10/06/11 第1回慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防・早期発見に関する検討会 議事録 第1回慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防・早期発見に関する検討会 日 時:平成22年6月11日(金) 14:00〜16:00 場 所:厚生労働省6階 共用第8会議室 議 事 次 第 議 題     1 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の現状について   2 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防・早期発見について 照会先 健康局生活習慣病対策室健康情報管理係  代表03−5253−1111(内2971) ○木村室長 「第1回慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防・早期発見に関する検 討会」を開催させていただきたいと思います。  なお、本検討会におきましては、6月から9月まで実施していくところでございま すので、委員の皆様方におかれましても、本日、御協力を賜っておりますことを感 謝申し上げたいと思います。  それでは、まず、開会に当たりまして、私どもの上田健康局長よりごあいさつを 申し上げます。 ○上田健康局長 健康局長の上田でございます。  本日は、検討会の開催に当たりまして、委員の皆様方には、御就任とまた御参集、 誠にありがとうございます。  御承知のように、我が国では、女性は、昭和59年から今日に至るまで、平均寿命 では世界一でございますけれども、これは、国民の高い教育水準、経済水準、こう いうものに支えられている、このように思っております。  しかしながら、高齢化社会ということで、循環器病、がん、糖尿病、様々な生活 習慣病ということで、国民の多くはこういう慢性疾患のリスクにさらされていると いう状況でございます。  このようなことから、昨年、「慢性疾患の更なる充実に向けた検討会」というも のを開催いたしまして、その検討会におきまして、慢性疾患に対する施策の関わり 方の観点から、疾患領域ごとの施策の条件についても多角的に検討いたしました。  そういう中から、これまで、がんとか心疾患とか生活習慣病というか、慢性疾患 などの対策は、かなりやってきたと我々考えているんですけれども、中でも筋骨格 系及び結合組織の疾患、今、これは痛みの問題としてとらえておりますけれども、 こういう疾患グループとか、あるいは、今日、御議論いただきます慢性閉塞性肺疾 患、いわゆるCOPD、これらについては、現在のところ、国としても系統的な施 策、対策は余りないということでございまして、こういう分野における疾患対策の 充実について、幅広く検討すべきであるという提言を昨年いただいたところでござ います。そういうことから、本日の検討会の開催に至ったわけでございます。  慢性閉塞性肺疾患、いわゆるCOPDでございますが、これは一般の方には聞き 慣れない言葉でございますけれども、肺に慢性の炎症が生じたり、肺気腫とか慢性 気管支炎、様々なものの総称でございまして、呼吸が苦しくなり、心臓に負荷がか かるという病気でございます。患者さんは全国に約500万人。年間で死亡する方も 1万5,000ぐらいいるのではないかと推計をされております。  COPDの一つの原因は、喫煙でございます。そういうことでは、禁煙によって 予防がある程度可能な病気ではございます。  更に、早期に発見する、治療するということで、COPDになるリスク、あるい はかかった後の御本人、あるいは社会の負担を大幅に軽減することが可能であると、 我々、このように考えておりまして、そういうことから、COPDにつきまして、 早期発見、適切な治療、合併症の予防、こういうものを多角的に検討して、国とし て施策を推進していきたいと考えているところでございます。  新政権になりまして、私どもは、国民に何をお約束するのかということを考えま して、厚生労働省では、省の目標、また、私ども健康局では局の目標というものを 掲げております。  私ども健康局の目標といたしましては、疾病管理、ちょっと難しい言葉でござい ますが、病気をしっかりコントロールをしていくということでございまして、簡単 に申し上げますと、病気を予防し、病気になった方を支えていく。それも、国はも とより、社会全体として病気を予防し、病気になった方を支えていく、こういうこ とを局の目標と掲げて、お約束をしているところでございます。  こういう経緯も踏まえまして、本日の検討会におきましても、COPDの予防・ 早期発見に関して、様々な視点から具体的な検討を行っていただきまして、今後の 私ども、あるいは社会全体でのCOPDの取組みに役立つような形でおまとめいた だければと、このように考えておりまして、簡単でございますけれども、開催に当 たりまして、私のごあいさつに代えさせていただきます。どうぞよろしくお願い申 し上げます。 ○木村室長 ありがとうございました。  それでは、続きまして、初めての検討会の開催ということでもございますので、 まずは委員の御紹介をさせていただきたいと思います。  お手元に資料があるかと思いますけれども、後ろから2枚目の束になっていると ころでございまして、参考資料というのがございます。その参考資料の2枚目をあ けていただきながら、各委員の御紹介をしたいと思います。  まずは五十音順に御紹介したいと思います。  まずは相澤委員でございます。 ○相澤委員 久留米大学の相澤と申します。  もともとCOPDを専門に勉強していたんですが、また、今、GOLD日本委員 会、「肺の健康」啓発推進委員会等の担当をしておりまして、COPDを広く啓発 していきたいと考えています。よろしくお願いします。 ○木村室長 次に今村委員でございます。 ○今村委員 日本医師会の常任理事の今村聡と申します。COPDを担当していま す。よろしくお願いいたします。 ○木村室長 次に、桂委員でございます。 ○桂委員 正直言いまして、こういうお席は大の苦手でございます。なんで私が呼 ばれたのかと思いましたらば、経験者ということで呼ばれまして、随分苦しい思い をしました。随分辛い思いもしました。何かの参考になればと参加させていただき ます。よろしくどうぞ。 ○木村室長 それでは、次に、工藤委員でございます。 ○工藤委員 結核予防会複十字病院の工藤と申します。どうぞよろしくお願いいた します。  私は2年前にこの病院にまいりまして、この前はずっと大学におりまして、呼吸 器学会で相澤先生らと一緒に仕事をさせていただいておりました。どうぞよろしく お願いします。 ○木村室長 それでは、次に、見城委員でございます。 ○見城委員 見城美枝子でございます。  今ほど禁煙という言葉が一般的でない、煙を嫌がると、嫌がっている私が嫌がら れるというような時代から、煙の害についていろいろと訴えてきました。そんな関 係から、今回委員に選ばれたのではないかと思います。よろしくお願いいたします。 ○木村室長 それでは、列が変わりまして、瀬戸山委員でございます。 ○瀬戸山委員 鹿児島の瀬戸山でございます。  私は、県民総合保健センターと言いまして、鹿児島県のがんとか結核の検診をや っている施設でございまして、これまで結核1,000万人、肺がん200万人の検診を 行っております。私どもとしてはCOPD、特に呼吸器の病気でございますので、 今後、たくさんの患者さんを検診でCOPD問診票、スパイロメトリーで見つけ出 して、少しでも早期発見に役立てればと思っております。よろしくお願いします。 ○木村室長 それでは、次に、竹川委員でございます。 ○竹川委員 大阪府立呼吸器・アレルギー医療センターから参りました竹川幸恵と 申します。どうぞよろしくお願いいたします。  看護協会の方の慢性疾患看護専門看護師という資格をいただきまして、呼吸器を 専門といたしまして、COPDの患者さんを中心にケアをしています。どうぞよろ しくお願いいたします。 ○木村室長 それでは、次に、遠山委員でございます。 ○遠山委員 日本呼吸器疾患患者団体連合会患者代表といたしまして参りました。 私は患者ではございませんけれども、私の夫がCOPDの患者でございまして、十 数年、在宅酸素療法を行いながら、代表をしておりました。残念ながら昨年亡くな り、私はその意思を継ぎまして代表となりました。患者代表といたしまして、また、 家族の目から、参加させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○木村室長 それでは、次に、中尾委員でございます。 ○中尾委員 フィットネスインストラクターをやっています中尾和子です。58歳な んですけれども、健康大使としても働いています。  私が33年のフィットネス指導でたどり着いたのは非常にシンプルで深い姿勢と 呼吸の大事さでした。人は日常生活動作のほとんどを無意識に行っています。食に 関してもそうですが、立つ、座る、歩くなど普段の習慣的なことはすべてそうです。 でも、それを単に意識化して、本当に一人ひとりの人が自分のやっていることに気 づき、身体がよりよくなるように意識化することによって、生活習慣を変えられる という一心でフィットネス指導をしています。その中の一つに喫煙があると思いま す。これに対しては、若いときにちょっと経験したこともありまして、そういうこ とも踏まえて、ぜひ少しでもお力になりたいと思って来ました。どうぞよろしくお 願いいたします。 ○木村室長 それでは、最後に、中村委員でございます。 ○中村委員 大阪府立健康科学センターの中村と申します。  私は、日常業務的には検診ドック、また、禁煙外来をやっていまして、一方で、 たばこ対策をテーマにして、これまで研究をやっております。厚生労働省からも研 究費をいただいて、一つの研究班の研究代表者をしています。日本では禁煙治療が 保険が適用されておりまして、2006年からスタートしたんですけれども、今回のC OPDにおいても、予防のためには、たばこを吸わない。また、たばこを吸った方 については禁煙が非常に重要でありまして、今回のCOPDの対策の中で、いかに 禁煙を、COPDになった方ももちろんですけれども、広くたばこを吸っておられ る方にいかに禁煙を働きかけていくかということが非常に重要ではないか。その中 で医療従事者として果たせる役割があるということで、そういった観点から、今日 も含めて、検討会の中で発言をさせていただきたいと思っておりますので、よろし くお願いします。 ○木村室長 ありがとうございました。  それでは、第1回目ということでございますので、事務局の方につきましても御 紹介させていただきたいと思います。  ただいま御紹介させていただきました上田局長でございます。 ○上田健康局長 上田と申します。 ○木村室長 そしてその左隣が健康局総務課生活習慣病対策室のたばこ対策専門官 の森でございます。 ○森専門官 森でございます。よろしくお願いいたします。 ○木村室長 そして、最後に、私、生活習慣病対策室長の木村でございます。