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2011年8月9日 第6回ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理指針に関する専門委員会   議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成23年8月9日(火)
14:00~16:30


○場所

経済産業省本館 17階西7 第1特別会議室


○出席者

(委員)

永井座長 福井座長代理
小幡委員 鎌谷委員 栗山委員 高芝委員
辰井委員 玉起委員 知野委員 堤委員
徳永委員 藤原(靜)委員 藤原(康)委員 前田委員
増井委員 俣野委員 武藤委員 横野委員

(事務局)

文部科学省: 渡辺安全対策官 岩田室長補佐
厚生労働省: 尾崎研究企画官 田中課長補佐
経済産業省: 黒田大臣官房審議官 斎藤課長 長部課長補佐

○議題

(1)ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しの検討
(2)その他

○配布資料

資料1ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しにあたっての検討事項(案)
参考資料1三省委員会委員名簿
参考資料2ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針

○議事

〇経済産業省(長部課長補佐)  
 それでは、定刻になりましたので、ただいまから文部科学省「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しに関する専門委員会」、厚生労働省「ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理指針に関する専門委員会」、経済産業省「個人遺伝情報保護小委員会」を合同で開催いたします。
 委員の皆様には、お忙しい中、お集まりいただき、お礼を申し上げます。
 会議の開会に先立ちまして、8月1日付で製造産業局担当の大臣官房審議官が市川から黒田に交代いたしましたので、一言ごあいさつ申し上げます。
○黒田審議官  
 黒田でございます。よろしくお願いいたします。委員会の開催に先立ちまして、一言ごあいさつ申し上げさせていただきます。
 ご紹介がありましたように、8月1日付で製造産業局担当の審議官に着任いたしました黒田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 着任したばかりで勉強中ではありますけれども、ヒトゲノム・遺伝子解析研究は、生命科学、保健医療科学の進歩に大きく貢献し、人類の健康や福祉の発展、そして何より新しい産業の育成に重大な役割を果たすということで大変重視しております。
 その一方、この研究は、個人から提供された試料に依存するということで、情報研究過程で得られた情報に提供者、あるいは血縁者の遺伝的要因が含まれるということで、取り扱いにはさまざまな法的、倫理的、あるいは社会的な問題を招く可能性があるということでございます。
 こうした状況を背景といたしまして、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針が、平成13年3月に、関係者の努力によって定義されたことは大変タイムリーであったと思っております。そして、同指針がその時々の改正を経て現在に至っている訳でありますけれども、今回議論いただいておりますのは、解析技術、あるいは研究環境の進展等、直近の動きに対応させるための見直しであると聞いておりまして、特にその検討については、今ご紹介にありました3つの省の3つの委員会を合同でやるという、なかなか例のない、迅速、効率的な進め方をすると承知しております。
 今回の改正がヒトゲノム・遺伝子解析研究の発展に大きく寄与することになることをお願いいたしまして、私のごあいさつとさせていただきます。まことに申し訳ございませんけれども、私は30分ほどで退席させていただきます。ちょっと暑い部屋ではありますけれども、時間の許す限り、有意義な意見交換をしていただければと思います。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○経済産業省(長部課長補佐)  
 ありがとうございました。
 まず、配付資料の確認をさせていただきます。一枚紙で議事次第と記載したものがございますので、そちらをご覧ください。まず配付資料として資料1がございます。また、参考資料1、参考資料2がその後ろにございます。その他、委員の皆様方の机の上には、委員資料1及び委員資料2という形でファイルを2冊ご用意しております。
 以上ですが、不備等ございましたら事務局までお知らせください。
○永井座長  
 ありがとうございます。それでは議事に入りたいと思います。
 前回の委員会におきましては、個別の検討事項について意見交換を行いましたけれども、今回は前回の委員会で纏まらなかった検討事項を中心に意見交換を行いたいと思います。
 前回の委員会においていただいたご意見を踏まえまして、事務局と相談の上、資料1としましてヒト・ゲノム遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しにあたっての検討事項(案)の中に、見直しの方向性(案)として再度整理させていただいております。資料1の検討事項のうち、今回は、まず前回までの議論において十分なご意見が集約されていない事項を中心に議論を行っていただき、その後にそれ以外の事項の議論を行いたいと思います。
 また、前回に引き続き、委員の皆様にお願いですが、ご発言はなるべくポイントを絞って簡潔にお願いいただきますようご協力をお願いいたします。また、ご発言に当たりましては、今後の指針改正に当たってより具体性を持った議論を行うために、ゲノム指針のどこの部分をどのように修正すればよいか、その点も含めてご発言いただければと思います。
 では、まず資料1の10ページをご覧ください。5.遺伝情報の開示について事務局から資料の説明をお願いしたいと思います。
○経済産業省(長部課長補佐)  
 それでは、資料1の10ページをご覧ください。5.遺伝情報の開示というところですが、この資料全体の構成としまして、初めに現行の制度がどうなっているのか、次に検討のポイント、その下に四角でくくってある見直しの方向性(案)を設けております。幾つかの項目に関しては、改正イメージ(案)を設けているところもございます。
 それでは、10ページからご説明していきます。まず現行のゲノム指針においては、研究責任者は提供者が自らの遺伝情報の開示を希望している場合は、原則として開示としております。ただし、一定の要件につき、その全部又は一部を開示しないことができるとしているものでございます。ここは現行及び検討のポイントは前回から変更ございません。
 10ページ一番下の見直しの方向性(案)としては、まず第1段落として、提供者の権利を尊重して、引き続き、提供者が自らの遺伝情報の開示を希望している場合は、原則として開示とするというものでございます。
 11ページ目に、「ただし」とありますが、遺伝情報については、精度や確実性に欠ける場合がありますので、以下の場合には、全部又は一部を開示しないことができるとしてはどうかというもので、初めの段落は、遺伝情報を提供することにより、提供者等の生命、身体、財産、その他の権利利益を害するおそれ、もしくはその精度や確実性に欠けており、開示することにより、提供者、血縁者の誤解を招くおそれや精神的に負担になるおそれがあって開示しないことについて、インフォームド・コンセントを受けている場合は開示しないことができるとしてはどうかというものです。
 また、次の段落におきまして、精度や確実性に欠けているので、開示することにより提供者や血縁者の誤解を招くおそれがある場合は、インフォームド・コンセントを受ける際にその旨を十分に説明し同意を得ることとしてはどうかというものです。
 次の段落は、インフォームド・コンセントを受けているという手続を行うので、遺伝情報を開示しないことについて同意を受けているにもかかわらず、提供者が事後に開示を希望した場合についての細則は削除するというものでございます。
 次の※から前回と変わって追加したところですが、ただし、提供者はインフォームド・コンセントの撤回を申し出た場合には、ゲノム指針10、インフォームド・コンセント(10)の規定に基づき、研究責任者は原則として試料、研究結果を匿名化して廃棄するというのを入れております。 
 その次に、「併せて」というところですが、提供者等から遺伝情報の開示の要求があった場合には、開示の対象になる遺伝上の範囲、例えば解析の結果得られる塩基配列について、ゲノム指針のQ&Aにおいて整理することとしてはどうかというものを入れております。これは各委員において、遺伝情報に含まれる範囲が異なるという印象を受けましたので、それをゲノム指針のQ&Aにおいて整理することとしてはどうかというものを盛り込んでおります。
 最後に、なお、遺伝情報は個人情報に該当する場合で、提供者等から個人情報の開示を求められた場合は、現行ゲノム指針の6研究を行う機関の長の責務(23)の個人情報の開示に規定に従って開示の手続を行うことをゲノム指針の細則に規定するというものでございます。
 今申し上げた見直しの方向性(案)を具体化したものが改正イメージ(案)となります。まず、提供者が自らの遺伝情報の開示を希望している場合は、原則として開示というのが第1段落です。「ただし」とありますが、例えば下線部にあるように、遺伝情報がその人の健康状態を評価するための情報としての精度や確実性に欠けており、開示することにより提供者、血縁者の誤解を招くおそれや精神的負担になるおそれがある場合は、その全部又は一部を開示しないことができるというものです。なお、開示しない場合には、提供者に遺伝情報を開示しない理由を提供しなければならない。
 12ページは〈注〉として先ほど申し上げた遺伝情報が個人情報に該当する場合で、個人情報の開示を求められた場合は、第2の6(23)の規定に従って開示を行うというものです。
 遺伝情報の開示に関する細則に関しては、先ほど申し上げたとおり、 (2)の遺伝情報の開示をしないことにつき、同意が得られているにもかかわらず、事後に開示を希望した場合というところの細則を削除するという案でございます。以上です。
○永井座長  
 ありがとうございます。それでは、ただいまのご説明にご意見をお願いいたします。辰井委員、どうぞ。
○辰井委員  
 内容に入る前に1つ確認させていただきたいことがあります。事務局にお伺いしたいのですが、3省のご理解では、こちらの遺伝情報の開示というところで使われている開示という言葉は、個人情報保護法の開示と同じ意味だというご理解なのでしょうか。
○経済産業省(長部課長補佐)  
 同じ意味ということで理解しております。
○辰井委員  
 恐らく少なくとも最初のゲノム指針がつくられたときには、遺伝情報の開示といわれていたときの開示は、いわゆるフィードバックを指していたと思います。ここのメンバーの多くも、個人情報保護法にいう開示とは違う、研究成果を説明することと理解して議論していたと思います。しかし、個人情報保護法などとの関係で、やはり原則は崩せないというお話を事務局から何度も伺うようになり、何かそこでちょっと食い違いがあるのではないかと思っているのですが。
○永井座長  
 いかがでしょうか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 現行のゲノム指針の規定におきましては、提供者が自らの遺伝情報の開示を希望している場合には原則として開示するということとなっております。ですから、開示の請求があったときにどう対応するかということを書いているのではないかと理解してございます。従いまして、単に研究結果を説明するとか提供するということの意味とは違うのではないか、特に提供者からの請求があったときにどう対応するかということで整理しているのではないかと考えています。
 なお、今回この見直しを考えるにあたりまして、13年当時の議論、16年当時の議論も議事録など見直しさせていただきましたが、我々が読んだ限りでは、開示すべき遺伝情報の範囲が明確でなかったので、今回、Q&Aでそこを整理したほうがいいのではないかという提案でございます。
○辰井委員  
 個人情報保護法的な開示というのは、ここで議論されていた、あるいは恐らく一番最初にゲノム指針が想定していた開示とは内容が全く異なると思います。最初の開示は、ヒトゲノムの基本原則などにおいて、個人は遺伝情報に関して知る権利があるというものに応じて導入されたものですから、遺伝情報の開示は、少なくとも当初は個人情報保護法における開示とは全く異なる、ご本人の遺伝情報についてきちんとご説明なり何なり差し上げるということを意味していたと思います。だからこそ、カウンセリングの規定などもあわせて入った訳です。
 それがその後、個人情報保護法に関連して改正がなされたときに、もしかすると個人情報法でいう開示と、こちらでいう開示が少し混乱を来したのではないかと疑っております。もし事務局が、これは個人情報保護法の開示と基本的に同じだというお考えだとすると、それはただ単に配列情報を見せればいいというだけの話になってしまいますから、そうすると、本来ゲノム指針の中にあるべき遺伝情報についてきちんとご説明するという趣旨のフィードバックに関する規定が全くないということになってしまい、それは非常に問題がある解釈だと思います。
○永井座長  
 ただいまの点、如何でしょうか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 ということもありましたので、開示の請求があったときに、どの範囲まで返さなければいかないのか。それは遺伝情報のデータそのものだけでいいのか、そこの周辺も含むのかということも含めて、この際、クリアにしてはいかがかということで、Q&Aで整理したらどうかという提案でございます。
○永井座長  
 鎌谷委員、どうぞ。
○鎌谷委員  
 私自身は開示に反対なのですけれども、私は法律家でもないし、大勢が開示ということであればそれでいいと思います。
 ただ、現実問題として、我々がこれから直面するであろうということは、特に配列そのものが誤りであるということなのです。たくさんやれば、誤りを含むことは間違いないのですけれども、しかも重大であればあるほど誤りである確率が高いのです。例を出すと、去年、長寿の遺伝子を何十個か発見したと。それで長寿が70%予測できるという論文が「サイエンス」に発表されたのです。私自身はそれを見た途端に、これはうそだとわかったのですけれども、最近それが論文取り消しになったのです。そのように、研究者が誤りをわからないということが非常に多いと思われます。
