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2011年10月31日 第7回ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理指針に関する専門委員会   議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成23年10月31日(月)
14:00~16:30


○場所

文部科学省 東館16階特別会議室 


○出席者

(委員)

永井座長 福井座長代理
小幡委員 鎌谷委員 栗山委員 高芝委員 玉起委員
知野委員 堤委員 徳永委員 藤原(靜)委員 
藤原(康)委員 俣野委員 武藤委員 山縣委員

(事務局)

文部科学省: 戸渡審議官 渡辺安全対策官 岩田室長補佐
厚生労働省: 尾崎研究企画官 田中課長補佐
経済産業省: 長部課長補佐 金澤課長補佐

○議題

(1)ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しの検討
(2)その他

○配布資料

資料1ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しにあたっての検討事項(案)
資料2遺伝情報の開示について
資料3「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」及び「臨床研究に関する倫理指針」における倫理審査委員会の構成について
資料4遺伝子解析研究に係る不適切な管理に関する事例
参考資料1三省委員会委員名簿
参考資料2ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針

○議事

○渡辺安全対策官  
 それでは、定刻になりましたので、ただいまから、文部科学省「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しに関する専門委員会」、厚生労働省「ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理指針に関する専門委員会」、経済産業省「個人遺伝情報保護小委員会」を合同で開催いたします。
 委員の皆様には、お忙しい中お集まりいただき、お礼を申し上げます。
 本日は、辰井委員、前田委員、増井委員、横野委員から、ご欠席のご連絡をいただいてございます。
 まず、配付資料の確認をさせていただきます。1枚紙で議事次第と配付資料を記載したものがございますので、ご覧いただけますでしょうか。まず、配付資料といたしまして、資料1、資料2、資料3、資料4までございます。また、参考資料といたしまして、参考資料1、参考資料2がございます。そのほか、委員の皆様方の机上には、委員資料1及び委員資料2という形でファイルを2冊ご用意しております。
 以上でございますが、不備等がございましたら、事務局までお知らせいただけますでしょうか。
○永井座長  
 よろしいでしょうか。
 それでは、ただいまから議事に入ります。資料1の検討事項につきましては、前回の委員会でいだたきましたご意見を踏まえまして、事務局と相談の上で、ゲノム指針の見直しに当たっての検討課題(案)を整理させていただきました。本日は、前回と同様に、これまでの議論におきましてまだ意見が十分に集約されていない事項を中心にしましてご議論をお願いしまして、その後、それ以外の事項の議論を行いたいと考えております。
 前回に引き続きまして、委員の皆様には、時間の制約上、ご発言はなるべくポイントを絞って簡潔にしていただけますよう、お願いいたします。ご発言に当たりましては、指針改正に当たりまして、より具体性を持った議論を行いたいと思いますので、ゲノム指針のどの部分をどのように修正すればよいか、この点も含めてご発言いただければと思います。
 では、最初に、資料1の10ページ、「5.遺伝情報の開示について」から始めたいと思います。事務局からご説明をお願いいたします。
○渡辺安全対策官
 資料1の10ページ、遺伝情報の開示でございます。この件につきましては、前回の委員会における議論を踏まえまして、本委員会の複数の委員にもご協力いただきながら、さらに個人情報保護法の所管であります消費者庁のご意見をも聞いた上で、座長と事務局とで遺伝情報の開示について整理させていただいております。詳細につきましては、資料2をまずご覧いただけますでしょうか。
 資料2、「遺伝情報の開示について」とございます。まず最初に、1番目、現行のゲノム指針と個人情報保護法の関係規定を整理してございます。そもそも、一番上の○にございますが、平成16年に個人情報保護法等の制定に伴いまして、本ゲノム指針につきまして、主に個人情報の保護の観点から見直しを行いまして、全部改正を実施したところでございます。その際には、4つ目の○にございますが、平成16年の見直しにおきましては、人間の尊厳や人権を尊重するという観点で、ゲノム指針におきましても、個人情報の保護を適切に保護することが重要であるという考え方に基づき、ゲノム指針を遵守することによって研究者等が個人情報保護法によって求められる個人情報を適切に保護することができるように配慮して、規定の改正が行われたというところでございます。
 さらに、関係規定につきまして1ページから3ページに記載させていただいてございますが、こちらは省略させていただきまして、3ページ目の右下にございます、2番目、ゲノム指針の見直しに当たっての主な論点の整理でございます。4つの主な論点について、整理させていただいてございます。
 まず1点目、遺伝情報の開示と個人情報の開示とを区分して整理することが可能か、という論点でございます。この点につきましては、遺伝情報が個人情報に該当するという場合につきましては、提供者からみずからの遺伝情報の開示を求められた場合、たとえ提供者が個人情報保護法に基づく求めであるということを明示して求めていなくても、個人情報保護法第25条の規定に基づくと、原則として遺伝情報を開示しなければならないということになります。こういったことを踏まえますと、遺伝情報が個人情報に該当するという場合におきましては、提供者からのみずからの遺伝情報の開示の求めに対する対応を、例えば「遺伝情報の提供など」に文言を変えて、個人情報の開示とは別の、より緩和した取扱いとすることはできないということが、1点目の論点でございます。
 2点目、遺伝情報の置かれた状態ごとの開示の取扱いの整理でございます。こちらにつきましては、この資料の16ページの図を見ながら説明させていただきたいと思います。16ページ、遺伝情報の開示の整理の現行の状態でございます。大きく3つ、ケースがあると思います。1つ目が連結不可能匿名化されている遺伝情報、2つ目が連結可能匿名化されている遺伝情報、3つ目が匿名化されていない遺伝情報につきまして、それぞれ整理してまいりました。
 まず1番目の不可能匿名化されている遺伝情報につきましては、(a)のような形で試料等の提供が行われる機関と研究実施機関が同一であるというケース、それから(b)のように、試料等の提供が行われる機関から研究実施機関に試料が提供されて、研究実施機関において遺伝解析が行われるというケースがございます。これら(a)(b)、双方のケースとも連結不可能匿名化されているということでございますので、遺伝情報は個人情報に該当しないということになります。また、現行のゲノム指針の解釈におきましても、そもそも連結不可能匿名化されているということでございますので、個人を特定することは不可能であるということで、開示はできないだろうという解釈をしてございます。
 2番目に、連結可能匿名化されている遺伝情報につきましては、(c)のようなケース、試料等の提供が行われる機関と研究実施機関が同じ場合、この場合には対応表と遺伝情報というのは同一機関に置かれるということになります。したがいまして、これはゲノム指針の定義によりますと遺伝情報は個人情報に該当するということになってまいりまして、ゲノム指針におきましては「原則として開示」というところがかかってくるということになります。
 続きまして、(d)のようなケース、これは、試料等の提供が行われる機関で可能匿名化され、対応表は持っていると。研究実施機関において、試料等が提供されて、遺伝情報だけを持っているという場合、この場合には研究実施機関においては遺伝情報はあるけれども対応表などはないということですので、基本的には個人情報に該当しないというのが、ゲノム指針上の考え方になります。
 しかしながら、この点につきましては、消費者庁からご指摘がございまして、本資料の5ページをご覧いただけますでしょうか。5ページの中ほどにございますが、個人情報の要件の1つである「他の情報と容易に照合することができ」とは、事業者において通常の業務における一般的な方法で個人を識別する他の情報との照合が可能な状態であるということで、他の機関において対応表を有している場合でも、機関間で組織的・経常的に相互に情報交換が行われている場合などは個人情報に該当する可能性があるというご指摘でございます。この点に関しましては、現行のゲノム指針のQ&Aにおきましても、A機関の指示によりB機関が特定の個人を識別できる情報をA機関に提供するといったことが行われるのであれば、A機関の保有する連結可能匿名化された情報は、A機関に対応表がない場合でも個人情報に該当すると、整理してございます。
 したがいまして、先ほどの16ページの絵に戻っていただきますと、(d)のようなケースにおきましても個人情報に該当するケースがあるということに留意が必要だということになっております。いずれにせよ、現行のゲノム指針におきましては、(d)のようなケースにつきましても、「原則として開示」というのがかかっているというところになってまいります。
 それから、3番目、匿名化された遺伝情報につきましては、(e)のようなケース、(f)のようなケース、ともに遺伝情報と個人識別情報が一緒になってございますから、これは個人情報に該当するということでございますので、当然のことながらゲノム指針におきましても「原則として開示」がかかってくるという整理になってございます。
 続きまして、3番目の論点でございますが、6ページ目をご覧いただけますでしょうか。遺伝情報の開示の対象となる範囲はどこまでとなるのか、という論点でございます。ゲノム指針の用語の定義におきましては、遺伝情報とは、ゲノム研究の過程を通じて得られ、子孫に受け継がれ得る情報で、個人の遺伝的特徴及び体質を示すものをいう、と定義されてございます。なお、参考に、『広辞苑』によりますと、遺伝情報とは、遺伝によって子孫へまたは細胞から細胞へ伝えられる情報であり、DNA(まれにRNA)の塩基配列として符号化されている存在となってございます。こういった用語の定義からしますと、遺伝情報とは、基本的には、マル1、解析の結果得られる塩基配列情報でありまして、マル2、こういった塩基配列情報を分析して得られる関連情報、例えば特定の疾患への罹患率などの情報をも含むとは直ちに解されないのではないかと考えられるところでありますが、ゲノム指針におきましては、開示の対象となる遺伝情報については特に明確に規定されてございませんため、上記マル1及びマル2といった情報のどこまでが対象となるかが明確になっていないというところでございます。
 なお、個人情報におきましては、個人情報とは、他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものとされております。消費者庁によりますと、「他の情報と容易に照合することができ」とは、それ自体は個人識別性がない情報について、個人を識別する他の情報との照合が可能な状態であると。例えば、企業の人事考課において上司が主観で部下を評価した記述というのも、評価を受けた部下と関連づけて管理されている場合、その評価情報は個人情報に該当するということでございます。
 したがいまして、例えば試料等の番号ごとに、上記のマル1のような塩基配列情報とマル2のような塩基配列情報を分析して得られる関連情報が管理されている場合などにおきましては、マル1及びマル2の双方が個人情報となり得るということでございます。
 したがいまして、遺伝情報が匿名化されていない場合や可能匿名化で同一法人で対応表を有している場合などにおきましては、上記マル1、解析の結果得られる塩基配列情報のみを開示すればよいとまでは言えないということでございます。これまでの議論の中で塩基配列情報のみを開示するということも可能ではないかという議論もあったんですが、個人情報保護法との関係で言うと、そこは難しいということでございます。
 4番目でございます。遺伝情報の精度や確実性が低いことのみをもって非開示とすることは可能か、という論点でございます。今回の議論の中で、これまでの単一遺伝子疾患を対象とする研究とは異なって、近年のゲノム研究では解析の結果得られる遺伝情報というものが提供者の健康状態などを評価するための情報としての精度や確実性が低いため、提供者に開示すべきではないのではないか、といった意見が出されてございます。
 消費者庁によりますと、本人以外の者による評価や判断に関する情報であることは個人の関する情報に該当することを妨げるものではないということで、情報の不確実性だけを理由として当該情報に係る開示義務を否定することはできないということでございます。
 したがいまして、遺伝情報が個人情報に該当する場合、遺伝情報の精度や確実性が低いことのみをもって開示しないとすることはできないということでございます。
