10/06/15 第3回職場におけるメンタルヘルス対策検討会議事録 第3回職場におけるメンタルヘルス対策検討会       日時 平成22年6月15日(火) 17:00〜19:00 場所 経済産業省1028会議室 (担当)厚生労働省労働基準局安全衛生部                           労働衛生課 古田、永田                         〒100−8916                          東京都千代田区霞が関1−2−2                          TEL 03-5253-1111(内線5181,5505)                          FAX 03-3502-1598 ○永田主任中央労働衛生専門官 本日は、大変お忙しい中ご参集いただきまして、ありがとうござい ます。定刻ということですので、ただいまより「第3回職場におけるメンタルヘルス対策検討会」を開 催します。本日は堀江先生がご出席ですのでご紹介申し上げます。 ○堀江委員 産業医科大学産業生態科学研究所の堀江と申します。どうしても都合が合わず2回欠席し ました。本日から出席します。どうぞよろしくお願いします。 ○永田主任中央労働衛生専門官 本日、日本医師会の石井正三委員の代理として、今村聡理事にご出 席いただいていますのでご紹介申し上げます。 ○石井委員(代理今村氏) 今村です。よろしくお願いします。 ○永田主任中央労働衛生専門官 本日は、石井妙子委員、市川佳子委員、川上憲人委員、栗原壯一郎 委員、三柴丈典委員の各委員がご欠席です。  また、安全衛生部長の平野が初めて出席ですので、紹介します。 ○平野安全衛生部長 安全衛生部長の平野です。前2回、所用のため出席できませんでした。申し訳あ りません。職場におけるメンタルヘルス対策については、私ども安全衛生行政の最重要課題の1つと考 えています。検討会での結果、結論を踏まえて対策の充実等を図っていきたいと考えていますので、 よろしくお願いします。 ○永田主任中央労働衛生専門官 撮影はここまでとしますので、よろしくお願いします。 今後の議 事進行については、相澤先生にお願いします。 ○相澤座長 早速、議事に入ります。お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございま す。本日は、最初に関係団体からのヒアリングがあり、その後、前回に引き続いて、メンタルヘルス 不調者の把握等について、事務局で用意した項目について議論を予定しています。  なお、資料「検討事項等について」がありますが、この資料は後ほど議論の際に事務局より説明し ていただくことになります。  最初に、関係団体からのヒアリングを行いますので、ご紹介申し上げます。社団法人日本産業カウ ンセラー協会の原専務理事にお越しいただいています。どうぞ、そちらにお座りください。10分程度 でよろしくお願いします。 ○原専務理事 ご紹介いただきました産業カウンセラー協会の原と申します。よろしくお願いします。 今日は、貴重な機会にこういう時間をいただきまして、大変光栄に存じます。冒頭、私ども産業カウ ンセラー協会の概要を説明します。  1960年に協会を創立し、今日で満50年になります。簡単に申し上げますと、この間、主として2つ の事業を中心にやってまいりました。1つは産業カウンセラーの養成。もちろんこれは資格試験をおこ ないます。それから、資格を取得した方々が企業等の分野で産業カウンセラーとして活動できること を推進していく。この2つを中心的な事業としてやってまいりました。  もちろん私どもは産業カウンセラーですから、企業等で働いている方々のメンタルヘルスの問題に ついて、どのように予防していくかを中心的な課題として進めてまいります。私どもはこれまで40年 間ほど養成の事業をやってまいりまして、資格を取られた方は4万人ほどいますが、現在、私ども産業 カウンセラー協会の会員になっている方は、そのうち約半数の2万人ぐらいです。  この間、メンタルヘルスの対策という点でどのような活動をしてきたかということについて、まず 報告を申し上げたいと思います。現在でこそ2万人の数の会員がいますが、10年ほど前までは、カウ ンセリングといいましてもまだそれほど社会的に知られている活動でもありませんでしたが、ここ数 年は私ども産業カウンセラーの活動の場もかなり広がってきています。  どのような活動の仕方をしているかという点ですが、自ら企業に所属されている会員もいらっしゃ いますから、企業の中でご自分の仕事として従業員の方々のカウンセリングを行う活動とか、あるい はご自分でカウンセラーとして活動をされる、そういう形で活動をされる方と、もう1つは、私ども産 業カウンセラー協会が企業等から依頼を受け、資格を持っているカウンセラーを企業等に派遣し、そ のカウンセラーの方たちが企業内でカウンセリング等を通じてメンタルヘルスの支援活動を行う、こ ういうふうに大別できるかと思います。  後者の私どもが全国で派遣をするカウンセラーとしての仕事は、どのぐらい行っているかという点 ですが、直近の数字で申し上げると、メンタルヘルスの活動は主として、従業員の方々あるいは管理 職の方々への研修活動と、実際に従業員へのカウンセリングと、この2つに大別できると思います。研 修活動では、平成21年度の実績で、延べ人数ですが全国で約2,500人ほどのカウンセラーが活動をし てまいりました。カウンセリングの活動ですと、これも延べ人数ですが約2万3,400人ぐらいです。派 遣している企業の数でいいますと434企業ですので、単純に平均しますと、1社平均週に1回程度訪問 をしているという計算になります。  企業等に派遣する研修活動やカウンセラー活動とは別に、私ども産業カウンセラー協会として相談 をお受けする活動をやっており、これは面接によるいわゆるカウンセリングと電話による相談をお受 けしています。私どもは北海道から沖縄まで13の支部があり、ここに相談ルームがありますので、こ こで相談をお受けしているわけですが、前年度の実績で申し上げますと、相談室でのカウンセリング が約3,300件です。電話相談が1年間で3,600件ほどです。相談室あるいは電話相談の中で、メンタル、 病気に関する相談がどのぐらいあるかということを申し上げますと、カウンセリングによる相談です と、先ほど申し上げた件数のうち、約22%ぐらいがメンタル、病気等に関するご相談という状況です。 電話相談になると少し減りまして、約12%ほどという件数が実績です。  先ほども申し上げましたが、私どもは、できるだけ多くの企業等の要請に応えたり、あるいは企業 のほうで、こうした従業員の方々に対するメンタルヘルス支援の活動、制度等ができるように、そう いう面での推進活動なども行っています。私どもがいま派遣しているカウンセラーの対象の企業もま だまだ大手の所が中心、もちろん中小も含まれていますが、基本的には大手の所がどうしても中心に ならざるを得ないのが実態です。  先ほども申し上げましたが、予防的活動が私たちの中心的な活動ですので、そういった点では、産 業カウンセラーの経験の中でもかなり貴重な経験もあります。例えば、全国で1万人ぐらいの従業員の いる企業についてですが、10数カ所の事業場がありますが、7年ほど前から簡単なセルフチェックを従 業員の方に行っていただいて、全従業員を対象に10分程度のカウンセラーによる面接を行って、そこ の中で不調者を発見していくという取組みをやっている経験もあります。  先日もどういう成果が出てきているかを尋ねましたら、2つあると言っていました。不調を訴える方 の数がこの取組みによって急激には増えなくなってきているという成果と、もう1つは、残念ながらう つ病等で休職せざるを得ないという方々もいらっしゃるわけですが、そういう方々の不調の期間がか なり短縮されてきている。そういう成果が挙がってきているということを申していました。そういう 点では、広く働く方々にセルフチェックや不調の状況などをカウンセリング等を通じてどう訴えてい くか。そしてカウンセラーを通じて早期に発見をしていく。このことが私どものこれまでの経験から しても非常に重要な点だと考えています。極めて簡単ですが、以上です。 ○相澤座長 原専務におかれましては、日本産業カウンセラー協会の活動について詳しくご説明いた だきました。ありがとうございました。せっかくですので委員から何かご質問がありましたらお願い したいと思いますが、いかがですか。 ○岡田委員 カウンセリング業務の中で全従業員に面接されたときに、守秘義務等についてはどのよ うに対応されているのかお聞きしたいのです。例えば疾病を有する方がいらしたときに「会社には言 ってくれるな」とかいう発言がご本人からあり、しかし就業上の制限をしなくてはいけないのではな いかという判断をされた場合、これはどう対応されるのかについて、どういうコンセンサスを持って おられるのかについてお聞きしたいのですが。 ○原専務理事 これは企業、従業員、カウンセラーの三者の間で、守秘義務についてはきちんと守り ますということが約束されており、従業員の方にもそのことが事前にきちんと周知をされている。し たがって、セルフチェック票の中身やカウンセリングの中身等についても、ご本人の了解ない限りは 一切会社には内容についてお知らせをしないことを原則にやっています。私ども産業カウンセラー協 会としても、倫理綱領としてそういうことはきちんと守ることを徹底するようにしています。  不調者が見つかった場合等については、ご本人に、医療機関に行って診療を受けることなどのお勧 めをすることを行うということ、それから、産業医もいらっしゃいますので、ご本人の了解を得た上 で、産業医を含めて会社との関係でもご相談をするということを基本にして取り組んでいるのが実態 です。一般的にもそういう形でやっています。 ○北村委員 今のに関連してですが、例えばうつ病で治療を受けている社員の方が相談に来られて、 「うつ病で治療を受けていることは会社の人には誰にも言わないでほしい」と言うものだから、上司 にも伝えなかったため、海外に単身赴任させて症状が悪化した、自殺したといった場合も考えられる と思いますこのようなリスクを回避するにはどうすればよいのでしょう。 ○原専務理事 症状の程度にもよるのでしょうが、不調者の発見という範囲を超えて、その方が希望 されれば、カウンセラーの立場でカウンセリングをやる中で、カウンセラーとして業務を遂行するこ とにいろいろ問題がありそうだということになった場合には、例えば産業医等を通じてご相談をする と。ですから、ご本人が「どうしても会社には一切知らせないでほしい」とかいうことを申し出られ た場合の会社との関係での調整をどうするかも、カウンセラーとしては率直に申し上げて、悩ましい ところであることは事実だと思います。あくまでもご本人のご意向に沿ってということを中心に考え ざるを得ないだろうと思っています。 ○北村委員 難しい問題ですね。 ○原専務理事 難しいところだと思います。 ○五十嵐委員 1つお伺いしたいのですが、産業カウンセラーのかかわりによって2つの成果がありま すとおっしゃって、1つは話をすることで不調の訴えがむしろ増えていないということ、もう1つはう つ病が仮に見つかっても療養期間が短いということで、後者のうつ病の療養期間が短いというのも、 おそらく早期発見して早い段階で医療機関につながるということなのでしょうが、話すことで不調の 訴えが増えていないというところの理由、背景をお伺いしたいのですが。 ○原専務理事 これはもちろんカウンセラーだけの取組みということではありませんで、会社が全員 の面接を行うという非常に貴重な取組みを行うことによって、調子が悪いときには従業員の方々が早 目に訴えるということ。それを企業としてもきちんと補償していくという仕組みが整っていることが、 不調者をたくさん出さない、あるいは日常的にも調子が悪いときには、その企業では日常的にカウン セリングも常設されて行っていますので、そういうことも数多くの不調者を出さないことにつながっ てきていることだと思います。療養期間も短くて済むというのは、これは従業員の方々の自覚や日常 的な研修、企業としてもきちんとそういう休業補償等の取組みを制度としてやっている、そういう成 果だと思います。 ○五十嵐委員 わかりました。そうしますと、タイムリーに相談できる仕組みが大事だということで すね。 ○原専務理事 はい。 ○五十嵐委員 もう1つ教えていただきたいのですが、先ほどの北村委員のお話にもつながるかもしれ ないのですが、何か不調あるいは職場の問題だとカウンセラーが気がついたとき、そのあとのフィー ドバックは、本人の了解を得て産業医を通じて行うという感じですか。 ○原専務理事 基本的にはそういうルートでやることにしています。ただし、希望によっては、産業 医が常駐でない所ももちろんありますので、その場合には、ご本人の意向を尊重しながら、会社との 関係を調整していく役割も果たすことになっていると思います。 ○石井委員(代理今村氏) 434の企業にカウンセラーを派遣されているというお話でしたが、差し支 えなければ企業の規模や事業場の数と、どうしてもこういう派遣をされる所は比較的大きな会社や大 きな事業場が多いのではないかと思っているのですが、現実はいかがですか。 ○原専務理事 正確には企業規模は把握してないのですが、434の企業数は13の支部の合計です。し たがって、都市部でない所に行きますと、規模的にはそう大きくない所も入っていますし、官公庁な どもこの中には含まれています。正確には企業規模までは把握していません。 ○椎葉委員 先ほどの企業の例に戻るのですが、セルフチェックをして、それでどれぐらいの方が引 っかかっているのか。面談は全員やられるということでしたが、面談の結果、セルフチェックでも引 っかかって、面談でも引っかかって、結局、病院にかからなければならなかったという方の確率です ね。それと、セルフチェックに引っかからなかったけれども面談で引っかかったという、その分析は なさっていらっしゃいますか。 ○原専務理事 私も、実際どんなセルフチェックをやっているのか見せていただきましたし、従業員 数との関係での不調者の数なども見せていただいたのですが、事業場によって若干の違いはあります が、私が見せていただいた事業場では、3,000人ぐらいの事業場でメンタル的に不調な状態であるとカ ウンセラーが判断をした方は、10数人でした。その方々はほとんどセルフチェック票でも、例えば睡 眠の問題や気力の問題などを訴えられている方々で、10分程度の面談によってそれが確認をされると いいますか、そういう状況のようです。すべての事業者がどうかはわからないのですが、カウンセラ ーによりますと数パーセントの不調者程度だと言われていまして、それがここのところずっとそう高 くない、急激に右肩上がりで上がっていくということではなくて、その程度だということですので、 客観的に見ると不調者を抑えてこられているのではないかと言われていました。 ○椎葉委員 セルフチェックで引っかかっている方はどれぐらいいらっしゃったのですか。手前でや られるのですよね。 ○原専務理事 セルフチェックで引っかかるといいますか、面談によってセルフチェックの中身もご 本人が考えているほど深刻なものではないとか、そういうケースもあります。もちろん先ほど申し上 げた10数人の不調者という数以上にあったようですが、カウンセラーが面談をして判断をする範囲で は、それほど大変な不調者と言われる状況ではないということのようです。 ○下光委員 カウンセラーとしての活動ですが、独立してカウンセラー活動を行う人と、企業内でカ ウンセラーとして活動している人と、協会からの派遣と、3種類とお聞きしたのですが、現在事業場外 資源の1つとしてEAPという組織があると思うのですが、協会もそれらのEAPの組織と同様の活動をし ていらっしゃるのか。また、EAPの中で活動しておられるカウンセラーはどのぐらいいらっしゃるのか をお聞かせ願いたいと思います。 ○原専務理事 私どもは先ほど申し上げましたが、4万人の資格者を輩出していますが、協会の会員に なることは義務づけではありません。半数ぐらいですので、有資格者がどういう仕事をやっているの か全体はなかなか掴めないのです。実は昨年50周年記念で、カウンセラー資格を持っている方々のア ンケート調査を行いました。その結果、約1万4,000人から回答をいただいたのですが、その中でカウ ンセリングの活動を日常的に行っている方は約3,000人ぐらいでした。ですから、2割前後という数字 かと思うのですが、実際にやっている活動としては、企業等に所属して活動されている方が最も多い です。次に多いのが私ども産業カウンセラー協会の仕事として企業等に派遣で行っていただいている 方々、それからご自分で仕事として、カウンセリングの仕事を個人営業としておやりになっている方 々、こう言えると思います。もちろん私どもはEAPとは言っていませんが、いまEAPの各社が行ってい る活動は、私ども協会としてもやっていると受けとめていただいて結構だと思います。 ○堀江委員 カウンセラーの方々の仕事は大変重要だと思います。私は産業医をしていた経験があり、 産業医の場合は、月に1回巡視をするとか、衛生委員会に出るとか、必要な情報があれば衛生管理者等 から情報をいただくことができます。働く人のカウンセリングにおいては、対象者がどのような仕事 をしているのか、職場の人間関係はどうかなど、職場の情報は極めて重要と思います。対象者はいろ いろなことをおっしゃると思うのですが、それがすべて正しい情報どうかはわかりません。産業医の 経験でも、労働者とともに本人の職場の上司や管理職の方等々からさまざまな情報をいただいて、は じめて実態がわかるということもあります。いろいろな立場でカウンセラーの方が職場とかかわった ときに、どのようにして職場の実態等を調査されているのでしょうか。 ○原専務理事 私ども協会としても、カウンセラーとして活動している方々に最近申し上げているの は、1対1のご相談をお受けすることだけではなくて、例えば1つの企業の中でご相談を受けることを 通じて、その会社において改善しなければいけない課題とか、そういうことが明らかになったときに は、きちんとそのことを会社側にもお伝えをして、カウンセラーの立場で意見を申し上げる。いわゆ る企業への働きかけの活動もカウンセラーの役割としてあることを、最近私どもは強調するようにし ています。  ただ、企業に所属している従業員の方で、業務として衛生の活動などを担当されてカウンセリング をやっている方々は、例えば衛生委員会のメンバーにもきちんと入れていただいてという活動ができ ますので、いま委員がおっしゃられたこともできる面があるのですが、私どもが派遣として、週1回と か2回とか派遣している人たちは、企業との関係でそういう関係にまでなるのがなかなか大変でして、 言ってみれば、よその者が入ってきてカウンセリングをやっているという関係のものですから、企業 の公式なきちんとした委員会等には、残念ながら正式な委員としてはなかなか入れていただけないと いう面があることは事実です。この辺は、むしろカウンセラーのほうが企業に働きかけて、是非そう いうことをやっていただきたいという要請をやっている方もたくさんいらっしゃるようです。おっし ゃることはそのとおり重要な点だと思っています。私たちも、企業との信頼関係ができて、カウンセ ラーもそういう委員会に委員として入って積極的な意見が申し上げられる、そういうことは非常に大 事な点だと思っています。 ○相澤座長 よろしいですか。質疑応答を終わります。原専務、今日はお忙しいところありがとうご ざいました。  議論に入りたいと思いますが、前回は労働者のメンタルヘルス不調の把握の目的等について議論を 始めていますが、時間不足のためにあまり議論が進みませんでした。本日は、前回の続きの議論をお 願いしたいと思います。前回の議論を踏まえて、事務局で配布資料「検討事項等について」を作成し ていただきました。議論はこの資料に基づいて行いたいと思いますので、まず事務局からこの資料の 説明をお願いします。 ○永田主任中央労働衛生専門官 ではご説明いたします。前回の資料3として、検討会における具体的 な検討内容、今日配付した資料では5頁、目次では3頁となっているかと思いますが、その中で、「労 働者のメンタルヘルス不調の把握方法について」、それから、「把握後適切に対応するための実施基 盤の整備について」、「その他」という3項目について、検討内容ですというご説明をしております。 前回、座長のほうから、ご議論いただく項目ということでお話をされていますが、その中の、「労働 者のメンタルヘルス不調の把握の目的」という所まで大体ご議論が行ったかと思います。  今回ご議論をいただくにあたり、前回までのご意見等も整理しまして、今日のご検討の際の参考に していただければと思って出しております。Iについては1頁目、それから、IIについては4頁目、そ の他は5頁目になっております。それぞれ、「労働者のメンタルヘルス不調の把握の目的」、それから、 「メンタルヘルス不調の把握の具体的な手法」、「労働者のプライバシーの保護及び不利益取扱いの 防止」で、ここのプライバシーと不利益については一緒にご議論いただいたほうがよいということで1 つにまとめています。4の「専門家の関与の方法」、ここまでがIの部分に当たるものです。IIについ ては、「産業医の資質の向上と外部機関の活用」と「産業医の選任義務のない中小規模事業場におけ る実施体制について」の2つに分けております。それから、「その他」です。  その中で、1頁を見ていただきますと、それぞれ「現状等」、それから「これまでの意見等」として いますが、現状等については、第1回目のときに説明した、現状の中で関係ある部分を抜き出してあり ます。それから、これまでの意見等ということは、各委員からご発言、ご説明のあった中から、各項 目に特に関係のあると思われるものを記載しております。今回のご議論の際に参考にしていただけれ ばということですが、1、2回目の発言を全部載せているわけではありませんので、発言の趣旨が違う とか、自分が発言したことが出ていないということがあれば、ご議論の中で言っていただければと思 います。時間の関係がありますので、以上で説明とさせていただきます。 ○相澤座長 ありがとうございました。それでは、今後の当検討会における議論を円滑に、また、効 率的に進めるために、ある程度論点を整理した上でご議論していただくのが適当と考えています。本 日はこの資料について全般的にご議論していただいて、次回までに私のほうで論点を整理して、次回 提示したいと思いますので、本日の議事進行についてご協力をお願いします。今日、あと1時間半ぐら いあるのですが、一応これを全部やりたいと思います。ご協力のほどお願いします。  最初に、1頁の大きなIの項目の「労働者のメンタルヘルス不調の把握方法について」の1番目の 「労働者のメンタルヘルス不調の把握の目的」です。これについては、前回かなり議論をしたところ ですが、何か補足的なご意見があればお願いします。 ○石井委員(代理今村氏) すみません。前回は参加していなかったので教えていただきたいのです が、「事業場取組み」に対する事業場というのは全事業場という理解でよろしいのでしょうか。