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2011年6月13日 第3回水道水における放射性物質対策検討会議事録

健康局水道課

○日時

平成23年6月13日(月)10:00~12:00


○場所

三田共用会議所C・D・E会議室


○出席者

出席委員

浅見委員、大原委員、欅田委員、朝長委員、古米委員、眞柄委員、桝本委員、森口委員

○議事

○松田室長補佐
 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「第3回水道水における放射性物質対策検討会を開催します。
 本日は、御多忙のところ御参集いただき、厚く御礼申し上げます。
 議事に先立ちまして、大塚厚生労働副大臣よりごあいさつを申し上げます。

○大塚副大臣
 おはようございます。本日も大変お忙しい中、御参加いただきましてありがとうございます。
 今日は、中間取りまとめに向かっての御議論と承っておりますので、また御指導のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○松田室長補佐
 それでは、マスコミの方におかれましては、恐縮ですが、カメラ撮りは会議の冒頭のみとさせていただいておりますので、御協力をお願いいたします。
 それでは、事務局の方から配付資料の確認をさせていただきます。
 お手元の議事次第を見ていただければと思いますが、配付資料として、資料1「水道水における放射性物質対策中間取りまとめ(未定稿)」。この資料は、本体の資料1、未定稿のものと、別冊で参考資料をつけております。また、中間取りまとめ(未定稿)の中の修正の差し替え版ということで、1枚物、図1-6と書かれたものがございます。
 あと、参考資料1「関係都県における河川流域毎の浄水場の水道水検査結果」と、参考資料2「水道水質管理計画に基づく水質監視地点」を一組でセットとしておりますので、もしこの資料がなければ、事務局の方にお申し付けいただければと思います。

○松本管理官
 本日は、8名の構成員の方全員に御出席いただいております。
 それでは、これ以降は眞柄座長に議事の進行をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○眞柄座長
 それでは、議事に入りたいと思います。
 まず1つ目は、中間まとめがあるわけですが、それの参考資料として、古米先生が久慈川のデータを用いられまして、流域内の放射性物質の流出挙動について検討されたということでございますので、改めて御報告いただきたいと思います。お願いします。

○松田室長補佐
 事務局から補足でございますが、古米構成員の説明資料につきましては、参考資料の37ページを開いていただきまして、39ページ以降に資料をおつけしております。よろしくお願いいたします。

○古米構成員
 それでは、説明させていただきたいと思います。前回は、土地利用別にどう流出するのかという話がございましたが、今回は具体的に久慈川を対象にした解析事例を紹介したいと思います。
 もう一点は、前回、大原先生の方から3月15日以降の時空間分布の放射線降下量が提供されましたので、それも踏まえて、それを利用させていただく形で解析をさせていただきました。
 これが全体の目次です。具体的に久慈川で流出計算及び放射性物質の流出状態を計算したということでございます。
 放射性物質の流出解析モデル、基本的には構造を変えておりませんけれども、前回、御紹介した土地利用別と若干違う点は、放射性ヨウ素の計算結果がかなり高い値が出てきておりましたので、土壌浸透中である程度除去されるだろう。吸着されない形で計算しましたが、今回はβという数値を、ここに書いてありますように9割方は取れるとして設定しました。
 この数値自身も、従来言われている土壌とヨウ素の分配と係数からすると、非常にくっつきにくい係数値のままです。実は、0.01とか、もっと小さくしてもいいんですけれども、基本的には危険側の結果が出るように計算するという考え方で、前回0.9という非常に吸着しにくい数値を使うと濃度自体も高くなりすぎたので、0.1まで落として検討したということでございます。そこが違う点でございます。
 実際上、対象としましたのは久慈川の河川で、この川自身はダムの影響を受けておりませんので、流出計算の検証がしやすいということ。同時に、福島原発から約100km以上離れておりますので、ある程度離れたところでどうなるのかということを見る。ここに書いてありますように、土地利用は山地が多くて、市街地は5%と、比較的下流側にしかございませんが、東海村と日立市の水源になっているということでございます。
 ここに書いてありますように、国土交通省で河川の流量観測しておりますので、暫定値ではございますけれども、流量がちゃんと計算できるかどうかをモデルの中で確認した上、取水している地点の放射性物質濃度を計算するということです。
 1から21と、細かい数字がございますけれども、各小流域を一つのユニットとして、その土地利用を考えながら、降下量及び水の流れる過程を考えていくということです。ある程度土地利用の分布とか降下量の分布も、この21の小流域単位で評価する。更に、四角で示した部分は流下方向の河道を示すということで、全部で17の河道区分を考えたということでございます。
 こういったモデル自身は、前々回からお話しているように、国土交通省で考えられているCommon MPという水文流出モデルのプラットフォームが今、立ち上がっておりますので、その中で共有するような形で御提示できるように作業を進めさせていただいているということでございます。
 ここから、具体的に計算結果に入ります。
 まずは、放射性物質の流出ではなくて、流量がちゃんとモデル上で計算できているかどうかということで、先ほどの流量が観測されている地点の実測値と計算値を比較・検討したということです。3月14日ぐらいから計算をスタートして、4月下旬までの流量データをいただきましたので、その期間内の大きな雨から小さな雨まで含めて、このようなタンクモデルで流出計算はある程度表現できているということです。
 実は、もっと時間をかければ更にチューニングができるんですけれども、限りないので、とにかく本委員会に間に合わせるように最大限努力させていただいた。この程度には合っているということを御理解ください。
 このように流出計算ができましたので、次は大気からの降下量を条件として与え、更に雨がどう降ったかという条件を与えると、放射性物質の流出挙動を解析できるということになります。
 前回、大原先生の方から計算いただいた降下量の結果がございましたので、このような形で6キログリッドのデータを御提供いただきました。そして、放射性ヨウ素と放射性セシウム、両方ですが、放射性セシウムに関しては137だけの提供でしたので、実際上、放出量は137と134は同じだろうということで、2倍量の降下量を計算上では用いました。
 ここに書いてありますのは、実測値と大原先生の計算結果自身が1日ずれているようなところもございますけれども、とにかく観測データのない時期から、通しで大気モデルの計算結果自身を入力して計算していただきました。右側にあるように、赤いところが高濃度、23日の分布ですけれども、広い範囲で降下しているという条件で久慈川を解析したということになります。
 これが降下量全体の様子でございます。ヨウ素131の方は総量で、ここに書いてある数値で、前回から申し上げているように、降ったものの形態ではなくて、流出するときに溶存態で出るものと付着した形で流出するものがあるだろうということで、大胆に9対1、放射性セシウムの方は逆に1対9と、総量に対して、その比率を与えて存在形態を考慮して計算しております。
 下のピンクのものが、それぞれ降下量がこのように出てくるということです。ざっと見ていただくと、放射性ヨウ素濃度の方が1桁大きいことも、おわかりいただけるかと思います。
 ここからが実際上の放射性物質の流出計算結果です。今回は、一番下に書いてありますように、濃度計算をさせていただきました。流量もある程度合っておりますので、あとは流出量がわかると、そのまま割り算をすることによって濃度計算ができることになります。魅力的なのは、水道事業体で測定開始されている3月20何日以前である3月16日という最初の放出があった以降も含めて、降下量が与えられていますので濃度計算できているということになります。
 ここに載っているのが大気からの降下量で、ピンクの濃いものが懸濁態として流出するもので、白っぽいところが溶存態で、このように条件として与えています。図の上の方に降雨量を示しているが、大きく分けて4月上旬まで4回の雨が降っているという計算区間を解析の対象といたしました。
 真ん中が流量変化です。そして、一番下が最終的に計算できた取水点における濃度でございます。
 最初の降下量があった後、小さい雨ですけれども、この程度は出ていただろうと計算されます。2回目も雨が降っておりますけれども、この降下量がここにずれて出てきておりますので、この降下量があった後の雨によって、このように流出してくるということでございます。予想されたのは水道原水で約800~1,000 Bq/kgまで上がるだろうという計算結果ですが、実際上は、浄水後の水道水の中では200程度ということです。
 あくまでもこの結果というのは、水道水の予測をしているわけではなくて、河川の取水した原水の予測ですので、それよりも低い値が水道水では検出されているものと思われます。逆算しながら、この程度原水だっただろうという数値を見ながら、先ほどヨウ素が土壌中でどのぐらい吸着されているかということを推定しながら、この計算結果を得たと御理解いただければと思います。
 次に、放射性セシウムでございます。
 同じように、同じタイミングで出ておりますけれども、2回目は放射性セシウムの降下量は非常に少なくて、仮定したとおり、懸濁態で流出するものが低くなっているだろうという結果でございます。
 したがって、最初は大きな降下量に伴って、小さな雨でも若干流出していただろうと計算結果が出てきますけれども、2回目以降は降下量も少なく、強い雨が降っておりませんので、そのまま出ていく。ただし、3月31日の強い降雨強度の雨については、若干出ていただろう。ただし、それは溶存態ではなくて懸濁態で出ているので、結果として浄水場で除去され、水道水では検出されていないと理解できそうな計算結果が出てまいりました。
 幾つかの仮定が出ておりますけれども、このような形で放射性ヨウ素と放射性セシウムがそれぞれどういう挙動をするのかということは、こういったモデルで評価することによって、かなり理解が深まったと私は認識しております。
 もう一つ、今回の解析結果は、流出したものが上流から下流まで至るという、河道のモデルも組み合わせた、流域全体の流出現象を再現するためのモデルになっておりますので、河道流下方向の状況のモデル計算結果について説明させていただきたいと思います。
 一番上に載っているのは雨の情報です。2番目は、放射性ヨウ素の降下量です。そして、1、2、3と3段目ございますけれども、上流部の河道の4番と中流部の河道の10番と取水点である河道の17番、全部で17区分しておりますので、上・中・下流の代表点をとって、そこでどのような濃度が検出されていただろうかという計算結果でございます。
 まずは上流部ですが、このように降下量、最初の雨でこのようなピークが出てまいります。同じように、こちらの降下量に相応する形で、雨とともに流出してくる。比較的降下量のパターンに類似した形で、溶存態のヨウ素が出てきていたんだろうと想定されます。
 更に中流部におきましては、中流域にある市街地とか山林といったところから、まず雨が降ることによって出てくるピークと、上流側から時間遅れで出てくる2つのピークが同じような形で連なって出てくる。それは同じように、2回目の雨についても上流側の赤い丸で囲われたところの影響と、そこの流域付近で出てくるものが合わさった形で流出する濃度として出てくるということです。
 濃度レベルは、上流側の方が1,000 Bq/kg、こちらの方は800 Bq/kg程度ですので、山地が多いので、流量がどんどんきれいな水が入れば入るほど薄まってくるという傾向も、この結果では読み取ることができます。
 最終的に下流に取水点がございますので、そこに至る場合にどうなるのかというと、更に下流においても同じように市街地がありますので、雨が降ることによって、すぐ出てくる、その周辺の流出形態と、中流域辺りからのピークと、更に上流からのピークが薄まった形で到達するものが合算した形であらわれる。第2回目の雨も同じような形になります。
 最終的にこの図から見てとれるのは、降下量が流域全体で約1,500 km2、流下距離が100何kmありますので、その流下過程において、まず雨が降った後でも、数日は溶存態ヨウ素が地下を経由して、あるいは中間流出によって、しばらくは流出してくるということを考えられます。具体的な雨が降った後のモニタリングのあり方として、どの程度まで注意しておかなければいけないのかということは、大まかに理解することができますし、上流側から下流側のそれぞれの流下過程というものを、自分たちの水源の流域の特性を理解した上で考えておくことは非常に重要になるかと思います。
 今回の実流域における解析結果を踏まえて、3つほど整理させていただきました。今回は、河川流量が再現できる流出タンクモデルと、放射性物質を対象とした物質の流出タンクモデルを組み合わせて解析しましたが、このように対象流域において大気モデルの時空間データを与えて、取水点における濃度算定あるいは流下方法の変化というものをモデルで評価することが可能になってきたということでございます。
 2番目は、放射性物質の存在形態。前回も申し上げましたけれども、それに加えて、土壌にどの程度吸着するのかということによって、濃度レベルが大きく変わってまいりますので、それを今回の危険側の係数を採用したつもりですけれども、大まかに表現できるような設定ができただろうと思いますので、これによってセシウム及びヨウ素というものが、今後、放出されることがあれば、ある程度流出挙動というものを事前に予測しておくことが可能であろうと思っております。
 3番目でございます。今回は3月15日以降の流出解析をしておりますので、実は放出直後の降雨、3.数mmの雨でございましたけれども、実測値はございませんが、きっとある程度放射性ヨウ素というものは出てきていたんだろうということが想定されました。しかしながら、放射性ヨウ素は出てきているようですが、放射性セシウムに関しては、もともとの放出量が少ないことと、土壌に吸着しやすい特性から、実際には出てきていなかっただろう、少なくともその流出量は小さかったと判断される結果が出ておりました。
 以上、今回は具体的な流域で、水道水の実測値を踏まえながら、どの程度の減衰であったかという解析がある程度まとまってきておりますので、こういった形の解析を利用しながら、挙動の理解とモニタリングのあり方を検討する価値はあろうかと思います。
 以上が御報告でございます。

