10/06/24 第9回雇用政策研究会議事録 第9回 雇用政策研究会(議事録)                       1 開催日時及び場所   開催日時:平成22年6月24日(木) 10時00分から11時30分まで   開催場所:厚生労働省・省議室(9階) 2 出席者   委 員:玄田委員、小杉委員、駒村委員、佐藤委員、諏訪委員、鶴委員、橋本委員、樋 口委員、山川委員 事務局:太田厚生労働審議官、森山職業安定局長、山田職業安定局次長、酒光労働政策 担当参事官、間社会保障担当参事官室企画官、松永労働基準局総務課長補佐、 尾田職業能力開発局総務課長補佐、田河雇用均等・児童家庭局総務課長、宮 川職業安定局総務課長、小川雇用政策課長、里見雇用政策課企画官、平嶋雇 用政策課長補佐  他 ○樋口座長 定刻となりましたので、ただいまより第9回雇用政策研究会を開催いたします。 皆様におかれましては、ご多忙の中、お集まりいただきましてまことにありがとうございま す。今回は、これまで皆様からいただきましたご意見を踏まえまして作成しました報告書 (案)についてご議論いただけたらと思います。まず、事務局から説明お願いいたします。 ○平嶋雇用政策課長補佐 雇用政策研究会報告書(案)についてご説明します。  タイトルは、「持続可能な活力ある社会を実現する経済・雇用システム」とさせていただ いています。構成としましては、6章立てにしています。第1章「近年の経済環境等の変化」、 第2章、経済環境の変化を受けての「我が国労働市場の現状と変化」、第3章、主に企業の 現場の取組ですが、「雇用の質が向上する働き方の改善」、第4章、労働政策による個別の支 援という形になりますが、「全員参加型社会、トランポリン型社会の構築」。第5章、社会全 体で「雇用の量の拡大と質の向上のための経済システムの構築」。こういった取組を受けま して、第6章で「2020年の姿」という構成にしています。  1頁の「はじめに」の部分ですが、ここで全体の要約といいますか、構成を書いています。 2008年末から2009年初めにかけて非正規労働者の大量の離職が発生した。あるいは、従 来からワーキングプア、仕事と生活の調和の難しさといった問題があって、もう一度雇用の 在り方を考えるべきであろうということで、経済環境、労働市場の変化としまして、市場競 争の激化、あるいは度々訪れるようになったマイナス成長に対応する企業側のニーズ。多様 な働き方を求める労働者側のニーズということで、非正規労働者が増加しています。しかし ながら、非正規労働者本人にとっては相対的な雇用の不安定さや処遇の低さがあって、家族 形成やキャリア形成に困難を抱えております。社会全体で見ても、少子化に拍車をかけたり 人材育成にも影を落すということが書いてあります。今回の経済危機に当たってはご指摘が ありました雇用調整助成金の投入などで、かなりの程度、特に正規雇用の悪化が食い止めら れました。しかしながら、今後も同様のケースが起こりうることを念頭に今回のような雇用 問題が起こらないようにするにはどうすればいいかが問われていると書いてあります。  2つ目のパラグラフは、(雇用は「生活保障のかなめ」であり「成長の土台」)ということ で、新成長戦略が先日取りまとめられましたが、この中で述べられている国民は安定した雇 用の場を得ることにより、所得を得て消費を拡大し、需要不足を解消することが可能となり ます。また、各々の生活保障を確立することによって、家族形成も可能になります。このよ うな意味で、(雇用は「生活保障のかなめ」であり、「成長の土台」)であるというふうに位 置づけています。先ほども述べましたように、非正規労働者の増加の中で、いまの在り方は 持続可能な仕組みとは言い難いだろうと。正規労働者についても依然として、長時間労働、 ゆとりやきずなの創出というような別の問題も抱えているということで、全体として持続可 能で活力を持つような働き方の仕組みが求められています。  この対応として、第一に雇用の質が向上するための働き方の仕組みの見直しということで、 職場レベルでの対応ということになりますが、非正規労働者の雇用の安定性や処遇、正規労 働者の仕事と調和に向けての取組を書いています。第二に、離職しても再挑戦可能な仕組み。 トランポリン型社会、人口減少の中で若者、女性、高齢者などの就労支援を行って、「全員 参加型社会」を実現していくということで、労働政策による個別支援等が書いてあります。 第三として、社会全体で雇用を創出していく、あるいは働き方の見直しに長期的な視点に立 って取り組む企業が評価されるような全体の取組を進めていくことで、本人の努力に関わら ず経済情勢に生活が過度に左右される運任せの冷たい社会ではなく、努力することなく生活 の安定が得られるぬるま湯のような社会でもない社会を目指していこうとしています。イメ ージとしては、雇用の場が十分に確保され、職業キャリアが形成される。仕事と生活の調和 が実現できる。しかるべき収入が得られるということで安心して子どもを産み、育てられる。 労働者間の賃金バランスがとれている。介護等の労働者も人並みの賃金が得られる。一方で、 企業がしっかり活力を持つというようにしています。  4頁以降が第1章になっています。まず、経済環境の変化ということで競争の激化の状況、 日本の輸出シェアが低下していること、外国人による株式の保有構造が趨勢的に増加してい ることを書いています。  5頁は、産業構造の変化として第一次、第二次産業から第三次産業への転換が進んでいる 中で、建設業、製造業で労働者が減少。一方で、サービス業、医療・福祉が増加していると いうことで、産業構造の変化が男性の雇用者の減少。女性の雇用者の増加に繋がっているこ とを書いています。(企業行動の変化)としては、こういった競争の激化などの状況を受け て、賃金が抑制傾向で推移していることを書いています。  6頁(少子高齢化の進展等社会の変化)ということで、少子化の状況です。いちばん最後 のパラグラフで格差が拡大している。国民意識としても平等社会を求める割合が高まり、自 由競争社会を求める割合が下がってきていることを記述しています。  7頁は、第2章で労働市場の部分になります。少子高齢化の進展によりまして、現在の性・ 年齢別の就業率を前提とすると、2020年には就業者が433万人減少するだろうということ が計算されます。こういった中で、就業の促進が重要な課題になっているということで、そ れぞれ若者、女性、高齢者について状況を書いています。まず、若者については、現在の就 職の環境の厳しさ。内定率の低下。フリーターについては、近年5年連続で減少していまし たが、昨年は6年ぶりに増加している。ニートについては、63万人ということで、依然と して高止まりしているという状況です。  8頁、女性の就業状況についてです。子育て世代25歳から44歳で、66%ということで、 まだ就業の促進の余地がある。管理職等の割合も依然として低いということです。高齢者に ついて就業率を書いていますが、今後、人口のボリュームゾーンが高齢者に移ってきますの で、高齢者の能力の発揮を図ることが重要です。  障害者ですが、近年就労意欲が高まっていまして、ハローワークに来られる方も大変増え ているということで、この雇用促進が社会全体として重要な課題であることを書いています。  外国人労働者は、1989年には100万人程度でしたが、20年間で倍の200万人になって います。下の方ですが、外国人留学生が20年間で3倍に増加して、現在13万人というこ とですが、就職状況は望ましい状況と言えなくて、国内の就職の促進が今後も重要であると いうことです。