 また、これから全ゲノム配列ということになると、誤りを含む可能性はほとんど 100%近くて、重要なものであればあるほど誤りである可能性が高い。しかも、研究者はそれが誤りであることが多分わからないと思います。重大なものというのは、例えばこれが遺伝病を持っていて、それが家族にも伝わることは確実であるという情報なのです。その辺をよく考えていただいて、開示するときの対処法として、誤りとはどういうことをいっているのかということを研究者にもよく説明しないと、恐らくほとんどの人がまだわかっていないと思います。
○永井座長  
 高芝委員、どうぞ。
○高芝委員  
 資料1の3ページの一番左の情報のうちの1つとして、遺伝情報が記載されています。それが真ん中で区分けになりまして、個人情報に該当するものと個人情報に該当しないものとに分けられている。このように、遺伝情報にも2種類あるという説明になっています。個人情報に該当するものは、法律の個人情報より少し広げてあるのですけれども、この指針でいう個人情報の考え方としては、個人情報保護法と同じ対応処理をしていくという事務局の整理になっていると理解しています。そうでない、個人情報に該当しないものについては、個人情報保護法に準拠するどうこうという座標軸は要らなくなりますので、この指針としてあるべきところを考えていくということで、その内容がフィードバックの考え方であっても、それはそれでいいと思うのですけれども、少なくとも個人情報に該当する方に入る遺伝情報については、法律ベースで考えていくという仕分けをすればよろしいのではないかと思っています。
 以上です。
○永井座長  
 どうぞ。
○堤委員  
 個人情報保護法に従って整理するという考え方もあろうかと思いますけれども、その場合には、先ほど鎌谷先生が整理していただいたようなデータの質であるとか意味とかは問わずに、すべて返さなければいけないという非常に極端な形にならざるを得ないと考えます。その情報は、試料提供者にフィードバックされた時点で医療情報とほぼ同じような意味を持つ訳でありますので、そうなりますと、個人情報保護法だけに基づいて質等を問わないデータを返すことに関しては、どうもおさまりが悪過ぎるのではないかと私は感じております。
 以上です。
○永井座長  
 藤原委員、どうぞ。
○藤原(靜)委員  
 まず最初の辰井委員のお話ですけれども、13年は分からないですが、少なくとも16年は、おっしゃるように個人情報保護法があることを前提としていますから、個人情報保護法との整合性を図るという前提で全体を見直しているのではないかと思います。ですから、少なくとも16年に関しては、開示も含めてと考えたほうがいいのではないかと思います。当時の連結可能とか連結不可能という議論は、そもそも個人情報保護法の個人識別との関係で始めている訳です。それは先ほどの高芝委員の議論にも関わるところですけれども、連結不可能な匿名化にして識別性がなくなれば、それは個人情報保護法の世界から外れるだろうという議論を一方でしていて、他方、権利に関わるところだけは個人情報保護法と無関係の議論をしているというのは体系的にもおかしいですから、少なくとも16年は、全体として個人情報保護法と合わせる議論をしているはずであるし、そうだと思います。13年は先生のおっしゃるとおりかもしれません。そこは個人情報保護法との関連は、今すぐは、ちょっと分かりません。
 2つ目ですけれども、堤委員の言われたこと自体はよく分かるのです。ただ、先ほど高芝委員がお示しになった3ページの図ですけれども、個人情報に該当する部分については法律の世界なので、もし法律の世界を破るのであれば、しかも開示という請求者の権利について破るのであれば、それは特別法の世界になる。そもそも個人情報保護法は一般法である。医療とか電気通信とか金融は、特則をつくるならつくれるという話が出てくる訳です。しかし、ここでは特別法、いわゆる個別法はできていない訳で、対応するものとしてのガイドラインでやっている訳です。この指針を個人情報保護法との関係でどこに位置づけるかはともかく、法律の世界に入ってくる部分は、ガイドラインで法律より質を下げることは難しいのではないか。下げたいのであれば法律にすべきだではないかということです。
 まだあるのです。3つ目ですけれども、個人情報に該当しない部分等についてここで議論していて、先ほどのご議論のように誤りが多いし、分からない情報なのだということであれば、それは回答の仕方ではないかという気もするのです。一番極端な話をすれば、CD—ROMにゲノムの配列を焼いたものを返すのかという議論になるのだと思うのですけれども、簡易な開示の方法もあるでしょうし、分かりませんということをうまく制度にのせるという開示の仕方でも構わないと思うのです。
 インフォームド・コンセント的に研究をフィードバックしなければならないということで何もかも丁寧に説明しようとすると負担があるし、しかも誤りのあるものをどうやって説明するのだというお話になろうかと思います。しかし、何を対象にするのか等、分からないという答えも含めて回答の仕方の工夫もあるのかなという気がいたしました。
 以上です。
○永井座長  
 辰井委員、どうぞ。
○辰井委員  
 先ほどの鎌谷先生のご意見も、堤先生のご意見も、個人情報保護法の開示とは全然違うものとして開示を理解されているという前提の議論だと思います。先ほど事務局から、そういう訳で、どの範囲の遺伝情報をどのように開示するかということについて皆さんの意見が一致していないからそこを明確にするのだという趣旨のご説明がありました。しかし、これが個人情報保護法的な開示なのか、それともヒトゲノムの基本原則的な、人は遺伝情報について知る権利がある、それに対応するためのフィードバックなのかということによって、そもそも何を提示するべきなのかというのは全く違う話になってきますので、そこはやはり明確にしていただく必要があると思います。
 私個人としては、先ほど高芝先生が整理していただいたように、個人情報については個人情報の規定があるので、こちらについては違う意味で理解しても構わないということであれば、個人情報の開示とは少し違う意味で遺伝情報についてご説明するという趣旨の規定と理解するべきだと思いますし、もしそうでないならば、その趣旨の規定を別に入れる必要があると思います。
○永井座長  
 3ページの図を見ていただいて、辰井先生は、個人情報と個人情報に該当しない情報の2通りあるというのはよろしい訳ですね。ただ、位置づけが個人情報保護法に該当するものかどうかというところがまだ明確でないということですか。
○辰井委員  
 いえ、開示の意義自体が全く違う理解で議論が進んでいるのではないかという疑問です。個人情報保護法の思想に基づく開示であれば、開示というのは、先ほど藤原先生がご説明下さったように、そんなにあれこれ説明する必要もない。ただ、ある程度間違いがあったとしても、そういう間違いを含むこういう情報がありますということを示せばよいと伺っています。しかし、ここで多くの研究者の方が議論されていることは、研究の結果、あなたは遺伝的にどういう素因があるということが明らかになりましたということをご説明する。それは以前、開示といっていましたが、ほかにフィードバックとか返却という言い方をしますけれども、そういう別のものとして議論が進んでいるように思えます。後者の議論はやはり必要なので、それは何らかの形で指針の中に入るべきだと思います。
○永井座長  
 それによって書きぶりも随分違ってくるだろうということですね。鎌谷さん、どうぞ。
○鎌谷委員  
 事実関係について申し上げたいと思うのですけれども、私の記憶の限りでは、この前の個人情報保護法ができた後の改正は、私も委員として参加していたのです。これについてはその前からずっとみているのですけれども、これは最初、厚労省の指針では個人識別情報となっていたのです。最初の指針になって個人情報になったと。そのときから遺伝情報の原則開示という項目はありました。それから、連結可能匿名化も連結不可能匿名化も個人情報保護法施行前からありました。それで、個人情報保護法ができたときに法律家の先生たちが入って、私も入ってこれの改定を行いましたけれども、そのとき、もちろんいろいろな項目が入ったのですが、連結可能匿名化、連結不可能匿名化という文字とか個人情報とか開示に関しては変更がなかったように記憶しています。
○永井座長  
 他の委員の方々、ご意見いかがでしょうか。横野委員、どうぞ。
○横野委員  
 私も辰井委員がおっしゃった点に賛同します。フィードバックとおっしゃっていましたけれども、研究倫理の問題として、例えば個別に結果をフィードバックするということのほかに、全体としての結果を研究に参加してくださった人、あるいは社会全体に対してフィードバックすることと関連づけて議論されている研究倫理上の問題としてのフィードバックが1つあって、一方で個人情報保護ルールを当てはめた場合の個人に関する個人情報の開示という、また少し違った文脈での議論があると思いますので、今現在の個人情報の開示を指針の中でどう位置づけられているととらえるのかというところで認識が違っている部分があるのではないか。そこがもし混乱があるのであれば、今回整理する必要があるのではないかと思います。
○永井座長  
 その場合には、例えばどういう書きぶりの違いになってきますか。
○辰井委員  
 私自身の理解としては、先ほど鎌谷先生にご説明いただいたとおりで、現在の遺伝情報開示の開示は、もともとの議論としてはフィードバックの意味であったと思います。ですので、それをそのまま生かすという形で直せるのであれば、開示という言葉を少し変えて、内容も若干変えるということで対応できると思います。
○永井座長  
 例えばこのような書きぶりだというご提案はありますか。
○辰井委員  
 内容については、ここ2、3回、散々議論したところでございますが、ここを開示ではなくて返却という名前に変えて、内容としては、前回、前々回と議論してきたことを踏まえるならば、必ずしもどちらが原則ということではなく、だれだれにこういう影響が及ぶとかいろいろな注意事項を記載して、こういったことを十分に考慮に入れた上で返却するかしないかのポリシーを決定しなければならないということで対応できると思います。
○永井座長  
 1つは、開示という言葉はイメージがきつ過ぎるということですけれども、限定される可能性がある。
○辰井委員  
 きついというよりは、違うということだと。開示という名前にしてしまうと、どうしても個人情報保護法制の基本にある考え方がここに適用されるというイメージになってしまいますので、それは違うということです。
○永井座長  
 返却という言葉を使う。
○藤原(靜)委員  
 辰井委員や堤委員のご意見と私が違うのは、原理原則のところだと思います。個人情報保護法制の理解は今のような理解でも別にいいのですけれども、最初にいわれたことは、お2人とも、あるいは鎌谷先生もそうだったと記憶しておりますけれども、誤りがあるからみせなくていい、返さなくていいという、原則を変えるというところです。だから、開示という言葉であれ、戻すという言葉であれ、あるいは開示という言葉の定義を統一するということであれ、大事なのは原理原則のほうで、先ほど辰井先生が、13年は遺伝について患者さん、あるいは協力した方々の知る権利と図らずもおっしゃいましたけれども、とにかくその方々の要請に応える、ということであったのだろうと思います。それが出発点で原理原則であるとすると、どちらに分類するにせよ、高芝先生のおっしゃった個人情報に該当しない場合にせよ、原理原則を変えるか変えないかという議論のほうが重要ではないかと思うのです。誤りがあるから、原則としては返すのは難しいのだという方向のお話なのか、誤りだという留保条件、あるいは誤りはたくさんあります、かなりの確率ですという形で、さっき開示の方法の問題ではないかと申し上げたのはそういう意味ですが、やはり返す。ただし、事務局原案に書いてあるように、ただし書きのいろいろな事情があれば、それはやむを得ない、返せない場合もあるという、原理原則まで転換するのかどうかの議論をしておかないと、その後が辰井先生のご議論ではないかと考える訳です。
○永井座長  
 辰井先生も原理原則は返却するということでよろしいのですね。そこはどうなのですか。
○辰井委員  
 まず、個人情報保護法的な開示であるかどうかは重要ではなくてというお話が少し含まれていたかと思いますが、そこは極めて重要な区別だと思います。まずそこがはっきりしないと、この規定をどう変えたらいいかということ自体も議論がしにくいところがあります。しかし、そこを完全に個人情報保護法のいう開示ではなくて、フィードバック的なものとして理解してよいということであるならば、その先の議論はいたしますが、その先の議論は、ここ2回、随分議論させていただきましたように、返却が原則とされるべき場合もあるし、むしろ返してはならないという場合も研究の仕方において存在していますから、どちらを原則とすることはできないだろうというのが私の認識です。
○永井座長  
 鎌谷委員、どうぞ。
○鎌谷委員  
 我々の感覚としては、結果の説明という感じなのです。ただし、昔は確かに単一遺伝子病で、もっていることが確実で、もっていれば必ず病気になる。家族も保因者の場合は必ず保因者であったり、必ず保因者でなかったりするのですけれども、最近のはそれから相当ずれていて、本当かどうかかもわからないようなことも結構多い訳です。そうすると、本当のことをみせるのが開示であって、嘘を含んだものをみせるのは、むしろ開示というより結果の説明に近いのではないかと思うのです。私はそのようにずっと結果の説明をしているつもりなのですけれども、開示というのは、我々の言っている行為の説明からは余りにもかけ離れているような感覚がしています。
○永井座長  
 堤委員、どうぞ。
○堤委員  
 鎌谷先生がおっしゃっているのは、全体がおわかりになっているからそのようにご説明されておりますけれども、別に間違っているから開示しないほうがいいという話ではなくて、逆にいうと、精度をどこまで担保できているか、エラーを含んだ上で研究として解析してきたものをいきなり返すのはどうか、という意味において、間違いもありますということを示していただいている訳ですので、間違いがあるから返さなくていいという極端な議論ではないとご理解いただきたいと思います。
 もう1つ、例えば運用でカバーするということで言えば、個人情報保護法からの介入をいなしてしまう方法としては、対応表をどこかに預けてしまえばいい、ただそれだけなのです。運用でカバーしようと思いますとそういうことをすれば、実は個人情報でなくなりまして、施設内に対応表がなくなりますので、逆にいうと個人情報保護法の影響を受けなくて済むようになります。ただ、このような運用での対応は短絡的で、本質的に今この会で議論しなければいけないのは、平成16年以降の科学の進歩とか解析技術の進歩を含めて、ゲノム情報そのものをどのように位置づけるのか、どう取り扱っていくのかということこそ5.遺伝情報の開示の項で議論しないといけないのではないかと思っております。
○永井座長  
