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2013年10月2日 第4回肺移植の基準等に関する作業班議事録

健康局疾病対策課移植医療対策推進室

○日時

平成25年10月2日(木)15:00~


○場所

厚生労働省専用第17会議室(16階)


○議題

1 肺移植希望者(レシピエント)選択基準の見直しについて
2 その他

○議事

○田中補佐 定刻になりましたので、ただいまより第4回肺移植の基準等に関する作業班を開催します。本日は奥村先生及び河野先生から御欠席の御連絡をいただいています。また、巽先生からは途中退席される旨を、お伺いしています。

 ここで疾病対策課長の田原より御挨拶を申し上げます。

○田原課長 疾病対策課長の田原です。72日付けで疾病対策課長にまいりました。前任の山本尚子から引き継ぎまして、この移植を含めて担当することになりました。どうぞ、よろしくお願いします。

 本日は肺移植のレシピエントの選択基準について御議論をいただくことになっています。臓器移植につきましては、国民の関心も大変高いことですので、しっかりこの基準について御審議をいただいて移植医療が進むよう御検討をよろしくお願いします。また、臓器移植対策室というのが101日付けで移植医療対策推進室と名前が変わりました。移植医療の全体を進めていくという趣旨です。どうぞよろしくお願いします。

○田中補佐 それでは、頭撮りはここまでといたします。報道関係者の方は御退室をお願いします。退室終了まで、お待ちください。

 以後の議事の進行は久保班長にお願いしたいと思います。それでは久保班長、お願いします。

○久保班長  前回の第3回の時に、分割肺と言いますか、ドナー肺の一部を分けて移植ができないかという議論がありました。その後、日本呼吸器外科学会及び日本呼吸器学会等のほうに議論をお願いしました。大体まとまりましたので、本日第4回の肺移植の基準等に関する作業班ということで始めさせていただきます。

 まず、事務局より資料の確認をお願いします。

○田中補佐 お手元の議事次第に配付資料と参考資料の記載がありますので、お手元の資料を御確認ください。資料の不足や乱丁等がございましたら事務局までお知らせください。

○久保班長 よろしいでしょうか。資料1と資料2と、それから参考資料1ということですが、ございますか。

 では、議事に入ります。まず1番目の肺レシピエントの議事につきまして事務局から資料1の「肺レシピエント選択基準の見直しについて」説明をお願いします。

○田中補佐 まず資料1に基づいて現状、基本的考え方及び対応案について事務局より御説明申し上げます。また、本日初めての御出席の先生もいらっしゃいますので、前回の作業班での説明と重複する部分も含めて説明いたします。

 資料1です。重複するかと思いますが、まず肺のレシピエント選択基準の見直し案について説明いたします。肺レシピエント選択基準について、適合基準に合致する候補者の優先順位については、ABO式血液型の一致や待機期間、肺の大きさ、術式などを勘案して決定することとしていますが、現行の基準ではドナーよりも体格の小さなレシピエントへの斡旋(大きさ適合外の肺の斡旋)ができないことが指摘されています。ここで現状について御説明します。1ページ目の下のスライドになりますが、現行のレシピエント選択基準の適合条件では血液型等の要件のほか、肺の大きさがドナーに一致していることを要件としているため、大きさ適合外のドナーに対しては斡旋は行われず、候補者リストにも挙がらないため意思確認もされていません。近年、肺の大きさがドナーよりも小さい者であっても、ドナーの肺の一部を切除する(部分肺移植等)により、安全に移植できる場合があると言われています。例えば、脳死下で、肺の提供が承諾された139例のうち、68例につきましては、肺炎や無気肺、ドナーの年齢等の医学的理由により、両肺またはいずれか一方の片肺が移植に至っておりませんが、このように移植に至らなかったドナー肺でも異常所見のある部位を切除することにより移植が可能となる場合があると言われています。ここで私たちが考えております基本的な考え方について御説明をします。まず、最新の医学的知見を踏まえつつ、安全性と公平性を確保しながら、現在、移植に至っていないドナー肺を最大限生かす方向で基準の見直しを検討していただきたいということ、また次に今回、御提示させていただいております部分肺移植になりますが、異常所見のある肺を一部切除して移植をする場合であっても、現在の医学的知見に照らせば、異常所見のない肺の移植と同等の安全性を確保できるということを前提としたいと考えています。

 次の3枚目で、現行の肺移植レシピエントの選択基準が書いてあります。こちら、適合条件としては、血液型及び肺の大きさ等が適合条件に合致する肺移植登録者を候補者としてリストアップします。そしてその中で優先順位を決定します。優先順位の付け方は、(1)~(4)に書いてありますが、(1)の親族は別としまして、(2)ABO式血液型が一致する方、(3)待機期間が長い方、(4)肺の大きさがドナーに合う方、特に成人同士及び小児同士を優先して、候補者を決定することとなっています。

 下の4枚目のスライドは、肺の大きさの評価方法として、身長から算出される予測肺活量の計算式を示したものです。

 次の5枚目のスライドは、脳死下臓器提供の承諾と移植の状況を示しています。現在、脳死下での肺の提供を承諾した139例のうち、約49%である68例が肺移植に至っていません。この68例のうち、65例のドナーは、ドナーの医学的理由により、移植に至ってはいません。1例はドナーレシピエントの体格の差、2例は適合者が不在であったために移植に至らなかったものです。下の枠ですけれども、ドナーの医学的理由とありますが、ドナーの医学的理由に関しては肺炎が63%と最も多い原因となっています。

 6枚目のスライドですが、次はドナーよりも体格の小さなレシピエントへの移植術を行うに当たるイメージを書いています。ドナーよりも体格の小さなレシピエントに対して、図に書いておりますが、例えば右の上葉のみ無気肺であった場合、及び左下葉のみ肺炎であったと部分的に医学的な異常所見を認めた場合、その一部を切除して残った肺を移植する部分肺移植を行った場合でも安全に移植を行える場合があると言われております。

  次は実際に候補者リストを作成するときの流れを示しています。現在のレシピエント選択基準により候補者を選択する場合の流れの図になりますけれども、現在のレシピエント選択基準では、肺の大きさが適合する候補者にしか意思確認はされていないために適合基準に合致する候補者がいない場合には斡旋が中止となります。そして、移植には至りません。この流れの中でいきますと、この意思確認の優先順位(1)、(2)と書いてありますが、この(1)、(2)の候補者にしか意思は確認されておりません。

