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2014年2月26日 第56回労災保険部会議事録

労働基準局労災補償部労災管理課

○日時

平成26年2月26日(水)17:00~


○場所

厚生労働省専用第12会議室(12階)


○出席者

委員

岩村 正彦 (東京大学大学院法学政治学研究科 教授)
大前 和幸 (慶応義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室 教授)
小畑 史子 (京都大学大学院人間・環境学研究科 教授)
黒田 正和 (日本科学エネルギー産業労働組合連合会 事務局長)
齊藤 惠子 (UAゼンセン 政策・労働条件局部長)
新谷 信幸 (日本労働組合総連合会 総合労働局長)
田口 正俊 (全国建設労働組合総連合 書記次長 )
立川 博行 (全日本海員組合 中央執行委員国際・国内政策局長)
明石 祐二 (社団法人日本経済団体連合会 労働法制本部主幹)
桐明 公男 (一般社団法人日本造船工業 常務理事)
小島 政章 (株式会社竹中工務店 生産本部技師長)
田中 恭代 (旭化成アミダス株式会社 代表取締役社長)
山中 一馬 (新日鐵住金株式会社 人事労政部部長)

○議題

(1)行政不服審査法改正に伴う関係法律の改正(諮問)
(2)労働者災害補償保険法施行規則の一部改正(諮問)
   (職場意識改善助成金テレワークコース新設に伴う改正)
(3)労働保険料の納付期限等の延長措置(東日本大震災関係)の終了(報告)
(4)独立行政法人改革について(報告)

○議事

○岩村部会長 それでは、皆様お揃いですので、ただいまから第 56 回労災保険部会を始めます。本日は公益委員で荒木委員、中窪委員、永峰委員、労働者側の委員で吉村委員、そして使用者側委員の齋藤委員が御欠席ということです。

 早速本日の議事に入ります。お手元の議事次第にありますように、議題の 1 番目は「行政不服審査法改正に伴う関係法律の改正」です。本件は諮問案件です。それでは、事務局から説明を頂きます。

○労災管理課長 行政不服審査制度に関しましては、政府全体として見直しが進められてまいりました。特に近年では昭和 20 年に行政不服審査法の改正法案などが国会に提出されましたけれども、衆議院解散で審議未了・廃案となった経緯があります。その後も総務省を中心に関係団体や各省庁がヒアリングを行うなど、検討が進められており、パブリックコメントの手続を経て、資料 21 ページのとおり、平成 25 6 月に政府全体の見直し方針がまとめられました。行政不服審査制度の見直し方針は総務省の作成資料で、概要を示したものです。諮問要綱の説明の前に、その前提として全体の答申について、御説明させていただきます。 21 ページの中ほどにありますように、見直しの考え方は1公平性の向上、2使いやすさの向上、3国民の救済制度の充実・拡大という観点からの見直しというもので、今後この見直し方針に沿って 300 以上の関係法律の見直しを行い、次期通常国会、これは 25 年の 9 月の資料ですので、今の通常国会ですが、通常国会への法案提出を目指し、そして成立 2 年以内に新制度に移行するというものです。

22 ページ、主な見直し内容として、公正性の向上という点では、 (1) 審理において、職員のうち処分に関与しない者が両者の主張を公正に審理する。審理には処分に関与しない者が当たるということとされます。 (2) 裁決について、有識者からなる第三者機関が点検するという仕組みが置かれます。後ほども説明しますが、労働保険の給付に関する処分の不服に関しましては、審査請求、再審査請求という二審制の構造を維持しますので、この第三者機関は関与しません。労働保険の給付に関する審査については、この第三者機関は関与しませんが、一般的な審査請求の手続きに関しては裁決前の諮問答申の手続が設けられるというものです。

23 ページ、 2 ・使いやすさの向上という点ですが、ここでは (1) 不服申立ての期間を 60 日から 3 か月に延長する、 (2) 不服申立ての手続について、今の法律では「異議申立て」と「審査請求」と 2 種類ございますが、これを「審査請求」に一元化すること、 (3) で裁判の前に行政手続としての不服申立てが必要であるとする不服申立前置の仕組みを見直すこと。そのほかにも手続の円滑化、充実等を図る観点からの見直しも行われます。

