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2012年3月14日 第5回 障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会

職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課

○日時

平成24年3月14日(水)10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎第5号館専用14会議室


○出席者

【委員】 今野座長、阿部委員、海東委員、川崎委員、杉山委員、田川委員、田中伸明委員、田中正博委員、野中委員、丸物委員、八木原委員


【事務局】 中沖高齢・障害者雇用対策部長、山田障害者雇用対策課長、田窪主任障害者雇用専門官、鈴木障害者雇用専門官、秋場地域就労支援室長補佐、西川障害者雇用対策課長補佐


○議題

1.他の研究会における検討状況について
2.障害者雇用促進制度における障害者の範囲について
3.障害者の雇用に関する事業所アンケート調査について
4.雇用率制度における障害者の範囲等について

○議事

○今野座長
 それでは時間ですので、始めさせていただきます。田中(伸)委員はいらしてないですが、追々いらっしゃると思います。
 それではただいまから「第5回障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会」を開催いたします。本日は育成会の田中正博委員はご欠席でございます。前回、前々回と一緒なのですが、発言されるときには手を挙げていただいて、名前を言っていただきたいと思いますのでお願いします。
 それでは、今日の議題はお手元の議事次第にあります4つです。少し多いので、議事進行にご協力をいただければと思います。
 それでは第1番目の議題、「他の研究会における検討状況について」から入りたいと思います。まず、事務局から説明をお願いします。
○地域就労支援室長補佐
 事務局の秋場です。資料1をご覧ください。現在障害者雇用の関係では、この研究会を含めて3つの研究会を開催しております。現在この研究会以外の研究会においても、関係者からのヒアリングなどを経て、検討すべき論点を提示し、今後論点ごとに議論を行っていくという状況になっております。中間的な進捗状況、それからこの研究会に関連する他の研究会におけるご意見などを簡単にご報告させていただきます。
 資料1-1をご覧ください。こちらは、我々第2研究会と呼んでいる「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」のスケジュールになります。現在、第4回まで終了し、これまでの検討の経緯や差別禁止部会での議論の状況などの説明を経て、論点ごとの議論に入ったところです。
 資料1-2をご覧ください。こちらは、この研究会における論点です。大きく4つありまして、1つ目が基本的な枠組みとして、障害者権利条約に対応するための枠組みの全体像や、差別禁止等枠組みの対象範囲、2つ目が障害を理由とする差別の禁止、3つ目が職場における合理的配慮、4つ目が権利擁護(紛争解決手続)についてとなっております。
 資料1-3ですが、こちらは、我々第3研究会と呼んでいる「地域の就労支援の在り方に関する研究会」のスケジュールになります。現在、第5回まで終了し、主に関係者からのヒアリングを行い、論点整理をして、論点ごとの議論を開始したばかりです。
 資料1-4が、この研究会での論点です。大きく3つありまして、1つ目は、企業が障害者雇用に取り組むために必要な支援について、雇入れの前後、定着、引退過程という、それぞれの段階ごと、また障害特性に応じて必要な支援は何なのかということ。2つ目はそうした必要な支援を整理した上で、では、それぞれの就労支援機関ごとに求められる役割は何なのだろうかを検討していくこと。3つ目が、そういった役割を踏まえて、地域のネットワークの充実、または強化に向けての検討を行っていくとなっています。
 資料1-5ですが、この第3研究会に関連する意見について抜粋したものです。説明については割愛しますが、後ほどご参考までにご覧いただければと思います。以上、簡単ではございますが、他の研究会の進捗状況についてご報告いたしました。
○今野座長
 ありがとうございました。それでは、ご質問がありましたらどうぞ。まだ、実際には議論が始まったばかりということですので、これからも進行に従って適当な時期にまた議論の内容は紹介していただくということにしたいと思います。よろしいでしょうか。今日は、こういう構えでやっているという紹介があったということだと思います。それでは、この議題は終わりにさせていただきます。
 次は、「障害者雇用促進制度における障害者の範囲について」です。その議論をしていただくのですが、その前に各国の状況がどうなっているのかを調べてくるようにという前回の宿題がありましたので、それについて事務局から紹介をしていただいて、その後に先ほど言いました2番目の議題に入りたいと思います。
○障害者雇用対策課長補佐
 事務局の西川です。資料2をご覧ください。前回杉山委員から諸外国の障害者の認定の状況に関するご質問をいただきました。障害者雇用などで調査が行われている欧米の4カ国の例を簡単にご説明をさせていただきます。
 まず、ドイツでは、従前から各社会保障制度において、職業リハビリテーション(以下職リハと言います)が実施されていまして、ここでは社会法典に規定されている公共職業安定所が提供する職リハについて説明します。
 まず対象者ですが、こちらは社会法典第3編第19条に規定がありまして、「労働生活に参加し、又は今後参加する見込みが、障害のゆえに単に一時的でなく著しく減少し、かつ、それゆえに労働生活への参加のための援助を必要とする者」と規定しています。ここでいう障害とは、社会法典の2条に規定がありますが、「身体的機能、知的能力又は精神的健康が、かなりの蓋然性で6カ月より長く、その年齢に典型的な状態とは異なる場合で、社会生活への参画が侵害されている場合に障害がある」と言われております。ドイツの職業リハの対象は、そういった障害を持たれる方で、それゆえに労働生活への参加の見込みに制限を受けているという2つで判断をしていることになります。
 障害の有無については詳細は書いていませんが、障害の有無や障害の程度の認定については、ドイツでは旧来より戦争被害者の保障である援護行政を担当している援護局の医師が、援護医療命令、昔は手引きと言っていましたけれども、そういった基準に基づいて障害の有無や程度を判定しています。この判定の基準については詳細は書いてありませんが、その基準を見ますと0~100までの数値が記載されていまして、それぞれ10刻みの数値が付されています。それで障害の程度を表していまして、その程度が20以上の人を障害者、障害があると認定して、50以上の人を重度障害者と認定をしているというのが、障害の有無や程度の認定です。
 職業リハは、それに加えて労働生活への参加のための援助が必要であるとか、そういったことを認定して職業リハサービスを提供しています。職業リハの対象者として適切かどうかの認定については、連邦雇用庁といって、職業紹介とか失業保険をやるようなところで、日本で言いますと厚生労働省のようなところですが、そこの出先機関である公共職業安定所が先ほどの医学的な障害の有無とか程度の認定に加えて、求職者のニーズや障害の状況に応じて対象者を認定しています。大まかに言えば、日本のハローワークでいま職業リハの対象を認定している制度と概ね変わらないと考えていただいて結構だと思います。ただ、重要なのは先ほど医学的な鑑定、認定と言いましたが、それが20以上の数値を付けた人を障害者と言っていますので、20未満の人は当然職業リハの対象にもならない。それから、医学的な認定とか鑑定を受けていない人が、ハローワークに行って職業リハを受けたいと言っても、そもそも、まず援護局の認定を受けてきなさいということで、認定を受けた証明書を持って、職業リハのサービスを受けられると聞いています。
 職業リハのサービスですが、1番から4番まで大まかに概要を書いていまして、基本的には日本と変わらないと考えていただいて結構です。
 ドイツにおける雇用率制度の対象は、先ほど申し上げた医学的な認定でも重度、いわゆる50以上の方を原則として対象としています。マル2に書いていますが、それに加えて障害程度、医学的な認定では30~50未満なので重度ではないのだけれども、職業上の影響が大きいと判断される方については、重度障害者と同等と扱われる者ということで、これも雇用率の対象にしています。
 認定については、まず、医学的な鑑定、認定は、援護行政を担当する援護局で実施していまして、同等と扱われる者の認定のみ公共職業安定所で実施しています。この同等と扱われる者の認定ですが、まずは医学的な鑑定で30~50という証明がないと、同等の者に当たるかどうかが要件として入ってきません。30~50という鑑定を受けた上で、それでは職業上にどれだけの困難、影響を与えるのかを職業安定所で判定します。具体的には、例えば求職者の段階の障害者であれば、職業紹介が失敗したといったことでも、これは同等の者であろうと言われてしまう場合もあります。また、雇用期間中であれば、障害のために頻繁に欠勤をする人、それから永続的に職場での介助、援助が必要だと事業所から情報をもらって、程度としては30~50だけれども、同等程度だと認定するということです。いまお話をしたように、同等程度の認定には基準がないということなので、職業公共安定所の裁量が非常に働くと言われています。ですから、特に雇用されている段階、雇用期間中の認定では、職場の状況が日々変わりますから、当然職場が変わった場合には、その同等の者の認定が取り消されてしまうという場合もあります。統一性、公平性、公正性というものをどう考えるのかがポイントになるのではと思います。
