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2010年8月5日 第1回外ぼう障害に係る障害等級の見直しに関する専門検討会議事要旨

労働基準局労災補償部補償課

○日時

平成22年8月5日(木)15:00~17:00


○場所

経済産業省別館817号会議室


○出席者

参集者

山口委員(座長)、岩出委員、小賀野委員、松島委員

厚生労働省(事務局)

尾澤労災補償部長、河合補償課長、神保補償課長補佐、児屋野中央労災医療監察官

○議事

(1)労災補償部長の挨拶の後、事務局から各参集者の紹介があった。
(2)各委員の互選により、山口委員が座長に選出された。
(3)事務局から専門検討会開催要領について説明を行い、本検討会は原則公開とし、配付資料及び議事概要については公開する旨の説明があり、各委員が了承した。
(4)事務局から配付資料の説明があり、資料についての質疑が行われた後、資料6外ぼう障害に係る障害等級の見直しの論点(案)について、議論がなされた。各委員からの意見等主なやりとりは次のとおり。

(資料についての質疑)
○委 員 控訴断念と確定させた経緯を簡単に説明していただけないか。
○事務局 判決の趣旨を踏まえると、男女に差を設けていることについて、行政裁量を認めつつも国の立証責任があるとし、その立証責任を覆すに足る材料がないことと、社会通念の変化ということも考えられること、さらには数十年間変えていなかったということを踏まえ、これを契機に見直しを図ることとし、控訴をすることなく確定したものである。
○委 員 この問題に関連のあるような法律がいくつかあるが、代表的なものは雇用機会均等法。そこでは、男女の入職から退職までの差別をなくすようにしていたが、最初のころは規定の上での男女の取扱いの違いも女性差別をなくすという目的から許されていた。
     ところが、雇用機会均等法の目的が女性差別でなく性差別をなくするという一般的なものになり、男性のほうが不利に扱われているものも、雇用機会均等という観点からいくと問題があると指摘されるようになった。このような経緯などを考えると、無理にこの判決を争って控訴・上告しても、立証が難しい面があるし、果たして社会的に受容されるかどうかという点も疑問である。大局的な判断としてこの判決を受け入れようということになったのではないかと、私は理解している。
○委 員 この法律は、私が生まれる前にできた法律なので、いわゆる医療のレベルも、その当時は形成外科や美容整形外科などなかった時代に作られたものであるから、いろいろ問題点があるのではないかと思う。
○委 員 ドイツの場合、障害等級の評価について、医師が行っている。だから、日本のように行政当局が判定する障害等級表にはなっていない。
     フランスでは、社会保障法典に隣接して指標みたいなものができている。それも平均的な数字でこれを基にして専門医が決めることになっていて、具体的な数字はわからない。大体ドイツと似ているのではと推測されるが、フランスは労働不能度が5~30%ではないかと考えられる。これはイタリアでも同じようだ。
○委 員 イギリスの例で、非常に重篤な顔の毀損は100%であるが、各国ともに損傷率は手とか足とか顔とか器官(organ)ごとに書いてあり、顔面は皮膚のところに載っている。それを見ると、身ぶりを混じえないと話せない程度に醜状があるとかと書いてあるので、ものすごくひどい醜状ではないかと考えられる。
○委 員 神経欠損があると、しゃべれなくなる。だから、外ぼう云々ではなくて、そちらのほうが逆に機能が低下する、目が取れてしまったりすると見えなくなる。そういう意味では、医学的に言って、目が見えなくなった人はより障害が高度になるのは当然であり、醜状と機能障害を併合する、それで障害等級が高いということになっていると考えられる。
○委 員 諸外国の外ぼう醜状の取扱いについて概観をしていただいたが、日本の等級表では支給は一時金と年金に分けらている。醜状障害の場合、外国では基本的にはどちらに位置づけられていると考えればいいのか。
○委 員 例えばドイツの場合だと、20%以上が年金になるため、顔に関わる醜状障害のところで10%などと評価されたら、一時金で終わってしまう。だから、何パーセントと評価されるかによる。一時金の場合と年金の場合と両方あり得るということになる。
○委 員 日本は、自賠責は労災だったら年金になるものが、一時金で処理されている。民賠はどういう傾向にあるのか。
○委 員 民事の損害賠償請求の場合は、訴訟では一時金の請求が圧倒的に多い。部分的に定期金という判決が出る場合もまれにあるが、原告側が一時金で請求した場合は、裁判所は原則一時金で支払われている。
○委 員 ただ、民事賠償でいけば、現実に生じた損害と逸失利益でいった場合に、主婦などは逸失利益は厳密にはないのではないか。
○委 員 外で働いて収入を得るという意味での逸失利益でいうとゼロなのだろうが、家事労働を評価し、逸失利益が認められている。
○委 員 慰謝料180万になっている例があるが、男性の評価は低くなるのか。
○委 員 逸失利益が認められた例であり、慰謝料はやや少なくなったということではないか。民事の交通事故訴訟では、損害論は、弾力的に運用されており、また、慰謝料の補完的機能が働いているのだと思う。