3 点目は行政手続法の改正関係ですが、こういった行政不服審査制度全体の見直しに合わせて、労働保険関係の手続について見直しを行うというものです。

 もう 1 つ前提として、 16 ページの「審査請求の流れ」を御覧ください。左側の労働保険の給付に関する処分についての現行の取扱いです。労働基準監督署長の処分について、不服があれば1で都道府県労働局におかれる労働保険審査官に審査請求を行い、その決定に不服があれば3中央の労働保険審査会に再審査請求を行い、さらにその裁決に不服があれば、5で裁判にいくというのが現在の流れです。二審制で裁判までにはその前に 2 段階の手続が必要というものです。なお、決定などが遅くなった場合に備えて、例えば 3 か月経っても2の決定が出なければ、3の再審査請求にいける。そして 3 か月経っても4の裁決が出ない場合には5の裁判にいけるという規定も置かれています。

 以上のことを前提として、少し長くなりますが、まず改正案の要綱を読み上げ、続いて労災保険関係と徴収法関係の見直しに関して御説明をさせていただきます。

○労災管理課長補佐 ( 企画 )  読み上げさせていただきます。資料の 1 ページを御覧ください。資料 1 です。厚生労働省発基労 0226 1 号、労働政策審議会会長樋口美雄殿。別紙「行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案 ( 労働者災害補償保険法等の一部改正関係 ) 要綱」について、貴会の意見を求める。平成 26 2 26 日、厚生労働大臣田村憲久。

 次に別紙を御覧ください。行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案 ( 労働者災害補償保険法等の一部改正関係 ) 要綱。

 第 1. 労働者災害補償保険法の一部改正。 1. 保険給付に関する審査請求をしている者は、当該審査請求をした日から 3 月を経過しても決定がないときは、労働者災害補償保険審査官が、審査請求を棄却したものとみなすことができるものとすること。 2. 保険給付に関する処分の取消しの訴えは、当該処分に関する審査請求に対する労働者災害補償保険審査官の決定を経た後でなければ、提起することができないものとすること。 3. その他所要の規定の整備を行うものとすること。

 第 2. 労働保険審査官及び労働保険審査会法の一部改正。 1. 審査請求。 (1) 労働保険審査官の除斥事由。労働保険審査官 ( 以下「審査官」という。 ) は、審査請求に係る処分に関与した者等以外の者でなければならないものとすること。

(2) 標準審理期間。厚生労働大臣は、審査請求がされたときから当該審査請求に対する決定をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、都道府県労働局における備付けその他適当な方法により公にしておかなければならないものとすること。

(3) 審査請求の期間。審査請求は、正当な理由があることを疎明したときを除き、審査請求人が処分があったことを知った日の翌日から起算して 3 月を経過したときは、することができないものとすること。

(4) 審査請求の手続の計画的進行。審査請求人、原処分をした行政庁、審査請求の結果について利害関係のある行政庁その他の第三者 ( 以下「利害関係者」という。 ) 厚生労働大臣に指命された関係労働者及び関係事業主を各々代表する者 ( 以下「参与」という。 ) 並びに審査官は、簡易迅速かつ公正な審理の実現のため、審査請求の手続において、相互に協力するとともに、審査請求の手続の計画的な進行を図らなければならないものとすること。 (5) 口頭による意見陳述。イ . 審査官は、審査請求人又は審査請求があったことについて審査官から通知を受けた利害関係者からの申立てがあったときは、意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合を除き、当該申立てをした者 ( 以下「申立人」という。 ) に口頭で意見を述べる機会を与えなければならないものとすること。ロ . イの意見の陳述 ( 以下「口頭意見陳述」という。 ) は、審査官が期日及び場所を指定し、利害関係者を招集してさせるものとすること。ハ . 口頭意見陳述において、審査官は、申立人のする陳述が事件に関係のない事項にわたる場合その他相当でない場合には、これを制限することができるものとすること。ニ . 口頭意見陳述に際し、申立人は、審査官の許可を得て、審査請求に係る事件に関し、原処分をした行政庁に対して、質問を発することができるものとすること。

(6) 文書その他の物件の提出。イ . 審査請求人、審査請求があったことについて審査官から通知を受けた利害関係者及び参与は、証拠となるべき文書その他の物件を提出することができるものとすること。ロ . 原処分をした行政庁は、当該原処分の理由となる事実を証する文書その他の物件を提出することができるものとすること。ハ . イ及びロの場合において、審査官が、文書その他の物件を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならないものとすること。