それ とも企業別というか、おそらく企業の規模別に取組みの状況はかなり変わっているのではないかと思 っているのですが、その辺は何かご議論があったのですか。 ○相澤座長 これは全事業場ということで。 ○永田主任中央労働衛生専門官 当然、対象になるのは全事業場になると思います。ただ、ご発言の 中で、それぞれのご承知になっている事業場について紹介があったという場合もあります。 ○石井委員(代理今村氏) 後ほど、産業医の選任の義務のない事業場の話が出てきますが、そうい う、小規模な事業場は平均的な数字よりもかなり取組みが悪いのではないかと理解しているのですが、 その辺はいかがですか。 ○永田主任中央労働衛生専門官 これは労働者健康状況調査というものの中からですので、現状等の 中の全体を平均したものです。その調査の中では当然、事業場規模によって違いが出てきます。 ○相澤座長 それでは、この目的について、これまでの意見が書いてありますが、それ以外、あるい は補足する所があればお願いしたいと思います。  よろしいでしょうか。前回、議論が大分出ていますが、いいですか。 ○堀江委員 細かいことですが、Iの1の(2)のいちばん最後に書かれているように、健康診断等の機 会をとらえて作業環境における心理的ストレスを評価して、それを軽減することを目的とした産業保 健活動を検討するという考え方は非常に共感するところです。メンタルヘルス対策をする上で、企業 に責任があるのは、職場における心理的ストレスの軽減ではないかと思います。例えば、物理化学的 な環境であれば作業環境測定をすることになりますが、心理社会的な環境要因に関しては計測機器が あるわけではありませんので、もし健康診断や保健指導のような場面で、何らかの指標が用いられて 数値が出てくるとすれば、それを個人の病気とか個人の課題とせずに、それらを職場や組織の単位で とらえて、職場における心理的ストレスの大きさといったものを評価して、それを軽減していくため に役立てるのがよいのではないかと思いました。これは個人的な意見です。 ○相澤座長 一次予防、あるいはリスク要因を見つけて、職場に還元するとか、前回、そういったご 意見もたくさん出ていたと思いますので、堀江委員もそれに賛同していただけるということです。よ ろしいでしょうか。  それでは、次の項目です。2番目の項目、「メンタルヘルス不調の把握の具体的な方法」について議 論を進めたいと思います。メンタルヘルス不調の把握に要する費用とか、あるいは、時間、制度等の 観点から、どのような手法が適当かについてご議論をいただければと思います。いかがでしょうか。2 頁にこれまでの意見があります。一次予防を目的に作られたもの。それから、責任の問題も議論があ りましたし、事業者責任という労働安全衛生法の性格を考慮して、健康項目に入れるかどうかを検討 すべきでないか。あるいはうつ病の健診としてではなく、幅広くストレスの把握として位置づけたほ うがいいのか、これもいま合意をいただいたことですが、いかがでしょうか。費用や時間等もかかり ますし、精度の問題は川上先生にプレゼンをしていただきました。 ○椎葉委員 是非質問させていただきたいのですが。前回までは職業性ストレス簡易調査票のことが 議論に乗っていたのですが、こういう調査票ですね。毎年同じ質問票で行っていくとすれば、精度管 理はどうなるのでしょうか。段々慣れてくるのですね。こう書けばこうなるというのが大体予測され て、計算してチェックするのではないかと危惧するのですが、いかがでしょうか。 ○下光委員 これについては、実際に使用している現場の先生のご意見を聞くほうがいいかと思いま すが、調査票はあくまでも調査票であって、血液中のGOT、GPTを測るというような、さまざまな客観 的な評価法とは異なり、あくまでも主観的なものです。それから、嘘を書いたりすることもあり得ま すし、実際に私が調査票を見て面談をしている際に、結果が大体この位になるようにチェックしたと いう人もいました。そういう問題は必ず出てきますので、その辺については現場でどう扱っているの か、岡田先生や他の先生方にお聞きしたいと思います。  再テスト法などを行って信頼性係数とか、そういうものは一応何回かやって確認しているのですが、 意図的に嘘の回答を行ったり、あるいは、だんだん慣れてくるということについては否定できないと 思います。 ○岡田委員 1年に1回というのは、従業員はほとんど覚えていないです。去年、自分がどんな回答を したかはほとんど覚えていないですね。だから、私の所はどうしているかというと、去年あなたはこ う回答したとコンピューターに残してあるのです。そうすると、今年はこうだということで、去年の 変化を自分でキャッチできるようにしてあるのです。去年は非常にストレスが多かったが、今年はス トレスが少ない。逆に、去年はこう感じていたが、今年は多い。職場の異動であるとか、労働時間で あるとかということで、この票のチェックで、自分で去年との比較ができるようにしてあるのです。 そうすると、自分はいま、去年よりもしんどい思いをしていると私ども産業医の所で言うのですね。 「去年と比較するとこうですね」とお話すると、「そうです」という形で。むしろ去年のデータを残 しておいて、それを上書きすることによって、いま自分がどんな状況にあるかが非常に把握しやすく なっている。そういう意味ではメリットがあります。同じ質問であっても、経年的に開かせることに よって効果があると私は判断しています。 ○五十嵐委員 意見なのですが。2の「メンタルヘルス不調の把握の具体的な手法」という所で、前回 もその前もお話しましたが、産業医につなぐ前段階として、保健師等の健康相談が有効であることを 何度も申していますので、それを入れていただきたいと思います。 ○相澤座長 ご意見があったのに、記載が抜けていたわけですね。わかりました。 ○北村委員 ここに入れるべきなのか、次の項目に入れるのか、よくわからないのですが。これまで の議論の中で、事業主に知られるようなメンタル面の情報を正直に回答してくれるだろうか、そうい う疑問の意見もあったのではないかと思いますが、これも入れたほうがいいのではないかと思います。 ○相澤座長 そういう意見もありましたので、信頼性ということですか。アンケートの信頼性につい て、推葉委員からもご意見があって、そういうことも含めてですね。 ○五十嵐委員 確認なのですが、大方いままでの議論では、健康診断でのうつ病のスクリーニングは、 労働安全衛生法の中に盛り込むのにいろいろな問題があるという話があったと思います。それで、同 じスクリーニングでも、ストレスを把握して、それをフィードバックするような方法がまだいいとい う話で、だからといって、それを労働安全衛生法に盛り込むかどうかは、ここではまだ議論していま せんよね。どうだったでしょうか。 ○相澤座長 いろいろなご意見が出ていましたね。 ○五十嵐委員 いまの感じだと、どちらかというと、ストレス把握というほうが大事だという論調で 書いてありますが、だからといって、それを労働安全衛生法に盛り込むかどうかの確認はまだできて いないと思います。 ○相澤座長 それを検討するのがこの検討会ですから。 ○五十嵐委員 そうですね。まだということでよろしいです。 ○相澤座長 もちろん、そういう意見もあって、3番目の。 ○鈴木労働衛生課長 プライバシーの問題とか、北村委員がご指摘になったことは、我々はとりあえ ず3番目辺りに反映させたつもりです。ただ、2番目はどちらかというと、いま可能な手法のエビデン スなり、限界とか、その辺りを含めてどのような具体的手法があるかをご議論していただこうという 意味で設定しました。そもそも、手法と信頼性という分野の性格からして嘘を書くこともあり得るわ けで、それは重要なポイントとして再検になるかもしれませんが、入れ込みたいと思います。そうい う意味からすると、五十嵐委員の言われた部分は、検診の手法のどの辺りに影響するか、もう少しご 指摘していただくとよろしいかと思います。ですから、これは手順というよりもコアの部分の技術的 な問題として、保健師が最初に面談を行ったほうがいいという辺りについての根拠というか、エビデ ンス辺りを解説いただくと、もう少し正確に反映できるかと思います。すぐでなくてもいいです。 ○相澤座長 スクリーニングの所か、その後の所か、あるいは、自由に相談に来るとか、そういった 把握の仕方があることは、前回お話のあったとおりです。それをまとめていただければと思います。 他にはいかがでしょうか。 ○堀江委員 前回の検討会で、調査票についていくつか比較をされたように伺っています。本日の資 料ですと、1頁の最後の行から2頁の初めの所にかけて職業性ストレス簡易調査票のことが詳しく書か れております。ただ、現在日本で使われているこれらの様々な調査票、また、諸外国で使われている CES―D(Center for Epidemiologic Study Depression Scale)、ZungのSDS(Self-Assessment Depression Scale)、あるいは最も簡単な調査方法である「最近2週間、落ち込んだり、うつ状態にな ったり、望みがなくなったりした感じがしませんでしたか。」及び「最近2週間、ものごとに興味や喜 びをほとんど感じませんでしたか。」という2つをたずねる方法によるスクリーニング方法などに関し ては、調査票の種類によって感度や特異度に大きな有意差があるとは認識されていないと思います。 その点はそういう理解でよろしいのでしょうか。それとも、この委員会ではストレス簡易調査票につ いて、少し具体的に取り組んでいくという方向があるのでしょうか。前回はどういう議論だったか、 把握していないのですが。 ○相澤座長 川上先生から、特にSうつ病のスクリーニングの特異度とか敏感度といった話があって、 そういった評価法をきちっとしたほうがいいということがあったのです。それからもう1つは、職業簡 易調査票のことがありまして、ご議論の中では、病気を見つけるのはなかなか難しいところもあるの で、先生もおっしゃった、一次予防に役立てるには、ストレスをある程度評価して、それを還元する ような形がいいのではないかというご意見が少し多かったように思います。先生がおっしゃったよう な、そういったやり方もあると思いますし、具体的にはこれからどの方法をやるかはまだ決めていま せんので、先生のほうで何か推奨するものがあったらご紹介していただきたいと思います。 ○堀江委員 国際的に、職場において労働者のうつやストレスを評価するための調査票のうち、どれ が最も適当なものかについてのコンセンサスは得られていないと思います。日本においても同様であ ると思います。おそらくこの検討会では、それを決めることは難しいと思います。Iの2番のタイトル が「メンタルヘルス不調の把握の具体的な手法」となっていて、いかにも個人を見つけるような項目 になっているのでそういうニュアンスでとらえましたが、もし、これが職場のストレスを把握すると いう意味であれば大変結構と存じます。逆に、もし、メンタルヘルス不調の労働者を把握するという 意図であるとすれば、おそらく質問紙の感度は85%前後が限界であり、特異度のほうはやや低くて、7 〜8割ぐらいがせいぜいというものが多く、それらの間の差はほとんどないと思いますので、いずれか の調査票や質問項目を法令で規定すべきではないと思います。むしろそれよりも重要と考えられるの は、その後の結果の使い方だと思います。  いかに早く専門家につなげて、そこで正確な診断をして、効果的な治療ができるのか。そして、そ の後の経過をきちんとフォローアップするか。