外国人労働者の受入れ拡大の議論については、国内の労働者への悪影響の懸 念もありますので、十分慎重な対応が必要である。社会全体として、医療、社会保障、教育、 治安など、全体の中で考えていく必要があることを書いています。高度専門職については、 博士課程修了者をはじめとして、グローバル化の中で高度専門的な能力を有する人材が今後、 ますます必要になるであろうと考えられます。この職業の高度化は雇用の質を高めたり、本 人にとっても一生にわたってやりがいをもたらすということで、社会的認知を高めるために も、外部労働市場による支援が求められているところです。  地域の雇用について、経済危機の前は地域間格差が非常に大きかったわけですが、現在、 全体的に厳しい状況の中で一時的に格差が縮小している状況にありますが、今後、医療、介 護などでの雇用創造、地域の特性に応じた雇用創造が必要だと書いてあります。  正規、非正規に入っていきますが、正規労働者については、長時間労働の状況。特に子育 て世代の男性の状況を書いています。  10頁です。能力開発機会について正社員の中でも機会に差が生じていることを書いてあ ります。非正規労働者ですが、ご承知の通り1987年約20%から現在は3分の1程度まで 上昇してきていますが、中身を見ますと、常雇の非正規が増えていると。1年以上の契約、 あるいは無期で働く人が6.9%から22%に増えている。非正規労働者の増加はほとんどが常 雇の増加ということです。その中で、企業側から見ますと、コスト軽減による意識が強いと いうことです。労働者の意識としては、「自分の都合のいい時間に働きたいから」というも のがもっとも多いわけですが、正社員として働ける会社がなかったからというのが18.9% ですが、近年上昇してきています。下のほうで年間所得の分布を見ていきますが、非正規労 働者は総体的に賃金が低いということです。  11頁です。特に派遣社員や契約社員を中心に「正社員になれなかった」層で正規労働を 望むものが多く存在しているということです。非正規労働者の諸問題点を3つ大きく書いて います。1つ目は、経済的自立が困難ということで総体的に賃金が低い中で、有配偶者率が 低いということです。34歳までの男性で見ると、正規が40%であるのに対して非正規は 10%ということで少子化の一因にもなっているだろうということです。職業キャリアの形成 が十分ではないということで、OJT、OFF-JTといった企業内の訓練の機会。非正規労働者 として勤続を重ねても職務が比較的単純であるということで能力が高まらないということ です。  12頁です。セーフティネットが十分に整備されていないということで、正規労働者とし て比較してセーフティネットが不備であると書いています。今回の景気変動による非正規労 働者への雇用調整ということで、今回、真っ先に雇用調整の対象になったことが指摘されて います。また、雇用契約の終了と共に住居も失うという、雇用と生活の基盤を同時に失うこ とが起こっていました。  13頁です。一方で、正規労働者も雇用調整が行われましたが、賃金、労働時間による調 整や雇用調整助成金の活用などもありまして、全体として見ればGDPの落ち込みのわりに は失業率の大幅な上昇が見られなかったのではないかと考えています。以上が第2章です。  14頁から第3章ですが、こういう非正規労働者の増加の中で、正規、非正規の二極化構 造ということが問題視されているということで、「雇用の質が向上する働き方の改善」を図 っていく必要があるだろうということです。最初に、(我が国の雇用システムの特徴)とい うことで概観しています。長期雇用慣行ということがよく言われますが、景気後退期におい ても、主要国と比べて失業率が大幅に上昇しないということがあります。年功賃金制度につ いては、カーブが緩やかになってきていますが、引き続き存続しています。  15頁です。新卒一括採用については、集団的、集中的に企業内訓練を行われるというこ とで、その効率性がある。あるいは、学校から職場への移行がスムーズということで、一定 の合理性を持つものであるということですが、現在のように就職先が決まらないまま卒業し た場合や就職後、早期に離職した場合に正社員としての就職が困難になる状況が見られます。 また、景気による影響が非常に大きいという問題点を書いています。  16頁です。正規、非正規の二極化構造の状況ということで、正規、非正規の給与格差や 教育訓練機会の格差の拡大、生産性の低下ということで社会全体で見れば問題点があると書 いています。こういった状況を受けまして、対策に入っていきますが、雇用ルールの整備と いうことで非正規労働者のウエイトが高まる中で現在の雇用システムではその活用が前提 となっています。今後は、正規と非正規についてバランスのとれた法体系や雇用制度にする 必要があるだろうと書いております。正規、非正規の二極化構造を解消して雇用形態の多様 化、多極化を目差していくことが望まれると考えています。  17頁ですが、1つ目は、「多様な正社員」の環境整備ということで、先ほど申し上げまし たように長期間働く非正規労働者が増えている中で、従来、非正規労働者として位置づけら れてきた労働者に対しても、ある程度正社員的な雇用管理が必要ではないかということで、 「職種限定正社員」、あるいは「勤務地限定正社員」などの業務や勤務地を限定した雇用形 態を普及していく必要があるのではないか。労働者にとっては、細切れ雇用を防止するとい う利点があります。企業にとっても、事業所が閉鎖されるような非常事態のときには雇用調 整ができる余地を残しながらキャリア形成を行って、中長期的に戦力化することが可能にな るということです。この環境整備に当たっては、司法判断の蓄積が必要だということ。また、 正社員から逆に切り出されることについて十分配慮する必要があります。今後、どのような 取組が必要か労使も含めた検討が求められるということです。  (複線型のキャリア選択の充実)ということで、正社員を希望する者に対してはできる限 り正社員に移行できる環境が必要であります。特に契約社員や派遣社員の約半数が正社員を 希望しているということで、企業内登用や企業間の転職によって正社員への転換を示してい く必要があるということです。正規、非正規に限らず卒業の際に希望する仕事に就かなかっ た若者、子育て終了後の女性、高齢者、先ほども出ました高度専門職といった多様な人材を 受容できるような複線型のキャリア選択が充実されることが望まれるとしています。  19頁ですが、労働者派遣制度の見直しということで、日雇派遣などの社会的に問題のあ る雇用形態が出てきています。あるいは、その指導監督件数も増えているということで、派 遣労働者の保護の仕組みの強化、環境の整備が課題になっています。有期雇用のルールの整 備ということで、別の研究会でも検討していますが、契約締結に関するルール、公正な待遇 を実現するためのルール、更新・雇止めに関するルールなどの在り方を検討する必要がある と書いてあります。  賃金、処遇の改善ということで、最低賃金について、真面目に働いている人が生計を立て られるように引き上げに取り組むことが重要であります。最賃の引き上げが雇用を失わせる かどうかということについては、両面の見解がありますが、さらに蓄積を待つことが必要で あります。これを推進していくに当たっては中小企業における中小企業に対する財政上・金 融上の措置を中長期的に取り組む必要があります。  下の63に書いてありますが、「2020年までの目標として、できる限り早期に全国最低800 円を確保し、景気状況に配慮しつつ全国平均1000円を目指す」ということが決められまし たので、この目標の達成に向けて政労使一体で取り組む必要があるということです。