 下の8枚目は、具体的に候補者リストを作成したときのイメージを表していますが、この表に示すように現行のレシピエント選択基準で行きますと、肺の大きさが適合する候補者の中で斡旋を行っていますので、表の(1)、(2)に対応する肺の大きさが適合する者にしか斡旋は行われていません。この表の下半分に書いてありますが、肺の大きさが適合外である候補者の中でも、ドナー肺の一部切除などにより移植が可能となるような候補者がいる可能性がありますが、適合外の候補者には意思確認すら行われていないのが現状です。

  次に9枚目の資料は参考資料ですが、一部切除を行う肺移植については、一部切除する部位に異常所見がある場合も想定されています。こちらの表は岡山大学における脳死下肺移植の成績を示したものになります。何らかの異常所見のある肺を移植した例と異常所見のない肺の移植例について比較をしていますが、手術後の感染症の頻度や手術後の生存率には大きな差がないように考えています。ここまでが現状の説明になります。

 次の11枚目は、今までお話した現状や、第3回の会議での御議論を踏まえた上で、対応()について御説明をします。

 12ページ目に、タイトルとして、ドナーよりも体格が小さなレシピエントの斡旋についてと書いてありますが、こちらは言い換えますと、ドナーの肺の大きさがレシピエント候補者の肺の大きさよりも大きい場合の斡旋についてです。

 対応()ですが、初めに1か所訂正をしたいところがあります。1つ目の○の3行目の右端に「レシピエント」とありますが、これを「候補者」と変更させていただきます。訂正をさせていただいた上で、対応()について御説明します。近年の医学的知見の蓄積により、肺の一部を切除すれば、安全にドナー肺を移植できると判断される場合があることを踏まえ、肺の大きさが現行のレシピエント選択基準に適合する候補者だけでなく、ドナー肺の大きさが候補者の肺の大きさよりも大きい候補者から選択を可能としてはどうか。この場合、異常所見のある部位を一部切除して移植する場合も含まれます。具体的には優先順位として法律上優先される「親族」は別として、(1)肺の大きさが適合する者、(2)血液型一致の者、(3)待機期間の長い者の順に優先することにしてはどうかという形で、対応()としました。

 次に13枚目~16枚目ですが、こちらは見開きで見ていただきたいのですが、実際の候補者選択の流れとリストの作成のイメージとなります。先ほども御提示をしましたが、現行のレシピエント選択基準に沿ってレシピエントを選択する場合の流れとイメージになります。

1314枚目は先ほども述べましたとおり、現行のレシピエント選択基準に沿ってレシピエントを選択する場合の流れ、優先順位のイメージです。繰り返しとなりますが、現行のレシピエント選択基準においては、肺の大きさが適合しない候補者には候補者は候補者としてリストアップされないため意思確認がされていません。

1516枚目が今回の見直し案を採用した流れ及びリストの作成の優先順位のイメージを示したものです。15枚目の流れ図は、ちょうど13枚目とそのスライドを対応しているものとなりますが、上段の「大きさがドナーと適合する候補者」というものが13枚目の1番、2番となります。従来の基準と同様に、肺の大きさがドナーと適合する候補者に加えまして、この度の見直し案では、その中段に、意思確認の優先順位で(3)と(4)とありますが、肺の大きさは適応外ではありますが、ドナーの肺がレシピエントの肺の大きさよりも大きな候補者に対しても候補者として選択を可能とすることとしてはどうかと考えています。

16枚目が実際に見直し案に沿って候補者リストを作成したときのイメージを表しています。表の左側に(1)、(2)が現行の肺の大きさが適合している候補者のリストです。また肺の大きさが適合外の候補者のうち、ドナーの肺の大きさがレシピエントの肺の大きさより大きい候補者も(3)番、(4)番としてリストに挙げるということになります。この場合の優先順位は先ほど12枚目で述べましたように血液型が一致している者及び待機期間が長い者を優先して順位が付けられています。

 このようにして作成したリストの中からレシピエントを選択することになります。

 以上が現状及び基本的な考え方、具体的な対応策です。こちらの見直し案の内容につきましては日本呼吸器学会及び日本呼吸器外科学会の両学会で一度、御議論をしていただきまして御了承いただいています。

 事務局からは以上です。

○久保班長 資料1は前回に出していただいたものです。対応()のイメージも確か前回に出していただいたものですよね。

○泉室長 前回の議論を踏まえて、表現を修正の上、現段階で行っていただくということでお願いしたものです。

○久保室長 分かりました。13番目のスライドと15枚目のスライドを対比して見ていただければ一番分かりやすいかと思いますが、現在は大きさでマッチしなければドナー肺は使わないということでしたが、今回はドナーとレシピエントの肺の大きさが合わなくても、レシピエントを探せるというようなことになります。一部の肺を切って使うというイメージです。

 資料について何か質問とか追加などありましたらお願いします。金子先生は今回はじめてですが、よろしいですか。

○金子班員 資料を送っていただいたので、事前に拝見してまいりました。

○巽班員 前回の資料1に関しては、5枚目のスライドの肺炎と無気肺にアンダーラインを引いたのは、単に数が多いから引いたのですか。

○田中補佐 そうですね。

○巽班員 という理解でよろしいのですね。

○田中補佐 はい。

○巽班員 この資料を見ていると、間質性肺炎という言葉が出てきますが、ドナーの医学的な理由で駄目だった理由として、肺炎という言葉でいいと思うのです。もう1つ、この資料の中に間質性肺炎という言葉が出てきますが、肺炎は医学的に言うと、間質性肺炎も含んでしまいます。更にもう少し言いますと、肺炎は細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、真菌性肺炎、更には、また少し違う器質化肺炎など、同じ肺炎という言葉を使っても、臨床的には種々の病態が含まれてきます。例えば、細菌性肺炎を一部起こしていても、それだったら抗菌薬で対応して、十分にドナーになり得るだろうと。でも例えば、難治性のウイルス肺炎、ないしは難治性の真菌性肺炎が疑われるような場合はドナーとしては厳しいかもしれない。また、器質化肺炎というのは言葉としては肺炎なのですが、肺が完全に壊れてしまい戻らない場合と、例えば、ステロイド治療で戻るような場合の器質化肺炎というのもあるので、肺炎という言葉を、公的な資料で使うと肺炎が全部入ってしまいますよね。その辺はよろしいのですか。

○久保班長 この場合の肺は、もともとドナー肺がきれいな方に気管内挿管している間に肺炎を起こしたという、多分、これは恐らくそういう意味ですね。一般的に言う感染症に伴う肺炎と考えたほうが。