 続いてフランスです。職業リハの対象ですが、「身体的、知的、精神的機能又は感覚器官の機能の悪化により、雇用を獲得し維持する可能性が現実に減退している全ての人」と法律上定義されていまして、これをいわゆる「障害労働者」と我々は呼んでいます。
 認定については、CDAPH(障害者権利自立委員会)と言われている合議制の委員会で認定をしていくと聞いています。この委員会には国や県の代表、労使の代表、障害者団体の代表などで構成をされていると聞いています。具体的な認定を委員会でどのようにするかというと、こちらも合議制で決めていく認定ですから、何か統一的な基準があるわけではないということです。まずは、主治医や、フランスの場合は労働医が非常に権威を持っていますが、労働医の診断書の基礎的な情報を基に、個別具体的に検討を委員会で行って決めていくと聞いています。その際には、医学的な診断書に基づく機能障害に加えて、就職をするとか、雇用継続をするといった場面において、その障害がどの程度影響を与えるのかを労使の代表、障害者の団体の代表が集まる合議制の委員会で、具体的に検討しながら認定をしていきます。いま申し上げたように、委員会で決めていくとしていますので、統一的な基準がありませんから、このCDAPHという委員会自体は日本でいうと県ごとに置かれていると考えていただければと結構です。そうすると県の単位ごとに認定が変わる、異なるということもあるようです。
 それから、同じ機能障害をお持ちでも、同じ病気の症状であったとしても、置かれている職場の状況も考慮して、合議制の機関で決めていきますから、非常に変化、変更しやすいということもあって、この認定自体には1年~5年という有効期限が付されています。どのように判断をするのかは詳細は不明ですが、それぞれの委員会で、この方については1年、この方については3年というように、有効期限を付して認定をします。フランスに調査に行った者から聞けば、合議体での認定ですから、平均的に1認定5か月~7か月間かかると言われ、国内でもこれは非常に問題視をされていると聞いています。そういう形で認定をされた方について、サービスは次のマル1~マル4までで、これも我が国と同様のサービスを提供しているということです。
 雇用率制度ですが、フランスにも雇用率制度があります。これは障害労働者の認定を受けた者以外にも、それぞれ労災年金とか障害年金、障害者手帳、戦争犠牲者遺族も雇用率の対象にしてカウントしているのがフランスの特徴です。
 続いてアメリカです。アメリカとイギリスを見ていただくと、雇用率制度はありませんので、職業リハのみの説明です。
 アメリカの対象者は大きく2つの法律で、職業リハが実施されています。まず、リハビリテーション法で対象者を定義していまして、「雇用の実質的な妨げとなる身体的又は精神的機能障害を有する者」とされています。もう1つは、労働力投資法がありまして、そこでも障害者への職業リハが規定されています。対象者については、ADA法という差別禁止法の定義を取っています。
 障害者の認定ですが、アメリカについては州が指定をする職業リハ機関が、職業紹介とか職業相談等を実施しますが、各州ごとに実は認定の基準とか、いわゆる手引き等を作成しているようで、その州が指定した機関が州の基準に基づいて判定をしていくと聞いています。
  労働力投資法に基づく職リハ機関については、ワンストップ(キャリア)センターがありますが、こちらについては実は障害者のみを対象にしているわけではなくて、例えば退役軍人とか、いわゆる刑務所出所者なども対象にしていますので、障害があるかどうかの認定の必要性というよりは、その人がどういった経歴、どういった事情、どういった障害、症状をもっているから職業に就くことが困難なのかという、いわゆる職業評価を幅広く実施して、その人が支援が必要だと判定されればその計画に基づいて支援を受けるということですので、障害がなくても例えば退役軍人で、ほぼ民間企業での勤務経験がないという場合であれば、非常に困難性が高いと考えられ、おそらく計画が作られて、その機関を利用されるということになると考えています。
 次に、職業リハのサービスについては、基本的には同じものをまとめて書いています。
 最後イギリスです。イギリスについては対象者が差別禁止法の定義を取っていますが、「身体的又は精神的な機能障害を有する者であり、この機能障害によって通常の日常生活を行う能力に、実質的かつ長期間にわたり悪影響を受けている者」とされていまして、その中で職業リハの対象になるのは、労働能力に制限があるとか、労働年齢であるといったこと等が要件として課されています。
 対象者の認定ですが、こちらも日本のハローワークに当たるジョブセンタープラスというところで対象者を認定しています。ただ、ジョブセンタープラスについても、ジョブセンタープラスの中に専門の医師、医療専門家がいまして、個々に面談、診察などを踏まえつつ、ここがイギリスの特徴なのですが、就業能力の制約に関する評価という基準がありまして、そこで労働能力を判定しています。冒頭に申し上げたドイツと同じように、医師の診察、診断を踏まえプラス労働能力、障害の程度といったものを判定する基準が設けられているということです。このイギリスの労働能力の評価の基準は非常に細かく決まっていまして、身体的機能であれば、例えば立つ、座るというのがどの程度障害があるか、腕を伸ばす、話す、見るといった行動がどれほど支障があるかというのが、項目ごとに並べられています。それから、精神、認知、知的機能というのも、学習、理解、記憶といったものに項目が設けられていて、それぞれ点数が付されています。
 ただ、イギリスが非常に特徴的なのは、それぞれの職業リハビリテーションのサービスで、例えば助成金をもらうとか、訓練に行く、職業紹介を受けるというサービスがありますが、それぞれが、それぞれのサービスごとに要件を決めていまして、一律に何点以上障害者とか、何点以上で対象者というふうに決まっているわけではなくて、その障害の特性ごと、制度ごとにそれぞれ決まっていると聞いていますので、一律な基準はございません。ただ、単なる職業紹介とか職業相談を受けることについては、特に評価の点数が必要だとは聞いていません。
 以上、簡単に申し上げましたが、4カ国を概観しますと、職業リハの対象者については医師の診断とか、ドイツの場合鑑定と言っていましたが、そういったものを受けて機能障害、いわゆる損傷をまずは認定する。それに加えて、職業リハビリテーションですから、労働生活上の困難を認定していく。フランスの場合であれば合議体で決め、ドイツの場合はいわゆる程度が決まっているものに、職業安定所で個々の状態を見ながら、個別具体的に判断をしていくとなっていまして、ドイツが非常に日本と似ている形なのではと考えています。
 一方、雇用率制度については、ドイツ、フランスともに、ある一定程度の認定を受けたという共通の基準で認められたものが上がってきていまして、特にドイツの場合には、基本は重度障害のみを対象にしているということが特徴と考えています。非常に簡単ですが、4カ国の説明を以上で終わります。
○今野座長
 ありがとうございました。何かご質問はございますでしょうか。
○田川委員
 JSNの田川です。1つ、アメリカでADA法ができて、権利条約にも影響を及ぼしたと認識しているのですけれども、アメリカでこれができてから障害者の就労は伸びたのでしょうか。もし、ご存じでしたら。
○障害者雇用対策課長補佐
 事務局の西川です。実は、そのご質問についてはもう1つの権利条約を検討している研究会でも議論が出まして、そのときにお示しした資料でお答えさせていただくと、結果から言えばADA法という差別禁止法が、制定前と制定後を比べてみて、ADA法によって就業率が高まったという結果の調査はない。数値だけを申し上げますが、ADA法自体は1990年に制定されていますので、90年前か90年以降かということで判断をしますと、まず1989年の障害者の就業率が28.8%で、これは就業年齢のうちの就業率ということで、28.8%が障害者の就業率です。90年以降制定を受けまして、2003年には障害者の就業率20%を切りまして、2009年には16.8%で、実は制定以降障害者の就業率は下がっているということです。それを比較するためには、障害を持たない方の就業率は、同年でどんな状態かを見ますと、1989年の障害を持たない方の就業率は78.2%、2000年以降は実は障害者以外の就業率は80%前後で推移していると調査結果が出ていますので、障害を持たない方の就業率は変わらず、若干増しているけれども、障害をお持ちの方の就業率だけで見れば下がっている。ただ、これがADAによる効果だけがどうかというところまでは言えないのだと思います。以上です。
○今野座長
 いまの説明については、いろいろなシナリオが考えられます。ADA法が出て、障害者の方の労働力率化が進んで、仕事がなくて失業者の状態でいるというのがあり得る。そうすると、分母が大きくなって、分子は変わらないと就業率は落ちてくるというシナリオもあり得るとか、いろいろなシナリオが考えられる。
○障害者雇用対策課長補佐
 座長がおっしゃったようなシナリオも考えられますが、一般的に言われているような合理的配慮というのを、概念として取り入れたのはアメリカのADAが最初ですから、いわゆる企業側にどういった配慮をしないといけないのかという蓄積がない中で配慮をしろということで、それが負担になったのではないかと言われている調査もあると聞いています。
○今野座長
 ほかにいかがでしょうか。
○阿部委員
 確認なのですけれども、それぞれドイツ、フランスの法定雇用率が記してあります。実雇用率は随分低いのだけれども、この辺、日本の場合は法定雇用率はここまでは高くはありません。納付金制度のようなものはドイツ、フランスにもあるのでしょうか。
○障害者雇用対策課長補佐