均等・ 均衡対偶の推進についてです。有期非労働者全体については、現在検討中でありますが、派 遣労働者については派遣法を改正案の中で、措置されています。パートタイム労働者につい ては、改正パートタイム労働法の中で取り組むこととなっていますので、これを進めていく 必要があるということです。  なお書きのところですが、税・社会保障の103万円、130万円の壁も、特にパートタイム 労働者の低賃金を助長していることについて書いてあります。ワーク・ライフ・バランス、 その他のところですが、労働時間について、特に30代男性の長時間労働、年次有給休暇の 取得率が近年5割を下回る状況について書いたうえで、さまざまな取組を進めていく必要が あることを記載しています。育時休業については、育休法の着実な施行。「パパ・ママ育休 プラス」「イクメン(育メン)」の周知を記載しています。そのほか、短時間正社員制度の導 入、テレワークの普及、メンタルヘルスの増加という状況も見られますが、(労働安全衛生 対策の推進)。23頁ですが、労働関係法令の履行確保、個別紛争の防止について記載してい ます。以上が、第3章です。  24頁は、第4章です。第3章までは、企業内での働き方の改善を書いていますが、非正 規労働者が増加する中で、企業による生活保障だけでは一定の限界があるだろうということ で、積極的労働市場政策による就業の促進、出番と居場所のある全員参加型社会の実現を目 指す。セーフティネットによって、増加している非正規労働者、トランポリン型社会の構築 を目指していくということです。  積極的労働市場政策については若者への就労支援、「フリーター等正規化プラン」、新卒者 に対する就職支援を書いています。女性の就労支援については、先ほどの育時休業、短時間 勤務といったこと。マザーズハローワーク事業、保育所や放課後児童クラブの整備を書いて います。高齢者の就労促進については、2013年度から公的年金の報酬比例部分についても 引き上げが開始されることを受けて、65歳まで希望者全員の雇用が確保されるよう検討を 行う必要があることを書いています。障害者の就労促進について、現在、実雇用率1.6%と いうことで、まだ法定雇用率の1.8%に達していない状況の中で雇用率達成指導、あるいは ハローワークを中心とした支援ということ。下のほうにありますが、障害者権利条約への対 応として、差別の禁止や合理的配慮の確保について、今度、労政審で引き続き議論を行う必 要があります。労働市場の需給調整機能の強化ということで、ハローワークによる機能の強 化について書いています。  27頁ですが、能力開発支援ということで、3本立てになっていますが、雇用のセーフテ ィネットや成長を支える人材育成のための能力開発の推進ということで、公共訓練について 書いています。国においては、雇用のセーフティネット、あるいはものづくり分野における 人材育成。都道府県は、地域の産業における人材ニーズに応じた訓練を行う。民間でできる ものは民間でやっていく。2つ目ですが、ジョブ・カード制度等を活用した実践的な職業能 力の評価制度(日本版NVQ)の構築ということで、職業能力を共通のものさしにしたがっ て客観的に評価する枠組。実践的な能力を習得するために必要な訓練を一体的に提供してい こうということで、ジョブ・カードについて様式の簡略化なども行いながら幅広い層の習得 を促進する。キャリア・コンサルティングの充実等の体制、整備を図っていく。評価制度に ついて、技能検定や職業能力評価基準の整備充実といったことを行いながら、日本版NVQ を構築していくことを書いています。  [3]ですが、職業生涯を通じたキャリア形成支援ということで、労働者自身による職業生涯 を通じたキャリア形成の支援が重要であるということで、キャリア・コンサルティングの充 実ですとか、事業主が行う支援の後押しについて書いています。  セーフティネットに入っていきますが、雇用保険制度の適用部分については2009年、 2010年と拡充されてきていまして、以前「1年以上の雇用見込み」だったのが現在は「31 日以上の雇用見込み」まで拡大されてきています。また、給付について受給資格要件の緩和。 個別延長給付が経済対策の中で行われています。ただ、失業保険給付の拡充については、ご 指摘がありましたようにモラルハザードの可能性について考慮しなければいけないという ことで、受給額を逓減させる方式、あるいは給付期間を延長するような議論について再就職 のインセンティブとのバランスを取りながら引き続き検討していき、その機能を強化してい く必要があります。  (第2のセーフティネットの構築)です。今般の経済危機の中で、住宅支援や生活費等の 貸付・給付の充実が行われていまして、2009年10月からは住宅手当ての緊急特別措置事業 が始まっています。これについて継続的に実施していく必要があると考えています。緊急人 材育成支援事業というものも昨年の7月から始まっています。これについて、2011年度か らは恒久的な制度にしていくことになっています。  一番下のほうになりますが、ハローワークの来所者に対するアンケートの状況を見ますと、 雇用保険の非受給者の約4割になっています。長期失業者の割合が10年前と比べて約1割 増加しているということで、熱心に就職活働を行いながら雇用保険が切れてしまう人。訓練 の受講をしたいのだけれど、生活費がなくて、なかなか失業から脱け出せないという人への 支援が重要と記述しています。ハローワークを拠点とした個別の支援強化について、昨年は 「ワンストップ・サービス・デイ」の取組も行われましたが、今後はパーソナル・サポート の導入を検討しています。今後、モデルプロジェクトの実施などを通じまして、ポジティブ・ ウェルフェアの拠点としての役割が期待されると書いてあります。  議論の多かった雇用調整助成金などの緊急的公的雇用維持、創出です。雇用調整助成金に ついては、産業構造の転換を阻害するという批判もありますが、先般の経済危機のようにマ クロショックがほぼ全産業に対して行って、産業構造のシフトが生じる余地が限られる局面 においては、非常に有効で今後も参考にすべきであろうと書いています。一方で、出口戦略 が重要であるということで状況を見ながら適宜縮小・廃止していくような基準が必要ではな いかと記述しています。  第5章です。経済システム全体の取組ということで、雇用の創出、税・社会保障制度、企 業評価の仕組み等について書いています。最初は、[1]として雇用創出ですが、国内需要に応 える産業として、新成長戦略で述べられている環境、健康、観光等の雇用創出の取組を記述 しています。34頁の下のほうですが、一方で質もしっかり確保していく必要があるという ことで、特に医療、福祉で見ますと、全体の一般労働者の所定内賃金が29.5万円である中 で、福祉施設介護員やホームヘルパーは約20万円に止まっているということで、しっかり 処遇を改善していく必要があります。社会保障については、従来、負担面が強調されていま したが、社会保障への不安や不信を取り除いていくことで安心して消費がなされていく。こ れが、成長に繋がる効果もあるだろうと思います。  35頁ですが、一定の生活水準を維持できるような政策を取ることで労働市場全体として も労働条件の底上げに繋がるのではないかということです。医療、福祉業については、特に 全体で9%ですが、特に地方で割合が高いということで、建設投資が減少する中で地域の対 策としても有効ではないかということです。  国際需要に応える産業ということで、アジア市場と一体化して、輸出の多様化を図ってい くことについて記述しています。