○巽班員 細菌性肺炎と考えてしまってよろしいのですか。

○久保班長 ただ、これは提出された挿管資料をそのまま使っているので、恐らく肺炎と書いてあると、そのまま肺炎となっていると思うのですが、イメージとしては、病的なドナーの肺に何かあればそれはもう使えませんので、最初からきれいな肺ということで、ただ、挿管している間に肺炎や無気肺などを起こしたとか、あるいは胸水が溜まってきたとか、そういうことで、恐らく断念したということですよね。

○田中補佐 移植施設が断った理由として、肺炎と指摘しているものでありますので、詳細について詳しく調べたわけではないです。その肺炎の種類別をこちらで詳細に調べ上げたわけではありません。

○近藤班員 ほぼ細菌性の肺炎だろうと思いますが、実際にレントゲン写真やCTで陰影が明らかにあって、あとは内視鏡の所見で持続的に膿性痰が出てくるようなケースです ね。そういうものについては諦めるということになります。具体的にはどのような範囲かまでは突き詰めていませんが、そういうケースがほとんどというか、多分、全例だと思いますので、ほぼ細菌性肺炎と考えてよろしいかと思います。

○巽班員 細菌性肺炎であれば、軽症の場合は、場合によっては移植してしまっても抗菌薬で対応ができるという選択肢はないですか。

○近藤班員 ちょっとリスクがありますね。

○巽班員 やはりリスクはありますか。

○近藤班員 移植後、肺移植の場合はかなり免疫抑制を強くしますので、抗菌薬の選択を誤ると一発で生命を失うことになり、結構リスクが大きいといえます。実際にそのような経緯で失った経験もありますので、陰影があったとしても膿性痰が吸引しても出てこないケースや、あるいは経過を見て少し陰影が良くなってくるようなケースは対象とすることはありますが、経過を見て陰影が悪くなってくる場合や、あるいは膿性痰、内視鏡の所見が非常に悪い場合は、最終的に胸を開けて見たうえで判断ということもありえますが、その時点で見た感じで駄目だなというケースは、かなり難しいと考えてよろしいと思います。

○巽班員 リスクが高いということですね。

○近藤班員 移植医療というのは移植手術を実施する人間が、臓器を摘出する現場にいて提供臓器を見ているわけではないというところが非常に特殊な医療と言えます。すなわち、2つの別々のチームで行う医療ということですので、かなり安全域を取ってやらないと危ないと考えています。

○久保班長 ほかに何かありますか。一応、呼吸器外科学会の対応案については、呼吸器外科学会と呼吸器学会で、移植関係の各委員会に聴いておりますので、呼吸器外科の近藤先生、いかがでしょうか。

○近藤班員 もともと要望書を出した立場ですが、厚労省で非常に分かりやすくまとめていただいたので、それについて委員会にもう一度図りましたが、特に異論はありませんでした。

○川合班員 この対応()の新しい案は、いわゆるオーバーサイズドナーを小さくして、サイズマッチングすることだと思うのですが、結果としてアンダーサイズになっても構わないのですか。それもOKですか。

○近藤班員 アンダーサイズというのは。

○川合班員 つまり、オーバーサイズドナーのものを小さくした場合、今度は小さくなり過ぎるかもしれないですね、肺葉にしたら。それでもOKと言うならそれでもいいのですが。それは駄目というラインを引くのか引かないのか。

○近藤班員 そこは非常に難しいところです。1肺葉だけになるというケースもあるでしょうし、もちろん上葉、下葉のうちの上葉を部分的に切除して、残りの上葉と下葉ということができるというケースもあるかと思いますが、先生がおっしゃるように一部分を切り取った全体の量での、今度はサイズマッチングを本来なら考えなければいけないのでしょうが、下のラインをきちんと引くのは。特にその中に子供が入ってきたりしますと非常に難しくなるということはあるかと思います。ある程度は移植を実施する施設の判断に任せるしかないかと考えます。

○川合班員 結果としてのアンダーサイズがOKであれば、最初からのアンダーサイズもOKという話になるのかということになるわけですね。小さなドナーでもいいのではないかと。前提とするサイズマッチングが崩れるということになるわけですよね。

○近藤班員 そうですね。ただ、生体の経験から見ても、余り極端にアンダーサイズになるようなものは避けるでしょうし、片肺移植になるようなケースでは肺のボリュームに余裕がないので、できるだけ余裕のある肺を植えるという判断をすると思うのですね。下のほうにはみ出るような移植はできるだけやらないようにするのが普通だろうと考えます。

○久保班長 呼吸器学会のほうの先生からの御意見をいただきたいですが、いかがですか。

○巽班員 全く問題はなしということです。

○久保班長 問題はないですか。はい、分かりました。佐地先生、小児科から今の御意見はいかがですか。

○佐地班員 お伺いします。部分的に片肺をトリミングして移植するということは90年代から考えられていて、フランスなどは実験的にやられていたと思います。なぜ日本ではやらなかったかと言うと、大きさが合わないから正常な肺をもったいないけど捨てて、小さくしてサイズを合わせて片肺に移植するということが、倫理的には余り好ましくないということで、今までやられていなかったことだと思います。

 今回の場合は、適合する候補者が万が一いない場合には、正常な部分を捨てて、肺葉をトリミングして小さい患者に移植することもあり得るということもあるのですね。

○久保班長 そういうことですよね。

○佐地班員 大きすぎて候補者がいない場合には。

○久保班長 いない場合には。

○佐地班員 (サイズの合う人がいない場合は)トリミングすることはありますよね?

○近藤班員 大きすぎてではないですよね。

○久保班長 病的な肺があっての意味ですね。

○佐地班員 それも有りということにはなりますね。本当は技術的には難しいでしょうが、例えば右片肺が使えて、それを子供の場合に右と左に一部を裏返してということもあり得るということですよね。

○近藤班員 それは、この考えには入ってないと思いますね。

○佐地班員 入ってないのですか。多分それも含まれるわけですよね。そこまでは禁じてないので。確か、先日3歳の子で、移植の位置的には相当難しい吻合をしたことがありましたね。

○近藤班員 中葉の1葉移植ですね。

○佐地班員 本当は裏返しは難しいとは思うのですが。

○近藤班員 裏返しの報告はあることはあることはありますが、それは全葉でです。肺葉ではなくて、右肺左肺の全体ということで、肺葉で裏返しの移植はなかなか解剖学的に厳しいかもしれないですね。

○佐地班員 理論的には含まれても実際はできない、多分ないだろうということですね。

○久保班長 あくまでドナー肺の大きさを最優先して、病的な肺が一部にあって、そのままでは使えないという大前提のもとで、良い所だけを切り取って、違うレシピエントを探すという発想でよろしいのですよね。

