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震災に伴う解雇について

震災に伴う解雇について

【Q3−1】今回の震災を理由に雇用する労働者を解雇・雇止めすることはやむを得ない対応として認められるのでしょうか。

[A3−1]震災を理由とすれば無条件に解雇や雇止めが認められるものでは、ありません。また、今回の震災の影響により、厳しい経営環境に置かれている状況下においても、出来る限り雇用の安定に配慮していただくことが望まれます。解雇については、法律で個別に解雇が禁止されている事由(例:業務上の傷病による休業期間及びその後30日間の解雇(労働基準法第19条)等)以外の場合は、労働契約法の規定や裁判例における以下のようなルールに沿って適切に対応する必要があります。
(1)期間の定めのない労働契約の場合
労働契約法第16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されています。また、整理解雇(経営上の理由から余剰人員削減のためになされる解雇)については、裁判例において、解雇の有効性の判断に当たり、(1)人員整理の必要性、(2)解雇回避努力義務の履践、(3)被解雇者選定基準の合理性、(4)解雇手続の妥当性、という4つの事項が考慮されており、留意が必要です。
(2)有期労働契約(期間の定めのある労働契約)の場合
パートタイム労働者や派遣労働者に多く見られる契約形態です。労働契約法第17条第1項では、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」と規定されています。有期労働契約期間中の解雇は、期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断される点に留意が必要です。また、裁判例によれば、契約の形式が有期労働契約であっても、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っている契約である場合や、反復更新の実態、契約締結時の経緯等から雇用継続への合理的期待が認められる場合は、解雇に関する法理の類推適用等がされる場合があります。個別の解雇・雇止めの当否については最終的には裁判所における判断となりますが、これらの規定の趣旨や裁判例等に基づき、適切に対応されることが望まれます。なお、個別の事案につきましては、各都道府県労働局等に設置されている総合労働相談コーナーにおいて、民事上の労働問題に関する相談・情報提供等を行っておりますので、必要に応じてご活用ください。(職場のトラブル解決をサポートします
また、今回の震災に伴う経済上の理由により事業活動が縮小した場合に、解雇をせずに、従業員の雇用を維持するために休業等で対応される場合には、休業についての手当等が支払われ、雇用保険の適用事業所であるなど他の要件を満たせば、雇用調整助成金及び中小企業緊急雇用安定助成金が利用できます。これらの助成金の詳細については、Q1−3・A1−3をご覧ください。

【Q3−2】今回の震災で、事業場の施設・設備が直接的な被害を受けたために、事業の全部又は大部分の継続が困難になったことにより労働者を解雇しようとする場合、労働基準法第19条及び第20条に規定する「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」による解雇といえるでしょうか。

[A3−2]解雇の有効性などに関する労働契約法のルール等(整理解雇や雇止めに関する裁判例の考え方を含む)については、Q3−1・A3−1をご覧ください。労働契約や労働協約、就業規則、労使慣行に基づき、解雇を行う場合の手当等の支払を定めているときは、労働契約等に基づき当該手当の支払等を行う必要があります。最低労働基準を定める労働基準法との関係では、同法第19条は、使用者は、労働者が業務上の負傷又は疾病のため休業する期間及びその後30日間、産前産後の女性が労働基準法第65条に基づいて産前産後の休業をする期間及びその後30日間は、労働者を解雇してはならないと定めています。ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合に労働基準監督署長の認定を受けたとき等はその限りではないとされています。また、労働基準法第20条では、使用者は労働者を解雇する場合には、30日前に予告するか30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないとされています。ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合等で労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告や解雇予告手当の支払は不要とされています。労働基準法第19条と第20条の「天災事変その他やむを得ない事由」とは、天災事変のほか、天災事変に準ずる程度の不可抗力によるもので、かつ、突発的な事由を意味し、経営者として必要な措置をとっても通常いかんともし難いような状況にある場合を意味すると解されています。また、「事業の継続が不可能になる」とは、事業の全部又は大部分の継続が不可能になった場合を意味すると解されています。今回の震災で、事業場の施設・設備が直接的な被害を受けたために事業の全部又は大部分の継続が不可能となった場合は、原則として、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」に当たるものと考えられます。なお、今回の震災で、事業場の施設や設備は直接的な被害を受けていない場合で、取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不可能になったときの扱いについては、Q3−3・A3−3をご覧ください。

【Q3−3】今回の震災で、事業場の施設や設備は直接的な被害を受けていませんが、取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不可能になったために、事業の全部又は大部分の継続が困難になったことにより労働者を解雇しようとする場合、労働基準法第19条及び第20条の「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」による解雇といえるでしょうか。

[A3−3]解雇の有効性などに関する労働契約法のルール等(整理解雇や雇止めに関する裁判例の考え方を含む)については、Q3−1・A3−1をご覧ください。最低労働基準を定める労働基準法との関係では、事業場の施設や設備が直接的な被害を受けていない場合には、事業の全部又は大部分の継続が不可能となったときであっても、原則として「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」による解雇に当たりません。ただし、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間等を総合的に勘案し、事業の継続が不可能となったとする事由が真にやむを得ないものであると判断される場合には、例外的に「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」に該当すると考えられます。

【Q3−4】震災の影響で、会社を休んでいますが、会社から出勤しなければ退職願を出すよう求められています。これに応じる必要はあるのでしょうか。

[A3−4]退職の意思表示については、あくまで労働者の自発的な意思表示によるものである必要があります。労働者の自由な意思を妨げる退職勧奨は、違法な権利侵害に当たると判断された裁判例が存在することを踏まえ、対処いただくことが望まれるものです。使用者が一方的に労働契約を解除する解雇については、労働契約法等によって規律されたルールに従う必要があります。詳しくはQ3−1・A3−1をご覧ください。
なお、労働者と会社との間の労働契約に基づき出勤することとされた日(所定労働日)については、法定の年次有給休暇や会社の特別の休暇などを利用して休む場合を除き、原則として事業主に対して、労務を提供する義務があります。労働者がこうした年次有給休暇等によらずに会社を休む際は、欠勤する理由を会社に説明し、欠勤について理解を得るよう努めることが望ましいと考えられます。

【Q3−5】勤め先企業が、被災が比較的少なかった地域にあり、営業・操業が再開しつつありますが、現在避難所にいるため通勤できません。このような中、雇用主から「出勤できなければ解雇する」と言われ、困っています。何か対応策はあるのでしょうか。

[A3−5]震災を理由とすれば無条件に解雇や雇止めが認められるものでは、ありません。
解雇については、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、権利の濫用として無効となります(労働契約法第16条)。
この点について、労働者が避難所にいるために通勤が困難であることのみを理由に解雇をすることは、一般的には相当でないと考えられます(ただし、最終的には個別の事情を総合的に勘案して判断されます)。
まずは、労使がよく話し合って、労働者の不利益を回避する方策を見いだすよう努力いただくことが重要です。
個別の事案につきましては、各都道府県労働局等に設置されている総合労働相談コーナーにおいて、民事上の労働問題に関する相談・情報提供等を行っておりますので、必要に応じてご活用ください。(職場のトラブル解決をサポートします

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