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2013年11月12日 第14回労働政策審議会勤労者生活分科会議事録

労働基準局勤労者生活課

○日時

平成25年11月12日10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎第5号館 専用第23会議室


○出席者

公益代表委員

宮本委員、井上委員、小野委員、柴田委員

労働者代表委員

大塚委員、袈裟丸委員、齊藤委員(代理 関山氏)、須田委員、早川委員

使用者代表委員

上原委員、塩野委員、布山委員、三原委員

(事務局)

中野労働基準局長、松原勤労者生活課長、安達勤労者生活課課長補佐、松田勤労者生活課課長補佐

○議題

(1)分科会長、分科会長代理の選出
(2)中小企業退職金共済部会委員の指名
(3)財形制度に係る平成24年度の業務実績について(報告)
(4)財形制度をめぐる当面の課題と対策について
(5)平成26年度税制改正要望について(報告)

○議事

○松原勤労者生活課長 それでは、定刻より若干早いのでございますが、委員の皆様がお揃いになりましたので、第14回「労働政策審議会勤労者生活分科会」を開会いたします。 本日は、お忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。私はこの7月に労働基準局勤労者生活課長に着任いたしました松原と申します。分科会長が選出されるまでの間、私が議事進行役を務めさせていただきます。
 まず、事務局を代表いたしまして、労働基準局長の中野より御挨拶を申し上げます。
○中野労働基準局長 労働基準局長中野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。また、本日は、大変お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。勤労者生活分科会におきましては、主として勤労者財産形成制度について御審議いただいております。今回、委員の改選がありましたところ、新たに委員をお引き受けいただいた皆様、また再任をされた皆様におかれましては、今後ともどうぞ御審議のほど、よろしくお願いいたします。
 近年、財形制度を取り巻く状況は大きく変化してきておりますが、勤労者の自助努力を国や事業主が支援する本制度の仕組みの重要性には変わりがないと思っております。後ほど課長のほうから詳しく御報告を申し上げますが、本日の分科会におきまして、財形制度を取り巻く状況について御報告させていただくほか、かねて本分科会から御指摘をいただいておりました中小企業への対策についても取組を御報告させていただくこととしております。
 今後とも財形制度がより一層、勤労者の福祉の向上に役立つものになるよう努力していきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○松原勤労者生活課長 それでは、はじめに、資料の確認をお願いします。お手元に第14回労働政策審議会勤労者生活分科会というタイトルを付けた冊子があります。中心に「議事次第」と書いてあります。これは1冊の冊子になっています。通し番号を振っていますので、もし途中でもページ落ち等が見つかった場合には事務局にお伝えください。資料1~5及び参考が入っています。
 それでは、議事に入る前に、今回は委員改選後、初めての分科会となりますので、委員の方々全員の御紹介をさせていただきます。お手元に配布してある冊子の資料1の勤労者生活分科会委員名簿を御覧ください。本日御出席の委員の方から名簿順に御紹介します。御着席のままで結構です。
 まず、公益代表委員として、元住宅金融公庫 理事の井上順委員です。株式会社みずほ年金研究所 研究理事の小野正昭委員です。三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社政策研究事業本部 革新創造センター部長の柴田裕子委員です。放送大学教養学部 教授の宮本みち子委員です。
 次に、労働者代表委員として、労働者福祉中央協議会 事務局長の大塚敏夫委員です。日本基幹産業労働組合連合会 中央執行委員の袈裟丸暢子委員です。日本労働組合総連合会総合労働局 総合局長の須田孝委員です。全国生命保険労働組合連合会 中央書記長の早川順治委員です。
 次に、使用者代表委員として、東京都中小企業団体中央会 副会長の上原洋一委員です。富士通株式会社 ダイバーシティ推進室長 兼 総務人事本部人事労政部 シニアディレクターの塩野典子委員です。一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部 主幹の布山祐子委員です。株式会社東芝人事部 労働企画担当グループ長の三原隆正委員です。
 また、本日欠席されている委員です。公益代表委員では亜細亜大学経済学部 教授の権丈英子委員、一般社団法人全国銀行協会 常務理事の高木伸委員、敬愛大学経済学部 准教授の高木朋代委員、慶應義塾大学法学部 教授の内藤恵委員です。労働者代表では、一般社団法人全国労働金庫協会 常務理事の齊藤憲夫委員、日本ゴム産業労働組合連合本部 中央執行委員長の瀬尾進委員です。使用者代表では、東京レジャー株式会社 代表取締役社長の池田朝彦委員、株式会社ベネッセホールディングス経営推進本部グループ人事部 兼 株式会社ベネッセコーポレーションビジネスセンター部長の豊田京子委員です。
 なお、労働者代表の齊藤委員は本日欠席ですが、当分科会の運営規程により、分科会長の許可を受けて代理の方が出席できることになっており、代理として、一般社団法人全国労働金庫協会 営業統括部長の関山順様が出席しています。
 続いて、私及び先ほど御挨拶いたしました労働基準局長のほか、メインテーブルに座っている事務局の者を御紹介させていただきます。勤労者生活課長補佐の安達、同じく、勤労者生活課長補佐の松田です。なお、本日、労働基準局長は国会業務があり、誠に申し訳ございませんが途中で退席いたしますので、あらかじめ御承知置きくださいますようお願いします。
 それでは、議事に入ります。本日は議題が5件あります。議事次第を御覧ください。議題1は、(1)分科会長及び分科会長代理の選出です。まず、分科会長の選任を行います。分科会長については、労働政策審議会令第6条第6項の規定により、分科会に属する公益を代表する本審の委員から、当該分科会に所属する本審の委員が選挙することとされています。本分科会の本審の委員は公益委員である宮本委員のみです。したがって、宮本委員に分科会長に御就任いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
