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2013年5月1日 第10回集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会

○日時

平成25年5月1日(水) 10:00~12:00


○場所

厚生労働省 省議室(9階)


○議題

(1)検証項目「3.B型肝炎に関する医学的知見及びそれに対する関係機関等の認識について」の(1)から(3)及び検証項目「4.集団予防接種等によるB型肝炎感染被害発生の把握及び対応」の(3)の当時の国(国立感染症研究所を含む)の担当者のヒアリング調査結果について

(2)具体的な論点(たたき台)及び集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の再発防止策について(案)について

○議事

○野村B型肝炎訴訟対策室長補佐 それでは、定刻となりましたので、第10回「集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会」を開催いたします。
 構成員の皆様には、御多忙の折お集まりいただきまして、お礼申し上げます。
 事務局より、本日の構成員の出欠状況について御報告いたします。
 小林構成員、高橋構成員、花井構成員、丸井構成員、八橋構成員から御欠席の御連絡をいただいております。
 撮影についてはこれまでとさせていただきます。
 ここからは永井座長に議事の進行をお願いいたします。
(報道関係者退室)
○永井座長 本日は、まず当時の国の担当者にヒアリングと保健所長ヒアリングの結果を御報告いただきます。これで研究班の調査結果が全てそろうことになります。
 その後、本検討会としてのまとめの案を事務局が作成しておりますので、前回の御議論を踏まえて修正した論点及び追加の調査結果を踏まえ、そのまとめの案について御議論をいただきたいと思います。
 本日の議題は配付している議事次第をごらんください。
 では、議事に先立ちまして事務局より資料の確認等をお願いいたします。
○野村B型肝炎訴訟対策室長補佐 それでは、資料の確認をお願いいたします。
 まず、お配りいたしております資料を御確認いただければと思いますが、議事次第、構成員名簿、座席表、資料一覧。
 そのほか資料1、資料2-1、資料2-2、資料3、資料4。
 意見書として4ついただいてございまして、奥泉構成員、田中構成員、梁井構成員連名での御意見書。
 野口構成員の御意見書。
 本日は御欠席をされておられますけれども、今回御提出する旨の御連絡をいただきまして、八橋構成員の御意見書。
 そして山本構成員の御意見書を御用意してございます。
 また、参考資料としてこれまでの調査結果がまとまっている研究班報告書案を御用意してございます。
 なお、前回までの会議の資料をつづりましたファイルを、各構成員の席に置かせていただいております。不足や落丁等ございましたら事務局にお申しつけください。
 以上でございます。
○永井座長 では、議題に入ります。
 議題1の当時の国(国立感染症研究所を含む)の担当者のヒアリング調査結果及び議題2の保健所長ヒアリングの調査について、研究班から御報告をお願いいたします。
○多田羅構成員 報告させていただきます。
 当時の国(国立感染症研究所を含む)の担当者のヒアリング調査につきましては、本年2月の第8回検討会で実施することにつきまして、了承いただいております。その後、研究班において対象者の選定を行った上で実施させていただきました。
 一方、保健所長ヒアリング調査につきましては、同じく2月の第8回検討会で報告をさせていただきました保健所長を対象にしたアンケート調査の結果を踏まえまして実施させていただきました。これらの結果がまとまりましたので報告させていだきます。
 報告は事務局から行います。それでは、お願いします。
○研究班事務局 それでは、お手元の資料2-1、資料2-2に基づきまして御報告をさせていただきます。
 まず資料2-1、当時の国(国立感染症研究所を含む)の担当者のヒアリング調査結果概要でございます。
 目的としましては、集団予防接種等によるB型肝炎感染被害に関する国(当時の厚生省及び国立予防衛生研究所)の把握及び対応の状況を把握することを目的として、国の対応がとられた時期等に予防接種を担当していた職員の方を対象としたヒアリング調査を実施するものでございます。
 調査対象としましては、2番のところに挙げておりますとおりでございます。
 2ページ、結果の概要を整理してございます。
 1としまして、B型肝炎に関する医学的知見に関する変遷でございます。年代別に整理させていただいております。時間の関係もございますので、要点のみかいつまんで御報告させていただきます。
 まず45年ごろについては、Dの方ですが、国会審議においても脳炎や種痘についての討論はあるが、B型肝炎についてはなかった。陳情についてもなかったということでございました。
 51年ごろは余り記憶になく、一般的な認識にとどまっていたと思うということでございました。
 50年代ごろですが、キャリア化の問題は日米で50~55年の間にはわかっていたと思われる。B型肝炎が微量な血液でも感染することがわかったのは48~50年ころのことであった。
 注射針の連続使用が危険であるという認識については70年代後半、昭和45年から50年ごろには確立していたと思われる。
 以上のように、50~55年の期間にB型肝炎に関する多くの知見が得られた。遅くとも55年には国は肝炎連絡協議会の報告書を受けて、一定の認識を有していたのではないかという御指摘がございました。
 1つ飛ばしましてBの方ですが、臨床において医師が針や筒を交換しないということは、自分の立場からは想像もできないということでございます。この方はBの方ですので、当時の予防衛生研究所にいらっしゃった研究者の方でございます。臨床ではなくて研究者の立場からは想像もできないというコメントでございました。
 市中の医療機関にきちんと正しい情報を与え、教育することが重要ではないかという御意見もございました。
 3ページ、一番上のFの方。注射針の使い回しについての新聞報道などがあったという記憶はある。当時まだそのようなことがあるのだと思った記憶がある。針の感染リスクについては医師としては常識であるが、筒についてはそこまでの認識がなかったと思われるということでございました。
 昭和60年ごろですが、1つ目の点ですけれども、個人的には昭和60年ごろ、B型肝炎が肝硬変やがんになるという認識はなかった。また、針は危険だと思っていたが、筒についてはそこまで思わなかったということでございました。
 2つ飛びまして一番下ですが、針は変えなければならないという認識は昭和60年当時でもあったが、筒についてはそこまでの認識はなかったと思われる。それがB型肝炎に関連するという認識もなかったということがございました。
 昭和63年ごろですが、1つ目の点。WHOの勧告を見て初めてリスクを認識したということがございました。
 1つ飛びまして一番下の行ですが、当時の課としてはB型肝炎ではなくエイズや血友病の話が多かった。覚えているのは医系技官は肝炎についてA型、B型、非A・B型肝炎という言い方をしていた。いろいろな種類の肝炎があるのだという程度の認識であったということでございました。
 続きまして4ページの上のあたりですが「2 集団予防接種等によるB型肝炎感染被害発生の把握状況」でございます。これは多くの方が被害を把握していなかったという回答でございましたので、それ以外のところを中心に報告させていただきます。
 まず昭和55~57年ごろですが、1つ目の点。市町村あるいは県ごとに予防接種事故調査会(名称は不正確)か何かがあったと記憶している。そこで症例や副反応について検討し、国に報告を上げるべきものがあれば、そこから上がってくる仕組みだった。
 副反応は数日から数週間というものが多い。そうしたこともあってか、潜伏期間が長いB型肝炎についての報告はなされていなかったということでございます。
 昭和60年ごろ、当時、市町村から情報を収集する仕組みについては感染症サーベイランスとして1週間単位で発症状況を管理していた。ただし、主としてはインフルエンザが多かった。その中ではB型肝炎も感染症の中に入っていたが、事例としては把握していなかった。市町村等からの感染の報告、針の使い回しや副反応についてのものはなかったということでございます。
 5ページ「3 予防接種の実施方法等について検討するための体制」という項目でございます。
 1つ目の点、特に感染症はがんなどと違って緊急性が高いため、海外の情報の把握が重要である。そのため常時把握すべき情報源は何かということが課題となる。私のときはWHOのレポートと米国CDCのウィークリーレポートについて全て目を通していた。有力雑誌まで手を広げられればよかったかもしれないが、人的な制約もありそこまでは難しかった。WHOとCDCについては医系技官が分担して目を通し、対応の要否を判断していたということでございます。
 1つ飛ばしまして3つ目の点ですが、ブロック会議では制度としての全体の大枠を説明するが、注射器の使い方などについての具体的な指導をしなかった。国の機関委任事務の場合、市町村は基本は国の指示どおりに行動するという考え方であったということでございました。
 その次は予算についてですが、市町村から出される予防接種の予算の算出方法は、時間当たりの単価と対象者で積算する。この予算と医療スタッフのマンパワーに制約があると、注射針の使われ方にも影響があることも考えられる。
 同じ方で、予防接種の予算が当時の大蔵省が削減(査定)されたことはなかったと思われるということでございました。
 1つ飛ばしましてEの方ですが、入賞した当時GHQ管理下からずっと予防接種行政は集団免疫という概念に基づいており、昭和45年当時はそれを個別免疫の方向へ変えようとしていたという記憶がある。集団免疫では接種率を上げることに努力が注がれていたということでございました。
 「4 各年代の国の対応(通知発出等)に関する質問項目」でございます。
 まず1番目、昭和45年「日本医事新報」に厚生省防疫課名で記載された「予防接種の際の注射針の取り替えの医学的根拠」についてでございます。
 1つ目のDの方は、この記事についての記憶がないということでございました。
 次のページにまいりましてEの方ですが、予防接種の注射針の取り扱いは、やや取り残された領域だったのかもしれない。筒については考え及ばず、危険性の認識そのものがなかったように思うというコメントでございました。
 (2)昭和51年の予防接種実施要領改正において「ディスポーザブル製品を使用して差し支えない」という記述が掲載されたということですが、当時は健康被害の裁判対応や毎月の審査会議の準備等に忙殺されていたため、記憶にない。そもそもディスポーザブル製品の使用について、何か問題になっていたという記憶は全くないということでございました。
 (3)昭和56年(昭和55年~昭和57年)厚生省肝炎研究連絡協議会の報告。これは注射針やメス等の連続使用によるB型肝炎感染の危険性と実態が報告されたというものでございます。また、同協議会が作成したB型肝炎医療機関内感染対策ガイドラインにおいて、注射針の再使用の禁止と注射筒の滅菌が勧告されたということで、これは医療におけるということになりますが、勧告をされたということでございます。
 これについて1つ目の点ですが、肝炎研究連絡協議会報告書は記憶にない。
 1つ飛ばしまして、当時肝炎研究というのは輸血後肝炎といったほうが騒がれており、あくまで血液と肝炎という文脈で臨床を中心に政策議論がされていた。予防接種にまでは想像が及んでいなかったのではないかということです。
 その次の点ですが、肝炎研究報告書における指摘も、論文の最後に危険性について簡単に言及されているだけであれば、エビデンスがないとなかなか政策にはつなげにくいところがある。むしろ47年の段階で日赤が輸血スクリーニングするのに、補正予算をとって各種折衝をしながら早い段階での実施をし得たのは、当時の医系技官の英断であったと思うということでございます。
