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2008年8月27日 第3回労働安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会

○日時

平成20年8月27日(水)
15:00~


○場所

経済産業省別館1012号会議室


○議事

○石井専門官 本日はお忙しい中、また暑い中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。ただいまより、第3回労働安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会を開催いたします。前回の検討会の日、7月11日付で事務局に異動がありまして、新たに鈴木労働衛生課長が着任いたしました。まずはじめに鈴木課長より一言、皆様にご挨拶を申し上げます。
○鈴木労働衛生課長 前回、7月11日にこの検討会があったわけですが、ちょうど辞令交付の時間帯等と重なりまして、ご挨拶ができなくて申し訳ございませんでした。鈴木でございます。よろしくお願いいたします。私は、昭和58年に新潟大の医学部を卒業しまして、小児科を5年ほどやった後に行政に参り、約20年ほどになります。ほとんどが地域保健の仕事でしたが、この分野にちょっと関係することでは、環境省におりまして、環境リスク評価室長というのをやったことがありますので、若干そういった面での経験はあるということで、ご理解いただければと思います。
 地域医療、地域保健の中でも、最近では根拠に基づくサービスを提供するということで、「EBM」や「EBH」などと言います。開催要綱にもありますように、この分野においても作業環境下でのばく露の状況も大きく変化しております。科学的知見や有害性の知見も、いろいろ変わってきているということで、時代に合わせて適宜見直しをしていく必要があろうかと思います。リスク評価の結果なども順次出てきておりますので、我々も説明責任のある行政施策を進めていく上で、この検討会は非常に重要だと認識しております。皆様方におかれましては、大変お忙しいお立場にあるわけですが、引き続きご議論をお願いいただけますようお願い申し上げて、ご挨拶とさせていただきます。よろしくお願いします。
○石井専門官 それでは以後の議事進行については、座長の櫻井先生にお願いしたいと思います。
○櫻井座長 では議事に入る前に、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○石井専門官 お手元には議事次第、座席表に続き、資料1として「労働安全衛生法における特殊健康診断の見直しについて」という資料があります。こちらは前回お配りした特殊健診項目に関する調査研究委員会の報告書、いわゆる中災防の報告書の別添の部分、前回の議論を踏まえて修正したものを、新たに資料1とさせていただいております。本日はこの資料1をメインにご議論いただければと思います。また、資料2は平成20年3月にいただいた、中央労働災害防止協会による「特殊健康診断の健診項目に関する調査研究委員会報告書」の本文部分です。本日はこの資料1と資料2を参照いただきながら、ご議論いただければと思います。
○櫻井座長 それでは議事に入ります。議事の1は、「労働安全衛生法における特殊健康診断等の健診項目について」ということで、今日の進め方等を事務局から説明をお願いいたします。
○石井専門官 それでは資料1をご覧ください。本日は、この資料1を中心にご議論いただければと考えております。資料1は全部で30頁付いております。このうち12頁までが前回、ご議論いただいた内容となっております。この12頁までの間も、前回のご議論を踏まえてさらに修正・追加を行っておりますので、まず最初に前回ご議論いただいた内容についてご議論をいただきます。残りの13頁から30頁の部分については、本日初めてご議論いただく内容です。我々も前回のご議論をお聞きしている限り、1回で結論が出るものではないと考えております。本日初めての部分についてはでき得る限り、一通りご議論いただいて、残った宿題事項は再び整理の上、次回以降にご議論いただければと考えております。
 はじめに、前回ご議論いただいた内容の部分で、本日また議論していただくべき内容について、事務局より掻い摘んで説明を申し上げます。まずは2頁を開いてください。1番の有機則関係の所です。こちらの新旧対照表については前回、非常に活発なご議論をいただきました。その中で、さらに前回からの議論を踏まえて修正した所についてご説明させていただきます。右側の見直し案の3)の「腎機能検査」ですが、前回のご議論では一次検査、現行項目の尿中蛋白の有無の検査は、「必ず実施すべき項目」から外すべきというご議論をいただきました。「医師が必要と判断した場合に実施する検査」の中に、「腎機能検査」と書いただけでは、尿検査が入るかどうかは不明確ということで、尿検査を入れるべきだというご議論がありましたので、こちらに「尿検査を含む」という項目を追加しております。5)6)7)についてはいろいろとご議論がありましたので、頁を追加して詳細をご議論いただければと考えております。
 続いて4頁をお開きください。先ほどの表の5)にあった二硫化炭素の項目です。こちらは前回ご議論いただいた内容の中で、「作業条件の簡易な調査」を加えることと、尿中蛋白の有無の検査を省いて、医師が必要と判断した場合に腎機能検査を実施し、その中に尿検査を含むということと、「神経内科学的検査」を「神経学的検査」にするということについては、皆様の合意が得られたと理解しております。しかし「動脈硬化性変化の検査」については、脳・心疾患という項目を例示に含めるかどうかということなどはご議論がありましたので、前回のご議論を踏まえて、事務局として修正した案は、「医師が必要と判断した場合に実施する検査」として、「動脈硬化性変化の検査」という項目を提案させていただいております。
 下のほうに注があります。どういった場合に医師が判断してこれを行うのかということについて、作業環境測定の結果等を踏まえて、例えば1ppm以上というのは現行の基準の値ですが、こういったばく露を受けている労働者に対して実施することとしてはどうか。検査内容としては前回のご議論にも上がった負荷心電図やCT Angio、MRI等を医師の判断として実施することとしてはどうか、これらの趣旨については施行通達等でガイドライン的に示すこととしてはどうかということを今回、この資料の中に盛り込んでおります。
 次の5頁から7頁にかけてが、眼科的検査の項目について、前回ご議論いただいた項目です。5頁のメタノールについては、「医師が必要と判断した場合に実施する検査」として、眼科的検査と、下のほうで注書きがあります。先ほどの二硫化炭素と同じ考え方で、こちらも作業環境測定の結果等を踏まえて、例えば例示にあるような、200ppm以上のばく露を受けているような場合に実施することとしてはどうかということと、検査内容としては中心暗点、視野狭窄等の検査を行うようなことをガイドラインで示してはどうかという案をお示ししております。  6頁の酢酸メチルについては、いまご説明申し上げたメタノールと同様の項目について、懸案の記載をしております。
 7頁のスチレンも、検査項目としては基本的に眼科的検査を、「医師が必要と判断した場合に実施する検査」として加えます。それと、ここの内容として酢酸メチルやメタノールと若干変えている所は、ばく露の濃度の基準がもともと違うので、例示の濃度が違うということに加え、検査内容として色覚異常を踏まえて、色覚検査、前回ご議論にあったCCI等をお示しするという案を記載させていただいております。
 8頁に 1-ブタノールが出てきております。前回、聴力検査の項目についてのご議論をいただいておりますが、前回お出しした資料の中には、聴力障害の記載について、具体的な内容や根拠はお示ししておりませんでしたので、今回のこの資料の中に、平成16年度に中災防にやっていただいた調査研究事業、「特殊健康診断に係る調査研究事業の報告書」より抜粋した内容を、さらに加えさせていただいております。
 平成16年の報告書に書かれている具体的な内容は、1-ブタノールにばく露した労働者に聴力障害が発生したという報告があります。騒音とブタノールの両方にばく露していた者のうち、大体3年から11年働いていた11名のうち、9名に高度の聴力障害が認められたという報告があるということで、対照群として1-ブタノールにはばく露されていないが、90~100dBの騒音にばく露されて、耳栓などの保護具を付けていなかった対照群と比較すると、1-ブタノールばく露群では11名中9名に、3,000Hzで明らかな聴力損失が見られました。3,000Hzの平均聴力の損失が42dBであるのに対して、対照群では47名中23名に、同様の聴力損失が認められました。3,000Hzの平均聴力損失は32dBであり、1-ブタノールのばく露群の聴力損失が著しかったという報告を、今回、参考までに載せております。ここの部分については本日、櫻井先生からさらに参考資料をお持ちいただきました。ただ今お配りさせていただきますので、1-ブタノールの議論の際にご覧いただければと考えております。
