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2012年1月24日 第1回平成23年度管理濃度等検討会の議事録

労働基準局安全衛生部労働衛生課環境改善室

○日時

平成24年1月24日(火)10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎5号館共用第6会議室


○議題

インジウム等の管理濃度の検討について等

○議事

○安達副主任 ただいまから、第1回「平成23年度管理濃度等検討会」を開催いたします。座長選出までの間、事務局が進行を務めます。今日は足元が悪い中お集まりいただき、どうもありがとうございます。はじめに、本日お集まりの委員の皆様をご紹介します。資料1-1に参集者名簿がありますので、この順にご紹介いたします。
 まず、慶應義塾大学医学部教授の大前委員です。(独)労働安全衛生総合研究所環境計測管理研究グループ部長の菅野委員です。中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター技術顧問の櫻井委員です。(社)日本作業環境測定協会精度管理センター所長の芹田委員です。麻布大学名誉教授の中明委員です。早稲田大学理工学術院創造理工学部環境資源工学科教授の名古屋委員です。(社)産業安全技術協会参与の松村委員です。産業医科大学産業生態科学研究所教授の明星委員です。東京大学・産業医科大学名誉教授の和田委員です。なお、本日は小西委員はご欠席となっております。
 続いて事務局の出席者を紹介します。まず、環境改善室の亀澤室長です。同じく環境改善室の小西係長です。化学物質評価室の松井室長です。同じく寺島管理官です。私は環境改善室の安達と申します。どうぞよろしくお願いします。開催に当たり、主催者を代表して亀澤室長より、一言ご挨拶申し上げます。
○亀澤環境改善室長 おはようございます。本日は東京にしては珍しく大雪が降りまして、大変足元の悪いところ、また遠い所からお運びいただきまして、本当にありがとうございます。先生方におかれましては大変ご多忙なところ、平成23年度管理濃度等検討会の委員としてご就任いただきましたこと、厚く御礼申し上げたいと思います。ありがとうございます。また、日ごろから労働衛生行政の推進に当たりご指導賜っております。この場を借りまして御礼申し上げます。
 昨年度の本検討会におきましては、管理濃度の見直し、相対濃度計を用いる場合の質量濃度変換係数についてご議論いただき、ご提言をいただきました。その中で管理濃度、測定方法の見直しについては、現在、告示改正の手続をしており、今年度中には改正の予定でございます。質量濃度変換係数につきましては、昨年度末に「ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン」の改正を行っております。
 今年度ご検討いただきますのは、化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価の検討結果により、新しく規制対象となります3物質と、前年度の検討会において引き続き検討することになりました2物質としたいと考えております。働く人の健康障害防止のための対策を確実に行うために、先生方のご専門のお立場からご指導いただければ幸いと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○安達副主任 次に、座長の選出を行います。事務局としては昨年度に引き続き、櫻井先生にお願いしたいと考えておりますが、皆様、いかがでしょうか。
                 (異議なし)
○安達副主任 それでは、これからの議事については座長の櫻井先生にお願いしたいと思います。
○櫻井座長 それでは議事進行を務めますので、どうぞよろしくお願いいたします。まず、配付資料の確認を事務局からお願いします。
○安達副主任 会議次第の裏に資料の一覧がありますので、これを見ながらご確認願います。資料1-1として検討会の参集者名簿、資料1-2として「平成23年度管理濃度等検討会開催要綱」、資料1-3として「管理濃度等の設定・見直しの検討について(案)」、資料1-4として「検討スケジュール(案)」、資料1-5として「検討対象物質の概要」、資料1-6として「化学物質のリスク評価検討会報告書」、資料1-7として「平成23年度化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会報告書」です。資料1-6には別冊として9~11まで、物質ごとの詳細リスク評価書が3点付いております。続いて参考資料1-1として「作業環境測定対象物質数及び管理濃度設定物質数の変遷」、参考資料1-2として「管理濃度・抑制濃度等一覧」、参考資料1-3として「インジウム・スズ酸化物等取扱い作業による健康障害防止対策の徹底について」という通達が付いております。それから、机上配付として松村先生から本日の検討会に当たり、資料の提出がありました。
○櫻井座長 それでは議事に入ります。今日の議題は2つあります。1つ目は、当検討会での検討の進め方についてご議論いただきます。2つ目として、本来の仕事である「インジウム及びその化合物」、「エチルベンゼン」、「コバルト及びその化合物」の以上3物質に関する管理濃度、測定方法、局所排気装置の性能要件の検討をすることになっております。今日は検討会の第1回目ですので、まずは議題1の「当検討会での検討の進め方」について、事務局から説明をお願いします。
○安達副主任 まず、資料1-3をご覧ください。本検討会においては作業環境測定対象物質の管理濃度及び測定方法と、作業環境管理指標として抑制濃度等の検討をすることになっております。資料1-3の3が、本年度における「管理濃度の設定・見直し作業」です。資料1-3については、資料1-3の3枚目に一覧表もありますので、これを横に並べながら見ていただければと思います。3の(1)が「設定の基本方針」です。これはもうよくご承知のとおりだと思います。「管理濃度は、次の値を指針として設定する」ということで、マル1が日本産業衛生学会が勧告している許容濃度、マル2がACGIHが提言しているばく露限界です。こういったものを参照しながら、委員の皆様のご検討を踏まえて決定しています。
 (2)が「管理濃度の設定が必要な物質」です。まず、管理濃度が設定されていない物質が11物質あります。産衛学会又はACGIHが許容濃度を勧告している2物質がありますので、これが検討対象になります。この図でいくと中段のマル1に、「管理濃度を設定していない物質、2物質」とあります。下に(1物質)と書いてあるのは、前年度の報告書で現在、管理濃度を設定する法令等の改正作業に入っておりますので、実質残り1物質が今回の検討対象になるということです。(2)のbに、「化学物質による労働者の健康障害に係るリスク評価の検討結果に基づき新たに作業環境測定の実施が必要とされた3物質」と書いてあります。これは3枚目の図でいくと右上のマル4「リスク評価結果に基づき、順次追加される物質」で、これは本日ご検討いただくインジウムを含む3物質です。
 (3)が「管理濃度の見直しが必要な物質」です。日本産業衛生学会が勧告している許容濃度、又はACGIHが提言しているばく露限界の値と比較して管理濃度の値が高い18物質のうち、前回又は前々回に検討済みの物質を除いた1物質です。3枚目の図でいきますとマル2です。ここに「18物質」とあります。現在5物質が改正予定で、残りが13物質になるのですが、そのうちの1物質ということです。具体的にはベリリウムについて、今年度の検討会で検討いただきます。
 4が「測定基準、局排の性能要件の設定・見直し作業」です。4の(2)に、今年度の検討会でご検討いただくものとして、化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価の検討結果に基づき、新たに作業環境測定の実施が必要とされた3物質については、測定基準及び局排の性能要件をご検討いただく形にしております。
 5に「検討方法及び検討スケジュール」があります。資料1-4をご覧ください。本日が第1回ということで、本日はマル3にあるインジウム等のリスク評価対象物質に係る管理濃度、測定技術、局排の性能要件を検討いただきます。第2回は日程を調整して3月16日を予定しており、ベリリウム及びその化合物、オルト-フタロジニトリルの管理濃度等の検討を行います。そして第1回と第2回を含めた報告書の取りまとめを予定しております。検討の状況によっては、予備日として第3回を開催することとしております。
○櫻井座長 ただいまの説明の内容について、ご質問等がありましたらどうぞ。
                 (意見なし)
○櫻井座長 次に、作業環境測定の対象となる3物質の具体的な検討に入ります。一つひとつ片付けていきたいと思います。まずは「インジウム及びその化合物」について、事務局から資料の説明をお願いします。