 その次ですが、院内感染対策ガイドラインについて、当時医師の針刺し事故や劇症肝炎による死亡なども伝えられていたので、こういったガイドラインがつくられたということだろうと思うということでした。
 一番最後、通常、厚生科学研究など科学技術上の知見が政策に反映されるには一定のプロセスが必要で、そういった情報共有が当時少なかったということかもしれないということでございました。
 7ページ(4)昭和60年5月の通知「B型肝炎の予防方法について」。HBVは感染力の弱いウイルスであるという記載があったものでございます。これについては皆さん記憶がないということがございました。
 最後の3つ目のLの方、垂直感染についてのリスクは認識していても、水平感染についてはどうだったかわからないというコメントがございました。
 (5)昭和63年の予防接種の際の筒の取り替えを指導する通知及び昭和62年のWHO勧告。針のみならず筒も交換すべきという勧告について。
 1つ目の点ですが、WHOからの勧告を受けて正月明けに大急ぎで通知した記憶がある。WHOの勧告を見て、これはきちんとやるべきだと考えて早急に対応した。規則を改正すると時間がかかることから、通知として急ぎ指導してくださいというものを発出したということでございます。
 それまで針の交換では不十分という認識はなく、専門家からも筒も変えるべきと聞いたことはなかった。この件に関して通知発出後に現場が交換消毒をきちんとやっていなかったかどうかは把握していない。通常、通知を出した後にその実施状況を確認することはない。
 課題としては、コストがかかるということはあったかと思う。交付税の算定基礎をどうするかといった問題にもなるが、それは後回しにしてとにかく早くということで、通知の発出に取り組んだということでございました。
 その次がJの方。毎年予算を検討する会議や県の課長を集める会議があるので、そういった機会を用いて通知や国としての動きを説明することはあったと思われる。
 1つ飛ばしましMの方。当時何かあればWHOの動きを確認するのは一般的だったと思うが、62年の当該文書については記憶にない。課・室には医系技官が複数おり、医系技官が担当していたと思う。この方は事務系の方でしたので、医系技官で担当していたのではないかというコメントでございました。
 同じ方、通知発出後のフォローというのは役所は苦手だったのではないか。ただし、局長通知でも課長通知でも通知というのは重みがあるものであり、都道府県は対応しなければならないものだという認識ではあると思うということがございました。
 8ページ(6)国立予防衛生研究所(現在の国立感染症研究所)の位置づけ及び研究内容の変遷ということで、予防接種や手技について研究をしたというよりは、肝炎に関するワクチンの研究・開発をすることが研究所の役割であったということでございました。
 予防衛生研究所にウイルス中央検査部ができたのは、1960年代終わりか70年代初めである。その後、昭和57年にセンターに格上げ。予防衛生研究所では昭和50年ごろからウイルス肝炎の研究(ワクチン開発)に着手。それまで予防衛生研究所では、ウイルス肝炎については研究されていなかったということです。
 当時、肝炎研究の体制は東大グループを中心に、肝炎連絡協議会として全国的に広がっていた。当時の肝炎研究は米国と比較しても遜色ないところまで進んでいたということでございました。
 下から3つ目の点ですが、国立予防衛生研究所の当時の役割はワクチンの基礎研究、開発、検定といったものが中心的な業務であった。感染事例については、特に収集していなかったということでございました。
 続きまして資料2-2、保健所長ヒアリング調査についての御報告でございます。
 アンケート調査を保健所長を対象に行っておりますが、このアンケートに回答があった保健所長経験者のうち、追加的に情報が把握可能と考えられる方を対象に、アンケートで把握が難しい定性的な情報を追加することを目的として実施したものでございます。
 調査対象は、そこに挙げておりますとおりでございます。
 2ページ、結果の概要でございます。
 まずAの方ですが、B型肝炎に関する情報を収集したのは昭和44年から52年の間。内科関係の雑誌や医事新報などで把握した。当時いらっしゃった県においては、予防接種でのディスポの使用は遅かったと記憶している。平成3年には既にディスポであった。過去の導入の経緯はわからないということでございました。
 Bの方。3つ目の点で昭和61年に大学を卒業し県内の保健所に勤務した。針・筒の連続使用はいけないということは、その当時は認識があった。
 最後の点ですが、自分のところには感染が疑われる例について、特段の相談はなかったということでございました。
 Cの方。B型肝炎に関する情報を収集したのは昭和44年から52年。時期の詳細は不明である。臨床系ではないので内科系の雑誌ではなく、公衆衛生学会等の論文や雑誌などで把握した。情報源については継続的な研究や学会発表があったという状況ではなく、何かあれば情報として出されるという状況であった。
 当時の県においては、ディスポの使用は遅かったと記憶しているということでございました。
 最後、正確な時期は覚えていないが、保健所長として市町村長や医療機関に対して針・筒を使い回さないよう指導をしていた。しかし、法的な強制力はなく推奨レベルであり、最終的には市町村長や医療機関の判断であったということでございます。
 3ページ、Dの方。B型肝炎に関する情報を収集したのは昭和52年から63年の間である。時期は不明である。自分自身は昭和55年に保健所勤務となった。情報収集については公衆衛生学会等の論文や雑誌などで把握をしていたということでございます。
 保健所管内の特定地区で肝炎の発生が問題とされ、昭和50年ごろより肝炎特別対策事業が大学、行政、保健所の連携で調査がなされたが、原因は特定できなかったと記憶している。一般的な指導として針・筒を使い回さないように市町村へ口頭で指導したことはあるが、時期はわからないということでございました。
 資料2-1、資料2-2の御報告につきましては以上でございます。
○永井座長 ありがとうございます。
 では、ただいまの御報告に御質問、御意見がおありの方は御発言お願いいたします。
○奥泉構成員 B型肝炎訴訟弁護団の奥泉です。
 国の担当者のヒアリングの結果を今、聞いていまして、余りにも認識が甘いというか、だんだん聞いていて憤りを感じておりました。特に時代を下れば下るほどにB型肝炎の病状もはっきりしてきていて、その危険性もはっきりしてきたのに、当時の担当者の方が余りにも認識がなかったというのは本当かなと思うところもあるぐらいです。ですので、この言葉を額面どおり受け取っていいのかなというところが1つ感じました。感想なのですけれども、その点を述べておきたいと思います。
 それと、この対象者の方については基本的にはそれぞれの時代ごとに連絡がついた、あるいは聴取が可能だった方、基本的には全てとお聞きしてよろしいのでしょうか。
○多田羅構成員 はい、一応そういうことで当時の局長、課長などを中心に国のほうで連絡をとっていただいて、ヒアリング可能な方ということとして、我々がヒアリングさせていただいたものでございます。
 内容的に消極的な傾向が強いのではないかということでございますが、特に時間が非常にたっていることがありまして、記憶という範囲での話になったことが1つあるかと思います。それと、針と筒ということに関しましては、当時の全体として認識が十分でなかったことが背景にあることは言えると思います。
 以上です。
○永井座長 梁井構成員、どうぞ。
○梁井構成員 原告団の梁井です。
 たくさんのヒアリングを受けていただいてありがたいと思っているのですけれども、私もヒアリングにはできる限り同行させていただいたのですが、その中で感じたのは、厚生省の方にも医系技官と事務官がいらっしゃるということで、同じ部署の中でも情報が共有されていなかったというのは、研究班の中でも指摘されたことなのです。ですから例えば50年代に担当の方にお話をお聞きしたとしても、それが事務官であるのか医系技官であるのかということで、随分知識に差があるのです。それがここのヒアリングの報告ではわからないものですから、そのあたりを注意書きしてもらうとか、事務官である、医系技官であるという、そのあたりがわかるようにしていただくと、もっと伝わるのではないかと思いました。
○多田羅構成員 そのことはできると思います。医系技官といわゆる一般の事務官の方と、両者からヒアリングさせていただきましたので、区別できる記載ができると思います。
 それから、私が先ほどヒアリングをお願いした方を、局長という言葉を使いましたが、局長経験者とは言えると思いますけれども、当時の局長というのは訂正させていただきます。当時担当していた職員という形で連絡をとっていただいたと理解いただきたいと思います。
○田中構成員 全国B型肝炎訴訟原告団の田中です。
 私も研究班の一員としてヒアリングを何回か参加させていただきました。やはりその中で特徴的だったのは、医療関係の方は早くからB型肝炎の感染について重症になる疾患だとか、キャリア化だとか、そういったことは知っていたということなのです。それは今回の国のヒアリングの中のBの方、この方もおっしゃっていますけれども、1972年(昭和47年)ごろキャリア化は確定していた。そして肝炎連絡協議会が1975年から80年ぐらい、この昭和55年、1980年には国はわかっていたはずだ。あるいは全部わかっていないかもしれないけれども、一定わかっていたはずだ。なぜならば、国は金を出していたから知っていたはずだということをおっしゃっていました。
 そういった意味では、その方がおっしゃっていることは、国の担当者は椅子に座っている時間が余りにも短い。担当が変わってしまう。そういった意味での継続性がない、あるいはコミュニケーションギャップがない、縦割りになっているのではないか。それは例えばAの方は1988年(昭和63年)のことをいろいろお話いただきましたけれども、当時の重症となる疾患、キャリア化、感染力が強いという深刻な認識はなかったとおっしゃっているのです。医者の方、医療関係の方は1980年(昭和55年)以前には知っていたと言っていたにもかかわらず、国の担当者は、この方はWHOの1987年(昭和62年)の通知を経て筒のリスクを知った。ただし、通知を出した後のフォローはなかったとおっしゃっていました。
 そういう意味では、通知を出したらその後のフォローもしていない。通知を出したら終わり。そして、組織的にその後の副作用がどうあったのかという情報を収集していなかった。そういう仕組みがなかった。もちろん当時の厚生省、今の厚労省のそれぞれの方の知っていただく教育も必要でしょうけれども、ちゃんと働いているかどうかという第三者からの目、そういった意味での第三者がちゃんと厚労省がやっているか見ることが必要であると私は感じました。
 以上です。
○永井座長 ほかにいかがでしょうか。
○岡部構成員 些細なことで申しわけないのですけれども、当時の国の担当者のところ、8ページに国立予防衛生研究所の位置づけが書いてあるのですが、6番目のポツは誤植だと思うのですけれども、1992年に感染症情報センターが感染研内にできていろいろな情報収集が改善されてきた、とあるのはこれは1997年だと思います。私が97年にできたての感染症情報センターに行ったので間違いないと思います。
○永井座長 ほかに御意見いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 もしよろしければ議題2にまいります。具体的な論点案及び集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の再発防止策についての案であります。
 具体的な論点については前回の御議論を踏まえ、事務局で修正をしております。この論点を踏まえて、具体的に考えられる再発防止策を含めた検討会としてのまとめ案を事務局に作成してもらいました。このまとめが最終的に検討会の報告書となります。修正後の論点及びこれまでの調査結果を踏まえ、まとめ案について本日御意見をいただきたいと思います。