 9頁、10頁の項目については、特に変更はありません。11頁の鉛及びその化合物についても前回ご議論いただいた内容から、特に変更はしておりません。
 12頁の四アルキル鉛については前回の議論の中で、基本的に鉛の所と揃えるということになっております。右側の見直し案では、前回のご議論を踏まえた結果をお示ししております。まず1番目に、いま入れていない「業務の経歴の調査」を入れます。2番目に、「作業条件の簡易な調査」を入れます。それから、それぞれ内容は同じですが、「既往歴の調査」ということで、「自他覚症状と通常認められる症状の有無」に分けて、健診項目を3番と4番に入れるという形に変更しております。
 それから現行項目の4)に、「好塩基点赤血球数又は尿中のコプロポルフィリンの検査」、3)に「血色素量又は全血比重の検査」という項目があります。前回、どちらも通常の臨床では用いられない項目であるというご指摘を受けておりますので、まず現行の3)の全血比重については右側の見直し案の6)の「赤血球数」に変更してはどうか。現行の4)の好塩基点赤血球数については削除してはどうかという案を、今回お示しさせていただいております。
 ここまでが前回ご議論いただいた内容です。前回のご議論を踏まえて、資料の修正・追加を行いましたが、まだ本日、ご議論いただくべきことが残っていると思いますので、まずはこの部分についてご議論をお願いしたいと思います。
○櫻井座長 いま説明のあった項目について、順次ご議論をいただきたいと思います。まず2頁の「医師が必要と判断した場合に実施する検査」の「腎機能検査」の所に括弧をして、「尿検査を含む」という字を入れることについては、いかがでしょうか。これには特段のご異存はありませんね。
 それでは、次の5)の「動脈硬化性変化の検査」ですが、これは要するに4頁の二硫化炭素に関する医師判断項目です。4)の動脈硬化性変化というようにしましょうということで、前回、おおよそ意見が一致したように記憶しております。それに従ってこのように修正してありますが、これでよろしいですか。特にご異存はありませんか。
 では、それもそういう方向でということだと思います。それと、4頁を「動脈硬化性変化の検査」とすることと同時に、それについては医師がどのように判断するのかという議論もありました。前回はガイドライン等で示すという方向で、いろいろ意見がありましたので、それをまとめて注としてここに書いております。その部分についてはいかがでしょうか。
○山田委員 この「医師の判断により」というのは、「実施する」ですね。これをパッと読むと、医師の判断で作業環境測定をやるのかと思ってしまったのです。これで正しいのですが、医師の判断により実施するのですから、「作業環境測定結果を踏まえて労働者に対して医師の判断により実施する」というように、後ろに持っていったほうがいいのではないですか。
○櫻井座長 書き方の順番ですね。
○山田委員 ええ、書き方の順番だけです。下のほうの検査内容は、「医師が必要と判断した場合に実施する検査」という形で、「実施」の前に「医師の判断」が入っていますから。
○櫻井座長 いま気が付いたのですが、例えば1ppm以上のばく露を受けている労働者のほかに、過去にばく露していた労働者も忘れるわけにはいかないと思うのです。たぶん、それはガイドラインを作るときに、すぐに思いつくことだとは思いますが、一応ここに付け加えておいたほうがいいかと思います。それでよろしいですか。
 それではメタノールと酢酸メチルについて、眼科的検査を医師判断項目として入れることについては、いかがでしょうか。これも問題ありませんか。また、ガイドラインに示す医師判断の例として書いてあることについても、いかがでしょうか。
○和田委員 視力の低下というのは含まないのですか。非特異的になるかもしれないけれども、視神経がやられるわけですよね。視力も入れておいたほうがいいのではないですか。全体を調べるということでも、視力は当然測っておかなければいけないものと思います。
○山田委員 特殊健診だけだったら測りますが、定期健診と一緒にやるのだったら、視力も測っていますよね。
○櫻井座長 ここに「等」と書いてありますが、視力は非常に基本的な情報なので入れたほうがよいと。
○和田委員 視力と視野狭窄も測って、その両方で判断するという形にしておいたほうがいいのではないですか。
○山田委員 自覚症状としては、最初に見えないというのが出てきますから。
○和田委員 それがいちばんいいと私は思うのです。
○櫻井座長 視力と中心暗点、視野狭窄等の検査ですね。では、当面はそのように修正してください。メタノール、酢酸メチルのいずれも同様ですね。過去のばく露をどう考えるかというのも、やはり課題だろうと思います。
 次に7頁のスチレンについて、眼科的検査を医師判断項目として入れることと、ガイドラインの内容もこれでよろしいですか。色覚検査等も特にご異存がないようでしたら、そういう方向で合意ということにさせていただきます。
 次に、1-ブタノールです。これは前回、聴力検査についていろいろご議論をいただいて、必ず実施すべきというところまでは求めないということで、「医師が必要と判断した場合に実施する検査」ということだったと思いますので、事務局でそのようにまとめて案が出てきております。根拠としては、ここに抜粋してあるVelasquezの報告が唯一のものです。
○和田委員 この報告を見ると、明らかに騒音とブタノールの相乗作用という感じにとらえることができると思うのです。ブタノール単独で本当に聴力障害が起こるかというのは、これまで報告もなく問題になるのではないですか。これを見ると、騒音による聴力障害が50%で、両方あると80%になるというぐらいですから。
○櫻井座長 この論文のオリジナルを見ないと判断しにくいと思いまして、これを取り寄せてお手元にお配りしております。
○和田委員 ブタノールはかなり使いますし、老人性難聴など、いろいろ入ってきてしまいますから、判断に困るのではないかと思うのですが、どうですか。
○櫻井座長 付けてありますので、このオリジナルのほうを見ていただきたいと思います。これは学会の抄録なのです。オリジナルはピアレビューのある雑誌にパブリッシュされたものではないのです。メキシコのVelasquezという方が発表しておられます。読んでみますと、いろいろ不完全な記載ではあります。
○山田委員 騒音レベルが低いですよね。しかし90~110dBのところにノイズレベルがあるわけでしょ。
○櫻井座長 そうではなくて、それがばく露限界値なのです。このFig.1ですね。作業者11名がばく露している職場の騒音レベルは、その点線で。つまり、この人たちに認められている聴力障害を、騒音では説明できないと言っているわけです。コントロールとして、騒音ばく露者を調べているのです。それがTable 1に書いてある47人で、騒音レベルは相当高い。
○山田委員 90~110dBです。
○櫻井座長 そういった騒音レベルでの聴力損失がFig.2であり、Fig.3が1-ブタノールばく露作業者の聴力損失であって、ほぼ同じ、あるいは1-ブタノール作業者の聴力損失のほうが、やや大きいと。それで過去のこういった聴力損失を起こし得るような原因について調べたと、チラッと書いてあるのですが、あまりちゃんと記載していないのです。いちばんの問題は、過去にノイズにばく露していなかったかどうかということを、いちばん考えますよね。それが明確には書いていないのです。しかし調べたということで、これを信用するならば、一概には否定できない。1-ブタノールのばく露レベルが80ppmだったということが、いちばん最初の頁の右下にちょっと書いてあります。聴力損失の原因として考えられる要因は、1-ブタノール以外にないというように言っています。それをどこまで信用できるかです。
○和田委員 関与しているのはいいとしても、純粋にブタノールだけで本当にくるのでしょうか。このデータからいうと、騒音との相乗作用ではないかという感じを受けるわけです。ですから注として、「一定レベル以上の騒音にばく露されている者について聴力障害の報告が一つある」というように、書いておいたほうがいいと思います。ブタノールを使っている人というと、あまりにも膨大な数になると思うのです。
○櫻井座長 非常に使っているのに、ほかの報告がほとんどないのです。ですから、何か問題があるのではないかという気もするのです。