○佐地班員 生体移植は血液型のABOが適合するのが、計算すると37%前後のイメージなのです。移植は肺の大きさでほとんど決まっていて、余ると言ったらおかしいですが、もったいないケースも出てきますね。今まで無駄にしていたのを減らせればいいわけですが。

○久保班長 そうです。

○佐地班員 必ずしもそれは0にはならないですね。

○近藤班員 0にはなりません。

○佐地班員 ならないですね。残念ながら該当なしというケースも最後には出てくる。

○久保班長 出てくるのですね。これの名前は肺葉移植ですね。

○泉室長 若干補足的に事務局から説明いたしますと、このレシピエント選択基準は、飽くまでもレシピエント選択の公平性を図るために、平たく言えば、候補者リスト作成ルールです。実際に肺が患者の方に適合するかしないかは、当然、移植チームでしっかり判断いただくことを前提した上で、どうしたら公平なルールができるかだろうと思います。

 今お話があったように、小さくしすぎた場合はどうなのかとか、裏返したらどうかについては、多々、先端的な医療技術の意味では、いろいろな議論があろうかと思いますが、取りあえず、この選択のルールの上では考慮はしていません。

 もともと始まった議論の発端は、大きさ適合外であっても術式などを工夫すれば有効に活用できる肺があるのであれば、ドナーの御意思を尊重する形で活用することはあり得ることではないかという発想から始まったものと理解しております。最終的には、資料2に若干つながる議論ではありますが、決められることまでを決めて、決められないことは移植チームの判断に委ねることを基本的な思想としてできております。

○久保班長 一応、医学的な理由で移植ができなかった方が大体半数おられて、そのほとんどがドナー肺の医学的な理由で、肺葉の中に健康な肺、使える肺があれば、そこで考えたいという発想です。

○佐多班員 最後に一つだけ聞いておきたいのですが、最後のページの1516ページに、一つの案としてこういうものが出てきたときに、現状と見直し後では、どれぐらい多くの方が救われる可能性があるのかという見積りはできるのか。例えば今までの例の中で、この人はできたかもしれないなど、何かそのような数字はありませんか。

○近藤班員 正確な見積りはしておりませんが、現在、脳死下での臓器提供は年間40件ぐらいですよね。

○田中補佐 そうですね。

○近藤班員 肺の移植は、この130例目までは6割ぐらいですが、現在は、提供された方の8割ぐらいで肺移植ができていると考えていいと思います。2割くらいが肺移植できないと考えますと、年間8例ぐらいになりますか。その中で肺の移植を承諾していない人ももちろんいると思いますので、せいぜい年間45件が対象になると言えるかもしれません。その中でさらに、先ほどのお話しにもありましたように、これは余りにも小さすぎるとか、非常にこれはリスクが大きいなど、移植を実施する側で判断をしてできないケースや、あるいは血液型の適合という問題もあることから、全部が実施できるわけではないので、せいぜい年間に12件あればいいという程度の予測になるかと思います。

○佐多班員 できれば10%ぐらい増えるとか、かなりいろいろな方が助かるということを言っていただけると、皆さん納得すると思うのですが、今の数だとすると、年間お一人か二人になりますが。

○近藤班員 それは全体の数が少ないからそうなるわけで、提供数が増えれば当然対象者が増えてくるという可能性はあります。

 別の観点から申しますと、どうしても助けたい場合は生体肺移植へ向かうことが多いのですが、生体肺移植の件数は1件でも少なくしたほうがいいだろうということもありますので、12件とはいえ貴重な数と考えます。

○佐多班員 現場で考えると12件ですか、全体を考えると。

○近藤班員 確かに少ないですが。

○久保班長 僕も生体肺移植は減ることはいいことだと思いますし、健康な方を傷つけるわけですから。

○近藤班員 生体肺移植は、全国で年間15件ぐらい実施していますが十数件のうちの1件でも2件でも減って健康な人の肺を取ることが少なくなってもらったほうがよろしいです。

○佐地班員 1つは待機リストの中に子供の数が非常に少ないというか不明瞭です。小児呼吸器疾患学会に、45年前から、「要るのだからリストを出してください」と言っていますが、動いてくれない。3歳、4歳で白血病の治療の後の肺腺維症の子供が何人もいます。あとは未熟児後ですね。何人も待っているのですが、リストを出していただけていないのです。肺高血圧の子も40人ぐらいいます。統計学的に言うと、その倍か、肺移植が適用になる同じぐらいの数の肺疾患の小さな子が多分いるのではないかと。今、白血病の晩期障害での5年生存率が高くなっています。9割以上ですね。

○久保班長 閉塞性肺炎ですね。

○佐地班員 BOの数ですね。そういう元気な子供たちがいるので。数は同じぐらい3040人はいるのではないかと思うのですが。

○久保班長 一応、レシピエントの候補になる方は十分いると。だから、できればこの方法を生かしたいことだと思うのですが。

 次に資料2です。前回の議論を踏まえて、事務局で「今回確認しておきたい論点」をまとめていただいておりますので、事務局から説明を願いいたします。

○田中補佐 続きまして、資料2に沿って説明いたします。「今回確認していただきたい論点」としてまとめていますが、本見直し案に関して、前回の作業班の後、事前に先生方にも御意見をお伺いしましたが、補足的な御意見を頂きましたので、資料2に基づき、事務局の考え方を御説明いたします。

 まず本見直し案を考える上で、「前提となる医学的知見」とあります。1つ目に「我が国における生体肺葉移植について」という題名で説明します。現在、我が国で行われている生体肺葉移植の術式に関しては、1.生体両側肺葉移植、2.生体片側肺葉移植があります。資料の3ページに具体的なイメージ図を示しています。我が国で行われている生体肺移植は、ドナーの肺葉、主に下葉をレシピエントに移植する肺葉移植を行っています。片側肺葉移植では右下葉のみ、又は左下葉のみ、両側肺葉移植では、右下葉及び左下葉を移植するという術式を、主に採っています。

 この両側、片側の術式の選択については、レシピエントの移植時の体格(胸郭の大きさ)CTにより計測した肺の容量、レシピエントの全身状態などを基に、移植施設の判断により決定されております。特に、低年齢層の小児におきましては、その体格(胸郭の大きさ)により、他の年齢層に比して片側肺葉移植を選択することが多いとされております。