どう ぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、引き続きまして、資料の確認をまずさせていただきます。  まず、議事次第。そして座席表。そして、そのほかに、資料1としまして「慢性 閉塞性肺疾患(COPD)の現状について」、そして資料の2が相澤委員の方から 今回提出されております提出資料、そして参考1という「予防・早期発見に関する 検討会の開催要綱」、そして最後に参考2としまして「慢性疾患対策の更なる充実 に向けた検討会」検討概要というのがあると思います。  万一、不足、あるいは落丁等ございましたら、事務局の方へお申し付けいただけ ればと思います。不足等ございませんでしょうか。  それでは、引き続き、議事の進行に当たりまして、座長の御相談をさせていただ きたいと思いますけれども、事務局としましては、御経験豊かな工藤委員にお願い 申し上げたいと思いますけれども、もしよろしければ、御賛同の方は拍手いただけ ればと思います。 (拍  手) ○木村室長 ありがとうございます。  それでは、以後の進行を工藤座長にお願いしたいと思います。どうぞ工藤委員、 座長席にお願いいたします。 ○工藤座長 それでは、御指名をいただきましたので、座長を務めさせていただき ます。どうぞよろしくお願いいたします。  本来ですと、これは第1回でございまして、全員おそろいなので、自己紹介とい うことですけれども、自己紹介は先ほど皆さん全部やられたので、もし自己紹介が 少し足りないという方がおられたらおっしゃっていただければと思うんですけれど も、早速議事に入ってよろしゅうございますか。  それでは、議事に入らせていただきます。  慢性閉塞性肺疾患対策の更なる推進というのは、大変重要な課題でございます。 委員の皆様の御協力をいただきながら進めてまいりたいと思いますので、どうぞよ ろしくお願いいたします。  まずは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の全体像について、事務局の方から御説 明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○木村室長 承知しました。  それでは、事務局の方からごく簡単に御説明申し上げさせていただきます。  お手元の資料1をごらんいただきたいと思います。申し訳ございません。ページ を振っていないものですから、頭のタイトルの方でどの当たりの説明かを明示させ ていただきたいと思います。  まず、おめくりいただきまして、「慢性疾患対策の更なる充実に向けた検討会の 概要」でございます。これは、先ほど局長のごあいさつの中でございましたように、 私ども、今検討会が、昨年の夏に開催されております「慢性疾患対策の更なる充実 に向けた検討会」の提言を受けての開催ということでございます。検討会の提言の ポイントといたしましては、当慢性閉塞性肺疾患などは、現在のところ、系統的な 施策についてはほとんど行われていないということ。しかしながら、慢性疾患なる ものの種類は非常に多くて、その支援ニーズは多様であり、すべての疾患への対策 を一度に講じることはなかなか容易ではない。したがって、一次予防から疾患の早 期発見、そして治療に至る一連の支援方策というものを具体的に示すことが必要で ある。そのような提言を受けまして、当検討会を発足させていただいております。  次のページをおめくりいただきたいと思います。本検討会での検討事項でござい ます。  COPD全般的なお話を伺うということになろうかと思いますけれども、その中 でも特に本検討会では、早期に発見した場合には、患者の負担が大幅に軽減するこ とが可能だということ、そしてまた、喫煙がこの疾患の大きな要因になっており、 予防という観点からは禁煙対策が重要であるということを踏まえまして、特に予防 対策のあり方についての検討を、そして、2点目としまして、早期発見のあり方に ついての観点を念頭に重点的に御議論賜れればと思ってございます。  それでは、その次のページをお開きいただきたいと思います。慢性閉塞性肺疾患 の現状でございます。  その次をおめくりいただきまして、「慢性閉塞性肺疾患とは」ということでござ いますけれども、これは、有毒な粒子やガスの吸入による進行性の疾患であります。 特に、たばこの煙などによって、肺胞や気道の炎症・破壊などを通じ、運動時の呼 吸困難や慢性の咳・痰というのが生じ、更に進行すると、慢性閉塞性肺疾患になっ ていくことが日本呼吸器学会のCOPDガイドラインの方で記述されてございます。  その次のページをお開きいただきたいと思います。慢性疾患、これは全般に、特 に生活習慣病の現状でございます。  一番左側を見ていただきたいと思いますけれども、特に生活習慣病と呼ばれるも の、すなわち糖尿病をはじめとして、高血圧や悪性新生物、いわゆるがん、それか ら、心疾患、脳血管疾患などというものがございます。一番下に気管支炎や慢性閉 塞性肺疾患という欄が設けられおりますが、ここに平成20年の患者調査の結果を書 かさせていただいております。  見ていただいて分かりますように、患者調査で見る限りは、慢性閉塞性肺疾患の 数は、一桁ほど他の疾患に比べて少ないという状況にはなっております。  しかしながら、その次のページをおめくりいただければと思いますけれども、N ICEという研究がございまして、これは、Nippon COPD Epidemiologyスタデ ィというものでございます。これは、2001年に、40歳以上の男女合わせて2,600人 強の方々を対象としまして、スパイロメトリーという呼吸を測定する機械で対象者 全員に測定して、どの程度の呼吸器障害があるかを実際に測定した疫学調査でござ います。これによりますと、日本人の8.6%に疾患がある。すなわち、有病率8.6% という結果が出てきており、そこから計算しますと、推定患者数が530万人程度と いうことになります。  したがいまして、国の患者調査、これは医師の診断で病院にかかっている方々、 継続してかかっている方々の数字でございますけれども、この数字とかなり開きが あります。その次のページをおめくりいただきまして、外来患者、これは病院に来 ている外来患者数の順位でございますけれども、このように、慢性閉塞性肺疾患と いう疾患で外来に来られている方は順位がかなり低い状況でございますけれども、 推定患者数との間にはかなり開きがあって、今後COPDに対する対策をしっかり やらなければいけないのではないかと考えております。  そして、更におめくりいただきまして、次に、世界の状況ではどうかということ でございます。これは2009年のWHO報告書の記述からとったものでございますけ れども、上から2つ目のポツのところでございますが、世界中で慢性閉塞性肺疾患 の人は2億1,000万人と推計されております。  そして、2005年には300万人以上の人が慢性閉塞性肺疾患で死亡している。これ は、その年のすべての死亡の5%に当たるということでございます。  そして、その原因は、第一の要因は、たばこの煙によるものでございます。  そして、治療を行った場合、疾患の進展を遅らせることが可能でありますが、た ばこの煙によるリスクを低減させるための介入、すなわち対策を行っていくという ことがなされない場合には、今後、次の10年間で30%以上患者の死亡が増加するだ ろうという予測をWHOはしております。  ただいま、原因の一番の理由がたばこだということでございましたので、私ども の方で若干たばこの方の資料を準備してまいりました。  その次の資料をおめくりいただきまして、喫煙率の状況についてというところで ございます。  左の方のグラフを見ていただければと思います。我が国の成人の喫煙率の推移で ございますが、一番左が1999年、一番右が2008年で、この間9カ年ございますけ れども、男性が上のブルーの動きで、当時1999年では49.2%の喫煙率であったもの が、2008年時で 36.8%にまで落ちてございます。  女性の方は、ほぼ動きが平行してございます。1999年で10.3%、2008年で9.1% ということで、ほとんど同じような状況でございます。男性の場合、喫煙率が落ち てきてはおりますけれども、国際的に見ると、まだまだ高い喫煙率でございます。  また、右の方を見ていただきまして、未成年者の喫煙率を見ていただければと思 います。これは1996年から2008年までの間、断続的にとってございますが、中学 生、高校生ともに喫煙率は落ちてはきておりますけれども、やはりまだ、特に高校 生の男子において高い喫煙率になっているという状況でございます。  それでは、その次のページをおめくりいただきまして、近年のたばこの対策の全 体像でございます。  一番上に、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約というものがございまし て、この条約は平成17年2月に発効してございます。その目的は、たばこの消費、 受動喫煙が健康、社会、環境及び経済に及ぼす破壊的な影響から、現在及び将来の 世代を保護するという目的をもった条約で、日本もこれを批准しているものです。  また国内的には、平成12年から「健康日本21」施策の中で、たばこ対策、知識の 普及等を推進しているところです。  また、平成15年には、健康増進法の第25条に、受動喫煙の防止の努力義務規定 を設けてございます。  そしてまた平成18年6月には、がん対策基本法の制定の際にも、たばこについて の予防啓発の推進について附帯決議に盛り込まれているところでございます。  そのような流れの中で、右の方に、広告規制の強化や、たばこのパッケージの注 意文書の改正といったようなこと。平成18年からは、ニコチン依存症の方に対する 治療が保険適応でなされるようになったこと。それから、平成20年に、未成年者が たばこの自動販売機で買うことを防止するためのTASPOの全国導入がなされた こと。こういった現在の動きについて記述してございます。  簡単ではございますけれども、事務局からの総括的な説明は以上でございます。 ○工藤座長 どうもありがとうございました。  ただいま、事務局の方からまとめていただいておりました論点、これを整理して 御説明いただいたわけですが、続いて、相澤委員の御提出の資料に基づいた御説明 を相澤委員の方からお願いしたいと思います。質疑の方は、相澤委員の説明が終わ った後にまとめてしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。 ○相澤委員 それでは、私の方からは、COPDの予防と早期発見、これがなぜ重 要かということをお話ししたいと思います。  まず、最初の資料の1ページ目ですけれども、COPDという病気は、分りやす く言えば、肺気腫、慢性気管支炎と今まで言われていた病気であります。肺気腫、 慢性気管支炎というのは聞いたことがある方は多いと思いますが、しかし、この2 つの病気は、原因がほとんど同じであるということと、多くの患者さんで気管支の 病変も肺胞の病変も両方あるんだと、どっちが主かというだけの違いだということ で、一緒に扱われるようになってまいりました。  じゃ、何が原因かというと、ほとんどの原因がたばこであります。それは下の方 に書いておりますけれども、主な今までの報告だけを上げております。