 今までの議論を聞いて、遺伝情報がかなりファジーで確率分布的なものになって、決定論的な確定したものではない。しかも、意味となると、かつてのように単一遺伝子病であれば意味が非常に明確、あるいは90%以上の確率でものが言えたのが、だんだん低い確率のところに科学が進歩してきて、意味としても、例えば1%とか2%の確率が問題になってくるというところで、この遺伝情報をどう位置づけるかという議論です。
 例えば、倫理の前田先生は、そういうときにどのようにお考えになりますか。ちょっとご意見いただければ。
○前田委員  
 そもそも論になりますけれども、私は、意見が随分と対立している中で、どちらかを原則として示すことは、それ自体、望ましいことではないと考えています。対象を細かく区分して原則を決めるとすれば、そのことも可能になると思いますけれども、そうでなければ、前回も申しましたように、どちらかを原則として示すことは、それ自体、望ましいことではないと思います。
○永井座長  
 何らかの原則はあるはずですけれども、どう扱うかということをなかなか明確にできない状況であるということですね。どうぞ。
○増井委員  
 1つ確認なのですが、11ページの改正イメージのところなのですけれども、最初の遺伝情報の開示を返却とするかどうかは別としても、 (1)のところから注の前までは個人情報でない遺伝情報に関する部分について考えていると考えてよろしいですか。そうすると、注のところにある、遺伝情報が個人情報に該当する場合には、その前にある「ただし」以降の、さっきから問題になっている少し正確性を欠く制度や確実性に欠けておりというような場合も、結局は個人情報の開示の原則に従って取り扱われるのであって、必ずしも個人情報でない遺伝情報の場合には「だたし」以降が適用されるけれども、注のところに書いてある遺伝情報が個人情報に該当する場合には全然別の世界に入ってしまうと考えるのですか。そこをちょっと……。
○高芝委員  
 これは私の理解ですが、先ほどの3ページのところが分かりやすいと思います。左に遺伝情報があって、これが2つに分かれる。遺伝情報のうち個人情報に当たるものは、今、増井さんからご指摘いただいたとおり、この原案では個人情報としての取り扱いですから、法律に基づいた発想の開示が行われる。個人情報に該当しない遺伝情報の中に中黒が2つあって、その1つに、連結不可能匿名化された情報というものがあります。この場合は連結不可能ですから、戻すとか返すということはあり得ない訳です。ですから、指針で議論の対象となるのは、私の理解としては、2番目の中黒、連結可能匿名化されて、同一法人内で対応表を有していない場合にどうしましょうかというのが今のテーマになっているという理解です。
 そして、個人情報に当たる場合は、やはり法律がある以上、その原則を度外視する訳にはいかないのですけれども、先ほど藤原先生がおっしゃられたように、開示する場合の表現の方法として、例えば、確率を前提とした説明でもいいでしょうし、違っている可能性もあることも含めた開示の仕方はあり得るのだろうと思っています。
○永井座長  
 でも、鎌谷先生、辰井先生のご意見は、上の個人情報と書いてある部分も非常に不確定で、意味も不明な点が多いので、個人情報として位置づけるのは難しいのではないかということではないでしょうか。辰井先生、どうぞ。
○辰井委員  
 私の理解では、現行の遺伝情報の開示が個人情報の開示とは異なる、先ほど横野先生が説明してくださった倫理的な観点からのものであると理解するならば、ここでいう開示の義務は、個人情報に当たる遺伝情報にも当然かかってくるはずだと思います。遺伝情報のうち個人情報に当たるものに関して、個人情報保護法に基づく開示義務が発生するのは当然です。しかし、個人情報保護法制に基づく開示義務は、倫理的な観点からの遺伝情報についてご本人にお知らせする義務というのとは全く違う観点からつくられているものですから、個人情報に当たる場合であっても、それが遺伝情報であれば、ゲノム指針でいう遺伝情報には含まれる。ゲノム指針でいう遺伝情報の開示の対象にはなり得るという理解が妥当ではないかと思います。
○増井委員  
 そうなると、「ただし」以下の部分、それから、例えば開示しない場合に、その理由を説明しなければならないという部分は、遺伝情報が個人情報に該当する場合にもこの部分は活きるということですか。
○辰井委員  
 はい。
○永井座長  
 今の点で、どうぞ。
○高芝委員  
 先ほどの3ページの個人情報に当たる場合については、注として補足することが検討されているとおり、指針の12ページ、(23)で開示をしなければならないとなっていて、開示しなくていい場合が「ただし」ということで、アとイの場合があって、この時が非開示になっていますので、こちらの方によるということになろうかと思います。
○辰井委員  
 補足してよろしいでしょうか。先ほどの増井先生のご質問も、これが結局個人情報保護法的な開示なのかどうかによってお答えが全然変わってまいりまして、個人情報保護法的な開示だとすると、今、高芝先生が余り強くおっしゃいませんでしたが、このただし書きによって個人情報に当たる遺伝情報の開示義務を解除することはできないということに当然なります。しかし、そうではないという解釈であれば、これはこれで別の趣旨の規定ですから、これはこれで個人情報にも当てはまるということです。
○永井座長  
 藤原委員、どうぞ。
○藤原(靜)委員  
 私は、堤委員のおっしゃることも、辰井先生のおっしゃることも大変よく分かるのです。ただ、その場合は、さっき座長がおっしゃったように、哲学というか、倫理の問題に戻るのかなと思います。つまり、遺伝情報が、かつてとは違って、今は科学も進み、医学も進みということになれば、今の議論との関係では、3ページの図を上下に分ける意味はさほど大きなウエートを占めなくなって、おおよそ遺伝にかかわることについて、相手方に知らせるのかどうかという問題になる。その場合、辰井委員のおっしゃることもわかって、私は法律の解釈にこだわっているのではなくて、つまり、最先端の議論を個人情報保護法の世界に閉じ込めようというのではなくて、一般論としてですけれども、相手方が希望したときに、それを最終的に断れるという理屈がないと、遺伝情報一般について、科学も進んだし、誤りも多いし、非常にファジーなものである。だから、これについてあなたは希望するけれども、やはりお答えできませんということで、おおよそ遺伝情報に係るところについては、開示と呼ぼうが何と呼ぼうが、哲学が変わりましたということで、この場の合意、あるいは社会的合意がとれるのであれば、そこは法の解釈の世界ではなくなると思います。まずそれが1つです。もっとも、その場合、開示の求めの対象は、16年の議論のようなものはなくなってすべてファジーなものになってしまったということが前提になろうかと思います。
 改正の経緯は、13年のときは知らないのですけれども、今回の改正は、開示だけは個人情報保護法制とは別の世界にして、委託であるとか安全管理措置であるとか識別性というのは、すべて個人情報保護法と平仄を合わすように努力している。それはどのように理屈をつけるのだという問題も生ずるだろうと思います。やはり前半の問題のほうが重要かなという感じがしております。
○永井座長  
 ですから、何に基づくかは別として、返却の仕方はいろいろあると思いますけれども、請求があれば返却するというところはよろしい訳ですね。
○藤原(靜)委員  
 ただ、先ほどからのお2人のご意見は、してはならない場合もあるし、原則は決められないとおっしゃっているので、そこは多分ちょっと違うのだろうと思います。
○辰井委員  
 これ以降は私ではなくて、研究者の先生方にも少し議論いただいたほうがよろしいと思います。
○永井座長  
 希望した場合に、間違いが多いしファジーだし、極めて低い確率の意味だということを含めてお返しするということはどうなのですか。
○鎌谷委員  
 その辺がかなり担保されるようにしないと、現場では混乱が生じます。例えば1%などというと、そんなものは本人にとって余り役に立たない訳です。ただ、集団としては、例えば1万人の人を押さえれば数十人の人が助かる訳です。研究の目的と個人の利益というのは、必ずしもストレートフォワードには一致しないので、その場で被験者に説明できる人を養成すれば、この問題はそれほど混乱が起こらないと思うけれども、それは難しいという現実がある訳です。
○永井座長  
 特に疫学とかゲノム研究は、集団について物を語ろうとしている訳です。個人についてはさっぱりわからない訳です。そういう時代に入ってきている訳ですから、研究者もそういう説明の仕方のトレーニングをある程度しないといけないだろうと思います。徳永委員、どうぞ。
○徳永委員  
 今、鎌谷先生のご指摘も、永井先生のおっしゃったことも、現実をかなり反映されていると思うのです。ここで振り返ってみたいのは、2001年に最初の指針ができたときは、何度もいわれていますが、単一遺伝子疾患で、この遺伝子の非常に珍しい変異がこの病気にかかわる、研究はほとんどそういう研究だった訳です。その後、そもそも指針の見直しを始めたときに、技術の進歩があってということが最初にその理由に入っています。
 この10年間に、何の技術の進歩があったかというと、そもそも解析する対象の疾患が他因子疾患、がんとか糖尿病とか、それまでなかなか解析しづらかったものまで広がっています。例えばがんでありますと、単一遺伝子疾患で説明できるがんは5%以下といわれています。つまり、95%はそういう形ではないのです。以前の指針を考えたときの状況とは違うということが分かるかと思います。しかも技術の進歩で、ゲノム全体から何か探し出します。何かの遺伝子が関係するかもしれないという2000年以前の形で調べるのではなくて、ゲノム全体を調べます。中にがんとかかわるかもしれないものがぽつりぽつりとみつかってきますが、そのほかに得られた情報、塩基配列の情報というのは、基本的にその疾患とは関係ないものです。
 それを研究者の立場といいますか、指針に従って研究を進めようという人が読んだときに、原則開示というのは現実問題として違和感が非常にある。こういう結果が出た、こういう意味がありますという開示、フィードバックという形でほとんどの研究者が理解していますので、それがこれだけ対象が広がってあいまいなものもありますし、得られる情報が膨大になって、しかも疾患と直接かかわる部分はその中のほんの一部という状態になったときに、どうすればいいのだろうということが現実問題として10年前の指針とは随分違うという状況になっている。
○永井座長  
 時間の関係もありますので、この議論はもう少し持ち越したほうがいいと思うのです。ただ、論点はだんだん明確になってきましたし、場合によっては書き方の問題でその辺をクリアできないかどうか、事務局ともう少し検討してみたいと思います。
○堤委員  
 今の議論も踏まえて考えてみたのですけれども、例えば遺伝情報の開示については結果の取り扱いにするとか、原則開示をとって、今の議論を踏まえてあえていうならば、研究責任者は、実施しようとするヒトゲノム遺伝子解析研究の特性や、それにより得られる遺伝情報の特性を踏まえて、遺伝情報の取り扱い等についての方針を考えなければならないとか、検討しなければならないというようにしますと、研究目的が多因子疾患であったり、単一遺伝疾患であったりすることによって得られる遺伝情報の意味とか質も違いますので、研究責任者は、これら特性を踏まえた上で開示・非開示を検討することになります。また、倫理審査委員会等の手続等を踏まえて、それで得られる情報をどう扱うかを試料提供者にインフォームド・コンセントを受ける時にきちんと情報提供することができるようになります。
○永井座長  
 ですから、返却であれ、開示であれ、それをどのように位置づけるかという議論で、もちろんその先には、場合によっては、そういうことであらかじめ同意を得ておくということであれば、いろいろな問題をクリアできる訳ですけれども、それ以前の位置づけの問題になっていますので、書き方等をもう少し検討してみたいと思います。
 時間の関係で先へ行きます。次の課題が、既存試料等の利用でございます。これについての説明をお願いいたします。
○経済産業省(長部課長補佐)  
 それでは、資料1の15ページをご覧ください。6.既存資料等の利用についてというページでございます。
 まず現行ですが、現行のゲノム指針においては、A群、B群、C群試料と試料が分類されてございます。A群試料は、試料の提供時にヒトゲノム・遺伝子解析研究における利用を含む同意が与えられている試料。B群試料は、試料等の提供時にヒトゲノム・遺伝子解析研究における利用が明示されていない研究についての同意が与えられている試料等。C群試料が、試料等の提供時に研究に利用することの同意が与えられていない試料等に分類されている。それぞれA、B、Cで、15ページ以下に掲げられている要件を満たす範囲内で利用することができるというものでございます。
 16ページに行っていただきまして、一方、臨床研究指針や疫学指針においては、試料等の利用について同意を受けることを原則としつつ、同意を受けることができない場合は、以下の1、2、3に該当する場合は利用することができるというものでございます。特に1として、当該試料が匿名化、括弧の中ほどですが、連結可能匿名化であって対応表を有していない場合に関しても利用できるというものでございます。
 検討のポイントですが、A群、B群、C群の区分も含めて手続、要件のあり方について見直しを行う必要があるかというものでございます。
 16ページ、下の四角のところを見ていただきたいのですが、見直しの方向性(案)としては、研究を行う機関において保存されている既存の試料の取り扱いについて、よりわかりやすく整理する観点から、臨床研究指針や疫学指針を参考にしつつ、現行のA群、B群、C群試料等の区分も含め、手続、要件について見直しを行うというものです。
 まず原則としては、提供者の同意を尊重して、既存の試料等をヒトゲノム・遺伝子解析研究において利用する場合には、その利用について同意を受けることを原則としてはどうか。
 次の17ページに行っていただきまして、当該同意を受けることができない場合には、一定の要件について倫理審査委員会の承認を得て、研究を行う機関の長の許可を得たときはその試料を利用することができるとしてはどうかというものでございます。
 また、提供者に対して試料等を利用したヒトゲノム・遺伝子解析研究の情報を十分に提供し、同意の機会を適切に確保する関連から、連結可能匿名化されている既存の試料を同意の範囲を超えて研究に利用する場合には、試料等の利用目的を含む情報を提供者に通知し、又は公開していることを要件としてはどうかというところです。ここまでは前回と変更はございません。