(7) 審理のための処分。審査官は、審理を行うため必要な限度において、審査請求人、審査請求があったことについて審査官から通知を受けた原処分をした行政庁、利害関係者若しくは参与の申立てにより又は職権で、文書その他の物件の所有者、所持者又は保管者に対し、相当の期間を定めて、当該物件の提出を命ずる等の処分をすることができるものとすること。

(8) 特定審査請求手続の計画的遂行。審査官は、審査請求に係る事件について、審理すべき事項が多数であり又は錯綜している等事件が複雑であることその他の事情により、迅速かつ公正な審理を行うため、 (5) (6) 及び (7) の審査請求の手続 ( 以下この (8) において「特定審査請求手続」という。 ) を計画的に遂行する必要があると認める場合には、期日及び場所を指定し、審査請求人又は原処分をした行政庁、利害関係者及び参与を招集し、あらかじめ、特定審査請求手続の申立てに関する意見の聴取を行うことができるものとすること。

(9) 審査請求人等による文書その他の物件の閲覧。イ . 審査請求人又は原処分をした行政庁、利害関係者及び参与は、決定があるまでの間、審査官に対し、 (6) 及び (7) により提出された文書その他の物件の閲覧 ( 電磁的記録にあっては記録された事項を厚生労働省令により定めたところにより表示したものの閲覧 ) 又は当該文書の写し若しくは当該電磁的記録に記録された事項を記載した書面の交付を求めることができるものとすること。この場合において、審査官は第三者の利益を害する恐れがあると認めるとき、その他正当な理由があるときで無ければ、その閲覧又は交付を拒むことができないものとすること。ロ . イの交付を受ける審査請求人及び利害関係者は、政令で定めるところにより、実費の範囲内において政令で定める額の手数料を納めなければならないものとすること。ただし、審査官は、経済的困難その他特別の理由があると認めるときは、政令で定めるところにより、手数料を減額し、又は免除することができるものとすること。

2. 再審査請求等。 (1) 秘密保持義務。労働保険審査会 ( 以下「審査会」という。 ) の委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならないものとすること。その職を退いた後も同様とすること。

(2) 再審査請求期間。再審査請求は、審査請求の決定の謄本が送付された翌日から起算して 2 月を経過したときは、することができないものとすること。

(3) 参加。イ . 再審査請求への参加は、代理人によってすることができものとすること。ロ . イの代理人は、各自、当該再審査請求への参加に関する一切の行為をすることができるものとすること。ただし、再審査請求への参加の取下げは、特別の委任を受けた場合に限り、することができるものすること。

(4) 意見の陳述。イ . 意見の陳述は、審査会が審理期日に、全ての当事者を招集してさせるものとすること。ロ . イの意見の陳述において、審査長は、当該申立てをした者のする陳述が事件に関係のない事項にわたる場合、その他相当でない場合には、これを制限することができるものとすること。ハ . イの意見の陳述に際し、当該申立てをした者は、審査長の許可を得て、再審査請求に係る事件に関し、原処分をした行政庁に対して、質問を発することができるものとすること。

(5) その他。 1 (2) (4) 及び (6) から (9) までの規定を再審査請求においても準用するものとすること。

3. 罰則。審査会の委員である者又は委員であった者で、 2 (1) に違反して、職務上知り得た秘密を漏らした者は、 1 年以下の懲役又は 50 万円以下の罰金に処するものとすること。

4. その他。その他所要の規定の整備を行うものとすること。

 第 3. 労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正。 1. 概算保険料及び確定保険料の額の決定に関する処分に係る異議申立てを廃止するものとすること。 2. 労働保険料その他この法律の規定による徴収金に関する処分の取消しの訴えに係る不服申立前置を廃止するものとすること。

 第 4. 石綿による健康被害の救済に関する法律の一部改正。 1. 一般拠出金の額の決定に関する処分に係る異議申立てを廃止するものとすること。 2. 一般拠出金等の徴収に関する処分の取消しの訴えに係る不服申立前置を廃止するものとすること。

 第 5. 附則。 1. 施行期日。これらの法律は、行政不服審査法の施行の日 ( ) から施行すること。 ( ) 行政不服審査法の施行期日は、公布日から起算して 2 年を超えない範囲内で政令で定める日とされている。 2. 経過措置。これらの法律の施行に関し必要な経過措置を定めること。以上でございます。