1980年代に、 COPDの原因の90%はたばこであるということが報告されておりますし、未成年 では特に重症化する危険があると。それから、最近では、女性の方が喫煙感受性が 高いんだと。なりやすいんだということですね。今まで日本は女性の患者さんは少 ないんですけれども、これは単に喫煙率が低かったというだけのことで、同じよう にたばこを吸えば、女性の方がなりやすいということも最近言われております。  それから、受動喫煙でもなり得るんだということも最近言われております。  それから、ここには書いておりませんけれども、今、COPDで悩んでおられる 方は、20〜30年前の喫煙が原因だということで、20〜30年前はほとんどたばこの害 が言われていなかった当時に吸ったたばこが、今ごろきているんだということで、 徐々に喫煙率は下がってまいりましたけれども、決して安心してはいられないとい うことです。今後もまだ患者さんは増えるだろうと思っています。  それから、2ページにいきます。  COPDが、我が国でもそうですけれども、世界的に注目されております。それ はどういう理由かというと、まず最初に書いておりますように、COPDは有病 率・死亡率ともに高く、しかも今後も増える可能性が推定されているという病気で あります。  それから、2段目に書いております、社会経済的にも大きな問題である。これは どういうことかというと、まず、COPDにかかりますと、非常に早期の段階から 行動が非常に制限されます。仕事や社会活動の制約ということが大きな問題になっ てまいります。それから、重症化すればするほど医療費がかかるということも後で お示しいたします。こういうような問題から、社会経済的にも問題がある。  そういった2つの大きなマイナス要因があるとともに、3番目に書いております ように、治療によってこの病気はよくなる病気だということがわかりってきた。し たがって、早く見つけて、早期の段階でとめることが大事だということが注目され ている大きな理由になってまいります。  その下は、先ほど木村室長の方から言われたデータと同じですけれども、2020年 には世界の死亡原因の3位になるだろうと予測されております。  それから、次の3ページ目を開けていただきますと、3ページ目の上の段には、 これはアメリカのデータでありますけれども、1965年から30年間にいろいろな病気 の死亡率がどう変わったか。そうすると、冠動脈疾患、脳血管疾患、その他の心血 管障害、こういったものはみんな死亡率が下がっております。ところが、COPD だけが1965年と98年を比較しますと163%に増えている。2.5倍ぐらいに増えてい るということで、COPDがいかに重要か、マイナス面での重要さですね。こうい うふうに死亡率が急激に増えてきていると、そういう病気だということのデータで あります。  その下は、これは患者さんにカソクドケイというのを着けて、患者さんの一日の 行動をきちんと計測したものですけれども、健康な人に比べて、その次にGOLD のI&II、III、IVというふうに書いてあります。これはCOPDの重症度でありま すけれども、I度からIV度というふうにだんだん重症度が上がっていくわけですけ れども、COPDの患者さんはもう既にこういったI度、II度という早期の段階で、 健康な人に比べると6割ぐらいに活動性が落ちているというデータがあります。非 常に早期から行動が制限されて、社会経済的にもマイナスが大きいんだろうという ことが予想されます。  4ページ目です。4ページ目は、上はスウェーデンのデータなんですけれども、 重症、中等症、軽症/中等症、軽症というふうに緑がだんだん薄くなっていってお ります。濃い方が重症を示しております。そうすると、左側の棒グラフで頻度と書 いてありますのが、COPDの患者さんで重症、中等症、そして軽症という患者さ んの頻度を示しております。右側の医療費というのは、その患者さんたちが使った COPDの全医療費を示しております。そうすると、非常に極端なのは、濃い緑で 書いてある重症の患者さんは、頻度では全体の10%ぐらいしかいません。ところが、 国全体のCOPDの医療費の8割ぐらいをこの人たちが使っている。軽症とかの患 者さんは、数は多いけれども、国全体として見ても医療費はかかっていないという ことです。  下の表は、これはアメリカのデータですけれども、今度は個人の医療費を示して おります。軽症、中等症、重症と、一番下が、これはアメリカですからドルですけ れども、合計の総医療費で示しておりますが、軽症の患者さんが平均で年1,600ド ル強。中等症になると、それが2.5倍ぐらいの5,000ドル以上になります。そして、 重症になると大体5倍以上。年間1万ドル以上かかるというふうな、個人にとって も重症化すれば大変だけれども、国全体としても医療費がかかるんだというデータ をお示ししております。  それでは、ここまで言いますと、COPDという病気は大変な病気で、暗い話題 ばかりですけれども、5ページ目から、今度はプラスの要因をお話しします。  COPDの治療目標というのは、ガイドラインでは、大体こういった6項目挙げ ているわけですけれども、このうちの一番上から、症状・運動耐容能の改善。呼吸 困難の症状とどれぐらい動けるか、これをまず改善してやること。これについては、 臨床的に高いエビデンスの報告がかなりたくさんされております。  それから、QOL。生活の質の改善ということも非常に高いエビデンスが報告さ れております。  それから、憎悪の予防と治療。風邪を引いたりして悪化する。そういった回数を 減らす。そういうようなことについても高いエビデンスが示されております。  それから、1行あけまして、疾患の進行防止。COPDというのは慢性疾患で、 進行性の病気です。年々だんだん悪くなります。それの治療によって止めることが できるんだ、遅くすることができるんだということも近年証明されてまいりました。  そして、最後の行ですけれども、最終的に生命予後が変わるんだ、生存率も改善 するんだということも証明されてきました。  現在のところ、この6つの治療目標の中で、4番目に示されています全身併存症 と肺合併症の予防と治療。これについてまだ十分な証拠がないというぐらいであり ます。これについては後でちょっと触れたいと思います。  そういったデータの一つ、代表的なものをお示ししますが、5ページの下の段。 これは、吸入ステロイドと長時間作用型のβ刺激薬という気管支拡張剤と合剤を使 った、3年間、6,000人の患者さんの経過を見た研究ですけれども、COPDの患者 さんは、ブルーのラインで示していますように、何も治療していなかったら、年間 −55と書いてありますけれども、これは肺機能の一つのパラメータの低下速度を示 しています。  ところが、ピンクで示してありますように、こういった合剤を使って十分治療し てやれば、これを39まで少なくすることができます。進行がこういうふうに抑えら れるんだというような世界的な大規模研究の結果であります。  次のページ、6ページ目です。6ページ目は、今度は別な薬ですけれども、これ は、抗コリン薬という薬を使ったデータですけれども、4年間、やはり6,000人の 患者さんをフォローアップした経過を見たデータです。  そうすると、何も治療していない人は、4年間で16.3%の死亡率だけど、治療し た人は14.4%。死亡のリスクを1.9ポイント低下させるという、これは統計学的に も有意な差がついたデータであります。  そして、下の方は、これは心臓の病気とCOPDとを比較したものです。これは、 右側が心臓の病気で、心不全にACE阻害剤という薬、日本では非常にたくさん使 われている薬です。こういうものを使うと2.3ポイント死亡率を低下させる。  それから、冠動脈疾患。狭心症みたいな病気ですね。こういうものにスタチンと いう種類の薬を使うと、1.8ポイント死亡率を低下させる。  それに比べて、左側の2つがCOPDの今まで行われた2つの大規模な研究の結 果ですけれども、チオトロピウムというのは抗コリン薬。これを使うと、上のデー タで示しましたように、1.9ポイント減少させる。そして、SFCと書いてあるのが、 先ほど、前のページで紹介した吸入ステロイドと長時間作用型の気管支拡張薬の合 剤ですけれども、2.6ポイント死亡率を低下させる。循環器疾患に対する治療とCO PDの治療というのは、ほとんど遜色ないデータが出ている。これぐらいよくなる んだということであります。  それから、次のページの7ページが、これが併存症・合併症と言われる病気であ ります。COPDになるといろんな病気を合併してくるわけです。心臓の病気とか、 糖尿病であるとか、あるいは骨が脆くなったり、やせてきたりとか、いろんな病気 を合併してまいります。  そうすると、このグラフはどうやって見るかというと、例えば、呼吸不全、肺炎、 心不全と書いてあります。これは、これが主な病気で入院した人が、緑色の濃い棒 グラフは、これは、COPDが合併している人の死亡退院をした割合を示しており ます。それから、水色の方は、COPDが合併していない患者さんの死亡退院のリ スクを示しております。そうすると、呼吸不全とか肺炎とか肺の病気は分かります けれども、心不全とか虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、こういうような直接COP Dとは関係なさそうな病気でも、合併すると死亡率が高くなるんだというふうに、 ほかの病気の合併する病気の予後も悪くするということが分かっております。  そこで、下のグラフでありますけれども、これは特にCOPDを合併している患 者さんで、心不全の死亡率が高いということを一枚出したものです。別な論文から。  これが、最近の研究では、心不全がよくなるんじゃないかというような可能性が 幾つか報告されております。まだ非常に高いエビデンスとまではいきませんけれど も、COPDと心不全が合併している人にCOPDの治療をしてやると、心不全ま でよくなるというようなことが報告されております。  8ページでありますが、それだけCOPDという病気は、治療すればよくなるん だということは分かっていながら、なぜ見落とされている、診断されていない、治 療されていないかというと、患者さん側にももちろん問題があって、息切れがあっ ても年のせいと思っているとか、咳・痰があっても、たばこのせいと思ってあきら めているとか、場合によっては、徐々に進行するので、患者さんは慣れてしまいま すから、気がつかない。特に動かなくなってしまうと、自分が息が切れるというこ とを気がつかないということがあります。そういうようなことで見落とされている 可能性があるし、医療者側としても、今までは非常に少ない病気だと思われていた し、肺が壊れてしまったら治療してもしようがないというあきらめがあったり、そ れから、もう一つは、「スパイロが普及していない」と書いておりますけれども、 スパイロというのは、COPDの診断のためには不可欠な、しかも早期発見のため には絶対必要な検査なんですけれども、このスパイロメーターというものが、例え ばレントゲンとか心電図ほど一般の先生に普及していないという問題があります。  