 今回新たに、その下に改正イメージ(案)をつけさせていただきました。第4.試料等の取り扱いですが、まず研究を行う機関において保存している既存試料等の利用に当たっての措置というところで、第1段落の中ほどまでですが、まず原則としては、自らの機関において保存している既存試料等をヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用する場合は、提供者又は代諾者等から試料の利用に係る同意を受け、同意に関する記録を作成することを原則とする。ただし、同意を受けられない場合は、次のいずれかに該当する場合は利用することができるというものでございます。 
 1として、当該既存試料等が連結不可能匿名化されていること。
 2は、疫学・臨床指針を参考にしてつくりましたが、当該試料は1に該当しない場合において、当該試料等は連結可能匿名化されており、対応表を有していない場合は、ヒトゲノム研究の実施について既存試料等の利用目的を含む情報を提供者に通知し、又は公開していること。
 3も同様に、臨床・疫学指針をもとにしておりますが、1、2に該当しない場合において、既存試料等の提供時に、当該ヒトゲノム・遺伝子解析研究における利用が明示されていない研究についての同意のみが与えられている場合は、次に掲げる要件を満たしていること。まず、アとしては、ヒトゲノム研究の実施について、既存試料の利用目的を含む情報を提供者に通知し、又は公開している。イとして、その同意が研究の目的と相当の関連性があると合理的に認められるというものでございます。
 4は、以前のC群試料に基づいておりますが、1又は3に該当しない場合は、次に掲げる要件を満たしていること、又は法律に基づいていること。ア ヒトゲノム・遺伝子解析研究により、提供者等に危険や不利益が及ぶおそれが極めて少ないこと。イ その試料を用いたヒトゲノム・遺伝子解析研究が公衆衛生の向上ために必要がある場合である。ウ 他の方法では事実上、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施が不可能である。エ ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施状況について情報の公開を図り、あわせて提供者又は代諾者に問い合わせ及び試料等の研究への利用を拒否する機会を保障するための措置が講じられている。オ 提供者又は代諾者の同意を得ることが困難であるというものでございます。
 次のページに行ってもらいまして、第16 用語の定義を加えております。既存試料等という用語ですが、次のいずれかに該当する試料を既存試料等という。ア ヒトゲノム・遺伝子解析研究の研究計画書の作成時までに既に存在する試料等。イ 研究計画書の作成時以降に収集した資料等であって、収集の時点においては、当該ヒトゲノム・遺伝子解析研究に用いることを目的としていなかったものでございます。以上です。
○永井座長  
 ありがとうございます。ただいまのご説明にご意見いかがでしょうか。堤委員。
○堤委員  
 ちょっとあまのじゃくのような質問で、片方では教えていただきたいということもあるのですけれども、通知するとか公開しているレベルはどんなレベルなのでしょうか。例えば、研究機関がホームページでこういうことをやっていますというレベルでも十分よしとされているのかどうかというところを教えていただきたいのです。方針が確認できて、Q&Aみたいな形で、このレベルまでは通常の範囲内でよろしいのではないですかということを書いておいたほうが、研究される先生方もやりやすいかなと思っているのですけれども、このあたりの雰囲気を教えていただきたいと思います。
○永井座長  
 事務局から。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 趣旨としては、提供者等に知らしめるということだと思いますので、提供者等に通知することができるのであれば、直接していただくということではないかと思います。ただ、公開していることをもって周知できるということであれば、それでもいいということではないか。従いまして、具体的に公開という中では、ホームページなどに公開することなどが想定されています。
 いずれにせよ、このあたりの扱いにつきましては、Q&Aなどでもう少し丁寧に解説してはいかがかと思っています。
○永井座長  
 他にいかがでしょうか。どうぞ。
○知野委員  
 質問なのです。4なのですけれども、1~3に該当にしない場合においてのケースをずっと挙げていらっしゃいますが、実際問題として、研究者の方が研究をされようとするときに、ここから漏れてしまうような研究があり得るのですか。質問の趣旨としては、これを見てみますと、つまり研究者がコンセンサスを得ていないものについても、研究をしたいと思った場合に、たとえ内面ではどう思っていても、外的にはこれに反した研究をやるということはあり得るのでしょうか。
○永井座長  
 いかがですか。でも、これはかなり精密に場合分けがしてあって、1から4以外の場合には利用できないということをいっている訳ではないのですか。
○知野委員  
 ただ、4の場合には、研究開始しようとするときにほとんど入ってしまうということでしょうか。
○永井座長  
 いかがですか。むしろ鎌谷先生、どうでしょうか。
○鎌谷委員  
 私、これを読んで1回聞いただけでは、4に何かが入るかどうかということと、1から4の間を規定する以外のものがあるかどうかについてはちょっと思いつきません。
○永井座長  
 辰井委員、どうぞ。
○辰井委員  
 私もわからない点は同様ですが、具体的には公衆衛生の向上のために必要というのをどのくらい厳密にというか、どの程度に解釈するかによってほとんどすべて入ってしまうようにも読めるし、ほとんどのものが入らないようにも読めるという感じのように思います。
○永井座長  
 これは、最終的には施設内の倫理委員会で判断するということでしょうか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 ただし書きのところにありますように、同意を得ることができない場合には、次のいずれかに該当することについて倫理審査委員会の承認を得てとございますので、承認を得ていただくということになります。
○永井座長  
 いかがでしょうか。
○堤委員  
 今、辰井先生に教えていただいた公衆衛生の向上のために必要をどう読むかというのも、もしこういう文案ができていくのであれば、解説としてQ&Aか何かでつけておいていただいたほうがよろしいのではないかと思います。
 それと、そもそも論に戻りますと、同意の範囲をどう定義するのかは以前申し上げたとおりで、はみ出したものについては再同意に行かなければいけないというハードルがどこかにあるはずだということに戻ってまいりますので、そういう意味では、4のイのところをどう解釈するかというのも変な話なのですけれども、どこぐらいまでかの整理が必要です。逆にここの先生方、医学研究のという広い範囲はさすがにだめでしょうという同意のこととも絡んできますので、説明か何かちょっと置いておいていただいたほうがよろしいのかなと思ったのです。これはあくまでも感じたことということです。
○永井座長  
 それはQ&Aでもよろしいと。
○堤委員  
 はい。そんな形でも書いておいたほうがはっきりするかなと思いました。
○永井座長  
 辰井委員。
○辰井委員  
 知野先生のご発言のご趣旨は、全部入ってしまうとちょっと問題ではないかというご趣旨ですか。
○知野委員  
 問題というより、一般常識的にいって、これだけ網羅してあって、前の条件もある訳ですから、そうするとほとんどのものはもうフリーパスなのではないでしょうかという質問です。
○小幡委員  
 先生のようなご質問が出るようであれば、その点について、例えばヒトゲノム・遺伝子解析研究をしませんという約束で収集した試料もございますので、そういうのには当然使えない訳で、それはQ&Aで明確にしておいたらいいのかもしれません。
○永井座長  
 よろしいでしょうか。辰井先生。
○辰井委員  
 何回も済みません。一般的にですが、これはどういう趣旨で書かれているのか、必ずしも私は分かりませんけれども、公衆衛生の向上のために必要というのは、それほど緩くはないと読むのが普通ではないかと思いますが、いかがでしょう。例えば、公衆衛生の向上に資するといったことですと、大体の医学研究は公衆衛生の向上に資するということになりますが、必要といわれると少しきついかなという印象を私自身はもちました。
○永井座長  
 いかがでしょうか。武藤委員。
○武藤委員  
 公衆衛生の向上のために特に必要だという表現は、ほかの指針とか法令にも入っているもので、実際、倫理審査委員会でこれは本当に公衆衛生の向上に必要だと研究者が主張しているけれども、そう思いますかということはかなり議論にはなる点であると思います。そんなにフリーパスになるような項目ではなくて、また、堤委員のおっしゃるような例示もなかなか難しいという、割と重みのある言葉かなと理解しています。
 もう1点よろしいでしょうか。今回、改正のイメージのところを大きく変えられることになりましたが、同意を受けることを原則とするけれども、○の4行目、「ただし、当該同意を受けることができない場合は、次のいずれかに該当することについて」という流れに関して、実際は倫理審査委員会の運用上は、どういう事情で再同意を受けられないのか、同意を受けることができない理由を必ず説明して確認していると思うのです。例えば亡くなられているとか、もう通院されていないとか、そういう事情を確認して、再連絡、再同意に関する努力、あるいはそれが妥当かどうかの判断も研究者にきちんと説明させるということまで含めて倫理審査委員会で判断することが分かる文言だといいなと思います。これだと、研究者が自分でできないからというので、こっちに行きますと読めてしまうので、実際には倫理審査委員会でその点も判断されたらどうかと思います。
○永井座長  
 実際、今もそういう判断を倫理委員会がしているのですか。倫理委員会の役割はかなり大きいと思いますが。よろしいでしょうか。どうぞ。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 事務局から補足させていただきます。そもそもこちらの改正イメージ(案)につきましては、今回のゲノム指針の見直しにおきまして、臨床研究指針や疫学指針などと整合性がとれるところは整合しようという発想があったかと思います。それを踏まえまして、臨床研究指針や疫学指針における既存試料の扱いの文言などを参考にさせていただいております。従いまして、先ほどのただし書きのところでありますとか、基本のところは臨床研究指針や疫学指針に合わせてございますが、例えば?の先ほどの公衆衛生のところなどにつきましては、今までのゲノム指針のC群試料の連結可能匿名化されているときの要件などを踏襲しております。
 従いまして、こういったものを踏まえて規定しているということ。更に公衆衛生の関係につきましては、資料21ページの個人情報保護法16条第1項で、あらかじめ本人の同意を得ないで個人情報を取り扱ってはならないというのがございます。第3項におきまして、前2項の規定は、次に掲げる場合には適用しないというところで、公衆衛生の向上ということがありまして、こういったところも踏まえてC群試料の規定があるのかと思いまして、そこを引き続き維持してはどうかという案でございます。
○永井座長   
 では、この件について最後。
○鎌谷委員  
 ただのコメントですけれども、具体例として公衆衛生の向上に関係ないものとしては、例えば死亡者の同定とか親子鑑定、あるいはこの人がどの集団に属するかという判定は公衆衛生の向上とはいえないので、そういうのも結構あるのではないですか。
○永井座長  
 そうしますと、またお気づきの点は、メール、書面等でお寄せいただくこととして、おおよそこの辺の枠で進んでいきたいと。細かい文言の使い方について、さらに改善すべき点があればご指摘いただきたいと思います。
 それでは、次に7、試料等の収集・分譲のあり方について、事務局から (1)の説明をお願いいたします。
○経済産業省(長部課長補佐)  
 23ページをご覧になっていただきたいのですが、7.試料等の収集・分譲のあり方についての (1)試料等の収集・分譲についてというところでございます。
 現行のゲノム指針では、ヒト細胞遺伝子組織バンクについては、提供された人の細胞、遺伝子、組織等について研究用資源として品質管理を実施して、不特定多数の研究者に分譲する非営利組織と定義しております。
 次の段落に行っていただきまして、現行のゲノム指針においては、いわゆるバンクに試料等を提供する場合、当該バンクが試料等、一般的な研究用試料として分譲するに当たり、連結不可能匿名化がなされていることを確認するというものです。
 その下ですが、このため、バンクの試料等は連結不可能匿名化されて研究機関に分譲されることになりますが、研究の発展、進展により、連結可能匿名化された試料等として利用したいとのニーズが高まってきております。
 他方、バンクについては、試料等の提供の要件や個人情報の保護等に関する規定は整備されておりません。
 また、臨床研究指針や疫学指針においては、いわゆるバンクに関する規定は設けられておりませんが、試料等、他の外部の機関に提供する場合や外部の機関から試料の提供を受けて研究を実施する場合における要件を規定しております。
 検討のポイントとしましては、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の進展に応じて試料等の収集・分譲のあり方について見直しを行うことが必要ではないかというものです。
 また、いわゆるバンクから連結可能匿名化の状態で試料等の分譲を行うことを可能とすべきかというものでして、いわゆるバンクにつきましては、1、2、3にあるようなさまざまな形態が考えられますが、どのように整理すべきかというものでございます。
 23ページの一番下ですが、バンクについてはさまざまな形態が考えられるので、臨床研究指針や疫学指針も参考にしつつ、保存している試料を他の研究を行う機関に提供する行為、他の研究を行う機関から試料等の提供を受ける行為に着目し、その場合における要件、手続等を整備することが必要でないかというものでございます。
 24ページに行っていただきまして、仮に専ら他の研究を行う機関から試料等の提供を受け、他の研究を行う機関に試料等の提供を行う機関から連結可能匿名化で試料を提供することを可能とする場合は、ゲノム指針の研究を行う機関に位置づけることなどによって、研究を行う機関と同様に試料等の提供、要件や個人情報の保護等に関する要件も課すことが必要ではないかという検討のポイントでございます。
 見直しの方向性(案)としましては、いわゆるバンクについてはさまざまな形態が考えられることから、臨床研究指針や疫学指針を参考にしつつ、研究を行う機関が他の研究を行う機関に試料等を提供する場合は、他の研究を行う機関から試料等の提供を受けて研究を行う場合の要件、手続を整理することとしてはどうか。