○小西係長 資料1-5をご覧ください。3つ並んでいるうちの上段に「インジウム及びその化合物」を記載しております。主な用途としては銀ロウ、銀合金接点、ハンダ、低融点合金、液晶セル電極用、歯科用合金、防食アルミニウム等です。そのほかにリン化インジウムで単結晶の原料とか、酸化インジウムですとその原料等と記載しております。生産・輸入量ですが、生産量はインジウムで70トン、輸入量は215トン、リサイクルで543.6トンとなっております。管理濃度は当検討会でこれから検討となりますので未設定です。ACGIHのTLV-TWAは0.1mg/m3です。産業衛生学会の許容濃度は設定されていないようですが、生物学的許容値は3μg/Lとされております。平成22年度に詳細リスク評価が実施されて、二次評価値が3×10-4mg/m3と設定されております。
 測定については資料1-6のインジウムについての「詳細リスク評価書」の別添4をご覧ください。測定と分析法についての記載があります。別添4の4枚目をご覧いただきますと、メンブランフィルターを用いて流量が毎分10.0L/min、10分のサンプリングで定量下限が3×10-5mg/m3となっております。分析方法はICP-MS法で、誘導結合高周波プラズマ質量分析装置を用いる方法となっております。
 インジウム及びその化合物について、健康影響を考慮に入れますと、管理濃度は、詳細リスク評価の二次評価値の3×10-4mg/m3とすべきところですが、そうしますと設備の密閉化や局所排気装置等の工学的対策では、このレベルを維持することは困難と聞いております。そのため、二次評価値を管理濃度とする場合は、作業環境測定を実施して評価した結果が第3管理区分であっても、作業環境の改善が行えない事業場が多数存在する可能性があります。工学的対策をとれる値を管理濃度とした場合は、第1管理区分となっても呼吸用保護具を装着することになりますし、第1管理区分とは作業環境が良好な状態という従来からの考え方とは異なることになってくるかと思われます。
 こういったことから、議論いただく際の事項としては、管理濃度を定めるか否か、管理濃度を定めるとすれば、どのような値とするか、管理濃度を定めない場合は局所排気装置の性能要件として、制御風速としていいかという点があると考えております。
また、当該物質については「化学物質のリスク評価検討会報告書」と、「平成23年度化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会報告書」においても検討されて、その検討結果を記載した報告書を資料にも付けております。こちらは化学物質評価室から説明をお願いしたいと思います。
○寺島管理官 いま概要をご説明いただいたところですが、資料1-6の「化学物質のリスク評価検討会報告書」と、資料1-7の「平成23年度化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会報告書」をご参照いただきながら、ご説明したいと思います。まずはインジウムです。別冊マル9のリスク評価検討会で議論になった部分について、重点的にご説明申し上げます。
 資料番号1-6のインジウム及びその化合物の詳細リスク評価書2頁からインジウムについての「有害性評価の結果」というのがあり、同資料3頁の中ほどに今回、有害性評価でポイントとなった事項を記載しております。ACGIHの許容濃度として、0.1mg/m3という1969年に設定されたものがありますが、一昨年、日本バイオアッセイ研究センターでの試験結果が出ております。その結果が同頁の下のほうのパラグラフにあります。ACGIHの許容濃度より低い値、0.01、0.03、0.1mg/m3ですが、これらの群において、いずれの投与量からも発がんが認められたという結果が得られております。そういったことから、リスク評価の有害性評価においては同資料5頁にありますように、リスク評価の二次評価値としてACGIHの0.1mg/m3ではなくて、その後ITOの低濃度での発がん及び肺の炎症が指摘されたことから、再設定を行ったということです。その下のほうの○にありますように、二次評価値として3×10-4mg/m3を置きました。
 一方、ばく露調査のほうは、事業場の数というのが重要になってくるかと思うのです。リスク評価におけるばく露実態調査の契機とする「有害物ばく露作業報告」は、合計38事業場からいただいております。ただし、500kg以上取扱いだと38事業場だったのですが、実際にはこれよりも多いと。そういった所を対象として、ばく露が高いと見込まれる所に対してばく露の実態調査を行った結果、リスク評価の結果が出ているわけです。同資料7頁の「リスク評価の詳細」をご覧いただければと思います。詳しく言いますと、1年目に総粉じんで測定し、2年目に吸入性粉じんとして測定しました。同資料8頁の上のほうにありますように、平成22年度に吸入性粉じんとして測定を行った27人の個人ばく露測定の結果は、ここにあるグラフのとおりとなっております。下のほうに線があります。二次評価値として3×10-4mg/m3を置いた場合に、27人中27人全員が評価値を超えるということで、高いばく露にさらされているという状況がわかりました。
 これを統計処理した結果が、同資料7頁の下のほうに書いてあります。吸入性粉じんとして、測定データの最大値が0.817mg/m3です。これらから上側5%の推定値を出したところ0.143mg/m3ということで、一次評価値である3×10-4mg/m3に比べると、実際にかなり高い値が見られているということです。そういったことで結果はまとまっているのですけれども、同資料11頁にありますように、「ばく露要因の解析」ということで、いろいろな作業についてばく露の実態調査をしております。結論として、インジウム化合物は基本的に粉体がばく露していると。金属インジウムを使った作業について、溶融を伴う作業については、やはり酸化インジウムの粉じんが発生するおそれがあるということで、ここが措置の対象として必要だろうという結論をいただいております。そういったことからばく露が高いということと、有害性評価の二次評価値をかなり低いところに置いてという結論を得ております。
 これらを踏まえてマネージメントの観点から、健康障害防止措置検討会でご検討いただきました。その結果が資料1-7にあります。インジウムについては検討シートを用いてご検討いただいているわけですが、管理濃度についてもいろいろご議論いただいたところです。
 管理濃度についてご議論いただいた結果は、資料番号1-7のインジウム及びその化合物に関する「健康障害防止措置の検討シート」5頁の「最適な対策」の表に少し記載しております。特定化学物質として局排や管理濃度をどうするかというご議論をいただいたのですが、仮に二次評価値の3×10-4mg/m3という値を管理濃度と規定した場合、現在の法令では第3管理区分に区分される作業場が非常にたくさん出てくるだろうと。そうすると、すぐに措置しなければならないという現行の法制上、法違反となる事業場が非常にたくさん出てくることもご検討と言いますか、ご考慮いただきました。
 そういった中で「最適な対策」の下から2番目にありますように、管理濃度というのは現実的に管理可能な水準として設定すべきであろう、当面は管理濃度を定めないということもあり得るのではないか、管理濃度についてはこちらの検討会で、また改めて検討すべきであるというご指摘をいただいております。
 他方、同じ表の発散抑制措置の欄にありますように、局所排気装置あるいは全体換気装置等で二次評価値を達成することは困難なことから、呼吸用保護具と組み合わせて、労働者のばく露レベルを3×10-4mg/m3にする、すなわち環境中の濃度が十分下げられないという実態に即して、保護具というもので安全を確保していく対策とすべきという結論をいただいています。
 そういったところを踏まえて、報告書にも同じように記載しています。同じ資料の本文2頁の5「健康障害防止措置の検討結果」の(1)「インジウム及びその化合物」に記載してあるとおりの結論となっております。中ほどに、特化則の対象とし、局排等も義務づけられている管理第2類物質、また作業の記録等が必要となる特別管理物質と同様の措置をとることが必要。それから、二次評価値3×10-4mg/m3を基準として、ばく露レベルをこの数値以下とすることが重要であるが、極めて低い値であることから、発散抑制措置等による場の管理を基本としつつ、呼吸用保護具の着用を義務づけることで、ばく露レベルを基準値以下に確保することが必要である。呼吸用保護具の選定に関しては、防護係数と作業環境測定の結果の気中濃度をもとに、ばく露が基準値以下となるように、適切な呼吸用保護具を選定することが必要であると記載しております。その下には二次発じんの防止等の別途の措置を講ずるということを記載しております。
○櫻井座長 「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」での検討結果から、従来にない方法ではありますが、必ずしも管理濃度を定めなくても、実質的に二次評価値を超えないばく露に抑えるという方向に、この検討会の報告書ではまとめられています。当検討会では管理濃度を定めるかどうか、定めるとしたらどういう数字にするかということが、当面の課題になると思います。いかがでしょうか。ご質問、ご意見等をいただきたいと思います。