○眞柄座長
 ありがとうございました。それでは、先生方から御質問や御意見がございましたら、どうぞお出しください。

○大塚副大臣
 また素人の私から。
 これは、雨量はパーアワーなんですけれども、解析の結果というのは時間単位で出ているのか、日付単位で出ているのか、これはどう理解したらいいんでしょうか。

○古米構成員
 降雨量の方は、10分単位で降雨データはありますが、今回の解析については1時間単位で与えています。ただし、流出挙動を計算するのは、実際上は10秒間隔で細かく計算して、それを代表値として図をかいているということになります。

○大塚副大臣
 ということは、43、44辺りの濃度を解析したデータのグラフも、そういう10分単位とかで出ているという理解でいいんですか。

○古米構成員
 事実上はそうです。細かく計算しているということです。

○大塚副大臣
 わかりました。ありがとうございます。

○眞柄座長
 ほかにございますか。はい。

○桝本構成員
 ちょっと教えていただきたいんですけれども、9ページの3.5mmの降雨というのは、非常に局所的な降雨なんでしょうか。私どもが住んでおりますところでは、さわやかな風が吹いておりましたので、降雨はなかったんですが、どの辺に3.5mmがあったということで計算されているんでしょうか。

○古米構成員
 結構難しいんですが、ここに書いたのは流域平均雨量です。実際上は、24の小流域を考えているので、それぞれに降雨量を与えています。ただ、この絵の中にすべてを書き切れなかったので、複数の観測点の降雨量を面積で重みづけして全体の面積で割った平均雨量が、この形で出てきているということです。3.5 mmというのは、全体に均等に降っているわけじゃなくて、ほとんど降っていないところがあったものと思います。
 具体的には、観測点はこの中に4つございましたので、それを配分しているということです。特に最後の降雨の9 mmは、実際強い雨が降っているんですけれども、この9mmも、どこか1か所か数か所、非常に強い雨が降って、残りは降っていないパターンです。ですので、どこか非常に強い雨が降ると懸濁態が出てくることになります。図表作成上の制約で申しわけないですけれども、流域平均で表示させていただいていることを御理解ください。

○眞柄座長
 どうぞ。

○大原構成員
 貴重な資料、ありがとうございます。大気モデルの視点からちょっと御質問させていただきたいんですが、2つあります。
 1つは、降雨量なんですが、今、御説明いただきましたが、7ページ目の図の降雨量で、例えば3月20日に雨が降っていますね。左の。一方、9枚目、時間変化の図の一番上、水色を見ますと、20日に雨が降っていないんです。多分、対象地域が違うのかなと思いますが、いかがでしょうかというのが1つ。
 もう一つは、先ほどの7枚目のスライドで大気モデルの沈着量と実測値の比較結果がありますが、ここで使われているモデルの結果は、流域平均でしょうか。そうではない。実測値は、多分ひたちなかですね。なので、比較する場合にどういう比較をされたのかということをお聞きしたいんですが。

○古米構成員
 先ほどの雨のデータについての御質問に深く関わっておりまして、実はここは流域番号としては1か所です。できるだけひたちなかに近いところの解析結果を選ばせていただいて、そこの雨のデータを示しております。実はよく見ていただくと、20日にも小さなピークがあるのですが、そこだけ降っているものですから、流域平均すると小さくなっている。先ほどの御質問のように雨の降り方は流域全体で均一じゃないので、逆にこういった分布を考えたモデルで解析すると、より現実的な評価ができることになります。
 実測値とずれているというのを説明するのは非常に難しいのですが、降下量実測値のあったひたちなかに近い、久慈川流域における解析結果を示せていただいたということです。厳密には、比較対照とすべきでなかったかとも思います。前回の降下量はひたちなかを入れて流出計算していて、前回の結果と今回がなぜ違うのかなと気付いたときに、降下量をどのように与えるかが重要であり、放射性ヨウ素の解析結果にはかなり影響するという確認もできました。そこで、このような比較の図を示させていただきました。

○大原構成員
 ありがとうございます。

○眞柄座長
 ほかに。では、先生。

○森口構成員
 2点ありまして、1点目は質問というよりコメントで、今、議論されていたとおり、降下量、雨の降り方の地域的なパターンに相当左右されているように思いますので、今回、久慈川の例が示されましたけれども、7ページ、これは大原委員の計算結果かと思いますが、これを拝見していますと、ある時期には関東の比較的南の方でも、特定のところは降っているように思いますので、こういったところももしデータが可能であれば解析もしてくると、いろいろなことがより正確にわかってくるのかなという印象を受けました。
 質問は9ページのグラフで、オレンジ色の丸は水道水中の計測濃度と書かれているんですけれども、ここの場合、原水から実際に水道水、浄水場のどのポイントで計測されたものか、ちょっと今わからないですが、そこまでの時間遅れといいますか、水処理のプロセス上、大体どのぐらい時間遅れがあるのが正しいか、その辺りは何か既にわかっておりますでしょうか。

○古米構成員
 そこまでは調べておりませんけれども、東海村は急速ろ過が入っているということでございますので、その浄化プロセスを考えると、およそ10時間とは言わないですけれども、数時間のずれ等はあるのと。最終的に配水された水がどの程度配水池に滞留した後の水なのかどうかも関わってきますので、そこまでは確認しておりません。済みません、遅れた形で出てくるということになろうかと思います。

○眞柄座長
 私から一つ二つ。
 久慈川の山方地点の流量が、ほかの下流の支川からの流量と比べて圧倒的に多いから、山方地点の流量で代表できるという考えでいいですか。

○古米構成員
 ここは、タンクモデル全体で解いていますので、すべての河道の流量は計算していますが、そのモデルのパラメータが正しいかどうかを検定するために、流量データのある山方地点で合っているかどうかを確認させていただいたということです。

○眞柄座長
 山方だけでチェックしたということですね。わかりました。
 それで、6ページの降雨のデータのように、57.7 mmというとんでもない雨が降ったときに、それの結果に場合によると引っ張られてしまうでしょう。それと、9ページのように、9 mmぐらいの雨が降るまでの、どちらかというと小降雨のイベント時と、57 mmのような大量の降雨量があったのときにイベントというか、現象の発現は同じと考えていいんですか。
 もう一つは、今の9の流量は、山方地点の流量なのか、東海村の流量なのか、あるいは観測した流量なのか、計算した流量なのか、そこを教えてください。

○古米構成員
 最後の流量に関しては、ここは河道17番の流量を示しております。これは、観測値はございませんので、あくまでも計算結果です。
 最初の御指摘は、痛いところを突かれたというのが正直なところで、タンクモデルをかなり簡素化しているものですから、普通だったら3段のタンクモデルを使ったり、1段目のタンクにも出口を2つ付けたりします。
 57.7 mmのような強い雨のときには、1段目のタンクにもう一つ出口をつけて解析するとか、1か月以上の長期間で流出解析するとなると、基底流出の影響が出やすいので、もう一段下の基底流量のためのタンクが要るんですが、解析当初はとにかく2~3週間の放射性物質の流出解析ために、とにかく簡素化しようという方針でモデル化に臨んでいました。その簡素化タンクモデルにおいて、そのモデルパラメータをここまで合わせ込んだということですので、実際上はタンクモデルの形式をより良いものにすることも大事です。
 厳密に言うと、最初の流量が若干低目の流出計算結果になっています。言い換えると、濃度としては高目の計算結果を出しているということは理解しております。ある意味危険側の結果も出していると御理解いただくとよろしいかと思います。

○眞柄座長
 ありがとうございました。こういうモデルを使うと、降雨があったときに想定する水道の取水地点で、どのようなパターンで流域に降下したものが流出してくるかという予測に使えるということで、これからモニタリングのことを考える上で参考になる結果だと思います。どうもありがとうございました。
 続きまして、「放射性物質解析の中間取りまとめ」について御議論いただきたいと思います。
 最初に、報告のはじめにから第3章まで、事務局から御説明ください。