 他の研究を行う機関から試料等の提供を受け、他の研究を行う機関に試料等の分譲を行う機関については、試料等の分譲・収集を行う機関と定義しまして、ヒトゲノム・遺伝子解析研究を行う機関、試料等の提供が行われる機関とともに研究を行う機関に含めてはどうか。その上で、その機関が保存している資料を他の研究を行う機関に提供する場合は、連結可能匿名化の状態で提供することを可能としてはどうか。
 最後の段落で、試料等を利用したヒトゲノム研究の情報を十分に提供し、同意の撤回の機会を適切に確保する観点から、他の研究を行う機関から連結可能匿名化されている既存の試料等の提供を受けてヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用する場合は、試料等の利用目的を含む情報を通知し、又は公開とすることを要件としてはどうかというものです。
 改正イメージ(案)に行く前に、35ページをご覧ください。改正後の整理といたしましては、一番上のボックスですが、研究期間中の提供者から試料等を提供される場合は、まず提供者から試料等の提供が行われる機関であったり、その下の提供者から研究実施機関に試料等が提供される。この際はインフォームド・コンセントを取得するというものでございます。
 2番目として、実際に研究を実施するに当たっては、試料等の提供が行われる機関から研究実施機関に試料が行く場合は、原則、匿名化して他の研究機関へ提供する。あるいは、実際、研究実施機関?で試料を提供した場合は、そこで研究を実施するというものでございます。
 ここまでは現行と変化はございませんが、36ページに行っていただきまして、実際にバンクに試料を提供する場合であるとか、バンクから別のところに試料を提供する場合についての要件でございます。
  (5)としては、まず研究実施機関から既存の試料をいわゆるバンク、試料等の収集・分譲を行う機関に提供する場合に関しては、下の○にあるように、既存試料等の提供及び利用に係る同意及びその記録をとる。あるいは、同意を受けられない場合は、一定の要件を満たせば提供は可能となる等としてはいかがかというものでございます。
  (6)に関しても、今度はバンクからほかの機関に行く場合であるとか、1の研究機関から他の研究実施機関に試料等を提供する、分譲する場合に関しても一定の要件を満たすという要件を設けてはどうかというものでございます。
 24ページに戻っていただきまして、具体的な条文イメージ(案)です。第4 試料等の取扱いの既存試料等の提供にあたっての措置というところで、まず第1段落中ほどまでは原則論ですが、既存試料等の提供を行う者は、所属機関外の研究を行う機関にヒトゲノム・遺伝子解析研究に用いるために既存試料等を提供する場合には、提供時までに提供者又は代諾者等から試料等の提供及び研究における利用に係る同意を受け、同意に関する記録を作成することを原則とする。
 その次、「ただし」というところで、同意を受けることができない場合は、次のいずれかに該当する場合に限り、研究を行う機関に試料を提供することができるというものです。1としては、当該既存試料等が連結不可能匿名化されていること。2としては、1に該当しない場合において、既存試料が連結可能匿名化されており、対応表を提供しない場合は、当該ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施及び提供について既存試料等の利用目的を含む情報を提供者に通知し、または公開していることについて倫理審査委員会の承認を得て、所属機関の長の許可を受けているというものが第1案でございます。
 25ページに行っていただきまして、別案として3を設けておりまして、上記1、2に加え以下の要件を規定というものが別案でございます。
 3として、試料は1及び2に該当しない場合において、次に掲げる要件を満たしているということについて倫理審査委員会の承認を得て、所属機関の長の許可を受けていること。
 ア 当該研究の実施及び既存試料等の提供について以下の情報をあらかじめ提供者等に通知し、又は公開している。4つポツがありまして、まず1ポツは、所属機関外の者への提供を利用目的とする、2番目が、提供される個人情報の項目、3番目が、提供の手段又は方法、4番目が、提供者等の求めに応じて当該提供者が識別される個人情報の研究機関外の者への提供を停止する、イ 提供者等が当該提供者に係る既存試料等の研究への利用を拒否できるようにすることというものでございます。
 ※は、参考として個人情報保護法23条に関するものを載せております。
 その下の○に行っていただきまして、他の研究機関から提供を受けた既存試料等の利用に当たっての措置というのも設けております。研究責任者は、所属機関外の者から既存試料等の提供を受けて研究を実施しようとするときは、提供を受ける既存試料等の内容及び提供を受ける必要性を研究計画書に記載して倫理審査委員会の承認を得て、研究を行う機関の長の許可を受けなければいけない。
 また、第16 用語の定義として、いわゆるバンク、試料等の収集・分譲を行う機関の定義を、研究を行う機関のうち、他の機関から試料等の提供を受け、提供された試料等についてヒトゲノム・遺伝子解析研究用の資源として品質管理を実施し、他の研究を行う機関に分譲する非営利機関をいうという定義としております。
 以上です。
○永井座長  
 ありがとうございます。それでは、ただいまのご説明にご意見をお願いいたします。どうぞ。
○増井委員  
 1つ質問なのですけれども、25ページの一番上、アのポツの2つ目、所属機関外の者に提供される個人情報の項目とわざわざ書いてあるのです。これは個人情報がない場合もあって、非常に詳細な、例えば医療情報が個人情報でない形でもらってきているという場合もあるのですけれども、わざわざ個人情報にする必要があるのでしょうか。下の保護法の引用には個人データという言い方がありますけれども、わざわざ個人情報としなくてもよさそうな気がするのです。
○永井座長  
 どうぞ。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 この別案を入れるかどうかも含めてご議論いただきたいところでございますけれども、こちらにつきましては臨床研究指針、疫学指針につきましても同様な規定がございます。これは要するところ、個人情報を提供する場合に、特に個人情報保護法との関係で問題がないようにするという趣旨でございまして、※のところで書いてある個人情報保護法23条で、同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないということにつきまして、本人の求めに応じて個人データの第三者への提供を停止する場合があって、次に掲げる事項については、あらかじめ本人に通知し、または本人が容易に知り得る状態に置いているときは、前項の規定にかかわらずということで、1、2、3というのがあります。2に該当するのが上の2つ目のポツということなので、これは臨床研究指針、疫学指針の際に、個人情報保護法との関係を想定して、このような規定を入れているのだと思います。
○増井委員  
 そうすると、医療機関ではなくて、研究をやる機関が、バンクと呼ばれる専ら試料を受け入れて分譲する機関が詳細な医療情報をもっていたとして、センシティブな病名なども入っていたりする場合に、それは個人情報ではないので、そのことについてはここには書く必要がないということになるのですが、それでもいいのでしょうか。そのあたりがちょっと気になってご質問したのです。個人情報ではないので、そのあたりは何も書かないで、個人情報は何も出しませんという形で我々は書けるので、それはそういうことなのかという確認なのです。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 繰り返しになりますけれども、別案のようなこと、要するに個人情報がある状態の試料等を提供することを本当に認めるかどうかということ自体ご議論いただきたいと思っているのですが、個人情報保護法との関係では、別案の?に掲げてあるようなことは、臨床研究指針や疫学指針との整合性を考えると、最低限書かなくてはいけないと思います。更に規制が必要ということであれば、それはご議論いただければと思います。
○永井座長  
 この別案というのは、例えば対応表を持っていて、匿名化されているけれども、研究機関が対応表をもっているような場合がここに該当する訳です。そうすると、やはり個人情報になってしまう訳です。
○増井委員  
 そういう場合を想定しているということですね。分かりました。
○永井座長  
 それがこの別案のところという理解ですね。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 もっと端的にいうと、例えば匿名化していないような情報とか、そういったものを提供することがもしあるとすると、3のようなことを定めないといけない。事務局としては、まずは1、2のような形で、提供機関から他の機関に行ったときに、他の機関において個人情報にならないようなものまでを認めるということであれば、1、2のような段階までで止めておくということではないかと思っています。
 3のところについては、文言をよく読んでいただくとわかりますように、個人情報保護法との関係で、最低限これだけのことが必要なのですが、提供者等が当該提供者に係る既存試料等の研究の利用を拒否できるようにすることなどの要件が、果たしてバンクなどを経由したときに、実際的に担保できるかというのは非常に難しいのではないかと思っておりまして、別案のような形を認めていいかというのはご議論いただきたいところでございます。
○永井座長  
 いかがでしょうか。ですから、2まででも対応表を持たなければサンプルを移動させることはできる訳ですから、今までよりは随分研究しやすい環境にはなろうと思います。高芝委員、どうぞ。
○高芝委員  
 今の別案の点については、性格は大分違いますけれども、クレジット情報などを対象とする信用分野のガイドライン、貸金情報などを対象とする金融分野のガイドラインでは、個人情報保護法23条の2項の制度は採用しないとしています。それはセンシティブ性に配慮してということだと思いますので、そういうガイドラインも1つ参考になろうかなと思っています。
○永井座長  
 鎌谷委員、いかがですか。別案についてここまで必要かどうか。
○鎌谷委員  
 必要かどうかということは、法律的なこともあるので、私はよく分かりません。
○永井座長  
 1、2まででも研究はかなり可能になるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○鎌谷委員  
 そうだと思いますけれども、3に書かれていることなのですが、1から4までの間で、特に個人情報の項目が法律的な文言だと思いまして、どの範囲を占めるかがよく分からないのです。
○永井座長  
 辰井委員、いかがですか。
○辰井委員  
 具体的にどういうことがあり得るのかというのを、できれば関連の先生方のお伺いしたいのですが、例えばだれか定年退官になるような研究者がいろいろ集めていて、個人情報も非常にきれいに揃っている。それをそのままバンクが譲り受けるような場合にはこれに該当する訳ですか。
○永井座長  
 事務局、そういうことでしょうか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 そのケースで、仮に対応表と試料等を合わせて渡すことにより個人情報になるということであれば、3のような規定がないとできないかもしれません。
○永井座長  
 対応表をどこか別の機関が管理して、サンプルだけ行く場合には、1、2で対応できる訳ですね。恐らくほとんどの研究者はそれで十分のように思いますが、いかがですか。小幡委員、どうぞ。
○小幡委員  
 個人の研究では多分そうなのでしょう。バンクとしては、先ほど辰井委員が説明なさったようなことを想定しておく必要があって、教授の方が退官されて、その研究機関も対応表は持ちたくない。でも、対応表がないと試料の意味がない。そうなるケースも今後想定されるので、もちろん1、2でほとんどのケースはあてはまると思いますし、そのほうがバンクの経営、運営上は楽です。もちろんこれは倫理委員会の承諾を得る必要がある訳ですから、たがははまっていると思いますが、3のような場合も想定しておく必要があると考えています。
○永井座長  
 あったほうがよろしいと。
○小幡委員  
 はい。
○永井座長  
 増井委員、どうぞ。
○増井委員  
 私もそのとおりだと思います。実際に退官される先生の試料の整理を頼みますと、大体コンプリートしないのです。落ちつきのないところで処理をすると間違いが起きたりする可能性があるものですから、そのまま移して、我々のところで整理をしたほうがいいのではないかと思うようなものもございます。ですから、そういう意味では、3があるといいのですけれども、その場合に、先ほど永井座長からお話があったように、対応表の部分だけ扱ってくれると本当に楽なのです。対応表だけつくるのは割合と簡単なのです。そこから全部の情報を抜き出して、サンプルときちっと合わせるのがすごく時間がかかるので、そこの部分はそういう機関があるといいなというのが我々の希望です。
○小幡委員  
 私も増井先生の意見に賛同はするのですけれども、現実問題としてバンクがやらないとどこもやらない。だから、3を入れることによって、個人情報保護、また個人情報管理者とかさまざまな枠をつくっておかなくてはならなくて、予防策も含めてバンクの負担は多くなりますけれども、研究の進展には必要だと考えています。
○永井座長  
 武藤委員。
○武藤委員  
 私、そういう研究をしている者ではないですけれども、この項は必要かと思います。というのは、この先いろいろな個ごと研究とかが閉じていくようなことがあると思われて、その場合に個人では管理できない、あるいは対応表が散逸してしまう可能性もあり得ると思いましたので、今すぐこれが乱用されることは余り考えにくいのですけれども、可能性としてとっておいていただいて、そのかわりイのところなのですが、提供者が当該提供者にかかわる試料等の研究の利用を拒否できるようにすることというのが端的に書かれ過ぎていて、もしかすると、例えば試料を出すもとの機関と受け取る機関の両方で公開するとか、可能なときには通知をすることの具体的な手段になるのかなという気もしますので、ここの書きぶりは要検討かという気がします。以上です。
○永井座長  
 よろしいでしょうか。どうぞ。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 繰り返しになりますけれども、3というのは、臨床研究指針や疫学指針などで導入にされている規定を盛り込んでいるところでございます。ですから、最低限この程度の規定は必要ではないかということでありますけれども、臨床研究指針や疫学指針と何が違うかというと、先ほど事務局から説明がありました資料36ページのようなケースで、試料等の収集・分譲を行う機関を経由して、さらに再分譲されていくというケースまで想定したときに、提供者などが、その試料について研究の利用を拒否できるようにすることが果たして担保できるのか。ですから、ここはバンクという規定を想定していない臨床研究指針、疫学指針とは取り扱いが少し違うのではないか。さらにいえば、臨床研究指針や疫学指針のゲノム研究指針で何が違うかということを考えると、ゲノム情報を取り扱うことについての慎重性を考えたときに、こういったことが本当に担保できるのかというのを心配しているところでございます。