 なお、平成12年の科学技術会議の「ヒトゲノム研究に関する基本原則について」におきましては、提供者にとって理解できるものか否か、または提供者本人にとって役に立つ情報であるか否かを問わず、知る権利があるとしてございまして、こういった考え方にかんがみますと、遺伝情報が個人情報に該当しないということでありましても、遺伝情報の精度や確実性が低いことのみをもって開示しないこととすることは適切ではないのではないかということでございます。
 こういった論点を踏まえまして、遺伝情報の開示に関する見直しの方向性を整理してまいりました。まず、そもそも、基本的にゲノム指針を遵守することによって、研究者が個人情報保護法によって求められる個人情報を適切に保護することができるように配慮して規定されてきたという前提がございます。その後、関連する個人情報保護法の規定については改正が行われていないということを踏まえますと、ゲノム指針を遵守することによって、研究者が個人情報保護法によって求められる個人情報を適切に保護することができるという状態を引き続き維持していくことが必要ではないかと考えられてございます。こういった考え方に基づきますと、遺伝情報が個人情報に該当する場合につきましては、遺伝情報の原則開示を維持することが必要ではないか、という結論でございます。
 また、遺伝情報が個人情報に該当しない場合、すなわち上記IIの2の(d)、先ほどの図にありました(d)のようなケースにおきましては、原則開示を見直す余地はあり得るとは考えられるところでございますが、こういった(d)のようなケースでも、機関間で組織的・経常的に相互に情報交換が行われている場合などは、個人情報に該当する可能性があるということ。それから、(d)のようなケースのみに限定して遺伝情報の原則開示を見直すといたしますと、遺伝情報の開示に関して研究者などに混乱を惹起するおそがあるということ。3番目、倫理的な観点からも、提供者の知る権利を制限することについて、社会的な理解を十分に得ることが困難ではないかと考えられること、そういうことを踏まえますと、こういった(d)のようなケースにつきましても、遺伝情報の原則開示を維持することが必要と考えられるというところでございます。
 他方、先ほども述べましたが、近年のゲノム研究では解析の結果得られる遺伝情報については精度や確実性に欠けている場合がふえてきているという状況などを踏まえて、個人情報保護法第25条の規定の範囲内で、遺伝情報の全部または一部を開示しないことができる要件を再整理するということとしてはどうか、という提案でございます。
 具体的には、遺伝情報の全部または一部を開示しないことができる要件として、これまでにゲノム指針において規定されておりました、「遺伝情報を提供することにより、提供者または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれ」といったものに加えまして、「当該研究を行う機関の研究業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれ」、こちらは個人情報第25条第1項第2号に対応する要件でございますが、そういったものを加えることとしてはどうか、という提案でございます。
 あわせて、このような遺伝情報の全部または一部を開示しないことができる上記2つの事例につきまして、ゲノム指針の細則に記載することとしてはどうかということで、次のページに事例の例を記載してございますが、当該遺伝情報がその人の健康状態等を評価するための情報としての精度や確実性に欠けており、開示することにより提供者などに精神的負担を与えたり、誤解を招くおそれがある場合、さらに、研究を行う機関において、情報としての精度や確実性に欠けているものも含めて遺伝情報のすべてを開示することにより、研究の実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合、といったところでございます。
 また、遺伝情報の開示について開示をしないことについて同意を受けているにもかかわらず、当該提供者が事後に開示を希望した場合についての細則は削除することとしてはどうかということ。
 また、研究責任者におきましては、実施しようとするゲノム研究や得られる遺伝情報の特性というものを踏まえて、研究によって得られた遺伝情報の提供者への開示に関する方針というものを定めて、その提供者などからインフォームド・コンセントを受ける際には、その方針を説明し、理解を得なければならないということ、方針の決定に際しては、以下の事項に配慮しなければならないということを指針に記載することとしてはどうかということで、アが、当該遺伝情報が提供者の健康状態等を評価するための情報としての精度や確実性を有しているか否か、イが、提供者の健康等にとって重要な事実を示すものであるかどうか、ウが、当該遺伝情報の開示が研究業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがないかどうか、というところでございます。
 さらに、開示された遺伝情報について提供者や血縁者の誤解を招くことがないように、遺伝情報を開示する場合には、必要に応じて当該情報に関してその人の健康状態等を評価するための情報としての精度や確実性などについても説明に努めることとして、誤解を招くことがないように努めるということを記載してはどうかということでございます。
 こういった見直しを行うことによりまして、研究者におきましては、引き続き指針を遵守することによって個人情報保護法に定められる個人情報の保護を適切に行うことが可能となり、研究において得られる遺伝情報が精度や確実性に欠けるという場合には、その旨を十分に説明し、説明責任を果たすということとなりまして、提供者の同意を受けることができれば、精度や確実性に欠けており提供者等に精神的な負担等を与えるおそれがある遺伝情報を提供者に開示する必要はなくなるということで、これまで以上に円滑にゲノム研究を実施することが可能となると考えられるんじゃないか、というところでございます。
 今申し上げた整理に基づきました改正イメージ案について、資料1の11ページをご覧いただけますでしょうか。右下の11の遺伝情報の開示というところの(1)でございますが、研究責任者は、提供者がみずからの遺伝情報の開示を希望している場合には、原則として開示しなければならないとありますが、この規定はそのまま残しつつ、ただし、遺伝情報を提供することによって、提供者等の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれということに加えまして、「もしくは当該研究を行う機関の研究業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがあり、かつ」という文言を加えることとする。それで、開示しないことについてインフォームド・コンセントを受けている場合には、その全部または一部を開示しないことができるというふうに整理させていただいてはどうかということでございます。
 続きまして、12ページをご覧いただけますでしょうか。細則の2.のところで、遺伝情報の全部または一部を開示しないことができる提供者等の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれと、研究業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれの具体的事例は以下のとおりとするが、個々の事例への適用については個別具体的に客観的かつ慎重に判断することが必要であるという文言を加えて、先ほど述べた事例を記載するという案でございます。
 それから、(2)のところに、研究責任者は、遺伝情報の提供者への開示に関する方針を定めて、インフォームド・コンセントを受ける際には、その方針を説明し、理解を得なければならないということを記載してございます。
 さらに(3)に、開示をする場合には、必要に応じて精度や確実性等についても説明に努めることとし、誤解を招くことがないように努めることとする、ということを記載するというイメージでございます。
 以上でございます。
○永井座長
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明に対しまして……。鎌谷委員、どうぞ。
○鎌谷委員
 私、前にも何回も申し上げたと思うんですけれども、実際に、アメリカではもう既に行われて、これから日本でも行われるようになりつつあると思いますが、本人のヒトゲノム全部の30億とか60億というのは、文書にすると、普通の本だと3,000冊、文庫本だと2万冊ぐらいになるんですね。それを開いて示すことは物理的に不可能ですよね。持って帰ってもらおうと思うと、それは何トンになるかもしれませんけれども、物理的に不可能なので、開示が、開いて示すという意味であったり、文書でというのであれば、ここに物理的に不可能である場合も例外として入れていただかなければいけないと思います。例えばメモリースティックで渡せばいいというのが開示に該当するんだったらそれはそうですけれども、これから個人ゲノムが渡されるときに、文書で渡せとか、開いて示せということは物理的に絶対に不可能なので、その辺についてちょっとお願いします。
○永井座長
 いかがでしょう、事務局。
○渡辺安全対策官
 現行のゲノム指針におきましても、遺伝情報の開示の部分には開示するときに文書で開示しなくてはならないとまでは書いてございません。したがいまして、実際に提供する際の仕方につきましては、運用で工夫されることはできるかと思います。
 なお、開示の方針を決定するという、ページ数で申し上げますと12ページの(2)のところの、開示をするといったときにどこまで開示するかということも含めて事前に検討をした上で、インフォームド・コンセントの際に提供者に説明をするということが重要なのではないかというふうに考えます。
○鎌谷委員
 でも、メモリースティックを渡すことは全然、私は開示にはならないと思うんです。開示といったら、少なくとも見せて、ディスプレーの中で全部の30億個を1週間かけて見せるとか、そういうふうなのが自然な解釈であって、開いて示すというのが、メモリースティックで渡すとか、eメールで渡すということでいいかどうかというのは、非常に疑問だと。私は前にも、そういうふうに文書の開示なんですかということはお聞きしたんですけれども。
○永井座長い
 いかがでしょうか。
○鎌谷委員
 もし、その辺が疑問であって、文書によって開示しなければいけないと、開示というのが開いて示すということであれば、物理的に開示が不可能な場合というのも一つ、除外基準に入れていただくと。そうでなければ、メモリーとして渡すだけでよいというふうなことが妥当と考えられるような記述にしてもらわないと、個人ゲノムの全ゲノムを解析することは不可能だと思いますね。
○永井座長
 いかがでしょうか。
○渡辺安全対策官
 開示のときにどういった形式で出すかということにつきましては運用で、どこまでということにつきまして、例えば補足が必要であれば、Q&Aなどで整理して、こういった開示の仕方もありますということを整理することとしてはいかがでしょうか。
○鎌谷委員
 法律家の方に聞きたいんですけど、開示というのはどういう解釈なのか。メモリースティックで渡すだけでもほんとうにいいのかどうかということを、ガイドラインとか法律に書かれた場合、どう解釈されるかというのを聞きたいんですが。
○永井座長
 いかがでしょうか、高芝委員。
○高芝委員
 個人情報保護法では、たしか文書でというような前提になっていたかと記憶しているんですが、ちょっと資料を確認してみます。
○鎌谷委員
 そうすると、3,000冊の本を全部示すのは数カ月かかると思うんですよ。
○永井座長
 要するに、開示のスピードをはるかに上回る形で解析が進んでいるということなんですね。
○鎌谷委員
 はい。もっと詳しいことを言うと、実は出ている配列というのはそのまた数十倍なんですね。だから、全部出せと言われれば、何百万冊。
○高芝委員
 すみません、確認しました。お手元の委員資料1の中で、7つ目に個人情報保護法施行令というところがございます。それの6条を見ていただけますでしょうか。そこでは、法第25条第1項、これは個人情報保護法の開示の規定なんですけれども、その政令で定める方法としては、書面の交付による方法、これが原則になっています。ただ、括弧書きがありまして、開示の求めを行った者が同意した方法があるときは当該方法となっていますので、先ほど事務局の方からお話ありました、事前にインフォームド・コンセントの中で、この方法の同意を受けるというのは、一方法かと思います。
 以上です。
○永井座長
 事務局、どうぞ。
○渡辺安全対策官
 補足させていただきます。先ほど私のほうから、遺伝情報の開示のところでは文書でとまでは書いていないということを申し上げましたが、個人情報保護の観点から申し上げますと、ゲノム指針におきましても、参考資料2のゲノム指針の12ページをご覧いただけますでしょうか。12ページの(23)に、個人情報に該当する場合という前提でございますけれども、個人情報の開示を求められたときは、文書により個人情報を開示しなければならないというふうに書かれてございます。しかしながら、趣旨につきましては、先ほど高芝先生がご説明されたように、個人情報保護法の規定を踏まえた規定でございますので、先ほどの個人情報保護法の施行令に準じた取扱いも可能になるのではないかというふうに考えております。したがいまして、運用でそういったことが可能ということも、Q&Aなどで補足していくことが必要ではないかというふうに考えております。