 まとめ案につきましては本日、報告いただいた国のヒアリング調査に関する部分はまだ空白となっております。この部分を含め、本日御議論いただいた内容を踏まえて修正、追記を行い、速やかにまとめることができればと思いますので、よろしくお願いいたします。
 では、事務局から説明をお願いいたします。
○野村B型肝炎訴訟対策室長補佐 それでは、御説明させていただきます。
 資料3及び資料4をお出しいただければと思います。
 まず前回の議論を受けまして修正した論点をもとに、資料4のまとめを作成させていただいたものでございます。このため、まとめが全体を示すことができると認識しておりますので、まとめを御説明させていただいて、資料3、資料4の御説明とかえさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 資料4の5ページを御確認いただければと思います。
 全体の構成といたしましては、第1で「はじめに」、第2で調査結果を整理したもの、第3で問題点、第4で再発防止策を記載し、第5で「おわりに」という5つの構成とさせていただいております。
 5ページ目は「第1 はじめに」とさせていただいておりまして、検証会議の設置目的、検証会議における再発防止策取りまとめまでの経緯について、簡単に記載をさせていただいてございます。
 7ページ目は第2でございますけれども、研究班のほうで御提示いただきました調査結果を、ポイントをつかんで記載させていただいたものでございます。1ポツ、2ポツと、ここは2段構成にさせていただいておりまして、文献調査及びアンケート調査から明らかになった事項ということで、7ページから26ページまで書かせていただいてございます。文献調査につきましては論文、国の資料といったものから明らかになったものでございます。アンケート調査は、都道府県、市町村といったところへの調査等々でございます。
 12ページ、具体的に簡単に御説明をさせていただきたいと思いますけれども、12ページ(2)ウイルスの感染及び感染被害拡大の実態というところで、B型肝炎ウイルスの感染実態で非常に簡潔に書かせていただいておりますが、田中純子先生にこの検証会議において御発表いただきました内容を文章として書かせていただいたものが、こちらの12ページでございます。
 12ページ2染被害の実態でございますけれども、こちらは原告の皆様に多大なる御協力をいただきました被害実態のアンケート調査結果を、非常に簡単ではございますが、書かせていただいたものでございます。被害の実態について1,311名の方に御回答いただいたというところから、それぞれの被害実態を事実の関係のところで数字をもとに書かせていただいたものでございます。
 18ページ、医療従事者及び保健所長の認識でございます。こちらが医療従事者アンケート及び保健所長あてのアンケートで調査した、医学的な知見に関する認識の部分を書かせていただいたものでございます。医療従事者及び保健所長について、それぞれ整理をさせていただいてございます。
 医療従事者アンケートと保健所長アンケートの部分につきましては、23ページ、24ページに、針・筒交換の実施実態及び事例把握の状況について書かせていただいてございます。
 21ページに自治体向けアンケートの指導実態についての結果を、概括的に書かせていただいたものを掲載させていただいております。
 24ページにからは諸外国の調査結果をイギリス、アメリカ、ドイツについて書かせていただいたものが26ページまででございます。
 27ページでございますが、ヒアリング調査結果から明らかになった事項として整理をさせていただきました。27ページから33ページまでがヒアリング調査から明らかになった事項でございます。先ほど座長からも御指摘いただきましたが、国の調査結果については今回の報告を受けまして、次回までに記載させていただこうと考えております。
 さらに今回の具体的な再発防止策及び問題点については、34ページ以降に記載をさせていただいております。33ページまでで調査結果の概括的な説明をさせていただいておりまして、こちらは従前までの研究班からの御報告等々、それから、今回参考資料としてお配りさせていただきました研究班の報告書の部分を参考に作成させていただきましたものなどで、今回その問題点及び再発防止のところについて詳しく御説明させていただきます。
 問題点及び再発防止策については「国の姿勢」「先進知見の収集と対応」「事例把握と分析・評価」「現場への周知・指導の徹底」と、4つの構成で書かせていただいてございます。
 34ページ、国の姿勢の部分でございますけれども、厚生労働行政は国民の生命と健康を守ることを使命として、発生頻度は低いけれども、結果が重大と考えられるリスクの把握と対応に、不十分または不適切なところがあったと書かせていただいてございます。
 前回の論点の部分の議論の中で、やはり厚生労働行政としての使命等々についての問題点を御提示いただいたと認識をしておりますので、こういった書き方をさせていただいたところでございます。
 特にそのリスク認識の部分について、早い遅い等々の御指摘をいただいたところでございますけれども、リスク認識が適期に更新されず、行政としての対応が適切な時期になされなかったということが、今回の本質的な問題であったという記載をさせていただきました。
 35ページ、先進知見の収集と対応のところでの問題点といたしまして、昭和20年代に先進諸外国にあって推奨・提唱といったことがありましたけれども、それ以降の国の対応等々を見たところ、国において先進知見の収集・分析・評価・伝達等が十分になされていなかったところを問題点として、一番最初に記載をさせていただきました。
 その背景として2つ目の○でございます。ポツを2つつけさせていただいてございます。体制が不十分であったこと、そして、関係部署に分散して保有されるだけで、組織全体において有機的に集約され、共有されることがなかったと書かせていただきました。
 リスク認識を適切な時期に更新することが重要だというところなのですけれども、先進知見をもって更新するべきか否かを、それこそ適切な時期にしっかりと議論する必要があるという認識を今、国のほうで持たせていただいてございまして、情報の透明性を確保して予防接種制度の評価・検討を行う枠組みもなかったという記載をさせていただきました。
 36ページ、続いて先進知見から今度はディスポーザブル等々の予防接種の安全性確保に向けた国の取り組みについて、1つの○で書かせていただいてございます。一番上の1つ目の○でございますが、ディスポーザブル製品の使用と予防接種の安全性の確保に向けた国の取り組みはおくれたという問題点を指摘させていただいてございます。この安全性の確保に向けた取り組みについて国が研究を進め、厚生省内の関係部局間で組織横断的に検討を図ってきたとは言い難いというふうにも指摘をさせていただきました。
 事例把握の部分でございます。37ページを御確認いただければと思います。B型肝炎が医学的に明確に予防接種で感染が起きたと特定することは困難であった。現在においても感染経路の証明は極めて困難であるという医学的な知見を踏まえる必要性を指摘させていただくとともに、一方で3つ目の○でございますけれども、副反応報告の徹底ができていなかったといったところを問題点の1つとしても書かせていただいております。そして、現場での注射器の連続使用といった予防接種実施時の事故の実態把握についても、各行政機関について、その把握について徹底がされていなかったと問題点を指摘させていただいております。
 そういう副反応報告等により把握した事例について、先ほどの先進知見と同様、予防接種制度を評価・検討する枠組みの中で議論する必要性があるだろう、そうしなければリスク認識を適切な時期に更新することはできないだろうと考えさせていただきまして、5つ目の○で問題点としても指摘させていただいてございます。
 38ページ、現場への周知・指導の徹底で、前回、論点の議論の中でも御指摘いただきましたきめ細かな取り組みができていなかった。そして、まさに今回の集団予防接種等によるB型肝炎感染の拡大は、注射針・注射筒の交換について適切な時期に適切な方法で指導・周知を行っていれば、回避可能な問題であったと問題点を指摘させていただいております。
 そして、国から自治体への連携といったものが十分ではなかったと同時に、市町村から主体的に国に情報を伝達し、対応を求める体制や意識も不十分であったという、国と市町村間での連携の問題にも触れさせていただいております。
 予防接種法には、市町村長は保健所長の指示を受けて予防接種を行わなければならないと規定をされております中、39ページ目でございますけれども、予防接種への取り組みというものが、個々の市町村の職員のリスク認識に依存したものになっていたことを踏まえまして、やはり市町村における体系的な対応を可能とする枠組みがなかったのではないかという指摘もさせていただいております。
 39ページ、そうしたリスク認識を有していた自治体については、既に予防接種の安全な実施について取り組んでいるところもあったけれども、しかしながら、それがほかの自治体に横断的には広がっていかなかったというところも問題点として書かせていただいております。
 一番下の○でございますが、医療従事者にあって、法令上の措置の趣旨や必要性の理解に努めるとともに、積極的な知見の収集等に努め、予防接種の安全な実施に寄与する必要があるというふうに、医療従事者の観点からも指摘をさせていただきました。
 40ページ以降が再発防止策になるわけでございますけれども、まず国の姿勢として改める点として、大きく3つ書かせていただいてございます。
 1つ目が、発生頻度は低いけれども、結果が重大と考えられるリスクへの対応がとれるだけの情報収集、分析、評価のための体制の充実とシステムの整備が求められるのではないか。
 2つ目、最新のリスク認識を国は有するとともに、迅速な意思決定と適時適切な実施が求められることを念頭に置いて業務を遂行していくべきである。
 3つ目でございますけれども、公衆衛生の必要性と個々人の被るリスク等に適切な配慮を払いつつ、時宜に応じた対応が可能となるものである必要である。まさに国の意識、姿勢としてこの3つを書かせていただきました。
 41ページ、先進知見の観点からの再発防止は大きく3つでございます。
 上から2つ目の○でございますけれども、予防接種を担当する体制の充実、そして、さまざまな機関との連携の充実が求められるのではないか。
 2つ目、常に議論を公開した予防接種施策を評価・検討する枠組みの充実を図る必要があるのではないか。
 3つ目、予防接種の安全性確保に資する取り組みの検討に当たって、医療事故や予防接種における事故に関する研究を重ねていく必要があるであろう。そして医療機器等々を所管する部局と予防接種を担当する部局との連携を密にする必要があるだろうというふうにも書かせていただきました。
 42ページ、事例把握と分析・評価の部分で挙げさせていただきました問題点に対して、現時点で考えられる再発防止策として5つ書かせていただきました。
 1つ目が副反応の事例を迅速に報告されることの徹底が求められるであろう。一方でB型肝炎の特性については、認識は必要であろうというところを書かせていただいておりますけれども、先進知見の情報収集の結果を踏まえて副反応として生ずるおそれのある疾病等が把握された場合は、速やかに当該疾病等の発生を報告するようにする必要があるとも書かせていただきました。
 2つ目、副反応事例に基づいて予防接種施策を評価・検討し、必要に応じて自治体に注意喚起を促す枠組みの充実も、事例把握の再発防止策の2つ目として書かせていただいております。
 3つ目ですが、副反応報告事例以外の予防接種実施時の事故等について、国への報告が徹底されるよう措置すべきであると書かせていただいております。
 4つ目、各自治体における予防接種台帳の整備やデータ管理の普及、利用のあり方について、個人情報保護の観点や社会保障・税番号制度の導入に向けた状況も考慮しつつ、今後充実させる必要があるという点。
 5つ目、先ほど述べさせていただきました4つのことを可能にするため、国における体制の充実が求められるというところで、体制の充実をさらに書かせていただいております。
 現場への周知・指導の観点からも5つ、再発防止策を書かせていただいてございます。