こういうことで、ジョブレス・リカバリーに陥らないよう に成長戦略を実施していく必要があるということです。  36頁です。「新しい公共」による国民ニーズの充足と雇用創出です。特にNPOや社会的 企業の活躍が求められていますが、個々の事業所は比較的小さいということで、事業体の数 を増やしていく必要があります。この機能としては、就職支援、あるいは生活保護受給者の 社会的居場所の確保や経済的な自立支援の推進としての役割が期待されるということです。 現在の問題点としては、労働条件が低いということで、人材がなかなか定着しないことがあ りますので、NPOで言えば寄付や事業収入、補助金、委託費、会費など複合的に確保して いく必要があります。あるいは、中間支援が重要であろうと記載しています。  37頁ですが、地域における雇用創出ということで、外国企業の呼び込みの促進。あるい は、地域の創意工夫による雇用創造の取組、「新しい公共」を活用した雇用創造人材育成を 推進する必要があります。開業への支援も重要であると記載しています。保有の充実に向け た経済評価ということで、企業評価についてです。現在、株主の雇用構造が機関投資家中心 に変化している状況を述べましたが、こういうことで企業は過度に短期的利益を求められて おります。それが、雇用の不安定さや労働条件の低下に繋がっているのではないかというこ とで、雇用を重視する企業が優良な企業であるという認識が広まっていくことで、そういう 企業が資金調達で有利になるような環境が必要ではないか。それについては、評価の仕組が 必要ですし、諸外国では公的資金を用いる例もありますので、そういうのを参考に検討が求 められます。  (公契約の在り方の検討)ということで、厳しい財政状況の中で行政発注案件について競 争入札が増加していますが、そこで働く労働者の労働条件の低下を招いているのではないか ということです。一部の自治体では、公契約条令の制定ですとか最低制限価格の引き上げの 取組もあります。国についても、ワーク・ライフ・バランスに配慮する企業を優先的に選定 していこうという取組も出始めています。納税者の理解を得ながら、こうした取組が広がる ことが期待されます。下請取引の適正化、24時間営業や元日営業、厳しい納期設定など、 消費者としての行動が労働者という立場に立ったときに負担が大きくなっているのではな いか。ある人は、消費者であり、労働者でもあるという2面性を考えながら消費行動、企業 行動の在り方を検討する必要があるだろうとしております。税・社会保障についてですが、 103万円、130万円という壁が就労の阻害要因になっているということです。  下のほうですが、在職老齢年金制度についても高齢者の就労阻害要因になっているという ことで、いずれも検討していく必要があります。企業サイドから見た場合に、フルタイム労 働者の割合が大きい企業のほうが、相対的に社会保険料の負担が大きいという状況が非正規 労働者の雇用を増やしているのではないかと指摘しています。子育て、教育、住宅の支援と いうことで、企業の法定外福利費が減少していく中で、こういったものについて社会全体で サポートする必要があるのではないか。教育について、職業生活をしっかり送っていくため に基礎的職業能力や職業理解や職業意識、労働法の基礎知識についてもっと取り入れていく 必要があるのではないか。  以上が取組で第6章は、2020年の姿ということで、新成長戦略による就労の促進ですと か、ジョブ・カードの取得の増加、年金の取得などの目標を記載しています。再見になりま すが、新成長戦略による雇用の創出、ご議論が多かった実施体制の整備ということで、ハロ ーワークや「新しい公共」、職業訓練、個別労働紛争について、しっかり体制を整備してい く必要があります。PDCAサイクルによって、施策をしっかりチェックしていくことについ て総論を書いています。長くなりましたが、以上です。 ○樋口座長 ありがとうございました。それでは、ただ今の説明につきまして自由にご議論 いただきたいと思います。どなたでも結構ですのでお願いいたします。 ○鶴委員 鶴でございます。報告書を読ませていただきまして、もちろん委員の皆様はいろ いろなご意見はあるかと思いますけれども、私自身、客観的に見て非常に良い報告書にまと めていただいたと思っておりまして、樋口座長、事務局の方々のご努力に改めて感謝申し上 げたいと思います。これを再度読みまして、3つほど非常に特色があるのかなと思っていま す。  1つは、かなり委員の意見を非常に丁寧に汲み上げていただいたという感じがしまして、 この中でも、準正社員の話とか正社員の多様化、それから雇用調整助成金とかPDCAサイ クルとか、委員の間でもいろいろ話題になり、また社会保障と雇用の関係もそうなのですけ れども、そういうところを非常に突っ込んで書き込んでいただいているなという感じがして、 私はそういう委員の意見を反映していただいているところは、非常にパンチが出ていると思 いました。これは非常にありがたいポイントだと思います。  2番目は、報告書として、非正規雇用の話、これは非常に難しい問題が一杯あって政策的 にどうするのかというのは、もちろん全て解決しているわけではないのですけれども、ただ そういう問題に正面から取り組むという姿勢が非常にはっきり出た報告書ということで、こ れは大きな特色だと思います。  3番目として、先ほども始まる前にも樋口先生もおっしゃっていましたけれども、前回の 報告書と比べても、統計数字、きちんとしたエビデンスを出しながら、また今回は、学術的 な研究などもかなり引用して、参考文献も示されたということで、非常にエビデンスベース ド・ポリシーというところが、はっきり打ち出していただいているなと。何となく雰囲気で ちょっと政策が流れやすいような中で、これは非常にきっちりとそこを意識していただいて いると、これも非常にありがたいところだと感じました。  それでちょっと2点、お願いしたい点がありまして、これは報告書の表現を変えてくれと いうことではないのですけれども。1つは、私自身もコメントは出したのですが、最低賃金 のところで、評価として、表現がありまして、海外の分析を引用していただいています。い ま日本でもいくつか詳細な分析、ロバートソンの分析もいくつか出てきていまして、ただ日 本の状況をどう評価するのかというのは、なかなか今の状況で判断するのは多分難しいのだ と思うのですけれども、今度次にこういう研究会をやられるとき、2、3年後ということか もしれませんけれども、その折には、その分析、日本の状況というものはだいぶ明らかにな っているかもしれない。その時には、こういう研究会なども、きちんといくつかの実証分析 の例なども研究会の中で紹介しながら、委員の中でどう現状を評価するのかということも、 是非、次の1つの目標としてそういうことも考えていただければと思います。これが第1 点目です。  2点目のお願いというのは、PDCAサイクルの実施ということで、ここも非常に書き込ん でいただいてありがたかったところなのですが、最後、雇用調整助成金の施策効果というこ とで書き込んでいただいています、これはやはりすぐ、例えばマイクロデータを使ってどう やるのかとか、やはり、動き出すような体制を是非お考えになっていただければありがたい なと。私自身ももうちょっといろいろなことを言っておいたら良かったなと思うような、逆 に言うと非常に丁寧なご対応をしていただいたので、この場を借りてご努力に感謝申し上げ たいと思います。ありがとうございます。 ○樋口座長 ありがとうございます。今の要望のまず1点、最低賃金についてですが、現行 分析が始まった段階ということで、なかなかまだ結論が。