○労災管理課長 続きまして資料の説明をさせていただきます。 16 ページの右側の図を御覧ください。労働基準監督署長の処分に不服があった場合の1の審査請求は同じですが、2の決定の後の3が 2 つございます。2の決定に不服がある場合、これまでは再審査請求、裁判と段階を踏む必要がありましたが、審査会への再審査請求も裁判所への出訴もいずれも可能とするものです。そういう意味で3が 2 つございます。これについては、不服申立ての前置の見直しという全体の方針に沿ったものです。

 そのほか、手続面でも行政不服審査制度の全体の見直しと同様の見直しを行うこととしており、具体的には「改正後」の下の「厚生労働大臣」の下に「標準審理期間の設定 ( 努力義務 ) 」とあります。その中央に太線で囲って書いておりますが、手続の充実ということで、口頭意見陳述の充実、複雑困難事案である特定審査請求手続に関して、関係者の意見を聴取して、計画的に進行を図るという規定の創設、文書等の物件の閲覧や、写しの交付の請求ができるといった規定が置かれます。審査請求の期間についても、従来は 60 日だったものが 3 か月に延長されます。再審査請求につきましては、行政不服審査法の見直しでは 1 か月となる予定ですが、審査会では現在 60 日ですので、ここは 2 か月とするとしております。審査会での再審査請求の手続に関しても、下の※ 2 に書いてありますが、口頭意見陳述の充実など、手続の充実が図られます。なお、審査請求をして2の決定が出るのが遅くなった場合の対応ですが、先ほど読み上げました要綱の一番最初に出てきましたが、 3 か月を経過しても2の決定がないときには、棄却とみなすことができるという規定を置くこととしており、 3 か月経てば棄却とみなされるので、再審査請求にもいけるし、裁判にもいけるという仕組みになります。

13 ページを御覧ください。 2 の「労災保険関係の改正法律」という所です。1の労働保険審査官及び労働保険審査会法、2労働者災害補償保険法の関係では、先ほどの図のところで御説明申し上げた内容の改正を行う予定です。要綱にありました処分に関与した職員でない者が審査をするというような行政不服審査制度全体の見直しと並びをとった見直しを行います。

14 ページを御覧ください。3の労働保険の保険料の徴収等に関する法律の関係では、要綱の中にもありましたが、概算保険料、確定保険料に関して、申告書を提出しないような場合に、政府が保険料を決定するという規定があるのですが、これに対しては現在異議申立てができることとされています。これについて全体の方針を踏まえて、異議申立てを廃止するというものです。異議申立てを廃止するということは、即ち一般の行政不服審査の手続によって、審査請求をするということになります。これも全体の方針を踏まえたものですが、保険料や延滞金などの徴収金に関して、不服申立ての前置が廃止されます。すぐに裁判にいけるようにするというものです。

 4の石綿健康被害救済法の関係では、石綿による健康被害の救済のために支給される給付に要する費用に充てる一般拠出金、これは事業主から労災保険の保険料と併せて徴収されますので、3の徴収法同様に、異議申立てや不服申立前置の規定がございます。これを同様に廃止をするというものです。これを今国会への提出をして、公布後 2 年以内に施行する予定です。

15 ページは、冒頭に平成 20 年に法案が国会に提出され、審議未了で廃案になったということを申し上げましたが、 20 年の法案との比較です。ほぼ同様ですが、今回の案では、一番上が変わっております。 20 年法案では、審査官、審査会の二審制を見直し、審査会への審査請求を基本とするという仕組みで考えられていましたが、今回の改正案では、審査会及び審査官、この二審制を存置するということになりましたので、その点が違います。それとも関連しますが、審査請求の後、再審査請求か裁判か選択できるという点も違います。