 43ページ、そもそもその自治体への指導・周知の徹底の部分については、通知を出しっぱなしではないようにというところが非常に大きな問題点であると認識してございまして、まずはきめ細かな取り組みに努めていくところで予防接種の実施に係るテキスト等の作成、メルマガみたいなものも使いながら、密なやりとりを自治体とやっていくといったところを、自治事務になっていることを踏まえながらも、できる範囲でやっていくことを考えております。
 2つ目でございますが、市町村は予防接種の実施計画をつくるに当たって、保健所長や地区医師会を招集した委員会をまず設ける。そういう組織的な枠組みをしっかりとつくった上で、予防接種の感染症対策を推進する枠組みを、現時点でもある自治体はありますけれども、一層の充実を求めていく必要があるのではないか。
 3つ目の○、4つ目の○を合せた形でございますが、先進的な自治体の取り組みについての情報収集、それから、さまざまな機関を通じての先進知見や事例の収集・把握、検査体制の充実、自治体相互間での横断的な情報共有をして対策を考えることができるように、そういうふうにして集めた先進知見や事例の提供を進めていくといったところも書かせていただいてございます。
 44ページ目が医療従事者に対しての取り組みでございます。医学教育の課程など、医学の基礎教育段階で予防接種の手技・器具の取り扱い、これらによる感染防止策や感染事例、感染症の正確な知識を学んでいただくといったところを指摘させていただくとともに、医療従事者の予防接種の知識・技術レベルを向上するような取り組みについても、再発防止策として提示をしていきたいと考えてございます。
 最後に、国がこの検討会とは別に今後も被害者の実態を調査する。今回の検証会議の場でも御議論いただきました被害者へのヒアリング調査の部分について、書かせていただいてございます。今回の検討会とは別になりますけれども、そういった調査を書かせていただいてございます。
 そして、本検討会における調査結果も含めて明らかになる負担であるとか偏見といったところの実態を真摯に受けとめるべきであると、国がしっかりと被害実態を受けとめるといったところを書かせていただいております。
 そして、B型肝炎ウイルスの感染拡大防止とB型肝炎対策に引き続き取り組んでいく必要があるというふうにも記載させていただきました。
 45ページに「おわりに」と書かせていただいておりまして、国が迅速かつ真摯に本提言の実現に取り組むことを強く求めるというところで、締めくくりをさせていただいております。
 こういったものを全て資料3の論点から整理をさせていただきまして、まとめにつなげさせていただいてございます。
 説明は以上でございます。
○永井座長 ありがとうございます。
 では、ただいまのまとめ案につきまして、どうぞ。
○野口構成員 全国予防接種被害者の会の野口と申します。
 取りまとめいただきまして、ありがとうございました。
 私より本日資料を提出させていただいておりますので、お手元にお願いいたします。
 5点、列挙させていただいておりまして、まず第1点目が先程、御説明いただいた12ページに感染者の推移の推定数を追加していただきたいという要望でございます。日本におけるB型肝炎ウイルス感染及び感染被害拡大の実態の数字です。研究班報告の29ページに感染者の推定の数が総計41万6,587人、うち男性、女性という内訳がきちんと出ています。田中先生に非常にお時間を使っていただいて、こういう数字が出ておりますので、ここの中にも入れていただいたほうがいいのではないかという点です。
 第2点目ですが、34ページの国の姿勢というところです。下線部が提案なのですが、国民一人一人。やはり今回、集団予防接種の流れから見てみますと、一人一人の生命、健康、人権という点がかなり欠如していたことが問題として挙がっておりますので、ここに一人一人という言葉を入れていただくことと、人権も大切です。人権という言葉をどういうふうに入れるかというのは私も非常に悩んでおりまして、生命、健康、人権と並べてしまうと違った形にもとってしまいますので、その辺の人権という言葉をどういうふうに入れるかというのは、御相談させていただきたいところです。
 最後の下線部です。そしてその原因となった行政の体制と体質というところを入れていただければと思います。
 3番については、2番と同じですので割愛させていただきます。
 4番は45ページの最後のページです。こちらの検討委員会としての「おわりに」の言葉ですが、8行目に今回の被害者の方々のことを記述するのがいいのではないかと思っております。具体的には「本会議は、B型肝炎被害者原告から意見陳述及び1,311名の被害者の方からアンケート調査を通して、被害者の方々が今も直面している肉体的・精神的・経済的負担及び差別・偏見の実態を大変重く受け止めた。本会議は、二度と同じような被害が起きないように」というふうにつないでいただきますと、今回これだけ時間をかけて議論しておりますので、きちんと委員会が被害の方々の現状を重く受け止めていることを記述したほうがいいのではないかと思っています。
 5番目なのですけれども、今回まとめを拝見いたしまして、1つ私のほうで疑問点に挙がったのがリスクという言葉です。報告書の中でリスク想定ですとかリスクマネジメントのあり方というのは今回、非常に大きな問題としてクローズアップされております。そして、34ページの問題提起以降リスクという言葉が、これは私がカウントミスしていなければ約18回使っております。
 今後同じような被害を出さないために、行政が広範囲なリスク想定、リスクマネジメント、いろいろな観点から対処していかなければならないということが指摘されております。ただ、それは何がリスクでいつ、誰が、どのようにリスクの想定やリスクマネジメントを行うのかということに関しては、抽象的ではっきりしておりません。それから、現状リスクマネジメントが確実に機能しているのかということも確認できていません。したがって、本検討会で一歩踏み込んで、どのようにリスク管理を想定してマネジメントすべきであるか。例えば現行のリスクマネジメント手法のレビューが必要だということを提言に含める必要があるのではないかと思っています。
 いろいろな要因があると思うのですけれども、例えば私のほうで薬剤再発防止の最終提言を読ませていただいたところ、厚生労働省の職員の方のヒアリングで「人材不足で被害を最小限にするため迅速、十分な対応をとる自信がない」とか、「現在の職員数では日々の問題処理に疲弊し、国民の生命に直結する問題に先手で取り組む余裕がない」とか、「目の前の作業に忙殺され、過去を理解し、未来に向けた作業に割く時間がない」といった、現場の率直な意見が多数あったのを読みました。
 上記の状況が全ての場合に当てはまるとは限らないのですが、ただ、我が国の財政事情からかんがみた場合、各省庁の予算削減、公務員定数削減、給与削減といった現状を見ますと、行政の人材のみでリスクマネジメント体制の構築というのは容易ではないのではないかと考えています。
 したがって、このように今までのように多岐で複雑な問題を全て行政の責任と役割だけでカバーすることには限界があるのではないか、日々煩雑な業務に忙殺されている中で将来のリスク想定、リスクマネジメント、既に起こってしまった予防接種からの被害者の恒常的なサポートに割ける時間は、非常に限られていると思っています。
 そして、全ての薬害を行政が担うことが不可能な状況で、これも先ほどの最終報告からの行政の方の意見なのですが、「社会全体でリスクを共有すべきであり、マスコミや国民が果たすべき役割がある」という当事者からの意見もございました。
 最後に、これは例で申しわけないのですが、最近では道路、公共工事破損箇所に住民がスマートフォンのアプリケーションを利用して情報を行政に送り、行政は修理を住民に依頼するという、行政と住民が協調、直接参加型の取り組みが見られております。これは行政が全ての破損箇所、破損により事故が起きるというリスクがございますが、これを全て把握することは困難であるため、つまり明るみに出やすい問題、大きな破損また大きなリスクがあれば、何がリスクであるかは把握しやすいが、まだ見えていない兆候。今回なんかでもB型肝炎はまさしくこういうような事例に当てはまると思うのですけれども、見えにくい問題です。そのときは小さな破損でも、小さなリスクは把握し難いということです。それから、原発事故などの安全神話、ゼロリスクであるというものにさえ死角があったということで、今回の検討会での議論は、そしてリスクは過去のものであり、現在はゼロリスクであると考えることはできないのではないかと思っております。
 その幾つかの根拠といたしまして、八橋構成員からの提出資料に感染経路の特定が困難である。これも1つのリスクかと思います。それから、先ほど研究班から報告がありました行政からの通知が実施されていたかどうか、ダブルチェックをする機能がない。これもリスクかと思います。これもそのアンケートから出てきているのですが、要するにエビデンスがないとなかなか政策にしにくい。これもある意味ではリスクではないかと思って、それぞれいろいろなリスクが出てきていまして、常識とかリスク想定、マネジメント手法を改めて疑って、根本から問い直す作業が必要ではないかと思っています。
 このためには広範囲でさまざまな視点を持った専門家、国民、行政が分離するのではなくて、対話的に、協調的に参加が必要であるということで、参加のメンバーとして例えば専門家、特に医療、公衆衛生、社会学、哲学、宗教学、環境学、公共政策、リスク学を含む方々や、NPO、NGO、人道支援団体、被害者、当事者団体、障害者団体、一般市民、社会活動、行政の方を含めて、現在のリスク体制がどうなっていて、それがきちんと機能しているかということをもう一度認識することによって、再発防止につながるのではないかと思っています。
○永井座長 ありがとうございます。
 ただいま御指摘いただいた点について、いかがでしょうか。
○垣本構成員 日本ヒューマンファクター研究所の垣本と申します。
 今、野口構成員が御提案されたリスクマネジメントという意味では、非常に賛同するところが多いです。彼の言ったことに関連して、リスクだけではなくて各種情報の収集ということが、この再発防止の中に含まれておりました。
 1つは先進知見の情報収集とか、いろんな現場での不安全行為に関する情報収集とか、事故とか副反応に関する情報収集。今のリスクマネジメントもそうなのですけれども、リスクに関する情報収集。こういったように各種の情報を収集して、それを共有することが再発防止の中に含まれているのですが、どこのセッションがどういう形で収集して、それをマネジメントするかというところが、この再発防止の中では欠けているような感じがいたしましたので、意見を述べさせていただきました。
 今、リスク情報もその中の1つとして、もっとほかの情報も含めて再発防止の中で担当するところは余り明確に書かれていないということで、それを少し疑問に思ったもので、質問させていただきました。
 以上です。
○永井座長 ありがとうございます。
 新美構成員、どうぞ。
○新美構成員 今の御提言で私は実際に物事を動かすかどうかということを考えた場合に、そもそもリスクの定義がまちまちであって、何をリスクと捉えるか自体がこの提言の中ではっきりしない。そうすると、それをどうやってマネージするかというのも、それぞれの思惑によって考えるものが違ってきます。
 そうすると、そもそもリスクとは何ぞやと考えること自体が出発点になってしまいますので、対策を立てるとか、そういうことは10年先でもまとまらないのではないかという懸念を抱きます。ですから、こういうことをやるという議論の場があるのはいいのですけれども、何か具体的に行動を起こすということならば、これは100年河清を待つということにもなりかねない。
 例えばリスクの問題でも、地球温暖化の問題でリスクというものがわかってきたのは、専門家の中でこういう問題がありますよということで予防原則なんかを持ち出して、こういう対策をとりましょうという提言があった。それでも専門家の中では意見が分かれている。そういうことを考えたときに、我々は何をリスクとして考えて、どうマネジメントするのかということを検討する場はいいのですけれども、それをどうやって議論するのかというルールもなければ、こういう提言は動かないのではないかと思います。