出している分析も出てきてはいま すが、明確になっていないというような、まあ明確になるのかどうか分かりませんけれど、 ということがありますが、ただ成長力底上げ以降、やはり従来とは格段に最低賃金が引き上 げられてきているという動きがあるわけです。それについて過去3年の動きですから、その 影響がどう表れているかというのは、検証できないのだろうとは思いますが、何か事務局で その辺の書き込めることというものはありますか。 ○小川雇用政策課長 日本の例でいけば、20頁の1番上で、最低賃金でカバーされたもの は世帯主と限らないという指摘、これは川口さんの分析ですけれども、こういったものをリ ファーするとかその程度は可能だとは思います。 ○樋口座長 影響率とか取っていますよね。基準局のほうだろうと思いますけれども、あれ が例えば、かつては1円、2円の引き上げだったのに対して10円、15円になってきたこと によって、どう影響が変化しているかという分析というのは、これは担当部局ではなさって いないのですか。 ○松永労働基準局総務課長補佐 労働基準局のほうでございます。ちょっと今担当と確認し ています。直近のデータをいろいろ取って最近のものを分析していると思います。過去のも のとは比較ができるかどうか確認させていただきたいと思います。かなり細かく集計したも のですから、すぐできるかどうか確認をさせていただきたいのですが。 ○樋口座長 分かりました。では、書けることだったら書き留めておくということでお願い します。 ○小杉委員 意見らしいものが3つ、それから後、細かいところをどうするかで愚痴とまと めてお話させていただきたいと思います。  まず、28頁でジョブ・カードのことを大変詳しく書いてあって、私はこの政策は大変大 事だと思っているのですが、ここでジョブ・カードについては労働市場の機能、ものさし機 能だけが強く出されていますけれども、もう一方でやはり質の担保というところでも非常に 重要だと思うのです。今ジョブ・カード制度を使っている企業ヒアリングをいろいろとして いるところなのですが、その中で、ジョブ・カード制度を使うと大変面倒臭い、質の担保を きちんとしなければならないので事前の準備が非常に大変だという話があるのですが、ただ もう一方で今、緊急雇用のほうもあるのですよね。あちらのほうはいろいろなことが後付け でよくて簡単だと、乗り換えている企業が出てきているのです。そういう、ひょっとしたら 駆逐されてしまうのではないかという不安さえ覚えておりまして、ジョブ・カード制度、労 働市場機能と同時に、やはりきちんとした訓練であることで企業そのものにとってもその先 の成長力に繋がるような、質が担保される訓練であると、こういう点も大事なポイントであ るので是非ここで書き込んでいただけないかというのが1点目です。  2点目は17頁で、真ん中辺りに「多様な正社員」の例として、職種限定と勤務地限定が 入っているのですが、この後に出てくる短時間正社員というのもこの選択肢に入るのではな いかというのが1つの意見です。と申しますのも、私どもが別で行った調査で、個人の経歴 を長く取って、その中で誰が非正社員から正社員に移動しているかということを分析したの ですが、移動する1つの要因が、前の仕事で正社員並みの労働時間働いていた人だけが正社 員になっているというのがあって、つまり正社員のほうが長時間労働なのでなかなか正社員 になれないというのがあるので、正社員の選択肢としては短時間、短時間といっても残業の ない正社員というレベルですけれども、そういう短時間の選択というのも非正社員から正社 員への移行促進の1つの選択肢としてあるのではないかということで、もしそういうことま で言及可能なら入れていただきたいと思います。  それから、36頁の「新しい公共」の話で、NPO、社会的企業の話で、そこで賃金が低い、 専門性的なことは不可欠でこれを高めなければならないと、本当にそうだと思うのです。そ れにかなり関連するのですが、これも社会的企業ヒアリングをしていて、彼らの大事なポイ ントが、その次のキャリアに繋がらない、社会的企業で経験したことが評価されないで、次 のキャリアに繋がらないというところが非常に問題で、これはジョブ・カードでいっている 物差しみたいなものと関係があると思うのですが、社会的企業の中での経験、そこで能力が 高まったら高まったことをちゃんと評価される仕組みというものが、多分これからの社会的 企業の政策の中で大事になってくるのではないかと思いますので、社会的企業人材のキャリ ア形成に、能力評価とかそういうことの方向性も大事ではないかということを、もし言及で きるならその辺も言及していただきたいと思いました。  それから細かいところなのですが、2頁目の上から2番目の段落で、正社員の長時間労働 の話があって、正社員の長時間労働だから「ゆとりやきずなの喪失など別の問題」と書いて あるのですが、非正社員の人はソーシャルネットワークを調べると小さくて、それがまた正 社員への移行の課題になってきているところもあるので、きずなの喪失というのは正社員の ほうも問題ですけれども、実は非正規の人の中でも大変問題なので、別のものと言ってしま うとちょっと違うかなという気がしました。これはほとんど揚げ足です。  それからもう1つの細かいところは、11頁の男性の正社員の結婚率が低い話なのですが、 これは15〜34歳という大きなレンジで取ってしまうと、非正規の人は若いので結婚率が低 くて、正社員の人は年配の人が多いので結婚率が高いということになってしまうので、もう 少しレンジを小さくして30代前半とか何かに区切ったほうがこれよりもはっきりとクリア に出てきますので、そのほうがきちんとしているのではないかと思います。  それから、1番最後の愚痴なのですが、24頁目の下のほうに「高校生を対象に職業への 理解や就職活動の促進等を図る」、職業ガイダンスは大事だと思いながら、私どもの研究所 では長い間いろいろな知験を集めて、そういう時のための教材を作ってきたのですが、その 教材が今回廃止になりまして大変つらい思いをしています。これは愚痴です。すみません、 失礼しました。 ○樋口座長 最後は愚痴ということで、それ以前の、いくつかご指摘をいただきましたが。 ○平嶋雇用政策課長補佐 まず、多様な正社員に短時間正社員が含まれていないということ ですが、私どもも問題意識としてあったのですが、多様な正社員、例えばどこかの工場が閉 鎖されるとか、その仕事がなくなるというときに、その後に雇用保障が解除されるという話 だと思うのですが、それが短時間正社員についてそういうケースが想定しにくいのかなと思 います。短時間正社員だからその人は仕事がなくなるということはちょっと想定しにくいと 思って、あるのかもしれませんが、そういうことで書きませんでした。  それから、36頁目で、NPOが次のキャリアに繋がらないという件については、ちょっと 時間が押していたので説明をしませんでしたが、項目の1番下のところにNPO等での職務 経験が他の企業に転職する際にも適切に評価され次の雇用に繋がるような仕組みづくりに 取り組んでいくことが必要であるということで記載しております。  それから2頁目で、きずなは非正規の問題でもあるということについては、確認したいと 思います。  有配偶率、確かこれは30代前半で見ると6割と3割とかになったと思いますので、それ で書きたいと思います。 ○尾田職業能力開発局総務課長補佐 ジョブ・カードが訓練の質の担保の上で重要だという ご指摘につきましては、大変重要なご指摘だと思いますので、この文脈で書けるかどうか担 当課と相談しまして盛り込めるのであれば盛り込みたいと思っています。 ○樋口座長 よろしいですか。ちょっと難しいと思っているのは、産業構造の転換の話とい うのが、過去については書いてあるのですね、製造業が減ってという話が。今後、2020年 にかけてどうなっていくのかというようなこと、見通しは難しいと思うのですけれど、片方 で新成長、成長の期待される産業へ労働資源の配分という観点から、あるいは円滑な労働市 場をいかに促進するかといったところから、今のジョブ・カードであるとかが登場してもい いのかなと思っていまして。要は、高質な労働市場を作る、デザインするというような視点 をどこかに入れることでその中の部品がいくつかあって、それが書ければ今のご指摘のよう なものはカバーされていくのかなと思います。あまり労働市場という言葉がどうも厚労省は 好きではないようで、あるいは好きでない人がいるのかもしれないのですが、労働市場とい うのは別に労働を売買するところではありませんので。外部労働市場でもいいですし、転換 を円滑にとか、再挑戦を円滑にできるようなものを作るという発想から、ご指摘いただいた ようなところも書いたらどうでしょうか。 ○平嶋雇用政策課長補佐 では、そういうことでご相談させてください。 ○駒村委員 もう非常に充実した内容でありまして、私も改めて読ませていただいて新しい 視点があっていいと思っておりますので、もうほとんど蛇足に近いようなことを申し上げる ことになると思います。  1つは31頁のハローワークの制度、組識体制のところの記述で、「ポジティブ・ウェルフ ェアの拠点としての役割が期待される」と、「パーソナル・サポート導入も検討されている」 という、ここですけれども、ハローワークだけで雇用と福祉の連携、パーソナル・サポート をやるならば非常に多くの人が対象になると思うので、地域の様々な社会的企業との連携み たいなことが視点として入っているのかなと、一方、36頁では、主語がないのですが、こ れはNPO法人の例から3段落目辺り、「また地域の雇用創出の観点だけでなく、就業経験 や能力が十分でないニートを支援」云々と、ここは恐らく社会的企業による雇用支援みたい なものを指しているのかなと思っておりまして、何かこの2つというのは完全にセパレート していくのか、ハローワークのほうにそういう社会的企業と連携してというようなことが入 ってくるのか、その辺が必要なのか、もちろんハローワークの組織、人員の強化というのは 今後ますます必要だと思うのですけれども、福祉との連携とかになってくると、地域の社会 的企業との連携というのがもう少し繋がっているのかなと思っておりましたので、そこを一 文、何か加えられるのかどうかというところ。  それからもう1つは、これも蛇足で細かい点なのですけれども、35頁の1番上の段です けれども、「医療保険や介護保険といった社会保険制度の下での労働市場で働く人々」と。 これに限定してしまうと、例えば障害者とか障害者施設で働くスタッフの方とか保育士は外 れてしまうので、「や社会福祉」という1文が入って、広く福祉やパブリックセクターに近 いところ、公務員ではないですけれども、コントロールされた分野で働く人に対しては一定 の生活費が維持できるような賃金と読めるようになったらいいのかなと思います。以上です。 ○小川雇用政策課長 まず前段の、NPOとの関係ですけれども、どこで書こうかは考えま すが、42頁のほうに、NPOとか社会的企業の整備という話もございますので、その辺にハ ローワークの整備もございますから、こちらのところで言及を書くのか、もしくはご指摘の あったハローワークのところで何か一文入れるのか、いずれにしても何か書こうと思ってお ります。  それから後段につきましては、ご指摘のとおりに直します。よろしくお願いします。 ○樋口座長 では、どこかで今の、社会的企業とNPOとの連携というのを、もう入ってい ますけれどももう一度繰り返すということで。やはり従来の不況期に比べて今回の不況はど こが変わったかというと、NPOの発言力がすごく増してきている、雇用政策についてもで すね、というところがあると思いますので、是非そこは強調していただきたいと思っていま す。 ○佐藤委員 私も非常によくまとめていただいたと思います。特に私のお願いしたことは基 本的に盛り込んでいただいて、特に「多様な正社員」のところを書いていただいてありがと うございます。そういう意味ではそんなに大きなところはないのですけれども。  1つは若年のところで、若い人の就業環境が非常に厳しいということ、特に学校から就職 へというところについて書かれているのですけれど、7頁のところで、まず、就職のところ で内定数が落ちているというのを書いていただいていて、15頁の新卒の一括採用のところ でミスマッチが生じているというのを少し書いていただいていて、そこでの対応は多分24 頁の若年のところだと思うのですけれども。15頁のほうに少し書いていただいている、就 職前についていうと、特に大企業中心の就職選択、職種もあるのですけれど、やはり大企業 選好中心というのは結構大きいかなと思っていて、データを出していただいていますけれど、 企業規模1,000人未満だと今でも有効求人倍率3.いくつ(3%台)という形で、つまり、正 社員に勤める機会がないわけではなくて、正社員就業機会は実は結構あるのですよね。ある のだけれども正社員になりたいという人が就けないという、この状況があるわけです。正社 員に就業する機会があるけれど、大企業選好が強くて就職しないで出てしまうといろいろ問 題が起きてしまう。ここをどう解消するかで、他方で新しい産業を起こさなければいけない と議論しているのですけれど、新しい産業が起きるような分野というのはまずそんなに規模 が大きい会社ではないわけです。新しい産業というのは普通は小さい会社が多いし、いろい ろなサービスセクターが多いですから、企業規模は小さいわけですね。ですから、これから 起きていく会社、小さく始まるだけではなくて、そんなに大きくない会社、産業ではないと いうことを考えると、やはりここのミスマッチの解消というのは実はすごく大きいかなと思 っていて、そうすると、24頁の書き方が、結局はジョブサポーターの話、あと高校生は就 職理解ぐらいしか書かれていなくて、もうちょっと突っ込んで、大卒・高卒の就業選択のあ り方をきちんと考えさせるというのが、もうちょっと書けないかなと。このサポーターが何 をやっているのか分かりませんけれども、もうちょっと、実は就業機会があって、もちろん 労働条件、質の問題というのは確かにあると思うのですけれども、就職しないで卒業して、 あるいは非正規の仕事に就くよりも、中小企業でも正社員に就くほうが実は能力開発にプラ スだということを積極的に、そこまで書くかどうかは別ですけれど、もうちょっと踏み込ん で書かないと就業機会のある成長産業がどんどん伸びてきたとしても、ここのミスマッチの 問題を解決しないとなかなかそちらに、つまり成長産業に若い人が流れていく仕組みという ものをどう作っていくかということを書かないと難しいかなということが1つです。  あと、細かい点で、8頁のところ、高齢者の就業率を男女別に書いていただいたのはいい のですが、3行目の「60歳を過ぎても多くの高齢者が就業している」と書いてあるのです が、多くというのはどのぐらいを言うかなのですが、女性の場合は60歳以降5割を切るわ けです。5割を切っているのに多くと言うかどうかということだけです、表現です。確かに 男性は多いと言えるのですけれど、女性も、多いというのはどのぐらい多いと言うかという 日本語の問題で、60代前半は5割を切っていますから、多いと言うのかなというのが若干 あります。  