 従来のこの検討会でも、実質的にばく露の限界の値が非常に低くなる物質が、ここのところ出てくるのが避けられない状況にあることから、やはり呼吸用保護具を対策の大きな拠点にせざるを得ないのではないかという議論もした記憶があります。この物質がまさにそれになろうかと思います。やはり管理濃度を定めないという方向でいくのかと思いますが、いかがでしょうか。それで特にご異存がなければそうしたいと思います。今までにない結論ではありますが、妥当な方向だと思います。いままでの「化学物質のリスク評価検討会」あるいは「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」でも、同様の議論がされ、同様の結論になっているということもありますし、そういう結論でご異存はありませんか。
○松村委員 質問です。この一次評価値、二次評価値というのは、有害性評価のほうでは、もう定着している定義があるのでしょうか。いわゆる作業環境測定の第一評価値、第二評価値とは全然違うものですよね。あれはただ濃度分布の区分だけですから。これは発がん性にかかわるリスクの程度ですか。
○松井化学物質評価室長 労働基準局のほうのリスク評価は、平成18年度から開始しており、開始時点よりこういう考え方をとっております。物質の選定に当たっては、発がん性が疑われる物質をいままでに選定してきております。発がん性の過剰発がんリスクなりを考慮して一次評価値を設定し、一次評価値以上のものについては、少なくとも行政指導での対策をとっていただくことは必要であろうと。二次評価値がこちらの管理濃度とほぼ同様のレベルの濃度です。その二次評価値を超えるものについては、やはり制度的な措置が必要だろうと考えています。
○櫻井座長 ですから第一評価値というのは、発がん物質、あるいは発がんが疑われる物質以外には出てこないものです。第二評価値と称しているものが、実質的にはばく露限界値ということで、主として産業衛生学会あるいはACGIHの値を採用してきております。ただし、今回の第二次評価値の3×10-4mg/m3というのは、0.3μg/m3ということで、非常に低い数値になっております。それはバイオアッセイ研究センターの動物実験のデータで、LOAELが見当たらないと。LOAELが0.01mg/m3で、それが1×10-2mg/m3ということです。さらに不確実性係数が250でしたか。種差が2.5、LOAELからNOAELへの外挿で10、それと発がんという重大なアウトカムであることを考えて、さらに10ということで250で割っております。
○名古屋委員 管理濃度を決めないというのはよく分かるのです。たぶんリスク評価の初期評価、詳細評価の間に、目標濃度を決めたインジウムの通達が出ていますよね。基本的にそれは生きていて、そこで施行していくという形で考えてよろしいのですか。
○松井化学物質評価室長 管理が必要な物質ですので、今後はできる限り制度に移行していきたいと思っております。それは役所の中の検討でこれから詰めないといけないのですが、必要な部分はできるだけ制度的担保をして、それで仕組めないものは通達でカバーするという形です。一昨年の12月の技術指針はかなり変形して、あるいは廃止してということになるかと思っています。
○名古屋委員 あのときは濃度を測って、マスクを選ぶ形でいきましょうというようになっていたのですけれども、これもなくしてしまうと、結果的に今度はマスクだけでカバーしようというように考えてよろしいのですか。
○松井化学物質評価室長 作業環境測定と呼吸用保護具の選定を組み合わせて、二次評価値を確保していくというあのときの考え方は継続して、それをベースに、できるだけ制度のほうへの移行を検討するということで、少なくとも通達では担保していくという考え方で、いま検討しております。
○櫻井座長 目標濃度は0.01mg/m3になっておりましたね。ですから、それをどういうように活かしていくか。活かすか活かさないかということも、これからの検討課題かと思いますが。
○松井化学物質評価室長 そうですね。呼吸用保護具と作業環境測定結果を組み合わせて、それをできるだけ制度に移行した場合に、現行の指導通達の0.01というのは、だんだん意味が薄れてくるのかなと思います。呼吸用保護具の種類で、非常に濃度が高ければ重装備の呼吸用保護具が必要です。事業者としてはできるだけ軽装備にしたいでしょうから、そこで環境の濃度を低下させるインセンティブを考えると、呼吸用保護具のレベルもありますので、それを考慮して事業者は取り組むことになりますので、1つの目標濃度だけではなくなることが、今のところは想定されます。
○名古屋委員 前は作業環境測定の濃度で判定していたのですけれども、そのときのマスクの選定というのは、ばく露濃度を測って選定するという形に変えるということで考えていいですか。
○松井化学物質評価室長 作業環境測定の結果と組み合わせてということです。
○名古屋委員 それは変わらないのですね。
○松井化学物質評価室長 個人ばく露測定の義務づけというのは、今のところは考えておりません。
○名古屋委員 というのは、私が測定に行ったインジウムの溶解作業場では、管理区分が間違いなく第1管理区分で3×10-4mg/m3をクリアしているのに、ばく露はそれよりも3桁ぐらい高い所も結構あるのです。そうすると、作業環境管理でOKになっても、ばく露濃度が高い事例がある。作業を見ていると、インジウムの場合は比較的インゴットが小さいですから、溶融したものを容器に鋳込むときは呼吸器の領域のところで鋳込むのです。ということは、ばく露を与える発生源と呼吸器がものすごく近いところで鋳込み作業を行っている。そうすると、すごくばく露が高いのです。作業環境管理だけだと、管理区分が1だから安心かというと、とんでもなくイレギュラーする可能性があるので、その辺がどうなのかなと思っているのです。組合せもいいけれども、やはり溶解作業の所はもう少し工夫が要るのではないかという気がしているのです。
○櫻井座長 今のようなことも考慮しながら、一定の期間のうちにそういう方向も結論をお出しになるだろうと思います。
○和田委員 呼吸用保護具で代替えするという考え方だと思うのです。その場合、本当に呼吸用保護具でちゃんとカバーできているかどうかということは、やはり特殊健診の血中濃度などで担保するという考えでしょうか。
○松井化学物質評価室長 健康診断のほうは別途検討していただいております。特殊健康診断は必要になると思われますので、そちらのほうの担保と、あとは事業者に防護係数をチェックしていただくというのを指導することが必要かと思っています。
○櫻井座長 今後ほかの物質についても、そういう措置が必要になることも予想されますので、これは最初のケースになると思います。適切な方向を是非期待したいと思います。ほかに何かありますか。
○中明委員 全体的な流れがよく分からないのです。流れとしては、管理濃度を決めるというのは、いま評価室長が言われたところまで含めて考えるということでいいわけですか。保護具をちゃんと付けなさいと。その保護具は測定結果との組合せということですよね。そうすると和田委員が指摘したように、保護具がちゃんと担保できるのかということです。どれぐらい入っているかは分からない。「それは健康診断のほうですよ」と言っても、健康診断のことも私たちは十分知らないわけですよね。この場には出てきていないわけでしょう。それをベースに「何か決めろ」と言われても決められないですよね。
 名古屋委員が指摘しているように、現場ではいろいろな形で使われていて、ばく露濃度そのものが分からないといったら分からないのです。実際に個人ばく露を測れたとして、それがすごく高い濃度だったと。そうすると、場の評価として、管理濃度を決めてもあまり意味がないことになるわけです。そこで、座長が言うように、管理濃度を決めないでいこうということで、それが1つの方法ですね。しかし、そういう判断でいいのですかということを改善室に聞きたいわけです。
○亀澤環境改善室長 2つのご指摘があったと思うのです。1つは、インジウムについてどう管理するかということです。これについては既に通達で指導もされておりますから、おそらくその流れで、省令に書けるものは書いたり、告示や通達でカバーするという形で進んでいくと思っております。そういう中で、評価室のほうの検討会でまとまっているのは、作業環境測定は義務づけして、まず作業環境の状態を測定した結果、把握するということは決まっております。
 それをこの検討会ではどう評価していくか、評価するときの管理濃度を決めるかどうかというご検討をお願いしているのです。今回のものについては、工学的対策の可能性と健康影響という点から見た場合に、若干ギャップがあります。管理濃度をあるどちらかの値に決めたところで、管理濃度を決めるとしたとたんに評価の義務づけがあって、評価した結果、第1管理区分、第2管理区分、第3管理区分というところで、もう自動的に対策の義務づけが決まっているものですから、それと現場の対応が合いにくいというのが、私どもの事務局としては非常に悩ましい問題です。
