ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医薬・生活衛生局が実施する検討会等> シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会> 第18回シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 議事録(2014年3月17日)




2014年3月17日 第18回シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 議事録

医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室

○日時

平成26年3月17日 14:00~17:00


○場所

中央合同庁舎5号館 19階 共用第8会議室


○議題

・室内濃度指針値の見直し等について
・その他

○議事

○事務局 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第18回「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」を開催いたします。

 委員の先生方には、御多忙のところ御出席賜りまして、まことにありがとうございます。

 本日は、全委員から御出席の連絡をいただいております。委員総数12名のうち、本日は12名出席いただいていることを御報告申し上げます。

 それでは、座長の西川先生、以降の議事進行をお願いいたします。

○西川座長 それでは、まずは事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

○事務局 それでは、お手元の資料の1枚目、議事次第をご覧ください。こちらの中ほどに資料一覧がございますが、こちらとお手元の資料を突き合わせながら御確認いただけるとありがたいです。

 議事次第

 座席表

 委員名簿

 資料1 線香、お香及び蚊取り線香の煙中ベンゼン濃度

 資料2 ベンゼンの暴露について

 資料3 平成25年度夏期室内空気全国実態調査及び無作為抽出による首都圏実態調査

     結果の概要

 参考資料1 室内空気中化学物質の指針値の見直しの仕方等について

 参考資料2 WHO評価書〈ベンゼン〉

 参考資料3 EPA評価書〈ベンゼン〉

 参考資料4 環境省評価書〈ベンゼン〉

以上です。不備がございましたらお知らせくださいますとありがたいです。

○西川座長 よろしいでしょうか。

 それでは、議事(1)「室内空気中化学物質の指針値の見直しについて〈ベンゼン〉」として、まず「線香、お香及び蚊取り線香の煙中ベンゼン濃度」について、東京都健康安全研究センターの斎藤委員から御説明をお願いいたします。

○斎藤委員 斎藤でございます。よろしくお願いいたします。

 本日は「線香、お香及び蚊取り線香の煙中ベンゼン濃度」といたしまして、煙の中にはいろいろな化学物質が含まれておりますが、ベンゼンに焦点を当てた御報告とさせていただきたいと思います。

 まず初めに、ベンゼンは御存じのとおりIARCグループ1に分類される発がん物質で、大気環境基準は3μg/m3 でございます。発生源としましては、自動車排ガスやたばこの煙、燃焼器具からの発生が知られております。また、ベンゼンは有機物の燃焼に伴って発生いたしまして、燃焼温度が低いほうが多く発生するということが知られております。

 今回、私どもが線香からのベンゼンの発生に着目したのは、実はきっかけがございまして、そのきっかけと申しますのが、平成17年から18年に実施いたしました都内オフィス喫煙室の調査でございました。この調査は、26のビルの喫煙室及びその近傍で調査を行っておりまして、喫煙室内のベンゼン濃度が環境基準の2倍から19倍と非常に高濃度であったという結果でございます。この概要について、まず最初にお示しさせていただきます。

26カ所で会社の営業中の時間、平日に6時間の測定を行ったわけですけれども、喫煙室内のベンゼン平均濃度は23.4μg/m3 、喫煙室の接している廊下でありますとか近くの空間、扉などで仕切られておりますけれども、近傍のベンゼン濃度としましては26カ所の平均値が5.4μg/m3 で、これは環境基準を超える濃度でございました。

 同時にニコチンも測定しておりまして、そのニコチン濃度とベンゼン濃度を見ますと非常に有意な相関があるということで、これはたばこの煙から発生しているに違いないと推察されたのですけれども、喫煙室は結構煙があるということで、どのような煙にベンゼンが多いのかを調査しましたところ、これは厚生労働省でたばこの成分分析を行っているデータを引用させていただいておりますが、主流煙は1本当たり発生量が20.3μgに対しまして、副流煙は1本当たり297μgで、主流煙に比べますと副流煙は14.6倍のベンゼンの発生量があるということで、副流煙からのベンゼンが高濃度の主な原因であろうと推察されました。

 ここで考えたのですけれども、このベンゼンの発生は、果たしてたばこだけのものなのであろうかというところで、燃焼するとベンゼンが発生するということがございましたので、たばこの副流煙の発生の特徴を考えてみました。まず、燃えるものが植物由来で非常に有機物が豊富であること、炎を出さずに燃えるということで燃焼温度が低い、煙が発生する、この特徴をいろいろ考えましたところ、類似の使用方法をする日用品として線香やお香、蚊取り線香があるということで、今回、このベンゼンの発生についての調査を行ったわけです。

 今回行いました調査対象製品は、原料及び形状別にそれぞれ2~3製品、計10製品について調査をしております。御紹介いたしますと、No.1、2が棒状の線香でタブの木の粉を主原料としたもので、主にお仏壇用でビャクダンの香りなどが加えられているものでした。No.3は、タブ粉が売っておりましたので、これに水を加えて練りまして棒状に成形した手づくりのお線香です。No.4、5、6については、これも棒状の線香なのですけれども、杉粉を主原料としておりまして、杉は樹脂が多いので、どちらかというと煙がたくさん出るので、お墓用ということで市販されているお線香です。続きまして、No.7、8が円錐形のお香、絵で見ますとこのような円錐の形をしたものなのですけれども、これだけが実はインド製でございまして、主原料については余り詳しいことが書いてはなく、95%程度天然の植物ですという紹介はございましたが、詳しい中身はわかりませんでした。No.9、10につきましては、渦巻き状のお線香、蚊取り線香について実験を行っております。

 実際の煙中のベンゼン測定方法ですけれども、試料に点火しまして、このように上下に開口部のあるガラス容器のここのところに線香を設置いたしまして、火をつけてすぐに入れるのですけれども、ポンプで下から空気を送りまして、上のテドラーバッグと呼ばれるガス採取バッグに煙を採取いたしました。このバッグにたまった煙を捕集管で50mL採取しまして、加熱脱着装置によりGC/MSに導入して分析をいたしております。

 棒状の試料は1本燃焼させました。燃焼時間は20分から40分ということで、1本で約30分燃えている状況でした。それ以外の試料につきましては40分間燃焼させまして、燃焼時間及び燃焼前後の重さを計測しております。

 これが燃やしたものの重量当たりのベンゼン放出量を示したものでございます。全体的に見ますと、全ての試料からベンゼンは放出されるということで、その量としましては、230μg/gから1,010μg/gという範囲でございました。製品によってこのように原料別に分けておりますが、同じようなものでも随分差があるものがございます。傾向的に見ますと、どちらかというとタブ粉よりも杉粉が多く、それよりも円錐形のお香のほうが多いのではないかという印象でございました。

 次に、これらの線香を使用したとき、その室内ベンゼン濃度はどれほどになるのだろうかというところで濃度の推定を行っております。これにつきましては、外気のベンゼン濃度を1.1μg/m3 といたしました。この数値は、平成24年度東京都一般局での大気汚染物質年平均濃度でございます。想定としましては、6畳の部屋において換気回数0.5回毎時で線香の試料を1時間燃焼させたとき、1本ないしは2本、数本同時に燃やすわけではなく、1本ずつ燃やすような形で1時間を想定して、このような計算式を用いて室内ベンゼン濃度を算出しております。

 その結果でございます。いずれにしましても3を超える濃度になったのですけれども、各試料を燃やしたときのベンゼン濃度推定値としては、5.4から31.3μg/m3 という値でございました。やはりタブ粉よりも杉粉のほうが多い、恐らく煙がたくさん出る杉のお線香のほうがベンゼン濃度としてはたくさん出ているのではないか。また、円錐形のお香ですが、見た目の煙の量では一番多かったです。非常にたくさん煙が出る製品なのだなと実感したのですけれども、見た目の煙の量で考えますと、煙が多いほうがどうもベンゼンがたくさん出ているような印象でございました。蚊取り線香につきましては、杉線香と同じぐらいの濃度ということが結果として得られてまいりました。

 ここまでが実際の実験の結果でございます。

 以上をまとめますと、線香、お香、蚊取り線香10製品を用いまして、燃焼により発生する煙中のベンゼン濃度を測定いたしました。全ての製品からベンゼンが検出され、単位重量当たりのベンゼン放出量は230から1,010μg/gでございました。試料を6畳間で1時間燃焼させたときの推定室内ベンゼン濃度は、5.4から31.3μg/m3 でありまして、いずれも大気環境基準を超える結果になりました。

 線香、お香、蚊取り線香は目的を持って御使用になるものですので、使用時のベンゼン暴露量を低減させることにつきましては、使用の時間をなるべく短く抑えていただくことや、燃焼後の十分な換気が必要ではないかと考えられました。

 以上でございます。

○西川座長 ありがとうございました。

 ただいまの御説明につきまして、委員の先生方から御質問、コメント等がございましたらお願いいたします。

 五十嵐先生、どうぞ。

○五十嵐委員 線香1本当たりのグラム数はどのぐらいなのでしょうか。それから、1時間に燃える量、何グラム燃えることになるのでしょうか。

○斎藤委員 これで見ますと、1本当たり約30分かかりますので、物によって多少違いはありますけれども、グラム数は1本当たり0.20.3グラムだったと思うのですが、かなり軽いものです。

○西川座長 よろしいでしょうか。

 ほかにございますか。

 池田先生、どうぞ。

○池田委員 インド製のお線香というのを私は見たことがないし、どんなものなのでしょうか。においとか。

○斎藤委員 においは、たかなくてもかなりいいにおいがついております。インターネットでどちらかというとポピュラーに購入されているインド製の会社の2社のものをそれぞれ購入したのですけれども、におい的には、お花のにおいのような非常に甘い香りがつけてあるものを用いました。いろいろな種類があるようです。

○池田委員 日本では、それは余り宗教目的というよりは、一種の。

○斎藤委員 宗教ではなく、アロマの目的のお線香だと思われます。

○池田委員 わかりました。

○西川座長 角田先生、どうぞ。

○角田委員 ベンゼンにフォーカスを当てているわけですけれども、例えばシックハウス的な症状を訴える方で、線香で気分が悪くなったとか、そういうところでベンゼンに着目して規制を考えるべきなのか、あるいは大気環境基準が低いので、大気環境基準にのっとって基準を考えるべきなのか、その辺で先生のお考えをお伺いしたいです。例えば線香で気分が悪くなった例が結構出ているとか、そういうことは今まであるのかなと。

○斎藤委員 線香全体から見ますと、ベンゼンの放出量は非常にわずかです。その大部分を別のVOCが占めておりまして、メインに放出されていたのは2-メチルフラン、イソプレン、酢酸、この3つの物質の合計で6割から8割を占めておりました。ベンゼンはそれに比べますと数%程度で、煙の中のVOC量としては少ないものですので、お線香の煙で気分が悪くなったとおっしゃられる方に対して、それはベンゼンのせいでということはなかなか難しいのではないかと思います。ただ、煙の中に含まれている発がん物質としては一番多く放出されていると考えられるのがベンゼンだと思われます。

 お線香以外にもベンゼンの放出をするいろいろな、最初に御紹介したような喫煙なり暖房器具もございますので、それらにプラスして生活習慣でベンゼンが放出されるものがあるということで、情報として知っていただくというのが今回一番重要なのではないかと考えております。