 次に、「小児の肺葉移植特有の問題」です。小児の肺葉移植に関しては、術式及び移植時期によっては、レシピエントの成長とともに移植された肺は膨張するものの、肺葉の機能は変わらないため、将来再移植の必要が生じる可能性があると言われております。特に片側肺葉移植においては、その可能性が高いと言われております。今回の見直し案におきましては、現行のレシピエント選択基準に適合する候補者だけでなく、小児、成人に関わらず、肺の大きさがドナーよりも小さな候補者まで斡旋範囲を拡大する結果、小児に対する脳死下での肺葉移植が行われる機会が増加する可能性があるといえます。

 これらの前提を受けまして、「今回確認していただきたい論点」として、以下の4つを挙げています。1.脳死下肺移植においては、ドナーの意思を最大限尊重する観点から、当該レシピエントの現時点の病態を勘案して、最も適切な治療であると判断される場合にのみ行うことが妥当である、2.脳死下での片側肺葉移植と両側肺葉移植に関しては、より一層の慎重さが求められ、特に片側肺葉移植は再移植に至る可能性が高いことが予想されるので、適応を十分に検討する必要がある、3.再移植に至る可能性が高いとしても実施すべきとの判断は、ドナーの肺の状態やレシピエントの状態によって、多様な要素を総合的に考慮して行う必要がある、4.肺葉移植の実施の可否は、最終的には移植施設の医師による個別の医学的な判断に委ねざるを得ないことから、肺移植レシピエントの選択基準上では、小児の肺葉移植に着目した特段の制約条件等を設けないこととしてよいか。こちらに「小児の肺葉移植に着目した特段の制約条件等」と書いていますが、今回のレシピエント選択基準においては、レシピエントの範囲を広げるということで様々な候補者の方に移植の機会を広げるというものであり、術式に関しては、移植施設の裁量で決めていただくこととなりますので、特段こちらに関して術式を決めるものではないということを確認いたします。

○久保班長 順番に1からいきます。1.脳死下肺移植においては、ドナーの意思を最大限尊重する観点から、当該レシピエントの現時点での病態を勘案して、最も適切な治療であると判断される場合にのみ行うことが妥当である。これは特に異存はないかと思いますが、いかがでしょうか。

○佐多班員 「ドナーの意思を最大限に尊重する観点」という所は、どの辺で担保していくのですか。

○久保班長 ドナー肺が医学的理由で、今まではそれを駄目にしていたのですが、移植したいというドナーの意思を部分肺葉移植で助けようと。

○佐多班員 それで十分に意思は尊重されていると考えるわけですね。全部いかないという部分が少し引っ掛かるなと思ったので。その辺をきちんと御説明されるか、何かすることが必要なのかもしれないです。

○久保班長 飽くまでも現時点では、医学的理由で移植されないドナー肺であっても、更に可能性を探るということになるわけですね。

○佐多班員 一部は使えない部分があるけれども、ドナーの意思を優先して、ほかの部分を移植に使えるようにさせていただきますということですね。

○久保班長 ここはそういう意図ですよね。

○泉室長 ドナーの意思を最大限に尊重するといったときに、恐らく2つの次元の違う意味があろうかと思います。1つは、今、御議論いただいていたような、無駄にせず、なるべく困っている患者の下に届けてほしいというドナーの方の思いです。

 もう1つは、個々の治療について、それが最善の治療であるという判断の下に使っていただきたいという、無駄にするしないはともかくとして、一番いいと判断して使っていただきたいという、少し次元の異なる話があろうかと思っております。

 私どもがこれを書いたときに、念頭においていたのは、後者のほうの、もしかしたらうまくいかないことはあるかもしれないけれども、その患者にとって最も適切な治療として、この肺葉を生かしてほしいというところだと思います。もちろん、ドナーの意思を私どものほうで忖度するのは不尊なことではありますが、そうはいっても最大公約数的なドナーの皆様の意思を尊重したいということです。

○佐多班員 きちんと説明することも必要なのかなと思いましたので。

○久保班長 ほかによろしいですか。

○近藤班員 臓器の一部を使える使えないということもありますが、使える臓器をみんな移植してくださいという方に関しては、心臓は大丈夫だったけれども肺は移植できなかったとか、腎臓は駄目だったけれども膵臓はできたとか、臓器ごとという観点でもいろいろなケースがあります。ですから、結局ドナーの意思というのは、使えるものについてはなるべく有効に使ってくださいと解釈するしかないかなと思います。

○佐多班員 我々は移植する側の考え方であって、ドナーとなる方の考え方ではないかもしれませんから、そこの乖離が起きるので、そこは注意されたほうがいいかもしれないと思いました。

○泉室長 文章の整理が十分でなかったかもしれませんが、佐多先生のおっしゃる意味は分かったと思いますので、今後の行政の運営の上でも配慮していきたいと思います。

○久保班長 問題は2番目ですが、特に小児に肺葉を移植した場合、特に片肺の場合に再移植になる可能性がある。それをどのように評価するかということなのですが、佐治先生いかがですか。

○佐地班員 どうですかね、中葉と下葉で随分大きさは違うと思うのですが、6歳、4歳、3歳とやっているのです。6歳のPPH4歳の、富山と福岡と、この間の3歳。一番大きくなっている6歳の子は、私の担当の子だったのですが、今は1415歳になっています。身長は小さいままで、成長期に普通の子と同じように大きくなれないという、細くて小さい。そういうときに、もう1回エントリーして、残った肺をもらうというか、そのときお母さんが離婚をして1人だったのですが、また新しい旦那様が来た場合に、日本はそういう場合は許せるのですか。アメリカでは、家族の生体でも家族は35分ぐらいしかなくて、元の旦那様、親戚、恋人も入っているそうなのですが。そういう時間的な余裕があれば、元気には生活していけると思います。成長期を越えるか越えられないかというのは、子どもは一番問題だと思います。随分体が違いますので。

○久保班長 これは移植される外科の先生の判断によらざるを得ないような気がするのですが。

○近藤班員 再移植になるかならないかは、先生がおっしゃったように、移植後6年ぐらいたっているケースが最長ですので、まだそういう時点にまでは至っていないのが現状です。先般の中葉を移植したような子は、将来的にどうなるのかよく分かりませんが、外国では実施されておらず、参考になる前例はありません。

○久保班長 そうですね。

○近藤班員 ほとんどが日本で行っているケースで、そのうえ経験数が少ないので先行きのことは何とも言えませんが、再移植をしなければならないことになる可能性があることについては、親御さんも、もちろんかなり覚悟のうえでやっているということだと思います。

○久保班長 そういう可能性があるということは、十分患者に。

○近藤班員 それはお話をしたうえでやらなければいけないと思います。移植で助かる機会を2段階に分けるということで、そうしないと移植を受ける機会が全くゼロになってしまう、そういう考え方ではないかと思います。