○松本管理官
 それでは、事務局の方から中間取りまとめの内容について御説明させていただきます。
 まず、1枚めくっていただきまして目次がございます。
 はじめにという形で、これまでの経緯を述べさせていただきまして、第1章は対策の実施状況についてということで、検査及び低減対策の事実関係について説明させていただいております。こちらは簡単に御説明したいと思います。
 第2章が影響のメカニズムについて、第3章が低減の方策についてということで、それぞれここまで御議論いただいたことを整理しておりますので、事務局から読み上げながら御議論いただければと考えております。
 更に、4章で今後の取組について、そしてまとめと今後の課題ということで整理させていただいております。
 それでは、早速、はじめにのところを見ていただきますと、東日本大震災に伴いまして生じた東京電力福島第一原子力発電所の事故により、放射性物質が周辺に影響を与えるに至ったということ。
 このため、飲食物の制限をする指標を用いまして、水道に関しまして摂取制限の指標について通知いたしました。これを超えたところについて摂取制限を要請したということが書かれております。
 更に、モニタリング方針を設定いたしまして、これを通知し、得られた結果を毎日公表してきている状況だということでございます。そのような中で、今後の中長期的な水道の安全性の確保を念頭に、水道水への影響のメカニズムの検証、それから放射性物質の低減方策について検討いただき、更に今後の課題についても検討いただいた上で、その現時点での知見の集約として、本中間報告をまとめるという形にさせていただいております。
 続きまして、第1章は、放射性物質対策の実施状況でございます。
 最初に、検査の実施状況について記させていただいております。実施体制につきましては、実際に測定しているのが政府の福島県の現地対策本部、文部科学省、地方公共団体と水道事業者において実施されている。
 それから、4月4日には私どもの方からモニタリング方針を示させていただきまして、その中で福島県とその近隣10都県で測定していただくことをお願いした。1週間に一度以上をめどに検査していただくということにさせていただいたということでございます。
 そのモニタリングを行っている中で、実際に摂取制限及び広報の実施が必要になりましたのが、右側の地図上に出ております点であらわされるような水道事業において、対策が必要になったということでございます。赤と青は余り意味がなくて、後ほど代表的なポイントとしてグラフで表現させていただく予定にしておりますのが赤でございまして、内容的にはすべて同じ取水制限。1か所、飯舘村だけは一般の取水制限がかかりましたけれども、それ以外はすべて同じ扱いでございます。これらにつきましては、現時点ではすべて解除済みでございます。
 また、これらはすべてヨウ素に関連しての制限でございまして、セシウムに関しましては、それに伴います摂取制限が行われたところはない状況でございました。
 4ページ、5ページは、その摂取制限の状況についての一覧表でございます。
 最後に、5月10日に飯舘村の簡易水道が乳児に出ております摂取制限を解除いたしまして、以来、新たな摂取制限がかかったところはございません。
 6ページ目は、モニタリング方針に基づきまして実施計画を策定いただいているわけですが、それの策定状況について記させていただいております。
 実際には、地震あるいは原子力事故によります被災のため、検査を実施することが困難である市町村を除きまして、すべての市町村で測定がなされているということでございます。そのモニタリング計画につきましても、現在、9割程度の市区町村におきまして、1週間に一度以上の検査を実施する計画を立てていただいている。その際、実際には水道用水供給事業や広域水道事業者の検査結果を活用している場合もあるということ。
 それから、流域別に地域を分けまして検査を実施している県もあることがわかっております。
 また、その下には、実施が難しいとしている理由についても記させていただいております。
 また、委託先、実際の民間等の検査体制について、?で整理させていただいておりまして、実際に調査いたしました32機関が次のページの表になっておりますが、これらの32機関で合計82台のゲルマニウム半導体検出器が所有されている。今後につきましても、更に機器を追加で購入する予定のある検査機関もあるということでございます。
 その一覧表が7ページ、8ページでございます。
 9ページからは、検査の結果についてでございます。
 重点区域内、11都県の中での検査結果でございますが、放射性ヨウ素につきましては、原子力事故があった直後の3月16日から3月20日までが最も高い値となっておりまして、その後、4月以降につきましては100 Bq/kgを超過する事業体はなくなっている状況であります。また、4月以降につきましては、ほとんど10 Bq/kgというレベルも超えるところは余りない状況だということでございます。
 ?は、文部科学省のデータについても同様でございまして、4月以降は一部の地点で微量の検出がされるのみであると記載させていただいております。
 それから、実際に摂取制限が行われました、先ほどの地図上で示させていただいた20の水道事業におけます状況についてでございますが、放射性ヨウ素については、事故後初めての降雨になりました3月21日、またその翌日に実際に放射性物質の降下量が上昇いたしました。それが水道水中の放射性物質濃度が高くなるという状況につながっているということでございます。
 その後の降雨につきましては、降下量や水道水中の濃度について顕著な上昇は見られない状況になっているということでございます。
 それから、放射性セシウムにつきましては、一部、一時的に検出されていますが、その濃度につきましてはおおむね低い状態になっているということでございます。福島県以外におきましては、微量が検出されているという状況でございます。
 10ページ、11ページは、放射性ヨウ素の検出結果でございまして、これまでに1万5,096のデータがありまして、この表は乳児の基準、100 Bq/kgを超えた場合の基準でございまして、4月以降はないということがわかると思います。
 12ページが放射性ヨウ素が10 Bq/kgという、ほぼ測定の下限と思えるレベルで見た場合でございまして、こちらも最近では余り検出例がないことがわかるかと思います。
 それから、14ページが放射性セシウムの表でございます。こちらについても、最近測定されているのは微量であることがわかると思います。
 16ページは文科省の測定データで、実際の値が検出されました都県についてのデータを記載させていただいているものでございます。若干、下の放射性セシウムの表が大きくはねているように見えますが、縮尺の関係で大きく見えますけれども、実際の値は放射性ヨウ素と比べますと10分の1のレベルになっているということでございます。いずれも4月中旬以降はほとんど検出されていない状況でございます。
 その実際のデータを17、18ページに載せさせていただいております。
 それから、済みません、19ページ、20ページにつきましては、旧の方は一部データが欠落しておりまして、差し替えの図表でごらんいただければと思います。1枚の表に降雨量、降下量、空間線量、放射性ヨウ素と放射性セシウムの値を入れたものです。ちょっと見づらくなっているのですが、いずれも大体3月中に値が下がってきていること。それから、その後、かなり強度の雨が降っている場合もあるわけですが、そこでもいずれも値としては実質的には上がる状況にはなっていないことがわかるかと思います。
 続きまして、21ページは、水源別に整理した場合のことについて書かせていただいております。
 あと、飲用井戸について検査を行った結果について記載しております。井戸については、ほとんど検出されていない状況だということを書かせていただいておりまして、その結果が22、23ページに表形式で、22ページは表流水について、23ページは地下水水源の場合について記載させていただいております。
 それから、25ページは飲用井戸のデータでございまして、事故地点に比較的近い地点の飲用井戸からも測定されていないことがわかっているということでございます。
 以上が事実関係についての説明ということで、つけさせていただいた資料でございます。
 第1章の最後に、26ページから水道事業者におけます低減の取組みについて記載させていただいております。
 我が国の浄水方法につきましては、約97%が急速ろ過というシステムで行っているということで、その下に東京都水道局のウェブサイトからお借りしました概念図を示させていただいております。このようなシステムであることを踏まえまして、厚生労働省からの通知で、指標に近い値が検出された場合には、粉末活性炭による処理の実施を検討すること。あるいは、その後の降雨時に高くなることを踏まえまして、水道供給に支障のない範囲で取水の量の抑制・停止、あるいは浄水場における覆蓋、それから活性炭の投入といった対応についての事務連絡を提示しているところでございます。
 次のページには、私どもの方で実施させていただきました低減方策の実施状況についての調査結果を載せておりまして、回答のありました69の事業体につきまして、粉末活性炭の投入、覆蓋、取水量の抑制といった手当てがとられていることが確認されております。
 続きまして、28ページからが第2章でございまして、ここからは検討会での議論をまとめているものでございますので、事務局の方から読み上げさせていただきまして、また内容を確認していただければと考えております。

○松田室長補佐
 それでは、第2章からは私が読み上げます。

第2章 放射性物質の水道水への影響メカニズムについて
(1)東電福島第一原発の事故発生直後の影響メカニズム

 東電福島第一原発の事故発生直後から10日間程度の比較的短期間に、東電福島第一原発から大量の放射性物質が大気中に放出された。
 大気中に放出された放射性物質は、揮発性の高い物質を中心に、風により大気中を移流・拡散し、福島県内や関東地方に飛来し、その一部が地面表層に降下(乾性沈着)することによって、モニタリングポストの空間線量が上昇したことが推察される。
 また、事故発生から10日間程度の期間内の降雨後に、モニタリングポストの空間線量や降下物量が急増したことから、大気中に存在していた放射性物質が、降雨により地面表層に大量に降下(湿性沈着)したことが推察される。
 水道水の摂取制限が行われた水道事業者等における水道水においては、福島県内では3月17日から3月24日まで、関東地方では3月22日から3月23日付近で、放射性ヨウ素が最も高い濃度で検出された。
 この現象は、降雨前の乾性沈着及び降雨時の湿性沈着によって地面表層に降下した放射性ヨウ素が、雨水とともに短期間に河川に流出し、放射性ヨウ素を含む河川水が水道原水の取水口に流入したことに起因するものと推察される。水道の通常の浄水処理では放射性ヨウ素の除去は困難なため、一部の浄水場や給水栓から指標等を上回る放射性ヨウ素が検出されたと考えられる。
 一方、水道水中の放射性セシウムは、一部の水道事業者等において検出されたが、放射性ヨウ素と比較してその濃度は概ね低かった。
 東電福島第一原発の事故発生直後の影響メカニズムの概念図について、図2-1に示す。

 図2-1は、30ページを見ていただければと思います。こちらに先ほど(1)で御説明した内容について、概念図を?から?まで説明している資料でございます。
 また28ページに戻ります。

(2)東電福島第一原発からの放射性物質放出の減少以降の影響メカニズム

 東電福島第一原発から大量の放射性物質の大気中への放出があった期間以降、現在に至るまで、東電福島第一原発からの放射性物質の放出量は事故発生直後の期間と比較して大幅に減少した状況で推移している。
 東電福島第一原発からの放射性物質の放出量が減少して以降、全般的に空間線量や降下物量は低減傾向にある。福島県及びその近隣の地域では、過去の平常時の範囲を超過する空間線量が確認されているが、その他の地域では空間線量は平常時の範囲にまで低下しており、新たな放出量は比較的少ないものと推察される。
 この期間の降雨において、一部の測定点では降下物量に若干の上昇が見られたものの、事故発生以降の最初の降雨時のような空間線量や降下物量の顕著な上昇は見られなかった。水道水中の放射性ヨウ素は減少傾向を示し、4月以降は不検出又は微量が検出される状況である。
 水道水中の放射性セシウムは、一部市町村において検出されたが、放射性ヨウ素と比較してその濃度は概ね低く、4月以降は不検出又は微量が検出される状況である。
 これらの現象は、事故発生直後に大気中に放出された多量の放射性物質が乾性沈着及び事故発生以降の最初の降雨による湿性沈着により地表に落下し、大気中の放射性物質が減少していたことによって、その後の降雨による影響が小さくなったことに起因するものと推察される。
 また、放射性セシウムは、乾性沈着や湿性沈着によって地面表層に降下した後、土壌等に吸着し、地下に容易には浸透せず地面表層に残留していることが考えられる。このため、強い降雨時には、放射性セシウムが吸着した地面表層の土壌等が主として雨水流出に伴って河川に流出し、濁質成分として水道原水に流入する場合があるものと考えられるが、放射性セシウムが水道水中に不検出又は微量が検出されるのみであったのは、水道施設における凝集沈殿や砂濾過等の浄水処理工程により濁質成分が除去されることに起因するものと推察される。
 東電福島第一原発からの放射性物質放出の減少以降の影響メカニズムの概念図について、図2-2に示す。