あと、先ほど小杉委員のほうから、「多様な正社員」の中で短時間正社員はどう位置付け るかという話があったのですが、僕は事務局の理解でいいと思います。基本的には、育児・ 介護については法律上認められていて、それで雇用調整はフリーケア扱いされますし、もう 1つは、目的を問わない短時間勤務を短時間正社員というかどうかで、そうした場合でも、 基本的には一時的に短時間になると、ずっと短時間の正社員というのは普通はないので。そ ういう意味で、一時的と考えると、僕は今のような書き方でいいかなと思います。 ○樋口座長 何かありますか。 ○平嶋雇用政策課長補佐 まずミスマッチの点ですが、それは工夫して盛り込むようにした いと思います。  それから、高齢者の就業は実はこれは多いのかという話ですが、気持ちとしては諸外国と 比べてというイメージだったので、そういう言葉を入れたいと思います。 ○佐藤委員 女性は高いですか、海外に比べて。男性は高いのですが、女性はどうだろう。 ○平嶋雇用政策課長補佐 今、手元にありませんが、割と主要国は少なくて数%という国も 結構あったと思います。もう一度確認します。 ○佐藤委員 はい、すみません。 ○山川委員 前回の様々なご意見を踏まえていただいて、私も大変適切にまとめられている と思います。書きぶりの点についてだけ述べさせていただきます。17頁の「多様な正社員」 のところですが、下から3行目「現行の法律上はいずれも期間の定めのない労働契約を結ん でいる労働者として区別されていない」という、この「として」という意味がいま一つ曖昧 で、期間の定めのない労働契約を結んでいる労働者である点では区別されていないという意 味だと思います。細かいのですけれども、それ以外の点では区別される点は当然あると思い ますので、そういう表記のほうが正確かと思います。  次が38頁の公契約のところで、2段目の最後辺りで、「労働条件の引下げにつながる動き をすることは避けるべきという点について納税者の理解を得ながら」とありますけれども、 その前に書いてあるワーク・ライフ・バランスに関しては、労働条件の引下げと直接は関係 ないので、何か抜けている感じがしましす。もし入れるとすれば、労働条件の引下げにつな がる動きをすることは避けるべきという点や、公的政策理念の実現の促進手段に公契約なら 役立ち得るという点について、とされてはいかがかなと思います。  もう1つは41頁ですが、ここに書くかどうかという点もありますが、要はこの雇用政策 研究会の提言が誰に対して取組を求めているかということがありまして、基本的には政府が どういうことをやるのかということなのだと思いますけれど、最終的には政府のみならず労 使それぞれ、あるいはそれぞれの相互対話のようなことも求められる。ワーク・ライフ・バ ランス憲章などはそういう、いろいろなところに呼び掛ける形になっていまして、そういう 趣旨をどこで書くかという点はあるのですが、例えば41頁の数値目標の実現のところで、 「これらの目標の実現に向けて」の後辺りに、政労使において相互の対話促進を図りながら などという形で、政労使の対話や政労使それぞれの取組を求めるという趣旨をどこかにチラ ッとでも入れたほうがよかろうかなと思います。いずれにしても書きぶりの問題であります ので、座長・事務局に一任いたします。以上です。 ○小川雇用政策課長 基本的にはご指摘のとおり、編集していきますのでよろしくお願いし ます。 ○諏訪委員 ありがとうございます。大変バランス良くできていて、皆様のおっしゃるとお りでいい報告書に仕上がってきたと思って感謝しています。1点だけ、今まであまり申し上 げてこなかったことは、今回、39、40頁の辺りで、税の問題、社会保障の問題に踏み込ん でおります。それで、税の問題にもし踏み込むのならば、可能ならもう少し踏み込んだほう がいいのではないかという感じがいたします。と申しますのは、例の130万円の壁とか何 とかの問題は、これはこれで前から指摘されてきたとおりなのですが、もう1つの問題は、 諸外国に比べて、例えば若者のいろいろな支援策ですとか、あるいは能力開発に関して日本 がお金を公的に使ってこなかったのは、やはり財源がなかったわけです。この財源はやがて 社会保障の問題だとか何かにも付けて回ってくるわけですから、したがいまして若者等の能 力開発ですとか支援という部分には、今度の消費税なんかでは私は是非充てるべきだろうと 個人的に思っております。それで、消費税を直接の社会保障とか何かだけではなく、こうい う間接的な問題に向けて皆に必ずリターンがあるような形で使っていくというのは重要な ことだろうと思っています。フランスみたいに訓練税その他みたいな形で取れればよいので すが、そういうことは日本の場合非常に難しいだろうと思います。  それからもう1つ、こういうことに踏み込むのならば、能力開発との関係でいえば、生涯 学習ですので、能力開発に使ったお金に関して税額控除でも、所得控除でもどちらでもいい のですが、とにかくもう少し前から財務省と交渉している、その部分ですね、アメリカその 他の国では日本と違って申告をするということもありまして必ずそういうことを書いてい くわけですが、こういう人的資本に対する投資に関して、やはり個人の側でももう少し税制 が理解を示したほうがいいのではないかというのは書いたらいかがだろうか。  それから、103万円とか130万円というのは、ある意味では配偶者の問題にも関わってく ると考えると、この場合、家計を同じくするような者とか、あるいは配偶者のこういう教育 訓練投資に関して税の問題で一定の配慮をするというのも考えられなくはないことではな いかと思っております。 ○樋口座長 助成金でいったほうがいいのか、税金の控除のほうでいったほうがいいのか。 多分、現行は試行錯誤しながら教育訓練助成金とか、助成金のほうでいったわけですね、個 人の自己啓発に対する支援として。それに対して、今のご提案は寧ろ税のほうでもそれを考 えていくべきではないかと。これは財務省に確認していただきたいのですが、実額控除のと ころについては適用可能だという見解を持っているのではないかと思うのです。ただ実際に 非常に難しくて適用していない、確か日本全体で数人しかいないというのが、しかも、こう いった項目ではなく。それをもっと実際に利用できるような制度にしろというような要望だ と思いますが、そういう形で入れてはどうか。 ○諏訪委員 すみません、これは強い希望ではありませんから。よく分かっていますから、 過去の経緯全部。ただ、こういうふうに書くのならば、少し前向きの積極的なものも書いて いないと何かどちらも受け身だと思ったというだけです。 ○樋口座長 では、これはよくまた相談して、なるべく書ける方向で相談してみます。  ほかに、この点でもいいですし、ほかでも結構です。 ○玄田委員 少し、ものづくりに対する危機感が弱いかなという感じがします。過去の研究 会報告と比較すると少しトーンダウンの印象があります。35頁の、国際需要に応える産業 というのは製造業だという認識、そこの売り方はもう少し考えていこうというのは、その通 りだと思うのですけれど、恐らく製造に限らず、建設を含めて、ものづくりの今後の日本の あり方ということについて、雇用政策としてどう考えるかという議論は、いま実は喫緊の課 題なのではないか。いま特段の方策を採らなければ、この強みというものが維持されるかと いうと、多分そういうことを楽観的に思っている人は少ない。寧ろ今はその過渡期にあるの ではないかなという認識が強いのではないか。今回のテーマの持続可能性ということも考え ると、これから世代交代で技能継承をどうするかという問題とか、特定の地域の産業が総崩 れになる中で、ものづくり産業そのものがある地域からポッカリなくなっていくということ が現実に起こっている。