○西川座長 よろしいでしょうか。

 東先生、どうぞ。

○東委員 大変貴重な御報告をありがとうございます。

 近畿大学の東でございます。

 今、ベンゼン以外のVOCについて幾つか御紹介いただいたのですけれども、ベンゼンが焦点になっているので大変恐縮なのですが、不完全燃焼に近い燃焼の場合、PAH、つまり多環芳香族炭化水素が比較的出るということと、こちらは比較的有害性が高くて、低い濃度でも健康影響が生じる、発がん性があるということで、特にベンゾピレンが注目されることが多いのです。そのあたりについて、もし測定されているようでしたらお教えいただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。

○斎藤委員 今回、測定対象としているのはVOCのみでありまして、今後、ほかの成分についても調べていこうと思っておりますので、結果が出ましたら、また学会なりで御紹介をさせていただきたいと思います。

○西川座長 よろしいでしょうか。

 広瀬先生、どうぞ。

○広瀬委員 最後から2枚目の推定値の計算結果ですが、最後から3枚目の式を用いた結果だと思うのですけれども、これは時間の関数なので、最初をどう定義したのかなということと、C S が。

○斎藤委員 C S は大気汚染濃度。

○広瀬委員 それはC 0 です。

○斎藤委員 C 0 と同じですので、最初のほうのところはゼロになってしまうのです。

○広瀬委員 あとは、1時間当たりに燃焼する量で、計算式は1時間後時点の濃度が出るのですね。この後、上がっていきそうなのですか、それとも平行になりそうなのですか。

○斎藤委員 ずっと発生をしているのであれば上がっていくと考えられます。

○西川座長 よろしいでしょうか。

○広瀬委員 平均ではなくて、多分1時間後時点の濃度ですね。

○斎藤委員 1時間ずっと発生した場合のポイントを使って計算しております。燃やしている間はずっと室内で発生がある状況になりますので。

○西川座長 よろしいですか。

 1つ確認したいのですが、燃焼温度が低いほうがベンゼンの生成量が多いということですけれども、それは逆相関するような関係なのでしょうか。

○斎藤委員 何度だとこれぐらいというところでしょうか。

○西川座長 いや、燃焼温度が低いほど生成量がふえるという記載があったものですから。

○斎藤委員 炎を出して完全燃焼しているよりも、炎を出さず不完全にくすぶっている状態のほうがベンゼンの発生量が多いということを意図して書かせていただいたのですが、例えば600度と300度で2倍違うかと言われますと、その辺については詳しくは存じておりません。

○西川座長 ありがとうございます。

 ほかはよろしいでしょうか。

 それでは、斎藤先生、どうもありがとうございました。

 続きまして、議事(2)「室内空気中化学物質の実態調査の結果について」として「ベンゼンの暴露について」、国立医薬品食品衛生研究所の神野委員から御説明をお願いいたします。

○神野委員 国立医薬品食品衛生研究所の神野でございます。

 それでは、私どもで調査を行いました「ベンゼンの暴露」について御報告させていただきたいと思います。

 まず、先ほどの斎藤委員のお話にもございました室内環境中でのベンゼン発生源の推定に関しまして、私どもでは実態調査を通して、どのようなものが室内環境中のベンゼンに寄与しているか探索してみました。

 この研究は、私どもの香川が研究代表者を務めております厚生労働科学研究「家庭用品から放散される揮発性有機化合物/準揮発性有機化合物の健康リスク評価モデルの確立に関する研究」の一環として実施させていただきました。

 調査自体は東京都、神奈川県の10家庭で実施いたしました。

 ここでは、自動連続サンプリング装置と呼ばれる、24本の吸着管で順次サンプリングすることができる装置を用いて、一般家庭の居間の室内空気を毎分60mLの流速で、1時間ごとに24時間にわたって採取しました。

 私どもで行っております全国調査の場合と同様に、SafeLock Tenax TA吸着管で採取したVOCを加熱脱離GC/MSを用いて定量しました。

 ここでは、調査を行った10例のうち、ベンゼンが典型的な変動を示した3例をお示ししております。

 左側の図は、青で示しましたベンゼンの日内変動とナフタレンの変動を示してあります。なぜここでナフタレンかと申しますと、ナフタレンあるいはパラジクロロベンゼンは防虫剤として使われることが多い。つまり、室内での放散速度をほぼ一定とみなすことができますので、その変動から換気等による影響を推定することができるということで、ここではあわせて示してあります。

 また、右側はトルエンの変動を見ているのですけれども、燃焼によってベンゼンが生成する場合、トルエンも上がることが多いので、その挙動もあわせて示してあります。

 この例では、矢印は全て喫煙を示しています。窓を開けて喫煙している場合にはそれほどベンゼン濃度が上がるわけではないのですが、朝に喫煙されたときには窓が閉まっていたということで、ベンゼン濃度が最大で6μg/m3 程度まで一過性に上昇するという挙動を示しております。当然ですけれども、ナフタレン等はそれに合わせた変動はしておりません。また、この場合、トルエンについても喫煙によるベンゼン濃度の上昇とは異なる挙動を示すという結果が得られております。

 また別のお宅の場合、ここに示しましたように、8時間ごとにピークを迎える形で2μg/m3 程度まで増加するという特徴的な変動を示しています。調査期間中の行動も記録していますが、今回の調査では、この変動を説明できるような具体的な家庭用品の使用等については明らかになっておりません。

 次の例が、先ほどの斎藤委員のご発表と関連して、この2つの矢印はお線香を焚いた時間を示しています。朝と晩にお線香を焚かれる年配の方のお宅でサンプリングさせていただいたのですけれども、全体として、この変動を24時間の平均として表しますと2μg/m3 というベンゼン濃度になりますが、お線香を焚いている間は一過性に最高で5ないし6μg/m3 ぐらいまで上がる、このような変動を示すことがわかりました。

 ちなみに、この上がった部分の面積を積分して24時間の平均濃度としてあらわしますと約1.2μg/m3 となりますので、このお宅に関して言えば、室内での線香の燃焼による発生が1日平均濃度の約60%を占めるという概算になります。

 線香等につきましては、どの程度の方が使用されているのかというのも問題になるかと思いますが、ここでは製品評価技術基盤機構化学物質管理センターが公開している「室内暴露にかかわる生活・行動パターン情報」のデータをお示しします。

 一番下にあります「アロマオイル・お香・線香」を使用する人の割合は、居室では5%、寝室では6%程度の割合で、行為者率が5%ないし6%でお香等を焚く方がいらっしゃるということになります。

 また、蚊取り線香ですが、お手元に配付していただいた資料ではここのところが番号になっていますので、御修正をお願いします。

 居室、寝室で蚊取り製品を使用される方が37%、44%となりますが、その中で蚊取り線香を使用される方が居室では16%、寝室では25.6%ということで、全体から見ますと5ないし10%の方が線香を使用されており、それがベンゼンの発生につながる可能性はあると言えるかと思います。

 ここまでが室内での発生源についての調査結果で、ベンゼンに関して言えば、大気の寄与がありますし、それに加えて喫煙あるいは燃焼器具の使用によって発生することはよく知られていますが、家庭用品の使用によってもベンゼンを発生させる場合があることが明らかになったと言えるかと思います。

 そこで、私どもで昨年度実施させていただきました全国調査の結果をもとに、日本の現状として室内でのベンゼン暴露がどの程度生じているのかについて推計を行ってみました。

 その結果を御紹介する前に、ここでは大気中のベンゼン濃度ということで、環境省のホームページに掲載されているデータをグラフ化して示してあります。

 まず、年平均値の推移ということで御説明したいと思いますけれども、平成11年当初、約3μg/m3 、環境基準に相当する平均濃度だったものが順次減少してまいりまして、現在報告されている最新の平成23年度では、一般環境で平均濃度が1μg/m3 まで低下しております。

 ちなみにベンゼンのリスク評価に関しましては、2007年にNITEで初期リスク評価書が作成され、2008年に産総研から詳細リスク評価書として刊行されたものがございますが、そこで参照されておりますデータは、平成16年当時の調査結果をもとに推定が行われております。そのときには一般環境で1.6μg/m3 、発生源周辺で1.9μg/m3 という値でございました。したがいまして、その当時から比べますと約0.5μg/m3 以上濃度が低下しておりますので、その結果、当時に比べて室内の発生源の占める割合が相対的に高くなっていると言えるかと思います。

 これは同じく環境省のホームページで公開されているデータですけれども、環境基準超過割合の推移ということで、ここ数年は、23年度は2%、2件ほど発生源周辺で3μg/m3 を超えたところがあったようですけれども、おおむね3μg/m3 を超える濃度が検出されることはないということですので、室内濃度が3μg/m3 を超える場合に関しましては、恐らく室内の何らかの発生源が寄与していると考えるべきだと思います。

 さらに、今回お示ししますデータを解釈するに当たりまして、どの程度の値を参考にすればいいのかということで、私の専門外ではありますが、手元にある資料を幾つか当たってみました。

 「ベンゼンの吸入暴露による発がんユニットリスク」ということで、先ほどもございましたが、ヒトに対して発がん性があるグループ1に分類されています。WHOIndoor Air Qualityのガイドラインでは、ユニットリスクを6×10-6 としており、その結果、10-5 リスクを与える空気中の濃度が1.7と記載されております。それに相当するUS EPAの評価値は1.3から4.5、先ほど来参照しております環境省では1.4から3.3であり、実際は3μg/m3 が環境基準になっているということであります。したがいまして、今回は、一つはWHOのガイドラインにございます1.7、もう一つは環境省の3μg/m3 を超える割合を算出してみました。

 その結果、2012年度に全国の地方衛生研究所との協働で実施いたしました室内空気全国実態調査、並びに、方法の詳細につきましては後ほど紹介させていただきますが、今年度、私どもで無作為抽出した首都圏100家屋を対象に実施した実態調査の結果をもとに、室内環境中におけるベンゼン暴露濃度を集計いたしました。その値と10-5 生涯過剰発がんリスクに相当する濃度として、1.7及び3μg/m3 を超える家屋の比率をここにお示しいたします。

 これは2012年度の結果をまとめたものですけれども、ベンゼンのWHOのガイドライン値自身は年平均値ということで記載されておりますが、ここでは居間の夏、冬の調査結果及び寝室の夏、冬の調査結果、対応する107軒のお宅の結果を集計した統計量を示しております。屋外についても同様ですが、中央値がそれぞれ1.31.4ということで、95パーセンタイルは5μg/m3 4.1μg/m3 、最大では20μg/m3 11.9μg/m3 となりますが、それぞれ居間、寝室で大気環境基準の3μg/m3 を超えるお宅がいずれも11.2%で、屋外だけで見ますと2%程度という値になっております。一方、WHOのガイドライン値を参照いたしますと、30%ないし36%程度のお宅でそれを超える空気中の濃度となっております。

 夏高くて冬低いお宅と、またその逆というお宅もございますので、年間の平均を107軒について求めた結果、平均値が1.8μg/m3 、中央値が1.4μg/m3 95パーセンタイルは3.9μg/m3 、最大値は16.0μg/m3 となりまして、こちらの図に示しましたように1.7μg/m3 を超えるお宅が37.4%、3μg/m3 を超えるお宅が8.4%存在するということになります。