 納付金制度については、両国ともあると聞いています。雇用率制度の、率の設定の説明を割愛しましたが、ドイツでいえば5%、フランスでは6%と数字上はなっています。ただ、対象者がフランスでは先ほどご説明した戦争犠牲者の遺族を入れていたり、障害年金の受給者をを入れてカウントをしますから、当然、対象者の割合が非常に大きくなります。日本の場合は現在法定雇用率の、いわゆる法定の義務の対象というのは、身体障害と知的障害で手帳をお持ちの方だとして算定をしていますから、その部分は若干違うという点が1つです。もう1つは、ドイツのいちばん下のその他を見ていただくと、例えば教育訓練を受ける、いわゆる実習生とは異なりますが、教育訓練制度を利用して、企業側で訓練を受けるような方も実雇用率にカウントしていいと運用上はなっていたりします。もう1つフランスの場合ですと、先ほど冒頭で納付金は両方あると申し上げましたが、納付金の支払いで、一定程度義務を履行できるという制度になっている。つまり、いわゆる対象となる人が障害者だけではないので、対象となる人の種類が豊富で、高い率を設定する、かつ、運用の段階での実雇用率の認定、算定でも、いろいろな仕組みをもっているというところで、それぞれ各国特徴があると考えています。以上です。
○今野座長
 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、2番目の「障害者雇用促進制度における障害者の範囲について」の議題に入りたいと思います。これは前回も行った議論なのですが、引き続き行っていただければと思います。まず、事務局から資料の説明をお願いします。
○地域就労支援室長補佐
 資料3をご覧ください。前回、論点(1)障害者雇用促進制度における障害者の範囲について議論をいただいたところですが、前回の議論を踏まえて、いま一度それぞれの論点について追加で資料を作成しました。1問目の「障害者雇用促進制度における障害者の範囲についてどのように考えるか。特に、障害者雇用促進法第2条第二号から第六号までに規定する身体障害者、知的障害者、精神障害者以外の障害者についてどのように考えるか」についてです。資料の1頁は前回の資料と同じで、ヒアリングでいただいた意見をまとめたものです。今回追加した部分は2頁目の第4回研究会における主な意見以降です。前回の研究会では、主に次の論点の意見が多く、あまりこのテーマについて意見がありませんでした。田中(伸)委員から、「改正前の障害者基本法では、障害の範囲の定義に障害「があるため」という言葉があり、医学モデルに準拠しているのではないかという話から、改正があった。障害者雇用促進法においても、この「があるため」という言葉をどうしていくのかが論点ではないか」というご意見をいただいたところです。
 この論点(1)については、本日もう一度まとめとして、「障害者雇用促進制度における障害者の範囲について、改正障害者基本法の規定ぶりを踏まえて、障害者雇用促進法における規定についても検討する必要があるものの、範囲そのものとしては、本来対象となるべき人が含まれていると考えてよいか」について、ご意見をお願いしたいと思います。現在の枠組みにおいて、本来対象になるべきなのに、制度の対象から落ちている人がいないかどうか。最終的に法律にどう書くかは結果論になると思うのですが、その前提として、現在の考え方や対象でいいのかどうかについてご意見があれば、よろしくお願いします。
 続いて、4頁です。2つ目の論点ですが、「障害者雇用促進制度における障害者の範囲を就労の困難さに視点をおいて見直すことについてどのように考えるか。(障害者雇用促進法第2条の障害者は就労の困難さに視点が置かれたものとなっているか)」については、前回たくさん意見をいただいたところです。5頁の真ん中から下が、今回追加した第4回研究会における主な意見をまとめたものです。まず田中(伸)委員から、「障害者雇用促進法の障害者の定義は、「長期にわたり」や、「相当な制限」や、「著しく困難」など、評価概念が入っているので、このままにして現場の判断に任せるのか、あるいは基準を定めたり、ガイドラインのようなものを作ったりするのか、その辺りが問題になるのではないか」。野中委員からは、「障害の有無と就労の可否は別の判定のシステムを作るべきである。医者は疾病に関する判断はできるが、就労の可否は判断できない。職業生活能力は職業の専門家が判断すべき。就労は相手によって困る問題が異なるため、工夫しなくてはならない問題も変わってくる」といった意見をいただいています。
 6頁にまいりまして、「職業能力、就労の困難さは、それぞれの段階で困難さが出てくるので、それぞれの側面で総合的に評価していかなければいけない」といった意見をいただいています。また、判定システムはどのような形がいいかという点については、杉山委員から「ヒアリングの意見を見ると、総論としては賛成だが、具体的に判定は非常に難しいという結論で、皆終わっている。そういった状態で、どうやって基準や判定方法を作るのかは相当難しい」。野中委員からは、「障害は背景となるいろいろな事情が影響してくるように複合的な問題であることから、具体的に基準のようなもので規定するのは困るのではないか」。今野座長からは、「経済学では将来どういうことが起こるかわからない不確実性が大きいものや、多様なものである場合、最初にお互い決めるのは難しいので、決めるための手続きを決めていくことが重要である」といったご意見をいただいています。野中委員からは、「判定する基準を作るのか、判定する人を基準にするのかというのは違う。就労の可否や課題を判断する専門的な人、チーム、組織などを法的に保障すれば、その人たちに任せればいいのではないか」。
 一方、杉山委員からは、「そういった手続きを決めることだけでクリアできるものなのか。他国の例も参考にしたい」ということで、先ほど各国の状況については説明をさせていただきました。川崎委員からは、「そういった合意形成のプロセスは非常に大切であるが、就労の困難さは多様性がある中で、医師の意見書などがあればよいが、基準が何もない中でどうやって決めていけるのかという点については、疑問が少しある」といったご意見。八木原委員からは、「就労の困難さは、就職時や継続時などで変化があるため、段階ごとに見直しをして、その度ごとに丁寧なサポートをしていくことが必要である。それを誰が行うかについて、制度で決めるのは難しいのではないか」。田中(伸)委員からは、「その評価を誰がするのか、あるいは環境整備をどのような手続きでやるのかは、定義の規定自体には入り切らないのではないか」といったご意見をいただきました。
 まとめとして、「「就労の困難さ」は個別性が高く、環境や就職の段階によっても異なる多様なものであるが、どのように判定するか。(1)一律の基準を作ることが難しいといった意見がありました。それよりも、判定する手続きや人を決めるほうがよいのではという意見が多かったのですが、それについてどのように考えるか。また、(2)現行では、ハローワークや地域センターにおいて、医師の診断書や意見書に加えて、例えば職歴や生活面での困難さ等を個別に聴取して相談しながら判断をしているが、現行のままでよいか」としましたが、これについて、それぞれ改めてご意見をいただければと思います。説明は以上です。
○今野座長
 ありがとうございました。ご意見やご質問がありましたらお願いします。事務局から論点としては大きく2つ提示されました。
○海東委員
 高島屋の海東です。前回発言もしていませんでしたので、論点の(1)、(2)で意見を述べさせていただければと思っています。(1)については、いま事務局の提案にあったように、含まれていると考えてよいかという部分については、基本的にその方向だと思っています。ただ一方で、曖昧さを排除する、思想を明確化することは当然必要になってくるのだろうなと考えています。
 2点目は、「社会モデル」の考え方についてなのですが、ある意味この考え方は大きな思想の転換を伴う考え方なのかなと受け止めをさせていただいています。考え方そのものや方向性については、私は異論はないのですが、やはり一般の企業の受け止めの部分は、言葉も含めてまだまだ認知されていないのではないかと。やはり、障害者イコールいわゆる医学モデルでいわれている考え方なのではないかと思っています。私も恥ずかしながら、この研究会に参加するということで、初めてこの言葉を聞きました。そういう意味では、まず障害者の捉え方や思想、物の考え方が大きく変わってきている点を、世間一般にきちんと認知されることが大事なのではないかと思っています。当然、本研究会等もその1つになるのかなとは思っています。
 障害者の範囲に関して企業として求める点は、当然のことではあるのですが、基準や手続きが明確かつわかりやすいこと、加えて公平性があるということだろうと思っています。その意味では、前回の議論にあった判定する人を決めることは、一定のわかりやすさ、あるいは公平性につながるものではないかと考えています。A社とB社で異なる場合が出てくるというような話があったかと思うのですが、それについては企業の環境が違うことを踏まえると、当然あり得る話だろうと思っています。これは私の個人的な意見ですが、判定する人が決まっている部分で一定の公平性が担保されるのであれば、それについても私はOKなのかなと考えています。ただ、この部分については、企業によってもいろいろと意見があるのではないかと思います。
 この部分に関しても、大きな思想転換は間違いないことだと思いますので、理解促進は当然重要になってくるのかなと考えています。以上です。
○今野座長
 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
○田川委員
 JSNの田川です。私もこの前一言も発言しなかったので、考えを述べたいと思います。いちばん初めの障害者雇用促進制度における障害者の範囲ですが、基本的にはやはり障害者基本法の範囲ですべきだと思います。ただ、ハローワークの現状でいろいろな相談は受けていただいているので、もう少し文章を明確化させたり、相談のレベルを上げる必要があるとは思うのですが、これはかなりの範囲をカバーしているのではないかという印象を持っています。