                                   (異議なし)
○松原勤労者生活課長 それでは、分科会長は宮本委員に御就任いただきたいと思います。この後の議事進行については分科会長にお願いします。よろしくお願いいたします。
○宮本分科会長 今、御指名いただいた宮本です。大変微力ではございますが、この生活分科会は勤労者の生活を守るという意味で、今の状況がなかなか改善しない中で大変重要な分科会だと思っていますので、どうぞ御協力いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 それでは、最初に、分科会の会長代理の選任をする必要があります。分科会長代理は、労働政策審議会令第6条第8項の規定により、分科会長に事故があったときに、その職務を代理することになっています。分科会長代理は分科会長が指名することになっていますので、私としては亜細亜大学の権丈委員にお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
                                  (異議なし)
○宮本分科会長 権丈委員は本日御欠席ですので、後日御了解をいただきます。
 それでは、本日は第1回目ですので、議題に移る前に、委員の皆様から一言ずつ御挨拶をいただきたいと思います。委員名簿の順番でお願いします。はじめに、井上順委員からです。よろしくお願いします。
○井上委員 井上と申します。どうぞよろしくお願いします。私、以前、住宅金融公庫に勤めていた関係で、どうしても財形持家融資制度の動向のほうに目が行ってしまうわけですが、事前に配布していただいた資料によると、若干上向きの傾向が見られたということで、大変喜ばしいことではないかと思っています。言うまでもなく、住宅というのは生活の基盤ですし、勤労者にとっては憩いの場です。先行きが非常に読みにくい経済社会の状況である現状においても、着実に貯蓄をして、財形持家融資制度を利用して持家を取得することは、持家のない勤労者にとっては非常に大事な財産形成ではないかと思っています。今回、資料を拝見すると、制度の改善も提案されているようですし、今後ますますこの制度が伸びていくことを期待しています。どうぞよろしくお願いします。
○宮本分科会長 その次が小野委員です。よろしくお願いします。
○小野委員 みずほ年金研究所の小野です。どうぞよろしくお願いします。私は、母体が企業年金を業務としている関係上、私自身も年金局の研究会とか、社会保障審議会の専門委員会等に少し顔を出しています。そういう意味で、労働関係のこのような分科会への参加は初めてです。企業年金も、こういう貯蓄制度も用途は様々だとは思いますが、財産を形成していく点では通じているものがあるかと思います。いろいろ分からないことがあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。
○宮本分科会長 柴田委員お願いします。
○柴田委員 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの柴田と申します。20年ほど前ですか、まだ三和総合研究所の頃に厚生労働省から受託を受けて、勤労者財形制度の調査で、企業調査とか利用者調査をしたことはありますが、その後、余りこちらの研究をしていなかったので、なるべく早くキャッチアップしてお役に立ちたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
○宮本分科会長 大塚委員、お願いします。
○大塚委員 中央労福協の大塚です。私ども中央労福協というのは、労働団体と、それから労働者福祉団体、そして全国の各地域に労福協があります。その中で、労働者福祉の推進ということで様々な領域の課題を扱っています。とりわけ、今日段階、こういった経済状況の厳しい中で、どれだけ個々人の年金あるいは住宅といった資産をそれなりに増やしていくか、こういう課題が地域でも大きな問題になっていると思っています。どうか、この分科会においても、更にこういった中での発展をお願いするために参加をしています。よろしくお願いします。
○宮本分科会長 袈裟丸委員お願いします。
○袈裟丸委員 基幹労連の袈裟丸と申します。私が所属している組織は、重厚長大産業の企業組合の集まりです。組合組織の多くは中堅中小企業の組合ということもあって、先程来皆様がおっしゃっているとおり、働く者の生活の安定という意味では、住宅や財形は大変重要な課題だと思っています。ここでの議論を更にそれぞれの現場の労使でどう展開していくかも、ひとつ自分の課題としながら、議論に参加したいと思います。よろしくお願いします。
○宮本分科会長 齊藤委員お願いします。
○齊藤委員代理関山部長 本日、齊藤委員の代理として出席をしています労金協会の関山と申します。よろしくお願いします。
○宮本分科会長 須田委員お願いします。
○須田委員 連合の須田と言います。マスコミ等々で出回っておりますが、今、政労使会議が3回終わりましたが、やはり中小企業、非正規の処遇をどう改善していくかが最大のテーマになっています。そういう意味でも、正直言うと、財産がない人たちの財形制度みたいなことにならないようにしたいと思っていますので、よろしくお願いします。
○宮本分科会長 早川委員お願いします。
○早川委員 生保労連の書記長をしています早川です。生保産業は、言うまでもなく財形貯蓄の取扱機関の1つです。私どもの組合員も、財形貯蓄制度を広めるといった面で、そうした立場から影響があるかと思います。いろいろな面でそういった視点も踏まえながら、この会で皆さんの御議論に参加させていただければと思っていますので、どうかよろしくお願いします。
○宮本分科会長 ありがとうございます。私も先ほど自己紹介をしなかったので、若干。私は大学にいて社会学という分野をやっていて、労働の問題、特に若者の労働問題、それから家族の問題というところをやっていますので、この財形問題などを考えても、家族が非常に多様化し、いわゆる家庭を持たない人たちも増えていく中で、財産を形成しながら生活基盤を整えることも、以前とは非常に違う発想で考えなければいけない時代に入っていることを日頃から感じていまして、そういうところから参加しております。よろしくお願いします。では、上原委員お願いします。