8ページの下の方ですけれども、COPDという病気は、健康な人が、水色の線 で示したように、肺機能がだんだん落ちてまいります。それに比べて、COPDの 患者さんというのは、黒のラインで示したように、急激に肺機能が年とともに落ち てくるわけですね。例えば、レントゲンでCOPDを見つけようと思ったら、非常 に進行した段階、胸部X線異常と書いてあります赤の点線、この辺でしか見つける ことができないわけです。  ところが、肺機能の異常を見つけようと思ったら、健康な人よりか低下したとい うところでチェックできるわけです。そのために、是非こういったスパイロメータ ーというのを普及させようとしているわけですけれども、現実問題としてなかなか 一般の診療施設に普及していないというところから、9ページ目にありますが、私 たちは、こういうような質問票を使ってCOPDを見つけ出すようにしております。  これは、たった8項目の質問票です。年齢とか、たばこをどれぐらい吸うかとか、 体格とか、咳、痰の状態、ゼイゼイ・ヒューヒューがあるかとか、そういうような 8項目でこれを見つけます。  そして、これは実際に欧米で作られたものですけれども、日本語に訳しまして、 私たちと和歌山医大とで一緒にこれがどれぐらい信頼性がおけるのかということを 検証したのが9ページの下のデータです。欧米では17点以上だったらCOPDを疑 えということですけれども、17点で私たちは切ってみましたら、93.9%ぐらいの感 度でCOPDの患者さんを見つけることができました。ただし、その見つけ出され た患者さんのうちの実際の40%、4割しかCOPDの診断はつきませんでした。残 りの6割というのは擬陽性だったということですね。これを20点というふうにもう ちょっと厳しくすると、85%ぐらいまで感度は落ちますけれども、65%ぐらいの陽 性率だったということで、簡単に見つける方法としては、こういうものが一つある のではないかということです。  以上、早期発見、そして早期に治療することが、どれだけCOPDに対して大事 でメリットがあるかということと、それから、現状でCOPDの患者さんをできる だけ多く見つけていくにはどうしたらいいかということを簡単にお話ししました。 ○工藤座長 どうもありがとうございました。  今、事務局の方から、それから、相澤委員の方から、COPDをめぐる現在の現 状と問題点について詳しくお話しいただいたんですが、いかにCOPDというのが 国民の保健、医療上、重要な疾患であるかということと、これは医療経済も含めて 大変重要な疾患だという指摘があったわけですが、また、予防法についても、禁煙 を中心として、予防ということは手段としては持っておる。また、治療についても 医学的にかなり進んできたというようなお話だったと思いますが、問題は、発見さ れていないといいますか、500万人いるところが実際には二十数万人ということで、 ほとんどの人が疾患と自覚していない。それをどうやって見つけていくかというの が今回の検討会の最大のテーマだろうと思います。  そういうことで、今回、初回でございますので、それぞれの委員の方々から、C OPDの予防と早期発見、また、御自分の経験、あるいは御自分の立場、お仕事の 側から、少しお話をいただけたらと思います。  相澤委員の方は、今お話をされたばかりなので、最後にお話しいただいて。よろ しいでしょうか、そういう進め方で。  では、今村委員の方から一言。 ○今村委員 私は、日本医師会の担当役員ということで参加させていただいており ます。日本医師会の会員は現在16万6,000人おりまして、ほぼ半分が診療所の開設 者や管理者で、残りの半分が病院の開設者や管理者でであったり勤務医で構成され ていますが、半数の診療所医師のうち、いわゆる内科系の疾病を担当する医師とい うのは、恐らく半分ぐらい。内科でなくても、自分の患者さんでCOPDを持って おられる方も潜在的にはいる可能性がかなりあると思っています。  そういった中で、相澤先生が早期発見のためのスパイロメトリーをそういう医療 機関に広く普及することが望ましいというお話をされましたが、確かにすべての医 療機関がそういったものを持つということが現実的に可能であればいいんですが、 内科の医師は、呼吸器の疾患だけではなくて、それこそ先ほど挙げられた慢性の糖 尿病であるとか、高血圧であるとか、ありとあらゆる疾病を見る中で、スパイロメ トリーを持ったとしても、疑いのある患者さんお一人お一人に検査をやるのに、従 事者の確保、スペースの問題だとか時間的な余裕ということで、なかなか困難なの が現状です。  私も開業した当時、スパイロメトリーを購入したんですが、最初、患者さんが少 ないうちは、そういうことを実施できたんですけれども、だんだん外来の患者さん が多くなってくると、もうこれは専門の先生に見ていただいた方がいいだというこ とで、スパイロ目とリーをやらないで専門の先生にお願いしてしまうということが あります。なかなかこれは、かかりつけの医師のところですべてスパイロメトリー を実施するというのは現実的には難しいんじゃないかなと。  そういった中で、先ほど相澤先生から、簡単な問診票である程度疑いのある患者 さんを見つけることができるという可能性が高いということは非常に意味があるお 話で、こういったところでかかりつけ医が早期にいろんな形で発見した方を、専門 の先生に医療連携の中で見ていただくというのが現実的なのかなと思っています。  ただ、医療連携というのは10年以上前から、ずっと病院と診療所の連携みたいな ことを言われていて、なかなかそれが実現していないのが現状で、やはり単にそれ を自発的なことで実施してくださいと言うのもなかなか難しいので、何らかの制度 的な裏付けが今後必要になってくるのではないかなというふうには思っています。  相澤先生に後でお答えいただければと思うんですけれども、問診票を私もちょっ と見せていただいたんですが、欧米のデータということで、20点以上で疑い患者の 64.7%がCOPDだということなんですが、極端なことを言うと、70歳で、20歳か らずっとたばこを吸っていて、BMI、いわゆる肥満度が25ということは、要する に、肥満じゃなければほとんど引っかかってしまうという点数になるかと思うんで すね。そうなると、こういう問診票で行うことが本当に日本人に適しているのかど うかなという素朴な疑問があります。ほかの症状がなくても、年齢が高齢で、太っ ていなくてたばこを吸っていれば、結局ほとんどCOPDだというふうに見えてし まうので、この辺のことを教えていただければと思います。 ○工藤座長 相澤先生、この件についてお答えいただけると。 ○相澤委員 これは、BMIは最初から僕らもおかしいと思っているんだけれども、 そのまま向こうのものを勝手に、これは版権もありますから、変えるわけにいかず に使ったわけですね。そうしたら、ごらんになってわかるように、これは結構肥満 なんですよね。だけど、実際に日本の2つの大学で200人ぐらいの患者さんに調査 したんですけれども、そうすると、COPDとそうじゃない人でBMIの差は全然 なかったんですよね。だから、この質問事項自体が余り日本人には意味がないと言 っていいかと思います。  そういったところが含まれていたので、17点で切った場合とか20点で切った場合 とか、幾つか分けて切ったんですけれども、そうしたら、いろんな先生からコメン トをいただいたわけですけれども、一律に17点以上、20点以上というのは、使い道 を考えた方がいいんじゃないかというような意見もいただきました。患者さんを見 落とすことなく拾い上げるには、17とか低い点数にしておいて、患者さんを確実に 見付けたいとか、診断したいという場合には20点とか。だから、ケース・バイ・ケ ースによって基準は分けてもいいんじゃないかという意見もいただきました。先生 のおっしゃるとおりで、このまま使うのはちょっと問題があるところがあります。 一つの方法として、こういうものがあるんじゃないかということで、今日出させて いただきました。 ○工藤座長 この点、また後で。  桂委員は、経験者ということで自己紹介されたんですが。 ○桂委員 19のときからたばこを吸い出して、1日約50本吸っていました。四十数 年、同じ時期に、同じドックへ入って診察を受けていまして、今から6年ぐらい前 に、ちょっと肺が弱っているので、MRIに入ってくれと言われて、そのときに先 生がおっしゃったのは、歌丸さん、たばこを吸っているようですけれども、これ以 上たばこを吸っていると取り返しのつかないことになりますからやめてくださいと いうことを言われまして、はい、分かりましたと返事はしました。でも、ずっと吸 っていました。別に先生が隣にいるわけでも何でもなかったものですから。  そして、去年の2月に風邪をちょっとこじらせまして、呼吸器科の病院へ行きま したらば、肺気腫という診断を受けて、10日間の入院をさせられて、このときも先 生から強く言われて、たばこを吸っていますね、おやめください。分かりました。 このときも返事だけでした。  今年の同じ2月の上旬に、やはり風邪をこじらせて、今度は肺炎という診断を受 けて、物すごい苦しい思いをしました。それで、たばこはそのときできっぱりやめ ましたが、ちょっと遅かったと見えて、今でも月に一遍は呼吸器科の病院へ通って います。自分でおかしいなと気がついたのが、私たちは舞台と言いませんで、高座 と言いますが、楽屋のところから高座の座布団の上へ歩いていくだけで息切れがし て、最初の2〜3分はしゃべることもできなかったんです。何かお腹に力が入りま せんで。でも、俺は意思が強いんだといって、たばこをやめませんでした。仲間が たばこをやめると、おまえは意思が弱いとよく言っていたんですけれども。  そして、歩くことが、私は実は、肺気腫ばかりで歩くことが苦しいのではなくて、 腰の手術を二度ばかりしておりますので、余り歩くのが得意じゃありませんけれど も、歩くと息切れがして、どうにもこうにも苦しい。今でも月に一遍ずつ呼吸器科 の病院へ通っていますが、お薬を使わせていただいて、酸素吸入を苦しいときには して、大分苦しさもよくなってきました。でも、まだまだ本格的ではありません。 今になって、たばこというものはすごく毒なものなんだなということに気がつきま した。気がつくのがちょっと遅かったと思うんですけれども、そんな経験をしたも ので、早くこの病気を発見していただいて、完全なる治療ができるような体制をと っていただきたいと、患者の一員として思っています。 ○工藤座長 ありがとうございました。  患者団体の立場から、遠山委員、何か。 ○遠山委員 私は、今、NPO法人の日本呼吸器障害者情報センターという一つの 団体を持っているんですが、よく患者さんからの御相談がある中で、10年前は、医 師の診察を受けたときに、COPDって何ですかと医師の方から言われたと、そう いうことがあったわけですけれども、10年たって、かなりそういう知識が普及した かなと思っております。  もう一つは、スパイロメトリーが普及していないということなんですけれども、 今の患者さんは、ほとんど自己管理をするのにパルスオキシメーターというものを、 これぐらいのものなんですけれども、持っていらっしゃいます。そういった意味で、 パルスオキシメーターを普及させるということ。