 かつ、通達でもありますように、その濃度レベルに応じて最終的に全体で下げられる所は、たぶん少ないわけです。先ほど名古屋委員から、第1管理区分になるものもあるというご指摘がありましたが、二次発じんの問題などもあって、非常に低い濃度までは環境中の濃度は下げられないだろうという問題があるのです。そこについてはその濃度に応じて、呼吸用保護具の選択をすることになっております。非常に低ければ、マスクはなくてもいいと思うのですけれども、どれかのマスクを着用することによって個人ばく露を減らすという対策が流れになっていると認識しております。そういう点で、インジウムについては今回、管理濃度を急いで決めなくても、作業管理測定の結果に応じた対策がとられるのではないかと考えております。
 マスクについて、本当にそれで大丈夫なのかというところは、ほかの物質でも同様です。そこについては、おそらく評価室のほうでまた対策をとられると思います。きちんとした装着が必要で、そういう部分は通達にも書いてあります。適切なマスクを選べば、そのマスクをきちんと使うということも、引き続き併せて指導していくことになろうかと思います。
 もう1つの問題として、全体の物質にかかわる問題ですが、作業環境測定の結果で、ちゃんとそれぞれの作業場の管理状態が評価できるのかということです。作業環境測定だけではなくて、個人ばく露測定をどういうように活用していくかという問題は、長らくご指摘いただいている問題として私どもも考えております。これについても現在、少し調査を進めております。個人ばく露測定のほうがより作業者のばく露の状況というか、作業環境の状況を把握できるということについて、個人ばく露測定の導入も進めていくべきではないかと。そういうご指摘も常にありますので、そういうものをもう少し具体的に進めていきたいと思っているところです。
○中明委員 なぜこのようなことを言ったかというと、実を言うと測るのが大変なのです。この装置でやるとなると、その装置自体、必ずしもそれぞれの測定機関なり何なりにあるということではないのです。そうした場合に、本当に評価できるのかというのが1つあったのです。それと、化学物質調査課と改善室のそこら辺の関係が、それぞれにいろいろやっているから、分からないと言えば分からないのです。
○亀澤環境改善室長 連携は取っております。
○中明委員 それがちゃんと分かるように例を出してくれれば、それはそれでいいのです。ただ、今日のようにここで資料をポーンと出されても。前に送っていただいたけれども、だからといって、それがすんなり行くということでもないのです。
 インジウムについては大前先生の所で、中災防の絡みで実験をして、これは厳しいものだというのは私も承知しているから、管理濃度なら管理濃度をなるべく早く決めて、現場の管理が必要になるとは思うのです。しかしマシーンの問題も含めて、果たしてそれがどこでも評価できるかというのは疑問があるのです。そうかといって、放っておいていいかというのはもちろんありますから、すぐにどうこうできないかもしれないけれども、全体的な流れというか、環境を測って、個人ばく露を測って、なおかつ健康診断をやって、総合的に現場の方の健康状態がどうかを判断しようと。それは元からそういうものだと思うけれども、その中でかなり欠けている部分があったのです。
 例えば、まだ個人ばく露を測れとも言っていないよ、健康診断でこういうことをやりましょうと。一応、産衛のほうでは血清の中のインジウムを測って、3μg/Lでいったらどうかという提案はしているわけです。しかし、そういうものとの絡みで、それこそ化学物質のリスク管理でいったら、そこら辺が必ずしもすんなりポンと胸に落ちるものがないから、数値を決めるにも決められないのです。これは前にやったベリリウムなどの問題でもそうです。工学的な対策もこれ以上はできないし、現場でも困る部分はあるわけです。インジウムもそれに匹敵するものだと思うのです。
 私もできればここで決めたほうがいいと思いますけれども、あまり低い数値を出しても、うまくいかないと思うし、微妙なところだと思います。それには室長が言ったように、もうちょっとデータを集めるしかないのかなという気はします。そういう意味では、櫻井先生がおっしゃるように少し時間を置くとか、当面は決めないでというのは、それはそれでいいと思うのです。その「決めないで」というのがどういう根拠でどうなるかというのは、ちゃんとはっきりしておかないといけないと思って、いま意見を言ったのです。私も、当面は決めなくてもいいと思います。現場のデータを少し集めるというか。38事業場、140いくつかの現場で測ってもらっているのだから。そこら辺をどうするか。あと、現場の人の血清のインジウムはどうかということですね。そこら辺のデータも見たいという気はするのです。
○櫻井座長 現在、人への健康影響を予防するために、ばく露限界値としてどういう数値を採用すべきかということが出来るか出来ないかということですけれども、いかがでしょうか。
○大前委員 先ほどのACGIHの数字は古い数字で、人に対する影響がわからない時代の数字なので、これは外しておきます。実際に起きた健康障害がどのレベルで起きたかというのは実はわからないのです。インジウム自体、肺からのクリアランスが非常に悪いものですから、今の濃度を測って、今の生体影響と比較しても駄目なのです。昔の濃度が今効いてきているのです。これから先は環境濃度、測定濃度がいくつか出てきていますけれども、それを基準にして、例えば血液の中のKL-6などを指標にして対応させるというのは、非常に難しいと思います。ですから、これから産衛で許容濃度を決めるというのは、相当困難だと思います。そういうことがあるものですから、やむを得ず血液の中のインジウムで代用しているのです。それがいちばん鋭敏な指標と思われるKL-6に影響しないレベルで、産衛は3μg/Lというように決めているわけですけれども、残念ながら許容濃度を決めるのは、たぶんできないと私は考えています。
○櫻井座長 ですから、そうすると、それを置いておいて管理濃度を決めるということが、今の段階ではどうも無理があると。
○中明委員 運用は、参考資料1-3の別紙3をちゃんとやれということで、管理濃度は決めないけれども、これでいくよということでいいですね。別紙3ですから、参考資料1-3のいちばん後ろのほうです。「インジウム取扱い作業に対する呼吸用保護具の選定」と書いてあります。要するに、管理濃度は決めないけれども、これで運用しましょうということで考えてよろしいのでしょうか。
○松井化学物質評価室長 はい。それと、今日追加資料として提出していただいている松村委員の資料のいちばん後ろに、JIS規格の指定防護係数がありますので、これと整合を取りながらと考えております。
○櫻井座長 松村先生にいま説明していただきますか。
○松村委員 インジウムに関しては、私は事前にマスクの使用が非常に必須になるということを漏れ伺いました。いま世界的にいちばん新しい防護係数を発表しているのがOSHAで、その法律である29CFR1910.134の2008年版に出ています。この改定のためにOSHAは実際に相当なWorking Protection Factorのデータも集めて、数パーセント以外の人をカバーできるような防護係数を公表しています。また、その防護係数を職場で運用するための必要条件として、職場でどういうトレーニングや計画を作らなければいけないかということも文書化しています。それから、作業場での環境濃度のばく露限界濃度に対する倍率が防護係数の倍率よりも高い所では、使ってはいけないというMaximum Use Concentrationという考えも、2008年版では導入しています。その辺が参考になると思って持ってきました。
 マスクの漏れというのが、日本ではあまり定量的に測られていません。ですから漏れを定量的に測る測定装置もあまり台数が売れていない、頒布されていないという状況です。最近、ようやく保護具アドバイザーという人たちが、そういう装置を持って歩いているという状態ですけれども、中小企業では80万円ぐらいの装置は、なかなか買っていないというのが実情です。
 マスクの漏れにはいろいろな定義があります。全体としてアメリカの漏れというのは、面と顔の間の漏れなのです。フィルターからの漏れは入っていません。みんなHEPAフィルターを付けて測っている状態です。最後の頁にある日本の指定防護係数は、アメリカのANSIの面体と顔の間の漏れ率に、日本の、フィルターを通しての漏れも加味した値です。特に防じんマスクの場合は、捕集効率が80、95、99.9と決まっていますから、漏れとしては20%、5%、0.1%まで認めていると。それを面体と顔との隙間に加算すると、こういう範囲になってしまうのです。インジウムに対しては99.9%という、いちばん上位のフィルターを使うという前提になるでしょうから、防護率の範囲のいちばん高い値で見ていただければいいということになります。
 漏れというのは実際に装着して測るときには、大気じんを対象として測ることが多いのですけれども、その場合はHEPAフィルターを付けなければ、フィルターからの透過と顔との隙間の漏れ、もっと悪いマスクの場合には、部分的な構造の継ぎ目のような所からの漏れというのも考えられます。そういう全体の漏れと、全吸入量の比率を、漏れ率というように定義しております。防護係数はその逆数です。防護係数が10と言えば10分の1、10%漏れているという意味です。