○上原委員 上原と申します。我々の中小企業団体中央会というのは協同組合の塊で、東京では、2,000協同組合ぐらいあるのだと思います。全国中小企業団体中央会というのは、それの全国版で、そういう組織もあります。そこを代表して中小企業の立場から気が付いたことを発言していきたいと思います。以上です。
○宮本分科会長 ありがとうございます。塩野委員どうぞ。
○塩野委員 富士通の塩野です。私は長い間、労政という業務をしていまして、いわゆる組合員の労働条件をいろいろ企画していく業務をしていました。現在はダイバーシティ推進室という所が主になっていて、社員の働き甲斐、やり甲斐という観点から人事施策等にも絡んでいます。この分科会では、やはり企業としての立場から財形をどう考えていくのかというところも考えながら参加したいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
○宮本分科会長 布山委員お願いします。
○布山委員 経団連の布山です。勤労者、働く方々にとってより良い財産形成、これはどうしても共通している認識だと思いますので、それを使用者側の立場から発言させていただいて議論ができればと思っています。どうぞよろしくお願いします。
○宮本分科会長 三原委員、お願いします。
○三原委員 東芝の三原と申します。よろしくお願いします。私は、人事部に所属していて、皆さんと同じような立場になりますが、従業員、社員のモチベーションという意味でも、この財産形成は非常に大事だと思っていますので、そのような観点で議論に参加したいと思っています。よろしくお願いします。
○宮本分科会長 ありがとうございました。
 それでは、議題2に入ります。これは、当分科会の元に設置されている中小企業退職金共済部会の委員の指名です。中小企業退職金共済部会の委員については、労働政策審議会令の第7条第2項の規定により分科会長が指名することになっています。資料2に、その(案)が用意されています。この(案)のとおり、中小企業退職金共済部会の委員の指名を行いたいと思いますので、御承知置きいただきたいと思います。
 それでは、次の議題に入ります。議題3、4の報告です。議題3は「財形制度に係る平成24年度業務実績等について」、議題4は「財形制度をめぐる当面の課題と対策について」です。この2つはリンクする部分もあるので、それぞれ事務局から御報告をいただいた上で、皆様から御意見を頂戴したいと思います。それでは、事務局から御説明をいただきます。
○松原勤労者生活課長 それでは私のほうから御説明いたします。説明に入る前に1点、御紹介させていただければと思います。本日先ほど確認しました資料1から5の冊子のほかにいくつか資料を用意しております。1つの束は財形制度についてのパンフレットを机上配布資料としてお配りしております。3つ付いているかと思いますので御確認ください。 また、労働者代表委員の須田委員より資料の提出がありましたので、これも机上配布資料としてお配りしております。よろしいですか。
 まず議題3について資料の説明をします。まず、3-1財形制度の平成24年度実績等について説明させていただきます。今回交代された委員の方々もいるので財形制度全般についてごく簡単に触れながら説明を申し上げます。前回の分科会において、当時の分科会長、宮本分科会長のほうから、財形制度をめぐる丁寧な資料をという御指示があり、財形制度にかかる実績のみならず関連データも添えております。
 それでは資料3-1ですが、ここには制度の全体像を載せております。財形制度というのは、左側の財形貯蓄制度と右側の財形持家融資制度から成り立っております。左側の財形貯蓄制度は、勤労者が会社を通じて企業等の天引きにより積み立てていくというもので3種類あります。1つ目は、使い道を限定しない一般財形貯蓄。2つ目は、60歳以降に年金支払い目的とするもので財形年金貯蓄、3つ目が住宅取得・増改築等を目的する財形住宅貯蓄です。このうち右の財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄については、合わせて550万円までが利子等の非課税となっております。
 また、右側の財形持家融資制度は、財形貯蓄を行っている勤労者のための住宅ローンです。各財形貯蓄取扱機関にある財形貯蓄残高を原資として融資を行っており、いわば還元融資の仕組を行っているというものです。融資限度額を書いてありますが、財形貯蓄残高の10倍までの最高4,000万円。最長35年間の返済期間を設定できることになっております。また、貸付金利は5年固定金利で、平成25年10月現在の金利は0.97%になっております。これが財形制度のおおまかな姿です。
 それぞれの平成24年度実績等について説明させていただきます。4ページの資料3-2で、グラフの下の箱を御覧ください。平成24年度実績が載っております。合計の欄に総契約件数として895万2千件、総貯蓄残高として16兆3,856億円になっております。これは上のほうのグラフで見ていただければと思います。柱が貯蓄残高です。折れ線グラフが契約の件数です。全体として経年比較をすると、件数、残高とも漸減傾向です。この要因としては、次のページ以降で説明します。例えば、勤労者世帯の貯蓄額が総じて減少傾向にあること。あるいは福利厚生制度の一環である財形制度を実施することが困難な事業主が増えていることが大きいと考えております。
 次の5ページは、貯蓄額についてのデータです。世帯主の職業別・貯蓄額現在高と財形貯蓄の貯蓄総残高の推移です。棒グラフのほうは前ページのデータと同じです。折れ線グラフのほうで家計における貯蓄額を勤労者世帯と勤労者以外の世帯に分けて表示しております。いずれも家計における貯蓄額は、平成12年頃をピークにして減少傾向にあります。
 6ページには、世帯主の職業別・純貯蓄額の現在高の推移を示しております。純貯蓄額は、貯蓄から負債を除いたものです。ここで見て取れるのは、勤労者世帯の純貯蓄額というものは、この10年間低下傾向にあることです。勤労者以外の世帯との格差が広がっております。この原因として考えられるのは、勤労者以外の世帯においては、負債が減少する一方、勤労者世帯の負債が増加したことが要因ではないかと考えております。
 7ページは、企業規模別のきまって支給する現金給与額(月額)の推移です。勤労者の給与水準は、この10年間減少傾向にあるというのが、真ん中の実線で示した企業規模別の平均の経緯に表れております。ただ規模別で見た場合において、企業規模が小さいほど減少幅が大きくなっていることが見て取れるかと思います。