こういったことが伴ってこなければ、メンタルヘルス 不調の労働者を把握しても意味がないと考えられます。 ○鈴木労働衛生課長 事務局としては、第1回目にこの検討会に至る経緯を説明した中で、2つあって、 1つは、自殺、うつ病。プロジェクトチームのほうから、職場におけるメンタルヘルス不調者の把握な どができる方法がないかを検討するというとりまとめになっていましたので、その流れが1つです。そ れから、安全衛生分科会で、新成長戦略の中で厚生労働省として盛り込むべき要素として、企業にお けるメンタルヘルス対策の推進ということで、やはりメンタルヘルス不調の把握が盛り込まれており ます。ミッションとしてはそうですが、やはりコアとなる手法において、エビデンスなり性格がどう かによって、狙う目的なり、それによって、プライバシーとか不利益の扱いをどういう流れで組むか とか、その後の受け皿をどうするかとか、一体的な議論になると思います。ストレス簡易調査票は1回 目に提示しましたが、これを軸に何か比較するということではなくて、堀江委員のようなご意見があ れば。まさに根拠をもとに、どういった辺りに目的を絞るか、あるいは、その場合にどんな手順を踏 むべきか、こういったことを議論していくのかと思います。事務局として、方向性やこだわりが特段 あるわけではありません。前回、この2番目についてはほとんど議論されていないので、まさにそうい うご意見を今日いただければと思います。 ○相澤座長 メンタルヘルス不調ですからね、病気とは限らない。ストレスがかかって調子が悪いと いうのもメンタルヘルス不調だと。非常に幅が広いです。 ○堀江委員 少し安心しました。いま課長がご指摘になりましたが、労働安全衛生法が規定する定期 健康診断の2つの最大の特徴は、事業者がその結果を見る体制になっていること、それから、労働者が 必ず受診しなければならない強制義務がかかっていることです。この2つは他の健康診断にない特徴で す。実際は、普通に「健康診断」というと、このような特徴を理解している人は少なく、そこを誤解 される方々が多いのが実態です。そこは労働基準行政における基本的な枠組みで、たぶんこの検討会 でそこを変更することはできないと思います。その枠の中で何ができるかを考えるのであれば、メン タルヘルス不調であっても、ラベリング効果が起こってしまって、この人は不調なのですが、一般の 方が疾病と同じような扱いをしてしまうリスクが伴うと思います。そこで、自覚症状を調べる調査票 の中に、専門家に相談をしたいかどうかをチェックするだけのボックスを入れておいて、何の相談か はわからないものの、専門家に相談をしたいという労働者の意思表示だけを把握するようにしてはど うかと思いました。このチェックボックスにチェックが入っていたら、事業者が必ずその人を専門家 に面談させるような手当をする。それが時間なのか、どういう補償なのかは、わかりませんが、その 程度でも意味はあるのかと思いました。 ○鈴木労働衛生課長 いまの健康診断の枠組みを前提にご議論していただくと、この流れだと、それ に見合う精度の高い、あるいはプライバシーとか、その後の事後指導をクリアできる案を提示してい ただくのはなかなか難しいと思います。ただ、いまの法体系はそのままでという前提は少し置いてお いて、もしいまの健康診断の流れに組み込むとすれば、どういったことを例外的にすればいいとか、 その辺りの可能性は残しつつご議論いただいてもいいのかと。それから、いまの枠組みで難しければ、 別の枠組みを構築することで、例えば、ストレス簡易調査票を活用した、こういう手順ができるとい うことも、可能性としてはご提言していただいてもいいかと思います。 ○堀江委員 ありがとうございます。そういうことでしたら少し幅広くとらえることができると思い ます。一方で、平成18年の法改正で、長時間労働者に対する面接指導という取組みが生まれまして、 現場の産業医等は2種類の健康管理の実務をかなりの負荷でやっています。スタッフの負荷は、健康診 断と長時間労働の面接指導に加えて、さらにまた別のものを作るというのはかなり非現実的で、現場 ではとても実施できないと思います。そこで、私としては、例えば、長時間労働の面接指導は、本人 の申し出に基づいて実施しているので、メンタルヘルス不調についても申し出た方について、同じよ うに面接指導の対象者にするということも一案と考えます。この場合は100時間の長時間労働がなくて も、あるいは、何らかの調査をして疲労の蓄積が認められなくても、本人の申し出があれば面接指導 を受けられる、というようなやり方もあっていいのではないかと思った次第です。 ○相澤座長 他にはいかがでしょうか。このテーマについてはよろしいですか。 ○岡田委員 私どもの健康診断も既に、いま堀江先生がおっしゃったように、「何か相談したいこと がありますか」という項目を問診票に入れています。もしご本人がそこに○をつければ、基本的には 産業医が時間をとって聴いて、その後、産業保健スタッフが聞いて、そして合議の上で精神科の先生 に紹介するという形にしています。ところが、職務が非常に忙しいときとか、不調を感じていてもそ こに相談するかどうかという問題があるので、結果としては、健康診断のときに私たちが面接、面談 をして、やはりおかしいと、どう見てもこれは問題があるという場合は、本人の○にかかわらず介入 していくという形はとっています。いま先生がおっしゃったように、実際、中にはやはり不調で○を つける従業員もいますので、その場合は、私たちが精神科の先生に紹介します。それは過重労働とま ったく同じルートを作っていますので、社内の精神科医、もしくは社外の精神科医にルートを作る形 にすれば、過去にも早期にうつ病が発見されている例がありますので、そういう意味では、自発的な 行動ということで○をつけていただくことも非常に有効だと思います。 ○相澤座長 ありがとうございました。他にもまだご意見があると思いますが、後ほどまた戻っても 結構ですので、次に進みたいと思います。  3番目の項目ですが、「労働者のプライバシーの保護及び不利益取扱いの防止」についてお願いしま す。メンタルヘルス不調を把握するための情報等に関しては、労働者のプライバシーはどのように取 り扱うことが適当かということ。労働者のメンタルヘルス不調を把握して、健康以外の観点から評価 されて、人事、処遇で不利益を被ることがないようにするための対応は必要かということ。必要な場 合、具体的にどのように対応するのかなどについてご議論をいただきたいと思っております。これも 先ほど北村委員からも質問があった点ですが、大事なところですので、よろしくお願いいたします。  3頁です。これまでの意見としては、うつ病のスクリーニングを希望しない労働者も存在すること。 調査票を用いたメンタルチェックは抵抗なく実施可能と考えられるというご意見もありました。また、 職場におけるうつ病のスクリーニングで重要と考えられる事項として、「記入した内容が医師や看護 師以外の者に見られないこと」を挙げる者が約6割となっております。それから、メンタルヘルスチェ ックを本音で受けてもらうためには、「プライバシーの保護」、「不利益取扱いの禁止」、「1次予防 につなげる」という3つの視点が重要ではないかというのがありました。小規模事業場では、うつ病が 事業者に知られることで直ちに解雇されることがある。もう1つ、健診の前に予備的なスクリーニング を行うことが必要ではないか、というようなご意見がありました。いかがでしょうか。追加すること 等ありませんでしょうか。 ○北村委員 これまでの議論に出ていることを言葉を換えて言うだけの話ですが、もし個人のメンタ ルヘルス不調を発見した場合、事後措置が必要になるわけですね。事後措置を講じるということは、 どうやってもその人がメンタルヘルス不調であることを職場の人に知られてしまうということで、プ ライバシーを保護することと事後措置を講じることは、どうやっても矛盾するような気がするのです。 そのことも、もう少しここに書き込んでもいいのかもしれないなと思いました。 ○相澤座長 両方やることは難しい。 ○北村委員 要するに、事後措置を講じることとプライバシーを守ることは両立しないのではないか と。 ○相澤座長 というご意見です。今村委員は。 ○石井委員(代理今村氏) ちょっと教えていただきたいのですが、最後のポチの所で「予備的なス クリーニングを行うことが必要ではないか」と、この書きぶりなのですが、これは健康診断と言って いるものの中に、もう既にメンタルヘルスチェックのことを含んで言っているのでしょうか。この 「予備的なスクリーニング」という意味が、これだけだとちょっとよくわからない。前回の議論でど んな議論があったか、教えていただければと思います。 ○相澤座長 先ほどのコンピューターなどを使ってやるような、岡田先生の所でやっているような形 でやってということだったと思いますね。 ○石井委員(代理今村氏) それとあと、生越委員のほうから若干こういうご発言がありましたので、 そういうことをちょっと入れさせていただいたのです。 ○生越委員 1次予防の話につながるのですが、個別にストレスがかかっている、個人のストレスに着 目するのではなくして、ストレスを生み出すような状況。 ○石井委員(代理今村氏) 先ほど堀江先生のおっしゃったような、職場環境という意味での。 ○生越委員 そういうことで、要するにターゲットを絞ると。それによってスクリーニングの効率を 上げていくと。ですから、そういう趣旨で申し上げました。 ○岡田委員 プライバシーという点、私どもは健康診断の結果、事業主にも生データを出さないとい う方針で、いわゆる健康管理区分と就業上の措置だけをコンピューターに残して、事業主が見られる ようなシステムを組んでいるのです。そういうことで、例えば中小企業においても、外部の医療機関、 健診機関が、本人には生データを返すけれども、会社には就業上の区分判定、若しくは健康管理区分 を返すと。責任は重くなるのですが、そういう形にすればメンタルのことが入っても、身体的疾患と 精神的疾患に関しても特に区別することなく、会社としては情報を収集できるようになる。  私もそれを導入して、特にいま問題なく進んでいるのですが、そうなってくると労働安全衛生法上 の、先ほど堀江先生がおっしゃったような問題で、そこをうまくクリアしないと、例えばメタボの健 診などでもそうですが、法定と法定外の健診項目についてはどうするのかという議論があったと思う のです。特定保健指導でも、メンタルの問題が出てきたときはタッチできないとか、いろいろな問題 がありますので、そこがクリアできれば、この問題もある程度うまく解決のメドが立つのではないか なと思っております。 ○相澤座長 可能ではないかと思いますね。本人に対するものと事業主に対するものの判定、最後の 報告を少し変えるということですね。 ○岡田委員 内容です。 ○生越委員 プライバシーと事後措置というお話なのですが、いま労働基準法上、申告という手続が あると思うのですが、あれは申告の段階で労働者は、労働基準監督署に対しては当然名前を言って、 どこの企業に勤めていてという情報を与えるのですが、労働基準監督官が入るときは、この人だとは 言わない、随分配慮をしてくれているのです。ですから、例えば長時間労働と言ったときに、特定の 人のタイムカードだけをピックアップするのではなくて、いくつかピックアップして、それでわから ないようにしてバサッと指導をかけるシステムになっているのです。  ですから、特にストレスの原因が職場の長時間労働であるとか、過剰なノルマであるとか、そうい うものだった場合は、不調だというようにピックアップしたときに、プライバシーを隠した状態で1次 予防に直接アクセスをする。