○和田委員 1つだけだとすると、純粋にブタノールでくるかというのが、まだちょっとはっきりしないですよね。事実は事実として、騒音と一緒になったときにきているという1つの報告があるということですよね。
○櫻井座長 現在、管理濃度は25ppmなのです。これは80ppmで起こったと言っているのですが、実際はもっとひどいばく露があった可能性があります。
○和田委員 80ppmだと、そんなに低いという値でもないですよね。ですから中等度以上の騒音職場において報告があったと、ガイドラインの注に付けてはどうですか。
○櫻井座長 医師の判断項目として付けておくことについてはよろしいですね。
○和田委員 それはいいです。
○圓藤委員 学問的に言うならば、暫定的にそういう基準を設けて、本当にそうなるのかというのを検証して、あれば残すし、そういう報告がなければ消すというやり方をすべきではないかと思うので、ちょっと早すぎるような気がします。載せる以前の段階として、聴力検査はいま、全員にやっているわけですから、こういう物を取り扱っている作業場の労働者たちに、聴力損失がどの程度の頻度で見られるのかということを、アンケート的に問合せをすることはできないのでしょうか。そこで、いくつかの事業所で聴力損失が報告されてくれば、やはり残すべきだし、それがないようであれば、ここに入れるのも、如何かという気がするのです。
○櫻井座長 どうでしょう。
○山田委員 3,000Hzのところでしょ。3,000Hzというのは、聴力検査でずっとやるときはやりますが、普通は1,000Hz、4,000Hzしかやりませんから、そこは引っかかってきません。ですから、わざわざやれと言わなければいけませんよね。ただ、いま言われたように暫定的に何年間で、「これで文句があったら言ってください」と言っておいて決めたほうがいいのかもしれません。
○櫻井座長 圓藤先生のご意見は、当面は医師判断項目にも入れないということですね。
○山田委員 ただブタノールは、本当に意外な所でたくさん使っているのです。
○和田委員 聴力低下者もかなり多いわけです。ですから判断に困ってしまうと思うのです。
○柳澤委員 聴力低下者というのは、実際に経験的に多いのですか。
○和田委員 それは健康診断等で。
○山田委員 老人性の変化の人もいるわけです。
○和田委員 老人性難聴は非常に多いわけです。ブタノールを使っている老人で、これをブタノールによるものだと言うと、大変な騒ぎになってしまうと思います。
○山田委員 そちらがブタノールと言われると、非常に困りますよね。
○櫻井座長 やはり疫学調査をちゃんとやらないと。
○柳澤委員 そうですね。メキシコで10例云々というのを基礎根拠にして、聴力障害が起こるからということを、こういう会で一般的なステートメントで言うというのは、やはり気になりますね。
○和田委員 ちょっと怖い感じがします。
○柳澤委員 一定量のブタノールにばく露されている作業環境で、少しスタディーをするというのは、そんなに難しいことではないのではないでしょうか。せいぜい述べるとすれば、そういう報告があるので注意が必要ということです。
○和田委員 こういう報告があるから気を付けろというぐらい、留意してほしいというぐらいのところではないでしょうか。
○圓藤委員 そんな感じですね。
○清水委員 文献はこのままに。
○和田委員 ただ抄録ですね。
○櫻井座長 これを抄録して、531頁の右の下半分の所に書いてありますね。
○清水委員 531頁の下から4行目辺りは、Seizが2名に対しての聴覚障害ですか。
○櫻井座長 これは「1名がさらに聴覚症状を伴った」と書いてあるのです。これだけです。
○和田委員 「さらに」でしょ。聴力障害は年齢的にきますから。
○櫻井座長 追加の情報としては、それほど強くないですよね。このときの提言というのは、533頁から534頁に書いてある考え方として、特に534頁が。
○山田委員 要するに、4,000Hzの結果を書けということですか。
○櫻井座長 533頁のちょうど真ん中辺りの「検討結果」で、「従来の検査では聴覚損失が見落とされている可能性がある」とあります。ブタノール作業者について今まで報告がないのは、項目として挙げられていないために見落とされているのではないか、というスタンスで取り入れる方向で検討したらいいのではないかという案になっています。ただ、実際には一般健診でやっているから、その情報を使うということでいいのではないかというような書き方になっています。
○山田委員 少なくとも下がりが、40で下がっていると言っていますよね。それぞれのところはあると思うのですが、評価で30ぐらいの動きというのが結構あるのです。その30のところは見ていないわけでしょ。そこがいちばん深いところかどうかは分かりませんよね。そういう意味ではこの定期健康診断そのものが、3,000Hzと言っていることの反映にはならないと思います。
○櫻井座長 そういうことで、一応参考資料として持ってはきましたが、何といってもこのオリジナルのペーパーをどう評価するかです。
○山田委員 ブタノールに本当に危険性があるのかという危惧があるならば、どこかでサーベイをやっておかなければいけないわけですが、どうですか。私はブタノールについて、そういうことはあまり知らないのです。
○櫻井座長 危惧するとすればこれだけなので、あり得るかなというように思う人もいるかもしれません。
○山田委員 今日いただいた530頁から534頁までの話というのは、今までからもあるわけですよね。ですから、もうそのときから危惧されているわけですよね。
○櫻井座長 そうです。
○山田委員 それは今日の論文が根拠になっているのですか。
○櫻井座長 そうです。
○和田委員 この論文の内容から言えば、やはり相互作用というように想像されるということを示しているにすぎないと、私は読めるのです。ですから騒音職場の労働者で聴力障害が生じたという報告があるので留意されたいぐらいのことを、注釈で付けるぐらいがせいぜいだと思うのです。
○山田委員 文献の中に、産業衛生学会の許容濃度の勧告がありますよね。1987年の「産業医学」の426、427に入っています。534頁です。その3つ目に、「産業衛生学会の許容濃度の勧告」というのがあります。
○櫻井座長 要するに、これは聴力障害ということではなくて、ほかの原因も考慮して決めていると思いますが、ちょっと手元にないので。今の管理濃度は25ppmになっています。ですから一応、今は25ppmを超えないようにコントロールしているわけですから、あるとしても、こういうことが起こる確率は、非常に低いだろうとも思います。
○山田委員 25ppmというのは、どこから決まったのですか。
○櫻井座長 いま手元に資料がないので。では大方のご意見は、医師判断項目として載せることはやめておこうという。
○山田委員 このメキシコのブタノールの部分は、何年の論文ですか。
○石井専門官 1964年か1969年かと思います。
○櫻井座長 この英文で書いてある論文のリファレンスの11に、「1964」というのがありますから。こちらは1969年のほうですね。
○石井専門官 40年の間に全然報告が出ていないということです。
○山田委員 それを「見逃している」と言われているわけですよね。
○和田委員 実際に測り出したら費用だけかかって、結果は得られないと思うのです。非特異的な結果しか得られないから、経費が高くなる検査をさせることになってしまうと思います。ですから注意を喚起するぐらいでいいと思うのです。
○櫻井座長 そうですね。いま大前委員が、許容濃度の勧告の理由を調べてくれておりますが、当面は聴力検査を医師判断項目にするというのはやめて、削除するということで、先へ進めたいと思いますが、よろしいでしょうか。次の9頁、10頁はよろしいのでしたっけ。
○山田委員 「オルト」「メタ」「パラ」とか「1,1」などの後の横棒は、普通は半角ですよね。
○櫻井座長 「オルト」の次のですね。
○山田委員 それは今までのブタノールもそうだったと思います。
○櫻井座長 それは気を付けないといけないですね。
○山田委員 3頁の注2の「オルト-ジクロルベンゼン」だけが全角になっているのです。あとは全部半角になっていますが。
○櫻井座長 その点は確かにそうですね。気を付けます。
○山田委員 それから8頁の「1-ブタノール」の「1」の後の「ブタノール」も、全部全角になっています。
○櫻井座長 ほかにもあるかもしれませんが、後ほど是非、全部一括して注意することにいたしまして、9頁、10頁、11頁について、何かご意見はありますか。
 ないようでしたら、12頁の四アルキル鉛についてはいかがでしょうか。
○和田委員 コプロポルフィリンというのはどうですか。ちょっと気になります。測定が難しいし、非特異的な増加が大きいです。それと、無機の鉛の健診では、コプロポルフィリンを除いてしまったわけですよね。四アルキル鉛のこういう血液障害というのは、四アルキル鉛ではなくて分解されて、鉛として作用するということになっているわけですよね。それから言えば長期の影響は鉛そのものを測って経時的にみた方が良いと思います。測定法もちょっと難しいし、かなりバラつきが多い。