○永井座長
 鎌谷先生、運用で可能かどうかですね。開示用ソフトでもあればまた別なんでしょうけど、どうですか。
○鎌谷委員
 私は、開いて示すということが開示じゃないかと思うので、メモリースティックではいって渡すのは開示かなあと。開示とは言えないのではないかと思うんですけど。開いて示すですよね。だから、そこ……。
○永井座長
 メモリースティックで生データをそのまま渡すことではなくてというのが多分、事務局の趣旨だと思うんですが。
○鎌谷委員
 そうすると、具体的に3,000冊の本の中身をどういうふうに……。1ページ目だけでいいというふうなことでしょうかね。だから、一つの方法は、物理的に不可能である場合を除外基準に入れていただくとか。開いて示すというのを具体的に言われないと、全くできないですよね。じゃあ、例えば1ページ目だけでいいのか。
○渡辺安全対策官
 他の省庁のガイドラインなどにおきましても同様の問題は想定されると思いますので、そういったところも含めて調べて、ゲノム指針を運用していく際に、どういった形がいいかというのをQ&Aなどで整理してまいりたいと思います。
○永井座長
 ほかの例と違って、これは膨大な量を扱わないといけないというところが問題だということですね。
 堤委員、どうぞ。
○堤委員
 今の話とも絡むんですけれども、今回、個人情報保護法との関係を整理していただいた資料2につきましては、非常によく整理していただいたと思います。その延長線上にあるのが、まさに鎌谷先生がおっしゃられた、物理的にどうするのかという話になろうかと思うんでございます。法律との関係につきましては今回整理していただいたとおりで、前回の改定の後でわりとうやむやにして、何をどう開示しなきゃいけなかったかというのが、今議論していただいた話も含めて明確になってきたのかなというふうには感じております。そういう意味で今回の整理は、整理としては非常によくしていただけたのではないかなと思っております。
 あと、後半部分の鎌谷先生ご指摘のところで、どこまでというのは、やはり何らかの形で明確にしませんと、例えば、Aという病気にかかわる部分だけを、30億塩基の中から意味があると思われるところだけを開示するとか、30億塩基を全部、Aにかかわる遺伝子の型、Bという全く別の疾患、Cという全く別の疾患にかかわる情報・解釈、それまで含めて全部お教えしなきゃいけないのかという、その線引きはやはり明らかにしておく必要があるのかなというふうには思いましたけれど。
 以上でございます。
○永井座長
 意味というのは、なかなか簡単にはわからないです。
○堤委員
 ですから、鎌谷先生がご心配されている物理的に無理というのは、そこも含めて物理的に無理なんだということじゃないかなというふうには感じたんでございますけれど。
○永井座長
 いかがでしょうか。考え方の整理は、ここまでのところで随分進んできた。しかし、これからは現実の問題に向き合わないといけないですね。現実の問題にどう対応したらいいのか。
○知野委員
 今おっしゃられたことなのですが、意味というのはそう簡単にはわからない。そうしますと、ここの改正イメージに書いていらっしゃる、提供者または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益に害するおそれがありというときには開示しなくていいということですけれども、これ自体もそうかどうかということがわからないわけですね。
○永井座長
 かなり確率の高い話と低い話が混在しているということですね。かなり確率の高いことについては、言えると思いますけど。
○知野委員
 多分、わからないということと、研究業務の適正な実施に支障を及ぼすという、この2つが出てくると、ほとんど開示しないということと、ほぼイコールになってしまうのではないでしょうか。
○永井座長
 鎌谷委員、いかがですか。
○鎌谷委員
 財産を害するとかいうことも100%はわからないわけで、確率的というか、場合によってはその人の主観。しかも30億もあれば誤りの確率もあるし、なかなかこれでイエス・ノーは難しいんじゃないかと思うんですね。でも、それにもかかわらず30億の中の1文字間違えていたら数世代にかかわって重大な病気になるということもあるので、1つの違いの重大性と、全体の膨大さと、しかもそれぞれのあいまいさというのが混在しているという非常に難しいところなので、普通の常識的な考え方で原則開示と言われても、現実問題としては非常に難しいというのが、私の考えなんですけど。
○永井座長
 そうすると、具体的にどうすればいいというふうにお考えでしょうか。
○鎌谷委員
 私は、先ほど言ったように、物理的に不可能な場合、あるいは開示というのを明示的に、情報を電子媒体として渡せばよいとか、1ページ目、部分的に示せばよいとかいうふうなことがはっきりわかるようにしていただくといいんじゃないか。私個人的には、最初の物理的に不可能である場合というのを除外基準として入れていただくと、それは大丈夫だと思います。
○永井座長
 堤委員。
○堤委員
 今の鎌谷先生のご意見とも絡むんでございますけれども、今回の改定の方向性のところで、例えば資料2の8ページのところで、これまでは個人情報保護法第25条第1項から引用されていて、原則開示があると。ただしというのが、1号、2号が入ってくると。今回は2号を足していこうというご提案をいただいているわけですけれども、開示しないということに関しても、結局、25条1項1号及び2号ですね。今回足そうとしている2号を根拠に開示しないということが個人情報保護法でも担保されるということになりますので、そこを開示しないということはそもそも個人情報保護法でも担保されるんですよということを前面に出していただいておくような改正の文章にしていただければ、全部を開示するということも含めて研究の業務に支障を来すんだから開示できませんという根拠になるのではないかというふうに考えたんでございますけれども、いかがでございましょうか。
○永井座長
 いかがでしょうか。高芝委員。
○高芝委員
 ここは、研究業務自体に著しい支障を及ぼすかどうかということで、開示の場面で検討する課題があったとしても、研究自体に著しい支障を生ずることにはならないのではないか、場面が違うのではないかというように思います。その意味では、先ほど開示するのは膨大であるという、確かにそうだということを教えていただいたのですが、それは先ほどの文書でという限定があると確かに窮屈だなというように思うのですけれども、そこを開示の求めを行った者の同意を得るということによって他の方法を広げることができることは、法律の方ではそういう仕組みになっていますから、その仕組みをこちらでも入れていただければ、現実的な解決方法はあるのではないかなというように思います。
○永井座長
 鎌谷委員、いかがですか。文書でなくても、ディスプレー上で位置づけがわかるように開示するのも、相当大変……。
○鎌谷委員
 それも全部は無理ですよね。3,000冊の本の全ページを……。
○永井座長
 ええ、だから文書の話では必ずしもない。
○鎌谷委員
 全部をするとして、可能なのは、電子媒体で渡すことだけだと思います。
○永井座長
 生データを電子媒体だけで渡す。
○鎌谷委員
 はい。あと、見せろと言われると、1ページ目とか、2ページ目とか、その一部。だから、開示というのが開いて示すということでないということも含むということが確認できないと、業務はできないと思います。もしそれが、原則は文書になっているけれども、そのほかの方法ということであっても、ただメモリーを渡すだけが開示にならないように、私には思えるんですけど。
○永井座長
 例えば、このデータはこれこれの方法に従っていけば、全部ゲノム配列のどこの部分に相当すると張りつけて、あとは解析することができますという、そこまでは言うことができますか。
○鎌谷委員
 多分、研究者もそれを全部解析できるわけじゃないと思います。ただ、ほかの人が見れば、研究者とは別のところの意味がわかってくることも確かですね。
○永井座長
 今、こういう解析をするゲノムインフォマティクスの人が求められていて、極めて人が足りない、人材が足りないという状況にあるわけですね。そういう状況で生のデータを渡された被験者の方もおそらく極めて困るであろうというのが、鎌谷先生のご趣旨だと思うんですが。
○鎌谷委員
 それはおそらくどうなのかというと、持っておいて、どこか別の人たちがつくったソフトウエアに通して、自分はどのぐらい病気になるんだとかいうことをやることは十分考えられますね。
○永井座長
 でも、その場合でも、意味は簡単にはわからないですね。
○鎌谷委員
 わからないし、誤りが多い。
○永井座長
 そういう状況に入ってきているんですね、ゲノム研究というのが。それを明らかにするのがまさに研究の目的で、研究が終わってみないと、意味というのはわからないわけですね。どうでしょうか。
○渡辺安全対策官
 今の鎌谷先生のお話ですと、そういった配列情報自体も不確実性が高いということなのであれば、先ほど説明いたしました(2)のような、方針を決めるときに、得られる遺伝子情報の性質というのを考えて、求められたときにどういう情報を開示するかということも含めてまずその方針を決めて、求めがあったときには、遺伝情報をそのまま返すということではなくて、それが意味することがわかっている範囲で返すとか、そういう形で、全部または一部開示するという、その範囲も含めて整理してインフォームド・コンセントをとるという運用が可能ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○永井座長
 これからの研究についてはですね。ただ、現実にはどんどんゲノム解析は進んでいますけれども、鎌谷先生、その辺の状況というのはどうですか。
○鎌谷委員
 現実には全配列を渡している機関がたくさんあるのは事実ですよね。しかも、研究者が選んで渡すといっても、知っているのに何で渡さないのかという、もともとの個人情報保護法上の問題は出てくると思うんですね。問題になっているのは、膨大さであって、あいまいさではないわけですね。現実に、30億の中で10-7ぐらいの精度というのはものすごく正確なんですけれども、30億にすると誤りは非常に多いわけですね。だから、今問題になっているのは、誤りがあるということではなくて、膨大で物理的に不可能であるということなわけですね。その一部を見せればいいというようなことになると、またもとに戻って、じゃあほかのところも個人情報なのになぜ戻さないかということになるのではないでしょうか。だから、私はやっぱり、物理的に不可能であるとか、明示的に一部だとか電子媒体だけで渡すことを容認するような文書を載せていただかないと、なかなか難しいのではないかと。
○永井座長
 いかがでしょうか。ほかの委員の方々から、ご意見伺えますか。
 知野委員、どうぞ。
○知野委員
 そうしますと、開示を求めるというのは、生データが欲しいということではなくて、それにまつわるいろいろなことを説明してほしいという、そういうことなんだと思うんですが、その道が全く閉ざされるのではないか。殊に今回の改正で、最初に開示をしないということに同意が得られていたら、先ほど、「開示することとする」という、その文を削ることにしていますから、非常に、排除するというか、全体のトーンとしてそうなっているような感じがします。
○永井座長
 そうすると、知野さんとしては、どういうふうにして……。
○知野委員
 少なくとも12ページの2のところの、全部消していますが、「事後に開示を希望した場合には~開示することとする」という、そこまで削る必要があるのかなということはちょっと感じますけれども。
○永井座長
 ただ、先ほどの議論では、これが膨大過ぎて意味がわからないし、物理的にほんとうにできるのかということが問題になってきていたんですけど、それはもうしようがないと、とにかく出せるものは出してくださいということでしょうか。
○知野委員
 最初の段階で要らないと言ってしまったらその権利が削除されるみたいなことは、しないほうがいいのではないかなと思います。
○永井座長
 それはそうなんですけど、物理的にどうするんだと。膨大なデータをメモリースティックでお渡しすればいいのか、整理してくれというのかですね。全部の配列のひな型があるわけですね。そこに200とか300ぐらいの断片が何万と出てくるわけです。同じところも何度も読んでいて、違うところもいっぱいあるわけですが、それを張りつける作業をしていかないといけないんですね。そうしないと、どこの部分のどの配列ですということも言えないわけです。それを鎌谷委員が膨大な作業と言っておられます。
○知野委員
 そこもわかっています。伺って、ああそうだなとは思いましたが、ただやっぱり、開示を求める側としては、そういう生データが欲しいということではなくて、間違いはあるかもしれないけど、知りたいと思えば説明してほしいという、そういうことではないでしょうか。
○永井座長
 そうすると、全部張りつけて渡してほしいと。出てきたデータを全部、ひな型、ヒトゲノムの番地に合わせて……。
○知野委員
 すみません、私はそういう物理的なことを申し上げているのではなくて、自分の情報が解析されて、知りたいと思ったときに知ることも可能になるような形で、多分そういうことを知っていて受ける人はそんなに多くないと思いますので、そういう説明、できないなら、できないなりの説明、それから、もっと丸まった形で説明をしてほしいと、そういうことだと思います。
○永井座長
 鎌谷委員、いかがでしょうか、今のご意見。
○鎌谷委員
