの教育も研究もいっぱい抱えています。そういう中で、残り半年もない間で、これを何とかしろと言われても、現実問題として、不可能です。

 例えば国の方で、予算をつけて、そういうことを専門にやる教員・職員をきちんと設置するとか、そういう手厚い話があれば、可能ですけれども、残念ながら、無理です。

○宮田委員 その現状は非常に残念ですけれども、これは何をやっているかというと、皆さんの研究の質を高めるためにやっているので、国が何とかということではなくて、自主的に努力しないといけない事案ではないのですか。

○中村座長代理 現実問題として、私自身、こういう規制が厳しくなるというのは、世の中のあれで仕方がないとは思っています。ただ、多くの研究者は、95%以上の研究者は、真面目にきちんとした研究をやっているというのも事実だと思います。一部の例外的な人たちのために、厳しくなることについて、ちょっとというところがあります。そういう意味では、全体に通じてなのですけれども、過度な負担がかからないように、御配慮いただきたいと思います。悪質な研究者については、研究生命をばしっと絶ってもらっても構わないと思います。それはマスコミの方で、きちんとたたいていただければいいと思っています。

○宮田委員 これは水かけ論だからやめますけれども、大学の方も、この規定は負担ではなくて、質を担保するための規定なのです。我々としては、患者さんの善意とか、参加者の善意を生かしていただいて、我々のナレッジになるような、質の高い臨床研究をやっていただくための指針なので、それを実施する主体・機関としては、ぜひ御理解いただいて、無理なことは言いませんけれども、きちっと対応するような、はなから諦めるというのは、やめていただきたいと思います。だから、猶予期間をどれぐらいにすれば可能なのかといったようなことを、事務局と議論して、妥当な線を見つけていただきたいのですけれども、普通の企業からすると、半年もあればやります。必要だったらやります。

○中村座長代理 おっしゃるように、水かけ論なので、これを最後にしますけれども、普通の企業であれば、恐らくこういう問題が起こったということで、それにきちんと対応するようなシステムをつくると思います。でも、大学はそれができません。片手間に一部の関係者がこれに対応するようにということで、やるのだと思います。そういう意味で、やらないと言っているわけではないのですけれども、少し猶予をいただきたいというのが、私の意見でございます。

○福井座長 いかがでしょうか。

 発言しにくいかもしれませんが、一番大きな大学で、半年ぐらいで、この変更に対応できるかどうか、門脇先生、個人的な御意見で結構ですけれども、いかがでしょうか。

○門脇委員 それは対応しつつあります。ディオバン事件は、確かに一部の不心得者がいたんですけれども、だからといって、ディオバン事件以外の日本の臨床研究の大部分が、信頼性が高くて、品質が高いということではなくて、それは生物統計学者が少ないであるとか、さまざまな問題も含めて、日本全体の臨床研究が、量だけではなくて、品質や信頼性が国際的に見て低いという状況を何とか打開するために、品質管理や信頼性ということを、仕組みの上からエンカレッジするような指針を作成して、日本の臨床研究を進めようということなので、これは最優先で何をおいてもやらなくてはいけないと思います。

 文部科学省がいろいろな人員をつけてくれれば、それにこしたことはないのですけれども、例えばそれぞれの医療機関や大学では、既存のポジションをこれに振り向けてやるということも含めて、自己努力で、最優先でやるべき課題だと位置づけています。

○福井座長 ありがとうございます。

 どうぞ。

○楠岡座長代理 臨床研究、臨床試験に関して行っているのは、大学ばかりではなく、一般の病院でも、それなりに何とかやろうとしているところがやっている状況です。今回、臨床研究に関する倫理指針から見ると、大きく変更されたところは、今のモニタリング・監査の部分ですけれども、これに関しても、モニタリング・監査をするために補助金が出るとか、そういうわけではない。これをやるためには、自分の病院の中の努力でやらざるを得ないだろうと思います。そのためには、CRCなどにかなり頑張っていただかないといけないとは思うのですけれども、そういう形で、自己努力でやっていかないと、結局研究が進まないし、研究が進まないということは、最終的に自分たちがやろうとしていることが証明できず、患者さんにもフィードバックができないわけですから、そこはある意味、歯を食いしばってでも、頑張ろうという雰囲気はあると思います。

 一般の病院が、今、そうやって頑張っているわけですから、そういう意味では、余力のある大学にもぜひ頑張っていただきたいと思います。病院が頑張っている状況をいろいろ見ていただければ、今回の指針というのは、かなり厳しいところですけれども、何とかやっていこうという努力は、各病院でしていると思いますので、その辺はよろしくお願いしたいと思います。

○福井座長 ありがとうございます。

 いろいろ御意見はあると思いますが、恐らくこれぐらいの時間感覚を持って進めていかないと、だめだと思います。事務局の案のまま進めていただくということで、御了承いただければと思います。よろしいでしょうか。

 座長の個人的な意見で、以前から申し上げようと思っていたんですけれども、これはこのままでいいと、委員の先生方がおっしゃれば、そのままで結構ですけれども、3ページの前文の2行目に「患者の予後」という言葉があります。予後というのは、治療成績とか、そういうことを踏まえて、1人の患者さんで予測することを言います。予後という言葉は、非常に特殊な言葉でして、ここで言おうとしていることは、患者の余命期間と生活の質ということだと思います。私の案は「疾病の治療成績」にしたらどうかと思います。最初のところで、疾病の治療成績という言葉が出てくると、崇高な文章が損なわれるのではないかという気持ちもするのですが、予後のままでよろしいでしょうか。