 医学モデルがずっと批判されて、確かにそのとおりだと思います。それと、野中先生から医者が就職できるかできないかは判定できない、これもそのとおりだと思います。しかし、やはり入口は医者の診断ではないかと思っています。
 自立支援法の中で障害程度区分のシステムがありました。前に精神科診療所協会で調査をしたときに、精神障害者の障害程度区分、これは知的障害者でもそうですが、いちばん変更する理由になったのは、医師意見書なのです。そのときに面接調査員が1回面接して出てくる情報は非常に少ないです。それまでの経過を含めた医師意見書が、障害程度区分を変更するいちばん多い理由であったというような認識をしています。現状はわからないですが、始まってしばらくしてからの調査です。ですから、医療情報も判定をするのに、結構大きな影響をもつのではないかと思います。
 もう1つは、我々は精神障害者の就労支援をしていますが、企業実習をメインにしています。というのは、面接しただけや作業所の中で作業をしただけでは、その方の力はわからないですね。ですから、企業の現場でどのぐらいできるのか、それをどのように修正していけばその方が就労できて、かつ長く就労できるのかが少し見えてくると思うのです。職業センターやいろいろな所の判定も使わせていただいていますが、やはりいちばん確かなのは企業実習で見極めていくというような認識をしています。就労の困難性の判定は、かなり難しい問題になってくるのではないかと思っています。以上です。
○今野座長
 ありがとうございました。
○阿部委員
 単純なことなのですが、障害者の雇用の促進等に関する法律、そしてそれが障害者基本法改正に即してということは、すごく大事なことだと思います。その中の文言なのですが、障害者基本法は昨年の8月5日に改正しましたが、その前の平成16年の改正時に「継続的に日常生活又は社会生活」となっています。1993年には「長期にわたり」としてあったものが「継続的」になった経緯は、長期にわたりとなると、ある程度の期間を経ないと認定できないと受け取られるからです。今回についての確認ですが、雇用促進法の「長期にわたり」は、「継続的に」となるのが然るべきなのだと思いますので、確認と意見ということで述べさせていただきました。
○野中委員
 就労できるか否かの判定に、医師の意見はやはり必要だというのは、各国の状況からもよくわかると思います。日本でも原則はそうだと思うのですが、私も障害者職業センターの医学アドバイザーを長く務めてきたので、実態がよくわかります。医師といっても、就労については全く無知の人が判定してしまう、診断書が出されてしまうととても大変なわけです。医学アドバイザーという障害者の就労に関する専門家と言われている人も、ほとんど向こうの人たちが多いわけですよね。この問題を何とか。
○今野座長
 向こうというのは、お医者さんという意味ですか。
○野中委員
 お医者さんです。就労についてはほとんど研究も何も、実体験もないし、支援したこともない医者をパートで雇うわけです。ご覧のように、フランスやドイツでも、労働に関する専門性を持った医師が判定をしているのですよね。日本の場合には、医師免許を持ってさえすれば、労働問題を考えていなくても、就労支援の経験がなくても判定の基準にしてしまう、ここが大きな問題だと思います。
○川崎委員
 医師の意見書ですね。意見を就労に関する意見書にするのか、例えば当事者が仕事をしたいというと、大体医師はすべてノーサインです。そんなことをしたら状態が悪くなると。ですから、そういう就労に対する意見書でなく、いわゆる病状、症状が落ち着いているというような診断書的なもの、これで社会生活ができるというところまでの医師の考えとして、医師に就労の有無を考えさせることは、私はかなり無理ではないかと思います。ここに医師の意見書と書きましたが、いわゆる病状の診断書をベースにしてほかの人たちが合議制の下に決めていくような、合議制でどこで落しどころをつくるかも難しいところなのですが、医師に就労のことについて意見を求めるのはちょっと違う気がしています。
○今野座長
 ほかにいかがでしょうか。
○八木原委員
 先ほどの野中委員、川崎委員の意見と同じなのですが、私は医学モデルと社会モデルと全く切り離して考えることはできないと思っています。つまり医学的な判断はもちろん必要ですし、ただ障害のある方が仕事をするといった場合に、最初の入口としては、やはり医者の判断は必要なのだろうなとは思っています。しかし、仕事を展開していく中で、ずっとそれが医学モデルで通っていくかはあり得ないと思うのですね。
 もう1つは、私もハローワークの相談窓口に2年ほどいさせていただいた経験から申しますと、医者の意見書よりも、そこでその方を例えばデイケアや地域の作業所で関わっていらっしゃる専門の担当の方の意見や報告書のほうが、はるかにその方をしっかりと生活支援もされていますし、就労支援もされているところでは、大変貴重な意見です。それを含めて、仕事の紹介をしたりということはあったかと思っています。ですから、障害のある方の取組みは、やはり最初は医学判断は必要だとは思うのですが、その判断をされるときに、私はフランスのように、合議制でしっかりと本人を中心に据えたところでの話ができればいいかなと思います。
○今野座長
 ありがとうございます。各国の現状をお聞きしても、皆さんの意見をお聞きしても、医学モデル対社会モデルで、どちらを取るという話ではないことは明らかですね。きれいに言えば両方きちんとみて、いい方法を考えるということでしょうね。ということは、両睨みのいい方法は何だということを議論することになるのかなと思います。ほかにいかがでしょうか。今日の論点の6頁で、事務局が出した中で、現行の制度でいいかとあります。つまり、現行はハローワークや地域障害者普及センターにおいて、言ってみると現場の最前線で、医学モデルと社会モデルを統合して現実には当たっているということだと思うのですが、この仕掛け自身はどう評価するかが論点として出ていますので、ご意見がありましたらお願いします。
○野中委員
 日本の場合は、都道府県によって格差があるという実態があります。仕組みは全国一律であっても、実情は全然違うところが問題です。就職したいならどこのハローワーク、それも田中さんでなくて、こちらの松下さんに行くと仕事が見つかるが、田中さんは見つからないという個別の差があります。システムがいいかどうかと問われると、それは時と場合によるのです。ケースマネージャーがしっかりしていると仕事が見つかりますし、マネージャーがないと結局は見つからない。マネジメント問題なのですね。
 うまくいっているのはベストプラクティスと考えると比較的うまくいっているという意味では、神奈川の県単事業がありますね。就労したい障害者が申告をすると情報を集合して、ある1日の午前中に専門家の医者もソーシャルワーカー、事業所も集まってきて、その人と面接をして、ではこの方向で就労させましょうとなると、午後には事業所と面接で決まってしまう。合議制が6カ月もかかるようなフランスではなくて、1日、2日、最短で合議ができるそうです。関係者一同が一気に集まってしまうというやり方のほうが、私はうまくいくと思います。現行システムですと手続きを回って歩くのが大変で、結果的には長期になるために利用者は就労を諦めてしまう。しかし、本気のケアマネがつくと一気にやってしまいますから、日本の現行システムでも動くわけです。
 日本のシステムのいいところは、曖昧なために誰でもやれてしまう点です。例えば私は医者ですが、医者が強力に就労を支援すると、実現してしまったりします。ですから、医者が本気で就労させようと思う限り、日本のほうがやりやすいですね。フランスやドイツですと、制度の壁にぶつかって、医者が就労支援などはやれない仕組みになっていますが、日本では、本気になる人がいると就労させられるシステムだと思います。
○障害者雇用対策課長
 障害者雇用対策課の山田です。ハローワークによって差があるという話については、俄にはお答ができないのですが、政府の第一線機関で多くはかなり地方分権されている中で、雇用対策だけが例外的に国直轄の機関になっています。実は、主要先進国でもアメリカを除けば、連邦制国家であっても、雇用対策は基本的に国なり連邦なりの直轄でやっているケースが実際には多いです。であるがゆえに、ハローワーク間の問題や、ハローワークの人の問題などで差が出てきているという点については、何とかしなければとは思います。一方、ハローワークが地方分権されていないがゆえに、制度的には東京と大阪で違うことが起きるようになっています。地域の障害者センターも自治体のものではありません。
 自治体がわりと自由にできるのは、ある意味基本的な雇用率や助成金の多くの部分は、すべて国直轄でやっていて、県が独自にやられている事業は、それに付け加えている事業です。そのため、フリーハンドを持ちやすいというところはあります。逆に県が主体でやることになると、たぶんバラバラになっていくと思います。地方主権の世界では地域間格差、地域間でばらつきが生じるのは当然の帰結であり、住民が自分の望む首長を選べばいい話です。日本の場合は第一線機関が国直轄で雇用対策を一気通貫でやっているということで、ばらつきが生じにくいようになっているとは思います。
○今野座長
 いまの野中委員のご意見は、中央直轄でやっているので、制度的には同じような仕組みになっているにも関わらず、人により、県により、あるいはハローワークによって、一種のサービスのクオリティーの差が大きいという現実はあるというお話ですよね。
○野中委員
 誤解してしまうと問題なので、医者も同じですから、どの医者にかかるかで助かるか助からないかが決まってきますので、そういう差を言っているのです。障害者対策のほうが本当にバラバラなのですが、それに比べると、就労支援については一律だと思います。そこはきちんと述べておかないと誤解を生じてしまいます。