 2頁目にあるOSHAのProtection Factorを見ますと、Quarter maskとHalf maskというのがあります。日本ではQuarter maskとHalf maskは区別していないのです。Quarter maskというのは、本当に鼻と口だけを覆うもので顎が出ています。Half maskというのは、顎の下までかかるようなものです。エラスティック(elastic)でも使い捨て式の防じんマスクでも、アメリカのマスクには非常にガバッと大きなものがあって、顎の下までかかるものがあります。これは使い捨て式のものも、エラスティックで取替え式のフィルターが付いたものも区別していない数値です。日本の場合は半面形というと、大体Quarter maskとHalf maskの中間のような、顎の下辺りまでで合わせるというか、顎まで完全に隠れないものがほとんどです。ですから、顔のちょうどいい所にはまるかどうかは分かりませんけれども、普段はHalf maskと呼んでおります。
 それから、全面形面体でろ過式のものは50です。ただし電動ファンが付くと1,000まで上がると言っています。電動ファンで半面形のものは50です。Helmet/hood形の電動ファン付き呼吸用保護具も、1,000と25の両方が書いてあります。これで1,000以上の防護係数のものを使うときには、ユーザーというか事業主の責任で、メーカーから1,000以上のパフォーマンスがあるというデータを必ず取り寄せて使いなさい、そのデータがない場合は25として扱いなさいという厳しい要求をしています。その辺は個別にちゃんと情報を集めて管理しながらやりなさい、単純にこの分類だけではいかないということです。
 この防護係数の数値を使えば、何千人というデータの中の数パーセントが、これよりも悪い装着になってしまう人がいるというぐらいで、あとは全部カバーできるというバックデータがあって、これもOSHAは公表しています。この数値を現場で頼りにしてマスクを使う場合には、事業主は書いた「プログラム(使用計画)」といって、こういう作業場のこういう所でこのマスクを使うということを、環境濃度も含めて使用計画を書いて、それを継続的にちゃんと守りなさいとなっています。これもOSHAは文書化しているのですけれども、その計画の中では定量的なフィット試験をして、マスクの保守や使用についてのプログラムもきちんと継続しなければ、こういう防護率の数値を使ってはいけないと言っているのです。ですから今回のインジウムの場合も、その辺をきちんと守らせるということが、かなり義務化したような書き方にしていただければいいと私は思います。
 昨年度の原発事故のときにも、相当厳しい状況で、本当は最高級のマスクを使っているはずですけれども、50%漏れていたとか、マスクを掛けていて内部被ばくが高かったというような、皆さんもご存じの状況が報道されているわけですので、そういうことが起き得るのです。ですから、この辺の、この値を維持するための計画とその継続的な実施というのを、きちんと書いていただきたいと思います。Maximum Use Concentrationというのは、今回は管理濃度を決めないということですので、マスクがなくてもいいギリギリの限界濃度の何倍あるかというのを環境測定から割り出して、その倍率よりも高い防護係数のマスクを使いなさいということです。これはJIS T 8150呼吸用保護具の選択、使用及び保守管理方法でも濃度倍率ということで、考え方としては入れています。実際には、ちゃんと測れば、訓練すれば、この防護係数というのは相当安全側の数値ですから、これより高い防護が得られる人が大多数になるはずです。
○櫻井座長 ありがとうございました。非常に参考になる。
○松村委員 OSHAの法律の最新版のマスクに関するところは、あとでメールで付けてお送りすることもできますし、呼吸用保護具の使用のプログラムの内容については、今回間に合わなかったのですが、書くことはできます。
○櫻井座長 その他の追加のご意見がないようでしたら、結論として、管理濃度を定めないということにしたいと思います。次に管理濃度を定めない場合、局所排気装置を当然そこでは使うわけで、局所排気装置の性能要件をどうするかという課題でございます。端的に言えば、制御風速にするのか抑制濃度にするのかということですが、これについてはいかがでしょうか。制御風速の場合は、1m/sというのが第1案だろうなと思いますが。通常1m/sを使っていますね。
○名古屋委員 たまたまかもしれませんが、私の行った工場の溶解作業場には、局排が付いていないのです。そういうところはどうなのですか。要するに炉で溶解しているところは炉から出るので、キャノピーが付いていますけど、そこから汲んでくるときは、重たいからそんなに大きなインゴットを作るわけではなくて、小さいインゴットなのです。そのため、杓子でバケツに空けているだけだから、局排が付いていないのです。だから作業環境測定をしていると管理区分1なのだけれども、すごくばく露量が高いという状況なのです。だから銅合金だとか一般的な溶解とは全然作業が違っていて、ものすごく小さいところで、普通の鍋のようなところに杓子で取って、溶解炉も270℃ぐらいで温度が低いですから、蒸気圧が上がらないから環境中には飛散しないけれどもばく露は高いよということになっています。そこは局所排気装置が付いていないのですよね。そういうときというのは制御風速を決めてもどうなのでしょうかというところがあるように思うのです。特に溶解作業場のところは、局所排気装置の無いところもあるので、局所排気装置を設置するようにした方が良いと思います。
○松村委員 そういうところには、全体換気の方法でも何でも、その作業者のほうが風上になるような気流を作ることが技術的にできないのですか。
○名古屋委員 たまたま今月行ったところでは、すべて窓が開放されていました。
○松井化学物質評価室長 教えていただきたいのですが、そこは技術的に付けようと思えば付けられるのですか。
○名古屋委員 当然付けられます。
○松井化学物質評価室長 正直なところ、我々検討をしている中で、局排を付けないというのはあまり検討していなくて、確かに著しく困難な場合はというのはあるのですが、何かそこに義務づけると技術的にまずいということがあるのですか。
○名古屋委員 ただ付けていないだけです。
○松井化学物質評価室長 義務づけたほうがよいということでよろしいのですか。
○名古屋委員 当然です。だからインジウムの場合は、制御風速ばかりではなくて、先ほど言ったようにばく露が高くなる可能性があるので、やはり抑制濃度と2つかけたほうが安全かなという気がします。どうなのですか。 
○櫻井座長 その場合、抑制濃度の数値が難しくなります。
○名古屋委員 そういうことですね。
○櫻井座長 妥当性のある数値が。
○名古屋委員 いままでは抑制濃度イコール管理濃度でしたから。妥当な数値がないので、局排の性能要件は制御風速でいいのではないですか。
○中明委員 制御風速の場合は、1m/secはかなりの基準ですよね。だから後ろのほうから送り込めばそれはそれで。
○名古屋委員 そんなに蒸気圧が高くないですし、要するに熱気流が強いわけではないですから、たぶん制御風速でインジウムは取れると思います。上昇気流が速い銅合金では約1,100℃とかそういう温度ですが、インジウムは270℃くらいですから、もうほとんどハンダと同じ様に上昇すると思われるので、蒸気圧もそれほど高くないですし、制御風速で大丈夫だと思います。ただ、やはり局排の無い作業場には局排の設置をしてほしいなと思います。
○大前委員 特に融点はもっと低いので、もっと低い温度でやってもできますね。
○名古屋委員 できます。ほとんど家庭のガスコンロと同じような形で溶解していきますから。大型のカレー鍋ぐらいの大きさのところに鍋を置いて溶解していました。
○菅野委員 インジウムの場合は局排を付けることは賛成なのですが、局排だけでは0.3μg/m3までもっていくのは難しいと私は理解していたのですけれど。それでマスクの使用があるわけですよね。制御風速も抑制濃度もこのレベルにすれば安全だという値で従来はあったわけです。けれどもインジウムの場合はこの抑制濃度を決めるとすると実際には不可能になってしまう。制御風速を1mとか2mとか決めても、それで別に何かが保障されるわけではない。
○櫻井座長 保障されるわけではないですね。
○菅野委員 そういうことになりますね。
○櫻井座長 そうです。
○名古屋委員 制御風速を決めておけば環境に漏れにくくなるから、マスクのグレードが下がってくるということで、それはやはり制御風速にかかわってくるのではないですか。
○菅野委員 それはそうなのですが、つまり1,000のところを100にできるとか、そういう効果はあるとは思いますが、それで完全にはならないということで、今までの制御風速と抑制濃度の何ていうか定義というか、それとは全く意味が異なってくるわけです。
○名古屋委員 たぶんそうだと。だから新しい考え方ではないですか。 
○菅野委員 そうすると、その説明を付けずにそういうものを定めるのはまずいのではないですか。
○櫻井座長 でも現実にはいままでも制御風速プラス管理濃度で。それで保障しているとは考えてない。たとえ制御風速が1m/sであっても保障しているとは考えていないと思いますけれども。