 これは31ページの方に、先ほどの図2-1と比較するような形で、放射性物質放出の減少以降の影響メカニズムを?から?まで説明しているものでございます。
 その次の32ページです。

第3章 水道水中の放射性物質の低減方策について

(1)放射性ヨウ素の低減方策

 水道原水中の放射性ヨウ素の大部分は、粒子状ヨウ素、ヨードメタン(ヨウ化メチル)を含む有機態ヨウ素、次亜ヨウ素酸又はヨウ化物イオンの形で存在すると考えられる。水中では、次亜ヨウ素酸は極めて微量で、有機物等との反応も速いため、ほとんど存在せず、粒子状ヨウ素、有機態ヨウ素又はヨウ化物イオンの形で存在すると考えられる。

 この点についての挙動の概念図は、図3-1に示しております。

 浄水処理工程においては、粒子状ヨウ素は、凝集沈殿及び砂濾過等によりある程度の除去が期待できるが、有機態ヨウ素又はヨウ化物イオンの比率が高い場合には、通常の凝集沈殿処理では除去は困難であると考えられる。
 有機態ヨウ素及びヨウ化物イオンが酸化されて生成する次亜ヨウ素酸は、一般的な異臭味対策等として浄水処理工程の早い段階で注入される粉末活性炭により若干の低減が期待される。チェルノブイリ原子力発電所事故に関連して行われた調査等において一定の結果が示されている。
 ヨウ化物イオンの形で存在する放射性ヨウ素については、低減が難しいと考えられるが、低濃度かつ短時間の塩素処理に加え、粉末活性炭を接触させるとヨウ化物イオンの除去率が向上する。例えば、注入率0.5mg/Lの塩素処理(接触時間10分)の後、25 mg/L(乾重量)の粉末活性炭注入(接触時間30分)及びその濾過をすることにより、30%から50%程度の除去が可能である場合があった。
 東京都水道局の実験においても、ヨウ化物イオン及びヨウ素酸イオンは粉末活性炭によりほとんど除去できないが、ヨウ化物イオンに対して粉末活性炭及び前弱塩素(注入率0.5~1.0mg/L)処理を併用した場合、粉末活性炭注入率15mg/Lで30%程度、30 mg/Lで50%程度が除去され、実際の水道原水に放射性ヨウ素を含んだ雨水を混合して行った結果においても、ほぼ同様の結果が得られている。
 このため、水道原水中の放射性物質濃度が上昇したと考えられる場合には、弱前塩素処理に加え、活性炭処理を併用することにより、放射性ヨウ素をある程度低減することが期待できる。しかし、水道水中の放射性ヨウ素について4月以降不検出又は微量が検出されている今日の状態であれば活性炭の注入は不要であり、また、活性炭の供給量も全国的に限られていることから、東電福島第一原発から大気中へ大量の放射性物質が再度放出された場合にのみ活性炭の注入を検討すべきである。
 浄水処理工程において水道水の衛生確保のため給水栓の残留塩素を0.1mg/L以上保持するように最終的に添加される塩素の影響もあり、各家庭等に供給される水道水中には、放射性ヨウ素の大部分がヨウ素酸イオン(陰イオン)の形で存在すると考えられる。このため、活性炭や精密濾過膜を用いた家庭用浄水器では、水道水中に溶解する陰イオンの除去は困難なことから、水道水中の放射性ヨウ素の低減は困難であると考えられる。

(2)放射性セシウムの低減方策
 東電福島第一原発の事故では、放射性セシウムとして、セシウム-134(134Cs)及びセシウム-137(137Cs)がほぼ1対1の割合で存在し、環境中でも同様の比率で検出されている。放射性セシウムは、東電福島第一原発からの放出直後は、気体で存在する可能性が高いが、水中では陽イオンとして存在し、地面表層では土壌及び粒子等に吸着した状態で存在すると考えられる(図3-2)。

 この放射性セシウムの挙動の概念図は、図3-2に示しております。
 次のページに行きます。

 チェルノブイリ原子力発電所事故においても、放射性セシウムの大部分は地面表層の土壌等に吸着されており、一般的には水に溶出しにくいと考えられる。このため、降雨により流出する場合においても、主に濁質成分に付着して流出するものと考えられる。限られた知見ではあるが、放射性セシウムが検出された水道原水を濾紙により濾過することにより放射性セシウムが検出されなくなったという結果がある。また、低濃度の放射性セシウムが流入した実際の水道施設における浄水処理工程を対象とした調査において、凝集沈殿、砂濾過及び粉末活性炭により放射性セシウムが概ね除去された。これらの結果から、放射性セシウムは水中で粒子に吸着した状態で濁質と同様の挙動をとりやすく、濁質の除去により高い除去率が期待できるものと考えられる。このため、放射性セシウムについては、原則的に原水の濁度が高濃度になる場合の濁度管理に留意すれば制御し得るものと推察される。
 これらの他に、業務用等の放射性物質の除去技術として、ゼオライトやイオン交換、ナノ濾過膜、逆浸透膜がある。ゼオライトやイオン交換は、その特性により、ゼオライトは陽イオン、陽イオン交換樹脂は陽イオン、陰イオン交換樹脂は陰イオンの除去に有効である場合がある。ナノ濾過膜や逆浸透膜は、膜の性質にも依存するが、概ね水以外の分子等の成分の分離に優れている。特に海水淡水化において用いられる逆浸透膜は、塩分の分離が可能であり、分子の大きさから放射性物質の分離にも適用が可能である可能性がある。
 しかしながら、いずれも費用や設備、効率の観点(特に、ナノ濾過及び逆浸透膜の場合は電力が多く消費される)から、通常の浄水処理には適用しにくい面があり、放射性物質を高濃度に含む排水や特定目的の浄水器等、特殊な条件下で適用される技術と考えられる。また、イオン交換については、水道水等においては他のイオンが大量に共存する中で、放射性物質の存在量は相対的に極めて微量であること及びイオン交換樹脂の交換容量が限られていることから、放射性物質の除去の効率は下がる可能性があることや、ゼオライト、イオン交換樹脂及び濾過膜については、それらの再生に多くの薬品等が必要となること等も考慮すべきである。

 以上でございます。

○眞柄座長
 ありがとうございました。それでは、これまでのところで御質問や御意見がございましたらお出しください。お願いします。森口先生。

○森口構成員
 2点ございます。
 1点目は細かなテクニカルなことなのですけれども、19ページ、20ページで資料の差し替えがあった部分ですが、空間線量のデータがグリーンのグラフで折れ線でプロットされているんですけれども、恐らく一番上の福島県川俣町はこれで正しいだろうと思うんですけれども、宇都宮市以降の空間線量は10-1を掛けた1桁小さい数字ではないかと思います。
 前回の資料もそのようになっていて、恐らく地域によってかなりスケールが違うので、地域ごとに違うスケールを当てはめておられたかと思います。貼られるときに、そのまま貼られたのではないか、そこのところを念のために慎重に確認していただけますでしょうか。前回の資料、私、今日たまたま持っておりましたので、照合したところ、福島県川俣町だけが正しくて、ほかはもう一けた小さいのではないかと思いますので、そこの修正をお願いいたします。
 もう一点は、直接今回の中間取りまとめに関わることではないかもしれないですが、事前にこの原稿に関しても少し気になっていたものですから、表現ぶりを直していただいたのですが。事故発生直後、いつの時点で放射性物質が放出されたかということに関してです。
 今日も別とじの参考資料の67ページになると思いますが、「ヨウ素131、セシウム137の大気中への放出総量」のデータが出ております。これは、原子力安全委員会だったでしょうか、4月12日の発表かと思います。その後の事故解析で、より早い時期から環境中への放出があった可能性も指摘されているかと思いますし、最初の原子力安全委員会の資料の中にも、より早い時期での放出が示唆されるような記述もあるように思われます。
 風向から見て、水道水の方に直接影響するイベントは余りなかったのではないかなと思うのですけれども、先ほどの古米先生の解析結果なり、大原先生のシミュレーション結果も、これまでの安全委員会からの資料に基づいて、14日か15日以降のシミュレーションになっているものですから、それ以前について全く触れなくて問題がないのかどうかに関して、念のため放出の挙動に関して、場合によっては安全委員会なり保安院の方に照会された上で、この資料の中にも反映した方がいいのではないかと思います。
 以上です。

○眞柄座長
 ありがとうございました。そのほか。どうぞ。

○桝本構成員
 ほとんど適切に書かれていると思いました。
 それで一言、私どももモニタリングをやっておりますので、第2章の(1)、28ページの第2段落の表現だけの問題です。基本的に風により大気中を移流・拡散し、福島県内や関東地方に飛来することによって、モニタリングポストの空間線量が上昇しております。その上で、その一部が地面の表層に降下したという順番ではないかと思います。
 その次の段落についても、モニタリングポストの空間線量が急増しておりますが、その後、空間線量が緩やかな減衰という状況に関東地方はなっております。そのことが、大気に存在した放射性物質が、降雨により地面に沈着したという状況を反映しているのではないか。順番の話です。

○眞柄座長
 ありがとうございます。ほかにございましょうか。
 本文には関係ないことなのですが、群馬県の測定回数がほかの県に比べて随分減少してきているのですが、これは群馬県自体の特殊な事情があったのか、あるいは後ほど議論する流域単位で、これだけ回数をすれば群馬県の状況が反映されると群馬県が判断されたのかどうか。
 12ページの群馬県のデータを見ていただくと、一番多いときには153回測定されておられたのですが、5月の回答では78回に半分ぐらいに落ちている。ほかのところはそれほど大きな変化はないのですが、ことさら群馬県はどうしてなのかという印象を受けたので、もしわかったら教えてください。

○松田室長補佐
 前回の会議資料で10都県におけるモニタリング計画について取りまとめたものと、その県別の概況を示した資料を添付したところですが、その中で群馬県の状況としては、週1回以上の実施計画がないことが主な理由です。中には、同じ水系の河川より取水している事業者の結果を参考としている事業体があったということでございます。
 その一方、山間部の中小事業者が多くて、財政力が乏しいということも理由として示されているということでございまして、ほかの県に比べて週1回以上の実施計画がない割合が高かったということでございます。

○眞柄座長
 ありがとうございました。ほかに。古米先生。

○古米構成員
 9ページ目の記載でございますけれども、真ん中以降で、取水制限が行われた水道事業者の検査結果の2段落目の2行目の表現で、「特に福島県以外の地域においては、事故後初めて降雨があった3月21日」。
 実際は広域なので、ある場所では21日が最初の雨なのでしょうけれども、そうでないところもありそうです。今回の流出解析するときにも苦慮したのですが、降雨は、先ほどの質問もあったように分布があるので、こういった報告書の場合には、どこにおいての降雨なのか、あるいはどれを降雨として定義するか、ある程度地域を明確にしておかないと、本当に21日が最初なのかというと、厳密に言うと対象地域全体ではそうではない。もっと前に降っているところもあろうかと思います。念のため確認するべきところかなと思います。