○佐地班員 現実は、移植する時点で、心不全や呼吸不全で、かなり小さいです。ステロイドを一時期使いますので、身長が伸びないのです。かえって適合してしまっているというか、みんな大体小柄です。

○久保班長 再移植にならない場合もあり得るし、なる場合もあると。それは、その時点では分からないということで、十分に患者には説明しなければいけないと。

○泉室長 そうですね。ただ、体が大きくなりたいというのは、子どもの普通の願いでもありますし、治療される側は、当然それを目指してやられるのだと思います。それとともに、再移植が必要となる可能性も高くなるということで、ある種のジレンマかと思いますが、それも私どもの思いとしては、3の「多様な要素を総合的に考慮して」に本当に込められているわけでございます。

○久保班長 32と同じような議論ですが、その可能性があるとしてもやったほうがいいでしょうということで、よろしいですかね。

○廣瀬補佐 補足いたします。3を書いた趣旨ですが、「多様な要素を総合的に考慮して行う必要がある」というのは、正にこの字の通りですが、実際に多様な要素を総合的に考慮して、非常に慎重に医学的知見を各移植施設の中で結集し、かなり熟慮に熟慮を重ねて決定をしていることについて、こちらに御参集の先生方全員が、移植施設の実態をきちんと踏まえた上で納得していただくことが必要なのかなと思っておりますので、是非この場で、実際に小児の肺葉移植の適応を決定するときに、先ほど先生から幾つかの症例の提示もございましたが、このようなリスクもあったけれども、こういう要素が考えられたので踏みきりましたとか、是非クリニカルなお話をたくさん聞かせていただければ有り難いと、事務局としては考えております。

○久保班長 それは今後の問題ですよね。

○廣瀬補佐 今後というか、この場で先生方が認識を共有していただくことは必要だと思います。

○久保班長 しかし、私たちに認識しろといっても、難しいのだけれども。

今日は移植施設は1つしか来ていませんので。

○近藤班員 東北大学では片肺葉移植については2件の経験があるのみです。子どもに限らず肺移植をする場合、両側ができるのであれば両側を目指すのは当然です。もちろん提供する人の意思というのもはありますが、やれるのであれば両側を目指します。両側ができるケースに対して、一時的に片肺葉でしのぐということは、これまでどの移植施設でも行っていません。

 先ほど佐地先生がおっしゃいましたように、体格の問題として、1肺葉でも大きすぎるというのが、今までの全てのケースだと思います。最初のケースでは、どういう計算式か分かりませんけれども、予測の200%ぐらいの大きさと計算されるお母さんの右か左かの下葉を移植しました。このように、片肺葉でしか対応できないというようなケースでしかやっていません。

 脳死提供肺の利用の拡大においても、同じようなことを考えることになろうかと思います。つまり、その方法でしか対応できないというケースしかやらないということになると思います。

○佐多班員 例えば移植の施設について、学会として認定するときに、基準などがございますよね。それを何年かたったときに改定するとか、認定施設を基準に基づいて認定する、施設の更新とか、実際にそこはどのような実力があるのかどうかという、学会としてそういうシステムはございますよね。

○近藤班員 施設の認定基準はありますが、今のところ更新の基準はありません。

○佐多班員 1回認定されたらそのままなのですか。

○近藤班員 そうです。ただ、ほかの臓器移植のケースで、例えば移植の成績に明らかに問題があるといったケースがあった場合は、認定を取り消されていることもあります。

 幸いなことに、今まで肺移植を行っている施設でそういう所はありません。認定された後は、実施施設で実践している移植医療の成績なりで判断するしかないのではないかと思います。

○佐多班員 前回も申し上げたかもしれないけれども、厚生労働省は、一応基準などを作ってやっていくわけですが、あとは移植医療の担当の方の判断で、あそこは別に悪意があってうんぬんではなくて、いい方向で考えて判断されて仕事をされていると思うのですが、逆に、そこの部分を別の基準で担保するのは結構大事なことかなと思うのですが、そうすると、一旦移植施設を認定して、そのあと全然更新も査察もしないとか、そういうのは具合が悪いのではないか。ほかの施設でも、必ず何年か置きにどうなっているかの実態調査を含めて、基準を基に審査をしていく形というのは結構あるのではないかと思います。大学の先生も含めていずれ年を取っていくので、どこかでメンバーも替わったりとか、いろいろなことが起きるのではないかと思うのです。

○近藤班員 これまで肺移植実施施設の認定は、心肺移植関連学会協議会という、5つの学会と研究会が参加した組織で認定基準を決めて審査をし、臓器移植関係学会合同委員会に推薦をするということで行われてきました。毎年の脳死肺移植の実施例については、肺心肺移植関連学会協議会に報告され検討されております。

 それから、例えば手術後に術死と思われるケース、1か月以内とか、非常に短期間に亡くなってしまうようなケースというのはがあった場合には、報告する義務を負わせています。何か問題があった場合には審査をすることになっておりますので、そういうことで対応はできているかなと思います。今までそういったケースというのは、1例ありましたが、それについては内容を検討して、審査をして、結果を出してはおります。

○佐多班員 ところが、ネットで見ても、各施設で症例数はバラバラですよね。移植の症例の件数は、それぞれの場所によって大分違っているような気がするのです。そうすると経験値が年に1例とか2例しかない場合もあるし、もっとたくさんやられる所もあるし、そうすると練度が全然変わってきてしまうと思うので、後でレビューするのは大事なことだと思うのですが、それで十分なのかという疑問は出てくるのではないかと思います。

○近藤班員 幸い、今までのところは成績に大きな差はありません。そもそも日本全体の頻度が低い状況です。世界で3万例以上が報告されている中で、日本は、たかだか300例ぐらいしか実施していません。そのような中で、練度が低いにもかかわらず成績が優れているです。だから、必ずしも頻度だけの問題ではなく、いろいろな要因があると思います。経験数が少ないと、逆にそれに集中できるというメリットもあると言えます。日本の成績が良い理由はよく分かりませんが、幸いなことに、年間症例数は増えましたが移植成績は悪くなっていません。

 各施設を見ましても、確かに1998年に認定した4つの施設と、2005年に追加して認定した施設があって、後から追加した施設での登録者数は少ないと言えます。患者側としてもいろいろ情報を収集した結果、以前からの施設での移植を希望する傾向があると思います。どうしても登録者数に差が出てきてしまうということがありますので、実施数は異なってきます。