○菅野委員 そうですか。それならよろしいのですが。
○名古屋委員 制御風速でオーケーだとしたら、いまのような二重規制がないはずで、本当は取れているはずなのですが、いま2つあるということは、やはりきちんと管理濃度と場の管理をしなさいよとなっているのではないかと思います。
○芹田委員 例えば制御風速1m/sとか2m/sとかは、かなりのスピードになりますが、特に溶解をやっている現場で、その風速というのが作業の妨害になるので、そんなに高速で引けないよというような状況は生まれないのですか。大丈夫なのですか。例えば溶接などですとあまり勢いよく風があると出来が悪くなるというようなことになってしまう。
○名古屋委員 それはたぶん見ているとアルミと同じで、すぐ酸化膜がスーッと出来てきます。最初考えたのはリングフードとかそういうのを付けていると、のろが出来やすくなってきて、不純物が溶湯に入ってくるのかなと思ったのですが、アルミと同じでスッと薄い酸化膜が出来てくるので、意外と溶湯にはのろが入ってこなかったので、できるのではないかと。ほかのものだとやはりのろ掻きをしなければいけないのですが、それほどはないので大丈夫かなということと、容器そのもの自体がそんなに大きくないので、その心配はないのかなと、現場で見たときはそう思いました。
○櫻井座長 やはり1m/sを最低限やってもらう、それ以上にしなければおそらく完全には健康障害を予防できないだろうと思いますが、それはマスクで保障するとしても、環境管理として1m/sというのが妥当ではないかという案になっていると思うのですが、それでよろしいですか。それでは制御風速1m/sということで決めさせていただきます。ありがとうございました。以上でインジウムについては検討課題を終わりました。ありがとうございます。次の検討対象物質は「エチルベンゼン」です。事務局から資料の説明をお願いいたします。
○小西係長 「エチルベンゼン」の概要について説明いたします。資料1-5をご覧ください。3つあるうちの中段にエチルベンゼンの概要が記載してあります。主な用途としましては、スチレン単量体の中間原料、有機合成、溶剤、希釈剤となっています。排出・移動量が1万7,138t、輸出量が2,198t。日本産業衛生学会の許容濃度は50ppm、ACGIHのTLV-TWAは20ppmと勧告されています。2011年度の詳細リスク評価書の中では、二次評価値は20ppmと設定されています。
次に測定についてですが、資料番号1‐6のエチルベンゼンの詳細リスク評価書をご覧ください。こちらに詳細リスク評価書の別添4で、「エチルベンゼン標準測定法」の記載があります。こちらを見ますと、活性炭管を用いまして、流量0.1L/min、サンプリング時間が10分のサンプリングで、定量下限が0.10μg/mlとでています。分析方法はガスクロマトグラフ/質量分析法です。
 エチルベンゼンにつきましては、有機溶剤として規制される予定でして、局所排気装置の性能要件は制御風速となると考えております。当該物質につきましても「化学物質のリスク評価検討会報告書」及び「平成23年度化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会報告書」の記載がございます。これについては化学物質評価室からお願いいたします。
○寺島管理官 資料1-6と資料1-7でご説明します。「詳細リスク評価書」は別冊マル10の3頁からご覧ください。
 いま説明がありましたように有害性評価の二次評価値としては20ppmとなっています。リスク評価の過程におきまして、ACGIHのほうで引き下げが勧告されていまして、50ppmから20ppmに下がっています。この20ppmを基準としまして、ばく露評価との比較を行っています。
 ばく露作業のほうですが、3の(1)にありますように、エチルベンゼンは非常にたくさんの事業場からばく露作業報告が提出されていまして、合計で9,800事業場ということで、そのうちの9,000事業場はガソリンスタンドです。ガソリンスタンドのガソリンの中に1%~2%程度含まれているというものです。ガソリンスタンド以外での用途としましては、一般的なスチレンの原料としての製造であるとか、溶剤、希釈、溶媒としての使用、いわゆる有機溶剤として塗料等に含まれているものがあるということです。こういった所に対して、ばく露の実態調査を行いました。その結果は同資料5頁、6頁の記載のとおりです。
 同資料5頁の「ばく露実態調査の結果」の表をご覧いただきますと、合計で個人ばく露測定を131人に対して行っており、そのうち塗料の溶剤として使う作業が測定数75ということですが、このうち3事業場については造船の塗装作業だったのですが、これが非常にばく露が高く出ております。同資料6頁のグラフをご覧いただきますと、ワースト20のデータが並んでいますが、この20データについてはすべて造船の塗装作業ということになります。
 エチルベンゼンのリスク評価としましては、こういったいろいろな調査の結果を踏まえまして、同資料8頁の5「ばく露要因の解析」の3行目の辺りから記載がありますが、エチルベンゼンを塗料の溶剤として使用し塗装を行う作業場においては、自動塗装であるとか、プッシュプル型換気装置がある所においてはばく露が低かったのですが、そうでないものについては高いばく露が見られた。これは塗装の作業全般においてばく露が高い傾向があり、自動塗装であるとか換気装置があれば、ばく露が低く抑えられるという事情があるということで、結論としましては、塗料の溶剤としてエチルベンゼンを使う作業においては、そのばく露対策が必要であるという結論となっております。なお書きとして、ガソリンスタンドについてはばく露リスクが低い。塗装の作業以外のものについては、特段、リスクが高いという結果はないということです。
 このリスク評価の結果を踏まえまして、資料1-7、「健康障害防止措置に係る検討会」のほうですが、健康障害防止措置の検討シートの3頁の辺りにエチルベンゼンのどういった措置が必要かをご検討いただいたときの表があります。この表に特化則と有機則の現行の規制などを並べてご議論をいただいています。どういった措置が必要かということで、例えば発散抑制措置が必要であるのか、どういった保護具が必要であるのかというところをご議論いただいています。
 同資料4頁の上にありますように、「特化則の適用による影響」のところの「措置導入の可能性」で、特化則や有機則にそのまま当てはめるのではなく、具体的な措置から検討していくことが必要であろうというご指摘に加えまして、有機則対象物質を複数含む混合物、エチルベンゼンをキシレンやトルエンと一緒に規制していった場合には、それぞれの管理濃度を加算して評価することになるというご指摘も受けております。
 この結論におきましては、特化則と有機則のどちらで規制するか、あるいはどういった規定ぶりが必要であろうかということでご議論をいただいておりますが、同資料5頁の(2)「最適な対策」でまとめています。発散抑制措置については、基本的にどれも必要である。下から3行目の作業管理(呼吸用保護具)については、ばく露実態調査で明らかになった高いばく露、船体ブロックの内部等の作業については、呼吸用保護具の選択に留意が必要であるという指摘を受けていますが、その他の要件については必要な規制に応じた形での規則改正ということになっています。
 報告書の本文に戻っていただきまして、同じ資料の本文3頁の(2)「エチルベンゼン」にありますように、結論としては、エチルベンゼンのリスク評価の結果において、塗装作業で高いばく露があった塗装作業の規制のあり方については、発散抑制措置であるとか、それ以外の措置については現行の規制にフィットする形で適宜規定をしていくということで、ここに整理してあるとおりです。有機則の対象として、有機則の第2種有機溶剤と同様の措置を講じることが必要であるということ。それから船体ブロック等の内部のように、発散面が広い等により局排の設置が困難な場所、これは有機則にも現在規定されているような条文ですが、このような所については、全体換気装置の設置とともに、十分な防護性能を持ったマスクの着用を義務づけることが適当と考えられるということ。
 マスクについてですが、吹き付け塗装のように蒸気と塗料の粒子等の粉じんが混在しているような場合については、防じん機能を有する防毒マスクを使用することが適当であるというご指摘をいただいています。そのほか第2種有機溶剤に対する措置に加えまして、特化則か有機則かというご議論の中でも指摘があった点ですが、がん原性というところに着目いたしまして、特化則の特別管理物質と同様の措置、作業の記録、健康診断の記録の30年保管であるとか、配置転換後の特殊健診というようなところを規定することが望ましいとされています。以上です。 ○櫻井座長 ただいまの説明の内容につきまして、ご質問・ご意見等がございましたらどうぞ。
○明星委員 質問なのですが、エチルベンゼンというのは、例えば有機則に入っていないから使われているというような使われ方ではないのですか。