 8ページには、企業規模別・財形貯蓄制度の導入状況の推移を示しております。昨年の分科会でも示した資料で、導入割合の推移を平成11年度から5年ごとに平成21年度までを示しております。企業規模が大きいほど財形制度の導入割合が大きいのに対し、企業規模が小さくなるほど導入割合が低下していることが見て取れるかと思います。また、経年で比較すると、全ての企業規模で導入割合が減少しているという状況です。
 9ページは、参考的に示しておりますが、定期預金金利、基準割引率及び基準貸付利率の推移です。定期預金金利の実績について、国内銀行における定期預金金利は、近年は低金利で推移しているという状況です。以上財形貯蓄に関する資料を提出させていただきました。勤労者の貯蓄を取り巻く環境は厳しいです。これを反映して財形貯蓄も縮小傾向にあるということが見て取れるかと思います。
 10ページ以降は財形持家融資の実績及びその関連データを示しております。平成24年度の実績ですが、これも過去5年分の実績に加え、平成24年度の数字を示しております。貸付件数865件、貸付決定額151億円、融資残高1兆2,491億円という数字になっております。また、全体として見た場合には、棒グラフのほうが金額で、折れ線グラフが件数ですが、いずれも長期的には減少傾向にあるということが見て取れるかと思います。その要因としては、住宅ローン市場、全体の規模が中長期的に縮小傾向にあるということがあろうかと思います。
 また、平成22年度に、がくんと落ち込みがあります。これは住宅金融支援機構のフラット35が平成22年2月に当初10年間の貸付金利を1%引き下げたことで、フラット35の実績が倍増したことの影響を受けているものと思います。平成23年度から25年度にかけて若干、貸付件数及び貸付決定額がプラスになっております。これは後ほど説明します。
 11ページでは、雇用者世帯の持家率の推移を示しております。ここで言う雇用者というのは、会社・団体雇用者、また個人に雇われている方、官公庁の常用雇用者等で、財形上の勤労者とほぼ同義です。雇用者世帯と自営業主世帯を比較すると、雇用者世帯の持家率については、若干上向きにはなっておりますが、低い数字にあると見ております。
 12ページは、住宅ローン全体の新規貸出額及び貸出残高です。新規貸出額については、棒グラフですが、平成7年度の36.4兆円をピークに、長期的に見て縮小傾向になっております。また貸出残高については、平成10年度より170から180兆円台で推移しております。また全般的に見て住宅ローン市場の規模が縮小傾向にあろうかと思いますが、平成22年度から3年間連続して新規貸出額、貸出残高ともに上昇しており、今後の動向については留意していく必要があると思っております。
 13ページは、財形持家融資貸付金利引下げ後の貸付決定状況です。グラフの左上に、囲み記事がありますが、財形持家融資事業は、平成23年度まで累積欠損金を抱えておりました。しかし平成24年度中の欠損解消が確実になったという情勢を踏まえ、貸付金利の再設定を行い、平成24年10月から貸付金利の引下げを実施しました。引下げ前後の1年間の貸付決定件数を真ん中の表に示しております。再設定した平成24年10月より前の1年間、その後の1年間を比較すると、前の期では、計544件、後の期では1,175件となり、2倍強に伸びているという状況です。
 以上、財形持家融資の実績、あるいは、それに関連する住宅ローン関連のデータです。雇用者世帯の持家率が相対的に低いという状況に加え、融資に当たっては今ほど貸付金利の再設定にも出ましたが、やはり金利がポイントになることが見て取れようかと思います。以上議題3についての説明です。
 引き続き議題4についての説明です。資料4は14、15ページです。今ほどのデータを踏まえ、どういう現状として認識すべきか、あるいはどういう課題があるか、今後どういうことをやっていかなくてはいけないかを、こちらのほうに整理しております。
 現状ですが、財形制度については、先ほど会長はじめ委員の皆様の御挨拶の中でも若干触れられましたが、勤労者の自助努力を基本にして、貯蓄、持家取得といった勤労者の計画的な財産形成を国及び事業主の援助、協力により促進することで、豊かで安定した勤労者生活の実現を図ることを目的とする制度です。
 先ほどの資料データで説明したとおり、勤労者世帯の貯蓄額の現在高は、勤労者以外の世帯より少ない。また、持家率についても同様に依然として低い状況にあるといったこと等も踏まえ、勤労者の財産形成を支援するということは、勤労者の福祉の向上に資すると共に事業主の皆様にとりましても従業員の職場への定着等雇用管理の改善にもつながるものであることから、今後とも引き続き適切に実施していく必要があろうかと考えております。
 こういった認識をベースにして、2の課題です。これもデータで説明しましたが、大企業と中小企業との所得格差等から中小企業への財形制度導入の一層の促進を図る必要性があろうかと思っております。16ページに別添1を付けております。ここには、中小企業への普及促進に係る主な指摘事項を掲げております。1つ目、平成23年4月に独立行政法人雇用・能力開発機構を廃止する法律案に対する附帯決議です。このときに、雇用・能力開発機構の事業が今の勤労者退職金共済機構に移ってきたわけですが、このうち財形持家融資業務については、利用件数が減少している状況等を踏まえ、中小企業向け融資の利用促進を図る等、今後の在り方について引き続き検討することと触れられております。
 2として、独立行政法人評価委員会で業務実績評価結果とありますが、こちらにおいても、中小企業における融資の利用促進を図ることを指摘されております。また、3として、当分科会においても平成23年の分科会における委員の発言として、中小企業の労働者に対する支援が必要だという認識を示していただいております。こういったことを踏まえ、我々は中小企業勤労者にとって、制度が利用しやすい環境整備を図るとともに、以って制度の利用促進を図ることが課題になっていると考えております。
 次のページで、これまで中小企業に限らず財形について、いろいろな取組をしてきたことを紹介しております。各種周知・広報活動、あるいは勤労者退職金共済機構にこの事業が移されたことを踏まえて中小企業退職金共済事業との連携に取組んできました。例えば、地方公共団体等を通じてのリーフレット配布、メールマガジンの記事配信、あるいはホームページの全面リニューアル、中小企業退職金共済に既に加入している、あるいは未加入の事業所に対してパンフレット等を送付するということを行っております。今回配布しておりますパンフレットも、その一環として作成して配布しているものです。