それで1次予防の長時間労働がなくなれば、それが原因である場合ですが、 多くの場合はストレスは減っていくわけです。それで、なおかつまだ不調だというときは、個別に産 業医の方にピックアップして、それはおそらく業務上のものではないという確率も高くなるでしょう から、そこでフォローしていく。そういうシステムでやれば、ある程度矛盾を防止できるのではない かという気は、個人的にはするのですけれども。 ○北村委員 ストレスに対する精神面の症状の出方といいましょうか、反応の仕方は、個人によって かなり差がありますね。だから、例えば私がうつ的になっている。だけど、一緒に仕事をしている周 りの人は全然なっていないと。就業上の措置が必要なのは私だけという可能性もあるわけです。そう いう場合のほうが多い。 ○生越委員 そこはどういうように捉えるかという問題はありますが、私の実務家としての経験上は、 業務上の精神疾患が出る職場というのは、必ず同僚に精神疾患がいます。自殺の場合も、同僚に必ず 自殺者がいたりもします。ですから、当然、当該個人に特別にピンポイントに荷重がかかるという可 能性はあるのでしょうけれども、事後措置という話であれば、そのようにある程度1次予防にフィード バックすることが重要であるという観点からは、私の経験上では、ある程度バサッと網を掛けても効 果があるのではないかとは感じます。  もう1つ申し上げたいのは、確かに精神疾患を発病する方は、確率的にはそれほど高くないというこ とは、あるレベルのストレスがかかったときに、皆さんが発病するわけではないのですが、ほかの人 ですよね、ストレスに耐性がある人も、やはりそのストレスにさらされているので、何かのショック で病気になってしまう可能性は上がるわけですよね。ですから、そこのところは、発病していないか らというところを言い出すと、あまりよくないのではないか。建設的な議論、事後措置という観点か らは、うまく回っていかないのではないかとは思います。 ○相澤座長 個人に対するものと集団に対するもの、1次予防的なので対応というのは集団に対するも のになると思いますけれども。ほかにいかがでしょうか。 ○堀江委員 いちばん最初に北村委員がご発言の事後措置とプライバシーの関係について、これは個 人情報保護法ができたときに多くの方々が気付かれて、労働安全衛生法に基づく健康診断における健 康情報の取り扱われ方は、特異的であるという議論が行われていたように記憶しています。特に、今 日お配りいただいた、前回、第2回の資料の33頁と書いてある所に、健康診断の個人票を掲載してい ただいているのですが、ここがポイントではないかなと思っています。  この個人票には事業者が記録し保存しなければならない罰則付きの強制義務がかかっています。労 働基準監督官が事業場に臨検に来たときに、事業者がこの調査票を保存しているかどうかを調べるの ですが、ここには労働者ごとに検査結果の生データが記載されているわけですね。だからこそ現場で は生データが要るのだという認識が強く広まっています。しかし、この枠の中に個人の自覚症状をい ちいち書くわけにはいかないので、現状でも、ここのところはおそらくかなり曖昧に書いてあると思 うのです。メンタルヘルスに関する健康情報は医療職が判断しなければ誤解を招きやすい危険な情報 と思いますので、実態としては肝機能検査とか血圧とかよりも、さらに厳格な管理を求められていま す。本来は、医療職に保存させるべき健康情報の生データに関する資料の取扱いが、この検討会にお いていよいよ議論の俎上に上る時期が来たと感じています。  ですから、メンタルヘルスに関する健康情報だけを分けて考えるという方法もあるでしょうけれど も、この際、健康診断の個人票に記載された生データは医療職が保存することを検討してはいかがで しょうか。その際、事業者に対しては、就業上の措置としてすべきことがあれば、就業上の措置の具 体的な内容に関する個人情報だけを提供することでよいのではないでしょうか。健康診断における検 査結果の生データがいくらであったのか、あるいは診断書の診断名が何なのか、そういったことは事 業場の方がお聞きになっても、医療職以上の判断が出るはずがない、意味のない資料ですから、利用 できない資料を渡す必要はないのだということを、この検討会で明確に打ち出してしまうことはでき ないでしょうか。  ただし、そうなったときに、今村先生がご指摘のポイントに行き当たるのですが、医療職が関与し ていない事業場はどうするかということも併せて考えなければなりません。産業医が昭和47年に法令 で規定されて以降も選任されてこなかった事業場について、特に、50人未満は制度上そうなのですが、 50人以上でも100人前後の事業場では産業医の選任率が非常に低いわけですが、こういった所に対し ては、やはりこれまでと違った手法で、きちんと医療職を関与させる仕組みを考えなければならない ということになってくるのではないかと思います。そこまでこの検討会でできれば素晴らしいと思う のですが、平成16年のときに行われた議論でも、同様の指摘があったと思います。 ○鈴木労働衛生課長 いくつか選択肢はご提示いただいたと思うのですが、北村委員が最初に言われ た事後措置となったときに、事業者は一定の情報は知らざるを得ないというか、知ることになると思 うのですが、その情報がたとえ漠然としているものでも、メンタルヘルス不調に起因するとなれば、 偏見なり誤解で不利益な取扱いを生じる可能性もあるわけなので、事後措置を希望制にするというこ とも事務局では考えたりするのですが、そういうことを恐れて同意が得られない。その場合でも、や はりこの状態からすれば産業医としては放っておけないというときに、例えば1つ勧奨という何か枠組 みを作って、是非それは事後措置の流れに乗るべきだということを、まさに勧奨すると。それでも本 人が自己責任でということになれば、そこは事業者の責任問題との関係がどうなるのかということが、 また事務局として検討しなければいけないことになろうかと思います。こういう勧奨という事後措置 の流れに行くときの枠組みについて、どのようにお考えかを。 ○北村委員 それをやれば、たぶんすごく手間がかかって、労力、時間がかかると思いますけれども ね。 ○岡田委員 例えば過重労働のとき、労働安全衛生規則に過重労働の面接希望をしないもので、産業 医が勧奨するという項目が入っていますね。産業医にとって、あれは極めてリスキーな表現になって いるのですね。例えば既に何らかの疾病を持っておられる従業員の方が、週40時間を超える時間外労 働が100時間あって、本人は疲労を訴えていないと申告をして、過重労働の面接を希望しない場合に、 事業者としては心配だから、産業医に時間外労働と健康診断の結果を提示したら、労働安全衛生規則 上は、産業医は当然それを勧奨すべき義務を負うことになるのですね。  そうすると、勧奨したけれども、本人が結局希望しなかったといった場合、その後に、例えば過重 労働に基づく健康障害が起こった場合に、これはあとどう処理したらいいのか、もしくはご家族の方 からどのような問題が提起されるのかというのは、私たちは非常に不安感を持っているのです。私ど もは安全衛生委員会で、それは困るので、基本的に人事が責任を持って、これは受けさせなさいとい う形で、人事部長名で全員に週40時間を超える、月100時間の時間外労働の場合は、そのように内規 でというか、規定で決めさせたのです。そうしないと、産業医の判断でということになってくると、 非常に難しい問題が出てくるのですね。  だから、いま課長がおっしゃったように、希望制にして、産業医は勧奨するといった場合に、もし 強制力もないとすれば、結果としては、いろいろな健康障害、メンタルヘルス不調の予防が本当に功 を奏するのかというところに非常に大きな疑問が出てくるのではないか、ということをちょっと心配 するのですが、その辺はいかがでしょうか。勧奨という形になった場合に、これは努力義務ですよね。 強制ではないですよね。本人が知られたくないということで、いまおっしゃられたように、事後措置 についても本人は希望しないということになったときに、産業医が勧奨しても、それを受けないとい うことになった場合に、私たちとしても立場としては非常に困ることが起こるのではないかというこ とで、ちょっと危惧するのですけれども。その点についてはいかがでしょうか。 ○鈴木労働衛生課長 これは、私はむしろ今後の検討のためにお聞きしたので、こちらとして答えと か何かを持ち合わせているわけではないのですが、もしそのままいった場合に、誰にどんな責任がそ れぞれ生じるのかということを、その方面の専門家の方にご意見をいただいて、そのシステムの可能 性があるのかどうかを論点として入れ込むのかどうかという意味で、ちょっと問題提起させていただ いたわけです。 ○岡田委員 私は決して反対しているわけではないし、勧奨を入れたことによって、会社の中のシス テムはすごく良くなりました。産業医のリスクも会社のリスクも、うまくリスクを分散するという形 でシステムを作り上げるという形になりましたので、あの規則は決してマイナスのイメージではなし に、どちらかというとプラスのほうに働いていたと思いますので、それは規則の中、もしくは法の中 に入ってくると、当然企業は動き出すと思います。その辺りが妥当性があって、現実的に可能なもの であれば、それは全く問題ないと思います。 ○鈴木労働衛生課長 先ほどの問題提起に至った経緯は、例えば何かの調査票を使うとして、事業者 の目的は職場全体、あるいは最初に堀江委員が言われたような、一定の部門ごとのストレスの負荷の 把握。そういう目的にとどめて、個人はたまたまその副産物である自分のチェックの結果だけを知る ということもあり得るのかなと。ただ、その場合は、事業者として個人は知っているだけで、何かあ ったときの予防的措置が事前にとれないということになると、個人が知って希望した場合に事後措置 などに結び付くけれども、そうでない場合は、健診担当の医師だけはその情報を持っていて、希望し ないけれども希望したらどうかという勧奨をするという一連の流れもない。事業者としては機会を提 供して、もちろんマクロとしては把握したけれども、個々の情報が必ずしも把握できない。そうした 場合、何かあったときに、やりっぱなしで責任をとらざるを得ないようなことになるのかどうか。そ れを回避するために、せめて希望制、あるいは希望しない場合でも勧奨というものを組み込んでおけ ば、その辺りは少しは解決するのではないかというような、ちょっと図にしないとわかりにくいのか もしれませんが。 ○岡田委員 むしろそれは組織、例えば従業員の調査をした結果、私たちがそれを分析して、ある事 業場に極めて問題がある場合に、産業医はそこを介入して、ストレス調査の結果から介入策をとると いうことであれば、問題ないと思います。ある事業場が非常にストレスフルであるということであれ ば、産業医は当然その事業場に介入すべきだろうと。個人ではありませんので、データから職場に介 入することに関しては私たちの本来の職務でありますので、それは可能だろうと思います。 ○鈴木労働衛生課長 またご意見を踏まえて、少し書き込ませていただきます。 ○相澤座長 いまおっしゃったのは、個人の事後措置に対する勧奨という意味も入っているのですよ ね。そこはプライバシーの問題なのですよね。 ○岡田委員 悩ましいですね。 ○中野委員 プライバシーの保護というのは私も理解できますし大事だし、不利益扱いがとんでもな いというのはよく理解できるのですが、こちらにもちょっと意見が出ていますが、小規模企業で、例 えば5人、10人の仕事で、チームとか何か職場でやっていて、本人は当然ながら気付いていても、申 告はしない場合があります。