 どうぞ。

○工藤課長補佐 福井座長が御指摘のように、ここで使われている「予後」というのは、医学用語としての「予後」では必ずしもなくて、一般的に、俗に言うところの「予後」です。広辞苑などの辞書をひも解きますと、医学用語としての本来の意味のほかに、傷病の経過、病後の経過などを俗に指して言うこともあるようです。後者の意味で書いている感じもいたしますので、福井先生がおっしゃられている「治療成績」、成績という部分が、ちょっといかがかというところがあるとすると、傷病、病後の経過ですとか、そうすると「生活の質」と一部かぶさる部分もあるかもしれませんけれども、診療後の経過を指しているということであれば、そういった言葉に置きかえることといたしたいと存じます。

 もう一か所、資料2、4ページ目の「人を対象とする医学系研究」の定義中でも4行目に「予後」がございますところ、この2カ所で使われている「予後」という言葉について、適切な記載に置きかえる方向で福井先生と相談したいと思います。

○福井座長 最後になって、申し訳ありません。ずっと引っかかってはいたものですから。もし一般的な意味でということで、委員の皆さんがこの文言で誰もが理解できるということであれば、それで結構です。

 真田委員、どうぞ。

○真田委員 真田です。

 福井先生の思っていらっしゃる予後に対する思いというのは、よくわかります。患者さんが読んだときに、もう死ぬのかと、一瞬思ってしまう。予後と言われると、命の終末のことを考えさせてしまうような文章になってしまうのではないかと思って、懸念します。

 例えば健康の保持増進並びにと使うなら、疾病からの回復とか、そういうような、国民がわかりやすい言葉に変えた方が、よろしいのではないかと思いました。

○福井座長 最後のところで、宮田委員、何か御意見ございますか。

○宮田委員 余りないのですけれども、わかりやすく書いた方がいいと思います。ですから、病気の平癒とか、回復とか、わかりやすい言葉がいいと思います。余り高貴を追及しないで、わかりやすいさを追及していただきたいと思います。

○福井座長 ありがとうございます。

 藤原委員、どうぞ。

○藤原委員 2点だけございます。

 第9章のところで、ほかのところで議論がなかったので、これは事務局と座長で決めていただければいいのですけれども、32ページの一番上の方で、利益相反の状況を把握して、研究計画書に記載しなさいと書いてあるのですけれども、私はいろんな講演などをやって、利益相反というのは、どんどん変わっていくので、それを毎回研究計画書に反映するというのは、プラクティカルではないので、そこはガイダンスなどでうまく書き込んでほしいと思います。

 もう一点は、ガイドライン全体が、多施設共同研究という、多くの施設が関与する研究にフィットしないところがあって、例えば先ほどのモニタリングとか、監査のところも、多施設共同研究の場合だと、モニタリングとか、監査を指名する一番の人は、施設のトップというよりも、全体の研究代表者、10施設のトップに立つような人が、そういうマネジメントの最終責任を負ったりします。重篤な有害事象の報告のところは、以前直していただいたんですけれども、モニタリング・監査のところは、その辺がまだ曖昧なところがあるので、次回、書き直すときに、考慮していただければと思います。

○福井座長 ありがとうございます。

 時間を大変オーバーいたしまして、済みません。

 それでは、本件につきましては、本日の討論を踏まえまして、終了とさせていただきたいと思います。

 まだいろいろと詰めるところはございますけれども、事務局と十分に相談させていただいて、また、委員の先生方にごらんいただきたいと思っております。

 それでは、その他を含めまして、事務局から何かありましたら、説明をお願いいたします。

○南川課長補佐 その他としては、ございません。

○福井座長 連絡事項はいかがでしょうか。

○南川課長補佐 本日は、長きにわたって、御議論ありがとうございました。

 本日、御議論いただきました指針案については、今後、文部科学省では科学技術・学術審議会の生命倫理・安全部会、厚生労働省では厚生科学審議会の科学技術部会へ上程いたしまして、了承を受けた後、法令審査を経て、告示として公布します。

 最後に本日の指針案の取りまとめに当たり、事務局を代表いたしまして、厚生労働省大臣官房、鈴木技術総括審議官より一言挨拶申し上げます。

○鈴木技術総括審議官(厚生労働省大臣官房) 厚生労働省技術総括審議官の鈴木でございます。

 本日は、お忙しい中、御出席を賜り、また、大変実質的な熱い議論を闘わせていただきまして、大変ありがとうございます。

 これまで、平成2412月以来、12回にわたってこの会議を開催させていただきまして、おかげさまをもちまして、合同会議として、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針、一部文言の調整はございますけれども、了承していただくことになりました。事務局を代表して、お礼を申し上げたいと思います。

 今回の見直しでは、種々の状況の変化も踏まえまして、研究の適正性、研究結果の信頼性を確保するための内容と、新たな規定も加えていただきました。委員の皆様による度重なる議論の成果として、取りまとめていただいた指針にのっとって、研究を適切に実施していただいて、先ほど来議論がありましたけれども、研究における信頼の回復ということに、ぜひ努めていきたいと思っております。

 先ほど説明がありましたけれども、今後は両省で告示に向けて手続を進めたいと思っております。

 委員の皆様方には、大変熱心な御議論をまことにありがとうございました。

○南川課長補佐 それでは、事務連絡の続きですが、本日の議事録については、作成でき次第、委員の皆様に御確認をお願いし、その後、公開させていただきますので、あわせてよろしくお願いします。

 なお、紙ファイルの参考資料集については、そのまま机上に残して、お持ち帰りにならないようにお願いします。

 事務局からの御連絡は以上です。

○福井座長 それでは、これをもちましてこの会議は全て終わったことになります。長い間、御協力ありがとうございました。


(了)

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