 非常によくわかります。わかるけれども、やろうと思うと1人の人に何年間かかかってしまうという状態になりかねなくて、しかも、配列から確かにこの人はこの病気になるとわかる場合もあるんですね。あと、何百個のその可能性はすべて間違いである場合もある。だから、意味がある場合は確かにあるんだけれども、その数があまりにも膨大で、誤りも確かにあると。今、私が言ったのは、誤りがあるということよりも、膨大な情報を、どこに意味があるということもわからないけれども、どこにも意味がある可能性かある、それをどういうふうに開示したらいいのかということなんですね。
○永井座長
 ちょっと、ほかの研究者の方にも伺いたい。徳永委員、どうですか。
○徳永委員
 この(2)の解釈というのは、私などでは、この疾患にかかわる遺伝子を何とか探そうと、ゲノム全体から探してきて、結果としてだんだん詳しい解析をしていった、最終的にまず間違いなかろうというところまで解析した結果について、その意味をつけ加えてご説明するというような、そういう種類の開示を意味するように考えます。30億個調べてきた、その結果まで全部開示というふうには考えにくいと素直に思います。だから、多分間違いないと考えられる結果、つまり絶対というのは難しいかもしれませんが、研究の成果としてここだけは報告できるというところをご報告して、今考えられる意味はこういうことですというふうにお伝えするのがいいのかなと。
○永井座長
 必ずしも生データを全部出す必要はない……。
○徳永委員
 そういう意味にはとらない。
○永井座長
 ということですね。意味がわかるまでも、出す必要はないと。
○徳永委員
 そうですね。将来的に意味がわかってきたときにどうするかということは、やはり考えなきゃいけないと思いますが。
○永井座長
 論文が出て、その論文の中で言えることについてはお伝えするという、そんなイメージだということですね。
○徳永委員
 はい。
○永井座長
 それでよろしいんですか。
○知野委員
 はい。データが欲しいとか、そういうことではなく。
○永井座長
 ではなくて、ですね。
○栗山委員
 ただの同意です。おっしゃるとおりだと。
○永井座長
 いかがでしょう、事務局。これは、そういう意味に解釈していいのか、もっと広く開示すべきだと言っているのか。
○渡辺安全対策官
 まず、知野委員からありました12ページの2.のところを削除することについての補足でございますが、このところにつきましては、今回、(2)という形で、そもそも研究のデザインを考えるときに、遺伝情報を提供者に開示するかという方針もしっかり考えると。さらに、同意を受けるということを前提として、2.のような規定を削除する。ただ、削除するというのは、例えば事後に提供者が提供してくれと言ったときに、開示してはならないということではないということであります。提供者から開示の請求があったときには、最終的にどうするかというのは機関のほうで判断していただくということでございますので、2.を削除することによって提供者が遺伝情報を得られなくなるということではないということは、補足しておきます。
○永井座長
 それから、開示の範囲ですね。生データなのか、論文で書かれてある程度意味づけをしたところまでについて、そこまでは集団について論ずるわけですから、個々については、その限りにおいて個々について説明をしてさしあげるという、そういう開示の仕方であるという意見だったように思うんですけど。
 高芝委員。
○高芝委員
 法律の考え方を参考にということでお話しさせていただきますが、開示の範囲は、個情法の方ですけれども、開示を求める方が希望する範囲を特定するということになっています。どういう情報を持っているかということを説明して、その中でこれとこれを開示してくださいというようにチョイスすることになっていますので、その意味では、言われたらすべてを出すというのではなくて、希望のある情報を出すというスキームになっているというのが、一つです。
○永井座長
 でも、逆に言えば、すべてを希望すれば、すべてを出すということですね。
○高芝委員
 はい。
 それから、その出し方の方法で、先ほど、開示というのを開いて示すということで、言葉のイメージでとらえておられたところもあろうかと思うのですけれども、現行法でも、開示を求めた人の同意する方法によればいいので、データでもらうという方法は想定していると思います。それは、同意の問題はありますが、現実的に可能な方法をとればよろしいのではないかなというように考えております。
○永井座長
 今のはちょっと、また量の問題に戻っていくんですけれども、すべてを希望した場合には全部出すということになると、それはまた物理的に可能なのか。そうすると、意味はなくてもいいわけですね。生データで。
○高芝委員
 どう使うか、どう考えるかは、受け取った方の問題、提供を受けた者の方の問題ですから、そこまで開示する方が忖度する必要はない。何に使うかとか、そういうことは、考える必要はない。
○永井座長
 とにかく、200ベースぐらいの断片を何万個かお渡しするだけでもいいと。
○高芝委員
 そういう状態であれば、その状態のものをお渡しすればいいと思います。受け取った方がそれをどうするかという問題だと思います。
○永井座長
 いかがでしょうか、徳永委員、鎌谷委員。
○徳永委員
 そこになりますと、これまでも何回か出た話ですけれども、ある確率で間違いがあるものですから、そこがたまたま全然予想もしない病気の原因遺伝子であるというふうに間違って判定される可能性があるという……。
○永井座長
 それは、ご本人が希望しているわけですから、間違えているかもしれないということを条件としてお渡しすればいいわけですね。
○高芝委員
 間違っているかどうか、それは、この法律でも、間違っている場合には、そのまま出して、ご本人から訂正の求めという訂正の要請があることを前提につくられています。訂正の求めの手続があるということは、間違ったものをお渡しすることも前提としているということです。
○徳永委員
 今の意味は、提供する側に誤りがあるという意味ですか。
○高芝委員
 例えば、遺伝情報ではないのですけれども、名前が登録されているときに、誤字・脱字ということは当然あるわけですね。その方の個人情報としてお渡ししたときに、私の名前の漢字が違っているとか、そういう訂正は当然あるわけです。
○永井座長
 だけど、遺伝情報の場合には、渡された塩基配列を自分でもう一度シーケンスしてみたらここは違っていましたと、研究者のほうに訂正を求めるということもあり得ると、そういうふうに私には聞こえたんですが。
○高芝委員
 一般論としてはそういうケースは少ないだろうと思いますけれども……。
○永井座長
 実は、それが頻回にあり得るのです。
○高芝委員
 そうですか。
○永井座長
 それから、同じ部分の配列も何千何万と出てくるのです。それでも、合っているものと、ばらばらの違いのものが出てくるということなんです。それをお渡ししたときに、ご本人はその配列を気にしてどこかに依頼してきちっとやってみたら配列が違って、それを研究者にフィードバックするということは十分あり得ると思いますけれど、ただ、間違った情報を真に受けてご心配されてしまうということもあるということです。
○高芝委員
 その点はやはり重要な点だと思います。今回の指針の案でも、(3)で誤解を招くことがないように努めるということで押さえているのは、その趣旨だと思って読ませていただきました。
○永井座長
 そういうことが物理的にできるかということです。それから、知野委員は先ほど、そういうのを渡されても困ると言われても、本人が希望すればしようがないわけですね。
○知野委員
 もちろんそうです。
○永井座長
 大きなハードディスクを持ってきていただいて、そこにぼんとお渡しして、解析した部分についてはちょっと説明をしてさしあげるみたいな、そういう感じでしょうか。
○知野委員
 ただ、先ほどおっしゃられたように、意味ある説明、それはすべて正しいとは言えないにしても、今のこの時点でわかる説明をしてほしいというのが、一般の人たちが望む開示なんだと思います。
○永井座長
 それは、すべてについてはもちろんできませんし、まさに業務に支障が出てしまったときにどうするかという問題は残るわけですね。
 武藤委員。
○武藤委員
 今、知野委員がおっしゃっていることは、ニーズとしてはよくわかるんですが、それはこの開示に当たるものなのか。お聞きしていると違う印象を持ちまして、研究に協力してくださっている方が自分の解析の状況が今どういうふうになっているのかということを研究者に解説してほしいということと、この法律の理念に基づいてつくられている開示の請求というのは何か違う水準の営みのような気がしますが、研究者に、渡してある自分のサンプルが現在、どういったデータの解析状況になっていて、どういうふうに進んでいるのかをちょっと解説してほしいというのとは違うご要望なんですか。
○知野委員
 何を要望するかは、人によっていろいろあると思います。ただ、膨大な生データを渡してほしいということとは違うんじゃないかということを申し上げただけですけれども。
○高芝委員
 武藤委員が言われているのは私も同意見でして、私の発想は、私が理解している個人情報保護法の考え方という限りなのですけれども、持っているデータを、それは、事実もあるでしょうし、評価もあると思うのですが、それをお渡しするのが開示です。それに対して、説明義務的なものですかね。補助的な説明を求めるところまでは、入ってないと思います。
○堤委員
 それでいきますと、資料2の6ページのマル2にありますように、塩基配列情報を分析して得られる関連情報も、個人情報保護法に基づくと開示の対象になるわけですよね。
○高芝委員
 なります。
○堤委員
 そうすると、こんなデータを持っていますというのはだめですよというのが、資料2の結論の一つでもあるわけですね。そこで、今、実際にどうするかというところと個人情報保護法での取扱いの方針のコンフリクトが起きているわけです、具体的にどうするか。要するに、得られた関連情報というものの内容をどうしますか、物理的にどうしますかというところが明確にならないと、原則開示での広がりがうわーっと大きくなり過ぎて、どうしましょうかということになっている。
○永井座長
 今、そこがまさに問題になっているわけです。
○高芝委員
 趣旨は分かりました。私の理解では、分析した関連情報を持っていれば、評価情報で手持ちにあれば、それは開示の対象になります。そうではなくて、付加的にいろいろ説明をさらに加えるという部分は、その時点では持ってない情報ないしは入力したりいろいろしなければならなない情報は、その時点で手元にない情報ということで、そこは分けられるのだろうと思っています。
○渡辺安全対策官
 高芝先生がおっしゃったように、開示の対象になり得ると思います。ただし、わざわざ今回、例外規定を整理させていただきましたのは、対象とはなり得ますけれども、その提供者または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれや、機関の研究業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合などは全部または一部を開示しないことができるということになってございますので、そういった非常に不確実な情報で、かつそれを開示すると提供者に負担を生じるというケースに該当するのであれば、この「ただし」のところで読んで、全部は開示しないにしても、一部を工夫して出すとか、そういったことを、まさに12ページの(2)のところで方針を決めていただいて、開示の請求があったときにはそういう形で開示をしますよということを整理するということは可能ではないかというふうに思います。
○永井座長
 鎌谷委員、いかがでしょうか。
○鎌谷委員
 開示すると具体的にどういうことが起こるかというと、やっぱり役に立つと思うので、おそらく全ゲノム配列を欲しいという人がどんどん出てくると思います。だから、現実的にはメモリースティックみたいなので渡すのでいいというふうなことが保証されれば、私はそれでいいのではないかと思いますけど。
○永井座長
 ちょっと意味がよくわからないところもありますけれども、ただ、解析はこういうふうにしていけばできますよぐらいは指示してあげて、あとはご自身でなさってくださいと。
○鎌谷委員
 そうですね。場合によってはそれを別の機関に頼んで解析をしてもらうということもあり得るし、私は現実に、おそらく全ゲノム配列を決定すれば、欲しいという人は非常に多いと思います。今であれば、非常に簡単なものでも、数十万円から数百万円でやってもらいたい人も、非常に多いんですよ。だから、欲しいという人は絶対に出るので、それを3,000冊の本で返すわけにいかないので、メモリースティックであれば、先生が言われるように、デプスをものすごくというのは無理かもしれないけど、30億であれば、普通の簡単な、今であれば安いメモリースティックに入るので、それでお渡しして、簡単な説明をして、ということは可能だと思います。
○永井座長
 開示の基本的な方法ですが、これはメモリースティックでよろしいということをある程度保証してあれば、現場は対応可能であると。デジタル情報でもよろしいと。この点についてはいかがですか。ただ、後はこうやってくださいという指針を与えないといけないですね。
 山縣委員。
○山縣委員