○永井座長 先生としてのさらに御提案というのは、どういうことになりますか。
○新美構成員 ですから、今このリスクでこういう幅広いものでやるべきだということについては、私は当面難しいだろうという意見を述べただけです。
○永井座長 少し具体的に記載すべきだということですね。
 多田羅構成員、どうぞ。
○多田羅構成員 今の点でございますけれども、先ほどの国の職員の方のヒアリングについても御意見いただきましたが、基本として1つの国の職員の方の特徴というのは、2年ぐらいで異動するということなのです。ですから、その行政を担当をされている方は、ある意味ではその部分の基本的な専門家というわけではないわけでございます。そのとき処理すべきことを処理する。その処理が適切な時期に的確に行われたかどうかというのが問われるわけでありまして、その人の認識が非常に不十分であるとか、リスクに関する管理が行政において不十分であるということでは、少し論点がずれるのではないかと思うのです。
 そういう意味で今回のこのまとめでも、我々の研究班でも、結局そういう問題に対してリスクとか知見の収集ということは、感染症に関して言えば国立感染症研究所があるわけでありまして、そういうところが基本的に情報を集め、リスクを認識していくことが行われる場所であると認識していると思います。そこで仕事をされる方は何年にもわたり、場合によっては何十年にもわたり、岡部先生のようにライフワークとして支えていただいているという方もあるわけでございます。
 ですから、行政に直接リスクに関する管理あるいは認識を求めることが本来、1年ないし2年で異動される人に対しては、無理というところがございますので、今回の経験から言えることは、感染症研究所の人も来て、行政の人も入り、あるいは大学の学者も入り、患者の代表が入る場合もあるかもわかりません。そういう組織的な体制というものを常時用意して、構築しておく必要があるというのが今回の結論であり、きょうの事務局の説明でもそういう体制をこれから構築していく。組織的な体制です。それによって適切な時期に的確な処置を行うことができるのではないかと提案されていると思いますので、そういうふうに御理解いただいたらどうかと思うのです。
○永井座長 具体的な体制づくりというのは、どういうふうに考えたらいいか。これは事務局に少しお聞きしたいです。
○多田羅構成員 組織的体制のあり方というのは具体的に、ここで述べていただいているのでしょうか。その点を説明いただいたらどうでしょう。
○野村B型肝炎訴訟対策室長補佐 事務局で想定させていただいてございますのは、まず情報収集、それこそリスク頻度の低い、しかしながら、結果として非常に重大なものに対してどのように対応するのかといったところに対して、相当程度の情報を集めるといったところで言えば、今回、予防接種についての議論ということでございますので、予防接種をまさに担当する部署においての体制の充実といったところは、まずあろうかと思っております。そういったところがしっかりと、それこそ関係機関との連携を密にして情報をしっかりと収集していく、把握していくといったところが政策に結びつくのではないかというところを考えております。
 一方で、やはり体制といいましょうか枠組みの中に入りますけれども、集めた情報について、それを行政として判断するという中にあって、今回のまさに個々の担当者の認識にのっとったがゆえに適切な時期に、適切なリスク認識でなかったところがございますので、それを情報を透明化した組織、それが評価検討組織と我々は考えておりますけれども、そちらで御議論いただいて、どういったリスク認識がその時点、その時点で適切なのかといったことを考えていただく。そして議論していただく。そして、それが関係者の共通認識になっていく枠組みを今後充実させていきたいと考えているというところで御理解いただければと思います。
○垣本構成員 ただいまの御意見に対してですけれども、私も官庁に勤めていたのでよくわかりますが、やはりみんな何年かごとに必ず転職というか、人が動きますね。それで思うのですけれども、その人がいなくなっても組織としてそのことが継続されることが大事だと思うので、そのことをぜひお願いしておきたいと思います。
○永井座長 梁井構成員、どうぞ。
○梁井構成員 組織の話が出ましたので、後ほど奥泉から私ども3名連名の意見書を読ませていただきますけれども、その前に、私はヒアリングに一緒に同行した中で、お話を伺った中にですが、国の担当者のEの方のお話の中に、随分前に課長をなさっていたのですけれども、そのときのお話に公害等調査委員会のような三条委員会を、予防接種被害者と医療事故と合わせてその当時つくろうとしていたというお話を伺いました。
 予防接種の事故として、そのとき種痘がすごく問題になっていた時期でして、厚生省の中で役人の中にもそういう必要性があるというのを感じられていたんだというのは、すごく私としては印象に残りまして、そのことは今の時代でも変わらないと思います。このことはヒアリングには抜けていましたので、ぜひこれも挙げていただきたいと思います。
 今回の参考資料になりますけれども、研究班から出ているものの388ページ。これは保健所長の自由記載欄の部分を書いてあるのですが、そこの12行目をごらんください。読みます。「肝がん、肝硬変等がとても多く、危惧を持ち、近隣の県(ここも多いと聞いていたので)の保健所長と会って情報交換を数回繰り返した。その後、東京での研修会で公衆衛生の権威とされる方に相談。『既知の事であり、その原因を追求すると特定の医療機関に収束される。そこまでやらない方が良い』と言われた」という記述があります。
 役人が短期間で動くという問題もありますけれども、そのほかに上がってきた情報も扱ってもらえないこともあるとこれを見て感じました。私たちは本当に長い間わかってもらえないということとずっと闘ってきたわけですが、こういうことがあっては許されないと思います。こういうこともちゃんと吸い上げてもらえるような組織が必要だと思います。
 今の記述はB型肝炎の予防接種に関したことかどうかはわかりませんけれども、私どもは予防接種に限らず、広く医療事故を捉えて、アンテナを張って調査検討をするような独立性を保った組織が必要であると考えております。このためにも第三者機関が必要ではないか。後ほど奥泉から提案すると思いますけれども、私はそう思います。
○永井座長 荒井構成員、どうぞ。
○荒井構成員 野口さん御指摘の点について1点と、もう一つは先ほど事務局から御説明の資料4についての意見を少し申し上げたいと思います。
 野口さんの資料で御指摘の人権尊重という言葉をどう使うか使わないかという点について、私の意見を申し上げたいと思うのですが、なるほど人権尊重となると当然と言えば当然のことですけれども、ここでの提言あるいは報告のまとめの中に、一番大事なのはこの問題については国民の心身の健康の尊重といいますか、そこに十分な配慮がなされるべきだというところがポイントだろうと思いまして、人権の尊重と言えば当たり前のようではあるのですけれども、非常に人権なり人権の尊重という言葉の使われ方というのは広うございますから、その言葉を使うことによって国はもちろんのこと、自治体、医療従事者、医療関係者の方々の受けとめ方に、若干食い違いが出てくることに懸念を持つわけです。
 そういう意味で国民の健康、身体への尊重といいますか、それについての意識が欠けていたところがあることを含めて、そこを強調していただければいいと思いますので、言葉としては人権尊重ということは入れないほうが提言の説得力を高めるのではないか。これは私の意見でございます。
 資料4の報告書の土台となるものですが、前回、論点整理に関連してこれまでの検討結果を少しまとめていただくとわかりやすいということを申し上げて、大変よく書いておられると思います。基本的なこういう項目の立て方なり拾い上げ方でよろしいのではないかと思ったわけですが、一番肝心なところは先ほどの御説明の中にもありましたけれども、国がいろいろ情報を得て、昭和30年代、40年代、50年代、60年代それぞれの時期に一定の通知で注意喚起をしたり、現場に対しての指導をした歴史はあるわけですが、いかんせん国のアンケート調査の中にもありますように、通知というのは出せばそれで終わり。フォローしていなかったということが明らかになってきて、それは非常に残念なことです。むしろ通知のとおり趣旨が生かされて、実行されているかどうかということにこれまでも目を向けてもらいたかったと思いますし、これからもそこは一番肝心なところだろうと思うのです。
 それはそれとしまして、このペーパーで言うと終わりのほうの今後の対策のところと再発防止についての40ページ以下、とりわけ43ページ、44ページあたりでは、市町村なり医療従事者に対してどういう仕組みをつくりたいかということをいろいろ指摘してあります。これはそのとおりだろうと思うのですが、私は1つ気になるのは、先ほどの人権尊重のところにもかかわるかもしれないのですけれども、国のほうが一方的に指導に力を入れていく、そこをフォローするのはもちろんのこと、含めても受け手のほうがそれなりの気持ちなり意識なりがないと、なかなかうまくいかない。
 それはアンケート調査あるいはヒアリングの結果を拝見しておりましたら、市町村なり医療従事者の中で身体、健康に従事していることの意識の高いところでは、ある程度国の通知の趣旨あるいはそれを上回るような、それが早い段階でいろいろ手を打ったところもある。それから、注射針が危険だぞということについては、昭和50年代には医学といいますか、医者としては常識に属するということも指摘されているのですが、にもかかわらず、その実際場面では使い回しが行われていた。
 そういう意味ではお医者さんを初めとして、医療従事者あるいは自治体の関係の部署におられる人たち、そういう人たちもあえて言えば医学会全体のことにかかわるかもしれないのですが、一方的に国のほうから与えられる情報を徹底するというのではなくて、受け手の意識をもう少し高める方向で、その高める仕掛けはもちろん必要なのですが、一人一人のかかわる人たちの意識を高めるように呼びかけてもいいのではないかという気がいたします。
 お医者さん方のアンケートなどでも出ておりましたけれども、学会誌あたりから情報はもらうが、国の通知などは余り見ていないようなことが書いて出ておりました。そういう意味で発信するほうだけではなくて、受けるほうももう少し勉強してくださいよと。そこは非常に大切な身体・健康にかかわる仕事をしているのだからという、プロはプロなりにずっと年齢にかかわらず、勉強していかなければいけないんだというあたりも、この報告書のどこかで呼びかけていただいていいのではないだろうか。
 繰り返しになりますけれども、43ページ、44ページあたりには仕掛けとしてそこの意識を高めていくような手を打たれているのですが、もっと前のほうの問題点のところで、その辺も少し足りないところがあったのではないかということを、何かうまく適当な場所に指摘していただけるとありがたいと思います。
 以上です。
○永井座長 ありがとうございます。
 位田構成員、お願いします。
○位田構成員 4点申し上げたいと思います。
 先ほどの荒井構成員の御指摘と似通ったところがありますけれども、御容赦ください。
 1つ目は、先ほどの国の担当者もしくは保健所長等のヒアリングでもわかるのですが、個々の担当者の知識とか意識、認識というものが、個人個人のいわば能力というか意識に依存しているところがあって、ある人は非常によくリスクを認識していたけれども、ある人はそうではなかったという状況があります。
 その点でリスクの共有という話はあるのですけれども、全てのものにどうも共通の認識があったわけではないので、仕組みとして個別の指摘を組織全体の認識にする必要がある。しかも先ほどから御指摘があるように、国民の生命と健康を守るという話ですから、少しでもリスクがあれば、それをすぐに取り上げるという組織的な仕組みが考えられるべきだと思います。これは国のほうでそういうことをリードしていっていただきたいと思いますし、それを受けて地方自治体でもそういう体制を考えていただく。そのあたりまで書いておく必要があるのではないかというのが1点です。