○永井座長   
 俣野委員。
○俣野委員  
 今回のポイントから少しずれるかもしれないですけれども、念のため確認させていただきたくて、これは海外から既存試料を受け取って利用するような場合も含めて、内容的にこれで全部満たされているのでしょうか。
○永井座長   
 どうぞ。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 現行の案では、海外からのものを排除しているということではないと考えております。
○俣野委員  
 これを読む限り、それを受け取って、研究を行う機関のほうでどのようにしたらいいかわからないとか、そのような状況にはなっていないと考えてよろしいのですか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 海外から既存試料等を貰うというケースですと、当該国がどういう規定を置いているかということになるかと思います。ですから、むしろ提供を受けた既存試料等の利用に当たっての措置のところで、既存試料を研究計画書に記載して、倫理審査委員会の承認を得てということでございますので、倫理審査委員会で判断いただくということになると思います。
○永井座長  
 高芝委員。
○高芝委員  
 2は、基本的には疫学指針等のスライドという説明を受けたのですけれども、私として気になりますのは、24ページの下から3行目に、「対応表を提供しない場合」と書いてあるところです。対応表を有していなければ個人情報ではないので、この対応は理解できるのですけれども、対応表を提供しないという場合の中には、提供者は対応表を持っているが提供はしない場合も含まれます。その場合は、この指針でいう個人情報ではあるのだけれども、試料だけ渡して対応表は渡さないというやり方をすれば、個人情報を提供してもいいと読めるところがあります。そうなると、指針の11ページ、(20)との整合性をとる必要が出てくるのではないかと思います。その点が論点になろうかと思いますので、指摘させていただきます。以上です。
○永井座長  
 対応表を提供しない場合、試料を提供するということですよね。それは個人情報を提供することになるのでしょうか。
○高芝委員  
 試料を提供する際、対応表を持っている場合と持っていない場合の両方があると思うのですけれども、持っていなければもともと問題ないと思うのですが、持っている場合には、提供者にとっては個人情報の範疇に入るものが、受け取る方にとっては個人情報ではなくなる。そこで変化が生ずる訳です。
 ただ、現在の指針では、研究を行う機関の長、すなわち提供者側からみて、個人情報に当たる場合は、同意を得るか、法令その他適用除外に当たらないとだめというルールになっています。このように、現在の指針は、提供者側からみているところがあるので、ここは現行の指針の研究機関の長の規定(20)との整合性を検討して頂くとありがたいと思います。
○永井座長  
 書き方の整理が必要だというご指摘ですね。分かりました。
 では、時間の関係で次にまいります。 (2)の遺伝情報等の取り扱いについて説明をお願いします。
○経済産業省(長部課長補佐)  
 続きまして、37ページをご覧ください。 (2)遺伝情報等の情報の取り扱いについてというところです。
 まず、現行のゲノム指針においては、研究を行う機関の長は、個人情報に該当しない匿名化された情報を取り扱う場合は、情報を適切に管理することの重要性の研究者等への周知徹底、情報の管理、責任の明確化、研究者以外の者による情報の取り扱いの防止等、適切な措置を講じなければならないとしております。
 また、現行のゲノム指針ですと、研究を行う機関の長は、取り扱う個人情報の漏えい、消失または棄損の防止、その他の個人情報の安全管理のため、組織的、人的、物理的、技術的安全管理措置等を講じなければいけないですが、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の進展によりまして、遺伝情報等の研究に用いる情報量が飛躍的に拡大しているというので、個人情報のみならず、個人情報に該当しない遺伝情報の研究に用いる情報も安全管理のための措置の重要性が高まってきているのではないかというもので、検討のポイントとしましては、個人情報に該当しない遺伝情報の研究に用いる情報の安全管理措置等の取り扱いの要件についても整理する必要があるのでないかというものでございます。
 見直しの方向性としましては、試料等の取り扱いの要件に加えて、個人情報の安全管理の規定なども参考にしつつ、遺伝情報の研究に用いる情報の安全管理措置の取り扱いの要件を整理するとしてはどうかというものでございます。以上です。
○永井座長  
 ありがとうございます。ただいまのご説明にご意見ありますでしょうか。どうぞ。
○堤委員  
 これは教えていただきたいのですけれども、データベースに遺伝情報を登録していって共有化しましょうとかということの取り扱いも (2)で全部読んでしまうということになりますでしょうか。
 あと、その裏返しとしまして、最初のころ徳永先生に教えていただきました、データベースとしてのデータのバンクに対してのアクセス制限をかけながら共有化していくというところも、ここの中に入っていたほうがいいのかなと今思ったのですけれども、考え方と整理を教えていただければと思うのです。
○永井座長  
 どうぞ。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 先ほど議論いたしました (1)のところでは、試料等ということで、試料、情報両方含んだ場合をまとめて議論していた訳ですが、情報の取り扱いにつきましては、今後、データベース、情報だけを使う場合もございますし、情報の取り扱いについては安全管理措置が必要ではないかということがございましたので、ここのところで必要なことを、ゲノム指針のところで細則なり本則なりに規定すべき事項を規定してはどうかということでございます。
○堤委員  
 そうであれば、広がりとして、先ほど申し上げましたように、データをたくさん持っていて、共有化し得るデータをバンキングしているところがアクセス制限をするとかという項目もつけておいたほうがいいような気がするのですけれども、いかがでございましょうか。
○永井座長  
 徳永委員、どうぞ。
○徳永委員  
 これは堤先生のご指摘のとおり、できればここの部分で、データベースで遺伝情報の取り扱いをしているところの扱い方について指針に加えていくことが望ましいと思います。
○永井座長  
 鎌谷委員。
○鎌谷委員  
 今、徳永先生がいわれたことのほかに、データベースとして持つというところと、もう1つ、大量の情報を研究者から預かって分析するということの重要性が非常に増していると思うのです。だから、研究によってデータを集める人々と分析する人々が別の施設にいることが結構出てくると思います。その1点を考えておかないと、データだけを分析する施設では、倫理審査委員会とかそういうことは結構難しい場合が多いということです。
 2番目に、世界的には非常に膨大なデータであっても、公開原則になる可能性があるのです。というのは、分析した結果が本当に正しいのかどうかと。研究者が正しいことをやっているかどうかが疑問になってくると、どうしても生のデータを公開しろという要求が出てきているところもある訳です。また、それとは別に、共同研究者同士では生のデータをシェアし合うということが出てきています。
 問題を整理すると、1つは情報解析だけを行うグループが出てきているということ、2番目にデータが本当に正しいことを証明するために公開しなければいけない場合が出てくる可能性が高いということ、それから、研究者間だけで生のデータをシェアする場合が出てきて、そういう場合には、もちろん最初のインフォームド・コンセントからそういうことをするということを言っておかなければならないと思うのですけれども、そういうことに関する規定が必要になる可能性があって、そうしないと日本からは研究結果が出せないということも考えられることを申し上げたいと思います。
○永井座長  
 どうぞ。
○小幡委員  
 必要かもしれないのですけれども、このことによって研究を阻害するおそれが大変強いような危惧を持ちます。要するに、情報を大事にしましょうといって、そうすると発表をどうするのでしょうか。また、公開の原則とかそういうことを考えると、下手をすると研究を阻害しかねない可能性もあるので、これについては慎重に扱う必要があると思います。世界中で公開といっている時に、日本だけ公開しないというのは問題ですし、研究も進まないと思います。ですから、これを慎重に書いていかないといけないと思います。
○永井座長  
 具体的にはどういうところが。
○小幡委員  
 本当に必要なのでしょうか。必要なことだけ書ければいいのであって、これだと漠然としてすべての遺伝情報を対象にしているような気もしています。
○永井座長  
 いかがですか。徳永委員。
○徳永委員  
 今の疑問に関しましては、恐らく公開していい情報、例えば頻度として処理されたような結果、集団としてみて、その中の頻度の情報とか統計解析の結果の情報はどんどん公開してほうがいいと思っているのです。
 ただ、一人一人の方から得られた遺伝情報に関しては、やはりある種の制限、アクセスをして、その専門家の申請を審査して承認したものに関しては提供できるという形をとることが一番考えやすいスタイルではないかと思います。
○永井座長  
 増井委員、どうぞ。
○増井委員  
 今、徳永先生がおっしゃったとおりで、データ・アクセス・コミッティーというのをわざわざつくって個人データについては申請を受けて公開するというのが、ウエルカムトラストのケース・コントロール・コンソーシアムのデータもそうですし、インターナショナル・キャンサー・ゲノム・コンソーシアムもそうなっています。だから公開はしなければいけない。検証のために生データを出さなければいけない。だけれども、だれでもみえるようなところにそれが出ている訳でもないというのが1点。
 もう1つは、アグリゲートのデータであったとしても、それに個人が参加しているかどうかが分かるという、2008年でしたか、ホーマーの論文が出たら、その次の月にはNIHもウエルカムトラストもアグリゲートのデータすら登録アクセスしなければいけないところへ下げたりしているのです。ですから、技術的な問題、それから個人に行き着けるとしても、だれがどのように使って、最終的にどのように廃棄されるかというのが分かるかどうかというところはチェックされて流通しているということになっています。
○小幡委員  
 公開前のデータというのはおっしゃるとおりだと思うのですけれども、一度公開したものはもちろんだれでもアクセスできるようにしておく必要があると思うのです。だから、公開できるかできないかの判断をどなたがどういう形で、研究者の手を離れたところでさせるのですかということが私の疑問です。
○徳永委員  
 私たちが関わっているデータベースの場合は、やはり委員会をつくって、その委員会がデータアクセス委員会、これはウエルカムトラストとかNIHのGWASのデータベースもそうですけれども、やはりデータアクセス委員会というのが設置されて、そこに研究者から申請していただいて、そこで承認を得てもらうという形をとっています。
○増井委員  
 補足ですけれども、ウエルカムトラストの場合、2年半ぐらいの間に二百数十のアクセスに関する申請があって、拒否したものは1件もありませんでしたという話をしていました。ですから自由なのですけれども、きちんとアプリケーションシートを出していただいて使っていただいているということだと思っています。
○永井座長   
 よろしいでしょうか。そうしましたら、今の件はここまでとしたいと思います。次の課題にまいります。8のインフォームド・コンセント、 (1)研究の進展に対応したインフォームド・コンセントのあり方について説明をお願いいたします。
○経済産業省(長部課長補佐)  
 それでは、39ページをご覧ください。8.インフォームド・コンセントについて、 (1)研究の進展に対応したインフォームド・コンセントのあり方についてでございます。
 現行のゲノム指針においては、研究責任者は試料等の提供者に対して、事前に研究の意義、目的、方法等の指針、細則に定められた事項について、文書によるインフォームド・コンセントを受けなければならない。
 検討のポイントとしましては、高速シーケンサー開発の研究を取り巻く環境の進展により、当初取得したインフォームド・コンセントの範囲を超えた遺伝情報が入手できるようになっている。このような状況に鑑みて、インフォームド・コンセントのあり方について検討を行う必要があるのではないかというものでございます。
 下の見直しの方向性(案)を見ていただきたいのですが、まず、第一段落として、将来のあらゆる研究における利用に関するインフォームド・コンセントに基づき、同意が得られているとして研究に利用することについては、社会の理解を得ることは困難であると考えられるので、臨床研究指針や疫学指針と同様に認められないこととしまして、その旨をQ&Aに記載してはどうか。
 他方、将来の研究の進展を想定しまして、弾力的なインフォームド・コンセントを取得することができることをより明確にするため、試料等の提供を受ける時点では、特定されない将来のヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用される可能性がある場合は、そのことについて同意を得るというものを指針なり細則に規定することとしてはどうか。
 39ページの一番下ですが、他の研究機関に試料等を提供して、将来的に試料等の提供を受ける時点では特定されないさまざまなヒトゲノム研究に利用される可能性がある場合については、そのことについてインフォームド・コンセントを受けることを指針、又は細則に明確に規定することとしてはどうかというものでございます。
 また、研究の進展に対して、研究デザインが多様化していることを踏まえまして、ゲノム指針の細則におけるインフォームド・コンセントの説明文書に記載すべき事項について必要な見直しを行うこととしてはどうかというものでございます。
 その下に改正イメージ(案)がございまして、10.インフォームド・コンセント (3)に追加したところは、下線の「将来的に他のヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用される可能性等について十分な説明を行った上で自由意思に基づく文書による同意(インフォームド・コンセント)を受けて、試料等の提供を受けなければならない。」というところを追加しております。