 こちらは今年度実施しました無作為調査の結果をまとめたものですけれども、この場合は居間のみで調査を行っております。時期としては夏に近い秋となりますけれども、その結果では、平均値が1.9、中央値が1.695パーセンタイルが4.1、最大値が21.2ということで、先ほどの全国調査の値よりも若干高くなっています。また、この場合、夏に近い調査になりますけれども、例年の傾向からしますと、夏と冬で約1μg/m3 程度、冬の中央値のほうが高くなる傾向が見られますので、先ほどお示ししました全国調査の結果よりもこちらのほうが若干高い値となろうかと思います。

 これはそれぞれの95パーセンタイル値及び最大値をもとにユニットリスク、WHOのガイドライン値、環境省の評価値に対応するリスクを求めたものになります。95パーセンタイルでは、環境省の評価を用いましても1.2×10-5 ということで5%以上の方が10-5 リスクを超える暴露を受けている。最大値で計算いたしますと、WHOのユニットリスクを用いた場合には、10倍程度の方が10-5 リスクを超える暴露を受けているという推算になります。

 これは前回の検討会で事務局がお示しになったスキーム(案)ですが、初期暴露評価あるいはハザード情報という点から、ベンゼンに関して言えば、室内環境において明らかに10-5 を超えるリスク、暴露が生じる可能性のある化学物質ということで御検討いただければと考えております。

 私の発表は以上でございます。

○西川座長 ありがとうございました。

 ただいまの御説明につきまして、委員の先生方から御質問、コメント等がございましたらお願いいたします。

 どうぞ。

○角田委員 まず、2番目の表の変動の原因がわからなかったものです。喫煙でもなく、蚊取り線香でもなく、真ん中の変動の理由がわからなかったものがあるのですけれども、ベンゼン濃度を見ると大体1から2の間に動いていますので、これはむしろ単に換気によって外の空気が入ってきたからこうなったと考えてはいけないのでしょうか。

○神野委員 このお宅は24時間換気で、窓をあける以外の換気はほぼ一定に保たれているはずなのですけれども、先ほど御説明しましたように、防虫剤として利用されているパラジクロロベンゼンの挙動と必ずしも一致しないのです。角田先生がおっしゃるように換気によって入ってくる外気ということで考えますと、本当はここの部分も下がるのではないかなと。換気によってパラジクロロベンゼンが外に出ていくことで下がると思うのですけれども、必ずしもその挙動が一になっていないので、その意味で、換気によって外からというのはちょっと考えにくいかなと解釈しております。

○角田委員 でも結局、室内環境基準をどう考えるかということで、そもそもの大気環境が守られていないことを考えると、守られていないというか、がんの過剰発生の可能性があるレベルであることを考えると、より感受性の高い人たちがあるということは余り聞いたこともないので、むしろこの場合は、シックハウスとして新たに環境基準をつくるよりも、それなりのがんの過剰発生が出ている一般環境基準を当てはめざるを得ないのかなと。

 つまり、ここで考えられているがんとか白血病以外の危険性が余り考えられず、それしか考えられず、かつ十分高いということになると、大気環境基準をそのまま当てはめていくしかないのかなという感じもするのです。あえて言うならば、逆に蚊取り線香の使用は推奨しないというところまで言ってしまうかもしれないですけれども、その辺はいかがでしょうか。

○神野委員 その辺の判断は私ではいたしかねるのですけれども、その辺をぜひ御議論いただければと思います。

○西川座長 ベンゼンをシックハウス問題とするか室内空気汚染にするかというのは、これからの御発表の後でまたまとめて。

 ほかにございますでしょうか。

 どうぞ。

○東委員 大変貴重なデータをありがとうございます。

 近畿大学の東でございます。

 室内環境中のベンゼンの2012年度の全国調査の結果でお伺いしたいのですけれども、7ページの下のスライドです。2012年度のリビングルーム、ベッドルーム、アウトドアということで、比較的高いところに幾つか出ているのですけれども、これは同じ住宅、同じ屋外なのかを1点お伺いしたい。というのは、例えば屋外の発生源近傍に何かある家屋なのかというのが気になってお伺いしたいのが1点です。

 もう一点ですけれども、次のページです。年平均の値ということでお示しいただいているのですけれども、年平均というのは毎月はかられた12カ月とかの平均なのか、あるいは夏、冬の2回の平均なのかを教えていただきたい。

 この2点をお願いいたします。

○神野委員 この突出して高いお宅ですけれども、この1軒に関しては一致していたかと思います。ただ、このお宅に関しては、対応する点がないということになります。

 もう一つの年平均ですけれども、これは夏、冬に行った調査をもとに年平均として計算していますので、毎月測定した年間変動データではありません。

○西川座長 坂部先生、どうぞ。

○坂部委員 これらの調査された家で、シックハウス症状を訴える家庭とか、あるいは簡単な健康影響の情報とか、そういったものはあるのですか。

○神野委員 同時にはとっていません。

○坂部委員 わかりました。

○田辺委員 大変貴重なデータだと思うのですけれども、2ページ、3ページ、4ページは、外気中の濃度が変わる可能性もありますし、例えば蚊取り線香みたいなものであれば生活行為が夏由来のものもあるので、もし可能であればどこかに情報として外気温度とか季節を入れていただけると、さらに貴重なデータになると思います。

○西川座長 ほかにございませんか。

 ないようでしたら、神野先生、どうもありがとうございました。

 続きまして、参考資料のベンゼンの有害性評価、WHO欧州、ACGIHについて、近畿大学の東先生から御説明をお願いいたします。

○東委員 近畿大学の東でございます。

 お手元の資料はWHOの資料のみです。これは原本を参考資料2としてお配りいただいているかと思います。基本的にはこの中身についてお話しします。その他、WHO関係でもっと新しい評価文書がありますので、それもつけ加えて、ベンゼンの有害性評価ということでただいまよりお話をしたいと思います。

 それから、事務局から、ACGIH、アメリカの産業衛生専門家会議が職業性暴露、労働環境を想定した許容濃度を出しておりまして、こちらも御説明いただきたいということで、本日説明をさせていただきます。ただ、こちらの評価文書は、著作権の関係もありますので、残念ながらお手元にはお配りできなかったということでございます。私のほうから口頭でお話をしたいと思っております。

 お手元の資料は「Air Quality Guidelines for Europe」ということで、2000年にWHOヨーロッパが出した空気質のガイドラインになっています。これは主に大気です。当時ぐらいまで大気が主にマネジメント、リスク評価の対象になっておりましたので、大気の物質ということでガイドラインを出してきております。その中にベンゼンがあるということであります。

WHOのガイドラインに入る前に、まずベンゼンの有害性について少し御説明をしておきたいと思います。

WHOの資料以外に、アメリカとか諸外国の国際機関等の評価文書などから出ているものをここに示しております。まず、化学物質の有害性を考える場合には、短期暴露の影響、一時的に高い濃度のものを暴露するというような影響、それから、持続的に長期間あるいは繰り返し長い間暴露することによる影響、この2つの影響を考えていきます。その上で、ベンゼンの有害性がどういったものかを御説明したいと思います。

 まず、短期暴露の影響でございますけれども、これは高濃度の場合を想定するのですが、高濃度のベンゼンを吸入した場合、中枢神経系に主な毒性影響を示します。ですから、めまいとか頭痛、疲労感、吐き気、息切れ、精神錯乱、痙攣等を引き起こすと言われております。こういった影響でございますけれども、かなり高濃度です。例えば1万とか2万ppmのベンゼンに5分から10分ぐらい暴露すると、この場合は直接死に至るようなことがあります。それよりも少し低い濃度の300とか3,000ppmですと、先ほどの神経系の毒性を示すと言われております。

 では、長期とか反復、繰り返し長い間暴露した場合の影響は何かということでございますけれども、これは主に骨髄です。造血器官でございますけれども、骨髄とか免疫系に関する影響があると言われております。特に骨髄の造血機能に対する影響が非常に低い濃度でも起こるということで、例えば白血球とか血小板、リンパ球の減少が疫学調査などで見られるということでございます。特に造血器官への影響に関して密接に関係するのが白血病でございまして、骨髄性の白血病を引き起こすということが、斎藤先生からもお話がありましたけれども、WHOの研究機関でございます国際がん研究機関(IARC)で発がん性があると認定されております。2012年に一番新しい発がん性分類の報告があったのですけれども、ここでも改めて、ベンゼンはヒトで白血病を引き起こす十分な証拠があると結論づけられております。

 白血病の潜伏期間は2年から50年ぐらいと言われています。これは、暴露濃度によって早期に起こる場合と少しおくれて起こる場合があるということでございます。その他のベンゼンの特徴としましては、許容濃度を超えてもにおいとして感じないので十分に注意が必要である、ベンゼンに暴露しているかどうかなかなか気づかないということです。それから、空気より重たいですので、床面に沿って移動するという特徴がございます。

 続きまして、WHOのリスク評価について御説明をしていきたいと思います。

 これはWHO2000年の評価書です。こちらはお手元の評価書ですけれども、これに書いてあるところを少し抜粋してお話ししていきたいと思います。基本的には長期暴露で低い濃度で影響が出る、先ほどの発がん性というところですけれども、そういうところに着目してベンゼンのリスク評価を行っております。

 1つ目でございますけれども、長期暴露による最も重大な影響は、先ほどの造血器官に対する影響で、特に発がん性があるということであります。この発がん性に関しても、遺伝毒性と言われておりますけれども、遺伝子障害作用があるということで、いわゆる閾値がない発がん物質であるという判断がなされております。ですから、低い濃度であっても何らかの確率で発がん影響があるだろうという考え方でリスク評価が行われております。

 発がんに関して、通常は高濃度の実験でしかなかなかできないわけですけれども、この実験で、経口の場合は飲料水とか食餌にまぜてやるのですが、吸入暴露、チャンバー実験で行った場合でも、骨髄性白血病以外にも、例えば肝臓、乳腺、鼻腔などの上皮組織で腫瘍を形成することがありますので、いわゆるマルチサイト、さまざまな部位で発がんを起こすようなものと言われております。ただ、動物実験では骨髄性白血病のデータはほとんど得られていない、ヒトでの職業性暴露、労働環境での暴露で骨髄性白血病が出ているという特徴があります。

 その職業性暴露のデータですけれども、プライオフィルムというものがあります。これは塩素系の樹脂でございまして、ベンゼンを溶剤として製造するのですけれども、1940年代から1960年代ぐらいにかけて、プライオフィルムの製造工場の労働者の中で白血病の方が多発したということがありまして、そこの労働者の方のデータが報告されています。この研究データですけれども、ベンゼンを溶剤として使っておりますので、ベンゼン以外の物質による暴露の影響がほとんどないということで、ベンゼンの影響に特化して評価できることが特徴として言われておりまして、そこでこの研究が着目されて、有害性評価が行われるということでございます。

 かなり昔でございますけれども、この方たちの作業歴、どういった作業を行っていたか、そのときにどういうベンゼンの暴露状況だったかというのを、時間とか、インテンシティというのは強度です。そういったものをマトリックスとして作成しまして、どの程度のベンゼン暴露がこの方たちにあったか評価を行っております。

 ただ、推定濃度という形になりますので、幾つかの研究者の方によって推定する濃度が異なっておりまして、クランプさん、リンスキーさん、パウステンバッハさん、この3人の方たちの研究があります。これは3つの重要な暴露評価のデータとなっております。