○松本管理官
 断定的な表現を少し緩めさせていただいて、この辺を中心にという形にさせていただければと思います。

○眞柄座長
 どうぞ。

○大原構成員
 3点ほど、細かい点なのですけれども、1つは、22ページ、23ページの図表に単位がないので、これは是非入れてください。どこかに書いてあるのかなと思って探したら、多分ない。
 それから、29ページ目の放射性セシウムに関する記述のところで、放射性セシウムが水道水中に不検出または微量だったという原因の一つとして、放出量が放射性ヨウ素に比べて少なかったという点も多分重要なんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
 それから、3点目、これも細かい話なのですが、33ページ目の(2)放射性セシウムの低減方策の上から3行目ぐらいで、放射性セシウムは、放出直後は気体で存在する可能性が高いがと書いてあって、片や図3-2では「粒子状セシウム」という表現が書いてあります。多分、最初は気体で存在していたものが、大気中で粒子化するなりということが正しいだろうと思いますので、ちょっと加筆していただければと思います。
 以上です。

○眞柄座長
 わかりました。
 1番目の御指摘については、確かにそうであっっても、水道の浄水処理でセシウムは90%以上、確実に除去されるので、放出量の多寡が水道水で検出されるかどうかということとは、余り関係ないように思うのですが、どうですか。

○大原構成員
 どうなのでしょうか、わかりません。ただ、元の量が非常に大きく影響するだろうと。今、おっしゃられた90%云々というのは分母に対する90%だと思いますという意味合いにおいてなんですが。必ずしも強い意見というわけではございません。

○眞柄座長
 はい。ほかにございますか。はい。

○森口構成員
 二度目で申しわけございません。今の大原委員からのセシウムに関する御指摘ですが、この検討会自身、水道水における放射性物質対策ということで、除去されればという議論になるかと思うのですが、浄水処理によって出てくる汚泥へのセシウムの移行等も、もう一つ別の問題としてあるものですから、そこを考えますと、実際にどれだけのものが河川水中から浄水場の方へ取水されたのか。
 これは、古米先生のシミュレーションも水道水の話だけではなくて、水道水には行かないけれども、除去される過程で汚泥の方にどれだけの量が行くのかというところにも非常に有用なシミュレーションだと思います。それを考えますと、放出量が多かった、少なかったというのは、安易には議論できないところだと思いますので。それは、恐らくこの検討会の主題ではないと思いますけれども、場合によってはそこのところの量的な関係もチェックした上で、このシミュレーションに関して、放出量も含めて、できれば評価しておいた方がいいのではないかと思います。

○大塚副大臣
 座長、よろしいですか。

○眞柄座長
 どうぞ。

○大塚副大臣
 ありがとうございます。今、伺っていて、私も今後の取組みのところで、先生方にお願いか、あるいはここにどう書いたらいいかを事務局に御指導いただきたいなと思ったんです。
 2点ありまして、1つは今、森口先生が汚泥のことをおっしゃいました。これは農業用水にどういう影響を与えたかということは、直接この場の検討課題ではないとは思いつつ、ずっと古米先生の解析を聞かせていただいていて、こういう解析ができるならば、流域農業用水にどういう影響を与えた蓋然性があるかということが言えるんじゃないかと思っていましたので。そういう汚泥の問題とか農業用水への影響ということを、今後の課題かどこかにコーションをつけるべきじゃないかと思いました。
 もっとも、農作物については、その農業用水を使った後の農作物の検査である程度検証可能だと思いますが、そのことが大きく1点と。
 あと、先生方に、今までの議論でも出ていたと思うんですけれども、結局我々も事故直後のことを振り返ってみると、事故直後、暫定規制値を設けて体制が整うまでの、まさしく急性期のデータとかはなかなかないんです。そうすると、今回得られた解析結果から、どのようなことが起きていた蓋然性があるか的なことは、相当いろいろな前提条件をつけながら、何か書き込んでいただいた方がいいのかなと思いながら聞いておりました。
 それ以上は、私は素人としては思いも及ばない範囲なので、御指導をいろいろいただければと思います。

○眞柄座長
 はい。

○古米構成員
 今回、具体的な流域を対象に解析させていただきましたし、森口委員から言われたように、原水としてどれだけ、懸濁態のものを含めて入ってきたのかという計算結果をお示ししました。正直申し上げて、土地利用を考慮して流出してくるところまではモデル化しているんですが、河道については、その流出したものが河道の中でどう挙動するかというモデルは全く考慮しておりません。100%、そのまま流下するという仮定でございます。
 御指摘のように、ある程度の仮定を入れた形で放射性物質が到達しているだろうということを示すことの有効性と、それによって何か誤解を生む可能性のような裏腹のところがあるので、いかにそういった解析の条件を明確にしながら取り扱うかということが大事です。あくまでもモデルはモデルなので、今日示した結果が本当にどの程度正しいのかどうかというのもしっかりと検証されないといけませんし、他の流域で更に確認することによって、その蓋然性の確度が上がっていくと思います。
 私自身は貢献したいと思いますけれども、今回の解析については、流下方向については、まだモデル化が十分ではないという点だけ御理解いただければと思います。

○眞柄座長
 今後のことを考えますと、代かきの水というのは水道にとって大変厄介な農業排水なわけです。かつては、厚生省と農水省の間で代かきの水の管理というのをきっちりやってくださいという指導が両省から出されたことがありました。今は実質的にその指導は来ていませんけれども、今回の議論を聞いていますと、放射性セシウムは水田の土壌に沈積して蓄積して残っているわけです。
 今年の代かきの時期は終わってしまいましたけれども、来年の代かきの時期のことを考えると、代かきの水については、農業をおやりになっていらっしゃる方もできるだけ河川に流出させないような工夫をしていただくことは、今後の取組みの中で、副大臣がおっしゃったことと違うことかもしれませんけれども、そういうことも水道にとってあることをお話したいと思います。
 それから、今、具体的に計算しておりませんけれども、例えば東京都あるいは茨城県、福島も、古米先生のモデルを使って、現実にそういう地域で発生した汚泥の中に放射性物質がどれぐらいあったかということを推定していけば、スキャンで実際に放出量はどれぐらいかというラフな推定は、副大臣がおっしゃったように、やろうと思えばできないことはないだろうと思います。
 ほかにありますか。どうぞ。

○朝長構成員
 ちょっと今の問題から離れますけれども、かなり前の総論のところになってきますが、急性期に我々医療関係者が一番フラストレーションを覚えたのは、放射能が漏えいしたことは発表されたんですが、その中身が放射性物質が何なのかというのが発表されなくて、たしか1週間ぐらい経過していったんです。その公表の時間と、2ページに書いてある「政府の原子力災害対策本部は、福島県内全域の水道事業体を対象に、3月16日から」、「文科省は、各都道府県において3月18日から」。
 その前の放射性ヨウ素あるいは放射性セシウム、その他放出の内容が公表された時間の推移を書き込んでおいた方がいいんじゃないかと思います。これは、情報の共有という観点から、初動で少し遅くなってしまうという大きな原因がありますので。子どもが放射性ヨウ素に曝露されるのが一番怖いわけですから、空気中に放射性ヨウ素が出たかどうかの発表が、たしか僕の記憶では1週間ぐらいなかったんじゃないかと思います。そこをしっかり書いた方がいいんじゃないか。
 先ほど、原子力安全委員会とか保安院にもう一回その辺を確認して、書き込んだ方がいいんじゃないかという御意見がありましたけれども、賛成という意見です。

○眞柄座長
 ありがとうございました。ほかに。森口さん。

○森口構成員
 今の御指摘と、もう一つ前に副大臣から御発言がありましたことに関しまして、先ほど申し上げたことと若干重なりますけれども、もう一度、今の時点で私自身が認識している点を繰り返し申し上げたいと思います。
 6月6日の第40回原子力安全委員会臨時会議の配付資料の中で、1号機、2号機、3号機の炉心に関する評価という資料を今、拝見しておるんですが、1号機についてはかなり早い段階から外へ出ていた可能性があるというのがここにも出ております。先ほど申し上げたことですが、今回の資料についている4月12日時点での原子力安全委員会の資料は、必ずしも最新の知見ではないのではないかと思います。
 その意味で3月12日ごろの放出の可能性、それからその当時に水道水経由での汚染があった可能性がないのかどうかということに関しては、何らかの形で、いつかの時点で検証が必要ではないかと思います。
 私自身もずっと空間線量のデータを見ておりましたが、かなり測定の充実している茨城県東海村周辺のデータを中心に見ておりましたので、福島県内のことが十分にフォローできておりませんでしたけれども、気象のデータを見ている限り、12日の午後に東南東系の風で、福島県の内陸方面に向かって放射性物質が流れた可能性があるのではないかと思いますので、副大臣がおっしゃったことで、事故発生直後にもし何かあった可能性があるとすれば、そういったことについても念のために見ておく必要があるのではないかと思います。
 もう一点、農業用水のお話もございましたし、私、先ほど浄水汚泥について発言いたしましたが、下水汚泥に関しても、場合によってはより深刻な状況にあると認識しております。大気中に放出された放射性物質が地表におり、土壌を汚染し、またそれが水系に流出するということに関しては、この水道水のみならず、さまざまな媒体への影響ということと深く関わっていると思います。
 どういたしましても、こうした行政での検討会のそれぞれの所掌のところが中心になってくるかと思いますけれども、古米先生が今日お示しになった資料というのは、下水汚泥などの問題にとっても、先ほどの農業にとっても非常に重要な示唆が得られるのではないかと思います。すべてを古米先生にお願いするということには当然いかないかと思いますが、是非ほかの分野の専門的知見との共有といいますか、総力を挙げてこういったところの科学的な解明を進めておく必要があるのではないかと思います。
 せっかく副大臣からの御発言がございましたので、この場で改めてそのことをお願いしておきたいと思います。

○眞柄座長
 ありがとうございました。
 それでは、時間の関係もありますので、最後の部分について、事務局から説明していただいて、御議論いたしたいと思います。お願いします。

○松田室長補佐
 それでは、事務局の方から第4章について読み上げます。

今後の取組みについて
(1)今後の見通しと当面の低減方策

 ? 今後の見通しと当面の低減方策
 今日、東電福島第一原発の事故発生時と比較して、放射性物質の放出量が大幅に減少した状況で推移していると考えられること、降雨後においても放射性物質の降下量の上昇が僅かであること及び水道水中の放射性物質の濃度が検出下限値未満又は微量である状況にあることを踏まえれば、今後、東電福島第一原発から大気中へ大量の放射性物質が再度放出されない限り、水道水の摂取制限等の対応を必要とするような事態が生起する蓋然性は低い。
 水道水源となる地下水への影響は、福島県内の表流水の影響を受けない地下水を用いる水道事業者等に関して水道水から放射性物質が検出されていないこと、東電福島第一原発から半径20km以遠30km以内の地域及びその周辺地域の井戸においても放射性物質が検出されていないことから、放射性ヨウ素については、その半減期が8日間と比較的短期間であることを考慮すると、今後地下水への影響が現れる蓋然性は低い。また、放射性セシウムについては、土壌等に吸着し地面表層に残留し、地下に容易には浸透しないことを考慮すると、地下水への影響が現れる蓋然性は低い。