(判決の趣旨の確認)
○委 員 障害等級表の本件差別的取扱いをされている部分が合理的な理由がなくて、憲法第14条第1項に違反すると判断しているが、障害等級表の本件差別的取扱いを定める部分というのは、具体的にはどの部分か。
○事務局 顔面全域にわたる瘢痕で、人に嫌悪の感を抱かせる程度に達しない外ぼうの醜状について、男女に差を設けていることが本件差別的取扱いという形で示されている。
○委 員 判決では7級と9級と、12級と14級について違憲であると考えていいのか。
○事務局 判決では、7級と12級との差について、具体的に問題にしていると考えられ、12級と14級については具体的に言及されていない。
○委 員 判決では「第7級と第12級のいずれが基準となるとも、その中間に基準を設定すべきであるとも、本件の証拠から直ちに判断することは困難である」と言っている。ここを医学的なきちんとした根拠に基づいてどう扱っていくか難しいところ。
○委 員 この判決は立証責任転換をしている。これ自身はどうなのか。通常なら、普通は原告が。
○委 員 原則としては裁量権があると言っていて、論理が二転、三転している。結論的には国に立証責任があるといって、理由は行政処分を取り消す訴訟だからということになっている。
○委 員 通常は被害者側、訴える側が立証責任があるのではないか。何か根拠があって初めて転換の法理が働くと思うので、そうしないといけない必然があったのかどうか。
○委 員 行政処分を争った取消訴訟で行政訴訟になる。行政訴訟になると、処分側が適法性を主張・立証しなければいけないようになる。国は行政処分をした側だから、被告になっている。それが適法性を主張・立証しなければいけなくなる。それは、行政訴訟のどうも特殊性のようで、行政事件訴訟法が根拠のようである。
○委 員 その場合、処分の適法性は法律なり法令等の根拠でしているということで通常は満たされるものだと思うが、本件の場合もきちんと労災保険法に則って、それに基づいて処分をしている。それ以上に、基の法令等の適法性というか、合憲性というか、そこまでのことが立証責任で転換されて、そもそも論で主張しないといけないのかどうかという問題があるのではないか。
○委 員 だから、おそらく国のほうは障害等級表に基づいて認定をしていますと言って、原告のほうは5等級も開きがあるのは不合理だよというものまでいっていないかもしれない。
○委 員 これは法律でなくて、委任された命令であり、行政側の判断だから普通の処分取消訴訟と同じように行政に立証責任がくるのはしょうがないと思う。