 このデータを使いましてリスク評価されるのは別の方でして、パクストンという方がこの3人の方の暴露推定濃度を使って白血病の量反応関係、どれぐらいの濃度で白血病が発生するかというリスクを推定しております。これでいきますと、1ppm40年間暴露した場合ですと、1,000人当たり0.26から1.3の過剰発がんリスク、白血病を発症するリスクがあると報告されています。

 それがこのリスク推定結果でして、皆さんのお手元の資料にもこの表が、64ページとなっているところですが、テーブル8であるかと思います。この下のほうです。パクストンという方のデータがこの0.26から1.3と評価されたものでして、ただ、このデータはあくまで労働者のリスク評価でございますので、40年間という期間であることと、1,000人当たり、いわば1,000分の1のリスクを評価として行っているということであります。

 次に、このプライオフィルムのデータをもとにさらに最適化されたモデルを考えていこうということで、クランプさんという方が、この後、量反応関係データのユニットリスクを発表しております。これはいわゆる暴露モデル、それからリスクの計算モデルをもっと最適化したものが必要だろうということで、数十ぐらいのモデルを検討しまして、その中で一番フィットするだろうと判断されたのがこの相乗リスクモデルです。これが量反応モデルです。それから、暴露モデルは累積暴露モデルを使っております。この2つのモデルからユニットリスクを計算しております。

 労働現場の場合は40年とか45年の暴露を想定しますけれども、ユニットリスクは生涯暴露を想定しておりますので、WHOの場合ですと大体70年、日本の環境基準の場合も70年暴露を生涯暴露と想定して、生涯暴露した場合のリスクということで計算をしております。

 線形モデル、非線形モデル、濃度依存のモデルという3つのモデルがありますけれども、その中で濃度依存のモデルは少しモデルに問題があるということで、この左側の非線形、線形モデル、この2つのモデルでパウステンバッハさんとかクランプさん等の3つの暴露評価のデータからユニットリスクを出したのが下のものになっております。皆さんのお手元の資料の表9にその結果が出ているかと思います。

 その結果は、例えば4.7から7.5あたりの値、これは1μg/m3 の濃度に暴露したときにどれぐらいの過剰発がん確率があるかを計算したものですけれども、そういったリスク評価結果を出されております。

 クランプさんの研究結果は、100万人当たりミニマム4.4、最大7.5の生涯過剰発がんリスクが1μg/m3 であるのではないかという計算結果になっております。

WHOのほうは、クランプさんのデータはかなりしっかり研究されているので、あえてWHOの委員会の中で新たに計算し直す必要はないだろうということで、これを用いてもよいだろうという判断がされて、この4.4から7.5の中間が6.0となりまして、6×10-6 をベンゼンのユニットリスクと決定しております。

 1μg/m3 に生涯暴露するとこれだけの発がん確率となりますので、これを逆算しますと、1万人に1人の場合で17μg/m3 10万人に1人の場合で1.7μg/m3 です。先ほど神野先生からお話があったのがこれですけれども、100万人の場合で0.17μg/m3 という数字になるということであります。日本の場合、諸外国の多くもそうなのですけれども、10万人に1人というのが今のところ指針値等を決定する際に用いられることが多いかと思います。

 この後、これは2000年の評価ですけれども、2010年、室内空気のガイドラインをつくろうということで、WHOヨーロッパがワーキンググループをつくって新たに出しているものがございます。これはお手元の資料には入っておりません。最新の評価の中身ですので、簡単にこれも御説明をしておきたいと思います。

 これは私も実はベンゼンの評価文書のレビュアーとして参加しておりまして、中身をいろいろ検討する中の一人だったのですけれども、この場合、吸入によるベンゼン暴露は大気も室内も同じであるということです。ですから、大気と室内で異なるガイドラインをつくる必要はないだろうということが1つございます。

 それから、プライオフィルムの研究の後、例えば中国の労働者の研究、7万人ぐらいの大規模な暴露データが報告されてはいるのですけれども、ほかの物質の暴露もどうもあるのではないかというところがありまして、なかなかベンゼン単独で結果を評価するのは難しいだろうということで、この中国の新しいデータは使わなかったということがございます。その関係で、その当時までのさまざまなデータをレビューした結果、やはり2000年に出したユニットリスクを使うのが妥当であろうという判断になっていまして、2010年のガイドラインのときも2000年のものがそのまま継承されております。

 それから、ここには載せておりませんけれども、発がん影響と非発がん影響、発がん影響でないものについても評価を行うのが通例になっています。この2010年のワーキンググループの中でも、非発がん影響についても評価が行われております。2004年に出された論文がありまして、これも中国の労働者の研究なのですけれども、非発がん影響ということで、特に血液毒性に関する影響の研究が出されておりまして、例えば白血球とかリンパ球、特にB細胞とか血小板等が有意にベンゼンの低濃度暴露で減少するという報告があったのですが、それもデータの解析方法等に少し信頼性が欠けるということで、当時、採用していないというところがございます。ですから、今現在のところは、ベンゼンのプライオフィルムのコホートに関する研究データが一番信頼できるデータとして判断されているということでございます。

 続きまして、ACGIH、アメリカの産業衛生専門家会議のベンゼンの許容濃度について御説明したいと思います。お手元の資料は、先ほどもお話ししたように、著作権の関係もありまして、準備しておりません。

 これは2001年に出したものが新しいACGIHの許容濃度になっております。対象はあくまで一般環境ではなくて労働現場です。

ACGIHの許容濃度のもともとの考え方ですけれども、TLVというのがございまして、これは労働者が作業環境中で毎日繰り返し暴露した際、ほとんどの労働者に悪影響がないであろう空気中濃度となっています。幾つかのTLVの許容濃度の項目があるのですけれども、ベンゼンの場合は時間加重平均(TWA)、短時間暴露限界値(STEL)の2つが現在設定されております。

TWAでございますけれども、これは0.5ppm1.6mg/m3 でございますが、一般的に労働時間が1日8時間、1週間で40時間ですから、週5日間相当での時間加重平均ということで出されているものでございます。短時間暴露限界値のほうは2.5ppm、8mg/m3 でございますけれども、これは労働者が作業中の任意の時間にこの濃度を超えない15分間の時間加重平均ということで、短時間、15分間の暴露に基づく基準ということで出されているものでございます。

 これらの根拠でございますけれども、まずTWAのほうでございますが、プライオフィルム、ベンゼン暴露による白血病への影響に対するデータをもとに設定されております。これはベンゼンの累積暴露量と白血病の発生リスクとの関係から設定しておりまして、先ほどの3人の研究者の方々の暴露データがもとになっております。その結果を解析したパクストンさんとかクランプさんのモデルによる研究結果から、労働年数ですから45年間を想定して、1ppm以上に暴露していると白血病による死亡リスクが増加するであろうということで、それをもとに0.5ppmという値に設定しているということがございます。0.5であればバックグラウンドレベルと区別ができない程度だろうというような判断でございます。

 次に、短時間暴露限界値でございますけれども、これは、いわゆるベンゼンに暴露した労働者の方々を平均的な暴露濃度で見るのがいいのか、それから、何らかの作業で高濃度に暴露することがあるのですが、例えば清掃作業をしているとか、あるいは少しこぼしてしまったとか、そういったときには高濃度での暴露を受けることがあるのですが、そういった場合に、これはピーク強度とよく言いますけれども、要は最大暴露濃度でのデータを検討したときにどうかということを研究した方が、このシュナッターさんという方でございます。これでいきますと、ベンゼンの白血病のリスクはどうも最大暴露濃度、ピーク強度にも関連しているということがこの方の研究によって示されております。

 そこで、ピーク強度としても基準を設けたほうがいいだろうということで、この方の研究では20から25ppm以上のベンゼンの最大暴露強度で白血病リスクが有意に増加しているということがありまして、それをもとに設定しています。2.5ppmに設定していますから10分の1なのですけれども、短時間に暴露する場合、例えば何かこぼしてしまって手に触れたとか、皮膚による暴露の影響も、この場合の暴露の状況を勘案するとあるだろうということで、皮膚からの吸収も勘案して2.5ppmという数値を短時間暴露許容限界値に設定しているということでございます。

 以上でございます。

○西川座長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明につきまして、委員の先生方から御質問、コメント等がございましたらお願いいたします。

 吉田委員、どうぞ。

○吉田委員 1点、STELについてお伺いしたいのですけれども、今回のようなお香とか、先ほどの御発表とも関連するので先生のコメントを伺いたいのですが、こういうものはクロニックのエンドポイントを使うべきなのか。拝見していまして、一過性に上がります。ただ、どうもそういった事故的に起きることではなくて定期的に、例えばお線香などの場合は急性を用いるべきなのか、それともクロニックのほうが疫学的には適合しているとお考えなのか、そのあたりのコメントを。

○東委員 今回、プライオフィルムのコホートもそうですけれども、十数年という非常に長い期間繰り返し暴露を受けた方の白血病のリスクがあるということでございますので、やはりクロニック、慢性暴露というのを我々も考えています。線香の場合もそうですし、先ほどの神野先生のデータもそうですけれども、年間を通じてある程度の濃度の中に我々が生活している場合があるということでございますので、やはりクロニック、慢性影響を考えて指針値を検討していくのがまずは重要ではないかなと考えます。

○西川座長 よろしいですか。

 どうぞ。

○田辺委員 2010年に出されたIndoor AirWHOヨーロッパの報告書の中で、ベンゼン以外の物質がファクトシートで多環芳香族炭化水素(PAH)だとかナフタレンとかテトラクロロエチレンとかが出ていますね。それ以外の物質に対してはどのように先生のほうでは考えられているのですか。

○東委員 どういったお話で。

○田辺委員 例えばニューガイドラインが2010年に設定されましたね。今はベンゼンを取り上げているわけですけれども、先ほど出た線香の燃焼、多環芳香族炭化水素(PAH)とかそういうものに対しては今回述べられていませんが。

○東委員 基本的にWHO2010年にガイドラインを設定したときに、どういった基準で物質を選定したかということが一番大事だと思います。当時、これはヨーロッパですから、主にヨーロッパの実態調査等から暴露濃度のデータ、それと有害性のデータがそろっているものがあるかという2つの大きなところがあるかと思うのですけれども、それで物質が選定されたということがあるのです。ですから、これらのデータからリスク評価をヨーロッパ中心に行った結果、指針値を設定するべき物質が2010年当時に幾つかあったと思うのですけれども、そういう物質が選定されたということです。

 今回、日本の状況をまず我々は考えるべきですので、まず日本の暴露データとしてどうかということが一つ。それに対する有害性がある物質かどうかというところからリスク評価を行っていく。先ほど神野先生がお示しされた一番最後のスライドですね。これがこの検討会の中で示されているものでございますけれども、日本でリスク評価をした上で指針値対象物質を優先づけていくことが必要ではないかと思います。

 私の個人的な見解からいきましても、例えばPAHとかナフタレンとかその他ありますけれども、実は私も、20052006年だったかと思うのですが、同じように日本のリスク評価を行った論文を出しています。大体当時WHOが指針値つくった物質と同じような物質をリスクが高い物質として当時評価しておりますので、改めて今そういったものを評価していって、我々のほうではどういった物質に指針値をつくっていくかを検討していくのが重要ではないかなと考えております。