○佐多班員 学会側ではそれはやらないけれども、患者側が選んでいるということになりますので、それは学会側として考えていただいたほうがいいのではないかと思います。

○久保班長 私も第三者機関で、肺移植の適合施設を決める委員をしたことがあるのですが、かなり厳しくチェックされます。多分、チェック施設に関しては十分な能力はあると思いますし、生体肺移植も十分にできますので、今回のこういう肺葉移植に対する経験もあると判断していいかなと思います。

○近藤班員 肺移植の全体を見る組織として、肺心肺移植関連学会協議会があります。先生がおっしゃるように、肺移植実施施設は全てが大学で、大学以外での実施は難しいと思います。したがって、大きくメンバーが入れ替わることもあります。実際に、今まで1件そういう事例がありましたが、施設の数が限られておりますので、どこでどのように人が入れ替わったかというのは、関係者はみんなすぐに把握できるのです。大きく体制が変わった結果、移植を実施する体制として疑問が生じた場合には、一時的に資格を取り消すといったことはやらなければいけないと考えていますし、今までに実際に1件肺移植の実施施設でそのような取り消しの事例がありますた。こういうことから、機能はちゃんと果たせていると考えます。

○佐多班員 もう1つは、先ほどおっしゃっていたように、肺炎といってもいろいろな肺炎があるわけですし、治療という観点からいっても、いろいろな差があるわけですから、そういうデータは余りまとめられていないような気がしたのですが、そんなことはないのですか。

○近藤班員 ドナー側のデータは、私たち移植を実施する立場のものがは得ようとしてもなかなか得られないのが現状です。

○佐多班員 でも、別の移植チームがいて、摘出してくるわけですよね。

○近藤班員 いや、提供者に関する細かな臨床情報は、そのときの移植に適するかどうかという事に関する臨床所見を個別には得られますが、より踏み込んだドナー側の情報やその集計データを私たち移植する側が集めることはできません。

○佐多班員 ただ、感染症を考えたときには、ドナー側のそういう組織について、ある程度の調査が必要だということは、今までもいろいろなことで言われているので、その辺の情報は、両方を総合的に合わせておかないと、余り役に立たない、それで終わってしまうという問題になってしまうので、その辺が。

○近藤班員 臓器移植ネットワークの課題と言えますが、確か臓器移植ネットワークも最近倫理委員会を組織して、ドナーに対する情報についても、ある一定の手続を踏んで、臨床研究として申請し承認を得た場合は提供してくれるような体制になりましたので、今後はそういうことはできるようになっていくのではないかと思います。今まではできませんでした。

○佐多班員 今後は、そういうものがないと、いろいろなところで説得する理由にもならないのではないかと思います。

○久保班長 今後は、ドナー肺の状況をしっかりと把握した上で、こういう肺葉移植ということになるわけですので、ドナー肺の状態をかなり客観的に評価することは必要かと思います。それは厚生労働省からもお願いします。

○佐多班員 レシピエントの感染症は、またいろいろ起きるのでしょうけれども、そのときにどちら側から持ち込んだのかとか、そういうことも分かるような形で考えておいていただいたほうが、今後のためには非常にいいことなのではないかと思います。

○近藤班員 ドナーの喀痰の検査などは得られていますので、移植施設全部の情報を集計しなければいけませんが、集めることはできると思います。

 今後、色々なことができるようになっていくと思いますが、これまでの集めたデータでも、先生のおっしゃるようなことはできる可能性があると思います。

○佐多班員 そういうのはどこかにまとまって書かれているのですか。

○近藤班員 まとめられてはいなかったと思いますが、正確には覚えておりません。

○佐多班員 できればオープンな形で情報提供できるような形にしていただけると、非常に役に立つのではないかと思います。

○久保班長 ほかにいかがですか。

○佐地班員 現場の声をということでしたので、幾つか現場の困っているところが改善されると思っているのですが、1つは、みんな呼吸不全、心不全で、待っていて間に合わなくてということなのですが、子どもは補助循環の選択が少なくて、バルーンパンピングとか、ベルリンハートも、実質は4人やっていますが、人工心臓もまだないですし、補助循環のチョイスが少ないので、呼吸器だけで頑張らなければいけないと。黙っていても子どもの体は大きくなりますので、そういう意味で時間とともに必要性が増してくるというか、こういう選択が増えることは、レスキュー的な意味では非常に助かると思います。

 それから、先ほどの生体肺葉移植の選択は、2人マッチするというのは、私たちですと37.5%で、63%は生体もできないのです。肺はABOでないと駄目なので、心臓や腎臓では、ABOのミスマッチで今は普通にやっていますが、それが肺はできないので、3分の2の人は生体にもあり付けない。片肺だけでいいという人もいるのですが、両肺が必要だとすると、究極的にはトリミングして、片肺が出た場合に、両肺をしなくてはいけないというので、一緒に生体で片肺をやるとか、生体が1人しかいなくて困っていた人が、トリミングで肺が出たから、緊急で。アメリカでは、緊急で日曜日の午後から、平日はオペの予定がいっぱいなので、緊急移植を日曜日にやるというのを経験したことがあるのですが、そういう緊急のセレクションも可能になるのではないかというように思います。

 あと、子どもの正常な発育というのも担保しなければいけないので、そういう小さな時期には、尚更やりたい、成長が終わってからでは遅いということですので、そういう面では、現場では、こういうルールができると、セレクションが深まるというか、内科的にもセレクションが深まる。

○金子班員 施設間で症例数にかなり差があるということですが、実際に紹介する側ですと、患者さんがインターネットなどでお調べになって、どこの施設へ行くという患者側の意思がかなり強いです。ですから、近くに移植の施設があっても、先行する4施設を選択するケースが非常に多くて、遠方であっても、待機者リストに入った場合には、御家族で近くに転居されて待機者リストに入っているという方も、決して珍しくない状況です。

 ですから、待機者の数が施設によって全然違いますので、移植の施行数も違ってきます。これはベースには、患者さんと御家族の意思で、ここの施設へ是非行きたいということで、かなり遠い所でも、そういう選択をされるのが現状ですので、数に凹凸ができてしまうのは仕方ないのかなと思います。

 逆に、そういう所は駄目だから、近くのここへ行きなさいということが、果たして可能かどうかは疑問があるところです。

○佐地班員 年間40例の提供がありますが、ある試算によると、もうこれは増えない、特別にルールを変えない限りは、40例ぐらいでずっといくと。子どもも、2年間で、去年の富山の2歳半の溺水の子しか出ていなくて、その子のときは肺レシピエントはいなかったので、肺は使われていないのです。