○寺島管理官 工業用キシレンとして塗料の原料とされるようなものについては、特段キシレンを除外するという意図ではなくて、石油化学の製造工程上、どうしてもキシレンの混合物として含まれてきてしまうということです。スチレンのようにそれを原料として使うものについては、もっと純度の高いものを使うそうなのですが、工業用キシレンと言われている塗料の原料においては、製造上の都合ということです。
○櫻井座長 私はちょっと疑問が生じてしまったのですが、作業の記録等、特化則の特別管理物質と同様の措置というのは、いままで有機則にはなかったのですね。第1種とか第2種でもありましたか、トリクロロエチレンとか、結構発がん性の疑われているもの。
○松井化学物質評価室長 おっしゃるように、IARCの区分でいきますと、最大2Aのものも含まれているのですが、先ほどの説明のとおり、特別管理物質のような作業の記録ですとか、その30年保存という規定は今はないです。
○名古屋委員 発がん性ということでリスク評価をしているのに、有機溶剤が特化物の中に入るのはなかなか難しいねということで、有機則に入れましょうということを了解しました。ただし、そうは言っても、発がんでリスク評価をしていきたいので、それは法令化がなかなか難しいですけれども、うまく、できるような方法をお願いしていく必要があるので、そういう形にしましょうというようにまとめたと思っていました。
○櫻井座長 なるほど、わかりました。管理濃度の数値についてはいかがでしょうか。これは20ppmで二次評価し、20ppmを使ってきております。これはACGIHの数値です。どうもエチルベンゼンについてはあまりヒトについての有用なデータがなくて、動物実験のデータを日本産業衛生学会もACGIHも使ってきたようですが。特にご異存なければ20ppmということでよろしいですか。よろしければ、管理濃度は20ppmということにいたします。局所排気装置の性能要件につきましては、有機溶剤ということなので、制御風速ということになります。ものによって違うのでしたね。制御風速はエチルベンゼンだとどれぐらいになるのですか。
○亀澤環境改善室長 省令で既に規定されてございまして、フードの型式によって異なっておりますが、例えば囲い付きフードですと、0.4m/sという制御風速です。
○櫻井座長 それでは制御風速となるということです。試料の採取方法は固体捕集方法、分析方法はガスクロマトグラフ/質量分析法という、いままでの試料のデータからなるかと思いますが、それでよろしいでしょうか。ありがとうございました。
○松村委員 この分析法はそれだけという意味ですか。この20ppmというのはかなり測定しやすい範囲で、直接捕集でも分析できる範囲だと思うのですが、これはその活性炭管法だけという意味ですか。
○小西係長 固体捕集方法ということで書けば、それだけということになってしまいますが、直接捕集方法でも大丈夫ということでしたら、両方併記になります。
○名古屋委員 作業環境測定の流れからすると、直接捕集法はそろそろもうやめましょうよ、固体捕集法に移行しましょうよということになっているので、あえて直接捕集法を入れずに、もう固体捕集法は一般的ですし、逆に直接捕集法は捕集後の保存もなかなか大変ですし、やはり固体捕集法でいきましょうとなって、固体捕集法も特に普通の活性炭ではなく粒状活性炭にしましょうというように管理濃度委員会で決めましたので、できたらその方向でいっていただけたらありがたいなと。
○松村委員 粒状というのは球状ですね。
○名古屋委員 はい、球状のものです。そういう形のほうがいいのかなと思っています。
○櫻井座長 松村先生よろしいでしょうか。 
○松村委員 はい。
○櫻井座長 それでは固体捕集方法、分析方法はガスクロマトグラフ分析法ということで決めさせていただきます。ありがとうございました。
 今日の検討物質の最後は「コバルト及びその化合物」です。事務局から資料の説明をお願いいたします。
○小西係長 コバルトの概要からご説明いたします。資料1-5に、「コバルト及びその化合物」の概要が書いてあります。主な用途としましては、コバルトは磁性材料、特殊鋼、超硬工具、触媒。塩化コバルトは乾湿指示薬、陶磁器の着色剤、メッキ、触媒の製造、保健用医薬品、毒ガスの吸着剤。硫酸コバルトはコバルト塩の原料、蓄電池、メッキ、ペイント・インキの乾燥剤、陶磁器の顔料、触媒となっています。
 生産量はコバルトは1,332t、硫酸コバルトが4,000t。日本産業衛生学会は許容濃度といたしまして、コバルトとして0.05mg/m3を勧告しております。ACGIHはTLV-TWAといたしまして、コバルトとして0.02mg/m3を勧告しています。詳細リスク評価の中では、二次評価値は0.02mg/m3と設定されています。
 測定につきましては、資料番号1‐6に添付のコバルト及びその化合物に係る「詳細リスク評価書」の別添4で測定分析法が記載されております。こちらはメンブランフィルターを用いまして、流量が10.0L/min、サンプリング時間が10分のサンプリングで、採気量が100L以上のときは、定量下限は0.08μg/m3とでています。
 分析方法は黒鉛炉原子吸光法となっています。当該物質につきましても、「化学物質のリスク評価検討会報告書」と「平成23年度化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会報告書」が出ていますので、こちらについて化学物質評価室からお願いいたします。
○寺島管理官 「詳細リスク評価書」の別冊11の「コバルト及びその化合物」をご覧ください。別冊11の3頁の有害性評価とばく露評価からご説明いたします。同頁の(5)「評価値」にありますように、二次評価値が0.02mg/m3ということですが、これに対してばく露評価を行った結果です。事業場の数としましては296事業場ということで、比較的多いほうに当たります。この調査の結果、かなり多種多様な作業が出てきたわけですが、金属としての取扱い作業と、コバルト化合物としての製造取扱い作業と、大きく2つに分けて分析を行っています。
 まず金属のほうですが、同資料5頁から6頁にかけて記載があります。事業場の数としては6事業場に対して調査を行っていますが、中でもコバルトを原料として合金を製造する作業、同6頁の上の表の1行目、コバルトを原料とした合金の製造の作業で比較的高いばく露が見られています。個人ばく露測定の結果は0.875ということで、評価値に比べて40倍ほどということになります。
 一方、コバルト化合物の作業ですが、同資料7頁から8頁にかけまして分析結果が記載してあります。同8頁の表をご覧いただきますと、ばく露が高かった作業としましては、コバルト化合物の製造で最大値で0.144、硫酸コバルトや塩化コバルトといった粉体の化合物を取り扱ったりする作業において高いばく露が見られています。
 その2行下にメッキ作業がありますが、ここでも少し高い値が出ています。これはメッキ液の電極の調整等の作業におきまして、ミスト等のばく露であろうということで判断されています。触媒としての使用がその下にありますが、ここはばく露が比較的低かった作業です。こういったいろいろな作業で高いばく露、低いばく露が見られておりますが、そういったところをまとめまして、いちばん後ろのほうにまとめを記載しております。
 同資料12頁の(2)「判定結果」にありますように、コバルトについては、金属コバルトを扱う作業、コバルト化合物を扱う作業のいずれにつきましても、健康障害防止措置が必要、一部の作業については不要という判断が出ています。
 こういったリスク評価の結果を踏まえまして、健康障害防止措置の検討に入っております。資料1-7、コバルト及びその化合物に係る健康障害防止措置の検討シート6頁の(2)「最適な対策」にありますように、コバルト化合物につきましては、コバルトの金属についても化合物についても、やはり高いばく露が見られたということ。それから一部除外作業があるとしても、少量取扱い等の特段の除外というのは認められず、基本的に全体に通常の措置が必要であろうということで、同6頁の(2)「最適な対策」では、教育、情報提供、発散抑制措置、漏えい防止のところから、作業管理、作業環境測定のところまで、すべて必要であるという結論をいただいております。
 結論としましては、同じ報告書の本文3頁の(3)「コバルト及びその化合物」に記載しています。コバルトについては特化則の対象とし、発散抑制措置等の対象となる管理第2類物質として、作業の記録等が必要となる特別管理物質と同様の措置を講じることが必要であるということ。それから後段では、2次発じん防止のための措置が必要であると記載されています。
 そういうことでコバルトについては0.02mg/m3を評価値としまして、それを超える作業がたくさん認められましたため、基本的に全体の作業を管理第2類物質として規定するという結論としています。以上です。
○櫻井座長 説明が終わりましたので、ご意見・ご質問等がございましたらどうぞ。そうしますと、コバルトの二次評価値0.02mg/m3、この数値はACGIHが1994年に勧告しているもの、それまでの主としてヒトのデータ、現場でのデータからでてきているものですが、二次評価値としてもそれを採用して、ここまでデータが集まってきておりますが、管理濃度として0.02mg/m3とすることについて、特段ご異存がございませんでしょうか。