ところが、周りの社員が、従業員が「これはどう見てもおかしいよ。ど う見てもおかしいんじゃない、言動なり行動が」。それは先ほどの2番の把握の問題にも入ってくるの ですが、個人は申告しなくても周りがおかしいと判断した場合には、プライバシー以前の問題で、こ れはもういくべきではないですかと。会社に申請を、例えば上司にした場合には、その辺の問題は、 先ほどの北村さんの意見とあれなのですが、相矛盾しているわけですよね。プライバシーは保護しな ければいけないけれども、もう周りは知ってしまっているではないですかと。いかざるべきかどうな のかという判断は誰がするのですかというのが出て、現実的に小規模事業場の場合はあるのではない かと思います。 ○堀江委員 いまのご意見に対して、私の考えを述べさせていただきます。個人情報保護法第16条に 目的外利用の禁止、第23条に第三者提供の禁止が規定されていますが、それぞれの中に生命、身体又 は財産の保護の目的であって、本人の同意を得ることが困難なときはやむを得ないという適用除外の 規定があります。この条項は、まさにそういうことを想定しているのであろうと思います。すなわち、 個人情報保護法の違反を恐れるばかりに生命を救うために必要な健康情報を開示しない、あるいはほ かの理由で取得した個人情報を健康の保護のために使わないといったことが企業の中で生じてしまっ てはならないという懸念があるわけです。メンタルヘルスの課題には、このような個人情報の適切な 取扱いという課題が常に併存するという構造になっているのかなと思います。  本来は必要な健康情報はぜひ使っていくべきなのですが、現在、多くの方が合意する解決策という のは、やはりそこに医療職が絡むという仕組みではないかと私は思います。少し法律の趣旨が違いま すが、労働安全衛生法第68条に病者の就業禁止という規定があります。これに基づく省令である労働 安全衛生規則第61条の第2項に、もし病者の就業を禁止しようとする事業者は、産業医の意見を聴取 しなければならないという規定があるのです。ですから、同様に、職場で気付いたメンタルヘルス不 調の情報については、産業医等に相談した上で、それを人事部署等に提供するという流れを作ってお けば、気付き情報も活用できるようになるのではないかと思いました。 ○相澤座長 ほかにはご意見がなければ、次の課題に移りたいと思いますが、よろしいですか。4番目 の項目、「専門家の関与の方法」です。メンタルヘルス不調の把握、あるいは把握後の対応の各段階 において、健康診断を担当する医師、産業医、精神科医の役割はどういうことかということ。また、 保健師の専門家の役割は何かということについて、ご議論をお願いしたいと思います。4頁でご議論い ただいた内容は、二次健診では専門医による対応を希望する者が多い。産業医、衛生管理者のみでは 対応が困難ではないか。専門家の確保が課題であるというご意見をいままでいただいております。こ れについて、何かご意見をいただければと思いますがいかがでしょうか。今日は産業カウンセラーの 話もいただいておりますが、そういった外部の方も入れるということも。 ○五十嵐委員 専門家の関与というのは非常に幅広いのですけれども、やはりこの目的はメンタルヘ ルス不調者をきちんと把握し、1次予防につなげて、メンタルヘルス不調者、ひいては自殺者を出さな いということになりますと、職場へのフィードバックということが堀江委員からもお話がありました が、そこが非常に大事になってくるかと思うのです。その際に、タイムリーにそういった職場の問題 をきちんと把握できて、会社の仕組みの中で、いろいろな人たちが連携をとりながら、働き方という ところまでに及んで対応していくことが非常に大事だと思います。そうしないと、ただ問題がある人 をスクリーニングして病院につなげるだけでは根本的な解決にはつながらないので、そこの仕組みも 含めて考えていくべきだろうと思います。ですから、スクリーニングや不調者をいかにピックアップ してフォローするかということと同時に、それを会社の働き方、人事・労務にもフィードバックして いくというところを考えると、産業医だけでなくそれができる職種の関与が必要になってくるのでは ないかと思います。 ○石井委員(代理今村氏) いまのご意見はそのとおりだと思います。私は先ほどからずっと規模の ことにこだわっていて、先ほど堀江先生にも言っていただいたのですが、要するに、産業保健サービ スが提供されにくいような小規模事業場の人たちが実際上はとても多いわけです。だから、ここでご 議論していただくときに、そういうある程度の企業、大きな企業で、その中にスタッフが十分揃って、 そういう事業場の中で完結できるような仕組みと、そうではなくて外部のいろいろな専門家を関与し なければいけないケースというのは明らかに違うわけで、それを同一の所で議論していても、なかな か解決しないのかなと思っています。後ほど産業医の選任義務のない事業場の実施体制というところ が出てくるので、そこで申し上げようとは思っていたのですが、その辺2つにきちんと分けるような形 でないと、なかなかうまくいかないのかなというようにちょっと感じております。 ○鈴木労働衛生課長 最初に事務局からの説明を簡略にしましたので、ちょっとここで補足しますが、 この4番目の専門家の関与の方法は、そもそもIの「メンタル不調の把握方法について」ということで、 健診そのものにどのような専門家が関与したらいいかという程度にとどめていただいて、例えば一般 健康診断ですと、健診後に医師の意見聴取とか保健指導等があるわけです。それに絡んで地域産業保 健センター事業などもあるわけですが、まさにいま今村委員の言われたようなことについては、大き くIIの1の一般的な産業医の資質の向上、外部機関の活用ということと、選任義務のない中小規模事業 場における実施体制の中でどう考えていくかということで、じっくりご議論いただければと思います。  とりあえずこの4番目については、健診そのものについて、例えば問診の判定には最低これだけの資 質のある人が必要だとか、産業医でもメンタルの研修を受けた人でないといけないというような、資 質の向上についても以前に岡田委員からも意見をいただいておりますので、それについて追加がある かどうかだけ確認いただければ、あとはむしろ幅広く2番目のほうに移っていただいて、職種なり研修 なり体制の枠組みをご議論いただいたほうがいいのかなと思いますが、いかがでしょうか。 ○相澤座長 提案ですが、堀江先生、いかがでしょうか。 ○堀江委員 ただいまの労働衛生課長のご発言を受けまして、産業医が非常勤で関与している事業場 において、メンタルヘルス不調者を把握する際に、何らかの外部機関を使うということについて、こ こで議論するとしますと、私がいちばん重要だと思うのは、職場の環境や仕事の中身について、きち んと外部機関の方に説明をするということではないかと考えます。メンタルヘルスに関して、労働安 全衛生法に基づく健康診断等の機会を通して、もし職場全体の心理的ストレスの大きさを測ることが できたのであれば、その結果等も面談をする外部機関の方にはお示しをして、これからこういう職場 の方にお会いいただいて、お話を聞いていただくのだということをよく説明しておくことが重要と考 えます。それがあるか、ないかでは、メンタルヘルス対策の精度が全く違うと思います。もう1つは、 もし外部機関を使うのであれば、経年的なデータの管理ができる所でなければならないと思います。 これは一般的にもよく言われていることと思います。以上です。 ○岡田委員 健診にすごく時間がかかると思うのです。おそらく医療機関にしたら、コストの問題が 出てくると思うのです。例えば私どもは、1人大体10分とか20分話を聞きますとなんとなく問題ある 従業員であることがわかってくるのですが、体の調子が悪いところから「職場で何かあるの」と聞き 出していくと、上司がどうこうとか、タイムリミットがどうこうという形で、いま過重労働が頻繁に 起こっているとか、そういうことを聞き出すまでにかなり時間がかかるわけですね。ポロポロと「夜、 眠れません」という話が出てくるとなると、かなり時間をかけて健診をしなければいけません。もし この問診を入れて、チェックシートを入れて、産業医が面談するとなると、私は当然職場の状況をわ かっていますし、どの職場がいつ忙しいということをわかっていますので、その職場の人が来たとき に、「いまこういうイベントをやっていてしんどいよね」と言うと、「そうです」、「どう」と聞い ていく。体の変化がこうだから、こういうことになっているのではないかと言うと、次から次へと出 てきて、「じゃあ、精神科の先生に診てもらおう」という話になって、うつ病だということがよくあ るのですね。  そうすると、今度コストパフォーマンスが問題になってきますので、そこも検討しないと、中小企 業で外部の医療機関に健康診断をアウトソースしている場合、当然1人当たりの健診のコストが上がっ てきます。そこをどうクリアするかということも考えておかないと、このメンタルヘルスのチェック システムを導入したとしても、事業主としてはなかなか納得してもらえないのではないかなという危 惧もありますので、そこもまた検討していただいたらいいのかなと思います。 ○相澤座長 他にはいかがでしょうか。スクリーニングの判定には、どの程度のレベルの専門家が必 要かとか、そういったことなのですかね。後で戻っていただいても結構ですので、IIのほうで、4頁の 「把握後、適切に対応するための実施基盤の整備について」の1です。「産業医の資質の向上と外部機 関の活用について」、ご議論をいただきたいと思います。この項目は、先ほどの4番の項目と関連しま すが、メンタルヘルス不調の把握後、事業者による労働時間の短縮、あるいは作業転換、休業、ある いは職場復帰等の対応が適切に行われるよう、産業医の資質の向上と外部機関の活用ということです。 これも先ほど少しお話がありましたが、これについてはまだほとんど議論がされていなかったので、 よろしくお願いします。先ほど今村委員からありました産業医の選任義務のない中小規模事業場にお ける実施体制についても一緒にやります。 ○石井委員(代理今村氏) いま相澤先生におっしゃっていただいたように、ここは一体に議論をし ていただいたほうがよいと思います。特にメンタルヘルス対策支援センター事業と地域産業保健セン ター事業との連携という話もあります。是非申し上げておきたいことは、地域産業保健センター事業 についても、長時間労働者の面接指導自体も、まだまだ十分に行われているとはとても言えない状況 で、非常に負担になっているのは現状かと思います。これは全国347の労働基準監督署単位で、いまま で地域の医師会が地域産業保健センター事業を実施していたわけですが、今年の4月から都道府県単位 の実施ということになって、いま37の都道府県医師会が実施しております。  どうしても時間的に間に合わない県医師会については、労働者健康福祉機構の産業保健推進センタ ーに実施をしていただくということで、いま非常に混乱の中で、やっと体制整備を図っていこうとい う中にあって、今日、厚生労働省がいらっしゃるのでこんなことはあまり言いたくないのですが、事 業仕分け等で予算の削減ということで、地域産業保健センターについても半分にすると。産業保健推 進センターについても3分の1まで集約するのだというお話が進んでいると伺っていて、現在メンタル ヘルス対策は非常に重要だと言っていながら、一方そういうことが同時に起こるということは、私は ちょっと理解ができないのです。