17 ページからはその他、現状についての参考資料も付けております。 17 ページは労災の請求から審査請求、再審査請求までの一連の流れです。 18 19 ページは、現在の審査請求、再審査請求の件数です。件数でいいますと、 18 ページは、都道府県の審査官の関係で、参考の所の数字ですが、請求件数は年間 2,000 件近い請求があります。決定はとなりますと、上の表の決定の欄の小計の一番右の計で見ますと、毎年 1,600 1,700 件代の決定が行われています。 19 ページの審査会に関しては、審査会への再審査請求は、毎年 500 600 件代の請求があり、裁決についても 600 700 件代の裁決があるという状況です。なお、いずれも取消しとありますのが、原処分などの取消しです。即ち審査請求、再審査請求を認めたということになります。毎年大量で、しかも専門的な事案を迅速かつ適切に処理する仕組みとして、保険給付についての処分に関する、現在の二審制がありますので、今回もこの二審制を基本的に維持して、併せて政府全体の方針に沿って手続の充実などを図るというのが今回の見直しになっております。長くなりましたが資料の説明は以上です。

○岩村部会長 ただいま行政不服審査法改正に伴う関係法律の改正に関して、事務局から資料に基づき御説明いただきましたが、これについての御意見、あるいは御質問がありましたらお出しいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○新谷委員 難しい内容を分かりやすい資料で御説明いただいたと思います。昭和 37 年の行政不服審査法の制定以来の改正が総務省を中心に行われるということですが、 21 ページの資料にもありますように、公正性の向上、使いやすさの向上、国民の救済手段の充実・拡大といった目的に沿って、総務省が見直し方針の取りまとめをされたということです。この中身を見てみますと、不服申し立てをすることのできる期間の延長であるとか、不服申立前置の見直しといった面については、処分を受ける側である国民にとって非常にメリットがあるのではないかと思います。

 また、労災保険法の改正も盛り込まれていますが、やはり被災された労働者の方、あるいは亡くなった方の御遺族の方の必死の思いが、労働保険審査官への審査請求件数、労働保険審査会への再審査請求件数につながっていると思います。今回の労災保険法の見直しについては、総務省の見直し方針を受けまして、審査請求期間の延長であるとか、不服申立前置の見直し等々の制度の改善が盛り込まれていると思います。

 特に労働保険審査会への再審査請求期間について、行政不服審査法の見直しの内容が 1 か月とされているところを、現行の期間である 2 か月を維持するという部分については、労働者のメリットになると思っておりますので、全体的に見れば、見直しの方向として、今回の見直しの目的として出されている公正性であるとか、国民の利便性の向上につながるのではないかという印象を持っております。今通常国会に法案が出されるということですが、 20 年法は成立しなかったわけです。今回、この方向で法案が成立するように、総務省を中心に働きかけをされるのだと思いますが、是非進めていただければと思います。また、法案が成立した後、 2 年以内に新しいスキームに移行するということですが、もともと行政不服審査法自体が、分かりにくい、国民にあまりなじみのない法律ですので、改正内容と併せまして、労災保険分野での周知徹底を図っていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。諮問案件ですので、労働側としてこの内容については了承したいと思います。以上です。

○岩村部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、諮問のありました件については、この部会としては妥当と認める旨を労働条件分科会に報告したいと考えますが、それでよろしいでしょうか。

( 異議なし )

○岩村部会長 それではそのようにさせていただきます。報告文につきましては、私に一任させていただくということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、そのように取りはからうことといたします。

 次に、議題の 2 番です。こちらも諮問案件で、「労働者災害補償保険法施行規則の一部改定」についてです。事務局で資料を用意していただいていますので、御説明をお願いします。

○労災管理課長 まず、省令案の要綱について読み上げた上で、内容については担当の労働条件政策課から説明を申し上げます。

○労災管理課長補佐 ( 企画 )  資料 2 31 ページです。厚生労働省発基労 0226 2 号、労働政策審議会会長樋口美雄殿。別紙「労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱」について、貴会の意見を求める。平成 26 2 26 日、厚生労働大臣田村憲久。別紙、労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱。第 1. 職場意識改善助成金の支給要件の追加等。職場意識改善助成金の支給に当たり、労働者災害補償保険法施行規則 ( 昭和 30 年労働省令第 22 ) 28 条第 1 号ロの規定に基づき作成が求められる労働時間等の設定の改善のための措置を記載した計画として、情報通信技術を活用した在宅勤務 (1 週間に 1 日以上在宅勤務を行うものに限る。 ) を可能とする措置を記載した計画を追加するとともに、当該計画を届け出た場合の支給の認定は、厚生労働大臣が行うものとすること。

 第 2. 施行期日。この省令は平成 26 4 1 日から施行するものとすること。以上です。

○労働条件政策課調査官 続きまして、内容について説明します。お手元の資料の 35 ページです。参考 2-1 、労働者災害補償保険法施行規則の一部改正についての資料です。こちら今般の改正内容についてまとめたものです。