 また、その下の説明文書の記載に関する細則ですが、説明文書に記載すべき事項として2つ追加しておりまして、1つ目のポツで「試料等の提供を受ける時点では特定されない将来のヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用される可能性がある場合にはその旨」。2つ目として「試料等を他の研究を行う機関に提供し、試料等の提供を受ける時点では特定されない将来のさまざまなヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用される可能性がある場合にはその旨」というものを入れております。以上です。
○永井座長  
 ありがとうございます。ただいまのご説明にご質問はいかがでしょうか。辰井委員、どうぞ。
○辰井委員  
 このインフォームド・コンセントの部分については、文言云々というより、今、ここでは包括同意は認められないという文意になっていますが、実際にはバンクの活動などをかなり推進するという方向にもなる訳ですし、一体どこまでが許容されてどこまでが許容されないのかという内容について少し議論が必要かと思います。
○永井座長  
 いかがでしょうか。あらゆるという表現はだめだといっている訳ですね。では、あらゆるを使わなければいいのかということになる訳ですが。辰井委員、どうぞ。
○辰井委員  
 この書きぶりというか、見直しの方向性からしてそうですが、弾力的なインフォームド・コンセントを取得できるという方向性を満たすために、現在特定されない将来の研究に使用される可能性があることについて同意を得る、なぜそういう形式を踏むのかということが今一つよく分からないのです。もしバンクのようなものであれば、医学研究のためや、こうした疾患の原因解明のために、ある程度包括的な同意を取得せざるを得ないのだろう。そのことがどの範囲で許されるのかということをまず確認する必要があると思います。
 ただ、それ以上に、将来何に使うかわからないけれども、そのことについてあらかじめ同意をとっておきなさいという指示をここですることは、先ほど二次利用についての要件を少し緩めているというか、二次利用をしやすくしていることを前提とすると、これは相変わらず包括同意を許容するように読めてしまいますので、そのようなやり方をとるということについては、率直にいうと私は反対です。
○永井座長  
 どんな表現ならいいでしょうか。鎌谷委員。
○鎌谷委員  
 例えば、先ほどの公衆衛生に資するとか、医学研究とか、公序良俗に反しないとかですかね。
○横野委員  
 私も具体的に今どのように行われているのかというところがわからない部分があるのですけれども、将来何らかの形で使おうという意図があって、保管しておくということはあると思うのです。その限りでは、この部分の説明を保管するところまでのものととらえることはあり得る。ただ、これを包括同意の代替のようなものとして、保管後の研究についても同意を得られたこととして扱うかどうかというのはまた別の問題で、保管した後、何らかの研究に使う場合には、それがどういうレベルのものであるかというのはいろいろあると思うのですけれども、またそこで改めて可否が問われるというステップが1回あるべきではないかと思います。
○永井座長  
 鎌谷委員。
○鎌谷委員  
 それは必ずあると思うのです。これはこれで将来のといっていて、それが倫理審査委員会の議論なしに使われることは絶対にあり得ない。それは歯どめがありますよね。ただ、歯どめがあったにしても、その前でということだと思うのです。
○永井座長  
 辰井委員。
○辰井委員  
 私も横野先生のおっしゃることにほぼ賛成です。説明は、もちろん実際上素通りされることはないということはわかりますが、わざわざこのように書き加えますと、ここはもしかしたら素通りできるのではないか、というメッセージとして伝わるように思います。ですから、もしその趣旨のことを書くのであれば、それは別に場所はどちらでも、Q&Aでも細則でも構いません。ただ、将来何か別の研究などに用いる具体的な見込みがある場合については、そのことについても説明しておくことという規定を置けばよろしいのではないかと思います。
 そして、それ以前の段階の話としては、やはり包括同意としてどの範囲までは認められるのか、例えば「医学研究」というのは認められるのですか、という議論をしておく必要があると思います。
○永井座長  
 増井委員、どうぞ。
○増井委員  
 1つ、現行の指針24ページの説明文書の記載に関する細則のところをみると、ポツの6個目、研究の意義、目的及び方法というのがあるのですけれども、そこには対象とする疾患分析方法等を将来の追加、変更が予想される場合はその旨というのが入っているのです。どこまでというところが非常に難しいのですけれども、バンクをやっている身としては、これまで思いもつかなかった利用があれば、本当にそれはすばらしいことだ、これは研究に使ってもらおうという気持ちになるのが本音なのです。ですから、そのあたりをどうするのかという問題。
 現行の書きぶりですと、将来こういう、今考えられるような例示をして、そこから広がっていきますという書き方をすればいいのだという予想で大体この文書を読んでいるのですけれども、それだとやはり少し緩過ぎるということなのですか。それとも、それに対する何かのチェックというような、非常に広い形でとれるということについてのあれなのか、あるいはチェックポイントがきちんと明示されなければいけないということなのか。例えば軍事研究には使えませんとか、先ほど出た公序良俗には反しませんとかという形でいいものなのかどうか。
○永井座長  
 例えば、どのように書いておいたほうがいいということでしょうか。
○増井委員  
 ですから、ある意味では、先ほど読んだ24ページの規定というのは非常に明確に項立てて書いていただいた感じを受けていて、そういう意味では、こちらとしては非常に使いよくなったと思っています。
 いずれにしても、倫理委員会を通った研究に使われ、その時の指針に従った判断で倫理委員会の承認を得た研究に使われるということは変わりがないと思うので、そこで何か問題が出てくるかなという横野先生と辰井先生の議論が私にはよく分からなかったのです。
○横野委員  
 研究計画の変更ということになるならば、その場合には研究計画の変更の手続をまたとるということは、今の指針上も必要になっている訳です。そこで先ほどのような規定が入ったときに、それがどう機能するかという部分について、今の方向性の書き方からは、そこで同意があったと自動的にみなされるものとして機能させる意図があるように読める。説明としてこれを入れることは必要なことだと思うのですけれども、それを同意があったということとして扱うこととはまた別の議論になるだろうということです。
○永井座長  
 武藤委員、どうぞ。
○武藤委員  
 今議論されている新しいご提案のところは、資料1の42ページ、上から3行目から4行目のところ、これは細則の続きですが、「研究終了後の試料等の保存、使用または廃棄の方法」の後に「(ほかの研究への利用の可能性と予測される研究内容を含む)」というのがあって、これをもう少し書かれたという意味だと私は理解しているのですが。
○増井委員  
 それに関しては、私は最初の同意の範囲を広げたと思っていたので、これ自身は研究が終わった後の話として区別をしていた。そのように考える手もあるのですね。いずれにしても余り内容は変わらないように思ってしまうのですが。
○永井座長   
 堤委員、どうぞ。
○堤委員  
 また話を戻してしまうようなのですけれども、そもそも同意の範囲とは何なのか。これは以前に横野先生に教えていただいた内容ですが、まず個別の同意(個別の研究プロジェクトに対する同意)というのがあります。それから2つ目としてもう少し同意の範囲を拡大した拡大同意(将来の研究プロジェクトに対する同意)というのがあります。そして3つ目は、言葉としては皆さんが余りお好みにならない包括同意(将来のあらゆる研究に利用できることに関する同意)というのがあります。それをもう一回現時点で考えられる範囲で、これぐらいまでのコンセンサスでいけるのではないかというのをきちんと議論して残しておく必要があるだろうと思います。
 それから、40ページでご提案いただいている内容ですと、やはり包括同意に読めてしまうというか、広過ぎませんかという懸念があります。書くとすれば、ただしそれは当然幾つかのステップを経た上でしか使えませんとして、インフォームド・コンセントの時に説明してもらう立場に立てば、そういうのは書いておいてもらわないと試料を提供しにくいというイメージを持っていて、このような視点でこの内容を書いていくかどうかということを慎重に議論するようになるのではないかと思います。ですから、そもそも同意の範囲とは何かということと、これも少し懸念が出ているように、もう少し具体的に書かないといけないのかなと思います。
 それから、細則の解釈で、今、増井委員と武藤委員との間で42ページの3番目のポツのところで解釈に少し差があったのだというのを改めて確認させていただきましたので、どういう定義でこれが書かれているかというのをもう少し明らかにしておいたほうが誤解を生まなくて済むのかなと思いました。
○藤原(靜)委員  
 1つ質問してよろしいですか。先ほどの辰井委員のご説明は、「説明だけして同意というのは要らない、この時点では求めるな。」という理解でよろしいのですか。
○辰井委員  
 この研究が終わった後にちょっと試料を残しておいて、将来的に何かに使う可能性があるという具体的な予定があるのであれば、そのことについては書いておいて、それを承諾した上で試料を提供して貰うべきです。しかし、その後、最初の段階では全く特定されていない研究について、最初にああそうですかと承諾があったということだけで、その後の研究に自動的に使えるという訳ではないとするべきではないかという趣旨です。
○藤原(靜)委員  
 趣旨はよく分かったのですけれども、最初のころにバンクが出てくると非常に息の長い話になってくるというお話しがありました。タイムスパンの問題で、そういう手続を踏めない、つまり当事者の同意というものについて、そもそも当事者がいなくなった後にどうするのだという問題があって、そのときには同意とみなしてしまうのであればいつとっても同じだと思ったので、そういう角度からの質問です。
○辰井委員  
 実際上、やはり一番問題になりますのは、今まさにおっしゃったようなバンクのようなケースで、バンクもいろいろだということは承知しておりますが、例えばいろいろな方から集めるけれども、どのような具体的な研究に使うかというのは集めた段階ではわからない。しかし、これについてはこういう手続を踏んで、このような審査を経て、その結果いろいろな研究者に提供しますといって同意をとるのが一般的な同意として許容されるのかどうかということが多分一番の懸念事項なのではないかと思います。それは許容されるでよいと個人的には思っておりますが、その点を明確にする必要があるのではないでしょうか。
○永井座長  
 いかがですか。説明をして同意をしっかりとっていただいておけば別に問題はないように思います。そういう理解だろうと思いますが、高芝委員、どうぞ。
○高芝委員  
 この部分は、試料を提供する方から同意をきちんと取るのが入り口の部分としては大切なのだろうと思います。将来のヒトゲノム・遺伝子解析研究を利用目的としてそれなりに特定していると言えるかどうかという問題点は議論しないといけないと思います。利用目的の特定の程度として、可能なところとしてはこれ止まりなのかどうかというところのコンセンサスができるかというところだろうと思います。
 私としては、手続を厚くすることは大事ですけれども、倫理審査委員会や公開などの手続を厚くすれば、それが同意に変わるという発想はないだろうと考えています。慎重な対応ということにはなるのでしょうけれども、提供する人にとってびっくりするような事態かどうか、予想された範囲内に収まるのかというのは、当初の利用目的の定め方次第だろうと思っています。それが1点。
 それから、2番目の方については、これはバンクの関係だと思うのですけれども、提供は1段階だけなのか、2段階、3段階、4段階と先の先まで次々と移ることも含まれているのかがちょっと分かりにくかったので、その点も意識した表現にするとよろしいのかなと思いました。
○永井座長  
 今の2番目というのはどの2番目ですか。
○高芝委員  
 2番目というのは、改正イメージ(案)のところで、中黒が2つあって、アンダーラインが引いてある下の方の趣旨です。
○永井座長  
 増井委員、どうぞ。
○増井委員   
 質問させていただきたいのですけれども、今おっしゃった2段階、3段階というのは、例えばバンクから研究者のところに分譲されて、その後、またその次に分譲されてというようなことを想定されているのですか。
○高芝委員  
 その可能性もあるのかと思ったのですけれども、それはないのでしょうか。
○増井委員  
 一応、我々もMTAというか、ともかく覚書を交わしているのですけれども、その中には第三者提供はしないという形で出しています。ただ、共同研究になったりする場合があるので、漏れがないという訳でもなくて、共同研究でずっとやっていくのと比べると、バンクから出す場合は随分違うかなという様子は認識しております。
 先ほどの幾ら保護をきつくしたとしても、それは同意にかわるものではないという話はよく分かったのですけれども、先生のお考えでは、未来の、よく分からないけれども有効に使われるであろう研究に利用するということは、同意として成り立つとお考えですか。
○高芝委員  
 私は従前、この委員会で包括同意が議論になる時にどういう方向性になるのか実はイメージができなかったのですが、こういう原案が出てきましたので、この原案でコンセンサスがとれるのかどうか注目しています。私としては、これで、特定として十分かどうか、今の段階では、考えが纏まっていないところです。
○鎌谷委員  
 現実問題としては、我々はバンクではないのですけれども、現在、多くの大学とかアカデミーにおけるヒトゲノム・遺伝子解析研究においては、半分ぐらいはこのように、将来、他のヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用されることに同意するというのを別にして、別のサインをしてもらうようにしているのがあります。前のにはそれは含まれていないのですけれども、現実問題としては、半分ぐらいはこういう新しい案のような形で同意がとられていることはあります。それは、結局は既存試料として新しい研究がされるときには、そこでまた必ずチェックが入るということが現実です。
○永井座長  
 最後に増井委員、どうぞ。
○増井委員  
 今おっしゃったことは、はっきりとした、割合と限られた研究計画の後に2階建てでお互いの試料を使えるようにするという形の話ですね。