○櫻井座長 この四アルキル鉛については、鉛を測るなど、いろいろ検討しましたよね。しかし作業者も非常に少ないので、最小限の修正で収めておこうかということで、こうなっているのです。それにしても、コプロポルフィリンはちょっと引っかかるというご意見ですね。私もそういう印象があります。
○和田委員 どうせ無機鉛の健診では鉛を測っているのだから、鉛とデルタアミノレブリン酸を測ってもいいのではないですか。
○櫻井座長 鉛と同様に、血液の鉛と尿のデルタアミノレブリン酸ということにしてしまいましょうか。
○和田委員 そんなに感度も悪くないし。
○櫻井座長 そのほうがいいと思います。
○山田委員 それでいいです。
○櫻井座長 そういう方向で。
○和田委員 いままでの鉛については、貧血の検査はもう省いてしまったのでしたっけ。
○山田委員 省いてしまって、ありません。
○和田委員 だから、四アルキル鉛の健診項目に入っているというのは。
○櫻井座長 それもおかしいのです。
○和田委員 整合性がちょっと。
○櫻井座長 それは鉛のほうと整合性を取るということですか。
○和田委員 取るようにしたほうが、私はいいと思うのです。
○櫻井座長 あと、血圧はどうでしょうか。
○山田委員 これも要らないですね。
○和田委員 血圧については、たぶん四アルキル鉛、有機鉛として中枢神経系に作用して血圧が上がるという解釈だったように思います。
○山田委員 しかし、わざわざ血圧の測定というのを、ここに書く必要があるのかと思います。
○和田委員 これも整合性ということで、削ってしまってもいいかもしれませんね。
○櫻井座長 なくすという方向ですか。やめておきますか。
○和田委員 鉛と一致させるということで。
○櫻井座長 では鉛と整合性をということですね。
○和田委員 保ったほうが私はいいと思うのです。
○櫻井座長 よろしいですね。以上、前回検討事項の12頁までを一通りご議論いただきましたので、先へ進めたいと思います。事務局から何かご説明はありますか。
○石井専門官 それでは事務局より、資料1の13頁から本日初めてご検討いただく項目についてご説明させていただきます。まず13頁をご覧ください。13頁から、特化則の関係の見直しの項目となっております。1つ目の項目は、「ベンジジン及びその塩」です。ここには「作業条件の簡易な調査」というのが、ほかの項目と同様に加わります。それに加えて、ベンジジン以外の尿路系のがんを標的とする物質について、今回見直しの提案をいただいております。これについては資料2の19頁の(6)「特定化学物質に関する健康診断項目」をご覧いただきながら、説明を聞いていただければと思います。
 まず「尿路系がんに対する腫瘍マーカー等」です。現行の特化則においては、ベンジジン及びその塩、ベーターナフチルアミン及びその塩、ジクロルベンジジン、その他ここに書いてある11の物質について、尿路系がんを標的疾患とする物質として、尿沈渣の検鏡、医師が必要と認める場合は、尿沈渣のパパニコラ法による細胞診の検査が必須項目とされています。今回、この研究事業において評価を行っていただいた結果、例えば平成11年から15年までの労災補償状況を見ますと、5年間で45例ということで、アスベストによる肺がん中皮腫の346例に次いで大きな数となっています。
 そういうことなどから、現行では尿沈渣の検鏡と細胞診がありますが、尿沈渣の検鏡のみでは、当然スクリーニングとしての敏感度、特異度はいずれも問題があります。その場合、医師の判断で尿沈渣のパパニコラ法による細胞診を行うこととしておりますが、改善の余地のないところが課題であるとされております。したがって、現行の臨床において導入されている尿中の腫瘍マーカー、ここではNMP22とBTA及び超音波検査について、これを加えることが望ましいのではないかというご提案をいただいております。
 具体的にはそこに書いてありますように、腫瘍の大きさによって変わってくるのですが、尿中のNMP22については敏感度が10?未満であれば42.3%、10~30?であれば59.1%、30?以上であれば85%、特異度は78%ということで、尿中のBTAについては敏感度が70%、特異度が75%というようになっております。そういうことで健診項目を加えるかどうかという条件を満たしてくるというところから、この項目を入れることを考えてはどうかということでご提案をいただいております。
 ただ、ただし書きに書いておりますように、特異度が75~78%程度ということで、健常者の25%程度が陽性となるということから、ばく露レベルの低い労働者に対してまで、健診項目とするには問題があると考えられるところから、一次健診において医師が必要と認める場合の項目として追加するのが適当というご提言をいただいております。
 超音波検査については特異度が高いということと、検査の手間がやや多いという点が、尿中腫瘍マーカーとは若干異なっております。それを踏まえても、5つの条件については満たしているということが考えられるところから、腫瘍マーカーと同様に、一次健診における医師が必要と認める項目として、追加することが適当であるということで、資料1の13頁の新旧対照表にありますような見直し案のご提言をいただいております。つまり尿中の腫瘍マーカー、その腫瘍マーカーの内容としてはNMP22又はBTA、又は超音波検査を医師の判断によって行うということをご提言いただいております。この項目についてはベンジジン及びその塩ということで書いておりますが、注2に書いておりますように、そのほかの物質についても同様の改正を行うことが適当であるというようにご提言いただいておりまして、尿路系がんに対する対象物質とされている11の物質について、すべてこのような見直しを行うべきというご提言をいただいております。
 14頁は、塩素化ビフェニルの項目です。こちらもほかの項目と同様に、「作業条件の簡易な調査」を新たに加えることと、尿中ウロビリノーゲンの検査を削除することに加えて、全血比重というのが二次健診の項目の中にありましたので、これについては削除してはどうかということで、今回、この資料の中で提案させていただいております。
 15頁は、アルキル水銀化合物の所です。これについても同様に、「作業条件の簡易な調査」というのが入っているほか、二次健診の所に「血液中及び尿中の水銀の定量」と書いておりますが、この「尿中の水銀の定量」を削除するという提言をいただいております。ここについては資料2の14頁をご覧ください。こちらの上の2つ目のパラグラフの(ク)に、「アルキル水銀化合物」という記載があります。ここには「特化則のアルキル水銀化合物に係る血液中の水銀の量については、その測定がばく露指標として有効であることが判明している」というように書いてあります。しかし職業性ばく露に対する基準値が確立されておらず、現在のばく露状況においても有効性が明確ではないので、一次健診項目としては採用しないが、二次健診項目としては現行どおり残すことが適当であると考えられるということです。ただ、現行の尿中の水銀の量の測定はアルキル水銀の場合、ばく露指標としての意義が小さいと考えられるため、二次健診項目からは削除することが適当というご提言をいただいており、新旧対照表ではそれを反映しております。
 続いて、16頁のオーラミンの所をご覧ください。ここについては「作業条件の簡易な調査」を他の項目と同様に入れること、「尿中ウロビリノーゲンの検査」の削除に加えて、尿中腫瘍マーカーと超音波検査の項目を、ベンジジン及びその塩と同様に、新たに加えることを見直しの提言としていただいております。
 それから二次健診の項目です。現行項目においては肝機能検査というのが設定されておりましたが、こちらについては資料2の20頁の下の(イ)「尿中ウロビリノーゲンの検査等」をご覧ください。こちらにおいては尿中ウロビリノーゲンの検査を削除することが適当と判断されているほかに、肝機能検査の位置づけについても記載されております。20頁のいちばん最後の「また」から始まる文章ですが、通常の職業性ばく露のレベルでは肝機能障害が発生するリスクは低いものと判断されるので、MBOCAは一次健診項目から、オーラミン、硫酸ジメチル、弗化水素は二次健診項目から肝機能検査を削除したということです。また、尿中の尿路系のがんを標的とするということで、二次健診において新たに腎盂撮影検査というのが加えられております。
 次に、17頁のオルト-フタロジニトリルをご覧ください。こちらについても他の項目と同様に、「作業条件の簡易な調査」というのを挿入することと、尿中ウロビリノーゲンの検査を入れることに加えて、二次健診に入っていた全血比重検査を削除するという内容のご提案をいただいております。