○西川座長 よろしいですか。

 1つ教えてください。先生が最初に示されたスライドの中で、ベンゼンにも精神的な影響を及ぼす可能性があるとおっしゃったのですけれども、そういうことはWHOは余り考慮しないのですか。

○東委員 この場合、高濃度の影響というところで出ておりますので、我々が一般環境で想定した低い濃度の場合にそういう影響が出ているような報告はないということがありまして、いわゆる神経系への影響に関しては、この中で我々が指針値を考える上で最も検討すべきエンドポイントとしては発がんのほうであるということではないかと思います。

○西川座長 ありがとうございました。

 ほかはよろしいでしょうか。

 どうぞ。

○角田委員 結局、1.7μg/m3 というのがACGIHの基準で、日本だと、後ろの別の資料を見たら0.3、もうちょっと下げるべきではないかという意見も出ているようなのですが。

○東委員 どの資料でしょうか。

○角田委員 「ベンゼンに係る環境基準専門委員会報告」で、ACGIHTLVTWAが、提案中が0.3になっている。多分これは、要はどこで厳しく過剰リスクをとるべきか。最初にお伺いしたとき、大気環境基準が3で労働者が1.7で逆転しているのは本当は変なはずなので、もうちょっと下げるという意見が出ているのかなという気もしたのですけれども。

○東委員 先生がおっしゃっているACGIH0.3、それはppmのお話ですか。

○角田委員 はい。

○東委員 0.3ppmをマイクログラムに直すともうちょっと高い数値になるかと思うのですけれども。

○角田委員 1日8時間、週40時間の制限なので、一般的に大気環境基準よりも労働者のほうが高くてもいいはずなのに、日本と比べると逆転が。

○東委員 それはなっていないと思います。ACGIHの値のほうがWHOのガイドラインとか日本の環境基準より高い値です。

○角田委員 最初に大気環境基準の3μg/m3 、最初の線香の。

○東委員 そうですね、3μg/m3 ですね。

○角田委員 今回は、こちらは1.7ですね。

○東委員 それはWHOのほうですね。WHOのガイドラインの1.7μg/㎥という数値は、10-5 のリスクでの値になります。

○角田委員 では、1.6。でも、TWA1.6

○東委員 TWA1.6というのは、どちらのほうを見てお話しされていますでしょうか。

○角田委員 さっき出された資料はミリグラムですか。

○東委員 そうですね、1.6mg/㎥というのが今のACGIH TWAです。ACGIHTWA1.6mg/㎥で、WHOのガイドラインの10万分の1の過剰発がんリスクが1.7μg/㎥ですので、ACGIHTWAは、WHOによる10万分の1の過剰発がんリスクと比べて約1,000倍高いということです。

○角田委員 そうすると大気環境基準はすごく厳しいと考えていいのですか。

○東委員 ただ、大気環境基準と労働者の基準の大きな違いは、大気環境基準の場合は10万分の1で見ていますけれども、労働基準の場合は1,000分の1で見ています。あと、暴露時間が1日8時間、1週間40時間で見ていますけれども、一般環境の場合は1日24時間、1週間7日という生涯暴露で見ます。また、年数も70年と、45年あるいは40年との差がありますので、そのあたりで一般環境の場合のほうが必然的に基準が厳しくなるということでございます。

○角田委員 ちょっと勘違いしていました。

 でも、そうすると本当に一般環境基準がすごく厳しいので、しかも、今それを超えている段階ですから、一般大気環境基準よりきついものをつくるのは非常に難しいような気もしたので。

○西川座長 ほかによろしいですか。

 それでは、東先生、どうもありがとうございました。

 続きまして、参考資料のベンゼンの有害性評価、EPA、環境省について、広瀬委員から御説明をお願いいたします。

○広瀬委員 私から説明するのは、特にスライドはありません。

EPAは参考資料3で、環境省は参考資料4になります。

 基本的にそれぞれの評価がどう行われているかを一覧にしたのが、実は先ほど資料2で神野先生が配られた6ページ目に各機関でのユニットリスクの数字が出ています。ごらんいただくとわかるように、どの評価機関もほとんど変わらない値を出しています。基本的にはどの評価機関も東先生が紹介されたプライオフィルムの工場での疫学データをそれぞれ再解析して、その解析の仕方がそれぞれ違った機関あるいは違った手法を使っている結果でこれだけの事例が出ています。

 ちょっと細かい話にはなるのですけれども、例えば参考資料4を見ていただいて、もとになった暴露の症例の一部は7ページの表3です。これが全部ではないのですけれども、このようなデータをもとにして、表の右側に3つ並んでいますリンスキーさん、クランプさん、パウステンバッハさんらの解析で使っているということになります。

 環境省のほうは、いろいろな解析法があるけれども、9ページの表4を見ていただきますと、ユニットリスクの計算は、リニアモデルというのではなくて、相対リスク、その疫学調査で換算された白血球数とバックグラウンドの期待値とを引き算して、それにバックグラウンド自体のリスクを掛け合わせることで、基本的に平均値から直線回帰をして、例えば10-5 のリスクを計算するといった手法を用いました。

 その計算の仕方について、環境省のほうは、12ページから13ページにかけて、それぞれの暴露群と期待される死亡者数を階層化して、それぞれに対して期待されるSMRからユニットリスクを計算するということで、最終的には表7のような計算をやられています。

 ただ、従来のWHOでやったような計算とかモデル計算を使った方法、平均値を用いた方法のどれか一つに特定することはできないということで、最終的には環境省では幅を持った値として、16ページの(5)の下にありますけれども、1μg/m3 当たり3×10-6 から7×10-6 というリスクを幅で求めたのが環境省の評価の仕方です。

 一方、EPAのほうは、ちょっと長くてあれなのですけれども、実質的には全部同じデータから用量相関解析をしていまして、参考資料3だと20ページに吸入のリスクはどういう数字を用いたかが書いてあります。上のほうに、2.2×10- から7.8×10- 、1μg/m3 当たりのユニットリスクはこれを使ったと。これを使ったもとは、真ん中あたりにC.2.というところがありますけれども、これも一連の同じ疫学調査の計算の中で白血球のヒトでの発症率のモデルを使っています。幾つかリファレンスが書いてあるのですけれども、これは最終的には1994年のクランプさんらのモデルで使ったリスクを用いていまして、EPAのほうは2.2×10- から7.8×10- になるというのを採用してリスクを計算しているということで、クランプさんらのモデルを使ったのか、平均のSMRを使ったユニットリスクかという違いが環境省と米国のEPAとの違いになっています。ただ、いろいろ違った評価をしているのですけれども、最終的にはそれほどレンジとしては変わらない値になっているというのが参考資料3、4の解説になります。

 以上です。

○西川座長 ありがとうございました。

 ただいまの御説明につきまして、委員の先生方から御意見、コメント等がございましたらお願いいたします。特に御意見はないですか。

 東先生、どうぞ。

○東委員 コメントなのですけれども、環境省の場合、ユニットリスクがある程度幅を持っている中で、恐らく数値としては一番高い数値になっているかと思うのです。ユニットリスクの低い値、指針値としてもたしか1から3μg/m3 ぐらいの幅になるかと思いますが、その中で3μg/m3 と決められたということがあったかと思うのです。

 当時の実態等を勘案してその値を採用されたと言われておりましたので、現在はかなり大気の数値が下がってきておりますので、さらに厳しい数字であっても、基準を超える割合が以前に比べるとかなり低下して、環境はよくなってきているのではないかと思いますけれども、そのあたりで先生はいかがでしょうか。

○広瀬委員 私は環境省のほうの会議に出ていたわけではないので、資料から見る範囲で解説させていただいていますけれども、幅を、きつめにとれば1なのですが、多分その当時は1というのは現実的なところではなかったというのがあって3になったのではないかと。

 神野先生の発表からすると、決めた当時からでさえもう既に下がってきているので、それで今基準が変わるかどうかはわからないですけれども、一応検討できる数字になっているのではないかと思います。

○西川座長 それでは、ベンゼンに関する御報告は以上で、参考資料1を見ていただきますと、ベンゼンは候補物質としての要件はそろっているようですが、例えばベンゼンが指針値の見直しの候補物質として妥当かどうか、対象とするハザードでの範囲の考え方はどうか、候補にするのであればリスク評価の実施の際の留意点としてこうすべきなどの御助言があればお願いいたします。

 どうぞ。

○角田委員 今までの御発表を聞かせていただいて、室内環境基準がどうも現在設定されている大気環境基準より、室内環境の実態調査で大気環境基準を上回っているケースも結構多いというのが最初の2つの発表でなされて、かつ、もととなっている健康障害は、シックハウスという一般的な症状よりは、むしろ長年慢性暴露による骨髄的なものだということで、それをもとに大気環境基準が決まっているので、大気環境基準よりもやや緩目の基準をつくるかどうか。

 それは、線香とかを使うから高くなる、普通の家庭でも高くならざるを得ないからという考え方もあると思うのですけれども、ただ、それもちょっと抵抗があるような感じがします。大気環境基準が厳しいというのもあるのですけれども、新たにシックハウスとしての室内環境基準を決めるのかどうかというのは、果たしてやるべきなのかなと。大気環境基準のとおりというような、つまり換気したら高くなってしまうということになると、大気環境基準の設定でもいいのではないかなという感じがするのです。

○西川座長 ありがとうございます。

 あえて室内空気汚染として取り上げる必要もないというような御意見だったかと。

○角田委員 いや、室内空気汚染の可能性はあるのですけれども、結局、ふだん我々が暮らしている大気が、ある程度のリスクより上だという例も結構あるという。

○西川座長 ですから、改めて室内空気汚染としての基準値を示すまでもないという御意見だったかと。

○角田委員 難しいのではないかということです。つまり、線香とかで出るから高くならざるを得ないことはあると思うのです。

○西川座長 ありがとうございます。

 では、東先生、それから田辺先生。

○東委員 これは当時、10年前、この委員会でいろいろな物質を選定する中でどう考えていくかという議論があった中で、ベンゼン等大気環境基準がつくられているものに関しては、大気の基準があるのだから、あえて必要ないのではないかという議論があったと聞いております。ですから、その観点はあるかもしれないですけれども、ただ、この10年間で室内空気汚染対策としてベンゼンに関して何らかのマネジメントをしていくことが、あるいは実態調査とか対策という点でもなかったのが実際の状況ではなかったかと私は非常に強く感じております。ですから、大気に基準があったとしても、マネジメントが異なる部分がございますので、室内としての基準というのはあるべきかなと。

 これは実はWHOの中でもそういう議論がありまして、もともと大気の基準をずっとつくっていたわけですけれども、室内は発生源も違いますし、マネジメントも違うということで、室内独自のリスクアセスメントを行った上で指針値対象物質を選んで指針値をつくっていくべきだという議論でWHOのガイドラインが2010年にできたという経緯がございます。

 ただ、数値をつくるに当たっては、吸入暴露という点では大気も室内も同じだということで、当時のさまざまな指針値、有害性評価の結果、新しいデータを踏まえて、継承できるものは継承する、新たに有害性評価が出たものに関しては指針値を見直す作業が行われていたということでございますので、そういった方向性が重要ではないかなと思います。