? 当面の低減方策
 東電福島第一原発からの放射性物質の放出量が大幅に減少して以降、水道水中の放射性ヨウ素の濃度は減少傾向にあり、放射性ヨウ素の半減期(8日間)を考慮すると、地層表面の土壌等に蓄積した放射性ヨウ素もさらに減衰が進み、水道水中に検出される放射性ヨウ素濃度はより低減される。このことから、粉末活性炭の注入や降雨後の取水の抑制・停止等の取組の必要性は低くなってきている。水道水中の放射性物質の濃度が不検出又は微量になっている状況からすると、今後は水道水中の放射性ヨウ素の濃度について上昇傾向がみられた場合に限定して活性炭投入等の実施を検討すべきである。
 放射性セシウムは広い範囲で土壌等から検出されており、半減期が比較的長いことから、長期間にわたり土壌等に存在し続けると考えられる。今後、強い降雨時に放射性セシウムを吸着した土壌等が河川に流出し、濁質成分として水道原水中に流入することが予想されるが、水道施設における凝集沈殿及び砂濾過等の浄水処理工程で濁質とともに放射性セシウムを除去することが可能である。このため、今後は、浄水施設における濁度管理の徹底に努めるべきである。
 なお、文部科学省の調査によれば、東電福島第一原発の周辺地域の土壌では、放射性ストロンチウムは、放射性セシウムと比較して濃度が低い状況にあるとともに、放射性ウラン及び放射性プルトニウムは東電福島第一原発の周辺地域で微量濃度が検出されているのみであることから、これらの水道水への影響を考慮する必要性は低いと考えられる。

(2)今後のモニタリング方針

 東電福島第一原発からの方針性物質の放出量が事故直後と比較して大幅に減少していることから、水道水中の放射性ヨウ素や放射性セシウムの濃度が検出下限値未満又は微量になっており、今後も同様の傾向が続くことが予想される。また、ゲルマニウム半導体検出器を保有する検査機関が限られているため、一部の水道事業者等においては水道水中の放射性物質の検査の実施に苦慮しており、短期間で十分な検査体制を確立することは困難な状況にある。このため、今後は、放射性物質の検出リスクが同じ傾向にあると考えられる流域単位で水道水のモニタリングを実施する等、合理的かつ効果的な検査体制に移行すべきである。その際には、早期に検出リスクを把握すること、浄水処理による除去効果を確認すること等の観点から、関係都県毎に、水源となる河川の流域単位で代表性のあるモニタリング箇所を選定し、水道原水の放射性ヨウ素及び放射性セシウムのモニタリングを実施して、その結果を当該流域の水道事業者等が共有することにより、水道事業者等の水道水質管理に活用することが望ましい。
 その一方で、我が国で初めての原子力緊急事態が依然として収束していない状況には変わりないこと、これから事故発生後初めての梅雨と台風襲来期を迎えること、さらに、指標等を下回る情報も含めて検査結果を公表することで、水道利用者の水道水に対する不安感を払拭し、安心・安全な水道水の供給を持続させることが重要であることから、当面の数ヶ月間は、引き続き以下のとおり水道事業者等が水道水のモニタリングを実施していくことが適当である。その後のモニタリング方針は、これらの検査状況及び関係都県毎の検査体制の整備状況等を踏まえ、あらためて検討すべきである。

? モニタリング箇所
 福島県においては、放射性物質の空間線量のモニタリング結果や土壌への放射性物質の蓄積状況に鑑み、政府の原子力災害現地対策本部が市町村毎に水道水の検査を実施する。
 福島県以外の関係都県においては、水道事業者等が市町村毎に水道水の検査を実施する。ただし、流域単位で代表性のある箇所での原水のモニタリングが可能となった場合には、代表性のある箇所における原水水質が、その水源を利用する全ての水道事業者等の原水水質と考えられるため、水道水の水質検査についても、その水源を利用する水道事業者等が実施した水質検査結果を他の水質事業者等が活用することも可能とする。水道用水供給事業から受水している水道事業者等は当該水道用水供給事業者の検査結果を活用することも可能とする。
 なお、本州から地理的に離れ、水源が独立している関係都県の島嶼部はモニタリング箇所の対象から除外する。

? 頻度
 福島県においては、放射性物質の空間線量のモニタリング結果や土壌への放射性物質の蓄積状況に鑑み、政府の原子力災害現地対策本部が市町村毎に水道水の検査を1週間に1回以上実施すべきである。
 福島県以外の関係都県においては、表流水及び表流水の影響を受ける地下水を利用する水道事業者等の水道水質検査は1週間に1回以上実施すべきである。
 なお、表流水の影響を受けない地下水については放射性物質の影響を受けにくいと考えられることから、1ヶ月に1回以上としても問題はないと考える。

? 検査対象試料
 水道水の検査対象試料は、給水栓の水又は浄水場の浄水として、水道事業者等毎に設定してきたが、今後、浄水場での放射性物質に対する水質管理の実施に役立たせるため、水道事業者等が行う検査対象試料は浄水場で採取した浄水を優先すべきである。

? 水道水の摂取制限の要請や解除に関する考え方
 水道水の摂取制限に関する指標等は、放射性物質による長期影響を考慮して設定されたものであり、長期間にわたる摂取量と比較して評価すべきものである。一方、水道水中の放射性物質濃度には時間的な変動がみられ、将来の長期にわたる変動を予測することは困難であることから、厚生労働省は、摂取制限の要請及び解除には一定の迅速性が求められることを考慮して、当面、3日間のデータで評価することをモニタリング方針で定めている(ただし、1回の検査結果でも指標等を著しく上回った場合には、摂取制限の要請を行うこととしている。)。
 これまでの検査結果によれば、放射性ヨウ素は、東電福島第一原発から大気中へ大量の方針性物質が放出されて以降の最初の降雨後に水道水の濃度ピークがみられるものの短期間で濃度が減少する傾向にある。これは、放射性ヨウ素の半減期が比較的短期間であること、放射性ヨウ素が雨天時の流出水やそれが流出した河川の流れに沿って速やかに移動すること等によるものと考えられる。放射性セシウムは、一部市町村で水道水中に一時的に検出されているが、放射性ヨウ素と比較してその濃度は概ね低く、水道施設の濁度管理で十分に対応が可能であることからすると、その濃度が上昇するのは、溶存態としても原水汚染が著しい場合や浄水過程処理工程で濁質が漏出した場合等、特異的な状況に限られるものと考えられる。
 水道水中に検出される放射性物質の濃度が不検出又は微量になっている状況の中、水道水の摂取制限の指標等との比較は一定期間のデータを基に評価すべきであること、摂取制限の要請及び解除に関する施策の決定には一定の迅速性が求められることから、3日間の検査結果を用いて評価することは妥当である。

(3)検査方法

 ゲルマニウム半導体検出器を保有する検査機関には限りがあることから、各検査機関が大量の試料を検査している状況にあり、検査機関によって様々な検出下限値が混在する等、検査結果の品質管理の点で課題がある。水道水の検査試料数に応じた、最適の試料量や測定時間の組み合わせを検討するとともに、測定時間に応じた検出下限値、検出機器の使用時の注意点、機器校正法及び精度管理等をまとめたマニュアルを整備すべきである。
 なお、放射性物質又は放射線に関する情報を簡便に得ることを目的としたサーベイメータ(電離箱式、GM計数管式、シンチレーション式等)がある。これらの機器については、ゲルマニウム半導体検出器と比較してエネルギー分解能が劣ることから、ガンマ線を放出する核種の定量の感度が低く、化学分離等を組み合わせない限り水道水中の放射性ヨウ素や放射性セシウムの正確な濃度分析を行うことは困難であるが、NaIシンチレーション式サーベイメータについては水道原水監視において指標等を超過するレベルのスクリーニングには有用であると考えられる。また、前処理した試料ではGM計数管を用いることができる。今後、サーベイメータを活用した原水監視モニタリングを実施する場合においても、利用条件、試料測定、線量評価及びスペクトル解析等のマニュアルを整備すべきである。

(4)東電福島第一原発から大気中へ大量の放射性物質が再度放出された場合の措置

 東電福島第一原発から大気中へ大量の放射性物質が再度放出された場合は、揮発性の高い放射性物質を中心に、風によって大気中を移流・拡散し、地面表層に降下した後に、降雨により水道水源に多量の放射性物質が流入し、水道水中で放射性物質の濃度の顕著な上昇を招くことが予想される。
 東電福島第一原発から大量の放射性物質が再度放出された場合には、厚生労働省は、原子力発電所からの放射性物質の放出情報並びに文部科学省や電力会社等による周辺の空間線量及び降下物量のモニタリング情報等を収集するとともに、東電福島第一原発の周辺地域や放射性物質の影響が及ぶ可能性のある地域の風や降水等の気象情報を注視すべきである。そのうえで、現行のモニタリング方針に定める重点区域の拡大の検討を行うとともに、影響が及ぶ可能性のある地方公共団体に対して水道原水や水道水のモニタリングを実施することを要請すべきである。
 地方公共大体は、当該地域内の水道事業者等が水道原水や水道水の迅速なモニタリングを実施できるよう、あらかじめ水道事業者等及び検査機関と調整してモニタリングネットワークを構築しておくべきである。その際に、検査機関が不足してモニタリングの実施が不十分となる事態も想定されるため、厚生労働省は、地方公共団体を通じてゲルマニウム半導体検出器を所有する大学や研究機関を引き続き紹介すべきである。
 これまでの検討結果を踏まえると、放射性物質の大量放出以降の最初の降雨時において、放射性物質を含む水道原水が水道施設に流入する可能性が高いことから、水道事業者等は、大量放出事故以降、浄水場の水のモニタリングを毎日実施するとともに、可能であれば水道原水も毎日検査し、水道原水中の放射性物質が高濃度時の取水制限並びに弱塩素処理及び粉末活性炭投入の併用対策の実施により、水道水中の放射性ヨウ素の低減化を実施すべきである。放射性セシウムは、浄水処理工程で濁質の除去に併せて除去することが十分に可能であることから、浄水施設の濁度管理の徹底に努めることで制御できるものと考えられる。
 なお、水道水源の広範囲にわたり放射性ヨウ素が流入し、放射性ヨウ素を高濃度に含む水道原水が数日間にわたって水道施設に流入した場合には、浄水処理工程で粉末活性炭を投入しても一定濃度は水道水中に残留し続けることも考えられる。このため、放射性物質の大量放出以降の最初の降雨後に測定した水道水中の放射性ヨウ素が指標等を超過する場合は、その後の数日間においても指標等を超過する蓋然性が高いことから、水道事業者等は摂取制限及びその広報を実施すべきである。
 放射性セシウムについては、水道施設の浄水処理工程における濁度管理の徹底により、濁質とともに除去され得ることからすると、水道水に含まれる放射性セシウムの濃度が指標等を超過する事態が発生することは、水道の浄水処理工程において異常事態が発生している等、特異的な事象に起因するものと考えられることから、原因究明に当たり濁度管理等の浄水処理工程の管理を十分に行うとともに、3日間の検査結果を用いて評価することが妥当である。
 摂取制限の解除に関しても、3日間の検査結果の平均値や減少傾向を見て評価することが妥当である。
 浄水場の水のモニタリング結果において、検査による数値が指標等と比較して低い数値となった段階で検査頻度を通常時に戻すことが妥当である。