 18頁のカドミウムについては、今回、少しご議論のあるところかと考えております。ここについては、まず資料2の11頁と併せてご覧ください。カドミウムの項目につきまして「作業条件の簡易な調査」というのが入っておりますが、それ以外に今回の見直し案の大きなものとしては、血液中のカドミウムの量の測定、二次健診での尿中のβ2-ミクログロブリン、α1-ミクログロブリン又はNAGの量の検査というのをご提案いただいております。ここについては生物学的モニタリングという観点からご検討いただいた結果、このような提言をいただいております。
 資料2の11頁の下の記載にもありますように、カドミウムの職業的ばく露における標的臓器として、肺と腎があります。肺では高濃度のばく露で肺気腫、肺がんを起こし、腎では低から高濃度のばく露で再吸収障害を起こします。12頁の2つ目のパラグラフにもありますが、カドミウムは人体内で高度に蓄積する性質を持っており、生物学的半減期は10~20年とされていること、蓄積されたカドミウムの排泄は困難ということ、カドミウムによる健康障害のほとんどが、すべて不可逆性のものであるということなどを考慮すると、生物学的モニタリングとしては、血液中のカドミウムの測定を採用し、過剰ばく露の未然防止を図ることが必要という観点から、血液中のカドミウムについても新たに加えるべきというご提言をいただいております。現行の項目では尿中のカドミウムが、二次健診の項目とされておりますが、過去のばく露の長期的な指標としては、血液中のカドミウムよりも優れた特性を持っているので、このまま残すべきというご提言をいただいております。
 併せて、資料2の23頁もご覧ください。先ほどの11頁は生物学的モニタリングの観点で書かれたのですが、資料2の23頁は特化則の個別の項目として、さらにカドミウムについて検討された結果が書かれております。ここには主に腎機能障害についての項目の記載があります。腎機能障害の早期の指標としては、腎再吸収機能障害の標的を鋭敏に検出できるβ2-ミクログロブリン、あるいは尿α1-ミクログロブリンの測定、腎尿細管上皮細胞の障害の早期指標である尿中のNAGについて記載されております。それぞれ個別に検討していただいた結果を記載しておりますが、β2-ミクログロブリンについては機能の微妙な低下を鋭敏に反映するということで、「鋭敏度、特異度のいずれも優れている」という記載があります。
 それから、α1-ミクログロブリンについては個人内変動が大きく、特異度が低い傾向にあるということが記載されており、24頁の最初の所において、「NAGは鋭敏な障害指標であるが、種々の原因により異常値を示す傾向があり、特異度が低いのが欠点と考えられる」と記載されております。このような理由から、一次健診項目として採用するとすれば、β2-ミクログロブリンが適切と考えられるとされております。しかし、血液中カドミウムの測定を必須項目として採用する場合であれば、これらの腎障害のマーカーのいずれも二次健診項目とすることで足りるのではないかという観点から、このような見直し案の提言がなされております。
 さらに高濃度のカドミウムばく露者に肺がん、呼吸機能障害の発生が報告されていることから、二次健診において胸部エックス線の直接撮影検査又はヘリカルCT検査、喀痰細胞診を追加するほか、呼吸器に係る他覚症状や自覚症状がある場合は、肺換気機能検査ではなく、それより幅広い肺機能検査を検査項目とするのが適当であるということで、見直し案にあるような提言をいただいております。カドミウムについては後ほど詳細にご議論いただければと考えております。
 続いて19頁に、三酸化砒素の項目が載っております。この項目については第1回の検討会で、砒素及びその化合物とするということで見直しの提言をいただきましたので、ここの部分は省かせていただきます。次回以降は資料からも削除させていただきます。
 20頁は、シアン化カリウム、シアン化水素、シアン化ナトリウムですが、これについては、尿中ウロビリノーゲンの検査を削除するという変更を予定しております。この項目については二次健診がもともと設定されていません。「作業条件の調査」の他の項目では二次健診に入っている項目ですが、これが最初から一次健診に含まれているわけです。
 21頁は3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(以下MBOCAと略)です。こちらも他の項目と同様「作業条件の簡易な調査」を加える。また、頻尿、排尿痛、尿中の腫瘍マーカーを加える。
 資料2の21頁、「特定化学物質の個別の物質」についての検討が書かれている所の(ア)にMBOCAについての記載があります。現行の特化則においては、MBOCAの標的臓器を呼吸器・肝・腎と想定して健診項目が定められていますし、呼吸器がんを起こし得ると考えて喀痰の細胞診などを医師判断項目に採用しておりますが、その後、この物質による膀胱がんの発生が複数報告されているということで、尿路系の発がん物質とする見方が有力になっています。IARCの報告では93年に2Aとなっていますが、最近の台湾の研究者により、比較的少数のばく露者集団から膀胱がんの症例が複数報告されたという報告があり、この物質を尿路系の発がん物質として取り扱う必要があると判断されますので、現行の一次健診及び二次健診に、ほかの尿路系の発がん物質と同じ健診項目を追加することが適当であるという結論づけをいただきました。そこで、一次健診の見直し案におきましては、頻尿・排尿痛といった自覚症状、さらに尿中の腫瘍マーカーを加える。医師が必要と認める場合には、二次健診に膀胱鏡検査又は腎盂撮影検査という項目を加えることになっております。
 現行の一次健診項目として、肝機能検査が設定されております。これは動物実験で肝機能障害が報告されたことによりますが、慢性ばく露者ではそのような報告は認められておりません。現在の通常の職業ばく露では肝機能障害が起こるリスクは高くないと判断されますので、現行の一次健診項目からは削除し、二次健康診断項目として残すことが適当であるとされています。
 見直し案の6)に尿中MBOCA量の測定と書いてありますが、資料2の12頁の下のところに、MBOCAについて生物学的モニタリングに関する検討結果が記載されております。こちらに書いてあるように、MBOCAの測定については技術的な問題はない。健診に採用するかどうかの条件という観点からすると、???の条件を満たしていますが、?、生物学的モニタリングを追加することにより健康障害の予防をより確実に行えるかどうかについては、作業環境の測定のみによる管理では、ばく露を適切にコントロールできないおそれがあるので、生物学的モニタリングを併用することで、発がんをより適切に未然防止することができる。?の費用については、1検体数千円のオーダーであるので過大ではないと判断される。必須項目として尿中MBOCAの測定を追加することは望ましいとされながらも、現行の低い管理濃度による作業環境管理にさらに生物学的モニタリングを追加するべきかどうかについては、検討の余地があるとも考えられるため、今後早期の検討課題とすべきであるということで、見直し案の提言は斜めのイタリック体でいただいております。この検討会でさらにご意見をいただき、ご議論をいただければと考えております。
 22頁は、水銀及びその無機化合物です。これにも「作業条件の簡易な調査」が加わっておりますが、二次健診のところに「尿中NAGの定量」と書いてあります。資料2の22頁の下に、「水銀及び無機化合物」について書いてあります。水銀の標的臓器は中枢神経系と尿細管障害と書かれております。現在のような、ごく低濃度、許容濃度程度のばく露において、中枢神経系の症状としては、微細な振戦や脳波の変化がありますが、いずれも特殊な医療機器で測定しなければならないということで、どこでも行える健診項目としては、腎尿細管障害を指標とすることが適当である。とりわけ、尿中のNAGは水銀蒸気ばく露作業者の疫学調査に用いられてきたということから、尿中NAGの項目を追加するべきではないかという提言をいただいております。ただ、尿中NAGにおいて特異度はそれほど高くないということが指摘されておりますので、一次健診の必須項目にするか否かについては、現状を踏まえて検討が必要であり、当面は二次健診項目に追加することが適当ではないかというご提言をいただいております。