 2点目なのですけれども、この検討会は基本的には国の責任を追及して、そして調査をし、再発防止を考えるわけですが、基本的に国だけでこの問題は対応できるわけではなくて、いわゆる機関委任事務という制度を通じて地方自治体側の対応の体制も問題です。これは今、荒井構成員が御指摘になったとおりなので、ここの中で国に対して指摘していることが、恐らく地方自治体のそれぞれについても同じことが指摘できるのではないか。したがって、この中で国に求めていることを、同じように地方自治体内部、地方自治体相互間で認識していただきたい。そのこともこの中に書いておいていいのではないかと思います。
 3つ目、リスクマネジメントの話ですけれども、私は前回も申し上げましたが、何をリスクと言うのかという問題です。ここに18回出てきたというのは、そのとおりなので、それぞれについてどうもリスクの中身が違いますし、恐らく状況が違えばまたそれも違ってきます。リスクマネジメントもしくはリスクということを書くのであれば、国におけるリスクマネジメント体制の再構築、という言い方をして、より実効的で、かつ、透明性の高いリスクマネジメント体制に転換をすることが必要だろうと思います。
 これはB型肝炎だけの話ではなくて、厚生労働省全体の問題であり、かつ、もっと広く言えば国の体制そのものの問題だろうと思います。今はそこまで申し上げませんけれども、言い方を変えればリスクマネジメント中枢のようなものを構築して、責任のとれるリスクマネジメントを作り上げる。そうでなければ個人個人のリスク認識に留ます。個人個人が担当したときにだけマネジメントということを考えるに過ぎなくなってしまうので、やはり組織としてのリスクマネジメントを担当する中枢がどこかになければいけないと思います。
 その場合に、その中枢で、どういうリスクが起こっていて、それに対してどう対応するか、ということを判断するためには、やはり公開性、透明性、つまり、さまざまな認識が上がってきているんだということを公開して、もしくは透明性を高めて、そして検討を加えて必要なマネジメントを行うことが必要ではないかと思います。
 同時に、国だけにある意味ではリスクマネジメントを任せるというのではなくて、先ほど申し上げたように公開性、透明性を高めるという形でもって、我々社会がウォッチするという姿勢も必要なのだろうと思います。これは第三者機関をつくる云々という話ではなくて、むしろ一般国民が、最近非常に国民の意識が高くなっておりますけれども、厚生労働省なり地方自治体なりが国民の健康もしくは疾病の治療等を行うに当たって、どういうふうにやっているかということを常に理解して、場合によっては協力をし、場合によっては批判するという姿勢を持っておく。そういうこともこの再発防止策の中に、少しうたい上げる、という言い方はおかしいかもしれませんが、そういうことを国民に対して指摘をすることも必要かなと思います。
 最後に人権の話なのですけれども、私も荒井構成員が御指摘になったように、人権という言葉を使うことによるマイナス、という言い方はおかしいのですが、別の考慮というものが出てくるのは少し懸念をします。
 しかし、恐らく被害者の方たちが思っておられるのは、単にB型肝炎で病気になって、場合によって死亡される方も出るという話だけではなくて、B型肝炎にかかったことによって差別をされてきたという点が非常に大きいのだろうと思うのです。人権を上手に書き入れるというのはなかなか難しいのですけれども、少し考えまして、野口構成員の国民一人一人の生命、健康そしてそれにかかわる人権というものを少し触らせていただいて、34ページの御指摘のところなのですが、こういうものではいかがかと思いました。
 「厚生労働行政は国民の生命と健康を守ること、そして、それを通じて個人の尊厳と人権を守ることを使命として取り組むべきである。」個人の尊厳というのは憲法の中にも規定がございますし、1つ人権だけを入れるよりは、恐らくそれぞれ一人一人の価値を尊重するというか、そういうことをうたって、さらに人権というところにつなげて、かつ、より一般的な形で書くほうが当たり障りがない、という言い方はおかしいのですけれども、よけいな憶測を生む必要がないかなと思います。
 長くなりましたけれども、以上です。
○永井座長 丸木構成員、どうぞ。
○丸木構成員 既に各構成員の方々がお話になったことと重複するようで恐縮ですが、私はこれを読ませていただきまして、筋立てとしては非常によくまとまっているのではないかという感じを受けました。一番の問題はこれからの再発防止策であり、そのためには情報の共有と公開性というものが重要と思いますが、これをどうやって担保するのか、表現が抽象的でイメージとして浮かばなかったです。
 第三者委員会をつくることに反対するものではありませんが、時間がかかるような感じがしました。むしろここで指摘されたことを今の国の組織としてどういう形で取り込めば透明性と公開性が保てるかが大切と思います。B型肝炎ばかりではなくて、予防接種のいろんな問題が起き、インターネット上ではいろいろ言われていますが、どうだろうかという疑問を感じる人たちに正確な情報を発信し誤解を解く。先見的な知見を共有するというシステムをどういうふうにつくるか、もう少し具体的に書いていただいたほうよいと思います。情報を共有する、透明性を確保するというお題目だけで終わるのでは残念でなりません。
 もう一つは、地方によるギャップといいますか、保健所によって非常に先見的な取組がみられるところと、遅れているところの差を感じました。具体的には43ページの2つ目の○なのですけれども、予防接種の実施計画を作るに当たっての保健所長や地区医師会を招集した委員会を設けて、医学的観点から先進知見の積極的な収集と市町村への情報提供に取り組んでいるところは少数と聞いています。先進的なところはどのくらいの割合があったのか知りたいと思いますが、こういう先進的な取り組みの充実をはかることが地方レベルの話として重要だと思います。
 最後に野口構成員からの指摘で感染症の推定数を入れるとか、国民一人一人のという表現、あと位田構成員から提案のあった修正案に対して賛成いたします。
 以上です。
○永井座長 ありがとうございます。
 田中構成員、お願いします。
○田中構成員 全国B型肝炎訴訟原告団の田中です。
 今回の再発防止策は非常によくまとまっていると思うのです。ただ、原告から言わせていただくと、この防止策には魂、命がない。それをもう少し吹き込んでいただきたいと思います。
 厚労省が生命と健康を言う。そしてこの検討会はB型肝炎感染拡大の本当に真相究明、再発防止であるならば、もう少し被害者の声をぜひこの防止策の中にちりばめてほしい。それが被害の実態を浮き彫りにし、そして真相究明、再発防止につながると思っています。
 具体的には3点です。最初の1点は、まず5ページの「第1 はじめに」に、(1)の設置の目的の前に今回の検討会がなぜつくられたか。言ってしまえば、一番最後の44ページに、国は調査結果を含めて明らかにし、肉体的、精神的、経済的負担及び社会的差別、偏見の実態を受けとめるべきであると書いてありますが、こういった文言で入れていただいて、そして本当に被害者の声を入れていただく。これが「はじめに」のところに欲しいと思います。
 2点目は12ページになります。感染被害の実態は本当にアンケートも取り組んでいただいて、アンケートが別冊でありますけれども、ここには数字の羅列しかないと映るのです。今回のこの検討会、そして再発防止策は本当に多くの原告、被害者が見守っています。きょうの検討会にも今度の手術が最後かもしれない、最後の闘いだという被害者も来ています。アンケートの中にはB型肝炎が原因で死にたくありません。そういったことが随分と自由記載欄でも書かれておりました。そういった意味で、例えば家族の問題がどうだったのか、あるいは仕事や就職、交際や結婚、差別や偏見、将来への不安、母子感染、出産の問題、そして御遺族。こういったところからぜひ声を拾い上げて、12ページのところは数字だけではない、被害者の気持ちを酌んでいただきたい。
 3点目は34ページの今、論議が出ていますリスクマネジメント。これは先ほどの個人の尊厳というのは非常に私も賛成します。人権ももちろんそうなのですが、そういった意味でこのリスクマネジメントで見たときに、原告の多くの方から我々は商品ではない。マネジメントされるのかといった気持だという声も聞きました。やはり国民の生命、健康について守るといった厚労省であるならば、このリスクマネジメントの観点から振り返った場合というのはぜひ消していただきたいし、発生頻度は低いが、結果は重大だと考えられるといったリスクだけなのか。やはり先ほどの個人の尊厳の問題あるいは健康や命の問題、国民の生命、健康についてリスクの把握と対応が不十分だったというような書き方にしていただきたい。
 以上3点、よろしくお願いします。
○永井座長 山本構成員、どうぞ。
○山本構成員 少し論点が違うかもわかりませんが、私が出している資料を少し見ていただきたいと思います。
 経過と書いていますのは、皆さん御存じのように昭和26年ぐらいには感染するという医学的知見が形成されていました。昭和39年にライシャワー事件が起こっておりますが、ここに書いておりますように輸血後肝炎が1/2からと書いてありますが、半分ぐらいが感染したということなのです。今、田中構成員が言われましたけれども、感染頻度が低いという話がこの報告書の中、まとめの中に出ているのですが、感染頻度の多いものに対しても対応ができていなかったことを認識していただきたいと思います。
 (4)ですけれども、昭和47年ぐらいには肝硬変とか肝がんに移行することが言われていました。昭和57年には厚生省の肝炎研究連絡協議会ではたくさんの方が蔓延している、感染していることが言われております。厚生省は昭和60年前後には多くの肝炎感染者がおり、重篤になることがわかっていました。特に非A、非Bの感染者が多数いることがわかっていました。国民は肝臓は沈黙の臓器で自覚症状がなくて、自分が感染していること、将来重篤になることを知りませんでした。ここが非常にギャップがあるということなのです。
 ちなみに肝がんの死亡数はB型とC型含めて、これは肝硬変の死亡数は入っていませんが、昭和40年には大体年1万人、昭和60年になりますと年2万人、平成5年になりますと年3万人というふうに非常に増加しております。だから昭和60年ぐらいにこれだけの方が亡くなっていますので、その前後にはこれは非常に問題だということがわかっていたと思うのです。
 矢印の2番目にいきますが、感染の真相究明と再発防止対策は必要なのですが、厚生省は感染を知りながら、人々は感染を知らなかったことに対する問題。こういう究明がもっと重要です。人々が知っていれば、多くの人がいろいろな対応ができて、無念のうちに死んでいった人が減少できたはずなのです。早く危険性を広報して検診するようにPRなぜできなかったのか。これが組織的な問題だという話になると思うのですけれども、予防接種という狭い範疇の厚生労働省の再発防止策のみではなくて、もっと包括的な仕事の仕組みの改善が必要であると、多くの構成員がきょういろいろ発言されていたと思います。
 そこまでいかないと、この予防接種という狭い範疇の中だけのまとめといいますか、そういうものでは、この検証委員会の意味が半減しますよということでございました。
 次のページにいきまして、前回、永井座長がリスクマネジメントは行政は歴史的に組織として非常に弱い。今回のことを教訓として何か提案すべきで、それを総論として考えて、その1つとして予防接種を捉えるべきですという発言をされていましたが、本当にそうだと思います。
 多田羅先生も、やはりこれは個が受けるのではなくて、組織としてやらないといけないと言われていましたが、リスクマネジメントを組織としてやるというのは、どういうふうにしてやるんだというのが一番大事だと思うのですが、きょうのまとめの中で、これで本当にできるのかなと私は思うわけなのです。
 そこできょうも話が出ましたし、文書なんかも出ておりますけれども、行政の職員の数が非常に少ない。これで本当に仕事ができるのかという話が出されています。それから、人事異動のサイクルが非常に短い。2年という話が出ましたが、地方におきましても、あるいは国におきましても非常に人事異動のサイクルが短いので、本当に責任を持ってできるのかなと。事なかれ主義になっているのではないか。