 私自身がハローワークの職員を労働大学校で教えていますから、私自身のプライドの問題にもなるわけで、差が大きいと言っているわけではなくて、実際に差があるということを言っているわけです。
○今野座長
 そういうことがあったとしても、普通に考えれば、例えばほかのいろいろなことに比べると、その差は小さいのかもしれませんが、安定的にハイクオリティーのサービスは提供されたほうがいいわけです。そういうことを実現するために、何か手があれば変えていけばいいわけですよね。野中委員が前から言われている、就労判定のプロをきちんと認定しろという話がありましたが、クオリティーの高いサービスを安定的に提供するための、1つの仕掛けとしてつくったほうがいいのではないかというご提案ではないかと、私は思ってお聞きしているのですが。
○野中委員
 実情は、例えばハローワークの職員や障害者職業センターのカウンセラーや医学アドバイザーなど、それなりのプロは生まれてくるのですが、日本の場合は年度交代で回りますから、結果的には素人同然になってしまうわけです。一応システム上はプロに位置づけられるのですが、3年経つと素人がまた回ってくるわけです。そうすると、そこで実質上は医者にお任せになる。結局診断書どおりになってしまうわけです。
 要するに、全部の責任が医師の診断書に任される、就労に関することを知らない医学モデルに従ってしまうわけです。システム上は、きちんと労働側の意見が入っていることになっているのですが、その人は異動を重ねてきた人なので、結局最終的には診断書どおりになってしまう。この矛盾を何とかしてほしいですね。
○今野座長
 そういうものは、普通は制度に少し欠陥があるというのですが。ということは、野中委員は現行のシステムはそこそこいいが、改善すべき点はあるということですか。
○野中委員
 はい。
○丸物委員
 私も大きく変えるというと、すごく混乱が生じて何を基準に考えていけばいいかが、頭の中にイメージできないのですね。現行制度の中で問題があるとすれば、いまおっしゃった皆さんの話をお伺いしていると、メンバーをもう少し変えてみたら、広げてみては、あるいは判定基準をもう少し広げてみたらということで、修正可能なのではないかと。そうすれば、いままでやってきたものの延長線上で、私ども受け入れるほうにとっては、非常にわかりやすくなると考えているのですね。
 それと、きめ細かにやっていただかないと、なかなか難しい面が出てくると思うのですが、実際問題として年間にどのぐらいの方々を認定しているのか、それが認定している人たちの数と申請してくる人たちの数とのバランスが取れているのかどうかが知りたいところです。
○今野座長
 事務局から一部説明していただきますが、いまのお話の中で、メンバーを変えるというのはどういう意味なのか、もう少し詳しくお話いただけますか。
○丸物委員
 先ほど医師の方でもいろいろな方がいらっしゃると。確かに、私たち雇用をしているサイドで、精神の方でちょっと調子が悪くなると、1回休んで調子を取り戻す、体調を取り戻してほしいと。主治医の意見を求めると、ほとんどが先ほどおっしゃったように長期間休みなさいという形で、すぐそれなのですよ。ですから、主治医が本当にきちんと労働のことをわかっているのかなというのは、非常に疑問です。1回休み出すと、なかなか来られなくなることもありますので、労働ということを考えると、もう少し違う診断が出てもいいのではないかと思います。
 メンバーを増やすというのは、例えば八木原先生のおっしゃった就労支援をしている人たちや就労を受け入れている人たちも、もう少し加わってもいいのではないかと。医師の意見の比重をもう少し軽くというか、ある程度それが。
○今野座長
 適正な水準に。
○丸物委員
 そのように思うのですが。
○障害者雇用対策課長
 いまは、日本はフランスのような合議制の形では決めてはいません。1つには、医師の診断書なり意見書が重視されているのは事実としてあります。あとは、ハローワークの職員が数多の求職者たる障害者の人と、その人たちが就職される先の企業の情報を持っているということで、それと照らし合わせてやっているところはあります。専門性がさらに必要であれば、職業センターに職業評価を求めたり、あるいはその人が過去に就職していた就職先に照会したりということで、ハローワークを中心にしていろいろな人の意見を聞くようなスキームにはなっていると思います。
 おそらく、フランスはフォーマルな合議機関ができているがゆえに、物事が動きにくくなっているのではないかなというのは私の推測です。それをフォーマルな形で設定するのか、あるいは事実上そういった医師以外の意見も幅広く聞いたうえで考えていくか。
 今回の話は、いろいろな障害者政策の打ち方の問題ももちろんあるのですが、まずはハローワークの職業リハビリテーション、障害者雇用促進制度の対象とするかしないかが問題になっていると思います。その意味で、どこまでその判定をすることについて、スキームをどう考えるのかという点で、実際こういう問題が起きるだろうというところから、こう変えていったほうがいいのではないかという話をしていただけると、具体的な話とつながった形で議論ができるかなと思っています。
○今野座長
 これまでの議論は、私の頭の中ではこうなっています。判定システムについては、先ほど言われたように、メンバーを少し考え直す。それから、上手な合議制でいけというのは皆さんの間で何となく合意されている。そうなると、具体的にどういうプレーヤーにするのかや、合議制といってもどういう仕掛けにするのかが問題になる。何となくそういうお話であったのだろうなと思います。
○野中委員
 現場の就労支援をする方々、つまり合議制のメンバーが最も動きやすいように法律制度を作っていただくのが、いちばんいいと思います。決して、日本人の場合はサボッたために結果が悪いのではなくて、努力をしようと思っても、法律のためにそういう行動が取れないのが現場の話です。ですから、精神障害の場合ですと、雇用率に入ってくることによって、精神科医も就労の問題に積極的に関与できるのです。精神障害者は雇用されないとか、してはいけないという法律になっていると、医療モデルがさらに強化されることになってしまいます。現場の就労支援のスタッフが動きやすいような制度に整えていただくとありがたい。
○田中(伸)委員
 田中です。いま、障害の定義規定をどうするかということの議論ではありますが、総合福祉法、総合福祉部会の議論のときも、定義規定をどうするかと、判定をどうするのかは、どうしても切っては切れない部分があり、両方議論するのはとても大事だと私は思っています。やはり、各委員がおっしゃるように、私も合議制というものを作って、個別具体的にどういう支援がいるかを話し合っていって、受入企業の方々にもわかっていただくことが、雇用促進につながるのだろうなと思っています。医師の診断書や意見書は、やはりどうしても客観性を持つものですから、だいぶ重視されるという現実はあると思うのですが、障害の定義の中に例えば高次脳機能障害や難病という方々が入ってくると、診断書を確かに書ける、必ず診断書が出るという部分が少し怪しくなってくると。ちょっと診断書は書けませんという方も出てくるのではないかと思うのです。そういうときは、やはり各障害団体では、障害特性の蓄積がありますので、そういう方々を合議制のメンバーとして入れて、それに応じた就労の在り方や支援の在り方を話し合っていくというようなことがよいのかなと思います。
 また、規定ぶりは厚労省が決めるのだといって怒られそうですが、定め方としては、いまのハローワークなどに必ず合議制を入れるというような規定ぶりではなくて、例えばそういうものを作って話し合うよう努めるとか、そういう書きぶりにすると、柔軟性が出ていいのかなという印象をもっています。
○障害者雇用対策課長
 範囲の話ということで、資料はお出ししていませんが、実際のところどのようにハローワークの中で動いているかという話になりますと、すぐ職業紹介をして決まった所に行けますというような感じの人は、健常者とあまり変わらないサービスです。一方、例えば、10年間ずっと家に引きこもっていた統合失調症の方が、症状も緩和してきたので働いてみるかというようなことですと、すぐ求人を見せて面接という話にもなりません。知的障害者の方もそうですが、チーム支援という形でハローワークや就労支援機関で、また特別支援学校を出たばかりの方であれば、特別支援学校の先生などを入れて、その障害者の方に対してどういう施策を当てていくのかというプログラムを作って、例えば準備訓練のようなものを先にして、実際ハローワークで求人を見せたりする前に、どこかの企業を見てもらうといったようなことをあてていくことを、合議制機関と言えるのかどうかはわかりませんが、そういう形でやっているスキームがあります。それはある意味いまの議論にフィットする話かなと思います。
 チーム支援は社会モデルを意識しているというよりは、現場レベルのニーズでそのようなものができてきたという話ではあります。その人の状況をよく知る支援団体の立場からすれば、こういう支援が必要ではないかと提案があり、ハローワークでは、いまこういったメニューを持っているが、どれをあてるのがいちばん効果的かといったようなことを、それぞれの立場で話をしていただいて、ある1人の障害者に対してどういう施策を最終的に打っていくか。就職したあとも、定着に対してどういうことができるのかというような話をする場として、チーム支援があります。そこは、入口段階では今でも閉ざしていない状態ですので、自分は障害者としてハローワークで対応してほしいといって専門援助窓口にきて、専門援助窓口はあなたはそういう対象ではないから帰ってくださいということはまずないと思います。どのような施策をあてていくかについては、現場の主張を踏まえて、結果として、ある意味関係者の意見をいろいろ聞きつつやっているのが現状です。