 基本的に今回のこの整理は、私もよくできていると思いますし、それから、知野委員が言われた2番のことに関して、ここを削除して(2)にすることに関しても、私はそれがリーズナブルというふうに思います。といいますのも、これはあくまでも研究であって、遺伝子解析のサービスとは違うというのが一番最初の議論からあるように、とにかく開示しないという同意があるにもかかわらず開示していくと、サービスと研究に提供したものというのが非常に混同されてしまって、それはいろんな意味で社会のいろんな営みに問題が出るんじゃないかというふうに思うんです。提供される方の意思に基づいてそれをある程度説明するというのはこれまでも研究に対してのご協力に対することとしてやっているわけですが、それがどうも、今、鎌谷先生もおっしゃいましたが、サービスとしては何十万円、何百万円もかかる情報提供を受けるような形での研究への参加ということに関しては、非常に混乱を招くような事態になるんじゃないかというふうに思いますが。
○永井座長
 この議論はそろそろこの辺までにしたいのですが、鎌谷委員としては、電子媒体での情報開示であれば、そのことが保証されていれば、この原案でもいいだろうと。
○鎌谷委員
 はい。あと、そういうことを開示する研究者の教育が必要で、この中には非常に誤りがあるとか、どういう意味があるとかをちゃんと説明できるようにしなきゃいけない。その条件で電子媒体で開いて示さなくてもいいということが保証されれば、私は可能だと思います。
○永井座長
 事務局、いかがでしょうか。
○渡辺安全対策官
 個人情報保護法の先ほどの施行令との関係を踏まえて、細則もしくはQ&Aなどで整理させていただきたいと思います。
○尾崎研究企画官
 ちょっと確認したいんですが、その場合というのは、例えば全ゲノム解析とか、先生がおっしゃっているようなある程度大きいときについては電子媒体ということなのか、あくまでもそういう理解をとりあえずしておけばいいのかという。普通にできるようなときは電子媒体じゃなくてもいいと。
○永井座長
 ある遺伝子の配列をとことん解析して、個人についてまず間違いないというところまで配列がフィックスしたような場合については、最終的なところをお渡しすればいいように思いますけれど。意味もつけてですね。ただ、特に膨大な情報を開示請求なさった場合にはそれなりの対応になってしまうという、そういう整理だと思いますが。
 鎌谷委員、そういうことですね。
○鎌谷委員
 もちろん、そのとおりです。物理的に不可能な場合だけは電子媒体でもよいということだと思います。
○堤委員
 鎌谷先生のご意見に反対という立場ではないんですけれども、開示をスティックでどんどん渡せるというのが前面に出過ぎますと、逆に研究に支障が起きるんじゃないかなと、私なんか外の人間から見ていると思いますので、返すとしたら、最低限そういうこともあり得るわけですよね。USBとかスティックで返す場合もある。だけど、それは全員に返すものではないということを少し考えておきませんと、全体が進まなくなるんじゃないかなと思います。
○永井座長
 でも、個人情報保護法というのは、要求された場合には全員にお返しするということですから……。
○堤委員
 そう、全部返さなきゃいけないという、これが今回の整理ですから、まさにおっしゃるとおりです。
○永井座長
 というか、今回ではなくて、前からそういうふうになっているわけですね、個人情報保護法というのは。そことの対応をどうするかですから、最悪の状況に我々は対応しておかないと、現場は混乱するばかりですね。
○堤委員
 それで、もう一つ追加としては、先ほど申し上げましたように、25条1項2号のところが入ったということでただし書き以降がございますけれども、開示しなくていいときの要件も個人情報保護法で担保されているというところをすぐわかるような形で、Q&Aでそこが何号に由来している文章だというのがすぐわかるように、ぜひしておいていただきたいと思っております。
 以上です。
○永井座長
 はい。では、この件についてはさらに事務局で整理していただき、また次回ご議論いただきたいと思います。
 次に、26ページ、「7.試料等の収集・分譲の在り方について」でございます。事務局から説明をお願いいたします。
○渡辺安全対策官
 資料1の26ページをご覧いだたけますでしょうか。試料等の収集・分譲についてでございます。
 これにつきましては、改正イメージ(案)を27ページの右下に記載させていただいてございます。既存試料等の提供に当たっての措置。すなわち、ある研究機関において試料等を用いて研究を行っていたと。研究終了後、その試料を保存していたというケースに、その試料を他の機関に提供するという場合でございます。既存試料等の提供を行う者は、所属機関外の研究を行う機関にゲノム研究に用いるために試料等を提供する場合には、提供時までに提供や利用に係る同意を受けるということを原則とすると。ただし、当該同意を受けることができない場合には、次のいずれかに該当するときに限り、既存試料等を研究を行う機関に提供することができるということで、マル1が、当該既存試料等が連結不可能匿名化されているということ、マル2が、当該既存試料等がマル1に該当しない場合において、既存試料等が連結可能匿名化されており対応表を提供しない場合は、その研究の実施及び提供について情報を提供者に通知し、または公開していることについて倫理審査委員会の承認を得て、所属機関の長の許可を受けていること、という案でございます。
 この点につきましては、28ページに※で注記を付してございます。上記マル1及びマル2以外の場合、すなわち当該既存試料等が個人情報となるような場合につきまして、当該既存試料等を本人の同意なく第三者に提供するということについては、個人情報保護法第23条第2項(いわゆるオプトアウト)に基づいて第三者に提供される個人情報について、本人の求めに応じて当該本人が識別される個人情報の第三者への提供を停止することとしている場合であって、(ア)第三者への提供を利用目的とすること、(イ)第三者に提供される個人データの項目、(ウ)第三者への提供の手段または方法について、あらかじめ本人に通知し、または本人が容易に知り得る状態に置いていることが要件となる、というところでございます。
 しかしながら、「本人が容易に知り得る状態に置いている」とは、1回限りの公表で足りることとはせず、一定の事項について、時間的にも、その手段においても、本人が継続的に「容易に知る」ことができる状態に置く必要があるということ。さらに本人の求めに応じて当該本人が識別される個人情報の第三者への提供を停止することが要件となるというところでございますが、今回のゲノム研究におきましては、既存試料等が試料等の収集・分譲を行う機関を経由してさらに他の機関に分譲され得ることなどを想定しますと、現実的にこのような措置をとることは困難ではないかということでございます。
 また、提供者や血縁者の遺伝的素因を明らかにする可能性のある遺伝情報が個人情報として流出することになると提供者等に重大な権利利益の侵害をもたらすおそれもあるということで、上記マル1及びマル2以外の場合に当該既存試料等を本人の同意なく第三者に提供することについては慎重な検討が必要ではないか、ということでございます。
 なお、「経済産業分野のうち個人遺伝情報を用いた事業分野における個人情報保護ガイドライン」におきましても、遺伝情報の特性に配慮して、いわゆるオプトアウトは認めていないという現状となってございます。
 以上でございます。
○永井座長
 ただいまのご説明に、ご質問いかがでしょうか。いかがでしょうか。
 研究されている委員の方、いかがでしょうか。徳永委員、いかがでしょうか。
○堤委員
 これは、ご提案いただいた内容で違和感なく読ませていただいたんですけれども、この趣旨のとおりでよろしいかなと思うんですが、逆に見落としてないかどうかが私は心配なんですけれど、そんな印象でございます。
○永井座長
 小幡委員。
○小幡委員
 1点だけ、今から想定されることで困るのは、1の場合、2の場合はもちろんそれはそのままでいいのですが、1と2に該当しないような場合が起きる。要するに、個人情報というか、対応表を持たないでどこかの機関が研究する・分譲するということはいいと思うのですけど、対応表を持っていて分譲することは不可能になるわけです。ですから、例えばバンクに資金がなくなってどこかに渡さなくてはならないときに、個人情報というか対応表は次の機関に渡せなくなる。対応表を持った機関が永遠に存続すれば結構ですけれども、そうでないとき、試料は対応表がなくなってしまうわけで、宙に浮いたような形になるのではないかと、そこだけ危惧されます。
○永井座長
 事務局、お願いします。
○渡辺安全対策官
 一つの対応としては、まず将来に向けては、そういった状況が想定されるのであれば、試料の提供を受ける時点に、将来的に他の研究機関にも提供してバンクなどを経由して使用されるということをインフォームド・コンセントでとっていくという形をとっていけば同意をとっているということとみなされることであれば、問題ないと思います。ですから、問題は既存のものということになってくると思います。その点につきましては、運用の工夫という一つのアイデアとしては、対応表を渡さないということですので、例えば別の機関に対応表と個人情報を管理してもらうという対応は、一つの運用の案としてはできるんじゃないかというふうに思います。
○永井座長
 高芝委員。
○高芝委員
 ここの部分、1点を除いて私も基本的にはよろしいのかなと思っているんですが、その1点というのは、今、事務局からお話がありました対応表を提供しない場合というのは、27ページで言いますと、例外のところのマル2のところの下から3行目、対応表を提供しないときには、既存試料について例外的な対応措置ができるというところがございます。ここは、臨床研究指針ですとか疫学指針と平仄を合わせたところだという説明を伺っているのですけれども、私の立場として意見だけ言わせていただきますと、個人情報の提供に同意が必要かどうかというときに、どちらにとって個人情報なのか。受け取る方にとって個人情報でなければ、渡す方にとって個人情報であっても同意が不要となる考え方がベースにあると思うんですね。ただ、法律についての私の理解では、渡す方にとって個人情報であれば、受け取る方がどうであれ同意が必要だという発想があると理解しているところがあるので、今後、3つの指針を統一するという意味ではその方が実務としてはいいということを重々承知の上で、今後の検討の課題としていただければ、ありがたいと思っています。
 以上です。
○永井座長
 いかがでしょうか。
○鎌谷委員
 参考のために、海外では対応表管理機関みたいな第三者があることも、結構あると思います。日本ではそれほど知らないんですけれども、問題が起こらないように、サンプルを管理する機関と対応表(個人情報)を管理する機関が別だということは、海外では時々あるように思います。だから、可能は可能だということ。
○永井座長
 あと、現実に起こることとしては、研究者が異動した場合ですね。サンプルを持って別の研究機関へ行った場合には、所属機関という意味では何も状況は変わっていないわけですから、その場合にはそのまま使えると考えていいわけですね。
○鎌谷委員
 今言ったのは非常に大規模なバンクの場合で、小規模な研究者が変わったときに検体と情報を持ち込むということに関しては、私はどういうふうにしていいかよくわからないんですけれども。
○永井座長
 この案文を読む限りにおいては、所属機関であれば別に構わないように思うんですが、先ほどご質問にあった、例えば学会として引き継ぎたいと、A大学のB先生の研究を学会として、あるいはC大学のD先生が引き継ぐという場合には、対応表を持っているのはまずいだろうという、そういうことですね。そのときには対応表はどこかで管理してもらうという手もありますと。
○堤委員
 実質的な問題なんですけれども、日本でそういう対応表を管理してくれるような組織というのはあるんでしょうか。以前、対応表はご自分のところで持っていたほうが安心だとおっしゃっている先生のお話をお聞きしたことがあったりしたんですけど。
○永井座長
 いかがでしょうか。山縣委員。
○山縣委員
 基本的にはサンプルをとるところで持つと思うんですが、環境省の今のプロジェクトは中央事務局が個人情報を全部管理することになっているので、そういう意味ではそれぞれの共用研究施設の外で厳重に管理するというケースがあります。中央事務局という言い方をすると研究の中かもしれませんが、サンプルを実際にとるわけではないところで管理をしている。
○小幡委員
 そういうものはプロジェクトで動くと思うんです。プロジェクトというのは常に期限があって、一定の期間になったらおしまいになるということを考えますと、こういうことを書く以上、そういうものを準備する必要があって、個々の先生が退官して、貴重な試料を次世代の者が使う、もしくは情報も含めて使うというときには、何らかそういう仕組みが確かに、第三者というか別途の機関をつくるのであれば、そのような準備をきっちりしておく必要があって、いいかげんなものをつくるとかえって大変なことになると考えられます。
○永井座長
 むしろ、問題はバンクですね。バンクがバンクラプトシしたときにどうするかという……。
○小幡委員
 バンクがバンクを吸収するというのは、イギリスあたりではしょっちゅう起きていることであります。
○永井座長
 それはこのガイドラインで対応できるんですか。
○小幡委員
 このままだと対応できないと思います。要するに、情報が完全に宙に浮いてしまう。日本中、もしくは国内に散在するリソースをどうやって集約するか。集約したほうが効率的、また、いろんな意味で情報を守るということでも最も効果的だと思うんですけど、それができなくなる可能性があると危惧される。
○永井座長
 どうしたらよろしいんですか、それは。
○小幡委員
 難しいですね。1、2の中で、その後、運用で見るというのも、なかなか難しい。できないところがあるのです。
○永井座長
 武藤委員。
