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自然毒のリスクプロファイル:ニガクリタケ(Hypholoma fasciculare ) モエギタケ科クリタケ属

ニガクリタケ(Hypholoma fasciculare ) モエギタケ科クリタケ属

特徴 地方名

はな,にがくり,くりたけのはな(長野市),どくあがたけ,どくあかもだし(秋田県),すずめたけ(青森県),にがっこ(にぎゃっこ,にがこ)(東北地方)

傘の大きさ  2 5cm程度の小型
形と色 

傘 :まんじゅう形からほぼ平らに開く。表面は湿り気を帯び,やや吸水性で黄褐色。中心部が黄褐色で周辺部が硫黄色を示す。

周辺部に初めクモの巣状の被膜の名残を付ける。

ひだ:柄に対してくっついており(湾生),密である。オリーブ緑色

柄 :細長く,下部は繊維状で光沢が見られる。 
発生時期  年間通して発生 
発生場所  広葉樹及び針葉樹の枯れ木や倒木などに束生~群生する。 
その他  肉が非常に苦い。 
間違いやすい食用キノコ  ナメコ,クリタケ, ナラタケ ナラタケモドキ  
症状   食後3時間程度で強い腹痛,激しい嘔吐,下痢,悪寒などの症状が現れる。 重症の場合は脱水症状,アシドーシス,痙攣,ショックなどの症状が現れて死亡する場合がある。
毒性成分   カルモジュリン阻害活性を持つファシキュロ-ル,ファシキュリン酸の他, ムスカリン類。

 

   
ニガクリタケは傘がレモン色から茶色のものをある。ひだはオリーブ色(うすい緑)

よく似ている食用きのこ

クリタケ() は栗色から茶色で傘が3-8 cm程度で、幼菌では傘に繊維状の破片のようなもの(赤矢印)が見られる。ひだは白から黄土色になる。柄はニガクリタケよりは少し太めである。

 1

(1)毒性成分 ファシキュロール類 (fasciculol A-F), ファシキュリン酸類( fasciculic acid A-C) ,ムスカリン類 などが報告されている。

 

fasciculol A IUPAC

[(2R,3R,5R,10S,13R,14R)-17-(5,6-dihydroxy-6-methylheptan-2-yl)-

4,4,10,13,14-pentamethyl-2,3,4,5,6,7,10,11,12,13,14,15,16,17-

tetradecahydro-1H-cyclopenta[a]phenanthrene-2,3-diol]

Molecular Weight (分子量) : 476.73 (g/mol)

Molecular Formula (分子式) : C30H52O4

 

fasciculol A IUPAC

[(2R,3R,5R,10S,12S,13R,14S)-17-(5,6-dihydroxy-6-methylheptan-2-yl)-

4,4,10,13,14-pentamethyl-2,3,4,5,6,7,10,11,12,13,14,15,16,17-

tetradecahydro-1H-cyclopenta[a]phenanthrene-2,3,12-triol]

Molecular Weight (分子量) : 492.73 (g/mol)

Molecular Formula (分子式)

: C30H52O5








その他, fasciculin (アセチルコリンエステラーゼ抑制作用)を含有するとの報告もある。

 

(2)食中毒の型 嘔吐,下痢,腹痛 

(3) 中毒症状

頭痛を伴った、嘔吐、下痢、腹痛 ( 時に激しい ) などを起こす。最悪死に至ることもある。

(ときに,死に至るほどの中毒を起こさせる毒性本体については,はっきりしない) 

 

(4)発症時間 摂食後 3 時間程度
(1)発症事例
 

症例1 昭和 31 5 月3日,青森県津軽五所川原市の一家6人〔夫( 46 識),妻( 38 歳),子供4人( 13 歳, 10 歳,7歳,5歳)〕が採ってきたきのこを佃煮にして昼食に摂食。摂食6~8時間後(午後8跡),はじめ舌がピリピリした後,次第に嘔吐,コレラ様の下痢,悪寒, 痙攣,神経麻痺症状が,夫(ただし夫のみ神経麻痺を認めず),ついで妻,子供だちと次々に発症し苦しみだした。そのうち子供たちは意識不明の状態となり,朝までに3人( 10 歳,7歳,5歳)が死亡, 13 歳の女子は時々痙學をおこし重体であったが,摂食 65 時間後一時意識が回復,症状は軽くなるかに見えたが,その後腹部から首にかけて紫斑が出現,摂食3日後(6日朝)急死。4人はいずれも肝腫大,黄疸などの肝障害,神経麻痺により死亡している。母親は嘔吐,コレラ様の下痢,痙攣があり,一時意識不明となったが,4日後に回復。夫は嘔吐下痢,腹痛のみで 20