(男女差を解消する方向での障害等級設定の在り方)
○委 員 例えば5センチメートル以上の線状痕が残った場合、重くて7級と評価とあるが、70年以上前の法律に則って、その当時の医学的レベルで検討された基準であり、医学の発展により、現在5センチメートルの傷は形成外科的に対処しますと全く残らないと考えられることから、外ぼうの重い障害の評価や段階設定等、障害等級の見直しを行うに当たっては、形成外科ないしは美容整形外科の経験豊富な先生に、意見を求めるべきではないか。
○委 員 障害等級の全体の見直しのときに、外ぼうだけをどうして外してしまったのか。
○事務局 委員ご指摘のとおり、障害等級について計画的に見直しを行った経緯はあるが、各障害の機能障害について、最新の医学的知見を踏まえて障害等級の見直しを行ったものであり、外ぼう障害は医学的知見に基づく機能障害等の評価とは異質なものであったため見直しを行っておらず、まさに今回の判決での指摘を踏まえ検討会を開催させていただき、見直しを検討しようという形になったものである。
○委 員 顔面醜状を機能障害とは別に、外国でそういうことを扱っているような美的というか、審美的というかそういう独自のものとして考えるか、機能障害も含んだようなものとして表を作っていくのかで少し違いが出てくる。従来の障害等級では、審美的というのではなくて、機能障害の一種と考えたのではないか。労災保険であるから、労働能力や稼得能力の損失の補填、つまり結局女性だと受付とか、対人接遇の職業が多いので、就職機会、雇用機会が非常に狭くなる等を考慮し、それを能力の喪失として評価して一種の機能障害的な考えだったのではないか。機能障害と別に美的外観の損害だけで障害等級表を作るというのは、今までの障害等級の作り方と整合性がとれないのではないか。
○委 員 自賠責のほうではこの差はあまり問題にならないのか。7級と12級だったら、一時金だから形態は違うが、1,000万円と200何万円ですごく差がある。
○委 員 7級と12級で男女に差があるということは昔から指摘はされていた。ただし、一歩進んで具体的に改善するべきであるとの議論にまでは至っていなかった。ベースが労災保険のこの等級表に倣っているので、そこを頼りにしていたということもあるし、総合的に判断し総額で合理的であればいいということで、差し迫った不合理な問題としては、認識されていなかったようである。だから今回の見直しは交通事故実務にも大きな影響を与えることになると思う。
○委 員 外ぼう障害でも、熱傷の場合は非常に痕が爛れてしまう。そうすると非常にアグリーになる。現在、医学的に処置の仕方が随分良くなっているが、熱の度合によって皮膚から真皮、その下部まで駄目になってしまう場合がある。そうすると、外側から血管を付けた皮膚を移動したりする技術は進んでいますから、きれいになる場合も多いが、火傷の場合は障害が残ってしまう場合が多い。交通外傷の場合、大体骨が折れたりしますから、アグリーであるかどうかではなくどこか欠損している場合が多く、そちらの方が障害等級が高くなる。
○委 員 先ほどの機能障害のことであるが、改めて伝統的な機能障害の定義や概念をつき詰めてみるのも必要ではないか。、労災保険の等級ができたころに言われていた機能障害で言うと、醜状とその他の障害とは違うということでスタートしたと思う。しかし、労働環境もかなり変わってきているので、改めて今日、機能障害というのはどういうものであるかということを問い直してみるというのは重要ではないか。
     他の障害が生じておらず、醜状のみの障害の場合でも、現実の労働の市場の中で非常に制約を受けている不利益があるので、それをどう考慮するかということも検討していくべきではないか。
○委 員 これは、おそらく従来の障害等級表も考慮していた要素ではなかったかと思う。障害等級表の由来というのを調べてみて、フランスにおける兵士に対する年金、恩給制度を作った際、障害等級表を作って、きちんと顔面醜状というのが載せていた。兵隊でなぜ顔面醜状かといったら、国王の衛兵は格好よくないとなれない。顔面に醜状があると衛兵になれない。これは、兵隊の憧れらしく、それで障害等級表に顔面醜状が載ったということが注に書いてあった。軍人の場合は鉄砲を打てなくなったら大変だから、利き腕の損傷というのは恩給では高い損傷として評価されていた。だから、顔面醜状も、戦闘能力ではどうかわからないが、兵隊の広い意味での職域制限を評価して障害等級表に入れていたのだと思う。労働者の場合も、対人サービスや営業という所での職域がかなり狭まる要素があれば、それは一種の労働能力の損失だという評価していいのではないか。
○委 員 障害等級の設定を2段階や3段階の議論は、中間の等級が入ると不利益な面も出てくる。男女平等にするからそこはしょうがないということになるのか。
○委 員 今の議論は7級を維持するか、9級とかを新設するのかという、大変重要な問題。だから、平等でどこに打つかという過程の中において、実際に7級が妥当なのかどうか、現代の医療の専門家の方のご意見を伺った上でないと判断できない。
○委 員 先ほど来の議論で、そもそも女性7級が妥当だったのかということが問題になる。
7級になると年金で、8級だと一時金になる。その他の障害との比較均衡が必要であり、7級で年金という位置づけが本当に合理的であったのかという、厳しい問いかけも必要かもしれない。

(男女差を残すべきやむを得ない事情の存否)
○委 員 もともとこの障害等級表は合理的だったと思う。それでずっと来たが、時代の流れで男女差を解消する方向に全体としてきているのではないか。その各論としての問題が、今回判決という形で出た。そういう理解でいいのではないかと思う。


(了)
<照会先>

労働基準局労災補償部補償課業務係

(担当)課長補佐 神保: 03(5253)1111(内線5462)

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