○阿部委員
 先ほど野中委員のお話の中で、神奈川県の例で、ケアマネジメントの手法をしっかり取り入れているというお話がありました。ほかの所も、皆そのようにしているものなのか教えて頂ければと思います。また、1つ付け加えておきたいのは、社会福祉士の養成過程で、科目の中に就労支援がいま入りましたので、その役目も出てくるのかと思います。新カリキュラムになって漸く入ったというところですが、そのような連携ができないものなのかも含めて、先ほど野中委員が神奈川県ではケアマネジメント、専門領域の方々等具体的な話の中で、チームアプローチの中で決まっていくというお話をいただきましたので、その辺りについて野中委員から確認というか、神奈川のシステムがよいように思うので、その辺りのことをこの研究会でも学ばせていただきたいと思いましたので、お願いします。
○野中委員
 ケアマネジメントをやると就労可能です。逆に言うと、システムがきちんと整っていると、ケアマネジメントをやっても差が出ません。ですから、システムが非常に不全な状態ですと、ケアマネージャーが頑張ると就労可能なわけです。日本ではケアマネジメントの1人が頑張ると、現在でもかなり就労が可能になるでしょう。しかし、そのケアマネージャーを誰がやるかという話になると、ハローワーク職員がやってもいいですし、職業カウンセラーがやってもいいですし、医療関係者がやってもいいですし、極端に言うと医者がやっても可能ですね。ですから、ケアマネジメントの技能を広げていくことが1つの方法ですし、ケアマネジメントを制度化していくのも悪くはないと思います。いずれにしても、大きな流れを制度や法で定めると、多くの方々がそれを納得できるわけです。いまの状態ですと、誰がやってもケアマネジメントをやればやれるのですが、その法制度がわからないために、そこに乗せないことが問題です。
 もう1つ、どうしても言っておかなくてはいけない話があります。それは、現行制度ですと、例えば精神保健関係ですと、就労させると自分の事業所の収入が減るという問題です。実際はこの利用者は就労可能だと思っても、ハローワークに持っていかない、就労支援のシステムに乗せないという問題があります。乗らないだろうと一方的に思ってしまう問題もあって、結局職員は就労支援制度を使わないのです。決して悪気があるわけではないのですが、日本のシステムは良くすると儲からないのです。成果主義になっていませんから、ずっと抱えているほうが儲かって、就労させると自分の事業所がつぶれることになってしまうので、どんなにいい就労支援制度を作ったとしても、その制度に乗せないという医療や福祉の機関があるわけです。どう制度に乗せるかが本当はとても大事な話です。こんなシステムで流れるということがはっきりしていれば、医療や福祉の機関から乗せやすい。いまのように曖昧なままですと、ずっと抱えてしまうのではないでしょうか。
○今野座長
 だいぶ意見をいただきました。今日はあと2つほど議題を用意していますので、一応この辺で切らせていただきます。今日の議論の内容は、また事務局に整理していただきたいと思います。
 それでは3番目、「障害者の雇用に関する事業所アンケート調査について」を説明していただけますか。
○地域就労支援室長補佐
 資料4-1をご覧ください。障害者の雇用に関する事業所アンケートの調査結果についてご説明します。本調査は研究会の第1回で研究会の進め方について議論をした際に八木原委員から、平成18年度に精神障害者が実雇用率の算定になって以降、精神障害者の雇用を取り巻く状況が変わってきているので、広く事業所にアンケートをすべきではないかというご意見をいただきました。そこで第2回に調査票の内容について皆さまにご議論いただき、その後に調査を実施したものです。
 調査の概要は、資料4-1のとおりです。調査時期は、本年1月から2月にかけて、対象は事業所規模5人以上の雇用保険適用事業所、1,000事業所に対し、調査票を送付して実施しました。調査の回収状況については、432通の返信があり、回収率は43.2%でした。
 調査表は参考資料1に添付しております。調査結果は資料4-2です。大変ボリュームがありますので、これからポイントのみご説明しますが、お時間のあるときにご一読いただければと思います。結果のポイントとしては、資料4-1の2頁の7.調査結果のポイントに5点示しております。まず障害者の雇用状況ですが、回答があった432事業所中、身体障害者については192事業所、知的障害者については66事業所、精神障害者については62事業所、発達障害者については13事業所、難病の方については10事業所で雇用されておりました。平成15年2月に行った調査では精神障害者の雇用についてのみの調査ですが、精神障害者の雇用のあった事業所は当時45事業所(10.8%)から、今回は62事業所(14.4%)となっており、量としても増加していることがわかりました。
 (2)として、採用前に精神障害者の雇用経験のある事業所に雇入れの主なきっかけを聞いたところ、「精神障害者の雇用率が算定の対象になったから」が最も多く、20事業所、4割の事業所で回答がありました。(3)として、今後の精神障害者の雇用の方針を聞いたところ、前回の調査においては雇用に前向きな企業が17.4%だったところ、今回は32.8%雇用に前向きな企業が増加していました。(4)として、精神障害者の職務遂行面・職場適応面の評価を、さまざまな項目で質問しましたが、精神障害者や障害者全般を雇用していない事業所のほうが、「問題あり」と回答した割合が高くなっていました。言い換えると、雇用経験のある方が、むしろ不安がなくなると言いますか、「問題ない」と回答した割合が高くなっていました。(5)として、精神障害者の雇用促進のために期待する支援としては、「外部の支援機関の助言援助などの支援」(47.6%)が多く、続いて「社内での精神障害者の雇用に関する周知や理解促進」(44.5%)が多くなっていました。
 今のポイントを中心に、資料4-2をざっとご説明します。1頁は障害者の雇用の状況です。(1)「事業所規模別の障害者の雇用状況」は、おおむね事業所規模が大きいほど障害者を雇用している割合が高くなっておりました。
 3頁の(3)「各障害者の雇用経験の有無」ですが、障害者が現在いるプラス現在はいないが過去はいた事業所を「雇用経験がある」として集計しております。身体障害者については約5割の事業所で雇用経験がある一方で、知的障害者や精神障害者については、約2割で「雇用経験がある」という回答がありました。
 (4)が先ほどご説明したポイント(1)になりますが、前回の調査では精神障害者を雇用していると回答した事業所が45事業所(10.8%)でしたが、今回は62事業所(14.4%)と増加しておりました。また、表にはしていませんが、採用前精神障害者について、前回は7事業所(1.7%)でしたが、今回は36事業所(8.3%)と大幅に増加しておりました。
 4頁は、精神障害者の雇用経験のある事業所に聞いたところです。1の(1)「採用前精神障害者の雇用のきっかけ」がポイント(2)ですが、雇い入れた主なきっかけを聞いたところ、最も多かったのが「精神障害者が雇用率の算定対象になったから」(42.6%)、続いて「企業の社会的責任を果たすため」、「ハローワークから紹介された」、「必要な仕事ができそうなので雇い入れた」などの回答が多くなっておりました。(2)が採用前精神障害者であることの確認方法で、何によって確認したのか聞いたところ、手帳が最も多く63.8%でした。
 続いて5頁です。精神障害者の雇用管理上の配慮事項です。2段落目ですが、採用前精神障害者と採用後精神障害者の別で見ますと、共に「業務量への配慮」が最も多くなっていました。採用前精神障害者を雇用している事業所においては、次に多かったのが「短時間勤務など勤務時間の配慮」、採用後精神障害者については「配置転換など配置についての配慮」が多くなっておりました。「特段の配慮を行っていない」と回答した事業所は0事業所だったのですが、無回答が6事業所あったので、そこをどう判断するかというところで留意が必要です。
 (2)は精神障害者の職場定着等の協力機関です。表は次の頁にあります。こちらも採用前、採用後を別に見ますと、採用前精神障害者を雇用している事業所においては、「障害者就業・生活支援センターの職員」が最も多く、続いて「地域障害者職業センターの職員」となっておりました。採用後調査精神障害者を雇用している事業所においては、「産業医や産業保健スタッフ」「主治医」の順に回答が多くなっておりました。6頁にありますように、「どこからの支援も受けていない」という事業所は0でしたが、無回答が23事業所ありましたので、留意が必要です。
 (3)では、精神障害者を雇用してよかったことは何ですかと聞いておりますが、最も多かったのが、「精神障害に対する従業員の理解が進んだ」、2番目が「会社としても雇用のノウハウを学ぶことができた」となっております。
 7頁が、精神障害者の職務遂行面・職場適応面の状況について聞いたものです。雇用している事業所は雇用している方について、雇用していない事業所はもしその事業所で雇用したとしたら、ということでイメージを聞いたところです。概ねすべての項目について「問題あり」「個人差が大きい」という回答が多く、約3割ずつでした。あと「わからない」という回答が約2割ありました。
 各項目ごとに見ますと、「基礎体力」や「出退勤等の労働習慣」では問題ないと回答した事業所が多かったのですが、「とっさの事態に対する判断力」や「指示に対する理解力」では、「問題あり」と回答した事業所が、他の項目に比べて多くなっていました。表13ですが、ポイント(4)でご説明したとおり、精神障害者の雇用経験の有無別で見ると、多くの項目について雇用経験のない事業所ほど、「問題あり」と回答した割合が高くなっていました。