○鎌谷委員  
 重要なところは、それを同時に1つのサインでやらないで、2回目はオプションとしてそこにも必ずサインをするということをしている場合が多いのです。細かいことをいうと、四角をして、四角のところでチェックしてもらってサインを1つするのはだめだと。後で改ざんの可能性があるでしょうということを倫理審査委員会でいわれることが多いです。だから一番理想的には、この研究計画を書いた後に、それだけのことも半分ぐらいはあるのですけれども、あとの半分の計画では、次にオプショナルでこれが出てきて、2番目のサインはサインしてもしなくてもいいということが多いように思います。
○永井座長  
 よろしいでしょうか。次回ももう少し議論したいと思いますけれども、インフォームド・コンセントに関しては (2)の撤回への対応についてという項目がございます。そこでも少し議論を深めたいと思いますので、事務局から説明をお願いいたします。
○経済産業省(長部課長補佐)  
 それでは、資料44ページをご覧ください。 (2)インフォームド・コンセントの撤回への対応についてというところです。現行のゲノム指針においては、提供者等からインフォームド・コンセントの撤回があった場合は、原則として提供者に係る試料等及び研究結果を匿名化して廃棄、その旨を提供者等に文書により通知しなければならないとしております。
 ただし、次に掲げる要件のいずれかを満たす場合は、試料及び研究結果を廃棄しないことができるとしております。アとして、当該試料等が連結不可能匿名化されている場合。イは、廃棄しないことにより、個人情報が明らかになるおそれが極めて小さく、かつ廃棄作業が極めて過大である等の事情により、廃棄しないことが倫理審査委員会において承認され、研究を行う機関の長に許可された場合。ウとしては、研究結果が既に公表されている場合というものでございます。
 検討のポイントとしましては、仮にバンクから他の研究を行う機関に連結可能匿名化の状態で既存試料を提供することを可能にする場合、インフォームド・コンセントの撤回があった場合に、試料及び研究結果の廃棄についてはどのような対応が必要となるか検討をする必要があるというものでございます。
 見直しの方向性(案)としましては、まず第1段落では、提供者のインフォームド・コンセントを撤回する機会を確保するため、現行と同様に提供者等からインフォームド・コンセントの撤回があった場合には、原則として提供者に係る試料、研究結果を匿名化して廃棄。その旨を提供者等に文書により通知する。
 2つ目のポツの場合は、研究結果、試料等を廃棄しないことができるというものです。1番目のポツは、試料等が連結不可能匿名化されている場合。もう1つは、廃棄しないことにより個人情報が明らかになるおそれが極めて小さく、かつ廃棄作業が極めて過大である等の事情により、廃棄しないことが倫理審査委員会において承認され、研究を行う機関の長に許可された場合。
 その次の段落で、ただし、貴重な研究結果が無駄になることがないように、試料、研究結果を廃棄しないことができることとする上記の2つの要件に該当しない場合であっても、?提供された試料が研究に使用されていない場合は試料を廃棄する。?研究に使用されていた場合には、それまでに得られた研究結果については廃棄しない。試料等はそれ以降の研究には使用せずに廃棄する。?試料等を使用した研究が終了している場合には、研究結果については廃棄しないことができるが、試料等については廃棄ということにしてはどうかというものです。
 最後に、他の研究を行う機関から連結可能匿名化の状態で提供された試料等について、提供者または代諾者からインフォームド・コンセントの撤回があった場合についても、上記と同じ取り扱いとするというものでございます。以上です。
○永井座長  
 ありがとうございます。いかがでしょうか。堤委員。
○堤委員  
 これは試料等で情報も読んでしまうというように考えてよろしいのでしょうか。情報という言葉はここには出てこないのですけれども、ちょっとそこを確認させていただきたいと思います。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 そもそも、現行のゲノム指針の試料等には情報も入っておりますので、そこも含めてということではないかと思います。
○永井座長  
 よろしいですか。
○堤委員  
 はい。
○永井座長  
 他にいかがでしょうか。鎌谷委員。
○鎌谷委員  
 極端にいうと、試料を廃棄することによる大きな問題は、本人がその試料結果の一部を知った場合、試料の結果によって廃棄してくれということをいった場合、その後の研究結果に大きな過ちをする可能性はある訳です。例えば疫学研究などはそうで、ある特徴がある遺伝子を持っていますといわれた場合に、自分は参加しないといった場合。もちろんこの規定によってそれまでのデータは廃棄しなくていいと思うのですけれども、その後のデータに関しては非常に大きなバイアスとかコンパウンティングとかが生じて、研究結果に誤った結果をもたらす可能性はある訳です。そういうことも、データがある場合はデータを廃棄しなくてもいいと書いてあるので、前のよりは随分いいと思いますけれども、そういうこともあり得る。そういうことまで防ぐとすると、試料を知った上での廃棄、撤回によってその後の研究結果に重大な偏りが生じる可能性がある場合は廃棄しなくていいとかということがあれば完全でしょうけれども、それはなかなか難しいかもしれません。
○永井座長  
 いかがでしょうか。辰井委員。
○辰井委員  
 例えば、バンクなどで試料が移転した場合に、どこまで撤回できるかということに対応する必要があるというのが検討のポイントでしたけれども、見直しの方向性(案)の中では、2番目のポツ、廃棄しないことにより個人情報が明らかになるおそれが極めて小さく云々という解釈で、そういう場合は担保しようという趣旨と読んでよろしいのでしょうか。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 現行の、ゲノム指針の10 インフォームド・コンセント(10)ただし書きのイのところで、そのようなケースであれば倫理審査委員会で承認されれば廃棄しないことも可能なのではないかという解釈でございます。
○永井座長  
 いかがですか。特にこの点についてはご異議ございませんか。鎌谷委員。
○鎌谷委員  
 現実的には、私の関係していたのでは廃棄要求は極めて少ないということが事実です。ないことはないです。
○永井座長  
 他にご意見ございませんか。そういたしますと、この件についてはここまでといたします。あとは全体を通して、ご意見、ご質問がございましたらお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○堤委員  
 これまで挙げていただいていた中に入っていなくて、前から気になっているのですけれども、ヒトゲノム・遺伝子解析研究と例えばエピゲノムの関係、端的に申しますとゲノム指針の対象になるのかならないのか。ならないのだったらならない、なるとしたらどうなるかというのをどのように考えておくべきかという方向性を示していただく必要があると思います。関係ないのであればありませんというのできちんと明確にしておいたほうが研究そのものも進みやすいのではないかと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
○永井座長  
 いかがでしょうか。鎌谷先生。
○鎌谷委員  
 それは今の時点では非常に難しいかもしれないですね。エピゲノムの情報がきちんとジャームラインでトランスミットされることが将来証明されれば、それはもちろんこれに入るのだと思うのです。一代以下ぐらいだったらトランスミットインヘリテッドという証拠が出ているので、今の時点でエピゲノムを含めるとか含めないとかを決めることはなかなか難しいと思うのです。
 最初に私がいったように、ジェネティックスタディーの特徴は何かというと2つぐらいしかなくて、一生変わらないこと、あと家族のフェノタイプとかジェノタイプが正確な確立で予測できるということだと思うのです。それが結局は物すごい強力な理由であり、物すごく問題がある理由でもある訳です。だからエピゲノムが本当にそれに該当するかが分からない限りなかなか難しいと現時点では思いますけれども、どうですか。
○堤委員  
 そういったものを例えばQ&Aか何かで示しておいていただいたほうがよろしいのかなと。別に私が研究している訳ではないのですけれども、現時点での知見としてはこうだと。いずれそれは見直しがあるかも分からないというのはコメントしていただくとよろしいかと思います。
○永井座長  
 徳永委員。
○徳永委員  
 ただ、それを解析する手段として、シーケンスを伴うような場合は、別に研究目的ではないのですが、本来のゲノムの多型とか変異というのがみえてしまうというのですか、そういう意味では取り扱いを気をつけるようにというような文言を書いておいたほうがいいのではないかという気がします。
○永井座長  
 武藤委員。
○武藤委員  
 今の議論は私も気になっていたところで、現在の指針の32ページにヒトゲノム・遺伝子解析研究の定義と細則があるのですが、この部分は専門家の先生方がいらっしゃる場で再度確認をしていただきたいのと、この表現のままでいいのか。指針32ページの今日の資料の後ろについています。 (3)の下に細則がございます。実際の倫理審査委員会等での運用も多分ばらばらで解釈もいろいろだと思いますので、ここに挙げないものは例えばQ&Aで処理していただくとか、工夫をお願いしたいと思います。
 もう一点、今まで挙がっていないことで、倫理審査委員会の件なのですけれども、疫学指針にはあって臨床指針にはない項目の1つに、他の委員会への審査の委託ができるという件があります。ヒトゲノム解析研究はずっと議論がありますように非常にたくさんの方々のサンプルをたくさんの施設からいただく研究にどんどん変わってきているということもありますので、より効率的な倫理審査委員会の運用も少し視野に入れていただいて、その点もご議論いただければと思います。以上です。
○永井座長  
 鎌谷委員、先ほどのエピゲノムは必ずしもトランスミットされる訳ではないと。でも、徳永委員のお話ですと、一緒にゲノムの情報もみえてしまう訳ですね。そうすると扱いとしてはどういうことになるのでしょうか。
○鎌谷委員  
 今、武藤先生がいわれたように、32ページあたりにこれらの体細胞変異、遺伝子発現及びタンパク質の構造または機能に関する研究においても、本指針の趣旨を踏まえた適切な対応が望まれるとかというのに入れることはできると思うのです。あるいは、エピゲノム研究であっても、生殖細胞系列情報がかかわる場合はとかという言い方もできると思うのです。ただ、全部にエピゲノムを含めてしまうと、エピゲノムだけをやっている人にとっては余りにも繁雑なのではないですか。
○永井座長  
 栗山委員、どうぞ。
○栗山委員  
 全体ということで、まず、倫理審査委員会の構成について整合性をとるということで案が出ています。ちょっと教えていただきたいのですが、ゲノムの指針とほかの臨床指針や疫学指針の実際の倫理委員会の構成はどれぐらい違うのでしょうかというのが1つ。
 それから、ここに書かれていることに対して実際の研究者の先生方は、うちではこう運用していますとか、これは倫理委員会によって歯どめがかかっていますというようなおっしゃり方をしていらっしゃるので、ここにいる先生方はこれに従って善意で運用していらっしゃって問題はないと思うのですが、実際にこの倫理指針ができていながら、適正に研究がされていないとか、守られていないために起きたことなどに対して何か困ったことが起きたとか、守られていないためにこんなことになったとかということがあったら教えていただきたいという2点です。今すぐにということではなくて、それについて知りたいと思っています。
○永井座長  
 これはまたいろいろな事例があると思いますので、事務局からいずれ紹介いただければと思います。
○栗山委員  
 ありがとうございます。
○永井座長  
 あとはいかがでしょうか。前田委員。
○前田委員  
 今の倫理委員会の件に関してでございますが、外部委員の「外部性」について、各研究組織がそれをどのようにとらえているのか、この点について、実際の状況が明らかになっていますでしょうか。例えば、大学の医学部に設置された倫理審査委員会において、同じ大学の法学部の教員に外部委員への就任を依頼するとすれば、その者を「外部委員」であると考えることができるか、というような質問を頂くことがあります。このため、「外部委員」の点について実際には、どのような状況にあるのか、お分かりでしたら教えてください。また、Q&Aで「外部委員」についてそれは何を意味しているのか、この説明をしておいてもよいかと思っていますのでご検討ください。
○文部科学省(渡辺安全対策官)  
 前田委員のご質問についてお答えいたします。
 平成16年のゲノム指針の見直しの際に、研究を行う機関につきまして、法人及び行政機関という形で整理した経緯がございます。それまでは、外部委員といったときには基本的に学部外も認められていたという話は聞いたことがありますが、16年の整理からすると、外部といったときには外の機関という形で解されてきているということを聞いています。ということもあって、今、半数以上外部委員を大学の外に求めるのは厳しいのではないかという声が聞かれております。
○前田委員  
 そうですね。ただ、実際、研究機関の方から先ほどのような質問を頂くことがありますので、16年のルールを知らない方がいるのではないかと思います。お尋ねいただいた際には、その都度説明はするのですけれども。
○永井座長  
 他にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。またお気づきの点はメール等でお寄せいただきたいと思います。
 そういたしますと、本日はここまでとしたいと思いますが、事務局から連絡事項をお願いいたします。
○経済産業省(長部課長補佐)   次回の日程につきましては、日程を調整した上で改めてご連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それから、紙ファイルの参考資料集につきましては、そのまま机の上に残していただいて、お持ち帰りにならないようお願いいたします。
 以上でございます。
○永井座長   
 それでは、本日はどうもありがとうございました。      


(了)
<【問い合わせ先】>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 担当:情報企画係(内線3808)
 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

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