○武藤委員
 先ほど事務局からご提案いただいた運用での解決法というのは、病院をベースにした研究の場合はちょっと難しいような気がします。1つは、厚労省の医療介護事業者のほうのガイドラインではどう想定しているのかということが今よくわかっていないということと、もう1つは、医療機関からしますと、例えばカルテなどを用いて連結した状態にあるものを、研究の部分だけそれは個人情報もつけて管理センターに出しますということをやろうという機運がとてもあるとは思えない。試みたことはあるんですが、それはなかなか難しかったという経緯があるので、もしそれを運用で解決するんだとすると、かなり大規模に厚労省のご協力も得て議論をしないと難しいような気がします。
○永井座長
 バンクの破綻の場合も、いきなり破綻するわけではなくて、多分、移行期間があるわけですね。その間にいろいろ、運用上の対応、あるいは共同研究なり組織の構築・見直しというようなことは対応できないでしょうか。
○小幡委員
 もちろんバンクの担当者は、次の試料を受け取る機関を探すことに最大の努力をする。また、するのが責務だと思います。しかし、それは事業の継承であって提供ではないというところをちょっと考えていただきたいと思います。要するに、事業をやっていて、次の機関に事業が継承されるということで、これはいわゆる第三者への提供とは若干違うのではないかと思われるんですけど、いかがでしょうか。
○永井座長
 いかがでしょうか、高芝委員。
○高芝委員
 すみません、また私の意見で申し訳ないんですけど、お手元の今の資料の29ページの下の方にゲノム指針の抜粋が挙がっていまして、6の(20)の、ア、イ、ウが2つ上下にありますけど、下のイのところ、「合併その他の事由による研究の承継に伴って個人情報が提供される場合」と。ここの点は、民間で言いますと営業譲渡も含まれていますので、今お話があった研究の承継というのもここのことを多分おっしゃられていると思うんですけれども、私としては、可能性があるというように考えています。
○永井座長
 合併その他の事由、承継……。第三者のとらえ方のところでうまく整理できるだろうと。
○高芝委員
 第三者としないということは、同じ人格というか、同じ組織・機関と考えるということですので、譲渡の問題がないので、同様の問題も出てこないということです。
○永井座長
 小幡委員、いかがでしょうか。
○小幡委員
 そのように解釈できるのであれば、今後の事業と試料の有効利用、また適正な利用にも、大変ありがたく思います。
○高芝委員
 すみません、追加させていただきたいのですけど、その解釈をとる場合の一番の歯どめになるのは、利用目的の変更ができない、利用目的縛りは継続しますというところです。ですから、移動したときに全く新しい研究に使い始めることができるということはありませんので、利用目的縛りは続くという、ここは押さえになっていますので、それを前提にお願いしたいと思います。
○小幡委員
 先生、それはそのとおりだと思います。最初にいただいた同意の内容というのは、継承したバンクにも適用されるものと思います。
○永井座長
 よろしいでしょうか。では、この件はここまでとしたいと思います。
 次に、41ページ、「7.試料等の収集・分譲の在り方について (2)遺伝情報等の取扱いについて」、説明をお願いします。
○渡辺安全対策官
 それでは、資料1の41ページをご覧いただけますでしょうか。これまでの議論の中で、個人情報に該当しないものであっても、遺伝情報等の取扱いについては、安全管理の規定をもう少し整理したほうがいいのではないかというご議論がございました。それを踏まえまして、改正イメージ(案)を整理してまいりました。研究を行う機関の長の責務の(5)の細則でございます。
 まず、匿名化された情報の取扱いに関する細則に、「連結可能匿名化された情報を取り扱う場合には、対応表の安全管理のために適切な措置を講じることとする」ということで、これまでも対応表の安全管理は非常に重要だというご議論がございましたので、この文言を加えさせていただいています。
 次に、匿名化された遺伝情報に関する細則。個人情報に該当しない匿名化された遺伝情報を取り扱う場合には、安全管理のため、適切な安全管理措置を講じなければならない。次のページでございますが、「講じるべき安全管理措置は、一般的に以下のとおりとするが、取り扱う遺伝情報の情報量や性質等に応じて変更できる」ということで、その下にございますが、安全管理についての責任と権限の明確化、手順書等の整備、事故等への対処、教育・訓練の実施、入退館管理の実施、情報システムのアクセス制御などを項目として挙げてございます。
 「また、研究者等に個人情報に該当しない匿名化された遺伝情報を取り扱わせるに当たっては、あらかじめ、その情報量や性質等に応じて、当該情報の公開または共有等の方針を提示する等、適切な措置を講じることとする」という案でございます。
○永井座長
 ありがとうございます。
 ただいまのご説明に、ご意見をお願いいたします。徳永委員。
○徳永委員
 こういう遺伝解析をする機関には、かなり小さな規模の解析研究もあるし、非常に大きな規模の解析研究、そういう機関もありますから、最低限このぐらいは守ってこういう仕組みをつくっていかなきゃいけないという意味で、そういう項目を1つ1つ具体的に書いているという意味で、私、この辺が妥当じゃないかなというふうに思っています。
○永井座長
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。堤委員。
○堤委員
 私も、徳永先生と同じで、示していただいた要件をここではっきりさせたということは、非常によろしいのではないかなというふうに感じました。
○徳永委員
 情報量とか性質等に応じて変更できるという意味で、非常に大規模な機関に関してはここに書いてあるだけじゃなくて具体的に仕組みを考えなきゃいけないだろうし、小規模なところではこういった項目に気をつけるというような形で現実的な運用をするという、そのような指針になっているんじゃないかというふうに思います。
○永井座長
 よろしいでしょうか。もしご意見ございませんでしたら、この件はここまでといたしたいと思います。
 大分熱もこもりましたので、5分ほど休憩させていただいてよろしいでしょうか。
 じゃあ、5分たちましたところで適宜再開させていただきます。
( 休憩 )
○永井座長
 そろそろ再開したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 次は、44ページの「8.インフォームド・コンセントについて」であります。事務局から説明をお願いいたします。
○渡辺安全対策官
 それでは、資料1の44ページをご覧いただけますでしょうか。研究の進展に対応したインフォームド・コンセントの在り方について、でございます。こちらに関しましては、前回の議論を踏まえまして、45ページに改正イメージ(案)を整理させていただいてございます。
 インフォームド・コンセントの項のところでございますが、研究責任者が提供者に対して事前にインフォームド・コンセントを受ける際の項目が書いてございます。その中に「将来的に他のヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用される可能性」とございますが、今回はそれに「及びその場合の手続」という文言を加えさせていただいてございます。
 関連して、説明文書の記載に関する細則でございますが、研究の意義、目的及び方法、期間という説明文書に記載すべき事項に加えるものといたしまして、試料等の提供を受ける時点では特定されない将来のゲノム研究に利用される可能性がある場合にはその旨(当該試料等を他のゲノム研究に利用する際は、第4の○(研究を行う機関において保存している既存試料等の利用)の規定の手続に従うこと)としてございます。
 さらに次に、試料等を他の研究を行う機関に提供し、試料等の提供を受ける時点では特定されない将来のゲノム研究に利用される可能性がある場合にはその旨(当該試料等の提供を受けて他のゲノム研究に利用する際は、第4の○(他の機関から提供を受けた既存試料等の利用に当たっての措置)の規定の手続に従うこと)という記載を追加してございます。
 以上でございます。
○永井座長
 ありがとうございます。
 ただいまのご説明に、ご質問、ご意見、いかがでしょうか。
○堤委員
 「現時点では特定されない将来のヒトゲノム・遺伝子解析研究への利用」というのは、以前、辰井委員もおっしゃったと思うんですが、包括同意とどう違うのかということがあるのかなあと。そこをどう整理していくのかが気になります。
 あと、同意の範囲を、包括同意という言葉を使わないとすれば、今言われているのは、ブロード・コンセントというのも言われていますし、もう1つの言葉で言えば、「医学研究のための試料の利用」という言葉もあるのかと思います。ですので、どの辺までが許容され得る範囲なのかというのをぜひここではっきりさせておくべき時期ではないかなというふうに思っております。
○永井座長
 いかがでしょうか。事務局。
○渡辺安全対策官
 前回のところでも議論がございましたが、まず、このインフォームド・コンセントの際には、細則のところにございますが、研究の意義、目的及び方法、期間ということで、まず、どんな研究を行うかということについて、そもそもの研究の目的や方法などを記載していただくと。これは従前のゲノム指針と基本的には同じでございます。その次に、その下につけてあるポツというのが、将来、その試料を使ってみずから別の研究を行うという場合、それからその下は、他の機関に提供してそれがほかの研究に使われるという可能性がある場合にはその旨ということを明示的に書いてございます。包括同意と言ったときに、どういうものを包括同意かというのは人によって解釈がさまざまなところでもございますが、この資料で言うと44ページのように、見直しの方向性(案)のところに、将来のあらゆる利用に関するインフォームド・コンセントに基づいて利用するということは臨床研究指針や疫学指針と同様に理解を得られないだろうということでございますので、まずは、どういう研究を行うかということについては、その研究の意義、目的や方法などをとっていただくと。それを将来的に、二次利用と申しますが、違う形で利用するというときには、その旨を書いていただくと。当然、ゲノム研究を行うということであれば、どういうゲノム研究を行うということも、あらかじめ書ける範囲でインフォームド・コンセントをとっておくということが必要ではないかというふうに考えてございます。
○堤委員
 次のステップの研究に使うときに例えば倫理審査委員会に諮問するとかっていう手続は多分踏まれるのではないかなと思うんですけれども、もしこれを書くのであれば、それと一体化したような書きぶりにしておいたほうが理解はされやすいんじゃないかなというふうに思います。
○渡辺安全対策官
 そういった趣旨のご意見が前回出ましたので、今回、2つの細則の括弧の中に、このインフォームド・コンセントをとれば、その後、何も手続なしで使えるということではなくて、括弧の中に書いてあるように、ゲノム指針の関係する規定、具体的には研究を行う機関において保存している既存試料を使うときの規定もしくは他の研究機関からもらってきた試料を使うときの規定というものもちゃんと従っていただく必要があるということを明示的に書かせていただいたところでございます。
○永井座長
 よろしいでしょうか。
 山縣委員。
○山縣委員
 今回これが入ったことによって、非常にあいまいであった研究について、これできちんと、この倫理指針に基づいてその研究が行われるということが担保されると思います。まさにこういうふうな、ゲノムの研究をすることが想定はされるけれども、予算がついてないと、それをきちんとした形で計画を立てることができないというのが今の日本の研究の実態でありますので、そういったときにもう一度改めて個別に同意をとるということよりも、それをきちんと最初に想定してお話をして、それで研究に協力していただいた上でこれが始められるということは、非常に現実的だと思います。ただ、その後にもちろん、手続と書いてあるように、実際に今度はこういうふうなゲノムの解析をすることになりましたということを研究協力者にお話をするなりといったようなことを各倫理委員会できちんと手続を踏むという、そういう形で、具体的になったときには、研究協力者がそれを拒否する機会が担保されることが大切だと思います。
○堤委員
 もう1点よろしいでしょう。
○永井座長
 はい。
○堤委員
 そうした手続を踏めば全体の枠組みとしては確かに担保されると思うんですけれども、先ほど申し上げましたように、医学研究のために利用するという同意で、この言葉を使うこと自体については、この委員会としてどうお考えなのかといいますか、それはよしとするのか。今、それに近いような解析技術の進歩というのも含めて非常に広い意味で使われつつあるということが現状だと思いますので、そういう言葉は使えるものかどうかを少しお教えいただきたいなと思います。
○永井座長
 何行目ですか。
○堤委員
 それは特にこの中には出てないんでございますけれども、用語として医学研究のために利用するという言葉が同意を広くとるという延長線で使うことが可能かどうかということです。
○山縣委員
 私がお話ししているのはそういうふうなことではなくて、例えば環境と健康に関する研究の全体の枠組みの中で、それを解析する上で遺伝子情報を活用するというように、かなり限定されているけれども、ただ、実際それが行われるかどうかに関しては予算の関係でわからないし、具体的にどういう遺伝子の解析方法をとるかということもまだ決まっていないというようなものであって、医学全般のということとはやはり話が違うんだと思います。