 資料1の23頁は、トリレンジイソシアネート(TDI)ですが、これについては資料2の22頁を一緒にご覧ください。これについての見直し案として、「作業条件の簡易な調査」を加える。それから努力性の肺活量検査を加えること、さらに二次健診の項目について、肺機能検査又はTDIに特異的な免疫学的検査、と変更するというご提言をいただいております。資料2の22頁にその詳細な記載がありますが、TDIは典型的な職業性喘息の原因物質としてよく知られています。ただ、この項目について、現在では自覚症状の聴取のみが一次健診項目とされ、自覚症状がある場合に胸部の理学的検査や胸部エックス線直接撮影による検査又は閉塞性呼吸機能検査が二次健診の項目となっています。現状こうなっているわけですが、自覚されない呼吸機能障害を早期に検出するためには、努力性の肺活量検査が適切な検査であるとされています。努力性の肺活量検査については、目的とする障害を検出する敏感度及び特異度が妥当なレベルにあるかどうかについて、正常者の範囲を超えて経時的な機能低下が形成されること自体に大きな意味を持っているということから、有効な措置に直結しており、条件を満たしているのではないかと考えられます。結論といたしましては、努力性の肺活量検査を一次健診項目とすることについて早期の検討が必要であるとされておりますので、ここでご議論をいただければと書いてあります。また、努力性の肺活量検査を一次健診にする場合には二次健診にこのような変更を加えるべき、というご提言を併せていただいております。
 24頁、ニトログリコールの項目については「作業条件の簡易な調査」を加える、また、一次健診の全血比重の検査を削除すること、それから、二次健診に「全血比重の検査の結果、異常が認められる場合は、ヘマトクリット値の測定、赤血球数の検査及び血色素の測定のうち2項目」という項目がありますが、これについては、一次健診で赤血球数等赤血球系の血液検査をやればできるのではないかということで、削除してはどうかとしております。また、尿中のウロビリノーゲンは、他の項目同様に削除という提案をさせていただきました。
 25頁は、パラ-ニトロクロルベンゼンです。これについて、「作業条件の簡易な調査」、尿中ウロビリノーゲンの検査は同様です。二次健診項目の中で、赤血球系の血液検査に全血比重が残っておりますので、それは削除する。それから、「神経医学的検査」を「神経学的検査」に変更するという提案をさせていただきました。
 26頁は弗化水素です。これも、一次健診につきましては他の項目と同様に「作業条件の簡易な調査」、尿中ウロビリノーゲンの検査についての変更が行われております。また、二次健診の項目に、全血比重、赤血球数等の赤血球系の血液検査という項目がありました。これについては、今回19年度の調査研究事業では特に触れられていなかったのですが、16年度にいただいた調査研究報告の中で、貧血についての項目は特に根拠がないので削除してはどうかというご指摘をいただいておりますので、全血比重と合わせて、赤血球数等の赤血球系の血液検査も削除してはどうかという提案をさせていただきました。
 資料1の27頁はベンゼンですが、これについては資料2の21頁と合わせてご覧ください。まずベンゼンの項目中「作業条件の簡易な調査」については他の項目と同様です。全血比重を削除するということについてはほかの所と共通ですが、今回、白血球の末梢血液像と血小板の検査についてご提言をいただいております。資料2の21頁に書いてありますように、ベンゼンはヒトへの発がん物質であり、ベンゼンばく露と骨髄性白血病、それからリンパ腫、多発性骨髄腫の発症の関係も明らかになっています。資料2の22頁の頭の部分に書いてありますが、骨髄機能低下がベンゼンの毒性発現の鋭敏な指標と認識されております。また、ベンゼンは閾値のない発がん物質と想定されており、よく制御された労働環境であっても、作業者が負う可能性のあるリスクは無視できないレベルにあり、現行の特化則では、赤血球系の血液検査と白血球数の検査が一次健診項目とされていますが、健康影響をできるだけ早期に検出する目的から、血小板数、及び白血球の末梢血液像の検査を一次健診項目に追加することを早期に検討すべきであるということで、このような提言をいただいております。これについても、後ほどご議論いただければと考えております。
 28頁は、ペンタクロルフェノール及びそのナトリウム塩です。これについては「作業条件の簡易な調査」を加えることと、尿中ウロビリノーゲンの削除が変更項目です。
 29頁の硫酸ジメチルについては、「作業条件の簡易な調査」、それから尿中ウロビリノーゲンの検査の削除。肝機能検査についても、特に根拠を認めないということで削除すると書いております。
 最後の30頁はメチレンジフェニルイソシアネートです。これもTDIと同様に努力性の肺活量検査を追加して二次健診の項目を見直すべきという提言をいただいておりますので、それに基づいた見直し案を示させていただきました。ちょっと長くなりましたが、今回、このような見直し案のご提言をいただき、また、前回の議論も踏まえた全血比重検査の見直しなどを踏まえたものを作成いたしましたので、これについてご議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○櫻井座長 それでは、13頁から順次ご意見をいただきたいと思います。13頁は、ベンジジンを例に挙げてありますが、尿路系の悪性腫瘍を起こす物質について、すべて共通に「尿沈渣検鏡」の中に尿中腫瘍マーカー、又は超音波診断を加えるという案ですが、いかがでしょうか。
○圓藤委員 「細胞診、腫瘍マーカー、又は超音波診断」の3つのうち1つをやれということでしょうか。最初の提案は、細胞診は残して、後の2つのうちどちらかだと思ったのですが、どうでしょうか。
○和田委員 これだと「細胞診」で切れて「尿中腫瘍マーカー、又は」と。
○山田委員 BTAの後の「、」は要りませんね。
○和田委員 そうそう。法律の文章の書き方というのがあるはずなのです。両方ともやれと言うのか、どちらかというのか、よく分からないのですが、この場合はどちらなのでしょうか。
○櫻井座長 あのときの議論で圓藤先生はそういうおつもりだったのが明確に伝わっていなくて。
○圓藤委員 パパニコラ法による細胞診が必須で、次の2つから1個を選びなさいということです。
○和田委員 細胞診はやれ、そして残りの2つ、どちらかをやれという意味でしょうか。
○櫻井座長 はい。
○和田委員 この文章でも間違っていないけれど、法律上の文章の書き方が。
○石井専門官 そういう趣旨でしたら、それが明確になるように、細胞診の後を「、」ではなく「及び」などでつなげるようにいたします。
○櫻井座長 「及び尿中腫瘍マーカー又は超音波」と。尿中腫瘍マーカーの後の「、」は要らない。
○圓藤委員 そうです。
○櫻井座長 わかりました。
○圓藤委員 「自他覚症状の有無の検査」の頻尿・排尿痛なのですが、これは大体膀胱炎の症状です。結石の場合もこういう症状がありますが、腫瘍の場合、あまりこの症状は出てこないのです。同じことが後ろのMBOCAでも追加という形になっていますので、ご検討いただけたらと思います、誤解は招かないように。
○和田委員 あまり出てこない、血尿だけですか。
○圓藤委員 血尿ぐらいしか、ないのです。
○和田委員 それは入れてもいいような感じもするのですが。
○圓藤委員 それは症状が進めばいろいろなことが出てくるでしょうが。
○櫻井座長 頻尿とか排尿痛は削除する。
○圓藤委員 はい、削除したほうが分かりやすいかなと思ったのです。
○和田委員 「血尿等」だけになると「等」というのは何ですかということになってしまう。
○櫻井座長 ほかに何かありますか。
○柳澤委員 血尿は、膀胱刺激症状ではない。
○和田委員 要は、ベンジジンでその症状が出ないかどうかです。
○柳澤委員 いちばん敏感なのは血尿です。排尿痛は、部位によっては出ても構わない。やはり「等」でいいのではないですか。
○和田委員 血尿は顕微鏡的な血尿から始まるだろうと思いますが、パッと赤いのが出ないと、それは分からない。その前に、もっと刺激症状が出るか出ないか、そういう症状を呈していなかったかどうかは、症例を見ないと分からない。
○櫻井座長 「等」あるいは「血尿を含む」とする。
○土屋委員 早期発見ということで言うと、自覚症状が出たらおしまいです。血尿というのは、自覚症状にまで至らない段階で、助かる状況で見つかるというのは、なかなか難しいだろうと思います。疼痛が出たのでは、いまの技術をもっては治せない。
 5)の考え方なのですが、一次健診と二次健診の関係をどう解釈するかです。尿沈渣は大変いいと思うのですが、そこで異常があったときに、医師が必要と認めて二次健診として細胞診をやるのか。一次健診で医師が必要と認めるといっても、何を根拠に必要と認めるかです。
○圓藤委員 基本的に、ベンジジン及びその塩というのは禁止物質ですので、過去に大量ばく露した人たち、彼らは健康管理手帳を持っている人たちですので、ハイリスクの人たちです。ですから、できるだけたくさんの検査をしたい。だけれども、費用との関係で2種類ぐらいに絞ってもいいのではないか。それから、細胞診がそれほど感度はよくないというので見逃していることが結構多いので、せめて2種類やってはどうかということなのです。