 また財形持家融資の貸付金利設定の見直しについては、先ほど御紹介いたしましたが、平成24年10月より貸付金利引下げを実施し、貸付実績は大きく増加しています。こういった取組を更に積み重ねるものとして、4番で新しく実施する取組を紹介しております。1つは、中小企業勤労者貸付金利引下げ特例措置を実施したいと思っております。中小企業の勤労者に対しまして、財形持家融資の貸付金利を通常金利より0.2ポイント引下げる特例措置を実施する予定です。
 右側の財形一般で、財形制度の普及に力を入れたい。実は10月から一部実施しており、これは中小企業の事業主団体に対し、その団体の傘下の財形制度未加入の中小企業に対して、制度の説明会あるいは事業所訪問等を実施しておりまして、今回の中小企業向けの金利引下げ特別措置も含めて制度の普及をしていただくことで委託事業を行うということです。詳細については、17、18ページに記載しております。今ほど口頭で御説明した事項と同じです。17ページの3の実施時期ですが、平成26年4月1日以降の貸付申込み分より適用し、1年間の時限措置として、まずは行ってみたいとのことです。またこれについて、現在、国土交通省をはじめとした財形融資関係機関と調整を行っているところです。
 また別添3に財形制度普及事業を掲げております。概略は先ほど説明したところです。平成25年10月より実施しているというのは、今、2団体で、まずは実施している状況です。以上が議題4の資料に関する説明です。どうかよろしくお願いいたします。
○宮本分科会長 事務局から議題3、議題4について御報告いただきました。まず、議題3財形制度に係る平成24年度業務実績等について、御意見、御質問がありましたらお願いします。13ページまでを中心に御意見を頂ければと思います。
○小野委員 資料3-2の最初のページです。マクロ的に見ると、残高、件数について、漸減傾向であるという御指摘がありました。合計の欄を拝見して、財形の貯蓄残高を契約件数で割って1人当たりの残高を計算してみました。1人当たりの残高は増加傾向となっていると思います。
 そうすると、全体的に低下傾向になっていることの要因が、企業規模別の8ページのグラフを見ると、企業として採用している企業が少なくなっていることは分かるのですが、企業が採用していたからといって、全員が財形制度に入るわけではないと思いますし、そもそも財形制度の適用の範囲が、いわゆる昨今出てきているような正規と非正規の格差の問題など、いろいろなところに原因があるものではないかと思います。この辺りのマクロ的な、低下傾向の要因の分析というのはどのようなことでなさっているのでしょうか。
○松原勤労者生活課長 まず、委員から冒頭に御指摘がありましたとおり、1人当たりの貯蓄残高については、割算をすると若干増加傾向にあります。この原因は、既存の財形貯蓄を始めた方々が、毎月天引きで積み重なっていくわけですので、どうしても、過去からやっていた方々がいらっしゃいますので、傾向的には1人当たり残高は伸びていくということだと思います。
 一方、契約件数が減っているということを見ますと、やめる方と新たに入る方の差として出てくるわけですので、当然、新たに入る方の件数が少ないことが考えられます。これはおっしゃるとおり、まず企業単位で導入しているかどうかを考えますと、これ自体が減っていることもありますし、個々人の社員の方々が財形貯蓄をやるかどうかという判断もされるわけですので、その中で減少という傾向が発生しているということだろうと思います。
 この要因については、かなり様々なものがあろうかと思います。もちろん、なかなか貯蓄に対してのインセンティブなり、それは当然、収入(賃金)との関係もあるでしょうし、あるいはほかの、より魅力のある貯蓄なり金融商品に流れているものもあろうかと思います。ここら辺は、定量的にどれぐらい寄与しているかを示すのは難しいですが、そういったものが大きな要因ではないかと考えています。
○宮本分科会長 そのほかにいかがでしょうか。
○井上委員 これを見ますと、勤労者と勤労者以外の世帯で勤労者以外の世帯のほうが、はるかに裕福な生活をしているように見えるのですが、例えば定年退職して持家を持っている方、あるいは貯蓄をたくさん持っている方たちと、現に勤めている方との比較、つまり年代ごとの比較をした場合に、これほどの差があるのかどうかが、どうなのかなという気がしたのですが、その辺は何かデータはございますか。
○松原勤労者生活課長 勤労者以外の世帯の方のほうが、平均年齢的に勤労者世帯の方より高いというデータが得られています。そういったわけで、どうしても勤労者以外の世帯のほうが水準としては高くなるというのは、要因の1つとしては、井上委員のお気付きのとおりと思います。ただ、それが全てかということもなかなか言い難いところもあり、まずは、年齢の要因があろうかと思います。
○井上委員 そうすると、データとしては個人営業の中には、リタイアした方も全て含まれているということですね。
○安達勤労者生活課課長補佐 そもそも個人営業ということですので、リタイアという概念がありません。基本的には、ほとんどの場合は含まれていると考えています。ですから、年齢が少し高めに出ているという。ただ、我が国における貯蓄の傾向というのは、年齢層が高いと高く出る傾向にはありますので、そういう要因があるというのは間違いないのかなと。
 ただ、本日の資料で付けさせていただいたように、勤労者をめぐる厳しい状況も一定程度、そこは反映されていることは見ざるを得ないのかなと。いずれにしろ、複合的な要因が相俟って、こういうデータになっているのかなと考えています。
○宮本分科会長 これは家計調査から作ったものですが、勤労者世帯、年金受給世帯、個人営業世帯とに分かれると思います。年金受給世帯は個人営業と書いてある所には入っていないということですか。
○松原勤労者生活課長 分類として、勤労者世帯と勤労者以外の世帯、いわゆる個人営業と、その他という3分類がされていると承知しています。純貯蓄からいうと、「その他」が一番高くなっています。この上に、更に勤労者以外の世帯、いわゆる個人営業でない方々のグラフがあります。
○宮本分科会長 もう1つあるということですね。
○松原勤労者生活課長 はい。