○藤原(康)委員
 当院ではもう既にいわゆるゼネラルコンセントに近いことはやっていて、そこの中ではIC文書の中に「がん研究及びがん以外の疾患を対象にする広い範囲の医学研究のために活用することを目的にしています」というふうにうたって運用しています。初診の方が来られたら全員に、リサーチコンシェルジュという説明者がひとり付き、15分とか、30分とか、結構長く時間をとって対応しております。同意取得率は大体95%前後をずっと推移しています。ですから、医学研究というところに縛りが十分あれば限定的だと思います。将来、営利に使うとか、軍事利用に使うとか、そういうものがなければ、ちゃんと目的がある程度、医学、しかも研究というところになっていれば、かなり限定されると思うんですよ。臨床研究倫理指針のQ&Aの5-1というところでも、それを念頭に置いてちゃんと倫理委員会にかけてやっていけば、これと同じような記載でいいですよというふうにしてあります。以前から申し上げているように、ヒトゲノム指針というのは臨床研究の一環であって、僕は臨床研究倫理指針に合わせるべきものだと思うので、そこのQ&Aをそのまま踏襲してやっていけば、十分いけると思いますが。
○永井座長
 漠然とした医学研究ではなくて、多少限定的な医学研究という言葉を使っておられると。それは可能であるという理解でよろしいでしょうか。
○渡辺安全対策官
 一言申し上げますと、今回の文案でも、当該試料等を他のゲノム解析研究に利用する際ということでございますので、そういったゲノム解析研究に使うということ、要するに遺伝子解析を行うということは最低限同意をとる必要があるんじゃないかと思います。
○永井座長
 ということでよろしいでしょうか。では、この件につきましては、ここまでといたします。
 続きまして、49ページ、「インフォームド・コンセントの撤回への対応について」でございます。説明をお願いいたします。
○渡辺安全対策官
 それでは、49ページ、「インフォームド・コンセントの撤回への対応について」でございます。この関係につきましては、次の50ページに改正イメージ(案)がございます。(10)にございますように、研究責任者は、インフォームド・コンセントの撤回があった場合には、原則として当該提供者に係る試料等及び研究結果を匿名化して廃棄しなければならないと。ただし、次に掲げる要件のいずれかを満たす場合は、試料等及び研究結果を廃棄しないことができるということで、アが、当該試料・情報が連結不可能匿名化されている場合、イが、廃棄しないことにより個人情報が明らかになるおそれが極めて小さく、かつ廃棄作業が極めて過大である等の事情により廃棄しないことが倫理審査委員会において承認され、研究機関の長に許可された場合となっていたところでございますが、特に研究結果の取扱いにはもう少し弾力的な措置が必要ではないかというご意見をいただきましたので、「また」というところで、「上記ア及びイの要件のいずれかを満たさない場合であって、インフォームド・コンセントの撤回の時点までに、当該試料等が研究に利用され、かつ研究結果が得られている場合は、当該試料等は廃棄しなければならないが、得られた研究結果については廃棄しないことができる」。さらに、研究結果のみ廃棄しないことができる場合に関する細則といたしまして、「インフォームド・コンセントの撤回の時点において、当該試料等を利用して研究実施中の場合は、当該試料等は以後の研究に利用してはならない」という案を整理いたしました。
 以上でございます。
○永井座長
 いかがでしょうか。
○堤委員
 49ページにア、イ、ウというのが書いてありまして、このアとウの間のレベルというのが今回足していただいた内容も含むというふうに解釈してよろしいんでしょうか。例えば、データが出ていって、もう統計処理に入っちゃいました。論文投稿の直前まで来ていますと。そういうのはここに書いていただいた内容で全部カバーできる範囲というふうに考えてよろしいかどうかだけ、確認させてください。
○渡辺安全対策官
 従来、ウは「研究結果が既に公表されている場合」とございます。ウのような公表まで至ってなくても、研究結果が得られている場合につきましても、「また」以下で読めるようにしてはどうかという案でございます。
○堤委員
 ありがとうございます。以前、山縣先生がご研究の流れでこの点について少しご心配されていたと思ったんですけれども、これでいかがなんでしょうか。
○山縣委員
 改正イメージのアの部分で、要するにデータのフィックスというのをこういう形で行うことによって担保されると思います。
○永井座長
 よろしいでしょうか。もしよろしければ、先へ進ませていただきます。
 続きまして、前回の委員会で栗山委員から、倫理審査委員会の外部委員比率及びゲノム指針に係る過去の不適切事例についてのご質問がございました。それにつきまして事務局が資料を用意しておりますので、ご説明をお願いいたします。
○渡辺安全対策官
 それでは、まず資料3をご覧いただけますでしょうか。ゲノム指針及び臨床指針における倫理審査委員会の構成について、整理させていただいてございます。
 まず1つ目が、ゲノム指針における倫理審査委員会の構成でございます。こちらの数値につきましては、本年8月現在で、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省に報告された64機関のデータを統計処理したものでございます。したがいまして、報告されてないデータもございますのであくまで参考値でございますが、委員の平均数が9.3名、外部委員の平均数が3.9名ということで、外部委員比率は42%となってございます。
 続きまして、臨床研究指針における倫理審査委員会の構成につきましては、これは厚生労働省に報告された機関のうち一部の主要な病院10機関のデータを統計処理したものでございまして、委員数の平均が14.5名、外部委員の平均が4.1名、外部委員比率が28.3%となってございます。
 続きまして、資料4をご覧いただけますでしょうか。こちらは、遺伝子解析研究に係る不適切な管理に関する事例ということで、今回、ゲノム指針が平成13年度に制定された以降の事例を事務局のほうで調べさせていただきましたところ、この2件が該当いたしました。
 1件目が、倫理審査委員会に係る不適切事例ということで、2001年11月に発覚してございます。これは、A大学が基礎資料の作成を目的にDNA多型の分布調査に係る研究を実施するため、試料(血液)の提供を受けて遺伝子解析研究を実施したと。実施に当たりまして、倫理審査委員会の承認が得られる前に遺伝子解析研究を開始し、その結果を研究の途中結果として学会で発表してしまったということでございます。
 さらに、使用した試料につきましては、輸血用などとして提供されたものでございまして、提供機関から全国の医療機関に対して提供者の同意を超えることから遺伝子解析目的に使用しないよう通知されていたが、倫理審査委員会は同通知を認識せずに申請を承認してしまったということでございます。
 原因といたしましては、研究者のコンプライアンスが徹底されていなかったことや、倫理審査委員会の審査でこの通知が見落とされていたことなどによるものでございます。
 試料につきましては提供機関に返却し、試料から得られた研究データを破棄するとともに、学会発表原稿については学会に取り消しを依頼したというところでございます。
 2番目が、インフォームド・コンセントに係る不適切事例でございます。これは2010年1月に発覚しております。大学等の10研究機関による共同研究として、生活習慣情報をもとにがん等との因果関係を調査するために各機関で集められた試料(血液)が中央事務局のB大学に移送され、試料の一部について遺伝子解析を実施したと。その後、ゲノム指針に基づくインフォームド・コンセントを受けていない試料が含まれていることが判明し、さらに、提供機関から研究実施に関するインフォームド・コンセントなどを受けていない試料が誤って移送されていたことが判明いたしました。
 原因といたしましては、試料の採取作業者がインフォームド・コンセントを受けていると誤認識してしまったということと、B大学において確認が不十分なまま解析を行っていたことなどによるものでございます。
 B大学は、遺伝子解析結果をすべて破棄するとともに、必要なICを受けていない試料は破棄または提供した機関に返却し、各機関はこの件につきましてホームページ上で事実関係等を公表してございます。
 以上でございます。
○永井座長
 ありがとうございます。
 この件に関しまして、何かご意見ございますでしょうか。
○栗山委員
 ありがとうございました。
○永井座長
 よろしいでしょうか。
○堤委員
 先生、1点だけいいでしょうか。
○永井座長
 はい。
○堤委員
 外部委員の比率というのが、上だと42%、下は28%。一般の立場の方が何%かという結果はないんでございましょうか。
○渡辺安全対策官
 はい、今、手元に数字を持ち合わせてございません。
○永井座長
 これは外部委員の比率をどうするかという議論にもかかわるわけですね。これについてのご意見はいかがでしょうか。
 栗山委員、どうぞ。
○栗山委員
 合わせるのであれば、臨床研究に関する倫理指針ではなく、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針に割合を合わせていただきたいというお願いをしたときに、現状はどうなっていますかという質問だったので、調べていただいたことにありがとうございますで、私としてはやっぱり、2ではなく1にということですが、それはここの会議のご意見だと思います。
 もう一言つけ加えさせていただくとしたら、外部委員の中にもいろいろな立場の方がいらっしゃると思いますが、一般の委員の数、こちらのほうに複数でと書いてございますので、それが守られるような状況がつくられる文書にしていただければと思っております。
○永井座長
 複数必要だというのは多くの方が同意されると思うんですが、過半数についてどう表現するかですね。ここはどうかというのは、もう少し議論が必要だろうと思いますけれども。
 よろしいでしょうか。そうしましたら、この件はまたさらに議論いただくということで、本日意見交換いただきました検討事項以外に何かございましたら、ご意見いただきたいと思います。
○堤委員
 この会が始まるときに、一番最初に日本医学会のガイドライン(「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」)を出していただきたいと申し上げて、今は入れていただいたりしておりますけれども、開示の項で例えばそういうガイドラインがあるとか、バンクの運営等についてはOECDのガイドライン(「ヒトのバイオバンクおよび個人遺伝情報研究用データベースに関するOECDガイドライン」)があるとか、そういう参考資料ってこの指針の後ろには出てこない形になっておりますので、それぞれのセンテンスで非常に重要となるような指針とかガイドラインがあれば、Q&Aで引けるような形でお示しいただくと、後で読みやすくなるのかなというふうに考えております。
 それからもう1点は、インフォームド・コンセントでいけば遺伝情報の開示の項にもかかわってまいりますし、いろんなところに参考にしていかなきゃなかなか全体像が見えにくいというご意見もあったかと思いますので、AとBはこう関係していますよとか、関係する項目もわかりやすいような形で、Q&Aでも結構ですのでぜひ示していただければというふうに、この2点はお願いでございます。
 以上です。
○渡辺安全対策官
 了解いたしました。Q&Aなどで整理させていただくとともに、これは前にも申し上げましたけど、この指針の趣旨というのがこの委員会での議論を踏まえて正確に伝わるように、丁寧な説明会などを開催してまいりたいと思います。
○栗山委員
 今の丁寧な解説というような部分にかかわるんだと思いますが、ここで議論をしていても、例えば個人情報保護法の開示の仕方とか、ほんとうに立場によって全然違いますし、今、ちょっと休み時間にお話をさせていただいたんですが、「著しく業務に支障を来す」と言うと、私なんかが単純に考えたときには、それを理由に仕事が大変でって、そこまで軽くはないにしても、といったことで開示をしない理由になるというような不安を持つわけですね。ところが、専門家の先生がおっしゃるには、「著しく」と言うと、裁判になったときにそれを証明することはほとんど不可能に近いぐらいすごく大変なことだとおっしゃって、同じ言葉に対するイメージがかなり違うので、ここで議論をしていてもそうなので、それをするのはすごく大変だと思いますが、こういうのってインフォームド・コンセントを1対1でした人以外に社会の理解がないと研究とかは進まないので、そこら辺のことをどういうふうにしていっていいか、いいアイデアがあるわけではないのですが、そこも踏まえて何か進めていっていただければなと思います。
○永井座長
 先ほどご提案があった電子媒体でお渡しするというのも一つの解決策かと思うんですが、それを全部説明すると、おそらく何カ月、何年かかる場合もあるわけですね。
○栗山委員
 さっきの開示とかに限定すれば、そうですね。ただ、これからも、それから今までも、同じ言葉についていろいろ違う受け取り方をしているということが……。
○永井座長
 表現、言葉ですね。
○栗山委員