○土屋委員 私もこの辺のデータは分からないのですが、細胞診+腫瘍マーカー、あるいは細胞診+超音波での感度の上がりというのは、どの程度なのですか。
○圓藤委員 それは資料2の20頁をご覧いただければと思いますが、そんなに高くはならないのです。敏感度が42.3、59.1、BTAに関しては70%ですから、そこそこのものではないかと思います。それから、労働現場では、超音波検査ではほとんど難しいと思いますが、手帳を持っている人たちは病院で受診しますので、超音波検査というのも、場合によっては選択肢にあってもいいのではないか。この場合は、膀胱に尿を貯めている形でしないと見つからない、排尿していたら検査はできないという欠点もありますので、どちらを採るかというのは医師の判断に委ねてはいかがかという気がしています。
○山田委員 ベンジジンで、健診者は何人ぐらい報告されているのですか。
○石井専門官 ベンジジンは、19年度の報告で276人です。
○和田委員 残っているのはそのぐらい。もっといるかもしれませんが、そんなにべらぼうな数ではないし、一次検査では、この中で重要な問題なので、このぐらい詳しくやろうと、そういう姿勢だと思うのです。それで疑わしかったら、もっときちんとやってくださいと、そういう感じでいいのではないでしょうか。罹患率も多いし。
○櫻井座長 そうですね。
○圓藤委員 尿潜血の測定は通常やっているのです。他覚症状の血尿という意味に含まれているのかもしれませんが、明確に「尿潜血の測定」と書いたほうが分かりやすいのではないかと思うのですが。「症状」ではなくて「検査」です。それがなぜ抜けていたのか、よく分からないのですが。
○土屋委員 それは尿の沈渣検鏡の中でチェックするという意味ではないのですか。
○和田委員 沈渣検鏡は必ずやるわけで、その中で、必要がある場合にもっと詳しくやりなさいと。
○圓藤委員 沈渣検鏡でやる場合、時間が経ってやりますと、赤血球が割れていて見えないことがあるのです。赤血球は見つからないけれども、潜血があるということもありますので、テスト薬で測ったほうがいいのではないかと思います。
○櫻井座長 そうすると、5)に尿潜血検査及び尿沈渣検鏡、そういう方向でよろしいですか。では先へ進みます。
 塩素化ビフェニルにつきましては、ウロビリノーゲンを除くことと、全血比重を除くということで問題はない。
 さて、先ほど大前委員がわざわざ調べてくださったブタノールの聴力検査の件については、いかがでしょうか。
○大前委員 刺激症状、それから聴力障害、その両方で50ppm(最大許容濃度として)という数字を決めています。
○櫻井座長 80ppmというデータが採用されているのですか。
○大前委員 一応、採用しています。
○櫻井座長 大前委員はいらっしゃいませんでしたが、先ほどの結論としては「医師判断」項目からは除くという方向にしようということでした。よろしいでしょうか。
○大前委員 はい。
○櫻井座長 元に戻って、14頁はよろしいですか。では15頁のアルキル水銀につきましては「作業条件の簡易な調査」を入れるのは当然として、尿中の水銀を除くという判断になっております。これについて、いかがでしょうか。特段ご意見がなければ次に進みますが。
○柳澤委員 言葉の問題ですが、15頁の二次健診の6)の「神経医学的」は「神経学的」に直していただけますか。
○櫻井座長 はい。ありがとうございます。
 16頁のオーラミンにつきましては、先ほどの場合と全く同様に、見直し案のところと「腫瘍マーカー等」のところを修正するわけですが、これに特異な問題は、尿中ウロビリノーゲンを除くということ、それから肝機能検査を除くということだけですね。それはよろしいでしょうか。
○山田委員 やはり「尿潜血及び」と入れるのでしょうか。
○櫻井座長 そうです、これは全部さっきと同じに修正するわけです。
○和田委員 肝障害はないということでいいのですか。
○櫻井座長 それでよろしいかと思います。
 17頁のオルト-フタロジニトリル。これも、尿中ウロビリノーゲンを除くことと、全血比重を除くこととなっていますが、それでよろしいですか。
 18頁のカドミウムにつきましては、かなり大きな変更ですので十分にご議論いただきたいと思います。血中カドミウムを入れるということ。それから、門歯及び犬歯のカドミウム黄色環、これは今ほとんど見られないので除くこと。それから、二次健診として尿中β2-ミクログロブリン、尿中α1-ミクログロブリン、又はNAGとなっています。
○山田委員 尿中カドミウムはあまり相関がないと言っているのですが、二次健診で尿中カドミウムの量を測るというのは、どういうことなのですか。
○櫻井座長 過去のばく露者では、血中カドミウムの濃度がだいぶ下がっても尿のカドミウムはずっと維持されますので。
○山田委員 過去からのものも全く無用ではないのですね。
○櫻井座長 非常に有用です。通常は両方やってしまったほうがいいと思います。
○山田委員 ある所でパッと急性ばく露した人は血中でいいかもわかりませんが、そういう人は、作業者としてはずっと同じように作業をやっているわけですから、本来ならば、その経過を見ていくというのなら尿中も入るのではないかと思うのですが。
○櫻井座長 血中カドミウムのほうが鋭敏で、きれいに上がってくるのです。だけれども、尿中カドミウムのほうが、ある程度古いばく露者ではコンスタントに高くて、それがだんだん下ってくるのをフォローするということです。どうせなら一次健診に入れたほうがいいというご意見ですか。
○山田委員 そういうことです。
○圓藤委員 何回か測って、過去のばく露で尿中カドミウムが下がっていると分かっている人たちに対して毎回測る必要があるのか、その辺はどうなのでしょうか。
○山田委員 尿中カドミウムは、ばく露によってものすごく動くのです。うちで血中カドミウムはあまりやっていませんが、尿中カドミウムはやっています。作業環境が悪ければ、どんどん上がりますし、良ければ下がります。
○櫻井座長 二次でなく一次に入れたほうがいいというのが先生のお考えですね。
○山田委員 血中カドミウムを入れるのだったら、尿中カドミウムも入るのではないかと。カドミウムを測るときも、尿中カドミウムは自分で採ってくれますが、血中カドミウムを測るときはこちらで採らなければいけなくて、その負担というのは結構大きいのです。それも条件が決まっていて、ばく露のときに、わざわざ出ていかなければいけないわけです。
○櫻井座長 いや、そんなことはないのです。血中カドミウムも、そんなに頻繁に変動することがない。血中鉛と同じぐらいの安定性があります。また、尿よりも変動は少ないのです。尿は、どうしても濃度の影響を受けますから。
○山田委員 血中との相関も取って、もう一回見てみます。それほどでもなかったように思うのですが。
○櫻井座長 両方やるに越したことはないので、私は是非両方やるように説得して、実際に実施しております。
○山田委員 「血中」が入るのだったら「尿中」も入れてほしいと思うのです。「血中」のほうがいいのだったら、それはしょうがないのですが。後ろでは尿中はそんなに相関がないと書かれているのに、何でここに入れるのか。話が違います。
○櫻井座長 比較的短期のばく露では「血中」がベターなので、1つ選ぶとしたら「血中」という判断です。
○山田委員 現在ばく露している者と過去にばく露した者、両方をフォローしなさいと櫻井先生は言われていますが、そうすると「尿中」も必要なのではないですか。
○櫻井座長 そうですね。一次健診に「尿中」も入れましょうか。
○山田委員 ただ、2つとも測っているものはないのです。鉛も今は「血中」だけでやっています。作業者に2つも負担をかけるというのは、あまり良くはないですし。
○櫻井座長 「医師の判断」に尿中のカドミウムを入れておけば、ご存じの方は大抵尿も測っていただける。
○山田委員 健康障害に直に影響するのは、血中カドミウムのほうだということですか。
○櫻井座長 鋭敏ですね。健康障害については両方でそんなに違いはないと思いますが、血中カドミウムのほうが検出力は高いと思います。どちらかと言えば「尿」を先に取りたいというご意見かもしれませんが。
○山田委員 そうなのです、「血中」が下に来たほうがいい。本人にも「高いから血中を見ましょう」と言うほうが納得させやすいのではないかと思うわけです。
○櫻井座長 でも、低濃度ばく露で、尿は動かないのです。動くとおっしゃるなら、相当ばく露がひどいとき、あるいは、かなりばく露した人で変動するけれども、初め「尿」は全然出てこない。血液だけに現れるのです。
○山田委員 排出関係は個人によって変わる。
○櫻井座長 ですから、やはり「血中」を測るべきだと思います。その辺は「ガイドライン」で考えることにしましょう。
○山田委員 結構です。