 それと、室内の発生源があるかどうかということに関しましては、神野先生から幾つか御報告をいただいております。特定の発生源もありますし、燃焼生成物、燃焼器具由来等で冬期に特異的に高くなっているところもございますので、そういう意味でも室内の発生源を考慮した考え方を取り入れていくべきではないかなと考えます。

 以上でございます。

○田辺委員 シックハウス検討会の1回目から3回目までの検討の間にベンゼンは1度俎上には上がっていて、その当時、厚労省の平成10年の実態調査で、住宅の平均が7.2μg/m3 で最大値が433.6μg/m3 であったと。ただし、I/O比が2.2PI1.0だったので、外気由来が非常に高いので、その時点ではベンゼンは指針値には上げないということになったと記憶しています。

 韓国、中国等では、例えば塗材の中に入っているようなベンゼンがまだかなりありましたので、日本ではその当時はそういう部分が低かったということですけれども、神野先生の6ページの資料を見ると、平成11年以降、明らかに外気のベンゼン濃度、これは環境対策がされたということであると思うのですが、そういう意味でI/O比が高くなっている可能性があります。参考資料1に示された手順に従えば、室内空気質のガイドラインを定めることを考えてもよいのではないかと思います。これは当時と状況がそのように変化しているということだと思います。

 一方で、もともとシックハウスというのは、建物を建てたとき、新築のときにどうなるかというものが最初の対象だったのですが、今回の放散源を見ると、喫煙とか線香、蚊取り線香という生活者由来のものがかなり多くて、これをどうやって対策していくかということまで含めて考える必要があります。ガイドラインに(ベンゼンを)載せたときに、建材からの拡散についてもう一度測定するということを始めないとならなくなります。そのあたりも含めて、ガイドラインを出す必要があるということなのかもしれません。その後のフォローアップ、どのように啓発をしていくかということも含めて検討していただくと、混乱がなくて国民が安全安心に住めるようになるのではないかと思います。

 以上です。

○西川座長 ありがとうございます。

 どうぞ。

○中井委員 ベンゼンですけれども、有害性という観点からするとベンゼンは非常に重要な物質だと思いますし、何らかの形で規制は必要だと思います。多分それで大気が決められているのだと思いますけれども、今、田辺先生もおっしゃいましたが、室内の話はかなり面倒なところが多分あろうかと思っていて、例えば発生源の話だと、パラジクロロベンゼンなんかも生活者由来と考えられるので、その観点では問題ないかなと思うのですが、発生のメカニズムみたいなものを考えると、これはある意味、定常発生ではなくて非定常発生で、そこをどう評価していくか。パラジクロロベンゼンは、1回放散すると、置いておけばずっと放散するという話になろうかと思います。先ほどの神野先生のデータから見ると、燃焼がなくなると下がるとなると、下がるところに関してどのように評価をしていくか。これはたばこの問題と似たようなところがあろうかと思うのですが、そこをどういった形で評価していったらいいのかというのが一番大きなポイントなのではないかと感じています。この委員会の名前がシックハウスの検討会なので、シックハウスという観点からするとどうなのかなというのは当然あるのですけれども、その辺をどう評価していくか。

 また、I/O比が変わっているという話があろうかと思うのですが、外は下がっている、室内も実は多分そんなに変わっていないのだろうなと。室内の割合はふえていると思うのですけれども、ただし、絶対量からすると多分下がっているのではないか。たばこを吸う人も多分減っている、線香を使う人も減っているのではないかということなども考えた上で、もうちょっと整理が必要なのかなと。否定するものでは全然ないですし、重要だと思うのですけれども、その辺をきちんと整理しておかないと、この後、多分いろいろな話が出てくると思うのですが、一つ一つ取り扱いが大分変わってきてしまうような気がするというのが実はさっきから気になっていました。

 まとまりのないコメントなのですけれども、懸案事項だけということで発言させていただきました。

○西川座長 ありがとうございました。

 検討会の範囲を少し広目にとれば、指針値見直しの候補物質としてもあり得るという御意見だと思うのですけれども、そのためにはハザードの範囲をどのように決めて、リスク評価を実際にどのようにやっていくかを検討しなくてはいけないというような御意見だと思います。

 ほかに何かございますか。

 広瀬先生、どうぞ。

○広瀬委員 多分同じようなことを繰り返す気もするのですけれども、シックハウスということで始まって、ベンゼンという話で、でも、ベンゼンのリスクだけを見るとやはりそれなりに、I/O比の問題も含めて、発生源の問題も含めて無視はできないかなと。そういうことと、シックハウスという名前を10年前につけたにしても、ある程度それなりの対策でいろいろなものがよくなっていることを含めると、ベンゼンも対象にしていいのかなという考えもあるでしょう。でも、管理の面からすると、ベンゼンは多分管理しにくくて、例えば建材をするとか家庭用品をするとかという話になると難しいので、この場の評価は、管理を別にして物質だけを評価してやっていくのか、あるいは管理もある程度含めてやっていくのかというのを整理しないと、ごちゃまぜになってしまうような気もしたのです。

○西川座長 先ほど田辺先生からありましたように、管理についての留意も必要であるということですけれども、この検討会で管理まで含めて議論する必要はあったのですか。事務局、済みません、お願いします。

○事務局 実行可能性がある施策を打つという話になりますと、管理について、政府全体どころか実際の使用者あるいは施工される業者の方まで含めてやっていただいて、そこで初めて実効性を担保できることになろうかと思うのですが、ここで決められるのは、指針値の範囲になろうかと思います。

 ただ、その指針値ができた後に実行可能性がある形でバトンを渡せるかというところは、今、後ろにいらっしゃる関係省庁の方と連携を図っていくとか、業界と連携を図っていくとか、あるいは本日来ていただいている一般の方、実際の消費者のユーザーの方とか、そういった方々にも取組が浸透していって連携を図っていくという形になりますので、そこのところは十分な調整をすることが必要なのだろうと思います。そこのやり方については別に整理すべきものと思います。

 ただ、ここでのマンデートは、まずは指針値のところまでですが、その先のところは関係者と連携を図りながら、実際に実行可能性があるのだろうかというのをこちらのほうにフィードバックできるところはフィードバックしながら、指針値を設定できるかどうか、そこのところは御議論いただけると、より実効性のある値がつくれるのではないかと考えます。

○西川座長 ありがとうございます。

 とりあえず指針値を設定することを主眼に置いて検討していきたいと思います。

 問題は、やはりハザードをどう考えるかということと、リスク評価自体についても留意する点があるということなので、できればそのあたりで委員の先生方からいろいろアドバイスをいただければと思います。

 どうぞ。

○池田委員 そもそもいわゆる13物質とかいろいろな化学物質に関するガイドラインができたのは、法律ではなくて居住者に対して情報提供していくことを第一に考えてつくり始めたという趣旨からいっても、ベンゼンが今みたいな状況があるとしたら、国民に対する情報提供をやらない必要はないような気がするのです。ベンゼンは線香の煙が主要な発生源だとしたら、使う家と使わない家とで全然値が違うし、使い過ぎれば問題だということであれば、パラジクロロベンゼンみたいなものと同じように考えたら、パラジクロロベンゼンが指針値を持っているのだったら、こちらも持っていて当然だと思うわけです。

 それから、シックハウスという言葉には何もそんなに拘泥しないで、括弧して(室内空気汚染)と書いてあるわけでして、主に室内空気汚染のガイドラインをつくることを検討する委員会だと考えればいいと思うのです。シックハウスというのは、あの当時は非常に話題になっていたので、ちょっとキーワードを入れたぐらいに考えて、本来厚生労働省としてやりたかったことは、室内空気汚染から国民の健康を守ろうということにあったとすれば、余りそういうことを考えないで、とりあえず情報提供するという原点に帰るべきではないかなという気がします。

○西川座長 ありがとうございます。

 候補物質としては妥当な範囲に入るというような御意見だったと思います。

 指針値を定める際に検討していくべきことは、先ほど来皆さんから御意見をいただいたところですので、きょうの時点でベンゼンを優先物質として選定するかどうかは今後の検討課題という形でやっていきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。

 坂部先生、どうぞ。

○坂部委員 1つだけ、実際の医療機関で患者さんを見ている立場からお話しさせていただくと、池田先生がおっしゃったとおりだと思うのです。シックハウスというのが冠について考えてみると、例えば仮に室内のベンゼンで白血病になったとしたら、それもシックハウス症候群の一部に入ることになってしまうので、あくまでもこれは室内空気汚染による健康のリスクを考えるということで、括弧して(シックハウス等)という形の考え方のほうが、きょうの議論ではそのほうが解釈としてはいいのかなと思います。

○西川座長 ありがとうございます。

 田辺先生、どうぞ。

○田辺委員 私が申し上げて後退しているように聞こえると問題がありますけれども、シックハウス検討会は、できるできないを別にして、危ないとか問題があるとわかったものをきちんと決めることが極めて重要で、ぶれないで進むのが最もすばらしいと思います。その後の対策に関して、最初のころ、こういう物質があるとこういうところに問題があるよという注意事項をきちんと報告書として厚労省はまとめられています。ぜひ各省庁と連携して、こういうところに発生源があるから、まずは注意をしてくださいと示すべきだと思います。これは製造者ができるものではなくて、やはり中立な厚労省の委員会で初めてできるものだと思うので、ぜひ加えて検討すべきだと思います。

○西川座長 貴重なアドバイスをありがとうございます。

 したがいまして、ベンゼンについては引き続き検討していくことにしていきたいと思います。どうもありがとうございました。

 続きまして「平成25年度夏期室内空気全国実態調査及び無作為抽出による首都圏実態調査結果の概要」について、国立医薬品食品衛生研究所の神野委員から御説明をお願いいたします。

○神野委員 それでは、私から「平成25年度夏期室内空気全国実態調査及び無作為抽出による首都圏実態調査結果の概要」について御報告させていただきます。

 きょう提示させていただきます話題は3つになります。1つは、平成25年度夏期室内全国実態調査について、2番目といたしまして、無作為抽出による首都圏実態調査について、3番目に、平成25年度実態調査において検出された主な指針値未設定化合物についてということで発表させていただきます。

 前回までの検討会で報告させていただきましたように、私どもでは地方衛生研究所との協働による全国調査を進めてまいったわけですけれども、対象とする家屋を選ぶ際に、それなりのバイアスがかかっているのではないかという御指摘を東委員からいただいたかと思います。私どももその点を心配しておりまして、先ほどのベンゼンの議論にもありますように、私どもが行っている調査が本当に実態を反映しているのか、あるいは地方衛生研究所との協働ということである程度フィルターがかかっているのか、このあたりを明らかにしたいということで、今年度につきましては、2012年度に行った調査とは異なる家屋を選定していただくということで地方衛生研究所のご担当者にお願いして、調査を実施しました。

 また、こちらのほうは、まだ試行段階ではございますが、首都圏4都県を対象に100家庭を無作為に抽出し、居間の空気を1時間サンプリングするという方法で調査を行いました。その結果について報告させていただきます。

 最後は、化合物のリストということになりますが、これらの調査を通じて検出された主な化合物をお示しすることによって、今後、検討を行うべき化合物のプライオリティーリストを作成する際に御参考になればということで提示させていただきたいと思います。