 今般の改正の趣旨ですが、テレワークについては、これまでも他省庁とともに厚生労働省においても、普及促進に取り組んできているところですが、政府全体として、昨年閣議決定もなされるなど、これまで以上にテレワークの普及促進を図ることとされています。

 これを受け、テレワークの普及促進策を拡充する 1 つとして、今般、労働時間等の設定の改善のため、週 1 日以上終日在宅でのテレワークに取り組む中小企業事業主を対象として、既存の職場意識改善助成金の新たな助成コースとして、テレワークコースを設けることとしました。

 このコースの事務処理については、情報通信技術を始めとしたテレワークに関する高度な専門性が求められるため、既存のコースにおいては都道府県労働局が事務処理を行っていましたが、このコースについては厚生労働本省において実施をし、中小企業事業主からの申請に対し、厚生労働大臣が認定を行う必要があると考えています。

 このため、認定を行う者として厚生労働大臣を追加する必要があり、労働者災害補償保険法施行規則の改正が必要となったことから諮問をさせていただくものです。また、資料 36 ページはテレワークコースの概要についてです。助成の目的については、週 1 回以上終日の在宅テレワークを導入する中小企業に対して導入経費等の一部を助成することとしています。

 助成の対象としては、テレワーク導入経費・テレワーク運用経費、また導入のためのコンサルタント費用のほか、テレワークの導入のための就業規則労使協定等の作成変更費用や労働者に対する研修、周知啓発費用といったものも対象としています。

 また、助成率については 2 分の 1 、助成額は事業主が事業実施計画で定めたテレワーク実施対象労働者 1 人当たり 4 万円又は 1 企業当たり 100 万円のいずれか低い方の額を上限としてます。また、追加助成の欄にある 2 つの目標を達成した場合には、助成率 4 分の 3 、上限額は事業主が同様に事業実施計画で定めたテレワーク実施対象労働者 1 人当たり 6 万円又は 1 企業当たり 150 万円のいずれか低い方の額を上限としています。施行時期については、本年 4 1 日を予定しています。説明は以上です。

○岩村部会長 ありがとうございました。ただ今事務局から説明をいただきましたが、これについて御意見、御質問がありましたらお出しいただきたいと思います。

○齋藤委員 テレワークについては、ワーク・ライフ・バランスや多様な働き方につながる制度として、それ自体を否定するものではないですが、労働者の勤務時間帯と日常生活時間帯が混在せざるを得ない場合があるなど、従来の労務管理では対応が難しい面もあることに十分留意をする必要があると思います。

 特に、在宅勤務では労働時間管理や労働安全衛生などに関する労務管理が行き届きにくくなり、それらに係る責任の所在が曖昧になる恐れがあります。企業から過重なノルマや成果を課されたり、更には賃金が出来高払いというようなことになれば、長時間労働や深夜労働を助長することにもなりかねません。テレワークが企業の単なるコスト削減策として用いられることのないよう、制度の導入に当たっては、導入の目的や対象となる業務、労働者の範囲、労働時間管理の方法などについて労使で十分に協議を行う必要があると考えています。

 また、実際にテレワークを行うかどうかについては、本人の意思が尊重されるべきであると思っています。加えて、テレワークで働く労働者の個人情報などが漏えいすることのないよう、情報通信におけるセキュリティ対策や危険性の周知についても徹底していくことが不可欠であると考えています。

 テレワークの推進や導入経費の助成金の創設は、こうした課題への対応が適切になされることが前提となるべきであり、今後の進め方に十分御留意いただくとともに、必要な対策を講じていただくようお願いします。以上です。

○岩村部会長 何か事務局ありますか。

○労働条件政策課調査官 ただ今御指摘をいただいた点について、我々としても、ガイドラインやセミナーなど、そういったところで十分周知をして適切にテレワークを推進していきたいと考えています。