 8頁が今後の精神障害者の雇用の方針について聞いたものです。そもそも平成18年に雇用率算定になったことを知っていたか聞いたところ、「知っていた」と回答した事業所が54.9%でした。ここには数字を載せていませんが、56人以上の規模に限定しますと、「知っていた」と回答した事業所は78.0%、約8割ぐらいでした。また、平成18年度以前に精神障害者を雇用していたか聞いたところ、雇用していた事業所は36事業所、8.3%でした。平成18年度以前から精神障害者を雇用していた事業所のほうが、雇用率算定特例をよく知っていたという結果になっています。(2)が精神障害者の雇用方針の変化ですが、「特に雇用に関する方針は変わらない」と回答した事業所が多くなっていました。
 9頁にいきます。それらの項目を全部クロスしますと、積極的に雇用するようになった12事業所のうち、全事業所が精神障害者の雇用率算定を知っていたことがわかりました。
 次に今後の精神障害者の雇用の方針ですが、ポイント(3)になります。「積極的に精神障害者の雇用に取り組みたい」という事業所と、「積極的に取り組みたいとは思わないが、ある程度仕事のできそうな人が応募してくれば雇うかもしれない」というのを合わせて、「雇用に前向きな事業所」としております。そういった事業所が、前回調査では17.4%でしたが、今回は32.8%と、倍ぐらいに伸びておりました。
 10頁がポイント(5)です。精神障害者の雇用を促進するために、どのような支援が必要かを聞いたところ、「雇入れから雇用継続まで一貫した外部の支援機関の助言・援助などの支援」が最も多く、47.6%でした。続いて「社内での精神障害者の雇用に関する周知や理解促進」が、44.5%となっておりました。一方で、「支援制度や情報提供が充実しても、雇いたいと思わない」と回答した事業所は14.6%でした。
 3の(1)は、精神障害者の雇入れや職場復帰にかかる支援制度の認知・利用状況です。雇用している事業所自体がそんなに多くないこともあって、利用したことのあると回答した事業所は少なかったのですが、最も利用されていたのは「特定求職者雇用開発助成金」とジョブコーチ支援でした。
 11頁ですが、現行の支援制度の中で改善したほうがよい点について自由記述で聞いたところ、助成制度に関するものが13件と多く、要件の緩和とか申請をもっと簡単にしてほしいといったものが多くありました。また、制度の情報提供をしてほしいとか、企業への意識啓発の充実を求めるものが5件ほどありました。
 (3)ですが、その他、精神障害者の雇入れや職場復帰の促進、雇用継続のために、期待する支援制度や外部の支援機関に求めること等について自由記述で意見を聞いたところ、30件ほど記述がありました。例えば3段落目にありますように、助成制度に関しては「就労の継続や、欠勤等による企業側のリスクにも配慮した支援制度を作って欲しい」、情報提供や情報公開に関しては「同業種で雇用している企業間の情報交換の場がほしい」、支援機関に関しては「雇用継続のために相談事ができるような機関が必要」、意識啓発に関しては「精神障害者が働く職場の上司や同僚の勉強会の開催がほしい」、その他として、「業種や職種などによって活用の人材が異なるので、十把一絡げのような対応はそもそも困難なので、中小企業にとってメリットが大きくなるような施策を充実させてほしい」といったご意見がありました。
 12頁以降は、発達と難病の方の雇用状況を聞いたものです。前回の調査では行っておりませんので、初めての調査となります。発達障害者を雇用している事業所は13事業所、難病の方を雇用している事業所は10事業所でした。本調査は「把握している場合のみお答えください。本調査のために改めて本人に確認していただく必要はありません」と記載していることもあり、無回答が約3割あったという点も留意が必要です。
 発達障害者の中で多く雇用されていたのが、広汎性発達障害でした。13頁に表がありますが、発達障害者の雇用管理上の配慮として最も多かったのが、「業務量への配慮」と「作業指示の明確化、指示書の視覚化など仕事の理解を助ける工夫」がそれぞれ7割ぐらいありました。
 難病の方の雇用状況にいきます。難病の方のうち、潰瘍性大腸炎、パーキンソン病関連疾患、クローン病の方を雇用している事業所が、それぞれ3事業所ずつありました。雇用上の配慮としては「業務量への配慮」が、ほかの障害と同様に最も多く、続いて「短時間勤務など勤務時間の配慮」及び「休暇を取得する等休養への配慮」が多くなっておりました。
 14頁、今後の発達障害者・難病の方の雇用の方針です。雇用に前向きな事業所はそれぞれ約2割程度でした。精神障害者が大体3割だったので、10%ぐらい低くなっています。また、「わからない」と回答した事業所が、比較的多くなっておりました。発達や難病の方の雇用促進のために期待する支援としては、精神障害者と一緒で、「外部の支援機関の助言・援助などの支援」と、「社内での周知や理解促進」といった項目を選んだ事業所が多くなっておりました。以上です。
○今野座長
 それではご質問がありましたらどうぞ。
○川崎委員
 精神のことをいろいろ調査していただきまして、ありがとうございます。質問します。この場合の精神障害者というのは、手帳保持者ということで調査されたと思うのです。現在は発達障害者も手帳保持者の中に含まれているのですが、別枠で発達障害者を調査されていますね。精神障害者の中に発達障害者が含まれているということは、前段階の精神障害者は、おそらく統合失調症に限られているのではないかという回答ですけれども、発達障害者も精神障害者に含まれての調査だったのでしょうか。
○地域就労支援室長補佐
 今回の精神障害者に関しては、障害者雇用促進法上の精神障害者と定義を合わせており、手帳プラス3疾患(統合失調症、そううつ病、てんかん)のいずれかの疾患の方です。参考資料1の調査票の1頁に記載しております。ハローワークにおける精神障害者の定義も、この定義になっております。発達障害に関しては、例えば知的障害などとの重複の場合もありますが、ここでの定義は、身体障害者・知的障害者・精神障害者に該当する方以外で発達障害の方です。ハローワークなどでは「その他障害」としてカテゴライズされています。
○八木原委員
 事務局にアンケート調査を依頼した者として、本当にありがとうございました。ナカポツセンターに関係する者として、感想とお願いがあります。今回の調査を見ていき、まず雇用率に算定されたということで、精神障害のある方たちの雇用が進んできているというのが、この数値で現れているかなと思います。とてもうれしいことです。それと、企業の方々が大変努力されております。最初、私どもの所には「この仕事があるんだけれどどうかね」という形で紹介してくださったことが、だんだん障害のある方と一緒に仕事をすることによって、障害のある方の能力や作業の適正などを考えながら配置転換をしてくれるということなども、企業の方々が非常に考慮していったことの中に挙げられているかなと思っています。
 それから、私どもはハローワークのほうでは窓口の方というよりも、雇用指導官と未達成企業の方を紹介をいただいて、どのように障害のある方を雇用することができるのかということで、いろいろ話し合いをしました。実際に企業にも出向いて、雇いたいというその部署に午前と午後に分けて全スタッフに障害者雇用、つまり精神障害のある方の雇用についてのいろいろな説明をしたりという形で進めてきました。また、障害のある方にもそこに入っていただいて、いま自分はこうしている、ああしているというお話をして、一緒になって話し合いをする機会を設けたのです。
 そうすることによって、企業のほうからの質問もありましたし、では、どのように進めていこうかということで、企業の方々が社内で努力をしてくださって、働きやすい職場づくりを心がけてくださったと思っています。そういったものがすごくきれいに見えていて、ではチームを組んで、企業の方と障害のある方と支援機関の三者が一緒になって、いろいろと機会あるごとに報告をして回るという形をつくっています。ちょっと手前味噌ですけれども、少しずつそういったものも効果的になってきたのかなと、私は喜んでおります。
 先ほどの議論の中でも合議制云々という話がありましたが、仕事をするのは障害のある方です。ですから障害のある方を中心として、どのサービスを必要としているかということで、その窓口がハローワークであったり、支援機関であったりすると思うのです。そこに野中委員のおっしゃるケアマネージャーがしっかりいてくれれば、いろいろな所とつながってチームワークを組んで、企業との連携が取れてということでは、より効果的な雇用ができるのではないかと、私は今回の調査で期待を持ちました。ありがとうございました。
 そこで一つ、お願いがあります。先ほどの資料4-1の10頁の表18です。「精神障害者の雇用促進のため期待する支援」ということで集計が出されています。これらが従業員数何名数以上という企業の規模によって、どのような期待数が出ているのだろうかというのを知りたいのです。つまり私どもが対象とする所、中小企業の方や200人以上の方たちをやっていくためには、納付金制度との兼合いもあるのです。こういったところで、私たちもどのようなサービスを用意していけばいいかがわかるのではないかと思っております。
 もう1つは、9頁の表17です。同じくこういった雇用方針の中でいろいろな制度や政策はできますけれども、それはあれですね。「不安なので雇いたくない」といった項目も、従業員数の規模によってどうなのか。この2つをお聞きできればと思っています。
○地域就労支援室長補佐
 時間の関係もあり、今回、事業所規模別ではまだ集計していませんでしたが、表17と表18について、次回、事業所規模別で分析してみたいと思います。
○今野座長
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、お帰りになったらゆっくり見ていただくことにいたします。