○大塚委員 6ページでおっしゃった、勤労者世帯の貯蓄額が平成21年から若干右上がりになって、平成24年が一挙に下がっています。御説明では、「勤労者世帯の負債の増加ではないか」ということをおっしゃられたのですが、負債の原因としては、具体的に住宅ローンなど、そういう負債が多くあると理解していいのでしょうか。
○松原勤労者生活課長 勤労者世帯の貯蓄額は、平成22年度から平成23年度に下がって、平成24年度は平成23年度と同額の1,233万円という貯蓄額になっています。一方、勤労者世帯の負債については、平成23年度の647万円から、平成24年度は695万円と大きく増加しています。
 この要因は、9割ぐらいが住宅ローンで、後ほどの住宅の持家融資とも関連するかもしれませんが、そういった意味で住宅ローンが使われたことは1つの要因かと思います。
○宮本分科会長 そのほか、いかがでしょうか。そうしましたら、次の議題4「財形制度をめぐる当面の課題と対策」について、御意見いただければと思います。14ページからです。
○須田委員 財形制度の普及については、是非ともよろしくお願いしたいと思っています。本日、資料を配布させていただきましたが、2012年5月に、中小企業の約2万社にアンケートをしまして、5,000社から回答を受けました。このアンケートの目的は財形とは直接は関係なく、取引問題ということなのですが、本日ここで御紹介したいのが、1ページの「要旨」の枠組みに書いている最後の2行です。
 中小企業庁を中心に、中小の支援策というのはたくさんあるわけですが、公的支援策・制度がたくさんある割には、意外と事業主の皆さんは知らないことが多いということと、資料10ページですが、様々な周知のためのツールがあるわけですが、意外と支援策を使っていません。困ったときに相談する相手がメインバンクだったり、税理士、会計士という結果が出ています。
 申し上げたいのは、支援策で、例えば18ページの別添3にもあるのですが、財形制度の説明会は必要だとは思いますが、中小企業の多くは実は組合もないところが大変多いです。財形は、特に給料からの天引きでということですから、就業規則の変更が必ず伴います。就業規則の変更、例えば就業規則をどう変更したらいいかというモデル、あるいはその取扱いという、労働基準法に関する部分をセットで説明してあげないと、なかなか進まないという状況にあります。
 財形制度そのものの説明のほかに、それをやるためにどういう手続が要るのかどうかも併せて説明をしていただければ有り難いなと思います。是非ともよろしくお願いいたします。
 厚生労働省の場ですが、中小企業庁とも連携を取っていまして、「未来をサポートする」という略語で「ミラサポ」というホームページがあります。ここにワンストップ機能を持たせることと、併せて、今言いましたマネジメント部分の情報が少ないということで、中小企業庁にお願いしまして、厚生労働省がやっている労働関係の情報とリンクを張ってほしいということで、今月からそうなっていると思います。そういうことで、行政間の連携もお願いしながら、中小企業にどう情報を提供していくかということでやっておりますので、是非とも引き続き御協力、御尽力をお願いしたいと思います。
○松原勤労者生活課長 ありがとうございます。この点については、私どもとしても対応させていただきたいと思います。
 補足しますと、現在の取組としては、御指摘のとおり財形制度の導入は、正におっしゃるとおり就業規則に関わる部分ですので、そういったものについては、この事業主体である勤労者退職金共済機構においても相談に応じる体制は整えていますので、説明会の中、あるいは資料も準備して行っているところではありますが、それを引き続き、きちんとやっていくことは大切だと思っています。
 また、行政庁間の連携についてですが、私も、特に中小企業はおっしゃるとおり、ななかなか手が行き届かない場面があることは認識しております。そういった意味で、今回いろいろな委託も含めまして、広範に進めていこうという認識ではありますが、ミラサポについては私もときどき見ております。例えば勤労者退職金共済機構へのリンクも張ってありますが、目立たないのかもしれません。そういった意味で、御指摘のとおりそういった情報をきちんと手に入れられる体制を築いていくことは、大変大切なことだと思いますので、我々も折々留意して進めていきたいと思いますので、またアドバイスいただければと思います。
○宮本分科会長 そのほかにいかがでしょうか。
○上原委員 中央会に持ち帰って、PRなり課題がこうだということは、責任をもってお話していきたいと思います。
 一方で、PRが足りないのも事実で、15ページにあるように、新しく実施する取組で、平成26年4月から持家について金利を0.2ポイント引下げるということです。これがこのとおりいくのであれば、こういうポイントを狙って積極的にPRしていくことは非常に重要なのではないかと思います。右に下がっているということは、需要がないのか、競合に負けているのかということだと思うのです。さきほど「フラット35」というのが出ていましたが、その辺の競合商品もよく調べて、金利は競争力の源のような気がするのです。だから、その辺が大きなポイントなのだと思います。
 一方で、持家ということだけでいうと、比較的若い世代というか、逆に高齢になってから新たに持つというのは、価値観もあって非常に難しいのではないかと思うのです。だから若い人たちを中心に、積極的に攻めていくというのは、非常に重要なのではないかと思うのですが、昨今は雇用形態が非常に多様になっていて、非正規労働者も多いということもあります。そういう問題とも、リンクしていたり、グローバル経済で、非常に海外拠点が増えているということになれば、自分の家というよりも、海外で何年か活動するようなこともあるわけで、その辺の価値観の多様化にどう対応していくのか。
 更に最近ですと、地震だとか、地政学的な要因もあって、持家を持ってしまうとなかなか動けないわけです。その辺のデメリットというか、国民もシビアになっているのではないかと思うのです。そことまで含めて対応するのは非常に難しいと思うのですが、価値観の変化をどのように捉えるのかも重要なことなのではないかと思います。
○松原勤労者生活課長 上原委員、ありがとうございます。2つのお話があったと思います。1つ目の金利がポイントというのはおっしゃるとおりで、平成24年10月に下げたというのは、極めて明確に効いているのは見て取れるかと思います。そういった意味で、私たちの今回の措置の政策目的というのは、正に中小企業の勤労者の方々に使っていただく、それがメリットという観点で、金利の引下げを表に出しているということです。