時間後に回復。症状はドクツルタケの中毒に似ていた。夫婦が肋かったのは,まず子供にたくさん食べさせ,残りを親が食べたために,摂取量が少なかったからである。
(その他)

平成 8 9 7 日,岐阜県恵那市内の山中で採取したキノコを。 9 日午後 6 時頃、家族 5 人で夕すき焼きに入れて食べたところ、 5 人中 4 人が食後 2 時間から 4 時間で嘔吐 , 下痢などの食中毒症状を示し入院した。

平成 13 11 15 日,宇都宮市内でニガクリタケとクリタケをスッポンタケ、ベニナギナタタケとともに採取し,醤油で炒め煮として摂取した。妻は少量を摂取して 30 分後に 2 回嘔吐。夫は一握りの量を摂取して 30 分後に嘔吐と下痢各 5 回。夫は入院後、脱水症状、傾眠、急性腎不全を起し、胃の洗浄、吸着剤、下剤投与、輸液、人工透析などの処置を行ったが、 11 23 日に死亡した。


 

 
(2)患者数
※厚生労働省発表
 

ニガクリタケ

/ 年度

発生件数

摂食者総数

患者数

死者数

2015

0

0

0

0

2014

0

0

0

0

2013

0

0

0

0

2012

0

0

0

0

2011

0

0

0

0

2010

2

2

2

0

2009

0

0

0

0

2008

0

0

0

0

2007

0

0

0

0

2006

0

0

0

0

2005

0

0

0

0

2004

0

0

0

0

2003

0

0

0

0

2002

0

0

0

0

2001

0

0

0

0

2000

1

3

3

0

(3)中毒対策 早急に医療機関で診察を受けるべきである。 
(1)毒性成分の分析法1  
(1)諸外国での状況   北アメリカ,ヨーロッパなどの地域にも分布する。

(1)その他の参考になる情報  

 トリウム (3.63 m g/g) やウラン (4.13 m g/g) を蓄積しやすい。
間違いやすいキノコ   
一般名  クリタケ(モエギタケ科 クリタケ属) 
学名 

Pholiota lubrica (Pers.:Fr.)Sing. 

区別できる特徴 クリタケは傘が栗色をしている。 ニガクリタケはかむと強い苦みがあるので,区別する。
引用・参考文献 1)

長沢栄史:フィールドベスト図鑑  14  日本の毒きのこ   ( ) 学習研究社 

 

2)

The toxic principles of Naematoloma fasciculare.

Suzuki K, Fujimoto H, Yamazaki M.

Chem Pharm Bull 31,2176-2178 (1983).

 

Calmodulin inhibitors from the bitter mushroom Naematoloma fasciculare (Fr.) Karst. (Strophariaceae) and absolute configuration of fasciculols.

Kubo I, Matsumoto A, Kozuka M, Wood WF.

Chem Pharm Bull 33,3821-3825 (1985).

 

Fasciculic acids A, B and C as calmodulin antagonists from the mushroom Naematoloma fasciculare.

Takahashi A, Kusano G, Ohta T, Ohizumi Y, Nozoe S.

Chem Pharm Bull 37,3247-3250 (1989).

 

3)

編著者・奥沢康正、久世幸吾、奥沢淳治 「毒きのこ今昔-中毒症例を中心にして-」(株)思文閣出版

 

4)

Juan A. Campos, Noel A. Tejera y Carlos J. Sa'nchez.

Substrate role in the accumulation of heavy metals in sporocarps of wild fungi.

Biometals   22 (5): 835-841 (2009).

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