それに対して、どう対応していくのだろうという。  この間も岐阜県の方のご説明のように、ある種のスクラップアンドビルドを積極的に仕掛 けていくことをしないと、もしかするとものづくりというのはもう守れないのかもしれない。 35頁のその辺りをもう1段落ぐらい作って、ものづくりをどうするかという議論があって もいいのではないか。観光とか健康とかに注力するのは大事だと思うけれど、日本の就業構 造ではある部分は製造・建設分野というのはある程度しっかりと施策的にも維持していくの だということは大事なのではないかなという気がします。 そもそも観光とか、健康でも、環境でも、基盤にはものづくりが欠かせない。  そうすると、もしかすると1つヒントなのは、鶴さんが詳しいと思いますけれども、RIETI (経済産業研究所)で宮川努さんと川上淳之さんという方がペーパーを書いていると思うの ですが、プロダクト・スイッチングという考え方が参考になりかもしれません。今まで産業 構造転換というと、ある企業が駄目になるけれど、別の企業が育てばいいのだという考え方 が通常でした。それに対して宮川さんたちの論文は、1つの企業の中で、主産品がどんどん 変わっていくことが生産性向上と結びついているといいます。1番シンプルな例がアップル で、コンピュータからiPodになってiPadになっていくというようなものです。会社を潰す のではなく、会社の中で適切に転換のダイナミズムを生むことが結局はより製造業そのもの を強くしていったりとか、マクロ全体で見ると転換になっていると考えると、そういう転換 のダイナミズムを、ものづくりでもサポートしていくということがないと、危ないのではな いか。  それに合わせて言うならば、今回、雇調金を大変好意的に評価をされていて、それ自体は 今回のようなマクロ的なショックの場合には間違ってはいないと思います。が、本来の雇調 金の意義としては、いま申し上げたような、単に維持するだけではなくて、その中で職場を 転換するとか、正にプロダクト・スイッチングする時に必要な能力開発の部分をサポートす ることで結果的に維持しようという趣旨のはず。だから、もしかしたら雇調金というのは転 換のダイナミズムを促すために一時的にそこで溜めを作ろうということなので、そういう形 に、もう少し、第二次産業ものづくり分野をしっかり守っていかないと実は日本の付加価値 の拡大もないし、今後伸びるべき産業だけに過度に期待をかけるとちょっと危ないのではな いかということは、もっと書いていただいてもいいのではないかと思います。 ○樋口座長 ちょっと先ほどとも関連するのですが、産業別のところが全般的にもしかした ら弱いかもしれないという中で、その中で、いくつかの産業を取り上げ、例えば製造という ところで書くということも必要ではないかというご指摘だと思います。要望を承りましたと いうことで。 ○橋本委員 報告書に何か修正とか追加をお願いすることはないのですが、ちょっと今後の 課題になり得るかもしれないということを申し上げたいと思います。「多様な正社員」につ いて、前回の議論で現在の非正規雇用の労働者が安定した雇用に就きキャリア形成の可能性 もできるという良い面を強調すべきだという議論がなされて、それはその通りだと思います し、この報告書にもそのような指摘が行われていると思います。そういう認識が一般的だと も思うのですけれど、最近のある、たまたま見つけた裁判例で、日本郵便郵送事件という、 大阪地裁平成21年12月25日の判決ですけれども、郵便物の運送をしている運転手が臨時 社員ということで2カ月の有期契約を更新されていたのですが、この会社は、臨時社員を地 域社員という無期契約の正社員に転換することにしました。正社員になるのでこれまでの有 期契約を終了して、改めて無期契約を締結しようとしたわけですが、本人はそれが嫌だった ということで応じなかったら雇止めになったという事案で、雇止めの適法性が問題になった 事件です。判決は、地域社員になれば雇用も安定するし給与ももちろん上がりますので、い い話なので雇止めは相当だという判断をしました。この結論自体はその通りかなと思います。 どうしてこういう紛争が起こったのかと思いますと、詳しくは書かれていないのですけれど も、どうも全国社員という、地域社員と同じ仕事をしている正社員がいて、その人と比べる とやはり全然待遇が違うということで、それが不満だったようなのです。そのことから将来 的にどうしても残る、全く仕事や責任が違うとか、労働者の資格が異なるなど、うまく処遇 の格差を納得させられるような違いがあればいいのですけれど、そうでない場合には、均衡 処遇の問題というのは引き続き大きな問題になるのかなと思いました。以上です。「多様な 正社員」に関係する最近の裁判例を紹介させていただきました。 ○樋口座長 ありがとうございました。皆様から一通りご意見をいただきましたが、追加し て、何かございますでしょうか。もしよろしければ、たくさんご意見をいただきましたので、 それをもとに報告書を修正、そして取りまとめたいと考えております。修正内容につきまし ては、それぞれの先生に後ほどまたご相談させていただきたいと思いますが、一応、私のほ うにご一任いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。                 (承認)  ありがとうございます。それではそのようにしたいと思います。  昨年12月から9回にわたってこの研究会を進めて参りました。私自身もここに参加させ ていただいていろいろ勉強させていただいたということもあります。また、社会のダイナミ ズムというのが今回レポートの中で取り上げられてきた非常に大きなことかと。ダイナミズ ムの中には、いわゆる安定性といいますか、そういったものをいかに労働市場で確保してい くかということもあったのではないかと思います。どうもありがとうございました。  それでは最後に、森山職業安定局長からご挨拶をお願いいたします。 ○森山職業安定局長 本当にありがとうございました。本来であれば、今日は私どもの細川 副大臣が参りましてご挨拶ということでございましたけれども、政務ということでなかなか 今日はかないませんで、副大臣から、くれぐれも先生方に御礼をよろしくお伝えくださいと いうことでございましたので、まず最初に申し上げたいと思います。  今日もご議論いただきました、大変この9回、本当にご熱心にいただきまして、いろいろ なご提言、それからまたいろいろな今の政策の整理をしていただきまして本当にありがとう ございました。今後これをいかして私どもの政策に反映していきたいと思っていますし、ま た、ご提言の中には今後の分析を更にして、どう判断をしていくのか、またいろいろな政務 としてご相談させていただきたいと思っております。この取り扱いですが、いま座長からご ざいましたように、座長とご相談させていただいて、また先生方といろいろとメール等でや らせていただきまして、まとめて近日中にこれを公表させていただきたいと思っていますの で、よろしくお願い申し上げます。今後とも引き続きご指導ご鞭撻をお願いしながら、御礼 を申し上げます。 ○樋口座長 どうもありがとうございました。従来の雇用政策研究会のレポートとはまた一 味違った形で提起できることを幸せに存じます。  では以上でこの研究会を終了したいと思います。どうもありがとうございます。 照会先 厚生労働省職業安定局雇用政策課雇用政策係  〒100−8916 東京都千代田区霞が関1−2−2  電話 03−5253−1111(内線:5732)