あれは簡単に、医療者としてお持 ちになるにはそんなに高いものではありませんし、労作時に測れば、息切れの度合 いも分かるわけですから、是非普及させていただければありがたいかなと思います。 普及することによって、価格が随分下がるわけですから、お求めやすくなるわけで、 そういった意味でも普及させていただきたいなと思います。それが一番手っとり早 く発見できるのではないかなと思います。  歌丸師匠が19歳からとおっしゃっていましたけれども、私の夫は14歳から吸っ ておりまして、威張っておりましたけれども、診断を受けたときにはかなり重症に なっておりました。診断されたと同時に在宅酸素療法ということがありました。そ の前に風邪を引いて、何度も入退院を繰り返しておりまして、治りにくい、治りに くいと言っていた中、もっと早く発見できればよかったなと思います。しかしなが ら、その時点ではたばこがやめられなかったわけですから、そういった意味で、も っと早い時点で特に40歳を過ぎたら、検査をしなさいと勧めた方がいいと。かなり の年数になりますと、なかなかやめられないわけですよね。ですので、早くに気が つくということが大事ではないかなと思います。 ○工藤座長 ありがとうございました。  どうぞ。 ○桂委員 測るやつ、私もあれを普及するのは大賛成です。今、余りまだ普及して いませんで、手頃なお値段とおっしゃったですが、高いですよ、あれ。私が買った のは3万5,000円取られました。 ○遠山委員 それはいいパルスオキシメーターです。 ○桂委員 私がかかっている先生のよりも私の方がいいです。先生の使っているの は物すごく古いんです。私の方が新しいんです。今おっしゃったとおり、あの普及。 あれですと、血液中の酸素が分かる。脈拍も分かりますので。 ○工藤座長 それでは、患者さんの経験者というか、COPDになられた立場から お話ししていただいたので、医師の立場から。 ○今村委員 パルスオキシメーターの使用には、私も積極的だったので、19年前に 開業したときから自分の外来に置いているんですね。当時は200万ぐらいしました。 今はそれは3万ぐらいになっています。確かにかなり進行して在宅酸素を行ってお られるような方の経過を見るには、外来に来たときにとても役に立ちます。あるい は在宅の患者さんに私がポータブルなものをお渡しして、この数字がこういうふう に動いたら連絡をください、みたいなやりとりをしていたんですが、外来に来られ ることができるぐらいの中等度ぐらいの方だと、パルスオキシメーターを見てもそ んなに数字が落ちていない人も結構いるので、そういう意味で、早期発見という意 味でそれを活用するということは、ちょっと次元が違うのかなと思います。ただ、 多くの医療機関になるべく普及するということは大事かなと思うんですけれども、 その点だけ区別した方がいいかなと思います。 ○工藤座長 ありがとうございました。  今、COPDの患者さんの立場、医師の立場、そうなりますと、ケアする側の立 場で、竹川委員は慢性疾患の看護専門看護師、そういう立場で少しお話しいただけ ればと思います。 ○竹川委員 私が今活動しているのは、看護専門外来で、GOLDIII期、IV期の方 を対象にお話を伺って、日常生活でどんなふうに工夫をすれば生活が楽にできるか なとか、息切れをどんなふうにすれば軽減できるかなという視点でお話をしている んですけれども、今、パルスオキシメーターのお話で今村先生がおっしゃられたよ うに、本当に動作時にどれだけ下がるかとか、脈拍がどれだけ増えるかというので、 動作はどんなふうにすればいいかとかという指導にも活用できるかなというのはあ るんですけれども、早期発見はなかなか難しいなというのが感じます。  あと、患者様がIII期、IV期の方が外来の方によく来られるんですけれども、がん というのはすごく怖い病気というふうに皆さん思われているんだけれども、COP Dはなかなかそういうイメージが一般の方にはないじゃないですか。でも、患者さ んにとっては、少し、あそこまで動くのにもどんなふうにして動こうか、どこで休 憩しようかというふうに、息切れしないためにどうしようかというのを常に考えな ければいけないということをかなり患者さんが話されるんですね。すごく精神的に もまいってしまうと。今までできていたことができなくなってしまって、いろいろ なものを失ってしまう。精神的にもまいってしまうということで、かなり怖さは違 うんだけれども、がん以上にすごくしんどい病気だなというのがあるので、そのあ たりを世間の方に知ってもらうのが大事かなというのと、あと、肺年齢というお話 がありますよね。あれがもっと世間に広がっていくと、相澤先生がおっしゃったみ たいな質問票も、人間ドックとか、ドックの中にスパイロメトリーが入ればいいん だけれども、なかなか入らないこともありますので、質問紙で調査していって、で も、調査しても、それがどういうものかというのが分かっていないと流れてしまう ので、肺年齢というのをかなり浸透していると、質問紙で引っかかった場合に、大 きな病院へ行って、スパイロメトリーしてもらって見てみましょうというふうにつ なげていくことができるかなと思いました。  当センターで、ちょっと今うまく回っていないんですけれども、1泊2日のCO PDドックのパスというのがありまして、近くの先生から紹介していただいた患者 さんに、スパイロメトリーとCTと検査をして、1日目、2日目と教育するという ものがあるんですけれども、それもスパイロメトリーがどれだけ大事なものだとか、 肺年齢がどれだけ病状が分かるんだとかということを浸透させると、近医の先生方 も送ってくださるし、患者さん自身もたくさん来てくださるかなと思います。それ が早期発見につながっていくかなという気がします。 ○工藤座長 どうもありがとうございました。  早期発見ということで、先ほど質問票とスパイロメーターというか肺機能測定器 ですね、これのお話があったわけですが、もう一つ、国民の皆さんが、肺の健康と いうか、そういう意識を持っていただくにはどうしたらいいかというので、肺年齢 ということを呼吸器学会が提案したわけですけれども、相澤先生、肺年齢について もう一度御説明をしていただけますか。 ○相澤委員 先ほどの資料で、8ページの下のグラフを見ていただきたいと思いま す。健康な人だったら、年とともにこういうふうに落ちていくけれども、COPD の患者さんというのは急激に落ちていく。これを今まで患者さんに数値で説明して いたわけですね。あなた、正常だったらどのぐらいないといけないけれども、今、 実際にはこれぐらいしかない。そういうことを言っても、実感としてほとんど患者 さんの方は分からないわけです。そうしたら、ちょうど矢印を右に伸ばしたように、 健康な人だと、あなた、80歳ぐらいになりますよとか、そういうふうな表し方をし たのが肺年齢です。  今の御意見について、非常にこっちもいいなと思ったのは、肺年齢は、実はイコ ールそこで肺機能検査をやらなければ分かっていないんですけれども、患者さんと いうか、引っかかった人に説明する言葉としてはすごくいいですね。質問票でこう だから肺機能検査を受けてくださいというよりは、肺年齢を測ってみたら高いかも しれませんよというふうにして精査を勧めるというような、そういうような2段階 の考え方もあるんじゃないかと思います。 ○工藤座長 健康と言われている方で、たばこを吸っている人と吸っていない人で は肺年齢は違うのかということと、それから、日ごろ体を鍛えている人、肺年齢は 実際若いのか、そういうことはどうですか。 ○相澤委員 たばこを吸っている人は、まだ病気じゃなくても、統計的に計算する と差がありますね。たばこを吸っている人は肺年齢は高いです。  それから、これはまだあれですけれども、一般の人で福岡市で400人ぐらい街頭 で肺機能検査をしたんですけれども、その人たちとフィットネスクラブで300人ぐ らいの人を検査したんですけれども、一時期に断面的な検査をすると、フィットネ スクラブで測定した方の方が肺年齢が低く出ましたね。これは、今までいろんな肺 機能の論文を調べたんですけれども、運動によって肺機能がよくなるという報告は ないんですね。ただ、調べていったら、肺機能の経年的な低下が、運動していると 抑制されるという論文は幾つか報告がありますので、多分運動することによって老 化が抑えられるのではないかと考えています。 ○工藤座長 これは、今日、御出席の委員の方々には、健康の推進の立場の委員が 大勢おられると思うんですけれども、その点では、瀬戸山委員。 ○瀬戸山委員 COPDは予防というより、まず、早期発見が大事ということです ね。うちは健診機関でございまして大体年間、結核と肺がん検診で胸部の写真を26 万枚ぐらい撮っています。現在の問診票を使って、去年、1,600人ぐらいCOPD検 診をやった結果、COPDが何人か見つかっています。その問診票の中で1つ欠け ているのは、受動喫煙の項目ですね。これが入っていないですね。うちで実は昭和 61年から肺がんの検診をやりまして、今まで900人ぐらい見付けた肺がんのうち、 400人ぐらいが女性なんですけれども、男性は82%がたばこを吸っていて、そのう ち8割はヘビースモーカーです。ところが、女性は喫煙者がわずか5%なんですね。 ヘビースモーカーは5人しかいませんでした。結局、年齢別に見ると、男性はほと んど70代から上で、ヘビースモーカーが加齢とともに肺がんになるというのは納得 できるのですが、女性の場合は、40、50代が半々ぐらいなんです。ということは、 これは恐らく受動喫煙の影響ではないかということですね。実はうちの検診の問診 票でも、今まで受動喫煙の項目を入れていなかったんですけれども、昨年から受動 喫煙を問診に入れております。つまり、他人のたばこにさらされる機会があるかと いうことですね。ただ、受動喫煙というのは一般の人は余り分からないです。他人 のたばこの煙にさらされるという表現がベターと思います。ましてやCOPDにつ いても、一般の人はほとんど知らないですね。  県によって物すごく禁煙についての認識が違う。それぞれ地域によって、禁煙を 進める環境が違うと思うので、その辺をきめ細かにしないと、ただ全国一律に禁煙 活動をやりなさいではだめだと思うんですね。  それと、もう一つ、さっき言いました受動喫煙をCOPDの問診項目に取り上げ てもらいたいということですね。  以上でございます。 ○工藤座長 ありがとうございました。  禁煙の問題は、先ほども中尾委員が触れられましたけれども。 ○中尾委員 呼吸というのは、生きる基本ですので、外呼吸と内呼吸とあるんです が、呼吸しないと、その人は死にます。もちろん外呼吸からまずちゃんとできるこ とが大事ですね。先ほど相澤先生からありましたように、フィットネスクラブの人 がなぜいいかというと、肺自体ではなくて、呼吸筋が強くしっかりと動きますので、 それで肺呼吸がうまくできるのでしょうね。そういう理由だと思います。  ただ、私の考えといたしましては、メタボの概念を広げたということだけでも非 常に効果があったと思っています。私たちフィットネスインストラクターでも、医 療構造改革でメタボとは何かとか、メタボのリスクの各々が大した数値でなくても、 血圧とBMIと高脂血症なりが3つ4つ重なったら、発症する率が36倍、37倍にな るということとか、そういうことをとりあえず知識として学ぶことができ、運動指 導にその側面がプラスされて運動のとらえ方も大きく変わりました。