 次のページに行きまして、まとめと今後の課題でございます。

まとめと今後の課題

 本検討会では、東電福島第一原発の事故発生直後から現在に至るまでの空間線量、降下物量、土壌及び水道水などのモニタリング結果や、放射性物質の特徴、大気環境中や水環境中における挙動、浄水処理工程における除去効果及び検査方法に関する現時点の知見を踏まえ、水道水中の放射性物質対策に係る課題について検討し、取り組むべき内容を取りまとめた。
 今後は、東電福島第一原発から大気中へ大量の放射性物質が再度放出されない限り、摂取制限等の対応を必要とするような水道水への影響が現れる蓋然性は低いものの、豪雨などに伴い土砂に付着した放射性セシウムが水道原水に流入する可能性があることから、浄水施設において濁度管理を徹底する等適切な施設管理が必要であると考える。
 また、東電福島第一原発から大気中へ大量の放射性物質が再度放出された場合は、放出状況、気象状況等に関する情報を早急に把握し、影響が及ぶ可能性がある地域内の地方公共団体及び水道事業者等が迅速に水道原水や水道水のモニタリングを実施し、水道水中の放射性物質の低減化方策を講じることができるよう体制を整えるべきである。
 引き続き、水道事業者等が、水道水の検査を定期的に実施し、その結果を公表すべきであるが、放射性物質の検出リスクが同じ傾向にあると考えられる流域単位で水道原水や水道水のモニタリングを実施する等、合理的かつ効果的な検査体制に移行するため、国と関係都県における調整を通じて流域単位の検査体制の整備を進めるべきである。
 また、最近の水道水中の放射性物質濃度の検査結果の大半が検出下限値未満を示しているが、検査機関によって様々な検出下限値が混在する等、検査結果の品質管理面の課題が存在しており、これらの課題が解消されるよう科学的知見を集積したうえで検査方法のマニュアルを整備すべきである。
 なお、検討の過程で、以下のとおり、今後関係行政機関と連携して取組むべき課題の指摘があった。
・現行の指標等は緊急時に適用されるべき数値であるが、今後、収束時や平常時における水道水の指標等について、食品衛生法に基づく暫定規制値に関する食品安全委員会の審議状況等も踏まえながら、許容可能なリスクを考慮したうえで、検討すべき。
・水道水に放射性物質の影響が及んだ水道事業者等が水道水中の放射性物質の測定、浄水処理工程における粉末活性炭の投入等の放射性物質対策を実施する必要が生じた原因は、東電福島第一原発の事故にあることは明白であり、水道料金で賄うべき水道法の規定に基づく水質管理とは異なるものとして対処すべき。
・放射性セシウムは、水道の浄水過程で濁質とともに除去され得るため、水道水からはほとんど検出されなかったが、一方で、浄水発生土に移行して濃縮されることになり、現に福島県及びその近隣の地域の水道事業者等において、浄水発生土中から放射性セシウムが検出される状況にある。これらの浄水発生土の処理方針を明確にするとともに、放射性セシウムが土壌中に残留している地域においては継続的にモニタリングをすることが必要である。
 今般、本検討会では、平成23年6月13日時点の知見を踏まえ、水道水への放射性物質の影響メカニズムの検証及び水道水中の放射性物質の低減方策等に焦点を当てて取りまとめたところであるが、今後、関係行政機関の動向を踏まえつつ、さらにモニタリング結果の情報やその他の科学的知見を集積したうえで、本検討会で示された課題についてさらに取り組んでいきたい。

 以上です。

○眞柄座長
 ありがとうございます。それでは、4章から最後のまとめと今後の課題までで御意見がある方、どうぞお出しください。では、右の浅見先生から順番に一人ずつお願いします。

○浅見構成員
 原案の段階でいろいろと入れていただきましたので、ほぼそれに沿ったものと思っております。今、読んでいただきまして、特に一般の方が今回の件で非常に不安に思われた初めてのケースでもありますし、この値が一体どういう値なのか、なかなかよくわからなかったところもあるかと思います。
 今後、もう少し長期的な取組みなのかもしれないですけれども、非常事態だったということもありますので、リスクコミュニケーションと言うのかもしれないですけれども、この値が非常時の値であって、すぐにというのが報道でもいろいろ取り上げられていましたけれども、数日間とか短い期間で直接的な影響がわかるものではないんですけれども、それが長期的にずっと飲み続けた場合というのを皆さん、不安に思われたということだと思いますので、そういう点のコミュニケーションも十分図っていく必要があるのではないかなと思いました。
 以上です。

○眞柄座長
 ありがとうございました。では、続いて。

○大原構成員
 2点あります。
 1つは、38ページ目、大量の放射性物質が再度放出された場合の措置の中のモニタリング体制に関してなんですけれども、地方公共団体に対して云々かんぬんというパラグラフがあります。対象とする地方公共団体はどういうふうに考えるのか、対象地域がこの文章ではよくわからないのでお尋ねしたいのが1点です。
 もう一つは、最後のページのまとめと今後の課題のところで、先ほど来議論がございましたけれども、放射性物質の問題というのは、多媒体間の移行といいますか、水にも土壌にも大気にも海洋にも、至るところへ汚染をもたらすという意味合いにおいて、いろいろな媒体での挙動を把握する必要がある、あるいはその科学的知見を蓄積する必要があると思いますが、モニタリングという点においても、モニタリングの連携とか、あるいはとられたデータの情報共有とか、そういった視点も必要なんじゃないかと思います。
 それで、この報告書の中にどう書き込むかというのを考える必要があると思いますけれども、そのようなニュアンスをどこかに出すことができないか、これは提案に近いものですけれども、以上2点です。

○眞柄座長
 はい。では。

○欅田構成員
 先ほど浅見構成員の方からもお話がありましたけれども、リスクコミュニケーション、数値をどのようにとらえるかに関連してです。
 40ページで、先ほどもありましたけれども、今後の課題の中で、幸いにして今回は非常に落ち着いたものですから、検出されるということがほとんどなくなった状況にありますけれども、今後においてどういった指標を適用すべきかということに関して、また考えていただければと思います。
 その際に、先ほど浅見先生の方からもお話がありましたけれども、現状設けられている指標は緊急時のものでありまして、そういった中で受け入れられるリスクはどういったものか。すなわち、そのときの介入レベルはどういったものかということで決められていますけれども、一方では、WHOの基準等に関しましては、平常時にこのレベル以下であったら、介入しても正当性はないですよという形での決め方がされている数値です。
 そういった数値が決められている背景の意味合いを少し説明を入れてあげないと、数値だけが表に出てきて、WHOの基準と比べて日本の基準はどうなのだという議論がしばしば表に出てきているようですので、それぞれの状況に応じて、私たちはどういう対応をとらないといけないのか、その根拠がどうなのかということを詳しく説明も入れながら、そういった数値の設定についての根拠を明示してあげた方が親切かなと思いました。
 以上です。

○眞柄座長
 ありがとうございます。朝長先生。

○朝長構成員
 非常によく書き込んでありまして、特にコメントはないんですが、いわゆる水の供給を受ける消費者の立場からいくと、ただいまの暫定規制値の問題が、WHOの基準と1桁違うわけで、その辺を。この報告書を一般の方がどう読まれるのかというのもありますが、その位置付けはよくわかりませんけれども、書き込む必要があるかなと思います。よく問い合わせが私の方にも参っております。
 以上です。

○眞柄座長
 ありがとうございました。では。

○古米構成員
 大きく分けて2つ御意見を申し上げたいと思います。
 1番目は、36ページのモニタリングの記載の中で、要は水道水が中心的にモニタリング対象ではあるんだけれども、ある程度流域単位で水道原水についても留意した方がいいだろうという記載があります。具体的にモニタリング箇所あるいは頻度あるいは検査対象試料というものがすべて水道水になっているので、原水のモニタリングのあり方を示す上で、水道水が中心的に最終的な検査対象であるけれども、原水とどう組み合わせるのかというところをどこかで記載しておくことがいいのかなと思います。
 そうすると、ここで書き込むのか、あるいは38ページの真ん中辺に「地方公共団体は、当該地域内の水道事業者等が水道原水や水道水の迅速なモニタリング」と、ここに両方明記されていますので、そういったところで水道原水についても十分配慮して検査するという記載がいいのかなと私は考えております。
 そういたしますと、その行から約10行下で、「大量放出事故以降、浄水場の水のモニタリングを毎日実施するとともに、可能であれば」というレベルよりは、「可能な限り」ぐらいで、原水についても十分に留意するという表現が私は適切ではなかろうかと思うのが1点目でございます。
 2点目は、40ページのまとめと今後の課題というところでございます。今回、遅ればせながら具体的な実流域でモデル解析をした結果を出すことができました。このモデル自身がどこまで有効なのかを検証すべきですが、この報告書の中でそういったモデルを活用するという今後の課題というのは、今回提示できたかなと私は思っておりますので。
 この段落の最後の方、検討の過程で連携して取組む課題の一つとして記載していただくのか、あるいは中ほどの「引き続き」云々というところで、「流域単位で水道原水や水道水のモニタリングを実施する等」の後ろに、「流域単位での流出挙動をモデル解析することによって、予見的に状況を把握する等」というような言葉を入れることによって、いろいろなツールで最大限努力して、今後の対策に向けて努力する必要があるという記載があるといいのではなかろうかと考えております。
 以上2点でございます。