ですから、この検討会の中で、例えばこの事業が本当に必要だとい うことであれば、予算についてもきちんと対応していただくように要望していただきたいというのが、 まず一番にあります。  これは地域産業保健センターが登録されている産業医が実施しているということで、いままでの産 業保健サービスについても大変一生懸命やっている所もあるし、地域によっては非常に温度差があっ て、むらがあるのが実態なのです。ですから、まずこういう仕組みとして、私どももメンタルヘルス について、医師会としても全面的に協力したいという思いがありますので、是非そこは検討会の中で も何らかの形でここに書き込んでいただければありがたいなと思います。希望です。 ○相澤座長 大事なところです。これについては考えていただいて。 ○堀江委員 例えば、お隣の韓国では、労働者数が50人以上300人未満の中規模事業場における産業 保健活動を徹底する必要があるということは、既に認識していて、各地域にGroup Occupational Health Service(集団産業保健サービス)という外部機関に、中規模事業場で実施された作業環境測 定とか健康診断とかの結果を踏まえた産業保健活動を担当させる仕組みを構築しています。また、50 人未満の小規模事業場における産業保健活動については、国が多額の予算をつけて、産業医や保健師 等の職場訪問のための費用を補助しています。  わが国においても、いままでのやり方と少し違う発想で、かなり大掛かりな仕掛けを持ってこない と、小規模事業場の問題は全く解決の方向に向わないのではないかなと思います。これまで医師会の 善意に頼ってやってきたのですが、そのための予算を縮小するという事業仕分けの結果は、逆に見ま すと、これからはもっときちんとした政策によって小規模事業場のための産業保健活動を推進してい くのだということが当然に検討されていかないと、国として恥ずかしいのではないかと思います。中 小規模事業場における産業保健活動の課題はたぶんこの場でなくて、また考えていく必要はあるのだ ろうなと思っています。  もう1つ別の話でよろしいですか。IIの「把握後適切に対応するため」という課題に関して、是非強 調しておきたいことが1つあります。それは労働安全衛生法第66条の4に「医師の意見聴取」が規定 されていて、第66条の5に「意見に基づく就業上の措置の実施」という規定があるのですが、両方と も「しなければならない」という強制義務がかかった、ただし罰則のない法律です。これが導入され た1996(平成8)年から既に14年が経過しています。ところが、第66条の4の実施率に関しまして、 前回の平成19年の健康状況調査に基づいてお話しますと、健康診断で異常の所見があった労働者がい る所を100%とした場合に、健康管理等について医師又は歯科医に意見を聞いた事業場は、なんと27.3 %にとどまっているのです。強制義務のかかった規定が約10年も経って、こんな状況でがあるという のは、個人的には理解できないところです。  ここのところをもっとしっかりやらない限り、健康診断から事後措置をするという流れは、実際に はできないとみなすべきだと思うのです。先ほど申し上げたように、たとえメンタルヘルスの不調を 健康診断で発見しても、事後措置が伴わなければ意味がありません。既存の検査項目でさえ27.3%な のですから、ここを何とかしない限り、健康診断の項目を増やしてもメンタルヘルス不調の原因とな った職場の改善等がなされないままになってしまうという危惧があります。  当然予想されることですが、就業上の意見の聴取やその実施についても小規模な事業場ほど実施率 が悪く、50%を割る境目は、ちょうど300人のところです。労働者数が300人を割りますと、50%を割 ってまいります。それから当然ですが、衛生管理者も産業医もいない50人未満の所は、健康診断によ って疾病の予防を図るという流れの上流だけいじってもほとんど意味はないということになってしま います。その意味で、このIIの所の把握後の適切な対応は大変重要で、ここを何とかこの検討会にお いて改善を図っていただければありがたいと思います。安衛法第66条の4と第66条の5をもう少し効 力のあるものにしていただければと思います。 ○五十嵐委員 私の立場では保健師ということになりますが、何か職のアピールをしているように勘 違いされたら困るのですが、何度も言っておりますが、内閣府の自殺対策におりますと、いまの枠組 みではやはり実際に機能していない部分があるわけですね。どうしてもこういう話になると、産業医 だけが職場にフィードバックできるという話になってきます。決して産業医を否定しているわけでは ないのですが、現在の仕組みではメンタルヘルス対策が成果をだしていないのですから、保健師は健 康相談の中からメンタルヘルス不調者を見つけ、職場との調整も行っているのですから、機能する職 種をもっと活用してほしいと思っています。  先ほど堀江先生が海外のお話をされましたが、ご承知のように日本はILO161号条約を批准していま せん。つまり、すべての労働者に産業保健サービスが提供されていないわけですね。その中に当然メ ンタルヘルスのケアも入ってくるかと思うのですが、各国においては事業者が労働者に対して産業保 健サービスをきちんと提供することが義務付けられていて、それを司る職種は産業医・保健師・衛生 技術者等が同等に位置づけられ、事業者側がその企業に合った職種を選びコーディネートし、しっか りとアウトカムを出すというところが決められているわけです。職能ありきになってしまいますと、 どうしても産業医、産業医となってしまいます。産業医でも、岡田先生のように常勤産業医で素晴ら しい先生もいらっしゃいますが、産業医の多くは非常勤で月に1〜2回来社し、企業の中身、つまり働 いている実態や労働者の気持ちなどは把握できないのです。ですから、医師と協働する中で、実質は 保健師が中心になっているようなところもあります。どっちがやるとかということではなくて、実際 に機能する枠組みを考えるべきで、特にこのメンタルヘルスに関しては、自殺という国民の生命の危 機に直結しているわけですね。  そういったことを考えると、やはり全体の枠組みとして、特に中小、零細のように、産業医が選任 されていない事業場も労働者の半分ぐらいになりますし、嘱託産業医のみの事業場を入れますと、も っと大きな労働者数になります。では、どういうシステムであれば、労働者が相談したいときにきち んと相談ができて、問題があればすぐにケアできるのかこの基盤強化に対し、保健師等も含めて幅広 い職種で検討していくべきだろうと思います。  次のIIIにもかかわってくるのですが、地域との連携ということで、1回目の資料で、厚生労働省の自 殺対策プロジェクトチームのヒアリングの所で、私の意見の記載が載っておりました。地域・職域の 連携の中で、保健師がハイリスクのケアに有効であるという記載です。実際、行政のほうでは、自分 の管轄区の中に小さな事業場を抱えているような所もあり、そこでは保健師がかかわっている。ただ し、行政の保健師は数もだんだん減少している中で、もっとそこのサービスの厚みと、自殺対策とい うことを考えると、何らかの事情で解雇されて、自殺にいかないように地域・職域連携で、連携がで きる人材として保健師を活用してほしいというのは、実際のリスクマネージメントということの中で 是非考えていただきたいと思っております。決して産業医を否定するということではなく、活用でき る人材を是非有効に使ってほしいと思っています。 ○石井委員(代理今村氏) いまのご意見に私も同感で、機能する仕組みでないとしょうがないと。 保健師の役割は、私も非常に評価はしています。実は、例えば地域産業保健センターに、いま産業医 は登録するわけですが、保健師の登録などというのは実際少ないわけですね。そういう仕組みが本当 に機能するのだったら、それはそれですごくいいとは思いますが、例えば私も産業保健でないところ で、介護保険の中で地域包括支援センターに保健師の配置が位置づけられたと。なかなか保健師が見 つからない。あるいは、特定保健指導の中で、保健師の役割は非常に重要視されたけれども、それは なかなかどこにどういう人材がいらっしゃるかわからない。行政の中には、確かに保健師がある程度 はいるのですが、そういった方がそこまでできるだけの人材的な余力があるのかどうかというのは、 我々はわからないのです。ですから、産業医の場合にはどこにどれだけの人数がいるかは、私どもも ある程度把握はしているわけですが、いわゆるこういう分野で働ける保健師がどのぐらいいて、地域 に偏在がないのかどうかとか、もしそのようなデータがあれば、また是非教えていただいて、そうい う方を活用する仕組みをこの中で決めていただければいいのではないかと思います。 ○岡田委員 30年ぐらい前に産業医になったとき、従業員は産業医に相談して、いったい自分の状況 は改善するのかという意見がありました。ようやくそれがそうではないと確立してきたのですが、10 年ぐらい前は、産業看護スタッフに相談して自分の立場はよくなるのか、という従業員の意見もみら れました。私はそれを改善するために、保健師、看護師と産業医の連携を密にして、産業保健スタッ フに相談しても、それが何らかの形で職場の改善につながる。  つまり、労働者と保健師だけの問題解決にはならないようなシステムを作っていくことをしなけれ ば。従業員が保健師に対する、若しくは看護職に対する評価というのは、相談しても、コレステロー ルを下げるとか血糖をどうこうということは、効果があるけれども、果たして職場の環境等の改善に 保健師、看護師がどのぐらい力を発揮するのかというのは、多くの労働者はまだやはり疑問を持って おられる。そういうシステムを構築しない限りは、特にメンタルヘルスの問題については、労働者が 実際に本当のことを話すかというのは、まだ日本全体では非常に難しい状況だろうと思います。その バックアップ体制をしっかりとらない限りは、これは、いま確かにおっしゃられたように、私たちも 努力しなければ、保健師の業務というのでしょうか、それが円滑にいかないと思います。これは当然 連携していかないと、非常に難しい問題だろうと思います。 ○五十嵐委員 先ほどの今村委員のすごくサポーティブなご意見に対して、岡田先生のいまのご意見 もそうなのですが、安全衛生というのはチームでやっていますので、誰が主体になってもとにかく動 く効果的な仕組みでなければならないということと、産業医は少なくとも労働者数50人以上の所には いるわけですから、保健師だけで完結するわけではなく、医療的な判断、医師の判断も必要になって くるので、当然医師と協働しながらチームで動いていくわけなのです。だから、もう少しそこを柔軟 に機能することで考えていかなければいけないわけです。  一方、保健師の数と質の担保についてですが、現在看護系大学で保健師資格を取得している新卒に 対して、就職先がなくその1割しか実際には保健師として就職していません。また、保健師教育が4年 生大学の中であったものが、いま大学院での教育に変える動きもあり、さらに質の高い教育を目指し ています。その中で、保健師教育の強化する機能として危機管理対策があげられ、自殺やメンタルヘ ルスというキーワードを盛り込み、連携だとか地区診断とかいうところを強化することになっていま す。  ただ、やはり労働安全衛生法には、法律に乗らない以上なかなか数が増えていかないということも あるので、そういった両面の部分で基盤整備をしていくのであれば、保健師の法制化も考えていただ くことで、数の担保にもつながるので、そこも含めてお願いしたいなと思っています。 ○堀江委員 ただいまの五十嵐先生のご意見等々を踏まえてなのですが、例えば50人未満の事業場に は、現在、産業医を選任する強制義務がありません。とはいえ、労働安全衛生法第13条の2では努力 義務が規定されているので、50人未満でも選任が勧められているわけです。また、地域産業保健セン ターを利用する場合、そこの医師のほか登録している保健師に健康管理等を行わせることという規定 もあります。したがって、50人未満の事業場への産業保健サービスの供給体制について、例えば個々 の事業場に産業医の選任義務を課すのではなく、一定の地域においては産業医以外の専門職を活用し て必ず面談の機会を持たせるような仕組みを作る。ただし、その場合であっても、その地域を担当す る医師を1人選任しておいて、その方が医学的な責任を負うという体制にしてはどうでしょうか。すな わち、産業保健専門職のチームを地域ごとに作っていけば、ある程度、中小企業の中で個別には選任 できない事業場をカバーできるのではないかと思っております。以上は個人的な意見です。 ○相澤座長 いかがでしょうか。最後のIIIの所に入っておりますが、それも含めてどうぞ。 ○北村委員 1つ確認なのですが、五十嵐委員が保健師の役割を非常に強調しておられて、私も保健師 とか産業看護職の重要性というのは、人一倍認識しているつもりです。ただ、この検討会の目的に自 殺防止というのもあるのですね。そうすると、スクリーニングで引っかかってきた人には見立てとい うか診断が必要になると思うのですね。そうすると、そこはやはり専門の医者でなければ、精神科医 でなければいけないのではないかなと思うのですが、どうでしょうか。 ○五十嵐委員 それは、もちろんそうだと思います。病気かどうかの診察は医師です。ですから、保 健師はあくまでもファーストラインプロフェッショナルとして、いちばん労働者に近い所で相談を聞 いたり、悩みを聞く中で、メンタルヘルス不調者を発見するのです。メンタルヘルスに関しては、い まスクリーニングの話も一応出てはいますが、むしろ気持を聞いたり、不調をキャッチしたりという ところのファーストゲートとしてかかわることが重要です。それで問題がある場合には、医師や産業 医につなげて診察してもらう。労働者はちょっと気持ちを聞いてほしい。体調について相談したいと いう時、いきなり、医師にはいかないケースが多いと思います。  ただし、スクリーニングのあり方そのものも、いわゆるテストのようなものでやるのか、それでは なく気持をタイムリーに察知して、迅速に対応するようなスクリーニングなのかとなると、それは単 に質問紙を使ってやるのではなくて、保健師を活用した基盤整備をして、相談窓口が本当にセーフテ ィーネットのように、網目のように仕組みの中に入っていくことが私は望ましいと思っています。実 際、そのほうが機能するのだろうと思っています。 ○椎葉委員 私も保健師なので、五十嵐先生だけに頼っていてはと思いまして、一言発言させていた だきます。私どもの会社は、珍しく保健師が中心でやっている会社です。それで、保健師がファース ト面接をやって、チェックリストも使ってこれまで取り組んできて、第1回目のときに発表させていた だきましたが、新規発生がゼロになる事業部も出てきたという、珍しい企業なのかもしれません。  そもそもの話に戻して大変恐縮なのですが、メンタルヘルス不調を早期発見するということに関し て、現在のところ精神医学的には、うつ病に関しても、そもそも病気がどういうもので、どのような 治療をすれば確実に治るということが、糖尿病であるとか、がんであるとかということと違って、ま だあそこは不透明というか不明確になっているものだと思います。  ましてや不調という段階でどこまでできるのか。初回に擬陽性という話が出てきたかと思いますが、 擬陽性の段階で医療としてどこまで介入すべき問題なのかということは、いかがなのでしょうか。そ こを省いて不調というところであまり介入しすぎると、多くの誤解を招くのではないかと思っていま す。 ○鈴木労働衛生課長 以前からある資料6をご覧ください。これは現行の一般健康診断の流れです。仮 に1つの選択肢として、この流れでメンタルヘルス不調者を把握することを考えるとすれば、この一般 健康診断、医師の診断といいますか、1つの判定があるわけですね。ここからすぐ矢印が右に行ってい ますが、そのうちの保健指導にいく部分があります。これは精密検査も受けずに、まだ診断名も付い ていないという段階の方がここに行くわけです。この段階では擬陽性といいますか、医師がとりあえ ずすぐに精密検査に行く程度の得点というか、スコアではないけれども、例えば本人の希望もあって、 何らかの相談をしたほうがいいという方はこちらに行くという流れもあるのかなと思っております。  これで、例えば3カ月に1回経過を見ながらということ。これからの検討事項ですが、あり得るのか なと思っています。そこは冒頭にも言いましたが、使える調査票の精度とか、人材をどのぐらい確保 できるのかとか、さらにそのあとのフォローが、現実的にはどのぐらい確保できるのかと密接に絡ん でおりますので、行政としても責任を持って受け皿が整備できない中で、事業者にものすごい厳密な といいますか、あるいは量的に多数ニーズが発生するような仕組みも、責任問題として作り得ないと 思いますので、答えにはなっていないのですけれども、まさにその辺りも提言なりご議論いただかな いと、こちらとしては論点なりが作成できないのかなと思っています。それを先ほどちょっと言おう かと思っていたのですけれども。 ○椎葉委員 CSRという話がよく出てきていますが、それを考えるとどうしてもどうなのかと、精神科 医ですら診断が難しい部分をその前に振り分けるということに関して、あとでCSRのことが出てくるな らば、たぶん擬陽性の段階で専門機関に回したほうが、関わった者にとっては非常に担保になると思 います。ただ、その結果、外来が溢れ医療費が高くなるという悪循環になるのではないかということ は、非常に気にしています。その点はどうぞご考慮いただきたいと思っています。 ○鈴木労働衛生課長 実際に簡易調査票を使っている実例の中で、どこでカットといいますか、絞っ てどう対応するかまでは、まだ事例としてご紹介をいただいていないので、そこは現場でどうしてい るかとか、あるいはその辺りに関して、医学的にはどう判断すべきかということは、もう少し議論を 深めないといけないと思っております。  もう1つ、前提としてわかりやすいのでこれを使いましたが、別にこのいまの枠組みにおける健診、 あるいは医師の意見、あるいは保健指導、これで必ずやるということを決めたわけでもありませんの で、これに似たようなものでやるべしというご意見が、今後あってもいいのかなと思っております。 ○石井委員(代理今村氏) IIIの「その他」の「地域との連携」ということで、これは産業医と精神 科医の連携です。別に今回の検討会に限らず、前から精神科医との連携というのは大きな課題になっ ていて、精神科医も日常の診療の非常に忙しい中で、産業保健に対する可能性であるとか、あるいは いまだ対応が十分できていないということがあった中で、今回このようにして、また新たに自殺対策 という大きな目標のために、健診なら健診をすると。それは当然、事後指導までつながらなければ何 の意味もないし、そういった不調者の中で、特に疾病として認識されるような方が見つかったら、医 療につなげるという仕組みが必要になるということだと思います。産業保健は産業保健の場で、こう いう話を言う。でも、地域医療としての精神科医療というものの中で、そっちはそっちでやっていて、 そこの整合性というのはどうとるのというのを議論する場所が残念ながらないわけですね。お互いに 連携、連携と、10年も前からこんなことを言っていても、あまり実効性のあるものはなかなかできな い。今回こういう新たなテーブルを立ち上げて仕組みを作るのだったら、産業保健の立場から、きち んとした連携の新たな仕組み作りを提案していただきたいというか、するべきだろうと思います。 ○相澤座長 大事なご指摘だと思います。よろしくお願いします。 ○堀江委員 ただいまの点はまさに私もそう思います。医療従事者の視点からは、医療従事者同士の コミュニケーションでなければ、本当のことが伝えられないというジレンマがいつもありまして、思 い切った対策もとれないということになります。大企業であれば専属の産業医もいるでしょうし、保 健師もチームの中にいるでしょう。しかし、小規模事業場には全く専門職がいないので、地域で医療 機関の診療医がメンタルヘルス不調の労働者を患者として診察した際に、原因が職場にあるのではな いかという見方をした場合、職場の改善につなげる手立てがありません。地域と職域をつなげる肝心 のルートがどこにも描かれていないのです。ですから、地域医療においてどこの事業場に勤めている 方か分かった場合、それが大企業であれば産業医、産業医がいない事業場については、その地域を担 当する産業医が決まっているような仕組みになれば、その医師に情報を入れていただいて、しかし医 師ではいろいろな意味で個々の小規模事業場を訪問したりできませんから、そういう場面で保健師が 活躍するという絵が描けそうな気がします。是非、地域と職員の連携というのも、産業保健側がすべ ての職場に産業保健サービスが提供されるということについて、なるべく医師同士が責任を持って連 携するような形で書いていただければ、今後、発展するのではないかなと感じております。 ○相澤座長 地域の医師というのは、保健所とかそういう所ですか。 ○堀江委員 いいえ、事業場が存在する地域で一般の医療機関の医師から情報を受け取る機関とは、 例えば地域産業保健センターなどのことですが、場所によってはかなり広いエリアを所管しているセ ンターもありますから、本来は、もう少しメッシュを細かくして、本当に医師の目が届く地域の範囲 が適当と思います。この町はどの産業医の先生が担当するのかについて、産業医が決まっていれば、 そこのエリアで活動できる保健師等に連絡をして、ちょっと事業場に行ってほしいということを依頼 して、その結果について情報交換をしていけば、地域と職域の連携はうまくいくのではないかなと思 っています。 ○五十嵐委員 時間がないので、次回の希望なのですが、いま堀江先生がおっしゃったように、全体 のグランドデザインですね、そこからどういう仕組みで、どういう連携なり職種が機能するかという グランドデザインの話と、もう1つは先ほど椎葉委員からありましたが、企業のCSRの話をとおっしゃ いました。企業の労務管理のあり方というか、メンタルヘルスをどのように企業がきちんと把握とい うか、考えていくかというところの評価みたいなものも、併せて考えていくというようにお願いした いと思います。ここは医療職でのケアだけではなくて、過重労働もそうですが、どうしてもメンタル ヘルスの場合は働き方にかかわってくるので、それをどのようにフィードバックして考えていくかと いうところも進めていただければと思います。 ○相澤座長 まだまだご意見があると思いますが、そろそろ時間がまいりました。冒頭に申し上げま したとおり、次回は本日の議論を踏まえて論点を整理して、それを踏まえて議論を深めたいと思いま す。事務局から、次回の予定をお願いいたします。 ○永田主任中央労働衛生専門官 次回は、6月21日(月)10時から12時に開催する予定です。 ○相澤座長 それでは、第3回の「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」を閉会いたします。どう もありがとうございました。