○岩村部会長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。ほかにはいかがですか。

○田中委員 テレワークを推進しよう、促進しようという政府の御意向はよく分かりますが、何でこれを労災保険勘定でやるのかが、正直言ってあまりピンとこないというのが 1 つと、これは多分社会復帰促進事業の予算から出ると思いますが、社会復帰促進事業の中で、労災病院と未払賃金を除くと、億を超える予算はたくさんはなかったと思います。そういう意味で、平成 26 年度まだ予定額だと思いますが、 5 億という金額が社会復帰促進事業の中のどのぐらいの規模を占めているのかということと、併せてモニタリングをしていくときのアウトカム指標なりは、非常に難しいような気がしますが、どのようなことを想定され、今回これを予算に入れたのか。一番知りたいのは、何でこれが労災保険勘定なのかです。それについて教えていただければと思います。

○岩村部会長 では、御質問なのでよろしくお願いします。

○労働条件政策課長調査官 労災勘定となっている理由ですが、テレワークについては通勤がなくなるとのことで通勤災害の減少が図られるとのことがあります。テレワークという働き方については、適切な労働環境の下における推進を図ることで考えています。こうしたことから、これまで労災勘定とさせていただいていると考えています。

2 点目のテレワークコースの占める社会復帰促進事業等事業費におけるパーセンテージですが、事業費全体におけるパーセントとしては 0.7 %です。

 目標については、今回このコースは初めてですが、助成金の中の既存のコースの件数を参考に設定をしていきたいと考えています。詳細な数字については精査中ですが、設定を考えています。以上です。

○岩村部会長 よろしいでしょうか。

○田中委員 今の 0.7 %は、労災病院関係と未払賃金を全部外した額の中のパーセントでよろしいですか。

○労働条件政策課調査官 これは全体を含んでいます。未払賃金の分を除くと 0.97 %です。労災病院を外した数字は今はすぐには出てきません。

○田中委員 まだ、これから予算の議論だと思いますが、トータルをずっと抑えてきている中で、これが入ってきたら何かを外すという話に当然なるかと思います。その辺がよく見えなくて、これが突然新設でといただいたので、とまどっているのが正直なところです。これは感想としてお聞きいただければ結構です。

○岩村部会長 では、管理課長お願いします。

○労災管理課長 社会復帰促進等事業に関しては、 PDCA サイクルで不断のチェックを行い、予算の精査、必要性の精査をするという観点で社会復帰等促進事業に関する検討会で御議論をいただくとともに、この労災保険部会でも御議論をいただいています。

 昨年秋の社会復帰促進等事業の検討会でも、別の事業に関して田中委員から同様の趣旨の御意見をいただき、担当からのお返事に加え、私からもこの先十分配慮したい旨をお答え申し上げました。

 改めて、同趣旨の御指摘を賜りまして、予算面などいろいろな現実的問題もありますが、労災保険法の趣旨に沿った運用を意識していきたいと思っています。これからも引き続きよろしくお願いします。

○岩村部会長 よろしいでしょうか、ほかにはいかがですか。御意見、御質問はありましたが、本諮問案件については御了承をいただけることと考えますが、それでよろしいでしょうか。

                                   ( 異議なし )

○岩村部会長 ありがとうございます。当部会としては、この諮問案件については妥当と認めることで、その旨を労働条件分科会に報告したいと考えます。御了承をいただいたとさせていただきます。報告文ですが、これについては私に御一任いただくということでよろしいですか。ありがとうございます。では、そのように取り計らうことにします。

 次の議題です。議事次第にある 3 番目の議題は、「労働保険料の納付期限等の延長措置 ( 東日本大震災関係 ) の終了」についてです。報告案件です。事務局から説明をいただきます。よろしくお願いします。

○労働保険徴収課長 労働保険徴収課長です。それでは私から、お手元の資料 39 ページの資料 3 について説明をします。

 本件は、東日本大震災の関係で、労働保険料についてもこれまで様々な特例措置を講じてきています。それが納付期限の延長措置の終了ということで報告をします。概要の所に書いてますが、東日本大震災による被害が大きかった青森、岩手、宮城、福島、茨城の 5 県については、平成 23 3 11 日以降に期限を迎える労働保険料等の申告・納付期限延長を行っていました。その後、順次何回かに分けて延長後の納付期限等の指定を行ってきました。いずれも国税の措置を踏まえて実施をしてきています。今般、納付期限の延長措置として残っている対象が、今回の対象になっている福島県の 12 市町村です。