 日本は40例でも、平均16.7臓器ということで、世界の4.5臓器の1.5倍ぐらい臓器が生かされているわけですから、臓器提供が少ない割には、ちゃんと提供されているので、それをうまく使えるというのは本当に窮地には非常にいいのではないかと思います。

○久保班長 4番目の肺葉移植の実施の可否については、特に、肺のレシピエント選択基準の上では、小児の肺葉移植について着目した特段の制約条件等は設けないということでいいかと思いますが、それでよろしいですね。

○近藤班員 そのようにしていただければと思います。それでなくても、数が限定されるケースで、その場で方針を考えなくてはいけないというところもありますので、そこは任せていただくしかないと思っています。

○久保班長 現場の呼吸器外科医の先生方の判断にお任せするということになります。よろしければ、若干、患者に再移植の可能性があることもしっかりと説明するとか、ドナー肺の医学的な情報、単なる肺炎というだけではなく、細菌性の肺炎だとか、間質性肺炎だとか、そういう詳しい情報も取るようにしてもらいたいという条件が付きましたが、ほぼ事務局の対応案で了承するということでよろしいでしょうか。

○川合班員 レシピエントの選択がネットワークでなくて、移植施設で行われることになるわけですね。だから、心臓の場合でも、小さくてもヘテロトピックをやればできるわけですが、日本では許されていないわけです。異所性の心臓移植をやればよい。だけど、今はレシピエントを決めるのはネットワークであるという大前提でやって、それでレシピエント間の公平性を保っているところがあるのですが。移植施設の考え方で決められるということで、そこが崩れるわけですね。

○泉室長 事務局はそのような理解はしておりません。飽くまでも候補者リストは臓器移植ネットワークで作っていく。ただ、具体的にその肺をアクセプトするかrejectするかというのは、移植施設側の医学的判断に基づいて行われている。その枠組みは変わっていないと思っています。

 ただ、そこで最新の医学的知見に照らせば、肺葉移植あるいは部分的に切除するといったことも可能になってきてはいるので、そういった前提を踏まえて、今回、移植候補者リストありで、適合外であっても選択できるようにしていく、選択の可能性を広げていくとしたと思っています。

 言葉遣いの問題なのかもしれませんが、今の臓器移植ネットワークによる配分のルールの原則を崩すことになるのだとは理解はしておりません。

○久保班長 スライドの16番目のように、一応順番が付くわけですね。

○廣瀬補佐 レシピエントの順番は付きます。

○泉室長 大きさ適合外であれば、全部早いもの勝ちなのかというと、そうではなくて大きさ適合外の中でも、きちんと優先順位に従って順番が付いていくので、医療施設ごとに医学的判断に従って選択をしていくということです。

○久保班長 順番に決めるということですね。

○泉室長 はい。それは全然ルールは変わりません。

○久保班長 今の確認でよろしいですか。

○川合班員 そうですね、少し具体的なイメージがどうなのでしょうね。例えば、右の下だけしかきれいではない肺でO型というと、ずっと消えていくわけですよね。リストの一番下の人でrejectされたら、終了と。

○久保班長 なくなる可能性もあるということです。

○佐地班員 そうならないように、日本小児呼吸器疾患学会にちゃんとやれよと、是非もう一度。班長命令で言っていただければ、学会長に伝えますが、なかなか動かない。

○久保班長 ただ、小児のレシピエント基準を決めるときは、小児呼吸器学会から資料を頂きましたので、一応御存じのはずですので。

○佐多班員 移植医療をやる側としては、外科系の方がほとんどなので、そちらの方の意見が強くなるのはしようがないのですが、移植医療側の均霑化を担保するようなことも考えていただかないと。もし症例数が増えていった場合に、今はゆっくりやっていても追い付かなくなる可能性も出てくるとなると、その辺が大事なポイントになるのかなという気がしないでもないですし、患者側が選ぶときにも、みんなどこも同じだからとなるような形のほうが、よりよい移植医療につながるのかなと思うので、余り4か所に集まって、4か所でオーバーワークになっても困るし、それをなるべく広げるような形に、学会側としても努力されてはいかがでしょうか、是非それをしていただきたい。外科側だけではなくて、内科系も小児科系もそうだと思います。それは必要だと。

○久保班長 そういう要望があったということだけは入れていただいて。

○近藤班員 移植の実施施設については、肺移植の実施施設として手を挙げる施設の申請は随時受け付けており、審査をして、基準をクリアしていると考えられれば、肺移植実施施設として推薦していく形にしています。現在も、2施設ほど手を上げており、1施設は推薦し、もう1施設は審査中という段階です。

 ある程度実施施設の数は増やさなければいけないと思っているのですが、移植数もある程度増えませんと、今度は全部が小さな施設にばかりなってしまうということにもなりかねず、肺移植の成績という観点からも、非常に悩ましいところです。

○久保班長 よろしいでしょうか。その他で何かございますか。

 名前は「肺葉移植」とするのですか、この前は「分割肺」とか、どういう言葉を遣うかが議論になりましたが。

○泉室長 定義についてしっかりとすべきではないかという御意見も頂いておりましたが、結論はレシピエント選択基準の上で、そのような言葉が出てこないということになりますので、定義付けをしっかりとする必要性は、とりあえず薄れてはおります。

○久保班長 ほかによろしいですか。ほかに特に御意見がなければ、今回事務局から提案していただいた対応()に関して了承するということで、会議を終わります。どうもありがとうございました。

○田中補佐 本日もありがとうございました。本日御議論いただきました肺のレシピエント選択基準の見直しに関しては、臓器移植委員会に諮った上で改正を考えております。本日はありがとうございました。

○久保班長 臓器移植委員会はいつですか。

○廣瀬補佐 早ければ年内にやりたいと思います。

○久保班長 そこで通れば、前回の特発性間質性肺炎に12か月の加算ということで。

○廣瀬補佐 本日の1点と、前回御議論いただいた1点の2点について、改正をいたします。ただ、臓器移植ネットワークのシステム改修とか、もう少し事務的な準備がありますので、また運用の時期については、決まり次第、御連絡を差し上げることになります。

○久保班長 早くていつ頃になりそうですか。

○廣瀬補佐 何とか今年度内に開始できるように努力したいとは思っております。

○久保班長 小児科の先生はかなり待っているようですので、お願いします。

○廣瀬補佐 はい。

○久保班長 以上で終わります。委員の皆様、ご苦労さまでした。

○泉室長 本当にお忙しい中ありがとうございました。

 患者様のためなるようにと、そしてドナーの皆様の御意思がいかされるようにということで努力してまいります。ありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省健康局疾病対策課移植医療対策推進室

代表: 03(5253)1111
内線: 2362・2365

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