 問題が出たときに、行政として本当に的確に判断できるのか。この2年とか3年の間にそういうことができるのかということで、やはり人事異動の仕組みを少し検討いただいたほうがいいのではないか。そういうふうに検討することも必要ではないかという提案でございます。そういうことができないのであれば、やはり第三者委員会できっちりと行政をチェックするという機関が必要ではないでしょうか。
 4番は年間2万、3万、今も3万数千人、肝硬変を入れますと4万人ぐらいが亡くなっているわけですけれども、国民に健康について自衛できるように、健康教育の仕組みというものを厚生労働省としては考えていただいたほうがいいのではないか。
 例えば少し書いていますが、健康について成人病あるいは感染症、がんなどを強制的に勉強する仕組みをつくっていただいたほうがいいのではないかということを書いています。今、自動車なんかでは免許証というものがあるわけですけれども、受講しないと免許更新されませんが、そういう勉強をしないと健康保険証を更新できないことも考えて、節目節目でそういう健康教育を国民に対してやっていただければ、今の平均寿命もさらに上がるのではないかと思います。
 以上でございます。
○永井座長 新美構成員、どうぞ。
○新美構成員 先ほどの荒井構成員のお話とも絡むと思いますけれども、この報告書は全体しっかり書き込んであると思うのですが、1つ視点が落ちているのは現場の重要性を指摘しながら、リスクは現にどういう状況にあるのか。ディテクトするといいますか、発見ないしは感知する場面について言及が足らないように思います。
 一番の理由としては、現場のお医者さん、予防接種するお医者さんが一体何を考えていたのか。要するに消毒を十分にすることは常識だった。自分の医療ではちゃんと消毒していましたというのは最高裁判決で認定しているのです。そういうお医者さんが予防接種するときに何の疑問も抱かなかったのか。個人的にはそういう印象を持ちます。
 逆に言いますと、危険を感じていたならば、それをディテクトしているはずですし、それをきちんとフィードバックできるシステムを考えたほうがいいだろう。ですから逆に言うと、お医者さんはもっと積極的にリスクを感知したらちゃんと物が言えるように、みずから、まさにプロフェッションとしてそういう心構えを持つべきだということを書いておいたほうがいいのではないかと思います。
 これは話が変わりますが、第三者機関を設けなさいというのは、私もそれはあるかなと思うのですけれども、問題は第三者機関を設けても行政の一部ですから人が変わるのは当たり前です。例えば公害等調査委員会だってせいぜい数年。2期務めたとしても10年くらいですので、それだってこういう大きなリスクを長期に見ていくときには不十分になるわけです。そういう意味ではむしろ専門家というのは大体このテーマについてずっと一生をかけてやっていくわけですので、専門家をどう生かしていくかというシステムあるいはインフォメーションセンターとしてどういうふうに動いていくのかというのを考えたほうがいいだろうと思います。
 どういう形でインフォメーションを、先ほどもありましたようにきちんと共有をしていく。そういう場面がどこにできるかということを考えればいいのではないか。
 2点、私の意見を申し上げました。
○永井座長 この第三者委員会のことを先に御説明いただいて、その後、議論したいと思います。
 奥泉構成員あるいは田中構成員、梁井構成員から提言が出ておりますので、お願いいたします。
○奥泉構成員 B型肝炎訴訟の原告団、弁護団としまして、今回の再発防止の問題について、こういう形で再発防止を考えるべきではないかという提言をつくって、事前に配付させていただきました。既に読んでいただいているとは思いますけれども、総論の部分と各論の提言の趣旨のところを確認的に読ませていただきたいと思います。
 まず総論としまして、再発防止策策定における基本的視点ということで、これまでの検証結果で集団予防接種等により発生・拡大したB型肝炎感染被害は、量的にも質的にも未曾有の規模であることが明らかになりました。再発防止の大前提であり、かつ、再発防止の出発点となるのは被害の徹底した調査と被害回復の実現にあるということは、言を俟ちません。今後さらに被害の徹底した調査と被害回復の実現が図られるべきであるということを大前提としつつも、二度と同種の被害を発生させないために、検証の結果とそこから得られる教訓を踏まえて、真に実効性ある再発防止策を講じなければなりません。
 2として、検証結果を踏まえると、次のような問題意識が重要であると考えます。
 国は一定の時期から一定の先見知見・危険情報を持ちながらも、被害の発生・拡大を防止するための措置や、被害回復のための措置をとりませんでした。このことは単なるリスクに対する認識が正確でないため、リスクマネジメントが機能しなかったということにとどまらず、リスクマネジメントの体制のあり方、リスクマネジメントを担当する者と、その担当者を支配する価値観(人権意識)に問題があることを意味します。
 (2)としまして、国は国民の生命健康に危害が生じる(可能性がある)事件が発生したという情報に接しながらも、被害の回復と再発防止のための対策を迅速にとりませんでした。それどころか、平成13年の肝炎対策に関する有識者会議報告書において、B型肝炎ウイルスの感染原因として集団予防接種が全く無視されたことに見られるように、問題の顕在化に消極的態度をとってきたとも言えると思います。結局のところ、国の本格的対応は国の法的責任の確定を待たざるを得ませんでした。このことは、このような事件が発生したとき、適時的確に被害の回復と再発防止のための対策がとられるようにするためには、そのことと法的責任追及と切り離された体制が必要であることを意味しています。
 いずれにしましても、予防接種行政に係る制度の運用のみならず、制度そのものにも問題があったということであります。
 次に、今、述べました(1)の問題に関して重要なのは次の点であります。
 (1)としまして、厚生行政の基本は国民一人一人の生命健康を守ることにあり、例え「国民」全般の生命健康の維持や公衆衛生を目的とする場合でも、そのために個々の国民の生命健康を犠牲にすることは許されません。厚生行政の担当者は、すべからくこのような人権意識を持つ必要があると考えます。
 しかも、集団予防接種等における注射器等の連続使用は「国民」全般の生命健康の維持や公衆衛生のために必ずしも必要不可欠であったわけでなく、予防接種等を効率的・経済的に実施するために行われたものに過ぎないのでありますから、そのために国民の生命健康が犠牲になったということは、より重大な問題があると言わざるを得ません。
 また、国民一人一人の生命健康を守ることを軽視した結果、国民の生命健康にかかわる法令の遵守について徹底する姿勢、体制に不十分さがあり、それが長期間克服されないできました。
 国民の生命健康にかかわる厚生行政にあっては「予防原則の徹底」が必要だということであります。国民の生命健康にかかわる問題については原因(因果関係)が確定できなければ対策をとらないということではなく、それが原因である可能性があるのであれば安全率を見込んで、早く、広く対策をとることで被害の発生、拡大を回避できるのだという姿勢に立つ必要があります。
 また、前項(2)の問題に関して重要なのは次の点であります。
 国民の生命健康にかかわる問題領域にあっては、政策推進部門とその過程で生じる諸問題についての監視・是正部門とは分離・独立した組織であること(第三者性、独立性)が必要不可欠だということであります。具体的内容は諸般の事情を総合考慮しなければならないとしても、この本質は譲れないものであります。
 以上の総論を前提としまして、各論としまして6点挙げさせていただいております。
 第1としましては、先進知見・危険性情報(事例も含む)を収集・分析する機関の設置であります。
 国民の生命健康に関する厚生行政分野について、先進知見・危険性情報(事例を含む)を網羅的に収集・分析して、関連する行政部署に情報を伝達する機関を設置する。
 前記機関が収集した情報については、プライバシー保護の観点から公開できない場合を除いて、一般的に公開するということであります。
 理由については割愛します。
○永井座長 時間の関係がありますので、要点を御説明ください。
○奥泉構成員 わかりました。
 2番目としては、事件調査委員会の設置です。第三者機関の設置であります。
 国民の生命健康に関する厚生行政分野について、国民の生命健康に危害が生じた事件及びそのおそれのある事件が発生した場合、法的責任の追及とは切り離し、迅速にその原因究明のための調査を実施するとともに、再発防止策や被害者救済策を検討し、厚生労働大臣または原因関係者に対し、必要な施策または措置の実施を求める恒常的な第三者機関を設置する。
 また、この事件調査委員会設置を実現するために、設立準備検討会を早急に立ち上げるべきだと考えます。
 3点目で法令等の適正化と遵守を徹底する体制の整備。7ページでありますが、国民の生命健康に関する厚生行政分野について、国民の生命・健康に影響のある法令等を制定・変更する場合は、専門家や学識経験者や被害者を含む構成員で構成される第三者機関の意見を聞くようにする。また、第三者機関は厚生労働大臣に対して、法令等の制定・変更について提言できるようにする。
 法令等の遵守を確保するために、以下のように制度化する。
 法令等の遵守状況について、自治体等の実施機関に報告を求めなければならないような規定を当該法令等に合わせて定めておく。
 2番目としまして、実施状況についての自治体等の実施機関との協議機関を設置する。
 3番目として、行政と医師会等の委託を受けた機関との間の定例会合等を開催するような努力義務を課す。
 4番目としまして、法令の制定に際し、遵守できるような予算措置を構築する。
 第4としまして、9ページの下のほうですが、教育に関する問題として厚生労働職員に対しては、その使命が国民の生命健康を守るべきことにあることを徹底し、厚生行政全般において個人の生命健康が尊重され安全性が最優先されるべきことを、B型肝炎訴訟などの健康被害に関する被害者の声を聞く機会を設けるなどして教育する。
 2番目として、医療従事者に対して感染症についての教育をするとともに、人権意識を高める教育をすべきであり、医療関係者を教育する医学部・看護学部等の学生に対しては、B型肝炎訴訟などの健康被害に関する教育を行い、このような被害を二度と繰り返さないような教育をする。
 一般の初等中等教育においても、B型肝炎訴訟などの健康被害に関する教育を行い、人権尊重の意識を啓蒙すべきであると考えます。
 5番目は、さらなる被害実態の調査の実施ということで、専門家等により構成される調査研究機関を設置し、集団予防接種によりB型肝炎に感染した被害者をヒアリングするなどして、B型肝炎被害の実態をさらに掘り下げて調査する。
 6番目ですが、予防接種法の健康被害救済制度を検討する機関の設置等ということで、予防接種法に定められた健康被害救済制度が、集団予防接種等によるB型肝炎感染被害について機能しなかった理由を調査検討し、同種被害について同制度が機能するような方策を検討する機関を設置する。
 2番目としまして、国は集団予防接種等によるB型肝炎感染被害者に対して、早期に完全な被害回復を実施するために、救済制度の周知徹底や救済制度による被害回復の迅速化を図るなどして、早期の被害回復の実現に努力すべきである。
 3番目として、国は基本合意(第5恒久対策等)において約束した恒久対策等の実施を誠実に履行すべきである。
 以上この6点について提言をしたいと考えております。
○永井座長 ありがとうございます。
 岡部構成員、どうぞ。
○岡部構成員 今のにも少し絡むところもあるのですけれども、先ほどからリスク管理あるいはリスクマネジメント、マネジメントという言葉が悪ければ対応といった形になると思うのですが、その手前には情報を収集することが非常に重要になってくると思うのです。