COPDに関 しても国民だけではなく、健康に携わっている方にいかに知識を広げるかが鍵だと 思います。  運動に関しては、とくに健康運動指導士にその使命を担ってもらうシステムがで き、そこに保健師と栄養士でチームを組んで生活習慣病の予防を行う、そこもなか なかうまくいっていないんですが、成功しているところもあります。保健師さんが すごく頑張っておられて、まったく運動指導と一緒なんですね。日常の自分のやっ ている、普通に無意識に食べているということを、それを食べるとどれだけの糖分 を摂っていて、その結果どういうことが起こるかということを気付せてやる気にさ せていくですね。ところが、今までだったら、こうしてくださいという命令だけだ ったと言われます。  運動の方もそうですね。「〜してください」という命令では人は動かない。栄養 士会の仕事で富山県に行ったとき、西田栄養士会会長が「私たち栄養士は魔性(ま しょう)の女と言われています。カロリーを減らしましょう、野菜をもっと食べま しょうと、これらは丁寧だけれど命令です。何々しましょうでは、人は動きませ ん」と、と栄養士会もすごいなと感じました。ですから、メタボのように、知識と 概念を広めることが先決だと思います。  すごく怖いと思うのは、ほかの病気が下がっているのに、これが非常に上がって、 ひょっとして3位になるというのは、真剣にやらないと絶対だめだと思うんですね。 そうすると、メタボと同じように、概念を広げる手段は、専門家だけでなくて国民 に対しても同時にやっていくべきだと思います。  COPDがどういうものか知らない人がほとんどだと思いますし、私も今日初め てこれをお勉強させていただいて、非常に刺激を受けました。COPDのことを学 べれば、運動指導しているインストラクターはすぐに顧客に話しもでき、呼吸指導 もできます。一般の方は、自分が鼻呼吸なのか、口呼吸かも知らない方がすごく多 いことや、肺の上部しか使えない浅い呼吸なのか、深い呼吸をしているのか、そう いうことすら気付いていられないんですね。それぐらい日常動作というのは無意識 なんですよ。だから、COPDの延長線上にある日常動作をいかに意識化させるか。 これは予防に関係すると思いますが、今、このようなことが頭をぐるぐるしている という感じです。 ○工藤座長 ありがとうございました。  中村委員は、大阪の方で健康生活推進部長という役割をされているんですけれど も、一言ございますか。 ○中村委員 仕事柄、たばこはもともと吸わないというか、実は5歳のときに初体 験しているんですけれども、幸い生涯20本も吸っていない。ほぼ非喫煙者なんです けれども、運動とか食事にも気をつけないと、健診の受診者の方にお話しするにも 説得力がないということで、自分なりには気をつけております。さて、COPDの 予防ということで私の意見を述べたいんですけれども、COPDは、最近の日本で の3つの大きなコホート研究のデータを統合しますと、男性においては、ちょうど 肺がんと同じぐらいで、6割がたばこが原因ということで、たばこの喫煙率が高か った男性においては、たばこの原因として占める割合が大きいということで、日本 全体のたばこの消費量、または喫煙率を減らしていくというのが何よりの、COP Dも含めてたばこ病全体を一緒に予防するということで、社会として非常に重要な 対策であるというのは、だれも異論はないところかなと思います。  そのためには、たばこ規制の国際枠組条約、先ほど説明が厚労省からありました けれども、その対策をやっていくということです。今年はちょうどたばこの値上げ が予定されています。税制改正大綱の中にたばこの値上げとたばこ事業法の改廃が 盛り込まれて、今年の10月から100円から140円ぐらい価格にして値上がりします。 これが禁煙を考えるきっかけにはなります。特に若い人、また、経済的に恵まれな い層の方々の禁煙推進に役に立ちます。たばこの値上げは、将来の喫煙防止にも役 に立ちますし、喫煙による健康格差を縮めていくということでも非常に意味のある 対策で、今後更に値上げがされていけば、COPDの予防にもつながります。  受動喫煙の防止についても、今日、上田健康局長さんがおられますけれども、局 長通知が2月に出まして、罰則規定はありませんけれども、原則として公的な場所 については原則、全面禁煙、全館を禁煙にしましょうということ、また職場の方で も検討会の報告書がまとまって、今後、法改正等のことも視野に入れられていると いうことで、そういった対策をどんどん進めていくというのは、COPDを含めた たばこ病の予防対策になると思うんですけれども、今日の検討会として、COPD に特化してというか、COPDを切り口にして、どういうふうにCOPDの予防を、 また、たばこ病の予防をしていくかということでは、健診による早期発見に禁煙を どう絡めていくかが非常に重要な論点だと思っております。それを考えるに当たっ て、私も学生時代に、親しかった先生が呼吸器内科の教授で、肺機能のこともいろ いろ勉強したんですけれども、COPDとは何となく距離があるんですね。呼吸器 内科の先生にとっては非常に身近な話なんですけれども、それ以外の医師にとって、 COPDという病気であるとか、また、肺機能の検査というのは、学生時代習った なというように思っている先生も意外と多いかもしれないんですね。  もうちょっと身近な問題にするにはどうしたらいいのかということで言いますと、 今、呼吸器内科学会が中心になってCOPDの啓発をされているんですけれども、 私が思うには、呼吸器内科学会だけの取組みじゃなくて、もうちょっといろんな学 会、また、日本医師会をはじめ看護協会等の関連団体が一緒に取り組めるように取 組み方を工夫しないと、いつまでもCOPDというのは呼吸器内科の専門医、また、 その学会がやる活動だということになってしまうのではないかと危惧します。例え ば、COPD検診を無症状の人まで含めてやるかどうかというのは、必ずしもエビ デンスはないわけですけれども、例えば、早期発見をしましょうということを呼び かける際に、スモーカー健診という切り口にすれば、多くの医療関係者に共通のテ ーマになると思います。喫煙者には多くの医療関係者が日常的に接しているわけで すね。喫煙者にとっては、喫煙による健康の被害の状況が呼吸機能を使って身近な 診療所で、簡単に調べることができるということになります。今は簡易なスパイロ も販売されて、保険の点数はつかないそうですけれども、診療所でも購入しやすく なっています。たばこの検査もニコチン依存症管理料の方で呼気の一酸化炭素を測 る検査の機器が普及してきています。そういったたばこの検査とスパイロの検査を セットで実施して、スパイロで異常がなくても、たばこの検査をすると、たばこを 吸っている人であれば、必ず異常が出ますから、禁煙を働きかけ禁煙治療につなげ る。スパイロに異常があれば、呼吸器の専門医につないでいくのが良いと思います。  また、その際に重要なのは、COPDでなかった人への禁煙の働きかけです。喫 煙者は、将来こんな病気にかかりやすいですよと説明して禁煙を促すことが重要で す。意外と知られていない、例えば喫煙が主要な原因となっている黄斑変性も中高 年の失明の1位、2位ぐらいに位置する病気だし、椎間板ヘルニアと喫煙の関係も 報告されています。要は、全身のエラスチンとコラーゲンを破壊するから、肺気腫 は起こるし、皮膚の皺は起こるし、椎間板の老化が起こればヘルニアになるという、 そういう全身の結合組織が活性酸素でダメージを受けて老化するということが分か っています。喫煙していると、COPDを含めて将来いろんな病気にかかる可能性 がありますよという具体的な説明を、COPD検診というのを切り口にやっていく、 そういう活動であれば、多くの医療関係者が参入できるのではないかと思います。  現在、ニコチン依存症管理料の施設が全国で9,000施設ありまして、禁煙治療が 熱心に実施されています。保険点数のわりにかなり時間のかかる作業で、ちょうど 肺機能の検査をするような、肺機能は300点という保険点数らしいですけれども、 ニコチン依存管理料も5回やって1,000点ということで、結構時間のわりに保険点 数が少ない。そういうところで、例えば、肺機能の検査と禁煙の勧めをするという ことに対して、一定の診療報酬上の評価をするということも、今後多くの医療関係 者を巻き込んで広げていくことにつながるのではないかなと考えております。この 検討会の中での議論が一つの新しい制度につながって、多くの関係者が、肺の問題、 また、背景にあるたばこの問題に取り組めるようになれば良いと思います。 ○工藤座長 遠山委員、どうぞ。レディファーストで。 ○遠山委員 呼吸器学会で「呼吸の日」というのを制定されておりまして、私ども では今年第3回目のラングウォークジャパンというのを、日比谷公園、皇居周辺を、 5月9日「呼吸の日」、新緑の中、空気もいいし、とても歩くのにも最適な時期を 選びまして、ウォーキングイベントを開催しています。これは世界100カ所で開催 されておりまして、私どもはいち早く第1回目から行っておりますけれども、「呼 吸の日」というのを是非押し進めていただきたいなと思います。ウォーキングとい うのは、子どもからお年寄りまで、皆さん参加できますし、その中でも肺活量コン テスト、肺年齢検査ですとか、血管年齢検査などもやっておりますし、一番皆様が 参加しやすいイベントではないかなと思ったりします。 ○工藤座長 どうぞ。 ○今村委員 中村先生からの御意見の中で、呼吸器学会だけではなく、広く医療関 係者に呼吸器のCOPDを中心とした疾病にもっと親しい関係の中でやっていくと いう御提言があって、私は全くそのとおりだと思っています。厚労省にこういう会 が作られたことは本当に大きな意義があって、一歩も二歩も前進したと思っていま すが、実は、工藤先生もよく分かっておられるんですが、呼吸器学会と結核予防会 と日本医師会で、COPD対策のための推進協議会というのを作りましょうという ことで、今、準備会を開いています。これを早く本当の会として機能させたいと思 っています。その中で何をしたいかというのは、いみじくも先生がおっしゃったと おりで、1つは、国民に対する啓発もそうなんですが、医療関係者そのものが健診 をどうしていくのかとか、医療連携の中でいかに早期に疾病を発見して専門医に早 く治療していただくかとか、そういうことをやっていく。今日は竹川委員がいらっ しゃるので、是非広く、看護協会であるとか、そういった方たちもいずれ参加して いただき、開かれた協議会として、民間は民間として、国は国で制度を作っていた だくにしても、我々は我々で自発的にいろんなことをやっていければというふうに は考えています。 ○工藤座長 見城委員は、社会学部という、非常に広い視野で考えておられるんだ ろうと思います。どうぞ。 ○見城委員 まず、私は、たばこを生まれてから1本も吸ったことがないので、本 当にたばこが苦手です。