 そうですね。だから、こういう用語を使ったときに、私たちの側はこうとるし、研究者の側はこういうことを言っているし、法律家から言えばこの範囲だというようなことが、だからこそ違うステークホルダーがいるんだと思うんですが、それをここの場だけで言っているのではなくて、それを社会が理解していただく方策をしないことには、ほんとうに専門家の中だけの納得に、専門家というか、この会議と、それをわかる専門家の人たちだけの納得になってしまうのではないか。そうすると研究が、結局、せっかくインフォームド・コンセントをいただいても、家族が反対するから取り消しますというようなことになると、とてももったいないことになってしまいます。
○永井座長
 できるだけ細則なり定義を明確にして、Q&A等で1つ1つの言葉を、人によってイメージが異ならないようにするということですね。
 武藤委員、どうぞ。
○武藤委員
 今、栗山委員がおっしゃったことは、専門家の中で既に合意があることでもなくて、国際的な先月の学会等でも、これを結果と呼ぶのか、データと呼ぶのか、あるいは開示と呼ぶのか、返却と呼ぶのか、ごちゃごちゃの状態がまだありますので、研究者の中でも、結果とおっしゃっていることはどの程度の精度の結果を指しているのかというのは鎌谷先生が何度もご指摘いただいたとおりで、かなり難しい局面でこの指針は改正されるわけですが、丁寧にご説明をしていったり、研究者自身も認識を改めて自分たちが使う用語を意識して、これを言うとどういうことをイメージされるのかということを考えて使うべきだということは同意したいと思いますというのが、1点です。
 あと、すみません、手短に2点あるんですが、倫理審査委員会に関して藤原委員が、この指針は臨床研究の指針のほうに近づいていくべきだというご指摘があり、私もそのように思います。その点で、もう反映されないのかもしれませんが、臨床研究の指針を見ていただきますと、13ページに、他の倫理審査委員会への審査依頼という項目があります。これは今のゲノム指針にはありません。ゲノム指針では、迅速審査はできることになっていますけれども、倫理審査委員会を持っている機関は審査の依頼はできないということになっていて、実際には倫理審査委員会の運用を半年に1回しかしてない機関とも共同研究をしなくてはいけないわけで、非常にしんどいところがありますので、この点は引き続きご検討いただきたいと思います。
 それから、最後になりますが、先ほどのバンクの管理者が変更することに伴うところで、高芝委員が解釈は可能かもとおっしゃってくださったところですね。合併その他の事由による研究の承継についてのところですが、これは法人同士の合併などを想定されていらっしゃるのではないかと思うのですが、研究の世界は結構プロジェクト単位で、法人は存続するんだけれども、仲間だと思っていた人が5年後には仲間じゃなくなるとか、結構バーチャルなところで研究って動いているので、その点をちょっと心配しているので、またいろいろ教えていただければと思います。
○永井座長
 高芝委員。
○高芝委員
 先ほど開示のところでお話ししようと思ったんですが、ちょっと言いそびれたので、この段階でお話しさせてください。
 今回の指針は、開示をするかどうかを決める主体が、研究責任者を主体にして書かれていると思います。開示するか、しないかを決定する部分ですね。法律の方の発想からしますと、例えば個人情報保護法で言えば、個人情報取扱事業者という組織・機関が開示をするか、しないかの決定主体になる訳です。ですから、研究の場合だと、横並びで考えれば、研究機関として開示をするか、しないかを決めるのが、あるべき姿だろうというように思っていますが、今回の指針は、その組織の中の一部の研究責任者という方が決定権を持つという形になっています。
 この考え方としては、事務局から教えていただいたところでは、機関の長、ここで言いますと研究機関の長が研究責任者に委任をしているということの整理になるということで、それはそれであり得べしなのかなというようには思うのですけれども、ただ、開示をする決定ないししないという決定をしたときの結果というのは、提供者、情報の主体からすると大きな結果になりますので、そのことを研究機関の長が知らない状態というのは、やはりあるべき姿ではないだろうと。場合によっては、どうしても、私が弁護士ということからすると、裁判がどうなるかというようなイメージも片方で置くと、そういう手続の段階になったときの当事者は機関そのものが手続の主体になりますので、研究責任者が当事者になるということではないと思うのですね。ですからその意味では、開示と決めた、ないしは非開示と決めたことの結果は研究機関の長にフィードバックをする。委任関係ですから、委任元へフィードバックをするという仕組みを細則かどこかに入れていただけると落ちつきがよくなるのではないかと思いましたので、検討課題として意見を言わせていただきます。
 ありがとうございます。
○小幡委員
 高芝先生のご発言は、既存の倫理指針にも機関の長の責務として、例えば14ページの開示に対する対応とか、14ページの(29)から(31)くらいまでいろいろ書いてあるんですけれども、この辺をもう少し精査すべきであるというご意見でしょうか。
○高芝委員
 今ご指摘いただいたところは、代諾者とか、未成年とか、そういう関係の部分……。
○小幡委員
 その前のほうに、開示に当たってはどうすべきかとか、そういうことが書いてありますので、その辺を拡充すればよろしいということでしょうか。
○高芝委員
 そこの整合性ももう一度検討いただけるとありがたいという趣旨も含めてです。
○小幡委員
 あと研究成果について、5ページの(8)ですけれども、すべての研究者の基本的な責務ということで、提供者等からの研究の進捗状況の問い合わせへの的確な対応、研究結果の公表等、既に明記されているところでありまして、この辺も研究機関の長の責務というのにも入れておくべきと考えます。機関の長の責務ということを明確にしておかないと、外部に対してどのようにして責任を負うのかということは、機関の長も一つ大きい役割を担っているわけですから、単に研究責任者だけにせずにしておく必要があるのではないかと思いました。
 以上です。
○鎌谷委員
 これは具体的なものじゃないんですけれども、全体的なガイドラインの改正について私の考えを申し上げたいんですが、1つは、何のためにゲノムあるいは遺伝子研究をやるのかということをある程度知った上で、社会もそうだし、研究者もそうだし、このガイドラインをつくる人も、そういうことを知っておいたほうがいいと思うんですね。最近は、特にがんの、今まで治らなかった薬なんかがどんどんできていて、それはゲノムを検査しないと治療できないようなものがどんどんふえてきているんですね。アメリカなんかはそこに目をつけて、国を挙げていい薬をつくって、がんの患者さんが治るようなという運動をしているぐらいなんですね。そういうことを考えるとやはり、1人1人のゲノムを解析することでそういういい薬をつくるということ、あるいはいい治療をするということが非常に大きな前提としてあるんだということをぜひ知っていただきたいというが、1つです。
 それを前提に考えると、日本の社会は、今、栗山委員も言われたように、社会に対するゲノムあるいはジェネティクスの教育が非常に低調であることは確かなんですね。それは実は研究者にも医師にも言えることで、日米、あるいはヨーロッパの教科書なんかを比べてみても、日本ははるかに低調なんですね。例えばアメリカの高校の教科書なんかには遺伝カウンセラーというのが1ページ載っていたりするようなもので、例えば法律でも、アメリカはもう既にゲノムをもとに、特にエンプロイメントとか保険で差別してはいけないという法律も設定されている。これはもちろん社会がそういうことをある程度理解しないと難しいと思うんですけれども、そういうことを考えると、私は、実はこのガイドラインの名前さえも国際的には非常におかしくて、ほんとうはもうちょっと適当な概念を設定しなきゃいけないと思っているんですが、確かに医学あるいは患者さんをよくするためにはゲノム研究というのは非常に重要だということは世界的にわかっているんだけれども、日本でそれをやるためにはまだ、社会とか、医師とか、研究者の理解が非常に足りない部分があるので、これは根が深いのでなかなか一長一短にはいかないと思いますが、ぜひ、ここで何とかということはないんですけれども、教育とか、社会に対して、あるいは初等教育、中等教育とか、あるいは高等教育においてこういうものを普及していくというふうな、地道な努力が必要だと思います。
○永井座長
 それは何か、前文としてメッセージを出すべきではないかという……。
○鎌谷委員
 私としては、前のところに、例えば、現在、いろんな個人のゲノムの配列に基づいたような治療薬というのが出てきているとか、そういう研究が盛んになるというような、入れられたらですけれども、ゲノム研究をやる全体の目的が、社会のためであり、人のためであるというようなことですね。そうしないと、研究者が自分勝手にやっていて、好きなことをやっていて、時には悪いこともあるのも秘密を探るためにやっているなんてとらえかねないようだと、非常に困るなと。
○永井座長
 つまり、研究の成果は、研究者はもちろんそれを大切にしますけど、社会も享受するものであるという一文が欲しいと。
○鎌谷委員
 今、具体的にそういう例が次々に出てきていますよね。
○永井座長
 栗山委員、どうぞ。
○栗山委員
 ここでこういうことを言うのは適切かどうかというのはかなり悩むところではあるんですが、今、社会にとっての利益でもあるということをおっしゃったときに、例えばインフォームド・コンセントの文章なんかを読んでいるときに、この知的財産権は研究者と研究機関とか医療機関にあるのであって、協力したあなたには一切ありませんというようなことが紋切り型のように書いてある部分で、そうなんだろうとは思うのですが、それで果たして社会は理解することの一歩を、みんなのためにやっているということを理解できるのかなあという疑問があるんです。私は持つのです。ですから、それを形も含めて見せる努力というのは、その文言だけ見てもちょっと違和感があるなというふうに思いますので……。
○永井座長 
 知財のあり方という、表現の仕方ですね。これは検討が必要でしょうけど……。
○栗山委員
 そうですね、知財のあり方。現実的に、例えば台湾ではもうちょっと進んでいるとか、ある疾患の患者会がゲノムバンクをつくって自分たちの研究のために研究者に提供して、その結果はそこの財団というかバンクに戻ってきたりという、知的財産権を共有するとかっていう話もそろそろ出てきているので、そういうインフォームド・コンセントの文言の部分も含めて、社会が一緒にやっているんだなと実感できるような形に変えていくことも大事かなというふうに思っております。
○永井座長
 鎌谷委員が言われたのは、知的な成果については社会も非常に享受するたぐいのものであるということが少し表現できないかということだろうと思うんですけど。
○栗山委員
 すみません、それから一歩進めてという意味です。
○堤委員
 米国での動きですけれども、GINAという遺伝子情報差別禁止法(GINA:The Genetic Information. Nondiscrimination Act of 2008 2009年11月21日施行)ができているわけですが、一度そこは何らかの形で簡単なレクチャーでもしておいていただいたらどうかなと思うんでございます。趣旨としては、なぜアメリカでそういう法律ができてこなければいけなかったか、どういう形でレギュレーションがきいているのかということは、我が国でも遺伝情報による差別を禁止したほうがよいのか、法律をつくったほうがいいのかどうかというときに、参考になるのではないかなと思う次第でございます。必要ないのであれば、ない理由は何かというのは、やっぱり一度明らかにしておいてもいいのではないかなと思った次第でございます。これは、ご提案でございます。
○永井座長
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 今のご提案も、スケジュールとの関係にかかわるとは思いますが、事務局でご検討いただければと思います。
 そういたしますと、これまでいろいろな検討事項案についてご議論いただきましたが、基本的な方向性についてはおおむね、ご了解といいますか、意見の方向が見えてきたように思いますけれども、次回以降は条文ベースで見直しの検討を進めていきたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○永井座長
 それでは、今後、検討事項案の見直しの方向性に沿ってゲノム指針の改正案の作成を事務局にお願いして、次回以降、条文の案を出していただいて、検討を進めたいと思います。
 以上でございますが、事務局より連絡事項等あれば、お願いいたします。
○渡辺安全対策官
 次回の日程につきましては、日程を調整した上で改めてご連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それから、紙ファイルの参考資料につきましては、そのまま机上に残して、お持ち帰りにならないようお願いいたします。
 以上でございます。
○永井座長
 それでは、本日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)
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 厚生労働省大臣官房厚生科学課
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     (直通)03-3595-2171

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