○眞柄座長
 続いて、桝本先生、お願いします。

○桝本構成員
 今もお話がありましたけれども、私どもも常に水をはかっておりますけれども、測定が間に合わないものがいっぱいあります。だけれども、必ず採水はしています。採水はしていて、もし何か周りであった場合にはそれもチェックすることにしますので、その採水作業がもし手間でなければ、採るという習慣をつけておいていただくと、何かあったときにエビデンスとしては保障になります。後追いの測定でもかまわないので、そういうのがあってもいいのかなという気はいたしました。
 それから、私どもの学会も15日以降、いろいろな委員会を立ち上げまして、セシウム・ヨウ素対策委員会の中で、土壌とか水質とか野菜とか、いろいろなものを扱っております。今回の水道に関しても、試験研究的なものもいろいろなグループがやりました。ただ、情報共有がなかなか十分にいかなかったところがあります。そういう意味では、なるべくオープンにすると大原先生が言われましたけれども、いろいろな情報を出し合って協力体制を組むというのが、1つ必要かなと思いました。
 それから、もうやむにやまれぬ気持ちで、はかってやるという人たちが大学関係者にいっぱいいました。いっぱいいましたけれども、すぐ校正ができてやれている施設にお願いするということで、正確な値を出してもらわなければならないですから、そういうところだけを選んで今回、協力いただきました。それ以外にもかなり検出器が足りないと言われますが、実際にやろうとすると、そういう素質のある先生方はいっぱいおられます。
 そういうネットワークを私どももつくっておりますので、声をかけていただければ、いつでも緊急事態に対応できるようなものができるのではないかと思っています。それは、文科省も中心になって動いていただくのもそうなんですが、単なる台数調査だけではなくて、その中から、こういったものについては分担するといった、もうちょっと細かい分担計画を、省庁縦割りでなくて横断的につくっておくことが大事じゃないかと思います。
 大学も国のお金を使ってやっておるわけですから、そういったときに皆さん非常にやりたいという意識が強いですので、是非とも協力してやる体制をつくりたいと思っているところです。
 今回、本当に幸いにしてということで、ヨウ素とかの濃度は一瞬にして下がってしまいました。ですから、私どもの学会ももっと検討を続けたかったのですが、幸いにして下がってしまったために、いろいろなものの調査が間に合わないままに終わっています。ですから、科学的にアイソトープを買ってきて実験するのとは違って、原子炉から飛んでくるものについては、いろいろな複雑な様相があると思います。そういったものを基礎的に調べていくことが今後も必要ではないかと思っております。
 以上です。

○眞柄座長
 ありがとうございました。はい。

○森口構成員
 全体としては、非常によくまとめていただいていると思います。また、既に先生から御指摘ございましたので、新しい点は特にございませんけれども、私としては重要だと思うことを、改めて、繰り返しになるかと思いますけれども、触れさせていただきたいと思います。
 特に、38ページの(4)の第2段落辺りでございますけれども、今後改めて大気中へ大量の放射性物質が再度放出されるような事態が想定されるのかどうかに関しては、わかりませんし、またそういうことを発言することによって、また起きるのではないかという不安をあおってもいけないので、これは非常に発言しにくいわけですが、そう思って言っているわけじゃなくて、ロジックとしてこうだろうということで発言するということでお聞きいただきたいと思います。
 第1段落は、再度放出された場合にはこれが予想されるということで、これでいいと思うんですが、第2段落に関しては、再度放出された場合ということではなくて、される蓋然性が高いような場合から、初動を早くやるということも論理的にはあり得ると思います。
 それから、厚生労働省は収集するとともにと書かれているわけですが、先ほど御指摘があったように、受動的に収集しているだけではなかなか十分な情報が得られないこともあり得るわけですので、より積極的な公開といいますか、早期の情報提供を求めていくということも必要ではないかと思います。この辺り、文章がなかなか書きづらいところがあるかと思いますが、申し上げたいことの趣旨は酌み取っていただけるかなと思いますので、もし可能であればそのような書きぶりにしていただければと思います。
 それから、2点目は、40ページの後半部分で、「なお、検討の過程で、以下のとおり、今後関係行政機関と連携して取組むべき課題の指摘があった」というところでございます。ここは多くの指摘がありましたので、繰り返すまでもないかと思いますが、私自身も廃棄物等を含めて、いろいろな場に少しずつ関わっておりますけれども、そういった中で、この水道水に関する検討会というのは、モデルによる解析も含めて、かなり先進的な取組みがなされたのではないかなと思います。
 ですから、こういった経験は是非ほかの分野とも共有していただきたいと思いますし、特にこれも繰り返しになりますが、水道水の汚染というのは、大気、水、土壌、さまざまな媒体に関わってくるところでございます。ですから、そういったところでのモデルの結果、あるいはそのモデルの基になるモニタリングの部分は、他の多くの分野にも非常に重要な知見を提供し得るのではないかと思います。
 この検討会の報告に書くのかどうか,難しいということは、先ほど来、再三指摘のあるところでありますけれども、関係行政機関に対しても、是非そういう知見・経験の共有をしていただきたいと思いますし、また桝本委員おっしゃったように、行政機関だけではなくて、研究あるいは学会等の専門家との連携というところも、これも言うまでもなく非常に重要ではないかと思います。
 古米先生も、場合によっては1項目起こしてはどうかというお話がございましたが、この問題の解明のための科学的な知見の蓄積・活用ということに関して、より強調して書いていただけるとありがたいと存じます。
 以上でございます。

○眞柄座長
 ありがとうございました。はい。

○大塚副大臣
 いろいろと御指導ありがとうございます。私も素人なりに感じていたことを先生方にいろいろ御指導いただきました。
 今も最後、森口先生からお話がありましたが、今後の取組みについてということで、(1)から(4)までの後に番号がつかないで、まとめと今後の課題があって、そこにやや周辺の話が書いてあるのですが、もう少しそこを厚くする形で、いや、私もお願い申し上げたいと思っていたのは、さっき私も農業用水の質問をしましたけれども、当然、ほかの分野との接点があることばかりであります。
 実は、行政側がどういう縦割りを乗り越えた体制で今後臨むのかということもあるんですが、アカデミアの皆さんがどういう体制で臨んでいただくのかということがあります。先ほど桝本先生から、せっかくふだん国から予算をもらっているのでというお話もありましたが、まさしく科研費をつけさせていただいているアカデミアの皆さんが、今この局面で何か貢献していただかないと、何のための科研費かという話にもなります。これは、なかなかよそでは申し上げにくいので、さらっと申し上げますが。
 そのことは、例えばアカデミアとして、放射線の影響について、どういう公式見解を出すかということについても、是非チャレンジしていただきたいですし、そういうことが必要だというニュアンスを、もしよろしければ私もちゃんと手を加えて書き込みますので、最終チェックに御協力いただきたいんです。個別の学会では無理だと思いますが、日本学術会議でも結構なんですけれども、例えば同じ放射線量に対する評価が、科学者同士が違うことを言い合っていたら、これは国民が不安になるのは当然でありまして。
 もしアカデミアでとことん議論していただいても結論が出ないということであれば、逆に言うと、それは断定的に安全とか断定的に危険と言うこと自体が、実は非常に無責任だということを御理解いただくためにも、必要なプロセスだと思っております。
 そういうことを書き加えさせていただくと同時に、朝長先生からリスクコミュニケーションというか、WHOの問題も御指摘がありました。確かに今、我々の大半がICRPの基準に基づいてやっているんですが、WHOの基準と異なる。しかし、そのことがどういう意味を持っているかというのを書き込むという話もありましたが、そのこと自身も今、申し上げたことと関係があって。
 今日はマスコミの皆さんもいらっしゃるので、あえて少し発言させていただくと、例えばレントゲンを撮るというのは、レントゲンを撮ることによる放射線を被曝するデメリットよりも、それによって得られる事前の病気等に関する情報によるメリットが大きいからだと我々も説明を受けておりまして、そうだろうなと思います。歯医者さんに至っては、毎日レントゲンを撮ると年間20 mSv以上浴びる方がいらっしゃるというのは、そのことによる医療活動のメリットと、御自分がそれだけ被曝することのデメリットを比較してやっておられるわけです。
 そうすると、水道とか大気についても、どのぐらいの緊急時における放射線量あるいは放射性物質の観測値を許容するかというのは、そのことによって転居するとか生活にいろいろな制限を設ける、あるいは飲料水の摂取の制限を設けることのデメリットとの比較考量によって決めるべきものであって、必ずしも絶対的数値だけで断定的に判断がつかないんだということを書き込むことが、恐らく朝長先生がおっしゃっていたことにお答えすることなのかなと思います。
 この検討会の本題の部分ではないにせよ、この検討会も多分まだ続くと思っておりますので、今後につなげる意味で、また加筆させていただきますので、最終の最終チェックの段階で、また加筆した部分についても是非御指導いただきたいと思います。
 いずれにいたしましても、本当に短期間で集中的な作業に御尽力、御協力いただきましたことを心から御礼申し上げたいと思います。

○眞柄座長
 どうもありがとうございました。今、議論されたこと以外につけ加えたらいいだろうと思うのは、この報告書を見る人たちが放射性物質あるいは水道のことについて、必ずしも知識をお持ちでない方もいらっしゃるので、主要な用語については解説をつくった方がいいんじゃないか。その解説の中で、リスクコミュニケーションに関わるような表現を加えることで、今後の検討の方向も出てくるのではないかと思いますので、事務局はそれを工夫していただきたいと思います。
 それから、いずれこの報告書を基に、厚生労働省の方の水道部会でモニタリング関係のマニュアルをつくられることになるだろうと思いますので、できるだけ早い段階でその作業に入っていただく。その段階で水道水を測定することばかりじゃなくて、原水の把握が重要であるということも書き加えていただければよろしいんじゃないかと思いました。
 それから、先ほど来議論になっていますが、今は確かに出ていないわけですけれども、昨今の気候変動等を考えると、流域単位でゲリラ豪雨があちらこちらで起きているわけです。ゲリラ豪雨というのは地表の土砂を全部流してくるという、大変ややこしい事象でございます。
 そのようなことも考えると、これからあそこの原子力発電所から放出されるものばかりじゃなくて、既に流域に降下した放射性物質が今後どういう形で流出してくるか。これは、古米先生のモデルとも関係するわけですが、そういうことに対しての検討が必要ではないだろうか。
 それとあわせて、ほかの分野と情報をいかに共有するか、あるいは情報を生み出すことも協働でやるということが大事ではないだろうかと思います。我々がそういうことを申し上げて、実際には原子力安全委員会の方で具体的なテーマと方針と組織をつくってやっていただくわけですが、アカデミアだけでなくて、国としてそういうことを積極的に進めていただきたい。多分、それが大気圏にかなりの方針性物質を排出した我が国の国際的な責任でもあろうと思いますので、そういうことをお考えいただきたいと思います。
 あと、幾つかの点がございましたが、事務局で把握しておられると思いますので、適宜修文をしていただきたいと思います。ただ、重要な点は、森口先生からもお話がありましたように、6月13日時点と書いてありますけれども、6月6日の原子力安全委員会の報告がすべて取り入れられて、必要な部分が修正されているとは限りませんので、そこのところは事務局で再度検討して、必要な修正を加えていただきたいと思います。
 それでは、これで時間になりましたので終わりますが、最後に事務局の方から何かあればお話ください。

○松本管理官
 それでは、かなりいろいろ宿題をいただきましたが、この点につきましては私どもの方で修正したものを、座長と御相談した上で報告書という形にさせていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 また、本日の議事録につきましては、後ほど皆様に確認いただいた上で公開することとさせていただきます。
 次回以降の検討会につきましては、今後のモニタリング結果の情報や科学的知見の集積を見つつ、関係行政機関の動向も踏まえまして開催していきたいと考えております。
 それでは、最後に。

○大塚副大臣
 もう先ほどお礼申し上げましたが、最後の雰囲気でおわかりのとおり、この取りまとめはでき上がりとしては、まだ6割ぐらいしかできておりませんので、完成までもう少し御協力いただきたいと思います。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省健康局水道課水道水質管理室

代表: 03(5253)1111
内線: 4033 ・ 4034

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