○和田委員 一般環境のカドミウム健診は、尿について何と何を挙げていたのでしたか。
○櫻井座長 β2-ミクログロブリンが多いですね。
○和田委員 一般健診のカドミウム健診の中に、カルシウムやリンは入れてありませんでしたか。
○櫻井座長 いわゆる公害がらみの健診にですか。
○和田委員 そうです。
○櫻井座長 それは、さまざまです。
○和田委員 それと生活環境は別だという意味であればいい、独立してやればいいという意味ですか。
○櫻井座長 はい。早期でしたら、ここに書いてあるようなもので間違いないのではないですか。一応そんなところで先へ進んでよろしいですか。
 19頁の三酸化砒素については、すでに決定済み。20頁は、尿のウロビリノーゲンを除くということだけですので、よろしいでしょうか。21頁、これは少しゆっくりご議論いただきましょう。生物学的モニタリングの項目として尿中のMBOCAを入れていますが、それ以外の、尿路系の発がん物質という点からの項目については、よろしいですか。
○圓藤委員 それは後ろ、自他覚症状の上の所と同じにするわけですね。
○櫻井座長 全部同じにする。それで、MBOCAは、過去のばく露者だけでなく、現在のばく露者もかなりいる。皮膚吸収等もあるので、生物学的モニタリングの有効性があるということも大きな要因ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○山田委員 この測定は、簡単にできるのですか。
○櫻井座長 数千円でしたね。
○山田委員 値段はそうなのですが、大体特異的にこれが出てくるのですか。普通の健診カーで簡単に対応できるのですか。
○櫻井座長 対象はそんなにいませんので。
○山田委員 今、どれぐらいですか。
○櫻井座長 健診機関以外がたくさん手を挙げるとは思えないのです。
○山田委員 むしろ、やらない。
○櫻井座長 限られたところになると思います。
○石井専門官 129の事業場で1,267人が対象となっています。
○山田委員 では大丈夫ですね。
○櫻井座長 全国のどこでも、というわけではないのですが、大丈夫ですか。特段のご異存はないということで次へ進みます。22頁。これは尿のNAGを二次健診で加えるということですが、いかがでしょうか。
○和田委員 NAGだけを、どうして挙げているのですか。
○大前委員 NAGはブラスボーダーの所のメンブレンにある酵素なので、血中で増えるわけではなくて、そちらが壊れて出てくるのだと思うのです。
○石井専門官 それについては資料2の23頁の上のところに記載があります。3行目の「とりわけNAGは水銀蒸気ばく露作業者の疫学調査に用いられてきた」というところが記載部分かと思います。
○和田委員 NAGについて治験がないということですね。ではそれでいいのではないですか。
○櫻井座長 そういった方向でよろしいですね。
 23頁のTDIにつきましては、努力性肺活量を加えるというのが大きなポイントでしたが、いかがでしょうか。
○和田委員 努力性肺活量を入れたのは、どういう意味なのですか。もともと、それが疫学調査で挙がっていたということから、入れたのですか。TDIの呼吸器障害は閉塞性の呼吸器障害で、1秒率のほうが先に下がって、努力性肺活量は後にならないと下がってこないと思うのですが。
○大前委員 疫学調査をやりますと、結構低いレベルでも、集団としては下がってきます。
○和田委員 閉塞性の肺障害であれば1秒率のほうが下がってくるのが普通です。そして、しばらくすると少しずつ下がってくる、努力性の肺活量が変わってくる、そんなパターンだと思うのですが。
○櫻井座長 努力性肺活量ですが、1秒量とか1秒率は含まれているのですか。
○大前委員 含まれています。
○櫻井座長 「肺活量検査」という表現で構いませんか。
○大前委員 表現はこれで構わないと思います。
○和田委員 だったら「スパイロメーター」でいい、両方入っていますから。最後の30頁、MDIについての所にも「努力性」と書いてありますが、これも閉塞性の呼吸器障害です。1秒率も入っていますから。
○櫻井座長 これは検査そのものが結構大変だということで、いろいろ議論もあったのですが、それ以外に手がないということでした。
○山田委員 やはり慣れていないから、なかなか難しいのです、治験材料がないから。それで、これは二次に入っていると楽なのです。二次だと実際に診療所といいますか、その専門家がやりますから。実際に来てみたら、ちゃんとできているというものも結構ありました。ここを一次でやりなさいと言われると、かなりしんどいでしょうね。スパイロは、かなりの個人差、上手下手がありますので。
○和田委員 じん肺健診では普通やります。所見がある人は、みんなやっています。スパイロメーターで見られますから。
○大前委員 プレゼンで初見ではやれないのです。2回目、3回目は慣れるからうまくなると思うのですが、最初は、慣れない人だと大変です。
○和田委員 二次健診のところで、肺機能検査というのが出ていますが、これは何か処理しておいたほうがいい。「その他の肺機能検査」でもいい。その他といっても、フローボリューム検査ぐらいでしょうか。
○櫻井座長 特異的免疫グロブリンの測定は可能ですか。
○大前委員 それは測定可能だと思います。前にどこかの測定屋さんにお願いしたことがありますから。
○櫻井座長 先へ進みます。24頁のニトログリコール。これは全血比重、ヘマトクリット等を除く、ウロビリノーゲンを除くということですが、よろしいでしょうか。25頁も同様です。全血比重と尿中ウロビリノーゲンを除くとなっていますが、これもよろしいですか。
○和田委員 正式な名称は網赤血球で、「状」は省くのではなかったですか。内科学会ではどうでしたか。法律上こうなっていると言うのだったらいいのですが、「網赤血球」と「状」を取るか取らないか。
○櫻井座長 「網赤血球数」ですね。ありがとうございます。
 26頁、弗化水素につきましては、尿中ウロビリノーゲンを除くのと、全血比重、その他赤血球系の検査も除くとなっていますが、よろしいでしょうか。
 27頁のベンゼン、これは大きな変更があります。一次健診で、白血球の末梢血液像の検査、それから血小板数の検査を入れるということですが、いかがでしょうか。特段問題はございませんか。
 では先へ進みまして28頁、ペンタクロルフェノール及びそのナトリウム塩。これはウロビリノーゲンを除くだけですが、よろしいでしょうか。
 29頁が硫酸ジメチル。これも同様で、ウロビリノーゲンを除く。最後の30頁はMDI。これはTDIと全く同様の内容ですが、よろしゅうございますか。
 一通りご検討いただいて、一定の方向のご結論をかなりいただいておりますので、今日はこれでよろしいかと思うのですが、どういたしましょうか。
○石井専門官 はい、先生方から特になければ。本日はかなり我々のリクエストにお応えいただいてスピーディーにご検討いただきましたので、このご議論を踏まえて修正等をいたします。次回は今回の議論を踏まえて、漏れ等がないか再びご検討をいただければと考えております。
 なお、次回については既に日程調整をさせていただき、10月3日午前10時。場所がまだ決まっておりませんので、決まり次第連絡させていただきますので、どうぞ、よろしくお願いいたします。
○櫻井座長 今日はこれで終了いたします。
○和田委員 すみません、1つだけ。17頁のオルト-フタロジニトリルの見直し案の二次健診の4)で、胃腸症状がある場合というのは何を言っているのでしょうか。肝臓障害による消化器症状のことを言っているのですか。
○櫻井座長 オルト-フタロジニトリル、これはそういう報告があっただろうなと思うのです。
○和田委員 胃炎などを起こすという意味なのですか。
○櫻井座長 何か胃腸症状が。
○和田委員 胃炎とか、下痢したりとか。「胃腸症状」という言葉があり、それで、肝機能検査をやれというようなことを言っているので、何を言っているのか、よく分からなかったのですが、「医師が必要と認めるときは」で、「胃腸症状」は取ってしまっていいのではないですか。非常に紛らわしいですし。「胃腸症状」というと、胃の障害が来たり、下痢したり、普通はそういう場合を言うわけで、肝臓から来るものは「胃腸症状」と言うと、ちょっとおかしいのではないかと思うのです。ですから「医師の判断」でいいのではないですか。
○櫻井座長 「胃腸症状がある場合で」を除く。
○山田委員 むしろ「消化器症状」でしょう。
○櫻井座長 それもそうです。言われてみると、おかしいですね。ご指摘ありがとうございました。
○和田委員 ほかにも、もう1カ所「胃腸症状」というのが出ていたと思いますので、見ていただけますか。
○櫻井座長 はい。では、今日はこれで終了といたします。委員の先生方、どうもありがとうございました。


(了)

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