 それでは最後の議題に入ります。論点の2つ目の「雇用率制度における障害者の範囲等について」です。まず事務局から資料の説明をしていただいて、議論をしたいと思います。
○地域就労支援室長補佐
 資料5をご覧ください。大きな論点の2つ目、「雇用率制度における障害者の範囲等について」です。まず、おさらいとして閣議決定の基本的な方向についてですが、「雇用率制度において、精神障害者の雇用義務化を図ることも含め、積極的差別是正措置として、より実効性のある具体的方策を検討し、平成24年度内を目途に、その結論を得る」ということが研究会の出発地点にもなっているものです。
 (1)「雇用義務制度の趣旨・目的を踏まえ、雇用率制度における障害者の範囲をどのように考えるか」ですが、これからの雇用義務の範囲をご議論をいただく前に、その前提として、そもそも雇用義務の趣旨・目的は何で、それを考える上で留意すべき点は何かについて、ご議論をいただきたいと思います。今回は時間の関係で、この1つ目についてご議論いただければと思います。まず雇用義務制度について、少し説明をさせていただきます。
 もともと雇用率制度というのは、昭和35年の法制定以来、身体障害者を対象に取られてきた措置であり、昭和51年に身体障害者が法的義務になりました。昭和62年及び平成4年の改正によって、知的障害者や重度短時間労働者に対する雇用率適用の特例が設けられ、平成9年の改正によって知的障害者が雇用義務の対象になりました。平成17年の改正では精神障害者に対する実雇用率の特例が設けられ、平成20年の改正では短時間労働者が雇用義務の対象に入ったという歴史的経緯があります。
 雇用義務制度の基本的な考え方ですが、本来、資本主義社会においては事業主に雇入れに関する自由がある中で、積極的に一定の労働者の雇用を強制する障害者の雇用義務制度というのは、ちょっと特殊なものであると言えます。そのため、そういった特殊な雇用義務をかける対象範囲については、次の2点の要素が必要だと思っています。1点目は、障害ゆえに職業生活上の制約を有する障害者の中でも、特に他の労働者に比べて雇用することがより困難な者であって、自由競争を原則とする限り、雇用の場を確保することが進まない方であることです。2つ目としては、雇い入れる事業所にとって、その方に対する雇用管理などのノウハウや支援方法が確立していることです。そうでなければ、事業所への過剰な負担になってしまったり、本人が働きづらかったりして、お互い不幸なことになってしまうので、そういった2つの要素が同時に満たされていることが必要になってくると思います。
 また、こういった雇用の場を提供することは、社会全体の責務であり、事業主の社会連帯の理念に基づいて、各事業主が平等に負担されるべきということから、事業主に対して一律に義務を課すことにしたのが雇用率制度です。雇用率制度の対象がバラバラであると不公平が生じますので、対象の範囲については公平性、公正性が担保されることが必要と考えております。
 続いて、これまでヒアリングでいただいた主な意見をご紹介します。1頁にある改正基本法との関係の中では、日身連の方からは「対象範囲の拡大に伴って、すでに企業に就労している人との数合わせにより、実質的就労の拡大につながらなかったり、これまで職業生活を行っていた人の就労の機会を失うことにならないようにしなければならないといった配慮が必要である」といったご意見をいただきました。職業センターからは「基本法の障害者の範囲に最終的には合わせるべきだけれども、それ以前に相当多くの面でいろいろな整備が必要であり、移行期間や柔軟かつ弾力的な施策の実施が必要ではないか」といったご意見をいただきました。
 また、2頁にあります合理的配慮の関係では、育成会からは「合理的配慮と機会均等のバランスを考えていかなければいけないだろう」といったことや、「優先制度を活用して合理的配慮と機会均等により条件が整った方には、この枠組みから卒業できる方もいるという視点が必要ではないか」といったご意見をいただいております。その他、「雇用義務の対象拡大に伴う雇用率の引上げに関しては、対象範囲が拡大されれば、併せて雇用率も引き上げる必要があるだろう」、「雇用率の上昇に関しては、明確な根拠を基に検討しなければならない」、またみんなネットからは「雇用率の引き上げに際しては、企業側の努力に負うばかりでなく、就労支援機関の充実が図られなくてはならない」といったご意見をいただいております。雇用率カウント・義務化の効果としては、「知的障害者が義務化されて就労支援施策が進み、雇用機会が拡大した」といった効果や、てんかん協会からは「実雇用率のカウントになるようになって、それまでは門前払いになりがちだったてんかんの方が就職する事例が出てきた」といったご意見をいただいております。
 3頁以降は今回は時間の関係で議論に入れませんが、「精神障害者を雇用義務の対象とすることについて、どのように考えるか」、5頁「その他、雇用義務の対象とする場合、その範囲の確認方法はどのように考えるか」、「雇用義務の対象にならない障害者の雇用促進のために、どのような施策が必要か」といったことを、次回以降にご議論いただきたいと思います。その前提として本日は、雇用義務制度の趣旨・目的を踏まえ、そういったご議論をする際に留意すべき点は何かといったところをご議論いただきたいと思っております。
○今野座長
 時間がなくて、2つの論点の全部はできませんので、今日は資料5の(1)だけ、ご議論いただければと思います。私のほうから1ついいですか。先ほど口頭でおっしゃった、企業に雇入れを強制することであるので、対象者については一定の判断基準が必要ということで3点ほどおっしゃいましたよね。1つ目は、職業生活上の制約が非常に大きくて、市場に任せたら決して就職など不可能だということを。もう少し丁寧に言われたと思います。2つ目は、受け入れ側の企業にとってあまりにも負担が大きくなってはいけないので、企業側の雇用ノウハウが整備されていること。3つ目は社会連帯から考えて、企業の皆さんが平等に負担するようにということでした。これはどこかに書いてあるのですか。
○障害者雇用対策課長
 いまの説明を資料で渡さずに口頭で申し上げたのは、フォーマルな形で大上段に構えて、雇用義務制度の範囲についてはこう考えるというような、ズバリのものがなかったためです。一昨年6月の閣議決定に基づいて、障害者雇用制度の法定雇用率の制度について、改めてその範囲を考える上での現在の一定の整理というか、外から聞かれればそのようにお答えしますというものです。本当であればズバリ、そういうものがあるといいのですが。我々としてはそういう考えでいますが、どうお考えになりますかという御質問ということで、とりあえず口頭で申し上げた次第です。
○今野座長
 わかりました。いかがでしょうか。事務局としては先ほど3点ほどに整理していただいたわけですけれども、ここの原則はしっかりしておきたいという話ですよね。
○田中(伸)委員
 先ほどの説明の2点目です。企業のノウハウが整備されていることというようなお話だったのですけれども、私の感覚だと、仮にノウハウが整備されていなくても、これからノウハウを整備していくというような意気込みでないと、受入れ先がすごく限られてしまって、ちょっと狭いのではないかという印象なのです。その辺りは抽象的で恐縮ですが、もう少し説明をいただけないかと思うのです。
○障害者雇用対策課長
 いまの説明の前に、最初に申し上げたものですが、基本的に採用自由の原則というのはいまの日本社会の大原則であって、あえてその例外規定、就職困難者が障害者以外にも数多いる中で、障害者だけに対してこういう強制割当てをかけているということも、念頭にはあります。ただ、当然のことながら、企業のノウハウが完璧に整わない限り始めないという話ではありません。それであれば、わざわざそんなことをする必要もない。ただ雇用管理のノウハウが何パーセントの企業で整ったから、ゴーサインを出しますという話でもないとは思いますが。
 ただ、採用自由の大原則の例外的な措置として、こういったことをする以上、企業に義務づけをする以上、企業が対象となる障害者を雇おうと決断しても、一体その障害者をどういうように管理したらいいのか、大多数の企業がさっぱりわからないという状態では進められないという意味で、雇用管理のノウハウということを立てている次第です。
○今野座長
 いまの論点の2番目の点については、政策的な対応によって、少しは企業側の負担が小さくなっていくということも、ここには全部入っていますよね。ですから固定的に考えられているというよりか、そこは状況によってかなり動くというように考えられていると思うのですが、何かありますか。
○障害者雇用対策課長
 おっしゃるとおりです。公的支援が全くなく、障害者雇用のすべてを企業に任せるということは、たぶん誰も思っていないと思います。そういったものも込みにして、どこまで企業が雇用管理できるようになっているかという意味です。
○今野座長
 いかがでしょうか。ご意見がないと、大体こんなものかなということになるのですが。よろしいでしょうか。
 では、今日は論点2の(1)だけを議論させていただきました。次回以降に(2)以降について、ご議論いただければと思います。それでは時間にもなりましたので、今日はこの辺で終了したいと思います。次回の日程等について、事務局からありますか。
○地域就労支援室長補佐
 先ほどの田中委員のお話の関係で、次回以降の議論に関係してきますが、企業にどのぐらいノウハウが蓄積されたかというようなところも、今回の事業所調査で配慮事項なども聞いて調査しておりますので、こちらもご参考いただきたいと思っております。
 次回の日程は、4月26日の木曜日、10~12時の開催です。場所は未定ですので、決まり次第ご連絡いたします。
○今野座長
 それでは、今日は終わります。ありがとうございました。


(了)

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