○中明委員 戻ってしまい申し訳ないのですが、資料番号1‐6の別冊11の6頁と8頁に記載の「ばく露実態調査の結果(1)と(2)」、この数値の問題なのですが、これでいくと個人ばく露測定結果と作業環境測定結果の値が違うのです。違って当たりまえなのだけれども、6頁の「ばく露実態調査の結果(1)」だと、「コバルトを原料とした合金の製造」のところで、個人ばく露に比べてかなりA測定の値のほうが高いのですね。私などは作業環境測定が、要するに場の測定で云々ということが問題になったときに、個人ばく露測定でいかないとまずいのではないかと、だいぶいろいろ食い付いたのだけれども、何か最近はどうも、当然のことですが、作業環境の場の測定のほうにきてしまっているわけですが。これで見ると数値は個人ばく露の測定結果と、作業環境の測定結果というのはだいぶ違うのだなと。8頁の「ばく露実態調査の結果(2)」もそうなのですが、違いますねという感じがするのです。これは本当にこれから個人ばく露測定結果の評価をどうするか、それを管理濃度のほうにどう組み込んでいくかというところで、ちょっと違和感を持つのです。
 先ほどのインジウムのときもそうだけれども、個人ばく露のほうが高くなるよという指摘があったわけです。そうしたときにどんなものかなというのを、この数値を見ていて、ほかのエチルベンゼンなどもそうですが。大体エチルベンゼンなどの場合は実はキシレンのコンタミとして私たちは測っていて、エチルベンゼン単独でというのはあまり私は経験はなかったですが。やはり個人ばく露の測定結果と、作業環境測定がかなり違うというところで、どういうふうに考えていったらいいのかというのがわからない。管理濃度は、アメリカのTLV-TWAと日本の許容濃度でもって決めているので、それはそれでいいのですが、これから評価は評価室でやってもらうような形になると、どの辺まで管理濃度の縛りを考えていっていいのかというのが、全体的にこれからの方向としてどうなるのかなというのは、少し気にはなってきています。評価室からデータは出てきて、それをベースに決めましょうということになるのか、そうすると、評価室のリスク評価でいくと個人ばく露評価でもってどうのこうのという数値が出てきているわけです。そうした場合に、作業環境管理の管理濃度の縛りで環境を良くしましょうという方向と両方併せて考えていけばそれはいいのでしょうけれど、どうもこの辺の関係があまりはっきりしないというか、ピンとこない、どうするのかなというのが先ほどから聞いていて思ってるのです。数値自体はいま先生がおっしゃったようなことで、数値でいいとは思いますが。
○亀澤環境改善室長 先ほど先生がご指摘になりましたこの表の中身ですが、いま現在は規制されていないということもあって、対象の取り方がまちまちなのではないかなと思います。ですから、先ほど名古屋委員からもご指摘がございましたが、局排を付けられる所にいまは付けていないという問題もあったというお話ですし、おそらく現場においていろいろな調査をしたときにも、局排がどれだけ稼動しているか、設置されているのか、そういうことも含めて、この作業環境測定結果の数字というのは、望ましい対策がきちんと取られている場合の濃度とは必ずしもなっていないというようなところも考慮に入れておくべきなのかなと。今の現状を見るとこのような状況であったということなのではないかと私は見ております。
○名古屋委員 ここを見たときには、スポットの平均値がB測定になりますよね。作業環境測定の平均値が0.005です。それとばく露を見たときに、最大値ではなくて、その辺を見ていただけると。あともう1つは、対象作業場のところはいちばん発生量の多いところで測っていますね。一方、ばく露は8時間測っていますので、一応評価値としては測っていないときは0として扱っているという部分があるから、もしかしたら低くなるかもしれないということがあるかもしれません。一応これについてはかなりのデータをもらってやっているので、参考値としてA測定B測定を測ってもらっていますが、たぶんここのところだけ見てくると、最大値とほかのところとリンクしていないのかもしれないとは思います。でも、間違いなくばく露濃度が高いよということはわかっているのです。
○櫻井座長 そうですね。この測定は作業環境測定でも、単位作業場所は調査に行った人が、いちばん高そうなところを選んでいるわけです
○名古屋委員 はい、そうなのです。
○櫻井座長 だからこういう結果に。
○名古屋委員 これだけ取ってみると、なかなか難しいかも。膨大な資料を見ていると、単位作業場所としているところで、スポット測定がどうかとか、個人ばく露がどうだというのは、なかなか難しいかもしれません。
○櫻井座長 一般論として個人ばく露のほうが高く出ることが相対的には多いのだろうなと思いますが、この場合、確かに逆転しておりますが、そういう状況を聞いてみると、もっともだなという気がしております。それにしても個人ばく露でも0.02の倍の数字になって、平均が倍になって、最大値が0.875という、大変高い濃度になっています。
○中明委員 はっきり言って、個人ばく露の測定方法もきちんと決めないとまずいのではないかなという気がしないでもないです。
○名古屋委員 ただ、個人ばく露のときの測定は、一応アンケートをもらって、初期評価のところでいちばん濃度が高くなると思われるところを選んで、それから詳細評価はもっと高いところを選んでいるから、いちばん高いところ高いところを測定しているから、詳細の共通の中ではいちばん高い母集団を選んでいる、そこは間違いないです。ただ、そのときに作業環境とどうリンクしているかは、手元にあるのですが、この資料の中で測っているところがあるのと違うところがありますので何とも言えない。一応、評価の中ではきちっと評価しているなと思っています。 
○松井化学物質評価室長 お話のようにですね、調査の目的が個人ばく露測定の数値と作業環境測定の数値を比較検討するという目的ではなくて、それであればもう少し違う調査の設計というのはあると思いますので、そこの目的が異なるということです。
○中明委員 ただ、数値自体は最終的に管理濃度を決めるときには、そこから出てきた数値を使いましょうと言っているのだから。
○松井化学物質評価室長 私どものところは、個人ばく露測定でばく露の大きかったものは、何らかの措置が必要だということで、リスク評価をしておりますので。
○中明委員 それは現場に返すということではなくて、あなた方がそういうスタンスで数値を見ていますよというだけの話でしょう。
○松井化学物質評価室長 はい。
○菅野委員 個人ばく露の表示が8時間TWAになっています。実際の作業時間を考慮しても本当に差があります。
○中明委員 だからこういうのは当たりまえの話なのです。
○櫻井座長 いずれにいたしましても、このデータは、何らかの規制的な措置が必要であるということの根拠として十分なデータであると考えられますので、その場合、それでは管理濃度をどうするかというと、これはやはりACGIHの数値を、この際採用するという判断でいいかどうかということになるのですが、それでよろしいですか。
               (異議なし)
○櫻井座長 それでは、そのように決めさせていただきまして、さらに抑制濃度も管理濃度と同じ数字ということでよろしいでしょうか。特にご異存がございませんので、以上、コバルトにつきましても、管理濃度と抑制濃度について0.02mg/m3とすることに決めさせていただきます。コバルトの試料採取方法はろ過捕集方法、分析方法は原子吸光分析方法とすることでよろしいですか。
○名古屋委員 これは分析は同等以上では駄目なのですか。
○櫻井座長 原子吸光だけにしてしまうと、ICPは使えないのかな。
○名古屋委員 原子吸光だけに固定してしまうと、ほかが使えなくなってしまうのは嫌だなと。金属はもっと精度の高いものがたくさんあるので、同等以上がついてくれると有難いなと。
○櫻井座長 これは修正しますか。
○名古屋委員 これはたぶん出てきたときの、中災防さんが測定したときはこういう測定でやっていたのですよということだったのですが、まあ、ほかにもまたあったらそれを阻害しない方向で設定してもらえると有難いなと。
○亀澤環境改善室長 ここに書いてある、いまご指摘をいただいたものと、それから同等以上のものということで。
○櫻井座長 及び同等以上のものという表現で。
○明星委員 これは総粉じんですか。
○松井化学物質評価室長 ACGIHのほうがレスピラブルで設定しておりませんので、そちらは総粉じんです。感作性もございますので、対象は総粉じんです。
○櫻井座長 そのほか何かご意見・ご発言がございますか。ないようですので、以上、第1回管理濃度等検討会を終了とさせていただきます。事務局から何か事務連絡がありますか。
○安達副主任 本日はどうもありがとうございました。次回の開催日ですが、日程調整の結果、3月16日(金曜日)15時から17時を予定しております。詳細についてはまた別途お知らせをさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○櫻井座長 では、どうもありがとうございました。


(了)

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