それと、アナウンサーという職業でスタートしていますの で、先ほど呼吸ということをおっしゃいましたけれども、まっすぐ姿勢をよくして、 お腹の底まで空気を入れないといい声は出ないということを徹底して訓練させられ るという経験をしていますと、逆に、そういうことができない、空気が汚れている ということにとても敏感なんです。それで、一般の方は、多分呼吸しているという ことを無意識、意識していないから、平気でたばこを許していたんだろうと。どこ かで意識してきちんと空気を吸ってという生活をしていますと、ちょっとしたにお いでも、わあ、よくないということが分かるんですね。まず、そういったところが 一般的にどうしたらいいかという、まず、それを考えます。  今日、今、御意見を伺っていて、専門家の方々が、COPDとか、先ほどのスパ イロメトリーとか、こういうことはまず一般の生活には届いておりません。まず、 ここからスタートですね。  それから、受動喫煙、この重要性というのは、最初にごあいさつで申し上げまし たように、禁煙ということを掲げていたときには社会はなかなか動きませんでした。 社会も。先ほどたばこメーカーのこともございましたが、ただ、受動喫煙防止とい う形になったときに、初めて、吸っていない人も実は害を受けている。しかも、そ の方が害が大きいということが徐々に伝わって、ただいま大学では禁煙キャンパス ということが当然になって、大学のどこそこにも「禁煙キャンパス」というのが張 られて、歩きながらたばこを吸うという学生は基本的にはいなくなりました。  キャンパスの中はきれいになったということと、それから、随分願っていた、J Rの、ああいう公共の人が集まる場所、否応なくそこに行かなければならないとこ ろは分煙にしてほしいということも、実を結び喫煙場所が設定されるようになりま した。基本的に、たばこを吸っている方の御意見ですと、自分たちが不幸だと。追 いやられているという被害者意識が高まっているんですね。ですから、これから、 今回、予防方策、予防と早期発見ということをやっていくに当たって、一つは、喫 煙者のそういった恐怖観念とか被害者意識に対して、肺がんだけじゃないと、もう 一つ強い脅迫観念を与えるかもしれませんが、COPD、呼吸器というものが非常 に重要で、そこに疾患がいくんだという、その辺のところの情報が思い切ってどん どん出していくべきだというのがあります。  咳ですが、私は何度もいろんな人に言うんですが、咳をしながらも肺がんは大丈 夫とおっしゃる方が大部分です。ゼイゼイとかゴホゴホやって、それがもうおかし い、私はそんなもの出ないと言っても、100人中100人、御自分の咳とか痰を受け入 れた方はいらっしゃらないですね。だから、この辺の喫煙者に対して、どれだけ肺 疾患の怖さといいますか、情報としてもっと本当に出していった方がよいと思いま す。  情報が重要だというのは、未成年者の喫煙率が96年から08年にかけてはぐっと 減っていますね。中学生、高校生。これは、学校で受動喫煙に関する授業をやり、 保健の先生が非常によくやっていらっしゃるんです。ですから、教育の重要性とい う中に、もう一つ呼吸器系の病気、COPDですか、こういったことはなかなか入 ってきておりませんので、もっと具体的に入れるべきだろうと。教育の場で重要だ と思います。  あと、もう一つ、成人喫煙率の中で女性が一向に減らないというところが問題な のは、お腹に赤ちゃんがいるお母様方、妊娠中の女性の喫煙も問題なんですが、幼 いお子さんがいらっしゃる御家庭の中ですね。外部からどうにも人が入っていって 窓を開けるわけにいかない。そういう女性の喫煙率がずっと平行であるというとこ ろも着目して、そこで育てられる子どもたちはどうなのか。そこの子どもたちがた ばこに手が行くのは、全然吸わないお宅と違って、高いと思いますね。だから、そ ういうことも含めて、こういったせっかくのデータと、データから見る現状ですね。 予測も含めて、具体的な啓蒙活動が重要だと思いました。  それから酸素年齢ですが、多分専門のお医者様から見れば、それは予防として、 早期発見としてどう重要かとか、いろいろ専門の方の御意見があるかもしれません が、私の素人の考えでは、全部BMIから何から体脂肪率まで測ることができる体 重計がございますね。ああいうのを父の日にプレゼントしたりして、それがBMI とか、一応メタボと体脂肪を測る独特の体重計ですか、あれによって意識がとても 高くなったことは確かなんです。そうすると、ちょっと簡単で、職場で部長に昇進 した人にプレゼントとか、そういう感覚で、部長、どれだけ酸素を吸っていますか、 のような、例えばそういった方向で一般化していく、意識を高めていく、どうでし ょうか、先生。まずいですか。 ○今村委員 問題は、要するに、ほとんどの人は正常に出てしまうということ。だ から、付けたときに、ああ、自分の状態は悪くないんだと逆になってしまう恐れも あるので、そういう機械があって、体の中の血液の酸素というものに対する意識を 持ってもらうことが大切です。私も外来で血圧を測るときに必ず酸素も図りますか ら、それは何ですかといったら、血液の中の酸素の濃度なんですよ。そういう話を すると、ええっ、そんなことが分かるんですかというふうにおっしゃいますけれど も、ただ、ああ、悪くないんですねとなってしまうと、ちょっと悪いときには逆効 果だなと多少思っています。 ○工藤座長 恐らく見城委員のおっしゃっているのは、正常だろうと、異常だろう と、肺が酸素を取り込んで、炭酸ガスを出す大切な臓器だということをもっともっ と知ってもらう、興味を持ってもらう。そういう一番基本のところがとても大切な んじゃないか、そんな御意見だろうと思うんですけれどもね。 ○見城委員 実際にたばこを吸っていて肺気腫になられた方が数人いらっしゃいま す。それって大変な病気なんじゃないかと。全員が、ううん、全く。ちょっと肺胞 がつぶれただけで、そんなの幾つかつぶれても全く普通に呼吸できると言って、た ばこをやめない方がそのうちの数名。そういう状況というのは問題だなと思いまし て、今、師匠がいらっしゃいますが、師匠はその段階を超えて本当に病気になられ たということですから、もっともっと予防方策としての情報発信、具体的な情報発 信が重要だなと思います。 ○工藤座長 どうぞ、瀬戸山委員。 ○瀬戸山委員 今日のテーマは予防と早期発見ですね。それでいきますと、今、C OPDの概念、ほとんど国民には分かっていませんね。ですから、広報活動のいい 例として、日本対がん協会や、患者団体が行っている、乳がんのピンクリボン運動 というのがありますね。あれはほとんど全国の人は知っているんですね。ですから、 そういうふうに具体的に運動すると。例えば患者団体でもいいし、あるいは呼吸器 学会でもいい。そういう国民的な運動をする。それに、日本対がん協会では、イメ ージキャラクターとして、例えばアクネス・チャンさんという乳がんのサバイバー をほほえみ大使として任命して、全国をずっと講演して回っていますね。結構あれ は効果があります。うちでもアグネス・チャンさんや大空真弓さんに講演に来てい ただきました。  それから、あと、結核予防会もビートたけしさんをキャラクターとして起用して いますね。ですから、そういう意味で、国民がCOPDというのはこんな病気だと、 知ることが大事であって、スパイロをつけるとか、そういう段階じゃないと思うん ですよ。ですから、一般の人が、自分はひょっとしたらCOPDかもしれないとC OPD検診を受けたくなる、あるいは問診を受けるとか、そういうところのまず入 口からやらないと、我々は専門家ですから、知っているんですけれども、一般のお 医者さんでも余り知らないです。だから、先例としまして、ピンクリボンという、 最近は、企業なんかにも広がりまして、かなり全国的に広がっていますね。それと リレーウォークというのがあります。これも全国的に何万人の方が参加しています。 ですから、ある程度地道に啓発といいますか、国民に対してまずCOPDの概念の 導入、そこからやっていかないと、予防も早期発見も余りうまくいかないのではな いかと思うんです。 ○工藤座長 肺の大切さとか、あるいはたばこの害の問題、あるいはCOPDの問 題、とにかく最初は啓発が本当に十分にいかないと、そこからどういうふうに禁煙 の動機付けが行われていくのか、そういったプロセスも含めて、非常に重要なテー マで、まさにこれが今日の第1テーマ。予防をどうするかということ。是非桂委員 も笑点で一言言っていただくと。これは記録に残さないでいいですから。 ○桂委員 笑点でたばこを吸う人は、私を含めて大勢いたんです。でも、今はほと んどやめています。一人だけ吸っていますけれども。名前は言いませんけれども。 大分苦しそうな顔をして吸っています。やめろと言うんですけれども、やっぱりや められない。自分の経験から言いますけれども、どうもひどい目に遭わないとやめ られないですね。ただやめろ、やめろと言われても、なかなか踏ん切りがつかない。 だけど、ひどい目に遭ってやめたときは、もう手遅れなんですよね。そこをどうい うふうに禁煙に持っていくかということが大きな問題じゃないかと思いますが。 ○工藤座長 ありがとうございました。  次に、第2のテーマ早期発見の問題です。先ほど相澤委員の方からいろいろお話 がありましたが、糖尿病にしても、高血圧にしても、高脂血症にしても、症状は別 にないけれども、数値を見たら一生懸命自分も気をつけようとするんですけれども、 COPDだけは、よほど息切れが進まないと病気だと思わないという、ここに非常 に大きな問題があります。既にCOPDが始まっている、肺機能では異常になって いるのと、病気として自覚する間の無症状時代というんですか、これをどうやって 縮めるか、この方策は何かということです。先ほど相澤委員の方から、最初に質問 票を使ってスクリーニングをして、肺機能の検査に持っていくという2段階がある んじゃないかということですが、質問票の中身については、IPAGという外国製 のものですが、日本でも使えるんじゃないかということでございます。何か相澤委 員の方から少し付け加えることがございますか。 ○相澤委員 先ほど今村委員から質問されたことですけれども、ある意味では40歳 以上で喫煙者というのが一番比重が重いんですよね。だから、40歳以上で喫煙指数 が高い人で切れば、かなりの部分がCOPD予備軍なんですよ。また、それが事実 なんですね。そういう人たちが非常にリスクが高いので。だから、40歳以上で喫煙 者で、あとは症状がちょっとあれば、すぐ17点を超しちゃうので、だから、それは それである意味では使えるんじゃないかとは考えているんですよね。40歳以上でも 喫煙歴がなかったら低く出てくるわけですから。質問票についての意見というのは そういうことです。そういったので幾つか減らしてみて、むしろ8項目じゃなくて、 4項目とか5項目で非常に感度が高ければ、それは健診とかに使えるのではないか。 そして、もしそれが擬陽性が多く出るようだったら、今度はそこで肺年齢をちゃん と測りましょうということで。  肺年齢ということについてもちょっと補足しますと、今、工藤先生がおっしゃっ たコレステロール値とか血圧とか、それに相当するものといったら、COPDでは 肺機能しかないわけですよね。だけど、今までの肺機能だったら、全然自分がどの くらいの状態なのかということは、血圧みたいにつかめないので、そういったとこ ろで肺年齢は80歳ぐらいの肺ですよとかいうようなことは非常に有効な手段じゃな いかと思います。 ○工藤座長 どうぞ、今村委員。 ○今村委員 数年前から、先ほどお話ししていたメタボの健診ということで特定健 診を保険者が実施することになっています。それに伴って、事業者の方もそうなん ですけれども、喫煙のことを必ず健診項目の中で聞いている。年齢も分かるし、喫 煙歴も分かるし、BMIも分かるということになると、今のこういう調査の中のか なりの部分がもう包含されているわけですよね。だから、そこを少し、本来の対象 がメタボだから、これはCOPDではないよということではなくて、もう少し国が COPDに対して幅広に健診の中でそれを取り込んでいただくと。  ただ、健診の仕組み自体が日本は非常に複雑になっていて、いろんな立場によっ て、職業についている人、そうでない人、いろいろな方たちで、受ける健診の中身 であるとか、位置付けが法律的に違っているとかという難しい問題はありますけれ ども、この問題はとても大事なので、是非ここは国がそういうことを、制度をもう 少しどうするかという問題はあるにしても、問診を入れていただければ、すごくい いのではないかと思っています。 ○工藤座長 胸の写真を撮る検診とか、ああいうものと違って、スパイロメーター というフッと吹くのは、検査技師の方がやると時間がかかりますよね。それで全部 やるというのは大変なことになってくるので、これをどういうふうに絞っていった らいいかということになるだろうと思いますけれども、それは質問票を最初にやっ て。 ○今村委員 質問票である程度絞れるのではないかと思います。 ○工藤座長 見城さん。 ○見城委員 質問ですけれども、肺活量が少なくなるんですか。症状が進むと。 ○相澤委員 肺活量もですけれども、肺活量よりかもっと大事なのが、思い切って 吹いたときに、最初の1秒間に吹き出せる量が、COPDはもちろんですけれども、 そのほかのいろんな疾患の生命擁護と関係する一番大事な指標です。 ○工藤座長 1秒量と言っておりますね。それが年齢と男女と身長で正常値が大体 決まっているんですね。 ○相澤委員 性別と年齢と体格で。 ○遠山委員 一般の方にはちょっとそれは難しいと思います。1秒率とか1秒量な んて数字を示されても。よく患者さんから検査結果の数値の読み方が分からない。 どれくらい悪いのか、今さら主治医には聞けないからとおっしゃって、よくご質問 があるんですけれども、ちょっとあれは一般の方が症状を理解するには分かりづら いと思うんですね。何かもっと具体的に分りやすいような示し方は無いのでしょう か。 ○見城委員 血圧計というのは、病院やクリニックやそこに置いてありまして、待 っている間に適当に自分でやってみると、自分が血圧が高いのか、低いのか、健康 状態をチェックできます。そういうふうにどこかに置いてあって、プッとやって吹 いてみたら、吹き方がいいか悪いかは別として、分かるというわけにいかないんで すか。 ○今村委員 今、医療機関などでちゃんとした検査をやる方法と、一方簡単な機械 を使う場合があります。これは、医療機関でやっても、診療以外で使用すれば医療 保険請求はできませんが、どこでも置いて、自分で吹いてみるというのはできます。 ○見城委員 なぜこういう質問をしたかといいますと、早期発見のところで、私の 周囲にいらっしゃるなかなかやめられない人とか、自分が吸っているということに 強迫観念に思って、何か意見を言いそうな人にみんな言わせないようにしようとか、 本当に自分から行って、検査もこの人は受けないんじゃないかというぐらいの方も いらっしゃるわけですね。喫煙者の中に。  そうすると、別なことで行ったときでも、プッとやってみて、まずいと。こんな に少ない。やっぱり自分は呼吸器系、きているんじゃないかとか、例えばそういう ようなことが、検査と改まって申し込んでやる前に、クリニックのどこか、血圧計 の隣にあって、プッとやってみて、一応のデータが出て、自分なりに考えるとか、 そういういろんなところから早期発見につながっていくように、素人の考えですけ れども、やっぱりと思う方は、お医者様に、実はこんなデータが出たんですがと、 そのときに言いますでしょうし、もっと喫煙者や被害に遭っている人たちが入りや すい、導入できる、そういうものとして、私などはクリニックとか病院の一角、血 圧計と一緒にそういうのがあったらいいなと思います。 ○工藤座長 昔は、血圧計もバルブで空気をマンシェットに入れながら、聴診器で お医者さんが測っていましたけれども、今は腕を突っ込めば分かるわけですから。 そういう機械もだんだん出てきているので、肺機能に関してですね。ですから、そ ういうものもあちらこちらのフィットネスクラブに置いてあったりする。そういう ふうになると、随分違ってくるだろうとは思いますけれども、そのほかに早期発見 に関して御意見ございますか。どうぞ。 ○中村委員 先ほどの今村委員の御意見に賛成ですけれども、早期発見をする場と して、日常診療の一環として行うか、検診として導入するか2つのオプションがあ るかと思うんですけれども、後者の検診をやるとしても、先ほどから出ていますよ うに、たばこを吸っている人ですら、スパイロメトリーをやったからといって、み んな異常が出るわけじゃありません。むしろ異常が出ない人の方が割合としては多 いと言われていますから、逆に安心させてしまうという問題を考えなくてはいけな いので、一定の対象者に限定する。しかも、対象者を限定するといっても、余り限 定し過ぎると、施策全体としての効果というか、インパクトが小さくなりますから、 一定の割合を占めるハイリスク集団に実施するということになると、先ほどから出 ていますように、例えば40歳以上で、喫煙者また過去喫煙者という人が対象者とな るかと思います。  その際に、禁煙の働きかけをきちんとやっていくということが重要ですけれども、 そういった健診を単独で実施しても、受診勧奨をするだけでエネルギーを費やして、 実際には余りたくさんの人が受けないので、今村先生がおっしゃったように、既存 の健診にどう組み合わせるか、それが受診者を増やすことにもなるし、効率性とい う観点からもいいんじゃないかなと思います。候補に挙がっているのは特定健診と の組み合わせということですけれども、いずれにせよ、既存の健診とどうセット化 するかというところが重要なポイントじゃないかなと、お話を聞いていて思いまし た。  あとは、一つ、どうしても私たちの目は、たばこを吸っている人というところに 行きがちなんですけれども、実は、たばこをやめてもしばらくは病気のリスクを引 きずるんですね。例えば肺がんが禁煙後に出てくるとか、すてにCOPDを持って いる人は、将来の肺がんのリスクも高く、ほかのたばこ病ということでもハイリス ク者なので、COPDの有無に関わらず、禁煙した人を一定の予防的ケアをしてい く。肺がん検診もきちんと受けるように伝えたり、ほかの病気の可能性についてた ばこ病という切り口でメディカルなチェックをして、禁煙をきっかけに、より健康 になっていただくという働きかけも、今回の取り組みの中で強調されてもいいんじ ゃないかなと思っています。 ○工藤座長 ありがとうございました。  どうぞ、中尾委員。 ○中尾委員 私も同じで、メタボと同じように、早期介入というのが一番大事だと 思うんですね。自覚症状がないというのが一番の問題であって、糖尿の方でも、本 当に60の定年まで働けなくて。でも、そういう方はほとんど自覚症状がないままで、 結局透析までいったりとか、がんになったりとか、足の切断とか、いろいろありま すよね。でも、本当に悪くなる間際まで分からないですよね。この自覚症状がない ということが一番問題で、早期発見というと、健診ばかりではなくて、発見したい と思わせるような、何かそういうムーブメントを起こさない限り、だめだと思うん ですね。  実際に医療というのはウイルスの闘いだったけど、ここにきて、その人の生活習 慣の結果ですよね。だから、自分のやったことが全部自分に返ってくるということ を一番伝えなければいけないと思うんですよ。自ら選択した人というのは強くて、 本当に耐えられるんですね。そのヒントとか、そのやり方とか、そういうことはい っぱい手足となってあると思うんです。  例えば、環境を変えてあげる。私の友達は、そこの場所に行ったら何となく吸い たくなるみたいな環境があるんですね。だから、そういう環境を企業とか会社全体 でもそうですけれども、日本は今どんどん変わっていますが、被害者的意識があっ たとしても、同時進行で、いや、被害者じゃないよ、本当に体のことを思っている んだという感じで、会社ぐるみなり、地域ぐるみなり、そういう環境づくりをやり ながらも、早期発見してもらってありがたかったと思われるような、自分で選択し て、そして、こうしたいと思わすことが大事だと思うんですね。  でも、それは半分ぐらいは成功しているんじゃないかとすごく私は思っていて、 私の周りの喫煙者でも、「たばこをやめたいの?やめたくないの?どっち?」と言 うと、「やめたい」と言うんです。やめたいけどやめられないという方が非常に多 い。そういうところに、じゃ、どうアプローチすればいいかということを真剣に考 えています。  そうなると、脅しだけではだめなんですね。だから、やったことは変わるよとい うことももちろんそうなんだけど、厚生労働省が「その人の生活に寄り添う医療」 とはっきり言っていますが、そこをどう本当に、その人に寄り添った、健診だけ結 果をぽんと渡すのではなくて、その人の生活環境とか、その人のあり方とか、生活 状況を把握した上での細やかな対応というのは現場だと思うんですね。  だから、保健師さんも言われるんです。今まで、ラーメンの汁はみんな飲まない でねと言っていたけれども、その人がラーメンを食べているかどうかも聞かないで 言っていた。そうではない。だから、その辺の細やかさも含めて、そういう現場に 立っている人たちの教育と、あとはそこをどういうふうにやる気にさせるようなア プローチに持っていくか、ムーブメントを何とかして起こしたいなと思います。  あと、COPD専門の早期発見のその部分は私も分からないのですが、でも、何 度も言いますが、健康に関わっている人たち、保健師、栄養士、あとは健康運動指 導士なりフィットネスインストラクターなり、そういうところの人の知識をまず広 げていくということがすごく大事だと思います。 ○工藤座長 ありがとうございました。  今日は、COPDの予防と早期発見という、この2点を中心に非常にたくさんの 御意見をいただいたんですが、ここで最後に一言と言いたいという委員の方はおら れますか。よろしゅうございますか。そろそろ時間になってきたので。  ないようでしたら、それでは、本日の御意見、検討内容を踏まえて、今後、検討 すべき事項を再度整理をさせていただいた上で、次回以降の検討に進みたいと思っ ております。  そのほか、何か事務局の方から。 ○木村室長 2回目の日程でございますけれども、また後日、委員の皆様方の日程 を調整させていただきまして、決まったところで御案内を差し上げたいと思います。  事務局からは以上でございます。 ○工藤座長 それでは、まだ少し時間がありますけれども、これで閉会とさせてい ただきます。本日はどうもありがとうございました。