 ただ、この場で引き下げて満足しているわけにはいきませんので、それをいかにきちんと宣伝していくかということだと思いますので、引き続き、こういう利子の情報も含めて広報活動を進めていきたいと思います。
 2つ目の論点は大きな話で、答えにくいところもあるかと思いますが、これまで我々が想定している方々より、かなり広範にいろいろと考えていかなければいけないという問題意識は我々としても不断に持たなければいけないと思っています。制度として、いかにメンテナンスしていくかも大切ですので、そういった視点も常に持ちながら、できることからやっていきたいと思います。
○柴田委員 「各種周知・広報」の所ですが、以前は新入社員が入ると、給与振込の口座を開設してもらうことと併せて、「財形にも申し込んでください」という金融機関のアプローチが強かったと思うのです。最近は、そこまで積極的ではないかもしれませんし、そういった給与振込口座の開設も、会社が一方的にどこの銀行という時代ではなくなったので、それもすごく難しいのかもしれませんが、若い時期に給与振込口座の開設と、そこが契約している財形預金の勧誘は意外と功を奏していて、そのときには銀行が来て社員に説明することをしていたのですが、今は難しいのかなとは思います。とはいっても、金融機関からのアプローチをもう少しうまく使えないのだろうかという気がします。
 実際には、いろいろな金融機関が入ってくるわけですが、その金融機関にとっての自動的に入ってくる預金という意味では、労せずして預金が入ってくるわけです。ですから、そこもうまく連携を取っていく中に入れられないのかというのが素朴な疑問なのです。
 もう1つは、「財形持家融資」のほうについては、特にマンションの購入などの場合には、マンションの販売と連携して、ここだったらこのローンというように、御紹介していただけるような形になっています。そうなってくると、マンション販売会社との連携も、ほかのローンと同じようにアプローチできて、財形も、こういう具合で利用できる方は利用できるというような連携をしていかないと、いろいろなプロセスの中で、通らなければいけない節目でうまくアクセスできるような形はできないかなと思います。
○松原勤労者生活課長 柴田委員、どうもありがとうございます。分析的に考えると、おっしゃるような状況かと思います。すぐに何ができるかというのは、我々にもアイディアがないものですから、よく担当の勤労者退職金共済機構との実務をやっている所と話をしてみたいと思います。
○宮本分科会長 前回も出たような気がするのですが、転職が多いですよね。特に若い人の場合に、「10年ここにいるかははっきりしない」という人たちが、その企業の中で財形貯蓄をするかどうかという問題があって、転職したときにもこれが有効であるという説明がない限りは、なかなか財形に入らないというところがあるのですが、これは制度的にはどうなっているのでしょうか。
○松田勤労者生活課長補佐 制度的には、基本的に財形貯蓄は一般であれば、3年はやってください、非課税であれば5年やってくださいということなのですが、今おっしゃられたように、転職がいろいろとある中において、基本的にはポータビリティはあります。ただ、前提として、転職先で財形制度を実施していることが前提ですので、それであれば持ち運びはできるということになっていますので、私どもとして、今していかなければならないのは、先生のおっしゃるように、正に財形制度をもっと導入していかなければ、そういうポータビリティが盛んになっていかないと思っております。
○宮本分科会長 若い人が財形に入るか入らないかという問題を考えるときに、例えば30代の人の未婚率です。35歳ぐらいで半分の男性は結婚していません。40歳になっても、必ずしも増えていかないという状態があるので、今までですと、財形に入るときの動機付けは、結婚して子供ができ、住宅が必要で、貯金も作らなければいけないというものがあって、財形に入るということでしたが、独身がずっと続くかもしれないという状態の中では、なかなか「持家を持とう」という動機付けも弱いですし、貯金を作っていかなければいけないということも、以前のような形では動いていないように思うのです。
 そういう人たちに「財形に入ってくださいよ」というときには、どういうことで促すのかということです。この辺りは、結婚してようがしていまいが、自分の資産を作っていくことが重要であるという、ある種の啓蒙、教育も必要になってくるように思うのですが。
○松原勤労者生活課長 今ほどの会長の御指摘は、先ほど上原委員からも御指摘のあった、正に若者の価値観の多様化に触れる問題かと思います。
 ただ、冷静に考えれば、独身であろうが結婚して子どもを育てようが、人生設計と、かかるお金というのは、それなりにかかるわけです。例えば社員向けのパンフレットには、現実の金額が掲げられておりまして、結婚、出産、マイホームはないにしても、老後をどう過ごすかも含めて、あるいは一生賃貸なのか、買うのか、もしかしたら40過ぎて結婚するかもしれませんし、そういう意味で、いろいろな費用がかかることについて、きちんと御理解いただくといった意味での、人生設計に対する教育、周知も併せて考えながら、財形制度の必要性、重要性を、周知・広報していくべきなのかなと思いました。
○小野委員 先ほど課長から御指摘がありましたが、他制度との競合という点です。私は年金をやっていまして、確定拠出年金制度が導入された際に、あのときは当時の三菱総研のレポートだったと思うのですが、「財形制度を利用すればいいではないか」という提案のレポートを拝見したことがあります。そこは一定の整理がついた上で、現在は一般財形、年金財形、住宅財形の機能別に3つに分けて、財形制度は存在していると理解しています。
 その後、確定拠出年金制度の中には、最近は従業員の拠出が認められるようになってきています。なおかつ税制上の優遇もそれなりにあるということです。デメリットとしては、60歳以前は引き出せないというものがありますが。それが年金のための貯蓄だと割り切ってしまうのであれば、比較論から見ると、年金財形との関係で、制度間で優劣が若干ついてしまうという話ですとか、最近ですと少額投資非課税制度とか、別途、税制優遇で貯蓄から投資へというような話があるということです。そういう意味では、この3つの制度があると思うのですが、普及促進という観点からいうと、税制改正要望もそうなのですが、それとは別に、自ずから一定の濃淡が出てくるのではないかと思いますが、その辺りは、どのようなお考えでしょうか。