 まず、夏期室内調査の結果ですが、いつも示しておりますように、今回も、ここに示しました地方衛生研究所の皆様と協力して調査を進めております。

 対象といたしました化合物は、揮発性有機化合物ということで、ここに赤で示しましたホルムアルデヒド、アセトアルデヒドのアルデヒド2化合物、個々のVOCとしてトルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、パラジクロロベンゼン、テトラデカン、そして最後に総揮発性有機化合物ということで、これらについて検討を行ってまいりました。

 次にサンプリングスケジュールについても今まで御報告させていただいているものとおおむね同じですが、ここではもう一度原点に立ち返りまして、居住住宅の測定においては、日常生活を営みながら空気を24時間採取するという方法を採用いたしました。以前お話しさせていただきましたように24時間採取というアプローチには難しい面もありますが、今回は室内に関しましては流速2mL/min24時間(2.88L)空気をサンプリングするというプロトコルで行いました。尚、アルデヒドに関しましては、今までと同様にパッシブサンプラーを利用して測定を行っております。

 以後、調査結果を1化合物ずつ示させていただきますが、参考までに2012年の夏に行った調査結果と対比させてお示ししてあります。

 まずホルムアルデヒドですが、夏の調査では気温が高いために放散量が増加するということで、2012年では居間で4%、寝室で7%程度、指針値を超えるお宅がまだ存在します。今回はそれよりも若干少なくなっておりますが、やはりそれぞれ1%、2%程度、指針値を超える家庭が存在いたしました。中央値で比較した場合、2012年と2013年の結果にはほとんど差がなく、地方衛生研究所に依頼してサンプリングした結果では、対象家屋が異なってもほぼ同等の結果が得られることを示しているかと思います。

 アセトアルデヒドに関しましては、指針値を超える家庭が若干多くなっていますけれども、中央値で見ますといずれも10 µ g/m3 前後ということで、ほぼ同等の分布を示しているかと思います。

 トルエンに関しましては、これも前回報告させていただいておりますが、指針値を超えたお宅はございませんでした。かつ、中央値も十分に低い値となっております。おそらく室外の影響を受けていると思われますが、比較的高い値を示す家屋が散見されます。

 エチルベンゼンも指針値を超えているお宅はいずれの調査でもございませんでした。かつ、中央値で比較しますと、指針値の3,800 µ g/m3 に対して十分に低い値になっているかと思います。

 これはスチレンについての結果ですが、指針値を超えることはないのですが、かなり高いお宅が時々存在する傾向は変わっていないように思います。最大値で見ますと2012年が130 µ g/m3 2013年が110µ g/m3 、指針値の50%程度に相当する比較的濃度の高いお宅が存在するということで、今後も継続した調査が必要だと考えています。

 キシレンにつきましては、またこれも十分に低い値になっています。指針値を超えたお宅はありませんでした。

 恒常的に指針値を超えるお宅が存在するパラジクロロベンゼンにつきましては、2012年夏の調査では居間で4%、寝室で8%のお宅が指針値240 µ g/m3 を超えておりましたが、2013年夏の調査でも居間で8%、寝室で8%のお宅が指針値を超える値となっています。外で検出されておりますのは、恐らく調査の際にベランダ等で外気を採取することがありますので、室内からの排気の影響を受ける場合が時々生じることによるものだと思います。

 これはテトラデカンの結果ですが、夏期の調査ということもございまして、超過したお宅はいずれも存在しませんでした。ただ、この場合も330 µ g/m3 という指針値に対して最高値は10014061120ということで、2012年、2013年いずれも指針値の30%を占めるお宅が存在しました。

 これは先ほど来話題になっていますベンゼンですが、2013年夏だけで見ますと若干低い値になっています。ただ、中央値で見る限りは差違はほとんどありません。

 ナフタレンに関しては、今回、累積暴露の図はお示ししておりませんけれども、これにつきましてもパラジクロロベンゼンと使用目的が同じということで、2012年夏もそれぞれ4%、6%、今年度の夏に行いました調査でもそれぞれ4%、8%のお宅でWHOのガイドライン値の10-5 レベル、10μg/m3 を超えるお宅が実際に存在しております。

 これはトリクロロエチレンです。2012年夏の結果、2013年夏の結果、いずれも中央値が定量下限値未満ということで、前回の調査のときも、この化合物についてはほとんど問題にならないだろうということで報告させていただいております。これについては後ほど無作為のほうでもう一度触れさせていただきますけれども、首都圏を対象にした無作為の調査ではそれなりに高い値も出ていますので、もう少し慎重な検討が必要かと考えています。

 テトラクロロエチレンに関しましては、WHOのガイドライン値よりも十分に低い値となっており、半数以上で定量下限値未満となっています。

TVOCにつきましては、2012年夏の調査では中央値が居間で260、寝室で3002013年では居間の中央値が240、寝室の中央値が250ということで、これも相変わらず一貫したデータが出ているかと思うのですけれども、暫定目標値である400を超えるお宅は、2012年で30ないし36%、2013年で37ないし40%ということで、30から40%のお宅ではTVOCが暫定目標値を上回っている、この現状は一貫していると言えるかと思います。

 以上、駆け足で今年度の調査について御報告させていただきましたけれども、その結果を簡単にまとめさせていただきますと、私どもでは、地方衛生研究所と協働で23年度から全国調査を進めております。地方衛生研究所の方にお願いしていることで調査の対象とする家屋が比較的限定されるため、データに偏りを生じる可能性があるという御指摘をいただきました。そこで、24年度に関しましては、従来の調査対象家屋とは異なる御家庭について、最終的には93家屋を対象にして夏期の調査を実施いたしました。その結果、先ほどからお示ししましたように、平成24年度の全国実態調査で得られた中央値と比較いたしまして、両者の値はおおむね一致し、最大でも約2倍程度の差であったということで、地方衛生研究所と協働の枠組みでやらせていただいているデータに関しましては、大きく偏ることなく、お示ししているデータで代表されていると考えております。

 次に、無作為抽出という手法をとりまして、首都圏実態調査を行いました。その結果について御報告させていただきます。なかなかこういった環境分析をやる際に無作為という手法はとりにくいのですが、今回は試みということで行ってみましたので、御報告させていただきたいと思います。

 その概要ですが、調査地域といたしましては、首都圏(東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県)の4都県で20地点、それぞれの地点で5世帯を抽出いたしました。ここでは世帯属性による割合等は条件設定いたしませんでした。

 抽出方法は、20地点の抽出は層化無作為抽出法という手法をとりまして、世帯の抽出に当たりましては住宅地図データベースを用いて無作為抽出いたしました。

 調査期間は2510月から2511月ということで、調査方法は、私どもが委託先である日本リサーチセンターに出向いて20名の調査員の方にサンプリング方法を指導いたしまして、その指導を受けた調査員が実際にお宅を訪問いたしまして、室内空気の測定、これは1時間程度かかるのですけれども、同時に面接によるアンケートを行うという形で進めました。

 これがサンプリング方法ですが、事前にここに示しました「『室内空気に関する調査』ご協力のお願い」を無作為抽出で選ばれたお宅に配付いたしまして、連絡をとった後、承諾が得られた家庭について、このような方法でサンプリングを行いました。

VOCにつきましては、サンプリングポンプを用いまして、75mL/minの流速で40分間、居間の空気を採取しました。吸着管としては、全国調査と同じSafeLock Tenax TA吸着管を使用しております。

 アルデヒド類については、サンプリング時間が限られているということでパッシブサンプラーを用いることはできませんので、ここではガステック社のポンプを用いまして、750mL/minの流速で40分間、AERO DNPHというカートリッジを使って捕集いたしました。ここにポンプの外観を示しております。

 その結果についてお示しさせていただきます。

 ホルムアルデヒドにつきましては、先ほど申し上げましたように全国調査は夏の調査ですので、この場合は秋に差し掛かっているのですけれども、若干超えているところがございますが、いずれの場合も100 µ g/m3 を超えるのは1%、1軒のみ指針値を超えているお宅が存在したということです。ここでは中央値と95パーセンタイル値と最大値を示しておりますが、中央値で見た場合もほぼ同等、95パーセンタイル値ですと今年度の夏の全国調査の結果のほうが高い値となっていますけれども、2倍以内の違いにおさまっているということになります。

 アセトアルデヒドにつきましても、指針値を超えているお宅が7%、5%存在しましたが、中央値で見ますとそれぞれ119.2で、95パーセンタイル値も70に対して無作為調査は52ということで、両者の分布はほとんど変わらない結果になっております。

 トルエン、エチルベンゼンについてもほとんど同じ結果で、無作為調査で得られた結果のほうが若干高い値にはなっておりますが、指針値を超えるものは存在しません。ただ、1軒、トルエンが260に対して210ということで若干高いお宅が見つかっているということになります。

 スチレン、キシレンに関しても状況は同じということになります。

 ジクロロベンゼンは、夏の調査で先ほど述べましたように8%、今回の無作為調査では5%のお宅で240 µ g/m3 の室内濃度指針値を超えている結果になります。

 テトラデカンも指針値を超えているお宅はなく、最大でもそれぞれ6138 µ g/m3 ということで、いずれも2倍以下の差におさまっているということです。

 こちらがベンゼンとナフタレンですが、2013年夏の結果では4%が3µ g/m3 を超えているのに対して、無作為調査では10%が超えているという結果になります。ナフタレンに関しても、若干無作為のほうは超過率が高いのですが、最大値では全国調査のほうが高い結果となっています。

 これが先ほど申し上げましたトリクロロエチレンとテトラクロロエチレンの結果になります。夏の結果、これは今まで私どもがやっている全国調査の結果の典型例だと思っていただいて構わないのですけれども、それと比較いたしまして若干高い値が出ている。実際に95パーセンタイルを見ていただくと、通常の全国調査だと1前後になるものが、ここでは5.6で、かつ、最大値で見ますと2.4に対して11ということで、この場合はWHOのガイドラインで言う10-5 リスクである23μg/m3 の半分近くを占めるお宅が実際に存在したことになります。

 この違いがなぜ生じたのかということですけれども、ベンゼンの場合と違って室内で積極的にトリクロロエチレンを放散するものは見当たりませんので、恐らくこれは首都圏で行ったために外気の濃度が高かったことが一番の原因だろうと思います。ただ、残念なことに、今回の無作為調査では外気を同時に測るというフォーマットがとれませんでしたので、それぞれの地点で外気がどれぐらいになっているかという情報は得られないですけれども、室内での積極的にトリクロロエチレンをふやすような要因は今のところ考えられないということになります。ただ、従来言われているよりもかなり高い濃度が見つかっていますので、これについても大都市近郊では高い値になっている可能性があるということで、詳細な調査が必要になるのではないかと考えております。

TVOCに関しては、ほとんど同じで、それぞれ37%、31%のお宅が暫定目標値を超える値になりました。

 以上、お示ししました無作為調査の結果をまとめますと、無作為に抽出した首都圏の100家屋を対象に、室内濃度指針値策定化合物及びWHO室内空気質ガイドライン値策定化合物について実態調査を行いました。2013年夏期に地方衛生研究所と協働で実施した全国実態調査結果と比較した場合、両者の中央値並びに95パーセンタイル値はおおむね一致し、最大でも約2倍の差異でありました。ただし、トリクロロエチレンの95パーセンタイル値について、全国実態調査の値と比較して首都圏実態調査のほうが5倍以上高い値であるという結果になっております。