 リスクも非常に幅広いので厚生行政全般にわたってこの会議でリスクに対するマネジメントあるいは情報収集の提言というのはなかなか難しいと思うのですけれども、B型肝炎の問題を中心にして予防接種ということであるならば、例えば食品安全委員会というものがあって、あそこは農水省と厚労省と両方でリスク分析をするための委員会を設置しています。
 ただ、予防接種に関して、このHBも含んでですけれども、他省庁にわたることなく厚労省の中でのことなので、そこで完結することになります。するとその中でリスク分析ができる機関というものがあるといいなと私は思っていたのですが、実際にはそれは例えば国立感染症研究所とか、あるいは今度、私もかかわっているのですけれども、このたび設立された厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会といったものを強化するのが良いのではないでしょうか。もちろんそのままでいいということではなくて、幾つかの役割をそこに託するといったこともできるのではないかと思います。
 実際にそのリスクの分析とマネジメントを同時にやるというのは難しいので、そういう点で厚労省、本省としてはリスクをマネジメントあるいは対応するところで、そこに対して提言ないし評価をしていく組織が必要ではないかと常々思っているのですけれども、先ほども「感染研」というような話がどちらかから出ていましたが、例えば感染研の中でそれを今やれと言っても、私は感染研に長くいたのでわかりますけれども、今の人数や予算体制ではとてもとてもそれができない。それはこれまでも何遍も申し上げておりますが、たとえばリスクに関する情報を収集するのが私の担当した部署でも立ち上げて、予算をいただいたことがありますけれども、それはどんどん先細りの状態にありました。今はちょっと離れている予算規模などの詳細はわかりませんが、そういうところを再度強化をして、この肝炎も含めてですけれども、リスクの評価をするようなところをきちんと明らかにして、第三者委員会というのはまた難しいと思うのですが、そういったところでの対応が必要なのではないかと思います。
 厚生科学審議会の中に予防接種に関する新しい分科会ができていますので、その中でも副反応に関する問題点を検討する部会というところもありますので、そこでさらに充実させることも、この対応策の中には現実的な策として入れていけるのではないかと思います。
 ただし、B型肝炎に関する今後出てくるかもしれない慢性の病気への対応というのは、あるきっかけから数カ月どころか数年あるいは数十年たって出てくるものなので、これをなかなか全部把握するのは現在のシステムでは難しいということも承知した上で、御検討いただければと思います。
 以上です。
○永井座長 多田羅構成員、どうぞ。
○多田羅構成員 第三者機関というものが提言されておられますので、一言意見を述べさせていただきたいと思います。
 公衆衛生という観点から見て何よりも大事なのは、この2ページでも言っていただいております厚生行政にあっては、予防原則の徹底ということであります。そして、予防原則の徹底というのは上から下に一方的にできるものではなくて、日常的な活動の中で言わば縁の下の役割として、予防されたら当たり前という状況の中で推進されるものであります。
 それを担っているのは我が国では保健所です。自治体によって設置されている保健所です。予防の拠点が保健所であることが言えると思います。そういうことが日本の公衆衛生を担い、今日の国民の健康を守ってきた形でございます。
 今回、第三者機関ということが言われているのですけれども、まず4ページの下の3行目に発生した場合ということが言われているのですが、発生する前に今、申し上げているように予防しなければならないということがございます。ですから、発生した場合に調査を実施するとともに再発防止とはございますが、日ごろの予防活動というものが基本的にベースにおいて実施されているという実態の上にあってこそ、発生した場合の調査が実施可能ということがございます。
 そういう意味では、この予防ということと管理、調査ということは、常に重なって推進されてこそ公衆衛生というものが行われるものでございます。
 ここで第三者機関と言われているものがどういうものかわかりませんが、国レベルあるいは厚生省で単にこうした第三者委員会が現場の予防活動、保健所活動などから遊離した形で上からつくられるとすれば、それはまさに衛生警察をも思わすような施策であって、現実性があるものとは理解できません。
 そういう意味で公衆衛生という観点からしますと、むしろここで言っていただけるとすれば、我が国の保健所体制をどう強化するかという地方自治体の形であり、あるいは全国に495ある保健所が地域における健康管理をどのように担い、進めていくのかということであり、そのことこそ今日問われている。今回のB型肝炎に関しても、その点、B型肝炎が非常に特殊な疾病の形であることから保健所の管理の目が行き渡らずに、これだけの被害が生まれたわけでございますけれども、基本的には地域における健康危機管理、予防は保健所が担うというのが日本の公衆衛生の原点でございます。
 ですから、第三者機関の設置ということを言うとすれば、まさにそれは上意下達の機関をつくるだけであり、結果としては保健所の機能の上に乗っかった冠をつくるだけになると思われますので、今日もしやるとすれば保健所体制の強化の上に立って、特別の今回の課題としてのB型肝炎被害者あるいは感染者、そういう人たちに対する対応をどのように進めるべきかということが言われるべきであって、第三者機関というのでは、屋上屋を重ねるだけであり、どういうものであるのか。公衆衛生の理念にこれは立てるものであるかどうか、非常に疑問に思います。あくまで予防と対策、管理というのは重なる現場というものがあってこその健康危機管理であることを強調したいと思います。
 以上です。
○永井座長 野口構成員、どうぞ。
○野口構成員 たくさんの構成員の方からさまざまな意見が出ておりまして、私は今の皆様の御意見を伺って感じますのは、いろいろな形態がありますけれども、どの形態がどこに可能性があって、どこが不可能なのかという論点整理がきちんとそれぞれの形態になされるべきで、ベネフィットと、そういう形を追求したときに失われるコインの両側がありますので、例えば第三者委員会という事例をとるならば、実現にかけてどうするのかという困難もありますし、中立性という点もあります。現行の委員会に入れるとしたら、そこでどういうベネフィットがあって、どういうチャレンジがあるのか。いろいろな形態があると思うのですが、それをきちんと分析して、議論の仕方を整理しないと全部今ごっちゃになっていると思いますので、そういうことを次回あたりにしていただけたらと思います。
○永井座長 新美構成員、どうぞ。
○新美構成員 今の意見もそうですけれども、私は基本的には岡部構成員と同じような考え方を持っています。それに加えて、事件調査委員会で事件調査もやるべきだと言うのですが、こういう事件で一番問題なのは、事故なのか疾病なのか区別ができるのかというのが既にニュージーランドの経験でわかっておるわけです。交通事故なんかの場合は事故なのかそうでないのかわかるのですが、疾病が絡んだときには本当に疾病なのか事故なのか物すごく難しい問題があることを指摘しておきまして、これは調査委員会を設けようが設けまいが、ニュージーランドは現に設けてやっておりますけれども、お手上げの状況になっているのが現実です。
 それから、救済を目的としたということなのですが、救済をどうするかというのはこの委員会ではおよそ議論したことがありませんので、これまでやるかどうかを提言に入れるのは、私はほとんど議論していないものを提言の中に入れるのは賛成ができません。
○永井座長 小森構成員、どうぞ。
○小森構成員 日本医師会の小森でございます。
 こういった事故が起こったことを真摯に受けとめた上で、医療従事者の基礎教育等に関する点について触れていただいていることは感謝を申し上げたいわけですが、御承知のように医師は医師を志した時点から死に至るまで、常に生涯教育ということが国民に課せられた責務であると認識をしております。とは言え、国の通達がおくれた等々のことがあったにせよ、通達が全ての現場の医師に十分に伝達をされ、そしてそれが実現されていたかというと、いろんな問題点があったということは、この検討会でも明らかになったと理解をしてございます。
 基礎教育のことは言っていただいたわけですけれども、医師については節目節目を申し上げますと卒前教育、医師国家試験、医師臨床研修制度、専門医にかかわる研修、さらには生涯教育と、さまざまなレベルで教育を行っていくこともございます。日本医師会ではこういった事例を踏まえながら、日本医師会の生涯教育制度においても、こういったことを1つの到達目標に置いて研修に努めているところでございますが、11万人の医師が今そういった研修を受けている。各学会等もそれぞれに努力をしておられるわけですけれども、こういったことを全ての医師がさまざまな形で学び続けていくことについての国民の方々の理解と支援も必要でございますし、我々も一層今後も努力してまいりたいと思いますが、そういったことに関する記述、基礎教育に比較的重点を置いた記述でございますので、我々としてはプロフェッションとしてそういったことを生涯国民の方々に担い続けていくことについては、より強い表現にしていただくほうが我々としてもいいと、国民の方々の信頼をさらに向上していくためにも大切なことであると思います。
 同時に、現場でそれぞれの医師が実際に予防接種等に従事をする中においては、現実的には地方行政と地区医師会が締約を結びながらやっていっているわけです。したがって、少し要点について若干触れられておりますけれども、そういったところでのさまざまな観点の精度管理について、高質な精度管理ができる体制を国全体として考えていくことも明記していただくと、地区医師会の役割というのは極めて今後も重要であろうと思っておりますので、自戒を込めてそういったことについても、少しより強く触れられていっていただくことも重要な観点である。全ての医師を代表する会の担当として申し上げておきたいと思います。
○永井座長 澁谷構成員、どうぞ。
○澁谷構成員 現場の保健所から再発防止策ということで具体的に記述をされている部分を中心に見てみますと、先ほど来1つ出ております第三者委員会というのは、基本的には私も岡部構成員の意見に賛成です。
 今回予防接種法が改正されて、審議会も新しくなりましたし、ここを強化していくこと、それから、感染症研究所や地方の衛生研究所といったところの機能を充実させて、情報の収集とか評価を地域の中にきちんと伝えていくことが重要ではないかと考えております。
 改めて別の委員会をつくるということは、先ほど多田羅構成員もおっしゃったように、その意味合いでも、あるいは時間のかかること等も考えて、屋上屋を重ねることを危惧しております。
 例えば43ページにございますように、地域の中に予防接種の委員会というものを設けているわけですけれども、これが機能しているかどうか。設置するだけではなくて機能させることを考えますと、これがまだ十分機能していないのではないかと思っておりますので、国からの通知は都道府県、市町村と順番につながっていくことを考えますと、最後のところで保健所と市町村がこの委員会を機能させることが非常に重要ではないかと思っております。
 以上です。
○永井座長 まだ御意見おありかと思うのですが、時間がまいりましたので、とりあえずきょうの論点、特に第三者委員会とそれ以外の形について、それぞれの問題点、長短について事務局で次回までに整理していただけますでしょうか。それをもとにしてさらに議論を続けたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、最後に事務局から連絡事項をお願いいたします。
○野村B型肝炎訴訟対策室長補佐 次回につきましては5月20日、月曜日の1時半から、場所は厚生労働省内17階の専用第18会議室を予定してございます。日時と場所についてはまた構成員の皆様に改めて御連絡を申し上げます。
 本日も長時間にわたり、どうもありがとうございました。


(了)

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