 今般、国税庁が福島県の 12 市町村、具体的な 12 市町村は 42 ページに資料で付けていますが、国税庁が福島県の 12 市町村について、平成 26 3 31 日で延長措置を終了するという告示をしたことを受け、労働保険料等についても同日納付期限を指定する告示を行ったところです。なお、さらに 3 31 日までに労働保険料等を納付することが困難な事業主については、申請により、納付期限等を更に 1 年間延長される場合があります。 2 17 日に告示をしています。資料の説明は以上です。

○岩村部会長 ありがとうございました。ただ今説明をいただいた案件ついて、御意見あるいは御質問がありましたらお出しいただきたいと思います。いかがですか、よろしいですか。ありがとうございます。

 それでは次の議題です。議事次第の 4 番目です。これも報告案件です。「独立行政法人改革について」です。事務局から説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○労災管理課長 資料は 47 ページです。前々回の労災保険部会のときに、独立行政法人の見直しが行われており、厚生労働省としては、労災保険に関係する労働者健康福祉機構について、労働災害防止に係る研究成果を就労現場での労災疾病予防から事業職場復帰支援に一貫して活かせることのできる体制を構築するために、労働安全衛生総合研究所との統合の方向で説明を行っているという旨報告を申し上げました。

 その後、 47 ページの資料のとおり、平成 25 年の 12 24 日に閣議決定が行われました。労働安全衛生総合研究所と労働者健康福祉機構については、 2 法人を統合し、中期目標管理型の法人とする等を整理されました。中期目標管理型ということは、中期目標で管理をしていく法人という点で、現在の独立行政法人と同様の枠組みです。

 また、 2 つ目の○です。産業保健支援に関する事業と日本バイオアッセイ研究センターの事業については、統合法人の業務として集約するということとされました。この関係で、現在産業保健推進センターについて「ブロック化」を行っており、その方針を見直すとともに関連する組織・予算の徹底した合理化を行うことも求められています。

3 つ目の○です。労災病院については、累積欠損金があるということもあり、本部が各病院の運営実態を的確に把握し、内部統制が有効に機能する体制の構築、信頼性ある病院運営・指導体制の確立が求められました。これらの統合などの実施時期ですが点線の下で、平成 27 4 月以降可能な限り早期にということで、具体的な時期については、この平成 26 年の夏を目途に政府の行政改革推進本部において決定することとされています。現時点では未定です。

 独立行政法人制度に関しては、個別の法人のあり方だけではなく、制度そのものも議論をされており、その概要について 49 ページに、内閣官房が整理した資料を付けています。これらは独立行政法人通則法の改正などにより実施をされます。1業務の特性に応じた法人の分類があります。独立行政法人を 3 つに分類することとされました。 1 つ目は、中期目標管理法人、これは労福機構と安衛研の統合法人も 1 つ目の中期目標管理型にするという整理です。今の 3 から 5 年の中期目標で管理をしていく法人で、今の独立行政法人の枠組みとほぼ同様です。 2 つ目が、単年度管理型、 1 年間で菅理をする所。 3 つ目が、研究開発型。この 3 つに分類とされました。

 2で主務大臣による効率的かつ実効性の高い目標・評価で、従来は大臣が目標を定めて結果の評価は、独立行政法人評価委員会が行っておりましたが、これを目標設定も、その評価も大臣自らが行うというものです。3で、ガバナンスの強化として、監事の権限の明確化や機能の強化などが図られることとされました。4で、予算執行の弾力化を図るとともに、法人による説明責任や透明性の向上を図ることとされました。5は、研究開発法人の関係です。

 もう 1 つ参考で 50 ページです。今回の改革におけるほかの個別の法人についての概要です。これは、ほかの法人はどうだったのかを御参考までです。 51 52 ページには、前々回のときにも付けていましたが参考として、労働者健康福祉機構の概要と労働安全衛生研究所とバイオアッセイ研究センターの概要について参考として付けています。以上、独法関係について閣議決定がされたことを報告させていただきました。以上です。

○岩村部会長 ありがとうございます。では、ただ今御説明をいただいた独立行政法人改革関係について御意見、御質問があればお願いしたいと思います。いかがですか、よろしいですか。それでは、特に御意見、御質問はないということです。

 本日予定した議題は以上です。これをもちまして、本日の部会は終わりとさせていただきます。議事録の署名委員は、労働者代表については齋藤委員に、使用者代表については明石委員にそれぞれお願いをします。それでは、部会はこれで終了とします。お忙しい中、今日はありがとうございました。


(了)

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