○安達勤労者生活課課長補佐 今おっしゃっていた確定拠出年金との関連について言えば、今、正におっしゃっていたように、原則は、60歳にならないとなかなか引き出せないというようなところが、先ほどの話にもありましたように、先行きが不透明で、非常に厳しいという中で、財形年金というのは、払い始めると5年間遡及課税はされますが、ペナルティとしては少し軽減されている。あくまでも自助努力によって貯蓄していくというのが財形制度のよさであり、競合商品にはない独自性があり、これまでも一定程度利用されてきたというところがあります。
 その中で、おっしゃっているように競合されているいろいろなものとの中で、財形とはどうあるべきかというのは、不断に問い直していかなければいけないと思っております。そういう中で、財形制度でないと実現できないような独自の制度設計をしていますので、そういう独自のよさをいかに伸ばしていくのか。例えば貯蓄を原資として融資を受けられるというのも、今は財形以外にはなかなかないわけですが、そういうところのよさを、先ほど来、話が出ているような普及啓発なりPRをどう考えていくかというのが、重要なのかなと、今の先生のお話を聞いて感じたところです。
○宮本分科会長 そのほかにいかがですか。たくさん御意見を頂きましたので、この辺りで議題4はおしまいにします。
 議題5「平成26年度税制改正の要望について」です。事務局から御報告いただきます。
○松原勤労者生活課長 議題5「平成26年度税制改正要望について」です。資料5「財産形成年金貯蓄及び財産形成住宅貯蓄における育児休業等取得に伴う預入中断期間の特例措置の拡充」です。今回、本年度において財形貯蓄制度に係る税制改正要望を税務当局に提出しますので、この要望の内容について説明いたします。
 19ページです。「要望内容」です。簡単に申し上げますと、財形年金、財形住宅貯蓄においては、継続的預入をするということで、利子の非課税措置が適用されていますが、これについて、預入の中断、つまり預入をしない期間の上限は現行は最大2年ですが、子供が3歳になるまで育児休業を取った場合においても、引き続き非課税措置を受けられるという特例措置を要望しているものです。
 先ほど制度の説明で申し上げましたが、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄については、非課税措置が講じられていること、さらに財形貯蓄においては、勤労者が定期的に賃金からの天引きにより貯蓄することが本旨とされているということです。
 要望のイメージが書いてあります。「現行」の欄で現行制度を示しています。財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄においては、定期的な預入が2年以上中断された場合には、その理由の如何を問わず、最後の預入日から2年経過日以降の利子等については、非課税措置は適用されなくなるというのが現行の仕組みです。また、課税扱いということで、もうやっていてもしようがないということで解約されるケースが多いのですが、その場合は過去5年分の利子について、遡及して課税されるというペナルティも付いているということです。
 これを下段の「要望」でお示ししているとおりに改正したいということです。育児休業等を長く取る、最大で子供が3歳になるまで取るために預入を中断せざるを得ない方がいらっしゃいます。そういった場合については、期間を延長するということで、非課税措置の適用を引き続き受けながら、財形貯蓄を継続できるようにするというのが狙いです。
 右の「要望の背景」に、要望に至った背景が書いてあります。育児休業等の取得推進については、本年6月の閣議決定に係る「日本再興戦略」において、育児休業等を取得しやすい環境整備の促進は喫緊の課題であるとしています。下に文章が書いてありますが、「子供が3歳になるまでは、希望する男女が育児休業や短時間勤務を選択しやすいよう、職場環境の整備を働き掛ける」とありまして、そういった意味で環境整備が我々としての課題だと認識しています。こうした情勢を踏まえ、財形貯蓄制度としても、育児休業等の取得が推進されるように環境整備を図るということです。
 一番下に「要望の必要性(問題点)」とあります。この中に整理していますが、現行制度では財形年金、財形住宅貯蓄を契約している勤労者が2年を超える育児休業等を取得した場合、預入の中断が可能な期間を超えてしまうために、非課税措置を継続させることができず、結果的に解約ということともなり、長期の育児休業等を取得する上での阻害要因となっていることがあります。こうしたものについては、阻害要因を除去していく必要があると考えています。こういったことを考えまして、我々としては、このような税制改正要望を提出させていただいています。
 次のページに、データなり、民間企業において、育児・介護休業法に定める育児休業を超える期間の休業制度を設けている企業の増加の状況、あるいは日本再興戦略の中で該当する部分の抜粋を付けています。
 現在、税務当局との折衝中です。本年12月に閣議決定される予定の平成26年度税制改正大綱に反映するということで、関係方面の御理解を得ながら、要望の実現に向けて努力しているところですので、何卒御理解を頂ければと思います。
○宮本分科会長 ただいまの御説明について、御意見、御質問をお願いします。
○大塚委員 育休期間における中断期間の延長というのは、私どもとしても、これをずっと要請してきたところで、今回こういう形で一歩前進することは非常にいいことではないかと思っています。これは厚生労働省の話というよりは、ほかの省庁の話になりますので、是非とも頑張っていただきたいというしかないのですが、実態的に、介護のほうは全体として2年以上の休業は制度的にも無理なのかなという気もしておりますが、こういった育休、介護関係での中断もあり得ますので、これは今後の実態と民間の制度がどう進むかを見て、検討していただきたいと思います。
○宮本分科会長 そのほか、いかがでしょうか。ほかに御意見もないようですので、議題5は、これで終わりとさせていただきます。
 本日の議題について御意見は出尽くしたと思われますので、これで終了させていただきます。議事録の署名委員は、労働者代表は早川委員、使用者代表は塩野委員にお願いいたします。本日はこれで散会にいたします。どうもありがとうございました。


(了)

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