 最後に、昨年実施しました一連の実態調査でTVOCを測定する際に同時にどのような化合物が存在するかを検索しておりますが、検出された主な化合物について御紹介したいと思います。

 これがその一覧表になります。TVOC構成成分と書かせていただきましたが、これも以前より御報告させていただいていますデカメチルシクロペンタシロキサン、D5と呼ばれる化合物が頻度37%で、TVOC換算値となりますが、最大濃度で690μg/m3 、これはかなり高い値になるかと思うのですが、そういった値で検出されました。これは無作為調査のほうでも同じぐらいの頻度で検出されておりまして、値も高い値になっています。

 また、2-エチルヘキサノールにつきましては約半数の家庭で検出され、これも100を超える濃度で検出されることがわかっています。若干低いのですけれども、無作為調査でも32%で見つかっており、その最大濃度は69μgトルエン相当となります。

 それ以外には、プロピレングリコール、ブタンジオール等がございまして、テキサノールとTXIBにつきましては、以前お示ししました室内の新築調査の結果でもかなり高濃度で見つかる家庭がございましたが、頻度はこの場合は低いのですけれども、数十μg/m3 という値で見つかっています。ただ、首都圏の実態調査ではこれらの値は低い値となっています。そのほかにはエチルアセテート、メチルシクロヘキサン、今回はヘキサナールとノナナールがかなり高い値で見つかる家庭がございました。ただ、これは必ずしも家庭用品等の使用に伴うものばかりではないと思いますが、いずれにいたしましても頻度としては高いものになっています。

 これらの化合物が今回の夏の全国調査及び首都圏の無作為調査で検出された主な化合物となりますので、このあたりから指針値作成の必要性を議論していただくために必要な候補化合物のリストをつくってまいりたいと考えております。

 私の発表は以上でございます。ありがとうございました。

○西川座長 神野先生、どうもありがとうございました。

 ただいまの御説明に対して御意見、コメント等がございましたら、委員の先生方からお願いいたします。

 どうぞ。

○角田委員 ちょっと外れてしまうかもしれないですけれども、症状の調査とかは先ほどのお話でもやられていないということですが、要はTVOC30から40%の家庭が超えているということですね。そうすると、TVOC400という値がこの設定値でいいのか、暫定目標値のままにしておいていいのかなという感じもするのです。つまり、40%ぐらいの家庭が超えていて、望ましい値として400というのを設定するのが果たして意味をなしているのかどうか、ちょっと気になったのですけれども、先生はどのようにお考えでしょうか。

○神野委員 恐らく10年前にTVOCが暫定目標値として設定される際に、私はそのときは携わっていないのですけれども、報告書を拝見しますと、個別化合物を数十物質定量して、その定量値の合計に未同定の化合物が同じ量だけ存在するだろうという仮定でその値を2倍した上で、その中央値を採用したと理解しています。そうしますと、理屈からすると半分ぐらいがTVOCの暫定目標値を超えることを最初から意図した上で設定されているのではと思っているのです。その当時は、現在私どもで進めているTVOCの測定法とは異なる方法、本来のTVOCとは違う方法の値から推算しているのですけれども、実際に調査をしてみるとその範囲におさまっているということですので、暫定目標値としては妥当な値であると理解しています。

○西川座長 よろしいでしょうか。

 ほかにございますか。

 どうぞ。

○中井委員 結果を拝見して、25年度調査と無作為の結果は大体イコールというのは間違いないかなと思うのですけれども、無作為のほうの結果の解釈の助けというか、またいつもの測定条件に関して教えていただきたいのですけれども、築年数等々の情報をいただきたいなというのが1つと、こちらは1時間の測定なのですが、この際、換気をされていたのか。あと、広さとか、もちろんいろいろとあると思うのですけれども、その辺も含めて測定条件をお教えいただきたいなというのが1点。

25年度の調査と合わせる形でやられているからしようがないと思うのですが、候補物質のリストアップの検討ということを考えると、例えばSVOCとかそういったところもある程度必要ではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。

○神野委員 まず1番目にいただいた御質問ですけれども、実際は調査の段階で築年数等も調査しているので、データとしてはあるのですが、今回は速報値ということで御紹介させていただいておりますので、築年数との関係を全ての化合物について検討したというのは、次の機会に御紹介させていただければと思います。

 あと、化合物の選定に関してということですけれども、SVOCにつきましては、このフォーマットとはかなり異なるサンプリングが必要になるということで、実は私どものほうで別途、厚生労働科学研究の指定研究として実施させていただいている研究がございますので、そちらの研究結果がまとまり次第、この検討会に御提示させていただいて、御議論いただきたいと考えております。

○西川座長 ありがとうございます。

 いずれも今後の検討課題となります。

 どうぞ。

○池田委員 一部、中井先生の質問の中にもあったのですけれども、サンプリング時間が、私の理解では無作為抽出のほうは40分で、全国調査のほうは24時間でよろしいのでしょうか。

○神野委員 そうです。

○池田委員 そうすると、発生源の特性にもよるのですけれども、ずっと定常的に出ているようなものでしたらサンプリング時間の違いはそんなに問題にならないと思いますが、さっきから話題になっているベンゼンのように時間とともに大きく変化する場合、40分サンプリングと24時間サンプリングでは結果がかなり違ってきて当たり前なのが、むしろ一緒だということは、これはどのように説明するのかなということ。それから、なぜ片方は40分で片方は24時間としたのかということについても御回答をお願いします。

○神野委員 まず、短時間のサンプリングにせざるを得ない理由ですけれども、調査員がお宅を訪問して、24時間後にもう一度回収するというフォーマットが技術的に難しいということが一つと、使いましたポンプが短時間、1時間のためにポンプを押してスタートするだけのポンプと、24時間のサンプリングで衛研の方にお願いしているポンプは操作法が複雑になりますので、今回の調査では技術的な意味も含めて長時間のサンプリングが困難であったということになります。おっしゃるとおり、将来的には同じフォーマットでサンプリングできるようにしたいとは思うのですけれども、何分首都圏で無作為に選ぶこと自体がかなり難しかったこともありまして、そこで24時間のサンプリングをお願いするのは技術的に無理だということで、今回は諦めたという実情がございます。

 池田委員がおっしゃるように、短いサンプリングですので、恐らく私どもの経験からしますと、人がいるとそこで使用されるものがあります。今回は在室しているところで採取していますので、もしも同じ行動をとっていればそこで上がるものもあるのかもしれないのですけれども、先ほども言いましたように、サンプリングの間はその時間を利用して調査員が化学物質の使用状況、家庭用品の使用状況等についてのアンケートをとっていますので、恐らく家庭内での日常生活的な行動はない。かつ、人の出入りがあるということで換気回数が若干上がる傾向にありますので、本来であれば低目に出るのが普通かなと思っています。しかし、今回は同等か、化合物によっては高いという結果ですので、今回の無作為調査では、もしかすると恒常的な発生源からの寄与が大きかったのかもしれないと思います。ただ、24時間サンプリングした場合と40分サンプリングでほぼ同等ということですけれども、その違いが大体2倍以内におさまっているということだと結果を解釈しています。

○西川座長 よろしいでしょうか。

 ほかにございますでしょうか。

 斎藤先生、それから東先生、どうぞ。

○斎藤委員 首都圏の調査で、おうちのスタイルとしまして一戸建てが多いのか、あるいはマンション、いわゆる集合住宅が多いのか。2013年夏の調査と比べてマンションが多いということはあるのでしょうか。

○神野委員 済みません、今、その数が把握できていないので、またそれも追って御報告させてください。

○斎藤委員 有機塩素系化合物が、ここではトリクロロエチレンが夏の調査と首都圏の無作為調査で随分違う、大気由来ということをおっしゃっていたのですけれども、大気中の濃度がこれほど高いのかなというのは、ずっと東京都内で住宅と大気とをはかっているのですけれども、これだけ高い有機塩素系の大気の濃度を見たことがないものですから。

 以前、私どもの経験で、有機塩素系の濃度が25ぐらいですごく高いおうちがあったのです。トリクロロエチレンだったのですけれども、その発生源はといいますと、室内に置かれていた小さな日用品が発生源だったのです。靴の底が減ったときに、塗ると靴底の減ったのが直せるよという靴補修用のこんな小さなチューブに入ったものだったのですけれども、換気が非常に悪いスタイルで生活をしていらして、マンションにたまたまそれが置いてあって、それを除去したらあっという間に濃度が下がったということがございましたので、もしかしたら首都圏で余り換気をしないマンションにお住まいの方がいらして、何らかの生活用品があった可能性もあるのではないかなという印象を持ちました。

○神野委員 参考にさせていただいて、解析し直してみたいと思います。どうもありがとうございます。

○西川座長 東先生、どうぞ。

○東委員 私のコメントに対して対応していただいて、どうもありがとうございます。まずは感謝を申し上げさせていただきたいと思います。

 先ほど中井先生もおっしゃいましたけれども、傾向としては無作為調査と全国調査と非常に似た傾向になっているなという印象を持ちました。ただ、いろいろな委員の先生方からお話のあるような御指摘はあるとは思うのですけれども、それにしても、これだけの物質について、幾つかの物質について指針値あるいは基準値を超えている状況は、再現性のある形でデータがとれたということが言えるのではないかと思いますので、逆に言うと非常に貴重なデータを繰り返し得ることができたということではないかと思います。

 トリクロロエチレンですけれども、大気由来なのかどうかは私もちょっと懸念がありまして、恐らく大気は環境省のモニタリングでずっと調査されていると思いますので、こういった高い値が出ているのかどうかというのは御確認いただければなと考えます。全国調査の中でも東京都の調査をされているかと思うのですけれども、東京都の調査だけをとってもこういうデータが出なかったということが一つはあるのではないかと思うのです。先ほど東京都だからということを少しおっしゃったのですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。

○神野委員 全国調査の中に東京都の方が何軒かというのは把握していないのですけれども、首都圏と、今回調査を行った都県の方も御参加いただいていまして、今回この結果が出ましたので、全国調査の中で東京近郊と関西のほうも若干データを見直してみたのですが、やはり高目の値にはなっているのです。ですから、全国調査では、今回25地方衛生研究所の方に御参加いただいているのですけれども、全体の値で希釈されているのかもしれません。確かに極端に高いお宅はもしかすると何らかの発生源をお持ちなのかもしれないですけれども、中央値とか95パーセンタイル値で比べて高目に出るのは、恐らく大気由来の部分が多いのではないかと考えています。

○西川座長 ほかによろしいでしょうか。

 特にないようでしたら、神野先生には引き続き御検討いただくことをお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、何かその他として事務局からありますでしょうか。

○事務局 特段ございません。

 本日いただいた御指摘につきまして、こちらのほうで整理いたしまして、次の機会に御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○西川座長 ありがとうございます。

 それでは、ちょっと早いようですけれども、検討会を終了してよろしいでしょうか。

○事務局 御意見がなければ。

○西川座長 それでは、予定していた議題も全て終了しましたので、本日の検討会を閉会いたします。

 どうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医薬・生活衛生局が実施する検討会等> シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会> 第18回シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 議事録(2014年3月17日)

ページの先頭へ戻る